清霜「Saxophone Colossus 」 (178)

ジャズに、恋をした


2019年1月21日 午後5時17分
鎮守府 埠頭

「...」

「よし!」

夕雲型の最終番艦、清霜
彼女は一人、鎮守府の誰も来ない埠頭に立っていた
聞こえるのは鳥の鳴き声と波の音
そして手にしてるのはーーー

「絶対に... 絶対に...」

金色に輝く、テナーサックスだった

「ジャズの巨人になる!」

埠頭に、彼女のサックスがこだまする

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1557390678

第1話
Stairway to the Stars

2015年4月13日 午後3時02分
鎮守府 間宮の食堂

「ねえ武蔵さん! 今度どこか一緒にお出かけしようよ!」

そう武蔵に持ちかけたのは彼女を慕う清霜だった
同席していた大和と朝霜は興味ありげに話かけた

「武蔵さんとでかけんのか! どこ行くんだ?」

「あら、水族館とかに行くの?」

「え? うーん... 場所は特に決まってなくて... いろんなところ行きたいなーって」

清霜は場所などは決めていなかったようだった、同じ時間を過ごすということに意識が行き特に考えていなかった

「...ならば清霜よ、今度ライブハウスに行かないか」

「ライブハウス...?」

「ああ、最近外でいい店を見つけてな よかったら一緒に来ないか?」

憧れの大戦艦からの誘い、しかも自分の知らない世界に連れて行ってくれる
このことだけで彼女は舞い上がってしまった

「いいいいいいんですか!?」

「はっはっはっ 今週末時間が合えば夜にでも行こうと思うんだがどうだ?」

「ぜ、ぜひ行かせてください!」

「よかったな清霜!」

「ふふ、大和たちもどこか行ってみる?」

「いいぜー! 大和さんなんかおすすめあんの?」

「ラーメン博物館」

「まさかの飯だった」

2015年4月18日 午後6時00分
ジャズバー「Nomad」

「おおーここが...」

目の前には自分の知らない世界へと通じる扉
それを武蔵と共有できるという期待で彼女の胸はいっぱいだった

「入るぞ」


ガチャ

ガヤガヤガヤガヤ...


(思ったより人いる...)

20代から60代まで、男女様々な人たちだいた
しかしその場にいた子供は彼女だけ、本当にここにきてよかったのかと一瞬彼女の脳裏をよぎる

「さ、席につこう ここでいいか」

真ん中のやや後ろの席、ここが一番よく聴ける場所だと武蔵は言う

「何か飲むか? ジュースとかはこっちだぞ 私も今日はジュースにしておこう」

「え、えっと... じゃありんごジュースで...」

「じゃあ私はジンジャーエールでも」

注文を待っている間武蔵は清霜がどこか落ち着かない様子であることに気づいた

「どうした、清霜よ 落ち着かないようだが」

「う、うん なんか落ち着かなくって...」

「ははは、初めて来るから緊張してるだけだ すぐに忘れるさ」

ウェイターが注文の飲み物を持ってきた

「ご注文承りましたりんごジュースとジンジャーエールでございます」

「ああ、ありがとう おや、髪型変えたのか?」

「ええ、昨日変えたばかり あら? その子は? はじめましてようこそNomadへ」

「は、はじめまして!」

「まあ妹みたいなもんだ、今日はちょっと一緒に連れてきたんだ」

「まあ! 今日はどうぞごゆっくり楽しんでいってくださいね」

「は、はい!」

午後6時30分

「お、始まるぞ!」

拍手とともにプレーヤーたちが舞台に上がる
ピアノ、ベース、ドラム、テナーサックス、トランペットのクインテット

「ワン、ツー、ワンツー」

ドラムがカウントを始める


バーバー バッバー!!


5人が一つのサウンドを奏でた


バラッバッバババー! パーーーー!


(すごい... なにこれ...)

初めての体験だった、皆が演奏したかと思えばテナーサックスだけが、今度はトランペット、そしてピアノベースドラムの掛け合い
音を、生で作り出していた


ウォーッ! ヒュー! パチパチパチパチ


ソロの度に歓声があがる


(こんなものがあったなんて...)


まるで音で会話しているようだった

そしてこの体験は彼女にある考えを浮かばせた



私もやってみたい





ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー

4月31日 午後3時20分
鎮守府 間宮の食堂

あの日以来清霜はどこか上の空だった
同室の朝霜も、食堂でよく一緒に甘味を食べる大和も武蔵もそれに気づいていた


「清霜、最近様子が変だぞ どうかしたのか?」

「そーだぜー なんか上の空ってかなんてゆーか」

「清霜ちゃん... 何か悩みあるの?」

「...」

「清霜?」

「ねえ武蔵さん」

「なんだ?」

「私...」

息を呑み彼女は言った

「ジャズやりたい」

「!!」

「はあ!?」

「えっ!?」

この返答には皆驚きを隠せなかった

「わたしね、この前の演奏見て思ったの」

「...」

「私もああなりたい、音で自由に表現したい! 世界一のプレーヤーになりたい!」

彼女は武蔵に真剣な眼差しを向ける
この目は本気だと武蔵は感じた、だからこそこう言った

「清霜、あの道はやめたほうがいい」

「えっ...?」

「お前の思っている以上に茨の道だ 何百人、いや何万人もその道を目指したが... 達成できるのはほんの数人だ」

「それでもお前はやりたいのか? 投げ出さないんだな? 途中で泣きつけないぞ?」

「私... あの音楽が好きになっちゃったの」

「ほう?」

「あの日以来頭から離れなくて、毎日聴くようになってそれで思ったの」

「私、ジャズ好きなんだって」

「...そうか」

「武蔵さん、私どうしたらいいいかな? どうやったら私はなれるの?」

「...清霜、今すぐ私の部屋に来い」

「へ?」

「いいもの見せてやる」

おもむろに武蔵は席を立ち部屋に戻っていった

「あっ! 武蔵さん待って!」

慌てて清霜も席を立ち追いかけていった


「...武蔵さんなに見せんだろ?」

「あのね朝霜ちゃん」

「ん?」

「実は武蔵は...」

午後3時32分
武蔵の部屋


「さて、確か持ってきてた筈だ...」

「お、お邪魔します」

「ん、あった! こいつだ」

そう言うと清霜の前に一つの大きなケースを出した

「ねえねえ武蔵さん、なにこれ?」

「開けてみろ」

「へ? う、うん」

ガチャ ガチャ ガチャ ギイ...

「!! こ、これって...!」

「ああ、そうだ」

清霜の目の前に現れたのはーーーー

「テナーサックス...!」

使い込まれていてなおも金色の輝きを失っていない
セルマーシリーズ2テナーサックス

「お前に託す」

「えっ! でもこれって武蔵さんの...」

「いいんだ、もう」

「もう...?」

「私はもう... いいんだ」

その目はどこか哀しみに満ちていた
なにがあったのか聞こうと清霜は好奇心に駆られたが、すぐにやめた

「ジャズが好きって言ったな」

「う、うん」

「だからお前にあげたいんだ、お前はきっと私よりもジャズを好きでいてくれる」

「武蔵さん...」

「なれよ」

「え?」

「世界一のプレーヤーに、ジャズの巨人になれよ」

「はいっ...! グスッ...! 頑張ります...!」

「はは、泣くんじゃない 可愛い顔が台無しだ」

「武蔵さーーん!!」



その日から清霜に「戦艦になる」と言う目標に並んで新たな目標が生まれた


『ジャズの巨人になる』


2017年3月18日 午後10時11分
鎮守府 埠頭

星が輝く時間、清霜はこの日も懸命に吹いていた

バーバー バラララララ

「ふう... あっ! もうこんな時間!」

「おーい清霜ー!」

「ん? あっ! 朝霜!」

「お前いっつもこんな時間まで吹いてたの?」

「うん!」

「サックスもらった日から?」

「そうだよ!」

「うへえ...」

「毎日吹いて、それで上手くなるの!」

「武蔵さんには教わってないのか?」

「最初教わろうと思ったんだけど... もう情熱を失ったから教えられないとかなんとか」

「なんか複雑なんだな」

「うん、だから独学 運指とか音の出し方とかメロディーとかも」

「...一回さ、聴いてみていい?」

「へ?」

「アタイ清霜の音、ちゃんと聴いたことなくって」

「...いいよ、何聴きたい?」

「アタイジャズわかんないからお任せで」

「うーんじゃあ... チュニジアの夜でいい?」

「いいぜ」

「いくよ」

「...」スウ


バーラバラバラ バーラバラバ
バーラバラバラ バーラバラバ

「...!」

(今の私の出せる音を...!)

(全部をぶつける...!)


バラララララバラッバー! バラババ


ひたむきに、真っ直ぐに吹いてきた清霜の音は朝霜の心を揺れ動かした

(すげえんだなあ...清霜って)

バーバラバラバラバラ

(そうか、真っ直ぐなんだ どこまでも)


ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー


「プハーッ! ハアハア... どうだった?」

「清霜」

「なに?」

「世界一になれよ、アタイは応援する!」

「うん!」

(ジャズかあ... アタイもいつかやってみたいな)

3月20日 午前9時00分
鎮守府 講堂

朝9時には鎮守府の全員が集まり朝礼を行う、今日も普段と変わらないそう思っていた
提督、この鎮守府における最高権限を持つ彼の口からあの言葉が出るまでは

「えーおはようございます、早速ですが今年の10月における民間との交流会について元帥閣下からの指令が下りました」

講堂内が若干のざわつきを見せる、一体何が来るのかと皆が思っていた
清霜と朝霜も疑問を抱いていた

「なんだろね? 一体?」

「さあ? アタイには分からん」


そして提督の口から思いもよらない発言が飛ぶ


「ビッグバンド、ジャズをやることになりました」


その瞬間 講堂内はどよめいた


「ジャ、ジャズ!?」

「元帥閣下は何を...」


周りの艦娘から驚きの声が上がる、当然である 楽器経験のあるものなどほとんどいないからだ


「えーともかく! そのための人員を募集したいと思います この作戦に参加の意思を示してくれる者はこの後執務室まで来るようにお願いします、以上」

ザワザワザワザワザワザワ

「私...やってみようかな」

「吹雪ちゃんやってみるっぽい?」


「出来るわけないよ... パスパス」

「私もー」


「フルート昔やってたしやろうかな...」

午前9時15分
朝霜と清霜の部屋

「なあ清霜は朝のアレ、やるのか?」

そう持ちかけたのは朝霜 楽器を、それもテナーサックスを清霜がやっているのだから当然の疑問だった

「私は...」

「やらない」

「はあ!?」

「ビッグバンドもたしかに好きだけど... やってる自分が想像できないの」

「そう言うもんなのか?」

「うん、単純に 想像できないから私はやらないかな」

「そっか... あのさ清霜」

「何?」

「アタイやってみようと思う」

「!!」

「この前の演奏聴いたらアタイもジャズやってみたくなんたんだよ」

「本当に!?」

「ああ! アタイもさ、あの世界に入ってみたい」

「じゃあさ! 朝霜!」

「ん?」

「お互い上手くなったら一緒にやろう!」

「...! いいぜ!」

「あ、清霜がサックスやってるのはまだ内緒ね」

「なんでさ? もう2年も隠してるけど言っていいんじゃねえの?」

「まだ秘密にしておきたいの」

「秘密?」

「そう、秘密 ジャズバーとかで吹けるようになるまでまだ修行したいの」

「そっか... いいぜ! 守ってやる!」

「じゃあその時まで! お互い頑張ろう!」

「ああ!」

※ビッグバンドのお話はこちらです
秋月「Strike Up The Band」
秋月「Strike Up The Band」 - SSまとめ速報
(https://ex14.vip2ch.com/i/read/news4ssnip/1497697402/)

2019年1月21日 午後6時35分
鎮守府 埠頭

「ふうー 喉乾いちゃった」

日も沈み、夜が訪れる頃になっていた
吹くのを止めればあたりに響くのは波の音だけであった

(もうこんな時間! そろそろ戻らなきゃ!)

「相変わらずやってるな、もうご飯だぞ」

「!! 武蔵さん!」

ちょうど戻ろうと思っていた矢先に武蔵が迎えにきた
たったそれだけだが彼女にとっては大きな喜びだった

「どうだ、サックスの方は」

「うん! 吹けるようになってきたよ!」

「だろうと思った」

「一緒に帰ろ! 武蔵さん!」

「その前に清霜、一ついいか?」

「なに?」

「...明日の午後9時 早霜のバーに楽器を持っていくといい」

「へ?」

「きっといいことがある」

「いいこと?」

「ま、お楽しみだな ご飯に行くぞ」

「あっ! 待って!」


その時の清霜には分からなかったが、彼女にとって大きな転換点となることはまだ知らなかった...

1月22日 午後8時56分
早霜のバー「Lazy Bird」

「えーっと本日貸切... ここでいいのかな?」

ドアの前に立ち中に入ろうか迷っていたが他ならぬ武蔵の言いつけともなれば彼女が動くのも容易かった

「よし! 入ろう!」

ガチャ

「こ、こんばんわー...」

「あら、いらっしゃい」


店内は音一つなく、そこにいたのは清霜と店主である早霜とーーー


「...」


グラスを片手に持つリシュリューだった


「朝霜姉さん、武蔵さんは?」

「今日は来ないわよ」

「えっ!?」


あまりに予想外なことに清霜は素っ頓狂な声をあげた
それを意に介さないようにリシュリューが言葉を発する

「...早霜、その子かしら?」

「ええ、そうよ」

「ふうん... えーと... キヨシモ? 楽器出してステージに来なさい」

「へ? は、はいっ!」

思わず身構えてしまう

(い、今から何やるの!?)

リシュリューがピアノの椅子に座り鍵盤の様子を確かめる

「いいわ、調律はされてる」

「この前弦を変えたばっかりよ」

「よろしい、さて清霜」

「は、はい!」

「吹きなさい」

「...へ?」

「なんでもいいわ、早く」

「え...」

「ええっーーっ!?」


第1話
おわり

第1話はここまで、まさか公式でジャズ漫画来るとは...
すごく楽しみです
ありがとうございました

おまけ
A Night in Tunisia/Sonny rollins
https://m.youtube.com/watch?v=oLCiiVei_8o

第2話
Blue Getz Blues(前編)

2019年1月21日 午後9時00分

「ふ、吹くって... 今ですか?」


リシュリューに突然告げられ困惑する清霜
しかしそれに対しリシュリューは全く気にも止めることなく続けた


「そう、今 吹きなさい なんでもいいわ あなたの好きな曲で」

「うう...」


困惑するのは当然だった、何しろ彼女は今まで一人で吹いており誰かと合わせることをしてこなかった


「私、いつも一人で吹いてて誰かとやるなんて...」

「私が合わせるわ、心配しないで で、何の曲?」


腹をくくるしかない、そう覚悟した
そしてその目には迷いが消えていた


「じゃあ... Moment’s Noticeを」

「いいわ、そっちがカウントして 合わせる」

「...わかりました」

「いつもの」

「へ?」

「いつもあなたが吹いてるように、ここを練習場所と思いなさい」

「...行きます」

深呼吸をする
自分の呼吸の音がいつもよりも大きく聞こえるように彼女は感じた
そして呼吸を整えカウントをする


「ワン、ツー、ワンツー」


バーッバッバッバーラバラッバー!!


(!! いいわね、音に厚みがあって艶がある)


1音目を聞いた瞬間からリシュリューは理解した
清霜はしてきたことは並大抵の努力ではないことを
そしてーーーー


(この子には... 芽が出ている)


清霜の方もいつもと違うことに気がついた


(すごい...! このピアノ私を支えてくれる! もっと...! もっと吹ける...!)


そしてテーマが終わる

「さあ! ソロ行きなさい!」

(よし! 行くぞ!)


バラバラバーッバ バーラバラバラバラバラ


(なるほどそれなりに研究しているようね、ここはコルトレーンのソロを真似てる)

(いける! よし! ここからは...!)


バッバラーバラバラバラバラ バラバラー バーババラバラ


(へえ一丁前に独自にソロを...)

(ドミナントにミクソリディアンスケール、トニックにドリアン... 完全にコルトレーンを意識してる)(※)

※スケールの種類のこと


バラバラバラバラ


(!! さっきのフレーズを転調!? きっちり転調したと見なしてⅤ-Ⅰの進行に合わせてる! まさかこの子コルトレーンチェンジ(※)を理解してるの!?)

※ コード進行が長3度づつ転調しているように見える進行、このMoment’s Noticeの一部でそれが使われている

(今度はドミナントの7thに半音上のディミニッシュ! 何者なのこの子!?)

(そう思ったら今度はコードを無視... いや違う! E♭7にB♭7をぶつけた! まさか!?)

(トニックにドミナントをぶつけるなんて... 面白い... ふつうはやらない、なのにこれは何?)

(それでも時々コード無視をしてる... だけど理論を超えた躍動感がある!)

(面白いわこの子! まるで恐れていない!)


清霜は無我夢中に、自分の全てを出すように吹き続けた
初めてやるセッション、それがこれほどのものとは まるで知らなかった

(すごい...! いける! もっと! もっと吹ける!)

(ありったけをぶつける...!)


リシュリューのピアノが全てを包み、清霜のサックスがそれを引っ張る
もう清霜に恐れはなかった


バーラババッバー バラバラバーーー!


(いいわ! もっと全力でぶつかってきなさい!)

(吹き続けたい! こんなに楽しいなんて!)



バーーーーー!!






「はあ... はあ... だ、出し切れた...」

「...コードも無視、はっきり言ってめちゃくちゃな音運び」

「え...」

「指回しもまだまだ、多分アンブシュア(※)もダメね」


※マウスピースに対する口の形


「うっ...」

「でも」

「でも?」

「あなたの音は心を動かせる」

「心を...?」

「そうでしょ、早霜」


ふと清霜が早霜に目をやると、彼女はーーー
泣いていた


「...今日の日のために、この店を作ったのかもしれないわ」

「さて、清霜」

「は、はいっ!」

「あなたジャズの巨人になりたいんですって?」

「...はい」

「よろしい」


一呼吸置きリシュリューが続ける



「私があなたにサックスを教える」

「...へ?」

「返事は?」

「へっ...? は、はい! よ、よろしくお願いします...」


清霜の巨人への一歩が踏み出された



第2話前編
おわり



コルトレーンチェンジの勉強したんですが付け焼き刃なので間違ってたらごめんなさい
とりあえず次からリシュリューにバシバシ鍛えられる感じになります、清霜は多分めちゃくちゃジャズ聴いてきたので色々フレーズ飛び出してきそうだなって感じがします
ありがとうございました

おまけ

Moment's Notice/John coltrane
https://m.youtube.com/watch?v=VV0nMkeXtr4

ちなみにこの曲はBLUE GIANT NIGNTという学生のみが応募できるブルーノートでライブできる権利を勝ち取るための企画がありその課題曲でした

なんかもう森きのこさんの方でまとめられとる まあいいか

(´-`).。oO(渋の方でもまとめてるのでよかったらどうぞ)

第3話
Blue Getz Blues(後編)

2019年1月22日 午後1時56分
早霜のバー「Lazy Bird」

バーのドアには「CLOSED」の看板
本来なら早霜以外は入れないはずだが練習のために鍵を渡されている
同じようにこのバーを練習場所にしている艦娘は何人かいると清霜は聞いたが具体的誰だかは聞いておらず、いつか会うのだろうと若干の期待を清霜はしていた
鍵を挿し、防音のドアを開ける 今店にいるのは清霜一人だった


「さてと... リシュリューさん来るまで音出ししておこうかな」


そう思った矢先に先ほどの防音扉が開く、リシュリューが店に入ってきた


「ちゃんと時間にいるわね、よろしい」

「あ! リシュリューさん! あの、今日はよろしくお願いします」

「いいわ、じゃあ楽器出して」

「はい!」


清霜が楽器を組み立て、リシュリューがピアノの椅子に座る


「あなたにはまず音を覚えてもらう、多分あなた譜面も読めないでしょ?」

「よ、読めません...」

「いいわ、じゃあこの音吹いてみて」


ポーン


(えっと... この音かな?)


バーーー


「違うわそれはAの音、今やったのはG」

「A... G...?」

「ああそこからね... じゃあドレミファソラシドはわかる?」

「一応は」

「じゃあ『ソ』を吹いてみて」


バーーー


「それがテナーサックスの『G』、ピアノだと『F』になるわ」


※ドレミファソラシドはCDEFGABと表記されます そしてテナーサックスとピアノでは同じドレミファソラシドでも音が違います
例えばテナーサックスでGを吹いてもピアノで同じ音を出そうとするとFを弾かなければいけません


「あなたにはまず音を覚えてもらうことから始める」

「音を覚える...」

「そう、あなたは今『G』という目印を見つけた、それを広げていくわ」

「はい!」

2019年2月5日午後2時02分
早霜のバー「Lazy Bird」


「さて、音はもう覚えたわね じゃあ今日からタンギング(※)を」

※舌で息を調節する技術

「はい!」

「じゃあメトロノーム鳴らすからそれに合わせて音を区切って」


カチカチカチカチ


(やるぞ!)

ババッバババーババババ

(あ、あれ? できない!?)

「一音一音に意識を向けすぎね、長い音を区切るイメージを持ちなさい」

「長い音を区切る?」

「そうね... うーん... 金太郎飴みたいな感じかしら?」

(リシュリューさんから金太郎飴なんて言葉が出てくるなんて思わなかった)

「ま、ともかく 長い音が元なの、それを意識しなさい」

「どんな感じになるんですか?」

「...サックス、貸しなさい」

「え? あ、はい」


楽器を清霜から受け取り楽器を構える
どこかその雰囲気は達人のようだった


「じゃ、テンポ150まであげて」

「えっ!?(ひゃ、150!?)」

「...」


カチカチカチカチカチカチカチカチ


(リシュリューさんサックス出来るの...?)


バババババババババババババババ


「!? す、すご...」

「こんなかんじで吹いてみなさい」

「あの! もっと何か吹いてください!」

「いいわ」


バラバラー ババラバラララ
バーーーラバラバラ


「!!」


たった数フレーズであったが清霜は感じ取った、この人は只者じゃない
どこか丸く優しい音だったがそれでも力強さを感じた


「すごい! リシュリューさんすごい! 何者なんですか!?」

「昔サックスをやってた、それだけよ」

「あのなんていうか... 丸くて優しい音、スタンゲッツみたい!」

「っ!?」

「すごく好きです! リシュリューさんの音! 私もそんな風になりたーー」


言いかけた瞬間リシュリューが遮る


「私じゃあダメなの」

「リ、リシュリューさん...?」


予想外の言葉に清霜は狼狽える
清霜はリシュリューの目からは悲しみ、怒り、無念、これらの言葉で言い表せないものが感じとった


「私になっちゃ... ダメ」

「それってどういう...」

「私もかつてジャズの巨人を目指したわ」

「リシュリューさんも?」

「私は... そう、あなたの言ったスタンゲッツに憧れてサックスを始めたの」

(意外、マイケルブレッカーみたいな音が好きかと思ってた)

「あの丸い優しい音... そして彼がよく吹いてたボサノヴァも私は好きになった」

「ボサノヴァ好きなんですか?」

「あら、フランス人は枯葉ばっか聴くわけじゃないわ」

「あ! いやそういうわけじゃなく...」

「冗談よ、話は戻るけど...」


どこか遠くを見るように顔を向けてリシュリューは語った

「私はプロを目指していた、世界で活躍できるような」

「だから私は名門の音大にも行った...」

「そして在学中レコード会社の役員の前で私は演奏する機会があった」

「そして演奏が終わった後こう言われたわ」


ため息を漏らしこう言った


『君の音は古すぎる』


「ふ、古すぎるって...!」

「ええ、そう言われたわ」

「どうして!? いい音なのに!」

「違うの清霜、私が長年やってきたのはただ巨人の足跡を辿っただけだったの」

「足跡を?」

「『君は場末のパブで演奏をしたいのか、第一線に立って世界で活躍したいのかどっちなんだ? 今の君の音はただの模倣に過ぎない』」

「...」


思わず清霜は黙り込む、培ったものを根底から否定されたリシュリューの事を思うと胸が締め付けられたからだ


「私はプロの道を諦めたわ... 私はなぞっていたに過ぎない、そう思ったの」

「そんな...」

「だから清霜」

「は、はい!」

「わたしにはなっちゃダメ」

「...」

2019年3月5日 午後2時00分
早霜のバー「Lazy Bird」


この時間のバーには二人しかいない
楽器を持った清霜とそれを見るリシュリュー
清霜の特訓は今日も続く

「よろしくお願いします!」

「じゃ、スケール(※)のテストするわ メジャー、マイナー(ナチュラルマイナー)、ハーモニックマイナーはまずは覚えてきたわね?」

※音階、音の並び

「た、たぶん...」

「はい?」

「お、覚えました!」

「よろしい、じゃ Fメジャー!」

バラララララララ

「次! Dマイナー!」

バラララララララ

「日和らない! 一瞬でも迷うな! さっきやったFメジャーと使うキー同じでしょ!(※) もう一回! 」

※平行調と呼ばれる関係にある、メジャースケールの6番目の指から始めるとマイナースケールになるのでFメジャーとDマイナーは使うキーが同じである

バラララララララ

「そう! それでいい! 次! Gハーモニックマイナー!」


ーーーーーーーー
ーーーーーーーー


「はい、今日はここまで」

「あ、ありがとうございました...」

「ま、覚えてはきたわね」

「頑張ります!」

「じゃあこの次はディミニッシュと教会旋法全部とオルタード...オルタードはとりあえず7thで、今言ったのをやってもらうわ」

「ひええ...」

「楽譜も読めるようになったし進歩はしてるわ、この調子で」

「リシュリューさんが褒めた...!?」

「失礼ね」

2019年3月23日 午後11時15分
鎮守府 埠頭


「よし! メジャーとマイナーのペンタ(※)も迷わなかったしブルーノートスケールも覚えたぞ!」

※ペンタトニックスケール 1、2、3、5、6度の音で構成されるスケール

「こんな時間だけど、ちょっとだけ... 暖かかくなってきたかな?」


この数年間清霜は四季をこの場所で感じてきた
春は桜が、夏は暑い日差し、秋は紅葉、そして冬には雪
この場所で彼女はいくつもの練習を積み重ねてきた


「あー明日は遠征かー... ううん! じゃあ帰ったらいっぱい吹くぞ!」


時間を幾重にも積み重ね、そして彼女はあることに気づくこととなる


(最後ちょっと練習してから帰ろう)


バーバララバラバラバラ


(よし! いい感じに指が動く!)

(いける! このまま!!)


その瞬間だった


ババラバラバラバラバラーーー!!


「!?」

(い、今の... 何?)


あまりの衝撃に思わず手を離す


「頭の中で思い浮かべた事とサックスが繋がった...?」


ついに彼女はサックスを自分の体の様に操ることができた

2019年4月8日 午後2時30分
早霜のバー「Lazy Bird」

ババババラバラバラバラー

(この子も楽器を手足みたいに操れる様になったわね)

(そろそろ頃合いかしら)


壁を超えた清霜からいくつものフレーズが飛び出してくる
リシュリューはそれを聞きあることを考える


ーーーーーーーー
ーーーーーーーー



「はい、じゃあ今日はここまで」

「ありがとうございました!」

「ところで清霜」

「何ですか?」

「そろそろあなたは誰かと合わせてもいい頃ね」

「合わせるって... まさか!?」

「そう、セッション」


思ってもいない単語が師匠の口から飛び出してきて清霜は驚きを隠せなかった
長年挑戦したかった事に、ついに挑める
だが一つの疑問が浮かぶ


「あ、でもリシュリューさん」

「何?」

「メンバーってどうすれば...」

「自分で探しなさい」

「え」

「ここ」

「へ?」

「ジャズバーよ? 何人プレーヤーいると思ってるの」

「あっ...」


自分以外のプレーヤーに一度もあったことがないし、そもそもこの時間以外は埠頭で吹いている彼女には会う機会が全くなかった


「そうね... 明日から毎日夜にここに来れば見つかるんじゃないかしら」

「うん! 探してみます!」


着実に、一歩一歩踏み出していく

2019年4月9日 午後9時21分
早霜のバー「Lazy Bird」

「し、しまった~! 練習に夢中で今日ライブあるの忘れてた!」

「えっと、今日は確か... 妙高さん(Tp)と摩耶さん(B)と愛宕さん(Drs)と羽黒さん(Pf)、栗田艦隊カルテットかあ」

リシュリューの言いつけ通り行く事に決めた清霜、開演は9時だったがすっかり過ぎてしまっていた
店のドアをそっと開け中の様子を伺った


パラパラー


(へえ、こんな感じ...)


そしてソロ回しが始まったあたりで何かがおかしい事に気づいた
ステージ上で言い争う声が聞こえる


「おい、いつまでつまんねープレーすんだ?」

「ちゃ、ちょっと摩耶! 今ライブ中よ!」

「姉貴は黙ってな、そろそろうんざりなんだよ! いつも似たフレーズ! 同じ展開! 挑戦する気はねーのかよ!」

「摩耶!」

「アタシはもう抜ける! 世話になったな」


摩耶が足早に楽器を抱え立ち去り会場がどよめく
出口に立っていた清霜のことは気にも留めなかった


「ごめんなさいね、あの子気難しい子だから...」

「同じプレーね... いや間違ってはいないわ、事実客席が埋まらなくなってきてる」


その言葉通り客席は半分ほどであった
おそらく昔はもっと居たのだろう


「姉さん...」

「同じことの繰り返しに私たちは満足していたのかもしれないわね...」

午後9時37分
鎮守府中庭


早歩きでウッドベースを背負いながら摩耶が中庭を通る

(あークソが! 腹たつ! 何で姉貴たちは変わってくれないんだよ!)

(毎日同じじゃ何も変わらねえんだよ! 客だって飽きる!)

「...」

「はあ...」

「だからって言い過ぎたな...」


楽器をそばに置き木に寄りかかる、明日のことも考えずに飛び出してしまいどう謝ろうかを考える


「明日からどうしようかな... アタシ、合わせる顔もない...」

「ねえ摩耶さん!」

「おわーーーっ!!??」


突然話しかけられ思わず声を上げる、そして清霜から思いもよらない言葉が飛び出す


「私と組まない?」

「...」

「どう!? どう!?」

「お前何言ってんだ?」


第3話
終わり

今日はここまで、リシュリューが言われた言葉は実際にプロの人がアマチュアのバンドに言い放った言葉です
古いものをなぞるだけならあなたは第一線には立てない、新しいものを作らないといけない
模倣は第一歩ですがそこからが本当の勝負になります

ありがとうございました

(ちなみに私は模倣すらできてねえ始末です)

ジャズSSってもしかしてニッチ過ぎましたかね...

レスがないものでなんか読んでる人居ないのかと思ってました... 好きって言って頂けるなら幸いです
精進します

第4話
High Maintenance



2019年4月9日 午後9時38分
鎮守府中庭


「へ?」

「いやおかしいだろ、いきなり組まないかなんて」


突然清霜から誘いが来たことに摩耶は驚きというより呆れていた
いきなり何を言い出したんだこいつは?
そんな目で清霜を見る


「えーだって摩耶さん今誰とも組んでないんでしょ? だから私とーー」

「あのなあ、あれは勢いで言っちまっただけで...」

「勢い?」

「うう... てかそもそもお前楽器やってんのかよ! まさか何もなしにーー」

「テナーサックス」

「あん?」

「私、サックスやってる!」

「はーんサックスねえ...(どうせへたっぴだろ)」

「じゃあ摩耶さん! 私の演奏聴いてそれで決めてよ!」

「お、おう...(何だこいつ? 自信あんのか?)」

いそいそと楽器を組み立てる清霜
灯りに照らされた楽器を見て摩耶は驚きを見せた


(こいつ... 相当やりこんでる...?)


そんな摩耶に意も介さず清霜はセッティングを終える


「じゃ、いい?」

「いいぜ、好きにやんな」

「じゃあジョンコルトレーンのMr. P.C.を...」



呼吸を整え、リシュリューに叩き込まれた基礎を思い出しながらゆっくりと楽器を構える
いま目の前にいる一人に認めてもらうために全力を出そうとしていた
静寂が消える


バラバラバラバラバーラバラッバーラーラ


「!!(こ、こいつ...!)」


あの使い込まれた楽器に相応しい音が清霜のサックスから飛び出してくる
かつての荒削りなものでなくより研磨され、洗練された音
そしてなおも人を圧倒させる音を...



ーーーーーーーー
ーーーーーーーー


「はあ... はあ... どうだった?」

「...一つ聞いていか?」

「うん、いいよ! 何?」

「何でアタシを選んだ?」

「摩耶さん言ってたでしょ、挑戦する気は無いのかって」

「お、おう...(見てたのかよ...)」

「だから選んだの」

「あん?」

「新しいこと、やろうよ」

「...!」



摩耶にとって思いがけない言葉だった
しかし心残りもあった



「そのことなんだけどさ...」

「何?」

「姉貴たちに酷いこと言っちまった、もともと姉貴たちスタンダードナンバーやるのがすごい好きで... アタシもそうだった」

「うんうん」

「だからアタシも一緒にやって楽しかった、でも2年前... 間宮さんの食堂で駆逐艦の連中がコンボ演奏してたろ?」

「あのビッグバンドやってる子達の?」

「そう、そこで確か朧とかがやってたやつ あれ見てジャズってこんな激しい音楽だったんだって思ったんだよ」

「ジャズってもっとゆったりとしてさ、落ち着いたもんだとばかり思ってた」

「あれ、すごかったよね!」

「だからアタシも新しいジャズやってみたくなった」

「あれ? そういえば摩耶さんっていつからベースやってるの?」

「10年」

「へ!?」

「意外とここいるんだよな、楽器やってたやつ」

「ビッグバンドの方には行かなかったの? まあ私も行かなかったけど...」

「意外と行かないもんよ、これが」

「ああ、話ずれちまったな ともかく姉貴たちに悪いことしちまったし、まだ本当に抜けるかは分かんねえ」

「え、じゃあ乗ってくれないの?」

「ああ、悪いな」

「うーんそっかあ...」

「まあお前の腕ならすぐ見つかるだろ、別にきにするこたあーー」

「せっかく見つかったと思ったのに...」

「うっ!?」


誰がみても今の清霜は不幸のどん底という表現がぴったりであろう
近寄りがたい、というより近寄ったら何か起きるかのような落ち込み度合いであった


「セッション... できるのかなあ...」

「お、おい! なんだよ! これじゃアタシが悪いみたいじゃねえか!」

「いいよ摩耶さん... 自分で探すから...」

「あーもうわかったよ! 一回! 一回だけだからな!」

「!! ほ、ホント!?」


かと思えば今度は幸福の絶頂にいるかのような輝きを見せた
側から見ればこの二人はとても気妙に見えたかもしれない


「ゲンキンなやつだな... じゃあその代わりなんだけどよ...」

「何!? 何!?」

「姉貴たちに謝るから、ちょっとついてきてほしいんだよ やってもらいたいことがある」

「うん! 清霜に任せて!」

(なんか急に心配になってきたぜ...)

午後10時00分
Lazy Bird 控え室

ジャズバーLazy Bird
早霜が秘密裏に建てたバーであったが今では多くの艦娘が利用している
数は多くはないがプレーヤーも居て多くの特別な一夜を作り上げてきた
しかし今日はそうはいかず悪い意味で特別になってしまった



ガチャ

「姉貴たち... いるか?」

「摩耶!」


声をあげたのは愛宕、この中で摩耶を一番心配していたのは彼女だった


「...今日のはどう言うことかしら」

「そ、そうですよ摩耶さん、急に抜けるなんて」


それに続いたのは妙高と羽黒、納得のいかない様子だった


「たしかにあなたの言う通り私たちのプレーは停滞してた、これは否めない... でも放棄するのはプレーヤーとしてどうなのかしら」

「それを謝りに来た」

「!!」

「謝ってすまねーかもしれねーけどさ、アタシは新しいことに挑戦したかったんだよ」

「新しいこと... ですか?」


羽黒が恐る恐る聞く
それに摩耶が答える


「そ、新しいこと そこでなんだけどよ... 入ってくれねーか?」

ガチャ


ドアを開けて入ってきたのはテナーサックスを持った清霜
摩耶が続ける


「今からこいつも入れてセッションしてくれねーか」

「清霜ちゃん...? あなたそれって...」

「うん、妙高さん 私もプレーヤーなの」

「...驚いたわ」

「アタシは、新しいことをやりたい 今からそれをみんなに伝えたい」

「...いいかしら愛宕、羽黒」

「私は構わないわ」

「だ、大丈夫です」

「二人ともいいみたい いいわ、やりましょう」

(頼んだぜ、清霜)



午後10時10分
Lazy Bird ステージ上

客のいないバー、居るのは早霜だけ
彼女は、ただ見守っていた


「よし... セッティングは終わった」

「こっちも出来たわよ~」

「で、出来ました!」

「...いいわ、ところで清霜ちゃん」

「何? 妙高さん」

「曲、決めていいわよ」

「じゃあ『A列車で行こう』で」

「いいわ、愛宕 カウントして」

「わかったわ」


緊張が走る
摩耶の言っていた新しいこと、それを今から清霜と摩耶は示さなければいけない


「清霜」

「なに、摩耶さん」

「新しいこと」

「...」

「見せるぞ」

「...オッケー!」

「ワン、ツー ワンツー」

パー パーパッパパラー


(音は重厚なのに鋭さがある! この子一体!?)


隣で吹いてる妙高はすぐにわかった、この子は手練れであると
一体どこまで積み上げればここまで行くのか想像ができなかった
テーマが終わり摩耶が囃し立てる


「よし清霜! ソロいけ!」

(よし!)


ババラバラッバー! バラバラバラ


(いいねえ! 見せつけてやれ!)

(よし! 手が動く!)


バッババラー! バラバラバー!


(いいわね! 引っ張ってく感じがいい!)


ドラムの愛宕も思わず釣られる


(つ、ついてかないと...!)


ピアノの羽黒は少し遅れ気味になる


(みんな引っ張られてる! サックスってこんな力強い楽器だったのか!?)

(楽しい! こいつ本当に楽しい!)


新しいことをやる、そう言っていた摩耶が一番驚いていた
そして摩耶は今までで一番たのしい、そう思いながらベースを弾き続ける




そして妙高のソロが始まる

(今度は私のソロ... この子に勝てるかはわからない、けどやってみせる!)



パッパパララー


手堅く、安定感のある妙高のソロ
しかし今日のことを思い出す


『いつも似たフレーズ! 同じ展開! 挑戦する気はねーのかよ!』


(そう、私は... 停滞していた)

(今日はそれを超える日!)


パパラー パッパラー


(くっ...! だめ! これじゃあいつもと同じ!)

(どうして...! どうして停滞するの!)

(姉さん、迷って吹いてる...?)


異変に気付いた羽黒であったがどうすることもできない、ただただ見守るしかなかった
しかし摩耶は違った


「妙高!」

(!?)

「考えずに吹け!」

(か、考えずに!? 何を言ってるの!?)

「好きな風に! 自分の好きな音出せ!」

(好きな...音?)

(自分の好きなように...)

(思うままに...!)


パッパラー! パパパラパラー!!


(!! 妙高さんのソロが急に!)


思わず驚く清霜
一瞬だけであったが妙高のソロに頭で考えたものでない、超自然的に湧き出てきたフレーズが飛び出した


(そうだ... 私、こう言うのがやりたかった!)


思わず笑みがこぼれる清霜、当の本人である妙高にそれを見る余裕はなかった
しかし一瞬、ほんの一瞬であったが巨人の片鱗を見せようとしていた



(今のは... なんだったの?)

(勝手にフレーズが飛び出してきた...?)


理論ではない、それ超えた音の運びを見せた






ーーーーーーーー
ーーーーーーーー

演奏が終わり摩耶が三人に話しかける


「どうだったよ、姉貴、妙高、羽黒」

「新しいことね... 面白かったわ!」

「一瞬だけど、考えずに思うがままに吹けたわ」

「わ、私は精一杯で...」

「アタシたちさ、こう言うのを今度からーーー」

「摩耶」

「なんだよ妙高」

「あなたは清霜ちゃんと一緒にやるのがいいわ」

「なっ!?」

「ちょ、ちょっと妙高!?」

「姉さん!」

「...どうしてそう思ったんだよ」


思わず聞き返す摩耶
当然である、いきなり清霜と組んだほうがいいと言われ困惑してしまった

「楽しそうだったからよ」

「アタシがか?」

「そう、清霜ちゃんのソロの時... あなた今までで一番幸せそうな顔してた」

「...」

「私は... 今まで先人たちが作ってきたフレーズをなぞることしかできない、でも清霜ちゃんはどう? 彼女は違う 清霜ちゃんが吹いてる時、本当に楽しそうな顔してた」

「いいのかよ...」

「いいの、私たちはもっと研鑽する それでもっと上手くなったら... その時またやりましょ」

「...ああ!」

「いいかしら清霜ちゃん、摩耶のこと頼んで」

「いいよ! 摩耶さんとならやれそう!」

「ふふ、そう言うことで... 今までありがとう 摩耶」


妙高からそう言われ思わず涙が出そうになる摩耶


「な、なんだよ! 別に寂しくなんかねーし...」

「ふふ、泣きそうになってるわよ 摩耶」

「るせーな姉貴! 泣くわけねーだろ!」

「あの、摩耶さん! またやりましょう!」

「羽黒も! ちくしょう... グスッ... 泣かせにくるんじゃねーよ...」

「うふふ♪ 可愛い妹ねほんとに」

「うるせーな!」


目をこする摩耶 かつてのメンバーは微笑ましくそれを見守っていた
そしてーーー


「摩耶さん!!」

「なんだよ清霜」

「これからよろしくね!」

「...おうよ!!」


新しいメンバーと共に旅立つこととなった



4月10日 午後6時00分
ジャズバー「Nomad」


「さてと、アタシたちはメンバーを増やさなければいけない」

「うんうん」

「だからここで探そうぜ」

「Lazy Birdでもよかったんじゃない?」

「いやそれがよー艦娘がLazy Birdじゃなくて外のライブハウスで演奏してるって噂あるからここにきたんだけどさ...」

「うーん...」

「ここじゃなかったな...」

「だねー メンバーみても一般人だけだったね」

「帰るか?」

「ううん、せっかくだし聴いていきたい」

「あっそ、じゃせっかくだし... !?」

「どうしたの摩耶さん」

「おいあそこのドラムって...」

「へ?」

「よ、よく見ろよ!」

「え、あれって...」


開演時間になり、MCがトークを始める


「えー今日は松田祐一クインテットの演奏を聴きに来ていただきありがとうございます」

パチパチパチパチ

「ちょっと先に連絡することがありまして今日はドラムの橋本くんがお休みで... 急遽代打で彼女に乗ってもらうことになりました、艦娘の榛名さんです どうか大きな拍手を!」


パチパチパチパチ



「まじかよ...」


第4話
終わり

今日はここまで

本編と関係ありませんが摩耶ってなんかこう反抗期終わりかけって感じで可愛いですよね
ジャズ研入ってる人がビッグバンドにいくケースはあまりみませんが逆のケースはうちのバンドではよくありました、多分コンボ演奏やってる人はそんなにビッグバンド興味ないんだと思います
ありがとうございました

おまけ
Take the A Train/Don Menza
https://m.youtube.com/watch?v=zADUXI7hlv8

やばい好きなビッグバンドが来日するのが決まってめちゃくちゃ嬉しい、5話書いたら露骨に宣伝します

(´-`).。oO(艦これのイベと大学が少し忙しいので来週に第5話あげます)

第5話
カンティーナ・バンド


4月10日 午後6時01分
ジャズバー「Nomad」


「あいつ... なんでここに...?」

「わかんないけど、急に代打で乗るくらいだから上手いのかな?」

鎮守府の外で演奏している艦娘がいる、そんな噂を聞き清霜と摩耶はライブハウスやジャズバーを探していた
そして偶然にも訪れたジャズバー、そこに居たのは榛名だった


「じゃあカウントお願いね」

「はい」


このカルテットのリーダーであろうテナーサックスの松田と名乗っていた男が榛名に指示を出す

「ワン、ツー、ワンツー」


パパーラー バラッバー


テナーサックスに続きトランベットも力強くテーマを吹いていた
ピアノとベースもそれにつられるように弾く
そしてドラムは...


「榛名さん、そつなくこなしてるって感じ?」

「ま、始まったばかりだし聞こうぜ」

「うん」


まだこの時二人は榛名の腕前に気づくことはなかった




(よし! 俺のソロだ!)


ピアノがソロに入る、しかしフレーズが堂々巡りになっていた

ポーンポポポポポロ


(... くそ! ダメだ! さっきからフレーズが同じになってる!)

(周りは何回もやってるかもしれない! けど俺にとっては初めてのライブ! 失敗するわけには...!)


これに真っ先に気づいたのが榛名だった


(石村さん、緊張で同じフレーズに... よし!)


それに気づくや否や叩き方を変えた
アクセントの位置を変えたり、フィルインを加えるなどをし変化を与えた


(さ、これでどう?)


これにピアノの彼は気づいた


(!! 変わった!? いや! こうすれば!)


ポポポポポポロン


(よし!)


窮地を脱することが出来た
そしてトランペットソロに入る

(よし! 今日は調子がいい!)


パッパラー!! パパパー!


(お、おい! あいつめっちゃ走ってるぞ!)


ベースが思わずつられる


(ああもう! ソロがうまくいったと思ったら!)


ピアノもつられそうになる


(リハの時より走ってる... 落ち着いてもらわなきゃ)


ドラムとして榛名はテンポを戻す事を考えた


ツタンタンタン タタタン


(戻って)

(!! やべえ! 走り過ぎてた!)


走ってることに気づき少し冷静になったせいか、フレーズも音も冴え渡る物に変わった


(あぶねえあぶねえ! 落ち着いていこう!)

(さて、次は私の番か)


テナーサックスのソロが響き渡る


(...いつもより支えられてる感じがする、何故だ?)

(安心して吹ける...!)


支えられているはずなのに何に支えられているかわからない奇妙な感覚を、彼は覚えていた
その正体に、誰一人として気づくものはいなかった

彼女を除いて


「...榛名さんだ」

「あん?」

「この演奏、榛名さんが支配してる」

「どういうことだよ」

「全てを支えてるの、だけど... それに気づけない」

「...」

「まるで、影みたい」



ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー



パチパチパチパチ


「にしてもあいつ、結構上手いな」

「誘ってみる!?」

「明日鎮守府でな、今行くと迷惑だろ」

「そっかあ... うん! じゃあ明日!」

「いい感じに揃って来たぜ...!」



4月11日 午前7時15分
鎮守府 間宮さんの食堂

朝の食堂は人でごった返しだった
訓練、出撃、遠征、この後の予定は様々だろう
清霜と摩耶はその予定よりも今はある事をするのが最優先だった

「榛名のやつ、どこいんだ?」

「この時間混むからねー... あ! いた!」

「あん? お、本当だ 行ってみっか」

「まって! まだデザート取ってない!」

「後にしろよ!」

「...」

(一人で朝ごはんなんて久しぶりね)


榛名は一人、どこか寂しそうに座っていた
金剛型の他の姉妹は出撃や夜間演習があったためまだ戻っていなかった


「えっとこの後の予定は確か0800から演習だけで2100から新宿のAvenue Cで演奏で...」

「おう邪魔するぜ」

「榛名さん隣いい!?」

「きゃっ!?」


突然の襲来に驚きを隠せなかった榛名、摩耶が構わず言葉を続けた


「なあ榛名、お前ドラムやってんだろ」

「え、ええ やってるけど...」

「アタシ達と組もうぜ」

「榛名さん! 一緒にやろ!」

「え...?」


あまりにも唐突で榛名は言葉が出なかった


「ねえ摩耶さん、もしかしたら唐突すぎたかな?」

「いいんだよこんくらいで! ぐいぐい行こうぜ! で、どうなんだ榛名」

「...別にいいけど」

「ほ、本当!? やったあ!」

「ただし」

「ただし?」

「ずっとはやらないわ」

「あん!? なんでだよ!」

「いろんな人とやりたいから」

言葉の意味がわからなかった清霜は思わず聞き返す


「それってどういうこと?」

「榛名は...好きにジャズをやって、それで上手くなりたいから」

「好きに...?」

「そう、特定の誰かとじゃなくて常にいろんな人とやっていきたいの それで楽しくやって、上手くなって行く」

「うーん...」

「ごめんなさいね」

「じゃあよ、もしアタシ達と一緒に演奏して気が変わったら?」

「...気が変わるかは分からないわ、でも 演奏はする」

「榛名さん」

「何? 清霜ちゃん」

「私ね、艦娘の仕事もあるけど本気でジャズやりたいの」

「本気で?」

「うん、世界一に ジャズの巨人になりたいの」

「...」

「昨日の榛名さんの演奏聴いて思ったの、一緒にやりたいって」

「聴いてたのね、昨日の」

「うん、摩耶さんも榛名さんも一緒にやれたらきっと目指せると思うの」

「目指す...」

「世界一になりたい」

「!!」

「私ジャズが大好きなの!!」


榛名は感じ取った、この目は本気であると


「わかったわ、それじゃあ早霜ちゃんのバーに1500に来て貰っていい?」

「うん!」

「いいぜ!」

「それじゃあ1500で、よろしく頼むわね」

午後2時50分
早霜のバー「Lazy Bird」

ガチャ

防音の扉を開け榛名が店の中に入る
すでに清霜と摩耶は店内にいたが店主である早霜は居ない
練習を希望するものに鍵を渡しており、早霜が居なくても自由に入ることができる



「あ! 榛名さん! こんにちは!」

「うーっす」


準備はすでにできていたようだった


「もう準備できていたのね」

「うん! 後は榛名さん待ち!」

「アタシ達とやるか決めてくれよ!」

「...わかったわ」


持っていたスティックケースからスティックを取り出す
ドラムの椅子に座りタムやシンバルのチェックを始める


「問題ないわ、何やるの?」

「何やる? 清霜?」

「Caravan、テンポはこのくらい」


そう言いながら足踏みをする、150ほどであった


「おっけ 榛名、それでいいか?」

「いいわよ」

「榛名さんカウントお願い!」

「ワン、ツー ワンツー」

バーー バララバラバラバー


(!! やっぱり! 噛み合う!)

(私の吹いてるフレーズに的確に... 合わせてくる!)


清霜は榛名に底知れぬものを感じた、只者ではないと


(まだきっと榛名さんは余力がある! なら!)


バラババー! バッババババラー!


(すごい! 全部包んでくる! 目立つわけじゃないけど的確に支えてくる!)


一方で摩耶も驚いていた


(こいつ、かなりやるな... アタシと清霜の音が前よりもカッチリハマる! 合わせてくるんだ!)


そして榛名もまた驚いていた


(清霜ちゃん... 面白い子ね、まるで恐れていない この子どんどんフレーズ湧いてくるのね まっすぐな子...)

(そして摩耶さんも力強いベース... 今までずっと一人で支えてきた、そんな感じね)

(今日は榛名も支えます!)


三人は、ジグソーパズルのピースが埋まるように噛み合った



ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー



「...どうだった榛名さん」

「アタシ達、割と良かったと思うぜ」

「...」


清霜達の言葉に榛名は少しの迷いも見せることなく告げた


「ごめんなさい」


二人は思わず面を食らう


「え...?」

「なっ!? なんでだよ!」

「...やっぱり誰かと組む気は起きないの」

「起きないって...」

「榛名は... 自由に、いろんな人とやる、そう決めてるの」

「どうしてなの?」

「ジャズって自由な音楽でしょ? だから自由であるべき、そう思って榛名はドラムを叩いてるの 誰かのためじゃなくて、結局自分が満足するために」

「榛名さん」

「何?」

「榛名さんは自分が満足するためにやってると思えないの」

「え...?」

「だって、榛名さんのドラム すごく優しいんだもん」

「優しい...?」

「うん、みんなのために叩いてる 自分勝手な人に叩けるドラムじゃなかった そんなこと言ったら私の方が自分勝手だよ、私は自分の好きに思うがままに吹いてるから」

「...」

「みんなのために、榛名さんはやってる 人のためにやってるよ」

「人のために...」

「でも、榛名さんがやらない理由もわかったから私は止めない」

「お、おい! 清霜!」

「引き止めてもいいものはできないから、私は止めない」

「...こめんね清霜ちゃん、摩耶さん」

「別に平気だよ!」

「納得してんじゃ、こっちは止めようがねえよ」

「...ごめんなさい」


そう言いながら榛名はバーを去った
振り返りそうになったが、寸前で彼女はやめた


「おい、本当にいいのかよ」

「引き止めてもしょうがないよ、別の人探そう!」

「...そうだな」

午後11時00分
ジャズバー Avenue C


榛名が今日乗ったバンドの演奏が終わり、彼女は帰る準備をしていた


(今日は終わり、帰ろう)


そこに同じバンドのメンバーの会話が聞こえてきた


「今日のテイクどうよ?」

「覚えてないな、今日は退屈だった」

「おいそんなこと言うなよ! それよりも今日はライブよりもみんなで飲みに来たんだろ?」

「はは、そうだったな あ、ドラムのあの子どうすんの?」

「あの可愛い子? どうせ来ないんじゃないか? なんかよそよそしかったし」

「だな、埋め合わせだったし 別にいいか」

「あーあ、客も渋かったしさっさと飲むぞ」



「...」

(帰ろう)

午後11時20分
電車内


「...」


榛名は電車に揺られ帰路についていた
そして清霜の言葉を思い出す



『私ね、艦娘の仕事もあるけど本気でジャズやりたいの』

『世界一になりたい』

『私ジャズが大好きなの!!』


「...」

「ジャズが好き、ね...」


4月11日 午前7時01分
鎮守府 間宮さんの食堂


「ドラム、見つかんねーな」

「ピアノも探さなきゃねー...」


食堂で悩む二人、そこに...
榛名がやってきた


「ここ、いいかしら」

「あれ? 榛名さん?」

「なんだよ、冷やかしか?」

「榛名も一緒にやるわ」

「!!」

「なっ!?」


思わず驚く二人、摩耶が理由を聞く


「なんで急に思ったんだよ?」

「ジャズに... 真摯だったから」

「真摯?」

「そう、榛名も本気でやりたくなったの」

「本当!?」

「二人を見て思ったの やっぱり、本気でジャズやりたいって... ジャズ好きだから」

「やった! やったね摩耶さん! 榛名さん! これからよろしく!」

「何があったかは聞かねえけど、よろしくな」

「ええ!」

同時刻
間宮さんの食堂


「うう~ やっぱり話しかけるなんて無理だって~」

「Gamby! 大丈夫! 私たちがいるから!」

「そうよ! 話しかけてみなさいって!」

「うう~...」


清霜達の後ろにGambier Bay、Samuel B.Roberts、Johnstonの三人がいた
なにやら話しかけようとしているが一向に進まない様子だった


「ラチがあかないなあ... よし! Hi! 清霜!」

「あっ! Sam!」


しびれを切らしたのかサムが話しかけそれに清霜が答えた


「うん? あっ! サムちゃんおはよう! どうしたの?」

「さ、Gamby! 言ってみて!」

「う、うう~...」

「? どうしたのガンビーさん」


ここまできたらもう後戻りできない、意を決してガンビアベイは言った


「あ、あのっ! 私! ジャズやってみたいんです! 私に教えてください!」

「へ...?」


しばしの沈黙の後摩耶が言葉を発する


「お前何言ってんだ?」

「AAAAGGGHHH!! 栗田艦隊!」

「今更かよ!」



第5話
終わり

今日はここまで
ジャズは楽しくやるのもアリだし楽しいからこそ本気でやるのもアリだと勝手に思ってます
ジャズって楽しいですよ

露骨な宣伝

ゴードングッドウィンの率いるビッグバンド、Big Phat Band来日決定! Web予約は6/18 電話予約は6/21から!


http://www.bluenote.co.jp/jp/sp/artists/gordon-goodwin-big-phat-band/


The Jazz Police
https://m.youtube.com/watch?v=SV1juxVlpic

High maintenance
https://m.youtube.com/watch?v=Y1KKwk5JWQg

露骨な宣伝その2

ビッグバンドの神様とも言われるカウントベイシー率いるカウントベイシーオーケストラが来日、スウィングジャズが好きな方は是非


http://www.bluenote.co.jp/jp/sp/artists/count-basie/


In a mellow tone
https://m.youtube.com/watch?v=-0v0RJqpu0g



(´-`).。oO(ちょっと裏話ですが摩耶はチャールズミンガス、榛名はシャドウウィルソンをちょっとだけイメージしながら書きました)

第6話
Three And One(前編)



4月11日 午前7時01分
鎮守府 間宮さんの食堂


「やっぱり話しかけるんじゃなかったやっぱり怖いし無理い~...」

「失礼だなお前!」


清霜達に話しかけてきたガンビアベイ、勇気を出したものの怖さの方が上回ってしまった
ジャズをやりたいと言う言葉に清霜は反応した


「ねえガンビーさん、ジャズやりたいの?」

「へ? う、うん... あ、あの清霜がサックスやってるの知ってて... そ、それで...」

「えっ!? 私まだお客さんの前でやったことないよ! なんで知ってるの?」

「あのね、この前鎮守府で迷子になっちゃって...」


思い出すようにガンビアベイは続ける


「その時音が聞こえたの」

「音?」

「うん、力強くて... どこか人を惹きつけるそんな音... 誰かいるのかなって思ってそっちに行ったら... あなたがいて」

「見られてたんだ...」

「その音聞いて、私もジャズやってみたいって!」

「でもそれ言うまで2週間はかかったよね」

「もう! Sam! 言わないでよ~!」

「私の音で始めたいって思ってくれたの!?嬉しい! じゃあガンビーさんも一緒にやろうよ!」


清霜の中で感情が込み上げていた
私の音でジャズを始めたいと思ってくれた、早くいろんな人の前で吹きたい、不思議な高揚感に包まれていた

(やっぱりこいつ『特別』なんだな)

(こいつの音は... 人を動かせる、そこらのプレーヤーとは格が違う)


摩耶はそう考えた後ガンビーに疑問を投げかけた


「ところでよ、お前ジャズやるって楽器何やるんだよ」

「へ? あ、まだ何も...」

「お前なあ... ジャズやりたいとか言ってるのになんも考えてねえのかよ」

「ひっ! ごごごめんなさい!!」

「あたしはこんな奴と...」


遮るように清霜が言った


「別にいいじゃない」

「はあ?」

「へ?」

「なんで? 最初は誰だって知らないし、やってみたいって気持ちからジャズ始めてもいいじゃない」

「でもよお...」


榛名もまた制するように言う


「榛名もいいと思うわ」

「お前まで!」

「ただし、本気でやってもらうわ」

「ほ、本気で ですか...?」

「そう、最初は下手でもいい でもその分本気でやってもらうわ それでいい? 清霜ちゃん、ガンビーさん?」

「うん! いいと思います!」

「は、はい!」

「ね、いいでしょ 摩耶さん」

「はあ... わかったよ、ただし! ついていけないならやめてもらう! アタシ達は上目指したいからな」

「ひ~... が、頑張ります!」

「ねえ! ガンビーさんにピアノやってもらおうよ!」

「ピアノ!? 誰が教えんだよ!」

「あっ...」

「アタシは教える気ないからな、独学でやってもらう」

「ど、独学!?」

「ま、どうせ無理だろうけ...」

「や、やります!」

「おう!?」


思わず声を出して摩耶は驚いた、ジョンストンとサムもまた驚いていた
それに対し清霜と榛名はどこか微笑んでいた

「ちょ、ちょっとガンビー! 大丈夫なの!?」

「そうだよ! 大丈夫なの?」

「サム、ジョンストン 私なら大丈夫 やってみる!」


こんなガンビーはみたことない、そんな顔をする二人だった
いつもは無理無理という彼女、しかし今回彼女は逃げなかった
そんな彼女をみて摩耶はあることを思いつく


「そうか... いいぜ、じゃあ宿題出してやる」

「ほい、これ 譜面」

「へ...?」


https://i.imgur.com/9OGpxOS.jpg
引用元 http://jazzpiano.space/2018/06/10/post-217/


「あの、摩耶さん... 音符の他にあるこのアルファベットってなんですか?」

「コード」

「こ、こーど...?」

※コード 和音のこと、ルート音(根音)を基準に音を重ねることによって音に厚みが生じる

聞いたことのない単語に彼女は頭をひねった

「簡単に言うと和音、音重ねてる」

「う、うん...?」

「書いてある音符が主旋律(メロディー)、でコードがバッキング(伴奏)、2週間でアタシ達に合わせられるように弾けるようになってこい」

「へえ!? に、2週間!?」

「ああそうだ、それでお前の本気をはかる」

「そ、そんなの無理...」

「じゃ? やめるか?」

「うう... い、いや! やります!」

「よーしそれでいい!」

「榛名さん、摩耶さんなんかノリノリだね」

「ふふ、そうね」

「ツンデレって言うのかな?」

「おいそこうっせーぞ!!」


本気でやることを条件にバンドの加入を許可されたガンビアベイ
第一歩を踏みだす
三人と一人が、一つになるように



第6話
終わり

一旦早めに区切ります、次回はガンビーがすごく頑張る回です(情報量が多いので区切りました)
2週間でコード覚えたりは大変ですが(かなり)頑張れば多分できるかもしれません
ガンビーならきっとどんどん吸収して成長してくれるかなと思います
ありがとうございました

(´-`).。oO(私も素人ですが何か質問あったら受け付けます)

おつです
楽器できない勢からすると、二週間でコードとか覚えて且つ、指も動かせるようになるって無茶苦茶ハードなら気がする…
艦娘さんたちも仕事は普通にあるだろうし…

ちなみにサムやジョンにジャズしてもらうとしたら、楽器は何を担当させたいです?

>>85
正直に申し上げますが2週間でやるのはかなりの無茶ぶりです、摩耶はそれを承知でどこまで出来るかをはかってます
セッションは習うより慣れろが割とあるのであえて茨の道を歩ませました
私がいたバンドも楽器始めてちょっとの人にソロ合宿中に作って最終日に発表しろ という無茶振りがありましたが、おそらくそれ以上の無茶振りな気がしました

サムとジョンストンにやらせたい楽器となると、もし上達したら
サムはトランペットでこんな感じで吹いてそうなイメージがあって(サドジョーンズ)
https://music.apple.com/jp/album/three-and-one/159415204?i=159415415

ジョンストンはベースでこんな感じで弾いてるイメージがなんか勝手についてます(ヴィクターウッテン)
https://m.youtube.com/watch?v=fFzZXvivo4c


あと流石にコード全部は2週間は無理なので今回課題に出したCandyに出てくるコードを覚える感じになります、まず感覚をつかむことが大事です
こんな感じでセッションは進むんだって事で

(´-`).。oO(次のお話のネタバレになりますがこのお話の摩耶ちゃんはツンデレですので割と助けてくれます)

ちょっと大学の方がやばいので更新来週になります

テストとライブが被って更新遅れました... 再開します
今回割とがっつり音楽理論について触れてますので何かあったら質問をしていただいてもかまいません

第7話
Three And One(中編)


4月12日 午後9時00分
バー「Lazy Bird」


ガチャ


「お、おはようございます...」

「あらおはよう、今日は非番かしら?」

「あ、早霜... おはようございます」

朝のLazy Bird 今その場にいるのはガンビアベイと早霜の二人だけであった
昨日は演習などで練習を始めることができず今日から練習をすることとなっていた
しかし大きな不安も抱えていた


「うう~... 本当に一人でできるのかな... やっぱり無理...」



そうこぼす彼女の前にあるものが目につく
ピアノの椅子の上に紙の束が置かれていた


「これ... なんだろ?」

「見ればわかるわ」

「へ?」

手にとって確かめてみる

「!! これって...!」

「ピアノの練習用の資料よ」

「ええっ!? どうしてそんなものがここに!?」

「さあ...? 誰か... 妖精さんが作ってくれたんじゃないかしら」

「これすごい... いっぱい書いてある」

「あとはそれを活かすかどうかはあなた次第よ、がんばって」

「...頑張ってみる! よし! やろう!」

(さて、摩耶さん 約束は守ったわよ でもここまでしてあげるならいってもいいと思うのに)




同時刻
演習場


「あー...」

「ま、摩耶さん大丈夫?」

「おう清霜... 昨日ちょっと徹夜しちまってよ...」

「すごい体調悪そう...」

「ね、ねみい...」




午後9時02分
バー Lazy Bird



「なになに...『ジャズピアニストに欠かせないのがバッキング それをするためにまずはコードについて学びましょう』」

「そういえば色々英語が書いてあったけど... 最初のいーふらっと... えむせぶん?(E♭M7) とかのことだっけ? なんて読むのかわかんないけど」


『コードを覚えるためにまずはスケールという概念を覚えましょう』


「すけーる...?」


「えーっと『一番最初に覚えるのは メジャースケールです』」


https://i.imgur.com/6JjUYMu.jpg


『メジャースケールとは全音 全音 半音 全音 全音 全音 半音の一定の間隔で音が並んでいます この図で言うとCメジャーは CDEFGAB の順番で並んでいます』

※ざっくりいうと全音が鍵盤二個分、半音は一個分飛ぶ

「ふんふん」


『ではこれはCからだけなのかというと実はCからB♭まで12個の鍵盤全てでこの間隔は使えます』


「あ、そうなんだ...」

『では今回はE♭を例に見ていきましょう』


「あ、ちょうどさっきでてきたE♭だ」


『E♭から始めてさっきの間隔を考えると...』

https://i.imgur.com/X07yyrh.jpg


『図のようにE♭ F G A♭ B♭ C D と並びます これは12個のキーすべてに応用できます』


「おおー... でも覚えるの大変そう...」


『そこで覚えるためのコツは黒鍵の位置と数です』


「黒鍵の位置と数?」


https://i.imgur.com/yGo8bSx.png


『譜面をよくみると左側に♯や♭が何個か付いていることがあります、Gメジャーでは♯が一個、Fメジャーでは♭が一個付いています しかしこれには法則があります』

『まずは♯を見ていきましょう 一個増えるたびに始まりの音がC G D...とよくみると音が5度(鍵盤7個分)の間隔で最初の音が変わっています』


「本当だ...」


『そして♯がついて変わる音も注目してみましょう、Gメジャーの時に使う♯の音はGの半音下のF♯です』

『Dメジャーの時はさっきのF♯に追加でDの半音下のC♯をつかいます』


「あ! もしかして!」


『♯が増えるときは、さっきまで♯がついてた音に加えてそのスケールの始まりの半音下の音を使います』


「そっかどんどん重ねていくんだ...」

『では♭はどうでしょうか ♭が1個つくのはFメジャースケールです FメジャースケールはBにフラットがついて F G A B♭ C D Eの並びです』

『♭2個はB♭メジャースケール さっきはBに♭がついていましたね つぎのスケールの出発点はそこです』

『そして♭はさっきのFの全音下、鍵盤を見ながら確認してください、E♭を使います』

『♭が3個、さっきのE♭が出発点 そしてB♭の全音下のA♭が使われます』


「これも積み重ね!」


『このように♭がついた音がつぎのスタートで♭を追加する位置は前のスタート地点の全音下となります』

『なのでスケールを覚えるときはスタート地点と使う黒鍵を覚えましょう』


「頑張って覚えよう... ! ううでもまだ続きがいっぱいある...」


『今日はここまで!』


「あ、あれ?」


『まずはゆっくり! 時間はかかってもいいのでスケールを弾けるように練習してみましょう!』


「...そうね! ゆっくりやっていこう! がんばろう!」



自分を奮い立たせるガンビアベイを早霜は見守っていた



(摩耶さん焦らないようにゆっくり指導するつもりね)

(さて、あの人は伸びるかしら...)

4月16日 午前9時30分


「よし! ゆっくりだけど... なんとなくは覚えた! つぎはコード!」


『ではスケールを理解した上でコードというものを考えてみましょう』

『スケールは特定の音の並びということがわかりましたね、数え方もあります これも頭に入れましょう』


https://i.imgur.com/Q7ynTPX.jpg



『Cというコードが出てきたらCメジャースケールの1度 3度 5度、つまり C E Gを弾きます』

『Cm(Cマイナー)というコードが出たら3度の音を半音下げて C E♭ Gを弾きます』

『この3和音の事トライアドと言います』


「やっと意味がわかった...」


『しかしジャズではほとんどこのトライアドは出ません』


「えっ」


『実際に出るのは7(セブンス) M7,△7,Maj7と書かれたメジャーセブンス、m7,min7,-7と書かれたマイナーセブンスなどがよく出てきます』


「えっ ええ!?」

『7は 1 3 5 ♭7 M7は 1 3 5 7 m7は1 ♭3 5 ♭7が構成音です』

『では今回はCandyという曲を例に見てみましょう』


「あ、ちょうどこの曲...」


『最初に出てくるのはE♭M7です、では構成音はなんでしょうか?』


「えっと1 3 5 7だから... E♭ G B♭ Dかな?」


ボーン


「あ...それっぽい響き...」


『あなたは今初めてコードを弾くことができました、その調子です』


「わ、私... 弾けたんだ...!」


『次に出てくるE♭m Dm7も同様に弾けます』


「よし! わかってき... あれ? なにこれ?」


『次にD♭dimと書かれたものが見えるはずです、これはなんでしょうか?』


「??」

『これはディミニッシュと呼ばれるもので短三度(鍵盤3つ分)づつの音を使っています、dim,○などと表記されます』

『実はdimには3種類しかありません』


「へ?」


『dimは短3度の関係にあると言いました Cdimは C D♯ F♯ A、D♯dimはD♯ F♯ A C 実は構成音が同じです』


「あっ!」


『なので覚えるべきはCdim C♯dim Ddimの3つで済みます』


「なるほど...」


『さっきのD♭dim、つまりC♯dimは構成音はC♯ E G B♭です』


「こうかな?」


ボーン


「な、なんか不安定な響き...」


『あとはハーフディミニッシュと呼ばれるものもあります、m7♭5,øと表記され構成音は 1 ♭3 ♭5 ♭7、時々出てくるので出てきた時焦らないようにしましょう』


「これっていちいち数えるのできないよー...」


『さてここまではコードの意味を教えましたが... はっきりいって数こなして暗記したほうが早いです』


「えっ」


『今回課題になっているCandy、これのコードをまずは弾けるように練習してみましょう』


「う、うーん...」


『この時重要なのはコードを見て弾けるようにする事です、音符を書き込んで覚えるのはNGです』

『今日はここまで! 頑張れ!』


「...ところでなんでこれ書いた人Candy課題なの知ってるんだろ...?」



第7話
おわり

一旦ここまで、ガンビーと学ぶ音楽理論の基礎って感じでお送りしました 私も今勉強中です...
ありがとうございました、質問などありましたらどうぞ

言い忘れました次回はテンション(コードに付け加えてさらに上の音を追加する事)と代表的なコード進行について一応応用編としてお話しします
この辺は今回Candy弾くだけなら要りませんが今後のためにって事で一応ガンビーに学ばせたいなと思いました

(ガンビーがちゃんと勉強してますよ!って事の説得力持たせるために一応理論のお勉強シーン入れたんですけど読者を置いてきぼりになってないか心配になってきた)

第8話
Three And One(後編)

4月19日 午後9時10分
空母寮ガンビアベイの部屋


「ふー演習終わった... あれ? 荷物が届いてる? あっ!」

「も、もしかして!!」


大きな箱を抱え急いで部屋に入るガンビアベイ
彼女は大きな買い物をしていた
部屋に入るとプレゼントを待ちわびる子供のように目を輝かせながら彼女は箱を開けた


「つ、ついに買っちゃった...! 電子ピアノ!」


Lazy Birdのピアノは一台しかなくまた他のプレーヤーもくるためずっとそこで練習するわけにはいかなかった
そこで彼女は大きな決心をし電子ピアノを買うに至った


「もう引き返せない...! あとは練習するだけ!」

「よし! まずはコードを弾けるように練習しなきゃ!」

午後11時56分

「こんな遅い時間だけど... 明日の演習の連絡しなきゃ」


大鷹がガンビアベイの部屋の扉の前に訪れる
明日の演習の内容が変わったため同じ演習メンバーの大鷹がそれを伝えにきた
扉をノックする

コンコンコン

「ガンビーさん? 起きてますか?」


返事はなかった


「寝ちゃったのかな...? でも明かりは付いてる...」

「入りますよ?」


ガチャ


「ガンビーさん...?」

「Cm7... F7... B♭... B♭7...」

「!?」



ヘッドホンをしながらガンビアベイは懸命にピアノを弾いていた
ここまで集中している彼女を大鷹は見たことがなかった
声をかけていいのか少し迷ったが決心して声をかけた


「が、ガンビーさん!」

「へ!? わあ!? び、びっくりした...! ノックしてくださいよ...」

「したんですけど返事がなくて... 明かりがついてるからまだ起きてるのかと」

「あ... そっかヘッドホンしてたから...」

「ピアノ... ですか?」

「うん、ちょっと始めようと思って」

「そうだったんですか」

「ジャズ、やってみたくなったんです」

「ジャズを?」

「はい! 初めてジャズ聞いた時...すごい衝撃で、それで自分もやってみたくなって」

「すごい行動力ですね...」

「へへへ...」

「私、音楽はよく知りませんけど ガンビーさんの事応援します!」

「ほ、ほんと!?」

「だって、なんでも一生懸命になれるってすごいことじゃないですか さっきの集中っぷりみて思いました、ガンビーさんならできます!」

「ありがとう! 頑張る!」

「あ、それで本件を話したいんですけど...」

4月20日 午前9時30分
ガンビアベイの自室


「えーっと『今日はテンションについて学びましょう』」


『テンションとはコードトーンの他に自由につける音のことです』

『7には9 13(11はダメ!) M7には6 9(これも11はダメ!)m7には9 11(13はお好み)』


「なんで11はダメな場合があるのかな?」


『なんで11がダメなのか、と思いましたか?』


「なんでわかるの!?」


『11は鍵盤のどこかを考えてみましょう、高さは違いますが4度と同じです』

『これが7とM7の構成音である3度と半音の関係にあり音がぶつかって不協和音になります、実際にC7と11度を弾いてみてください』


「え、えっと...」

ボウーン

「う、うわ...」


『このように非常に気持ち悪い音になります、なのでコードトーンと半音ずれた音はアボイドノートとも呼ばれます ソロを取る際は覚えておきましょう』


「なるほど... ってそういえば左手全部使うの手の大きさ足りないよ...」


『前回言い忘れましたが基本的にピアノはルート音、つまり1度の音は弾きません」


「へ」


『なぜならベースがルートを弾くためです』


「それ先に言ってよ~!」


『なので左で1度を除いたコードトーン、右手でテンション 又は左でコードトーンとテンション、右手でメロディを弾く場合があります』


「なるほど...」


『では実際にコードトーンとテンションを弾いて一曲通してみましょう! 余裕があればメロディも!』


「よし! 頑張ろう!」

4月21日 午後3時01分
ガンビアベイの自室

「ふう今日は早く終わってよかった... えーっと『代表的なコード進行を勉強しましょう』」


『ジャズには2-5-1と呼ばれる基本的なコード進行があります』

『またまたCandyを例に見ていきましょう、調はB♭ですね Cm7→F7→B♭という進行があります』

『B♭を基準に考えるとCは2度、Fは5度になっています』

※ 重要なのは2度はマイナーセブンス、5度はセブンスになっていることです ダイアトニックコードで検索

『今回Ⅰ7ですが、Ⅱm7→Ⅴ7→ⅠM7という進行はかなり出てきます、全部のキーでできるようにアドリブを取る際もこの進行を意識するといいでしょう そうすると12×3=36のコードを覚えられます、さらに手を動かす練習にもなります』


「が、頑張ろう...」


『次にアドリブについてです、これは習うより慣れろの部分が大きいです』

『なので... Candyのコードを弾きながらB♭メジャースケールの音だけを使って弾いてみてください』


「へえ!? 無理無理!!」


『がんばれ!』


「だからなんでこの人私の考えわかるの!?」

4月23日 午後10時20分
バー Lazy Bird


「なあ... あいつうまくやってるかな」


榛名と清霜と曲の合わせをしていた摩耶
ガンビアベイの様子が気になっていたようだった


「ガンビーさんかしら?」

「...ああ」

「そんなに心配なら一回見てあげたらいいのに、練習資料もあげたんでしょう?」


榛名の言葉にすこしばつが悪そうな顔をした


「...そうはしてやりてえけどさ、あいつが自分でやったってのが大事なんだよ 教えるのはできるけど、学ぶのは自分だ」

「それもそうね...」

「本当にやりたいなら、結局は自分でどうにかするしかねえんだよ」

「うーん...」

「なんだよ清霜」

「摩耶さんってやっぱりツンデレなの?」

「な!? ば、ばっきゃろう!! んなわけねえだろ!!」

「榛名さん、あれ図星だよね」

「ふふ、そうね」

「あーもうクソが! さっさと練習戻るぞ!」

「はーい」

4月24日 午後11時39分
ガンビアベイの自室


夜になり静まり返った空母寮
その一室では打鍵音だけが響いていた


「よし...! コードは弾けるようになった...! アドリブは...」

「うう... やっぱり怖い...」


ピアノを初めて2週間弱、わずかな時間ではあるが真摯にピアノと向き合っていた
アドリブは彼女にとって大きな壁であった


「B♭で... アドリブ...!」

4月25日 午後10時30分
バー Lazy Bird


本日は貸切となっているLazy Bird
扉の前にガンビアベイが立っていた


「ううやっぱり怖い... 練習してきたけどほんとにできるかな...」

「おっす、ガンビー」

「わあ!?」

「そんな驚くなよ... 二人はもう中いるぜ 入りな」

「あ、あの...」

「ほら、行くぞ」

「ひゃあ!?」


午後10時40分

(す、座っちゃった... ピアノの椅子に...! 私これから弾くんだ...!)

「さて... ガンビー、練習の成果見せてもらうぜ」

「は、はい...」

「ガンビーさん! 頑張ろう! 私も初めてやった時は少し緊張したけどすぐ慣れるから!」

「清霜ちゃん...」

「ガンビーさん、榛名たちがしっかり支えるから大丈夫よ」

「...はい!」

(覚悟を... 決めなきゃ!!)


顔つきが変わったのを摩耶は感じた


(あいつ...腹括ったな)

「うっし、じゃCandyやるぞ テンポはこんくらいで」


指を鳴らしテンポを伝える


「うん! いいよ!」

「ええ、それで」

「はい!」

「じゃ、榛名! カウント!」

「ワン、ツー ワンツースリー」


バー バー バラババッバッバーバー

(大丈夫! 練習通りに! バッキングを!)


三人に比べて拙いものだったが摩耶は彼女の本気を感じた


(へえ、ガンビーのやつきっちりやってきてるな)

「よし! 清霜! ソロいけ!」

(わかったよ摩耶さん!)



ババラバラッバー!! ババラー!


(え!? 急に激しく! ど、どうしよう! どう弾けば!)


清霜のソロに驚き調子を崩すガンビアベイ
しかし榛名も摩耶もそれを助けることはできない


(ちょっと飛ばしすぎた... ガンビーさん! これでついてきて!)

(あ...! さっきより合うように!)


この変化に摩耶は気づいた


(へえ清霜のやつ... 下手な奴にも合わせられるのか)

「さて... ガンビー! ソロやれ! 1周でいい!」

(え!? そ、ソロ!?)


思わず榛名が声を上げる


「摩耶さん!? それはちょっと無茶...」

「いいから! やってみろ! 当たって砕けろ!」

(や、やるしかない!!)


逃げることはできない 彼女は腹を括り、ソロが始まった

ポポロポポン


(うう... やってやる...! 今できる精一杯を!)

(ぶつける!!!)


ポポポッポポポロポロ


(ガンビーさん... ほんとに初心者...?)


まだまだ拙く、必死に食らいついていた
しかし清霜はそんな彼女を見て思った

この人とならやれる



ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー


「はあはあ... ひ、弾けた...!」

「ガンビーさん! すごい! 弾けたよ!」

「初めて2週間なら上出来ね」

「...まだまだでした」

「へ?」

「私、もっと上手くなりたい! もっとピアノで表現したい!」


間をおいてはっきりと言う


「私、ジャズがやりたい!」


それを見て摩耶が笑みを浮かべこう言った


「そのことなんだけどよ... やろうぜ、一緒に」

「ま、摩耶さん 本当に?」

「おう、今日のでお前が本気かどうかがわかった だから、やろうぜ」

「摩耶さん...! 私! 頑張ります!」


この言葉に清霜と榛名も祝福をした


「やった! おめでとうガンビーさん!」

「ガンビーさん、おめでとう」


三人と一人が、一つになった





「あ、そうだ摩耶さん練習資料ありがとうございました」

「な、なんでわかったんだよ!?」

「摩耶さん、あれはわかるよ...」




第8話
終わり

今回はここまでです
当たって砕けろは大事です割と

訂正があるのでお知らせします

>>20
誤 ドミナントにミクソリディアンスケール、トニックにドリアン... 完全にコルトレーンを意識してる

正 ドミナントにミクソリディアンスケール、トニックにアイオニアン... 完全にコルトレーンを意識してる


トニックにドリアンが使えるのはマイナー調の時でした、清霜がリシュリューの前で吹いたMoment’s Noticeはメジャーなので当てはまりません


ありがとうございました

おまけ
現在連載中のBLUE GIANT SUPREMEのイベントBLUE GIANT NIGHTS 2019がブルーノートで行われます
オーディションを勝ち抜いたグループがブルーノートで演奏する機会を得るとても面白い企画です
今回は課題曲がCherokeeとの事でした、楽しみです

https://www.universal-music.co.jp/blue-giant/news/event2019/

いろんなバージョンがあるので是非聴き比べてみてください
Cherokee
https://youtu.be/M283JFxesic

https://youtu.be/uon2Gu6jgf8

昨日ライブあったので更新は日曜になります...
ガンビーの応援をしながらお待ちください

すみませんやっと暇になったので更新します

第9話
Mayden Voyage(前編)


6月15日 午後11時08分
空母寮 ガンビアベイの自室


「ふう... まだまだだけど...コードは覚えてきた...!」

(そういえばいろんなピアニストの曲聞いてみたけど... バドパウエルって人、なんかいいな)


あれから1ヶ月半、演習や出撃が終わると彼女は必ずピアノに向かうことを習慣にしていた
この前の初めてのセッション、あの感覚が忘れられなかった
もっと上手くなりたい
彼女は胸にその思いを秘めていた


コンコンコン


そう思う彼女の元に誰かが訪ねてきた
こんな遅い時間に? と疑問に思いながらも返事をする

「へ? あ、はーい!」

「おう、ガンビー 入っていいかー?」

「あ、摩耶さん どうぞー」


ドアを開け入ってきたのは摩耶だった
なにかの打ち合わせだろうかと彼女は考えた


「どうしたんですか? こんな時間に?」

「ああ、それがな 今度お前もいれてライブをすることが決まった」

「へ!? ええ!?」

「んな驚くなよ、やりたがってたろ?」

「うう、でもまだへたっぴだし...」

「で? それだったらいつまでやらないつもりだ?」

「え...」

「下手だからやらない、上手くなるまで、じゃあずっとやらないのか?」

「うう...」

「一回、人前で弾いてみろ」

「やっぱりむ...」


そう言いかけたガンビアベイ
だがすぐに思い立った


(無理っていうのは簡単だけど... ここで逃げたら... たった一ヶ月ちょっとでもピアノと向き合って自分を裏切ることになる...!)

「...摩耶さん、私やってみます」

「そうこなくっちゃな!」

「頑張ります!」

「で、これがセトリ(※)」

※セットリスト 曲目のこと

「えっとやるのは4曲...」

「で、やるのはLazy Birdでじゃない」

「え」

「鎮守府の外でやる」

「え、ええっーー!? 無理無理無理!」

「んだよ! さっきやるって!」

「だって外でやるなんて思わなかったし!!」

「アタシらの演奏もうみんな知ってるから外でやった方がいいだろ? 2週間後、D♭って店でやるから」

「ええ...」

「来週一回合わせるから練習しとけよ! じゃあな!」

「え、あっ! ちょっと!」





言い終わるより前に摩耶は足早に去っていく
部屋にはガンビアベイ一人が残されていた


「どうしよう...」


コンコンコン
ガチャ


「あの... ガンビーさん、毎日頑張ってるみたいですし大福の差し入れ...」

「春日丸さん~!!」

「ふえっ!?」

「た、助けて~...」

「ど、どうしたんですか...」

「...なるほど今度ライブが」

「そうなんです... でも自信なくて」

「それは大変ですね...」

「怖くって...」

「...でもガンビーさん、それってすごいことなんじゃないですか?」

「へ?」

「だって初めてまだ間もないのに一緒に本番やろうだなんて、普通言われませんよ」

「え...」

「ガンビーさんが頑張ってるところ、きっと伝わってるんですよ だから胸を張ってみましょうよ!」

「ま、まるさん~(※)」

※春日丸

「私、応援しますね!」

「うう~ ありがとうございます~!」

6月22日午後9時00分
Lazy Bird


練習日として貸し切られている今日、ステージには四人
清霜、摩耶、榛名、そしてガンビアベイ
何度かセッションは行なっていたがライブに向けて合わせるのはこれが初めてだった
店での誰かに向けての演奏、特に清霜とガンビアベイには初めての経験となる
これがどう転ぶかは、まだ誰にもわからない



「さて... 一曲目から合わせるぞ 榛名、カウント」

「ワン、ツー ワンツー」


バッバラー バラバラ


必死に食らいつこうとするガンビアベイを見て摩耶はふと思った


(ガンビーのやつ、前に比べて... なんつーか 掴んできたな)


ーーーーーーーー
ーーーーーーーー


「ふー吹いたー!」

「清霜ちゃん、なんか前より抑え気味な気がするけど... 気のせいかしら?」

「へ? 清霜が?」

「あー言われてみりゃ、どうしたんだ?」

「うーん... 言われてみれば... なんでだろ? なんかこう... いまいち枠から出られないのかも」

「枠だあ?」

「うん、なんかね 出られる時と出られない時があって... どうしてだかわからないけど」

「本番で枠から出なかったらぶっ飛ばすぞ」

「摩耶さんも、榛名のドラムだけじゃなく他の人の音聞いてね」

「あん!? んだよ!」

「清霜ちゃんの音も、ガンビーさんの音もちゃんと聞いて あなたはベースなんだから」

「わかったよ...」

「もー 本番大丈夫かなー...」

そんなやりとりを側から眺めるガンビアベイ
弾くことに必死で他人の様子なんてまるでわからなかった


(あんな風に... 言い合えるんだ)

(でも、私は...?)

6月23日 午後7時00分
Lazy Bird


客で賑う店内、今日は艦娘による演奏が開かれる
それを聞きに今宵も人が集まる


「ねーねーそういえばさー 私たちバンド名決めてないよね?」

「あら、そういえば決めてなかったわね」

「あーすっかり忘れてたな」

「どうするんですか?」


バンド名、結成してまだ間もない彼女たちは全くそのことを考えてなかった
皆アイデアを出し合うがいまいちピンとくるものがなく難航していた
そんな時に早霜のかけるレコードからある曲が流れる





Blue7/Sonny Rollins
https://youtu.be/59aXJ8GvMYE



(あ、Blue7...)


聞き慣れているこの曲、そしてそれを聞いた瞬間思いついたように清霜は言葉を発した


「Blue4!!」

「あん?」

「へ?」

「ブルー4...?」

「そう! 四人だし! ちょうどいいかなって!」

「おい清霜、お前まさか今Blue7が流れてるからそういったな?」

「うん!」

「うふふ、清霜ちゃんらしいわね」

「おい、もうちょっと考え――」

「あ、あの! いいと思います!」


ガンビアベイの声に思わず驚く摩耶と榛名
摩耶は何か言いたげだったが彼女は続ける


「なんていうか... たしかにその場の思いつきかもしれないけど... でもなんかそれもなんていうかジャズっぽいなって... 勝手に思ったり...」


ジャズっぽいね... と口をこぼす摩耶
しかし先ほどとは打って変わって笑みを浮かべていた


「即興って意味じゃあってるかもな」

「榛名も、その名前いいと思うわ」

「ふふーん! 言ってみるもんだね!」

「Blue4かあ...」


一歩、たった一歩だが進んだ気がする
そしてその一歩はいつか巨人の一歩となる


第9話
おわり

今日はここまで
おかしい前書いたSSの時と同じで違う子が主人公みたいになりかけてる(前々作は吹雪で前作は初月)けどまあいいか
ありがとうございました

時間できたので明日更新します

復旧したので貼っておきます

第10話
Mayden Voyage(後編)


6月24日 午後10時48分
Lazy Bird

「うっし! じゃあCherokeeの合わせは終わり!」


四人での練習は基本的に摩耶が仕切っている
演奏の指示や音楽的な指導はほとんど彼女が行なっている
そしてバンドの武器である『オリジナルの曲』も彼女が作った


「じゃ、最後『新曲』やるぜ」

「摩耶さん、その曲名前どうすんの?」

「考えてはいるんだけどよー いまいちピンと来ねーんだよ...」


曲を作ったものの、題名は決まらなかった


「あの... そういえばその曲は今度のライブではやらないんですか?」

「なんだガンビー? お前その曲こなせてんのか?」

「え!? い、いや... まだ...」

「そ、だからはえーんだよやるのは 今度のライブは場慣れだ、一回経験してもらうだけでいい」

「が、頑張ります!」


ガンビアベイはこの時自信に溢れていた
練習を積んできた、拙いけどきっと自分はできる
やる気と情熱に満ち溢れていた


(大丈夫! 初めてだけど! 練習してるからきっと大丈夫!)

6月29日午後6時00分
とある駅前の広場


「7時からジャズやります! よろしくお願いします!」


広場に立ち、清霜はこれからやるライブの宣伝をしていた
しかし道行く人は誰も目に留めなかった


「おい清霜... そろそろ恥ずかしいからやめろ」

「うー... だって初めてのライブだし来て欲しいし」

「あのな、宣伝の方法間違ってるぞ? こんなんで来るわけねーだろ」

「うーん...」

「お客さんは演奏で集めんだよ、あと店が宣伝してくんないと人は来ねえ」

「やってみなきゃわからないもん! あ! お兄さん! ジャズ! 聞きませんか!?」

「へ? お、俺?」

「そうです! お兄さんです!」

「(あ、怪しいキャッチかな...? でも楽器持ってるし本物か...)ジャズをやるの?」

「はい! 今日初めてのライブなんです!」

「それは...すごいねライブやるなんて」

「それで! 来る確率何パーセントくらいですか!?」

「え!? い、いや それは... 」

「おい清霜、そろそろ迷惑だからやめろ すいませんうちのが...」

「い、いえべつに...」

「じゃあねー! 来てくださいねー!」

(変な子だなあ...)

6月29日 午後6時45分
ライブハウス 『D♭』


「客の入りはどうだ?」


摩耶が清霜に問いかける、初めての外でのライブであったからか客の入りを気にしていた


「5、6人かあ」

「ま、そんくらいか」

「こういうものなの?」

「今日ははっきり言ってこれでも人が来てるほう、アタシらは無名も無名だからな 仕方ねえよ」

「そっかあ...」

「榛名が無理をしてこの店でやってくれるように頼んだんだよな」

「...でもさ、お客さん 居るんだね」

「あん?」

「私たち、カッコいいね!」

「...そうだな!」



午後6時47分
『D♭』 控え室

一方で榛名とガンビアベイは演奏のために精神を整えていた
榛名はリズムキープの練習のためにスティックでパッドを黙々と叩き、ガンビアベイは曲の進行を再確認していた


「わ、私たち 人前でやるんですね」

「そうね」


再び沈黙、響くのはトコトコとパッドを叩く音のみであった


「あ、あの 榛名さん 初めて演奏する時って... どんな気持ちでした...?」

「そうね... とても緊張したわ これが本番の空気なんだって思った」

「うう、やっぱり...」

「緊張してるの?」

「急に... どうしてだかわからないけど急に... 怖くなって...」

「...良くも悪くも今のあなたを出して」

「え...?」

「練習、してきたんでしょう?」

「...」

「練習してきたことを出す、それ以上でもそれ以下でもないの 大丈夫、やれるわ」

「...はい」

午後7時00分
『D♭』ステージ


客はテーブル席に5人、カウンターに一人
店内の広さがその少なさをより際立てていた
四人がステージ上に立つが拍手は起こらない


(初めてのライブ...)

(この日は一生忘れないようにしよう)


清霜は心に誓った



「ワン、ツー、ワンツー」



ボーンバーンボボボン


摩耶のベースがリズムを作りそこにテナーサックスが乗る
榛名がスネア、ハイハット、タムでそれらを包み込む
だがピアノは... 乗れない


(あ、あ、あれ? な、なんで!?)


この時すでにガンビアベイは限界を迎えていた
客もその様子に気づく



「おいピアノのあの子... 大丈夫か?」

「ちょっと心配だな... でも他の3人は相当うまいぞ、どう見ても10代とかだよな...」


バラバーッバッバー!!
バラバラバラバラ


「あのテナー... 何者だ...?」






(クソ! ガンビー! 持ちこたえろ!)


摩耶が心配そうにガンビアベイを見るが当の本人はそんな摩耶を見る余裕はない


(E♭m7→A♭7→D♭7...)


コードを追うことに必死で3人の作るグルーブに乗れなかった

午後7時20分
ライブハウス前

仕事終わりのサラリーマンと言った風貌の男が店の前に現れる
彼は夕方清霜から必死にライブの勧誘を受けていた男だった


「あのちっちゃい子の言ってたライブハウスここか...」

「ジャズなんて全くわかんねえのに... お人好しだな俺って」


店への階段を下り、防音扉を開けた
店の中は閑散としており、ちょうど演奏を終えた後だった



「ありがとうございました! 3曲目はIn A Mellow Tone でした!」

(あ、喋ってるのあの子だ...)


男がカウンター席に座り注文を取る

「注文は?」

「あ、バランタインを...」

「かしこまりました」

(ジャズかあ...)

「次の曲で最後になります! やる曲は...」


最後の曲名を言おうとした時、どこか清霜は落ち着かない様子だった
心の奥に、このまま終わりたくない そんな気もちが宿っていた


「おい! 清霜! 早く!」

「...ねえ摩耶さん」

「あん?」

「『あの曲』やろう」

「ば、バカ! できるわけねーだろ! ガンビー見てみろ!」

「このままじゃ、終われない お客さんの心に火をつけたい」

「だからって...!」

「大丈夫、うまくいく」

「おまえなあ...!」

「新しい事、やろうよ」

「...あークソが! どうだ?」

「榛名は大丈夫です」

「や、やります...」

「クソ... 知らねえぞ」

「4曲目はベースの摩耶さんが作曲した曲です、名前は...」


清霜の考えていることはたった一つだった
『客の心に、火をつけてやる』


「IGNITION(点火)です、どうぞ」

「ワン、ツー、ワンツー」


バーーーーー!!
バッバラバラババババラー!!




(え、なにこれ...)

(ジャズって... こんな激しいの..?)

カウンター席の男はジャズというもをの今までは静かなもの、年寄りが聴くものと思っていた
清霜の音を聞いた瞬間
彼の常識は覆った




バーラー ババラバラバラバラバラ
バッバー!


テナーが引っ張りベースが支え、ドラムが包む
摩耶はふと思う

(清霜のやつ、やっぱりそうだ)

(客の前、人の前だと枠を大きく超えられる)

(じゃあこっちも乗ってやる!)



バラバラッバー!!!!


ーーーーーーーー
ーーーーーーーー


パチパチパチパチパチ


「ナイスプレー!」

「ヒューッ!」


客こそは少ないが歓声が上がっていた


カウンター席の男もスタンディングオベーションをする
思わず席を立ちステージに近づいていった


「ありがとうございました! Blue4でした!!」

「あ! サックスの子! 夕方の...覚えてる?」

「あ! お兄さん! 来てくれたんだ!」

「うん、ジャズって全くわかんない状態できてみたんだけど... なんていうか... ジャズってすごいんだね」

「あ、ありがとうございます!」

「また聞きに来ていいかな!?」

「ぜひ来てください!」


他のメンバーも質問責めにあっていた


「ねえベースの子! 君ほんとはプロなんじゃないの?」

「ドラムのお姉さん! かっこよかったよ! いつもどこでやってるの!?」



そんな中ガンビアベイは一人隅で佇んでいた


(そっか... これが差なんだ... やっぱりみんな積み上げてきたものが違う...)

(夢みちゃってたんだ... 私)

午後7時35分
控え室


「みんなお疲れ様!」

「おう、お疲れ」

「清霜ちゃん、今日はのびのび吹いてたわね」

「うん! なんだかもっと吹きたい気分!」

(そりゃそうだろうよ...)


そう思いながら摩耶はガンビアベイを見る


(あいつを置いてきぼりにしやがって...)

「ガンビーさん! お疲れ!」

「...」

「が、ガンビーさん?」

「...ごめんなさい」

「えっ!? あっ! ガンビーさん!」


そう言い残しガンビアベイは足早に部屋を出ていった


「榛名が追いかけていきます!」

「わ、私も...」

「お前は行くな」

「えっ...?」

「まだ未熟だったあいつをステージに上げたアタシも原因だけど、半分はお前のせいだからな」

「え...」

「自信喪失した状態で、お前が出来上がってもいない曲やらせたんだよ」

「あっ...」

「だから行くな」

「...」

午後7時49分
公園

「...」

公園のベンチに一人座るガンビアベイ
月は雲に隠れ、街灯だけが彼女を照らしていた
今にも雨が降りそうだった

「...何やってんだろ私」

「ガンビーさん」

「わあ!?」


ガンビアベイのことを追いかけていた榛名がようやく追いついた
その目はどこか慈愛に溢れていた


「ガンビーさん... 今日はお疲れ様、色々思うことはあるかもしれないけど もう帰りましょう」

「...私、何かできると思ってました」


ガンビアベイは泣きながら吐き出すように己の心の奥底にあることを言う


「練習したんだから... 少しはできるって...! ぐすっ...」

「知ってるわ、あなたは頑張ってた」

「でも! 本番... あの舞台にたったら... 何も... 」

「...」

「ピアノだって買って... 練習しようって... 一人で舞い上がって...」

「...」

「でも私は何もできなかった...! やっぱりみんなは積み上げてきたものが違う... ジャズやりたいなんて夢みるんじゃなかった...!」

「...」

「私... もう抜けます... 迷惑だから...」

「ガンビーさん...」

「何ですか...? もういいんです... 間違ってたんです... 夢みてたのがバカだったんです...」

「プレイヤーが一番やっちゃいけないことってなんだと思います?」

「え...?」

「コードを間違える事? アボイドを弾く事? ロスト(※)する事? 違う...」

※ 自分がどこを演奏してるかわからなくなる事

「一番やっちゃいけないのは...」

「お客さんの前で『私の演奏は最悪でした』って顔をする事よ」

「!!」

「それに比べれば今日のことなんて全く気にしなくていいの」

「...!」

「あなたは、お客さんの前で演奏したの 結果はどうであれ これってすごい事だと思わない?」

「榛名さん...」

「また一緒に、ジャズやりましょう? ジャズって楽しいのよ?」

「榛名さ~ん!!」

「よしよし」

「うわあああ~ん!!」


雲は消え、いつのまにか月が出ていた


第10話
おわり

今日はここまで、榛名の言っていた「お客さんに自分の演奏は最悪でしたという顔を見せる」は一番やってはいけない事です
あなたの調子が最悪だとしてもお客さんはその演奏しかあなたの事を知りません、なので顔に出してしまったら最悪というのは伝わります もしかしたらお客さんにはいい演奏だったかもしれないのです
結果は覆せないので胸を張るしかないと私は考えてます

ありがとうございました

(運営ちゃん次のジャズイベメセニーかマイケルリーグかベイシービッグバンド呼んでくれないかな)

sageミスした最悪...

合宿の準備などあるので更新二週間後です、すみません

色々遅れました... 日曜に更新します

第11話

Twin Tenors(前編)



7月14日 午後3時00分
Lazy Bird


「はいストップ! テーマもう一度さらうぞ、榛名! なんでもいいから7拍目にアクセントつけて、清霜もそれに乗っかる感じで! ガンビー! 13thの方が多分響きがいい! 変えて!」

客のいないLazy Birdに摩耶の指示が飛び交う
今日もまた彼女らは練習を積み重ねる
あのライブ以来彼女らはより一層励むようになった
特に彼女、ガンビアベイはあの日から何か変わった様子だった
そしてまたその影響を受けたのは...


「おうガンビー! 前よし良くなったけど自信持って弾け!」

「はい!」

「...」


清霜だった




午後11時02分
鎮守府 埠頭

「...」


今日までのガンビアベイを清霜は振り返った
彼女はこの数ヶ月、たった一人で伸びてきた
だからこそ清霜は、絶対に負けたくなかった


「ガンビーさんは一人であそこまで伸びてきたんだ... 普通じゃない...」

「...よし! 私も頑張らなきゃ!」


楽器を構え一呼吸置いた


「すう...」


バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!



「ぷはあっ!! はあ... はあ... あ! 何秒吹けたか測り忘れちゃった...」

「よし! 今度こそ! もう一回!」



バーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー.....





7月31日 午後9時24分
Lazy Bird


客で賑わうLazyBird、今日のプレイヤーはBlue4の四人だった
はじめてのライブをあえて外でやる目論見が功を奏しこのライブはなにもなく終わるはずだった
清霜と同じく、テナーサックスを持った彼女が来るまでは...


「...」

「どしたのよ朧、神妙な顔してるけど」

「ねえ秋雲」

「あん?」

「一緒に吹きたいというか... 音であいつに勝って見たくて横で吹きたいって思った事ある?」

「あー... ちょっとまさか...」

「ひさびさに心を突いてくるプレーヤーに出会えた気がする」

「勝ちたいの?」

「勝ってくる」

「はあ... 行っておいで」

「ありがとう」

「朧」

「何?」

「勝てよ」

「... 言われなくても」


言うや否や朧は楽器を舞台裏にセットしに行ってしまった
もう彼女を止めるものはいない


「あ、ただいま二人とも... あれ? 朧ちゃんは?」

席に戻ってきたのは朧や秋雲と同じくビッグバンドをしている照月だった
いつもは秋月、朧、秋雲の3人だったが今日は秋月が夜間演習のため不在、チケットを非番だった照月が受け取る形になった


「あー照、それが朧のやつ『勝ってくる』なんて言って楽器持って...」

「え、ええっ!?」

「でもさ」

「へ?」

「見たくない?」

「見たくないって...?」

「あの二人がどんな世界作るかさ」


----------------
----------------


「...ありがとうございました! Tricotismでした! 続いてが最後の曲になります、ベースの摩耶さん作曲でIGNITION...」

「ねえ」

「!? お、朧ちゃん!?」


朧がテナーサックスを持ちステージに上がる
まるでこれから戦うかのような佇まいを見せていた
そして... 勝ちに行く そんな目をしていた


「一緒に吹かない?」


第11話
おわり

すみません夏はゴタゴタしてたので更新遅れました
前書いてたSSの方の登場人物を呼びました、似てるようで似てない二人のぶつかりは果たしてどうなるのか
ありがとうございました

おまけ
ジャズピアノのバッキング講座が割と面白そうなのが見つかったのでよかったらどうぞ(英語ですみません)
https://youtu.be/DhJshy1Nfyg

書けたので続き貼ります

第12話
Twin Tenors(後編)
7月31日 午後9時24分
Lazy Bird

「お、おい!いまライブ中で...」

「いいの摩耶さん」


摩耶が制止にかかるが清霜はそれをはねのけた


「... ただ一緒に吹きたいって感じじゃないよね」

「勝ちに来た」

「いいよ... やろう 曲は?」

「Giant Steps」

「お、おい!マジで言ってんのか!? コルトレーン(※)の曲を!?」


※ジョンコルトレーン

「ふふ、朧ちゃん勝負しに来たわね」

「榛名! 呑気に言うなっての! おいガンビー! 行けるか?」

「ええっ!? いきなりやれなんて...」

「ほら言わんこっちゃねえ... また今度に...」

「あの! 私がやります!」


そう言いステージに上がったのは照月だった
彼女もまたビッグバンドをやっている、そして偶然にもピアノであった
あまりの事態に客席からどよめきが聞こえていた
一体これから何が起こるのか、ステージにいる彼女たちにも、神様にも分からなかった


「さ、ガンビーさん 変わりますね」

「照月ちゃん...」

「さ、揃った やるよ テンポはこのくらい」


朧が指を鳴らしテンポを出す
ピアノもベースもドラムも、そして2本のテナーサックスも準備は整った
榛名がカウントを出す

「ワン、ツー ワンツー」

※イメージ
Giant Steps/Bob Mintzer Michael Brecker
https://youtu.be/bhkb-_SEtxQ


バーラーラーバーラー!
バーラー バーラーラーバーラー!




(朧ちゃんの音! 鋭い! 突き刺さってくる!)

(清霜... この子、音に厚みがある!)



似ているようで似ていない二人の音、それらが混ざり合い化学反応を起こす
朧の技巧溢れる鋭いサウンド、対して清霜は重厚な音を出し、二人の音でバーを埋め尽くしていた



(アタシのソロ!)


バラバーバララーバラー!!



(す、すごい技術! 指回しもすごいけど上の音も下の音も全部に鋭さがある! 一体どうやったらこんなに!?)

真横で聞く清霜は朧の技術に圧倒されていた
サックスを操る正確無比な技術力、それによって可能となる数々の音が彼女の強みだった
そして技術だけでなく『心』も彼女には備わっていた


(もっと! ありったけ!! アタシはいま勝負をしにきている! 小手先のフレーズじゃ勝てない!!!)


バラバラバラバーーーー!!!


(まだ! 足りない!!)


バッバラババララーー!!


(もっとだ!!!)


バラバラバラバラバラバラバラバラバラバラ!!!!


(よし!! 行けた!! このまま照月にパス!!)


(朧ちゃん! ナイスソロ! よし! 照月も...!)


ポポポロポロロロ


(アドリブソロなんてひさびさ... やっぱり楽しい!!)


ポポロロロロロ


(おっと! あくまでもメインはこの二人... さ! 清霜ちゃん! 見せて!)

(清霜の番!!)



バララーラ バララーラ!!


(朧ちゃんはきっと全力で勝負しにきたんだ...!)


バラバラバラバラバラバババ!!
バーラッバーラッバーララー


(私も本気を出す!!)

バラッババラバラー!!


(... 違う いつもはこんなのじゃない! どうして!?)

(何か... 何か違う... わたしだけ... 一人...?)


バラバーバラッバー!


(...違う! 朧ちゃんと勝負することに夢中になってた! もっと後ろをきかなきゃ!)


バラバーバー バラバラバラ!!


(よし! 噛み合った! 基本を忘れてた!)


バラバラバラッバーラッバババ!!!


(行ける! もっと! フレーズが溢れ出る!)



清霜の重厚な音がバッキングと噛み合う瞬間だった
この変化を朧は感じ取り、それと同時に笑みを浮かべる


(清霜と勝負してみてわかった、やっぱり...)

(ジャズって楽しい...!)


ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー

パチパチパチパチパチ
ヒューッ!!



会場は二人の話題で持ちきりだった
どっちが良かったか? どっちがうまかったか?
しかし当の二人にはここまでくれば些細な問題であった



「朧ちゃん... すごいね!!」

「... 最初勝とうって思ってた」

「すごかったね、朧ちゃん」

「でも途中でそんなこと忘れて無我夢中で、自分をさらけだすことに夢中になってて... アタシはまだまだだった 清霜は途中からバッキングちゃんと聴いてたでしょ?」

「わ、わかっちゃうんだ...」

「アタシは... まだまだ自分勝手だった だからこの勝負はまた今度やりたい」

「...いいよ! もっと一緒にやろう!」

「またね! いこう照月」


そう言い残し客席に戻った



ーーーーーーーー
ーーーーーーーー





客席で秋雲は二人を迎えていた
茶化すように彼女は言う

「うっすヒーロー、勝負はどうだった?」

「負けたつもりはないけど...」

「ほう?」

「次は勝つ」




第12話
終わり

今日はここまで
Giant Stepsですが前半はマイケルブレッカー、後半はボブミンツァーだそうです(多分)
マイケルブレッカーは超絶技巧のサックス奏者として有名でした(白血病で死去)、死の間際に出したアルバム「聖地への旅」は命を削るように紡ぎ出された彼の音を聴くことができます、是非どうぞ

第13話
Speak Like a Child/kin(←→)



8月13日 午前9時07分
鎮守府 埠頭


非番の時清霜はいつもこの埠頭で吹いている
どんなことがあろうと彼女はいつも吹き続け、四季をここで感じ取っていた
ただ時折ハプニングも起きる
この日は雲行きが怪しく、ついにはポツポツと雨が降り始めた
天気予報じゃ曇りのままだったのにと愚痴をこぼす清霜だったがそれ言っても仕方がなく、急いで雨の日に練習するトンネルまで逃げていった
トンネルに入るや否や雨はザアザアと振りはじめる


「うう~傘持ってくるの忘れちゃた... 今日曇りだってきいたのに...」


不幸にも傘すらなく、しばらくここで練習する以外何もできなくなってしまった


「...ううん! ここで練習しよう!」


トンネルに彼女のサックスが響き渡る

午後12時22分
トンネル


「もう戻らないといけない時間なのにまだ雨降ってる... 」


雨は依然勢いを増しとても帰れる状況じゃなかった
そんな中傘を持ち清霜を迎えに来る者がいた
武蔵だった


「清霜、迎えにきたぞ」

「あ! 武蔵さん!!」


清霜の憧れでもありサックスを与えてくれた武蔵が来たと言うことに喜びを隠せなかった


「武蔵さんが来てくれるなんて... すごく嬉しい!」

「清霜がいつも外で練習してるのは知ってたからな、それでなかなか帰ってこないから心配したんだ」

「本当にありがとう! 武蔵さん!」

「さ、帰るぞ」

「あ、ねえ武蔵さん」

「ん?」

「武蔵さんがさ、昔サックスやってた頃のお話聞いてみたいなって... 少し」

「... 昔の話か」

「うん」

「いいだろう」




ーーーーーーーー
ーーーーーーーー


「私がサックスを始めたのは10歳の頃だった、父親がサックス、母親がピアノをやってて自然とサックスをやりたいと思うようになっていたんだ」

「練習を重ねて海外の音大に入学した、そこでリシュリューと出会ったんだ 」

「彼女はすごかったよ、スタンゲッツが相当好きで音もフレーズもそっくりだった」

「私は彼女をライバルでもあり目標にしていた、よく一緒にライブもやってたさ」


武蔵は目を輝かせ、子供のように話していた


「初めてのライブ! あれは良かった! 私とリシュリューがバトルソロ(※)をしたんだが客はみんなスタンディングオベーションだ、何もかもが上手くいってた」

※バトルソロ 二人で交互にソロを回すこと

「お互い馬があっていつも将来はどうしたいとかどう言うのをやりたいか、Blue Noteでいつか演奏したいとか色々語り合ってた!」

「でもある日だった...」


ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーー

数年前
アメリカ ニューヨーク 武蔵とリシュリューのアパート


「アンナ(※)! 帰ったぞ! いいスコッチを差し入れでもらったんだ! 飲もうか!」

※リシュリューが艦娘になる前の名前と思ってください、今更ですが艦娘は人間設定です

「...」

「アンナ...? お、おい! どうした! なんかされたのか!!」

「私は... もうだめみたいね」

「何があったんだ!」

「私は... 古い人間だった...」

「な...」

「私はスタンゲッツが好きでこの世界に入った... なのにそれを根底から否定されたら... 私は何をしたらいいの?」

「...」

「『君の音は古すぎる』『君は場末のパブで演奏をしたいのか、第一線に立って世界で活躍したいのかどっちなんだ? 今の君の音はただの模倣に過ぎない』」

「そんな...」

「私は... 巨人の足跡をなぞっていただけだった...」



ーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーー

「私もそんな彼女をみて、ジャズの世界で巨人を目指すのは無理だと思ったんだ」

「そうだったんですか...」

「二人で音大をやめて、新しいことをやろう、そこで艦娘募集の案内を見て今に至ったんだ」

「...」

「リシュリューは... 今でもサックスをやってるな」

「はい、教わりました」

「彼女の心は、今もきっとニューヨークにあるんだろうな... 」

「あの、武蔵さん」

「なんだ?」

「どうして私にそんな大事なサックス、渡してくれたんですか?」

「なんでだろうな... ただ...」

「ただ?」

「巨人になってくれると、直感で思ったんだ」

午後12時39分
トンネル外


先ほどまでの雨が嘘のように晴れ、水たまりが太陽を反射し、より一層輝きを見せた
二人は鎮守府へと帰ろうとしていた


「ねえ武蔵さん」

「なんだ?」

「ジャズの巨人になろうとして多くの人が失敗してきた... 私もなれるかどうかわからない」

「...そうか」

「でもね、私は毎日自分はなれるって信じて吹いてる」

「!!」

「だから、私 なるよ ジャズの巨人に」

「...ああ!! お前ならやってくれる!」


魂は引き継がれる、時代を超えて


第13話
おわり

今日はここまで、清霜を主人公にしたのは真っ直ぐさを持っている子だと思ったからです
誰もがなれるわけではないジャズの巨人、本気で目指そうと思える、そんな子だと思ってます
ありがとうございました

大会近いので更新そこそこ遅れます... すみません

色々あって更新止まってました、ごめんなさい
近いうちに更新します... テナー清霜描いたやつでお茶濁す
https://i.imgur.com/3ZvmsWg.jpg
https://i.imgur.com/KWpt3N4.jpg

久しぶりに更新します

人生は夢だらけ

8月14日 午前7時01分
鎮守府 食堂

鎮守府の朝は早い、海の安全を守るため今日もまた艦娘たちは働く
間宮さんのおいしい朝食を食べ1日の活力を生み出すのだった
そしてそんな食堂の隅に彼女たちはいた


「ねえねえ、摩耶さんと榛名さんってどうしてジャズ始めたの?」


唐突に話を振ったのは清霜だった
あまりにも突然のことで摩耶は思わず顰めっ面をする


「お前... ほんと唐突だな」

「昨日ね、武蔵さんとちょっと話してて... だからちょっとみんなのも聞きたくなったの」

「私もちょっと気になるかも...」


ガンビアベイも少し気になる様子であった
彼女はつい最近ジャズの世界へ足を入れたばかりであったため気になるのも当然だったかもしれない


「じゃあ私からお話ししましょうか」


そこで口を開いたのは榛名だった


「...榛名はなんというか、自分の演奏で喜んでもらえるのが嬉しかったの」

「小さい頃にお父さんが持ってたドラムのセットで遊んだことがあるの」


ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー

数年前 


「ねえお父さん、これ何?」

「これか? これはドラムっていうんだ」

「ドラム...?」

「そうだ、叩いてリズムを...いやそれだけじゃない、世界を作る楽器なんだ」

「へえ...」

「叩いてみるかい?」

「うん!」

「よし! じゃあ今から組み立てるぞ! ちょと待っててな...」



ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー

1週間後

初めてのお客さんはお父さんとお母さんだったわ


「パパ、ママ、行くよ!」

「いいわよ! あなた、ビデオ回ってる?」

「バッチリだ!」


ドツタンドツタン ドンタンドトタン...


「できた!」

「すごいな!もう8ビートが叩けた!」

「将来はドラマーね!」

「えへへ...」


ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー

そこから数年後

「やっぱり君とプレーするの楽しいよ!」




「なあ、うちのバンド入らないか?」




「明日のライブも叩いてくれよ!」






でもある日ふと思ったの、毎日が変化がなくてただ惰性で叩いてる...

だから一回ドラムから離れて別のことをやろう... そこで艦娘として働こうとした...



ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー



「でも結局は艦娘になってもまたドラムを叩いてた、やっぱり好きなのかもしれないわ 人とやるのが」

「そうだったんだ...」


清霜もまた人とやるのが楽しいという気持ちを持っていたからその気持ちが理解できていた
榛名の言葉にどこか親近感を覚えたのだった

「さ、次は摩耶さんの番よ」

「あ、アタシ!? いいよ別に...」

「摩耶さんの話聞きたいなー!」

「わ、私も...」

「ああん!?」

「ひいいい!! やっぱ無理無理い~...」

「しゃーねえな...」

「え! 教えてくれるの!?」

「だいぶ昔の話だけどよ...」


ーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーー

数年前

ちっちゃい頃両親ともに働いててさ、よく親戚の家に預けられてたんだよ
その親戚のおじさんがベーシストでさ、よくライブとかやってて連れて行ってもらってたんだ


「おじさん! アタシもその楽器やってみたい!」

「お、やってみたいかい? そうだな... もうちょっと大きくなってからかな」

「今やりたいの!」

「はは... 困ったな... よしそれじゃあ...」



「僕が弦を押さえてるから... そう! その弦を弾いて!」

「よいしょ!」

ボーン

「おじさん! 弾けた!」

「やったね! うん、将来きっといいベーシストになる!」

「ほんと!?」

「ほんとだとも、体のわりに君は大きな手をしてる... いい素質を持ってる」

「ベーシストかー... かっこいい!」

「ベースはね、バンドを支える一番大事な役割なんだ」

「うん!」

「だから君も、誰かを支える立派な人になってほしいな」



ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー

「...でも現実は甘くなかった、アタシより上手い奴なんてごまんといた そこで一回心折れちゃってさ」

「でも栗田艦隊のみんながやるっていった時... またやってもいいかなって少し思って... また始めた」

「多分アタシはどこか未練があったんだろうなきっと」


そういって摩耶は口を閉じた


「2人ともまた戻ってきてくれてよかったな」


清霜が口を開く


「だってこうやって一緒にジャズができたんだもの」

「お、お前...」

「あら、清霜ちゃん嬉しいこといってくれるのね」

「わ、私も!!」


ガンビアベイが声を上げる


「私も... こうしてジャズ始められるようになって...だからみんなと出会えたというか... なんというか...」

「おうなんだよはっきり言えよ」

「ひいい... やっぱ無理ぃ~...」

「おい、冗談だ アタシもこうしてなんだかんだジャズ続けられたのはすごい嬉しいと思ってるよ」

「榛名もです」

「清霜もよ!」

「み、みんな...」

「ま、このメンバーで色々やるの楽しいし、続けてこうぜ!」



4人が、また一つとなって動き出す
そんな予感を清霜は感じ取った



「あ、ごちそうさま おいガンビー 置いてくぞ」

「え、ま、待ってえ!」


第14話
おわり

一旦ここまで、久しぶりに書きました
最近自分は楽器から離れてしまいましたが何かをきっかけにまた戻るのもありなのではないかと思います
ありがとうございました

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