モブA「クーリスーマスーが」モブB「今年もやってくるー」(13)


A太「──もう今年も12月かー」ピコピコ

B男「早いものでござるなぁ」ポチポチ

A太「来年はオリンピックイヤーだぜ?」ショーリューケン!

B男「今年は元号も変わったし、世間の移ろいに戸惑ってしまうでござる」メッサツ……!


A太「こうして安アパートの一室で男2人、ビミョーなレトロゲーなんかやってさ……パッとしねーなー」ピコピコ

B男「我々、この世界をゲームに例えれば間違いなくモブキャラでござるからな」カチカチ

A太「違いねぇ」ハドーケン!

………



B男「……そういえばパッとするかどうかは不明でござるが、近々ちょっとした変化は起こりそうですぞ」デュフフ

A太「そうなん?」

B男「今日、先月分の家賃を取りにきた大家殿が『二階に人が入る』と言っていたでござる」


A太「二階? ……どの部屋だろ、三部屋とも空いてるけど確か二階は女性用じゃなかったっけ」

B男「男の入居者は一階から割り当てられるはず。拙者の部屋とここA太殿の部屋、もう一部屋は空いているのに二階に入るという事は……」ニヤリ

A太「……ほんとに女か、これはちょっと楽しみだな」

B男「ご安心下され、拙者は二次元にしか興味がありません故」


A太「でもこんな安アパートだしな……そりゃ漫画とかならそういう所にこそびっくりするような美人が越して来たりするもんだけど」

B男「たしかに、大家さんの娘とか姪とかでよくある設定」ウンウン

A太「やめろ、あのババアとイメージ結びつけるな。美人になりようがない」


B男「これは失敬。……A太殿に春が訪れれば良いでござるな」

A太「冬がきたばかりだけどな」

B男「クリスマスや初詣みたいに、初々しい2人向けのイベントは目白押しの季節でござるよ?」

A太「……彼女いない歴=年齢、今年こそ女っ気のあるクリスマス過ごせないかなぁ──」


──ピーンポーン♫


B男「A太殿、呼び鈴でござるよ」

A太「へいへい……大家さんかな、俺もまだ先月の家賃払ってないし」ヨッコラショット…


…ピーンポーン


A太「はいはい、開けますって──」ガチャッ

??「──あ、こんばんは」

A太「こんばんは……って、どちらさま?」

??「その自己紹介をしに来ました」


B男「A太殿、これはもしや」

A太「……ああ、もしかして二階に越してきたの?」

??「はい、C子といいます」ペコッ


B男「C子殿でござるか。拙者はB男と申す一介のオタク、以後お見知り置きを」デュフフ

A太「B男は隣の部屋に住んでんだ。ここは俺の部屋で、俺はA太。ところでC子……だっけ、以前どこかで会った事ある?」

B男「そういえば拙者もなんとなくそんな気が……」ムムム…


C子「よく言われますけど、たぶん無いと思います」ヤレヤレ

B男「なんと、よく言われるとは?」

C子「私も二人に会った事があるような気がしましたけど、同じ理由じゃないですかね」


A太「ああ、なるほど」

B男「ようするにこれは、我々は3人とも……」

C子「どこにでもいるモブキャラなんですよね」


B男「そういえば拙者もよく『なんでオタクってみんな同じ顔してんの?』と訊かれつつ脇腹をデュクシされるでござる」ウッ…

C子「うわぁ……」

A太「切ねえな」


C子「でもA太さんも似た経験あるんじゃないです?」

A太「……中学で好きだった娘に『ものすごく見慣れてるのに5秒見なかったら忘れそう』って言われた事ある」クッ…

B男「オゥフ……」

C子「切ねえな」


……………
………


…数日後


A太「──じゃあ俺、クッパね」グァッハッハァー!

B男「拙者は常にデイジー姫一択でござるよ」


C子「B男さんは後ろから緑甲羅当てるの上手いですよね」

A太「ファイナルラップまで敢えて抜いてこないんだもんなぁ、やり難いぜ」

B男「このゲームは後ろにいる方が楽しいでござるからな」デュフフフ…


A太「C子は交代しなくていいんか? 暇じゃね?」

C子「私、TVゲームは観てる方が好きなんですよ。自分ではスマホゲーくらいしかやりません」ポチポチ


B男「しかし結局、A太殿の部屋に溜まるのが三人に増えただけでござるな」

A太「これといって大きな変化は無かったなぁ」

C子「私としては駄弁り場ができただけで、有り難いですけどね」


B男「男二人の部屋に女性が一人、不安はないのでござるか?」

A太「さっきなんか炬燵でちょっと寝てたもんな」

C子「自分がいてもいなくても、お二人にとってさほど変わりは無いでしょうし……」

B男「いやいや、さすがに『いなくても同じ』とは思わないでござるよ」


A太「でもたしかに『部屋に女っ気がある』って感じもしないな」

B男「この気兼ねのない空間、プライスレス」

C子「失敬な」


B男「ではC子殿は少しでも『キャッ!男性の部屋にお邪魔してる……ドキドキだわ!』と思うでござるか?」

C子「微塵も思いませんね」ウーン…

A太「失敬な」


B男「……やはり、まるで昔からの知り合いかのように思えてくるでござる」ウムウム

C子「話しかけるのに身構える必要なんてない──」

A太「──そう、モブキャラならね」キラーン


A太「ただまあ、C子も間違いなく女性ではあるわけで」

B男「そうでござるな」

A太「……で、クリスマスは日に日に近づいているわけで」

C子「もうあと2週間ばかりですね」


A太「やっぱ、今年こそ……って想いはあるよね」フゥ…

B男「おっ」

C子「おっ?」


A太「ほんと、俺もいい加減この『彼女いない歴=年齢』を打破したいというか」

B男「先日もそう言っていたでござるな」


A太「だからって誰でもいいってわけじゃなく、それこそ等身大の自分で接する事ができるような異性とさ」

B男「おっ?」

C子「おぉっ?」ソワソワ


A太「……なあ、C子」キリッ

C子「は、はいっ!?」アセアセ

B男「おおぉ……!?」ゴクリ


A太「俺と相性良さそうな子、紹介してくれね?」

C子「くそかよ」

B男「まさに外道」


A太「だってさー、やっぱモブキャラの周りにはいるじゃん?」

C子「なにがです?」

B男「主人公格のキャラでござるな」

A太「主人公とまでいかなくとも、その仲間とかキーキャラクターとか……あるいは準モブであっても、印象深い役どころのキャラとかさ」

C子「神様に愛されてる側のサブキャラかぁ」


B男「つまりC子殿の周りにもヒロイン・準ヒロイン級や、その素質を持つ脇役がいるだろう……と」

A太「そうそう、FF7ならエアリスやティファ・ユフィだけじゃなくアバランチのジェシーとか」

B男「バレットの娘とか」

C子「なぜロリ」


A太「ドラゴンボールならブルマやチチや18号じゃなく、ピラフ一味のマイとかさ」

B男「ウパとか」

C子「なぜ男の子」


C子「……お二人には?」

A太「ん?」

C子「A太さんやB男さんの周りには、FF7でいうところのクラウドとかセフィロスみたいなポジションの友達っています?」


B男「性別を変えて考えると、それは芸能界やホストクラブにしかいないような気がするでござるな……」ウムム

C子「でしょう?」

A太「ビッグスやウェッジのポジションならいるけどな」

B男「ぎりぎりタークスのルードくらいのポジションでもいるかもしれんでござる」

C子「現実はそんなもんですよねぇ……」


A太「あ、ドン・コルネオなら複数人いるぞ」

C子「誰得ですか」

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