荒木比奈「アタシらしい明日」 (23)

比奈「……」

ミーンミンミン

比奈「……」パラ

比奈「?」ポコン

比奈(お。柚から着信)

比奈「はいっス」

柚『やっほー比奈サン。いま大丈夫?4人でおしゃべりしよー』

比奈「ん、いいっスよ」

柚『やったー』

柚『楓サンと仁奈チャンにも声かけたとこ。比奈サンはいまなにしてた?』

比奈「マンガ読んでたっス。これ」

柚『おっ。アタシまだ読んでないやつ。おもしろい?』

比奈「すっごいおもしろいっス。おすすめっス。今度貸しまスよ」

柚『やったー』

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1596353405

比奈「取りに来る?」

柚『そうするー。今度、そっちの方にランニングでもいこっかなー』

比奈「うげ。元気。マスクもするんでしょ?熱中症に気をつけるっスよ」

柚『へへ。今日も午前中はバドミントンの練習いってきた。セミすごいね!夏だ!』

比奈(若い。元気)

比奈「ふふ。アタシはずーっとエアコンの効いた室内で巣篭もりっスよ」

柚『たまには体動かした方がいいよー』

比奈「わかる」

楓『じゃあ私、こんど柚ちゃんのランニングに付き合わせてもらおうかしら』

柚『あっ。楓サンやっほー。ぜひー』

楓『やっほー。わーい』

比奈「お疲れさまでス」

柚『じゃあ比奈サンもいっしょに!』

比奈「お疲れさまでス」

柚『ぶー』

楓『ふふ』

楓『私は、一汗かいたあとのビールのために、頑張るの』

比奈「あー……それちょっといいな……」

楓『キンキンに冷えたビールのために、比奈ちゃんも、近々どうですか?ふふ…』

比奈「あ、やっぱ大丈夫っス」

柚『じゃあアタシ、ポカリ!』

比奈「あまい」

柚『汗ばーってかいたあと、すっごいおいしいんだよ!』

比奈「おお……なんかすごい敗北感……」

柚『??』ニパニパ

比奈「そだ」

比奈「楓さん。楓さんが好きそうなお酒また見つけたんスけど。頼んでみまス?」

楓『わ』

楓『いつもありがとう。じゃあ、お願い』

比奈「うっス」

柚『買い物代行?』

比奈「というか、探すの代行っスね。探すってほどじゃないけど。SNSとか見てて、ほら、いまいろんなところが買い手探してたりするじゃないっスか」

柚『へー。そうなんだ』

楓『通販は使えるんだけど、そういうの、探すのは苦手で……』

比奈「お安い御用っスよ」

比奈「……そういや、なんか仁奈ちゃん入ってくるの遅くないっスか」

柚『あっほんとだ』

比奈「いや、これつながってるけどマイクオフってるな……えと、別に一度連絡を……」カタカタ

柚『へへ』

楓『ふふ』

比奈「?」

比奈「なんスか」

柚『なんでもー』

楓『なんでもー』

仁奈『……』モフグス

仁奈『……いじめられてるかと思いやがりました……』

柚『わ、わー。そんなわけないから!』

楓『よ、よーしよーし』

比奈(エアーよしよし……)

比奈「……仁奈ちゃんってぎゃくに器用っスよね。需要あるやつ。さすがっス」

仁奈『え。そ、そうでやがりますか。仁奈すげーですか』

比奈「すげーでス」

比奈(配信でこれやったら受けるだろうな。わざとやったりはしないスけど)ウン

仁奈『わあ』

仁奈『えへへ。ありがとーごぜーます』ニパー

仁奈『比奈おねーさんがいないと仁奈はたぶん、もふししやがります!』

比奈「もふし?」

柚『あべしかな?』

比奈「断末魔」

柚『よーし。仁奈チャンっアタシとリモートばどみんとんで勝負だっ』

仁奈『わーい。やるー』

比奈「パントマイムじゃなくて?」

柚『アタシが勝ったら仁奈チャンもこんど一緒に比奈サンちまでランニングだ!』

比奈「ちゃっかり目的地がアタシんちになってる。密でスよー」

柚『仁奈チャンが勝ったらそのあと比奈サンもランニングだ!』

仁奈『のったでごぜーます!』

比奈「のるなっス。まあ、外なら、密じゃないか……しょうがないっスねぇ……」

柚『わーい』

仁奈『わーい』

楓『ふふ』

柚『ほあっ。ジャンピングすまっしゅ!』

仁奈『あまいでごぜーます、仁奈はもふもふなのでスライディングしほーだいですよ!』ズサーモフー

柚『な、なんだとー』

比奈(元気がまぶしい)

楓『……』

楓『ねえ。比奈ちゃん』

比奈「?はい」

楓『ちょっとだけ、お酒、付き合ってくれない?』

比奈「えと……」

比奈「もう夕方だし、ちょっとなら」

比奈「柚と仁奈ちゃんもいるから、ちょっとっスよ」

楓『うん。ありがとう』

楓『かんぱい』

比奈「乾杯」

楓『あ、それ。このまえ私が頼んでもらった』

比奈「そっス。えへへ。楓さんにちょこっともらったら、おいしいなって。自分でも頼んじゃいました。飲みやすいっスよね」

楓『ね』

仁奈『ひっさつ!もふ・もふ・ぶんしん!』

柚『な、なにー。仁奈チャンがもふもふで……な、なんたいいるかもわからないぞっ』

比奈「……」クピクピ

比奈「楓さんは、最近どうっスか?」

楓『うん?』

比奈「仕事とか」

楓『えっと……。モデルのお仕事は、だいぶ、現場でいろいろ対策もしてくれて。またやれるようになってきたよ。遠出の撮影はできないけど』

比奈「そか。よかったっス」

楓『みんなとリモートでできるお仕事も、ちょっとずつふえてきたしね』ニコ

比奈「ね。よかったっス」

楓『うん』

仁奈『いけー』

柚『が、がめんいっぱいにもふもふがー』

比奈「あれルールどうなってんスか」

楓『楽しんだ方が勝ちなんじゃないかな?』クス

比奈「なるほど」

楓『比奈ちゃんはどう?』

比奈「アタシっスか?」

楓『うん。充実してそうだなって』

楓『えっと、ブログとかYouTubeで、いろいろ紹介したり。あとマンガを書いてるところなんかも……この前、観たよ』

比奈「わあ。み、観てくれたんスか?」

楓『もちろん』

比奈「う、な、なんか、恥ずかしいっスね」

楓『ふふ』

楓『あと、私にお酒を紹介したりとか』

比奈「それ仕事ちがう」

楓『てへ』

比奈(もはやずるいかわいい)

柚『くかー』

仁奈『すぴー』

比奈「えっなんでいつのまにか寝てるんスかこの子たち」

楓『ふふふ』

楓『あと、それから』

比奈「?」

楓『柚ちゃんにマンガを貸してあげたり』

楓『ステイホーム中の仁奈ちゃんの面倒を見てあげたり』

比奈「あはは。それも仕事勘定っスか?」

楓『ううん。でも、ありがとう』

楓『みんな、比奈ちゃんに助けられているから』

比奈「……や」

比奈「それはまあ、アタシはもともと、みんなより巣篭もりタイプなだけっスよ」

楓『そう?』

比奈「そうっス」

比奈「……」グビ

比奈「ぷは」

比奈「正直、正直っスよ?」

楓『うん』

比奈「活動自粛って聞いて、不安になりましたよね」

楓『うん』

比奈「ああ、アタシ、また元に戻るのかなって。せっかく外に出れたのにって。や、別に、元々引き込もってたわけじゃないっスけど」

比奈「なんというか、アイドルじゃなくなっちゃうんじゃないかなーって、……怖くて」

楓『うん』

比奈「でも反対に、外出できなくてストレスたまるーって言ってる人がいて」

比奈「アタシ、そういうのわかんなくて。むしろうちにいて許されるのって嬉しいじゃんって思ったりもしたんス」

楓『比奈ちゃんらしい』

比奈「本音っスからね」エヘヘ

比奈「……そしたら」

比奈「そしたら、プロデューサーに、言われたんでスよね。比奈もずっと外に出てないといけないって言われたら辛いだろう?って」

楓『ふふ、それ、めちゃくちゃ』

比奈「それっス!めちゃくちゃっスよ!」

比奈「でも、……なんか、腑に落ちたんスよねえ」

比奈「ああ、そっか。じゃあアタシはまだ平気なぶん、なにか、できることをしようって。思ったんス」

楓『うん』

比奈「それに、アイドルになって、キラキラできたアタシが、いなくなったわけじゃないし……」

比奈「アイドルしてきた時間がなくなるわけじゃないし」

比奈「そしたらいろいろ、できる気がして来たんでスよね。いまでも、いまだからこそ、アタシにできることが……。それで、いろいろ手を出してるところというか」

比奈「て、これ、すみません、最近のアタシの話じゃなくなってまス。なに自分語りしてんだ、アタシ」

楓『ううん』

楓『キュンと来ちゃった』

比奈「へ」

楓『比奈ちゃんはもう、ただのアイドルじゃなくて、すごくアイドルね』

比奈「な、なんスかそれ……。でも、うわ、楓さんがそれ言うの、ずるいっス」

楓『ふふ。そんなことないよ』

楓『ありがとう』

比奈「……」

比奈「いや、そんな。なんでお礼……」

楓『私は、そんな比奈ちゃんにすごく励まされているから』ニコ

比奈「……」ウグ

比奈「う、あー。酔った。酔ってるんスよ?だからっスよ?」

楓『ふふ。そうね』

楓『お酒、おいしいね』

比奈「……」アー

比奈「そっスね」

楓『うん』

楓『えっと』

楓『私はこんなでも、比奈ちゃんよりお姉さんだから。たまには、私のこと、頼ってね』

比奈「……ふふ。こんなでもって」

比奈「ふふ。ふふふ。いやー。高垣楓のいまの笑顔、台詞を独り占めできただけでもう、十分っス」

比奈「やった」

楓『あら。嬉しい』

比奈「どういたしまして」

比奈「こちらこそ、ほんと、ありがとうございまス。楓さん」

楓『こちらこそ、こちらこそ。ふふ』

比奈「……へへ」

柚『くかー』

仁奈『もふぴー』

比奈「……」

比奈「じゃ、この二人を寝かしつけて、今日は解散にしまスか」

楓『うん。そうね』

楓『あ。そうだ。せっかくなら、比奈ちゃんも私が寝かしつけてあげようか?』

比奈「むぐ」

比奈「そ、そこまでおねーさんしなくていいっス!」

楓『ふふ。冗談♪』

比奈「……もう」

比奈「……楓さん。楽しかったでス。お酒、おいしかった。また明日」

楓『うん。また明日。おやすみなさい』


・・・・おしまい

おわりん

在宅系アイドル荒木比奈
お読みいただきありがとうございましたー

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