男「村が山賊に襲われて……」 (192)

男「村が山賊に襲われて、生き残ったのは俺一人になった」

木「」

男「村が山賊に襲われて、生き残ったのは俺一人になった」

木「」

男「村が山賊に襲われて…………ん?もしかして俺は気が狂っているのか?」

木「」

男「どう思うよ」

木「」

男(村が山賊に襲われて、近くの森に逃げ込んだ。 3日間この森で怯えて生活をして解ったことがある)

男「木と言う生物は……世間話に付き合ってくれないんだな」

男(木こりをしていた事を今ほど感謝したことはない)

男「……ツルツルの木、湖は左か」テクテク

男(この森でも迷わず生活が出来ている。 たとえ、山賊が追ってきても森の中なら逃げられる)

男「……この斧で返り討ちに」ボソボソ

男「いや、これは木を伐るものだ……これは、木を伐るものだ」

男「……木を伐ってきたから、木は俺の世間話に付き合わなかった?」

男「俺も……山賊の世間話には付き合いたくないもんな」

男「誰と喋ってるんだ? ……俺って、もしかして、気を違えているのか?」

男「ん? 木を違えてる? あれ? さっきのツルツルの木の左が湖なんだろ……いや、ん?」

男「ほら、あってた! 俺があってた! 湖があった! 俺が言ったことは間違ってたと言うことだ」

男「……俺は何人いるんだ?」

男「……美味い」ゴクゴク

男「水が美味いと生きてるって感じがするな」

男「…………皆、死んだけど」

男「村が山賊に襲われて、生き残ったのは俺一人になった」

角驢馬「……」

男(…………角驢馬、村長が昔教えてくれたな)

村長『草原地帯には角驢馬という、角の生えた生物が群をなして生息しておる』

男「……ここら草原じゃないぞ」

角驢馬「……」

男「群もないじゃないか」

角驢馬「……」

男「ちゃんと……自分の生態ぐらい守れよ」

角驢馬「……」

男「村人なら……村の男なら……逃げずに……女子供を守る! それが! それが自然だろうがよぉ!!」

男「……泣いてごめんね。 久し振りに自分以外の人に会ってさ」

角驢馬「……」

男「極限状態だったんだ……取り乱して、恥ずかしい」

角驢馬「……」

男「ん? 角驢馬は……人なのか?」

角驢馬「……」

男「村長は何て言ってたっけ?」

村長『儂から殺せ! 儂から奪え! この村で一番金を、宝を持っとるのは儂じゃ!!』

男「そうだ……角驢馬は草原に生きている……群をなす生物……人じゃないんだ」

角驢馬「……」

男「人じゃないなら……殺して、食べても……良いんだよな?」

角驢馬「……」

男「………………あれ?」

角驢馬「……」

男「でも、山賊は……人を殺して、奪って……犯して……いた、なぁ」

男「俺達は、俺達は人じゃなかったのか?」

角驢馬「……」

男「……お腹が空いたんだ」

角驢馬「……」

男「脚に矢が刺さっている……それはお洒落なのか?」

角驢馬「……」

男「俺の背中にも刺さってるだろ? お揃いだな」

角驢馬「……」

男「こう言うの、何て言うんだっけ?」

許嫁『これ、木を彫って作ったんだ』

男「変な飾りだな」

許嫁『酷い! お揃い、ペアルックなのに!』

男「そうだ! ペアルックだ! すっきりした思い出した! 俺とお前はお揃い! ペアルック!」

角驢馬「……」

男「このお洒落は痛いな……じんじんする」

角驢馬「……」ヨロ

男「無理に、立ち上がらない方がいい」

角驢馬「……」グイッ……スポンッ

男「…………抜いて、くれたのか?」

角驢馬「……」バタン

男「あぁ、次は俺の番だな」グイッ……スポンッ

男「なぁ……何で矢を抜いてくれたんだ?」

角驢馬「……」

男「生きようとしてるのか?」

角驢馬「……」

男「群は? 自分以外皆殺しにされたんじゃないのか?」

角驢馬「……」

男「草原に住んでいたんだろ? そこから追い出されて……村を焼かれても生きるつもりなのか!?」

角驢馬「……」

男「答えてくれよ……答えてくれよ……お前は、お前は、俺なのか?」

角驢馬「……」グッタリ

男「俺なら……死ねよ。 ここが終わりで良いだろ?」

角驢馬「……」ムシャムシャ

男「草喰ってんじゃねぇよ! 俺なんだろ! 生きようとするなよ!!」

角驢馬「……」ムシャムシャ

男「もしかして……お前は、俺ではないのか?」

薬屋婆『木こり、森に入るならこの薬草をとってきておくれ。 良い塗り薬が出来るんだ』

男「……薬草、ギザギザの葉、黄色かがった茎、ギザギザの葉、黄色がかった茎」ガサガサ

男「お前は四足歩行……俺は二足歩行」ヌリヌリ

男「お前は角が生えていて……俺に生えていない」ヌリヌリ

男「お前は無口で……俺は独り言か多い」ヌリヌリ

角驢馬「……」ウットリ

男「……駄目だ、お前が俺であることを否定しきれない」

角驢馬「メェェェェ」

男「人はメェェェェと鳴かない……お前は人じゃない?」

男「つまり、お前は俺じゃないのか……良かった、良かった」

男「ようやく、俺以外の人に会えた」

男「…………ん? お前は人なのか?」

男「俺は気を違えているのか?」

角驢馬「メェェェェ!」パカラパカラ

男「おぉ、走ってる、走ってる!」

角驢馬「メェェェェ!!」ドンッ!

男「おぉ! 木に頭突きした!!」

角驢馬「メェェェェ……」ジタバタ

男「……また、角が抜けなくなっのか」ハァ

男「木を揺らして木の実を揺らす係りは俺に決めただろ?」

角驢馬「メェェェ」

男「いや、解るけどさ……ほら、得意不得意ってあるじゃんか」

角驢馬「……」カミカミ

男「いや、バカにしたわけじゃない! 角驢馬には木の実を採る以外の事を…………なぁ」

角驢馬「?」

男「お前の上に立ったらもっと楽に木の実が取れるんじゃないのか?」

角驢馬「!」

男「おぉ! 木の実取り放題だ! やった! やった!」ナデナデ

角驢馬「メェェ」ウットリ

男「ん? 俺達はこうも見た目が違うのに、どうして一緒に暮らしてるんだっけ?」

男「悪いな……ついてきてもらって」

角驢馬「……」テクテク

男「この場所に何かがあった気がしたんだ」

角驢馬「……」

男「酷いや、建物が全て焼かれている……ん? そもそも、何で建物何て建てたんだ?」

角驢馬「……」

男「うーん、……あぁ、そうだ! 住むためだ! 人はこういう建物に住むんだ! ……変わってるなぁ」

角驢馬「……」

男「なぁ、角驢馬……一瞬だけさ」

角驢馬「……」

男「狂ったふり……止めても、良いかな?」ポロポロ

角驢馬「……」ペロペロ

男「まさか、角驢馬がスコップも使えないとは……あぁ、思ったよりも時間がかかった」

角驢馬「……」カミカミ

男「痛い! 噛むなよぉ」

角驢馬「メェェェェ」

男「ん? ところで、何で穴を掘ったんだっけ?」

角驢馬「……」

男「あれ? 掘ったはずの穴がない! ……角驢馬ぁ!!」

角驢馬「……」カミカミ

男「ごめん、角驢馬のせいにしてごめん」

角驢馬「メェェェェ」

男「………………何を埋めたんだっけなぁ」

男「これでよし……縄、きつくないか?」

角驢馬「……」コクン

男「しかし、本当に荷馬車何てひけるのか?」

角驢馬「……」コクン

男「どうした? 何か喋れよ」

角驢馬「……」ブンブン

男「あっ! 口が縄で縛られてるか喋れないのか! 噛めないだろ! ざまぁみろ!」

角驢馬「……」グサッ!


男「……ごめん、悪かったから刺すのは止めようか」

角驢馬「……」パカラパカラ

男「疲れたら交代しような。 荷馬車の上って、結構乗り心地良いんだぞ」

角驢馬「……」ブンブン

男「……ひく方が好きって? 勤労なヤツだよ、本当に」

負傷者「旦那……なぁ! 荷馬車の旦那!」

男「……おい角驢馬、荷馬車の旦那とはお前のことか?」

角驢馬「……」コクン

負傷者「そんなわけ無いだろ! 畜生も頷いてるんじゃねぇや!」

男「畜生とは俺のことか?」

負傷者「……変なヤツに声をかけちまったな」

男「後悔できるなら、やり直せると村長が言っていた……頑張れ」

角驢馬「……」パカラパカラ

負傷者「待ってくれ! 待ってください! 変なヤツって言ったのは謝るからよ」

男「彼もあぁ言っている。 角驢馬……待ってやったらどうだ?」

角驢馬「……」ヤレヤレ

負傷者「……主導権はそっちにあるのかよ」

男「先に歩いている方が道を選ぶ……当たり前のことだと思うが」

負傷者「……同じ人間と話してるとは思えない」

男「お前は……人なのか?」

負傷者「見たら、解るだろ?」

男「お前は、つまり……俺なのか?」

負傷者「」

負傷者「いやぁ、わけわかんねぇ奴だと思ったが……助かった。 良い塗り薬だな」

男「薬屋婆に教わったモノだ……礼なら、薬屋婆に言ってくれ」

負傷者「薬屋婆って誰だよ?」

男「薬屋婆は……誰だ? 懐かしい響きだが……うーん」

負傷者「いかれちまってるな……ところで、何処を目指してるんだ」

男「目指しては無い」

負傷者「旅をしてるんだろ?」

男「旅はしてない」

負傷者「何してるんだ?」

男「今か? 今は話している」

負傷者「……次、村があったら降ろしてくれ」

男「おろす? おろす? おろす? おろす……とは?」

負傷者「良いよ……勝手に降りる」

負傷者「おぉ、村が見えてきた!」

男「村で何をする?」

負傷者「とりあえず、ちゃんとした治療を受けて……後は品物売ったりな」

男「売る? 売る? 売れば金が貰えるんだったか?」

負傷者「そんなことまで忘れちまったのかよ」

男「忘れてない、うろ覚えなだけだ」

負傷者「忘れちまった方が、楽かも知れねぇな」

男「角驢馬、俺達も何か売ってみるか」

角驢馬「……」

男「…………そうだなら売るものが無いな」

負傷者「さっきの塗り薬と、積んでる木の実は売れるんじゃないか?」

男「……木の実を売ってしまったら、食べるものが無い」

負傷者「売った金で買えば良い」

男「…………なら、最初から木の実を食べていれば良くないか?」

負傷者「まぁ、好きにしたら良いがよ」

男「で、何を売るんだ?」

負傷者「俺か? 俺は宝石とか金になりそうなもんさ」ジャラ

男「この石はなんだ?」

負傷者「エメラルド」

男「この石はなんだ?」

負傷者「ダイヤだよ……勝手に触るなよ」

男「この石はなんだ?」

負傷者「これは……木で出来た飾りだな」

男「変な飾りだな」

負傷者「あぁ、売れそうにねぇや……いるか?」

男「似たようなモノを持っている」

負傷者「そうか、いらないか! いらないか! いるものといらないものをを判断できるとは思っていなかった」ハハハ

男「あぁ、少し正気に戻れたのかも知れない」

男「正気に戻ったついでに売る用の木の実でも採っていこうか」

角驢馬「……」ピタッ

負傷者「この木の実は此処等にもなっているのか?」

男「もう少し、森に深く入ればあるだろう」コイコイ

負傷者「手伝えって……薬の恩があるか」

男「この木だ」

負傷者「おぉ、結構なってるな」

男「四つん這いになってくれないか?」

負傷者「怪我人を踏み台にするつもりか?」

男「頼む」

負傷者「さっさと終わらせろよ」

男「……ところで、さっきの石は何だったか?」

負傷者「正気タイムは終了かよ。 エメラルドのことか?」

男「違う」

負傷者「ダイヤか?」

男「違う」

負傷者「あぁ、飾りか? あれは木だよ! 木!」

男「ん? 木なのか?」

負傷者「そうだって言ってるだろ? ……ほら、早くしやがれ」

男「お前は木なのか?」

負傷者「はぁ?」

男「お前が木で、俺が木こり」

負傷者「本当に何言ってるんだ……」ミアゲ

男「……」つ斧

負傷者「ひっ!!」

男「……」ハァハァ

負傷者「」

男「ごめん……村に入れなくなってしまった」ベットリ

角驢馬「……」

男「水辺を探そう……体を洗いたい」

角驢馬「……」

男「荷馬車は此処に置いておこう……盗られて困るもの何て無いし」

角驢馬「……」

男「もう、盗られ尽くしたから……ん?」ガタガタ

男「震えが……止まらない……何でだ? 木を一本切り倒しただけ……木なんだ! あれは……あれは木なんだ!!」

角驢馬「……」ペロペロ

男「そうだよな……どう見ても、人だよな」

男「恨みを持って殺しても、ここまで震えるのか……すごいな、山賊は……恨んでないのに……平気だもんな」

角驢馬「メェェェェ」

男「そっちに、水があるのか?」

男「……えっと、水車?」

角驢馬「……」

男「違ったっけ?」

魔女「水車であってるよ」

男「…………貴女は人ですか?」

魔女「何だ、私の力を感じ取れるのかい?」

男「力……腕力?…………男?」

魔女「女だよ!」

男「女……つまりは人なのか」

魔女「人……ではない」

男「人でないなら……雌?」

魔女「……」ゾクッ

男「つまりは角驢馬と一緒か……さっきの木が畜生と言っていた」

魔女「あまり私を愚弄しない方が良いわよ」

男「つまり、雌畜生」

魔女「んっ!」ゾクゾクッ

魔女「誰が雌畜生だい! 私は魔女……この西の森を統べる魔女さ」

男「この西の森のスケベ……痴女?」

魔女「そ、そんな聞き間違い……魔女さ」ビクン

男「魔女、体を洗いたいのだが……水はあるか?」

魔女「……返り血かい?」

男「返り血? 木を伐って出た液だから、返り樹液だよ」

魔女「……少し目を見せてごらん」

男「……」

魔女「事情は解った……入りな」

男「綺麗になった……魔女は良い人だな。……ん、魔女は人なのか?」

魔女「そりゃ、良かった……って、何で裸なんだい!?」

男「他に服がなかった……そもそも、何で俺は服を着てたんだ? 角驢馬は着てないのに」

角驢馬「メェェェェ」

男「だよな、変だよな?」

魔女「本当に会話しているみたいだね……まぁ、態々、仮面を剥ぐ気は無いさ」チラチラ

男「血も取れたし村に行こう……ん?血?樹液?人?木?」

魔女「服が乾くまで此処にいて良いよ」チラチラ

男「………………ありがとう」

魔女「これからどうするつもりだい? 狂ったふりをしながら、角驢馬と旅をするのかい?」

男「旅はしてない……目的地も無い……ただ、あの場所にいるのは辛かった」

魔女「逃げ続ける人生は悪いものでも、間違ったものでもない」

男「狂人のふりをして過ごす人生は間違いだろう……間違いじゃないと、救われない」

魔女「誰が救われない」

男「……」

魔女「あんたは山賊を殺めた事を後悔してるのかい? 人を正気で殺せる相手でも狂気を持ったふりをして殺し……それを自ら否定する気か」

男「……」

魔女「それじゃあんたが救われない」

男「正気であり続ければ、俺は自らを伐るだろう」

魔女「……仕方無いねぇ。ほら、これを飲みな」つ薬

男「これは?」

魔女「本当に狂える薬さ……多少は楽になれるだろうよ」



魔女「良いよ! 良い! 狂ってる……あぁ、最高の……腰使いだ!」アヘアヘ

男「……」パンパン

魔女「あぁ、酷い、机に押し付けて……あぁ、そんな……奥まで!」ビクンビクン

男「……」パンパン

魔女「モノみたい……モノみたいに使われてぇ……あぁ、やっぱり、私の見立て通り……良い、あんたには本当の狂気が宿ってたぁ……あっ!」ビクンッ

男「……」パンッ……ビュッビュッ

魔女「はぁあ、出てる……孕まされる」ゾクゾク

男「……魔女、貴女は人なのか?」

魔女「人じゃない……近い種だが……違う」ダキッ

男「人と近い種とは?」

魔女「何だって良いじゃないか……あぁ、好きに読んで畜生でも、痴女でも」ハァハァ

男「だったら、貴女も木だ」つおのおの

看板娘「……すごい、これは本物の魔女の心臓ですね」

ギルド長「あぁ、クエストを出すだけ出していたが……こんな若者が持ってくるとは」

男「運が良かっただけだ」

剣士「魔女とは1度対峙したことがあるが、運でどうこうなる相手では無いさ」バンバン

男「本当に運が良かっただけだ」イタイ

看板娘「魔女はどのような武器で仕留めたんですか?」

男「これ」つ斧

剣士「木こりの斧! これは凄い新人が入ってきたかも知れないな! ギルド長!!」

男「仕事が欲しい」

看板娘「早速ですか! えーっと、どのクエストが良いですかね?」

男「これで良い?」

ギルド長「オークの討伐……魔女すら倒されるのにそんなクエストで良いんですか?」

男「これが良い」

剣士(最近、オーク共が1つの巣に集結しつつあると噂になっていたな。 大事になる前に対処しようとするとは……)カンシン

男「疲れた、疲れたよ……角驢馬、君の提案通り最低限の言葉しかはっさないようにしたけど……独り言が好きな俺には辛かった」コショコショ

角驢馬「……」パカラパカラ

女格闘家「ねぇねぇ、魔女殺し! 角驢馬さんと何を話してるの?」

男「……4人も荷馬車に乗せて移動するのは初めてだから、応援していた」

女治癒師「ふふ、魔女を一人で殺した男とお聞きしていましたが……随分、可愛らしいところがあるのですね」

女格闘家「よーし! ボクも応援するぞ! 頑張れ、頑張れ、角驢馬君!!」フレーフレー

女暗殺者「……」

女治癒師「私達も同行して良かったのでしょうか? 男様の腕前ならかえって足手纏いになるのでは」

男「いや、君達が来ることに意味がある」

女格闘家「おぉ! 嬉しいこと行ってくれるなぁ! よーし、張り切っちゃうぞ♪」

男「女暗殺者、先に入って偵察を頼む」

女暗殺者「……」コクン

女格闘家「前衛はボクに任せてよ!」

男「解った……女治癒師は俺の後ろに」

女治癒師「えぇ、解りました」

女格闘家「ふーん、ふーん、ふーん♪」

男「随分と楽しそうだね」

女格闘家「そりゃ、こっちには魔女殺しがついているんだもん♪ ねぇ! 魔女を倒した時の話を聞かせてよ」

男「どうだったかな……あまり、覚えてないや」

女格闘家「倒した感想でも良いからさ」

男「何も感じなかった……かな」

女格闘家「何それ、格好良い! 魔女などとるに足らないってこと?」

男「いや、違う……感じなかったんだ。 憎い相手を殺した時でさへ感じた罪悪感が!言い知れぬ恐怖が! 命を奪うことへの、罰則としてあるはずの感覚が……まるで木を切り倒した後のようにしか思えなかった」

女格闘家「そ、そうなんだ」

女格闘家(魔女を倒せるほどの腕前になると少しぐらい変わってるところもあるか)

男「きっと、魔女は人ではなかったから感じなかったんだろう」

女格闘家「魔女は見た目こそ人に近いけど魔族だからね♪ そんなの感じなくて当たり前だよ」

男「そう、思った……思っていた」

女格闘家「へ?」

オークs「ブモモモモ!!」

女格闘家「オーク! 数が多い……魔女殺し、どうする?」

男「終わったら、教えてくれ」

女格闘家「いや、この数は流石に私一人じゃ……あれ?女治癒師は? 大変だ、魔女殺し、女治癒師とはぐれた!?」

オークA「ブモモモモ!!」ブンッ

女格闘家「くっ、このオーク強い! 魔女殺し……早く、早く助けて」

オークB「ブモッ!」つ木の実

男「……ありがとう」カジッ

女格闘家「」

男「オーク達、聞こえたね? 終わったら教えてくれ」

女格闘家「何で! やだ……脱がせるな……そんなの、そんなの……入ら……あぁぁあぁああぁぁあぁあ!」

男「……」

女治癒師「はぁはぁ……貴方達は何なんですか?」ギロッ

男「俺かい? 俺は人だよ。 勤労な木こりだ」

女治癒師「な、何、わけの解らない事を」

男「君は何だい? 人かい? 片腕がもげても平然としているなんて、化物じみてるけどね」

女治癒師「平然と人の片腕を斬った彼女の方が化物でしょ!」キッ

女暗殺者「……」

男「…………それで、答えは?」グニグニ

女治癒師「止め、斧の柄をそんなところに……んぁ……」

男「答を聞いているんだよ……君はなんだい? 人か?」

女治癒師「当たり前でしょ……人に、決まって……や、やぁ!」

男「人と言うことは君は俺なのかな?」ズボズボッ

女治癒師「止め、わけが……解らな……あっあっ……」

男「……いっぱい、柄が濡れてるね。 これは何かな?」

女治癒師「何でも……良いでしょ?」ハァハァ

男「樹液かな? 樹液かも知れないね、樹液だとしたら!」

男「君も木だ!」つ斧

治癒師「」

男「やっぱり……木だった。何も感じないや」

男「……まだ、終わらないのか」シャリシャリ

女暗殺者「……」

女格闘家「止め、そっちの、穴も何て……ムリムリムリムリムリムリ……っつぁ!!」

男「彼女を殺したら……感じれるかな? 震えれるかな? 彼女は何となく人のような気がするんだ」

女暗殺者「……」

男「木の実、食べる?」つ木の実

女暗殺者「……」シャリシャリ

男「……食べるんだ」

女格闘家「いやぁあ!駄目、やだやだ、いきたくない……化け物のモノ何かでいきたく……あっ、あぁぁあぁあ!!」アヘアヘビクンビクン

男「もうしばらくかかりそうだね」

男「……結局、彼女も人じゃなかったな」

女格闘家「」

角驢馬「メェェ」ペロペロ

男「慰めてくれるのか? ありがとう」ナデナデ

女暗殺者「……」ペロペロ

男「君は何してるのかな?」

女暗殺者「……///」

男「良いや、このオークの巣はもういらないや……女暗殺者」

女暗殺者「……」ポチッ

オークs「ブギャーーーーーーー!!」バァァァン!


ギルド長「まさか、女格闘家と女治癒師が亡くなるとはな」

男「すみません、ギルド長……」

ギルド長「女暗殺者より知らせは聞いております。 貴方の制止も聞かずに無茶な行動をしたと」

看板娘「女格闘家さんはともかく、あの冷静な女治癒師さんがそんな行動しますかね?」

剣士「魔女殺しの前で良い格好したかったのかも知れないな」

男「……宿に戻る」

剣士「責任……感じてやがるな」

ギルド長「彼はちゃんと仇を果してくれたと言うのに」

看板娘「……」

男「ねぇ、角驢馬……可笑しいんだ」

角驢馬「……」

男「人を殺しているはずなのに……罪悪感ところか、快感が湧いてきた……悲しい、恐ろしい、どころか今回の件は面白くてたまらない」

男「俺は取り戻すために……人を殺した時に得られる罪悪感を取り戻すために殺してきたのに……あれ? 結局楽しいだけか? 俺のいた村は何処だ」

男「もっと残酷なやり方で無いと感じないのか……得られないのか……罪悪感ってヤツは! 魔女は俺に何を飲ませた! 奪われ尽くした俺の何を奪った!」

角驢馬「……」

男「……泣いたりしてごめんよ、いい加減……自分以外の人に会いたくなってきたんだ」

本日はここまでにします。 即興で頭の中に浮かんだモノを書いたらこうなった(´・ω・)

看板娘「だから、どう考えても男さんは怪しいです!」

ギルド長「……」
剣士「……」

看板娘「女格闘家さんはともかく、女治癒師さんがそんな無茶な行為をするとは考えられません!」

ギルド長「剣士よ……どう思う?」

剣士「ふむ」

看板娘「男さん……あの魔女殺しに二人は殺されたんだと私は思います!」

ギルド長「やはりか」

看板娘「……ギルド長さん」パァ

ギルド長「やはり、魔女の心臓に魅せられたか」

看板娘「へ?」

剣士「……魔女の心臓に魅せられ、魔女になる才能を持つ女は狂気に狂うことがある。 魔女殺しの話は本当だったか」チャキン

看板娘「……嘘、でしょ?」

ギルド長「仕方あるまい。 捕らえよ、剣士」

剣士「あぁ」ジリジリ

看板娘「そんな、二人とも……魔女は人ではないのでしょ? 人が魔女になるわけでは無い!」

ギルド長「魔女殺しは魔女は人にやはりよく似ていた……魔女から人になり得るかも知れんと言っていた」

看板娘「そんな、嘘……止めて……来ないで」

男「君達、女と言うのは愉快な生態を持っているよね……本当に」パンパン

看板娘「もう、あぁ……止め、……あぁ!」ビクンビクン

男「俺の事をどんな風に思っていても、暫く使えば皆同じ顔になる。 同じ人とは思えない」ビュルルル

看板娘「……中に、そんな……いやぁ……」

男「ん? じゃあ、人じゃないのか? 人じゃないのかも知れない……うーん、次は剣士でも試してみようか……彼は人っぽいし……うーん」パンパン

看板娘「止め……せめて、休ませ……あぁ! あぁ、また、いく!」アヘアヘ

女暗殺者「……」ジー

男「どうしたら、感じられるかな?」

女暗殺者「……」ピト

男「ん?」

女暗殺者「~」コショコショ

男「…………それは、良いね。 それは何とも悪いことだ……時間と金がかかるが……魔女の心臓で得た金ならある」

女暗殺者「……」

男「うん、やってみよう……ありがとう女暗殺者。 お礼は何が良いかな?」

女暗殺者「……」クチャクチャ

男「……仕方無いな。 あまり、こういう行為は好きじゃ無いんだけどね」ヌキッ

看板娘「……はぁ……はぁ……」レイプメ

男「よいしょっと」ズボボ

女暗殺者「……!?」ビクビクビクッ

男「まだ、入れただけだろ?」パンパン

女暗殺者「……、…………、あっ」ビクンビクン

剣士「久しぶりだな、魔女殺し」

男「久しぶり、剣士」

剣士「オークの巣の悪夢があってから、もう3年か……早いものだな」

男「そうだね……ギルド長は?」

剣士「実の娘があんなことになったショックか……正気を失ったよ」

男「……俺が魔女の心臓を持ってきたせいだ」

剣士「いや! それは違う! お前は何も悪くない!!」

男「……看板娘にも結局逃げられた」

剣士「殺せるほど、非道になれなかった……そうだろ?」

男「……」

剣士「帝都で働いていると聞いたが……今日は何の用事でここまで?」

男「魔女を見つけた……力を貸して欲しい」

剣士「それって……もしかして……」

男「あぁ、看板娘が堕ちたモノと考えている」

剣士「この3年……ずっと探してくれていたのか」ウルウル

男「一緒に来てくれるか?」

剣士「あぁ、あぁ! お前だけに重荷は背負わせない! 俺の剣で魔女を……看板娘を殺してやる!」

剣士「やぁ!」ザンッ

ゴブリンA「ピギィィィイイ!」バタン

剣士「てゃあ!」ザンッ

ゴブリンB「ピギィィィイイ!」バタン

男「凄いな、俺の出る幕が無い」

剣士「男、お前は魔女との戦闘の為に力を温存しておいてくれ」

男「あぁ、助かる」

剣士「しかし、どうしてこうもゴブリンだらけなんだ?」

男「魔女が手下として操っているのかも知れない」

剣士「なるほど、恐ろしい話だ」

男「早く、行こう」ワクワク

剣士「楽しそうだな」

男「不謹慎だったか……旧友と仕事が出来るというのは悪くない」

剣士「お前に友と呼ばれるとは……最高の誉れだ」バンバン

男「痛い……あの小屋だ」

剣士「ゴブリンがうようよいるな……俺が先攻する」

男「あぁ、頼んだ」

剣士「見つけたぞ! 看板娘……いや、魔女め!!」

ゴブリンC「グルルル」パンパン

看板娘「駄目、もう、いや、産みたく……無い、いや、いや」ボロボロ

ゴブリンD「グル! グル!!」ズボッ

看板娘「そっちの穴は……へへ、もう、えっ、……あぁ」

剣士「」

ゴブリンE「グル!」ジュルルル

看板娘「ん……じゅ、……苦……ん、ん、……あぁ」ゴクゴク

剣士「」

男「どうだい?」

剣士「………………へ?」

男「感想は?」

剣士「看板娘は魔女? ゴブリンを操っている? でも、あれは……ん? ど、どう言うことだ」

男「珈琲でも飲んで待ってる。 ゆっくり頭を整理してくれ」コポコポ

剣士「な、何、ゴブリンの棲みかで、慣れた手つきで珈琲を……ん? 看板娘は魔女じゃない……ん?」

男「帝都ではまってな……焙煎度合い、豆の種類でこうも変わるとは、奥深い」ズズズ

剣士「男、お前が……お前かぁ! お前が全部!!」チャキン

男「……何でだろう、今日の一杯は昨日のよりも美味しい」

剣士「おとこぉぉオオオオオオ!!」バッ

女暗殺者「……」ザンッ

剣士「ぐぁ! 脚がぁ、俺の……脚がぁ!……お前もぐるか! 男ぉ! 殺す、殺す、俺がこの手で、お前を……俺がぁ! お前をころすぅう!!」ジタバタ

男「……まだ殺すな」

女暗殺者「……」ピタ

男「貴族はジャズを聴きながらが飲むのが一番美味しいのみ方だと言っていたが……音楽は確かに珈琲の味を変えるようだ」ズズズ

大臣「貴族、男よ……此度はご苦労であった」

貴族「いえ、全て男の働きによるものでございます」

男「……」

大臣「それにしても、大陸全土を揺るがせた連続強姦殺人犯が武勇に名高い傭兵ギルドの剣士であったとわ」

貴族「剣士はクエストで数多の土地に赴いておりましたので、そこから調査をした所存でございます」

大臣「貴様らの結論を疑ってはおらんよ……何より、男は剣士が事に及んでいるところを確認したのであろう」

男「えぇ、看板娘を監禁し、魔物に与えてほくそ笑んでおりました」

貴族「何と、外道な……」ギリッ

大臣「貴殿らの働きは国の安寧を維持するためにも大きなものであった。 報酬は弾まねばならないな」

貴族「国の安寧が何よりの褒美でございます」

大臣「そうか、そうか」ハッハッハッ

貴族「いやぁ、男よ……ご苦労であった」

男「……」つ果実

角驢馬「メェェェ」ムシャムシャ

貴族「お前のお陰で、大臣殿に認められ、革命軍と結託しようとしていた傭兵ギルドを解体することが出来た」

男「革命軍と傭兵ギルドが手を組んでいたら、どうなる?」

貴族「私たち富裕層は全員首を吊ることになっていただろう」

男「美味しいかい? ……ふふ、二人で採った木の実の味には敵わないか」

角驢馬「メェェェ」ムシャムシャ

貴族(気違いだが、まだ使い道はあるか)

男「次は何をすれば良い?」

貴族「そうだな……私達の余興を手伝ってもらおうか」

男「余興?」

貴族「あぁ、若者を数人屋敷に閉じ込めて、命をかけたデスゲームを開催せよ」

男「それが余興になるのか?」

貴族「誰が生き残るか、我々で賭け事をしようと思ってね……馬を走らせても良いが、人の方が見応えがある」

男「馬と人は違うのか? ……人と馬は馬が合わない? ん? ならば両方人なのか?」

貴族「…………報酬は?」

男「任せる……俺は奪われたものが取り返せたら良い、感じられれば良いんだ」

貴族「ふふふ、安上がりで助かる」

男「皆様方、本日はお集まりいただき、ありがとうございます」つカンペ

パチパチパチ

男「本日は愉しく可笑しい愚かで憐れな若者どもの殺し合い、死の擦り付け合いにて退屈を潰せればと願っております」カンペ

富豪「あの男が例の傭兵ギルドを壊した気違いかな?」

貴族「あぁ、中々使い勝手が良い男だ」

成金「用が済めば処分出来る……確かに楽ですな」

土地持ち「埋めるなら、場所を貸すが?」フフフ

男「それでは皆様には誰が生き残るか賭けでもしながら、お酒を飲んでいただければと思います……おっと、肝心の憐れな若者達を紹介し忘れておりました」

大水晶「」ポワァ

男「此方の大きな水晶から屋敷の中を覗く事が出来ます……それでは、ご紹介しましょう! 彼等、彼女等がデスゲームの参加者でございます」

貴族娘【ここは何処かしら?】
富豪息子【わ、解らん!俺を誰だと思っているんだれ?此処から出せ!】
土地娘【あら、貴族娘さん? お久しぶりですわ】

貴族「」
富豪「」
土地持ち「」

貴族「何だ! これはどう言うことだ! 男!!」

富豪「そうだ! 私の跡継ぎを解放しろ!!」

土地持ち「貴族殿……貴方の責任であるぞ」

ザワザワザワザワザワザワ

男「……」パチン

女暗殺者「……」ナイフナゲ

成金「」グサッ

シーン

男「おぉ、静かになっていただけて良かった……あまり、進行の邪魔をしないはようにお願い致します」

貴族「き、貴様……」

男「それでは、皆様賭けてくださいませ。 最初の脱落者は最も、賭けた人数が少なかった者とします」

土地持ち「……おい! 君達、私の娘に賭けるよな! 君達の事業に誰が融資したと思っているんだ!」

富豪「賭けてくれ! 金は払う! 一人息子なんだ、彼がいないと、我が家が潰えてしまう! 賭けてくれ! 賭けろ!!」

男「貴族は説得しなくて良いのか?」

貴族「…………貴様は、気を、違えているのか?」

男「ん? 俺は貴族の条件通りにデスゲームを開いただけだ」

貴族「あっ……あぁ……ふざけ、……あぁ……」

男「貴族、賭けてないのはお前だけだ……」

貴族「……」

男「ほら、愉しい余興だ。 笑わないと……で、誰に賭ける?」

貴族「貴族娘に……賭けるしか無いだろ」

貴族「そんな………貴族娘……貴族娘……」ヒッグヒッグ

男「最初の脱落者の断末魔も終わったことですし……此処でお酒に合うお料理を振る舞わせていただきましょうか」

女暗殺者「……」つ皿

男「貴族娘のローストビーフ~カルパッチョ風ソースに和えて~……うん、美味しそうだ」

ウェ ナンデコンナ カエリタイ、カエリタイ

男「さて、進行に戻らせていただきましょうか。 次は先程、富豪息子に賭けた方々と土地娘に賭けた方々に分かれて争っていただきます」

富豪「我々に何をさせるつもりだ!」

男「早食い競争♪」

富豪「」
土地持ち「」

男「先に完食出来た方の生き残り……よーい、どんっ!」

富豪「食べろ!」

「いや、流石にそれは……」

富豪「食べろ!!」

土地持ち「誰か、頼む……食べてくれ、食べてくれ……」

「自分で食べろよ」

土地持ち「……んぐっ、うぇっ……んっ、んぐっ……」モグモグ

男「……ところで女暗殺者」

女暗殺者「……?」

男「貴族娘のローストビーフ……貴族娘は牛だったのか?」

女暗殺者「……」ウーン

貴族娘「」ボイン

女暗殺者「……」ペターン

女暗殺者「……」コクン

男「そうか、やはり人ではないよな……人だったらこんな酷い事をして、俺が平気なわけがないもんな」

今日はここまでにします。
おやすみなさい。

富豪息子「」

男「これは、不味そうだから廃棄しておきますね」ゲシゲシ

富豪「息子……そんな……貴様は何を蹴っている?」

男「何だろう? 人ならば、殺して蹴るなんて出来ないし……これは、何だ?」ゲシゲシゲシゲシ

富豪「蹴るな! 止めんか!!」ダッ

バシュン

革命軍長「……」E.クロスボウ

富豪「なぜ、革命軍が……此処に……」バタン

男「さて、最後のゲームを始めましょう」

土地持ち「待て! 何を言っている? 私の娘は生き残った……もういいだろ?」

男「それを決めるのは俺だ」

土地持ち「貴様は人の命を何だと思っている!?」

革命軍長「あんたらが言えた事か?」

土地持ち「黙れ! 革命軍が! 貴様ら虫けらの命と我が娘の命が同等なわけがないだろう! 答えろ! 男! 私の娘の命を何だと思っている!!」

男「そもそも、お前の娘は人なのか?」

土地持ち「」

男「お前は人なのか?」E.斧

「「「かんぱーい!!」」」

革命軍A「いやぁ、男のお陰で上手くいったな」

土地娘「やめ、もう止め……ぃ、駄目、私を誰だと……んぁっ!」パンパン

革命軍B「富裕層どもの面! あの顔だけで一生酒が美味く飲める」グビグビ

土地娘「あぁ……中に……止めて、今終わった……ばかりぃぃぃいい!!」グボッ

革命軍C「違いない!」

革命軍長「……」グビッ

男「どうした、革命軍長?」

革命軍長「……男、お前はやりすぎだ」

男「俺は手を貸しただけだ」

革命軍長「……あぁ、俺達はやり過ぎたんだ」ハァ

革命軍D「湿気た面してないで、革命軍長もこっちに来て腰振れよ!」パンパン

土地娘「あぁ、駄目、私の体は……旦那様に捧げる為に……あぁ、もう、いやぁだよぉ」ポロポロ

革命軍長「……」バシュン

土地娘「あっ……あぁ……ありがとう……」バタン

革命軍D「あぁ! まだまだ使い足りないってのによ!」

革命軍長「これでは、富裕層のクズ共と変わらない。 まだ、革命が果たされたわけじゃないんだ。 酒はほどほどにしておけよ」サッ

革命軍A「……ノリの悪いやつ」

革命軍B「だが、頭は良い」

革命軍C「つまり、頭が良くてノリの良い新しいリーダーが要れば用済みって事だな?」

革命軍A「そういうことだな、男」

男「……」

革命軍B「あんたなら、誰も文句言わずに着いていくぜ!」

革命軍C「その為にもよ……革命軍長は消さないとな」

革命軍長「男、こんな小屋に呼び出して……何の用だ?」

男「クロスボウを見せてくれ」

革命軍長「悪いな、お前の前で武器を手放すほど愚かじゃない」

男「手にとって見たいわけじゃない。 俺に向けてかまえてもらっても構わない」

革命軍長「……」E.クロスボウ

男「珍しい武器だ。 何処で手にいれたんだ?」

革命軍長「本を読んで自分で作った」

男「手間がかかるな。 弓では駄目なのか?」

革命軍長「革命軍の殆どが本来戦闘とは無縁の人間だからな……弓を訓練する時間が惜しかった」

男「引き金を引くだけで人を殺せる……狙いを定める訓練だけですむ」

革命軍長「そう言うことだ」

男「革命軍長は本当に革命軍の事を真剣に考えている」

革命軍長「……」

男「射っている姿が見たい」

革命軍長「良いが……何を的にすれば良い?」

男「……」バサッ

革命軍A「……」
革命軍B「……」
革命軍C「……」
革命軍D「……」

革命軍長「……それは射てないな」

男「君を殺そうと企てていた」

革命軍長「それでも射てない」

男「何で殺さない……殺したら良い」

革命軍長「人を殺すのは辛い事なんだ」

男「それはどうして?」

革命軍長「押し潰されそうになる」

男「何に?」

革命軍長「罪悪感に」

男「」

革命軍長「彼等は牢にでも閉じ込めておくよ。 革命が済んだらどうするか考える」

男「それでも、殺した、お前は殺してる、富豪も、土地娘も殺してる……ころしたじゃないか!?」

革命軍長「殺さないといけなかったからな……平気なわけじゃない」

男「そうか……良いなぁ」

革命軍長「……」

男「村が山賊に襲われて、生き残ったのは俺一人になった」ブツブツ

革命軍長「村が山賊に襲われて、生き残ったのは俺一人になった」

男「!?」

革命軍長「山賊は富裕層に飼われている事が解って、革命を起こすことを決意した」

男「……お前は俺か? 俺なのか?」

革命軍長「俺は君だ」

男「そうか……そうか……ようやく会えた」

男「頭が痛い」

革命軍長「久しぶりに朝まで飲んだからな」

男「酒はほどほどにしておくんじゃ無かったか?」

革命軍長「仕方無いさ。 友との別れに素面ではいれないよ」

男「こんな俺を……友と呼ぶのか」

革命軍長「あぁ」

男「俺がしてきた残虐非道な行いは昨晩の酒の肴にしたはずだが?」

革命軍長「お前は確かに残虐非道だ……だが、悪じゃない」

男「……」

革命軍長「悪はお前の……俺達の村を襲った山賊達だ」

男「そうか、その言葉で救われた」

革命軍長「……本当にそんな小舟で良いのか?」

男「この国にいるのは辛い。 狂っていたからと言ってやり過ぎた」

革命軍長「他の島に着く前に……死んでしまうんじゃないか?」

男「そうだとすれば、それが俺の罪に対する罰なのだろう」

角驢馬「メェェエエ!」

男「友よ……角驢馬を頼んだ」

革命軍長「あぁ、群を見つけて自然に返すよ」

男「ありがとう……何から何まで世話になる」

革命軍長「やり方こそ酷かったが、お前の革命軍に対する貢献は大きい……気にするな」

男「うちの村に伝わる傷薬……後、これは魔女の小屋で手にいれた丸薬だ。 餞別として受け取ってくれ」

革命軍長「ありがとう。 ……丸薬はどう使えば良い?」

男「緊張を緩和するものらしい……重要な会議の前にでも飲んでくれ」

革命軍長「……正気に戻ったなら、お前も此処で暮らして良いんじゃ無いのか?」

男「…………さらばだ、友よ」ギコギコ

革命軍長「あぁ、さらばだ」

男「海だ、何処までと海だ 」ギコギコ

男「俺が正気に戻るとそこは大海原だった」ギコギコ

男「あぁ、大陸が遠ざかっていく、俺が産まれた大陸が」

男「……サンドイッチでも食べよう」

カバン「」ゴソゴソ

男「サンドイッチが動いているのか?」

カバン「」ゴソゴソ

男「サンドイッチは動かない……」パカッ

女暗殺者「……」ハムハム

男「美味しいかい?」

女暗殺者「……」コクン

男「着いて、来ちゃったんだね」

女暗殺者「……」コクン

男「君は人か?」

女暗殺者「……」ブンブン

男「君は木か?」

女暗殺者「……」ブンブン

男「じゃあ……君は何だ?」

『魔狼を退治したら、あの女で遊ぼうぜ』

『あんたも好き者だね……のるけどさ』

『で、でも、ギルド長に告口されたら』

『死人に口無しってな!!』

女暗殺者「……私は」

『何で、落とし穴なんかあるんだ!』

『痛い……そこに針が仕込んであったのか? 痛い、血が止まらない』

『毒!? あぁ、助けてくれ女暗殺者! 同じパーティーの仲間だろ?』

男『……助けないのか? 同じパーティーの仲間らしいが』

女暗殺者『……』

『誰かいるのか!? 助けてくれ!! 助けてくれ!!』

男『君達は人か?』

『当たり前でしょ? 早く……助けて……』

男『では、人かどうか試してみよう』ヨイショヨイショ

『土! おい、止めろ! 埋めるな! おい!!』

男『ふう……疲れた。何も感じないな、人じゃなかったか……。 ところで、君は人なのかな?』

女暗殺者『……私は』

女暗殺者「私は貴方の道具です」ピタリ




男「道具か」

女暗殺者「……」コクン

男「林檎、剥ける?」

女暗殺者「……」コクン

男「舟、漕げる?」

女暗殺者「……」ギコギコ

男「万能だな」

女暗殺者「……」テレテレ

男「おいで、海の上は冷えるんだ……毛布が欲しい」

女暗殺者「……」ピタリ

男「暖かいな……」

男「あぁ、大陸が離れていく……女暗殺者、俺は悪じゃなかったらしい」

『この道を抜ければ、気付かれずに村の裏側まで来れる』

男「残虐非道だが、悪じゃなかったんだって」

『俺が見張りの番になったら、門の松明を消すから……それを合図にしてくれ』

男「なんかソレって……」

山賊長『……お前は何でこんな事をするんだ?』

男「愉快だな」
男『退屈なんだ』

本日は此処まで。

書く気が無くなるまで、この男の面白珍道中は続きます。

漁師A「おう、お前も来てたのか」

漁師B「仕事前のモーニングは大切だ」

漁師A「おいおい、海に出るつもりかい? 暫くは控えておいた方が良いだろうよ」

漁師B「あん? それはどういう事だ?」

漁師A「ほら、読みな」つ新聞

漁師B「戦争? ……あぁ、例の国か」

漁師A「嫌だねぇ……革命が終わって暫く大人しくしてるのかと思ったらよ」

漁師B「今度は他所様と殺し合いか……何でまた?」

漁師A「お前はもう少し世界情勢ってもんに興味を持たねぇといけねぇや」

漁師B「一介の漁師がそんなもんに興味を持ってどうするよ」

漁師A「馬鹿だねぇ……本当によ。 いいか? 俺らが一介の漁師だろうと海も1つ……即ち一海で有る限り、そこで仕事をする俺達は世界と繋がってるんだよ」

「モーニングセット、2つ」

漁師A「おっ! きたきた! 悪いね、店長……朝から騒いで」

「騒がしいのは嫌いじゃないさ」

漁師A「そうか、そうか!」

漁師B「ベーコンエッグにフレンチトースト、シンプルなサラダに深入りのコーヒー……あぁ、最近これを食べないと仕事に行く気にならねぇや」

漁師A「だから、今日は海に出るなよ?」

漁師B「俺らの国を挟んで戦争とは……迷惑なもんで」

漁師A「全くだ」

漁師B「それで、戦争の理由ってのは?」

漁師A「一介の漁師が知りたいのか?」

漁師B「良いか? 海が1つなら俺達は一海で、世界は何時も繋がって……何だっけ? さっきのかっこいい台詞?」

漁師A「馬鹿だねぇ」

漁師B「うるせぇな! 店長も笑うな!」

漁師A「革命が終わって、帝国側のトップが革命軍の男、革命軍長に変わったのは知ってるな?」

漁師B「おう! 漁師Aに聞いた!」

漁師A「帝国と武国が冷戦状態なのも知ってるな?」

漁師B「おう! 漁師Aに聞いた!」

漁師A「武国は帝国の富裕層を嫌っていたから、帝国の革命軍を支援していたんだ」

漁師B「おう……ん?じゃあ、トップが自分達が支援していた組織……味方になったんだから、戦争する意味はねぇじゃないか」

漁師A「それがよ、何でも平和調停を結ぶ大事な会合で、そのトップの革命軍長が武国の偉いさん達をぶち殺したらしい」

漁師B「はぁ? 何のメリットが!?」

漁師A「何のメリットもねぇよ。 気でも違えたのか、革命だ何だと言って争いが好きなだけだったのか……恩を痣で返された武国は帝国にすぐさま宣戦布告し戦争が始まった……てことよ」

漁師B「確かに俺達が漁をしている海域は危険だな……はぁ、仕事ねぇと儲けもねぇや」

漁師A「湿気た面してんじゃねぇよ。 ……食べ終わったら行くぞ」

漁師B「へ?」

漁師A「漁港市場で倉庫の整理の仕事があってよ……安い賃金だが儲けがねぇよりましだろ?」

漁師B「俺も行って良いのか?」

漁師A「おやっさんにお前の面倒見るように言われてるからな」ヤレヤレ

漁師B「ありがとよ! 持つべき物は頼れる兄貴分だ!」

漁師A「うるせぇや……店長、此処に勘定置いとくぞ」///

牛乳運び「……重、たい……えーと、カウンターに置いてて良いんでしたっけ?」

「……」コクン

牛乳運び「……はぁ、疲れた。 朝の配達、終了! そして、ようやく朝御飯!」

「モーニングセット?」

牛乳運び「流石店長さん! 解ってる! 愛してる!」

「……」ギロリ

牛乳運び「じ、冗談ですよ」

花屋「あら、牛乳運び……何時もより遅いんじゃない? 何時も開店前に運び終えてるって聞いてたけど」

牛乳運び「あー! 花ちゃん! ……それが、お父ちゃんが調子悪くてさ……へへ、少し出るの遅れた」

花屋「花ちゃんは止めなさい。 おじさんが……また、お見舞いに行っても良いかしら」

牛乳運び「来てくれるの!? お父ちゃん喜ぶよ……こんな美人さんに来てもらえるなんて」

花屋「そうね、喜ばせてしまうわね……私は美人だから」

牛乳運び「……相変わらずだね」

花屋「相変わらず、美人ってことね……ありがとう、知ってるわ」フフフ

牛乳運び「花ちゃんこそ、こんな時間に此処にいて良いの? 仕事は?」

花屋「今日はおやすみ。 明日から本気出すってやつよ」

牛乳運び「ふーん、休みの日に態々此処までモーニング食べに来たんだ」

花屋「休みの日だから態々此処までモーニング食べに来たのよ……店長さん、今日も美味しいわ」

「ありがとう」

牛乳運び「どうせ、さっきまで漁師Bさんがいたんでしょ?」

花屋「ちょっなっえっ! あわあわあわわわわ……ひゃっ、珈琲が……」バシャン

牛乳運び「解りやすいな」

「……」つタオル

花屋「ありがとう、店員さん」

「替えのコーヒーを用意しよう」

花屋「悪いわ。 溢したのはハコビンに原因があるのだから」

牛乳運び「ん? ハコビン?」ニヤニヤ

花屋「牛乳運びに原因があるのだから」

牛乳運び「モーニングセットが目当てじゃなくて、モーニングセットを食べに来てる漁師Bさんが目当てなんだよね……花ちゃん♪」

花屋「花ちゃんと呼ぶなと……えぇ、良いわ。 だったら、その宣戦布告を受けとりましょう」

牛乳運び「ん?」

花屋「貴女の好きな人は店長さんよね」

牛乳運び「ちょっ! 止め!」

花屋「モーニングセットを食べるのも、牛乳を運ぶのも店長さんに会うための……モゴモゴ」

牛乳運び「止め! 違! 花ちゃんそれは止めてよ!!」

「……」ギロリ

牛乳運び「店員さん、睨まないで!?」

花屋「それではそろそろ行こうかしら……この後、お見舞いにうかがっても?」

牛乳運び「うん! うちでお昼食べていく?」

花屋「あら良いの?……では、久しぶりに貴女の手料理をいただこうかしら」

牛乳運び「今日はピザ焼こうと思ってね♪」

花屋「えっ! ハコビンのピザ! やったー!!」

「……」
「……」

花屋「ゴホン……お勘定、置いとくわね」

牛乳運び「御馳走様でした!」

ガヤガヤ

運び屋「よぉ! 昼時は混んでるね」

「A定食か?」

運び屋「へっへーん、臨時収入があったからよ! 今日はS定食だ」

絵描き「儲け話か? 羨ましい」

運び屋「おっ! 絵描きさん……あんたに渡された絵葉書売れたよ♪ ほれ、これ報酬」

絵描き「おぉ、ありがたい! すまないね、運び屋さん」

運び屋「しかし、葉書に絵を描いて売るなんて良く思い付いたな」

絵描き「ここの店長さんの案でね。 小遣い稼ぎにやってみたんだが……上手く言ったか」

運び屋「おぉ、評判良いよ……季節に合わせて何種類か描いてくれねぇか?」

絵描き「あぁ、用意しておこう」

「儲け話とは絵葉書のことか?」つS定食

運び屋「あー、それもあるんだが……他にも色々とな」

絵描き「店長さん、良かったら何割か受け取ってくれ……提案してくれたんだ、取り分を受け取る権利はあるだろう」

「珈琲の代金としてなら、受け取ろう」

絵描き「ふふ、それは暫く通わなければいけないな」

運び屋「そうじゃなくても、通ってるくせに」

絵描き「違いない」

運び屋「絵描きさんはこの街に住んで長いのか?」

絵描き「あぁ、5年ほどだろうか? 港町の景色に惚れ込んでしまってね」

運び屋「確かに良い景色だ。 海の男達は活気があって良いしな」

オイ! ホメラレタゾ! ハコビヤノニーチャン、アンガトヨ?

絵描き「もっと粗暴なものだと偏見を持っていたが、気の良い人ばかりだ」

運び屋「ここの生産物は高く売れる……今日はあまり市場は賑わってながったがね」

「帝国と武国の戦争で、沖での漁は自粛しているらしい」

運び屋「なるほどね……浅瀬だけじゃ取れるもんも限られるか」

絵描き「……店長さん、貴方は帝国の出身じゃなかったか?」

運び屋「そうなのか?」

「昔のことだ……この店と気の良い常連と彼女が入れば問題は無い」

漁師A「おっ! 惚気話とは……愛妻家だね」

漁師B「A定食2つ!」

運び屋「午前の仕事は終わったのかい?」

漁師A「あぁ、漁港主さんのお陰で何とか今日の分は儲けさせていただいたからな」

漁師B「疲れたけどな……さぁ、飯だ!」

絵描き「愛妻家……店長さんと店員さんはそういう関係だったのか?」

運び屋「確か、結婚はしてないんじゃ……まぁ、どちらにしても大事にはしてるよな」

漁師A「俺も見習わねぇとな」

漁師B「漁師Aが何れだけ見習っても、愛妻家じゃなくて恐妻家だろ?」

漁師A「うるせぇ!」ポコッ

ハッハッハッ! ガヤガヤ ウマイナ ガヤガヤ

初老「やぁ」

「こんにちは」つ珈琲

初老「注文しなくても、欲しいものが出てくるのは良いね」ズズ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……ふふ」

「……?」

初老「……この歳になっても楽しめる物語があるのは良いね、実に良い」

「退屈していないのなら、何より」

初老「退屈? もうすぐ愉快な事がおこるしね」

「愉快な事?」

初老「私と君の仲だ。 何れ教えてあげよう」

「それは……楽しみだ」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……おっと、もうこんな時間か」

「……夜の準備をしないと」

初老「夜は酒場か……忙しいね」

「退屈しないさ」

初老「ならば、愉快なのかな?」

「……」

初老「ふふ、ご馳走さま」チャリン

漁師A「かーーーっ! この一杯のために働いてるな!!」

漁港主「隣良いか?」

漁師A「おっ! これは漁港主の旦那! あぁ、一緒に飲みましょうぜ」

漁港主「噂には聞いていたが、此処は随分と賑わっているんだな」

漁師A「夜になれば街中の漁師どもが飲みに来るもんで……旦那は初めてですかい?」

漁港主「あぁ、たまには外で飲みたくてな……てきとうにツマミを頼む」

「……」コクン

漁港主「美人だな……無口だが」

漁師A「その歳で枯れてねぇのは凄いと思いますが……へへ、ここの店員さんには手を出さない方が良いですぜ?」

漁港主「何故?」

漁師A「お尻触った馬鹿が絞め落とされた事があって……ありゃあ、何らかの武芸を嗜んでる動きですわ」

漁港主「馬鹿ってどうせ、漁師Bだろ?」

漁師A「ハッハッハッ! 大正解!!」

漁港主「で、その弟分はどうした?」

漁師A「最近、夜は勉強してるらしくてね。 飲みに誘っても来ないんですわ」

漁港主「ほう、それは関心だな」

漁師A「馬鹿なりに頑張ってるらしく……俺は良いんですけどね、明日も馬鹿に仕事をやってくれませんか?」

漁港主「お前は可愛がり過ぎてると思うぞ」

漁師A「ゴロツキだった俺を更生させてくれたおやっさんの忘れ形見だ……可愛い弟分なんですよ」

漁港主「知らないみたいだから教えておいてやる。 俺は律儀な男には義を通す」

漁師A「?」

漁港主「二人分の仕事見つけといてやるよ」

漁師A「流石、旦那だ!」

貿易商「随分と羽振りの良いもんで」

漁港主「気に触る言い方をしてくれるな、貿易商」

貿易商「漁港主さんが港の一部でも明け渡してくれたら、自分の羽振りも良くなるんですがね」

漁港主「ここは漁師の街だ。 その伝統は守らなければならない」

貿易商「この街の発展のためには漁港を貿易港に変えた方が賢いのでは?」

漁師A「酒が不味くなる……さっさと、酔い潰れて帰りな」

貿易商「私は漁港主さんと話をしているんですが」

漁師A「へん!」

「漁師A、何の話だ?」

漁師A「こいつが、漁港を買い占めて貿易港に作り直そうとしやがってるんだ」

「漁港と貿易港、どちらもやることはできないのか?」

漁師A「海に面してる土地も限られてるからよ……どちらもっていうのは」

「なら、海に面している土地を増やすしかないな」

漁港主「!?」
貿易商「!?」

漁師A「海に面している土地を増やす?」

漁港主「……陸地を掘り、開拓すれば可能か……しかし、それにも限りがある」

貿易商「開拓した所を中心に海上に建物を建てれば……ふむ」

漁港主「なるほど、それなら出来そうだ」

貿易商「しかし、大規模な工事になる人手が……」

漁師A「戦争のせいで漁に出れない漁師達が何人がいるんだがよぉ……貿易商」

貿易商「なっ! 私は君達を見下していた……そんな私に協力すると言うのか!?」

漁師A「伝統も守れて、街も発展するっていうなら悪くねぇさ。 俺達は海の男である前にこの街の男だ! そうだろ?野郎共!!」

オー! イイゾ、漁師A ヤッテヤンヨ ヤッテヤルッテー

貿易商「……君達」

漁港主「私も出来る限りの協力をしよう」

貿易商「漁港主まで!?」

漁港主「貿易港があったら、街がより豊かになるんだろ?」ニカッ

貿易商「今までの非礼を詫びる……すまなかった。 よろしく頼む」ガシッ

漁港主「あぁ!」ガシッ

漁師A「へぇ、疲れた」

漁師B「漁とは別の筋肉使ってる感じだな」

漁師A「しかし、開拓も随分進んだなぁ……街の漁師達総出でやったら早い早い」

「サービスランチだ」

漁師A「サービスランチ?」

「貿易港の工事に参加している人には無料で提供している」

漁師B「おぉ! それはありがたい」

「代金は貿易商がまとめて払っている……遠慮するな」

漁師A「いけすかねぇ奴かと思ってたが、意外とそういう面倒は確りみてくれんだな」

漁師B「貿易港を作るのが悲願だったみたいだしな……美味い!」モグモグ

漁師A「明日から、建物作りだとよ……海上に上手く作れるのかねぇ」

「運び屋が幾つか設計図を貿易商に渡していた」

漁師A「運び屋が? あぁ、他の都市の手法を参考にするのか」

漁師B「ごちそうさん……漁師A、先に行ってるぜ」

漁師A「おう、俺も食べ終わったらすぐに行く!」

絵描き「それで、店員さんはどっちが良いと思う?」

「……」

絵描き「こっちかな?」つ絵

「……」ウーン

絵描き「こっち?」つ絵

「……」コクン

絵描き「B案に1票ね……ありがとう」

花屋「絵描きさん……店員さんをナンパなんて、店長さんに言い付けてしまおうかしら?」

絵描き「ち! 違いますよ……貿易港の看板のデザインを頼まれて」アセアセ

花屋「あらそうなの……私も見て良いかしら?」

絵描き「是非、意見をおくれ! A案とB案まで絞れたんだが」

花屋「私は……どちらも悪くないわね」ウーン

「……」つ珈琲

花屋「ありがとう……あら、店長さんは?」

絵描き「あぁ、現場に差し入れを持っていってるらしい」

花屋「なるほど、牛乳運びも現場に差し入れを持っていくって行ってたわね……そのまま、デートでもしてきたら良いのだけど」

絵描き「店長さんと店員さんは付き合ってないのか?」

「……」コクン

花屋「私はB案の方が好きかしら」

絵描き「B案に1票ね……A案、駄目かな?」

花屋「看板というより、絵画という印象が強すぎるのよ」

絵描き「むむむ」

運び屋「……」キョロキョロ

運び屋「……よいしょ」ホリホリ

運び屋「……」ウメウメ

「やぁ」

運び屋「!?」ビクッ

「こんばんは」

運び屋「こ、こんばんは……店長さん」

「何をしていた?」

運び屋「いや、えっと……何もしてない」

「……まぁ、一部始終見ていたが」

運び屋「俺じゃない! 俺が殺したんじゃない! 頼まれて……その、埋めただけだ」

「この手紙を届けてほしい」

運び屋「言わないでくれ……」

「この手紙を届けてほしい」

運び屋「……」

「この手紙を届けてほしい」

運び屋「解った……あんたには逆らわねぇよ……だから、この事は秘密な」

漁師AB「「かんぱーい!」」

漁師B「ついに完成したな! 貿易港!」

漁師A「馬鹿、まだ外観だけだ……中身はむしろ今からよ」

漁師B「でもよ! ようやく戦争も終わって海に出れるようになったんだ! もう十分じゃ無いか?」

漁師A「乗りかかった船だ。 俺は最後まで貿易商の旦那に付き合うぜ」

漁師B「随分と仲良くなったな」

漁師A「筋を通す人は嫌いになれねぇよ……漁は漁師Bに任せた」

漁師B「あいよ、アニキの分も確りとやってくる」

漁師A「……へへ、随分と頼りになる顔になったな」

漁師B「なっ」///

漁師A「明日の打ち合わせもあるしよ、今晩も貿易港に泊まるから嫁さんに伝えといてくれ」

漁師B「最近ずっとだな……寂しがってたぜ」

漁師A「恐妻も少しはましになったらいいんだがよ」

漁師B「ははは……そう言えば、貿易港に小舟が停まってたがあれは誰のだ?」

漁師A「いんや、知らねぇ」

「俺のだ……釣りでもしようと思ってな」

漁師B「言ってくれたら、俺らの船に乗せたってたのに水臭い」

漁師A「違いない! 店長、今度乗せてやるよ!」バンバン

「ありがとう」イタイ

初老「……随分と忙しそうだね」

「今日、宴会があるからな」

初老「あぁ、貿易港の開港は明日か……それはめでたい」

「あぁ、ようやくだ」つ珈琲

初老「ようやくだね」ペラペラ

「……」

初老「……」ペラペラ

「……」

初老「……あぁ、店長君」

「何だ?」

初老「漁師A君に言伝てを頼めないかな?」

「かまわない」

初老「明日、全員酔いつぶれていたら台無しだ。 早めに帰るように……とね」

「解った。 伝えておく」

初老「頼んだよ」

「……」

初老「……ふぅ、ようやく読み終わった」パタリ

貿易商「諸君! 本日は集まってくれてありがとう!」

パチパチパチパチ

貿易商「諸君らの勤労のお陰で無事貿易港が完成した……粗暴な漁師とバカにしていた自身を恥ずかしく思う」

漁師A「今はどう思ってるんだよ?」

貿易商「誇り高き海の男達だと理解したさ……君達は勤労で、強靭で、何より誠実な男達だ!」

ソノトオリ! ワカッテンジャネェカ!

貿易商「今日は私の奢りだ……好きなだけ、飲んで、騒いで、楽しんでいってくれ!」

漁港主「そのためには早く乾杯の音頭をとってもらわないとな」

貿易商「なら、漁港主も前へ……私は貴方と一番最初に乾杯したい」

パチパチパチパチ

漁港主「あぁ、勿論。 友よ、街の更なる発展を祝って」

貿易商「貿易港と漁港の繁栄を願って」

「「「かんぱーい!!」」」

ガヤガヤ ドンチャン ガヤガヤ ワーワー

漁師A「おーい、店長さんよ」

「何だ、酒か?」

漁師A「少し話がしたくてな」

「かまわないが」

漁師A「……あんた、もっと欲張っていいんじゃないのかい?」

「……」

漁師A「漁港と貿易港の共存案……元をただせばあんたの一言から始まったんだからよ」

「そうだったかな……覚えてない」

漁師A「まぁ、あんたがそれで良いなら良いがよ……何か得るものはあったか?」

「そうだな…強いていうなら、楽しみは得た」

漁師A(町の発展が楽しみとは)ヤレヤレ

漁師A「あんた……漢だねぇ」

「そうだ、漁師Aに言伝てがある」

漁師A「ん?」

「初老が今日は早く帰るようにって」

漁師A「そうかい、そうかい…明日、全員酔いつぶれてちゃいけねぇな」

「これ以上、恐妻家にもなりたくないだろ?」

漁師A「違いねぇ! たまには早く帰って可愛がってやるか!!」ハッハッハッ

漁師A「帰る前に1つ良いか?」

「何だ?」

漁師A「名前……店長の名前を教えてくれよ」

「そう言えば、名乗ったことがなかったな。 俺の名は」

男「男……帝国にいた頃はそう呼ばれていた」

漁師A(へぇ、手土産まで貰っちまった……漁師嫁、喜ぶかな?)ランラン

漁師A「幸せだな」ボソッ

漁師A(宴会の誘いを断ってでも勉強する勉強熱心な弟分、気前の良い雇い主に気の良い漁師仲間……男と言う最高の友人…ただのゴロツキだった俺には勿体無いや)ハハ

漁師A「おぅ! 帰ったぞ!」ガチャ

アンアン…イイ、モット

漁師A「おい、帰ったぞ……?」

イイ、ダシテ、ナカニ…アァン

漁師A「……おい、何してんだ?」ワナワナ

漁師B「」
漁師嫁「……へ?」アヘアヘ

漁師A「うちの嫁に何してやがんだ! 漁師B!!」

漁師B「あ、あにき、何で……今日は宴会で遅くなるって……何で」ワタワタ

漁師嫁「漁師B! 逃げな! 殺されちまうよ!」

漁師B「は、はい! 姐さん!」ダッ

漁師A「待て! ぶっ殺してやる!!」ダッ

漁師B「なんで、今日は帰ってこないって、初老さんが……はぁはぁ、くそ、くそくそ!!」タッタッタッ

漁師A「待て! この野郎! 勉強するふりしてうちの嫁に手を出しやがって! 今までの恩を全部仇で返しやがったなぁ!!」ダッダッダッ

漁師B(速い……追い付かれる。 漁港から海に出て……いや、アニキの船もあるんだ、逃げきれない)

漁師B(そういえば、貿易港に店長の小舟があるって言ってたな……漁港と貿易港は離れてるからそこから海に出れば逃げ切れるか…よし!)

漁師A「ぶっ殺す! ぶっ殺す! ぶっ殺す!」

漁師嫁「あらあら、更生した何だていっても結局はゴロツキなのね」フフフ

花屋「……」ブツブツ

漁師嫁「あら、花屋さん……こんな時間にお散歩かしら?」

花屋「漁師Bを誑かしやがって、ビッチ、殺してやる……殺してやる」E.鋏

漁師嫁「なっ、違うわよ! 漁師Bの方から誘って……来ないで!来ないで!…きゃぁああ!!」

花屋「殺っちゃた……私、人を、殺して……」トボトボ

花屋(ハコビンなら……ハコビンなら匿ってくれる)

花屋「いや、捕まりたくないもの…ハコビン、助けて、助けて」トボトボ

花屋「牛舎……明かりが着いてる」

花屋「ハコビン……いるの? お願いがあ」

牛乳運び「……」ハァハァ
牛乳父「」

花屋「は、ハコビン」

牛乳運び「はぁはぁ……見た?」E.包丁

花屋「何で、何で、自分の父親を……ハコビン、何で」

牛乳運び「だって、店長さんが邪魔だって……お父ちゃんがいなくなったら一緒になってくれるって」

花屋「」

牛乳運び「だからさ、見ちゃったさ……花ちゃんも邪魔だなぁ」

花屋「嘘よ……こんなの嘘よ……死にたくない、止めて止めて止めて!」

牛乳運び「これで、店長さんと一緒に一緒にいられる……あはははははははははははは!!」グサッ

漁師B「あった! あれだ! 逃げ切れる!」

漁師A「あいつ、男の船を盗みやがった! 戻ってこい! ……くそ、漁港まで船を取りに行ってたら間に合わねぇか」

ギギギギギギ

漁師A「何の音だ?」

ギギギギギギ

漁師A「男の小舟から伸びてる鎖が、貿易港の建物の柱に食い込んでやがる……おい! 漁師B止まれ! これ以上進んだら!!」アセアセ

バキッ バタンバタンバタンバタンバタンバタンバタン!!

漁師B「へ? ど、どうして貿易港が倒壊して…なんで」

ガサガサ

漁師B「ひっ! ……何だこの鞄?」

「……」ヒョコ

漁師B「店員がなんで鞄の中から!?」

女暗殺者「……」ニッコリ

貿易商「な、何だ今の音は!?」

漁師C「大変だ! 貿易港の建物がドミノみたいに倒れやがった!!」

貿易商「なっ、何だと……」サー

漁港主「何でそんなことに」

漁師C「漁師Aと漁師Bが喧嘩したみたいでよ…クソッ、馬鹿野郎どもが」

漁港主「二人は?」

漁師C「漁師Aはうちの若いのに捕まえさせたが……漁師Bは海の上で浮いてたって…とりあえず、皆来てくれ!!」

ザワザワ ナンダッテンダ ザワザワ 漁師Aメフザケヤガッテ

男「……お代は後でかまわない」

貿易商「あぁ、貿易港の様子をみてくるよ」ヨロヨロ

初老「……おや、宴会は?」

男「貿易港で何かあったみたいでな」

初老「……建物がドミノみたいに倒れていたね」

男「……」

初老「店長君……私がやったことは些細な事なのだよ」

男「……」

初老「漁師嫁を唆して、漁師Bと浮気をさせて……その現場に漁師Aを遭遇させる。 その程度の悪戯さ」

男「……」

初老「私の想定では漁師Aが漁師Bを殺して終わる筈だったが……どうして、事態がここまで大きくなったのだろうね」

男「……」

初老「君は何をしたんだい?」カチャ

男「それは?」

初老「銃さ……鉛を撃ち出して君の頭蓋骨ぐらいなら簡単に砕ける大人の玩具さ」

男「そうか」トンッ

初老「それは?」

男「ウィスキーだ。 男達の喧騒と女の嘆きが聞こえる夜に良く合う大人の飲み物だ」

初老「……いただこう」

初老「……確かに合うね、この惨状が酒のツマミになるとは不勉強だった」

男「惨状?」

初老「ふふ、私も君もここで出来る悪事はやり尽くしただろう。 今晩中にこの町を一緒に出ないか?……脚は用意してある」

男「すまない、俺は明日の朝までこの町にいなくてはならない」

初老「何故だ? 君が仕組んだ事がバレたらただじゃすまない……そうだろ?」

男「せっかく仕組んだんだ、最期まで見届けないとな」

初老「何ヵ月もかけて、漁をそっちのけで作った貿易港が一晩で全壊し、外は乱闘騒ぎだ……死人まで出ている」

男「そうだな」

初老「これより先の悲劇があると」

男「悲劇?」

初老「解った……私も明日の朝までこの町にいよう。 今日は失礼するよ」チャリン

男「おやすみ、初老」

ガチャッ

女暗殺者「……」

男「おかえり……なぁ、独り言を聞いてくれないか?」

女暗殺者「……」コクン

男「初老が惨状やら、悲劇やらって言ってたんたが」

女暗殺者「……」

男「今日は何か悪いことがあったのかな?」ウーン

貿易商「…………」ボロボロ

漁港主「朝か」

貿易商「最悪の朝だ……最悪の朝だ! これだから、この町の漁師なんて! 漁師なんて!」バシッバシッ

漁師A「」

漁港主「死体を蹴るな……酷い騒ぎだったな。 まだ、事の全体像が掴めん」

貿易商「あぁ」ガクッ

漁港主「死者は牛乳父に花屋、漁師A、漁師B、漁師嫁……後、倒壊した時に貿易港には誰かいたのか?」

貿易商「若い衆が何人もいた……建物の下は死体だらけだろう」

漁港主「……酷い有り様だな」

貿易商「全財産を注ぎ込んで作った貿易港が……私も首をくくるしかないか」

漁港主「今日、最初の船が来るんだったな」

貿易商「あぁ、貿易港が無いなら引き返してもらうしか……うぅ、無駄になった航海費の請求が」ガクガク

漁港主「……漁港の一画を使ってくれ」

貿易商「良いのか?」

漁港主「私が漁師達を御しきれなかったのが責任だ……最悪の状況だが、これ以上悪くなることも無い」

貿易商「これ以上悪くなることも無いか……良しやってやる! まずは最初の船と良い取引をして少しでも儲けを出そう!」

漁港主「あぁ、私も最後まで手伝う。 2人でこの港町を建て直そう」

貿易商「と、そんな話をしていたら我々の希望の船が見えてきたな」

漁港主「あぁ、大きな船だ。 大砲まで積んである」

貿易商「!?」

漁港主「なぁ、貿易商……貿易船とは帆にドクロのマークを描いているものなのか?」タラリ

貿易商「か、かか、海賊船……だと」

初老「」アゼン

男「……女暗殺者、ケチャップで口が汚れた」

女暗殺者「……」フキフキ

初老「な、何だこれ?」

男「新しいモーニングセットだ。 レタスとベーコン、チーズにケチャップで味付けしたサンドイッチだが……美味しくなかったか?」

初老「そんなことは聞いていない! 何故、町が海賊に襲われている!? これも君がしたことなのかい?」

男「貿易港を開こうとして商品をため込んだ港町。 それが一晩で倒壊し、町を守る海の男たちもいない」

初老「彼等にとっては狙い目ではある……あるが……」

運び屋「初老の旦那、お迎えに……ひっ! 店長さん!?」

男「運び屋の男に処理させていたのは初老か……儲け話、納得した」

初老「そういう君は運び屋を使って港町が昨晩こうなることを海賊に伝えていたんだね……人でなしが」

男「人でなし? ん? 俺は人では無いのか?」ブツブツ

女暗殺者「……」つ丸薬

男「……ん、すまない。 正気に戻った」

初老(正気に戻った? 私には狂っている男を更に狂わせて正気に見せているように見えるがね)

初老「私は別の町に行こうと思うのだが、君も宛がないならついてくるかい?」

男「あぁ、助かる」

初老「それではいこうか」

男「その前に」ンンン

初老(咳払い?)

男「町が海賊に襲われて、生き残ったのはほぼ俺一人になった」キリッ

初老「タイトルコール!?」

女暗殺者「始まるよ♪」キュピーン

初老「可愛いな!?」

運び屋(何で、3人ともこんな惨劇を目の前にしてふざけてられるんだ)ガタガタ

男「女暗殺者……掃除は終わったか?」

女暗殺者「……」コクン

男「お皿は棚にしまったな?」

女暗殺者「……」コクン

男「ほっぺに美味しそうなソースがついてるが……摘まみ食いも終わったのか?」フフフ

女暗殺者「///」コクン

男「顔を洗っておいで」

カランカランカラン

初老「やぁ、男君」

男「久しぶりだな、初老」

初老「新しい店は順調かい?」

男「良い物件を紹介してもらったお陰でね」

初老「そうか、そうか……角驢馬ブレンドというのは?」

男「月替わりのオススメブレンドだ。 今月は武国の湖近くで取れた豆を主体として使っている」

初老「武国の前は酸っぱいからねぇ……」

男「フルーティーとも言えるが。 濃厚な甘味と一緒に味わうと化ける」

初老「例えば?」

男「お勧めはスィートポテトか……武国のあんこを使った饅頭もある」

初老「スィートポテトか饅頭か……では、武国の戦勝祝いに饅頭としよう」

男「解った」

初老「帝国の革命軍長の公開処刑は酷い有り様だったようだね」

男「公開処刑……記事を読んだが、あれは公開拷問だろ」

初老「四股を馬に引っ張らせてもぎ取り、簡単には死なないように工夫した長さの縄で宙ぶらりんか……良い香りだ」

男「待たせたな。 饅頭もすぐに出す」つ饅頭

初老「……おぉ、フルーティーだ。 嫌な酸味が無い!」

男「淹れた後に表面の泡を取れば、油っぽい酸味が減る……わざとその雑味を楽しむのも良いが」つ饅頭

初老「なるほど、この食べ合わせは良いね……武国の菓子も侮れない」

男「……」

初老「……ところで、感想は無いのかな? 君の母国が滅びたことにさ」

男「特には何も感じなかった。 初老は何か感想があるのか?」

初老「そうだね、残念に思う」

男「というと?」

初老「私が破滅させられる国が1つ減った」

男「玩具を無くした子供のようだ」

初老「童心を忘れない……若作りの秘訣さ」

誤字だらけですみません。

武国の前→武国の豆
【最初の】つ饅頭→珈琲

です。

書き溜めなく、その場その場で思い付いた事を書いているので場面が急に変わったり誤字が今後も多くなると思います。
どんな形であろうと、物語が終わるまでは書く事だけは約束いたしますので、気に入っていただけた方はお付き合いいただければ幸いです。

男「初老は国を滅ぼしたいのか?」

初老「私の思惑通りに人々が破滅するところが見たい……と言った方が正確かな」

男「港町では悪いことをした」

初老「いや、あれはあれで楽しかったよ……寝取られたような感覚でもあるが」クス

男「……」

初老「最近は何かしてないのかい?」

男「店の方が忙しいからな……退屈はしていない」

初老「ならば、愉快なのかな?」

男「……さてね」

初老「明後日の夜、此処を貸し切らせてもらっても良いかな?」

男「かまわないが……何をするんだ?」

初老「いや、ちょっとした会合だよ」

作家「店主殿、ウィスキーをいただけるかね?」

男「あぁ」つウィスキー

作家「ありがとう」

娼婦「初老先生ったらまだ来ないのかしら」

大男「呼び出した本人が一番おそいってのは気に入らねぇな」

作家「これも演出なのでしょうな! 黒幕はデザートが出された後に登場するぐらいで丁度良い……と言ったところですかな」

大男「わけが解らねぇ……おい! 店主、何でも良いから肉寄越せ! 肉!!」バンッ

男「……焼き加減は?」

大男「生で良い」ガルルル

娼婦「野性的ね……良いわ」ウットリ

薬師「そうか? 僕は乱暴な男は好かないな」

大男「俺もお前みたいなチンチクリンな女なんか好みじゃねぇよ!」

薬師「それは何より」

大男「女だから殴られねぇとか思うなよ?」グググ

男「……黒幕は食後の珈琲に入れる角砂糖のようなモノか」フッ

大男「あん?」

初老「皆、待たせたね……それでは、会合を始めようか」

初老「悪党諸君、忙しくあるべき夜の時間を奪って 申し訳無いが今宵は人に害することを娯楽とするもの同士、親睦を深めていってほしい」

パチパチパチパチ

初老「後何人か声をかけているんだがね……本日はこれだけのようだ」

作家「それは残念! 無念! また来週のお楽しみといたしまして……自己紹介などいかがですかな? 私、皆様方がどれ程の人間のクズ……悪党なのか気になりますゆえ」

大男「あん? 誰がクズだ!」バンッ

作家「い、いやだなぁ……褒めているというのに」

初老「私の口から一人一人紹介しようか……まずは作家君からだね」

初老「作家……悲劇を喜劇的に喜劇を悲劇的に書く奇才の小説家。 リアリティーのある人の破滅の過程を描く、自殺観測人……いや、自殺の火付け人かな」フフッ

作家「たまたま、私が取材した方々が何名か自殺しただけだというのに……酷いですな」ハッハッハッ

大男「まどろっこしいヤツだ」

初老「君からしたらそうだろうね」

初老「大男……殴り殺し、原初の殺人鬼と恐れられる男。 素手で人を殺める事に快楽を感じる殺人衝動、キリングハイの持ち主」

大男「人と殴り殺すのとセックスは変わらねぇからな」ニタァ

薬師「変態だぁ……」

大男「あん? 殴り犯すぞ」ギロッ

薬師「ひっ」

娼婦「殴られるのは嫌だけど、犯すだけなら相手になるわよ?」

初老「娼婦、殺しに快楽をおぼえるのではなく、快楽で殺す夜の蝶。 腹上死から、痴情のもつれまでお手のモノの希代の悪女」

娼婦「先生、そんな言い方酷いわね。 私は快楽を説いてるだけだというのに」ヨヨヨ

初老「さて、最後は薬師だね。 私と一番思想が近いわけだが」

薬師「そうですね」

初老「薬師……自身の調合した薬が人体にどのような影響を与えるか、その研究にしか興味の無い女。 彼女を説明するなら、この前の連続変死事件が解りやすいかな」

作家「ほう……人体が急に内側からは爆ぜたというあの」

薬師「あぁ、あれは僕の作品さ」ドヤッ

作家「それは是非!是非!是非! 目の前で見てみたい! 描写したい……そうですな、集団自殺しようとする方々に渡したいですな!!」

大男「それの何がおもしれぇんだよ」

男「一人目の凄惨な死を見ても、同じ薬で自殺をしようとするか否か……なるほど」

作家「えぇ、まさしく……閉じ込めて、最後の1人には自殺を止める選択肢を提示すれば」

男「薬の飲ませ合い……殺し合いに発展すると、良く思い付くな」

作家「店主殿も中々の理解力で……私達、趣味が合いそうですな」ガシッ

男「あぁ」ガシッ

大男「最後の一人……あいつは?」

男「……」

初老「彼は会合の場を提供してくれているだけだからね……どうだい、君も参加するかい?」

男「残念ながら、人を殺した事など無くてね。 見ているだけで十分だ」

大男「つまらねぇヤツ」

初老(人を人として認識してないんだよね……積極的に参加はしてくれないか)ザンネン

初老「それでは、紹介はほどほどに……後はお酒でも飲みながら悪事を自慢し合うもよし、提案し合うもよし……仲良く楽しんでいってくれたまえ」

作家「薬師殿! 薬師殿! 先程の薬の話なのですが!!」キラキラ

薬師「提供するのはかまわないが、無料ではな」

男「作家は何人か死にたがっている人を知っているのだろ? それを試験体として薬師に紹介するのはどうだ?」

薬師「それは良いね。 試してみたい薬があるんだ」チビチビ

作家「ふむん、悪くありませんな。 私もその観測にお付き合いしても?」

薬師「ククク、かまわないよ……君も来るかい?」

男「店が暇ならな」つ水

薬師(ぼ、僕が酒が苦手なのに気付いてくれたのか)ドキッ

初老(作家と薬師を彼に会わせたのは正解だったか)

娼婦「ふふふ、私が男性を誘い出して、貴方が因縁をつけて殺すというのはいかが?」

大男「まどろっこしいが」

娼婦「あら、全裸で土下座する相手を踏み殺す……中々の悦だと思うのだけど」サワサワ

大男「……へぇ、それは確かに気持ち良さそうだ」

初老(あの二人も予想通りだね……さて、どれだけの事が起こるか楽しみだ)

男「この水晶で小屋の様子を見ることが出来る」

作家「おぉ! 中々レアなアイテムですな! 何処で?」

男「帝国にいる時分にとある貴族から頂戴した」

作家「ほほぅ、その話も気になりますが」

薬師「今は小屋の中の様子だね」

作家「外から鍵をかけられた小屋の中に男女が7名。 全員自殺願望がある。 死体の処理を条件に此方の指示に従って自殺して貰えるようにしましたぞ」

男「順番に薬を飲んで自殺か……例の内側から爆ぜる薬か?」

薬師「あぁ、ちゃんと用意したよ」クククッ

作家「それは、楽しみですな……おっ、一人目が薬を飲みました」

バクハツシタ ナンダコノクスリハ コンナシニカタナンテ

作家「おぉ! おぉ! 良い! 良いぞ! 臓物まで木端微塵になり、他の参加者は肉片まみれ……願望を目の前で見て再燃する生への渇望! しかし、小屋から出られるのは一人だけという絶望! 良いですぞ!!」カキカキ

男「……彼等はどうやって集めた?」

作家「自殺したい者の情報は常に集めておりましたが、少なかったので何人かは私の文書を読ませました」

薬師「読ませた?」

作家「えぇ、私の取るに足らない特技なのですが、死にたくなる文を綴るのが得意でして」フフン

薬師「それは凄いな」ゾクッ

男「なるほど、作り物の自殺願望と本物の自殺願望の違いか……一人、薬を手に取ったぞ」

薬師「あぁ、あの薬は」

作家「どうかなさいました?」

薬師「クククッ、爆ぜる薬以外にも新作を混ぜておいたのさ」

作家「ほほう! それは楽しみですな!!」

「わ、私は死にに来たんだ……あんな死に方でもかまわない」ゴクン

「あっ、あぁ…うがぁあああああ!!」メキメキゴリゴリメキメキ

ナンダ! エグイ! カラダガデカクナッテ… ヒィ!

怪物「ワタシハ……シネテ、ナイ……」ヨロヨロ

参加者A「此方にくるな」ブンブン

怪物「ナイフ、ササレバ、シネル……」ヨロヨロ

参加者A「く、来るなって」ダッ

怪物「ニゲルナ、コロシテ……コロシテクレ」ツカミ

参加者A「止めろ……離せ! 離せ!……あぁぁあああ!!」ボキボキボキ

怪物「アレ……シンダ?」ポイッ

参加者A「」ドサッ

キャーー ヤダヨ、カエリタイ イキタイ、シニタクナイ

怪物「マテ、 ニゲルナ、ワタシヲコロセ……ワタシヲコロセヨォオオオ!!」ダッ

作家「何と! 何と! な・ん・と!! 飲んだものを異形に変える薬! 死にたい者を逆に死ににくい姿に変えて、生きたいと思い返したモノ達が虐殺されていく……あぁ、何と尊い、何と素晴らしい光景なのでしょう! 私、筆が止まりませんぞ!!」カキカキ

薬師「言語能力は残っているな。 怪物に成り立てだから、人の名残があるだけか? ククク、もう少し観測が必要だね」

作家「おぉ! 最後の一人が殺されました! 残されたのは怪物一人! 否、一匹!! ……ところで、薬師殿」

薬師「なんだい?」

作家「あの怪物は殺せるのですかな?」

薬師「ククク、銃でも貫けない皮膚、毒を打ち消す代謝を持たせたからね……簡単には死なないさ」

作家「それって……我々も危ないのでは?」

薬師「…………………ごめん、考えてなかった」タラリ

作家「薬師殿!?」

薬師「に、逃げようか……って、男がいないぞ」

作家「薬師殿、水晶を!男殿が小屋の中に!?」

怪物「…ミンナ、シンダ……ワタシハ、ナカマハズレ」

男「随分と暴れたみたいだな」

怪物「オマエラノセイデ……シネルトイッタノニ……ダマシタ! ダマシタナ!!」グググッ

男「君は人か?」

怪物「……ドウイウイミダ?」ピタッ

男「君は人か?」

怪物「ヒト……ダッタガ……ヒトデハナイ」

男「見た目は随分と変わったな」

怪物「オマエラノセイダロ!!」バンッ

男「中身はどうだ? 君は生き残ったのだから、死か生か選べるわけだが」トポトポ

怪物「シニタイニキマッテ……ドウシテ、ワインヲグラス二!?」

男「いや、真っ赤な小屋の中を見てたら飲みたくなってな」ゴクッ

怪物「ナンダ! オマエハ……オマエハ!!」グググッ

男「どうして、死にたい?」

怪物「……」ピタッ

男「床に落ちていたんだが……これはお前のか?」つ絵

怪物「アァ」

男「パパへ……か。 娘が似顔絵を描いてくれたのか? 昔の君には似ていたのだろうな」

怪物「ダマレ」

男「死のうとしていた男がどうしてこんな絵を持ってきた」

怪物「ダマレ!」

男「死のうとしているのと、娘に何の関係がある?」

怪物「アァァアァアアァア!!」

男「……犯されて、殺されたか?」

怪物「ダマレ! ダマレ! ダマレ!!」

男「非力な父親では守ってやれなかったか」

怪物「ダマレェエエエエエェェエエエ!」

男「ならば、今ならばどうだ?」

怪物「…………ナニ?」

男「その姿ならば泣き寝入りする必要も無いんじゃないか?」

怪物「コロセル……アイツラヲ……アイツラヲ…ミナゴロシ……アァ、アァ!!」

男「さて、君は死か生か選べるわけだが……どうする?」つワイン

男「戻った」

作家「」アングリ
薬師「」アゼン

男「作家、あの怪物の娘と娘を襲ったヤツらを調べられるか?」

作家「あ、あぁ、出来るとも!」

男「薬師、怪物の薬の応用で見た目を変える薬とかは作れないだろうか?」

薬師「へ? 任意の見た目に変える薬……出来るだろうか?」ムムム

男「出来れば用意してほしい」

薬師「解った、研究してみるよ」

作家「準備している間、あの怪物はどうするので?」

男「俺が飼育しておく」

薬師「し、飼育……」

薬師「……男、いるかい?」ゲッソリ

男「薬師か……珈琲で良いかな?」

薬師「砂糖多めで頼む」つ薬

男「それは?」

薬師「君に頼まれていたモノさ……変装薬とでも名付けようか」

男「なるほど」

薬師「10分ほど他人の姿に変身できる……変身する対象の髪の毛と一緒に飲むことで指定できる」

男「髪の毛か……問題ない。 用意出来るだろう」

薬師「はぁ、疲れた」

男「ありがとう、薬師」ナデナデ

薬師「///」

作家「んん、お邪魔でしたかな?」ニヤニヤ

薬師「さ、作家! 何時から」アセアセ

男「作家も珈琲で良いか?」

作家「えぇ、ご馳走になります」

作家「此方の3名が怪物の娘を犯し、殺した犯人でございます」

男「そうか、ありがとう」

薬師「どうやって捕まえる? 睡眠薬でも盛るかい?」

作家「文書を読む嗜みが無い相手では、私は何とも出来ませんな」ムムム

男「女暗殺者……彼等を捕まえて来てくれ」

女暗殺者「……」コクン

作家「ほほぅ、ただの店員さんではなかったのですな! 私、気になります!!」

男「3人程度なら楽勝だ」

女暗殺者「……」フンス

薬師「すごいじゃないか」

女暗殺者「……」ギロリ

薬師「何で、僕を睨む!?」

作家「久しぶりに恋愛小説なども綴りたくなりますなぁ」

暴漢A「くそ! ほどけ! ほどけ!!」
暴漢B「俺達が何をしたって言うんだ……」
暴漢C「此処、どこだよ! 何なんだよ!!」

作家「あっさりですな」

女暗殺者「……」ドヤッ

男「さて、ご対面だな」

ギィ ドスンドスン

怪物「……」

暴漢s「「「ヒィイ!!」」」

怪物「コイツラダ……マチガイナイ…コイツラガ、コイツラガ!コイツラガァアアア!!」ブンブン

暴漢A「何だ、この化け物は!?」
暴漢B「くるんじゃねぇ……止めてくれよ」
暴漢C「」ジョロロロ

男「怪物、待て」

怪物「……オトコサン?」

男「最後の仕上げがある」

怪物「?」

男「この薬を飲め」

暴漢A「へ? 何だ……それは?」

男「この薬を飲め」グイグイ

暴漢A「止めろ! 無理矢理……むご、んぐっ」ゴックン



暴漢A「あぁ……アァァア!!」シュー

暴漢B「暴漢Aから煙が……何を飲ませやがった!?」

怪物娘A「へ? 何だ……胸がある?」

暴漢B「この女って」
暴漢C「俺達が襲った……」

怪物「ムスメ! ムスメェエエエ!!」

男「お前達も飲め」

怪物娘A「何だよ……これ」
怪物娘B「この怪物、この姿を見て娘って言ってたぞ」
怪物娘C「父親か……父親なのか……」ガクガク

怪物「オトコ、ドウシテ、ヒドイ、コノスガタジャ……コロセナイ……アァ、アァアアア!!」ジタバタ

男「殺せない? 好きにしたら良い。 選択肢は常に君にある……そら、生か死かだ」

怪物「オトコォオオオオ!!」

本日はここまでです。

男「タイムアップ……今日はここまでにしよう」

暴漢A「も、元の姿に戻った」スゥ

怪物「コロス! コロスゥ!!」

男「駄目だ」

怪物「コォロォサァセェロォォオオオオ!!」


男「君の選択だろ?」

怪物「アァアアァアアァアアァア!!」ジタバタ

薬師(えげつないな……)ウワァ
作家「はぁはぁ」カキカキ

男「明日もチャンスをあげよう……次は納得がいく選択をしろ」

暴漢A「あ、明日も……」ガタガタ
暴漢B「嘘だ……夢だ……」ビクビク
暴漢C「帰りたい……帰りたい……」

男「薬師」コショコショ

薬師「ち、近いな/// 何だい?」

男「明日は薬を4個用意してくれ」

男「やぁ」

怪物「オトコォ! コロサセロォ! ハヤクコォロォサセロォォオオオオ!!」

男「元気だな。 良いだろう」

ガチャ

怪物娘A「んーんー!」E.サルグツワ
怪物娘B「んーんー!」E.サルグツワ
怪物娘C「んーんー!」E.サルグツワ

怪物娘D「んーんー!」E.サルグツワ

怪物「」

男「どうした?」

怪物「ボウカンハ……サンニンダッタ」

男「そうだな」

怪物「アト、ヒトリハ……ダレダ?」

男「さぁな」

怪物「コロソウトシタノニ……コロソウトキメタノニ……アァアアァア!!」

男「好きにしたら良い。 選択肢は常に君にある……そう、生か死かだ」

怪物「ヒトデナシガァァアアァ!!」

男「そういえば、この小屋には鏡が無かったな」スマナイ

作家「……」カキカキ

薬師「それでな、特殊な光を当てることで分子の構造を変えて薬の特性を変えれないか試していてだね」

男「そうか」

薬師「と、こんな専門的な話をしても解らないか……すまない」シュン

男「薬師が楽しいなら幾らでも聞こう」

薬師「なっ/// そういうところだぞ! 君は本当に!!」ドキドキ

作家「……」ピタッ

男「書き終えたか?」

作家「えぇ、間違いなく私の最高傑作ですな」フゥ

男「珈琲を淹れよう……何か食べるか?」

作家「サンドイッチなどあれば」

男「女暗殺者……作ってくれ」

女暗殺者「……」コクン

薬師「あっ、僕も食べたい」

女暗殺者「……チッ」

薬師「舌打ちされた!?」

作家「男殿……書き終えて思ったのですが」

男「俺も怪物娘Rまで用意して思ったんだが」

作家「厭きましたな」
男「厭きたな」

薬師「それは酷すぎないかい!?」

作家「だって、最近の怪物殿ってば叫ぶだけなんですもの……知能下がってません?」

薬師「あの姿になって随分経つからね」

男「ならば、そろそろ我慢の限界か……作家、最後は君も楽しめるだろう」

作家「ほほぅ、まだ何かあると……では、見届けるとしましょう」

怪物「……」

怪物娘E(今日は大人しいな)

怪物「……」グルルルル

怪物娘D(唸り声?……いや、今の音は……)アセッ

怪物「ハラ……ヘッタ……」グルルルル

怪物娘達「」

怪物「……」ガシッ

怪物娘K(止めろ! 嘘だろ!? 実の娘の見た目何だろ!?)ジタバタ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

ガブッ……クチャ…クチャ…クチャ

……

怪物「……」

男「……」

怪物「マンゾクカ?」

男「あぁ、君の人生はワインによく合う」

怪物「ナントデモ、イエ…カタキハコロセタ」

男「あぁ、その事についてなんだが……謝らなければいけないな」

怪物「……?」

暴漢A「へへ」
暴漢B「どうも」
暴漢C「……ひひ、ひひひ」

怪物「」

男「少し手違いがあってな……彼等を混ぜるのを忘れていた」スマナイ
女暗殺者「……」テヘ

怪物「オマエハ、センタクシハ……オレニ、アルト……」ガタガタ

男「あぁ、選択肢は常にある……君の生か、君の死かだ」

怪物「」

男「ところで、教えて欲しいんだが」

男「自分の娘を食べてまで……生を選んだ気分はどうだ?」

作家「おぉ! おおぉおおおおおお!!」

怪物「」

薬師「自ら心臓を抉り出して、握りつぶして……」ウェ

男「自殺願望をようやく叶えられたか」フフ

作家「何と醜く美しいのでしょうか! これだ! これが、これこそが絶望であり、失望であり、願望の向こう側なのでしょうな!! 」ヨロヨロ

男「何処に行く?」

作家「書き直しに行くに決まっているでしょう! あぁ! あの程度で最高傑作などとは恥ずかしい! まだ、まだまだ、底も天井も程遠い!! 更なる作品を! 更なる執筆を……生きてて、良かった」ウットリ

薬師「変わっているな」

男「人のこと言えるのか?」

薬師「……」

男「完成したんだろ?」

薬師「ククク、お見通しか……あぁ、時間制限の無い変装薬が出来た。 試してみたいんだが」

男「3人余った……好きに使え」

暴漢達「へ?」

初老「良い豆でも仕入れたのかな?」

男「香りで解るとは……淹れがいがある」

初老「ふふ、君の顔付きで解ったのさ。 退屈してないようだね」

男「お陰さまで……美人三姉妹が高値で売れた」

初老「私にも教えて欲しいな……どんな悪戯をしてきたのか」

男「作家の本を読めば解る」

初老「違いない」ペラペラ

男「彼の新作か?」

初老「2作品同時出版とは筆がよほど走ったらしい」

男「そうか……ん?」

本≪恋する処方箋≫

男「……」

初老「……」ペラペラ

男「……」

初老「……」ペラペラ

男「初老も相変わらず悪戯が好きなんだな」

初老「おっと、そう返すか。 照れている顔でも見たかったが」フフッ

男「次の会合は?」

初老「明後日……かまわないかな?」

男「あぁ、貸し切りにしておくよ」

薬師「///」ゲシゲシ

作家「痛い、痛い……怒らないでくださいよ、薬師殿」

ワイワイガヤガヤ

大男「随分、人が増えたな……何処から見つけてきやがんだか」

男「さぁな……大男」つ生肉

大男「解ってきたじゃねぇか」

娼婦「あら、何を餌付けされてるのかしら?」

大男「あん? 餌付け何てされてねぇよ」

理容師「他の派閥と馴れ合うのはいただけない……そうだろ?」

大男「派閥なんざ……興味がねぇよ」

娼婦「そう……それで、良いのね?」

大男「……」

娼婦「……」ニコッ

大男「チッ……へいへい、解りましたよ。 女王様」

男「娼婦はウィスキーで良いか?」

娼婦「ワイン」

男「赤?」

娼婦「白」

男「……」
娼婦「……」ニコッ

男「俺は会合の場所を提供しているだけだ、派閥どころか参加者じゃない」

娼婦「薬師と作家を連れて何かしているようだけど」

男「娼婦に迷惑はかけていない」

娼婦「それはどうかしらね」

洋裁師「娼婦の姐さん、こっちで飲みましょう!」

理容師「そんな男のこと姐さんが気にする価値が無い……そうだろ?」

娼婦「えぇ、すぐに行くわ」

作家「ふむん、新参者が増えていくなか、自分の派閥に初期の会員全員を取り込みたいと言ったところなのでしょうな」

男「道化師を中心とした派閥、守銭奴を中心にした派閥があるんだったか?」

作家「えぇ、悦で人を殺める娼婦の派閥、金儲けで人を殺める守銭奴、技を試したくて人を殺める道化師……まさしく、三者三様でございますな」

薬師「娼婦と道化師の派閥は似たような思想なんじゃないか? 人を殺して楽しんでるんだろ?」

作家「大いに違いますとも……言うならば、そう!」

男「堕落と研鑽」

作家「男殿! 台詞を取らないでくだされ!!」イジワル!

男「君達も何処かの派閥に入った方が良いんじゃないか?」

作家「私は……ふふ、男殿と馬鹿やってるのが好きでありますからな」

薬師「僕もだね」

作家「薬師殿が好きなのは男殿では?」

薬師「///」ゲシゲシ

作家「止めて! 蹴らないで!」

薬師「それにしても初老さんからすれば良い迷惑だろうね?」

作家「と言いますと?」

薬師「派閥争いに決まってるじゃないか」

男「迷惑どころか、仕組んだのは初老だろう」

薬師「へ? そうなのか?」

作家「でしょうな。 こと人間関係の構築において初老殿が失敗をすることもないでしょうし」

薬師「それでも……何のために?」

作家「競わせるため……悪事を加速させるため、ですかな」

男「だとしたら、良い頃合いだろう」

薬師「?」

作家「えぇ、燻った火種に点火するには……そろそろでしょうな」

初老「皆、待たせてしまったね」

娼婦「……いえ、何時も通り美味しいお酒をいただいてましたので、お気にせず」

初老「それなら、良かった」

守銭奴「美味しいお酒? 随分と娼婦ちゃんったら店長君に突っ掛かってたように見えたけどね」

娼婦「あら、同じ初期からの会員として、楽しくお話してただけなのだけど」

守銭奴「良くないなぁ! 新参者に対してそうも排他的なのは!!」

娼婦「新参者に排他的なわけじゃないわ……金に細かい男性が好みじゃないだけよ」

守銭奴「……」

道化師「自分の思い通りになる男性以外は好みじゃない……だよね?」

娼婦「……」

初老「派閥争いの噂は本当だったか……これは良くないな」

作家(白々しいですな)

リアルが忙しくて続き遅れそうです。
読んでくださってる方がいれば、すみません。

初老「愛すべき悪党同士で殺し合いをするのは、私が望むところじゃないんだよね」

娼婦「……解っているわ」
道化師「勿論とも」
守銭奴「それで?」

初老「ふふ、だから、そうだね……殺し合いじゃなくて競い相手もしてもらおうかな?」

娼婦「競い合い?」

初老「そうだとも。 次の会合にそれぞれ、この国で最も善人と呼ぶに相応しい人物の生首を持ってきておくれ」

ザワザワザワザワザワ

理容師「ぜ、善人の生首? それってあの男を殺せって言ってるようなものじゃないか……そうだろ!?」

初老「……」バンッ

理容師「」バタン

初老「意見がある者は手を上げて発言してくれたまえ……撃つ相手を間違えたら、流石に申し訳ない気持ちになる」

……………。

男「初老」ハーイ

初老「なんだい?」ジャキン

男「店が汚れた……後で、清掃代を要求する」

初老「君はぶれないね……本当に」フフフ

道化師「もっとも善人と呼ぶに相応しい人物の生首を持ってきた派閥の勝ちって事でいいんだよね?」

初老「あぁ、勝った派閥には活動資金と他の派閥への命令権を与えよう」

娼婦「ふふ、それは」
守銭奴「譲れないなぁ」

男「……ふぅ」

作家「片付けは終わりましたかな?」

男「あぁ、参加者が増えたせいで会合の片付けも一苦労だ」

作家「ふむん、それは大変ですな」

男「その分の代金ももらっている」

作家「それで……善人狩りには参加なさるので?」

男「善人と呼ぶに相応しい人物の生首か……何で皆ざわめいたんだ?」

作家「聖教祖様が聖騎士を最も清き肉体と善なる魂を持ち得た男として、勲章を与えましたゆえ」

男「なるほど、暗に聖騎士の首を持って来いと言っていたわけか」

作家「作用でございます! 聖騎士と言えば、我が国最強の騎士、聖国の守護者とまで称えられる御仁……正面からは勿論、暗殺さへも難しいでしょうな」

男「国の破滅への一歩と言うことか……初老は若作りに余念がない」フッ

作家「ですな♪」

作家(結局、男殿は参加されない様子。 私はいかがいたしましょうか)フラフラ

守銭奴「やぁやぁ! 作家先生! 千鳥足でご機嫌だねぇ!!」

作家「おぉ、守銭奴殿ではありませんか……私に何かご用で?」

守銭奴「なに、見かけたかやよぉ一緒に飲みなおさねぇかと思ってねぇ」

作家「男殿の店でしこたま飲んでまいりましたので遠慮させていただこう」

守銭奴「まぁ、待てって……先生」ガシッ

殺し屋「……」

作家「おやおや、悪党同士で殺し合いは……望まれていないと言ってましたが?」

守銭奴「殺し合いはしねぇさ……少し金儲けの話をしねぇかってよ」

薬師(くそ、作家のせいで男の顔がまともに見れなくなっちゃったじゃないか)///

道化師「薬師さん……だよね?」

薬師「むっ、道化師か……奇遇だね」

道化師「奇遇? いやいや、君を待ってたんだよ……オイラ達の派閥に入って貰えないかってね」

薬師「……どうして僕を誘うんだい?」

道化師「君は俺達に似てるからね、向上心がある……自身を高める事に悦を覚える質だよね?」

薬師「まぁ、もっとすごい薬を作りたいって欲はあるよ」

道化師「僕ももっと凄い技を身につけたい……もっと、優れた殺し方をしたいって欲に従って生きているんだ」

薬師「……」

道化師「君は我等の派閥にいるのが、自然だと思うんだよね」

薬師「男の傍にいるよりも?」

道化師「あんな男に良いように使われるなんて勿体無いよ~」

薬師「……」ムムム

道化師(後一押しだね……)フフ

道化師「何を悩むことがあるんだい?」

薬師「いや、君の誘いをどう断ろうかとね」

道化師「!?」

薬師「作家のようにスラスラと言葉は出ないが、男の傍から離れる気は無い」

道化師「彼と恋人とかそういうのにはなれないと思うんだよね。 都合の良い道具として使われ続ける気かい?」

薬師「!?」

道化師(よし、今度こそ)

薬師「道具だよ! そうだ、的を得た表現だ! 僕は彼の道具でいたいんだよ!」スッキリ

道化師「……」イラッ

薬師「ありがとう、道化師……スッキリしたよ」

道化師「道具で良いと?」

薬師「道具が良いのさ」

道化師「ならば! えぇ! 道具にしてあげるとも! しかし、利用者は俺様達だ!!」

獣使い「へへへへ」
曲芸師「やっと出番か」
手品師「♪」

道化師「まずは持ち運びに不便なその手足と耳障りな事しか吐かないその舌をとって、使い心地を良くしてやるよ!!」

薬師「や、止めろ! 同じ組織のメンバーで潰し合いなんて」

道化師「ウヒハハハハ! 潰すは潰すでも、雌の穴と薬の知識を使い潰してやる!!」

獣使い「道化師さん、きれてるなぁ」

曲芸師「最初に使わして欲しいものだが……貧乳って良いよね?」

女暗殺者「……」コクコク

曲芸師「あれ? 手品師h」バタッ

獣使い「お前何時からそこn」バタッ

道化師「どうした、何で誰も……」

獣使い「」
曲芸師「」
手品師「」

女暗殺者「……」ドモ

道化師「なっ!?」

道化師「お前は、男の店の店員! そんな、我が派閥の幹部を倒すなんて……」タラッ

薬師「ど、どうして、女暗殺者が?」

女暗殺者「……道具?」

薬師「へ?」

女暗殺者「貴女も男の道具?」

薬師「あぁ、そうありたいと思っているよ」

女暗殺者「仲間~♪」ギュー

薬師「うわぁ! 急にくっつくな!?」

女暗殺者「……」スリスリ

薬師「無言で頬ずりも止めてくれ!」///

道化師「偶然、運良く、獣使い達を殺せただけで、調子に乗りやがって……良いでしょう! 余が相手を……」パタッ

薬師「おぉ、ようやく効いたか」

道化師「なっ、何を何時?……盛られた?」ピクピク

薬師「麻痺作用のある無臭の気体を最近開発してね。 勿論、僕は解毒剤を予め飲んでるわけさ」ククク

女暗殺者「……」パチパチ

薬師「あれ? 何で女暗殺者には効いてないの!?」ビックリ

薬師「どうしてだろう? 代謝が特殊なのかな? 毒物に耐性があるとか?」ムムム

女暗殺者「……」エッヘン

道化師「おい! 何処を見ている! まだ、話は終わってない! 終わってないぞ!!」ピクピク

薬師「うるさいなぁ。 君に構ってる場合じゃないんだ……女暗殺者、幾つか薬を試させて貰っても良いかな?」ワクワク

女暗殺者「……」コクリ

道化師「こっちを向け! あたいと薬師は同類だ! 自分を高める欲に囚われた同類だろ? なぁ、頼むよ! 同類のよしみで助けてくれよぉ!!」

女暗殺者「……」ドヤァ

薬師「えぇ! この薬を飲んでも平気なの!? 本当に君の身体はどうなっているんだい?」

道化師「無ぅ視ぃすぅるぅなぁぁぁあ!!」

薬師「……予想外の出来事が起こった時に運や偶然といった言葉を吐いた時点で僕と君は同類じゃないよ」

道化師「何!?」

薬師「トライ アンド エラー、トライ アンド エラーさ」

薬師「君の中に向上心は無い……君を駆り立てているのはただのちんけなナルシズムさ」つ薬

道化師「その薬は何だ…止めろ! 飲ませないでくれ!!」

薬師「やはり、僕の調合は間違ってないか」

道化師「」

薬師「どうして、君には効かないんだろうね?」ワクワク

女暗殺者「……」ニコッ

男「……この時間に来るとは珍しいな」

作家「えぇ、まぁ……近くで用があったもので」

男「そうか」

作家「おや? 店員殿は?」

男「薬師と買い物に行った。 ……ペアルックコーデにはまっているらしい」

作家「何時からそんな仲良しに。 店員殿はむしろ薬師殿を嫌っていたように思いますが?」

男「女暗殺者は薬師を同類と認め、薬師は女暗殺者を被験体として認めた」

作家「相思相愛ですな」

男「あぁ」

作家「……ふむん、つまり店員さんがいない今、男殿を守ってくれる者はいないと」カチャ

男「それはなんだ?」

作家「銃でございます。……鉛の弾を撃ち出して男殿の頭蓋骨ぐらいなら簡単に砕く大人の玩具ですな」

男「そうか」トンッ

作家「そちらは?」

男「ハニーミルク、ただただ甘い子供の飲み物さ」

作家「男殿と初老殿の出会いを再現したかったのに……意地悪!」プンプン

男「幼稚なだけの遊びに付き合うほど暇じゃない」

守銭奴「なら、大人なビジネスの話ならば付き合ってくれるのかなぁ?」ガチャ

男「……ご注文は?」

守銭奴「ハニーミルク! ……あー、角砂糖を4つほどいれておくれぇ」

守銭奴「如何かなぁ? 店長君……いや、親愛を込めて男君と呼ぼうかぁ」

男「……」ペラペラ

守銭奴「本当にあれがぁ交渉材料になるのかい?」コソコソ

作家「えぇ、興味は引くかと」コソコソ

守銭奴「トマトとベーコンの良い仕入れ先ねぇ……それで味方につけれるならやすいが」

男「……アボカドの良い仕入れ先も知らないか? 最近、高騰したんだ」

守銭奴「お安いご用だ……欲しい食材をメモに書いて渡しておくれぇ」

男「助かる」

作家「嬉しそうでしょ?」
守銭奴「嬉しそうだなぁ……普通の喫茶店の店長みたいだぁ」

作家(普通であり、常識的でもある……それが男殿の真に恐ろしいところでもありますが)フフッ

男「それで、ただで取り次いでくれるわけじゃないんだろ?」

守銭奴「あぁ、幾つか条件がある」

男「……」

守銭奴「1つ、作家先生の我が派閥への参入」

男「それは俺に許可をとる必要は無い」

守銭奴「作家先生が男君に許可を取って貰わない限り入ってくれないっでねぇ」

男「解った。 作家が嫌でなければ、俺が口を出すことはない」

守銭奴「2つ、善人……いや、抽象的な発言は止めようか。 聖騎士への関与の禁止。 彼を殺すのも助けるのも……世間話すら止めてくれぇ」

男「あぁ、解った」

守銭奴「3つ、我が派閥への関与……次の会合までの期限付きだが、聖騎士と同様に世間話であっても止めておくれぇ」

男「問題ない」

作家「少しは迷っていただきたかったな」ショボーン

男「角砂糖は4つ……だろ?」

守銭奴「4つ、次の会合の翌日、貸し切らせてほしい」

男「祝勝会は大事だな」

守銭奴「おぉ、話が早くて助かる」

男「……此方からも1つ頼みがある」

守銭奴「ん? 何だぁ?」

男「この木の実を取り扱っている店も紹介して欲しい」つ木の実

守銭奴「見たこと無いなぁ……」

男「親友の好物なんだが……帝国を出てから見かけなくて」

守銭奴「帝国固有の種か? ……出来る限りは探してみよう」

男「ありがとう」

作家「男殿の親友? 私、気になります!!」

男「……」

作家「男殿?」

男「……」

守銭奴「次の会合まで作家とはぁ口聞かないってぇ」

作家「えぇ! もう始めているのですか!?」イジワル!

道化派A「くそっ! 道化師がやられるなんて!」

道化派B「し、しし、しかも、一緒にいった幹部連中も全滅か」

道化派C「男どもに仇討ちをしねぇとよ!」

道化派A「いや、だがよ……手を先に出したのはうちだ、その上これ以上男達に危害を加えようものなら」

娼婦「初老先生は貴方達を潰しにかかるでしょうね」フフッ

道化派達「娼婦!?」

娼婦「驚いたわ、道化師が殺されるなんて……好敵手として寂しい限りだわ」

道化派A(嘘だ)

娼婦「でもね、男への仇討ちなんて、道化師は望んでいないのでは無いのかしら?」

道化派A(嘘だってのに)

娼婦「それよりも、日々鍛え上げたその技で聖騎士の首をとる方が……道化師も喜んでくれるんじゃなくて?」

道化派A(嘘だって解っているのに……)

道化派B「そうだ、娼婦の言う通りだ」

道化派C「鍛え上げた技を男ごときに使うなんて勿体無い……聖騎士へと向けるべきだな」

娼婦「勇ましいわね……素敵だわ」

道化派A(嘘だって解ってる。 良いように使われるだけだって頭の中で理解もしてる……それなのに、それなのに)ワナワナ

娼婦「ほら、貴方も良いところ魅・せ・て♪」

不良神父「……」スパー

村人「あの、神父様」

不良神父「へいへい、何ですかい?」

村人「えっと、煙草……吸われるのですね」

不良神父「そりゃね、慈愛の女神様が我々から娯楽を奪うほどの器量なしとは思えませんで」

村人「そ、そうですか……あの、一人で大丈夫なのですか?」

不良神父「えーっと、洞窟に掬う禁術使いの退治でしたっけね……おじさん、治癒魔術しか使えないからなぁ」ポリポリ

村人「えぇ! そんな!? 異教徒狩りのスペシャリストが来てくれるって聞いてたのに!?」

不良神父「安心しな……俺はあくまで付き添いだよ……さて、集合時間まで……5、……4」

ウォォォオオオオオ!!

不良神父「……3、……2」

ウォォォオオオオオ!!

不良神父「……1」

聖騎士「到着!! ……不良神父殿、遅刻ではありませんな?」

不良神父「ギリギリな……早めに来いって言ったろ?」

聖騎士「す、すみません。 お年寄りが道に迷っていて……後、村の子供が迷子に……それから、新郎が拐われる事件が」アタフタ

不良神父「大事の前の小事だ……捨て置け」

聖騎士「大事の前に小事も果たせぬようならば、大事も果たせぬ……でありましょう!」キリッ

不良神父「はぁ、まぁ良いけどよ……ん?拐われたのは新郎なのか? 新婦じゃなくて?」

聖騎士「えぇ、拐われたのは新郎でありました!」

不良神父「面白そうな事件じゃねぇか……酒の肴にするからよ、後で聞かせやがれ」ゲラゲラ

村人「あの……えっと、禁術使いを退治して欲しいんですが……」

聖騎士「えぇ! お任せよ! 私、聖騎士めが何とかいたしましょう!!」

不良神父「……洞窟で禁術使いに会ったらどうする?」

聖騎士「真っ当に生きて頂けぬか誠心誠意説得いたします!!」キリッ

不良神父「馬鹿野郎、問答無用で斬り殺せ」スパー

聖騎士「何と!?」

不良神父「話し合いなんて、必要ねぇ……禁術使いは殺す。 これが聖教の決まりだ」

聖騎士「しかし……でありますな」

不良神父「はぁ、こういう仕事は狂信者の方が向いてるか……まぁ、今後も汚れ仕事をアイツに押し付けるってんなら無理はしなくていいぜ?」ニヤニヤ

聖騎士「うぐっ、それを言われると……解りました。 我が一太刀は健やかな女神の子らの為に」

不良神父「それで、良いんだよ……行くぞ」

聖騎士「むっ、不良神父殿も一緒に洞窟に入ってくださるのですか!?」

不良神父「嬉しそうにしてんじゃねぇよ。 たまには教え子の勤労を見守るのも悪くねぇ」

聖騎士「不良神父殿……」キラキラ

不良神父(聖騎士の近くにいる方が安全だろうしな)チラッ

村人「……?」

村人→洋裁師「……怪しまれた?」フム

娼婦「洋裁師、首尾はどうかしら?」

洋裁師「姐さんの指示通り、聖騎士を洞窟に閉じ込める事は出来ましたが……道化師派閥の残党じゃ勝てませんよ?」

娼婦「あら、そうなの?」

洋裁師「えぇ、私の見立を信じていただけるなら」

娼婦「貴方の見立てが外れた事なんて無いじゃない」

娼婦「それで?」

洋裁師「はい?」

娼婦「それで、大男なら聖騎士に勝てるのかしら?」

洋裁師「………同士討ち……いや、ギリギリ競り勝てる……そんなところですね」ウーム

娼婦「そう、解ったわ。 行きましょう、洋裁師」

洋裁師「行くって何処に?」

娼婦「善人狩りに決まってるじゃない」

洋裁師「いえ、だから、善人は洞窟の中に……」

娼婦「あら、聖騎士以外にも善人と呼ぶに相応しい人はいるんじゃなくて」フフッ

洋裁師「!?」

洋裁師(姐さんは聖騎士を殺す事を既に諦めていたのか)

洋裁師(自分達の派閥で殺すことが出来ないなら、他の派閥も殺し難いようにしたい)

洋裁師(道化師派閥の残党をけしかけたのは、聖騎士が命を狙われていることを伝えて警戒心を煽るため)タラッ

娼婦「さて、楽に勝たせてもらいましょう」フフフ

道化派A「」
道化派B「」
道化派C「」

聖騎士「……ふぅ、まさか禁術使いが格闘戦を仕掛けてくるとは」

不良神父「いや、違うだろ……誘き出されて襲われたようにしか見えねぇよ」スパー

聖騎士「なんと!?」

不良神父「まぁ、恨みを買いやすい立場だ。 仕方ねぇが……心当たりは?」

聖騎士「うーむ、思い当たりませんな」

不良神父(コイツらは明らかに捨て駒にされた。 異教徒の連中か? それにしては戦闘スタイル、流派がバラバラだった……相手さんはどういう組織形態してんだ?)スパー

聖騎士「不良神父殿?」

不良神父「……聖騎士、少しの間休め」

聖騎士「し、しかし、私には女神の子らを守る使命が」

不良神父「お前さんが今動くのは迷惑だ」

聖騎士「……私は貴方を恩師と……それ以上に父と思っています。……私の為に無茶をしてほしくない」

不良神父「馬鹿野郎」ポコッ

聖騎士「?」

不良神父「俺がお前の事を息子だと思ってるから、無茶するしかねぇんだよ」ニヒヒ

旅行中につき、更新出来ません。
4日からまた続きを書こうと思います。

不良神父(聖騎士には、孤児院の奉仕へ身分を隠して向かわせたが……相手さんが解らねぇな)スパー

不良神父(調べたところ、聖騎士を襲った奴等は裏社会で用心棒やら殺しの仕事をしている奴等みたいだが……金で雇われる奴等が捨て駒を引き受けるか?)

不良神父(自分の腕を試したかった? 名を上げたかった? それなら、複数人で仕掛けてきた事に違和感がある)

不良神父「上手く扱われただけ……それがしっくりくるがよぉ」

不良神父(あれだけの人数を自分の都合で操ったとなると……厄介なヤツに目をつけられたもんで)

「不良神父さん! 不良神父さんはいらっしゃいますか!?」ドタバタ

不良神父「へいへい、いますよ。 何だい……嫌な顔色しやがって」

「そ、それが聖騎士様が向かわれた孤児院で事件が!?」

不良神父「……すぐに向かう」

不良神父(身分を隠して行動させてたってのに……もう見つかったのか)タラッ

不良神父「……よう、何があった?」

聖騎士「私宛に手紙が届きまして……」

不良神父「おう」

聖騎士「女の子が私に届けるように受け取ったんですが……」

聖騎士「その子が、その子が私に渡す前に中身を見たら……文書を読んだだけなのに……」ポロポロ

不良神父「その女の子はどうなったんで?」

孤児院長「それが、自ら包丁で喉を突き刺してしまい」

不良神父「自殺ね。 ……手紙は?」

孤児院長「此方に……中身は見ていません。 不気味だったので」つ手紙

不良神父「そうかい」ペラッ

聖騎士「ふ、不良神父殿!?」

不良神父「………………聖騎士、思いっきり俺を殴れ」

聖騎士「はい!」バコンッ

不良神父「っ!」

孤児院長「な、何をなさっているのですか?」

不良神父「悪いね……こうでもしないと正気に戻れねぇと思ってよ」

聖騎士「不良神父殿……手紙には何と?」

不良神父「一作の童話が書かれていた……それだけだったが、確かに俺も死にたくなった」ウエッ

孤児院長「だ、大丈夫ですか?」

不良神父「吐いてくる。 おい、聖騎士。 俺が死なねぇように見張ってくれ」ゲッソリ

聖騎士「はい」

不良神父「…………」パチクリ

孤児院長「目が覚められましたが?」

不良神父(口に布の塊が押し込まれている……舌噛んで死なねぇようにか。 手も椅子の背に固定されているな……記憶が定かじゃねぇ)

孤児院長「どうやら、正気に戻られたようですね」カチャカチャ

不良神父「悪いね、孤児院長さんよ。 俺なんざ拘束しても楽しくなかっただろうによ」

孤児院長「フフフ、人を拘束して悦に浸る趣味はございませんので。 ……何か食べられますか?」

不良神父「スープか何かねぇかな。 固形は食べられそうに無い」

孤児院長「ええ、持ってこさせましょう」

不良神父「……孤児院の奉仕の募集。 ここの孤児院では今まで出していなかった」

孤児院長「手伝ってくれていた青年が急に里帰りすることになりましてね」

不良神父「若い男手が必要になったと?」

孤児院長「まさか、聖騎士様が来てくださるとは思いませんでした。 ……身分を隠されていたのは先の手紙と関係あるのですか?」

不良神父「あぁ、何者かに狙われている」

孤児院長「なら、子供達の為にも彼に此処に居て貰うわけにはいけませんね」

不良神父「………疑って悪かった」

孤児院長「お互い父性を捨てられない仕事をしている……それだけのことです」

不良神父「違いねぇ……青年の故郷を教えてくれねぇか」

孤児院長「えぇ、喜んで」

不良神父「忙しそうだね、どうも」

青年「ははは、お陰様で……まさか、田舎の宿屋がここまで繁盛するとは思いませんでした」

不良神父「親御さんだけでは手が回らないからって、里帰りしてまで手伝うとは親孝行なもんで」

青年「それだけじゃ無いんですけどね」

不良神父「というと?」

青年「孤児院で孤児の子供達と直接関わるというのだけが、彼等の救い方では無いんじゃないかなって」

不良神父「……」

青年「宿屋で儲けたお金を寄付したり、孤児院出身者を雇ったりそういう関わり方も出来るんじゃないかな……なんて」

不良神父「そうかい……親孝行だね」

青年「えぇ、両親ともに喜んでくれてます」

不良神父「ちげぇよ。 きっと、孤児院長も鼻が高いって話さ」フッ

青年「えぇ、彼は確かに私の第2の父ですね」ニコッ

不良神父(青年の両親が営む宿屋の近くに大型の商業施設ができ、客足が増えた)スパー

不良神父(その結果、宿屋の人手が足りなくなって青年は里帰り。 青年が孤児院での奉仕を続けられなくなり、孤児院長は代わりを募集した)

不良神父「商業施設の出資者に聖騎士を狙わせたヤツがいる?………いや、遠回り過ぎるだろ」ボソボソ

不良神父(だが、大掛かりだとは言えねぇな)スパー

不良神父「主な出資者は投資家、守銭奴、小太商人、大太商人……か」

不良神父(聖騎士には教会と関わるなって言っておいたがよ……一応、狂信者を向かわせたが大丈夫かねぇ)

不良神父「長引かせるわけにはいかねぇな……さっさと、相手さんに辿り着かねぇと」

聖騎士「………村?」

聖騎士(どうしたものかとひたすら歩き続けてしまった……ここはどこだ?)キョロキョロ

キャッキャッ ワイワイ ガヤガヤ

聖騎士「ふふ、子供達が楽しそうに遊んでいる……良い村だな」

「おにいちゃん、おにいちゃん」グイグイ

聖騎士「はい、どうされました?」

「あのね、今日ね、教会でね、お歌の発表会があるんだよ」

聖騎士「なるほど、だから皆楽しそうなのですね」

「一生懸命、練習したから聞きに来てほしいな」

聖騎士(不良神父殿には聖教と関わりのある場には行くなと言われたが…………流石にこんな田舎の村なら大丈夫だろう)

聖騎士「ええ、是非拝聴させていただきます」ニコッ

聖騎士(ふふ、子供達が緊張した顔で並んでいるな)

「一生懸命、練習しました! 聞いてください!」

「「「「聞いてください!」」」」

パチパチパチパチ

聖騎士(暖かな拍手、一生懸命な子供達、優しく笑う大人たち……本当に良い村だ)

作家「えぇ、ですので……今から起こることは貴方のせいなのですよ」ボソッ

聖騎士「!?」バッ

「あら、イケメン……私に何か用かしら」テレテレ

聖騎士「い、いえ失礼……何でもありませんよ、御婦人」

聖騎士(今、男の声で………)

聖騎士(気のせいか?)

「ある日~♪」

「「「ある日~♪」」」

「森の中~♪」

「「「森の中~♪」」」

聖騎士(聖歌ではないのか)ホウ

「熊さんに~♪ ■■■♪」

聖騎士(今、何て言った?)

「「「■■さんに~♪ ■ら■♪」」」

聖騎士(何だ、この物語は……ただの童謡のはずなのに)タラリ

「ハハハ、良い歌だ!」
「うちの子が一番上手いわ」
「はぁ!? うちの子がいちばんよ!!」ナグリ

聖騎士「ここは何処だ……私は何をして……」

「■咲く森の■~♪ 熊さんに出会■た~♪」

『一作の童話が書かれていた……それだけだったが、確かに俺も死にたくなった』

「「ラララララーラーラーラーラー♪」」

「ララララ■ー■ー■ー♪」

「死ね! この村の人間なんて皆死ねば良い!!」グサグサ
「うちの子が死んだ! 歌いながら、首をかきむしって……ハハハハハハハハハハハハ! 朝食の準備をしなくてすむわ」
「葬儀の準備をしなくては……教会が儲かる、儲かる」

聖騎士「……」ハァハァ

「」
「」
「」
「」「」「」「」

聖騎士「皆、死んだ……自殺した……」

聖騎士『止めろ! 歌うな!』

聖騎士「私のせいじゃない……私は悪くない……」ボソボソ

聖騎士『歌うなと言っているだろう!』ザンッ

聖騎士「私のせいでは……」

『えぇ、ですので……今から起こることは貴方のせいなのですよ』

聖騎士「私が殺した……私のせいで……私がぁ……」ガクンッ

狂信者「……」

聖騎士「狂信者殿……助けて、ください」ゲッソリ

狂信者「否である」

狂信者「母なる女神すら救わない貴殿をどうして我が救おうか」

聖騎士「……」

狂信者「これは女神が貴殿に与えし苦悩、与えし試練である。ならばどうして、我がその愛を奪う? 否、奪うことなど赦されるわけが無く、汝はその愛から逃れず受け入れなければならない。恵みを受け入れ、苦悩を災悪のみを拒むなど、身勝手な行いを誰が信仰などと嘯こうか……故に、故にである」

狂信者「主の前に例外無し」ジャキン

聖騎士「!?」

狂信者「その弱さは罪である。 母なる女神への不孝であり、看過される罪状で無し。 ならば、我が裁とう、断とう、絶とう……抗い愛への返礼とするか、裁かれその罪への懺悔とするか選べ」

聖騎士「は、ははは……貴方という人はこんな時にも変わらないな」

狂信者「……であれば、如何にする」

聖騎士「我は聖騎士、女神の子らを守護すべき任を任されし一太刀の刃である……が同時に自身も女神の子の一人に他ならないと再確認いたしました」

狂信者「ふむ」

聖騎士「えぇ、解りましたとも……私はその愛へ返礼し、健やかなる子であると示しましょう」

狂信者「ならば、裁つことは無し……」バッ

聖騎士「狂兄さん……もしかして、凄く心配してくれてました?」

狂信者「………むぅ」///

聖騎士「ありがとうございます」

守銭奴「聖騎士が死んだ?」

殺し屋「あぁ、暫く狂信者と話した後、狂信者の手によって殺された」

守銭奴「おいおい、狂信者っていやぁ聖騎士と同じ教会で育った義兄弟って話じゃねぇか? そんな狂信者が聖騎士を殺すかぁ?」

作家「ふむん、しかし狂信者と言えば聖書の一説を読み間違えただけで上級神官の首をはねた事があるとか……あり得ない話では無いのでは?」

殺し屋「首は回収できなかった……すまん」

守銭奴「命を差し出させるだけの報酬は用意してねぇさ……へぇ、ここまでか」

作家「よろしいので? 狂信者と聖騎士が一人芝居売ったとも考えられますが」

守銭奴「……不良神父ってヤツが俺に話を聞きに来た」

殺し屋「!?」
作家「ほうほう」

守銭奴「あれだけ存在が勘ぐられないように気を付けたのによぉ、尻尾を掴まれかけたんだ」

殺し屋「当たり前だが、聖騎士達と真っ正面からやり合うというなら俺は降りさせてもらう」

守銭奴「割りに合わねぇ事はしないさ……さて、聖騎士の次に善人らしいヤツを探すとするか」

娼婦「あら、聖騎士が死んだの?」マジマジ

洋裁師「えぇ、狂信者に殺されたらしく」

娼婦「ふーん」ポイッ

洋裁師(興味無さすぎでしょう)

娼婦「よし、これにしようかしら」つ生首

洋裁師「えーっと、自然保護委員会の会長でしたっけ?」

娼婦「善人と呼ぶには相応しいでしょ?」

洋裁師「……大男に暇を与えてる状況で、どうやって殺してきたので?」

娼婦「嫌ね。 私は殺人なんて野蛮な事なんてしないわよ」

洋裁師「?」

娼婦「おねだりしたの―貴方の首をちょうだいってね」クスクス

洋裁師「」ゾクッ

娼婦「後は集会が始まるのを待ちましょうか」

洋裁師「大男は呼び戻しますか?」

娼婦「まだダメよ。 今、大男を呼び戻したら聖騎士を殺しにいってしまうかも知れないでしょ?」

洋裁師「ん? 聖騎士は既に死んでいるのでは?」

娼婦「ふふ、貴方は強さ以外は測れないのね。 可愛いわ」ナデ

洋裁師「んっ」///

仕事が忙しくて中々書けません。
すみません。

少しずつでも更新します。

不良神父「……」スパー

狂信者「……」セイザ

不良神父「聖騎士を半殺しにするって……何考えてるんだよ」ハァ

狂信者「否、七割殺しである」

不良神父「より悪いわ!」

狂信者「うむ……しかし、不良神父の治癒の腕と聖騎士の健体があれば死することは無しと判断したが故な。 こうでもしなければ、見張りの目も欺けまい」

不良神父「……たく。 で、ここは?」

狂信者「以前、滅した異教徒どもの巣よ。 まず、見つかることも無かろう」

聖騎士「……」Zzz

不良神父「聖騎士の死は報じるように伝達してある。 泥を被ってまで弟分を守りたかったとは泣かせるね」ヘヘッ

狂信者「断じて守ったわけではない。 女神も護らぬ子をどうして我が護ろうか、此の試練が愛ならば奪う権利など無し……ただ」

不良神父「ただ?」

狂信者「その愛を受け止めると決めたならば、その信仰は尊ばれるものである。 主の前に例外は無し、それ故、同じ子として為すべき事があればそれは我が試練である」

不良神父「はいはい、聖騎士が可愛くて仕方がなかったということな」スパー

狂信者「むぅ」///

不良神父「聖騎士が目覚めるまで三日間……本当に大した健体だ。 ……それが幸せな事かは解らないがよ」ナデナデ

狂信者「与えられた事に感謝すべきである。 不幸とするも幸福とするも強欲よ」

不良神父「原典聖書に書かれた内容を慮ってるのはお前さんぐらいだと思うがね。 皆、女神に救いを求める……仕方ねぇことさ」

狂信者「産まれた事に感謝せねば子ではないというのにな」

不良神父「しかし、父は子に何かをしたいと思う。 母も同じだろう?」

狂信者「親などおらぬ我には解らず、我を在らわしは女神のみ」

不良神父「……」スパー

狂信者「…………が、父親代わりはおるか」プイッ

不良神父「へへっ、可愛いボウヤだよ。 ほんと」

狂信者「で、親父殿……如何する?」

不良神父「さて……どうしようかね」スパー

大男「……」

娼婦『大男、今回の件に貴方は関わら無いでほしいの』

大男『俺だったら聖騎士だって正面から殺せると思うがよ』

娼婦『貴方を失いたくないのよ』ウフフ

大男「……嘘つきめ」

大男(退屈だ)

男「退屈か?」

大男「……男、こんなところで何してるんだ?」

男「少し遊びにな」

大男「そうかよ」

男「退屈ならば、君もくるか?」

大男「……」
男「……」

大男「……良いぜ、お前らのお遊びに付き合ってやるよ」

男「B・B・Q」

大男「……」

薬師「B・B・Q!」

大男「…………」

女暗殺者「B・B・Q」

大男「………………」

浮浪者「B・B・Q♪」

大男「………………何だよこれ!?」

男「BBQだ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「遊びだっていってたじゃねぇか!」

男「これも遊びだ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「それとこの汚いのは誰だよ!」

男「浮浪者だ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「その言い回し止めろ!」

浮浪者「まぁまぁ、大男さん。 ほら、お肉が焼けましたよ」フフッ

大男「気安く話しかけてんじゃねぇ!」

男「大男、あまり浮浪者さんに横柄な態度を取るな」

浮浪者「ふふ、良いじゃありませんか。 大男さんのそういう若さ……私は嫌いじゃありませんよ」

男「浮浪者さんが良いなら良いが」

大男「どういう関係なんだよ」

男「拾った」キリッ
浮浪者「拾われました」キリッ

大男「……薬師、コイツらといてよく疲れねぇな」

薬師「なれたよ。 今日のBBQだって言い出しっぺの作家が参加出来ないタイミングで開かれたわけだしね」つコップ

女暗殺者「……」ゴクゴク

大男「……酒か?」

薬師「いや、皮膚が爛れて体が崩れる系のジュースだよ」

男「人、それを毒と呼ぶ」

女暗殺者「……イチゴ味♪」

薬師「べ、別に女暗殺者がイチゴが好きだからその味付けにしたわけじゃないんだからな」///

大男「……男、コイツらといてよく疲れねぇな」

男「人はそれを毒と呼ぶ? なら、毒は人じゃないのか? ん? なら、俺は人か? 毒とそれを呼ぶのが人ならばインコだって、オームだって、ネズミだって、猫だって人の可能性が……」ブツブツ

大男「……」

浮浪者「お肉、食べます?」

大男「おう、ありがとうよ」

薬師「ふぅ、食べた食べた」

浮浪者「どれ、皿洗いでもしてきますか」

薬師「浮浪者さんは休んでいなよ。 僕と女暗殺者でやって来るからさ」

女暗殺者「……」コクン

浮浪者「そうですか? それでは遠慮なく」フフッ

男「浮浪者さん、少し出てくる。 荷物を見ておいていただいても?」

浮浪者「えぇ、かまいませんよ」

男「……大男、ついてこい」

大男「やっとかよ」

男「……いい肉だっただろ?」テクテク

大男「ん? あぁ、うまかったよ」

男「野菜も焼けば甘味がます」テクテク

大男「そうだな」

男「キノコのニンニクとバター炒めも上手に出来た」

大男「……」

男「ニンニクの芽は焦げやすいからな、取っておくのがポイント何だ……っと、これだ」

大男「……これは」

アヒルのボート「」ジャーン

男「乗ってみたかったんだ。 大男、漕いでくれないか」

大男「……良いけどよ」

大男「……」

男「珈琲を淹れたことはあるか?」

大男「あん?」

男「俺は何時も紙で濾過しながら淹れる、ペーパードリップ式という淹れ方をしているんだ」

大男「そうかよ」

男「それ以外にも、粉を沈殿させて淹れる方法や、プレス式の淹れ方もある……ドリップ式より雑味が多くなるがな」

大男「雑味か……優れた淹れ方があるならそっちで皆淹れりゃあ良いのによ」

男「?」

大男「何だよ?」

男「雑味があることは劣っている事ではない」

大男「……」

男「嗜好品である以上、その雑味も楽しまれるべきだ。 ……優劣ではなく、嗜好の話だ。 それ以上でもそれ以下でも無い」

大男「その言い回し止めろよ」

男「むかつくか?」

大男「あぁ」

男「なら、殺せばいい」

大男「!?」

男「俺は抵抗しないぞ」

男「退屈しているんだろ? なら、殺せば良い」

男「俺がむかつくんだろ? なら、殺せば良い」

男「理解できない、気持ち悪いと思っているんだろ? なら、殺せば良い」

男「雑談に付き合いたくないと思っているんだろ? なら、殺せば良い」

大男「……」

男「人を殺すのが気持ちいいんだろ? なら、殺せば良い」

大男「上等じゃねぇか」ググッ

男「あぁ、首を絞めても、溺れさせても、殴り殺しても、君の思い通りだ」

男「俺は抵抗しない」

大男「……」

男「抵抗はしてあげない」

大男「!?」

男「娼婦との遊びはどうだった? 裸の男たちを踏み殺したり、中出しした後の男を絞め殺したり、赤ん坊を湖に沈めて遊んだり……愉快な噂は聞いたが」

大男「……退屈はしなかったよ」

男「ならば、愉快だったのか?」

男「キリングハイ、殺人衝動、殺人快楽主義者、しかしながら、君は素手で殴り殺すことに拘るのは何故か」

男「殺すことに快楽を求めるならば、殺し方の種類を求めるはずだ」

男「苦い豆だけではあきるだろう? 酸味のある豆だけではあきるだろう? コクのある豆だけではあきるだろう? アッサリとした豆だけではあきるだろう?」

男「嗜好に口出しをするのは野暮だろうが……刺し殺す快楽を求めないのか? 毒を盛る悪戯心は無いのか? 杭で串刺しにされた様を鑑賞しながら食事を取るのは……悪く無いというのに」

大男「……それは」

男「素手で無いといけない理由は……武器を持ってしまうと殺し合いにならないからだろ?」

大男「!?」

男「君は殺すのが好きなんじゃない。 殺し合うのが好きなんだ。 そんな、君が何時から焼いた肉を頬張るようになったんだ。 なぁ、退屈は嗜好を錆びさせるのか」

大男「そうか、そう……だったのか」

男「大男……退屈はしてないのだろう。 ならば、愉快だったのかな?」

ザワザワザ

男「……」

娼婦「初老先生はまだお見えにならないのかしら?」

男「彼は人を待たさせるのが好きだからね」

娼婦「ふふ、良い女の条件ね」

男「良い女は男を待たせたりしないだろう」

娼婦「……貴方、恋愛観とか持ってるのね」

男「あぁ、人なのだから当たり前だろ」

娼婦「へぇ、ならその感性は薬師と店員さん、どちらの方を向いているのかしら?」

男「許嫁がいる」

娼婦「あら、故郷に?」

男「いや、この前、奴隷市で売られていたよ」

娼婦「貴方のことますます嫌いになれたわ、ありがとう」

男「どういたしまして」

上の、酉ミスりましたが本人です。

初老「やぁ、諸君……お待たせしたね」

守銭奴「漸くお出ましかぁ……生首を持ち歩く趣味は無いもんでね」

初老「ふふ、換金は早い方が良いか……君らしいね」

娼婦「あら、換金できるのかしら? あなたが持ってるのは生首じゃなくて、生ゴミじゃなくて」

守銭奴「いうねぇ、その手の皮肉は嫌いじゃねぇよ」

初老「さて、それでは2人とも聖騎士の首を出して貰おうか」

守銭奴「!?」
娼婦「……」

守銭奴「あぁ~……聞き間違いか? より善人と呼ぶのに相応しい人物の首を持って来たほうが勝ちって言いましたよねぇ?」

初老「あぁ、聖騎士が最も最も清き肉体と善なる魂を持ち得た男として、勲章を与えられた数日後にね」

守銭奴「そりゃあねぇよ! 娼婦! あんた等も納得いかねぇだろ!?」

娼婦「何故かしら?」

娼婦「今回の遊びで道化師の派閥が全滅したわ」

娼婦「聖騎士にちょっかいをかけた守銭奴達の派閥も聖教会に追われてるのでしょう?」

娼婦「だというのに、私がどうして納得できないのかしら?」フフフ

守銭奴「……娼婦、最初から勝つつもりがぁ無かったんだなぁ」

娼婦「勝つつもりはあったわよ? でもね、善人狩り何てお遊びに興味は無いの」

娼婦「私が狩りたかったのは最初から、道化師と守銭奴……貴方達なのだから」

守銭奴「それでぇ、俺達がぁ自滅するように誘導しやがったのかぁ!」ワナワナ

娼婦「周りの大人のせいにしたら何時までも成長出来ないわよ、ボウヤ」

守銭奴「殺し屋ぁ! もういい! この女を殺せ!! 報酬はいくらでも払う!! 殺せぇ! 殺せぇ!!」

殺し屋「……」ジャキン


ギィ……バタン
男「いらっしゃい」

大男「……おう」ボロボロ

男「血塗れで店に来るのは止めてくれ」

大男「良いじゃねぇか……俺とお前の仲だろ?」

男「焼き加減は?」

大男「生で良い」

男「酒は?」

大男「一番度数が高いやつを」

男「割らなくて良いな」

大男「解ってんじゃねぇか」ニッ

守銭奴「…………って、なぁんなんだぁ!! ふざけるなぁ!! そういう空気じゃねぇだろ!!」

娼婦「……なんで」ボソッ

大男「外野が騒がしいが……今日は何かあるのか?」クチャクチャ

男「何時もの会合だ……娼婦から聞いてないのか?」つ酒

大男「最近、避けられててよ……そうか、今日なのか」ゴクゴク

男「……利き腕はどうした?」

大男「あん? 斬り落とされた」

男「腹からモツが垂れているが?」

大男「アクセサリーだ……洒落てるだろ」

男「…………それもアクセサリーか?」

大男「いや、今日の飲み代だ」ゴトッ

聖騎士生首「」

守銭奴「なぁ!?」
作家「ふふ、どうやら、本筋は彼方のようですな……守銭奴殿」

男「すまない、それは受け取れない。 守銭奴との契約がある」

守銭奴「受け取らない!! だったら俺にぃ寄越せ!!」

男「……」

守銭奴「おい! 男、聞こえてねぇのかよ!!」

作家「この会合が終わるまで、守銭奴殿とは口聞かないらしいですな」

守銭奴「」

洋裁師「ならば、我々のものだ! 大男は元々こちらの派ばt」バタン

娼婦「……」つナイフ

洋裁師「何で、姐さ……ん?」

娼婦「だって、醜かったのですもの」

男「教会の十字架の上にのせたら良いんじゃないか?」

大男「棒人間みたいだな」ニヤッ

男「あぁ、面白そうだろ?」

大男「退屈はしなさそうだ」ガクッ

男「なぁ、大男……聖騎士との殺し合いはどうだった?」

大男「聞いてくれよ……殴っても、殴っても死なねぇんだよ。 剣を折っても強いしよ……先に殺されるかと思ったぜ」ピクピク

男「退屈はしなかったんだな」

大男「あぁ」

男「じゃあ、愉快だったのかな?」

大男「……そりゃあ、勿論……満足……だ」

忙しい仕事を辞めようとしてゴタゴタ。
書きたいものが多いのに書けないの辛い。

読んでる人まだいたら本当に申し訳ありません。
続きはもう少しかかります。

作家「フフン、手垢まみれの言葉は好みませんが……蜘蛛の子を散らすように去っていきましたな」

初老「あぁ、そうだね」

作家「目的は達成できましたかな?」

初老「見れば解るだろう? ……私が欲しかった生首だ」

作家「欲しかったのは囮でしょうに」

初老「……ふふ、君は読み手としても一流のようだね」

作家「悪党どもに聖教会へちょっかいをかけさせて、注目を分散させること……初老殿が悪事を働き易い環境を作ることが目的だなんて、誰でも解りそうなものですが」

初老「解っていたなら何で君も参加したんだい? 男みたいに傍観者に徹していれば聖教に追われる身になどならなかっただろうに」

作家「さて、どうしてでしょうね」

初老「……もう1つの目的も解っているようだね」

作家「男殿という存在を理解するため……ですかな?」

男「楽しく談笑するのは良いが、注文してくれないか? ……貸切の予約がなくなってしまってな」

初老「私達が店長のオススメ以外を注文した事があったかな?」フフ

男「上客感謝する。 初老専用のコップを用意したんだ……少し待っていてくれ」

作家「ほほう! 私専用もあるのですかな?」

男「………」ヘ?

作家「意地悪!……と言うより、その反応は普通に傷付きますな!!」

作家「それで、初老殿から見た男殿はどのような存在で?」

初老「そうだね……蝶かな」フフッ

作家「ほほう」

初老「関わりの無いように思える場所で羽ばたき嵐を起こす……ふふ、難儀な男さ」

作家「………左様でありますな」

作家(蝶は嵐を起こしてる自覚など無いのですが……)フム

初老「しかし、それなら彼の羽ばたきすらも計算すれば私への影響は防げるだろう」

作家(まぁ、初老殿【小者】ではこの程度の理解でしょうな……大男の本質も、娼婦の本性も見抜けて無いようですし)

初老「次の私のショーでは観客でいてもらうよ、男君」

男「題目ぐらいは聞いてもいいか?」

初老「あぁ、構わないよ……聖国崩しさ」

男「それは楽しみだ」つコップ

初老「 」

作家「はぁ、たまりませんな」ウットリ

男「どうした? 初老、顎が外れそうだが?」

初老「こ、これはなんだ?」

男「ジントニック、友を喪った夜に合う苦さというなの優しさがある酒だ」

初老「君は! な! はぁ!! そんなことは聞いていない!?」

男「ならば、何を驚いている?」

初老「器の方に決まっているだろ!!」ガタン

男「初老用のモノを用意したと事前に言ったが」

初老「ふざけるな!?」

男「生首を器にしたのは悪趣味すぎたか? 耳を取り、取っ手を付けたりと工夫したんだが」

初老「この顔はこの顔は……だって、だってさぁ……」

コップ【聖教祖の生首を加工したコップ】

男「どうした? もしかして、友人だったかな?」スマナイ

初老「君は何なんだ?」

男「さっき、得意気に語っていただろう?」

初老「………あぁ、そうか偽物なのだろう! 本物の聖教祖の首なわけが無い」

男「?」

初老「だって、聖教祖は昨日演説をしていた! 公衆の面前に立っている!!」

男「作家もジントニックで良いか?」

作家「えぇ、もちろん♪」

初老「知っているぞ! 薬師が他人に化ける薬を……薬を………」ウナダレ

男「ツマミは……パスタにジェノベーゼソースを絡めようか」

作家「良いですな」

初老「今の聖教祖の中身は誰だ?」

作家「初老殿が追い付かれたようですぞ?」

男「拾った浮浪者だ」

初老「連絡は取れるのかい?」

男「あぁ、好きに動かせるが……いるかな?」

初老「………………お代は?」

男「■■■■」

初老「君は……君はぁ、何だ! 悪ですらないのか!? 人であろうとしているのか!? 私が、私がしたいことを全てしておきながら……悪にすら、染まらないのかぁ……」

作家「男殿、この世には二種類の人間がいると……私は思うのですが」

男「二種類? 聞かせてくれ」

作家「カテゴライズ出来る人間とカテゴライズ出来ない人間……如何でしょう?」

男「好みの言い回しだ。 作家が自分の命を疎かにしたのは許そう」

作家「……あらま、怒ってらっしゃっていたとは恐ろしい」

男「怒ったら誰でも恐ろしいだろ?」

作家(まだ、全うな感情が残ってるのが恐ろしいのですよ)フフフッ

娼婦「あら?」

男「やぁ」

娼婦「やっぱり、貴方だったのね」

男「初老さんに頼んで建ててもらった」

娼婦「そう」フフフッ

男「どうした?」

娼婦「いえ、初老先生は驚いたのじゃなくて? 貴方を悪党と思っているようだしね」

男「……俺はただの木こりだ」

娼婦「あら? 喫茶店の店長さんでしょ」

男「あぁ、そうか……そうだった、店長だ」

娼婦「さて、少し失礼して」つ花

男「花を添えていたのはやはりお前か」

娼婦「掃除していたのは貴方ね」

【大男の墓】

娼婦「……」

男「……」

娼婦「嗤えるでしょ? 私は彼に本気で恋をしていたのよ」

男「そうか」

娼婦「私と関わった男は皆、不幸な最期を遂げる。 開き直って悪女なんて役に甘んじていたわ」

男「そうか」

娼婦「大男なら死なないって、失うことは無いって想ってたのにね」クスッ

男「そうか」

娼婦「……」

男「俺が憎いか?」

娼婦「……貴方のお陰で彼は幸せな最期を遂げられた。 私といたら心が腐敗してたのでしょう」

男「どうだろうな」

娼婦「貴方って何処までも優しいのね」

男「」

男「優しい?」

娼婦「大男の死を本気で悲しんでいるじゃない」

男「俺が優しい?」

娼婦「お墓まで建てて供養してくれたじゃない」

男「俺が優しい?」

娼婦「作家が自らの命を危険に晒したのを怒っていたのでしょう?」

男「俺が優しい?」

娼婦「この国の奴隷市は大きいわ」

男「俺が優しい?」

娼婦「そんな中からただの偶然で許嫁を見つけ出せるかしら?」

男「俺は……俺は……」

娼婦「ねぇ、ずっと気になっていたのよ」

男「俺は……何なんだ」

娼婦「いつも首にさげてる木の飾りは誰に貰ったものなのかしら」クスクス

男「」

娼婦「貴方って残虐非道なのに、悪では無いのね」

『見つけてくれてありがとう』

『苦しまずに死ねる薬? 作れなくは無いが』

『私は汚されてしまったわ』

『そんな退屈なモノでどう遊ぶつもりだい?』

『お願い……私を殺して』

『自殺なんてしないよな?』

『……ふふ、駄目。 貴方には生きてほしいの』

『怒鳴らないでおくれよ、君らしくない』

『ありがとう、愛しているわ』

男「俺も……俺は……」ブツブツ

『最期に貴方に会えて幸せだった』

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom