【ペルソナ5】屋根裏のゴミ「子作りしたい」 (34)

■杏

久しぶりに喫茶店に訪ねると、彼とおじさんではなく、武見先生が居た。

お店がcloseになっていたからなんかあると思ったけど

武見先生は私と同じ彼氏持ち。
私の彼氏と同じ名前の彼氏がいて
私の彼氏と同じ格好の彼氏がいて
私の彼氏と同じ顔の彼氏がいる。

要するに股がけされている。しかも、私と武見先生だけじゃなくて、他の女も加えて9股だ。

怪盗団のみんななら、もうなんともないけど、他の女の人と仲良くしているのは、まだ、抵抗がある。


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やっぱ女の子だもん。嫉妬する。
恋敵なんだから。

「こんにちは」
「こんにちは、彼に会いに来たの?」
「はい」
「残念だけど、今は留守よ」

「そうみたいですね」
挨拶もおざなりにする。交代の時間で、前の彼女と鉢合わせすることは、何度かある。
そして、その時間は、結構気まずい。

彼の彼女は、私達9人。
私達は朝、昼、晩の順番で、彼を共有する。つまり、週二回は、彼に会える計算。
「全員付き合うならこれぐらいやって」
全員、幸せにして見せる。

そんな言葉を吐いた彼に、きついスケジュールを突きつけてやった。

そうしたら彼も懲りて、一人の女の子に絞るだろう。
その方が、みんなにとってもいいはずだ。私たちは、そう考えた。
でも、彼は笑って見せた。

怪盗団の時もそうだけど、彼はピンチの時は、常に笑顔だった。

それから、何年もそのスケジュールで対応している。
彼は一度も私達を満たさないことはないし、デート代、プレゼント代も、どっからか捻出してくる。

「どれだけみんなと一緒にいたいのよ」
呆れて言葉が出てくる。でも、みんな、そんな彼が好きだった。

「杏ちゃん、この前の雑誌買ったよ。綺麗だったね」
「え?本当ですか?ありがとうございます」
先月載ったモデル雑誌かな?確か、私の特集を組んでくれた。

「でも、ちょっと気になるかな?」
「え?」

そう言うと、武見先生は私の隣に座った。

「診てもいい?」
「はい?」
というと、先生は私のお腹に触ってきた。

「先生……?」
「しっ!黙ってて……」

「最近、熱ある?」
「…はい」

「胸、張ってる?」
「……はい」

「うん、妊娠している。詳しくはちゃんと、産婦人科、行った方がいいかな」

妊娠…………
妊娠!

「え?子供ができたんですか?」
「ええ……そうよ。心当たりは……」
「ありまくりです」

というか、散々やった。やりまくった。

「まぁ…そうだよね…」

「あ~、とうとう母親ですか。なんか、実感が沸きませんね」
「私もそうだったから……」

あっ!
そう言えば、先生も……

「先生の子供って、今いくつですか?」
「一歳だよ」
「私の子……って、先生の子供の弟か、妹になるんですかね?」
「まあ、そうなるかな?父親が同じだから」

変な家族。
つくづく、私の彼氏は、普通なんて言葉に、収まらない男だ。

■妙
さっきまでの泣き声が、嘘のように、眠っている。
まだ、食事、排泄、就寝も一人でできないこの子。
大変で、憎たらしい時もあるけど、この寝顔を見ると、どうでもよくなる。

目が、彼に似ている。
彼の遺伝子を、受け継ぐ。そういうことができて、女で良かった、とつくづく思う。

「こんにちは」

奥から声が聞こえる。
今日はこの子がいるから、診療所は休みなのに

「あら、こんにちは」

ドアを開けると、そこにはお腹の大きな彼女。

新島真。

彼の恋人だ。
じゃあ、私は?私も恋人。彼には9人恋人がいる。おかしい?
そう、彼は普通じゃない。
彼は浮気者で、女たらしで、ジゴロだ。
とんでもない男だ。
でも、私はそんな彼が好き。

「どうしたの?」

「近くに来たので、挨拶に来ました」

「そう、上がって」

彼女のお腹は大きい。6ヶ月というところかな?
それにてしても、杏ちゃんといい、真ちゃんといい、妊婦がよく来る内科ね。
産婦人科でもやろうかしら?

「お子さん大丈夫ですか?」

「うん、今寝たとこ」

「見てもいいですか?」

「うん、いいけど」

真ちゃんは、彼の子を見る。
彼に似た目と、私の口元と鼻。2つが混ざっている。
そんな存在を、目の前にして、彼女はどう思うのかしら?

私なら、嫉妬しちゃうかな。

「わあ、可愛いですね」
「ありがとう」

「なんか……近くにお手本がいると、いよいよ実感が沸きますね。」

「そうなの?」

「まあ、大変だよ」
「だと思いますが……彼と一緒なら平気です」


……随分と信頼されているのね。
さすが女たらし、ちょっと嫉妬しちゃう。
今度、私の番は、いじめちゃおうかな?ふふ……

■真

大学を卒業して、私は警部補としてキャリアを初めた。数年が経ち、私は妊娠して、産休をとった。
そうして、この子が生まれた。
世界で一番好きな、彼と私の子供。
親バカかもしれないけど、やっぱり可愛い。
どんな疲れも吹き飛んでしまう。

「あれ?千早さん」
「真ちゃん、奇遇ですね」

今、話題の占い師。
テレビのバラエティで、いくつかコーナーを持っている売れっ子だ。

「千早さんどうしたんですか?」
「テレビの収録の帰りです。真ちゃんは?」
「この子の定期検診です」
「元気そうですね」
「はい、お医者さんもびっくりしていました」

元気過ぎて、暴れちゃったけどね。誰に似たんだか。

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