結城晴「白菊ほたるは男の子」【モバマス】 (27)

もし白菊ほたるちゃんが男の子だったらというお話
結城晴編

前作
ほたる「白菊ほたるは男の子なんです」【モバマス】 - SSまとめ速報
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ほたる(こんにちは、不幸系中学生アイドル、白菊ほたるです)

晴「ほたる、パス!」

梨沙「あっ!」

ほたる(現在レッスンまで多少時間があった私は晴ちゃん達に誘われてサッカーをしています)

ほたる「それ!」

愛海「ぎゃふん!」

ほたる(晴ちゃんからパスをもらった私はシュートを放ち、ボールはキーパーの愛海ちゃんの手をはじいてゴールに突き刺さりました)

晴「ナイスシュートほたる!」

ほたる「晴ちゃんもナイスパスです」

愛海「手がジンジンする……ぐすん」

梨沙「すごいシュートだったわね」

晴「ああ、男子にも負けないくらいだったぜ!」

ほたる「あ、あはは……」

ほたる(久しぶりのサッカーでつい全力を出してしまいましたが、バレないよう注意しなきゃいけませんね)

ほたる(僕、白菊ほたるは男なんですから)

ほたる(僕はいろいろあって男であることを隠し、女装してアイドルをやっています)

ほたる(すぐにバレてしまうと思っていましたが、今手を赤くして涙目になっている愛海ちゃんや泰葉ちゃん、茄子さんの協力もあってなんとかやっていけてます。本当に感謝してもしきれません)

ほたる(一方僕を女装アイドルに仕立て上げたプロデューサーさんは何もしてくれません。許さない)

ほたる「ふぅ……いい時間ですしここまでにしましょうか」

梨沙「そうね」

愛海「ふぃー、疲れた〜」

晴「それにしてもほたるって意外とサッカー上手いんだな」

梨沙「見た目とは裏腹に力強いプレーするわよね」

ほたる「あはは……小学校の昼休みは毎日サッカーかドッチボールをしてたからですかね」

梨沙「なんか男子みたいね」

ほたる「え? あ、あぁ……」

愛海「あ、あたしが小学生のときも球技が流行っててクラスのみんなでやってたよ!」

梨沙「へー、学校によっていろいろあるのね」

ほたる「は、はい……」

ほたる(あ、危ない……愛海ちゃんのフォローのおかげで助かりました)

ほたる(心の中でお礼を言うと、気持ちが届いたのか愛海ちゃんは得意げな顔をして手をわきわきするのでした)

ほたる(それにしても久しぶりにサッカーをやったけど楽しかったな……)

晴「ほたる、これからも空いた時間にサッカーの練習に付き合ってくれよ」

ほたる「はい、私でよければぜひ」

ほたる(こうして僕は晴ちゃん達とサッカーをするようになりました)

ほたる(はじめは久しぶりにやるサッカーにうきうきしていました……)

ほたる(しかし……)

晴「またオレの勝ち~」

ほたる「ぜぇ、はぁ……」

ほたる(か、勝てない……!)

ほたる(思った以上に晴ちゃんはサッカーが上手かったのです)

ほたる(さきほどから全然ボールを奪えません)

ほたる(僕はサッカーを習っていたわけではありませんが女の子に負けるというのは悔しいです)

晴「よし、じゃあフリーキックだ! ほたるからでいいぞー」

ほたる「はーい。じゃあ行きますよ~」

晴「おう、どっからでもかかってこい!」

ほたる「それっ!」

ほたる(僕が放ったシュートはゴールの左端に突き刺さります)

晴「あーくそ、ナイスシュート」

ほたる「次は私がキーパーをやりますね」

晴「おう、じゃあ行くぜ……おらっ!」

ほたる(晴ちゃんの放つシュートはゴールの端に。僕は飛び込んでなんとかボールをはじきだしました)

晴「だー、くそ! やっぱ威力が足んねえなあ……」

ほたる「でも本当コールぎりぎりで危なかったですよ」

晴「ほたるってボールコントロールは全然だけどパワーはあるよな」

ほたる「そうですかね……」

晴「あんま年変わらないのに、やっぱ中学生と小学生の差って大きいのかな……」

ほたる「そ、そうかもしれませんね……」

ほたる(性別が一番の理由だと思いますがもちろんそんなことは言いません)

ほたる(ただ、次からはコントロールを意識して蹴ろうと思いました)

ほたる(ある日の事務所、僕、愛海ちゃん、晴ちゃんと梨沙ちゃんはある仕事の資料を眺めていました)

梨沙「アイドル運動会……」

愛海「小学生と中学生混合チームを作って競うんだって」

ほたる「種目は障害物競走、借り物競走、4人5脚、騎馬戦、最後に全員参加のリレーですね」

晴「4人5脚かー。2人3脚ならやったことあるんだけどなー」

愛海「人数が多い分息を合わせるのが難しいかもね」

梨沙「なら特訓あるのみね!」

ほたる(その後の話し合いで他の出場種目が決め、早速4人5脚の特訓をすることになりました)

愛海「……ほたる君ほたる君」

ほたる(愛海ちゃんにちょいちょいと手招きされ、晴ちゃん達に聞かれないよう部屋の隅に移動しました)

ほたる「どうしたんですか?」

愛海「ほたる君気をつけてね」

ほたる「……何をですか?」

愛海「ほら、これから4人5脚の練習するでしょ。倒れたときに男だってバレないようにね」

ほたる「な、なるほど……確かに気をつけないと」

愛海「何かあったらあたしもフォローするから」

ほたる「ありがとうございます。でも大丈夫です、このくらいのことバッシリこなしてみせます!」

愛海「心配だなあ……」

ほたる(あまり信用してない様子の愛海ちゃん。ここはしっかりとこなして安心させないといけませんね)

ほたる(そして4人5脚の練習時間、中学生の僕と愛海ちゃんが真ん中、晴ちゃんと梨沙ちゃんを端にして足を結びます)

ほたる「じゃあ1,2で合わせて行きましょう、せーの」

晴「1、2、1、2……」

梨沙「1、2、1、2……」

愛海「1、2、1、2……」

ほたる「結構良い感じじゃないですか?」

愛海「少しペースを上げてもいいかもね」

晴「よし、じゃあ121212……」

梨沙「ちょっと晴! ペース上げすぎ……ってきゃああ!!」

ほたる「わああ!!!」

ドシーン!

ほたる(晴ちゃんがペースを上げたことで左右のバランスがくずれ、3人とも倒れてしまいます)

梨沙「いたた……晴、あんたねぇ……」

晴「わりぃわりぃ、ほたる大丈夫か」

ほたる「だ、大丈夫です……」

ほたる(となりの晴ちゃんが心配そうに声をかけてくれます)

ほたる(いろいろまずいところも当たってしまいそうでしたが、僕は倒れることを想定していたのできちんと手で大事なところをガードしました)

ほたる(したのですが……)

ほたる「……愛海ちゃん? なんでぼく……私の胸を揉んでるんですか?」

愛海「え? バレないように大事なところをガードしただけだよ」

ほたる「いや胸触られてもバレないですよ。ガードするなら下の方ですよ」

愛海「下ぁ!? ほたるちゃんセクハラ!」

ほたる「愛海ちゃんだけには言われたくないです」

晴「なー、さっきからなに話してんだ?」

ほたる(休憩中のことです)

梨沙「ほたる、今度のダンスのステップなんだけど見てくれない?」

ほたる(梨沙ちゃんは僕にダンスのアドバイスを求めてきました)

梨沙「1、2、3、4、5、6、7、8」

ほたる(ステップ自体は有名なやつでしたが、梨沙ちゃんのそれは小学生とは思えないほど非常に洗練されていて目を見張るものがあります)

梨沙「……とまあ、こんな感じ」

晴「十分上手いよな」

愛海「そうだね。びっくりしちゃった」

梨沙「もっと伊吹や聖來みたいに動きの強弱をつけるようにしたいのよ。頭では分かっていてもなかなか上手くいかなくて」

ほたる「なるほど……だったらカウントの仕方を変えてみるといいかも」

梨沙「カウント?」

ほたる「うん。今のサビ前のフレーズだったら2で小さくゆっくり動いて3で大きく、7でゆっくりになって8でピタッと止まる感じだから」

ほたる(口だけでは分かりづらいと思うので、実際に踊ってみることにしました)

ほたる「いち,にぃ〜,さーん! よん,ご,ろく,なーな,ハチ!」

晴「おー! すげー!」

梨沙「……ちょっとやってみる」

ほたる(梨沙ちゃんは立ち上がりカウントの仕方を変えてダンスをします)

梨沙「ふぅ……どう?」

晴「さっきと比べたら良くなってるんじゃないか?」

梨沙「そうね、もうちょっと練習したらコツが掴めそうな気がする」

愛海「こんなやり方があったんだねー。あたしもやってみよ」

ほたる「前の事務所で先輩から教わったんですよ」

晴「そういえばほたるって前からアイドルやってたのか。だから色々知ってるんだなー」

ほたる「はい。仕事はほとんどありませんでしたけど」

梨沙「ほたるに仕事を回さないなんてもったいないことしてるわね」

ほたる「そんなこともないですよ」

晴「どういう意味だ?」

ほたる「だってレッスンばっかりしてたおかげで、今の私がありますから」

ほたる「先輩から教わったことをこうして梨沙ちゃん達に教えているのが嬉しいんです」

晴「ほたる……」

梨沙「なるほどね。ありがとうほたる、いいアドバイスを貰ったわ」

ほたる「梨沙ちゃんならすぐにコツを掴んで上達しますよ」

梨沙「ええ、すぐに1番に上り詰めてやるわよ!」

ほたる「ふふっ、負けていられませんね」

晴「ほたる楽しそうだな」

ほたる「はい、やっぱりアイドルは楽しいですね」

愛海「よし、じゃあ休憩おわりにして練習再開しよう!」

ほたる・晴・梨沙「「「おー!」」」

ほたる(晴ちゃんたちとの練習は順調に進み、このまま何事もなく運動会を迎えられると思っていました)

ほたる(しかし、事件は突然起きてしまいました)

晴視点

晴「こんにちはー……ってあれ、誰もいないのか」

晴(まあだいぶ早い時間に来ちゃったしな、なんか面白いことねえかな……)

晴(そうだ! ほたる達を驚かせてやろ)

晴(ソファー裏に隠れてっと……お、来た来た)

ほたる「どういうことですか!」ガチャ

晴(うわっ!?)

ほたる「なんでプロデューサーさんはいつもいつも!!」

晴(電話? 相手はプロデューサーか……)

晴(あんな怒鳴ってるほたる初めて見たな……何話してるんだろう……?)

ほたる視点

ほたる「どういうことですか!」

ほたる(事務所の前でプロデューサーさんから電話がかかってきました)

ほたる(内容は次の仕事の話で、それは全然いいんですが……)

ほたる(プロデューサーさんが提示したのはなんと水着での撮影でした)

ほたる「なんでプロデューサーさんはいつもいつも!!」

ほたる(思わず大声が出ちゃいましたけど……よかった、誰もいないみたいです)

ほたる(僕は念のため事務所の鍵を掛けます。これで会話を聞かれることはありません)

ほたる「いいですか! 僕は男ですよ!? いくら普段は誤魔化せても水着だと一発でバレますよ」

ほたる「え、バレない? いやいや僕だって最近はトレーニングで鍛えて少しは男らしくなってるんですからね!」

ほたる「とにかく絶対に水着の仕事はやりませんよ! おつかれさまでした!」ガチャ

ほたる「ふぅ……」

ほたる(電話を終えた僕は扉の鍵を開けた後ソファに腰を掛けます)

ほたる「まったく、プロデューサーさんは僕が男だってこと忘れてるんじゃないかな……」

ほたる(そしてなんとなく首を回しソファの後ろに目をやると……)

晴「あっ」

ほたる(縮こまって隠れていた晴ちゃんと目があったのでした)

ほたる「えっ、晴ちゃん……?」

晴「よ、よぉ……」

ほたる「な、なんで? もしかして今の聞いて……」

ほたる(まさか晴ちゃんがいるなんて思ってもいなく、突然のピンチに僕の頭は上手くまわりません)

晴「えっと……ほたるってあんな大声出すんだな、びっくりした」

ほたる「う、うん……」

晴「電話の相手ってプロデューサーだよな? どんなこと話してたんだ?」

ほたる「えっと、その……仕事の話でちょっと気が進まないやつだったから……」

晴「あー、わかる。あいつオレにもカワイイ系の仕事ばっか持ってくるし……」

ほたる「あははー困っちゃうよね……」

晴「そ、そうだな……はは……」

ほたる「……」

晴「……」

ほたる(僕と晴ちゃんの間に流れる沈黙。明らかにまずい状況です。僕はようやく回り始めた頭を使って打開策を考えます)

晴「それでその……さっき電話で、ほたるが男だって……」

ほたる「で、ででーん!」

晴「うわっ、なんだよ急に!」

ほたる「じ、実はドッキリなんです!」

晴「ど、どっきり?」

ほたる(考えた結果思いついたのは、これまでのことをドッキリにするということでした)

ほたる「そ、そう! 晴ちゃんがソファに隠れてるのが見えてね。逆に驚かせようと思って……」

晴「……」

ほたる「どうかな……?」

晴「なんだ、そういうことか!」

ほたる「ほっ」

晴「そうだよな! ほたるが男ってそんなことないよな」

ほたる「そ、そうですよーあはははは!」

晴「あはははは!」

ほたる(笑い合う晴ちゃんと僕。なんとか誤魔化せたみたいです。晴ちゃんが単純、純粋な子で良かった……)

晴「あはは……それ!」

ほたる「え……」

ほたる(完全に騙せたと思って油断していた僕は、突然の晴ちゃんの行動に全く対応できませんでした)

晴「あ……」

ほたる(なんと晴ちゃんは僕の方に手を伸ばし、股間のそれを掴んできたのです)

晴「お、おい……これって……」

ほたる「あっ……こ、これはその……」

晴「うわあああああああ!!!」

ほたる「ぐほっ!?」

ほたる(大声を上げた晴ちゃんの蹴りは僕の股間を捉え、晴ちゃんは事務所を飛び出してしまいました)

ほたる(僕は追いかけたいのですが、身体がえぐられたような痛みで立つことさえままならず、声を上げることもできませんでした)

泰葉「おはようございます。ねえねえほたるちゃん、さっき晴ちゃんがすごい形相で走ってえええええ!?!?」

茄子「ほたるちゃん!? 大丈夫ですか!?!?」

ほたる(床に蹲って悶えていると事務所にやってきた泰葉ちゃんと茄子さんが僕のことを見て驚いた声をあげます)

ほたる「あっ……あぅあ……」パクパク

泰葉「ほたるくん落ち着いて! ゆっくり深呼吸してね!」

茄子「喋れますか? どこか痛いんですか?」

ほたる(心配そうに声をかけてくれたり、背中を揺すってくれたりした2人のおかげで、少し話せるようになりました)

ほたる「た、たまが……」

泰葉「え、ほたるくんのサッカーボールが?」

ほたる「は、晴、ちゃん……」

茄子「え、晴ちゃんに男だってバレちゃったんですか!?」

ほたる「あぅ……」コクコク

ほたる(理解の早いお二人のおかげで円滑に状況を説明することが出来ました)

ほたる(二人に介抱されたのちに晴ちゃんを探しましたが、結局晴ちゃんはその日のレッスンを休み、会って話をすることはできませんでした)

ほたる(晴ちゃんに正体がバレた次の日)

ほたる(僕は晴ちゃんと話をしようと試みますが上手くいきません)

ほたる(理由は簡単で晴ちゃんに避けられてしまっているからです)

晴「……ふん」

ほたる「あぅ……」

梨沙「なに? あんたたち喧嘩でもしたの?」

ほたる「まあ喧嘩というかなんて言うか……」

晴「梨沙には関係ないだろ」

梨沙「関係ないことないわよ。あんたたちの空気が悪いと練習に影響が出るでしょ」

晴「あーもう、やめやめ! おい梨沙! サッカー付き合ってくれよ!」

梨沙「はぁ? まだ全然練習してないじゃない」

晴「気分転換も大事だろ? ほら行くぞ!」

愛海「あ、あたしも行くー。ほたるちゃん、ここは任せて」

ほたる「あ……」

ほたる(結局何もできないまま晴ちゃん達は行ってしまいました。情けないですがここは愛海ちゃんに頼るしかありません)

ほたる「はあ……」

広場

晴「おらっ!」

愛海「きゃっち!」バシン

梨沙「ちょっとー、さっきから全然入んないじゃない」

晴「うるせ、今日は調子が悪いんだよ」

梨沙「それだけじゃないでしょ」

晴「おら!」

愛海「ぎゃふん!」

梨沙「おー今のいいんじゃない?」

晴「よっし、見たかほたる! ……ってわりぃ」

梨沙「……はぁ。あんたねえ、結局気分転換になってないじゃない」

晴「だからわりぃって」

梨沙「あ、パパから電話! アタシ電話するから晴たち先に帰っててくれる?」

晴「おう、レッスン遅れんなよ」

梨沙「わかってるわよ」

晴「ったく……、よしじゃあ戻るか」

愛海「うん」

愛海「……」

晴「……」

愛海「ねえ、晴ちゃん」

晴「ん?」

愛海「ほたるちゃんのことなんだけど……」

晴「その話か……」

愛海「晴ちゃんが怒ってるのは……ほたるちゃんが男の子だったから?」

晴「なっ……愛海、知ってたのか!?」

愛海「うん」

晴「だったらなんで……あいつは女装してアイドルやってる変態なんだぞ!」

愛海「本当にそう思ってる?」

晴「それは……」

 

ほたる『先輩から教わったことをこうして梨沙ちゃん達に教えているのが嬉しいんです』

ほたる『はい、やっぱりアイドルは楽しいですね』

 

晴「それは……思ってねえよ」

愛海「うん、だからさ……一度話し合ってみない?」

晴「話し合う……?」

愛海「ほたる君が何で女装しているのか、拒絶するのはそれを聞いてからでも遅くはないと思うんだ」

晴「……わーったよ。ちゃんとほたると話すよ」

愛海「それでこそ晴ちゃん!」

ほたる「はあ……」

ほたる(結局晴ちゃんと話せなかったな……)

ほたる(練習のときも避けられちゃってるし、みんなにも迷惑を掛けちゃったな……)

晴「ほたる」

ほたる「あ……」

ほたる(途方に暮れていたときに、晴ちゃんのほうから話しかけてくれました)

晴「サッカー、つきあってくれよ」

ほたる「……! はい!」

ほたる(夕暮れの広場。僕と晴ちゃんはすこし離れたところでパスを出し合います)

晴「なあ、ほたるって……本当に男なのか?」バシ

ほたる(晴ちゃんがパスを出しながら)

ほたる「うん、男だよ」バシ

ほたる(ボールを受け取った僕はきちんと本当のことを言ってパスを返します)

晴「そうか……」

晴「なんで女装してるんだ?」バシ

ほたる「前の事務所が倒産して路頭に迷っていたときに、プロデューサーさんにスカウトされたんです……女装アイドルとして」バス

晴「あいつが元凶かよ……断ろうとは思わなかったのか?」バシ

ほたる「それは……はい。アイドルになるという夢を諦めきれなかったから」バシ

晴「……」

ほたる「そんな自分勝手な理由で女装して、結局バレて迷惑かけて……」

晴「ほたるはどうしてそこまでしてアイドルになりたいんだ?」

ほたる「それは……不幸な僕でも笑顔を届けられるからです」

晴「笑顔?」

ほたる「はい。たくさんの人を笑顔にするのが僕の夢なんです。でも晴ちゃんを笑顔にするどころか怒らせて……本当にダメですよね」

晴「……ダメじゃねえよ」

ほたる「え?」

晴「一緒に仕事してわかったけど、ほたるって誰よりもアイドルに真剣で、この前だって梨沙にダンスのアドバイスしてただろ。女装なんて無茶なことしてまでやりたいことを頑張ってるのは……すげーと思う」

ほたる「晴ちゃん……ありがとう」

晴「ほたる、ちょっとキーパーやってくれよ」

ほたる「う、うん……」

ほたる(晴ちゃんは結局僕のことを許してくれたのかな)

ほたる(そんなことを考えながら僕はゴールの前に立ちます)

晴「よし、いくぞ!」

ほたる(晴ちゃんが放ったシュートは鋭い軌道を描き、ゴールの端に突き刺さりました)

ほたる「すごい、今のは取れませんよ!」

晴「へへ、そうだろ! ほたると練習したからな」

ほたる(晴ちゃんは得意げに笑って胸を張ります)

晴「だから……これからも練習付き合ってくれるか?」

ほたる「え、それって……」

晴「ああ、オレも男だとバレないよう付き合ってやるよ」

ほたる「っ! ありがとうございます!」

晴「おう、これからもよろしくな!」

ほたる(こうして僕と晴ちゃんは無事仲直りをし、秘密を共有する仲となりました)

ほたる(そして運動会当日……)

梨沙「やっと次は4人5脚ね」

愛海「練習の成果を見せようね!」

ほたる「はい!」

ほたる(殆どの競技が終了し、残す競技は4人5脚とリレーになりました)

ほたる(僕たちはスタートの位置について足を縛り肩を組みます)

晴「わっ」

ほたる(肩に触れると、晴ちゃんはビクッと体を強張らせました)

ほたる「ごめんなさい、やっぱり嫌ですよね……」

晴「いや離れるなよ、しっかり肩掴まないと倒れるだろ」

ほたる「でも……」

晴「大丈夫だって。思ったよりがっしりしてて驚いただけだ」

ほたる「え、そうですか? えへへ……」

晴「調子に乗んな。兄貴と比べたら全然だからな」

ほたる「はい……」

梨沙「あんたたちさっきから何の話してんの?」

晴「なんでもねえよ。よし、じゃあいくぞ!」

ほたる「はい!」

事務所

泰葉「運動会お疲れ様。優勝おめでとう」

茄子「4人5脚凄かったですよ〜。圧勝だったじゃないですか〜」

ほたる「ありがとうございます。無事練習の成果が出ました」

愛海「あたしも頑張ったよ!」

泰葉「愛海ちゃん借り物競走でくるみちゃん追いかけ回して失格になってたでしょ?」

愛海「だって『柔らかいもの』って書いてあったから……」

ほたる「愛海ちゃんは晴ちゃんを説得してくれたりして大助かりしました。本当にありがとうございます」

愛海「えへへ……」

茄子「晴ちゃんにもバレちゃいましたか〜」

泰葉「あの時は本当びっくりしたよね。事務所に来たらほたる君が倒れて悶えていたんだもん」

茄子「男の子ってあそこを蹴られたらあんな風になるんですか?」

ほたる「それはもう……はい」

泰葉「へー。男ってバレる要因なんだし切り落とした方がいいんじゃない?」

ほたる「怖いこと言わないでください」

晴「おはよーっす」ガチャ

愛海「晴ちゃんおはよー」

茄子「噂をすればなんとやらですね〜」

晴「ほたるー、サッカーしようぜ」

ほたる「いいですよ」

泰葉「晴ちゃん事務所でリフティングは危ないからダメだよ」

晴「ほーい……あっ!」

ほたる(泰葉ちゃんに注意された晴ちゃんはミスしてしまい、ボールが僕の方に飛んできたため、僕は立ち上がってキャッチしようとします)

晴「とっと……それ!」

ほたる「お゛っ!?」

晴「あっ……」

ほたる(晴ちゃんはボールを落とすまいと足を伸ばし、その足は不幸にも立ち上がろうとした僕の股間に突き刺さりました)

ほたる「あぅ……」チーン

晴「ほたる!? わりぃ!」

茄子「ほたるちゃん!?」

泰葉「ほたる君!?」

愛海「しっかり! 大丈夫!?」

ほたる(蹲る僕にみんなが駆け寄る中僕は……)

 
ほたる「切り落としてもいいかもしれない……」

ほたる(そんなふうに考えたのでした)

終わりです。ありがとうございました。
ほたるちゃんと茄子さんが歌う「いつかの、いくつかのきみとのせかい」が収録されている「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER GOLD RUSH! 05 オレンジタイム」(¥1,500+税)が12月16日に発売されます。ぜひお買いお求めください。


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