綾乃「サプライズコムケよ」 (24)
綾乃(そういえば、そろそろコムケの季節よね)
綾乃(去年のコムケは歳納京子から置いてけぼりをくらっちゃったし……)
綾乃(今年はどうしようかしら、素直に連れてってって言おうかしら……)
綾乃(……)
綾乃(い、いや、それは無理ね、恥ずかしいもの)
綾乃(偶然を装って行くっていうのも難しいし……)
綾乃「んー……」
綾乃「そうだわ、サプライズとして歳納京子のトランクに潜り込みましょう」
綾乃「そうよ、歳納京子だってサプライズコムケとか言って何も知らない私をコムケに連れて行ったんだし」
綾乃「私にはその仕返しをする権利があると思うわ」
綾乃「だから何も知らない歳納京子の荷物に潜り込んでもおかしくないはずよ!」
綾乃「そしてコムケ会場で歳納京子をびっくりさせてやるんだから!」
~コムケ前日~
綾乃(よし、歳納京子を発見したわ)
綾乃(事前に調べたとおり、バス停で船見さん達と待ち合わせしてるみたいね)
綾乃(こっそり近づいてしまいましょう)コソコソ
京子「もー、結衣遅いなあ」
京子「仕方ない、トランクもうバスの荷台に載せちゃおっと!」
京子「今回は直前に作ったコピー紙があるからちょっと重いな……」ゴソゴソ
京子「よっこいしょっと……これでオーケー!」
結衣「おーい、京子~」
京子「もう、結衣遅いよ?」
結衣「ごめんごめん、ちょっとお弁当作ってて」
京子「おお!お弁当作ってきてくれたの!?」
結衣「去年お前がバスの中でぐーぐーお腹鳴らしてたからな」
京子「わあい♪」
キャッキャウフフ
綾乃(……気づかれてないわね)
綾乃(今のうちに……)ゴソゴソ
綾乃(トランクの中身を出して……)ポイポイッ
綾乃(代りに私が入って……)モゾモゾ
綾乃(ちゃんと水と食料も入れておかないとね)
綾乃(脱水症状になったらシャレにならないし)
綾乃(最後にトランク閉めて……)カチャッ
綾乃(よし、これで準備は完了よ!)
綾乃(あとはじっくり待ちましょう……)
綾乃(あ、何か振動が……バスが動き出したのね)
綾乃(それにしても狭いわ……)
綾乃(あと何時間くらいかかるのかしら)
綾乃(確か前は数時間で着いたはずだけど……)
綾乃(ふふふ、歳納京子の驚く顔が目に浮かぶわ……)
綾乃(けど、ちょっと眠くなってきたわね……)
綾乃(少し、寝ようかしら……)
綾乃(バスが止まったら、きっと眼を覚ますと……思うし……)
綾乃「……」zzz
綾乃「……はっ!」
綾乃「ふー、危ない危ない……熟睡しちゃってたわ」
綾乃「あれからどれくらい時間が経ったのかしら……」ゴソゴソ
綾乃「うう、狭すぎて時計も見れない……」
「だから言っただろ、京子」
「ううー、だって……」
綾乃「……!」
綾乃(この声は歳納京子に船見さん……)
綾乃(も、もしかして、もうコムケ会場に着いちゃったとか……!?)
「また冬があるよ、京子」
「けど期間限定ネタとかも入ってたし……」
綾乃(……?)
綾乃(会話の内容からしてコムケの話よね)
綾乃(と言う事は、やっぱりここはもうコムケ会場……)
綾乃(……もう飛び出しても大丈夫って事かしら)
綾乃(よ、よし、飛び出すわよ)
綾乃(飛び出して、歳納京子の驚く可愛い顔を見てやるんだからっ!)ガッ
綾乃(……)ガッガッ
綾乃(あ、あれ……)
「まあ、家に帰って何か工具を使えば壊れた鍵も開くと思うし」
「それまでの我慢だよ、京子」
「うん……仕方ないかぁ……」
綾乃(……ん?)
綾乃(鍵が……え?)
「まあ、気を取り直して……今日のコムケは楽しかったよね!」
「立ち直り早いな京子は」クスッ
「元気なだけが取り柄ですから!」
綾乃(……は?)
綾乃(今日のコムケって……え?)
「いっぱい同人誌も買っちゃったし……やっぱり今回はホテル取っておいて良かったよね~」
「流石にこの量の荷物を持って帰るの手伝ってくれとか言われてたらキレてたと思うぞ」
「もう、そんな事言わないでよ結衣にゃん!」
「誰が結衣にゃんだ」
綾乃「……」
綾乃(ひょ、ひょっとして……私、トランクの鍵が壊れて外に出られなくなってる……?)
綾乃(ひょ、ひょっとして……もうコムケ終わっちゃってる……?)
綾乃(そ、そんな……そんなっ!)プルプルプルッ
綾乃(私は何のためにこんな狭い所で過ごしたのよっ!)
「けど、思ってたより良いホテルだよね」
「でしょ?同人仲間の子に教えてもらったんだ~」
綾乃(……これからどうしよう)
綾乃(歳納京子の家に帰って工具でトランク開けたら私が飛び出て来た……って事になったら)
綾乃(サプライズコムケでもなんでもないわよね)
綾乃(ちょっとした怪談になっちゃうわよね)
綾乃(という事は、コムケから帰宅していない今この瞬間がチャンスなのかしら)
綾乃(家に帰るまでがコムケって言うらしいし、今ならまだサプライズコムケに間に合うんじゃないかしら)
綾乃(よ、よし、そうと決まれば何か物音でも出して2人に気付いて貰って……)
「ねえ、京子」
「ん~?」
「ちょっとこっちに来ない?」
「え、なんで」
「んー……別に理由はないけどさ」
「……うん」
綾乃(……あれ)
「京子……」
「あ、駄目だって結衣……」
「どうして?」
「だ、だって、今日はいっぱい汗かいたし……」
「私は別に気にしないよ」
「わ、私が気にするの!」
「どうして?」
「え、そ、その……汗臭いでしょ……」
「私は京子の汗のにおい、好きだけどね」
「ば、ばかっ!」
綾乃(……ん?)
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