天使「願いを叶えて差し上げましょう」男「今更かよ」(13)

東京のある街、ある雑居ビルで……

ピラッ ピラッ ピラッ

ヤクザ「ひぃ、ふぅ、みぃ………」

男「………」

ヤクザ「………確かに」

ヤクザ「5万…。」

ヤクザ「今日の返済含めて360万。しかと受け取ったぞ坊主。」

男「へっ。もう坊主って歳じゃあねえよおっさん。」

ヤクザ「違えねえや。6年掛かったもんなぁ?何歳になった?」

男「今日で24歳だよ。」

ヤクザ「へぇ?今日が誕生日か?」

男「ああ…。死んだ馬鹿親父がこさえた借金も今日で完済。今日くらいは羽を伸ばすんだ。」

ヤクザ「しかし坊主も律儀なもんだな。親の借金肩代わりするたぁ」

男「へっ。逃げたら追いかけてくるだろが。」

ヤクザ「はぁーはっはっは!!!違えねえ!!!」

ピラッ

ヤクザ「ほらよ。餞別だ。」

男「なんだよ?この大金は?」

ヤクザ「お前さんが今まで返済した半分だ。」

ヤクザ「利子分は特別に返してやるよ。」

ヤクザ「いいから受け取っときな坊主。」

男「……」

ヤクザ「もう二度とそのツラは拝まん。お前さんみたいな律儀な男はもっと羽ばたくべきだ。まだ若い。それでやり直しな。」

雑居ビルの外

ガヤガヤ

プップー!!

男「……あばよ。クソったれが……。」

男「ようやくこんな苦しい借金返済生活ともおさらばだぜ。」

男「人間頑張ればなんでもできるもんだな。」

男「さて…。」

・・・・・

ある公園のベンチで


男「羽を伸ばすって決めたのはいいが…。」

男「なーんか今まで色んなこと我慢しすぎて欲ってもんが無くなっちまったような……。」

男(いい天気だな…眠くなってきた……)ウトウト

男(zzzzzz…)

パァァァ

男「うん?う~ん…なんだ?眩しい…」

神「男よ」ヌッ

男「うおぉっ!!!!」ガバッ

神「……」

男「だ、誰だあんた!!!??」

神「神だ」

男「はぁ!?」

天使「ガチです」ヌッ

男「ぎゃあああ!!!後ろから急に出てくんな!!」

神「うるさいなこいつは」
天使「騒がしいですね」

天使「えーうぉっほん!男さん。あなたは今までよ~く頑張りました。頑張っている現世の人達の中であなたは無私無欲で高潔な心を持ち他者の為に生きてきたことを神は大変評価されております!!」

神「よく頑張ったな。」

男「は、はぁ…。」

天使「その今までの頑張りに免じて願いを叶えて差し上げようと神が仰っております!!」

神「叶えちゃうぞ?」

男「今更かよ!!!!」

神「不服か?」

男「叶えてくれんならもっと!もっっと早く来て貰えれば…!!こんな苦しい生活せずに済んだのによぉ!」

男「無私無欲!?違う!!そうせざるを得なかったんだ!!俺がいま……ワーワーワー

神「やはりうるさいなこいつは…」
天使「気絶させちゃいます?」

男 ワーワーワー

神「まぁ、よいとにかく私はこいつの心からの願いを1つ汲んで叶えてやることに決めたのだ。」
天使「左様で!」

神「しかし今の男は今までのストレスが爆発しとるからとてもじゃないが願いを聞いてやる事ができん。」
天使「確かに…。」

男「お前な!!?朝飯!!朝飯アレだぞお前!!?味道楽と生卵!!本当に金ない時はビッグカツが食卓に上がるんだぞ!!??」

神「私も仕事が山積みなのでな。ここは1つ天使よ。」
天使「ハッ!」

神「しばらく現世で男を見守り彼の心からの願いを聞き遂げ、叶えてやってくれ。」
天使「ハッ!!仰せのままに!!」

神「願いは神の権限を一回限り行使できるよう許可申請を出しておくでの。それを使って叶えてやれ。」
天使「ハッ!!」

神「くれぐれも天使の権限は使い過ぎないように気をつけるのじゃぞ?まぁ…男が不幸な目に合わないくらいにな。」
天使「ハハァっ!!」

神「では……。」

男「18歳…!!18歳から24歳はキツいんじゃぁ…!!」

神「うるさあああい!!!!!!」ピシャアアン
男「ぐぉああぁぁ!!!!」

天使「ひゃっ!神の稲妻…!!!!」

・・・
・・

男「んがっ!!!」ビクン

男「うあー…。寝ちまったよ…。変な夢見たなー…。」

男「願いか…。願いねぇ…。」

「そうです!願いを叶えてさしあげましょう。」

男「今更かよ」

「なんとしてもあなたの心のそこからの願いを叶えてみせます!!」

男「そうかいそうかい…頑張ってくんな…うん?」

天使「はい!」
男「誰です?」

天使「あなたの心からの願いを叶えるまでこの現世で見守らせてもらう…」

バサッ

男(羽根っ!?)

天使「天使です!!」


願い叶えに来た天使とある若者の生活が始まる。

陽が傾いて来た夕方ー。

男「えれえことになったな…。」

天使「光栄に思って下さいよ!神に願いを叶えて貰える権利は現世の人間の一生では無いまま終わる人がほとんどなんです!」

男「俺なんかがそんな事に足りうる男かね…。」

天使「条件を満たしたからこうして私が遣わされたんですよ!」

天使「誠実な努力とひたむきな決意!!この純粋高潔な意志を神は決して無視しません!!」

天使「さぁ願うのです!!あなたの心の底からの願いを!!」

男「…。」

男「…。」グゥー

男「カレー…。」

天使「は?」

男「カレー食いてえ…。」

天使「はぁぁ!?」

カレーショップ・GOGO弐番屋

店員「おまたせしました~。」コト

男「う、うぉぉぉ…!!とうとうこの日がぁぁ…!!」

天使「待ってください」

天使「あなたは本当に一生に一度の願いをこのカレーというドロみたいな食べ物を食べる為に使うのですか?」

男「俺はここのカレーが大好物なんだ…!!借金完済の暁にここで好きなカレーを食べるってのが俺の夢だったんだ…!!!!」


ガツガツ ムシャムシャ

天使「は~…呆れた…。いくらなんでもそんな事に権利は使わせてあげられませんよ…。」

天使「…。」

天使「すいませーん!店員さーん!私もこの人と同じ奴ー!」

会計後

男「てめえ願い叶えてくれんじゃねえのかよ!!!!」

天使「しーっ!!そんな大きな声出さないでください!!正体バレちゃうじゃないですか!!」

男「5杯も食って会計俺持ちってそんな神の使いがいるかよ!!??」

天使「美味しかったのでつい…。天界では食事というのに無頓着ですので…。それとこんな事に権利は使えません!」

男「ったく!とんだ貧乏神だぜ…!!俺はもう帰る!!お前も今日のところは帰んな!!」

天使「あ、ちょっとちょっと!」

男「なんだ!」

天使「私、神のご意向であなたの願いを叶えるまでこの現世に留まって見守らなければなりません。」

男「それがなんだ!」

天使「ですのでそれまでの間私はあなたの側にいなければいけません。」

天使「つまり生活を共にさせていただきます。」

男「はぁぁぁ!!?」

男のアパート

天使「安心してください!私は神の使い!天使の権限であなたの身の回りをバッチリサポートしてみせます!」

男「嫌な予感しかしねえんだが…?」

天使「ふっふっふっ…天使の権限を甘く見てはいけませんよ?あなた達には想像つかない力がこの世界には満ちているんですからね…。」

天使「今までの努力の分のリターンだと思って貰えればOKです!それでは不束者ですがのよろしくお願いします!」

男「ふーん…。ってあんた生活を共につっても身の回りの物はどうするん……!?」

天使「はいお布団に服にアメニティ~!!」ボムン

男(どこから出て来たんだ!?)

天使「ね?これで私が本物の天使だって分かってくれましたよね!これも天使の権限なんです!」

男「…。」コク

男(どうやら本物らしい…。まったく奇妙な事が起きるもんだな…。)

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