――おしゃれなカフェ――
北条加蓮「サイン書き? 別にいいけど、事務所でやればいいのに……。その方が、アイドルモードって感じにならない?」
高森藍子「たまには、いつものカフェで、ゆっくり書いてみたくなっちゃいました」
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レンアイカフェテラスシリーズ第143話です。
<過去作一覧>
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「最初にカフェで会った時のこと」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「人から離れたカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「見てあげているカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「何度だって言うカフェで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「変わらないカフェで」
藍子「事務所で書くと、どうしても背筋がびしっと伸びてしまって。モバP(以下「P」)さんは、書いた字をほめてくれるんですけれど、もうちょっとくだけた字で書いてみたいなって思うんです」
加蓮「あんまりしゃっきりしすぎないって感じかな」
藍子「うんっ。あの……加蓮ちゃんが、いいって言うのなら――」
加蓮「さっき別にいいけどって言ったよー。どうぞどうぞ。私は……じゃあコーヒーでも飲みながら、ゆっくりしてるね」
藍子「ありがとうございますっ。あっ。寂しくなったら、いつでも話しかけてくださいね?」
加蓮「……」
藍子「きゃっ。無言で蹴らないでくださいっ」
……。
…………。
藍子「~~~♪」
加蓮「……すみませーん。やっほ、店員さん」
藍子「できた。次の色紙は……。ちょこっとだけ、周りを花の絵で飾ってみて――」
加蓮「うん、見ての通り。現在藍子ちゃんはアイドル活動中です」
藍子「加蓮ちゃんっ。そういうことを言うと、また背筋が伸びちゃいます……」
加蓮「え、聞こえてた? あははっ、ごめんごめん」
藍子「加蓮ちゃんにいつ話しかけられてもいいようにしないと、加蓮ちゃん、すぐ拗ねちゃったり、悲しそうな顔になりますから。……ね、店員さん」
加蓮「そこで店員さんに振るのは卑怯でしょ! 店員さんも! 腕を組んで頷くなっ」
藍子「~~~♪」
加蓮「……? どしたの店員さん、藍子をちらちらっと見て。言いたいことがあるなら言っていいんだよ――あっ、そういうことだね♪」
加蓮「藍子。あとで店員さんにも、サインを1枚書いてあげなよ」
藍子「そう言われると思って……じゃん♪ 実は、すでに書いておいたんです」
加蓮「おー」
藍子「店員さん。それと、こちらは店長さんの分です。いつも癒やしの時間を分けてくれて、ありがとうございます♪」
加蓮「……あ、ちょ、こら! まだ注文してない! 店長ーっじゃないのよ!」
藍子「あはは……。こんなに喜んでもらえると、私も嬉しいけれど……。店員さ~んっ。加蓮ちゃんの注文を、聞いてあげてください~!」
加蓮「そのサイン色紙没収するわよ! こら!」
……。
…………。
藍子「~~~♪」
加蓮「……ん。コーヒー、おいし……。何度飲んでも飽きない味なんだよね。不思議だなぁ……」
藍子「うんっ。……う~ん。……うんっ」
加蓮「書いた色紙を離したり近付けたりしてる。アートでもやってるの?」
藍子「アートってほどじゃありませんけれど、はしっこのところに、ちょっとだけ絵を描いてみたんです」
加蓮「見せてみせてー。わ、可愛いっ。猫だよね?」
藍子「うん。前のコマーシャルの撮影が終わった時に、ロケバスの下に猫さんが入り込んていたんです。茶色の毛で、目を、とろん、って、なんだか眠たそうにしていて……♪」
加蓮「お昼寝中だったのかな」
藍子「なかなか出てきてくれないから、運転手さんも発車できなくて……。私が、たまたま持っていた猫じゃらしを……こんな風にっ。おいで~、おいで~、と振ってみました」
加蓮「……猫じゃらしって、たまたま持ってるものだったっけ?」
藍子「えっ、何を言っているんですか加蓮ちゃん。猫じゃらしは、お散歩グッズの定番ですよ」
加蓮「……そうだっけ??」
藍子「それでも猫さんは、なかなかこっちに来てくれないんです。そうしたら……そ、そうしたら。……くすっ……♪」
加蓮「お?」
藍子「う、うふふっ……。わらっちゃだめなんでしょうけれど……あはっ」
加蓮「……もしもーし? 藍子ちゃん? 急にどしたのー」
藍子「はっ。すみません、これではみなさんに伝わりませんよね」
加蓮「そうだよ。急に1人で笑ってちゃ……っていうか、あれ。これいつの間にラジオの収録に」
藍子「しゃがみこみながら、どうしたらいいかな、って悩んでいたら、Pさ――プロデューサーさんが、猫の真似をしたら出てきてくれるかも、って言ったんです」
加蓮「さて……」
藍子「……加蓮ちゃん? どうして、急に真剣な目になって、かばんの中を漁り始めてるんですか?」
加蓮「え? いや、Pさんに何を渡せばその録音音声を売ってくれるかなって思って」
藍子「録ってませんっ」
加蓮「あ、ひょっとしてグッズとして売るって話? 藍子の日常ボイス、猫ちゃん編」
藍子「そんなものは売り出しません!」
加蓮「Pさんも甘いなぁ。そこはお手軽価格で1種類だけ入ってるヤツと、ちょっと値が張るけど3種類くらい入ってるヤツの2セットを売らなきゃ」
藍子「具体的な売り方を、考え始めないでくださいっ」
加蓮「ちなみに、3種類の方は敢えて高めの……例えば1種類のが300円だとすると、3種類のは1000円くらいにするのがオススメだよ。その方が逆に、何が入ってるんだろ……って気になるからっ」
藍子「誰に向かって言ってるんですか……」
加蓮「あれ、これってラジオ収録じゃなかったっけ?」
藍子「……あれっ?」
加蓮「ん?」
藍子「……?」
加蓮「……」
藍子「……??」
加蓮「……ぷくっ」
藍子「ふふ……。もしかして、私も加蓮ちゃんも、いつの間にか、ラジオに出演させて頂いている気持ちに……?」
加蓮「全く。藍子はアイドルバカだねー」
藍子「それは、加蓮ちゃんですっ」
加蓮「何言ってんの。私なんて熱心にアイドル活動をやってる藍子を見て、のーんびり、カフェのコーヒーを飲んでるだけだよ」
藍子「……ま、またすぐに、うまいことを言うんですから~」
加蓮「くくっ♪」
藍子「分かりました。そこまで言うのなら、今度Pさんに、ううん、事務所のみなさんと、ファンのみなさんにも聞いてみましょう。私と加蓮ちゃん、どちらがアイドルばか……ううんっ。アイドルらしいアイドルかを」
加蓮「えー。90対10とかになっても泣かないでよ?」
藍子「……そ、そうなったら本当に泣いてしまいそう。やっぱり、やめます」
加蓮「おい」
藍子「だってっ。加蓮ちゃんが相手だったら、ぜんぜん敵う気がしなくて……」
加蓮「もー……」
藍子「Pさんからも……よく、加蓮ちゃんの話題を出して、頑張ろうって言ってくれて――」
加蓮「……それ、たぶんPさんが私のことを喋りたいだけだと思うよ」
藍子「追いつくだけじゃなくて、勝つくらいのつもりでやらないと、追いつくことなんてできないって、分かってます。でも……」
加蓮「ったく。ホント、藍子は……。別にいつもいつも闘争心燃やすこともないから、やる時だけやりなさい」
藍子「…………」
加蓮「それくらいでいいでしょ、ずっと燃えてたら疲れちゃうし」
藍子「……うんっ。それに、ずっとライバルとか、勝たないといけない相手だって思ったら、加蓮ちゃんのことが、少し遠くなってしまいそう。それは嫌ですもんっ」
加蓮「よろしい。で、猫ちゃんのお話はどうなったの?」
藍子「猫ちゃんのお話……。あっ、そうでしたね。ロケバスの下の猫さんのお話でした」
加蓮「ロケバスの下の猫……。なんかタイトルになりそうだねっ」
藍子「とっても、のんびりとしたお話になりそうですね」
加蓮「映画のポスターっぽく……まずロケバスがあって、猫がいて。近くにベンチ……ううん、藍子は屈み込んでるんだっけ。じゃあ屈み込んでる藍子を……んー、猫の顔と藍子の表情、両方一緒に入れるのって難しくない?」
加蓮「……あ、じゃあ横から撮ろうっ。バスから顔を覗かせてる猫と、それを見つけた藍子が笑ってこっち向いてるってショットで!」
加蓮「で、もう1枚、今度はロケバス全部が映るようなショットを……こっちは猫と藍子、一緒にカメラの方を向いてるってことでいいかな」
藍子「おぉ~……」
加蓮「……あ。なんかちょっと熱く語っちゃってた……ごめんね?」
藍子「え? ううんっ。本当に、そんな写真を撮ってみたい……撮られてみたい? って、思っちゃいましたから♪」
加蓮「えー……。今のはだってほら、ちょっとテキトーに言っちゃったっていうか、妄想みたいになったっていうかさ……」
藍子「今度、ロケバスに乗る時には加蓮ちゃんについてきてもらおうかな。それで、撮影が終わった後に、今の写真を加蓮ちゃんに撮ってもらうんです」
藍子「その後で、Pさんにもお願いして、加蓮ちゃんと私、2人での1枚も撮ってもらいましょうねっ」
加蓮「あー、もーっ。……なんか断りにくいし!」
藍子「ふふ♪ 楽しみだなぁ……。いい天気になると、いいな」
加蓮「……1回くらいは曇ってもよくない? なんて」
藍子「?」
加蓮「あはは……。ごめんごめん、割り込んじゃったけど結局猫はどうなったの? 藍子、なんか思い出し笑いしてたけど」
藍子「ふふ。また、違うお話になっちゃいました。ええと……Pさんが私に、猫さんの鳴き真似をしてみたらいいって、言ったところまででしたよね」
加蓮「そうそう」
藍子「それを聞いて、私、ぴんっ、と来たんです。だってその時のPさんの顔、加蓮ちゃんがいたずらを思いついた時とおんなじだったからっ」
加蓮「……そ、そうなの? なんか喜んでいいか複雑……」
藍子「だから私、しかえしに言ったんですよ。それなら、Pさんが真似してみてください。Pさんって猫さんが好きでしたよね、って!」
加蓮「確か、猫カフェじゃないけど猫のいるカフェを藍子に教えてあげるくらいには……」
藍子「そうそうっ。そうなんですよ! Pさんは、なんだかもごもごとなってしまっていたんですけれど……もう1回、お願いします、って言ったら、一緒に撮影したスタッフさんの、よくPさんとお話されている方も、肩をかるく小突いててっ。Pさん、やってくれました♪」
加蓮「心中お察しします、ってヤツだ」
藍子「Pさんが、に゛ゃあ……って声を出したら、猫さんも同じような低い声で、に゛ゃあ……って♪ おふたり……ううん、1人と1匹? は、合唱のように鳴きあって……猫さんもトコトコ、出てきてくれました」
加蓮「作戦成功だね」
藍子「そうしたら、猫さんがPさんに懐いちゃうの! Pさんがロケバスに乗ろうとしても、一緒に乗っちゃおうとするから……」
加蓮「あらら」
藍子「連れて帰るわけにはいかないので、どうにか離れてもらって……あの時のPさん、すごく寂しそうな顔だったなぁ」
加蓮「すっかり猫に感情移入しちゃってる」
藍子「サインに書いた猫さんは、その時の顔を思い浮かべて……どうですか? 似ていますかっ?」
加蓮「ふふっ。残念、それが似てるかどうかは、藍子とPさんにしかわからないよ」
藍子「あっ、そうでしたね。私の中ではすっかり、ロケバスの中に加蓮ちゃんが乗っていることになってしまっていました」
加蓮「なんでよ」
藍子「加蓮ちゃん、窓から顔を出して、さっさとしなさいよ~、なんて言ってそう」
藍子「それとも、途中で退屈になっちゃって、辺りをぶらぶらしていたら、近所のおばあちゃんとお孫さんと仲良くなってたり……」
加蓮「……ポスター妄想を語った私が言うのもだけど、藍子もたいてい空想とか妄想とか好きだよね」
藍子「そうなのかな? そうかもっ。このサインだって……受け取ってくれるファンの方の顔を思い浮かべて、書いてみましたから。できれば、動物が好きな方に渡ってほしいな」
加蓮「猫好きな人に渡るといいね」
藍子「うんっ♪」
藍子「すっかり、話し込んじゃいました。私、サインの続きを書くことにしますね」
加蓮「じゃー私はもう1回注文しよっかな。すみませーんっ」
藍子「~~~~♪」
加蓮「……あのね、店員さん。さっきのことならもう怒ってないから、トレーで顔を隠しながら来るのはやめて? なんか私がクレーマーとかみたいになるじゃん……」
藍子「書けたっ。次は……♪」
加蓮「店長をお呼びしますって……いや、なんでよ。ふぅーん、そんなことしていいの? 私を追い出したら藍子もついてくるよ? アンタ達の大好きな藍子ちゃんが、まだお昼なのに帰っちゃうよー?」
藍子「~~~~♪」
加蓮「……私の手から藍子を取り返すってアンタまで未央達みたいなこと言ってんじゃないわよ! そういうのはうちの事務所だけで間に合ってるんだけど!?」
藍子「書けたっ」
加蓮「藍子もなんとか言ってやって!」
藍子「……。……~~~♪」
加蓮「今だけ何の話ですかってとぼけた顔すんなーっ!」
□ ■ □ ■ □
藍子「98、99……100♪ ふうっ。これで、ぜんぶ書き終わりました」
加蓮「お疲れ様。はい、藍子。店員さんから、ココアとあまいケーキのプレゼント」
藍子「わあっ。ちょうど、食べたいなって思っていたところなんです。いただきます!」
加蓮「お食べお食べー」
藍子「ん~っ! ひと息ついたところに、ちょっとした甘い物……。体の疲れなんて、一瞬でなくなっちゃいましたっ」
加蓮「ふふっ。よかったね」
藍子「……あ」
加蓮「どうかした?」
藍子「ううん……。そっか♪」
加蓮「……何?」
藍子「加蓮ちゃん。ありがとうっ」
加蓮「はいはい。どう致しまして」
……。
…………。
藍子「ごちそうさまでした。あの……加蓮ちゃん。もう1つ、いいですか?」
加蓮「ケーキのおかわり? 食いしん坊なんだからー。カロリーがヤバくなっても知らないよ」
藍子「違いますっ。実はサインの他に……これっ。招待状も書いておきたいんです」
加蓮「招待状?」
藍子「私のLIVEに来てくれる方や、まだ来たことがない方への招待状。書いてみたいって言ったら、Pさんがぜひ書いてみようって言ってくれて♪」
加蓮「そうなんだ。わ、なんかちょっとオシャレな感じ。でも中はピンクカラーなんだね」
藍子「LIVEが終わった後でも、ちいさな記念にしてもらえれば……。1度きりでも、私のことを覚えておいてほしいんです」
加蓮「ふふっ。見る度に藍子のことを思い出しちゃうね。またLIVEにも来てくれるかもよ?」
藍子「そうなったら、いいな……。私も、みなさんが楽しめるようにがんばらなきゃっ」
加蓮「……なんて、先の話だけどね?」
藍子「え? ……あはっ。そうでした。まだ書いてもいないのに、少し、焦っちゃいました」
加蓮「やっぱりアイドルバカになっちゃってる」
藍子「だからそれは、加蓮ちゃんの方~っ」
加蓮「私がアイドルバカだとしても、藍子もまたアイドルバカであることに変わりはない」
藍子「キメ顔で言うなら、もうちょっと格好いいことを言ってくださいっ」
加蓮「えー、何そのフリ。じゃあ……私はいつでも、前に進み続けるよ!」
藍子「おぉ~」
加蓮「……ごめん。凛が似たこと言ってたのを真似しただけ」
藍子「あらら。でも、いいと思いますよ。ユニットのみんなですから、同じことを言って、結束するみたいで」
加蓮「そーいう青春は加蓮ちゃんのキャラではないでーす」
藍子「そうかなぁ……」
加蓮「ほら、招待状も書くんでしょ? 私にお構いなく、どーぞ」
藍子「そうでしたっ」
加蓮「藍子ちゃん、寂しくなったらいつでも声をかけてくれていいんですからねー?」
藍子「だからそれも、加蓮ちゃんですっ」
……。
…………。
藍子「~~~♪」
加蓮「……もう夕焼けが見えてる。まだ早い時間なのに……。あっという間に暗くなっちゃいそう」
藍子「できたっ。次は……」
加蓮「今のうちにお母さんに連絡しとこ。あと――で、藍子のアイドルバカモードが抜けなかったら強引にお風呂に連れ込むんだっ」
藍子「~~~~♪」
加蓮「……」チラ
藍子「……ふふっ……~~~~♪」
加蓮「……書き続けたいって言ったら、寝落ちしちゃうまでは見守ってあげよっか。私が同じことになったら、きっと藍子も、同じように言ってくれるだろうし……」
藍子「できたっ。……? 加蓮ちゃん、今呼びましたか? ごめんなさいっ、ちょっぴり集中しちゃってて」
加蓮「呼んでない呼んでない。もっと集中してなさい」
藍子「はあ。……~~~♪」
加蓮「……」
藍子「~~~♪」
加蓮「……強がっても、ヒマなのはヒマだね。んー……そうだっ」
藍子「できたっ。次は――」
加蓮「えーっと……。うん。『#藍子ちゃんに届けたい声 今度LIVEする藍子への応援メッセージ、募集中だよ♪』」
藍子「~~~♪」
加蓮「わ、早いっ。……えーと。茜、アンタはそれを直接言ってあげてね? うわ、未央まで便乗してきた。だからそういうんじゃないってばっ」
藍子「これで、伝わるかな……? うんっ。きっと、伝わるよね」
加蓮「奈緒、アンタ私にそんなこと1度も言ったことないでしょ! ポジパに押し付けて1週間カレーの刑と地獄のランニングレッスンをやらせるわよっ」
藍子「次は……~~~♪」
加蓮「……千枝。仁奈ちゃん。みなさんで、藍子さんへの寄せ書きを書くことにしました……って。大げさなんだから……。『今度私も混ぜてね』っと」
藍子「~~~♪」
加蓮「……菜々さん。SNSで若い子がどうこうって言うのホントやめよ?」
藍子「応援メッセージ風に……これで、元気になってくれるかな?」
加蓮「ふぅ。みんな、すぐに寄ってたかってはしゃぐんだから……」
藍子「~~♪」
加蓮「昔は、藍子ばっかり人気でムカつくなーなんて思ってたのに、1人でも多くの人に、藍子のことを見てほしいって……心から思ってるんだよね、私」
藍子「読み返した時に、あたたかな気持ちになってくれますように……♪」
加蓮「……ふふっ」
藍子「できたっ。ちょっぴり、ひと休憩――」ブブ
藍子「?」ブブブブブ
藍子「……??」ブブブブブ ブブブ
藍子「スマートフォンが、何度も着信してる……。なにか、トークルームで盛り上がってるのかな?」
藍子「……わ~っ!? いつの間にか、私宛にこんなに大量のメッセージが!?」
加蓮「あ」
藍子「ど、どれも応援の言葉ばかりで……嬉しいですけれど、なんですか、これ~っ」
加蓮「げ、Pさんからメッセージ来てる。SNSをチェックしてたらトレンド入りに……あー、トレンド入りしちゃったかー。加蓮ちゃん大人気ー♪」
藍子「え、ええと、ありがとうございます、すごく励みになります! ありがとうございます――」
加蓮「藍子、1つ1つに返信してたらさすがに真夜中になるから、まとめて受け取りましたって言ってあげなさい?」
藍子「そうしますねっ。送ってくださった方にはちょっと申し訳ないですけど……でも、どうしてこんなにいっぱいの。私なにか書いたっけ……?」
加蓮「でもこの場合は最初藍子に返信をもらった1人はすごくラッキーな人だね。その方がレア感が出ていいかな?」
藍子「……加蓮ちゃんっ!!」
加蓮「バレちゃったっ。Pさんに、今から怒りモードの藍子ちゃんにお説教を受けてくるので返信できません、っと……えいっ」ポチ
藍子「も、もうっ。急にこんなことされたらびっくり――」
……。
…………。
藍子「ぜ~っ、ぜ~っ……」
加蓮「お疲れー」
藍子「……だれの、せいだと、おもってるんですか……!」
加蓮「あ、そうやってファンのみんなが悪いって言っちゃう? 悪い子なんだー」
藍子「加蓮ちゃん……!」
加蓮「あはははっ。ごめんね。相談もしないでやっちゃったから、びっくりさせちゃって。次からはちゃんと、やるって言ってやるね?」
藍子「……本当ですね?」
加蓮「うんうん本当本当。絶対1人でやらない。私嘘つかない」
藍子「なんだかものすごく、ごまかされている気がします……!」
藍子「あぁ、びっくりした……。みなさんからのメッセージ、帰ってから読まなきゃ。……今日は、寝るのが遅くなっちゃいそうです。ふふ……♪」
加蓮「明日は、贅沢なねぼすけになっちゃうね」
藍子「贅沢なおねぼうですねっ。……わ、もう外が真っ暗に……。あっ、お母さんに連絡してない!」
加蓮「しておきましたー。だから安心してね」
藍子「……加蓮ちゃんが?」
加蓮「加蓮ちゃんが。うちと、あと藍子のお母さんのところもね。どうせ、こうなるだろうって思ってたし……」
藍子「そっか……。ありがとうございます、加蓮ちゃん」
加蓮「どう致しまして。で、せっかくだし晩ご飯も一緒に食べちゃったら? ってお母さん言ってたから、ここで食べていっちゃおうよ」
藍子「そうしましょうか♪」
加蓮「……付け加えで、加蓮がいないなら私も遠慮なく友達と外食に行けるわね、とか送ってきやがったけどね。お母さん」
藍子「あはは……。たまにはそういう日もありますよ。明日の晩ご飯は、お母さんと一緒に食べましょうっ」
加蓮「また質問責めにされなきゃいいけどな……。アイドルの私のことなんて、テレビとか見てくれればすぐ分かるのに」
藍子「きっと、加蓮ちゃんに教えてほしいんですよ。私が加蓮ちゃんのお話を聞くのが、大好きなように」
加蓮「はいはい。さて、何食べる?」
藍子「そうですね~……。お腹もぺこぺこなので、少し、いっぱい食べたい気分かも」
加蓮「じゃあ定食かなぁ。……ん、限定メニューのところ、カミングスーンって書いてる。映画かっ」
藍子「ロケバスの映画の次は、カフェの映画ですか?」
加蓮「どっちも180分ずっと、ゆるふわなお話になっちゃいそうだね」
藍子「ふかふかの椅子に座って、ゆっくりしてもらいましょう」
加蓮「どうする藍子? 上映が終わって、舞台挨拶ってなった時にみんな寝てたら」
藍子「その時は……みんなで、おはようございます~っ、って言うとか?」
加蓮「なにそれっ。あはは!」
藍子「くすっ。店員さ~ん。すみませ~んっ」
加蓮「え、ちょっと。まだ何注文するか決めてない」
藍子「え?」
加蓮「えぇ……。ごめんね店員さん、駆けつけてくれたのはいいけどこの子、何も考えないで呼んだみたい」
藍子「え、えへへ……」
加蓮「……? うん、晩ご飯のつもりだけど、それがどうかしたの?」
藍子「サインのお礼? そんな、お礼なんていいですよ。私なりの、お礼のつもりだったんですから」
加蓮「まあ、お礼がしたいって言うなら受け取ってあげれば?」
藍子「……そうですねっ。じゃあ……そうします!」
加蓮「何かくれるの? ……へぇ、カミングスーンの限定メニュー」
藍子「みなさんより先に、頂けるんですか? いいのかな……えへへっ」
加蓮「とか言いつつ顔がにやける藍子ちゃんでした。……こら、無言で蹴るなっ。じゃあ店員さん、それでお願いね」
藍子「お願いしますね。…………」
加蓮「……いたいいたいっ。何回蹴れば気が済むの!」
藍子「ちょっぴり、楽しくなっちゃって……それに、ずっと座ってサインや招待状を書いていたから、体が動かしたい気分になっちゃいました」
加蓮「真っ暗な森でも彷徨ってなさいっ」
藍子「そんなことしたら、迷子になっちゃいますよ~」
加蓮「ったく」
藍子「そうだ。加蓮ちゃん、はいっ」
加蓮「ん?」
藍子「加蓮ちゃんたちへの招待状です。どうぞ」
加蓮「……私に? って、え、4枚?」
藍子「あっ。今は、まだ中を見ないでくださいね」
加蓮「ホントだ、表に"12月になったら開いてください"って……もー、何焦らすのよっ」
藍子「えへ……」
加蓮「4枚ってことは……え、4枚? 3枚じゃなくて……じゃあ私と凛と奈緒、それとPさん宛て? それか未央と茜でも連れて来いってことかな。案外菜々さんと……もう1人? 響子? うーん……」
藍子「それも含めて、秘密です。読んでもらえれば、分かるようになっていますから」
加蓮「……、……」
藍子「だめっ」
加蓮「痛」
藍子「見ていいのは、12月になってからですよ。たぶん、それからでも十分、間に合うと思いますから……」
加蓮「間に合う?」
藍子「あっ」
加蓮「……? そこで口を抑えるって……んん? えー……えぇ?」
藍子「ほらほら、店員さんが運んできてくれたみたいですよ」
加蓮「ちぇ、悪いタイミングで。……わ、鍋じゃんっ」
藍子「冬の限定メニューだから、鍋なんですね。いい匂い……。中は、新鮮なお野菜がいっぱいみたい」
加蓮「えー。お肉はー? 野菜ばっかりなんてつまんなーい」
藍子「こらっ。そんなこと言わないで、一緒に食べましょ?」
加蓮「いただきまーす」
藍子「……んっ、おいしい!」
加蓮「鍋なのにしゃきしゃき感があって美味しいね。味もじんわり染みてて、あったかい……」
藍子「はふ、はふ……。白菜も美味しいですよ。ほらっ」
加蓮「ホントだー。たまにはこういうのも悪くないね……」
藍子「ねっ」
加蓮「やっぱりやだ。お肉ー!」
藍子「もぉ~……。あ、しらたきも美味しい♪ 次は、お豆腐……♪」
【おしまい】
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