【バンドリ】戸山香澄「ツンデレ」 (31)


――花咲川女子学園 1-B教室――

花園たえ「ツンデレ?」

戸山香澄「うん! 一昨日の夜にやってたアニメのヒロインの子がそういうんだって」

市ヶ谷有咲「…………」

有咲(……香澄、わざとかその話題は?)

有咲(日直の日誌書き終わるまで待っててって言ったのは確かに私だけど……あれか、何かの当てつけか?)

有咲「…………」

有咲(いや、ねーな。どうせ思い付いた話題を振っただけだろ。気にしないで日誌書いてよ)サラサラ

たえ「ツンデレ……あ、知ってる」

たえ「ウラル地方の言語で『木がない土地』って意味の言葉だよね?」

香澄「そうなの?」

たえ「え、違うの?」

香澄「私が聞いた話だと、相手のことが好きなのについツンツンしちゃう人のことを言うって」

たえ「へぇー」

香澄「それでいて2人っきりの時とかにね、不意にデレっとした仕草を見せるからツンデレなんだーって」

たえ「誰に聞いたの? 沙綾?」

香澄「ううん、まりなさん!」

たえ「そっか。大人だもんね、流石博識だ」

香澄「ねー!」


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有咲(……あー、色々ツッコミいれたい……)

有咲(でも待たせてる手前さっさと日誌書いちゃわないとだしな……)

有咲(集中集中)サラサラ

たえ「香澄、そのツンデレっていうのが好きなの?」

有咲「…………」ピタッ

香澄「うん! なんかいいよね、素直じゃない子って!」

有咲「…………」

たえ「どんなところが好きなの?」

香澄「なんだろ、こう……本当は大好きなのに素直になれなくて意地張っちゃって、それで1人の時とかに落ち込んじゃったりする姿に心がくすぐられる? みたいな?」

たえ「へぇ」

有咲(……ふ、ふーん……)

有咲(ま、まぁ? 私には全然これっぽっちも関係のない話だけど? 今後こういう話題で話することもあるだろうし?)

有咲(しょーがねーよな、うん、ちゃんと話を聞いておかないとさ、これからのことに支障をきたす可能性っていうのもあるかもだしな)

有咲(うん、仕方ない仕方ない)


たえ「ツンデレ……うーん、私はあんまりピンと来ないなぁ」

香澄「そう?」

たえ「うん。知り合いの中だと誰がそういうタイプかな?」

有咲(おいおい、やめろよそういう質問は)

有咲(香澄の一番近くでそういうタイプって言ったら私しかいねーじゃんか。ったくー、もうしょうがねーなーおたえは……えへへ)

香澄「うーん、誰だろ?」

有咲「えっ」

たえ「ん? 有咲、何か言った?」

有咲「え、あ、いや……別に」

香澄「日誌、書き終わりそう?」

有咲「……すまん、もうちょいかかりそう」

香澄「うん、分かった!」

たえ「あ、もしかして私たちうるさかった? 少し静かに――」

有咲「気にすんな待たせてんの私だし本当に気にしないでいいから話し続けててくれ」

たえ「そっか。よかった」

有咲「…………」


香澄「で、なんの話だっけ?」

たえ「誰がツンデレ? って話じゃないっけ?」

香澄「ああ、そーだそーだ。んーっと……」

有咲「…………」ゴクリ

香澄「うーん……」

たえ「思い付かない?」

香澄「うん……この人こそ! っていう人がいないかなぁ」

有咲「…………」ガックリ

たえ「そっか。ツンデレ……奥が深そう」

香澄「まりなさんもすっごい饒舌に語ってくれてたからね~。ツンとデレの比率が大事だーとかなんとかって」

たえ「んー、じゃあそれに近い人はいない?」

有咲「……!」

香澄「近い人、近い人……」

有咲「…………」ソワソワ

香澄「……あ!」

有咲「!」

香澄「蘭ちゃん!」

有咲「…………」

たえ「蘭って、アフターグロウの?」

香澄「そう! 巴ちゃんがね、『蘭のやつ、天邪鬼なんだよな。嬉しいくせに「別に」とかいつもすまし顔でいてさー』って言ってたし!」

たえ「へぇ。私はあんまり話す機会がないけど、すっごくクールそうなイメージがあるなぁ」

香澄「そんなことないよ~、あれですっごい寂しがりなんだって」

香澄「この前もね……」


――羽丘女子学園 教室――

美竹蘭「ん……あれ……?」

青葉モカ「おー、ねぼすけさんが起きなすった」

宇田川巴「蘭が放課後に机で爆睡してるなんて珍しいこともあるもんだな」

蘭「んー……」ボー

モカ「ありゃ、まだ半分夢の中~って感じ?」

巴「……みたいだな。最近家の方も忙しいって言ってたし、疲れてんのかな」

モカ「おーい、ら~ん~」

蘭「もか……」

巴「大丈夫か? 疲れてんならちゃんと言えよ? 蘭をおぶって帰るくらい訳ないからな」

蘭「ともえ……」

モカ「うーん、蘭ってばまだ寝ぼけてますなぁ」

巴「どうすっか。本当におぶって帰るか?」

蘭「おんぶ……?」

蘭「おんぶより……もかにぎゅってされたいな……」

巴「えっ」

モカ「おー?」


蘭「もか……」ギュ

モカ「おーおー、今日の蘭ちゃんは一段と甘えん坊さんですねぇ~」

蘭「んん……」スリスリ

モカ「あはー、あははー、くすぐったい~」

巴「……なんだこれ。とりあえず……写真撮ってひまりとつぐに送っとくか」

モカ「あ、モカちゃんにも~。はーい蘭ちゃん、いい子だからピースしましょうね~」

蘭「ん……」ピース

巴「あっはっは、ここまで素直な蘭って珍しいなぁー」

モカ「ねー。モカちゃんの母性本能が真っ赤に萌えるー」



香澄「……って感じで、なんか寝ぼけてモカちゃんに抱き着いて甘えてたんだって」

有咲(……蘭ちゃん……)

たえ「人は見かけによらないんだね」

香澄「だね~。すっごいクールでカッコいい系なのに寝ぼけて幼馴染に甘えちゃう女の子……可愛い!」

たえ「可愛い」

香澄「あー、そんな女の子に甘えられてみたいなぁ」

たえ「じゃあ身近にそんな人がいないか考えてみよっか」

有咲「!」

香澄「そうだね!」

有咲「…………」ソワソワ


たえ「羽丘だと遠いから花女の人で……」

香澄「バンドやってて……」

たえ「あ、1人心当たりある」

有咲「っ……!」

たえ「千聖先輩」

香澄「え、そうなの?」

有咲「…………」

たえ「うん、そうだと思うな」

香澄「へー、なんだか意外。ちょっと厳しい先輩だなーってイメージがあるなぁ」

たえ「そんなことないよ。あれで千聖先輩、すっごく優しいんだ」

香澄「そうなんだ!」

たえ「うん、そうなんだ。この前もね、花音先輩と一緒にお茶してたんだけど、千聖先輩が……」



――CiRCLE カフェテリア――

松原花音「天気がいいと紅茶も美味しいね」

たえ「ですね。花音先輩と一緒だともっと美味しいです」

花音「そ、そう? えへへ、なんだか照れちゃうな……」

白鷺千聖「あら花音にたえちゃん、偶然ね」

花音「あ、千聖ちゃん」

たえ「こんにちは。最近よく会いますね」

千聖「そうかしら? そんなことないと思うわよ」

千聖「それより、私もお邪魔していいかしら?」

花音「うん、もちろん」

たえ「どうぞどうぞ」

千聖「ありがとう、花音、たえちゃん」


千聖「あ、そうだその前に……花音」

花音「うん?」

千聖「ダメじゃない、そんな制服だけで外にいるなんて。いくら日中は暖かいって言っても風は冷たいのよ。もう少し厚着をしないと体調を崩してしまうわ」

花音「え、そ、そうかな……?」

千聖「そうよ。はいこれ。私が使ってるストールだけど、きちんと羽織って」

千聖「ちょっと薄いけれどそれなりの生地を使ってるから暖かいわよ」

花音「え、でもそれだと千聖ちゃんが……」

千聖「大丈夫。こんなこともあろうかと花音用と私用と来賓用に用意してあるから。はい、たえちゃんも」

たえ「わー、ありがとうございます」

花音「えっと、それじゃ……ありがとね、千聖ちゃん」

千聖「いいのよ。花音やたえちゃんに風邪をひかれる方が嫌だもの」

たえ「あ、ウサギのワンポイントがある」

千聖「ふふ、なんだか今日は花音とたえちゃんが一緒にいる気がしたから、そういうのを用意してきたのよ」

たえ「へー。千聖先輩すごい。エスパーみたい」

千聖「四六時中花音のことを考えていれば出来て当然のことよ」

花音「あの……それはちょっと恥ずかしいかな、千聖ちゃん……」



たえ「……っていう感じだったんだ」

有咲(……白鷺先輩って……)

香澄「へー! 千聖先輩優しい!」

たえ「よくあるんだ。花音先輩と一緒にいると」

香澄「よくあるんだ!」

たえ「うん。厳しいけど、いつも友達とか後輩にしっかり気を配れる優しい先輩って好きだなぁ」

香澄「思わず甘えたくなるね!」

たえ「甘えたくなるね」

香澄「あっ、甘えたくなるといえば……」

たえ「うん?」

香澄「あれだよね、ちょっと困らせたくなる人っているよね」

たえ「うーん……好きな人にイジワルしたくなる、みたいな?」

香澄「みたいな!」

有咲「…………」


たえ「私はあんまりピンと来ないけど、そういうのってたまに聞くよね」

香澄「うん、実は私もそうだったんだ」

有咲(そりゃお前らは無自覚で人を振り回すタイプだからな……私やりみの立場にもなってくれよ……)

香澄「でもなんかいいよね、そういうの! 困ったような雰囲気出すんだけど、なんだかんだ受け入れてくれる優しい感じ!」

香澄「もちろん笑ってるところが一番なんだけどね? ワガママに付き合ってくれてるって思うと嬉しいし、もっと甘えたくなっちゃう!」

有咲(いやまぁ別に私は香澄に振り回されても全然これっぽっちも迷惑してないしむしろ楽しいしもっともっと頼ってくれていいんだぞって気持ちはあるけどな?)

たえ「おー、香澄が力説してる」

香澄「で、そういうタイプの人を花女で見つけました!」

有咲「……!」

たえ「して、その人の名前は?」

香澄「紗夜先輩!」

有咲「…………」

たえ「紗夜先輩……千聖先輩以上に厳しそうだ」

香澄「って思うでしょ? でもね、この前さーやとつぐみちゃんのお店に行った時……」



――羽沢珈琲店――

氷川日菜「ねーねーおねーちゃん!」

氷川紗夜「聞こえてるからそんなに大きな声を出さないの。他の人に迷惑でしょう」

日菜「うん、ごめんね!」

紗夜「……謝る気があるならちゃんと態度で示しなさい」

日菜「あ、土下座とかした方がいい?」

紗夜「どうしてそうなるのよ。双子の姉が妹に土下座させている、なんてところを知り合いに見られたらどう思われるか……」

日菜「そーいうプレイしてるアブノーマルな姉妹?」

紗夜「そう思われる自覚があるのならおかしな発言は控えなさい。仮にもアイドルでしょう、あなたは……」

日菜「えー、姉妹の仲良しアピールだよ~」

紗夜「そんなアピールなんて見たことも聞いたこともないわよ」

日菜「じゃあ……あたしがおねーちゃんの初めてだね……?」

紗夜「上目遣いで艶っぽく言うのもやめなさい。あらぬ誤解を生むでしょう」

日菜「もー、おねーちゃんてばあー言えばこー言うんだから」

紗夜「その言葉は日菜だけには言われたくないわ」

日菜「そんなこと言っちゃってー、おねーちゃんだってホントは求めてるくせにぃ~」

紗夜「だから言い方を……はぁ、言っても無駄ね」


日菜「えー、もうちょっと構ってよ~!」

紗夜「場所を弁えなさい。私だけならいいけれど、羽沢さんにまで迷惑をかけるのは許さないわよ」

日菜「それはつまり、おねーちゃんだけにならどれだけ迷惑かけてもいいってこと?」

紗夜「…………」

日菜「わーウソウソ! 無視しないでよ~!」

紗夜「はぁ……まぁ、いいわよ。別にあなたから迷惑を被るなんていつものことだし、どうってことはないわ。好きなだけかけなさい」

日菜「おねーちゃん……」

紗夜「……? どうしたの?」

日菜「えへへ、おねーちゃんのそういうところ大好き!」

紗夜「そう。それは良かったわね」

日菜「じゃあとりあえずあたし、土下座しよっか?」

紗夜「どうしてそうなるのよ……」

日菜「おねーちゃんが許してくれるまで、『ごめんなさい、ごめんなさい』って部屋の前で夜通しずっと謝るね……?」

紗夜「私を不眠症にさせたいの?」

日菜「え? ぐっすり眠れるようにあたしを抱き枕にしたい?」

紗夜「どういう構造をしているの、あなたの耳は……まったく、仕方ない子なんだから」



香澄「……って感じだったんだ! 私も紗夜先輩、ちょっと困らせたい!」

有咲(……まぁ、その2人はいつも通りだな……)

たえ「あ、それなら分かる。絶対構ってくれそうで楽しそう」

香澄「ね! 困りながらもなんだかんだ構ってくれそうでいいよね、紗夜先輩!」

たえ「でも一線超えると本気で叱られそう。だけど……」

香澄&たえ「それがいい」

香澄「なんだろうね、あの感じ?」

たえ「んー、叱るってことは見捨てないってことだから、かな? 私のこと考えてくれるんだって思うと嬉しいし」

香澄「なるほど! 今度「叱って下さい!」って言ってみようかな?」

有咲(お前ら紗夜先輩に本気で怒られてもしらねーぞ……あ、いや、それこそ香澄とおたえの思うつぼか……)


たえ「……あれ、そういえば何の話してたんだっけ?」

香澄「え? えーっと……確かツンデレについて?」

たえ「そうだっけ?」

香澄「うん、確か」

たえ「なんだか大分話が逸れたね」

香澄「不思議だね~」

たえ「それにアレだね、甘えられる話がいつの間にかに甘える話になってた」

香澄「それじゃあこの辺で元の話題にもどそっか」

有咲「…………」

たえ「うん。年上だと甘えたくなるから……同い年?」

香澄「同い年の花女で、甘やかしたい女の子……」

有咲「…………」ソワソワ

たえ「うーん」

香澄「んー……あ!」

有咲「!」


たえ「誰か思い付いた?」

香澄「うん! 美咲ちゃん!」

有咲「…………」ガックリ

たえ「美咲……うーん?」

香澄「あ、これ甘やかしたいっていうより素直じゃない女の子だった」

たえ「あ、そうなんだ」

有咲「…………」

香澄「こころんがね、この前言ってたんだ」

弦巻こころ『美咲って不思議よね。「やれやれ」とか「はいはい」なんてため息を吐きながら言うのに、すっごく嬉しそうにハロハピのことをやってくれるのよ』

香澄「って」

たえ「確かに……いつも『仕方ないなー』って嬉しそうな顔で言ってるね」

香澄「多分コレがあれだよ、ツンデレ」

たえ「なるほど……美咲がツンデレ」

有咲「…………」


有咲(ちげーよ、奥沢さんはただのヤレヤレ系主人公だよ。どっちかっていうとヒロインを落とす方だよ)

有咲(ていうか最近そんなヤレヤレ系でもねーや。頭の中身がすっかりハローハッピーワールド一色だよ。ただのバンドメンバー好き好き人間だよあの人)

有咲(廊下とかで顔を合わすたびに『いやーこころがさー、はぐみがさー、花音さんがさー、薫さんがさー』なんてすごくいい笑顔で話されるこっちの身にもなってくれよ)

有咲(なんで奥沢さんて私にだけあんなノロケ話すんの? 他の人にしてる姿見たことねーぞ?)

有咲(あとメッセージ頻繁に送ってくんのも勘弁してくれ)


奥沢美咲『みんながあたしの為に衣装用意してくれた……やばい泣きそう』

美咲『今日またこころが突拍子もないこと言ってさー。でも大変だけどやりがいがあるっていうか、必要とされるのって嬉しいよね』

美咲『はぐみってほんと元気だよねぇ。疲れた時ははぐみと一緒にいるのが一番だよ。すごく元気貰えるからね』

美咲『花音さんってほんと可愛らしいよね。女の子してる女の子って言うか……あれで芯も強いから憧れちゃうよ』

美咲『薫さん、やっぱりすごいや。普段はおちゃらけてるっていうか真面目にふざけてるけど、ここぞで一番頼りになるのってやっぱあの人だよね』

有咲(……とかさ……いや知らねーよ、お前そのノロケ話何回目だ、ちょっとトークの履歴遡れって言いたいことばっか送ってくるし)

有咲(ほんとなんでそれを私に言うんだよ。本人に言ってやれよ。「いや、それはちょっと照れくさいっていうかなんていうか……」じゃねーよヘタレめ)

有咲(毎度大人しく話聞いてる私も悪いのかもしれないけどさ)


たえ「じゃあ香澄は美咲みたいな子が好きなの?」

有咲「!?」

香澄「うーん……」

有咲「…………」ハラハラ

香澄「……んー、ちょっと違うかなぁ」

有咲「ホッ……」

香澄「素直じゃないって部分は一緒なんだけど、こう、守りたくなる感じがちょっと違うっていうか……美咲ちゃんはどっちかっていうと守ってくれそうなタイプだよね」

たえ「あ、そうかも。危ない時とか口では色々言いながら自分を顧みないで助けてくれそう」

香澄「ね。全力全開全身全霊で助けに来てくれそう。それで助け終わったら「やれやれ」って言いそう」

たえ「良い人だ」

香澄「そこに痺れる憧れるぅ!」

有咲(それは泥水で口をすすがれる側の人間に言う……いや、いいか)


たえ「ツンデレって難しいね」

香澄「うん……考えてみるとなかなかいないね」

たえ「だからこそ人は惹かれるのかもしれない」

香澄「いっそ私たちでやってみよっか」

たえ「そうだね。何事もチャレンジが大切」

香澄「えーっと、じゃあ……おたえのことなんて全然好きじゃないんだからねっ!」

たえ「私だって香澄のことなんか……」

たえ「…………」

香澄「おたえ? どうかしたの?」

たえ「んん……私、ポピパのみんなのこと大好きだから……演技でも好きじゃないなんて言えない……」

香澄「おたえ……!」

たえ「ごめんね、香澄……」

香澄「ううん! 私もおたえのこと大好きだよ!」

たえ「うん、知ってるよ。私も大好き」

香澄「えへへへへ~」

たえ「えへへ」


有咲「…………」

香澄「あ!」

たえ「うん?」

香澄「有咲!」

有咲「……ん?」

香澄「有咲のことももちろん大好きだよ!」

有咲「は、はぁ!?」

たえ「私も大好きだよ、有咲」

有咲「な、なんなんだよお前らいきなり……!」

香澄「え? だって有咲、ちょっと寂しそうな顔してたし」

たえ「確かにしてるね。『私は……?』的な顔」

有咲「し、してねーよ! そんな、別に私は……」

香澄「とかなんとか言っちゃって~」

たえ「有咲って分かりやすいよね」

有咲「うぅぅ……」

有咲(そりゃ、ちょっとは思ったけどさ……『私は?』って……。でもなんでこんなストレートに言うんだよ香澄とおたえは……)

有咲(嬉しいけど照れて素直になれねーじゃんか……狙ってんのか……?)


香澄「あ、そうだ。ねぇねぇ有咲」

有咲「……なんだよ」

香澄「ツンデレな人に心当たりない?」

有咲「……は?」

香澄「あれ、話聞こえてなかった?」

有咲「聞こえてたけど……お前、アレか? やっぱわざと聞いてんのか?」

香澄「え、何が?」

有咲「いや、ほら……こう、いるだろ? 身近にさ、あんま素直じゃないっていうか、ツンデレ……みたいなやつ」

香澄「……?」

たえ「んー……?」


有咲「……~~っ、だから、私じゃねーのかよって話だよ!」

香澄「え、有咲が?」

たえ「そうなの?」

有咲「う、いや、その……自分でこんなこと言うのはちょっとアレかもとは思うけどさ……」

香澄「でもでも、有咲ってお笑いでいうツッコミがやりたい性格なんでしょ?」

有咲「は、はぁ!?」

たえ「私もそう聞いたよ」

有咲「誰にだよ!?」

香澄&たえ「美咲(ちゃん)」

有咲「奥沢ァ!!」



―― 一方その頃 弦巻邸 ――

美咲「……くしゅんっ」

こころ「あら? 大丈夫、美咲?」

美咲「ん、大丈夫。きっと誰かが噂してるだけだよ」

こころ「噂をするとくしゃみが出るの? じゃああたしのこともきっと誰かが噂しているのね!」

美咲「え?」

こころ「朝からなんだかくしゃみが出て、少し肌寒いのよね。これも誰かが噂しているからだったのね!」

美咲「え、いやそれは……ちょっとこころ、おでこ触るよ」

こころ「ええ、どうぞ」

美咲「……あっつ! いや、こころ、風邪ひいてるだけでしょこれ!?」

こころ「そんなことないわ。だってあたし、今まで風邪なんてひいたことないもの。……けほ、けほっ」

美咲「あーあーもう咳までして……! よくそれで一日平気だったね!?」

こころ「平気も何も、あたしはいつも通りよ? 今日は何しましょうか?」

美咲「何しましょうか、じゃないってば! 安静にしなって!」

美咲「ほら、もっと厚着して……黒服さーん! ちょっと上着とか、あと飲み物とか持ってきて下さーい!」


こころ「…………」

美咲「こころ? 大丈夫、ボーっとしてるけど? 食欲は? ごはん食べられる?」

こころ「なんだか今日の美咲……お母様みたいね!」

美咲「え?」

こころ「えへへ、なんだか美咲に甘えたい気分だわ!」

黒服「奥沢様。こちら、こころ様のお着替えと特製スポーツドリンク、それと冷却シートに風邪薬です。キッチンは部屋を出て左手突き当りにございます。シェフには言いつけてありますので、食材などご自由にご利用ください」

美咲「え、あの……」

こころ「ねぇねぇ、あたし、美咲に看病してもらいたいわ!」

美咲「いや、ちょ……」

黒服「本日は旦那様も奥方様も所用で留守にしております。こころ様のことをお願い致します、奥沢様」

美咲「え、ええ……?」

こころ「実は食欲もあんまりなかったんだけど、美咲が作ったものならきっと食べられるわよ!」

黒服「では、そういうことですので。失礼いたします」

美咲「あ、ちょっと! ……行っちゃった」


こころ「ねぇねぇ美咲! これっておでこに貼るのよね? 自分じゃ貼りづらいから貼ってちょうだい!」

美咲「……あーはいはい、分かったってば……はぁ、まったくしょうがないなぁ」

こころ「……うふふ」

美咲「どしたのさ、急に笑い出して」

こころ「やっぱり美咲って嬉しそうにため息を吐くのね! なんだかそういうところを見るとあたしも嬉しくなるの!」

美咲「あー……そう。まぁ、こころが喜んでくれるなら何よりだよ」

こころ「それじゃあ美咲、看病をお願いね!」

美咲「看病必要なさそうなくらい元気になってるけど……まぁいっか」

こころ「あ、ねぇ美咲! あたし、オカユっていうもの食べてみたいわ!」

美咲「はいはい、あとで作って食べさせてあげるから……まずはちゃんと温かい格好して。冷却シートもおでこに貼るからね」

こころ「ええ、分かったわ!」

美咲「はぁ、やれやれ……。やっぱりこころにはあたしがついてないとダメだなぁ、まったく……ふふ」


その翌日、ついうっかりこころちゃんを一晩中看病していたみーくんが風邪をうつされてしまい、ハロハピのみんなにとても賑やかな看病をし返されるのは別の話。

おわり


私がツンデレを語るほどにツンデレから遠く離れてしまうのは何故でしょうか?

そんな話でした。すいませんでした。

HTML化依頼出してきます。

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