両津「なに!?サザエさんだと!?」 (24)
両津「パトロールなんてかったるいなあ、コンビニで酒買って帰ろうぜ」
中川「ダメですよ、また部長に怒られますよ」
アナゴ「フグ田くぅん、こんなとこで寝たらダメだよぉ」
両津「ん?なんだ?」
中川「酔っ払いのようですね」
両津「しょうがねえなあ、まだ宵の口だってのに酒に呑まれやがって」
中川「どうしました?」
アナゴ「ああ、お巡りさんすいません~、友達が飲み過ぎちゃってぇ。ボーナスもらったのが嬉しくってついぃ」
両津「景気のいい話でうらやましいなあ、おい若いの、わしの言ってることがわかるか?」
マスオ「うう…すいませんお巡りさん…」
中川「家の人を呼んだほうがいいですね。携帯使えますか?」
マスオ「そういうの持ってないんですよ」
中川「今どき勤め人で携帯持ってない人って珍しいですね」
両津「ていうか皆無だろそんなやつ」
中川「とにかく派出所に行きましょう」
両津「そうだな」
マスオ「本当にすいません…」
アナゴ「じゃあ後よろしくお願いしますぅ」
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麗子「えーっと、フグ田マスオさんね、おうちの人がすぐ迎えに来るって」
マスオ「ありがとうございます…」
両津「まあ酒は飲んでも呑まれるなってことだな」
中川「先輩がそれを言うかなあ…」
ノリスケ「マスオさん、迎えに来ましたよ」
マスオ「ノリスケくん、どうしてここに…」
ノリスケ「お宅に用があったんで、そうしたら叔父さんに頼まれちゃって」
マスオ「本当にお世話になりました、失礼します」
両津「おう、気をつけてな」
両津「おや?あの若いの、時計を忘れていったぞ」
中川「ずいぶん古い型の時計ですね」
両津「そういう趣味なんだろうな、住所はわかってるし、防犯キャンペーンのついでに届けてやろう」
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両津「ごめんください、公園前派出所から来ました両津です」
サザエ「はーい」
両津「いやあ、昨夜ご主人が派出所に時計を忘れていかれまして、防犯キャンペーンで各世帯を
回らないといけないんでついでに届けに来ました」
サザエ「あらあら、重ね重ねすいませんねえ」
カツオ「わあ!お巡りさんが来たよ!」
ワカメ「本当だあ!」
タラちゃん「お巡りさんですー」
サザエ「これこれ、みんなちゃんとご挨拶しなさい」
波平「サザエ、両津さんに上がってもらいなさい」
両津「いやあ、ご主人ですか」
波平「ええ、マスオくんは今ちょっと出掛けてまして」
両津「いま署のほうで防犯キャンペーンやってまして、パトロールしながら市民の皆さんにいろいろと
伺ってるんですが、身近で何か防犯上気になることとかありませんか?」
波平「我が家は防犯には気を遣ってるつもりなんですが、何故か半年に一度は必ずほっかむりして風呂敷包み
を背負った泥棒が来るんです」
両津「なんじゃそりゃ」
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両津「いやあ、変な家だったぞ」
中川「どんな家なんですか?」
両津「まず親父さんが家の中では和服だったんだ。お袋さんなんて和服の上から割烹着を着て
ほうきとはたきで掃除してたんだぞ」
中川「今どき珍しいですね」
両津「子供も男の子は頭が丸刈りだし女の子は刈り上げのおかっぱでカボチャパンツなんて穿いてたし」
両津「ダイヤル式の黒電話なんて使ってたし、極め付けはテレビがロータリーチャンネルだったんだぞ。
それもちゃぶ台みたいな脚がついたやつだ。懐かしくて涙が出そうになったよ」
中川「今どきロータリーチャンネルのテレビなんてどこも製造してないですよねえ。どういう人たちなんでしょう」
麗子「日本語おじさんや交通課の石頭課長みたいに古い文化を楽しんでる人たちなんじゃない?」
両津「いや、そういう感じでもないんだよなあ…」
部長「お…おい…、それはまさか磯野さんご一家のことじゃないだろうな…?」
両津「あれ?部長、知ってるんですか?」
部長「いかん!あの一家に関わってはならんぞ!いいか!これは上司としての命令
だけではなく私人としての忠告でもある!わかったな!」
両津「は…はあ…」
中川「…」
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中川「先輩、ちょっといいですか?」
両津「ん?どうした?」
中川「僕、部長のあの態度がどうも気になって、それで調べてみたんですが、この写真を見てください」
両津「あの一家じゃないか、一家でお出かけって写真だな。相変らずレトロな格好してるなあ」
中川「後ろを走ってる車を見てください」
両津「ファミリアのロータリークーペじゃないか、懐かしいなあ。今と違って
昔のロータリーエンジンは燃費が悪くって…あれ?なんでこんな車が…、近所で
旧車マニアの集会でもやってたのか?」
中川「先輩、違うんです。その写真が撮られたのは昭和46年なんです」
両津「そんなバカな!50年近く前じゃないか!」
中川「この写真も見てください」
両津「あの若いのと奥さんだな、デートって感じだがどこで撮った写真だ?」
中川「港区の芝公園前駅の近くだそうです」
両津「そんなはずないだろう、街並みが全然違うし、芝公園前だったら東京タワーが映って…はっ!ま、まさか…」
中川「はい、その写真が撮られたのは昭和31年、東京タワーができる前です」
両津「ど…どういうことなんだ…」
中川「住民基本台帳のデータベースからあの家族について調べてるうちにこれらの写真を見つけました。
遡ることができた一番古い記録では、あの一家は昭和21年の3月には既にあの家に住んでいます。
あの家族はおそらく戦前から100年近くあの家で暮らしているんです。歳を取らず、昔のままの姿で…」
両津「い…一体何者なんだ…」
中川「わかりません、ですが、部長の言った通り、もう関わらないほうが…」
両津「そ…そうだな…」
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マスオ「やあノリスケくん、話ってなんだい?」
ノリスケ「あの…、この間のお巡りさんの事がどうも気になって…」
マスオ「ああ、両津さんか。あの人がどうしたの?」
ノリスケ「この写真を見てください」
マスオ「両津さんだね、でも着てる制服が違うような…」
ノリスケ「その写真が撮られたのは、昭和58年なんです…」
マスオ「ええっ!?」
ノリスケ「あのお巡りさん、40年以上あの派出所で勤務してるんです。歳を取らず、昔のままの姿で…」
マスオ「い…一体何者なんだ…」
ノリスケ「わかりません、でももう関わらないほうが…」
マスオ「そ…そうだね…」
終
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