【アイマスSS】「終わらない全てを!!」 (156)


高木順二郎「あー、そこでこっちを見ている君!」


高木「そう君だよ、君! まぁ、こっちへ来なさい」


高木「ほう、何といい面構えだ。ティンときた!」


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1596650055

このSSは以下の要素を含みます

【シンデレラガールズ】【ミリオンライブ!】【XENOGLOSSIA】



登場人物の紹介



765P……美希・響・貴音のユニットを率いてIA大賞を狙う。


961P……961プロに所属するアイドルたちを率いる。


律子……竜宮小町のプロデューサー。


黒井……ジュピターに961プロを去られ、己の信念を失う。961Pをプロデューサーに雇い、ふたつのユニットをデビューさせた。



【961プロのユニット】

モンデンキント……春香、千早、雪歩、真のユニット。ジュピターの活躍によりデビューが遅れていた。ユニット名の意味は「月の子ども」


わんつ→ているず……真美、やよいのユニット。モンデンキントと同時にデビューする。



【プロローグ】





―――ここは765プロ。


TV<961プロカラ、新ユニットデビュー!!


美希「あ、見て見て、961プロの新ユニットなの」


響「前に雑誌で見かけたな。“モンデンキント”と“わんつ→ているず”だっけ」チラッ


TV<マミダヨーン!! ウッウー!!タカツキヤヨイデスー!


貴音「話には聞いておりましたが、亜美の姉妹である、双海真美はこの人物なのですね」


響「ホントに亜美そっくりだぞ」


美希「ねーねープロデューサー、このふたつのユニットどう思う?」


765P「おう、みんな可愛いが……」


765P「まだ美希たちフェアリーを超えるようなユニットじゃあないな」


貴音「プロデューサー、油断はなりませんよ?この方々は961ぷろのあいどるです」


響「同じIA大賞を狙ってくるユニットだもん、自分たちもうかうかしてられないなー!」


765P「やる気があるのは良いことだ。俺たちも頑張ろう」


765P「よし、んじゃあ仕事行こうか」


美希「はいなの!」スタッ


TV<ツヅイテハ、モンデンキントニヨル ビネツエスオーエス デス!


美希「たしかに、スタイル的には美希たちが勝ってるって感じかな!」アハッ


響「どういう目線なんだそれ」ハハ…


―――――

―――




──場所は変わって、ここは高木社長の通うバー。カウンターには高木と黒井社長の姿がある。

偶然に会した2人は、一体どんな会話を交わしているのか。


高木「いやぁ~驚いたよ!まさか961プロから新ユニットがふた組も!」


高木「同時にふた組もデビューしたんだからねぇ」


黒井「……温存していただけだ。ジュピターが消えた今、新たに我が社の看板となるのは、あの子達だ」


黒井「お前たちには二度と負けん……真の王者が誰だか思い知らせてやるからなっ!!」


高木「しかし…竜宮小町に歌唱対決で一度敗れただけで、ジュピターを手放すなんて、お前はどうして……」


黒井「奴らが勝手に離れていっただけだ!分かったようなことをいうな……!」


高木「……ああそうだな」


高木「それで、お前のユニットは竜宮小町とフェアリーを超えていく算段はあるのかい?」


黒井「貴様に話すような理由もないが……」


黒井「一つ教えてくれてやろう」


高木「もったいぶるねぇ。話してくれよ」


黒井「……ジュピターの自立型アイドルユニットの体制を省みた結果」


黒井「……モンデンキント、わんつ→ているず、には新たにプロデューサーを構えることにした」


―――――

―――





―――ここはとあるホール。今日はここで、モンデンキントとわんつ→ているずがミニライブを開催していた。

小さいながらも満員になった客席。歌の披露を終えた真美の声が会場に響く。


真美「会場の兄ちゃん姉ちゃーん!!」


やよい「わんつ→ているず、これからもよろしくお願いしまーっす!!」


\ワーーーーーー!!!ヤヨイチャーン!!マミー!!/


やよい「うっうー!次はモンデンキントのみんなだよー!!」


\フゥゥゥゥゥ!!/


961P「お疲れ様。二人とも、素晴らしいライブだったね」


やよい「あっプロデューサー!お疲れ様ですーっ」


真美「兄ちゃん!真美たち、ちゃんと出来てたかな?」


961P「ああ、とても素敵だったよ。本当は今一緒に喜びたい所だけど…」


961P「モンデンキントが終わったら、合同ステージもあるからな。気を抜かずに行こう」


春香「さあラストだよー!みんな!!」


\ワァァァァァァァァ!!!/


雪歩「ラストの曲は、私たちモンデンキントの新曲!」


真「いっぱい盛り上がっていこうね!」


千早「最後まで、応援よろしくお願いします!」


\オォォォォォォォォォォォ!!!!/


かくして、961プロのミニライブは大団円を迎えた。

ステージ袖では成功を喜びあうアイドル達の姿がある。

デビューして一カ月足らず。駆け足で彼女たちは成長を遂げている。


…… 一方で、上手く回らない歯車もある。



真「…雪歩、今日は小さなミスが目立ったよ」


雪歩「…はい、ごめんなさい」 シュン


真「ステージの上であまり余計なことを考えるなよ。ミスしたらボク達は終わりなんだ」


真「特に雪歩は千早を意識しすぎだ。歌を届けるべき場所はどこだと思う?」


雪歩「…分かってます。私だって、あの人に迷惑はかけたくないです…!」


真「ボクの言いたいことは言ったから。ひきとめて悪かった」スタスタ…


―――――

―――




―――場面は再び765プロ……

全てのアイドルユニットが目指す“頂点”、『アイドルアカデミー』から通知が事務所に届いていた。


音無小鳥「プロデューサーさん、今年度のIA(アイドルアカデミー)大賞の詳細が届いてますよ!」


765P「ありがとうございます、音無さん。律子には俺から伝えておきますね」


高木「いや~今年は竜宮小町にフェアリーと、765プロからもノミネートが確実だろう!!」


高木「嬉しい限りだね、きみィ」ハッハッハ…


小鳥「今年は、765プロがIA大賞を勝ち取れますよ!」


765P「ええ、とにかく俺は全身全霊でフェアリーをプロデュースします!」


765P「他のユニットに負けないためにも」


765P「もちろん、竜宮小町にも勝てるように……!!」


―――――

―――





ここはとあるロケ地―――


秋月律子「……ありがとうございます、IA大賞ですか」


律子「電話の内容は聞いたわね、みんな」チラッ



双海亜美「んっふっふ~、亜美たちならヨユーで大賞とっちゃうっしょー!」


水瀬伊織「油断は感心しないけど、大賞取る気はあるわよ」


三浦あずさ「そうね♪みんなと一緒が楽しいっていう気持ちなら、私たちは誰にも負けないもの~♪」


律子「頼もしいわ。その意気よ……さあ、ますます忙しくなるわね!」


【プロローグ】 終わり



第一部 【アイドルアカデミー大賞】


961プロからモンデンキント、わんつ→ているずの両ユニットがデビューして、半年が経った。

軌道に乗り勢いを増す961プロ。圧倒的な実力でファンを増やしていく765プロ。

両者とも芸能界を盛り上げる先頭だ。


そんな中、アイドルユニットの頂点を決める闘いが、始まろうとしていた……


―――――

―――



―――ここは撮影スタジオ。

雪歩が初めて雑誌の表紙を飾ることになり、961Pと雪歩の2人が訪れていた。


961P「雪歩、お疲れ様」


雪歩「ふぅ、緊張しました……」


961P「実は、俺もカメラを持ってきたんだ」


961P「衣装のままで、記念に一枚撮ってもいいかな?」


雪歩「大丈夫ですよ。可愛く撮ってくださいね」ニコッ


パシャッ


961P「雪歩はどっちかっていうとモデル業に光るものがあるよ」


961P「もちろん、ステージが良くないって訳じゃないけど」


雪歩「うーん、その通りだと思います」


雪歩「私は……舞台に立つといつも自意識に苛まれるんです」


雪歩「私を見に来てる人はいない……そんな自意識に」


961P「……?どうしてかな。そんなことはないと思うけど」


雪歩「本当ですね。理由に心当たりがあるとすれば…」


雪歩「……私がどうしてアイドルなのか、実はよく分かってないからかもしれません……」


961P「雪歩……?」


雪歩「すいません、変なこと言っちゃって。次の現場に向かいましょう」


―――――

―――




―――また別の日。ここは、真が出演するドラマの撮影現場。

新人であるにも関わらず、殆どミスの無い演技をする真に、プロデューサーは見入っていた。


<キュウケイデース!


961P「真、すごいじゃないか!監督も『実力のある子だ』って褒めてたぞ!」


真「別に。誰に言ってんの」プイ


961P「別にって……真、かなり練習したんじゃないか?」


961P「そうじゃなきゃ、あれだけパーフェクトな演技は出来ないだろ」


真「……今日はボクは役者として呼ばれたんだ。ミスをしないのは当たり前なんだよ」


真「ミスしたらそこで終わり。肩書がアイドルだから低いハードルで褒められただけだ」


961P「でも、普段から一人でストイックにレッスンもやってるし、もっと力を抜いてもいいと思うぞ…?」


961P「俺たちは仲間なんだから、他のみんなも頼ったりしてさ……」


真「プロデューサー、ボク達は自分一人の才能を試す世界にいるんだ」


真「今は周りに人がいても、進んでいくうちにどんどん一人になっていく」


真「一人で上に登れないヤツはどうしようもないんだよ」


―――――

―――




―――視点は変わってここは765プロ。

ついにIA大賞からノミネートユニット発表の通知が届いた。事務所を緊張が覆う。

ノミネートに選ばれたユニットは、アカデミー主催のノミネート発表会、通称「船上ライブ」に招待され、

その後、数か月の審査期間を経てから受賞ユニットが決定する。


小鳥「IA大賞の運営から、ノミネートされたユニットの発表通知が届いてます!」


高木「おおぅ、ついにきたか…!」ガタッ


765P「音無さん、結果を教えてください」


高木「……」ドキドキ…


小鳥「ノミネートされたのは、876プロの『ディアリースターズ』を筆頭に…」


小鳥「…魔王エンジェル、ニュージェネレーション、新幹少女…」


高木「音無君、765プロは……」ドキドキ…


小鳥「…765プロからは、フェアリー、竜宮小町の2組ともノミネートされています!!」


765P「やった…!」グッ


律子「ふぅ…なんだか少し解放された気分です」


高木「キミたち、大変ご苦労だった。審査期間も一層の活躍を期待しているよぉ!」


律子「プロデューサーとフェアリーには悪いですが、大賞は竜宮小町がいただきますよ」 ニヤッ


765P「む、フェアリーだって譲る気はさらさらないさ」


高木「ああ、音無君……通知を見せてもらえんかね?」


小鳥「はい、どうぞ社長」


高木「ありがとう……どれどれ」



高木(961プロからは、わんつ→ているず、だけか……)


―――――

―――




―――ここは961プロ、「アイドル部門」

IA大賞ノミネートユニットが発表されたため、作戦会議が行われていた。

しかしそこにモンデンキントの名は無く……


千早「……私達はノミネートされなかったのね」


雪歩「千早さん……」


春香「モンデンキントもデビューからあんなに頑張ったのになぁ……」


961P「残念だけど……でも、IA大賞がすべてじゃない。まだTOP×TOPもアイドルエクストリームもある」


真「……納得いかないよ、こんなの」


961P「真、結果は結果だ。今回は少し運が無かっただけだ」


961P「……わんつ→ているずは来週ノミネート公式発表会が、船上ライブと共に行われる」


961P「大賞を取るにはその会場での良いアピールが不可欠だ。それに向けて準備していこう」


「「はいっ!」」


961P「それから……」


961P「モンデンキントにはひとつ提案がある」


961P「765プロ、竜宮小町と一戦交えようかと考えている」


雪歩「竜宮小町との直接対決……ですか?」


961P「そう。まだ具体的なイメージが掴めている訳じゃないが、ステージバトルをオファーしようかと思う」


真「向こうが簡単に勝負を受けるもんか」


961P「たしかに今じゃただの妄想の内だ」


千早「そうですね、IAで盛り上がっている今、私たちはここでアピールするべきなんだと思う」


千早「……私も、何もしないよりはその案に乗りたいです」


春香「私もです!モンデンキントが負けていないんだってことを証明したい!」


961P「ありがとう。雪歩と真はどうかな」


雪歩「千早ちゃんがそれを望むのなら、私もついていきます」


真「……やるからには勝つよ」


―――――

―――




―――ここは765プロの劇場(シアター)。

フェアリーと竜宮小町のノミネート決定を、後輩たちが祝福していた。


春日未来「みなさんIA大賞ノミネート、おめでとうございます!!」


美希「ありがとうなの!」アハッ!


伊吹翼「いいなぁ~私もIA大賞候補アイドルなんてなりたいなぁ~」


最上静香「私たちもいつか同じ舞台に立ちましょう、翼」


響「自分たち、シアターのみんなの分も輝いてくるからね!」


貴音「舞台は違えど、私達の心はひとつ、ですよ」


未来「船上ライブのTV中継楽しみにしています!」


翼「事務所のみんなで一緒に応援しますよー!」


あずさ「うふふ、私達も船の上でライブなんて楽しみだわ♪」ニコニコ


伊織「船の上ならさすがにあずさも迷子にならないわね」


亜美「亜美たち、もうすぐトップアイドルになっちゃうっぽいよ?」


律子「あんたはそうやってすぐ調子に乗るんだから……」


765P「亜美も頑張ったんだ。少しくらい気を抜いてもいいじゃないか」


律子「だ・め・で・す! まったくプロデューサーは亜美に甘いんですから!!」


765P「フェアリーの3人みたいなパーフェクトなアイドルと接してると、 時々亜美のアホさが必要になるんだよ」


亜美「うあうあ~!兄ちゃんそれってどーゆうことだYO!」

1です、いったん休憩します。また夜再開します


―――――

―――



―――再び視点は変わり、ここは961プロ 社長室。

竜宮小町との共演の許可を、黒井社長が出すかどうか。

もしGOサインが出れば、765プロと961プロが関わりを持つのは、実にジュピター移籍後ぶりのこととなる。


黒井「……お前が高木の所のアイドルと共演を望むとはな」


961P「IA大賞にノミネートされたユニットに注目が集まっている今こそ、 一度剣を交える時期かと。計画は組み立て済みです」


黒井「だが、IA前のこのデリケートな期間に、歌唱対決はリスクの面から、765側が拒否する……」


黒井「……いや、その可能性はない、ということか」


961P「765プロは必ず乗ってくるはずです。相手が我々961プロですから」


黒井「こんなところで昔買った恨みが功を奏すとはな……」


黒井「いいだろう、モンデンキントのLive×Aliveの出演を許可する」


黒井「相手が格上だろうと、無様な負けは許されない、分かったな」


961P「……ご承諾感謝します」



黒井「765には貴様が接触するのか?」


961P「はい。その予定です」


黒井「フン、奴らの警戒ぶりではそう易々とは疎通ができないだろう」


961P「乗り越えてみせます。今後のためにも」


黒井「わんつ→ているずのノミネート、見事であった」


黒井「しかし……ここからがモンデンキントの正念場だろうな」


黒井「このステージバトルで彼女たちの運命がどうなるか……」


黒井「貴様のプロデュースを見せてみろ」


―――――

―――




―――そして、IA大賞ノミネート公式発表会<船上ライブ>開催の日が訪れた。

後にこの日は、961プロと765プロの距離を縮めたターニングポイントともなる。


──船内


律子「あら、涼!」


秋月涼「あ、律子姉ちゃん!竜宮小町もノミネートおめでとう!!」


律子「あんた達もついにIA大賞ノミネートまできたのね」


涼「最初876が選ばれたって聞いたときはびっくりしたけど……でも、大賞も狙っていくからね!」


律子「いや、あんた大賞無理でしょ」ヤレヤレ


涼「えっ!?」


律子「だって大賞をとるのは――」


船上ライブ
https://imgur.com/yDeVvjN


キミガフレタカラー♪ ナナイロボタンー♪ スベテヲコイデソメタヨー♪
ドンナデキゴトモーコエテーユケルーツヨサー♪ キミガボクニークーレーター♪ 


亜美「船の上の兄ちゃん!テレビの前の姉ちゃん!!」


伊織「竜宮小町、IAノミネートをいただきました!」


あずさ「それでは七彩ボタン、聴いてください♪」


\ワァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!/



―――そして全てのノミネートユニットがライブを終えた。

ライブが終わり、ユニットや各プロダクションの交流会が行われている船内の会場には、

961Pを見失ってしまったやよいのうろたえる姿があった。


やよい「うう~プロデューサー、どこいっちゃったのかな……」オロオロ



伊織「ちょっとそこのアンタ!!」



やよい「はわっ!?私ですか?」


伊織「あんたが961プロの高槻やよいね!」


やよい「……?」


伊織「IA大賞は私たち竜宮小町が頂くわ!これは宣戦布告よ」


やよい「……よく分からないですけど、私たちも負けないようにがんばりまーっす!」


やよい「ええっと、竜宮小町さんの……」


亜美(おでこサンシャイン)ボソッ


やよい「おでこサンシャインさん!」


伊織「そうよ!おでこサンシャイン……って違うわよ!!」


真美「あれ~?そこにいる真美にそっくりな美少女は……」


亜美「お?この亜美にそっくりなぷりちーな声は……」


美希「あーっ!高槻やよいちゃん!見つけたの!」


亜美「うあうあ~!ミキミキ空気読んでYO!」


美希「しっぽがふたーつ!のやよいちゃんだよね? 近くで見るとちっちゃくてますますカワイイの!!」


やよい「えっと……えへへ……はじめまして!」


伊織「美希!なに仲良くなってるのよ!相手は961プロ…」


美希「天使なの!スリスリしちゃうの!!」スリスリ


伊織「話を聞けー!!」プンスカ!


美希「改めましてやよいちゃん、ミキはフェアリーのミキなの!!」


やよい「水瀬伊織さん、星井美希さん、双海亜美ちゃん!初めまして高槻やよいです!」


真美「真美って呼んでねー!もしくはビューティフルクイーン!」


伊織「はぁ……なによ、961プロなのにまったく普通じゃない……」


やよい「あのー、どうして961プロなのを気にするんですか?」


伊織「どうしてかって?」


伊織「……アンタは知らないのね」


やよい「えっ?」


美希「んー、やよいちゃんはたぶん気にしなくていいの!」


伊織「むしろこれからのことを考えると、知らないままの方がいいかもね」


亜美「まみー!あの有名な普通すぎるアイドルがいたYO!」


真美「ほほう、それはつまり頑張ってそうなアイドルのことですな!」


美希「そういえばミキもまだ未央に会ってなかったの」


伊織「……アンタ達遊びに来たんじゃないのよ」



――― 一方その頃、迷子になってしまったあずさを探しに、貴音と響は船外を歩きまわっていた。


響「あずさぁー……どこにいったんだー!!」


貴音「困りましたね……船から降りていないといいのですが…」



渋谷凛「……我那覇さんに、四条さん?」


響「あれ……凛!久しぶりだね!!」


モバP「おう、響、貴音。ノミネートおめっとさん」ヒョコッ


貴音「ふふっ。ぷろでゅーさー、そのお言葉、お返しいたします」



※モバP……CGプロに所属するプロデューサーの一人。ニュージェネレーションをプロデュースする。


響「CGプロもすっごい大きくなったよね!」


モバP「いやぁ、事務所立ち上げ当時にお前たちが手伝いにきてくれたのが懐かしいな」


モバP「765Pにもいろいろとノウハウを勉強したしな」


凛「“生っすか”にもたくさん出させて頂いていますし、感謝しています」


凛「これからも、765プロは私たちの目標ですよ」


響「へへ、負けないよ!」


響「ところで、卯月と未央はどこにいるんだ?」


モバP「おたくの亜美と、その姉に遊ばれてるよ」


凛「そういえば、さっき三浦さんを見かけたけど……」


貴音「それは助かります、どちらに?」


モバP「ああ、確か……」


―――――

―――





響「モバPの言ってた所に来たけど」


貴音「何故か私たちのぷろでゅーさーがいますね……」


響「プロデューサーと一緒にいるのは誰…?」



―――それは響と貴音が来る少し前のこと。

ついに961Pが765Pに接触していた。


961P「あの、少しよろしいでしょうか」


765P「えっと…あなたは…」


961P「初めまして、わたくし、961プロでプロデューサーをしております。961Pと申します」


765P「…!! 765プロ所属フェアリーのプロデューサー、765Pです」


961P「唐突ですが、ジュピター時代の件は本当に申し訳ありませんでした」


765P「…あなたも関わりが?」


961P「私がこの立場に就いたのは、ジュピターが961プロを辞めたあとです」


961P「……ですが、数々の妨害行為が765プロに行われたことは存じています」


961P「今日は、勝手ながら765プロさんとの今後のお話をさせて頂きたくて参りました」


961P「……私もアイドル達も、これからの765プロさんとの関係を修復することを望んでいます」


765P「今後は妨害しないから一緒に仕事してくれ、と?」


961P「はっきりおっしゃいますね……言い訳がましいですが、今のアイドル達に罪はありません」
     

961P「モンデンキント、わんつ→ているずは共に765プロとの共演を希望しています」


961P「765プロと961プロが、力を合わせることができないかと、本気でそう考えています」


765P(ウチの力がついてきたことから、反撃を恐れての停戦か?)


765P(それとも純粋に友好を求めているのか……)


765P「今日この場で、『分かりました』とは言えません」


765P「こちらは一方的に攻撃されたのですから、すぐに信頼できるものでもないでしょう」


765P「ですが、謝罪は受け入れます」


765P「あなた方が本当に関係改善の道を探ろうとしているのならば」


765P「今後も連絡をください。話を重ねましょう」


961P「……!ありがとうございます……!」ペコリ





(物陰)

響(961プロのプロデューサーだったのか)


貴音(響、なぜ私達は隠れて盗み聞きをしているのでしょうか……)


響(だって、二人とも怪しいぞ!)


貴音(今怪しいのは間違いなく私達だと思いますが……)


765P「ところで、何故急にこのお話を?」


961P「……今日のような機会を逃したら、私たちはニュートラルに対面出来ないと危惧したのです」


961P「私は961プロの人間ですから、まずアポをとる時点で警戒されてしまうでしょう」


961P「そうなってしまえば、お互いの本音も届き難くなってしまうのではないかと」


765P「そうですか……たしかに、そうかもしれません」


961P「竜宮小町のプロデューサー……秋月さんには、実は一つ、オファーを伺いました」


765P「既に秋月律子に会ったんですか?」


961P「はい……あるテレビ番組のご共演のお願いです」


961P「突然の持ち掛けでしたから、ご迷惑をおかけしてしまいましたが…」


961P「門前払いではなく、一度持ち帰ってみる、とご提示くださいました」


765P「へぇ…律子が……」


765P「俺たちは、昔よりは仕事を選べるようになりました」


765P「このオファーにも乗るかどうか、選択することはできます」


765P「もし、考えた結果、見送らせて頂くことになっても、問題ないですね?」


961P「はい。もちろんです」





(物陰)


響(竜宮が961プロと共演かぁ……)


貴音(また何か、企みがあるのでしょうか)


響(貴音もそう考えるよね。ちょっといきなりすぎだぞ)


貴音(しかし……)


貴音(あちらのぷろでゅーさー、黒井社長とは異なる空気を感じますね……)

1です、一度中断します、夜に再開する予定です


―――――

―――




―――ノミネート公式発表会の翌日。

765プロでは、961Pからのオファーに対する会議が行われていた。


律子「……というわけなんですけど」


小鳥「モンデンキントと竜宮小町のステージバトルのオファー、ですか……」


765P「律子の考えは?」


律子「普通のユニットなら、この時期にステージバトルをするのはリスクが高いですが」


律子「でも、TVのゴールデン枠生放送でアピールできると考えると……」 


律子「……とはいえ相手は961プロですしー……」ウーン


765P「なぁ律子、961のプロデューサーと話してみて、どうだった?」


律子「そこそこ丁寧な人…でした。あと友好的、かな?」


765P「だよな。向こうからこれほど友好的に接近されたことは今までなかった」


律子「それは、裏をかえせば罠かもしれない、ということですか?」


小鳥「えっ、罠ですか?」


765P「だとしたら」


765P「どうしてこの時期にモンデンキントなのか……わんつ→ているずがノミネートしているのに」


律子「それは多分、わんつ→ているずが負けてしまうとダメージが大きいから?」


765P「妨害でも買収でもして、最初から勝つ準備をしているなら、 向こうはわんつ→ているずを出してくるはず」


小鳥「つまり、モンデンキントは真っ向から挑んでくる、ということですね」


765P「これは推測でしかないが、ステージバトルでモンデンキントが竜宮小町に勝利し…」


765P「勢いを削ぐことで、わんつ→ているずの状況を有利にすることが狙い……?」


律子「………?」


律子「黒井社長の手駒がそんな回りくどいことすると思います?」


765P「んー確かに」ウーム


律子「おそらく」


律子「向こうの狙いは、モンデンキントに注目を集める。多分それだけですよ」


765P「単純にアピールのための勝負、ということか」


律子「生放送のセメントなんて、こちらも良いアピールのチャンスですね」フフ


小鳥「律子さん、怖い顔してますよ」


律子「やっぱりこの勝負、乗らないわけにはいかない!」


765P「……そうだな」


765P「だけど律子、961側には十分気をつけろよ」


律子「はい。アンテナは常に張っておきます!」


―――――

―――



―――765プロから、「ステージバトルLive×Aliveに参加する」という返事が届いた。

961Pの期待通りの運びである。


そしてそのころ、

最もIA大賞に近いユニット・竜宮小町を打倒すべく、モンデンキントはレッスンに打ち込んでいた。


──961プロレッスンスタジオ内


真「何度同じ所で間違えるつもりだ、雪歩」


雪歩「……ごめんなさい。もう一度お願いします」


真「分かってるのか?このステージバトルで負けたらモンデンキントは……」


春香「真ちゃん、ほら続きやろうよ!喧嘩してもどうにもならないよ!」


千早「雪歩、私と同じアプローチでやってみましょう」


雪歩「ごめんなさい、千早ちゃん……」


961P(真……ノミネート落選以降、焦りが強くでているな)


961P(無理もない。あれだけ努力を積み重ねてきたんだから)


961P(ユニットとして結果の残らないまま解散なんて冗談じゃない、そう思っているだろう)


961P(雪歩は……どうも最近、輝きが失われてきているように感じる)


961P(彼女はステージにいる時、一体どこを見ているのだろうか)


961P(何を思ってステージに立っているのだろうか……)


―――――

―――




―――そしていよいよ、『Live×Alive』前日の夜。

ここは双海家。


真美「ほい。おやすみー」


亜美「おやすみー」



真美「明日頑張ってね、亜美」


亜美「りょ→かい!」


亜美「………」


亜美「………」


亜美(………全然眠れん)


亜美「……ねえ真美?」


亜美「亜美はね……亜美はずっと辛かったんだぞ」


亜美「真美のデビューはないって、黒井社長にいじわる言われたりもした」


亜美「それに、亜美のせいで真美がひどいこと言われてないか、心配してたんだ」


亜美「……だから」


亜美「だからね、真美のデビューが決まったとき、本当に嬉しかったんだ」


亜美「この前のライブでも、真美が楽しそうに踊ってて、ほっとした」


亜美「真美とやよいっちなら、IA大賞になってもいいかなーって思った」


亜美「……やっぱりそれはウソ」


亜美「亜美たちは……竜宮小町はモンデンキントを倒して、IA大賞をとるかんね」


亜美「わんつ→ているずとか、フェアリーじゃなくて、竜宮小町が」


亜美「それが律っちゃんやいおりん、あずさお姉ちゃんとの約束だから」


亜美「……もう寝てたかな」


―――――

―――




「兄ちゃんは……765プロにいじわるしたりしないよね……?」



……この場所は確か…真美に最初に会った時の……










961P「…夢か」

961P「……こんな日になんて夢を見たんだろう」



―――そして、『Live×Alive』が行われる時が来た。


──ノワールTVスタジオ


春香「プロデューサーさん!おはようございます!!」


千早「頑張りましょう。プロデューサー」


雪歩「今日もよろしくお願いします」


961P「みんなおはよう、睡眠は十分そうだね」


961P「真は大丈夫か?」


真「誰に言ってんの」


961P「……よし、リハーサルまで時間はあるから、楽屋でゆっくり準備してね。挨拶も忘れずに」


\はいっ!/


―――『Live×Alive』リハーサル。
スタジオにて、竜宮小町のリハーサルが行われている。


律子「みんな、準備はいい?」


亜美「おっけ→だよー!!」


律子「それじゃ、始めましょう!スタッフのみなさん、よろしくお願いします!」



―――――――――♪


ノワールTVスタジオ
https://imgur.com/ZOSSvjY



\ソットニギッテクーレーター♪/



伊織「……はい、私は大丈夫です」


<リョーカイデース


あずさ「あの、すみません、ちょっとここ、移動の時に引っ掛かりそうになっちゃって…」


<リョーカイ、カクニンシマス!


あずさ「はい!お願いします」


亜美「律っちゃんただいま~」


律子「お疲れ様。良いリハーサルだったわね!」
   

律子「私はまだ用事があるから、みんなは先に楽屋の方に行っててちょうだい」


伊織「あら、宣戦布告でもするの?」


律子「しないわよ!そんな血の気が多いように見えるの!?」


<ツギ、モンデンキントサン リハーサル ハイリマース!


「「「「よろしくお願いします!」」」」


961P「…さあみんな、いってらっしゃい」


―――♪


―――♪


春香(あれ……ステージから見える景色ってこんなだったっけ?)


千早(息苦しさを感じるわ……それに雪歩…周りの動きに気を取られすぎよ)


雪歩(違うの、こんな風に動くつもりじゃなくて…)


真(千早、雪歩のフォローに入りすぎだ、なんでレッスン通りに動かないんだよ!)


―──――♪


961P(どうしたんだ…みんな、苦い表情だ…)


961P「すいません!いったん止めてください!!」


―――――

―――



961P「…確かに、この4人では久しぶりの大舞台になる」
     

961P「でもな、今までだってたくさん歌ってきたんだ。緊張することはないよ」


961P「お互いを信じて…」


真「分かったからもういい。時間ないんでしょ。リハの続きを」


千早「真、焦っても仕方ないのよ。今は冷静に……」


真「ボクは焦ってなんかいない!千早たちの動き方が間違ってるんじゃないか!」


雪歩「真さん…やめてください」


961P「…時間をとって悪かった。続けよう」



961P(……本番までにどうにかしないとな)


―――リハーサルが終わって、ここは竜宮小町の楽屋前。



響「激励かー…」キョロキョロ


美希「そういえば、ミキ達が初めてTVに出たとき、竜宮小町が来てくれたっけ」


貴音「あのときはとても元気をもらえましたね」


響「今度はこっちが応援する番だな」


美希「あはは、ミキ達じゃうるさくするだけなの!」ガチャッ


亜美「あっ!ミキミキ達だ!」


あずさ「あらあら、みんなそろっちゃったわね~」


伊織「にひひっ♪私達は緊張なんかしてないわよ?」


―――――

―――



―――モンデンキント リハーサル後



春香「…ねえ真?さっきの真のポジションにね……」


真「ボクにかまっている暇があったら…春香はリハで声上ずってたから喉整えたら?」


春香「…そっか、ごめんね余計なことしちゃって」


春香(うまくいかないからって当たんないでよ…!)


―――Live×Alive放送開始 ノワールTVスタジオ付近



スピーカー<ミナサンコンバンハ!!


765P(お、番組が始まったか)


765P(前半はトークパート。そのあとに歌唱対決)


765P(ステージバトルは…俺は会場の特別席で応援する)




?「あら、あなた。どうしてここに?」


765P「うげっ!?貴女こそどうして……!?」


―――――

―――




―――いよいよ直接対決を目前に控えたモンデンキントの楽屋。


春香「ええっと進行表は……真、進行表かしtうわっ!」ステーン!


ガタッ!ダバァ……


真「なにすんだよ春香!!衣装びちゃびちゃじゃないか!!」


春香「ごっごめん!」


春香「……でも、真もペットボトルのふたぐらいちゃんと閉めてよ」


真「なんだよその態度は!?」


春香「風邪引くから早く着替えてきたら?」


真「―――!!!」


千早「真、熱くなりすぎよ」


真「……!」スタスタ


ドア<バタン!


オーイ、マコト ドコニ?
…キガエテクルダケ!


千早「春香も反省すべきだわ」


春香「……うん」


雪歩(この二人、どれだけ千早さんの足を引っ張れば気が済むのか……)



ドア<ガチャッ


春香「あっ、プロデューサー……すいません、騒がしくて」


961P「……みんな、ひとまず落ち着こう」


961P「慣れない対決形式で戸惑うのも分かるけど、お互いに気持ちを合わせることを忘れないようにしよう」


961P「今は、ステージとファンのことを優先するんだ」


―――竜宮小町の楽屋では、フェアリーがモニターを通して応援している。



貴音「前半のとーくぱーとが終わりました」


美希「いよいよなの……」


響「竜宮小町とモンデンキントの…」


―――直接対決―――


―――――

―――



司会「みなさまお待たせしました!」


司会「歌唱対決コーナー『Live×Alive』!!」


司会「今回のカードは『IA大賞に最も近いユニット』VS『デビューから快進撃を続ける新星』!!」


司会「どちらが観客の心をより多くつかむのか!」


司会「まずは――――」


司会「モンデンキント!!」


\ワァァァァァァァァ!!!フゥゥゥゥゥゥ!!!/



『残酷よ希望となれ』


この空の下 いつまでも
探し続けた夢
ひとりきり…どこへみんな旅立つの?

記憶の日々が遠ざかる
あの頃の笑顔は 胸の中いまを支えてた

無言の横顔で あなたも私も きっと
疵ゆえのペルソナ わかっていたよ

幸せのために 愛のためだからと
残酷な戦いを繰り返して
それでも涙がとまらない
願う心は一緒
それぞれの未来が呼ぶんだ


――――――♪


真(春香……声がふらつきすぎだ…)


真(雪歩も…レッスンの時のアプローチと違う…!)


ガクッ!!


真(えっ…!?)


真(なんで…コードが……)




―――余計なこと考えてるから、ミスする



…ドシーン!!


―――――

―――



響「………」


美希「転んじゃったの……」


貴音「………」



響「なんだか、ステージを楽しんでるようには到底見えないぞ…?」


美希「やよいちゃんや真美は、もっと人に伝わるように歌うの…この人たちは…」


貴音(デビュー当時の輝きさえ失われていますね……)


―――――

―――



司会「エクセレント!その一言につきるステージでした!」


司会「続いては竜宮小町です!さあモンデンキントを超える感動を巻き起こせるか!?」


\ワァァァァァァァァァァァァ!!!!フォォォォォォォ!!!!/



律子「さあ、みんな。いってらっしゃい!」


伊織「…にひひっ♪」


亜美「んふふ~」ニヤニヤ


あずさ「……」ニコニコ


律子「ってどうしたのよ、みんな」


「律子」

「律っちゃん」

「律子さん」



――――亜美、絶対律っちゃんをIA大賞につれてくかんね!


――――私達はいつも律子さんと一緒ですよ!


――――心配することはないわ。あんたの竜宮小町は、最強よ。



『初恋~二章 告白の花火~』


「もう夏だね…」 君が笑う
今夜のお祭り みんな騒ぐ教室

窓の桜 今ないけど
心の花びら 今も舞ってく…

私恋してる
君の事想うだけで 嬉しいでもすぐ切なくなる…

好きと言いたくて 言えなくていつもいつも
でも今日の帰り道 君にちゃんと伝えよう…


――「みんな、聞いて。もし竜宮小町がIA大賞をとったらね」


――「私は…先に進む選択をしようと思うの」



律子「私は……忘れないわ。今日の、このステージを……」


―――――

―――



765P「もしも…」


765P「もしも俺と律子が、別々の事務所だったとして」


765P「竜宮小町とフェアリーが直接戦うことになっていたら」


765P「……俺たちは今日の竜宮小町に勝てただろうか」


765P「いや、フェアリーだけじゃなく、ディアリースターズ、ニュージェネレーション、ジュピター…」


765P「きっと“伝説”と呼ばれたあなたでさえ」


?「あら、相変わらず生意気ね!」


?「確かに分からないわ。……でももっと気になるのは」




日高舞「彼女たち、まだホントの底力は見せていないわね」


―――――

―――




―――かくして、直接対決は竜宮小町の勝利で幕を閉じた。

Live×Alive放送後。黒井社長は芸能記者・善澤を例のバーに呼び出していた。

黒井の口から語られたのは、モンデンキントとわんつ→ているずに秘められた過去。


善澤「久しぶりだな。黒井」


黒井「ああ。悪かったなこの忙しい時期に」


善澤「お互い様だろう」


善澤「今日はモンデンキントの子たち、残念だったね」


黒井「……負けるということは分かっていた」


善澤「ん?…詳しく聞かせてくれるかい」


黒井「いくら環境に恵まれているといえど、デビューしてまだ四ヶ月」


黒井「モンデンキントは……あの子たちはアイドルとしても人間としても未熟な部分が多い」


黒井「だが今日の相手は、偶然とはいえジュピターを倒した手練ユニットだ」


黒井「今の完成度では到底敵わぬ相手なのは間違いない」


善澤「…ならどうして出演の許可を?」


黒井「…長い話になる」


善澤「構わん。こうして話すのも若い時以来だ」



黒井「当初、ジュピターとモンデンキントは近い時期にデビューする計画だった」


黒井「――だが、先にデビューしたジュピターに、予定より早くライバルが現れてしまった」



―――――

―――



―――ジュピター デビュー当時―――


TV<今日のゲストは、日本中に大旋風を巻き起こしているジュピターのみなさんです!!


TV<キャァァァァアアアア!!!ショウター!!ホクトサーン!!ラセツクーン!!



黒井「フハハハハ!!……どうだ高木め、これで私が正しかったということを思い知っただろう!!」


黒井「ジュピターは完璧なアイドルとなり、我が961プロは絶対的な王者となるのだ…!!」


黒井「……そして、プロジェクト・モンデンキントの成功によって、新たな伝説の幕開けとなる!」


秘書「黒井社長!765プロのことですが……」


黒井「なに!?各地のオーディションを765のアイドルが制圧…!?」


黒井「何故だ……765には秋月律子とかいうCランク止まりしかいなかったはず…」


秘書「それが…高木順二郎が765プロ社長に就任後、秋月律子はプロデューサーに転身していまして…」
   

秘書「さらに新たにプロデューサーを雇い、アイドル候補生を次々とデビューさせていると……」


黒井「ぐぅぅ!!高木ぃ……! 他人に頼ることしかできん無能の分際で!!」


黒井「ならば方法を改めねばなるまい」


黒井「我が961プロが王者だということを、その貧相なアイドル達に分からせてやる…!」


黒井「私はなんとしても……ジュピターを最強のユニットにしなければならん…!!」


黒井「プロジェクト・モンデキントは一時凍結とする」


「デビューできないって、どういうことですか!? 」


「黒井社長がしばらく待ってほしいって……なんでそんな急に…」


「ボクたちを、捨てたのかな……」



「私達、いつ『アイドル』のモンデンキントになれるんだろう?」


―――――

―――



─── 現在


黒井「高木は他人の才を見抜く能力に長けていた。反面、育成する技能に乏しかった」


善澤「そう。そして君はその逆だ」


黒井「候補生の中からジュピターを結成したのは私だった」


黒井「ジュピターは見てくれこそ恵まれているが…」


黒井「アイドルの能力要素であるダンス・ヴォーカル・ヴィジュアル全てに才能があったわけでは無かった」


黒井「だが私は、ジュピターというアイドルを育て上げ、961プロを成長させた」


黒井「私のやり方は間違っていなかった」


黒井「しかし、他人の力を測り誤った」


黒井「高木は765Pをスカウトし、自身の弱点を補完した」


黒井「私は焦燥した。否定し続けてきた高木に負けるわけにはいかなかった」


黒井「……しかし私は、あのプロデューサーの根性と機転の良さを見誤り、忌み手を使った」


黒井「結果、身を滅ぼすことになった」


黒井「そして私は失った。自らの手で築きあげた、自分の信念ともいえるジュピターを」


善澤「………」


黒井「それからしばらく、プロデュースができるような状態ではなかった」


黒井「…だが私は、“贖罪”をしなければならなかった」


黒井「私が死なせてしまったプロジェクト・モンデンキントと、無意識に傷つけていた双海真美に」


善澤「双海亜美の姉妹……か。彼女は知っていたのかい、961プロが765プロの妨害を行っていたことを」


黒井「本人に訊いてはいないが…おそらく」


善澤「お前は最低の大人だな」


黒井「……そうだな」


黒井「この半年は償いだった。そう私の、彼女たちへの償いだ」


黒井「モンデンキントをジュピターに代わるユニットという名目でデビューさせ、 真美は、親友のやよいとユニットとしてデビューさせた」


黒井「しかし、モンデンキントも、真美も、私がプロデューサーになることを望んでいないのは明白だった」


善澤「だから961P君をプロデューサーに?」


黒井「…それも今日までだが」


善澤「それはどういうことだ……?」


黒井「ヤツにはモンデンキントは荷が重すぎたのだ」


善澤「そりゃあ、新米のプロデュースでアイドル達を、」


善澤「ジュピターに代われるレベルまで成長させろ、などというのは確かに無茶な話だと思うが」


黒井「いや、そうではない。ヤツに実力が無いという話ではないのだ」


黒井「いくら961プロに力があるとはいえ、 真美とやよいを1年足らずでIA大賞ノミネートまで押し上げたのはあの男の力だ」


善澤「じゃあ何故」


黒井「モンデンキントのメンバーには亀裂が多すぎる」


黒井「アイドルとしての自分を見出せない雪歩、ストイックさ故に孤立しがちな真」


黒井「そして、今日の敗北で亀裂はより深刻になっただろう」


黒井「961Pのプロデュース力が足りなかったというのもあるだろうが……」


黒井「モンデンキントはどこかで敗北せざるを得なかった」


黒井「そしてその“どこか”に、私が今日を選んだだけだ」


黒井「正確にはヤツが選ばせた、となるな」


善澤「961Pのプロデュースを外して、モンデンキントはどうするつもりだ?」


善澤「この不安定な時期に彼女たちを支える人がいなくなるのだぞ?」


黒井「ああ。おそらく彼女たちは解散するだろう」


黒井「それが…彼女たちのためでもあり、961Pのためでも……」


善澤「…それのどこが償いなんだ。そもそもそんなこと961P君が――」ハァ…


黒井「ヤツは研修で海外に飛ばす。今回の負けはその布石でもある」


黒井「経験を積まなければ先には進めんと言えば、納得するだろう」


黒井「……わんつ→ているずは765に移籍なりさせるさ」


黒井「向こうのプロデューサーもこの二人のことを喉から手が出るほどプロデュースしたいはずだ」


黒井「同年代アイドルが多いプロダクションなら真美もやよいも文句はないだろう」


善澤「相変わらず強引だなぁお前は」ヤレヤレ


善澤「……そう上手くはいかないだろうな。思うに、あの961P君は……」


黒井「765のプロデューサーに似ていると言いたいのだろう?」


善澤「ははは……分かってるじゃないか」


善澤「それに、きっと君も心のどこかで、彼が抗うことを望んでいるんじゃないのか?」


黒井「さぁどうだかな」


小鳥「お前はいつもはぐらかすなぁ!宗ちゃん……!」ピヘヘ…


黒井「………」


善澤「………」


小鳥「……あれ?わたし、心の声が出てましたか?」


小鳥「黒井社長、この前母のお墓参りにいらしてくださったんですね」


黒井「……」


小鳥「私にはわかりますよ、社長が選ぶお花」


黒井「そんなことはどうでもいい、高木にこう伝えておけ 。“これで961プロに勝った気でいるなよ”とな」


小鳥「うふふ……分かりました」


小鳥「…社長?これからは765プロとも仲良くしてくださるんですよね??」キラキラ


黒井「早く帰れ」


小鳥「もう!……善澤さん、今日のステージはいかがでした?」


善澤「相変わらず、良い歌声だったね」


小鳥「えへへ…ありがとうございます♪それでは、失礼しますね!」


黒井「飲み過ぎたな、琴美のことを持ち出されるとは」ハァ…


善澤「お前とここで語っていると、昔に戻ったように感じるよ」


黒井「今日の話は他言するなよ」


善澤「高木にもかい?」


黒井「当たり前だ」

1です、今日の分は終わりです。また明日再開します。
読んでくださった方ありがとうございます。

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