三船美優「貴方と、手遅れに」 (19)
「ごめんなさい。……ごめんなさい、プロデューサーさん」
「本当は駄目なんだって、わかってます。まだ駄目。今の私とプロデューサーさんじゃ、まだここまで進んじゃ駄目なんだって……それは、わかってるんです」
「わかってます。……わかってますけど……でももう、我慢していられないんです……」
静かな、静かな、部屋の中。
普段は外から響いてくる誰かの足音も、綺麗だったり可愛かったり色とりどりな誰かの歌声も何も。普段満ちている音の何もかもが無い今。甘い香りだけを漂わせ、ただぐちゅ、ぐちゅ、と普段聞きなれない粘り気を帯びた水音が小さく鳴り渡る二人きりの仮眠室。
それまで閉じていた目を少しだけ開いてぼーっとまだ虚ろに呆けた様子のプロデューサーさんの横、そこへそっと寄り添って。静かにゆっくりと上下させる手の動きはそのまま、その呆けた顔を覗き込むようにして見つめながら、ぽつぽつ言葉を口に出す。
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