善子「きみここの法則」 (95)

善子「(私津島善子にとって、人生とは不幸の連続だった)」

善子「(生まれ持った不幸体質は齢を重ねるごとに強くなっているように思われ、幸運なことなどこの身に降り注ぐことが無いように感じられた)」







善子「(そして、今こうして話し相手も得られず教室でぼーっとしてるのもまた、不幸の一つだった)」

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善子「(不登校明けの私には友達がいない……クラスメイトと話したことが無いのだから当然だった)」

善子「(そんな私でもかろうじて名前と顔が分かるのは二人……)」チラッ






花丸「……」ペラッ


善子「(食い入るように本を読む国木田花丸、通称ずら丸)」

善子「(幼稚園以来の幼馴染であり、私のこのクラス唯一の話し相手だ)」

善子「(そしてもう一人は……)」チラッ

ルビィ「………ヒッ!」



善子「(こっちには……目が合っただけで逃げられてしまうので、多分怖がられている)」





善子「(そんな訳で、私の華の女子高生としての生活は随分と退屈だ)」

善子「(どこで道を違えたのかは分からない)」

善子「(あの自己紹介を考えた夜…?教室から飛び出した自分?何が悪かったのか、自分でもわからない)」

善子「(ただ、ここまで至った過去の自分を……漠然と恨めしく思うことは数えきれなかった)」

善子「はぁ……」

花丸「溜息は幸せが逃げるずら、善子ちゃん」

善子「ずら丸……もう逃げる幸せなんて残ってないっての」

花丸「またそんなこと言って…暗いのはダメずら」

善子「いいじゃない、ほっといてよ」

花丸「もう……善子ちゃんは不貞腐れすぎずら」

花丸「そうだ、何か部活とか入ったら? 善子ちゃん結構凝り性だったはずずら!」

善子「部活の中なんてとっくに輪が出来上がってるわよ……私が学校行ってない内に」

花丸「一年生だから歓迎されると思うけどなあ……」

善子「それに、めんどくさいわよ……毎日登校の度にバスに40分も揺られて、家に着くころにはヘロヘロなのにそれに加えて部活だなんて」

花丸「善子ちゃん最近まで学校来てなかったずら」

善子「……うっさいわね」

花丸「もう!善子ちゃんはさっきから暗すぎずら! もう少し明るくしてくれないとこっちまで気が滅入るずら」

善子「いいじゃない…何も全員が全員、女子高生がキラキラすることないじゃない」

善子「こうして何もせず、穏やかに過ごしていくのも悪くないわよ」

花丸「ホントにそう思ってる…?」

善子「……ええ、そうよ」

花丸「……しょうがないなあ……そんな幸薄で根暗な善子ちゃんにマルがとっておきの本を貸してあげるずら」

善子「アンタボロクソに言うわね……それに本って、 私活字苦手なのよね」

花丸「いいから! はい、明日までに読んでくること!」

善子「明日まで!?無茶なこと言わないでよ!」

花丸「40分バス乗る時間あれば半分くらいは読めるはずずら」

善子「どういうペースよ!それに、私車で文字読むと酔うのよ」

花丸「それでも…あっ、先生来たずら……とにかく!文句ばっかりの善子ちゃんにはピッタリの本ずら!」

善子「あ、コラッ!……もう……!」










善子「何なのよ…全く」

善子「大体、この本が何になるって言うのよ」

善子「なになに、タイトルは……」



『君のこころは輝いてるかい?』


善子「(タイトルから予想出来る通り、本の中身は怪しげな自己啓発本だった)」


善子「(揺れるバスの中文字を追っても頭に入るものは何一つなく、車酔いを和らげるため川岸で気分を落ち着かせる羽目になっただけだった)」


善子「(家に帰って読み飛ばしつつ、数時間で最後まで辿り着いても私の心に別段の変化は無かった)」


善子「(それはそうだ、この鬱蒼とした心がこの本一冊で晴れたなら大したものだ)」

善子「(ただ一つだけ、ひっかかる言葉があった)」

善子「(その言葉は、本の終盤に出て来た)」



善子「(『きみここの法則』 この本のタイトルの略称を使った、なんとも胡散臭い法則だった)」



善子「(中身は至極単純だった『聞かれたこと、お願いされた事に全てYes、はいなど肯定で答える』そうすることで心が明るく、人生がハッピーになるという)」


善子「(重ねて言うと、胡散臭い文言だ。自己啓発にありがちな、言い切った形も気に入らない)」


善子「(ただ、なぜかこの奇天烈な法則に、私は心を少し惹かれてしまう自分を感じたのだった)」

【教室】

花丸「昨日の本、読み終わったずら?」

善子「ええ、読みおわったけど……さして中身が無いわね」

花丸「それはそうずら、自己啓発本に面白さを求める方が間違いずら」

善子「何よそれ……アンタ分かってて貸したのね」

花丸「でも、気にならない? 『きみここの法則』」

善子「……」

花丸「『聞かれたこと、お願いされた事に全てYesと答える』これ以上なくシンプルな事ずら」

善子「いやでも困るでしょ、なんでもYesって……」

花丸「でも、意外と楽しいよ? 思いがけない世界が開けたりするし!」

善子「ん?……待ちなさい、楽しいって…アンタやった事あるの?」

花丸「やったことも何も、今もやってるよ?」

善子「えっ……」

花丸「四月からはずっとずら、割と楽しいよ? 図書委員になったのもこれがきっかけずら」

善子「……なら今アンタになんか言ったら全部Yesで返すのね?」

花丸「もちろんずら」

善子「へ、へえ……」ニヤッ

善子「ずら丸、立ちなさい」

花丸「“わかった”ずら」スクッ

善子「三回回ってにゃあと鳴きなさい」

花丸「“はーい”……いち、にい、さん……にゃあ」クルクル

善子「マジか……」

花丸「マジも大マジずら、」





善子「(ずら丸が『きみここの法則』をしてるのか、それとも私をからかってるのか、正直半信半疑だ)」

善子「(だから、ちょっと試してみることにした)」





善子「じ、じゃあこっち来て」

花丸「"うん"、善子ちゃん」

善子「そ、その小生意気な胸を触らせなさい!」

善子「(ここまですれば流石に……)」

花丸「…………」

善子「……何よ」

花丸「いや、いいけど……はい」ズイッ

善子「へ…?」

花丸「善子ちゃんが言ったずら、“はいどうぞ”」

善子「(これはどういう絵面なのだろうか)」モミモミ



花丸「ああもう、善子ちゃん触る力強すぎ……ずら」


善子「(朝の教室、私の両の手の内には幼馴染の柔らかいところが二つ)」モミモミ




善子「……でっか」モミモミ

花丸「……善子ちゃん言葉に出てるずら」



善子「(服の上からで感触が分からずとも、その重量感が手に伝わって来る)」

善子「(……おっぱい)」

ザワ……ザワ……




「国木田さんと……津島さん……?朝っぱらから何してるの…」

「もしかしてそういう…?ちょっと…アンタ聞いてきてよ」

「え~!いやよ、恥ずかしい!」




善子「…ッ!」バッ

花丸「……終わりずら?」

善子「え、ええ……離れて席に戻りなさい」

花丸「“うん”、分かったずら」









善子「(結局、私のクラスメイトからの印象は『無』から、少し奇異な物を見る目へと変化した)」



善子「(君ここの法則について、私はまだ半信半疑だった。自分がやって、本当に良い影響が出るのか分からない)」

善子「(ただ、私の手のひらには先程までの確かに温かな感触が残っていた)」

善子「……でかかった」

【授業後】


善子「さて……さっさと帰ろ、今日は長めに配信するって告知しちゃったし」




ルビィ「あ、あのっ……津島さん?」

善子「え、ええ…そうよ」

ルビィ「あの…その……」

善子「……どうかしたの?」

ルビィ「あの……今日ルビィ、掃除当番なんだけど……今日どうしても用事があって……」

善子「代われってこと?」

ルビィ「あ、あの……次当番の時はルビィが代わるから……」

善子「ふうん…用事って?」

ルビィ「あの…っ…その……」

善子「………」

ルビィ「ぶ、部活見学」

善子「(いつもの私なら断っていただろう、配信の約束を反故にする程、向うの用事はどうしても、という物でも無い)」

善子「(しかし、私の頭には朝の出来事が蘇っていた)」


善子「(『きみここの法則』……変な風に当てられたのか、ここで私はあの本を試してみることにしたのだった)」





善子「……“いいわよ”次代わってくれるなら」

ルビィ「……ホント!?」

善子「ええ、だから早く行きなさい」

ルビィ「ありがとう、津島さん!」

善子「それで、どこを掃除すればいいの?教室?」

ルビィ「あー…えっと、ルビィの掃除当番なんだけど……」

【体育倉庫】


善子「(引き受けた掃除当番は、グラウンドの倉庫の掃除だった)」







善子「跳び箱をこっちに運ぶのね……よいしょ……重っ!」


善子「よっ……ゴホッ!ゴボッ!」


善子「ええと…マットがあっちで……あぁもう!手が砂だらけ!」






善子「(砂と埃に囲まれた掃除は、端的に言って最悪だった)」






善子「……引き受けずに、大人しく家で配信してればよかった」

善子「はぁ……」

善子「まあ、もう適当に終わらせてさっさと帰ろ…」


善子「ええと、次に砲丸投げの玉の数を…よいしょっと……」





ツルッ




善子「あっ」

善子の手からこぼれ落ちた砲丸は、そのすぐ真下にある彼女の足の指へと直撃した

骨を砕くような鈍痛が、体の末端から脳を揺さぶる様に全身へと駆け巡る



善子「痛ッ……ぅ……ぁ」




善子「ぁ……ヤバっ……立てない……折れたかしら……」




善子「あっ……クソッ……やっぱ受けなきゃ良かった……」

??「ふんふん~……あ、やっぱ倉庫の鍵開いてる…そりゃ職員室に無い訳だよ……」


??「えっと……カラーコーンはあるかなっと…」


??「ん…?」






善子「ぅ……ぁ……」







??「た……た………」



??「大変だーーーーーー!!!!!」

善子「(それからの事は、あまり覚えていない)」

善子「(砂だらけの床で痛みにのたうちまわっている所を、見ず知らずの人に半ば背負われるようにして保健室まで運ばれた)」

善子「(足が割れるような痛みに歯を食いしばって耐えて続けていたので、私には顔も、背格好も確認する余裕がなかった)」







善子「いたた……」

??「大丈夫…?倉庫の中で転げ回ってたけど…」

善子「え、ええ……砲丸投げの玉が足に落ちて」

??「ええ…!?それは大変!骨折してないといいけど…」

善子「ええと……ごめんなさい、あなたは…」

曜「あ、ごめん……私は二年の渡辺曜だよ」

善子「渡辺、先輩……ありがとうございます」

曜「あはは…苗字で呼ばれ慣れてないから、曜の方で呼んでくれると嬉しいな」

善子「えーと……“はい”……じ、じゃあ……曜先輩」

曜「うん、ありがと!」

曜「あ、そうだ…君の名前は?聞いてなかったな」

善子「えっと…津島善子です」

曜「津島善子…じゃあ善子ちゃんだ、えへへ」

善子「え、ええ……」


善子「(この人…距離を詰めるのが異様に早い…)」

善子「あ、えっと……どうして倉庫なんかに?」

曜「あー…ちょっと部活に使うためにカラーコーン借りようとしてさ、そしたら倒れてたからびっくりしたよ」

善子「あ、ありがとうございます」

曜「いいって!いいって!助けられてラッキーだったよ!」






千歌「曜ちゃーん!あ、いた!なんで全然帰ってこないの!」

曜「あ、千歌ちゃん…こめん、ちょっと人助けしてね」

千歌「人助け?」

曜「倉庫に行ったらこの子が倒れててさ、だから保健室まで付き添ったんだよ」

善子「どうも……」

千歌「なるほど……それはしょうがないね」

千歌「でも!連絡くらいしてよね!梨子ちゃん今日急ぐからってもう帰っちゃったよ!」

曜「あー……ごめん、携帯教室に置きっ放しだ」

千歌「もう…次は気をつけてね」

【帰り道】

善子「(何故か3人で帰ることになった……)」




曜「あ…そうだ、善子ちゃんに言ってなかったね、私達スクールアイドルを始めるんだ」

善子「スクール……アイドル?」

曜「そうそう…で、その仮のステージ用にカラーコーンを借りに行って、善子ちゃんを発見したって訳」

善子「なるほど、それでカラーコーンを……」

千歌「ふんふん~♪」

曜「千歌ちゃんご機嫌だね?」

千歌「そりゃあね、なんとあの梨子ちゃんが後一歩で入ってくれそうなんだよ!」

曜「へえ……最初断られた時はどうなるかと思ったけど…よくそこまで漕ぎ着けたね」

千歌「でしょう!それに、もう1人入ってくれそうな子が見学にしに来たんだよ!」

曜「へえ…私が居ない間にそんな事が…」

千歌「すっごいカワイイ子だったよ!ありゃもう浦の星の逸材だよ」

曜「へー!私も会うの楽しみ!」

善子「…………」







善子「(…………い、居づらい)」

千歌「次のバスは20分後……じゃあ私歩いて帰るね」

曜「そっか、お疲れ~千歌ちゃん」

千歌「うん、またね曜ちゃん」

千歌「それと…善子……ちゃん?」

善子「あ、は、はい!」

千歌「足、お大事にね?」

善子「あ、ありがとうございます……」


千歌「じゃあね、2人ともバイバイ!」







曜「さて、と……残ったって事は善子ちゃんもバス通学?」

善子「あ、そうです」

曜「そっか~……家どの辺?」

善子「えっと、沼津駅前の少し南の方です」

曜「……うそ、うちと近いかも……バス停どこ?」

善子「えっとバス停は……」



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曜「バス停も同じだしめちゃくちゃ近いじゃん!」



善子「あはは…そうですね」

曜「いやー…同じ方面でバス通学の人全然見つからないなぁと思ってたらこんな偶然で会えるとは」

善子「やっぱり、駅からだと遠いですもんね」

曜「うんうん!帰りは途中まで一緒に帰れるけどさ、結局最後には誰も居ないから寂しいよね~……1人だと下手したら乗り過ごすし」

善子「はは…そうですよね」

善子「(元々帰り一緒に帰る人いないけど)」

曜「じゃあさ!明日一緒に登校しようよ!いつも何時のバスに乗ってる?」

善子「ええと…7時25分のバスです」

曜「あー…私より一本早いのか、了解!ちょっと早起きするね!」

善子「あ、あの、えっと…」

曜「あ、ゴメン……誰か一緒に行く人いた?」

善子「いや…いないですけど」

曜「じゃあ、一緒に登校してくれる…?」

善子「えっ?あっ…えっと…“はい!“」

曜「オッケー!おっと、私ここで降りなきゃ……じゃあ善子ちゃんまた明日ね!バイバイ!」


善子「あっはい……さようなら……」

善子「(私の知り合った先輩は、嵐のように距離を詰めて来る人間だった)」

善子「(砂と埃まみれになって、足を痛めて、先輩の知り合いが2人できて)」

善子「(そのうち1人とは一緒に登校することになって)」

善子「(プラスかマイナスか……分からないけど、私の人生は少しだけ動き始めた)」

【次の日の朝 教室】


善子「ふぁぁ……」


善子「(結局、朝のバスの中でも曜先輩は喋りっぱなしだった)」

善子「(いつもの習慣ではバスの中で睡眠の延長戦をしていた私は今、瞼を重くする羽目になっていたが、不思議と悪い気はしなかった)」





花丸「おはようずら、善子ちゃん」

善子「あ、ずら丸おはよう……じゃなくて!私アンタのせいで酷い目に合ったんだから!」

花丸「酷い目? マル、善子ちゃんに何もしてないずら」

善子「これ!左足が包帯でグルグル巻きよ!」

花丸「わ、ホントだ…どうしたの?」

善子「昨日体育倉庫の掃除したら砲丸を足に落として…病院行ったらヒビ入ってるって言われたのよ」

花丸「どうでもいいけどそんなに足上げてるとパンツ全開ずら」

善子「……!」バッ

花丸「でも、善子ちゃんが痛ましい事になったのとマルは何の関係も無いずら、濡れ衣もいい所ずら」

善子「元はと言えばアンタが『きみここの法則』なんてやれって言うから引き受けたのよ!」

花丸「あ、そういうこと?」

善子「いつものヨハネなら絶対に倉庫掃除なんて受けなかったわ!全く、変な事吹き込むからよ!」


花丸「……善子ちゃん、もしかして『きみここの法則』を疑ったり、選択に後悔したりしなかった?」

善子「はあ? 疑うも何も最初から信じてな……」

善子「(ん……まてよ?)」








善子『跳び箱をこっちに運ぶのね……よいしょ……重っ!』

善子『よっ……ゴホッ!ゴボッ!』

善子『ええと…マットがあっちで……あぁもう!手が砂だらけ!』



善子『……引き受けずに、大人しく家で配信してればよかった』

花丸「『きみここの法則』は自分の中のルール、おまじない……漢字で書くと“呪い”ずら」

花丸「誓いを破ればそれ相応のバツがあるのは当然ずら」

善子「はあ!?誓いなんてそんな事聞いてないわよ!」

花丸「まあまあ、そんなに深刻になる事無いずら、全部に『Yes』と答えるだけでいいずら」

善子「それがヤなのよ……あんた、私に100万寄こせって言われたら渡すの!?」

花丸「無い物は渡せないずら、ただ、持ってるお金をって言われたなら渡すずら」

善子「……アンタ、おかしいわよ」

花丸「まあまあ、本来は相手に『きみここの法則』をやってるってバレてないのが普通で…双方が知ってるマルと善子ちゃんの関係が特殊なだけずら」

善子「はぁ……もう、わけわかんないわよ……」

花丸「そんなに肩肘張ってやるもんじゃないずら、人生を楽しく明るくするためのものずら」

花丸「それに…ほら、善子ちゃんにお客さんみたいずら」

善子「へ……?」







曜「善子ちゃーん!」

千歌「……」フリフリ

梨子「…」ペコリ

曜「ごめんね善子ちゃん、千歌ちゃんがどうしてもって言うから」

梨子「この子が?」

千歌「うん!いやー悪いね、わざわざお呼び立てして」

善子「いえ、大丈夫です……でも、何で…」

曜「ああ、それはね……」

千歌「むむむ……」ジー

善子「うぅ……」

善子「(めっちゃこっち見てる……)」

梨子「ちょっと…そんなに見たら失礼よ」

千歌「ああ、ごめんごめん…でも、やっぱりバッチリだよ!善子ちゃん、うちのスクールアイドルグループに入ってくれないかな?」

善子「へ…? アイドル?」

千歌「瞳パッチリ、睫毛も長い!足もすらっと!アイドルとしてバッチリだよ!」

善子「ええ…そんな」

曜「千歌ちゃん、昨日からどうしても善子ちゃんを勧誘したいって言っててね」





千歌「それで善子ちゃん…入ってくれるかな?」

善子「ええと…それは……」

善子「(いつもの私なら恥ずかしくて断っていただろう)」

善子「(ただ、この時の私は『Yes』と言いたい気持ちを、あの法則のせいにして)」

善子「(心の中で燻ぶっていたいた気持ちを、口元まで吐き出したのだった)」









善子「“分かりました”やります」

千歌「え…!?ホント!やった!!」

曜「やったね!千歌ちゃん!」

千歌「ホント…ありがとう善子ちゃん!ホントありがとう!!」ブ゙ンブン

善子「あの…その、どうも……」

善子「(力強ッ…!)」

梨子「千歌ちゃん手振り回しすぎ……」

千歌「詳しい練習場所とかは追って連絡するから…とりあえず、LINE教えて!」

梨子「あ、じゃあ私も」

曜「あ!そういえば私も聞かずじまいだった!善子ちゃん、いいよね!?」

善子「え……あ、“はい”」




善子「(こうして私に、一つの『居場所』が出来た)」

善子「ふぅ……」

花丸「なにやら楽しそうだったずら」

善子「……まあね」

花丸「うんうん、人生楽しそうに転んでて良い事ずら…人生明るいのが一番ずら」

善子「アンタはどうなのよ、毎日本読んでて…楽しいの?」

花丸「…………マルは善子ちゃんをからかっている時が人生で一番楽しいずら」

善子「……悪趣味なやつ」

【千歌の家】


千歌「まず手始めに、梨子ちゃんに曲を作ってもらいたいんだけど……」

梨子「曲だけあっても…やっぱり注目されるのはは難しいわよね」

曜「PVかぁ……」

善子「スクールアイドルもPVとか作るんですか?」

千歌「そうだよ~!というか、無料で見られるPVが活動の主戦場になってるスクールアイドルがほとんどかな」

梨子「私は最近見始めたばかりだけど……凝った動画が多いわよね」

曜「でもここまでのクオリティは時間をかけるだけじゃなくて技術の勉強もしなくちゃ…かな」

千歌「むう……難儀だなあ」

善子「…………」

善子「ええと……動画ならちょっとだけ出来るかも…なんて」

曜「善子ちゃん、パソコン詳しいの…!?」

千歌「すごい!こっちでも即戦力とは…」

善子「あはは……」

善子「(昔使ってた動画の効果素材…一応とっておいたわよね…?)」


千歌「じゃあじゃあ、編集とかお願いしてもいいかな? お礼はしますんで何卒……」

善子「え、ええと……“はい!”」

千歌「やったー!ありがとう善子ちゃん」スリスリ

善子「うへぇ……」スリスリ

梨子「千歌ちゃん……善子ちゃんにめり込むまで擦りつかないの」

曜「あはは……」

善子「(『きみここの法則』を始めてから二週間が経った)」

善子「ルビィが誰かに話したのか、はたまた普段の様子を誰かが見ていたのか……私はクラスで『頼み事を良く聞いてくれるいい人』との評価を受けていた」




クラスメイト「ごめん善子ちゃん、さっきの時間寝ちゃってノート取れなくて…明日絶対消すからコピーさせてくれない?
善子「“いいわよ”、はい」

クラスメイト「この砲丸20個運んどけって先生に言われたんだけど今日デートで…お願いできないかな」

善子「“ええ”、いいわよ!」

果南「そこの君!わかめぬるぬるパーティに来ない?」

善子「“行きます”!」





善子「(流石に全てに“Yes”と答えてるとは気付かなくとも、私を頼って声をかけてくる人が少し、現れるようになった」

【わかめぬるぬるパーティ会場(松浦家)】


果南「わかめぬるぬるパーティへようこそ!……といっても誰も捕まらなかったから私と君だけなんだけどね」

善子「あっ……そうですか」

果南「それに、調子に乗ってぬるぬるとか付けたけど結局のところわかめ食べる会だからね~」

果南「あ、ホラホラ座って楽にして、……ハイ、お通しのわかめの酢の物」

善子「あ、はい頂きます……おいしい」

果南「あはは、そりゃよかった……今わかめ鍋作るからさ、ちょっと待っててね」

果南「あ、ほらそっちのやつ色が変わったよ」

善子「あ、ホントだ…頂きます」




果南「善子…ちゃんだっけ? 部活とかなにやってるの?」

善子「部活…ですか?」

果南「そうそう、ほら、私何も知らずに君のこと誘っちゃったじゃん…だから、その辺の話聞きたいなって」

善子「ええと…部活はしてません」

果南「あ、そうなんだ…まあ、帰宅部って言うのも気楽でいいよね!」

善子「でも……最近、同好会でスクールアイドルをしています」

果南「……」ピクッ

果南「スクールアイドル、浦の星で?」

善子「はい、といっても最近参加したばっかりでまだ練習とかはあんまりしてないんですけど……」

果南「ふーん……そうなんだ」

善子「はい、そんな感じです……」

果南「…………」

善子「…………」

果南「…………」

善子「…………」






善子「(なんか急に空気が重くなった……)」

果南「ちょっと、やってみてよ」

善子「え……?」

果南「だからちょっと踊ってみてよ、なんでもいいから」

善子「え……いや、まだオリジナルの曲とかなくて…他のアイドルの真似して練習とかしかしてないです……」

果南「じゃあそれでいいから、見せてよ」

善子「えっと……あっ……“はい”」




善子「(ヤバイ……ヤバイ!ヤバイ!!なんか地雷踏んだ!?)」

善子「(……変な汗出てきた)」ダラダラ



善子「はい、じゃあいきます」

果南「うん、どうぞ」



善子「I say~!ヘイ!ヘイ!ヘイ!スタートダッシュ!」キュッキュッ

果南「………」ジーッ





善子「(ヤバイ!ヤバイ!なんか無言でじっとこっち見てるし……))

善子「(背中、冷や汗だらけでべちょべちょ…)」

善子「産毛の小鳥たちも~♪」

果南「…………」


善子「(帰りたい……)」






果南「…………ストップ、歌はいいけどダンスの纏まりが無いかな」

善子「明日がさく………へ?」

果南「ちょっとそこに真っ直ぐ立ってみて」

善子「あ…“はい”」

果南「足を肩幅に開いて、手は胸の前」

善子「はい」スクッ

果南「まず初心者にありがちなんだけど……歌う時に手が下がってる。だから初めのうちは意識して手を落とさないように、見栄えが悪いから」

善子「は、はい!」

果南「それと……歌とダンスを同時にしなきゃいけない時、視線が前を見てないからそれも直すように」

果南「それからサビ前、ステップでリズム取るところが……」




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善子「フッ!……ホッ!」キュッ

果南「うん、及第点かな」

善子「はぁ…はぁ…その、ありがとうございます」

善子「あ、あの…聞いていいか分からないんですけど……」

果南「……昔やってたよ、スクールアイドル」

善子「へっ…?」

果南「ほらほら帰りな、家遠いんでしょ?早くフェリー乗らないとバス無くなっちゃうよ?」

善子「え…あ!ホント…し、失礼します!」

バタバタ……


果南「…………アイドルのダンスなんて久しぶりに踊ったかな」



果南「……そういやダイヤが帰って来たって言ってたっけ…電話位してやるか」




Prrrrrrrrrrr……




果南「あ、もしもし鞠莉?」

果南「いや、ダイヤが帰って来たって言ってたからさ」

果南「は?何怒ってるの!?電話が遅いって…めんどくさい彼女か!!」

果南「へ?河原に来い!?河原ってどこだよ!一面海だよ!!」

果南「決闘するなら河原って相場が決まってる…?何バカな事言って……あ、ちょっと!待って!切らないで!結局河原ってどこなの!?」






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【次の日 屋上】

善子「よっつ!ほっ!……ハッ!」ピタッ

曜「すごい!善子ちゃんダンス滅茶苦茶上手くなってる」

梨子「歌ってても軸がぶれてない……そこすごく難しい所なのに…」


千歌「善子ちゃんがこんなにスクールアイドル活動に真剣になってくれるなんて…チカ感激だよ!!」ギュッ

善子「うぐっ……ぐえっ」

曜「千歌ちゃん、千歌ちゃん…善子ちゃん締まってる」

善子「げほっ…げほっ…死ぬかと思った」

曜「こりゃアイ活が嫌になる前に千歌ちゃんのセクハラで辞めるのが先かな~」

梨子「辞めるのは確定なのね……」

千歌「そんなー!……辞めないでね?善子ちゃん」

善子「あはは……“はい”」



善子「………ん、あれ? 」






ルビィ「…………」ジーッ

善子「あっち…誰かいない?」

曜「へ……ああ、あれはルビィちゃんだね」

梨子「こないだ…見学に来てくれた子よね?」

千歌「うんうんあの子が有望株で………だけど、どうしたんだろ…こっちに来ないでずっと見てる」

善子「……ちょっと私行って来ます、クラスでもたまに話すので」

千歌「へ…?善子ちゃん知り合いだったの!?」

曜「千歌ちゃん、一年生は12人しかいないんだよ」

千歌「あぁ…そりゃ知ってるか……」

善子「ちょっと」

ルビィ「ヒッ…!」

善子「私って……そんなに怖い?」

ルビィ「あ……津島さん……」

善子「……名前でいいわ」

ルビィ「へ……?」

善子「ええと……苗字で呼ばれるの慣れてないから、なんて」

ルビィ「あ、うん…分かったよ」

善子「こんな所で見てないで…練習に入れて貰ったら? あんたの顔ならあの人達喜んで入れると思うけど?」

ルビィ「ええと…入りたいって言ったことは、あるんだけど…」

善子「あ、そうなの……で?」

ルビィ「すごい歓迎してくれて、ルビィもやりたいって思ってるんだけど……」

ルビィ「その……お姉ちゃんが…」

善子「……? なんで姉が出てくるのよ」

ルビィ「ええと…話すと長くなるんだけど…」

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善子「……とどのつまり、あんたの姉がアイドル関係で揉めて、アンタの活動にいい顔しない…ってことね」

ルビィ「う、うん…簡単に言うとそういう事かな…」

ルビィ「説得したいけどルビィ自信なくて……代わりに言葉だけ誰かに伝えて貰おうかとも思ったけど頼める人もいないし…」

善子「ふーん…そうなのね」

ルビィ「ねえ、その……善子ちゃんから言ってくれないかな…?」

善子「……」ピクッ

ルビィ「……なんてね、ごめん善子ちゃん…いくら何でもここまで頼むのは迷惑だよね…」

善子「……わよ」

ルビィ「へ…?」

善子「“いいわよ!”私があんたの姉に言ってあげるわ!!」

ルビィ「えええ!?…でも…」

善子「いいから!今アンタの姉貴はどこにいるの? アンタの家?」

ルビィ「ええと、この時間ならお姉ちゃんは生徒会室に居ると思う…」

善子「え、生徒会室に居るの!?なんで!?」

ルビィ「なんでって…生徒会長だから……」

善子「生徒会長なの!?」

【生徒会室】

善子「(そんなこんなで、私は生徒会長と対面している)」


ダイヤ「ええと…あなたの名前は?」

善子「津島ヨハ……善子です」

ダイヤ「津島善子さん、一年生ですね」

善子「は、はい……」

ダイヤ「それで? 今日はどういった要件で?」

善子「ええと…その……」





善子「(怖ッ!あの子の姉だからゆるふわ系かと思ったらガチガチにお固いじゃない!)」

善子「ええと…黒澤先輩に話があってここに来ました」

ダイヤ「私に……? まあいいでしょう……で、どのような話ですか?」

善子「えっと……その……」


ダイヤ「……話を纏めて来ていないのですか」

善子「いやっ!そんなことは無いです!ちゃんと考えてあります!

ダイヤ「……なら早く言いなさい、私それほど暇ではないのです」


善子「……話は、あなたの妹ルビィについてです」

ダイヤ「……聞きましょう」

ダイヤ「…………つまり、ルビィがスクールアイドルを認めてほしくて貴方を送り込んだと」

善子「そんな使い走りにしたみたいな…私は自分で…」

ダイヤ「どちらにせよやってる事は同じでしょう、自分で話しに来ないのですから」

善子「うっ……」

ダイヤ「まどろっこしい事は嫌なので完結に返すと答えはノーです」

善子「そんな……あなたはただの姉でしょう?」

ダイヤ「そもそも、家族の話にあなたが口出しする方が間違っています」

善子「……正しい正しく無いの話に、家族かどうかは関係ないと思います」

ダイヤ「おだまらっしゃい!!」

善子「……」ビクッ

ダイヤ「これ以上私に食い下がってどうするつもりですの?土下座でもしてくれるんですか?跪いて足でも舐めてくれるんですか?」

善子「それは……」

ダイヤ「出来ないでしょう…?…そもそも、貴方があの子と私の何を知ってるんですの?私がノーと言っている以上、そこで終わり。それだけの話です」

善子「でも……そんな!」

ダイヤ「でも、じゃありません……それとも本当に舐めて下さるんですか?」

善子「ぐっ……」

ダイヤ「ほらほら、足を舐めて下さいな」ヒラヒラ

善子「……」ピクッ

善子「……“分かりました”」

ダイヤ「は……?」

善子「上履き、失礼します」ゴソゴソ

ダイヤ「は?え…?じ、冗談ですよね?」

善子「………」チュッ

ダイヤ「ひっ……そんな、き、汚いですわ!」

善子「動かないでください……顔蹴られそうで怖いです……ん…ちゅ……」

ダイヤ「ひゃ、ひゃい…」

善子「くちゅ…ぷはっ……れろ……」

ダイヤ「……い……や、やぁ」




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【次の日 部室】

千歌「この度ルビィちゃんが新しくメンバーになってくれることになりました!」

ルビィ「みなさんよろしくお願いします!」

曜「よっ!ルビィちゃん待ってたよ!」

梨子「これで五人…確か、これで部活申請できる人数よね」

善子「あー……それが、五人じゃないみたい」

曜「へ?どういうこと…?」





ダイヤ「…………」

千歌「生徒会長も参加してくれるんだって!なんでもスクールアイドル経験者なんだって!」

曜「へー!それは心強いね!」

梨子「いままで私達殆ど独学だったから、ありがたいわね……よろしくお願いします」

ダイヤ「よ、よろしくお願いしますわ」

善子「……よろしく」

ダイヤ「ひ、ひゃい…」

ルビィ「お姉ちゃん…?」

ダイヤ「何でもないわ…何でも無いのよ、ルビィ」

千歌「あとそれと、もう一つ嬉しいニュースです!」

曜「お、なになにー?」

千歌「今日はいないんだけど……ずっとスクールアイドルに勧誘していた果南ちゃんですが、この前遂に参加してくれると言ってくれました!」

千歌「いや、なんかね…もう一人連れて来るからその子と一緒ならいいよって」

梨子「え…あの先輩、千歌ちゃんが勧誘の話する度眉間に皺寄せてたけど……」

ダイヤ「果南さんが!?」

善子「生徒会長、知り合いなの…?」

ダイヤ「ええ…ええと、その……」

ルビィ「……お姉ちゃんと果南さんは…昔同じスクールアイドルグループだったんです」

千歌「なんでももう一人の子は金髪で、最近まで喧嘩してたんだけどちょっと前に河原で殴り合って仲直りしたんだって」

善子「嘘よね…?そんな昭和の不良みたいな」

曜「……たぶん果南ちゃんの嘘だよ、時々私達をこうやってからかうんだよ」

千歌「だよね!やっぱり私達をおどかす為の冗談だよね!」

千歌「(果南ちゃん顔めちゃ傷だらけだったけど)」



ダイヤ「……」

ルビィ「おねえちゃん…?」

ダイヤ「ルビィ…大丈夫、何でもありません…私としても喜ばしい事ですわ」

ルビィ「……そっか」

千歌「しかし、八人とは…大所帯になったね!」

曜「そうだね…!いままで以上に練習に気合入れていかないと!

梨子「運動音痴にもペースを合わせて貰えると嬉しいかな……」

曜「いやいや…そこは頑張っていかないと!ね?ルビィちゃん!」

ルビィ「え、ええと…はい、頑張ります!」

ダイヤ「ちょっと、個々人のペースに合わせた練習も必要ですわよ!」

曜「はーい……じゃあ今日は練習どうする?」

善子「ダンスで良いんじゃないの?まだ合わせられて無い所多いし」

梨子「確かにそうね…新しいメンバーも多いんだし」

曜「じゃあ、まずグラウンド数周して体を温めた後屋上でダンス練習だね!決定!」

曜「千歌ちゃん置いてくよ~!」

千歌「あ、チカまだかかりそうだから先行ってて!」

曜「りょうかーい!」






千歌「よっと……急がないと」ドン



バサバサバサ…



千歌「あ…善子ちゃんの鞄の中身出ちゃった……」

千歌「ごめんね善子ちゃん……よいしょ、よいしょ…」


千歌「ん?なにこれ…本?」


『君のこころは輝いてるかい?』



千歌「なんだろこの本……」ペラッ

千歌「ええと、なになに……『きみここの法則』……?」


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千歌「………」

善子「ちょっと千歌、いつまで経っても来ないから皆不思議がってるわよ」

千歌「善子ちゃん……」

善子「いつまでもなにやって……それ、私の鞄にあった本よね……?」

千歌「勝手に読んじゃったのはごめん、善子ちゃんの鞄肘に当たって中身出ちゃって」

善子「ああ……うん、そうなのね」





千歌「ねえ、善子ちゃん……この『きみここの法則』ってやってるの?」

善子「え…?」

千歌「……答えて」

善子「……」ピクッ

善子「ええ、やっているわ」

千歌「…………」

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千歌『それで善子ちゃん…入ってくれるかな?』

善子『ええと…それは……』 

千歌『…………』

善子『“分かりました”やります』

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曜『こりゃアイ活が嫌になる前に千歌ちゃんのセクハラで辞めるのが先かな~』

梨子『辞めるのは確定なのね……』

千歌『そんなー!……辞めないでね?善子ちゃん』

善子「あはは、“はい”……」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

千歌「この法則でYesって言わないといけないから…私の勧誘を受けてくれたの?」

善子「なっ…ち、違ッ…!」

千歌「でもこの法則、やってるんだよね…?」

善子「そ、それは……」

千歌「……チカが聞いたから無理して入ったんだったら……私……」

善子「……そ、そんなこと!」






千歌「……今日は帰るね、みんなには体長悪くなったって伝えといて」



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【次の日の朝 一年生教室】

善子「はぁ……」

花丸「おはよ、善子ちゃん……浮かない顔だね?」

善子「ああ……おはよう」

花丸「元気出して、明るく振る舞うことが人生ハッピーの近道ずら」

善子「元はと言えば……やっぱり、アンタのせいよね……」

花丸「その調子だとまた、あの法則の話ずら?」

善子「そうよ……どうして?私今回疑ってないし、ノーなんて言おうともしなかった…なのに…なんで?」

花丸「そりゃそうずら、そもそも『きみここの法則』でバチが当たるなんてマルが口から出まかせ言っただけずら」

善子「え」

花丸「もっと言うと、絶対に『はい』って言わなきゃいけないっていうのもマルが勝手に言い出した事ずら」

善子「…は?」

花丸「……やっぱり善子ちゃん、ちゃんとあの本読んでなかったんだね…」

善子「え……だって!あの時確かに私は怪我する前に疑って…!」

花丸「そもそも、あんな胡散臭い法則を最初から100パーセント信じる方が普通の人間じゃないずら。聞いたら最初、大体の人は信じないずら」

善子「でも、アレをするようになって……私の学校生活は変わって…」

花丸「だから、それこそが『きみここの法則』ずら」

善子「……へ?」

花丸「……やっぱり善子ちゃん、ちゃんとあの本読んでなかったんだね…」

善子「え……だって!あの時確かに私は怪我する前に疑って…!」

花丸「そもそも、あんな胡散臭い法則を最初から100パーセント信じる方が普通の人間じゃないずら。聞いたら最初、大体の人は信じないずら」

善子「でも、アレをするようになって……私の学校生活は変わって…」

花丸「だから、それこそが『きみここの法則』ずら」

善子「……へ?」

花丸「人生の全てにイエスと答えるなんて馬鹿げたことずら、そんなことで人生回る訳ないずら」

善子「でもあの時アンタは私の言うことを何でも聞いて……その、胸まで……」

花丸「あれは善子ちゃんが信じてなかったから、ちょっとからかっただけずら」

善子「えっ」

花丸「あの法則の本質はそこでは無いずら、心の底から全部にイエスって言えるのは外界に興味が無いか、よっぽどのお調子者ずら」

花丸「イエスと言うことで人生の歯車を少しだけ回す。あの法則に出来ることはそれだけずら、そこからの運命を変える力なんて存在しない」

善子「……でも、私は確かに変わったの!いっぱい話しかけてくれる友達や先輩も出来たのよ!それで運命変わってないって言うならなんなのよ!」



花丸「それで変わったのは、善子ちゃんの未来ずら」





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【授業後 教室】

花丸『善子ちゃんがまだ隠してる心を出して“イエス”と言える様になること、それが肝心ずら』





善子「(結局、最後にあいつは私に答えを伝えず自分の席へと戻っていった)」

善子「なんなのよ、心からイエスだなんて……」

善子「スクールアイドル活動も、みんなと一緒にいること私にとって、とっくに……」



善子「(とっくに…とっくに何だ? 私は何を言い淀んだ?何を恥ずかしがった?)」

善子「(……これがずら丸の言っていた、隠してる心なのかもしれない…のだろうか)」



善子「(でも、みんなの前で心を晒す勇気なんて…)」






ダイヤ「善子さん…? あ、やはり教室にいたんですね」

善子「あ、生徒会長…」

ダイヤ「もうすぐ練習が始まりますわよ? 着替えの時間も考えたら早くしないと間に合いませんわ」

ダイヤ「他の皆さんはもうグラウンド出てますから、部室には私一人しかいませんでしたわ……」

善子「(一人…? そうか、一対一なら…もしかしたら)」







善子「あの…生徒会長一つお願いがあるんだけど……」

ダイヤ「は、はひ!? わ、私にお願いですか!?」

ダイヤ「それは…善子さんのお願いなら内容によりますが基本的にOKというか…代わりと言っては何ですがお願いがあるというか…」

善子「生徒会長…悪いけど千歌さんを呼んできてくれない?」

ダイヤ「千歌さんですね!わかりました!」ピュン

千歌「善子ちゃん…」

善子「……どうも」

千歌「ダイヤさんが言ってたよ……『よく考えたらなんで私がパシらされてますの…』って」

善子「それは……後で、謝っておきます」

千歌「そうしなよ……で、何の用?」

善子「この前の、本の話です」

千歌「……」

善子「私は、確かに……」

千歌「聞きたく……ないよ…!」

善子「へ…?」

千歌「もし、善子ちゃんがあの法則のせいで私達の活動に参加することになって、イヤイヤ参加してて」

千歌「あの時はついカッとなって、イヤイヤずっと居たんだって思ったら怖くなって……善子ちゃんを攻める様なことしちゃったけど、それで一緒にいられなくなるんだったら…」

千歌「私は……グスッ……聞きたくないよ」

善子「千歌さん……」

善子「……」ギュッ

千歌「……へ?」

善子「千歌さんが、まだ会ったばかりの私にしてくれたことよ」

千歌「善子ちゃん……」

善子「私は確かに『きみここの法則』であなたの誘いを受けた、でもそれは……自分の意思に反しての事じゃなかった」

善子「私の内側にある心を……恥ずかしがって外に出さない私の心を外に解き放ってくれたのよ」

善子「だから私は、イヤイヤ参加したりしてないし…後悔なんて、したこともないわ

千歌「…………」

千歌「一つだけ、答えて」

善子「ええ、なんでも答えるわ」

千歌「……善子ちゃんは私達と居て、楽しい?」

善子「もちろん、今までで一番楽しいわ」

千歌「……そっか!」

千歌「でもなー……このまま許すってのもなあ…チカがちょっと傷ついたのは事実だし……」

善子「えっ……」

千歌「うーんと……そうだなあ……」

善子「お、お手柔らかににお願いします……」

千歌「よし!決めた!」

善子「……な、何?」





千歌「もうちょっと…こうしていてくれたら、許してあげる!」ギュ

善子「ふふっ……なによそれ」


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善子「(結局私は、傍から見ると特に変化のないまま元の鞘に収まった)」

善子「(千歌以外にとっては何も変わって無いのだから、当たり前だ)」

善子「(ただ、ちょっとだけ変わった事があった……それは)」






千歌「それにしても、本当に大所帯になったね!」

梨子「最初は部活申請出来るかどうかって話だったのに…今や八人だもんね」

曜「今日の練習どうする、善子ちゃん? また校庭百周耐久リレーやる?」

善子「イヤよ!あれ、最後の方はほんと意識が朦朧とするんだから!」

果南「私は良いと思うけどなあ、ちょうどいい練習量だと思うし!何よりアイドルはスタミナが必要でしょ!」

ダイヤ「貴方はまずアイドルとして顔の傷を治しなさいな……」

鞠莉「いやーちょっとマリーの拳が眉間にクリーンヒットしちゃって、パックリいっちゃったのよねえ……ま、私も鼻折れたけど」

ルビィ「ホントに殴り合いしてたんだね……」

千歌「しっかし、惜しいなあ……」

梨子「惜しい…どうして?」

千歌「伝説のアイドルμ’sは九人グループなんだよ!あと一人居ればなあ」

曜「いまから一人加入かぁ……難しくない?」

善子「……それなら、一人心当たりがあるわ」

千歌「ホント!?善子ちゃん!」

鞠莉「その子って…キュートガールなの?」

善子「えっと癪だけど……美少女の範疇だと、思うわ」

ルビィ「ぅ…ルビィ人見知りだから…今から仲良くなれるかな…?」

善子「大丈夫、あなたもよーく知ってる人よ」

千歌「絶対入ってくれる!?」

善子「ええ、それはもちろん」





善子「ノーと言わない優秀な人材よ!」

【図書館】

善子「……ずら丸」

花丸「あ……善子ちゃん、部活じゃないの?」

善子「ちょっとアンタと、話をしに来たわ」

花丸「………」

善子「何よその意外そうな目」

花丸「いやぁ……明日は槍でも降るかなあと思っただけずら」

善子「どういうことよその言い草! 私が話しかけるのそんなに珍しい!?」

花丸「あはは、善子ちゃん面白いずら」

善子「…………」

善子「それでね、その青髪と金髪の先輩が河原で殴り合って……」

花丸「ええ……今時そんな昭和の不良みたいな……」

善子「それでそれで、最終的にその生徒会長まで一緒に入ることになって……」

花丸「すごい大所帯ずら…!こんだけ居れば、他のアイドルにも引けを取らないずら!」

善子「……ずら丸…聞いてるだけで楽しい…?」

花丸「うん!……善子ちゃんが楽しそうで、マルは嬉しいずら」

善子「……」

善子「ねえずら丸……」

花丸「何ずら? 善子ちゃん」

善子「私達と一緒に…スクールアイドルやらない?」



花丸「マルも…?」

善子「悔しいけど、アンタのお陰で色んな事を知れた、いろんな経験が出来た」

善子「だからその楽しい事を…アンタにも……」

花丸「おっと、そこから先はストップずら」

善子「ずら丸…!でも、アンタだって!」

花丸「ふふっ……ちょっと待つずら善子ちゃん」

善子「……何がおかしいのよ」

花丸「そもそも、マルは断るなんて一言も言ってないずら」

花丸「……そろそろこの図書室の小説も何割か読み終えるずら、後は他の活動の片手間でもきっと卒業までに読み終えることが出来る算段ずら」

善子「じ、じゃあ!」

花丸「そもそも、善子ちゃんのお願いされた時点で、答えは決まっていたずら……そもそも、新しい世界を広げる為の“あの法則”ずら」

花丸「時々話を聞いてて……楽しそうだなって思ってたんだよ? 善子ちゃんと何か一緒の事するの」

善子「ずら丸……」

花丸「善子ちゃん、マルの答えはね」



花丸「イエス、ずら」

おわり

読んでくださった方はありがとうございます

""の付いた言葉が何なのか、見ると分かることがあるかもしれません

>>73
体長→体調

>>77
ミス

"でわかることはなにもなかった

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