望月聖「台風の夜、心臓の音」 (32)
あらすじ
台風が急カーブして女子寮に向かってきてしまいました。
聖、ネネ、ほたる、洋子は4人で台風の夜を過ごすことに。
注
読み切り。
アイドル達は小さな芸能事務所に所属しています。
それでは、投下していきます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1600608020
1 事務所支給のジャージは良品らしい
CGプロ女子寮・玄関
CGプロ女子寮
小さな芸能事務所CGプロの女子寮。古い建物をリフォームしたので、共同玄関、内廊下、談話室、共同キッチン、大浴場もあるのが特長的。部屋数10部屋。入居者は6人。
栗原ネネ「洋子さん、おかえりなさい……全身ビショビショですね」
斉藤洋子「ただいまっ!急いで帰って来たんだけど、降られちゃった」
ネネ「雨、強いんですか?」
洋子「うん。台風の影響かな、この時間は降らないはずなのに」
望月聖「洋子さん……タオルいりますか?」
洋子「聖ちゃん、ありがとっ!」
白菊ほたる「あっ……洋子さん。おかえりなさい」
洋子「みんなお風呂場からジャージで出て来たけど、どうしたの?」
ほたる「すみません……私のせいで」
洋子「ほたるちゃんのせい?」
ネネ「ほたるちゃんが麦茶をこぼしちゃって」
ほたる「お二人のためにお盆に乗せて持って行こうとしたら……つまずいてしまって」
洋子「あちゃー」
ネネ「それだけなら良かったんですけど……」
ほたる「慌てて立ち上がったら……テーブルの上にあった麦茶ポットも倒しちゃって……」
聖「ほたるも……頭から」
ネネ「だから、みんなでお風呂に入ったんです」
聖「一緒に入るのも楽しい……」
洋子「それなら、もしかしてお風呂沸いてる?」
ほたる「はい……そうですけど……」
洋子「ラッキー!このままお風呂に入っちゃおっ♪ほたるちゃん、ありがとね!」
ほたる「え……?」
洋子「洗濯もしよっかな。いいなら一緒に洗濯するよ?」
ネネ「それじゃあ、お願いします」
洋子「わかったっ。私がお風呂に入ってる間に出しておいてね」
聖「ほたる……不幸じゃない、みたい」
ほたる「はい……」
ネネ「ふふっ」
ほたる「洋子さん……元気で見習いたいな」
ネネ「うん。洗濯物を出したら、天気予報を見ましょうか」
聖「私も見ます……雨、強そう……」
2 ネネの趣味はテレビ鑑賞
CGプロ女子寮・談話室
洋子「良いお湯だった~、洗濯機も回しておいたよ」
ネネ「ありがとうございます、洋子さん」
洋子「テレビ見てたんだ」
聖「うん……台風のニュース」
ほたる「洋子さん……見てください」
洋子「どうしたの?あれ、こんな進路だったっけ?」
ネネ「昨日までは、かすめるようにして太平洋に抜ける予定でした」
洋子「左折して、上陸しちゃったね」
ほたる「すみません……私のせいで……」
洋子「ほたるちゃんのせいじゃないよ」
ネネ「雨も風も今夜は強くなりそうです」
洋子「避難しないとかな」
ネネ「避難勧告は出てないみたいです」
ピリリリン!
聖「寮の電話……誰から……?」
洋子「私が出てくるねっ」
3 寮の電話では名乗らないように
CGプロ女子寮・玄関
洋子「もしもし、どちら様ですか?」
PaP『出た。CGプロのPaだ。洋子ちゃんか?』
洋子「そうだよ。この電話にかけるなんて珍しいね、プロデューサー」
PaP『台風が来てるから安全確認。他に誰かいる?』
洋子「ネネちゃん、ほたるちゃん、聖ちゃんがいるよ」
PaP『それは良かった。もう帰ってるんだな』
洋子「杏ちゃんと保奈美ちゃんは?」
PaP『杏ちゃんは北海道ロケ、保奈美ちゃんは沖縄でグラビア撮影だから大丈夫。帰るのも明日以降だし』
洋子「そうなんだ。ラッキーだね」
PaP『りあむちゃんは自宅。寂しそうだから電話でもしてみてよ』
洋子「いつも通りだね。聖ちゃんとかにお願いしようかな」
PaP『洋子ちゃん、そっちは任せた。台風の備えをお願いしていいか?』
洋子「任された!」
PaP『雨戸があるから全部しめてくれ』
洋子「うん」
PaP『もう出歩かないように。夕ご飯の用意はある?』
洋子「確認してみるね。私は買い忘れちゃった」
PaP『非常食遠慮なく使って、賞味期限近いから買い替えるつもりだったから丁度いいや。防災セットの位置はわかるよね?』
洋子「入寮の時に教えてもらったよ」
PaP『良い機会か。確認してみて。欲しいものがあったら買っておくから』
洋子「オッケー」
PaP『千川が作った冊子もあるよな、皆で確認してみて』
洋子「わかった。プロデューサーは大丈夫?今どこ?」
PaP『まだ事務所。千川と自分しかいない』
洋子「危なくないうちに帰った方がいいよ」
PaP『そうするよ。千川、送っていくから帰るぞ。この仕事が終わってから?アホか、身の安全第一だ。とっとと帰る準備しろ』
洋子「……」
PaP『洋子ちゃん、よろしく。何かあったら連絡して』
洋子「うん。気をつけてねー」
4 発声練習の時に見せてくれたらしい
CGプロ女子寮・談話室
ネネ「電話、どなたからでしたか?」
洋子「プロデューサーからだった。今日は4人で台風に備えてね、だって」
ほたる「杏さんと保奈美さんは……?」
洋子「杏ちゃんは北海道ロケ、保奈美ちゃんは沖縄でグラビア撮影だって」
ネネ「杏ちゃんは里帰りですね」
ほたる「保奈美さんのグラビア……スタイル良いから……」
聖「保奈美さんのお腹……歌う時にきゅっとなってキレイなんです……」
ネネ「そ、そうなんですね」
洋子「それじゃ、台風に備えよう!」
ほたる「何をすればいいんですか……?」
洋子「まずは、ちひろさんが作ってくれた冊子を確認しよう」
ネネ「暮らしのしおり、ですね」
聖「テレビ台の下に……あります」
ほたる「持ってきます……」
5 暮らしのしおり(千川ちひろ作)
洋子「じゃん!暮らしのしおり、ですっ」
聖「ちひろさんの真似……?」
洋子「あんまり似てなかったね。しおり、読んだことある?」
ほたる「ちゃんと読んだことはないです……」
ネネ「ちひろさんの手作りみたいです」
聖「かわいいですね……」
洋子「へー、色々書いてあるね。さすが、ちひろさん」
聖「台風のページも……ある?」
洋子「あるよ、ここだね」
ネネ「何が書いてあるんですか?」
洋子「フムフム……よしっ、雨戸を閉めちゃおう!」
ほたる「雨が強くならないうちに……ですね」
洋子「ネネちゃん、杏ちゃんと保奈美ちゃんに部屋入る連絡しておいて」
ネネ「分かりました」
洋子「それじゃ、出発!」
6 体育会系のユニットメンバー募集中(洋子)
CGプロ女子寮・談話室
洋子「総員集合!」
ネネ「はいっ」
ほたる「はい……」
聖「はい……揃いました」
ほたる「なんで……部活みたいに?」
洋子「それはなんとなく。ネネちゃん、雨戸はオッケー?」
ネネ「はいっ。全部の部屋に、玄関も」
ほたる「昔のままの頑丈そうな雨戸でした……これなら平気です」
洋子「聖ちゃん、電源のブレーカーはどうかな?」
聖「洋子さんと一緒に共同スペース以外は切りました……」
ネネ「しおりに書いてあった、火事防止のためですね」
洋子「クーラー切ると暑いから、今日は談話室で過ごしてね」
ほたる「はい……タオルケットも持ってきました」
洋子「ここで台風情報のチェック!」
ネネ「後数時間で直撃ですっ」
洋子「そんな気はしてた。ほたるちゃん、食料は」
ほたる「ごめんなさい……さっき作り直した麦茶しかありませんでした」
洋子「やっぱり、非常食を食べようか。ネネちゃん、水は大丈夫?」
ネネ「停電しちゃうと水道が使えないかもしれないので、ペットボトルに水を入れました」
聖「お風呂も水を抜いてないから……使えます」
洋子「それじゃ、防災グッズを出して!」
ほたる「はい……リュックが2つありました」
ネネ「それと、これが」
洋子「お助けボックス・バイ・PaP、自由に使っていいよ……何が入ってるんだろう?」
ネネ「色々な日用品が入ってました」
洋子「必要なら使わせてもらおう」
ほたる「えっと……防災グッズの確認を……」
洋子「思い出した。その前に」
ほたる「その前に……?」
洋子「聖ちゃん、りあむちゃんに電話してみて。家にいるみたいだから」
聖「独り……寮で一緒の方がいいかな」
洋子「移動するのは危ないから辞めよう、本人は来たそうだけど」
聖「わかりました……電話します」
7 聖歌も歌えるような人とユニットだといいな……(聖)
CGプロ女子寮・談話室
聖「電話してきました……りあむさん、お家で困ったことはないみたい……」
ほたる「良かった……安心しました」
聖「でも……」
ネネ「何かあったんですか?」
聖「天使か……神か……とか呟いてました。りあむさん、お祈りするくらい怖いのかな……?」
洋子「あー、それは大丈夫だと思うよ」
ほたる「りあむさん……敬虔な人だったんですね……」
洋子「それも違うと思うけど、まぁ、いいか」
聖「聖歌も好きです……教会も」
ネネ「りあむさんの無事も分かりましたし、防災グッズを確認しませんか?」
洋子「そうだねー。大きなリュックが2つ」
ほたる「中身は同じみたいです……」
洋子「全部出して確認しよっか」
ネネ「はいっ。まずは……」
ほたる「ビニール袋に入ってる……棒?」
聖「歯ブラシ……かな」
洋子「避難する時に使うのかな?今は大丈夫だね」
ネネ「これは、使い捨てのスプーン、フォーク、お箸」
ほたる「お皿……今はいらないですね」
聖「ポケットティッシュがたくさん……」
ネネ「ウェットティッシュもありますね」
ほたる「これは石鹸……いいえ、発泡スチロールかな……?」
洋子「見せて。プレスタオルって書いてあるよ」
ほたる「本当ですね……石鹸は別にありました」
洋子「水でほぐして使うみたい。持ち運びに便利、だけど本当の非常時に使おうか」
ネネ「はい。これはペンと付箋みたいです」
聖「あると便利だから……」
ほたる「軍手がありました……ガムテープも」
洋子「ガラスが割れたりした時に備えてかも」
聖「これは……笛です……ぴー……」
ほたる「助けを求める時に使うんですね……」
ネネ「これは、ビニール袋です」
ほたる「ゴミ袋とか……雨合羽代わりに使えます」
洋子「ほたるちゃん、詳しいね」
ほたる「何回か避難したことがあるから……あっ、レインコートは別にありました。ちゃんと4人分ありますよ……」
聖「これは……?」
ネネ「見せてください。ブランケットみたいです」
洋子「これも部屋から持って来たのがあるから大丈夫だね」
聖「マスクもありました……風邪が流行ってても安心……」
ほたる「これは手持ちランプ……あれ、つかない……?」
ネネ「電池切れでしょうか」
洋子「手回し式なんだよ。そこのレバー回してみて」
ほたる「えっと……グルグル……つきました……!」
洋子「LEDランプだから、明るいね」
聖「これもランプ……?」
ネネ「こっちは懐中電灯ですね。ケータイの充電機能もついてます」
ほたる「そうだ充電……しておかないと」
洋子「そうだね。私もしておこっと」
ほたる「これくらい……でしょうか」
ネネ「はい。後は非常食みたいですね」
洋子「手回し式ライトだけ出しておいて、今日の夕ご飯を決めようっ」
8 賞味期限近いものは食べてしまいましょう
CGプロ女子寮・談話室
聖「しまえた……」
洋子「聖ちゃん、ありがとっ」
ほたる「雨戸に当たる音が大きくなってきました……外には出ないほうが良いですね……」
ネネ「ありがたく、非常食をいただきましょう」
ほたる「はい……何があるんでしょうか」
聖「コロッケとか……?」
洋子「台風と言えばコロッケだけど、ないみたいだね」
ほたる「非常食はこれです……」
ネネ「たくさんありますね」
聖「お水に……缶詰も……」
洋子「賞味期限近いとか言ってたんだ、どう?」
ほたる「ペットボトルのお水は……今年の12月までです」
洋子「飲んじゃおうか。どんな味なんだろ?」
ほたる「それなら飲んでみます……いただきます」
ネネ「どうですか?」
ほたる「……普通のお水です。ミネラルウォーターでもないみたい……」
洋子「聖ちゃんも持っててね」
聖「ありがとう……」
ほたる「非常食だから、腐りにくいお水に決まってますよね……」
ネネ「このパックは、ご飯みたいです」
洋子「お水でも作れるご飯だねっ、ハイキングの時に使ったよ」
聖「五目ご飯もあります……」
洋子「水でも食べれるけど、お湯で戻すと美味しいよ」
ほたる「これも賞味期限が12月までです……」
ネネ「同じ時期に買ったから、賞味期限が近いみたいです」
洋子「本当だ、この缶詰も同じくらいだった」
聖「何の缶詰……ですか?」
洋子「パンだよ」
ネネ「パンですか?」
ほたる「本当ですね……味も色々あります」
洋子「1つ開けてみようか。はいっ」
聖「美味しそう……良い匂いもします……」
洋子「モチモチだ」
ほたる「果物の缶詰とかはないんですね……」
ネネ「保存とか食べる時に手が汚れるから、なのかな」
聖「これは……カンパン」
ほたる「保存食の定番です……オヤツとして食べても美味しいですよ、腹持ちも良くてお金がない時にはご飯代わりにも……」
ネネ「ご飯代わりにしてたこと、ないですよね?」
洋子「ビスケットもあるよっ」
聖「これは……羊羹でしょうか」
洋子「へー、羊羹なんてあるんだ」
ネネ「えっ、1本あたり180キロカロリー……食べる時には注意が必要です」
洋子「お茶碗1杯分くらい?凄いね」
ほたる「保存食はこれくらいです……」
洋子「食べきれないくらいあるね」
ネネ「うーん……」
洋子「ネネちゃん、どうしたの?」
ネネ「お野菜が足りません」
洋子「確かに。お肌の敵かも」
ほたる「やっぱり非常時はカロリーが大切だから……」
洋子「私達はアイドルだもん。そこも大切だよっ」
聖「お野菜……サプリメントとか」
洋子「意外と保存できないんだよね」
ネネ「どうしたらいいんでしょう?」
洋子「後でプロデューサーと一緒に考えおくよ」
聖「あっ……」
ほたる「なにか……ありましたか」
聖「もう……こんな時間」
洋子「それじゃ、ご飯にしようか」
ネネ「お湯を沸かしますね」
洋子「ほたるちゃんと聖ちゃんは待ってて」
ほたる「はい……ありがとうございます」
9 大きいテレビがあるのでつい……とのこと
CGプロ女子寮・談話室
洋子「ごちそうさまでしたっ」
聖「ごちそうさまでした……お腹いっぱい」
ネネ「ちょっと開けすぎちゃいました」
ほたる「はい……満足しました」
洋子「明日は運動しないと」
ネネ「片づけますね」
ほたる「片づけは私が……」
ネネ「大丈夫、任せてください。テレビでも見ていてください」
ほたる「ありがとうございます……お世話になっちゃって……」
洋子「どんな時も助け合いだよ。ネネちゃん、よろしくねっ」
ネネ「はい」
聖「テレビ……台風のニュースばっかりです……」
洋子「台風の中心がここを通っていきそう」
ほたる「風も強くなってきましたね……建物が揺れてるような」
聖「……」
洋子「ニュースばかり見てても気が滅入るだけかな。何か見よっか?」
ほたる「はい……プレーヤーと一緒にソフトも幾つか……」
洋子「これだね。えっと、オペラかな、これもオペラ、これもだ」
ほたる「こっちは宝塚です……あと北海道のローカル番組があります」
洋子「うん、持ち主が分かりやすいね」
聖「保奈美さんがたまに……ここで見てます」
ほたる「聖ちゃんは見たことありますか……?」
聖「何回か……歌の勉強になります」
洋子「へー、私見たことないな」
ほたる「アイドルの勉強になるなら……見たいです」
洋子「聖ちゃん、どれがいいかな?」
聖「これは見たことないけど……保奈美さんがオススメしてました」
ネネ「皆さん、お茶はいかがですか?」
洋子「ちょうだーい!」
ほたる「ネネさん……いただきます」
聖「一緒にオペラを見ませんか……?」
ネネ「オペラですか?」
洋子「保奈美ちゃんが置いてるやつ」
ネネ「いいですね、前から気になってたんです。お茶を淹れるまで待っててくださいね」
ほたる「はい……準備しておきますね」
10 C・Kさんはコンテスト荒らし
試聴後
CGプロ女子寮・談話室
聖「……」
ほたる「ほわぁ……」
洋子「おー」
ネネ「わー、凄いですっ」
洋子「上手く感想言えないのが勿体ないっ!ほたるちゃん、どうだった?」
ほたる「プロは凄いですね……歌だけじゃなくてステージ上の姿勢とか、表情とか……」
洋子「こういう意見が出るようにならないと」
ネネ「聖ちゃんは、どうでしたか?」
聖「……」
ほたる「集中してます……考えごとかな」
洋子「聖ちゃん?」
聖「はっ……すみません、良い歌だったから……どうやって歌うのか想像してて……」
洋子「聖ちゃんもオペラに興味あるの?」
聖「歌は何でも好きだから……」
ほたる「演歌とか民謡も好きなんだよね……」
聖「アイドルなら……きっと色々歌えるから」
洋子「プロデューサーとお願いしてみよう」
ネネ「そういえば、聞いたことがあります」
洋子「聞いたこと?」
ネネ「あらゆるジャンルの歌の大会で優勝して、アイドルになった子がいるそうですよ」
洋子「へぇー、聖ちゃんのライバルは強敵だ」
ほたる「違いますよ……私達のライバル、です」
ネネ「そうですね、がんばらないとっ」
洋子「私だって、目指すはトップアイドル!目標は大きくだよねっ」
聖「うん……もっとたくさんの人に、歌を届けたい……」
洋子「せっかくだから保奈美ちゃんと一緒に見れば良かった」
ネネ「説明があったら、もっと勉強になりそうです」
ほたる「うん……色々知りたいです」
聖「もう1つ……見たい」
洋子「まだ寝る時間じゃないし、見ようか」
ネネ「そうですね。ほたるちゃん、見たいものはありますか?」
ほたる「え、えっと……どうしようかな」
洋子「あはは、焦らなくていいよ」
聖「風が……強い」
ネネ「そうですね、夢中で気付かなかったですけど」
聖「あれ……?」
洋子「聖ちゃん、どうしたの?」
聖「何か……聞こえたような」
ネネ「飛んできたものが当たったとか」
ほたる「決まりました……これにしま……えっ?」
ネネ「きゃっ」
洋子「て、停電した!?」
11 ケータイの充電は大事
ネネ「洋子さん、ブレーカーはどうでしたか?」
洋子「ブレーカーは落ちてなかったよ」
聖「周りも停電してるみたい……」
洋子「ケータイで停電の情報調べられる?」
ほたる「はい……充電しておいたから……」
洋子「よいしょ、ぐるぐるぐるっと。ランプ、いきなり役に立ったね」
ネネ「はいっ。準備は大切ですね」
聖「準備してたから……皆といれば怖くないです」
ほたる「ネットに出てました……やっぱり、この辺りは停電してるみたいです……」
ネネ「理由は書いてますか?」
ほたる「いいえ……そこまでは」
聖「どうしたんだろう……」
洋子「風で送電線が切れたりした、とか」
ほたる「わかりません……私のせいで」
聖「違うと思う……ほたるのせいじゃないよ」
ネネ「停電したけど大丈夫ですよね、洋子さん?」
洋子「明かりもあるし、風は強いけど洪水にはなってないみたいだから」
ほたる「ほっ……良かった」
洋子「でも、ひとつ問題があるかも」
聖「それは……」
洋子「エアコンが切れたこと」
12 斉藤洋子、健康優良
ほたる「ふぅ……」
聖「はー……」
洋子「やっぱり、暑いね」
ネネ「窓を開けるわけにも行きませんから」
ほたる「外が暑いんでしょうか……」
洋子「ごめん!私が体温高いばっかりに室温が!」
聖「それが原因……じゃないと思う……」
洋子「ほら、触ってみて」
ネネ「失礼します、あったかいですね…それとすべすべ」
ほたる「本当です……ひゃっ」
聖「ほたるは冷たい……」
ほたる「急に触られると……びっくりします」
洋子「ほたるちゃんと聖ちゃんはひんやりしてるね。やっぱり」
ネネ「汗をかいてますね、タオルをどうぞ」
ほたる「ありがとうございます……」
ネネ「2人とも顔がちょっと赤いですね」
洋子「見るからに暑さに弱そうだもんね。それに、肌が白いから赤くなると目立つ」
聖「私、寒い村で産まれて……」
ほたる「私は体質だと……思います」
洋子「ネネちゃんは平気?」
ネネ「北に登らないと、群馬は暑いんですよ」
洋子「福岡も暑いよー、やっぱり西の方と比べちゃうと首都圏は涼しいよね」
聖「そうなんだ……」
ネネ「うちわであおぎましょうか?」
洋子「こういう時のお助けボックス!ライト貸して?」
ほたる「はい……どうぞ」
洋子「何かないかな……あ、便利なのがあった。ほたるちゃん、使って」
ほたる「これは……フェイスシート?」
洋子「聖ちゃんもどうぞ。首筋を拭くといいよ」
聖「ありがとう……あっ、冷たい……」
ほたる「拭いたところがひんやりします……」
ネネ「私も貰っていいですか?」
洋子「もちろん。汗も拭けて、涼しい感じもして、一石二鳥!」
ネネ「本当にひんやりしますね」
洋子「最近こういうのもあるんだよね。オデコに貼る解熱シートもあるから、はい、オデコ出して」
ほたる「あっ……はい」
聖「冷たい……洋子さん、ありがとう」
洋子「2人とも顔も小さくて、本当に妖精さんみたいだね……子供用なのにぴったり」
ネネ「洋子さん、停電の情報が入りましたよ」
洋子「復旧しそう?」
ネネ「はい。変電所付近の復旧作業が終わったら、大丈夫みたいです」
ほたる「どれくらい……ですか」
ネネ「1時間もしないうちに、と書いてあります」
聖「台風の中……凄い」
洋子「私達も麦茶を飲みながら、もうちょっとがんばろうっ」
ほたる「はい……麦茶も作っておいてよかった」
13 聖は耳も良いらしい
CGプロ女子寮・談話室
聖「……」
ネネ「まだ電気は戻りませんね」
洋子「早く戻るといいけど……暑さは大丈夫?」
ほたる「はい……」
ネネ「さっきより涼しくなった気がします」
洋子「そういえば、あったあった、温度計がお助けボックスに、げっ」
聖「まだ……30℃越えてる……」
ほたる「暑いわけですね……」
洋子「数字見ると暑くなる……見なければよかった」
ネネ「水分をとりましょう。麦茶は汗で流れるミネラルも補給できて良いんですよ」
洋子「体を冷やす作用もあるんだよねっ」
ほたる「そうだったんだ……夏にぴったりです」
聖「……」
ネネ「聖ちゃんもどうぞ」
聖「あの……」
洋子「どうしたの?」
聖「聞こえませんか……?」
ほたる「雨と風の音は聞こえますけど……」
ネネ「みんなの声も聞こえます」
聖「別の人の……声と……鼓動のような……」
洋子「えっ……?」
ほたる「それって……」
聖「……」
ネネ「黙って上を向かないでください……」
ほたる「あれ……?」
聖「聞こえた……?」
ネネ「女の人の声の様な……」
洋子「誰もいないよね?だって、さっき」
ほたる「雨戸を閉めたから……その時に」
ネネ「確認したはずです」
聖「……」
ほたる「このままだと不安だから……見に行くのはどうでしょうか」
聖「うん……きっと平気」
ネネ「大丈夫なのかな」
洋子「幽霊とかじゃない、はず」
ネネ「……」
ほたる「……」
聖「……」
洋子「黙らないでよ、怖くなってくるから」
ほたる「見に行きましょう……正体がわかれば怖くないから」
ネネ「ほたるちゃん、大胆です」
聖「2階の……どの部屋かな」
ほたる「お助けボックスに道具が……これとか」
ネネ「お塩、十字架、巫女さんがお祓いに使ってる棒に」
聖「小さい聖書……御札もあります」
洋子「……なんで、こんなに道具があるの?」
ほたる「わかりません……もしかして本当に……」
ネネ「で、でも、御札は商売繫盛のものですよ」
洋子「とりあえず、持って行こう!」
聖「銀の十字架と聖書……持った」
ほたる「私は……お塩とお祓いの棒にします」
ネネ「私は御札……効くのかなぁ」
洋子「ネネちゃんは懐中電灯も持って」
ネネ「はい」
洋子「ちゃんと手回しで充電して……よしっ、行くよっ」
14 201号室はほたる、204号室は保奈美、他は空き部屋
CGプロ女子寮・2階廊下
洋子「2階に来たよ……何かある?」
ネネ「何もありません」
ほたる「2階だと更に雨の音が強いですね……1階にいて良かった」
洋子「聖ちゃん、あの音聞こえる?」
聖「談話室にいた頃より弱い……向きが違うのかな」
ほたる「1階に向かって音を出してる……?」
ネネ「何のためにそんなことを?」
聖「気づいてもらうため……あっ、聞こえた」
洋子「さっき、不穏なこと言わなかった?」
聖「あの部屋……」
ネネ「203号室は誰の部屋でしたか?」
ほたる「空き部屋です……備え付けのベッドしか置いてないはず……」
ネネ「……」
洋子「……」
聖「行こう……呼んでる」
ほたる「ホラー映画だと、悪霊に連れ去られる前のセリフです……」
洋子「ああっ、待って!」
15 ベッドの下、鼓動の音
CGプロ女子寮・203号室
聖「……」
洋子「こんばんは……誰かいますか……」
ネネ「部屋には何もありません……きゃっ」
ほたる「音がしました……誰かの声……?」
洋子「何か低い音もするような」
聖「そこ」
洋子「はい?」
聖「ベッドの下……聞こえる」
ほたる「ベッドの下……ベッドの下の男……おっかけ……ストーカー……殺人鬼……」
洋子「ほたるちゃん、物騒なこと言わないでよ」
ネネ「よしっ、明かりを」
洋子「私がやるよっ!ふぅ……」
ネネ「……」
ほたる「あれ、この声……聞いたことがあるような……」
聖「……」
洋子「出てくるなら……出てこいっ!」
ほたる「……」
洋子「あれ、何か落ちてる?丸っこい」
聖「十字架はいりますか……?」
洋子「いらないみたい。よしよし、出ておいで」
ネネ「これは……」
聖「事務所で……見たことある」
ほたる「知ってます……りあむさんがモデルのお喋りぬいるぐみです……」
洋子「前にプロデューサーが言ってたような?」
ほたる「りあむさんカワイイから……ぬいるぐみにしてみようって」
聖「撫でたりすると……喋ります」
洋子「それじゃあ、撫でてみよう」
りあむ人形『もっとナデナデしろ!りあむちゃんはカワイイだろ!?』
ネネ「喋った、りあむさんの声ですね」
洋子「要望が多い人形だなぁ。たぶん、りあむちゃんがセリフも考えてるよね」
ほたる「揺らしても反応してくれますよ……」
洋子「こうかな?」
りあむ人形『バブゥ!もっとぼくを甘やかそう!』
ネネ「……」
ほたる「……」
聖「ぬいるぐみの胸についてるバッジ……」
洋子「りあむちゃんがいつも付けてる毛が生えた心臓だ」
ネネ「ファンの間でも有名らしいですよ」
洋子「これ、動いてるね。本当の心臓みたいに」
聖「トク、トク……って音がする」
ほたる「心臓の音は安心するから……りあむさんの提案でつけてもらったみたいです」
ネネ「結構響きますね」
洋子「つかぬこと聞くけど、これ発売したの?」
ほたる「試作品は2つくらい作ったんですけど……声入れてみたら、その……ちょっと……」
洋子「うん、売らないのが正解」
聖「とってもカワイイのに……」
ほたる「はい……なので、ひとつは事務所に……もうひとつがここに」
洋子「床に落ちてて、建物が揺れてるから反応したみたい」
ほたる「たぶん……私もそうだと思います」
聖「でも……どうして、こんな所に……?」
ネネ「ここは前から空き部屋でしたよね」
ほたる「少し前に……杏さんの部屋をCuPさんとお掃除したんです……その時に荷物置き場にこの部屋を使ってて」
ネネ「杏さん、荷物が多いですから」
洋子「その時に置いてかれちゃったんだ」
ネネ「杏さんが引き取ったんですか?」
ほたる「いつも寂しいそうに見てくるんだよ……とか言ってました」
聖「杏さん……やさしい」
洋子「引き取ってくれたのに置いてかれちゃったのか、寂しいから呼んだのかな」
ネネ「はい、一緒に談話室に行きましょうか」
洋子「そうだね。でも、いきなり話すとうるさいから電源はオフにしておこう。これかな?」
りあむ人形『おやすみ。ぼくを寝ているうちに置いてかないでよ。約束だぞ』
ネネ「……」
洋子「……」
聖「おやすみなさい……」
16 停電回復を確認したらコンセントを戻しましょう
CGプロ女子寮・談話室
ネネ「ソファに置いてあげて、タオルのお布団もかけてあげましょう」
りあむ人形『……』
聖「これで……寂しくない」
ほたる「あっ……見てください」
洋子「停電直ったっ!」
ネネ「テレビのコンセントを入れて、映りました♪」
聖「まだ台風抜けてないんですね……」
ほたる「エアコンもつきました……涼しい」
洋子「よかったー。これで一晩は過ごせそうだね」
ネネ「はい」
聖「うん……ふぁ……」
洋子「眠くなった?」
聖「少しだけ……」
洋子「私も眠くなっちゃった。一緒に寝ようか」
17 台風の夜、心臓の音
CGプロ女子寮・談話室
洋子「ソファー狭いけど、大丈夫?」
ほたる「はい……大丈夫です」
聖「風が静かになった……」
ネネ「台風の目に入ったんですね」
ほたる「……静かですね」
聖「聞こえる……」
洋子「今度は何かな?」
聖「洋子さんの心臓の音……ぴとり」
洋子「くっつかれた」
聖「安心する……りあむさんの言ってたことは本当……」
ネネ「私も、えいっ」
洋子「ネネちゃんまで?」
ネネ「えへへ。今日は洋子さんの妹です」
洋子「おー、よしよし。カワイイ妹たち、甘えて良いよ」
ほたる「私も……」
聖「ほたる……交替」
ほたる「うん……洋子さん、あったかい」
洋子「私も聞こえる。ドキドキしてない」
聖「うん……外は危ないけど……」
ネネ「ここなら平気です」
ほたる「安心できる……」
洋子「ごめんね。年長だけど、慌ただしくて」
ほたる「そんなことありません……洋子さんはいつも私まで幸せになれそうな素敵な笑顔で……」
洋子「褒められちゃった。ありがとう。私も、みんなといれて嬉しいよ」
ネネ「はい、私もです」
聖「おやすみなさい……」
洋子「おやすみ、みんな」
18 台風一過の早朝
CGプロ女子寮・玄関
PaP「よっと、建物に問題はなさそうだな」
ちひろ「心配症ですねぇ。こんなに早くこなくてもいいのに」
PaP「そっちこそ付いて来たくせに」
ちひろ「1人で行くのもなぁ、とは言ってたのはそっちです」
PaP「確かに言ったけどよ」
ちひろ「しー……静かに」
PaP「……静かに?」
ちひろ「ほら、あそこ」
PaP「ソファーで寝たのか、一緒に。あんなにくっついて暑くないのか」
ちひろ「ふふっ、良い寝顔です……ぱしゃり」
PaP「撮るなよ……」
ちひろ「大丈夫、共有したりしませんよ♪」
PaP「アホか、当たり前だ」
ちひろ「無事も確認できましたから、帰りましょうか」
PaP「そうだな。寝かせておいてやろう」
ちひろ「はい。そうだ、プロデューサーさんっ?」
PaP「なんだ?」
ちひろ「早くから付き合ったので美味しいご飯が食べたいです♪」
PaP「はぁ、わかったよ。どっかの市場にでも行くか」
ちひろ「やった♪ごちそうさまです」
PaP「さっさと帰るぞ。起こさないうちに」
ちひろ「はーい。それでは、みなさん……お疲れ様でした」
おしまい
あとがき
ぴにゃリクエストでMVを見たら、HeartVoiseでこの4人だったので書いてみた。
洋子さんと一緒にシンデレラガールズ劇場に出てるメンバーだったり。
杏、保奈美、りあむもぴにゃリクエストから。曲はGossipClub。
何が起こるかわかりませんので、防災対策は万全に。非常食は3日が目安。
7人が行くEX含めて何か書いていますので、よろしくです。
更新情報は@AtarukaPで。
それでは。
このSSまとめへのコメント
このSSまとめにはまだコメントがありません