奈緒「ん? 加蓮からメール……」『奈緒、そろそろh』 (16)

百合じゃないですが山も谷もない話です

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奈緒「えっ?」ビクッ!


『奈緒、そろそろh』


奈緒(……h? H? えっち? エッチ?)

奈緒「エッチ!?」ビクッ!

奈緒(いやいや、エッチってなんだよ。そろそろあたしがエッチになってきたってことか? 意味が分からない……)

奈緒「このっ、変なメール送ってあたしが慌てふためくの見てを楽しむつもりか……っ!!」

『なーにがエッチだ! あたしはエ』

奈緒「……待てよ?」

奈緒「このメールに『あたしはエッチじゃない!』って返したとする。そうなると加蓮の次の一手は……」


『えー? 私一言もエッチなんて言ってないけど? さっきのメールのhだってメール打ってる最中に間違えて送信しただけだし』

『奈緒って普段からエッチなこと考えてるからHって思ったんじゃない? やらしー』


奈緒「くっ……そういうことか、危うく引っかかるところだった……!」

奈緒「危ない危ない……あたしも文字通り色々な経験をして、こっちに戻ってきて少しくらいは冷静さを身に着けたってところか」フーッ

奈緒「……しかし待てよ、これがあたしを引っかけるメールじゃなかったとしたら……?」


……
…………

――十分後

奈緒「……加蓮から訂正のメールは来ない、か」

奈緒「念の為無難な返事をしたけど……」

『ん、どうした? 何の話だ?』

奈緒「メールが返って来ないってことは、やっぱり引っかけだったってことか?」

ヴヴヴヴッ!!

奈緒「ん、加蓮からメール……?」

『ゴメン、何でもない。変なメール送ってゴメンね』

奈緒「……おかしい」

奈緒(もしあのメールが引っかけだったら『あーあ、引っかからなかったかぁ』とか、そういうメールを返してくるはず)

奈緒(ということは、あたしに言おうとしたけど言えない何かがあるってことだ)

奈緒(だけど、なんだ? h、h……pだったらポテトかプロデューサーのことって分かったんだが)

奈緒「……ダメだ、hから連想出来るものが浮かばない」

奈緒「加蓮のことだし、ちょっと気になるな」

奈緒「……他の人に相談してみるか」


……
…………

――事務所

千秋「hから連想できること?」

翠「加蓮さんからそのようなメールが来た、ということですか……」

奈緒「ああ、だけど何も浮かばなくて……2人なら何か浮かぶことはないか?」

翠「そうですね……私なら、まずエッチが浮かびますが」

奈緒「それは最初にあたしも考えたけど却下した」

千秋「h、h……そうね、私なら出身だし北海道を思い浮かべるわね」

奈緒「北海道、そういうのもあるのか! 確かにあたしもこの前、蘭子と珠美の3人で北海道で仕事したな……」

翠「あとは、ホテル、でしょうか」

奈緒「ホテル……エッチと言われた後だと卑猥な響きがするな……」

千秋「あとは、ハンバーガー、かしらね」

奈緒「ハンバーガー?」

千秋「ええ、北海道には有名なハンバーガーがあるから思い浮かんだわね。ラッキーピエロっていう道民のソウルフードなのだけど……」

奈緒「聞いたことないな……」

千秋「一部地域しか店舗が無いからかしらね……でも有名よ。私も何度か食べたことがあるわ」

奈緒「でもハンバーガーか。確かに加蓮ならハンバーガーの話をしてもおかしくない、けど……」

雪美「千秋……ラッキーピエロ……?」ニュッ

千秋「雪美さん!? え、ええ、北海道にあるハンバーガーショップよ」

雪美「千秋……ピエロ?」

千秋「わ、私はピエロじゃないわ。そのお店のキャラクターがピエロなのよ」

雪美「ラッキーピエロ……おいしい?」

千秋「ええ、美味しいわよ。私も食べたし……そうね、チャイニーズチキンバーガーやラッキーエッグバーガーは定番ね」

千秋「あとはロコモコや焼カレーも……」

翠「ハンバーガー屋でカレー……?」

雪美「……私も、千秋が美味しいって、思ったハンバーガー……食べたい……」

千秋「えっ、で、でも本州には進出していないお店なのよ。残念だけど……」

雪美「千秋が美味しいって思ったもの……私も食べて……感じて……千秋と、同じ気持ちになりたい……千秋と、一緒……」

千秋「」ヒュカッ!!

奈緒「h、h……千秋さん、他に……あ、あれ、消えた? 今までそこにいたはずじゃあ……」

翠「光の速さで消えたので、多分北海道に帰ったかと」

奈緒「うーん……北海道、ハンバーガー、ホテル、か……とりあえずありがとう。もう少し考えてみるよ」


……
…………

――レッスン場

愛梨「hから……」

蘭子「連想すること?」

奈緒「ああ」


蘭子(hだからエッチ……な、なーんて……)

愛梨「あ、それならエッチですね」

奈緒「いやそのネタはさっき翠とやったから……蘭子はそういうこと考えなさそうだけど愛梨が言うとは……」

蘭子「ぴょっ!? う、う、うむ……高潔なる偶像の象徴である我の魂が穢れているなど……」

蘭子(言わなくてよかった……)

愛梨「うーん、うーん……あ、ホットケーキとか、どうですか?」

蘭子「ハデス、ヘラクレス」

奈緒「うーん、ホットケーキは加蓮が要求しないような気も……蘭子のは蘭子らしくて物騒だな……」

蘭子「私らしく?」

愛梨「加蓮ちゃんに直接聞いてみればいいんじゃないですか?」

奈緒「ちょっとな……加蓮がメールで言い難そうにしてたから、本人に直接聞き難くて」

蘭子「……それなら、加蓮ちゃんらしいことを考えてみればいいと思うけど」

奈緒「加蓮らしく……そうか!」ハッ!

奈緒「そうだ、hから連想できるものを考えるだけじゃダメだ……hが付くもので加蓮なら何を想像するか考えるんだ!」

奈緒「例えば……千秋さんが言ってた、北海道……北海道で、加蓮なら何を連想するか……」


奈緒「芋だ!」


蘭子「ふむ……北の大地、供物の品種として北あかりやメークイン等の名のある物が……ごくり」

奈緒「そして翠が言っていたホテル! これはエッチな意味はなくて、北海道に旅行してポテトを食べる為の宿を探し求めていたってことだったんだ!」

愛梨「すごいです奈緒ちゃん!」

奈緒「これならハンバーガーの説も辻褄が合うぞ……! 北海道に行って、一泊して、腹いっぱい芋とハンバーガーを食べたいってこと……」

奈緒「つまり、加蓮があたしに送ろうとしていたメールは『奈緒、そろそろ北海道に旅行してポテトやハンバーガーをたくさん食べたい』だったんだ!」

蘭子「ハデスとヘラクレスは」

奈緒「えっ、そ、それは……ほら、ここ日本だし……」

蘭子「……」ションボリ

愛梨「でも、それだけ分かればバッチリですね! 早速加蓮ちゃんにメールの返信しましょう!」

奈緒「あ、ああ、そうだ――」ハッ!

奈緒「……待てよ、なんて返信するべきなんだ?」


……
…………

――事務所

奈緒「加蓮のメールの意図は分かった。だけど返信の内容をどうするか、だ」

奈緒「目的が北海道で芋三昧ならあたしは許すことはできない……炭水化物の過剰摂取で加蓮の健康状態が心配になる」

奈緒「だけど……あたしがそう思うってことも、加蓮はきっと分かってるはずだ」

奈緒「分かってるから……メールも中途半端な状態だったんだ」

奈緒「あたしは、どうすれば……」


ガチャッ!

菜々「うー寒っ、さむっ……外の寒さで節々が軋む……」ハァッー、ハァーッ

奈緒「お、菜々さん」

菜々「おや奈緒ちゃん、レッスン終わったんですか?」

奈緒「あ、ああ……さっき、愛梨と蘭子と3人で、な……」

菜々「……どうしたんですか? 何だかお元気なさそうですねぇ」

奈緒「……実は」カクカクシカジカ

菜々「ふむふむ、加蓮ちゃんの北海道ポテト三昧旅行を認めるかどうか、ですか」

奈緒「あたしが認めなくても、加蓮を止める権利なんてないんだけどな……ハハッ」

菜々「そうですねー……確かにナナくらいのウサミン星人になれば健康のことを第一に考えるときもありますけど」

菜々「奈緒ちゃんは、加蓮ちゃんにどうしてあげたいって思ってますか?」

奈緒「あたしが……!?」

奈緒(そうだ、あたしは……)



『ナオ、奈緒っ! ここのポテト、すっごく美味しいよ!』

『ハハッ! そんなに急がなくても、加蓮が頼んだポテトなんだから逃げないだろ?』

『だってこのお店のポテト、こんなに美味しくて……んぐっ、おかわりしちゃおうかな』

『コラコラ、あんまり食べ過ぎるのも良くないからな。食べたかったら、また店に来ればいいんだから』

『えへへ、また来ようね』



奈緒(そうだ、あたしは……あたしは、加蓮の喜ぶ顔が見たいから……だから、色々悩んで……)

奈緒「……ありがとう、菜々さん。あたしはやっぱり、加蓮の喜ぶ顔が見たいよ」

菜々「あららそうですか。若いっていいですねぇ」

奈緒「よし、そうと決まったら早速……!」


……
…………

――数時間後

奈緒「なあPさん、北海道での仕事ってないのか!?」

P「北海道ー? うーん、この前奈緒と蘭子と珠美の3人で行ったばかりだろう?」

奈緒「そりゃ年明けの話だろ? 年末の冬の時期に何かないのか?」

P「そんないきなり言われてもな……何かあったのか?」

奈緒「加蓮が北海道に行きたがっているみたいなんだ。だけど、忙しいのは分かってるからか、あたしにも言い出し難かったみたいで……」

奈緒「加蓮、この前のトライアドの仕事だって頑張ってただろ? その後だって……だから、少しくらい仕事……のついでの休暇でいいから、加蓮が行きたがっている北海道に連れてってやりたいんだ」

P「……そうだな。この前のイベントも随分と盛り上げてくれたし……よし分かった。伝手から何か良さそうな仕事が無いか聞いてみるよ」

P「北海道観光もするなら……まあ予備日に1日あればいいか」

奈緒「やった! さすがPさん! それじゃあ泊まる場所とか、観光する場所はあたしが考えておくよ!」

P「宿は決まった仕事先の都合も見てからだな。それじゃあ他の部分は奈緒に任せるよ」

奈緒「よーし……加蓮にはサプライズで内緒にしておくかな……へへっ、楽しみだ」


……
…………

――1か月後、北海道、函館、ラッキーピエロ(五稜郭店)

加蓮「うわぁっ、このポテトにかかってるソースってなんだろ? ミートソース? でもなんかもっと違うような……」

加蓮「あっ、このハンバーガーのチキン美味しいっ! 唐翌揚げとはちょっと違うけど……これもボリュームあるし」

奈緒「こらこら、あんまり急いで食べると喉が詰まるぞ」

加蓮「だってすごく美味しいんだもん。東京じゃこんなハンバーガー食べれないって」

P「そうだなぁ。確かに、千秋が教えてくれた焼カレーも美味いな……ていうかこの量食ったら晩飯食べれるかな……」

加蓮「奈緒もPさんも私に内緒で北海道の仕事だーなんて、いきなり言って出張入れてくるんだから……でもいいの? 観光とかしちゃって」

奈緒「いいんだよ。それに今回は仕事も入れてもらってはいるけど……最近加蓮が仕事を頑張ってるから、加蓮の慰安旅行でもあるんだぞ」

P「それがな、奈緒が熱心に『加蓮が北海道に行きたがってるんだー!』って言うもんだからな」

加蓮「……え?」

P「ホント、シーズンではあったけどいきなりこっちの仕事を探せって言われてもなぁ。見つかったからいいけど」

奈緒「うっ、そ、それは悪かったけどさ……でも加蓮も喜んでるし、いいだろ?」

P「ま、たまにはいいか。どうだ加蓮?」

加蓮「え? う、うん……北海道、ね、うん、行きたいなーって思ってたし……このハンバーガーも凄く美味しいよ」

奈緒「よかったよかった。夕方は中山峠ってところを車で通って、名物の揚げ芋を食べてから夜は札幌の旅館に泊まるからな」


……
…………

――夜、札幌、某旅館(奈緒と加蓮の部屋)

奈緒「あー、疲れたつかれた」ドサッ!

加蓮「ホント、ずっと車で移動して夜中に旅館だもんね。私たちより運転してたPさんのほうが疲れてるだろうけど」

奈緒「布団敷いてあってよかったー……温泉入っとくかなぁ……」

加蓮「せっかく来たんだから入ろうよ。Pさんも入るって言ってたし」

奈緒「そうだなぁ……」

加蓮「んーと、お風呂道具出さないと……」

奈緒「……なあ、加蓮」

加蓮「なあに?」

奈緒「どうだ、楽しいか?」

加蓮「……うん、楽しいよ」

奈緒「そっか。やっぱりあたしは……うん、加蓮の喜んでいる顔が見れるのが一番だよ」

加蓮「奈緒……」

奈緒「この前加蓮が『奈緒、そろそろh』なんて変なメール送ってきたときは何事かと思ったけど」

加蓮「……えっ」

奈緒「北海道に行きたいくらいなら、そんな恥ずかしがらずにいつでも相談してくれよ、な?」

加蓮「う、うん……」

奈緒「さーて、それじゃあたしも風呂道具出してっと……」

加蓮(……奈緒)

奈緒「んーと、タオル……着替え、は浴衣があるか」

加蓮(ゴメン……あのメール、『奈緒、そろそろHな体に成長してきたんじゃない?』ってセクハラメール送ろうと思ったんだけど)

加蓮(あんまりにも下らない内容だったから送るのやめようとしたら、誤送信しちゃって……)

加蓮(それなのに奈緒ったら、勘違いして私の為にって北海道の仕事も観光旅行も、なんて)

奈緒「よしっと、それじゃ温泉行こうか」

加蓮「うん」

加蓮(……ま、いっか。奈緒も喜んでるみたいだし)



加蓮「……ありがとね、奈緒」

奈緒「ん? 何か言ったか?」

加蓮「なんでもなーい。ほら、早くいこいこ」



おわり

これ以上書いたら何か百合っぽくなって嫌だったのでここまでで纏めました。
HTML化依頼出して終了。

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