女騎士「トリート!トリート!」(43)

女騎士「ころしてでもうばいとる」

オーク「随分と物騒な事を言っているな」

女騎士「あっ、カビだるま肉まんじゅうのコスプレした人!お菓子くれ!」

オーク「誰がカビだるま肉まんじゅうやねん。純度100%のオークやっちゅうねん」

女騎士「なんだカビだるま肉まんじゅうのコスプレじゃなくてオークだったのか。どこからどう見てもカビだるま肉まんじゅうのコスプレだったぞお前」

オーク「少し泣く」

女騎士「まぁそもそもハロウィーンはまだ先だしな。コスプレしてる奴なんかいないか」

オーク「その通り。だからお菓子も持ってない、残念だったな」

女騎士「えっ、お菓子ないの?」

オーク「はい」

女騎士「くっ、殺す!」

オーク「お菓子を持っていなかっただけなのに」

オーク「まぁ待て早まるな。お菓子は無いが…」

女騎士「待て待て待て…どうせいつもの下ネタだろ。お菓子は無いがソーセージならあるよ~、とかいう低俗な下ネタだろ」

オーク「ち、ちちちち違わい!」

女騎士「お前の下ネタは見飽きた…」

女騎士「奥義!ファイナリティブラスト!」

ズババババ!

オーク「ぎいやぁぁぁぁぁ!」

バタリ

オーク「ぐふっ…」

女騎士「お菓子を持たぬ者にかける慈悲無し」

オーク「こ、これが…こんなものが…ハロウィーンでたまるかよ…」

オーク「ハロウィーンってのは、みんなが仮装して楽しむ日だ…もはや本来の目的は失われたが…みんなが楽しければ…笑顔になれれば、悪くないだろうが…!」

女騎士「だが無秩序に騒ぎ迷惑をかける奴等がいる。そこらじゅうにゴミを捨て常識を忘れた馬鹿供がいる…そしてそのゴミでアートを作ろうとして失敗した奴がいる」

オーク「アートを作ろうとして失敗した地球人…?西野さんの事かー!!!」

バシュゥゥゥ!

女騎士「な、なにものだ…」

オーク「とっくにご存じなんだろう?穏やかな心を持ちながら激しい性欲に目覚めた魔物…オークだ!」

女騎士「たったいま性欲に目覚めたみたいに言ってんじゃねぇ!お前は母親の子宮にいる頃からビンビンビンビン僕ウォンビンだろうが!」

オーク「ウォンビンに謝れ」

女騎士「まぁそんな事よりだ。お菓子がなければハロウィーンが始まらない」

オーク「うむ」

女騎士「無ければつくればいいじゃない!」

オーク「ほぅ」

女騎士「たまたま私は小麦粉を持っている。そして先ほど、お前の尻穴に砂糖を詰めておいた」

オーク「!?」

女騎士「どうだ?他の材料をどうにかすれば…」

オーク「クッキーができる…!!」

女騎士「そう!クッキーだ!こんがり、さっくり…ほろっほろで甘い、あんまぁぁぁい、クッキーができちまうんだ!」

オーク「ヒャッホゥゥゥ!」

ヌギィ

女騎士「あぁ待て待て。興奮するのは分かるが全裸になるな。尻穴の砂糖がこぼれてしまう」

オーク「あっはい」

フクキルゥ…

オーク「で、どうすればいい?」

女騎士「実は私もよく知らなくてな。砂糖に小麦粉、あとはバターとかか?」

オーク「塩とかもいるんじゃないか?」

女騎士「塩とくればコショウ、コショウとくればステーキ…牛肉か?」

オーク「牛肉なんか入っていたか?まぁ入っていないとも言い切れないしな、とりあえず入れてみるか」

女騎士「うむ。じゃあ材料を買いにコストコに行くぜ!相棒!」

オーク「わかったよ、もう一人のボク!」

女騎士「AIBO!」

・・・・・

女騎士「買ってきたぞ」

オーク「牛乳、マーガリン、塩コショウ、ステーキ肉」

女騎士「さぁー楽しいクッキングタイムの始まりざます!」

オーク「フンガー!」

女騎士「まずは小麦粉をボウルに入れろ!」

オーク「隊長殿!ボウルがありません!」

女騎士「!」

女騎士「なんてこった…普段からお菓子など作らぬからこんな事になるんだ!」

オーク「かわりになるものを探すであります!」

女騎士「なるはやでな」

オーク(なるはや…?)

オーク(成瀬川のサービスシーン早く来いの略か?なぜ今ごろラブひなの話を…?)

女騎士「とにかく何かボウルのかわりになる物を探すんだれ!」

オーク「はい!」

ガサゴソ

オーク「風呂場から洗面器を持ってきました!」

女騎士「ようし、じゃあそれを尻の穴に詰めろ!」

オーク「!?」

女騎士「聞こえなかったのか?早くその洗面器をお前の尻の穴に詰めろ」

オーク「な、なぜ…?」

女騎士「それを話す意味も理由も無い。お前はただ、その洗面器を自分の尻穴に詰めればいいんだ」

オーク「な、何故だと訊いている!」

女騎士「言った筈だ、意味も理由も無いと」

オーク「や、やるしか…ないのか…?」

ガクガク ブルブル

オーク「っ…」

女騎士「震えているな…怖いのか?恐ろしいのか?」

オーク「ち、違っ…」

女騎士「いつまで待たせる気だ?そうやって怯え、ただ時間だけが過ぎる…お前は何もできないまま…無力…まるで『あの時』と同じだな!」

オーク「!」

女騎士「そうやってお前は!無力なお前は!私から…また…奪うのか…!?無力だからと…それを言い訳にして…私から…私から何もかもを奪うのか!?」

オーク「あ、あの時…お、女騎士…お前…」

女騎士「魔法使いはそれでも恨み言ひとつ言わずその命を差し出した…僧侶はそれでも笑顔で身を投げ出した…勇者はそれでもカッコつけて犠牲になった…」

女騎士「全部!全部全部全部!ぜんぶ!お前の為だ!お前の無力さゆえだ!」

女騎士「どうしてみんなお前の…お前なんかのために死んだ?どうしてだ?一番役立たずで一番足手まといで一番臭いお前の!お前なんかの!うわぁぁぁぁぁ!糞ッッ!糞ッッ!糞ォォォォォ!」

女騎士「返せ!返せよォ!あの頃の!あの頃を!平凡を!日常を!毎日を!みんなとの日々を!返せよォ!返せ返せ返せ返せ返せ…」

ガクッ…

女騎士「返せよォ……………」

オーク「お、俺…」

オーク「俺だって…やり直せるなら!でもなぁ!」

オーク「できねぇんだよ…そうはならなかったんだよ…死んだ者は生き返らない…俺…俺たちはそれを誰よりも分かっているだろう!?」

女騎士「…」

オーク「『先生』に教わった…当たり前で一番大切な事だ…俺とお前が…それを…」

女騎士「分からない訳…ないだろう…禁忌に触れてなお、先生からそれだけは忘れるなと…教えられてきた…私とお前だけは…」

・・・・・

いつの頃だったかは忘れた。
子供だったのは確かだ。
その人は先生と呼ばれて皆に慕われていた。
俺は孤児で先生に育てられた。
そこには女騎士もいた。

先生は剣技の真似事を教えていた。
まぁ道場みたいなものか。
俺も女騎士も負けず嫌いで
どちらからともなく勝負を挑んでは
毎日毎日剣の試合に明け暮れていたーーー

幼オーク「しょうぶだ女騎士!」

幼女騎士「はっはっは、かえりうちにしてやるー!」

先生「まったく君たちは…怪我には気を付けるんですよ」

幼女騎士「大丈夫だよ先生、あいつの剣になんてあたんないから!」

幼オーク「なにおう!」

幼女騎士「はっはっは!来い!」

幼オーク「いくぞぅ!」

?「待てぃ!」

幼オーク「!?」

幼女騎士「お、お前は河童!」

河童「ケンカはよくないぜお二人さん!」

幼オーク「うるせぇ緑お化け!部屋の隅っこでキュウリ噛ってろ!もしくは皿割るぞ!キュウリばっか食ってっから肌が緑になるんやろがい!皿割るぞ!皿割るぞ!」

幼女騎士「緑お化けはお前もやんけ」

幼オーク「た、確かに俺も緑…すなわち俺と河童は親族!?」

河童「!?」

河童B「!?」

河童C「!?」

幼女騎士「河童が増えてるー!?」

幼オーク「うるせぇまとめて皿割るぞ!」

河童たち「「「ひぃっ」」」

河童「こいつらは俺の弟たち…皿を割るなど…」

ギリリッ

河童「誰かに割られるくらいなら、俺が子の手で割る!」

河童B「ひぃっ!?」

河童C「あ、あんちゃん!?」

河童「許せ弟たち…一族の始末は一族が付けねばならぬ!」

シュパッ パリンッ!

河童B「ひぎゃぁぁぁ!」

シュパッ パリンッ!

河童C「あ゛、あ゛ん゛ち゛ゃ゛ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛!?」

河童「南無…」

キュウリ ポイッ ポイッ

河童「瑞々しいキュウリだ…あの世で食うがいい」

幼女騎士「て、てめェー!自分の家族になにをしてンだァァァー!?」

河童「家族?…家族というのは、そこに転がっている緑の肉塊の事か?」

幼オーク「に、肉塊…!?」

河童「かつては家族だっただろうが…今は肉塊…皿の割れた、みにくい緑の肉塊に過ぎぬわ!!」


幼オーク「ゆ、許せんだぁーーー!」

幼女騎士「お、オーク…きょ、今日の勝負は中止だ…こ、こいつは…こんな奴は!一秒だって生かしちゃおけねェ!生かしちゃおけねェー!」

幼オーク「お、俺も同じ気持ちだ…この感情…腹の奥底から沸き上がるマグマみてェな煮えたぎる怒り!こいつは今!今斬らなきゃならねェんだ!」

先生「二人とも…それです。その怒り、正義の怒り…今の貴方達なら…あの必殺技…『真・惑星直列爆断斬』を使えるかもしれません!」

幼女騎士「!」

幼オーク「あ、あの伝説の必殺技…真・惑星直列爆断斬を!?」

先生「はい。正義の怒りを剣に込め、惑星直列時のエネルギーに匹敵する爆発を発生させる!あの!必殺技を!」

河童「ケッ!おもしれぇ!俺が習得できなかったあの真・惑星直列爆断斬をお前らが使えるってぇのかい!やってみな!」

幼オーク「正義…」

幼女騎士「力…」

先生「そう、行くのです二人とも!」

幼オーク「真!」

幼女騎士「惑星直列爆断斬!」

ズガガガガガ!

河童「う、うわぁぁぁぁ!かつてない力がくる!」

バシュゥゥゥ!

河童「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

バシュゥゥゥ!

先生「ぎゃぁぁぁぁぁ!巻き添え!」

幼女騎士「せ、先生ぇ!?」

幼オーク「ぜ、全身がズタボロだ!これはもう助からない、きっと助からないに違いない!」

先生「ぐふっ…」

幼オーク「先生ー!それに河童も致命傷だ!これは二人とも助からないに違いない!」

幼女騎士「ちくしょう!いったい誰がこんな酷いことを!」

先生「お、お前らやろがい…」

幼オーク「エヘ!」

河童「ぐふっ…」

先生「ぐふっ…」

幼女騎士「くそっ…私たちは無力だ…こうやって弱っていく二人をただ見ている事しか出来ないのか!?」

幼オーク「くそぅ、歯がゆいぜ!」

先生「きゅ、救急車を…」

幼女騎士「スマホのバッテリーが切れているんです…」

河童「き、傷薬かなにかないのか…?」

幼オーク「なにか…なにかか…」

ガサゴソ

幼オーク「おっ」

ジャン

幼オーク「あったよ、塩酸が!」

幼女騎士「でかした!」

河童、先生「「おい待てェ」」

幼オーク「あったよ、塩酸の入った瓶が!」

河童「だから待て待て待てェ」

先生「まさかそれを私たちに…傷だらけの私たちにかけるつもりじゃあないだろうな!?」

河童「かけるなよ、絶対にかけるなよ!」

先生「絶対にだぞ!」

幼オーク「…」

幼オーク(フリか?)

幼オーク(やれという前フリか?)

幼女騎士「さて、どうする?」

チラッチラッ

幼オーク「…」

幼オーク(幼女騎士が目配せしてくる…これはもうやれという合図に違いない)

幼オーク「ならば期待通りに!やぁってやるぜ!」

キュッ ポンッ

幼オーク「河童と先生に!傷だらけの二人に!俺が!塩酸を!かけてやるンナッハァァァァァァァン!」

バシャー

河童「ぎ」

先生「ぎ」

幼女騎士「せ、先生!」

幼オーク「傷が炎症を起こし真っ赤だ!これは痛い!痛いに違いない!」

幼女騎士「くそっ…どうしてこんな事に…」

・・・・・・・・・・

こうしてなんやかんやあって
何年もの月日が流れた。
二人は成長し(こうげき、とくこうが一段階アップ)
女騎士とオークになった。
さらにさらになんやかんやあって
勇者とか魔法使いとか僧侶とかと出会った。

女騎士「もはやかつての日々は戻らない。取り戻せない」

オーク「…あぁ」

女騎士「それでも私たちは生きている。生きていく。生きていかねば、ならない」

オーク「わかってるさ…」

女騎士「だから、今出来る事を…精一杯やるしかないだろう?」

オーク「今出来る事…」

女騎士「そうだ…今出来る事だ。それは」

オーク「お菓子…クッキーをつくる事…」

女騎士「イエス!イエス!イエス!」

オーク「よぅし…たしか尻穴に洗面器を詰めるんだったな…」

ガサゴソ

女騎士「そうだ、その洗面器をお前の尻穴に早く詰めろ」

オーク「クッキー作りになんの関係があるか分からんが…やぁってやるぜ!」

ガサゴソ
ズブリ!

オーク「ん゛!」

女騎士「よぅし、なら次はこの小麦粉をさらに詰めろ!」

オーク「了解であります!」

ズブリ!ズブリ!ズブリ!

女騎士「よぅし、追加で塩とバターもだ!」

ズズズズズズブリ!

オーク「シーター!!!」

女騎士「それはジブリだ」

ジワジワ

オーク「な、なにやら尻穴がムズムズしてきた」

女騎士「ふふ、お前の尻穴で材料が混ざり、クッキーになろうとしているのだ!」

オーク「なん…だと…?」

女騎士「あとは高温で焼けばクッキーの完成だ」

オーク「ちょ、待ってくれ!高温で焼くって…まさか俺の尻穴ごと焼くんじゃないだろうな!?」

女騎士「ほかにあるまい?」

オーク「く、くるってる…」

女騎士「狂っているのは私じゃない、この世界そのものだ…だから、だからこそ…焼かねばならぬ。クッキーを…そして、この世界の間違った認識を」

オーク「お、お前…」

ハッ

オーク「ま、まさか!お前のやろうとしている事は!?」

女騎士「犠牲がなければ成り立たない世界なんてのは…間違っているんだ…そんなもの…そんなものは!」

ボウッ

女騎士「焼き付くしてやるァァァ!」

ゴワァァァァァ!

オーク「うわぁぁぁ!かつてない炎が来る!」

モエルーワ!

オーク「ぎゃぁぁぁ!尻穴が!尻穴が燃えている!燃えていますぞォォォォォ!」

女騎士「ハッハッハ!よぉく燃える!クッキーが焼き上がるのも時間の問題だ!」

オーク「な、なんかいい匂いがしてきたよォォォォォ!?」

女騎士「バターと砂糖の美味しそうな匂いだ!さぁさぁさぁ!焼き上がる!クッキー!クッキーだぁよ!」

オーク「あっあ…さ、さん…にぃ…いちぃ…」

チーン!

オーク「ンナッハァ!」

スポポポポポポポ!

女騎士「オークの尻穴から!焼き上がったクッキーがマシンガンのように放たれた!?」

オーク「さ、錆び付いたマシンガンで今を撃ち抜こう…」

クッキー! クッキー!
スポポポポポポポ!

オーク「クッキーが止まらない…止める事など、出来ない…!」

クッキー! クッキー!
プリティ! ウィッチ!

オーク「んドゥリュエミュウイッッッツィィィィィィ!」

女騎士「魔女見習いを!」

オーク「探して!」

・・・・・

テンコモリ

女騎士「フフッ、山盛りのクッキー…」

オーク「こんなに大量のクッキー…夢みてぇだよ!」

女騎士「おいおい、夢でいいのか?夢で終わっていいのか?」

オーク「へっ、聞くまでもねェだろ…」

女騎士「ふっ、そうだな」

オーク「ったく、んな事聞くだなんて意地悪な女だぜ」

女騎士「なぁに、ほんのイタズラ心さ」

オーク「イタズラ…ふっ、イタズラより欲しいものが…俺たちにはある」

女騎士「そうだな、イタズラはいらないから…」

オーク、女騎士「「お菓子をくれ」」

【完】

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