【ミリオン】永沢「僕がプロデューサーに?」【ちびまる子】 (49)




静岡駅 ホーム付近


永沢「はじめまして。今回は君たちのPの代理で引率をすることになった永沢君男です。
短い間だけど、よろしくお願いします」

恵美「は、はじめましてー!よろしくお願いしまーす!」

百合子「………ハッ、よろしくお願いします…!」

環「…ジー」

恵美「ん?どうしたの環。永沢さんの顔見て」

環「…ジー」

永沢「僕の顔に何かあるのかい?」

環「おっちゃん、なんで頭がタマネギなんだ?」



恵美・百合子「!?」



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ー1週間前 病室ー


P「すまなかったな恵美。レッスンで忙しいのに来てもらっちゃって」


恵美「べつにいいよ!それよりP、大丈夫?足りないものある?買いだしならアタシが行くからさ、遠慮しないで任せなよ!」


P「あぁ、ありがとう大丈夫だ。
いやぁ、不覚だったよ。まさかライブの建材に足を引っ掛けて骨折とはな…」

恵美「にゃはは!初日は事務所の子全員で面談に詰めかけちゃって病院の人に怒られちゃったもんね」

P「それも一週間前!経過は良好だ。暇すぎて今は書類仕事だけでも片付けたいよ」

恵美「ダメだよ、P!いい骨休みの時間だと思って、しっかり休まないと!

食欲ないならりんご切るよ!ちょっと待っててね!」シャリシャリ…

P「はは…わかったよ」





P「さて、今日恵美に来てもらったのは、2週間後に静岡でやるライブの話だ」

恵美「アタシ、百合子、環の3人ユニットで地方アイドルフェスに参加するんだよね?みんなレッスン頑張ってるよ!」

P「……そのユニットだけど、恵美にリーダーを頼みたいんだ」

恵美「えっ!アタシに?」

P「そうだ。メンバーで1番年上っていうのもあるけど…恵美はみんなをよく見てて、気を配れるからな。適任だと思う」

恵美「えー/// あ、アタシが気を配れるなんて、褒め過ぎだってば!」シャリシャリ

P「そうでもないぞ。今だって、俺の体調を気遣ってりんごを切ってくれてるじゃないか」

P「恵美に頼みたいんだ。引き受けてくれないか?」


恵美「もーP、ズルすぎ!そこまで頼まれちゃ、断れないじゃん!わかったよ。どこまでできるか分かんないけど、やってみるね!」

P「ありがとうな、恵美!」





P「さて、その遠征の引率なんだが……」

恵美「誰が来るの?社長とか?」

P「いや、じつは大学の同期に、俺と同じくプロデュース業を最近までやっていたやつがいるんだ」

恵美「ふーん、世間は狭いんだね」


P「静岡のご当地アイドルの担当だったそうだが、全国デビューが決まって、それを見届けて辞めてしまったそうなんだ」


恵美「……あー!知ってる!最近話題の急成長アイドルグループじゃん!B・Bクイーンだっけ?超やり手じゃん!」



P「社長のつてでな。俺も名前を見たとき驚いた。依頼したら、嫌味混じりに引率を引き受けてくれたよ」

恵美「ライブの一週間前に前乗りして、現地でライブの打ち合わせや練習するんだよね?」

P「そうだ。静岡に土地勘もあるし、最適だと思ってな。短い間だけど、俺の代わりだと思って頼ってやってくれな」




ー1週間後ー



永沢の運転する車の中



恵美「環ぃー、世の中にはいろんな人が居るんだから、いきなりあんなこと聞いたら失礼でしょ!?」ヒソヒソ

百合子「そうだよ、環ちゃん!でも、私もちょっと変わってるとは思うけど…」ヒソヒソ

環「だって、永沢すごい頭してるよ!環、あんな頭見るの初めて!」大声

恵美「シーッ!シーッ!」

永沢「……ふんっ、別にいいさ。僕が変わった頭をしているのは事実だし、いろんな人に聞かれるから慣れっこさ」

恵美「……あー、すいません」




永沢「ふんっ、しかし建材に躓いて骨折なんて、あいつも学生時代からドン臭さが抜けていないようだね。昔からそうだったからね」

恵美「…む(イラ)、たしかに転んで骨折とか抜けてるかもだけどさ、病人をそういうふうに言うものじゃなくない?」

永沢「へぇ、初対面の人をタマネギ頭呼ばわりしたのによく言うね?」

恵美「あ、アタシはそんな失礼なこと言ってないし!それにPの話と関係なくな…あっ、環…」

環「(オロオロ)…ご、ごめんね恵美ぃ…環、なんか聞いちゃいけないこと聞いちゃったみたいで…」

永沢「ほら、大神が怯えているじゃないか。君のせいだぞ?」ニタニタ

恵美(…なんなの?この人!)


ー翌日ー



恵美(結局あのあと車内の雰囲気は最悪!

翌日の朝、ホテルのロビーでみんなを待ってるんだけど)



永沢「……」

恵美「待ち合わせの時間になったのにみんな来ないよー!どうなってんの!?」

永沢「おい、所。キミがメンバーのリーダーなんだろ。いつになったら来るんだ?」

恵美「も、もうすぐくると思います…。電話を……あ、きた!」

百合子「遅れてすいませーん!」

恵美「遅いよー!朝ごはん一緒に食べたのにどうしたの?」



百合子「実は、昨晩は読んでた本が佳境で!!500ページをひと晩で読んでしまって…。朝ごはんを食べたらウトウトと……」

恵美「えー!じゃあめっちゃ寝不足じゃん!練習できる?大丈夫?」

百合子「大丈夫です!でも、遅れてしまって…!」

恵美「……まぁ、しょうがないよね。なにかトラブルに巻き込まれてなくて良かったよー!で、環は?」



環「おーーい!みんなぁ!お外は虫がいーーっぱいいて楽しかったぞぉ!」

恵美「よかった…!環、外に出てたんだね!?出かけるなら言ってよ環ぃー!心配しちゃうじゃんか〜」

環「でも、カブトムシいっぱい見れて楽しかったぞー!」

恵美「にゃはは、よかった……。さ、永沢さん。全員揃ったよ。行こ?」





永沢「……君たち、本当にアイドルをやる気があるのかい?」

全員「え?」


永沢「七尾は今日の予定は聞いていたはずなのになぜ自分の趣味を優先したんだい?

今日は現地合わせで体を休めておかないといけないのに。この遅れのせいで今日の予定が台無しさ。
まったく君はだらしないやつだな。いい迷惑だね」


百合子「え、あ……す、すいません……」

永沢「僕に謝られても君が台無しにした30分は帰ってこないのさ」


「大神もそうだ。よく勝手に外に出ようと思ったね?
君、12歳だろ?来年は中学生なのに、そんな事もわからないのかい?純粋なのも行きすぎるとただの不愉快だね」


環「ぇ……環、ひとりで出かけちゃだめだった…?」ウルウル


永沢「……君たち、とてもトップアイドルを目指しているようには見えないね」


恵美「ちょ、ちょっと!永沢さん言い過ぎだから!みんなもこの人の言うことあんまり気にしちゃだめだよ?ね?」

永沢「おい、所…」

恵美「…む、なに?」

永沢「…ふっ、いや。なにもないよ」




ーライブ会場ー



恵美(車内の雰囲気は昨日より更に悪くなっちゃってて…。居心地悪いまま、ライブ会場まで着いた)

恵美「わー!チョーすごくない!?富士山が一望できる会場だよ!」

百合子「……そうですね!空気も澄んでいて…気分が晴れやかになります!」

環「わー!すっごく広いぞ!鬼ごっこしたら楽しそう〜!」

永沢「……(ジトッ)」

環「(ビクッ)わ、わかってるよ永沢……さん!環、もう勝手に遊びに行ったりしないよぉ……」


永沢「…ふん。 
わかってると思うけど、今回は他のアイドルもステージに出るんだ。
本番前に現場で練習できる時間は限られてるんだ。
僕は練習にはクチを出すつもりはないから、せいぜい緊張感を持って練習することだね」スタスタ



恵美「あ、行っちゃった。まぁいいか。あの人がいないほうが練習捗りそうだし!」

百合子「そ、そうですね!早速始めましょう!」




ー1時間後ー


恵美(うーん、思ったよりも広いステージ。いままで練習した通りのダンス編成じゃ、ちょっと迫力不足かも)


(でも見た感じ……)


百合子「はぁ、はぁ……恵美さんっ!今わたし、うまくできていませんでしたか!?」

恵美(百合子、今のままでいっぱいいっぱいって感じだし……急なダンス構成の変更は厳しいかな?)




環「めぐみぃ見てみてー!環、今すーっごく上手に踊れたぞー!!えっへん!」

恵美(環はダンスはいいのに歌への神経が行き届いてない。でもこの荒削りで元気な感じも環の味…なのかな?)


恵美(本番前の調整する今…ふたりにそれを伝えて変に動揺させるより、今のままのほうが……)

恵美「……うん。ふたりともいい感じ、かな?」

永沢「……」ジー




ーレッスン休憩中ー




環「……ねぇねぇ永沢……さん!」

永沢「なんだい大神」

環「えっとね、そこで野球ボールみつけたんだ……です!
むこうで遊んできてもいい…ですか?」

永沢「はぁ…」

環「ご、ごめん!やっぱりだめだよね!環、これ返してくるゾっ!」

永沢「君、今は休憩中だろ?君の好きにするといいさ。
……もしも君が一人で遊ぶのがつまらないなら、キャッチボールくらいなら付き合ってもいいよ」

環「え!いいのか!永沢……さん!!」

永沢「またどこかに行かれても困るからね。あと永沢でいいさ」



百合子「…あ、恵美さん!見てください。あの2人、キャッチボールしてる!」

恵美「え?……ほんとだ!意外〜!あの人、嫌味なだけかと思ったらああいうの付き合ってあげるタイプなんだ」

百合子「わたしは永沢さん、まだちょっと怖い…かな。朝遅れたのは私のせいなんだけど」

恵美「あの人、前までアイドルのプロデューサーだったんだよね?あんなんでよく務まってたよね…」



環「おーい!百合子ぉ恵美ぃ!永沢にキャッチボールのコツ教えてあげようよー!永沢、全然ボール取れなくて面白いゾー!」

永沢「はぁはぁ…大神の球が速すぎるのさ。少し休憩するよ」

百合子「あ……じゃ、じゃあ環ちゃん!今度は私とキャッチボールしようか!」スタスタ…




恵美「…あ、百合子、行っちゃった。何もあんなに急いで行かなくてもいいのに」 

永沢「ふん、僕は全員に好かれようとは思っていないし いいさ」

恵美「にゃはは…自覚はあるんだね。でも意外!永沢さん、環に付き合ってあげるなんて」

永沢「年の離れた弟がいるからね。最近までよくああやって遊んでやっていたのさ」

恵美「え、永沢さんに弟……?」ジッ

永沢「……君、今弟も僕と同じ頭なのか気になったろ?」


恵美「うわ鋭っ(ボソ)…ちょっとだよ!ちょっと…気になっただけだし!」



永沢「ふんっ、まぁ君には実際にどうなのかは言わないけれどね。ずっと気になったまま過ごすがいいや」




永沢「…ところで所。さっきの練習見ていたよ」

恵美「……え。そ、そうなんだ。他の事務所の人から見てどうだった?」

永沢「べつに僕からどうこうは言わないよ。ダンスや歌に口を出すほど君たちのことは知らないし、君たちに興味もないからね」

恵美「……そっか」





永沢「………ふん。ただ…1つ言えることは」



永沢「……所、キミって本当に卑怯だよな?」


ー 夜 ホテル 恵美の部屋ー


P『そんなことがあったのか…』

恵美「うん!……なんかごめんね!夜なのに電話しちゃって!大丈夫だった?」

P『ああ、大丈夫だ。そうか、あいつは恵美を卑怯、と言ったんだな』

恵美「うん。結局あのあと理由も言わずに打ち合わせに行っちゃったし!
…なんかもうわけわかんなくって。ねぇP、いまからこっち来れない?やりずらくって…」


P『悪いが、こっちは抜け出せないな。
永沢は昔からああ言うやつで、大学でも友達が多いほうじゃなかったな』


恵美「ああいうひとがアイドルのプロデューサーをやってたのがちょっと信じらんないよね!
辞めちゃったのもあの性格が原因じゃないの?」



P『はは、辛辣だな。
だが朝、百合子と環に対して辛辣に返したらしいが、同じことを繰り返さないようにクギを刺したと考えることもできないか?』

恵美「それは……永沢さんにとって都合良すぎじゃない?」


P『だけど事実、環はちゃんと反省していたろうし、百合子だってもう夜ふかしはしないはずだ』


恵美「それは…まぁ、かもだけどさ……!でももうちょっと気配りとか心配とかしてもいいと思うんだけど!」


P『あいつは多分、『いいヒトに見られたい』という気がサラサラないんだろうな。
だからみんなが言えないような本音を嫌味に乗せてズバズバ言えてしまうんだろうな』

恵美「……そんなことを続けてちゃさ、永沢さんの周りから誰もいなくなっちゃわない?」



P『あいつの嫌味はいつも人を居心地悪くさせたり思いやりの欠片もないが、同時に鋭い観察眼がないと言えないんだ。
妙に堪の鋭いところもあるしな。

これがプロデューサーとして生かされたとき、案外最短でトップまで登りつめてしまうかもな』


恵美「うーん、なんとなく言いたいことはわかった気がする。
でもやっぱり仲間をあんなふうにキツく言われるのはちょっと…」


P『はは……仲間想いな恵美とは正反対だからな!』


恵美「…じゃあさ、あたしが言われた卑怯ってのも…」


P『……うん。なにか意味があると思う。

明日会ったら聞いてみるといい。あいつなりに何かを恵美に伝えたいんだろう』




ー翌朝 ホテルのレストラン ー



恵美「……おはよ!永沢さん。朝ごはん?」

永沢「おはよう。君たちの送迎のせいで朝ごはんがゆっくり食べられないからね。
こうしてホテルのレストランで割高な朝食を摂っているのさ」


恵美「にゃはは……朝から絶好調みたいだね? 向かい、座っていい?」

永沢「好きにしろよ」


恵美「ん、ありがと。永沢さんに話があって来たんだ。
昨日、アタシを『卑怯』っていったよね。もし良かったらさ、理由……聞かせてくんない?」

永沢「……ああそのことか。もちろん理由があるさ。君、七尾や大神に何か言いたいことがあるんだろう?」

恵美「…!」



永沢「見た感じ、七尾はダンス、大神は歌についてだろ?」


恵美「にゃはは……。やっぱ、気づいてたか。うん、そう。本番まであと5日。
百合子さ、ひと月かけて振り付けおぼえたんだよ!でも、ステージの実物を見て構成変えたいなんて言えなかった」

「環もそう。もっと歌に集中したら良くなるのかなって思ったけど、今の環の良さもなくなっちゃいそうで」

「ホント、考えたんだんだ。アタシ、リーダーだから」



永沢「考えた結果が、だんまりかい?」

恵美「……」

永沢「ふんっ。だから僕は君を卑怯、と言ったんだ。
言いたいことがあるのに、言わない。自分だけにしまい込んで、失敗したときの言い訳をしているんじゃないのかい?
『ほらみろ、アタシは気づいてた』ってね。これは卑怯じゃないかい?」



恵美「アタシはそんなこと思ってない!でも、仕方ないじゃん!時間だってないし、百合子と環、絶対動揺する…!
リーダーとしてライブを成功させ………ううん!みんなに笑顔でいてほしいだけ!」



永沢「あいつの言っていたとおりだね」

恵美「…え?」

永沢「僕だって何も知らずに引率を引き受けたいわけじゃない。

あいつに見舞いがてら、君たち3人のことを聞いたんだ」



恵美「…」



永沢「その中で、君のことも聞いたよ。
誰よりも仲間思いで、責任感が強くて、仲間の変化にすぐに気付ける優しい娘だといっていたよ」


永沢「でも同時に、自分のことを後回しにしたり、抱え込みすぎたりするキライがあるとも言っていたね」


恵美「…にゃはは。さすが、P……」



永沢「……まぁ、僕はべつに君たちのステージが成功しようがしまいが関係ないけどね。
でもこのステージは君がリーダーだ。なら君の好きにすればいいんじゃないかい?」

恵美「アタシの……好きに?」

永沢「あいつは、君ならやりきれると信じて、リーダーを任せたとも言っていたよ。
何かあったら責任はあいつが取る。そういう覚悟と信頼があるから、君に任せたんじゃないのかい?

なら君の思う通りにやってみればいいじゃないか」



恵美「……いいのかな?アタシもちょっとだけ…ワガママになってもいいのかな?」

永沢「それは僕よりも後ろのふたりに聞いたほうがいいんじゃないかい?」

恵美「えっ?」




百合子「あわわ…バレちゃってたよー!!環ちゃん!」

環 「百合子がモゾモゾするから顔出さなきゃ話聞けなかったんだゾ〜!」

恵美「ふたりとも!いつからそこにいたの?」



百合子「あはは……ごめんなさい!!昨日みたいにならないように、ふたりで早めに朝ご飯食べちゃおうと思って。
そしたらふたりが来てお話始めちゃって!」

環 「恵美ぃ〜!環、本番までもっともっと練習して、お歌上手になるゾー!!」泣

百合子「わ、わたしも!本番まで時間ないかもしれないけど、ギリギリまでクオリティを上げたいです!」

恵美「みんなぁ……!(グスン)
……アタシもゴメン!!ひとりで抱え込んじゃって、決めつけて、ひとりで悩んでた!!」


恵美「じゃあさ、みんなにお願い!
またアタシにリーダーやらせて欲しいんだ!今度はさ、ちゃんとリーダーできる気がするんだ!」

百合子「恵美さん…っ!(ジーン)もちろんです!ビシビシ指導お願いします!恵美リーダー!!」

環 「環も頑張るぞー!くふふぅ!めぐみリーダー!!」


恵美「恵美リーダーって……あーー!なんかめっちゃ照れる!ご飯食べよっ!そのあとはバシバシ練習だよっ!」

百合子・環「はい!恵美リーダーっ!」

恵美「も〜……まぁいいや!にゃはは!」




永沢「……」

永沢「君たち、盛り上がるのはいいけどここはホテルのレストランだぞ?」

3人「あ!」





ー本番まで残り5日ー




永沢「で、なんで僕が君たちのダンスを見てなきゃいけないのさ」



恵美「だって永沢さん、敏腕プロデューサーだったんでしょ?見る目も確かっぽいしアドバイスくらいいいじゃん!」

永沢「君たちのヘタなパフォーマンスなんて興味もないね」

恵美「へー!どこがヘタなの?」


永沢「そのパートだと背の低い大神が所に隠れるんだ。

運動力のある大神を前に出してアグレッシブな印象をだして、七尾を……はっ」



恵美・百合子・環「おおー!」

永沢「……ふ、ふんっ!/// もう勝手にしろよ!」

恵美「にゃはは!じゃあ勝手に色々聞いちゃうから、答えてよねっ!」

永沢「……ふんっ!」





ー本番まで残り4日ー


百合子「永沢さん!お借りした本、すっごく面白かったです!」

永沢「え?所に言われてオススメの本を君に渡したけど、七尾、君はこの本の良さがわかるのかい?」


百合子「はい!永沢さんがお笑いが好きだったのはすごく意外でしたが…。
この本のお笑いにかけるたけしさんたちツービートの情熱……しかと受け取りました!」


永沢「七尾……君は話がわかるやつだったのか…」ジーン



百合子「で、でも永沢さん!本に挟まってたこのメモ…。

このペンネームはどうかと、思いました!
じゃあまた明日っ!!///」



タタタ…



永沢「え、メモ?」ハラリ

永沢「うっ!!僕が投稿してるラジオのギャグ投稿コーナーのネタのメモ書きが……!」

永沢「ペンネームは」

永沢「キンタマネギ夫……」

永沢「……(白目)」チーーーン





ー本番まで残り3日ー



環「ワン・ツー・スリー!ここで…キメッ!」クルッ

環「どう?永沢!環、すっごく上手になったと思わない?」

永沢「あぁ、本を読んでて見てなかったよ」

環「むー!永沢ひどいゾー!なに読んでるの?」

永沢「これさ」ペラッ

環「お料理の本?永沢、お料理できるのか!?スゴイぞ!」

永沢「…君はいちいちバカみたいにうるさいね」イラッ

環「えへ!環、いつも元気いっぱいだぞー!えっへん!」

永沢「君、本当にバカなんじゃないのかい?」ボソッ



恵美「えー!なになに!永沢さん料理作るの!?いっがーい!何が得意なの?」

永沢「玉ねぎたっぷりのビーフシチューさ」



恵美・百合子「玉ねぎの……シチュー……」チラッ

環「あははは!永沢が玉ねぎのお料理作るなんて、面白いゾー!」

恵美「ぷっ!環、言っちゃったよ!にゃはは!」

百合子「あはは………はっ!」




永沢「……」

百合子「ご、ごめんなさい!永沢さん!」


永沢「ふんっ!人のことを笑う前に自分たちのパフォーマンスで笑われないようにしたほうがいいんじゃないのかい?」

恵美「はいはい!じゃ、ふたりとも、もっかいいくよー!」



ー本番まで残り2日ー



恵美「でね、そこで百合子が永沢さんに言ったらしいの!」

P『はは!そんなことが。あいつらしいな』

P『最初はどうなるかと思ったが、なんだかんだうまく行ってるみたいだな』

恵美「まぁ…ね!ダンスの修正もすごく順調!案外、Pよりアドバイスは的確かも〜?」

P『なんだとっ!……ってて、いてて』

恵美「あー、ごめんごめん!」

P「もうすぐ退院なのに、変に力ませないでくれよ!しかし、敏腕プロデューサーなのは本当らしいな」

恵美「うん。でも、それだとなお疑問があるよね。なんで、プロデュース業辞めちゃったんだろ?」

P『さぁな。まぁ、余計なことは考えず、今はライブのことを考えてほしい』

恵美「分かってる!絶対いいライブにするから!」

P『ああ、頼んだぞ!恵美リーダー!』





P『そうそう。今更だけど、1つだけ気をつけてほしいことがあるんだ』

恵美「…?」

P『永沢には…』



ー本番まであと1日ー




恵美「百合子、ここでターン決めるよ!」

百合子「はいっ!」

恵美「環も!ブレスは短く、でも歌声は乱れない!」

環「うん!」

恵美「最後に3人で……キメっ!」ピシッ!




恵美「はぁ…はぁ……ど、どうかな?永沢さん」

永沢「……ヒデキには到底及ばないけど、まぁこんなものじゃないかい?」

恵美「それって、合格ってこと?」

百合子「よかった!ありがとうございました!」

環「くふふぅー!永沢、素直じゃないゾー!」

永沢「……ふんっ!」

百合子「あ、でも中盤でちょっと不安な部分があるので、詰めて練習してきます!」

環「あ、環も付き合うゾー!」トタトタ…




恵美「…ふたりとも行っちゃったね?永沢さん」

永沢「君も行けよ。本が読めないじゃないか」



恵美「うん…でもさ、1個だけ聞きたいこと、あるんだよね」

恵美「なんでプロデュース業、辞めたのかなって…」




永沢「君にそんなことを聞かれるほど仲良くなった覚えはないけど?」

恵美「た、たしかにそうだけどさ。なんか、気になって…」

永沢「まぁ、別に隠してるわけでもないさ」




永沢「僕は自分の喫茶店を持ちたいと思ってるのさ。

それの開店資金のメドが立ったから、辞めた。ただそれだけさ」



恵美「ええ!?永沢さんが……お店!?うっわ〜…」


永沢「…悪いかい?」


恵美「いや、そうじゃないけどさ…せ、接客とか出来るのかなって…」




永沢「できるさ。ほら、笑顔」ニタァ…

恵美「そ、そっかぁ…」




永沢「大学の就職先で、マシなところが地元の弱小プロダクションしかなかったのさ。
それがやりたくもないプロデュース業をすることになった訳さ」

恵美「でも聞いたよ!地方アイドルだった娘達を全国デビューさせたって!」

永沢「…とはいえ仕事は真面目にやるさ。
僕は僕の目的のためにお金を稼ぐ必要があって、それがたまたまアイドルのプロデュース業だった、それだけさ」



永沢「今は料理研究と、出店場所探しをしていたところさ。

この引率も、ただの実入りのいい短期バイトさ。
それも、拘束時間が長くて割に合わなくなったけれどね」





恵美「……じゃあさ、アタシ達が永沢さんの、最後のプロデュースアイドルってことだね♪」

永沢「僕は君たちなんか……」

恵美「あー、いいからいいから!

明日、バシッとライブ決めて、最高の引退の花道作ったげるから!
最後までちゃんと“引率”してね?永沢さん♪」


ー本番 終了後 ー



恵美「あー打ち上げの料理美味しかったー!永沢さんお疲れー!」

百合子「おつかれさまです!」

環「おつかれだゾー!」

永沢「なんだ。もう打ち上げパーティーは終わりかい?僕は車で待ってるから飲み食いしてこいよ」

恵美「……それより、永沢さん聞いた!?アタシたちの出番のときの歓声!これは大成功っしょー!」




永沢「君たちに興味がないと何度もいってるだろ」

環「えっ!永沢、ライブ見てくれなかったのか?」シュン…

永沢「……す、少しだけ見えた気がするな」

恵美「へー、どうだった?」

永沢「……まぁ、あんなもんじゃないかい?」

恵美「にゃはは、ありがと♪」

永沢「ふんっ」




百合子「あっ、そういえばビンゴ大会の景品、恵美さん何があたったんですか?」

恵美「まだ中見てなかったね。…あっ♪これ話題のコスメセットじゃん!やった!」

百合子「私は静岡のお茶葉です!地域色ですねー」

環「環はねー!!」ゴソゴソ…






環「………あっ!みてみて!花火セットだゾ〜!!」




恵美「あ」

永沢「………は?」


環「ロケット花火もあるゾー!環、これ10本くらい重ねてやりたーい!全部ぜ~んぶ、燃やし尽くすんだー♪」


永沢「燃やし尽くす……」


百合子「わぁ、素敵ですね!これ、みんなでやりましょうよ!

ひと夏の仲間たちとの思い出…ロマンティックですね…」キラキラ




永沢「…………花火が?」


「……火が、思い出?」





恵美「え、えーーっと。環?それは事務所に持ち帰ってやろ?ね?」



環「やだやだ!これは環が当てたんだ!ねぇ永沢!永沢も今日花火やりたいよね?」




永沢「……」

永沢「別に構いやしないさ」



恵美(あれ?聞いてた話と違う…?)


永沢「でもその代わり……」



ー 浜辺 ー


ジジジジジ……


環「わーい!花火キレイだゾー!」シュコー…シュコー…

百合子「たしかに、キレイなんですが…」シュコー…シュコー…

百合子「なんでわざわざ人里離れた浜辺で、しかも溶接用の前掛けとマスクをしながらなんですか!」フシューーー!



永沢「花火をやる条件は、僕の指定した場所と格好でやるって話だろ」

百合子「それにしても業務用の消化器とか、過剰装備です!夜の真っ暗な浜辺で花火なんて…」

環「環は面白いぞー!あははは〜!」シュコー…シュコー…



永沢「火は怖いんだぞ!全部、全部燃えちゃうんだぞっ!

写真も、家も、作りかけのプラモデルも、全部全部……」ブツブツ…


恵美「防災……特に火に関しての話題はNGってPが言ってたけどそのとおりなんだね。そんなんでお店できるの?」

永沢「調理はIHコンロさ。店中にスプリンクラー付けて、自前で消火水槽と消防ポンプも入れるんだ。
僕の店は絶対に燃えさせないぞ……」

恵美「す、すごい目つき。何があったかは聞かないけどさ…」





永沢「火事を憎め……みんなみんな火事が悪いんだ…」ブツブツ

百合子「……こんなの全然ロマンチックじゃない…マスク息苦しい…」グスン

環「あははは~!10本重ねだゾ〜!あははは~!」ジジジジ…





恵美「なにこれ……」



ー翌日ー

新幹線 改札前


恵美「さ、ライブの遠征も終わりだね♪」

百合子「なんだかほんっっとうに色々なことがありました」

環「環はすっごく楽しかったゾー!」




恵美「永沢さん。一週間引率ありがとね!」

永沢「これで朝早く起きなくて済むから清々するね」



恵美「……アタシさ、永沢さんみたいなジコチューでイヤミな人、はじめて見た!」

永沢「僕だって、君のようにご機嫌取りばかりする人間ははじめてさ」



恵美「でもさ。永沢さんがいなかったらあそこまでダンス、仕上げられなかった。なんだかんだ、アドバイスも的確だしさ」

「それに、思いやるだけがリーダーじゃないって。
たまにはジコチューになってさ、自分の意見をハッキリ言うことことも大事なんだなって。
……なんかわかった気がするしさ!」



永沢「……」

百合子「恵美さん。もう時間…」



恵美「うん。じゃあ元気でね。永沢さ……ううん、違うね」




恵美「永沢プロデューサーっ!」






永沢「所…」

恵美「わーっ!イヤミが飛んでくる前に逃げるよっ!ふたりとも!」タタタッ

百合子「あっ、待ってください!永沢さんありがとうございました!」

環「永沢〜!また花火やろうね!今度はうーーーんとおおきな打ち上げ花火!」



恵美「あ、そだ!お店出来たら、教えてよね〜!」手ブンブン






永沢「……ふん」


ー数カ月後ー


永沢の店 オープン初日



永沢「やっとオープンだ。僕の店、『たまねぎおじさんの店』だ!」


永沢「フラワースタンドは…『清水市立入江小学校 OB一同』
『さくらプロダクション B.Bクィーンズ一同』
『765プロダクション一同』か」



永沢「あいつらもマメなことだね」
永沢「ん?765プロのフラスタにメッセージカードが」




『開店おめでとー♪♪
これからは、笑顔と思いやりを大切にね♪
いつか遊びに行くから、それまでお店続けててよね☆


ヒキョー者の所恵美より♡』



永沢「あいつ……ふん!」

永沢「今に見てろ…フランチャイズ展開も視野に入れた僕の経営手腕を見せてやる」ニタァ



カランカラーン



永沢「ハッ、いらっしゃいませぇ」ニヤァ




……



永沢「お待たせいたしました。当店自慢の玉ねぎたっぷりビーフシチューになります」ニヤァ



母親「開店最初のお客が私達ってなんだか悪いわねぇ…」

少女「わーおいしそー!いただきまーす!」


パクッ


永沢「い、いかがですか?」ジーッ


母親「……え、えぇ。その……とっても…個性的なお味で…」

永沢「それは良かったぁ」パァァァ





少女「…」

少女「……これ、まずーい」


永沢「な…」ガーーーーーーーーーン



少女「これキライ。もういらないっ!」

母親「こ、こら!失礼でしょ!?ど、どうもすいませ~ん…ほら、まだたくさん残ってるでしょ!」

少女「いやだ!だってまずいもん!こんなの食べたくない!……うわあああーん!」号泣




他の客A「おい、泣いてるぞ」

他の客B「泣くほどまずいのかよ…おれビーフシチュー頼んじゃったよ…」

他の客C「オススメって書いてあったのに…この店ハズレかなぁ」




永沢「は、ははは………ありがとう…ございます…」白目






ナレーション「オープン初日から散々な思いをすることになった永沢」

ナレーション「噂が噂を呼び、ほどなくして経営不振に直面することになる永沢の店」

ナレーション「はたして、『たまねぎおじさんの店』の明日はどっちだ」





永沢「こんなことならまだプロデュース業をしていたほうが良かったかもしれない…」


永沢「僕って……いったい……」




チーーーーーーーン






ありがとうございました。
ちびまる子ちゃんの玉ねぎ頭のアイツが好きだったので
なんとかミリオンライブにねじ込めないかやってみました。
なるべく原作の設定を活かして一本こしらえてみました。

皆様のお暇つぶしになれれば、幸いです。



また、私の過去作のまとめです。
お暇でしたら、ぜひ。
https://www.pixiv.net/member.php?id=4208213

http://i.imgur.com/xwS0DE0.png
あの永沢がプロデュース業してるの意外思ったらそういう感じか
乙です

>>1
所恵美(16) Vi/Fa
http://i.imgur.com/NbxCxm1.png
http://i.imgur.com/qABztJ7.jpg

七尾百合子(15) Vi/Pr
http://i.imgur.com/8W3mmWM.png
http://i.imgur.com/X6C3jqq.jpg

大神環(12) Da/An
http://i.imgur.com/Ca7e9Co.jpg
http://i.imgur.com/QQR3qaT.jpg


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