マリー「ここではあなたの学校より、人生がもうちょっと複雑なの」 (97)

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・



安藤「・・・」

押田「・・・」


押田「・・・・・・」

安藤「・・・っ」

 ガコンッ

 ソミュア<ガロロロォン・・・!


 ソミュア<ギャラギャラギャラ!

押田「・・・公道はずいぶん混んでるな」

安藤「どけってんだ。ソミュアのお通りだぞ」ガコッ

 ソミュア<ギャラギャラギャラ!


 公用車<プップー! ププーッ!

安藤「お出ましだな。逃げ切れるかどうか100ユーロ賭けよう」

押田「・・・」

安藤「どうする?」

押田「乗った」

 ソミュア<ブオォン!ギャラララララ!

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1594984746

押田「絶好調だな」

安藤「ああ」

 ソミュア<ギャラララララ!

 公用車<ブオオォ――・・・


安藤「ハッハッハ!どうだ撒いてやったぞ!」

 公用車B<ブオン!

安藤「!?」

 ソミュア<キキィーッ! ギギギ・・・!


安藤「っ・・・くそっ」

押田「言うこと無しだな」


 公用車B<ガチャ

文科省役人「戦車から降りたまえ!キーを手に持って降りるんだ!」


安藤「・・・うまく切り抜けたら100ユーロ」

押田「キミが負けるよ」

安藤「じゃあ200だ」

押田「乗った」

 ソミュア<ガパッ

安藤「話を聞いてください」

役人「言い訳をするんじゃない。両手を頭の上に置きたまえ」

 公用車A<ブロロロ・・・ ガチャ

戦車道連盟会長「やれやれ・・・会合の帰りに面倒な現場に出くわしたもんじゃな」ドッコイセ

安藤「待ってください。これにはワケが――」

役人「口を閉じるんだ。もう一人車内にいるだろう。早く出てきなさい。このメガネには熱探知機能もあるんだ」

連盟会長「公道であんなスピードを出してはいかんだろう」

安藤「だから話を――」

役人「ソミュアの中のもう一人!いい加減にしないと廃校にするぞ!早く降りてくるんだ!」

安藤「降りられないんだよ!彼女は重体なんだ!」

役人「!?・・・何を言っている」

安藤「妊娠してるんだよ!8ヶ月目なんだ!見てみろ!」

連盟会長「なっ・・・まさか」バッ

 ソミュア<ノゾキコミッ

 押田「――うう・・・ハァ、ハァ・・・ううぅ・・・」

連盟会長「こりゃ大変だ!お腹が膨らんだ生徒がおるぞ!」

安藤「ホラみろ!」

役人「!・・・な・・・そんな」

安藤「なんだってんだ!遊びで戦車走らせてたと思ったのか!?病院に連れてくとこだったんだよ!破水してるんだ!こんなトコでグズグズしてたらどんどん危なくなる!」

 押田「うぅ・・・お腹痛い・・・!」

連盟会長「こりゃまずそうだ。辻くん、君もその目で確かめたまえ」

 ソミュア<ノゾキコミッ

役人「・・・ほ、本当だ。どうしましょう・・・?」

安藤「よーしいいだろう、考えてくれ。ゆっくりな。ただしダンナにはアンタから説明してくれよ。もし母子に何かあったらアンタのせいだ。ホラ考えろ!」

役人「・・・!」

 押田「ううう!痛いイタタタタタタ!アタタタタタ!」グウゥ~!

安藤「あァ!?考えろ考えろ!」

 押田「ああ~~~!おなかいたいよぉ~~~!」ジタバタジタバタ

安藤「もう片足出てるかもしれないぞ!」


役人「~~~っ!・・・行け!急いだ方がいい!」

 安藤「・・・ヘッ」

役人「君、どこに向かってたんだ?」

安藤「救急外来」

役人「では我々が先導しよう。未来ある子供達のためだ。会長の車は後方を」

連盟会長「う、うむ!がんばるんだぞ君達!」

 公用車A<バタム 公用車B<バタム

安藤「・・・・・・ふぅ、うまくいったな」

押田「にっ、にっ、妊娠だと!?誰が妊婦さんだ!」ポカポカ

安藤「ハッハハハ、そう膨れるな。名演だったぞ」ハハハ

押田「私が妊娠なんてっ!そもそも私は男性とふれあったことすら――」

安藤「わざわざクッションを服に入れて、オスカー女優も真っ青だな」ハハハ

押田「そ、それよりも!それよりもだっ!今は一刻も早くマリー様のもとへ行かねばならんのだ!早く出発しろ!」

安藤「いい大人が二人してダマされてたな。200ユーロ儲かった」フフ

押田「馬鹿言うな!賭け金が高すぎる!」

安藤「ムードを変えてお祝いだ。ソミュアにコンポを積んでて正解だったな」

 CDコンポ<ガチャッ ♪~【EARTH WIND & FIRE:SEPTEMBER】

押田「いいか!私のおかげで助かったんだぞ!そこんとこ忘れるな!」

安藤「なあ押田クン、『先導しよう。未来ある子供達のためだ』だとさ。この先我々がどうなる見物だな」ハハハ

押田「まったく・・・野蛮人はこれだから」

安藤「待ってろよマリー、今迎えに行くからなー!」オーッ!


・・
・・・
・・・・
・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



――これは、BC自由学園が『チーム』になるまでを描いた物語である・・・――


http://uploader.sakura.ne.jp/src/up174177.jpg

 ・・・・・一年前《冬》・・・・・・

 ――BC自由学園――


 \ザワザワ・・・/ \ガヤガヤ・・・/ \ワイワイ・・・/

安藤(一年生)「・・・」


 「新体制は誰が隊長だろう」ザワザワ

    「私達もいよいよ2年生かー」ワイワイ

  「3年いなくてもやってけるかな~」ガヤガヤ


 <カツ・・・カツ・・・カツ・・・

アズミ「整列」

 \!/

アズミ「これより本年度最後の定例会議を始めます」

 安藤(3年のアズミ隊長・・・大学も決まってさぞご満悦かと思ったが、まだ隊長らしい面構えだな。さすがだ)

アズミ「内部生、外部生共に揃っているわね。諸君は互いにいがみ合い、練習すら別々で行うほど仲が悪いけど、今は我慢してちょうだい」

 内部生「・・・」 外部生「・・・」

アズミ「我々3年生はチームを引退し、明日からチームは新体制に移るわ。頑張ってちょうだい」

 安藤(・・・新体制)

アズミ「これより新隊長の任命式を行う」

 安藤(・・・どーせ内部生の2年が隊長だろ・・・実力からみてアスパラガス先輩か・・・)

アズミ「出ていらっしゃい」

 <ザッ


アズミ「新隊長はマリーよ」

マリー「よろしく~」ヒラヒラ

 \ッ・・・!?/ \ドヨッ・・・/ \ザワ・・・/

 安藤(!?・・・あいつは確か私と同じ一年の・・・!)


アスパラガス「お待ちくださいアズミ様!その子はまだ一年生ザマスよ!」

アズミ「これはもう決定事項よ」

アスパラガス「で、ですが上級生を差し置いて一年が新隊長など・・・実力的にも学年的にも次期隊長はこの私が相応しいザマス!」

アズミ「アスパラガス、あなたも確かに実力はあるわ。でも・・・あなたには無い物をマリーは持っている」

アスパラガス「ッ・・・!」


 \ザワザワ・・・/ \ドヨドヨ・・・/

「チェッ・・・1年が隊長に・・・?」
                「あんな子がボスなんて・・・」
      「こんなのおかしいわ・・・」

アズミ「マリー、あとは任せたわよ」ポン

マリー「は~い」

 安藤(どういうことだ・・・アズミさんは何を・・・)

マリー「ん~っと、そうねぇ。とりあえず隊長就任のスピーチでもしましょうかしら」

 安藤(なんかトボけた奴だな・・・)

マリー「新隊長のマリーよ。私はこの学校に革命を起こすわ」


 「!?」ドヨッ・・・

 「革命・・・?」ヒソヒソ・・・

 「何言ってんだ?」ザワザワ・・・

マリー「BC自由学園の有史以来続く内戦を終わらせる。内部生と外部生を取りまとめて、この学園を統一するの」

 安藤「!」

マリー「あなた達を一つにまとめて、と~っても強い戦車道チームにしてみせるわ。それが私の野望よ」

 マリー「そのためには色々と新しい政策を考えなくっちゃならないけどね」フフッ

 安藤(・・・)

マリー「まずは、両陣営から私を補佐する『副隊長』を立てるわ。副官になりたいという外部生の子は、明日の正午、第一会議室に来てちょうだい」


マリー「じゃ、待ってるから。よろしくね」ニコッ


安藤(・・・なんなんだアイツは・・・)

 ――・・・翌日


押田「誰も来ませんね」

マリー「焦らないの。甘いものは寝て待てと言うじゃない」ケーキ パクッ

押田「しかしマリー様、本当に外部生の野蛮人を副官にされるおつもりで?」

マリー「そうよ」モグモグ

押田「私を副隊長に選んでくださったことには感謝しています。しかし外部生をお側に置くなど――」

 扉<ガチャ

押田「!」


安藤「・・・」ズカズカズカ

押田「っ・・・」

 机<バン!

安藤「サインしてくれ」

押田「・・・・・・す、座りたまえ」

安藤「この書類にサインしてくれたらすぐ帰る」

押田「っ・・・え、えーと・・・・・・君は外部生だね?副隊長の立候補者かい?」

安藤「副隊長?あれ冗談で言っただけだろ?」

押田「エ・・・」

安藤「『内部生と外部生を平等にするため、副官を両陣営から1人ずつ選抜』・・・誰がそんな話を真に受ける」

押田「なっ・・・」

安藤「形式上我々にもポストを与えて取り繕うって魂胆がミエミエだ」

押田「貴様っ・・・!」

マリー「あら、副官希望じゃないならその書類は何?」モグモグ

安藤「我々の独立認可の書類だ。今まで内部生と外部生は別々に練習をし、公式試合のみ合同でやってきた。当然、連携もバラバラでマトモなチームじゃなかった」

 安藤「今後は練習だけでなく試合も別々で挑みたい。BC自由学園は外部生チームと内部生チームの二部構成でやっていく。それを認める契約書だ」

マリー「なるほどね。外部生を代表してあなたが直談判に来たわけ」モグモグ

押田「・・・」

安藤「ほとんどの上級生はアスパラガス先輩を筆頭に『強襲戦車競技(タンカスロン)』に完全移行し、チームを離れた」

マリー「存じてるわ」

安藤「我々外部生はもとより、わずかに残った内部生もアンタに従う気はないんじゃないか?」

押田「言わせておけば・・・!」

マリー「あなた、高校生になって何か目標はある?」ゴクン

安藤「そりゃあるさ。戦車道で名を上げるのさ」

押田「フン・・・」

マリー「本気?」

安藤「そりゃそうさ。全国大会で勝てるような――」

マリー「このBC自由学園の一員として、本気で戦車道で武勲を上げる気はある?」

安藤「!・・・」


安藤「・・・ある」

押田「・・・」

マリー「ふふっ」


安藤「――それで、サインするのかしないのか。ハッキリしてくれ」

マリー「明朝10時に内部生棟3Fに来なさい。そこでサインした書類を渡すわ」

安藤「・・・わかった。じゃあ、今日は帰らせてもらうよ」

押田「・・・」

安藤「ついでにこのイチゴもらってくな」ヒョイ パクッ

押田「あっ!こ、こいつ!マリー様のショートケーキのイチゴを・・・!」

安藤「そんじゃあ、明日受け取りに行くからな」ガチャ バタン

押田「なっ、なんてヤツだ・・・」

マリー「・・・」





 ――外部生寮

安藤「よお」

外部生A「お、安藤!どうだった?」

安藤「明日サインするから取りに来いってさ」

外部生A「意外とすんなりいったんだね」

外部生B「あんどーさん、マックのポテト食います?」モグモグ

安藤「ああ、私はいいよ。後で食べるから」

外部生A「おい、後で食べるってよ。残しといてやれよ」

 外部生C「聞いた?アスパラガスさん、タンカスロン初戦で白星だってさ」

 外部生D「さすがだなぁ。私、次の隊長はあの人だと思ってたよ」

 外部生E「まさか一年のあんなデコっぱちが隊長なんてな~」

 外部生F「内部生の二年で残ってる人も少ないらしいっしょ」

 外部生G「そりゃあそーだよね~」


外部生A「なあ、安藤。私達の独立が認められたらアンタがリーダーやってくれるんだろ?」

安藤「私が?」

外部生A「二年生はみーんなアスパラガスさんについて行っちまったし、残ってるメンツで一番強いのはアンタさ。誰も依存はないよ」

安藤「私が隊長か・・・」





 ――翌日

 \キラビヤカ~/

 《内部生棟》

安藤「・・・ったく、豪勢な校舎だこって」

 扉<ギイィィ~・・・

砂部「おはようございます。ようこそいらっしゃいました。砂部と申します」

安藤(さすが内部生のエリート、美人さんだな)

砂部「こちらへ。ご案内いたします」


 ――・・・

砂部「こちらが図書庫です。貸し出しのカードは不要ですが、借りた本は一週間以内に返却してください」

 砂部「食堂は内部生は無料ですが、安藤さんも特別に内部生と同じ待遇を受けることができます」

  砂部「夜は22時に消灯となっており、以降は公共スペースでの行動は原則禁止です」

安藤「・・・あのさ、内装もキレイだし立派な建物だと思うけど、ここに部屋は借りないよ。金もないしさ」

砂部「棟内を案内しろとのマリー様のご指示です。ついてきてください」

安藤「・・・なんだってんだ?」


砂部「こちらが安藤様専用の部屋となります」ガチャ

安藤「・・・!」

 ゴウカ~\,゜.:。+゜,゜.:。+゜,゜.:。+゜/リッパ~

砂部「こちらの扉が化粧室、こちらはお手洗いで、こちらは浴室です」

安藤「・・・エスカレーター組は皆、こんな立派な個室に住んでるのか?」

砂部「そうですよ。さ、案内はここまでです。マリー様の下へご案内いたしますね」

 ――・・・

マリー「いらっしゃい。待ってたわ」

安藤「・・・」チラ

 押田「・・・」ニラミツケ~

マリー「あの書類サインしておいたから、そこに置いてるわ」モンブラン モグモグ

安藤「どーも」カサッ

マリー「・・・聞かせてちょうだい。どんな気分かしら?」

安藤「・・・なに?」

マリー「周囲の期待を一身に背負うのは気分が良い?それとも重荷?」

安藤「そっちこそどうなんだ」

マリー「自分は有能な人間だと証明したい?責任を持って、人を率いる旗手になれると」

安藤「どういうことだ」


マリー「あなたに一ヶ月の試用期間を与えるわ。押田と一緒に私の右腕として仕えなさい。住み込みでね。合格すればあなたは我がチームの副隊長よ」

押田「!」

安藤「!・・・なんだって・・・それは・・・」

マリー「一ヶ月後、まだ独立したいというのならその書類を持ち帰りなさい。独立を認めるわ」

押田「マ、マリー様!?なにを――」

マリー「よろしいかしら?」

安藤「・・・本気なのか?あんたの言ってた野望ってのは・・・本気で叶えるつもりなのか?」

マリー「あら、私が意味の無い嘘を言うと思って?」

安藤「・・・」


安藤「・・・・・・わかった」

マリー「ふふっ」ニコッ

押田「んなッ・・・!」ガ~ン

マリー「それじゃあ荷物を持ってきなさい。あなたには明日から私の身の回りの世話を全部してもらうからわ」

安藤「!?・・・身の回りって・・・」

マリー「わかりやすく言うと私のお世話係になってもらうの」

安藤「メイドをやれってのか!?私が!?」

マリー「私の右腕なんだからそれくらいしてもらわないと。安心してちょうだい、なにもメイド服を着せようってわけじゃないわ」

安藤「い、いやそういうことじゃなくて・・・」

マリー「よろしくね♪」ニコッ

安藤「・・・・・・わかったよ。やればいいんだろうやれば」

今回はここまでで
書き忘れておりましたが、このSSでは公式で判明していない範囲でキャラの学年と年齢を都合のいいように設定されています。ご了承ください

あ、書き忘れてましたが>>6のイラストは>>1本人が描いたのではなく知人に描いてもらった作品です





 ――・・・翌朝

安藤「Zzz・・・Zzz・・・」

 扉<ドンドンドン 

安藤「んぁ・・・」ムニャ

 扉<ドンドンドン

 祖父江「起きてください。マリー様が起床されますよ」

安藤「・・・・・・んん・・・メイドの朝は早い・・・」ムクリ


 ――・・・

祖父江「朝はマリー様のストレッチのお手伝いをするのが日々の日課です。心臓に遠い位置から順にゆっくりほぐして・・・」グイ

マリー「う~」ググ~

安藤「そんなこともやんなきゃいけないの?」

祖父江「マリー様のお世話をすることは光栄なことですよ」

安藤「なあ祖父江さん、アンタも隊長になったばかりのヤツに従うなんてイヤじゃないのかい?」

祖父江「あなたもいずれマリー様にお仕えすることの意義がわかりますよ」

安藤「・・・洗脳でもされるんじゃないだろうな」

マリー「いたいいたいいたい」ググ~

祖父江「我慢してください。もう少し伸ばしますよ~」

マリー「うえ~ん」

安藤「・・・こんなのが隊長で大丈夫なのか」

 ――・・・

 <シャワー

安藤「ちくしょう、なんだってアタシがこんなことを・・・」ゴシゴシ

マリー「なにをフワフワやってるの。もっとゴシゴシやってくれないとキモチよくないわ」

安藤「あのな隊長殿、シャンプーくらい自分でやってくれよな。それにしても全然泡がたたないなこのシャンプー・・・」ゴシゴシ

 祖父江「上手くやってますか?」ヒョコッ

安藤「高級なシャンプーって泡立ちが弱いモンなのかい?」ゴシゴシ

祖父江「泡?・・・あ、これ間違ってますわ。ボディソープでシャンプーしてるじゃないですか」

安藤「えっ、マジかよ」

祖父江「しかもシャンプーで足を洗っちゃってます」

安藤「う・・・しまった」

マリー「安藤、あなた字は読めるんでしょうね」

安藤「そりゃ読めるっての!いつもは固形石鹸でやってるからわかんなかっただけだ。頭も身体も全部いける石鹸は無いのかよ」

マリー「早くしてちょうだい。いつまで目を瞑ってればいいの」

安藤「どれでやるんだ?これ?」

マリー「シャンプーって書いてあるやつよ」

祖父江「やれやれ・・・」

 ――・・・

祖父江「うまく出来るかしら?」

マリー「もちろんよ。安藤は足をシャンプーする名人ですもの。あなたは昼食にしなさい、祖父江」

祖父江「わかりました」ガチャ

安藤「・・・このドレスをどうしろって?」

マリー「着せてちょうだい」ンッ

安藤「・・・・・・お断りだ」

マリー「んマッ」

    安藤「服くらい自分で着ろ!」

   安藤「赤ん坊じゃあるまいし出来るだろう!」

  安藤「なんで私がこんなことしなくちゃならないんだ!」

 安藤「そんなことじゃ一人でなんにもできなくなっちゃうぞ!」

安藤「私は絶対にやらないからな!」


 ~ソレカラドシタノ~

安藤「・・・はい、ばんざーいして」

マリー「ばんざーい」

安藤「ジッとしろ」グイグイ

マリー「ん~っ、むぎゅーっ」グイグイ

安藤「ボタンを締めて・・・」ポチポチッ

マリー「優しくね」

安藤「ほら、着せてやったぞ。これで満足か?」

マリー「ありがとう安藤」ニコッ

安藤「ったく、なんだって私がこんなことを・・・それで、こっちのクローゼットにあるキレイなドレスは明日着るのか?」

マリー「それは安藤専用のドレスよ」

安藤「へ?」

マリー「あなたが正式に副隊長になったら、皆で社交界を開く予定よ。で、それがあなたが着るドレス。押田がデザインしたの」

安藤「は!?」

マリー「キレイな衣装を纏った安藤との社交界、楽しみね♪」

 ――・・・

安藤「いいか、私は着ない!あんなおべべを着て人前に出るなんて・・・こっぱずかしくてやってられるか!」

 安藤「ああいうのを着るヤツは自分がカワイイと思ってる自惚れ屋だけだろ!」

  安藤「あんな悪趣味なデザインのドレス絶対に着ないからな!絶対に!」

祖父江「・・・後でもいいですか?今は押田様と打ち合わせをしているので・・・」

押田「・・・」ジトー

安藤「チッ!・・・後でちゃんと話し合うからな!」ズカズカ

祖父江「ふう・・・申し訳ありません押田様、彼女は少々・・・言葉遣いが荒く――」


 安藤「いやいや待て待て」ズカズカ

祖父江「ギョ、もどってきた」

安藤「話し合う必要もない。あんなドレス見るのもイヤだ。どう考えたってマトモな神経じゃ着られない」

押田「・・・」

安藤「マリーにお洋服を着せろってのもイヤだったけど我慢した。今度はそっちが我慢する番だ。社交界はナシってことでいいな!」

祖父江「・・・わ、わかりました・・・」

安藤「よし、これで問題は解決したな。それじゃ、ごゆっくり」

押田「・・・」

祖父江「・・・わ、私はいいと思いますよ。あのドレス・・・」





 ――・・・

内部生一年「押田さまっ・・・あの・・・あのっ・・・これ・・・手紙っ、受け取ってください・・・!」

押田「どうもありがとう。部屋でゆっくり読ませてもらうよ」

内部生一年「あっ、あのっ、へ、返事・・・今聞きたいからっ・・・ここで読んでくれませんか」

押田「・・・それは――」

 安藤「おいそこ、なにをイチャイチャしてるんだ」

押田「!・・・」

内部生一年「あ、あなたは確か外部生の・・・」

安藤「戦車倉庫で乳繰りあうな。やるなら校舎裏でやれ。まったく」

押田「なっ!・・・き、キミはデリカシーというものがないのか!失礼だろう!」

安藤「こっちは午後の戦車道授業のために、昼休み返上で準備してるんだ。ヨソでやれって言ってんの」

押田「き、貴様・・・」

内部生一年「ワイルドな物言い・・・押田さまもいいけど、あの方もカッコイイ・・・」ポッ

押田「!?」

 ――・・・

押田「整列!これより戦車道訓練を開始する!」

 \ザッ!/

マリー「今日の訓練は安藤に指揮ってもらうわ。みんな安藤の言うことをちゃぁんと聞くようにね」

 \!/ \ザワザワ・・・/ \ドヨドヨ・・・/

押田「・・・」

マリー「それじゃ安藤、よろしくね~」フリフリ

安藤「はいよ。・・・ってことで諸君、今日は私に従ってもらう」

 \・・・/ \・・・/ \・・・/

安藤「私はこのチームの副隊長になるつもりだ。今はまだ試用期間だが・・・諸君は私の仲間ってことになる」

 安藤「すぐに信用されるとは思ってない。今までイガミあってた間柄だもんな。だが・・・」

 安藤「だが、きっと君達が信用できるような副官になってみせる。私が信頼に足る人間かどうか、君達も品定めしてくれ」

 \・・・!/

安藤「・・・まっ、そういうことだ」

 マリー「ふふ・・・」

安藤「おーし、そんじゃまずは準備運動して、行軍訓練をしよっか」


押田「フン・・・」

 ――・・・

マリー「あ~ん」

安藤「どうしてこんなことまで・・・」シブシブ

砂部「マリー様のお食事を手伝えるのは大変光栄なことですよ」

安藤「こんなのまるで赤ん坊のお守りじゃないか」

マリー「安藤、もっと食べたいわ。あ~ん」アー

安藤「これが副隊長になることとどう関係があるんだよ・・・」

マリー「あ~ん」アー

安藤「あーはいはい、わかったわかった」ガポ

マリー「ん~っ、やっぱりこのイチゴショートは別格ね~♪」

砂部「マリー様お墨付きの店ですから」

安藤「そんなに美味いのか・・・どれ」パクッ

マリー「(◦ω◦)!」

砂部「あっ・・・よ、よりによってイチゴを食べるなんて・・・」

安藤「うん、たしかに美味い」ングング

マリー「(◦ω◦)・・・」

砂部「ま、マリー様!お気をたしかに!」

 ――・・・

外部生A「私達が訓練場を使うんだ!」

内部生A「いいや我々が使う!」

 外部生B「やいの!」

 内部生B「やいの!」

 \ヤイノヤイノヤイノヤイノヤイノ!/


押田「君達、なにをヤイノヤイノと言い争いをしているんだ」

内部生C「押田さま!外部の野蛮人達が訓練場を占拠しているんです!」

内部生D「今日は私達が訓練をするハズですのに!」

押田「それは・・・」


安藤「なんだなんだ、何を騒いでる」

外部生C「安藤さん!エスカレーター組が我々の邪魔を!」

外部生D「安藤さんからもなんとか言ってやってくださいよ!」

安藤「まあ落ち着いてくれ。その件について隊長から話があるから」

マリー「みんな~」ポテポテ

 内部生E「あっ!マリー様!」

 内部生F「マリー様!これは一体どういうことなのですか!?」


マリー「どうもこうもないわ。今日の訓練は内部生外部生と合同でやることにしたの」

 内部生&外部生『『『えっ!?』』』


安藤「そういうわけだ。今後も我々は度々合同練習をすることになるだろう」

 「そんな・・・」ザワザワ

   「野蛮な猿どもと一緒に練習なんて・・・」ザワザワ

  「甘ちゃん連中とじゃマトモに訓練できないよ・・・」ザワザワ

安藤「はいはい、言いたいこともあるだろうけど、とにかく訓練始めるぞー」パンパン

押田「・・・」

マリー「押田、あなたもがんばってね」

押田「・・・は、はい!」


押田(マリー様・・・本当に外部生をも治める気なのですか・・・)

 ――・・・

押田「マリー様、馬車の用意が出来ました。どうぞ」

マリー「ん」

押田「・・・安藤くん、キミも早く乗りたまえ」

安藤「こんなのイヤだ」

押田「・・・なに?」

安藤「文房具を買いに行くのにわざわざ馬車なんて乗りたくない。マリーもそんなんじゃ運動不足で太っちゃうぞ」

マリー「あらそう?じゃあ安藤がおんぶしてくれるのかしら」

安藤「なんでだよ足ケガでもしてんのか」

押田「貴様!マリー様に歩けと言うのか!」

安藤「そうだよ」

マリー「う~ん・・・そうね、安藤が言うことも一理あるわ。たまには歩こうかしら」ストン

押田「ま、マリー様を歩かせるわけにはいきません!しからばこの押田が馬になりますので・・・」ササッ

安藤「アホ」ビシ

押田「あたっ」

安藤「自分の足で歩かせなきゃダメだっつってんの。大した距離じゃないんだから」

押田「し、しかし・・・」

マリー「はやく行くわよー押田~安藤~」タッタッタ

押田「ま、マリー様!おもいのほかやる気だ!」

 <ガッ

マリー「だ」ペチャ

安藤「あ、コケた」

押田「マリー様ァ!」

 ――・・・

 ―聖グロリアーナ学園艦―


 ✧【なんか高そーな絵画】✧

マリー「・・・美しいわ」

安藤「ふわぁ~・・・ぁ」アクビィ~

アッサム「今回の展示会の目玉絵画です。数日ですぐに売れるかと」

安藤「もういいだろ。一時間もここに張り付いてるじゃないか」

マリー「せっかく絵画の展覧会に来たのだからあなたも芸術を堪能なさい」

安藤「聖グロの学園艦に行くって言うから一緒に来たけどまさかこんな成金イベントとは・・・」

マリー「飾られてる絵画をその場で購入出来る、楽しい催しよ」

安藤「まさかこんなワケのわからん絵に金を出すつもりじゃないだろうな?」

マリー「この絵は暴力的でもあるけれど同時に穏やかさを秘めてるの」

アッサム「心を打たれますね」

安藤「白いキャンバスに赤の点々垂らしただけにしか見えないけどな。これいくらなんスか?」

アッサム「たしか・・・3万ユーロだったかと。確認しましょうか」ノートパソコン カチャカチャ

安藤「確認した方がいい。どう考えたって高すぎだ」

安藤「おいおいこんな絵に3万ユーロも出さないよな?トンデもねぇよ!」ヒソヒソ

マリー「安藤、人はなぜ絵を描くと思う?」

安藤「・・・商売になるから?」

マリー「違う。地上に残せる唯一の足跡だからよ」

安藤「こんな足跡、50ユーロくれたら材料買って私が描いてやるよ。青い点々を足してやってもいい」

マリー「おバカなこと言ってないで、喉がかわいたからお水ちょうだい」

安藤「・・・ヤだ」

マリー「水筒持って来たでしょ。早くちょうだい」

安藤「・・・・・・チビは飲んじゃダメ」

 マリー「!?」

安藤「・・・冗談だよ。冗談。あんたがワケわかんないことばっかり言うからちょっとからかったのさ」

マリー「・・・」

安藤「冗談だって!笑えるだろ。この水は身長150cm以下は飲めません~!ハッハハハ、な、面白いじゃん!」

マリー「(。-`ω-)・・・」

安藤「ふてくされるなって!ジョークジョーク!ハッハハハ」


アッサム「お待たせしました。この絵の値段、間違ってました」

安藤「ほらな」

アッサム「4万1500ユーロです」

安藤「!」

マリー「買うわ」

安藤「!?」

 ――・・・

押田「お時間を取らせてしまい申し訳ございません」

マリー「折り入って話とは何かしら?」ケーキ モグモグ

押田「・・・あの外部の野蛮人の・・・安藤くんのことです」

マリー「・・・」モフモフ

押田「マリー様・・・十分承知でしょうがあんな奴を側に置くのは危険です。礼儀を知らない言動の数々・・・恥をかくのはマリー様なのですよ」

マリー「つづけて」ングング

押田「奴に悪影響を受け始めている内部生もいます。なぜあの様な輩を重宝されるのですか」

マリー「・・・」コウチャ スス・・・

押田「我々とは住む世界が違いすぎる・・・奴の頭の中は我々と根本的に違うのですよ」

マリー「そこがいいのよ」カチャ・・・

押田「!?・・・」


マリー「押田、組織というのはみんながみんなイエスマンじゃダメなのよ」

 マリー「組織の長には、道を誤った時『間違えている』と言える人間が側に居るべきなの」

 マリー「あなた達は忠実な騎士だけど、私が間違えても誰も『間違っている』とは言わないでしょう?」

押田「そ、そんなことは・・・」

マリー「私だっていつでも真っ直ぐ歩けるとは限らないもの。気づいたら湖にドボンかもしれないわ」

押田「・・・」

マリー「組織には違うものの見方が出来る人間が必要なの。わかるわね?」

押田「・・・マリー様がそうまでおっしゃるなら・・・」

マリー「んっ、わかればよろしいっ。さ、紅茶が覚めないうちにケーキもいただきましょ♪」

今回はここまでで

 ――・・・

安藤「押田くん」

押田「!」

安藤「今、時間あるかい?」

押田「・・・いいや、あんまり」

安藤「すぐすむから、少し話があるんだ」ガチャ

押田「・・・わかった・・・一分だけなら・・・」キイ・・・ パタン


押田「それで、話って?」

安藤「これ、我々受験組を主軸にした新しい作戦案だ」ペラ

押田「・・・」パサ・・・

安藤「この練習メニューを訓練に取り組んでも構わないか?今週はキミが訓練内容を組み立てる番だろう」

押田「・・・わかった。悪くない作戦じゃないか」

安藤「!・・・ほ、ほんとに?」

押田「外部生にしては頭が冴えてるじゃないか。名案だよ」

安藤「そうだろうそうだろう!この作戦なら我々の持ち味が発揮されるし――」

 押田「だが承服しかねる」バサッ

 安藤「え”っ」

押田「この作戦を実行するほどの技術がキミ達にあるとは思えない」

 押田「なによりこの戦法には内部生外部生両陣営に信頼感と連帯感が無ければ成立しない」

 押田「よって我々にはこの作戦を実行することは不可能。よって練習をする必要は無い。よって却下だ。失礼する」ガチャ

安藤「ま、待てよおいっ!話がちがうぞ!・・・ひ、一晩考えてくれてもいいから!」

押田「授業に遅れるなよ安藤クン」バタン

安藤「・・・なんだよ」

 ――・・・

押田「――続きはどう書けばよろしいでしょうか?」

マリー「そうねぇ・・・『お気持ちは大変ありがたいのですが、今回のお話は両親が決めた事でして――』」


安藤「なあ、アレなにやってるんだ?」

砂辺「押田様のお手紙の執筆にマリー様がお力添えをされているんです」

安藤「手紙?」

砂辺「ご両親から縁談を持ちかけてこられたので、相手の方にお断りの手紙を書かれているのです」

安藤「・・・えんだん」

砂辺「・・・・・・お見合いのことです」

安藤「!・・・そ、それくらい知ってるさ。なんだ、押田のやつ女子高生なのにもうお見合いをするのか」

砂辺「ご両親が無理矢理設けた話だそうです。押田様はお優しいので、相手の方を傷つけないように断りたいようで」

安藤「それでゴテーネーに手紙かい。やることが面倒くさいな」

砂辺「品位を保つのも大切なことですよ」

安藤「それにしてもやるねぇ、縁談か」

砂部「何度かお断りの手紙を返しているのに相手の殿方がどうしても話がしたいと食い下がっているそうで」

安藤「まあアイツ顔はいいし、男は放っておかないだろうからな」

砂部「・・・(無自覚で言っているのでしょうか・・・)」

安藤「貴族のお姫様は大変だな。ハッハハハ」





 ――夜

安藤「・・・・・・ん・・・」ゴロン


安藤「っ・・・妙な時間に目が冴えちゃったな・・・」ムクリ

 安藤「・・・お水飲みたい」ポテポテ


安藤「ぷはぁ~っ・・・あ~、深夜に飲む清涼水サイコー」

 <・・・・・・

安藤「・・・ん?」

 <・・・ッ・・・ハァ・・・ハァ・・・

安藤「・・・誰かいるのか?」ヒョイ


押田「っはァ・・・はァ・・・はァ・・・」ブルブル

安藤「押田・・・?・・・どうした?なんで廊下で寝てるんだ?」

押田「っ・・・はァ・・・っ・・・身体っ・・・はァ・・・しびれて・・・」ブルブル

安藤「あ?なに?」

押田「身体がッ・・・はァ・・・はァ・・・動かないッ・・・はァ・・・」ブルブル

安藤「!・・・こりゃ熱中症か。身体の末端がしびれてるんだな」

押田「ぅあ・・・はァ・・・はァ・・・うぅ・・・」ブルブル

安藤「ほら、水だ。ゆっくり飲め」スッ

押田「はァッ・・・はァッ・・・・・・ゥ・・・く・・・」ゴクゴク

安藤「落ち着いて。ゆっくりでいいから・・・ゆっくり飲むんだ」

押田「ゴク・・・・・・ゥー・・・ハァー・・・ハァー・・・」

安藤「大丈夫。大丈夫だ」

押田「スゥー・・・ハァー・・・」

 ・ ・ ・

安藤「落ち着いたか?」

押田「・・・・・・礼を言う・・・助かった」

安藤「こりゃ驚いた。エリート貴族のアンタが頭を下げるとは」

押田「・・・」

安藤「しかしなんだってこんなトコで熱中症に?」

押田「~~~っ・・・」


押田「ああそうさ!夜中に一人で練習していたんだよ!こそこそとな!」

安藤「!」


押田「笑うがいいさ!私は普通以上に努力しないと皆に着いていけない凡才なのさ!」

 押田「マリー様のお側に居続けるために隠れて練習しているんだ!・・・軟弱者とけなすがいいさ!」

安藤「・・・いや、そうはならんだろ」

押田「えっ?」

安藤「才能にかまけず努力するなんて格好良いじゃないか。正直ちょっと見直したぞ」

押田「なっ・・・なにを・・・」カァ~ッ

安藤「だが熱中症になるまで追い込むな。命に関わるんだぞ。こまめに水分補給。無理をするのは絶対ダメだ。いいな」

押田「っ・・・!」

安藤「いいな?」ズイ

押田「・・・・・・わかった」

安藤「ったく」

安藤「身体のしびれは消えたか?」

押田「まだ腕がビリビリする」

安藤「しばらくこのまま休憩して、こまめに水飲んで、治まらないようなら救急車呼ぶぞ」

押田「っ・・・情けないっ・・・マリー様の片腕である私が・・・」

安藤「救急車を呼ぶのは情けなくない。むしろ呼ばずに重体化する方がダメだろ」

押田「いや野蛮人に看病される自分が情けないのだ・・・!」ギリギリ

安藤「いつもの調子に戻りつつあるな」

押田「・・・このことはマリー様には内密にしてくれ。ご心配をおかけしたくない」

安藤「わかったよ。隊長思いなこった」

押田「マリー様のご期待に応えるために練習しているのに、倒れたなど言えるわけがないだろう」

安藤「どうしてそこまで隊長に忠実なんだ?」

押田「・・・幼稚園の頃、初めてお会いした日から私はマリー様に全てを捧げると心に決めたのだ」

 押田「マリー様のためなら鉄格子に身を投げ出すこともいとわない。一目見たその瞬間・・・幼心にそう決意したのだ」

安藤「狂信者じゃないか・・・やばいカルトみたいだ」

押田「マリー様に仕えれば肩こりは治るし寝不足も治るし毎日が健康的で健やかに過ごせるぞ」

安藤「怖い」

押田「マリー様は偉大な方だ。なんとしてでも、全国の舞台で勝利を捧げたい。そのためだけに私は努力している」

安藤「・・・」

押田「安藤くん・・・君がマリー様にお仕えして一ヶ月経つな」

安藤「そう言われれば・・・たしかに」

押田「試用期間は終わりということだ」

安藤「そうか、そうだったな。ということは正式にBC自由学園の副隊長に就任ってわけか」

押田「マリー様のことを思う同胞として・・・君のことを信用していいか?」

安藤「・・・ああ、いいさ」

押田「・・・・・・だったら・・・安藤くん」

安藤「あ?」


押田「戦車道から身を退いてくれないか」

安藤「!」


押田「君達外部生が居ては我が校の戦車道は乱れる。外部生と内部生の統一など不可能だ」

 押田「合同練習でも一度として上手くできなかったじゃないか。試合なぞマトモに出来るわけがない」

 押田「君が言うなら外部生全員がチームから外れてくれるハズだ。マリー様に勝利を捧げるために・・・脱退してくれ」

安藤「なにを――」

押田「これは冗談ではない。君達がいない方が上手くチームが回る。君もわかっているはずだ」

安藤「っ・・・!」


押田「・・・そろそろ部屋に戻る。体調も回復した。今夜は世話になったな安藤くん。さっきの話・・・真剣に考えておいてくれ」ザッ

安藤「・・・」





 ――・・・

マリー「似合う似合う~」キャッキャ

押田「そ、そうですか?買ってよかったです」

マリー「いいバッグね~。私も隊長なんだから何か隊長らしいカッコイイ小道具が欲しいわ~」

 安藤「マリー」

マリー「あら、安藤」

安藤「話があるから来てくれって言われたけど・・・」チラ

押田「・・・」

安藤「話って?」

マリー「あなたが私に仕えてひと月が経つわね」

安藤「ああ」

マリー「試用期間はおしまい。あなたを正式に副隊長に任命するわ」

安藤「・・・」

マリー「うれしくない?」

安藤「うれしいよ。うれしいけど・・・」

 安藤「今の私じゃ、アンタの右腕としてやっていける気がしないんだ。だから・・・」

マリー「だから?」

安藤「もうしばらくの間、このままアンタの傍にいてもいいか?」

押田「!」

マリー「これからも私の身の回りの世話を手伝ってくれるのね」

安藤「・・・不本意だが、あんたを理解するにはそれしかないな」

マリー「んっ、いいわよ。これからもよろしくね♪安藤」

押田「・・・」

 ――・・・

押田「本日の合同訓練はこれまで。解散!」

 \\\ありがとうございました!///

安藤「ふー・・・」

外部生A「お疲れ安藤。そろそろこっちに戻ってくるんだろ?」

安藤「・・・!」

外部生A「お嬢様隊長の付き人になって一ヶ月・・・いい加減元の生活に戻りたいだろう」

安藤「その件なんだが・・・もうしばらく隊長の世話係を続けようと思うんだ」

外部生A「え?・・・なぜだ?」

安藤「上手く言えないが・・・副官としてやっていくには、もう少し隊長の考えがわかるようにならないとな」

外部生A「!・・・そうか、ふふふ、わかったぞ。いずれ革命を起こす時のためにエスカレーター組の内情を探ろうということだな」

安藤「え、いやそうじゃなくて――」

外部生A「大丈夫だ。皆、君の考えは理解している。がんばってくれ」

安藤「・・・あ、ああ・・・」

 ――・・・

マリー「じゃ、今教えた通りに書いてみなさい」

押田「は、はい。エート・・・『お気持ちは大変嬉しいのですが、私は現在若干16歳の青二才で――』」

 安藤「つまんねーな~」

押田「っ・・・『淑女としてまだまだ若輩者であるため、今は勉学と戦車道に勤しむ――』」

 安藤「なあ、もういいだろう?いつまでやってんだよ」

押田「~~っ・・・君は黙っていてくれないか。手紙を書いているのがわからないのか」

安藤「マリーに小難しい書き方教わって書くよりも、ハッキリ『NO』って言えば清む話じゃないか」

押田「手紙なら気品があって相手に失礼なくお断りが出来るんだ!」

マリー「押田は恥ずかしがり屋だからね~」ヤレヤレ~

安藤「相手の年齢は?」

押田「・・・37だ」

安藤「37!?めちゃめちゃ年上じゃないか!大金持ちじゃないと割に合わないぞ!」

押田「んなっ・・・失礼なことを言うな!」

安藤「手紙の最後に『ところで貯金はいくらですか?』って書いときなよ」

マリー「それはいい考えかもしれないわね」

押田「マリー様まで・・・」

安藤「大体37にもなって女子高生とお見合いなんて普通じゃないぞ。スッパリ直接断ったほうがお互いのためだって」

押田「あーわかったわかった!とても素晴らしい意見だ。参考にさせてもらうよ。はいはい」

 押田「まったく、なんて奴だ。マリー様、続きをご指導いただけますか」

安藤「ふーん、そうかい。だったら代わりに私がハッキリ断ってやるよ」バッ

押田「あっ!なにをする!それは手紙の宛先が書いてあるメモ――」

安藤「なんだ、電話番号も載ってるじゃないか。直接電話してやれ」デンワ ポチポチ

押田「ま、待て!なにをするだー!」

安藤「手紙で遠回しに断るなんていい迷惑だ。電話で直接断る方が相手にとってもいいって」ポチポチ

マリー「まあ、おもしろそう♪」

押田「や、やめてくれ!私は出ないぞ!」

安藤「ただいま呼び出し中~」プルルル・・・

押田「さっさと電話を切れ!おいやめろって!」


 電話【はい、もしもし】

安藤「あーもしもし?押田くんのお見合い相手?彼女が言いたいことがあるんだとさ」

押田「なっ!?」

 電話【押田さんが・・・?】

安藤「今代わるよ。はい、押田くん」スッ

押田「い、いやだ!絶対出ないぞ!男の人と話すなんて・・・」

安藤「今まで何度も断ってんだろ。いい加減キッパリ言ってやれって」

押田「っ・・・」

安藤「つながってますよ~」フリフリ

押田「・・・~っ!・・・ええい!覚えておけよ安藤!」バッ

押田「・・・・・・も・・・もしもし?・・・押田です・・・」

 電話【!押田さん!・・・ああ、やっと声が聞けた・・・あなたの声が聞きたくてどれほど眠れぬ夜を過ごしたか・・・】

押田「突然のお電話申し訳ありません・・・ご迷惑ですよね・・・」

 電話【そんなことありません!あなたとお話しが出来るならいつでも大歓迎です!】

押田「今回電話したのは・・・実はその・・・私にお見合いはまだ早いといいますか・・・」シドロモドロ

安藤「ハッキリ言ってやれよ」

押田「ええい黙れ!・・・・・・そ、その・・・今回の縁談は・・・出来れば無かったことにしていただけないかと・・・」

 電話【ああ、かまいませんよ】

押田「え”っ」


 電話【あなたが望まないのなら無理にお見合いをする必要はありません。私は押田さんの声が聞けただけで幸せです】

押田「あっ・・・・・・そ、そうですか・・・」

 電話【こうしてあなたとお話しできただけで私は大満足です。本当にありがとうございます】

押田「い、いえ・・・それはよかった・・・」アハハ・・・

マリー「あら、ずいぶんアッサリ退いたわね」

安藤「一応年収も訊いとけ」

押田「んなっ・・・!」

 電話【え?なにか言いましたか?】

押田「い、いいえなにも!なんでもありません!ハハハ・・・」アセアセ

マリー「ふふ」

 ――・・・

 内部生A「押田様!お見合いするって本当ですか!?」ワイワイ

 押田「いいや、断ったよ」

  内部生B「相手は大金持ちの社長だという噂は本当ですか!?」ガヤガヤ

  押田「それはどうだろうな・・・」

   内部生C「ハマグリと金目鯛どっちが好きです!?」ドヤドヤ

   押田「サーモンが好きだ」

    内部生D「男性が苦手だとお聞きしましたが女性同士ってアリだと思いますか!?」ヤカヤカ

    押田「別にいいんじゃないかな」


マリー「押田のお見合い話で持ちきりね」

安藤「みんなどこかホっとしてるようだ」

マリー「どうしてあの子達が押田の縁談のことを知ってるのかしら?」

安藤「あー、私のせいかも。面白がって話しちゃった」

マリー「んマッ、安藤ったら」

 外部生D「内部生の押田さん、お見合い話があったんだって」

 外部生E「やっぱお嬢様は住む世界が違うな」

 外部生F「くっそー、私も男だったら押田さんにアタックしてたのになー」

 外部生G「美人だもんねー」

安藤「おっ、受験組にも押田くん推しは多いみたいだな。これだから美形は」ヤレヤレ

マリー「みんな~、そろそろ戦車道の練習はじめるわよ~」

 \ハ~~~イ/


押田「整列!」

 \ザッ!/

マリー「今日の練習の指揮は押田がとるわ。みんな押田の言うことを聞くよーにっ」

 安藤「がんばれー金髪ドククラゲー」

押田「・・・」イラッ

 押田「外部生!貴様達はグラウンド100週してこい!」

安藤「は?」

 外部生A「なっ・・・!?」

 外部生B「100週!?」

押田「そのあと砲弾リフティング50回3セット!砲弾スクワット50回3セットだ!」

安藤「拷問だな・・・」

押田「安藤だけ履帯を身体に巻いてかついでやれ!」

安藤「マジっすか・・・」

 ――・・・

安藤「私達は弱い」

マリー「藪から棒に」

安藤「強くなるために他校と練習試合を組もうと思う」

マリー「いい考えね。どこと組むつもりかしら?」

安藤「黒森峰」

マリー「んマッ」

安藤「どうせやるなら王者とってな。果たし状書こう果たし状」

マリー「まだ私達には早すぎると思うのだけど」

安藤「こーゆーのはやる気の問題なんだよ。えーっと、『前略、本日はお日柄も良く――・』」

マリー「ガッツは買うけれど冷静に考えて」

安藤「――っと、果たし状書けたぞ」

マリー「安藤、私の言うこと聞きなさいな」

安藤「隊長、あんたの目標はこの学園を統一して全国に通用するくらい強くすることだろ?」

マリー「そうよ」

安藤「やる気は?」

マリー「バリバリ」

安藤「我が校をチョー強くしたいよな?」

マリー「チョーしたい」

安藤「だったら?」

マリー「マジでこの果たし状を送りつけてやりましょう」

安藤「よっしゃ、それでいいんだ!行動開始だ!」ニカッ

マリー「・・・この私がノせられるとは・・・」

 ――・・・

 扉<ガチャ

押田「失礼する」

安藤「おい、ノックくらいしろよ。私の部屋だぞ」

押田「先日も話した、君達にチームから脱けてほしいという話だが・・・考えてくれているか?」

安藤「っ・・・あのな・・・私達は脱けたりしない。それが答えだ」

押田「我が校のため、マリー様のためでもか」

安藤「私達がBCを強くしてやる」

押田「・・・足を引っ張っている自覚すらないとは」

安藤「・・・なんだと」

押田「――ん?なんだこれは?なぜここに油絵用のカンバスがあるんだ?」ゴトッ

安藤「おい!勝手に触るな!まだ途中なんだぞ!」

押田「まさか君が絵を描いてるのか?こいつはお笑いだ。字は読めるようになったかい?」

安藤「うるさい!出てけ!」グイ

押田「触らないでくれるかな。服が汚れる」

安藤「いいから出てけ!ここは私の部屋だ!」

押田「恵んでもらっておきながら偉そうだな。キミは本来ここにいるべきではない人間なんだぞ」

安藤「いい加減にしろ!じゃないと爆発するぞ!」

押田「言われなくても出て行くさ。こんな所に長居したくないからね!」バタン

安藤「クソったれ・・・!」

 ――・・・

マリー「黒森峰への果たし状、処分しておいてちょうだい」

祖父江「よろしいのですか?」

マリー「私達にはまだ早いわ。今、試合を組んでも得られるものはない」

祖父江「承知しました」

 扉<ガチャ!

安藤「あの野郎!頭にくる!」ズンズン

マリー「どうしたの安藤。ずいぶん怖い顔して」

安藤「アンタんとこの副官サマだよ!私が絵を描いてたら――」

マリー「あなたが絵を・・・?」

安藤「押田をしつけてくれ!じゃなきゃ私が頭をカチ割ってやるぞ!」

マリー「まあ落ち着きなさい。興奮しすぎよ」

安藤「落ち着いてられっか!なあ、私はアンタの右腕だよな!?」

マリー「その通りよ」

安藤「だろ!?だったらアンタの代わりにアイツを殴ってやる!なんなら榴弾でぶっ飛ばしてもいいぞ!」

マリー「そうコトを荒げないでちょうだい。祖父江、あなたはどう思う?」

祖父江「・・・まあ・・・押田様は少々外部の者に当たりが強いかと・・・」

安藤「少々!?邪魔になるから外部生はチームをやめろとまで言われたんだぞ!」

 安藤「まあそれはこの際どうでもいい。私達は絶対にやめないからな」

 安藤「問題は人を見下す態度だ!なんだあの物言い!失礼だぞ!私達は犬か!?」

 安藤「あいつの根性を叩き直す許可をくれ・・・!」

マリー「わかったわ。押田には私から話しておく。あなたは少し休みなさい」

安藤「っ・・・そうさせてもらう。あいつをしつけてくれ。早くな!」ズンズン

 扉<ガチャ バタン

マリー「・・・ねえ、絵って?あの子何か描いてるの?」

祖父江「さあ、知りません」





 ――・・・

 ☆《 安藤が描いたよくわかんない油絵 》☆

安藤「どうだ?」

マリー「・・・創造力をかき立てる作品ね」

安藤「それっていい意味なのか?」

マリー「・・・」

安藤「アンタらはどう思う?この絵、すごいかな」

砂部「・・・す、素敵だと思います」

祖父江「・・・私の部屋に飾るかと訊かれたら・・・飾りませんが・・・いいと思いますよ」

マリー「オリジナリティーはあるわね」

安藤「いくらで売れるかな?」

マリー「えっ、お金取るつもりなの」

安藤「前に聖グロからしょーもない絵買ってただろ。これならいくらで売れると思う?」

マリー「・・・お腹すいちゃったからオヤツにしましょ」

安藤「おい、ちょっと待てよ。いくらで売れるんだよ。なあ。ちょっと」

 ――・・・

マリー「押田、あなた外部生の子達に当たりがキツイそうね」ラスク モグモグ

押田「はっ・・・そうでしょうか」

 安藤「・・・」コーヒー フーフー

マリー「そういった意見が寄せられているわ」ゴクン

押田「私は別段そんなつもりはないのですが」

マリー「無意識なのね厄介だわ」

押田「しかしマリー様、外様モンキーどもに礼儀をわきまえる必要などないのではないでしょうか」

マリー「そういう考え方ではダメ。外部生の子達とも仲良くやっていく努力をなさい」

押田「そ、それは無理な話です!あんな猿山連合軍、意思疎通が出来るとは思えません!」

マリー「無意識でこれなんだもんねぇ」

安藤「マリー、もっと厳しく言ってやれ」

押田「キミは黙っていてくれないかな。我々は高貴な会話をしているんだ」

マリー「押田、そういうところよ」

押田「マリー様も早々にこんな連中を切り捨てた方がいいです!邪魔な外部生どもと手を切るべきです!」

マリー「あなた、私の夢が何なのか理解していないわね」

押田「!?」

マリー「私の夢は内部生と外部生を一つにまとめて、全国の強豪相手に勝てるチームにすることよ」

 マリー「外部生の子達にも敬意を払いなさい。あの子達は仲間なの」

押田「しかし・・・」

マリー「外部生の子達と一緒にやれないようなら、私は戦車に乗らないわ。わかったわね」

押田「・・・・・・はい・・・」

安藤「ぷぷぷ、怒られてやんの」ヤ~イヤ~イ

押田「ぐぬっ・・・!」メラメラ

 ――・・・

安藤「隊長、朝だぞ。起きた起きた」カーテン シャー

マリー「うぅ~ん・・・ふわぁ~・・・おはおう安藤」ネムネム

安藤「はい、おはよ。こっち来な」グイ

マリー「むにゃむにゃ」アクビィ~

安藤「そら、着替えだ着替え」ヌギヌギ

マリー「ふわ~・・・ありがとう」グイグイ

安藤「次は歯磨き」ガシガシ

マリー「はりはほう」ガシガシ

安藤「朝食」アーン

マリー「あひがほう」モグモグ

安藤「筆記用具と教科書持って、はい、授業行くぞ」スタスタ

マリー「はぁ~い」ポテポテ

 祖父江「すっかり慣れた手つきですわね・・・」

 砂部「私達の仕事が減って楽になりましたね」

 ――・・・

安藤「・・・なあ、二人に折り入って頼みがあるんだが・・・」

砂部「私達に?」

祖父江「安藤さんが頼みごとなんて珍しいですね。何かお困りですか?」

安藤「実は・・・この前の試験、赤点を取ってしまって・・・その・・・勉強を教えてほしくって・・・」

砂部「まあ、それは大変」

マリー「ちょっと安藤、どうして私に教えを請わないの」

安藤「マリーは勉強苦手そうだし・・・」

マリー「んマッ、心外」

祖父江「いいですよ。私達にわかるところならお教えしましょう」

安藤「よかった!実は受験組には私の他に赤点取ったヤツが5,6人いるんだ。みんな面倒を見てやってほしい」

祖父江「えっ、そんなに」

砂部「それはまずいですね・・・悪い成績が続くようでは戦車道を控えないといけないかもしれません」

 押田「ははは!何人も赤点がいるんじゃあ戦車道など!」ガラ

安藤「むっ、そうゆうエスカレーター組はどうなんだ押田」


押田「私一人だ」キリッ


押田「おねがいしまぁす!」ズァッ!

安藤「わはははははは!」

マリー「おばかさんばっかりね」ヤレヤレ

今回はここまでで

 ――・・・

押田「マリー様!進級おめでとうございます!」

マリー「あなたもね」

押田「私が2年になれたのもマリー様のおかげです!」

砂部「マリー様、進級祝いのモンブランをお持ちいたしました」

マリー「わぁいモンブラン♪マリーモンブランだいすき♪」

祖父江「行列のできる人気店の限定メニューです。味わってお食べください」

押田「ささっ、マリー様、フォークをどうぞ」スッ

マリー「ありがとう♪それじゃあ、いっただっきま――」

 安藤「栗もーらいっ」ヒョイパク

マリー「Σ(・ω・)!」

押田「あ、安藤貴様ァ!な、なんちゅうことをするんだ!」

安藤「うん、美味い」モグモグ

マリー「(・ω・)・・・」

マリー「(;ω;)ジワ・・・」

砂部「ま、マリー様!お気をたしかに!」ササッ

祖父江「だ、大丈夫です!また買ってきますから!」





 ――・・・街中

安藤「もしもし?・・・ああ、隊長は離れたところにいる。今は私一人だよ。ああ、わかった。じゃあ7時半に」ピッ

マリー「どう?砂辺ピリピリしてた?」

安藤「ああ、アンタの誕生日パーティーの準備真っ最中だ」

マリー「毎年盛大にやってくれるのよ。私に隠れてるつもりでね」

安藤「6時半には寮に戻るぞ。買い物に付き合ってやれるのはそれまでの間だけだ」

マリー「わかってるわかってる~♪」

安藤「ブランドものの店ばかり渡り歩いてるが何も買ってないな」

マリー「ん~っ・・・隊長らしい素敵なアイテムが欲しかったのだけど、どれもピンとこなくてねぇ~」

安藤「ふーん。ま、たしかに隊長らしい装飾品はある方がいいかもな。威厳が出て」

マリー「でしょ?やっぱりアイテムがあった方がカッコイイわよね~!」

安藤「まあ、マリーじゃ威厳は出なさそうだがな」

マリー「むーっ、バカにしてるでしょ」

安藤「ははは、悪い悪い」

マリー「むむむーっ」ポカポカ

安藤「すまんすまん、叩くな叩くな」ハハハ

 ・ ・ ・

 ――・・・BC自由学園舞踏ホール

 <♪~♪♪~

 \ワイワイガヤガヤ/ \ペチャクチャペチャクチャ/ \ニギニギヤカヤカ/

外部生A「・・・すげぇ・・・」アゼン

外部生B「隊長の誕生日会に呼ばれたんだよね?貴族のパーティーじゃないの・・・これ」

外部生C「エスカレーター組の連中はさも当たり前のようにおしゃべりしてるし・・・」

安藤「・・・」キョロキョロ

外部生A「お、さすがの安藤クンも豪華な舞踏会には挙動不審になるか?」

安藤「いや・・・あいつが・・・押田がいないと思って・・・」

外部生A「そりゃ妙だな。隊長の側近がいないなんて」

安藤「・・・ちょっと見てくる」


 ・ ・ ・

 ――・・・押田の部屋

 扉<コンコン

安藤「おーい押田くん、いるか~?」

 扉<・・・・・・

 扉<グスン・・・

安藤「どうした?・・・泣いてるのか?」

 扉<ヒック・・・

安藤「入るぞ」ガチャ

押田「!・・・グスン・・・勝手に入ってくるんじゃない」

安藤「なんだ生理痛か」

押田「ほうっておいてくれ!私なんかに構うな・・・」グス・・・

安藤「おいおいどうした。いつもの減らず口は?様子がヘンだぞ」

押田「もう終わりだ・・・・・・私はマリー様にお仕えする資格などない・・・」ポロポロ

安藤「落ち着けって押田。そんなメソメソしたら綺麗な顔が台無しじゃないか。・・・何があった」

押田「・・・マリー様への誕生日プレゼントを紛失してしまった・・・・・・もうおしまいだ・・・」

安藤「なんだって?」

押田「一週間も前に用意しておいたのに・・・当日になって紛失していることに気づいたんだ・・・」ポロポロ

 押田「マリー様に会わす顔がない・・・副隊長失格だ・・・人間としても失格・・・私なんかいないほうがいい・・・もう学校中退する」

安藤「なにバカなこと言ってんだ。ほら行くぞ。もうパーティーはじまってるんだから」グイ

押田「安藤・・・探してくれないか?」グスン

安藤「・・・私に頼み事か?お嬢様のアンタが」

押田「お金なら出す!いくらでもいい!青と金のリボンでラッピングしたこれくらいの包みだ!探してくれ!」

安藤「・・・なんだと」

押田「学校のどこかにはあるはずなんだ!いくらならやってくれる?言い値で払うから!」

安藤「いい加減にしろ。金を払うだと?私を見損なうな・・・!」

押田「安藤・・・」

安藤「仲間だったら素直に頼れ。お前にはガッカリだ・・・無くしたもんは自分で探すんだな」

 扉<バタン!

押田「安藤!・・・・・・私を見捨てないでくれ・・・!」グスン


 扉<・・・ガチャ

安藤「じゃあいくら払う?」

押田「っ!・・・・・・ひねくれもの・・・」

 ・ ・ ・

マリー「あら、安藤どこに行ってたの?これからビンゴ大会がはじまるのよ」

安藤「隊長、押田くんが言いたいことがあるんだとさ」

押田「ま、マリー様・・・実は・・・マリー様への誕生日プレゼントを紛失してしまいまして・・・」モジモジ

マリー「んマッ」

押田「申し訳ございません!不名誉除隊だろうと甘んじてお受けいたします!誠に申し訳ございませんでした!」ガバッ

マリー「私がそんなことであなたをチームから追い出すと思っているのかしら?」

押田「っ!・・・」

マリー「いつか改めてプレゼントしてちょうだい。今日は私の誕生日、湿っぽい顔なんてダメよ」

押田「マリー様・・・!」

マリー「これからも私の大切な騎士でいてちょうだい」ニコッ

押田「っ・・・はいッ!押田ルカ、一生マリー様にお仕えいたします!」

マリー「さ、ビンゴが始まるわ。はい、カード持って。安藤も」

安藤「はいよ。・・・ウチの大将は器がデカイのか脳天気なのか・・・」ヤレヤレ


 ・ ・ ・

祖父江【マリー様お誕生日ビンゴ大会の特賞賞品はみごとマリー様が当てられました~!】

砂部【はい、特賞はフランスの名曲『さくらんぼの実る頃』のレコードです。ビンテージ物ですよ】

マリー「やったー」ブイ

押田「さっすがマリー様!

安藤「イカサマ無しのガチで当てるからすごいんだよなぁ・・・」

 ・ ・ ・

エクレール「マリーさん、お誕生日おめでとうございますですわ」

マリー「わざわざ来ていただいてありがとう。どうかしら、マジノの仕上がり具合は」

エクレール「隊長に就任してからというもの、苦労の毎日ですわ。でもそれはあなたも同じことでしょう?」

マリー「そうね。ウチも一筋縄ではいかないもの」

エクレール「お互い努力しましょう。全国大会で相対することとなっても手加減はいたしませんわ」

マリー「ええ、もちろん」

 ・ ・ ・

ダージリン「お誕生日おめでとう、BCの新隊長さん」

マリー「ありがとう」

ダージリン「代々、聖グロとBCは友好的な関係を築いてきたわ。先代までは幾度となく合同練習を行ってたわね」

マリー「ええ」

ダージリン「でも隊長があなたに代わってからは一度も一緒に練習していない・・・手の内を見せないためかしら?」

マリー「やることがいっぱいでして」

ダージリン「両校の関係を白紙に戻す気なのかと思いましたが、こうしてパーティーに招待されたということは友好関係は継続ということでよろしいのね?」

マリー「当然ですわ。これからもよろしく、ダージリンさん」

ダージリン「こちらこそ」

マリー「友好のしるしとして・・・こちらを」スッ

 《☆安藤が描いたよくわかんない絵☆》

ダージリン「まあ、なんとも前衛的な油絵ね・・・」

マリー「貴校に譲渡しようかと。高名な方が描かれた貴重な作品ですわ」

ダージリン「へえ・・・」

マリー「受け取ってくださるわね?我々の友好のしるしとして」

ダージリン「もちろん、喜んでいただくわ」

マリー「1万1000ユーロで」

ダージリン「えっ、お金とるの」

マリー「友好的な値段でしょう?」ニコッ

ダージリン「・・・」

 ・ ・ ・

 吹奏楽部<♪!♪~♪~

マリー「安藤、この曲を知ってる?」

安藤「トムとジェリーの曲だろ」

マリー「フフっ」

押田「なっ・・・このクラシックの名曲を知らんのか!」

安藤「音楽ってのは踊れなきゃ音楽じゃないんだよ。おーい指揮者」ガタッ

押田「んな!?なにをするつもりだ!演奏の途中だぞ!」

安藤「もっとノリノリで楽しく踊れる曲を演奏してくれよ」

 指揮者「踊れる曲ですと?・・・」

安藤「アースウィンド&ファイアーの『Boogie Wonderland』とか出来ない?」

 指揮者「おお!いいですとも!皆の衆!いくぞ~、3、2、3、2、1・・・」カッカッカッ


 吹奏楽部<♪ッ♪ッ♪ッ♪♪ッ ♪~♪♪♪ッ♪~♪~♪~♪♪~

マリー「あら、激しい曲ね」

安藤「ほらほら隊長、座ってないで立って立って」スック

マリー「ふふ、あの安藤がダンスのお誘いかしら」

安藤「みんなもホラ!隊長の誕生日だぞ!踊ろうじゃないか!ほらほら!」

 内部生A「・・・たしかに・・・」

 内部生B「マリー様と一緒に踊れる機会なんてもうないかも・・・!」

 内部生C「わたくしも踊りますわ!」

  外部生A「安藤がそこまで言うなら・・・!」

  外部生B「せっかくだから私も!」

  外部生C「同じ阿呆なら踊らにゃ損々!」

 吹奏楽部<♪~♪♪~ ♪♪♪♪~♪~♪~

安藤「はっははは!どうだ?楽しいだろう?」♪~

マリー「ええ、とっても」♪~

押田「マリー様・・・」

安藤「お姫様、お手を」スッ

押田「!・・・な、なにを言うんだ君は!・・・わ、私はいい」

安藤「そんなこと言わずに。みんな楽しそうに踊ってるぞ」

押田「・・・わ、私は踊るのは苦手なんだ・・・」

安藤「いいんだよ、リズムに合わせて動けば」

押田「で、でも・・・」

安藤「ほら」グイ

押田「わ!わっ!」

安藤「隊長、押田くんも踊るってさ」♪~

マリー「あら、いらっしゃいルカ」♪~

押田「ま、マリー様・・・私、うまく踊れてますか?」♪~

マリー「楽しかったらそれでいいのよ」♪~

押田「!・・・それなら・・・大丈夫ですね」♪~

安藤「はっははは、高貴なお嬢様でもダンスは苦手か」♪~

押田「う、うるさいやい!」♪~

安藤「ハハハハ」♪~

マリー「ふふふ」♪~

押田「・・・はは・・・ハハハ」♪~





 ――・・・夜

マリー「うふふふ、今日は楽しかった~」ピョンピョン

安藤「ほれ、もう寝る時間だろ。ベッドに入った入った」

マリー「はーい」ピョンコ モフ

安藤「枕の位置これでいいか?」バフバフ

マリー「ええ。ありがとう安藤」

安藤「どういたしまして。アンタの世話も慣れたもんだよ」

マリー「もうすぐ夏の全国大会の抽選会ね。私が隊長に就任して初めての公式大会だわ」

安藤「努力の成果が試されるな」

マリー「なんとしても勝たなくちゃね」

安藤「そんなアンタにOGのアズミ先輩から誕生日プレゼントだ」スッ

マリー「手紙?」

安藤「読み上げるぞ。『前略マリー隊長へ。がんばってるかしら?隊長にもなると気苦労も多いでしょうけど、無理しないでね』」

 安藤「『戦車道の一番の武器は信頼と友情。それを覚えておきなさい』」

 安藤「『もしも内部生と外部生が真に協力し合い、一体となったら・・・』」

マリー「・・・」

安藤「『・・・』の意味はなんだと思う?『さいきょう』って意味さ」

マリー「ふふふ、私達が最強、ね」クスクス

安藤「あんたならやれるさ。受験組もエスカレーター組も一つにまとめて、きっと最強のチームを作れるよ」

マリー「ありがとう。最高の誕生日プレゼントだわ」

安藤「・・・じゃあ、そろそろ私も寝るよ。手紙、枕元に置いておくからな」

マリー「おやすみ、レナ」

安藤「・・・誕生日おめでとう、マリー様」

今回はここまでで





 ――・・・戦車道全国大会抽選会当日

マリー「ハンチングにしてみようかしら」スッ

押田「お似合いですマリー様」

安藤「ダメダメ、昔の漫画家みたいだ」

マリー「ん~、どの衣装で行こうか迷っちゃうわね」コレモイイ アレモイイ

安藤「どれでもいいじゃん。たかが抽選会で・・・」

押田「なにを言う。全国の強豪と顔を合わせるのだぞ。結果次第で我らの勝ち進める確率も――」

マリー「こんなのどうかしら。赤いドレス」シャランラ~☆

押田「ぅおあキレイですマリー様!」

マリー「う~ん、でもやっぱりいつもの制服が一番かしら♪」シャルンッ☆

押田「ほあぁ美しいマリー様!」

安藤「やれやれ、付き合ってられないや」

マリー「いい機会だわ。安藤、抽選会には押田が付き添ってくれるから、あなたはオフにしなさい」

安藤「丸一日休みか」

マリー「大会本番までに外部生の子達もまとめあげておいてちょうだい」

安藤「わかってるよ。マリーも一回戦で強豪校を引き当てるんじゃないぞ」

マリー「・・・ちょっと緊張する」

安藤「初戦から黒森峰やプラウダを相手にはしたくないもんな」

押田「安藤ォ!マリー様にプレッシャーを与えるな!」

マリー「・・・やっぱ行くのやめよかな」

押田「マリー様ァ!」

 ――・・・

外部生A「よ、安藤」

安藤「見つかった?」

外部生A「いや、まだだよ。青と金のリボンで包装された包みだろ?」

安藤「ああ、この学園艦のどこかにはあるはずなんだ」

外部生A「学校の敷地内はくまなく探したよ。みんなでね」

安藤「人数を増やしてくれ。念のため船底も頼む。誰かが拾って持ってっちまったかもしれない」

外部生A「わかった。だけど一体何の包みなんだい?そんなに大事な物?」

安藤「私のじゃないよ」

 安藤(押田が紛失した隊長へのプレゼント・・・どこにあるんだろうな)





 ――・・・戦車道全国大会対戦抽選会場

押田「――!」

マリー「・・・」

押田「・・・マリー様・・・」

マリー「どうやら初戦から大物を相手にすることになってしまったようね」


 司会【あーっと!聖グロリアーナが引いたクジは10番!よって9番のクジを引いたBC自由学園との試合が確定しましたー!】

ダージリン「よろしくね、マリーさん」

マリー「まあ怖い」


押田(我が校の戦車では聖グロの防御力を貫通するのは至難の業・・・かなりの難局だ・・・)

ダージリン「手加減はいたしませんわ。あなた達が相手でもね」

マリー「押田、帰るわよ」

押田「えっ・・・でもまだ残りの抽選結果が・・・」

マリー「興味ないわ。帰るの」

押田「わ、わかりました」

マリー「それでは、ごきげんよう」

ダージリン「ええ、ごきげんよう・・・」

 ――・・・

安藤「くそっ・・・全然見つからない・・・押田のやつどこにやったんだよまったく・・・」

 携帯<オーパッキャマラードー♪パッキャマラード♪パオパオパー♪

安藤「あ、電話」ピ

マリー【安藤、今何をしてるの?】

安藤「探し物。そっちは?抽選会終わったのか?」

マリー【ええ】

安藤「一回戦の相手は?」

マリー【聖グロリアーナよ】

安藤「・・・そうか」

マリー【ええ】

安藤「・・・・・・」

マリー【今から出かけない?押田と3人で】

安藤「・・・わかった。校門まで行くよ」

マリー【待ってるわ】Pi

安藤「・・・聖グロか」





 <ヒュオオオォォォ~~~ッ

マリー「いい景色ね~」ンー

安藤「よせマリー!戻ってこい!」

押田「マリー様!危ないですよ!落ちたらどうするんですか!」

マリー「二人もこっちに来なさい。素晴らしい眺めが見れるわ」

安藤「来いったって・・・」


 ――・・・―― 《 凱旋門 》 ――・・・――


安藤「凱旋門の上だぞ。そんな端っこに行ったら危ないだろ」

押田「落っこちないうちに早く戻ってきてくださいマリー様ァ!」

マリー「やーよ。二人が来てくれるまで帰らないから」

押田「ま、マリー様・・・」

安藤「押田くん、行けよ」

押田「君こそ行ったらどうなんた安藤くん!」

 マリー「らんらららん」♪~

押田「ああっ!マリー様!そんなとこで踊っちゃダメです!危ないっ!」

安藤「くっ・・・仕方ない。こうなったらやぶれかぶれだ。私は行くぞ」グッ

押田「あ、安藤・・・!」

安藤「お前も来い。ふたりで行かないとダメなんだから」

押田「し、しかし・・・」

 マリー「押田~、待ってるわよ~」

押田「っ!・・・~っ・・・ええい、ままよっ!」グッ

押田「あ、安藤!しっかり手を握っててくれよ!」ブルブル

安藤「そんなにひっつくんじゃない。歩きづらいだろ」

押田「す、すまん・・・」ブルブル

安藤「ほら、隊長、ご要望通り来たぞ」ジリジリ

マリー「待ちくたびれたわ。見てごらんなさい、この眺めを」

安藤「眺めなんて――」


 ―――――・・・・・・ ・ ・ ・  ・  ・  ・   ・   ・   ・  ・  ・  ・ ・ ・ ・・・・・・―――――


安藤「――・・・たしかに荘厳だ」

押田「学園艦をこんな場所から見たのは初めてだが・・・これほど美しいとは・・・」

マリー「私ね、この場所けっこう気に入ってるの」

安藤「・・・」

マリー「内部生と外部生を一つのチームにまとめて勝利を得られたなら、この門を凱旋してパレードするのが夢なの」

押田「マリー様・・・」

マリー「あなた達がいなきゃ、その夢は叶わないわ。がんばってね」

安藤「アンタもがんばるんだよ」ビシッ

マリー「あうっ」

押田(・・・マリー様の夢・・・そうだ、私はもっとマリー様の右腕に相応しい人間にならねばならない。いや、私達は・・・)

安藤(BCを統一か・・・無理だと思ってたけど・・・こいつなら・・・マリーなら出来るかもな・・・)


押田(もっと強く。もっと気高く・・・)

安藤(私も・・・マリーの夢を叶えてやりたい)


押田(私達は・・・)

安藤(私達なら・・・)

http://uploader.sakura.ne.jp/src/up174255.jpg

 マリーのおなか<グウゥ~

マリー「――おなかすいちゃった。帰りましょっか」

安藤「そうだな」

押田「安藤くん」スッ

安藤「?」

押田「歩くの怖いからまた手を握ってくれ」

安藤「・・・仕方ないな」

マリー「じゃあ私も~♪」

安藤「おい、なんで私と押田の間にマリーが入るんだ。捕らえられた宇宙人みたいだぞ」

マリー「わーい」ブランブラン

押田「ま、マリー様!揺らさないで!こっ、怖いっ!」

安藤「やはりこんなのが隊長じゃ頼りないかもしれない・・・」





 ――・・・

安藤「――だから言ってるじゃないか。フランス映画の最高傑作は『最強のふたり』だって」

押田「一般認知度を加味してもジャン・レノの『レオン』が至高ということは目に見えているだろう。これだから一般ピーポーは」ヤレヤレ

安藤「なんだと~!隊長、アンタはどっちがいいと思う?」

押田「そんなこと訊くまでもないだろう。ね、マリー様」

マリー「どっちが上かなんて決められないわ。どちらも素晴らしい、それでいいじゃないの」

安藤「か~っ!これだからお嬢様は!」

押田「さすがマリー様!寛大です!」


 <ザワザワ・・・ドヤドヤ・・・

マリー「あら、噴水の前が騒々しいわね」

 <コノヤロー! ナニヲー!

安藤「・・・なんだか穏やかじゃないな。行ってみよう」

内部生A「やはり貴様達の仕業だったんだな!この盗人どもめ!」

外部生A「違うって言ってるだろ!決めつけるんじゃない!」

 内部生B「我々の敷地に無断で入っておいてその言い草はなんだ!」

 外部生B「お前達だって寮に押し入ってきただろう!」

  内部生C「なにをー!」

  外部生C「なんだとー!」

 \ワーワー!/ \ナメンジャネエゾー!/ \フザケンジャアリマセンワー!/


押田「きみたち、まちたまいー!」ザッ

安藤「何を言い争っているんだ」ザッ

内部生A「押田様!マリー様!お帰りなさいませ」

外部生A「安藤!聞いてくれ、こいつらが――」

内部生A「押田様、ごらんください!外部生の連中がこれを隠し持っていたのですよ!」

押田「!・・・これは・・・」

安藤「青と金のリボンで包まれた・・・包み・・・これって」

内部生B「これは押田様がマリー様への誕生日プレゼントとして用意なさっていたものですよね」

内部生C「外部生の奴らがこの包みを持って、寮に入ってゆくのを目撃したんです!」

押田「なっ・・・やっぱり外部生が持っていたのか!」

 安藤「――・・・やっぱり?」

外部生A「違うと言ってるだろう!私達は安藤に頼まれてこの包みを探していたんだ!」

外部生B「戦車倉庫の奥で見つけたから、安藤さんが帰ってきたら報告しようと持ち帰ったんだ」

外部生C「そしたら内部生の連中が我々の寮に押し入って奪っていったんだ!盗人はお前達の方だ!」

内部生A「嘘を言うな!最初からお前達が隠していたんだろう!」

安藤「・・・」

マリー「あなた達、少し落ち着きなさい」

内部生A「!・・・マリー様」

マリー「押田、この包みは戦車倉庫の奥にあったそうだけど、心当たりはあるのかしら?」

押田「そ、そういえば・・・誕生日当日の朝連までは確かに持っていましたが、そこで置き忘れていたのかも・・・」タラ~

マリー「それから?」

押田「・・・安藤に探してほしいと頼みました・・・外部生の者達が言っていることは本当です・・・」

外部生A「ほれみろ!」

内部生A「なっ・・・そ、それは本当ですか押田様」

押田「・・・」コクリ

内部生A「っ・・・我々の勘違いだったとは・・・」

外部生A「盗人呼ばわりされたんだ!謝ってもらいたいね!」

安藤「押田」


安藤「『やっぱり』・・・あんたそう言ったよな?」

押田「!」

安藤「外部生が包みを持っていたと聞いて、第一声が『やっぱり』・・・我々が盗んだと、そう思っていたのか」

押田「・・・い、いや・・・」

安藤「私に探してくれと頼んだのは、外部生の誰かが盗んだと思っていたからだったのか」

押田「・・・そういうことでは――」

安藤「見下げ果てられたものだな・・・こんなことじゃ一緒に戦うなんて無理な話だ」

押田「・・・!」

安藤「・・・試合はあんた達だけでやるんだな。行こうみんな」

押田「!?・・・な・・・待て!どういうことだ!?」

安藤「あんた達とはやっていけない・・・私達はチームを抜ける」

押田「っ!・・・安藤待て。待ってくれ・・・安藤・・・・・・安藤!」


マリー「・・・」





 ――・・・

押田「本日の戦車道訓練を開始する」

内部生A「押田様・・・外部生の者達が見当たりませんが・・・」

内部生B「一回戦まで日が無いのに合同練習が全然できていません。このままでは・・・」

押田「・・・」

内部生C「あの一件以来、外部生とのコンタクトは一切無いままです。大丈夫なのでしょうか」

押田「試合には来てくれるはずだ。多分・・・」

内部生A「・・・」


砂部「統一どころか決定的に分裂してしまうとは・・・」

祖父江「マリー様、このままでは試合などできません。どうするおつもりですか?」

マリー「ん~、今日のティラミスは絶品ね~♪」

祖父江「ま、マリー様!ケーキを食べている場合では・・・」

マリー「ガトーショコラも食べよ~っと」ルンルン

祖父江「・・・ダメだこりゃ」

砂部「このチーム、どうなっちゃうんでしょう・・・」

 ――・・・

安藤「よーし、トレーニングはここまで。食事にしよう」

外部生A「あー疲れた!戦車無しの基礎練習でも疲れるな」

外部生B「しっかしエスカレーター組のお嬢様どもめ、謝罪に来る気配がない」

外部生C「箱入り娘は頭の下げ方もわからないらしい」

外部生D「私達が試合に参加したくて譲歩すると思っているんだな」

外部生E「舐められているんだ。頭にくるな・・・」

安藤「・・・向こうが土下座でもしない限り、私達は試合に参加しない」

外部生A「わかっているよ安藤。全員でそう決めたんだ。ここで引き下がるわけにはいかない」

外部生B「これは私達の誇りをかけた問題です。妥協する必要はありませんよ」

安藤「・・・」


 ――・・・

安藤「――そこでアタシは言ってやったのさ。『私はやらない。そんなフリフリな服着るもんか』ってな」

外部生A「ははは、やるじゃないか。さすがだ安藤」ハッハッハ

 押田「あ、安藤くん・・・!」

安藤「!」

押田「あの・・・・・・少し話したいんだが・・・」

安藤「購買に行こう。なんか飲みたい気分だ」ザッ

外部生A「・・・あ、ああ」

押田「お、おい安藤くん・・・!」


外部生A「・・・いいのか?彼女、謝ろうとしたんじゃないのか?」

安藤「・・・」


マリー「・・・」





 ――戦車道全国大会一回戦当日――

蝶野「BC自由学園の選手の方、試合開始まで10分ですが準備はよろしいですか?」

押田「も、もう少しで整うのでご心配なく」

蝶野「10分後に待機できていなかったら試合放棄と見なしますよ」

 内部生A「ど、どうしましょう押田様・・・外部生の連中会場に来てませんよ」

 内部生B「まさか本番もボイコットするなんて・・・」

 押田「やむを得ない・・・我々だけでやるしかない。なんとか乗り切ろう。BCの・・・マリー様のために!」

  内部生達『マリー様のために!』

内部生C「ところで押田様、マリー様はどこにおられるのですか?」

押田「え・・・?」

内部生C「今朝から一度もお見かけしておりませんが、誰かご存じなのでしょうか」

押田「・・・」

内部生A「・・・そういえば私も見かけていませんわ」

内部生B「朝、学園艦を出発した時も見かけませんでしたね・・・」

内部生C「・・・これはもしや・・・行方不明ということでは・・・」

 内部生A「なっ!?」

  内部生B「なッ・・・!」


押田「ぬゎんだってえぇーーー!?」

 ――・・・

安藤「ほい、Aのスリーカード」パサッ

外部生A「ゲッ・・・また安藤の勝ちか」

安藤「はっははは、すまんなキミ達。今日は私の日らしい」ハッハッハ

外部生B「ちぇーっ、安藤さんには勝てないや」

外部生C「でもいいんですか?今日は大会本番なのに戦車倉庫でダラダラしてて・・・」

安藤「・・・」

外部生D「奴らだけで一回戦を突破できるかどうか・・・」


 電話<Prrr・・・

外部生A「あ、電話」

安藤「私が出る」ガチャ

 安藤「もしもし?」

押田【安藤!大変だ!すぐにみんなを集めてくれ!】

安藤「電話口で謝るつもりか?」

押田【それどころじゃないんだ!マリー様が・・・マリー様が行方不明なんだ!】

安藤「・・・なんだって?」

押田【朝から誰も見てないんだ!学園艦を探さなければ!君達も手を探してくれ!】

安藤「落ち着け。そんなに慌てて――」

押田【キミもマリー様のお世話をしていたなら知っているだろう!あの方が一人でいなくなるなど・・・どんなことになるかしれない!】

安藤「・・・たしかに。わかった。後で合流しよう」ガチャ

外部生A「どした?」

安藤「隊長が消えた。皆、探しに行くぞ」

 ――・・・

外部生A「隊長ぉー!どこにいるんだー!」オーイ

外部生B「東側にはいませんでした」

外部生C「こっちもダメ!」

外部生D「どこにもいない・・・あのオトボケ隊長のことだから誘拐されてても不思議じゃない」

外部生E「も、もしかしてヤバいんじゃ・・・」ゴクリ

安藤「くそっ・・・どこに行ったんだ」


押田「安藤!」タタタ

安藤「!・・・見つかったか?」

押田「いや・・・手がかりもなにもない・・・」

 内部生A「キミたち!なにか心当たりは!?マリー様の居そうな場所!」

  外部生A「そう言われても・・・朝に点呼してないのか?」

 内部生B「どうだろう・・・みんな緊張してて覚えてなくて・・・」

  外部生B「誰か最後に隊長を見かけた者は?」

 内部生C「昨夜はモンブランを食べてらしたのに・・・」

  外部生C「とにかく手分けして探そう。それしかない!」

押田「安藤・・・もしマリー様が攫われでもしていたら・・・私・・・私・・・」

安藤「落ち着け。滅多なことは考えるな。ほら、探しに行こう」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・


・・
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


安藤「クソッ・・・もうすっかり日が暮れてしまった」

押田「・・・これだけ探しても見つからないなんて・・・」

安藤「学園艦の外となったら探しようがないぞ・・・」

押田「しかしマリー様が行きそうな場所はあらかた探した・・・もう我々の目の届かない所へと行ってしまわれたのか・・・」

安藤「私達の目の届かない場所・・・」


安藤「 あ 」


押田「?・・・どうした安藤」

安藤「あ~・・・・・・そうか・・・そういうことか」ポリポリ

押田「!?・・・な、何だ?なにかわかったのか?」

安藤「おーい皆、もう大丈夫だ。捜索は中止してくれ」

 外部生A「なんだ安藤、見つかったのか!?」

 内部生A「ほ、本当ですか!?ま、マリー様はどこに!?」

安藤「安心してくれ。無事に隊長を連れて帰ってくると約束するよ。君達は休んでくれていいよ」

内部生A「!?・・・ど、どういうことなんですか!?」

安藤「戦車を一輌借りていく。押田、行くぞ」

押田「?・・・どこへ・・・?」

安藤「決まってる。あの場所だ」





 ソミュア<ギャラギャラギャラ

安藤「もう夜になっちゃったな」

押田「・・・そろそろどこに向かっているか教えてくれてもいいじゃないか。本当にマリー様の居場所がわかったのか?」

安藤「私を信じろって」

押田「無茶を言うな」

 ソミュア<ギャラギャラギャラ・・・

安藤「ゲッ・・・渋滞だ。公道はこれだからヤなんだよな」

押田「歩道が空いているではないか。行け」

安藤「アホなこと言うな」

押田「なにをゆうちょうな。早くマリー様のところへ行かねばならないのに混雑する道を通るヤツがあるか!」

安藤「うるへー!私が操縦してんだ!黙ってろ!」

押田「なにをー!」

安藤「なんだー!」

 ソミュア<・・・・・・

安藤「・・・」

押田「・・・」


押田「・・・・・・」

安藤「・・・っ」

 ガコンッ

 ソミュア<ガロロロォン・・・!


 ソミュア<ギャラギャラギャラ!

押田「・・・公道はずいぶん混んでるな」

安藤「どけってんだ。ソミュアのお通りだぞ」ガコッ

 ソミュア<ギャラギャラギャラ!


 公用車<プップー! ププーッ!

安藤「お出ましだな。逃げ切れるかどうか100ユーロ賭けよう」

押田「・・・」

安藤「どうする?」

押田「乗った」

 ソミュア<ブオォン!ギャラララララ!

押田「絶好調だな」

安藤「ああ」

 ソミュア<ギャラララララ!

 公用車<ブオオォ――・・・


安藤「ハッハッハ!どうだ撒いてやったぞ!」

 公用車B<ブオン!

安藤「!?」

 ソミュア<キキィーッ! ギギギ・・・!


安藤「っ・・・くそっ」

押田「言うこと無しだな」


 公用車B<ガチャ

文科省役人「戦車から降りたまえ!キーを手に持って降りるんだ!」


安藤「・・・うまく切り抜けたら100ユーロ」

押田「キミが負けるよ」

安藤「じゃあ200だ」

押田「乗った」

 ソミュア<ガパッ

安藤「話を聞いてください」

役人「言い訳をするんじゃない。両手を頭の上に置きたまえ」

 公用車A<ブロロロ・・・ ガチャ

戦車道連盟会長「やれやれ・・・会合の帰りに面倒な現場に出くわしたもんじゃな」ドッコイセ

安藤「待ってください。これにはワケが――」

役人「口を閉じるんだ。もう一人車内にいるだろう。早く出てきなさい。このメガネには熱探知機能もあるんだ」

連盟会長「公道であんなスピードを出してはいかんだろう」

安藤「だから話を――」

役人「ソミュアの中のもう一人!いい加減にしないと廃校にするぞ!早く降りてくるんだ!」

安藤「降りられないんだよ!彼女は重体なんだ!」

役人「!?・・・何を言っている」

安藤「妊娠してるんだよ!8ヶ月目なんだ!見てみろ!」

連盟会長「なっ・・・まさか」バッ

 ソミュア<ノゾキコミッ

 押田「――うう・・・ハァ、ハァ・・・ううぅ・・・」

連盟会長「こりゃ大変だ!お腹が膨らんだ生徒がおるぞ!」

安藤「ホラみろ!」

役人「!・・・な・・・そんな」

安藤「なんだってんだ!遊びで戦車走らせてたと思ったのか!?病院に連れてくとこだったんだよ!破水してるんだ!こんなトコでグズグズしてたらどんどん危なくなる!」

 押田「うぅ・・・お腹痛い・・・!」

連盟会長「こりゃまずそうだ。辻くん、君もその目で確かめたまえ」

 ソミュア<ノゾキコミッ

役人「・・・ほ、本当だ。どうしましょう・・・?」

安藤「よーしいいだろう、考えてくれ。ゆっくりな。ただしダンナにはアンタから説明してくれよ。もし母子に何かあったらアンタのせいだ。ホラ考えろ!」

役人「・・・!」

 押田「ううう!痛いイタタタタタタ!アタタタタタ!」グウゥ~!

安藤「あァ!?考えろ考えろ!」

 押田「ああ~~~!おなかいたいよぉ~~~!」ジタバタジタバタ

安藤「もう片足出てるかもしれないぞ!」


役人「~~~っ!・・・行け!急いだ方がいい!」

 安藤「・・・ヘッ」

役人「君、どこに向かってたんだ?」

安藤「救急外来」

役人「では我々が先導しよう。未来ある子供達のためだ。会長の車は後方を」

連盟会長「う、うむ!がんばるんだぞ君達!」

 公用車A<バタム 公用車B<バタム

安藤「・・・・・・ふぅ、うまくいったな」

押田「にっ、にっ、妊娠だと!?誰が妊婦さんだ!」ポカポカ

安藤「ハッハハハ、そう膨れるな。名演だったぞ」ハハハ

押田「私が妊娠なんてっ!そもそも私は男性とふれあったことすら――」

安藤「わざわざクッションを服に入れて、オスカー女優も真っ青だな」ハハハ

押田「そ、それよりも!それよりもだっ!今は一刻も早くマリー様のもとへ行かねばならんのだ!早く出発しろ!」

安藤「いい大人が二人してダマされてたな。200ユーロ儲かった」フフ

押田「馬鹿言うな!賭け金が高すぎる!」

安藤「ムードを変えてお祝いだ。ソミュアにコンポを積んでて正解だったな」

 CDコンポ<ガチャッ ♪~【EARTH WIND & FIRE:SEPTEMBER】

押田「いいか!私のおかげで助かったんだぞ!そこんとこ忘れるな!」

安藤「なあ押田クン、『先導しよう。未来ある子供達のためだ』だとさ。この先我々がどうなる見物だな」ハハハ

押田「まったく・・・野蛮人はこれだから」

安藤「待ってろよマリー、今迎えに行くからなー!」オーッ!






マリー「ずいぶん遅かったわね」


安藤「やっぱりここだったか」

押田「マリー様!こんなところに・・・!」


 ――・・・―― 《 凱旋門 》 ――・・・――


マリー「あんまりあなた達が来ないからここに家を建てちゃおうかと思ったわ」

安藤「まったく、振り回してくれるよな」

押田「遅くなり申し訳ありません」

マリー「ほんと、待ちくたびれちゃったわ」

押田「・・・面目次第もございません・・・マリー様・・・その・・・私達――」

安藤「わかってるよ隊長。あんたの言いたいことは・・・」

マリー「・・・」

押田「マリー様・・・」

マリー「今回の教訓は?」

押田「・・・・・・仲間を疑わない・・・でしょうか?」

マリー「ちがう」

押田「・・・ケンカしない?」

マリー「ちがう」

押田「で、では・・・」

マリー「きちんと謝ること」

押田「!」

マリー「間違いは誰にだってあるわ。人間だもの。肝心なのは自分の非を認めて、ちゃんと謝ること」

押田「・・・・・・はい」

安藤「まったくだ」

マリー「あなたもよ安藤」

安藤「え”っ」

マリー「合同練習サボったでしょ」

安藤「あれはこいつらが謝りにこないから・・・」

マリー「意地張って謝る機会を与えもしなかった。わざと無視したりイジワルして」

安藤「で、でも――」

マリー「間違いを許して受け止めてあげられるくらいの余裕をもちなさい。嫌がらせはダメ」

安藤「・・・・・・はい」

マリー「んっ」

押田「安藤・・・すまなかった」ザッ

安藤「!」

押田「・・・君や外部生の者達に対する大変失礼な言動の数々・・・お詫びさせてくれ。申し訳なかった。どうか許してほしい」

安藤「・・・」

押田「この通りだ」

安藤「・・・・・・はぁ・・・わかってるよ。君が我々にチームを抜けろだとか言っていたのも、全部マリーに勝利を捧げるためだ。わかってる」

押田「・・・」

安藤「だがあまりにヒドイ言動もあったぞ。そこは反省してくれ。いいな」

押田「・・・善処する」

安藤「それと・・・私もすまなかった。無視したりして・・・意地になってたんだ。ゆるしてくれるか?」

押田「ああ、いいとも」

安藤「・・・」

押田「・・・」

安藤「・・・~~っ!ああ~っ、なんかムズガユイな!君に頭を下げられるとヘンな感じだ」カイカイ

押田「なっ・・・人が真剣に謝っているのに!君というヤツは!」

安藤「ははは、そうやって吠えている方が君らしいよ」

マリー「ふふふ、それは言えてるかもね」

押田「むう・・・」

マリー「じゃあ仲直りも済んだところで、コレ、開けてもいいかしら?」スッ

押田「あっ、金と青の包み・・・それは――」

安藤「押田からの誕生日プレゼント。まだ開けてなかったのか」

マリー「楽しみにとっておいたの♪押田、開けてもいいかしら?」

押田「は、はいっ。ど、どうぞ」

マリー「なにがでるかな♪なにがでるかな♪」ビリビリ

安藤「あーあー派手に破いちゃって・・・」

マリー「んマッ、これは――」


押田「“扇子”です。本場のフランスでは贈り物として扱われているそうで・・・」

安藤「ピンクのファーが付いた派手な扇子だな・・・成金趣味っぽい・・・」

マリー「いいわ~!いいっ!気に入ったわ♪」

安藤「え”っ」

マリー「隊長らしいアイテムが欲しかったところなの。試合でも使うわね♪」

押田「よろこんでもらえて光栄です!」

安藤「試合と言えば・・・一回戦のことなんだが・・・」

押田「我々の試合放棄ということで不戦敗となってしまいました・・・」

マリー「いいわ。あんな状態で戦っても意味がないもの」

安藤「おっしゃるとおりで」

押田「戦わずして聖グロリアーナに勝利を譲ることになろうとは・・・」

マリー「悔しい気持ちはわかるわ。でもね、これを見て」ピラ

安藤「なんだこれ?お金?・・・それも大金じゃないか!」

マリー「安藤が描いた油絵、ダージリンに1万1000ユーロで買ってもらったの」

安藤「ほ、ホントに!?」

押田「あんなラクガキを・・・!?」

マリー「安藤が描いたと知らずにね。ちょっとスカっとしたでしょう?今頃、聖グロの玄関先に飾られてるかもしれないわ。フフフ」

安藤「・・・ふふ、確かに笑えるな。マリー様にゃ勝てないや」

押田「・・・私は罪悪感でいっぱいです」

マリー「試合では負けたけど勝負では勝ったというところかしら」フフフ

押田「しかし・・・全国の強豪に勝つというマリー様の夢が・・・」

マリー「まだ私達にはチャンスがあるわ。それも年内にね」

押田「・・・?」

安藤「無限軌道杯か」

マリー「そう。今度こそ私達、BC自由学園の凱旋よ。この門を笑顔でくぐりましょう」

安藤「頼りにしてるよ、隊長」ポン

押田「全力を尽くします、マリー様」

マリー「んっ」


マリー「それじゃあ、帰りましょっか♪」

http://uploader.sakura.ne.jp/src/up174257.jpg

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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・・・
・・


 ――無限軌道杯 一回戦――

蝶野【大洗女子学園の勝利!】


 ・ ・ ・

みほ「楽しい試合をありがとうございました!」

マリー「こちらこそ。まるで革命が起きたかのようなすごい試合だったわ。次は絶対革命鎮圧してあげるけどね」

麻子「マカロンもっと食べてもいいかな!」

マリー「もっちろん♪好きなだけお食べなさい」バサッ

 大洗一同『はぁ~~~い!』


押田「戦った相手にも敬意を忘れない、さすがマリー様!」

安藤「はぁ・・・勝利の凱旋が出来るのはまだ先になりそうだ・・・」

押田「気負うな安藤くん。いいじゃないか、勝てなくたって」

安藤「あ?」

押田「見ろ、マリー様のあの幸せそうなお顔を」

 マリー「ふふふ♪」

安藤「・・・」

押田「マリー様が幸せなら、私は満足だ」

安藤「・・・はいはい。そうだな。アンタらにはかなわんよ」

 安藤(まあ・・・私もだがな)

マリー「安藤~、押田~、あなた達もいらっしゃ~い。大洗の皆さんと交流を深めるのよ~♪」

安藤「負けた相手にあんな笑顔で仲良くできるなんて、やっぱマリーって大物なのかバカなのか区別がつかんな」

押田「んなっ!?キサマ安藤ぉ!マリー様を愚弄するな!キサマはいつまでたっても無礼なヤツだな!」

安藤「なんだと!敵に騙されて身内を攻撃したお前には言われたくない!」

押田「そ、それはすまなかったって言ってるだろう!済んだことを掘り返すな!」

安藤「いいやこの件はいつまででも引き合いに出させてもらうぞ!謝罪も込めてランチでもおごってもらわにゃ割にあわんからな!」

押田「セコイことを言うな!いやしんぼっ!」

安藤「なんだとケチッ!」

 押田「やいの!」

 安藤「やいの!」

 \ヤイノヤイノヤイノヤイノヤイノヤイノ!/


みほ「あの~・・・マリーさん、お二人がケンカしてるみたいですけど・・・」

マリー「いいのよ。いつものことだから」モグモグ

沙織「いつもなの!?」

優花里「なんだか面白い学校ですね、BC自由学園って」

華「ケンカするほど仲が良いということですね」

みほ「いいんですか?放っておいて・・・」


マリー「ここではあなたの学校より、人生がもうちょっと複雑なの。仲直りだったらいつでもできるけど♪」


 ~fin~

 ~おまけ~

 《☆安藤が描いたよくわかんない絵☆》

ダージリン「・・・」コウチャ スス・・・

オレンジペコ「あ、ダージリン様。新しい絵画を購入されたんですか?」

ダージリン「そうよ。ペコ、とても前衛的な油絵だと思わない?」

オレンジペコ「えぇっと・・・ちょっと私には難解ですね」

ダージリン「んっふ、そう。まあこの絵の味を読み取るには相応の芸術性が無いと難しいわね」

オレンジペコ「へえ」

ダージリン「1万1000ユーロで買ったの」

オレンジペコ「はあ」

ダージリン「きっとフランスの名のある画家が描いた名作よ。私くらいになればわかるの」

オレンジペコ「あっ、隅っこのほうに何か書いてますよ」

ダージリン「えっ」

オレンジペコ「【BC自由学園 安藤レナ作】・・・って・・・」

ダージリン「・・・」

オレンジペコ「・・・」


ダージリン「んっふ」

 ~おしまい~

これにて完結です。ここまで読んでくれた方ありがとうございました
この作品はフランス映画『最強のふたり』を基に作られておりますので、映画を見てからだと飲み込みやすいと思います

>>70>>90に貼った画像はこちらの方( https://www.pixiv.net/users/12637631 )に描いていただきました

>>6に貼った画像はこちらの方( https://www.pixiv.net/users/2798146 )に描いていただきました
 また、>>6の画像が見れないとの報告をいただきましたので張り直します

http://uploader.sakura.ne.jp/src/up174258.jpg

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