【デレマス】ありす「A」 (29)
私は、私が嫌いだった。
私に付けられた名前が嫌いだった。
私を名付けた親が嫌いだった。
私の名前をからかうクラスメイトが嫌いだった。
それを、そんなことないよと諭す先生も嫌いだった。
私は、すべてが嫌いだった。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1589378422
私は、周りが憎かった。
正論を言うと、話を逸らす先生が憎かった。
正しいことをすると、それをからかうクラスメイトが憎かった。
私を孤独にさせる、親の仕事が憎かった。
私より仕事が大事な、親が憎かった。
私は、世界が憎かった。
誰からも相手にされない。
誰からも必要とされない。
誰からも愛されない。
私は、何のために生まれたのだろう。
…強くなりたい。
この憎い世界を、
この嫌いな世界を、
見返してやる。
その強さが欲しい。
私の憎しみ。
私の悲しみ。
誰にも理解できない、この気持ちを強さにして。
私の存在を、世界中に示してみせる。
???????????????
ありす「…以上です」
P「………」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ありす「…以上です」
P「………」
ありす「先日、『A』という曲のミュージックビデオを撮影するって言ってたじゃないですか」
P「………」
ありす「ですので、撮影の際に感情移入できるよう、曲を聴いて感じたことをポエムにしました」
P「………」
ありす「どうでしょうか?感想を頂きたいんですが」
P 「………」
ありす「………」
P 「………」
P「…なんでポエム?」
ありす「曲を聴いてたら、感情が抑えきれなくなって、文字にして書いちゃいました。音楽に対しては、真剣に向き合いたいですから」
P「…そうか。なんか、ありすと初めて会った時のことを思い出す内容だな」
ありす「そうですね。あの時は、本当に子どもだったと思います」
P「……その感情を、撮影のときに思いっきりぶつけてくれ」
ありす「はい。言われなくても、ちゃんとやって見せますよ」
P「その意気よし。じゃあ、もう遅いから車で駅まで送るよ。支度して待っててくれ」
ありす「わかりました。ありがとうございます、Pさん」
ガチャ バタン
P「………」
ちひろ「お疲れ様です、プロデューサーさん」
P「あ、おかえりなさいちひろさん」
ちひろ「…なんか、思い詰めたような顔してますよ?大丈夫ですか?」
P「ええ、ちょっとありすのことで…」
ちひろ「ありすちゃんですか。確か、MV撮影があるんですよね?なにか、トラブルがあったんですか?」
P「いえ、トラブルとかではないんです。ただ、もしかしたら、ありすに余計な負担をかけたかもしれないと思って…」
ちひろ「負担、ですか?」
P「この仕事の話が来て、曲を聴いた瞬間、直感でありすが適任だと思ったんです。題名も『A』ですし。可愛さの中にあるダーク感を自然に出せるのは、ありすしかいないなと思いまして」
ちひろ「そうですね。それは、事務所のみんなが納得してますね」
P「ただ、ありすには本当に暗い過去があります。なるべく、それに触れないようにと思ったんですけどね」
P「あいつ、自分に求められているものが分かってたんですよ。嫌なはずの過去とか全部背負ってまで、曲に対する想いを言ってくれて」
ちひろ「……」
P「…ありすは、大人に憧れてる節があって、実際に大人っぽいところもあるじゃないですか。だから、大丈夫だろうと勝手に思ってました」
P「でも、あいつはまだ子どもだった。それ今さらを思い出しちゃいまして。
嫌なこと思い出させてまで、こんな仕事させるつもりじゃなかったのに…」
ちひろ「プロデューサーさん」
ちひろ「確かにありすちゃんは、プロデューサーさんが思っているよりも、そんなに強い子じゃありません」
P「はい…」
ちひろ「でも、彼女には信頼できるプロデューサーがいます。でなければ、嫌な思い出を自分から話すだなんて、できませんよ」
P「…!」
ちひろ「だから、ちゃんとありすちゃんを支えてあげてください。それができるのは、プロデューサーさんだけなんですから」
P「…そうですね。ありがとうございます。少し気が楽になりました」
ちひろ「どういたしまして。さて、そろそろ定時ですから、帰り支度しないと」
P「あ、やべ、ありす待たせっぱなしだった」
ちひろ「何やってるんですか!?戸締まりはやっておきますから、早く行ってください!」
P「すいません!お先です!」バターン
P「ありすを支える、か…」
~車内~
ありす「」ムスー
P「…なあ、ありす」
ありす「何ですか」ムスー
P「もし俺が、昔の出会った頃のありすに戻って欲しい、って言ったらどうする?」
ありす「絶対嫌です。名前で駄々こねたりとか、あんな子どもっぽい考え方してた頃には戻りたくないです」
P「まあ、そうだろうな。言っといて何だけど、俺も戻りたくない」
ありす「えぇ…何で聞いたんですか」
P「あの頃は、俺も精神がガキだったからな。ありすがいない裏で、何度かキレそうになった事がある。なんで小学生に生意気言われなきゃいけないんだ、とか思ったことも正直あった」
ありす「それ、よくも私に対して直接言えましたね」
P「今だから言えるんだよ。当時は大人のメンツ保たなきゃとか思ってたけどさ、今思えば、俺は本当に子どもだった」
ありす「……」
P「ありすはよく、大人びてるけど子どもっぽいっていわれてるけどさ。多分、俺もありすと同じで、まだまだ子どもなんだと思う」
ありす「いや、そんな事は」
P「ま、ありすの場合は褒め言葉で言われることが多いけどな。俺の場合、見た目は大人で頭脳は子ども、ただの悪口!」
ありす「ひとりで何言ってるんですか?」
P「辛辣」
P「ま、要はさ、俺はありすに対して、何か悩みがあったら遠慮なく言ってくれーって言ってるけどさ」
P「そういう一方的なのはナシにする。俺も、悩みがあったらありすに相談するから」
ありす「…Pさんはほんと、まだまだ子どもですね」
P「えっ」
ありす「そんな一方的に相談するだなんて言って、私に寄り添ったつもりですか?」
P「うーん、ダメかあ…」
ありす「ほんと、Pさんはまだまだですね。仕方がないので、私の方から寄り添ってあげます」
P「…ははっ、これじゃあ、どっちが支えられてるのかわかんないな」
ありす「ふふっ、ほんとですね」
ありす「私をPさんと対等に見てくれる、その気持ちは嬉しいです」
ありす「でも、大丈夫です。私は音楽のためなら、何でも受け入れて、何にだって立ち向かって見せます」
ありす「だからPさんは、私の勇姿を隣でちゃんと見ていてください。アイドル橘ありすの、プロデューサーとして」
ーおわりー
参考文献
A / D.J.Amuro
https://youtu.be/JMV2qLTX1_g
この曲を聴いてたら、
ありすちゃんしか思い浮かばなくなったので、
駄文にしました。
強くてかわいいありすちゃんが、僕は好きです。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません