地の四天王「光の勇者よ、助けてくれ!」 (995)

光の勇者(以下、勇者)「馬鹿な! 何を言っている!」

地の四天王(以下、地王)「頼む! お願いだ!」

勇者「やめろ! それでも魔王軍の幹部か!」

地王「お前しか! お前しか居ないのだ!」


地王「酔って、朝起きたら闇の魔王様がベッドに居たのだ!」

地王「薄らぼんやりと、ヤっちゃった記憶があるのだ!」


勇者「だから俺に言うのはやめろってえええええ!!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1540900012

地王「ええい、お前はそれでも勇者か!?」

勇者「それでもって、どれでもだ!」

地王「救いを求める手を振り払うつもりか!?」

勇者「俺に助けを求めるな!」


地王「ああ……俺は、おしまいだ!」

地王「魔王様は……初めてだった……!」


勇者「そういう事言うなってえええええ!!」

勇者「というか、何故お前がここに居る!?」

地王「今日は非番なのだ!」

勇者「そうじゃなくて! 俺に助けを求めるな!」

地王「ええい、わからんやつだ!」


地王「勇者よ、敵ながらお前は天晴なやつ!」

地王「その力を見込んで、助けを求めているのだ!」


勇者「こういう助けの求められ方ははじめてだよ!」

勇者「そもそも! どうしてそうなった!?」

地王「よくぞ聞いてくれた!」

勇者「聞きたくて聞いてるんじゃねえ!」

地王「勇者よ! 心して聞くが良い!」


地王「実は、酔ってあまり記憶が無いのだ」

地王「何となく、一緒に飲んでたなぁ、程度にしか覚えていない」


勇者「最悪だな! お前、ほんと最悪だな!」

勇者「しかし、その……なんだ……」

地王「ん? 何か、気になることでもあったか?」

勇者「……魔王が初めてだったとかは、覚えてるんだな」

地王「ああ」


地王「シーツに、血の痕が残っていてだな」

地王「歩き方に違和感があり、これはもう、となったわけだ」


勇者「これはもう、じゃねえよ!!」

地王「加えて、会議の時の魔王様の行いだ」

勇者「……様子でも違ったのか」

地王「いや、そこはいつもとは変わらなかった」

勇者「じゃあ、行いって何だよ」


地王「こう、闇の魔力で影を操ってだな?」

地王「それを伸ばし、コッソリ俺の指に絡めてきたのだ」


勇者「なんだそれ、可愛いな!?」

地王「魔王様は美しい!」

勇者「……まあ、そうだな」

地王「そして、可愛らしい面もあると知った!」

勇者「……まあ、そうだな」


地王「だが……このままでは、まずい!」

地王「水の四天王の怒りを買ってしまう!」


勇者「……ん?」

勇者「水の四天王は、女だったはずだが?」

地王「ああ、水の大精霊で、ボン・キュッ・ボンだ」

勇者「……そういう言い方やめろ?」

地王「……穏やかで、いつも微笑みを絶やさぬ美しい女だ」


地王「だが! 私以外に手を出したら許さない、と!」

地王「そう言った時の目は、笑っていなかったのだ!」


勇者「待て待て待て待て!!」

勇者「お前! 今のって……お前!?」

地王「護岸工事等で、奴とは行動を共にする機会が多くてな」

勇者「やめろ! それ以上聞かせるんじゃない!」

地王「まあ、時に酒宴もあるのだ」


地王「酒宴の翌朝、いつも隣で寝ているのだ」

地王「こう……幸せそうな寝顔でな?」


勇者「だから言うなってえええええ!!」

勇者「お前! 水の四天王と良い仲だったのか!?」

地王「悪い仲ならば、そうはならんだろう」

勇者「なのに、魔王に手を出したと!?」

地王「その通りだ!」


地王「右の指に影、左の指に水が絡んできた!」

地王「もし、その二つが重なったらどうなるか……わかるな?」


勇者「やめろ! 他人事だが怖い!」

地王「しかし、考えてもみろ勇者よ!」

勇者「何をだ!?」

地王「どちらも、酔った勢いなのだ!」

勇者「かも知れんが、お前最低だな!?」


地王「だから、な?」

地王「こう……何とかならないか?」


勇者「俺に、その状況をどうしろと!?」

地王「無論、決まっているだろう!」

勇者「……一応だが、聞いてやる」

地王「俺が死なず!」

勇者「まあ、そう言うだろうな」


地王「何事も無かったように!」

地王「二人との関係が、自然消滅する様にだ!」


勇者「難易度高すぎるだろうが!!」

地王「水の四天王だけならば、まだ何とかなったのだ!」

勇者「闇の魔王も加わり、複雑化した……と」

地王「光の勇者よ、助けてくれ!」

勇者「いや……そう言われてもだな」


地王「早急に、何とかしなくてはならんのだ!」

地王「婚約者――火の四天王にバレる前に!」


勇者「待て! 待て待て待て待て! 待て!」

勇者「婚約者!? 火の四天王が!?」

地王「幼き頃に決められたものだがな?」

勇者「お前、婚約者が居たのに……何だお前!?」

地王「バレたら、魔王領は終わり……」


地王「……いや、案外平気かも知れん」

地王「奴は、こういう時は怒らずにションボリする性格だ」


勇者「やめろ! 心が痛い!」

地王「奴の怒りの炎が魔王領を包むと思っていたが……」

勇者「……それこそ、炎のような性格をしているしな」

地王「うむ、火龍王の娘にして、最高の武人だ」

勇者「それが婚約者だとは……」


地王「あ、やはり駄目だな」

地王「父である火龍王が全てを焼き尽くす程怒り狂うだろう」


勇者「そりゃそうだろうな!!」

勇者「しかし、火の四天王にはまだ手を出してないんだな!?」

地王「無論! そうであれば、既にバレているだろう!」

勇者「! 婚約の解消をすれば良いんじゃないか!?」

地王「! その手があったか!」


地王「では、今度口づけを求められた時」

地王「その時に、婚約の解消を申し出ることにする」


勇者「お前それ最悪のタイミングだろう!?」

勇者「っていうか、キスしてるじゃねえか!」

地王「こう、軽くな? チュッとな?」

勇者「度合いは聞いてねえよ!」

地王「照れているのか、これ以上は結婚してから、と言ってな」


地王「……そんな女との婚約の解消を提案するとは!」

地王「勇者よ! お前は、やはり俺が見込んだ奴だ!」


勇者「やめろ! お前に見込まれたくない!」

地王「迷いは晴れた! なんと清々しい気分よ!」

勇者「お前、本当に婚約解消する気か!?」

地王「何と言えば、納得して貰えるだろうか?」

勇者「俺に聞くな! 頼むから!」


地王「……ふっ、まあ良い」

地王「お前には、勇気を授けられたからな」


勇者「俺のせいみたいな言い方をするな!」

地王「まず、火の四天王との婚約を解消!」

勇者「待て待て! まとめに入るな!」

地王「そして、うまく誤魔化しつつ!」

勇者「……闇の魔王、水の四天王との関係の自然消滅を狙うと?」

地王「その通りだ!」


地王「……光の勇者よ」

地王「その時は……敵であるが、頼りにしているぞ」


勇者「……地の四天王」

勇者「お前のことは、忘れな……いや、早く忘れるよ」

  ・  ・  ・

地王「――久しぶりだな、勇者よ!」

勇者「昨日会ったばかりだろうが!……何か進展したのか?」

地王「いいや、まだだ! だが、助けてもらいたい!」

勇者「!? やめろ、言うな! 俺に助けを求めるな!」


地王「酔って、朝起きたら風の四天王がベッドに居たのだ!」

地王「薄らぼんやりと、ヤっちゃった記憶があるのだ!」


勇者「だから俺に言うのはやめろってえええええ!!」



おわり

書きます


闇の魔王「祝福の聖女よ、其方に尋ねたい」

祝福の聖女(以下、聖女)「闇の魔王!? 何故、ここに!?」

闇の魔王(以下、魔王)「先程申したばかりだろう」

聖女「貴女と話す事など、何もありません!」

魔王「……ほう」


魔王「ならば、他を当たろう」

魔王「コイバナと言うのは、女ならば誰でも好むと聞いたからな」


聖女「詳しいいいいいいいっく!!」

聖女「コイバナ!? それは、恋バナですか!?」

魔王「うむ、そうだ」

聖女「闇の魔王である貴女が、恋をしたと!?」

魔王「それは、余にもわからぬ」


魔王「ただ、奴を想うと胸に痛みが走るのだ」

魔王「だが……それが不快ではなく、何とも心地良い」


聖女「ガチの恋バナじゃないですか!!」

聖女「だ、だけど! どうしてそれを私に!?」

魔王「其方達しか、余は知らぬ」

聖女「えっ?」

魔王「配下の者達には、見せられぬからな」


魔王「闇の魔王ともあろう者が、迷う様を」

魔王「恋など……余には無縁だと思っていた」


聖女「初恋ってことですか!!」

魔王「ふふ……其方からすれば、滑稽に見えるだろう」

聖女「いいえ! そんな事は、決してありません!」

魔王「……要らぬ気遣いは無用だ」

聖女「素敵じゃないですか! 初恋なんて!」


魔王「……祝福の聖女よ」

魔王「其方に、尋ねたい事があるのだ」


聖女「何でも聞いてください! ええ、何でもです!」

聖女「祝福の聖女の名に恥じぬよう、答えましょう!」

魔王「ふふっ……敵である其方を頼もしいと思う時が来ようとはな」

聖女「それは違います! 恋に、敵も味方もありません!」

魔王「……ならば、尋ねよう」


魔王「男とは、一度ヤったら興味が無くなるとは真か?」


聖女「……」

聖女「すみません、もう少しホーリーな感じの質問だと思ってました」

聖女「……ええ、と……ですね」

魔王「もし、これが真ならば……」

聖女「……ならば?」

魔王「……わからんな」


魔王「奴と、世界」

魔王「どちらを先に滅ぼすか、わからん」


聖女「世界としては良い迷惑ですよ!!」

聖女「魔王が、世界を滅ぼす理由が男で良いんですか!?」

魔王「構わぬ」

聖女「構いますよ! どうしてそこまで!?」

魔王「奴が、奪ったからだ」


魔王「余の心……そして、純潔を」

魔王「故に、滅ぼすしかあるまい?」


聖女「無いですよ! 何言ってるんですか!?」

聖女「それに、興味を失ったって決まった訳じゃないでしょう!?」

魔王「……」

聖女「貴女の勘違いかも知れないじゃないですか!」

魔王「……ならば、何故」


魔王「何故! 奴は、余に何も言って来ない!」

魔王「それが気にかかり、何も手に付かん!」


聖女「……あの、急に可愛いのやめてくれません?」

聖女「ええっと……お相手は、配下の人ですよね?」

魔王「……うむ」

聖女「相手が貴女――闇の魔王だから、恐れ多いとか……」

魔王「……あの夜、奴は言った」


魔王「――魔王様、お忘れですか?」

魔王「――俺は男で、貴女は女だ」

魔王「――そして、貴女の配下に臆病者は居ない」


魔王「……とな」


聖女「くっ……! 他人事なのに、キュンときた!」

魔王「奴は、余の金色の魔眼を真っ直ぐに見て言った」

聖女「そっ、それから!? それから!?」

魔王「力強くだが、優しく抱き寄せられ……」

聖女「からの!?」


魔王「……呪文を唱えるのをお互い封じ合った」

魔王「気づけば……余は、自ら魔眼を封じていた」


聖女「キャ――ッ!/// キャ――ッ!///」

聖女「何ですかそれ!/// っはー!/// 何なんですか!///」

魔王「あの夜の、ほんの一部だが」

聖女「これ以上は!/// これ以上は、もう!///」

魔王「……ふむ、そうか」


魔王「……祝福の聖女よ」

魔王「もう少しだけ、続きを話しても良いか?」


聖女「惚気ないでくださいよ!/// もう!///」

聖女「んー、んー、あー……ゴホンッ!」

魔王「どうした」

聖女「……大丈夫です!」

魔王「何?」


聖女「その方の、貴女に対する愛は本物です!」

聖女「この私――祝福の聖女が保証します!」


魔王「……」

魔王「……何故、奴は何も言ってこない?」

聖女「魔王、貴女は……その方には、何か?」

魔王「いや……」

聖女「……それが答えですよ」


聖女「その方も不安に……いえ、もしかしたら……」

聖女「ふふっ! 照れているのかも、知れませんよ?」


魔王「……何?」

魔王「奴が……照れている、だと?」

聖女「はい、とても情熱的な口説き文句でしたし」

魔王「馬鹿な、有り得ん」

聖女「有り得ない事が起きるのが、恋というものです」


聖女「闇の魔王よ、貴女に尋ねます」

聖女「貴女の配下に――」


聖女「主である貴女に手を出し、それを何とも思わない」


聖女「……そんな、恥知らずは居ますか?」


魔王「……!」

魔王「……ふふっ、奴め……そういう事だったか」

聖女「けれど、女性を不安にさせるものではないですけどね!」

魔王「構わん」

聖女「えっ? 良いんですか?」


魔王「奴が、余を想い悩んでいるとわかったのだ」

魔王「その悩み苦しむ姿を見るも、また一興というもの」


聖女「……うふふっ! 意地悪ですね!」

魔王「だが、徒に苦しみを与える訳にもいくまい」

聖女「それじゃあ……どうするんですか?」

魔王「闇の魔力で影を操り、奴の指を捕らえるとしよう」

聖女「えっと……それが、何か?」


魔王「余の右の小指と、奴の右の小指を繋ぎ、教えるのだ」

魔王「逃げられない運命だ、とな」


聖女「……不意打ちはやめてくださいよぉ!///」

魔王「しかし……其方には、世話になったな」

聖女「愛の女神の祝福を受けた身として、当然の事をしたまでです」

魔王「いや、それでは余の気がすまぬ」

聖女「……そうですね、でしたら――」


聖女「進展があったら、教えてくださいね?」


魔王「……ふっ、良かろう」

魔王「闇の魔王の名に於いて、約束しよう!」


聖女「……それでは」

聖女「祝福の聖女より、貴女の恋に祝福を!」

  ・  ・  ・

聖女「あぁ……良い事をした後は、本当に清々しい気分です!」

聖女「……ん?」

聖女「この、魔力は――」


水の四天王「――久しぶりですわね、祝福の聖女」


聖女「あっ、やっぱり!」

聖女「あれから、どうなったんですか?」


聖女「以前から相談されてる、同僚の方との恋の行方は!」



おわり

書きます


火の四天王「剣の乙女よ、お前と話がしたい」

剣の乙女(以下、乙女)「火の四天王が、話し合い?」

火の四天王(以下、火王)「お前と私は……少し、似ているからな」

乙女「そうかしら? それで、話って?」

火王「……ああ」


火王「キスしようとした時、相手が何か言いたげだったら……」

火王「……お前なら、どうする?」


乙女「……」

乙女「うん」

乙女「うん、何が? 何て?」

火王「何だ、聞こえなかったか?」

乙女「ううん? 聞こえてたわよ?」

火王「……もう一度、聞く」


火王「キスする時、相手が何か考え事をしていたら……」

火王「……お前ならば、どうする?」


乙女「……」

乙女「はい」

乙女「キスって……切り捨てる、略してキス?」

火王「何だ? まさか、キスを知らないか?」

乙女「いや、そうじゃないけど……」

火王「……ならば、三度聞く」


火王「キスする時、婚約者の様子が普段と違ったら……」

火王「……剣の乙女のお前ならば、どうする?」


乙女「……」

乙女「はあ、婚約者」

火王「何分、剣と将の道以外には疎くてな」

乙女「なるほどね」

火王「こういった時、どうすれば良いものか、な」

乙女「はー……はー、はー、はー」


乙女「貴女は、聞こうと言うのね?」

乙女「ファーストキスもまだの私に、それを聞くのね?」


火王「……」

火王「えっ?」

火王「そう……なのか?」

乙女「そうだけど?」

火王「その……す、すまん」

乙女「あらあら、まあまあ」


乙女「剣と将の道以外に疎い!?」

乙女「馬鹿にしてるの!? 婚約者が居るのに!?」


火王「す、すまん! な、何だかすまん!」

乙女「ねえ、どうして私に聞いたのかしら?」

火王「お、お前は、その……女の私から見ても美しいからだ」

乙女「うん、それで?」

火王「それに……人間は、お前位の年齢ならば」


乙女「ならば、何だって言うの!? ねえ、何!?」

乙女「静の剣と、動の剣の道しか歩いて来なかったけど!?」


火王「……」

火王「せ、静の剣だけでなく……動の剣も使えるのだな!」

乙女「急に来て、何? えっ、婚約者とキスしてるって自慢?」

火王「きっ、キスだけ! それも、チュッとだけだ!」

乙女「……」

火王「……」


乙女「……もし、今の言葉に偽りがあれば」

乙女「私は、私の全てを以て貴女を斬るわ」


火王「……」

乙女「チュッとなら、セーフ……まだ、私達は対等……!」

火王「それ以上は、結婚してからと……な」

乙女「未婚だから、セーフ……まだ、私達は対等……!」

火王「で、では、私は帰――」


乙女「待ちなさい」

乙女「まだ、話は終わってないでしょう?」


火王「……」

乙女「それで、何て言ったかしら?」

火王「こ、婚約者が……キスする時、何か言いたげでな」

乙女「今まで、チュッとしかしてこなかったのよね?」

火王「それは……結婚前ならば、当然だろう」


乙女「そんな訳ないでしょ!?」

乙女「ねえ、何!? 貴女はんんんああああああ!?」


火王「頼む! せめて! せめて、人の言葉で!」

乙女「貴女は! チュッとしかさせてこなかったのよね!?」

火王「あ、ああ……そうだが」

乙女「馬鹿じゃないの!? ねえ、馬鹿じゃないの!?」

火王「なっ!? この私を愚弄するか!」


乙女「ディープなキッスをしたがってるのよ!」

乙女「貴女、そんな事もわからないの!?」


火王「でぃっ、ディープな……キッス!?///」

火王「それは、お前……し、舌を……///」

乙女「絡めてくんずほぐれつさせるアレよ!」

火王「あ……ぁぅぁ///」

乙女「何照れてるの!? ぶった斬るわよ!」


火王「……そ、そうだとしても!」

火王「私には、ディープなキッスの仕方がわからん!」


乙女「私だって知らないわよ! 知りたいわよ!」

乙女「むしろ、キスする時って呼吸はどうしてるの!?」

火王「えっ? チュッとだから、こう……止めている」

乙女「ディープの時は!? ねえ、どうするつもり!?」

火王「……わ、わからん!/// 私には、わからん!///」


火王「想像しただけで、全身から炎が溢れそうだ!///」

火王「……出る!(ボワッ)/// 絶対、火のブレスが出てしまう!(ボワッ)///」


乙女「想像だけで火のブレス出てるじゃないの!」

火王「! だから……父上は、チュッとする以上を禁じたのか!」

乙女「貴女の父上って……火龍王よね?」

火王「ああ、そうだ……それ以上は、結婚してから、とな」

乙女「……これは、私の推測だけれど」


乙女「結婚したら――貴女と相手に加護が与えられて……」

乙女「……火のブレスが出ない、もしくは平気になるんじゃない?」


火王「!」

火王「それだ……そうに違いない!」

火王「そうでなければ……ディープなキッスなど夢のまた夢!」

乙女「……ねえ」

火王「む、何だ?」

乙女「貴女の婚約者は……それを知ったんじゃないかしら」


乙女「……そうだとしたら、全てに説明がつくわ」

乙女「今までチュッで良かったのに、急に何か言いたげになったのは――」


火王「――……プロポーズ……?」


乙女・火王「……」

火王「いや、そんな……まさか」

乙女「違うと言い切れるかしら?」

火王「だ、だがっ!」


火王「私の顔の左側は、龍の鱗に覆われている!」

火王「幼き頃より、陰で醜いと言われているのだぞ!?」


乙女「私は、女の貴女から見ても美しいみたいね」

乙女「けれど、ファーストキスもまだよ」


火王「……」


乙女「何か言って頂戴」

乙女「そもそも、貴女の婚約者はその顔について?」

火王「か……顔というか、だな?」

乙女「うん」

火王「幼き頃より、奴は……奴だけは……」


火王「か……可愛い、と///」

火王「この私をだぞ?/// か、可愛いと言うのだ……!///」


乙女「……」

乙女「うん」

火王「そう言う時の笑みは、偽りなく真っ直ぐで……///」

乙女「はい」

火王「や、奴が……?(ボワッ)/// プロポーズ……?(ボワッ)///」

乙女「……っふ」


乙女「魔王軍幹部! 火の四天王ぉぉぉおおおああ!!」

乙女「剣の乙女の、この剣はぁ! んんあああああ!!」

乙女「うううううううう!! ほあああああああ!!」


火王「!? どっ、どうした!?」

乙女「これ以上、好きにはさせないわ!」

火王「剣の乙女!?」

乙女「そもそも、私達は相容れぬ運命!」

火王「いや、式には招待す――」


乙女「全て、断ち切ってあげるわ!」

乙女「剣の乙女の、秘奥を以て!」


火王「……そうは行かんぞ!」

火王「火の四天王の、燃え盛る炎を消せると思うな!」

  ・  ・  ・

乙女「……ちいっ! 逃したか……!」


風の四天王(以下、風王)「――おやおや、穏やかじゃないね」


乙女「あっ、貴方は……風の四天王!?」

風王「美しい顔に、そんな表情は似合わないよ」

乙女「っ!?///……な、何をしに来た!?///」


風王「僕は、君に会いに来たのさ」


乙女「……」

乙女「えっ?」

乙女「わ……私に何の用かしら?///」

風王「君は、僕から見て魅力的な女性だからね」

乙女「みりょっ!?///」

風王「そんな君に、色々と教えて貰いたいんだ」

乙女「な……何を……?///」


風王「長らく、男のフリをしてきたからね」


乙女「はい///」

乙女「…………はい?」


風王「彼の……男の心を射止める秘訣を教えて欲しい」


乙女「……」

乙女「とりあえず、奥義を使うわ」



おわり

書きます


地の四天王「光の勇者よ! 雌雄を決する時が来た!」

地の四天王(以下、地王)「ふはは、覚悟は良いか!」

光の勇者(以下、勇者)「地の四天王!? くっ、本気なのか!?」

地王「言うまでも無い! 俺には時間がないのだ!」

勇者「待て! 一体、何があった!?」


地王「闇の魔王様、水の四天王、風の四天王……」

地王「酔ってヤっちゃった事がバレている気がする!」


勇者「それは時間が無いな!?」

勇者「だが、それならどうしてお前は生きてるんだ!?」

地王「皆が、力を高めているからだ!」

勇者「!? お前を殺すためにか!?」

地王「いや……そうではなくな?」


地王「今晩、俺を除く四天王の三人と魔王様でな」

地王「……女子会をやるそうなのだ」


勇者「高めてるのは女子力じゃねえか!!」

地王「風の四天王と酔ってヤっちゃったのは話しただろう」

勇者「……ああ、サラッと言う事じゃないけどな」

地王「それでな……奴め……!」

勇者「風の四天王が……バラしたのか」


地王「男装をやめ! なんと、スカートを履いてきたのだ!」

地王「スラリと伸びた足が、まだ目に焼き付いているわ!」


勇者「だから、どうした!?」

地王「どうした、だと? 無論、褒めた!」

勇者「魔王に、火と水の四天王も居た時にか!?」

地王「会議の場だ、居るに決まっているだろう」

勇者「お前、なんっ……!? 何だ!?」


地王「良いものは、キチンと良いと褒める!」

地王「それが出来ぬ程、俺は狭量では無いわ!」


勇者「時と場合ってもんがあるだろうが!!」

地王「まあ……ポロッと言った所は、ある」

勇者「だろうな!」

地王「だが、問題はその後なのだ」

勇者「……やめろ、聞きたくない」


地王「見ろ、右手の小指と、左手の薬指の痣を」

地王「それと、後ろ髪が少し焦げている」


勇者「だからって見せるなよなあああああ!!」

地王「それから、あれよあれよと盛り上がり……」

勇者「まあ……風の四天王は、今まで男の格好をしてたしな」

地王「ああ……女だけで集まって、となっても……」

勇者「……おかしくないな」


地王「その時! チラリと!」

地王「チラリと、全員が俺の事を見たのだ!」


勇者「……」

勇者「全員、お前との事を話すだろうな……」

地王「……バレている気がすると言っただろう?」

勇者「!……そう言えば」

地王「……最近、な」


地王「――本当の気持ちはわかっている」

地王「そんな言葉を全員に言われたのだ」


勇者「……!」

勇者「……待て、他人事なのに恐怖で吐きそうだ」

地王「光の勇者よ、俺の本当の気持ちとは何だ!?」

勇者「頼むから! ここで自分探しをするな!」

地王「わからん……何が、わかられているのだ!」


地王「俺は……俺は、恐ろしい!」

地王「何故! 何故、俺は酔ったらヤっちゃうのだ!」


勇者「俺はお前が酒をやめないのが恐ろしいよ!」

地王「……女子会で話されるのは、俺の事だろう」

勇者「バレてるにせよ、バレてないにせよ……」

地王「……俺には、地獄が待っているだろう」

勇者「まあ……当然と言えば、当然の報いだな」


地王「――時に、光の勇者よ」

地王「お前は、祝福の聖女と剣の乙女とは、どうなのだ?」


勇者「……」

勇者「はっ!?」

勇者「どう、って……何だよ、急に」

地王「どちらか、もしくは両方とヤっちゃってるのか?」

勇者「そんな訳があるか!」

地王「何!? それは本当か!?」


勇者「当たり前だろう!」

勇者「あの二人は、大切な旅の仲間だ!」


地王「……ふむ」

地王「祝福の聖女に、不満でもあるのか?」

勇者「いや……可愛いし性格も良い、守ってあげたくなる子だ」

地王「俺の見た所では、お前を慕っているぞ?」

勇者「まあ……それは、俺もわかっているが……」


勇者「……その、何だ」

勇者「宗教関係の子は……な? わかるだろ?」


地王「……ふっ、それでこそ俺の見込んだ男よ」

勇者「まあ、俺も男だからな……」

地王「ああ、我慢出来ぬ時もあっただろう」

勇者「でもな……あの子は、女神に最も愛されてるんだ」

地王「そうでなければ、祝福の聖女ではないしな」


勇者「良い雰囲気になった時は特に、な」

勇者「こう……俺も、視線を感じるんだ」


地王「見守っているのだなぁ」

地王「ならば、剣の乙女は? どこが不満だ」

勇者「まあ……綺麗だし優しいし、尊敬出来る人だ」

地王「うむ、それに強い」

勇者「……本人には、絶対に言うなよ?」


勇者「あれだけ好条件が揃ってて……キスもまだらしい」

勇者「これは、何か恐ろしい闇が潜んでいるんじゃないか、とな」


地王「……ふっ、勇気と蛮勇を履き違えぬ思慮深さだ」

地王「しかし、闇を払うのが光の勇者だろう」

勇者「考えてもみろ? 闇を……はい、払いました!」

地王「うむ! 天晴!」

勇者「そこで目に入るのは、俺とあの人の年齢差だ!」


勇者「今は! 10年、20年は良い!……だが! 40年、50年後!」

勇者「闇を払った未来に、希望が待ち受けているとは思えないんだ!」


地王「勇者らしからぬ言葉よなぁ」

地王「しかし……ならば、遠慮は要らんようだな」

勇者「……本気、みたいだな」

地王「ああ、その通りだ」


勇者「俺の命を手土産に有耶無耶にしよう……って所か」


地王「? 何を言っているのだ?」

地王「お前の首を持って行っても、俺の首が隣に並ぶだけだろう」


勇者「……」

勇者「はっ?」

勇者「ま……待て待て!」

地王「む? どうした?」

勇者「地の四天王、お前の目的は何だ!?」

地王「考えも見ろ、光の勇者よ」


地王「光の勇者という、リーダー」

地王「祝福の聖女という、回復後衛」

地王「剣の乙女という、物理前衛」


勇者「……おい」


地王「あと一人居たら、もっとバランスが良くなるな?」


勇者「おぉい!?」

勇者「お前、何言ってんの!?」

地王「安心しろ、俺の配下の者は優秀だ」

勇者「お前の領地の心配なんか微塵もしてねえよ!」

地王「ほとぼりが冷めるまでだ! な? なっ?」


地王「それに、書き置きは残してきた」

地王「俺より強いやつに会いに行く……とな」

地王「これで、俺がどこへ行ったかわかるまい!」


勇者「滅茶苦茶相手が限られてるじゃねえか!!」

地王「お前達三人の近くなら、聖なる力でバレにくいのだ!」

勇者「駄目だ! 絶対に駄目だ!」

地王「俺を倒した事にしても良いぞ? おっ、それが良いな!?」

勇者「魔王と四天王三人が本気で俺を殺しに来るわ!」


地王「情けないぞ、光の勇者よ!」

地王「目の前の命を救えずして、世界が救えると思っているのか!」


勇者「救われる側が言う台詞じゃねえよ!!」

勇者「そもそも、お前の体格なら一発でバレるわ!」

地王「確かに、この俺の肉体は鋼の様に鍛え抜かれているな!」

勇者「バレなかったとしても、二人が嫌がる!」

地王「確かに、この俺のセクシーさは色々と混乱を招くだろうな!」


地王「だからこそ! 光の勇者よ!」

地王「――雌雄を決しに来たのだ!」


勇者「……」

勇者「は?」

地王「この俺は、大地を――鉱物すら自在に操る!」

地王「戦いの時には、己が肉体をも鉱物と化すのだ!」

地王「――つまり!」

パァァ……


勇者「……おい……おい!!」


……ァァッ

地の四天王な美少女「――性別も、この通りなのだ!」

地の四天王な美少女「壁でも魔法後衛でも、任せて貰おう!」


勇者「……雌雄って……うん」

勇者「……」


勇者「誰でも良いから、助けてくれ!!」



おわり

書きます


水の四天王「祝福の聖女よ、お願いがありますわ」

祝福の聖女(以下、聖女)「水の四天王の貴女が……お願いですか?」

水の四天王(以下、水王)「ええ、貴女にしか頼めないのです」

聖女「……お断りします」

水王「何ですって?」


聖女「貴女のお願い事は、私の信仰が許しません!」

聖女「今の貴女は――状態異常(儚)にかかっています!」


水王(儚)「……」

水王(儚)「……あまり、私の心を覗かないでくださいまし」

聖女「落ち込んでるのが丸わかりなだけです!」

水王(儚)「ふふっ……貴女は、何でもわかってしまうのね」

聖女「誰だって、今の貴女を見ればわかります!」


水王「――ふっ!」

水王(儚)「……これで、どうかしら?」


聖女「あの……すぐ、儚い感じに戻りましたよ」

聖女「一体、何があったんですか?」

水王(儚)「……どこかへ、行ってしまわれたのです」

聖女「それって……もしかして」

水王(儚)「ええ……貴女にお話していた、彼が」


水王(儚)「――俺より強いやつに会いに行く」

水王(儚)「……そんな、書き置きを残して」


聖女「何ですか!? その、馬鹿みたいな理由は!?」

水王(儚)「……私にも、よくわかりませんわ」

聖女「私だって、全然わかりませんよ!」

水王(儚)「ただ……彼は、私の前から消えてしまった」

聖女「無責任にも程がありますよ!」


水王(儚)「だから、祝福の聖女よ……」

水王(儚)「貴女の力で……彼に関する記憶を封じて欲しいのです」


聖女「!?」

聖女「き……記憶を封じる!?」

水王(儚)「ええ、お願いしますわ」

聖女「貴女が望んでいるなら、出来ると思いますけど……」

水王(儚)「……私は、魔王軍幹部、水の四天王」


水王(儚)「果たさねばならぬ役目があります」

水王(儚)「思い悩み、立ち止まっている暇は……ありませんの」


聖女「……」

聖女「記憶を封じたら、好きだって気持ちも忘れちゃうんですよ」

水王(儚)「ええ、そうでしょうね」

聖女「貴女は、本当にそれで良いんですか?」

水王(儚)「……ほんの少しだけ、昔話をしましょうか」


水王(儚)「私は……彼をとても嫌っていたのです」

水王(儚)「それこそ、視界に入れるのも嫌でしたのよ?」


聖女「……えっ?」

聖女「そう……だったんですか?」

水王(儚)「……野蛮で粗野、優雅さの欠片も無い愚か者」

聖女「……散々な評価だったんですね」

水王(儚)「私は水の大精霊、当然でしょう?」


水王(儚)「けれど、轡を並べて事に臨んでいく内に……」

水王(儚)「ゆっくりと、ゆっくりと……それが変わっていったのです」


聖女「……」

水王(儚)「当然、何度も衝突はしましたわ」

聖女「けれど……二人は、それを乗り越えてきた」


水王(儚)「……私の案と、彼の案」

水王(儚)「その二つを合わせて、大きな成功を収めた時」


聖女「……」


水王「……――ふふっ」

水王「あの笑い合った時、私は完全に恋に落ちたのでしょうね」


聖女「――!」

水王「情緒など、露程も感じない始まりでしょう?」

聖女「……はい、そう思います」

水王「憧れていたロマンスとは、程遠いものですわ」

聖女「……」


水王(儚)「……だから」

水王(儚)「彼が姿を消した今、その記憶が消えたとしても――」


聖女「――だからこそ!」

聖女「絶対に、忘れるなんて駄目です!」


水王(儚)「……祝福の聖女?」

聖女「何なんですか!? ふざけないでください!」

水王(儚)「……何故、貴女は怒っているの?」


聖女「私は、愛の女神の加護を受けた、祝福の聖女です!」

聖女「その私に……!」


聖女「――幸せな日々の記憶を封じろなど!」

聖女「――愛する人への想いを封じろなど!」


聖女「……出来るわけがないじゃないですか!」


水王(儚)「……」

聖女「むしろ、その逆!」

水王(儚)「……逆?」

聖女「貴女の、愛を踏みにじる行為を止めます!」

水王(儚)「……」


聖女「貴女自身を敵に回そうとも!」

聖女「私は、想い人の事を語る貴女の微笑みの味方です!」


水王(儚)「っ……!」

水王(儚)「けれど……辛いのです! 苦しいのです!」

聖女「言い訳をして、考えることをやめないでください!」

水王(儚)「私に! 何を考えろと言うのですか!?」

聖女「そんなの、決まってるじゃないですか!」


聖女「――俺より強いやつに会いに行く」

聖女「……その書き置きの、意味をですよ!」


水王(儚)「あの書き置きの……意味……?」

水王(儚)「……私は――」

水王(儚)「去る時に、ただ何となくそれらしい理由を書いた」

水王(儚)「――そう、考えていたのですが……」


聖女「……自分より、強い相手に会いに行く」

聖女「そんなの……そんな理由なんて、一つだけじゃないですか」


水王(儚)「……お、教えてくださいまし!」

水王(儚)「その理由とは、何なのでしょうか!?」


聖女「……強くなるためですよ」


水王(儚)「っ――!」

水王(儚)「つ……強くなるため……?」

聖女「己の殻を破るには、それが一番ですから」

水王(儚)「そんなっ! 何故!?」

聖女「……貴女です」


聖女「水の四天王である貴女を――」

聖女「――守れる程の力を得るためです!」


水王「っ――!!」

水王「ま、まさか……そんな……」

聖女「そうでなければ、何も残さずに去るでしょう」

水王「け、けれど! 私はそれを望んではいませんわ!」

聖女「……水の四天王」


聖女「想い人が、強くなるという理由で貴女の元を去った」

聖女「……それは、確かに貴女の望みではないでしょう」

聖女「でも、貴女の今の表情は――」


聖女「それこそが、真実だと疑っていないと、私に告げています」


水王「……ふふっ」

水王「……ええ、その通りですわ」

水王「私は……彼をいつの間にか侮っていたのかも知れません」

聖女「侮っていた……ですか?」

水王「恋という名の濃霧が、見失わせてしまっていた……」


水王「彼は馬鹿……本当に、大馬鹿者ですわ」

水王「その大馬鹿者が、思い描く未来」

水王「後ろでも、隣でも無く……前に立とうとする、決意」

水王「……うふふっ、本当に……馬鹿ですわね」


聖女「――水の四天王」

聖女「私にお願いって、何ですか?」


水王「――祝福の聖女」

水王「そんなものは、忘れてしまいましたわ」

  ・  ・  ・

聖女「……本当に、男の人って馬鹿なんですから」

聖女「でも……勇者様も、そういう所があるし……」

聖女「……///」

聖女「愛の女神様、私の恋も見守っててください……!///」


闇の魔王(儚)「……ゅ……ぃ……ょ……願ぃ……」


聖女「……闇の魔王!?」

聖女「一体、何が……っていうか、声小さい!!」


聖女「あああ! 泣いてないで、私に話してみてください!!」



おわり

書きます


風の四天王「剣の乙女、君に何があった?」

剣の乙女(以下、乙女)「急に現れておいて、いきなり質問?」

風の四天王(以下、風王)「いや、そんなつもりは無かったんだが……」

乙女「あら、そんなに私が変わったように見える?」

風王「……そうだね、まるで別人だ」


乙女「……愛する人が――彼女が出来た」

乙女「私が変わったのは、それが理由よ」


風王「成る程、そういう事……」

風王「…………えっ?」

風王「今、何て言ったんだい?」

乙女「聞こえなかったのかしら」

風王「ええ、と……勇者に、彼女が出来たのかな?」

乙女「違うわ」


乙女「この私、剣の乙女に――彼女が出来たのよ」

乙女「……全く、勘違いしないで頂戴」


風王「……いや、待ってくれ」

風王「えっ? 君は女で……えっ、彼女?」

乙女「それで? 私に、何の用かしら?」

風王「いや、ちょっと……その前に」

乙女「どうしたの、不思議な顔をして」

風王「君は……恋愛対象が、女性だったのかい?」


乙女「運命の相手が、たまたま女だっただけ」

乙女「……私は、彼女に会うために生まれてきたのよ」


風王「……」

風王「そ、そう……なんだね」

乙女「彼女の事が知りたい? 良いわ、教えてあげる」

風王「口を挟む暇すら与えてくれないのかい」

乙女「私が、恋の相手に望んでいたものは、唯一つ」

風王「……」


乙女「この私よりも、強い事よ」

乙女「彼女は……新しい仲間の彼女は、本当に強いわ」


風王「……一つだけど、非常に厳しい条件だったんだね」

乙女「私の剣戟の隙間を縫うように、攻撃魔法を飛ばし……」

風王「それは……本当に、優れた使い手だね」

乙女「時に前に出て盾となり、敵に大きな隙を作り出す……」

風王「それは……敵としては、非常に厄介だね」


乙女「ええ、本当に頼もしい仲間よ」

乙女「彼女と出会えた運命に……感謝しないとね」


風王「……敵の僕としては、素直に祝福出来ないな」

乙女「けれど、突然現れても……信用出来ないでしょう?」

風王「まあ、そうだろうね」

乙女「だから、年長者としてお酒の席を設けたの」

風王「お酒が入れば、本音も出るだろうしね」


乙女「そうして、飲んでいたらね?」

乙女「――お前は、相手に恵まれていなかっただけだ」

乙女「――出会って来た男は、見る目が無かったらしい」

乙女「……ですって! ふふっ! ねえ、聞いてる?」


風王「……うん、まあ、聞いてるよ」

乙女「それでね? 彼女ったら、もうっ!」

風王「……うん」

乙女「あれよあれよと、酒場の上の宿を取ってね?」

風王「……うん」


乙女「……まあ、そんな感じで……ね?」

乙女「私は……女の喜びを知ったの」

乙女「やっ、やだもうっ!/// 何を言わせるのよ!///」


風王「君が言い出したんだけどね?」

風王「それに、言いにくいんだけど……」

風王「……君のそれは、知ったかぶりだと思うよ」

乙女「いいえ、私はそこで己の弱さを知ったわ」

風王「己の弱さ?」

乙女「ええ、そうよ……私自身ですら、知らなかったの」

風王「剣の乙女である、君が?」


乙女「この……右の鎖骨の、このライン」

乙女「ここを舌でツウッとされると、なんだか凄いのよ」


風王「ねえ、赤裸々すぎやしないかい?」

風王「けれど……それが、君が変わった理由か」

乙女「そう、愛が私を変えたのよ」

風王「……愛、か」

乙女「私は、愛を知って――強くなった」


乙女「……けれど、風の四天王」

乙女「貴女は、弱くなったわね」


風王「……はは、これは手厳しいね」

乙女「今日の貴女は、どうしてまた男装をしてるのかしら?」

風王「……女の格好をする理由が無くなっただけさ」

乙女「ふぅん? そうなの」

風王「それに、僕にはこっちの格好の方が似合うだろう?」


乙女「いいえ、むしろ滑稽だわ」

乙女「今の貴女は、女としての自分に自信が持てず……」

乙女「踏み出した一歩を引っ込めただけだもの」


風王「……君は、本当に厳しいな」

乙女「今の貴女なら、目をつぶっても勝てるわ」

風王「……へえ、試してみるかい?」

乙女「死にたければ、かかって来なさい」

風王「っ……! 言うじゃないか!」


乙女「ええ、見るに堪えないもの」

乙女「敵とは言え、何かから逃げている貴女を見るのは」

乙女「……ああ、臆病風でスカートがめくれるから、ズボンをはいてるのね?」


風王「……!」

風王「随分と……舌が回るようになったじゃないか」

乙女「彼女の舌技に比べれば、大したことは無いわ」

風王「……急に惚気ないでくれるかい?」

乙女「貴女が戦う気が無いってわかったから……つい、ね」


風王「……確かに、君の言う通りだ」

風王「今の僕は……本当に、弱い」


乙女「やっぱり、自覚はあったのね」

風王「男など……そんな風に見下していた僕がだ」

乙女「……」

風王「一人の男が居なくなってしまっただけで、ね」

乙女「違うわ」


乙女「性別なんて……関係の無いわ」

乙女「男だから? 女だから?……そんなのは、些細な事よ」

乙女「愛する、求めている人が消えてしまって、悲しい」

乙女「……それだけでしょう?」


風王「……」

風王「君は……何か、知っているのかい?」

乙女「いいえ、何も。けれど、推測は出来る」

風王「……」

乙女「フラれたの? それとも、死んだのかしら?」


風王「……忽然と、姿を消してしまったんだ」

風王「僕が、スカートをはいて行った……その夜にね」


乙女「……馬鹿馬鹿しい」

乙女「それで、また男装をするようになったの?」

風王「……言いたくないな」

乙女「じゃあ、言わせて貰うわ」

風王「……」


乙女「貴女が女の格好をして、男装をやめた事」

乙女「それが、何かのきっかけになったと思ってるでしょう?」

乙女「……そんな筈、有るわけ無いでしょう!」


風王「……」

風王「……けれど、変わった事と言えば」

乙女「それ以外に無い、とでも?」

風王「……その通りだよ」

乙女「……あのねぇ!」


乙女「自信があるのか無いのか、ハッキリしなさいよ!」

乙女「貴女が、男の格好をしたら、その男は戻ってくるの?」

乙女「……ああもう! イライラさせないで頂戴!」


風王「……」

風王「……だったら、僕はどうすれば良いんだ!」

乙女「そんなの、私が知るわけないでしょう」

風王「ああ、そうだろうね! 君は、僕の敵だから!」

乙女「ええ、だからこそ……私は知っているわ」


乙女「風の四天王」

乙女「――貴女は、探しものをするのが得意だ、って」

乙女「それこそ……私の知らない方法も知ってるわよね」


風王「っ――!!」

風王「彼を……探す……?」

乙女「何? そんな事も思いつかなかったの?」

風王「……考えもしなかった」

乙女「呆れた……貴女、それでも四天王の一人なの?」


風王「……ああ、僕は風の四天王だ」

風王「狙った獲物は――絶対に逃さないのさ」


乙女「……どうやら、調子を取り戻したみたいね」

乙女「風は、留まり続けるべきじゃないもの」


風王「感謝するよ、剣の乙女」

風王「君は、僕の女々しさを見事に断ち切ってくれた!」

  ・  ・  ・

乙女「……恋は盲目と言うけれど」

乙女「時に……己をすら、見失わせてしまうのね」

乙女「……」

乙女「私は……彼女を見失わないよう、気を付けないと」


火の四天王「剣の乙女よ! 婚約が……!」

火の四天王「パパが、婚約を解消しろと言ってきた!」


乙女「……貴女、火龍王をパパって呼んでるの?」

乙女「それより、婚約を解消って……もう、わかったから!!」


乙女「一緒に良い方法を考えるから、ブレスを吐かないで頂戴!!」



おわり

書きます


地の四天王な美少女「光の勇者よ、話とは何だ?」

光の勇者(以下、勇者)「地の四天王、心当たりは無いか?」

地の四天王な美少女(以下、地女)「おっと、その呼び方はやめて貰おうか」

勇者「良いから座れ」

地女「今は、地の四天王――改め!」


大地の魔女(以下、地女)「大地の魔女!」

地女「ふはは! ちゃん付けでも構わんぞ!」


勇者「座れって言ってんだろ!?」

地女「宿屋であまり大声を出すな……よいしょっと」

勇者「……ベッドの上でぺたんこ座りすんな」

地女「むう、何故だ?」

勇者「……唇を尖らせるのはやめろ」


地女「あれも駄目、これも駄目……」

地女「勇者よ! お前はリーダーではあるが、母親では無いぞ!」


勇者「だったら、一々言わせるんじゃねえってんだ!」

地女「まあ、お前の話とやらの心当たりはある」

勇者「まあ、そうだろうな!」

地女「いずれは話し合わねばならんと思っていたぞ」

勇者「……むしろ、遅い位だっての」


地女「確かに……もっと早く話すべきだったな」

地女「――攻撃魔法で先制してからの戦術と連携を」


勇者「そんな感じでお前が馴染みすぎだって話だよ!!」

地女「何を言っている? 旅の仲間ならば、当然だろう?」

勇者「違うだろ!? お前は、四天王の一人だろ!?」

地女「何!? まだ、仲間と認めていないのか!?」

勇者「当たり前だろうが!」


地女「ならば、どうしたら認めてくれるのだ!?」

地女「……まあ、お前に認められなくても居座るがな~」

ぽふんっ、ごろごろ~っ


勇者「ベッドの上で転がるんじゃねえええええ!!」

地女「まあ、落ち着け勇者よ」

勇者「お前のその落ち着きが腹立つんだよ」

地女「せっかく良い宿を取ったのだ、しっかり休息をとるべきだろう」

勇者「……っていうか、なんでお前と同じ部屋なんだよ」


地女「今の財布事情を考えたら、二部屋が限度」

地女「部屋割りに不満があるのなら、今から代わるか?」


勇者「……いや、良い」

勇者「本来は男のお前と……」

地女「祝福の聖女、剣の乙女を同室にするのはまずいだろうな」

勇者「……おかげで、俺があの二人に変な目で見られた」

地女「うむ、それはそうだろう」


地女「光の勇者とは言え、お前は男だ」

地女「……ふっ、まさかあの二人に心配される日が来るとは」


勇者「満更でもなさそうに微笑んでんじゃねえよ」

勇者「……っていうか、いつの間にあの二人と仲良くなったんだ」

地女「祝福の聖女は、恐らく相談に乗ったからだろうな」

勇者「相談?」

地女「うむ!」


地女「お前の――光の勇者の倒し方の相談だ!」

地女「まあ、倒し方というか……倒され方というかな?」


勇者「……待て待て待て待て!!」

勇者「お前、あの子に何を教えた!?」

地女「祝福の聖女が信仰する女神教には、『十の戒律』というものがある」

勇者「……いきなり何だよ」

地女「悲しいかな……愛を司るとは言え、所詮は女神」


地女「女神教の、『十の戒律』なぞ、大して役に立たん!」

地女「俺の、『男をオトす10のテクニック』の方が男のツボを抑えているのだ!」


勇者「そりゃあ、お前は男だからな!」

勇者「変なこと吹き込んでたら、ぶっとばすぞ!?」

地女「何を言う! 俺は、女の味方だ!」

勇者「お前程の女の敵は見たことねえよ!」

地女「ええい、ならば見せてやろう!」


地女「この、左の頬にかかった髪をかきあげる時にな――」

…スッ

地女「――こう、左手でなく……右手で、クロスさせるように」

地女「……どうだ! 色っぽさ、二割増だろう!」


勇者「滅茶苦茶小技じゃねえか!!」

地女「確かに、大技や大魔法も局面を決める上で重要だな」

勇者「そういうのは教えてないだろうな!?」

地女「馬鹿者が! 何を言っている、光の勇者よ!」

勇者「っ!?」


地女「ここぞと言う時こそ、勇者であるお前の役目だろう!」

地女「その腰に下げた聖剣は、ただの飾りか!?」


勇者「……くそっ! 一瞬でも気圧された自分に腹が立つ!」

地女「まあ、そんな訳で聖女の味方になったのだ」

勇者「……道理で、最近」

地女「おっ? グッと来たか? ん? んんっ?」

勇者「……うるせえよ」


地女「はっはっは! 光の勇者よ!」

地女「足掻いても無駄だと言っておこうか! はっはっは!」

ぺちん、ぺちん、ぺちん、ぺちん!


勇者「足の裏で拍子とってんじゃねえ!!」

地女「それで、剣の乙女とはだな」

勇者「……何があったんだよ」

地女「うむ」

勇者「……」


地女「それが、まるでわからんのだ」

地女「一緒に飲みに行ったような……行ってないような?」


勇者「……おい……おい、お前!?」

勇者「お前、おい……まさか!?」

地女「女の体だと、酒に弱くてなぁ」

勇者「男の方でも弱いじゃねえか!」

地女「……あまり言ってくれるな、光の勇者よ」


地女「地の四天王は――四天王の中でも最弱」

地女「……分かっていても、言われる方は複雑なのだ」


勇者「お前、酒向いてねえぞ!?」

地女「では……光の勇者――いや、リーダー!」

勇者「……絶対に断る」

地女「お前は敵だが、頼りにしているぞ!」

勇者「ダブルスタンダードも大概にしろよ!?」


地女「酔って、剣の乙女とヤっちゃったかどうか」

地女「こう……さりげな~く聞いといてくれ、な?」


勇者「どういう聞き方だ!?」

勇者「どう転んだって、さりげなくならねえぞ!?」

地女「……まあ! そんな感じで交流を深めたのだ!」

勇者「かつてない程の危機がパーティーを襲っている……!」

地女「案ずるな、光の勇者よ」

勇者「……あん?」


地女「もし、剣の乙女とヤっちゃっていたら……」

地女「お前も、聖女とヤっちゃえばバランスが良くなる」


勇者「お前、本当いい加減にしろよ!?」

勇者「……だが、悔しいことにお前が居ると楽だ」

地女「うむ、こちらも戦い方に幅が出来、強くなった」

勇者「……危ない場面も、助けられたな」

地女「仲間を助けるのは、当然だろう」


地女「――だが、忘れるなよ……光の勇者」

地女「大地の魔女の正体は――地の四天王」

地女「決して、頼れるだけの偉大な魔法使いでは無い」

地女「男同士の様に気楽で、いやらしい話も出来る美少女では無いのだ」

…ポリポリ


勇者「とりあえず、ベッドの上で菓子を食うのをやめろ」

  ・  ・  ・

地女「――お、お願いだっ! お願いだ、勇者!」

勇者「ええい、うるさい!」

地女「頼む! 乱暴にしないでくれ!」

勇者「だったら、大人しくしてろ!」


地女「!? こっ、拘束魔法!?」

地女「くっ……! か、解除出来ん!」


勇者「当たり前だろう!」

勇者「お前をどこへも行かせるかよ!」

地女「そんな……何故だ!?」

勇者「お前が誘ってきたからだ――」


祝福の聖女(以下、聖女)「……ゆ、勇者様……!?」

剣の乙女(以下、乙女)「なっ……何をして……!?」


勇者「……」

勇者「待ってくれ!! 二人は誤解してる!!」

勇者「コイツが、酒を飲みに行こうと――」


地女「せっ……聖剣なんぞには、決して負けぬ……!」


聖女・乙女「さ――最低!!」


勇者「俺の話を聞いてくれえええええ!!」




おわり

書きます


闇の魔王「祝福の聖女よ、何かあったのか?」

祝福の聖女(以下、聖女)「……闇の魔王さん」

闇の魔王(以下、魔王)「ひどく憔悴しているようだが……」

聖女「……聞いて、貰えますか?」

魔王「敵とは言え、其方には世話になっているからな」


聖女「勇者様が……勇者様が!」

聖女「無理矢理、女性をヤっちゃおうとしてたんです!」


魔王「……」

魔王「……すまぬ、あまり力になれそうにない」

魔王「しかし、何かの間違いではないのか?」

聖女「人は、誰しも間違いを犯すものです!」

魔王「聖女よ、落ち着くのだ」

聖女「私は冷静です! ええ、冷静ですとも!」


聖女「今も、冷静に神に祈りを捧げていたんです」

聖女「貴女の与える試練は、あまりにも過酷すぎます、って」


魔王「……」

魔王「だが……英雄色を好むという言葉もある」

聖女「……魔王さん」

魔王「許すのもまた愛……そう言っていたではないか」

聖女「……」


聖女「……闇の魔王」

聖女「貴女の想い人がそうしているのを見たら、どう思いますか?」


魔王「許せ、軽はずみな発言だった」

魔王「して……勇者は、何処に居る?」

聖女「……逃げたんです」

魔王「逃げただと?」

聖女「……はい」


聖女「剣の乙女さんが、無表情で……」

聖女「その……斬り落とすと言って襲いかかったので」


魔王「……成る程な」

聖女「勇者様には光の加護があるので……」

魔王「まあ、生きては居るだろうな」

聖女「聖剣と魔法も駆使し、秘めた力も覚醒していましたからね」

魔王「余の関わらぬ所で、決戦が行われていたか」


聖女「……もし、斬り落とされて帰ってきたら」

聖女「私……ちゃんと回復させる自信がありません」


魔王「案ずるな、祝福の聖女よ」

魔王「そうだとしても、剣は振るえる」

魔王「しかし、光の勇者め……我が軍だけでなく……」

聖女「……」

魔王「…………ゅ……ゅぅ、う~……じ……んっ、んんっ!」

聖女「……魔王さん?」


魔王「……其方まで苦しめるとは!」

魔王「ふふっ……罰として、奴の故郷を滅ぼしてくれよう」


聖女「あの……同郷なので、私の故郷でもあるんです」

聖女「なので、はい……お気持ちだけ、ありがたく」

魔王「しかし……光の勇者と、剣の乙女め」

聖女「えっ? 勇者様はともかく……」

魔王「今の其方を捨て置くなど、看過出来るものではない」

聖女「あっ、いえ……私だけじゃなく――」


ガチャッ!

大地の魔女(以下、地女)「祝福の聖女よ、お菓子を持って来たぞ!」


聖女「新しい仲間の、大地の魔女さんも居ますから!」

魔王「ふむ……成る程」


地女「……」

バタンッ!


聖女「へっ?」

魔王「む?」

聖女「あっ、あの……大地の魔女さん?」

魔王「どうした……闇の魔王の、余が恐ろしいか?」

聖女「大丈夫ですよ! その……可愛い所もありますから!」

魔王「……祝福の聖女よ、それは他言無用だと言っただろう」


……しんっ


聖女・魔王「……」

聖女「あれ……?」

魔王「……ふむ」

  ・  ・  ・

地女「……!」

地女(祝福の聖女と……魔王様が、裏で繋がっていただと!?)

地女(ぬうう! いかん! これは……いかん!)

地女(どこまで……どこまでバレちゃっているのだ!?)


地女「今は……今は、此処を離れねば!」


…ズブッ!


地女「しまっ!? 影に呑まれ――」


…とぷんっ!

  ・  ・  ・

聖女「――わあっ! このお菓子、美味しいですね!」

魔王「人の作った嗜好品なれど、中々のものだ」


地女「うむ!」

地女「では……歯を磨いて寝ることにするのだ」


魔王「――待て」


地女「!? な、何か……?」


魔王「……其方とは、ゆっくり話がしたい」


地女「し、しかし……その、もうねむねむなのだ、すまぬな……!」

地女(バレているのか!? ええい、どっちなのだ!?)

聖女「でも……眠いのなら、寝た方が良いですよ」

聖女「……あんな事があった後ですし」


地女「!」

地女(祝福の聖女よ、素晴らしい支援だ!)

地女(やはり、頼れるものは仲間というものよ!)


魔王「ならば、此処で眠れば良いだろう?」

魔王「剣の乙女は、勇者を追って居ないのだから」


地女「!?」

地女(……それすらも上回るか!)

地女(ぬうう! 希望を砕き、絶望を与えるとは……!)

聖女「ええ、と……どう、しますか?」

地女「いや、遠慮しておこう!」

魔王「何? 余の命に逆らうと?」

地女「っ……!?」


地女「……こればかりは、聞けぬ!」

地女「例え……誰に命じられようとも!」


聖女「えっ、は……はい……」

魔王「……」

  ・  ・  ・

地女「……」

地女(せえええええふ! 離脱に成功した!)

地女(後は、魔王様が帰ったら……姿を消すだけだな!)

地女(どこか遠く……俺の魔力を隠してくれる、聖なる……)


地女「……安息の地へ!」


「――行かさぬ」


地女「へっ――?」


…とぷんっ!

地女「――ぬうっ、おお……!?」


魔王「ようこそ、大地の魔女……」

魔王「……いや」


地女「……!」


魔王「魔王軍、四天王が一人――」

魔王「――地の四天王よ」


地女「……」


魔王「……」

魔王「……余の魔眼を欺けると思ったか?」

地女「……」

パァァ…


…ァァァ

地の四天王(以下、地王)「……」

地王「……お久しぶりです、魔王様」


魔王「……」


地王「……」

魔王「……地の四天王よ」

地王「……はっ」

魔王「……」

地王「……」


魔王「――俺より強いやつに会いに行く」

魔王「それは……光の勇者の事だったのだな」


地王「……」

地王「…………」


地王「その通りでございます!!」

魔王「確かに……前よりも、力をつけている」

地王「お褒めに預かり、恐悦至極!!」

魔王「だが……其方の勝手な振る舞いは、不快極まりない」

地王「そ、それは……!」


魔王「許してほしくば……」

魔王「……」


魔王「……――強く、抱きしめよ」


地王「っ……!」

  ・  ・  ・

地王『――というわけでな!?』

地王『引き続き、お前のパーティーに居続ける事になったぞ!』

地王『力を付け、必ず戻って来いとのご命令だ!』

地王『俺は……俺は、命の危機を乗り越えたのだ!』


地王『……だが、問題は全て解決した訳ではない』

地王『素面の状態で……影の中で、三回ヤっちゃったのだ!』


光の勇者(以下、勇者)「ゴミみてえな思念波飛ばしてくんじゃねえよ!!」

地王『仕方あるまい! 俺も……男なのだ!』

勇者「お前のせいで、俺は追われてるんだぞ!?」

地王『魔王様は、ちょこちょこ会いに来ると言っていた』

勇者「だったらお前もう帰れよおおおおお!!」


―ヒュッ!


勇者「っ、うおおおっ!?」


剣の乙女(以下、乙女)「避けるな……!」


勇者「まっ、ままっ、待て! 頼む、話し合おう!」


地王『あ、結局の所、俺は剣の乙女とヤっちゃってたか?』


乙女「女の敵め!」



勇者「――どっちも、今話し中だ!!」



おわり

書きます


火の四天王「剣の乙女よ、礼を言わせてくれ」

剣の乙女(以下、乙女)「礼? 何のかしら?」

火の四天王(以下、火王)「婚約に関する話だ」

乙女「……ああ、あの話ね」

火王「おかげで、婚約を解消せずに済んだぞ」


火王「――やっぱり、嫁には行かせたくない」

火王「全く……パパは、子離れが出来なくて困る」


乙女「私は、貴女が『パパ』呼びなのにも未だ戸惑ってるわ」

火王「!? ち、父上! 父上だ!」

乙女「別にいいわよ、今更取り繕わなくたって」

火王「だが……私にも、体面というものがある」

乙女「ふぅん?」


乙女「――婚約を解消しろ」

乙女「そう言われて、半ベソかいてたのは誰かしら?」


火王「あわっ、わ、忘れてくれ!///」

乙女「それで? どう説得したの?」

火王「お前の助言通り、マ……母上に協力を仰いだ」

乙女「大喧嘩にでもなった?」

火王「いや、そんな事はない」


火王「――今の、私の様な幸せをこの子にも」

火王「そう母上が言ったら、娘の前だと言うのに……全く!」


乙女「……熱々じゃないの」

乙女「でも、貴女の婚約者は行方知れずなのよね」

火王「ああ、だが……奴なら必ず戻ってくる」

乙女「ねえ、どうしてそこまで信じられるの?」

火王「? 何を言っている」


火王「――信じる力の強さ」

火王「それをよく知っているのは、お前達だろう」


乙女「……呆れる位、真っ直ぐなのね」

火王「奴も、私を信じてくれている」

乙女「でなきゃ、書き置きだけ残して居なくならない、か」

火王「ああ、そうだとも!」

乙女「とっても素敵な人なのね」


火王「うん!!(ボワッ)」


乙女「熱い!」

乙女「盛り上がるのは良いけど、ブレスはやめて頂戴!」

乙女「でも……そんなに素敵な人なら、心配ね」

火王「? 何がだ?」

乙女「浮気しないか、よ」

火王「……」


火王「……!」プルプル

火王「……!」ジワァ…


乙女「じょっ、冗談よ!」

乙女「あああ、泣かないで頂戴! 冗談だから!」

火王「……すまない、想像したら悲しくなった」

乙女「その人の事、本当に好きなのね」

火王「……ああ! 勿論だ!」

乙女「他に、良い人が居るかも知れないのに?」


火王「……私の顔が、今よりも鱗に覆われていた幼き頃」

火王「火龍王の娘だからと、誰もが愛想笑いを向ける中……」

火王「……奴だけが、私に言った」


火王「――ブス」


火王「……とな」ニコッ


乙女「……笑える台詞じゃないと思うけれどね」

乙女「周囲の者達が、黙ってなかったでしょうに」

火王「当然、怒り狂ったぞ! 尤も、内心ではどうか知らんが!」

乙女「火龍王は?」

火王「なんと、あまりの怒りにひっくり返ってな! ははは!」


火王「それがおかしくて、思わず笑ってしまった私を見て……」

火王「……奴は――」


火王「――可愛い!」


火王「……と、言ったんだ!(ボワッ)///」


乙女「……物凄い手のひら返しよね」

火王「……本当に、単純な奴なんだ」

乙女「ねえ、この話もう何度も聞いてるんだけど」

火王「それでな!(ボワッ)/// それでな!(ボワッ)///」

乙女「……続けるのね」


火王「――この子の可愛さを引き出すとは、さすが火龍王!」

火王「――俺にも、そのひっくり返り方を教えて欲しいのだ!」

火王「……なんてな?(ボワッ)/// なんてな?(ボワッ)///」


乙女「……火龍王が親馬鹿で助かったのよね」

火王「……奴のこの馬鹿さは、年月を重ねても変わらなかった」

乙女「それを信じ続ける貴女も、馬鹿だと思うけどね」

火王「む」

乙女「でも、まあ……嫌いじゃないわよ、そういうの」


火王「おっと、私に手を出そうとするなよ?」

火王「確かに、お前は良き友人ではある」

火王「だが、私は浮気は絶対にしない」


乙女「……あのね、私の事を何だと思ってるわけ?」

乙女「私は、運命の相手が女性だっただけよ」

火王「運命か……なら、私と奴も運命で結ばれている」

乙女「随分と自信ありげじゃない」

火王「私は、案外ロマンチストなんだ」


ガチャッ!

大地の魔女(以下、地女)「剣の乙女よ、飲みに行くのだ!」


乙女・火王「ん」


地女「……」

バタンッ!


乙女・火王「……」

  ・  ・  ・

地女「……!」

地女(ぬうう! 何ということだ!)

地女(剣の乙女と、火の四天王が裏が繋がっていたとは!)

地女(勇者と聖女が二人で話すから……と)

地女(気を利かせて、飲みに出ようと思ったのが間違いであったか!)


地女「今は……今は、此処を離れねば!」


乙女「の……飲みに行くって……その///」モジモジ


地女「!? いつの間に背後に!?」


乙女「あ……あ、愛の力で///」

  ・  ・  ・

乙女「――紹介するわ、この子が……」

地女「……大地の魔女なのだ」

火王「私は、魔王軍幹部の一人、火の四天王」

乙女「……どう? 私の、運命の相手は///」


火王「そうだな……」

火王「見た所、かなりの使い手の様だ」

火王「私達、四天王にも勝るとも劣らない魔力を秘めている」


地女「そ……そんなでもないぞ」

地女(せええええふ! せふせふせええええふ!!)

地女(魔王様と違い、魔眼が無いのでバレてはいない!)

地女「……」

地女(だが、いずれはボロが出るかも知れん!)

地女(俺が、地の四天王だと知られる前に……離脱せねば!)

地女(ええい! これが、運命の悪戯というやつか!)


地女「……それじゃ、あとは二人で」


「「二人で?」」


地女「むう?」


乙女「二人になるのは……三人で飲んでからでも、ね?///」モジモジ

火王「……あまり、見せつけてくれるなよ?」


地女「……むおお!?」

  ・  ・  ・

ダダダダッ、ガチャッ!

地女「――光の勇者よ、まずい事になった!」

光の勇者(以下、勇者)「っ!? な、何だ!?」

地女「あ、ファーストキスおめでとうと言っておこう」

勇者「……お前、何で知ってんの!?」


地女「酔って、朝起きたら火の四天王と剣の乙女がベッドに居たのだ!」

地女「恐らくだが、二人まとめてヤっちゃったのだ!」


勇者「お前、何やってんの!?」

地女「そりゃあお前、夜で人気が無いとは言え、なぁ」

勇者「お前、広場の噴水の前……通ってたのか!?」

地女「うむ! あそこがムードが良いと、助言したのは俺だ!」

勇者「お前……なんっ、どこまで見てたんだ!?」


地女「だが、光の勇者よ! 見損なったぞ!」

地女「祝福の聖女が、不意打ちとは言えチュッとしてきたのだ!」

地女「男ならば、ガバッと抱きしめブチュッとすべきだろうが!」


勇者「ほぼほぼ見てんじゃねえかあああああ!!」

地女「不意打ちに対処出来なければ、この先はもっと危険だぞ」

勇者「この野郎……!」

地女「ふはは、既に歯車は動き始めた!」

勇者「手を……手を出さないようにしてたのに!」


地女「ふはは! 無駄だが、気をつける事だな!」

地女「ふははははっ! はっははははは!」

地女「……だが、突然キスされたとはいえな?」

地女「呆けるだけというのは、さすがにいかんと思うぞ」


勇者「……頼む、言うな」

地女「……まあ、説教はこの位にするとしてだ!」

勇者「そ、そうだ! お前、二人まとめてって……」

地女「だが……不幸中の幸いだったぞ」

勇者「……何がだよ」


地女「二人は、まだ起きていなかったからな?」

地女「こう……俺が居た形跡を消し、コッソリ抜け出してきたのだ」



勇者「……」

勇者「……いや、お前それ――」

  ・  ・  ・

火王「……ん……む……朝か」

火王「此処は、一体……それに……裸?」

火王「痛っ!? 飲みすぎて、何も覚えて――」


乙女「ん……う~ん」


火王「……」

火王「!?」


乙女「激し……むにゃむにゃ」


火王「!!!???」

火王「つ……剣の乙女?」

乙女「……ん~?」

火王「お、起きろ! 起きてくれ!」

乙女「…………おはよう」


火王「ではなく! 昨晩、一体何があった!?」

火王「わ、わた……お前と!?」


乙女「……まあ、良いわよ」

乙女「運命って言うのは、どう転ぶかわからないものね」クスリ


火王「さすがに爛れすぎだろう!」



おわり

書きます


大地の魔女「光の勇者よ、状況を整理しよう」

光の勇者(以下、勇者)「……まあ、そうだな」

大地の魔女(以下、地女)「どうした、嫌そうな顔をして」

勇者「お前な……楽しい話じゃないだろ」

地女「では、早速だが!」


地女「大地の魔女という美少女は仮の姿!」

地女「この俺は、魔王軍四天王が一人――地の四天王なのだ!」


勇者「楽しそうに話すんじゃねえってんだよ!!」

地女「本来の姿は、鍛え上げられた鋼の肉体を持つ男の中の男!」

勇者「女の敵の間違いだろうが」

地女「何を言う、光の勇者よ」

勇者「……あん?」


地女「俺は、ただ酔ってヤっちゃっただけなのだ」

地女「あまり人聞きの悪い表現はやめて貰おう」


勇者「どう聞いても人聞きが悪いわ!!」

勇者「酔って色々と手を出して逃げて来た奴が、よくもまあ……」

地女「まあ、何とかなるだろう!」

勇者「お前、どうしてそんなに前向きなんだよ!?」

地女「知れたことよ」


地女「……光の勇者」

地女「敵とは言え、頼りにしているぞ」


勇者「お前の、その俺への信頼は何なの!?」

勇者「姿を変えてるとは言え、魔王にはバレたんだろ?」

地女「ああ、魔王様の魔眼は欺けなかったのだ」

勇者「……お前、よく殺されなかったな」

地女「バレて影に引きずり込まれた時は、肝を冷やしたぞ!」


地女「だがまあ、今後はちょこちょこ会いに来るそうなのだ」

地女「――余とお前、二人だけの秘密だな」

地女「……と、嬉しそうに笑っていた」

地女「魔王様もお喜びのようで、俺も鼻が高いわ!」


勇者「勇者パーティーと魔王城で遠距離恋愛すんじゃねえよ!!」

勇者「っていうか、剣の乙女と火の四天王はどうするんだ!」

地女「どう、とは?」

勇者「なんでキョトンとしてるんだよ!?」

地女「何を言っている」


地女「酔っていて、俺もほとんど覚えていないのだ」

地女「それに、どちらもヤっちゃった時、俺は女の姿だった」

地女「加えて、俺が地の四天王だとは気付かれていない」

地女「まあ……女同士なら、セーフだろう! うむ、セーフ!」


勇者「放ったらかしにしとくつもりかよ!?」

勇者「それに、他にもまだ居るだろう!」

地女「ああ、だが……水の四天王ならば心配ないぞ」

勇者「いや、お前……この状況を知ったら怒り狂いそうだって」

地女「まず、間違い無く俺の命を狙ってくるだろう」


地女「――だが、案ずるな! 光の勇者よ!」

地女「お前の聖剣と光の加護!」

地女「祝福の聖女の支援と回復!」

地女「剣の乙女の圧倒的な剣技!」

地女「そこに! この俺が加われば……恐るるに足りん!」


勇者「お前、その発言最悪すぎるぞ!!」

地女「地は水に有利とは言え、万が一もあるからな!」

勇者「絶対に手は貸さないからな!?」

地女「何!? 仲間を見捨てるというのか!?」

勇者「そもそも、属性の有利不利なら風の四天王はどうするんだよ!」


地女「……あー……風の四天王か」

地女「奴はなぁ……うむむ、どうするか……」


勇者「……ん?」

勇者「なんだ、妙に歯切れが悪いじゃないか」

地女「風の四天王は、男の格好をしていただろう?」

勇者「まあ……俺達は男だと思ってたんだけどな」

地女「それでな……少し、悪いと思っているのだ」


地女「風の四天王は……体は女、心は男だったのかも知れん」

地女「だが、酔った勢いでヤっちゃってだな?」

地女「体は女、心は男……しかし、目覚めさせてしまったのだろう」

地女「この責任は……どう取るべきか……!」


勇者「お前、気遣う所おかしいぞ」

地女「おかしくはないぞ、光の勇者よ!」

勇者「いや、おかしいっての!」

地女「ええい、わからんのか!?」

勇者「わかんねえっつってんだろうが!」


地女「酔った勢いで、お前が今の俺をヤっちゃってだな」

地女「俺が、目覚めてしまったとしたら……どう思う?」


勇者「それは……なんか申し訳なくなるな」

勇者「……」

勇者「いやお前、変な想像させんじゃねえよ!!」

地女「だが、俺の言いたい事はわかっただろう」

勇者「……まあ、何となく」

地女「勇者よ……もしそうなった時、お前ならばどうする?」

勇者「……一つ、無かったことに」


「――出来ると思うかい?」


勇者・地女「!?」


風の四天王(以下、風王)「やあ、御機嫌よう」


勇者・地女「!!?」

勇者「か、風の四天王!?」

地女「ど、どうして此処に!?」


風王「僕は、捜し物が得意でね」

風王「君を見つけた方法は……教えられないな」

風王「だって……また、逃げた時に困るだろう?」

風王「そうは思わないかい?」

風王「――地の四天王」


地女「くっ……勇者よ、どうする!?」

勇者「ここで俺に振るんじゃねえよ!!」

風王「それと、勘違いを訂正しておくよ」

風王「僕は、元々身も心も女さ」

風王「男の格好をしていたのは……ちょっとした趣味かな」

風王「だから……ふふっ、君が気に病む必要なないよ」


地女「おおっ、そうだったのか!」

地女「ならば、良し!」

地女「感謝するぞ、風の四天王よ! 心が軽くなった!」


風王「……」


勇者「空気が重くなってんだよおおおおお!!」

風王「……地の四天王」

風王「このまま、僕と一緒に戻ろう」


地女「すまんが、それは出来ん」


風王「どっ、どうしてだい?」

風王「何か、理由でもあるのかい!?」


地女「それは……」チラッ

勇者「……」

地女「すまんが、それは言えん」


風王「っ……!」ギロッ!


勇者「……えっ?」

風王「そうか……君が、地の四天王を……!」ギロッ!


勇者「いや! いやいや待て待て! はっ!?」

地女「違う! 光の勇者は、悪くないのだ!」


風王「っ!? ゆ、勇者を庇うのかい……!?」


地女「そうではないのだ、風の四天王よ!」

勇者「そっ、そうだ! 風の四天王、勘違いはよせ!」


風王「……ふ……ふふふ」

風王「君たち……随分と、仲が良いじゃないか!」


地女「うむ、仲は良いな」

勇者「お前ちょっと黙っててくんない!?」

風王「……もう一度だけ聞くよ」

風王「地の四天王、僕と一緒に戻ろう」


地女「俺の答えは変わらん」

勇者「いやもう、帰れって! 頼むから!」


風王「ふふ……あははははっ!」

風王「こんな屈辱、生まれて初めてだよ!」

風王「……!」ギロッ!


勇者「ほらああああ!! 俺を睨んでるじゃねえかあああ!!」

風王「そうか……地の四天王、君は……」

風王「……女の、僕よりも――」


勇者「おいコラ、テメエ! 早く誤解を解け! 早ーく!!」


風王「――そこの……男の、光の勇者を選ぶんだね」


地女「む? いやいや、何を言っているのだ?」

地女「そういう意味で選ぶなら、女のお前を選ぶぞ?」

地女「それに、お前は美人だしな!」


風王「……」

風王「えっ? はっ……えっ?」

  ・  ・  ・

地女「――ふはは! 光の勇者よ、風の四天王を退けたな!」

勇者「呑気に笑ってんじゃねえよ!!」

地女「……ふっ、慌てるな」

勇者「あん?」


地女「奴は、引き際に言っていた」

地女「――君が此処に居る事は、僕の胸の中に閉まっておこう」

地女「……とな! ふっはははは!!」


勇者「お前がしでかした事がバレる心配はしてねえ!!」

地女「やはり、お前を頼って正解だったぞ!」

勇者「……腹が立つ位、お前に都合良く行ってるな」

地女「お前のお陰だ、光の勇者よ」

勇者「ぶっとばすぞ?」


地女「光の加護は、仲間をも災いから守る」

地女「……言い伝えは、やはり真実だった」


勇者「……は?」


地女「でなければ、とっくに俺の首は飛んでいるだろうからな!」


勇者「……ま、待て待て! 待て!」

勇者「この状況は、マジで俺のせいでもあるのか!?」

地女「頼りにしているぞ、光の勇者!」

勇者「やめろ! 今、俺をそう呼ぶな!」

地女「リーダー!」

勇者「! お前をパーティーから外せば――」


地女「ふはは! そうはさせんぞ!」

地女「……状況が良い感じになるまで!」

地女「この、地の四天王!」

地女「お前を道連れにしてくれるわ!!」


勇者「お前を殺――したら……俺が恨まれるもんな!!」


地女「うむ! だから、これからも――」


パァァ……ァァァ


地の四天王「光の勇者よ、助けてくれ!」



おわり

書きます


水の四天王「祝福の聖女よ、何かありましたの?」

祝福の聖女(以下、聖女)「わ……わかりますか?」

水の四天王(以下、水王)「ええ、落ち着きがありませんもの」

聖女「じ、実は……勇者様に、キスしちゃいました///」

水王「まあ! とうとう、一歩踏み出したんですのね!」


聖女「はいっ!///」

聖女「なので……私達、結婚しますっ!///」


水王「大きな一歩すぎやしませんこと!?」

聖女「えっ? 何か、おかしな事言いましたか?」

水王「ええと……キスしただけ、ですのよね?」

聖女「えっ? ええっ?」

水王「……祝福の聖女?」


聖女「私の――祝福の聖女がキスしたんですよ?」

聖女「ええと、これはもう……結婚しか無いんですけど……」


水王「どっ、どういう事ですの!?」

聖女「正確には、結婚せざるを得ないと言うか……」

水王「キスしただけで!?」

聖女「愛の女神に使える私が、あ……愛を捧げたわけですから///」

水王「女神教の戒律……ではありませんのね」


聖女「結婚しなかった場合は……えへへ!///」

聖女「全身の、毛穴という毛穴から血が吹き出ちゃいますけどね!」


水王「笑い事じゃありませんわよ!!」

聖女「えっ? 結婚すれば、大丈夫ですよ?」

水王「結婚しなければ、死んでしまうのでしょう!?」

聖女「だっ、大丈夫ですよ! 死にはしません!」

水王「けれど……無事では済みませんわよ!?」


聖女「地獄の苦しみで、精神が崩壊するらしいです!」

聖女「だから、何の問題もありませんよ!」


水王「廃人になってしまうだけでしょうに!!」

水王「ひっ、光の勇者はこの事を知って!?」

聖女「あっ、ゆ……勇者様には言わないでください!」

水王「何故!?」

聖女「だ……だって……」


聖女「重い女だ……なんて、思われたくありませんし」

聖女「だから、勇者様には内緒にしてくださいね!」


水王「知らぬ間に、命を背負わせているのに!?」

聖女「でも、大丈夫ですよ! 絶対に結婚しますから!」

水王「……随分と、自信があるんですのね」

聖女「だ、だって……勇者様の事……好きですから///」

水王「私も……貴女程素直になれたら」


水王「――友人の結婚式はとても素敵だった」

水王「――花嫁衣装には、とても憧れる」

水王「……と、遠回しな言い方をせずに済みましたのに」


聖女「あの……かなり、直接的だと思うんですけど」

水王「あら、私達は何度も体を重ねましたのよ?」

聖女「……私達がまだキスだけって、からかってます?」

水王「ふふっ! さあ、それはどうでしょうね」

聖女「もーっ!……ふふふっ!」


水王「子供が出来やすい日を狙っていたのですけれど……」

水王「恋と言うのは、中々うまくいかないものですわね」


聖女「あ、あの! 私には……は、早すぎる話題です!」

水王「避妊魔法は知っているでしょう?」

聖女「愛の無い魔法ですが……はい、知ってます……」

水王「けれど、時に奇跡が起き、子供を授かる事がある……」

聖女「そうです!! それこそ、愛の奇跡です!!」


水王「――大丈夫だから」

水王「こう言うと、殿方は勘違いしてしまうんですのよ」

水王「……魔法を使ったなどと、一言も言っていないのに」

水王「そして……奇跡が起こるのですわ」


聖女「……うぁ……ぁ、愛のなせる業ですね!!」

水王「まあ……奇跡は、起きませんでしたけれどね」

聖女「まだ、戻って来てないんですか?」

水王「先日貴女に諭されましたし、気長に待ちますわ」

聖女「……早く、帰って来ると良いですね」


水王「ええ……耐えきれず、零れた涙が湖にならぬ内に」


聖女「……水の四天王さん」


水王「その湖の水が溢れ、津波となって街を飲み込まぬ内に」


聖女「水の四天王さん!?」

水王「ああ……早く、帰ってきてくださいまし……!」

聖女「私も、祝福の聖女として、平和のために祈ります」

水王「今頃、どこで何をしているの……!」

聖女「あ、あのー……水の四天王さん?」


水王「愛しの、地の四天王……!」


聖女「……」

聖女「えっ?」

聖女「みっ、水の四天王さん!?」

水王「……えっ?」

聖女「いっ、今の……今のって!?」

水王「す、すみません……自分の世界に入ってしまって……」


聖女「水の四天王さんの想い人って――地の四天王だったんですか!?」


水王「……」

水王「ちっ――違いましゅわにょ!?」

聖女「同僚って……あー! あー、そういう事ですか!」

水王「ちっ、違……違いましてよ!」

聖女「確かに……はー! 職場恋愛って、はいはい!」

水王「……くううっ!/// 迂闊でしたわ!///」


水王「ぜ、絶対!/// 誰にも言わないでくださいまし!///」

水王「祝福の聖女よ、お願いしますわ!///」


聖女「……」

聖女「えー?」ニマニマ

聖女「どうしてですか?」ニマニマ

水王「そ、それは……魔王様と、他の四天王の前では、ですね……」

聖女「はいはい?」ニマニマ

水王「……バレないように、振る舞っているのです」


水王「だって……ねえ?」

水王「水と、地の四天王がだなんて……うふふっ!///」


聖女「もーっ!/// も――っ!///」

水王「絶対……絶対、内緒ですわよ?///」

聖女「ふふっ、勿論ですよ!///」

水王「やだもう、どうして貴女まで顔を赤くしてるの///」

聖女「わかりません/// なんか、うつっちゃいました///」


水王「……あの人が、帰ってきたら」

水王「私と貴女……そして、地の四天王と光の勇者の四人で――」


聖女「っ!?」ゴクリ…


水王「精霊の湖の側にある、別荘に遊びに行きません?///」


聖女「行きます!/// ぜ~ったい行きます!///」

聖女「凄いです……なんか、世界が輝いて見えます!」

水王「うふふっ! 当然、貴女と勇者の部屋は一緒でしてよ!」

聖女「えっ……えー?/// ええ~っ?///」

水王「……ゴホンッ!」


水王「……祝福の聖女よ」

水王「私の想い人の事は、誰にも言わない」

水王「……誓って、頂けますか?」


聖女「……水の四天王」

聖女「私は、貴女の想い人の事は、決して口外しません」

聖女「愛の女神様と――」


聖女「――私達の、友情にかけて!!」

  ・  ・  ・

闇の魔王(以下、魔王)「祝福の聖女よ、今日は機嫌が良いな」

聖女「……えへへっ、わかっちゃいますか?」

魔王「ああ、余と其方の仲では無いか」

聖女「……魔王さん」


魔王「例え、人間を全て滅ぼしたとしても……」

魔王「そ……其方だけは、生かしておこう」


聖女「えっ、あの……」

聖女「はあ……あ、ありがとう……ございます……?」

魔王「ふむ……あまり、嬉しそうでは無いな」

聖女「いっ、いえ!」

魔王「何なりと申せ、其方は何が望みだ?」

聖女「えっ?」


魔王「其方の、今の上機嫌な様子」

魔王「それは……勇者と、誓いの口付けを交わしたから」

魔王「――だけはあるまい?」


聖女「それは……」

聖女「その……内緒なんです」

魔王「何?」

聖女「ええ、と……内緒の話を聞いて……」

魔王「……ふむ」


魔王「秘密の共有、か」

魔王「確かに、それは互いの絆を深めるものだ」


聖女「だから……言えないんです」

聖女「……ごめんなさい」


魔王「……」

魔王「構わん、許す」

魔王「だが、面白くは無いな」

聖女「えっ?」

魔王「どれ……余も、其方だけに秘密を明かそう」

聖女「ど、どうしてですか……?」


魔王「余が、闇の魔王だからだ」

魔王「そして、祝福の聖女……其方が――」


聖女「私が……?」


魔王「……いや、それは明かせぬ」

魔王「――余が、明かす秘密」

聖女「……」

魔王「それは――余が恋をし、愛を育んでいる者の事だ」

聖女「えっ!? それって……」


魔王「その者の名を……其方に教えよう」

魔王「どうだ? 知りたくはないか?」


聖女「それは……知りたいです!!」

聖女「だって、ずっと『内緒だ』って言ってたんですもん!!」

魔王「その者の所在は明かせぬが……」

聖女「構いません! ええ、構いませんとも!」

魔王「ふふっ……其方は、コイバナには食いつきが良いな」

聖女「はいっ!」


聖女「だって私は――祝福の聖女ですから!」

聖女「それに……私達が、こうして話すきっかけ」

聖女「それも――恋の話でしたからね!」ニコッ!


魔王「……ならば、聞くが良い」ニコリ

魔王「余の、愛する者とは……」


聖女「とは!? わぁ~っ!/// ドキドキします!///」ニコニコ!


魔王「地の四天王だ」



おわり

書きます


火の四天王「剣の乙女よ、私はどうすれば良い?」

剣の乙女(以下、乙女)「急に現れて、何?」

火の四天王(以下、火王)「私には……もう、わからない」

乙女「だから、何が?」

火王「奴に……婚約者に、何と言えばいいのだ!」


乙女「酔って、朝起きたら剣の乙女がベットに居た」

乙女「どっちも裸で、覚えてないけどヤっちゃったらしい」

乙女「……じゃない?」


火王「……うわあああ!!」

乙女「大きな声を出さないで、うるさいわよ」

火王「私は! 私は、裏切ってしまった!」

乙女「ねえ、聞いてるの?」

火王「浮気……しかも、事もあろうに敵とだ!」


乙女「あのね、声を抑えてくれない?」

乙女「そんなだから、あの時も声が大きいのよ」


火王「どの時――」

火王「――……言うな! 頼む、言わないでくれ!」

乙女「だったら、声を小さくして頂戴」

火王「……わかった」

乙女「そうそう、良い子ね」

火王「私は……どうすれば……!」


乙女「……あのね、火の四天王」

乙女「あまり、被害者ぶらないで貰えるかしら?」


火王「……」

火王「えっ?」

乙女「覚えてないみたいだけど、貴女……ノリノリだったわよ?」

火王「ばっ、馬鹿な! 有り得ん!」

乙女「……何? 本当に、覚えてないの?」

火王「覚えていたら、正気を保てているものか!」


乙女「――んー、ちゅ~っ! ちゅ~う~っ!」

乙女「って、貴女――」


火王「わ――っ!?/// わ――っ!?///」

火王「う……嘘だろう!?///」

乙女「良かったわね、火の四天王」

火王「! やはり嘘か! 驚かせる――」

乙女「いえ、そうじゃなくて」


乙女「結婚していなくても、ブレスは出なかったわよ」

乙女「もんのすごいディープなキッスをしても」


火王「ひああああ!?(ボワッ)/// ひああああ!?(ボワッ)///」

火王「有り得ない!/// そんな、ふしだらな!///」

乙女「まあ、最初のキスは恐る恐る……チュッって感じだったわね」

火王「だろう!? そこから、無理矢理――」

乙女「ええ」


乙女「チュッとしたら、目を見開いてね」

乙女「そこからはもう、スリスリベタベタ……」

乙女「言葉遣いも、なんだか幼くなっちゃって、もう」


火王「おぶっふ!?(ボワァッ)///」

乙女「それで、やっと会えただの……」

火王「そんな! そんなっ……!」

乙女「ずっと、探してただの……」

火王「探してなどいなかった……!」


乙女「――本当に、見せつけてくれたわ」

乙女「恋人の私が見てるっていうのに」


火王「……」

火王「えっ?」

火王「私は、お前と……その、しっ、しちゃった訳では無いのか?」

乙女「当たり前でしょう?」

火王「なっ、何だと!?」

乙女「……はあ、本当に何も覚えてないのね」


乙女「……貴女としたのは、私の恋人」

乙女「大地の魔女のお姉様よ」


火王「おっ……お姉様……?」

火王「だが、待て……待ってくれ……!」

乙女「一対一の決闘じゃなく、集団戦闘だったの」

火王「はっ……ほっ……!?」

乙女「まあ、結果は私達の惨敗だったけれど、ね」


乙女「交互でも、一対二でも……凄かったわ、お姉様///」

乙女「……ふふっ!」

乙女「今度は、二人がかりででも、一矢報いましょうね?」


火王「……すまない、少し時間をくれ」

火王「は、破廉恥すぎて……理解が追いつかない……!」

乙女「あの夜、一番破廉恥だったのは貴女だけれどね」

火王「ういっ!?(ボワッ)///」

乙女「あと……一つ、お願いがあるんだけど」

火王「おっ、お願い……!?///」


乙女「貴女、盛り上がると龍の翼が出るみたいなの」

乙女「ただ、あまりパタパタされると邪魔なのよね」


火王「つっ……つつつ、翼まで出ていたのか!?(ボワァァッ)///」

乙女「何? そんなに驚くこと?」

火王「わ……私の魔力の源は、喜びの感情なんだ……」

乙女「ふぅん、そうだったのね」

火王「強者と戦える喜びが溢れた時、龍の翼が出るんだが……」


乙女「性の喜びが溢れて、翼が出たのね」

乙女「戦闘狂かと思いきや、色情狂だったって事かしら」


火王「っ……!(ボワッ)/// っふぅっ……!(ボワァッ)///」

火王「私が、そんなっ……!」

乙女「残念だけど、事実は変えられないわ」

火王「う……うあぁっ……!」

乙女「……ふふっ」


乙女「――ようこそ、火の四天王」

乙女「貴女はもう……私と同じ」

乙女「――お姉様の、妹なのよ」


火王「やめろ……! やめてくれぇっ……!」

火王「私には――婚約者が居る!」

乙女「それは、運命の相手じゃなかったのよ」

火王「そんな……そんな事……!」

乙女「いいえ、貴女の体は知っていたわ」


乙女「貴女の運命の相手は――大地の魔女」

乙女「これは、何があろうと揺るがないわ」


火王「う……ううっ……!」

…ガクッ!

乙女「……火の四天王」

火王「……」

乙女「私は、貴女のあの時の喜び様が忘れられないわ」

火王「……」


乙女「大地の魔女のお姉様と、唇が触れ合った時」

乙女「あの時の貴女は、とても嬉しそうな顔をしていたわ」


乙女「――まるで、探し求めていたものを見つけたみたいに」


乙女「……ね」


火王「……剣の乙女」

乙女「認められないなら、お願いしてみなさいよ」

火王「お願い……?」

乙女「私も、貴女だから……許してあげるんだから」

火王「何をだ……?」


乙女「酔っていない状態で、大地の魔女のお姉様とキスをするの」

乙女「その時、貴女が感じた想いに……素直になれば良いわ」


火王「……少し」

火王「少しだけ……考えさせてくれ」

  ・  ・  ・

乙女「……はぁ、本当に世話が焼けるんだから」

乙女「……」

乙女「――そこに居るのは、わかってるわよ」

乙女「隠れてないで、出てきなさい」


風の四天王(以下、風王)「……」


乙女「御機嫌よう、とは言わないのかしら?」


風王「……ああ、まあね」

乙女「それで? 貴女の探しものは見つかったの?」

風王「……ああ、見つけるには見つけたよ」

乙女「あら、良かったじゃないの」

風王「だけど、まだ戻れないと……言われてしまったんだ」


風王「――女の僕を選ぶ、と」

風王「……そう、言ってくれはしたんだけどね」


乙女「……」

乙女「ん?」

乙女「貴女の想い人って、男性よね?」

風王「ああ、そうだよ」

乙女「……そうよね、私の勘違いよね」

風王「勘違い?」


乙女「貴女の想い人が――」

乙女「――私の恋人、大地の魔女のわけないものね」


風王「……」

風王「……少し、意地悪をしようかな」

乙女「何? 意地悪?」

風王「僕と君は、元々敵同士だからね」

乙女「……何を勿体ぶってるのかしら」


風王「――僕と、大地の魔女は……ある秘密を共有している」

風王「それも……とてもとても、重大な秘密を」


乙女「……何なの、それは」

風王「ははっ、さあてね!」

フワッ…


乙女「っ、待ちなさい! 話は終わってないわ!」


風王「気になるなら、直接本人に聞いてみると良いさ」

風王「――私に、何か隠し事をしてませんか?」

風王「ってね! ははははっ!」


乙女「風の四天王! 待ちなさい!」

乙女「……」

乙女「……逃げ足の早い……!」

  ・  ・  ・

大地の魔女(以下、地女)「光の勇者よ、気付いているか?」

光の勇者(以下、勇者)「……ああ、二人の様子がおかしい」


地女「剣の乙女は――最近、剣筋に迷いが見られる」


勇者「祝福の聖女は――近頃、何か思い悩んでるみたいだ」


地女「どうするのだ、リーダー」


勇者「……」

地女「聖女の悩みとは、恐らく……」

勇者「……」


地女「光の勇者よ」

地女「お前との、恋の行方に関する事だろう」


勇者「……多分、そうなんだろうな」

勇者「そして、剣の乙女の迷いってのは……」


地女「……うむ」

地女「……サッパリわからんなぁ」


地女・勇者「……」

地女「……よし! ここは任せて貰おう!」

勇者「何?」

地女「なぁに、お前には世話になっているからな!」

勇者「まあ……本当にそうだな」


地女「今の俺は、見た通り美少女だ!」

地女「つまり、ガールズトークすらお手の物よ!」


勇者「……今みたいな状況は、初めてなんだ」

勇者「だから……何だ、その……」


地女「ええい、皆まで言うな! 光の勇者よ!」

地女「大船に乗ったつもりで――」


地女「地の四天王に、全て任せておけ!」



おわり

書きます


地の四天王「光の勇者よ、お前は留守番だ!」

光の勇者(以下、勇者)「いやお前……その格好」


地の四天王「む? おお、そうだったそうだった!」

パァァ……ァァァ

大地の魔女(以下、地女)「――うむ! これで美少女だな!」


勇者「自分で言うんじゃねえ!」

勇者「っつーか、服くらい着ろ!」

地女「良いではないか、減るものでもなし」クネッ

勇者「色っぽいポーズ決めんな!」

地女「やれやれ、朝から元気だな」

勇者「……っていうか、なんで元の姿に戻ってたんだよ?」


地女「む? おお、昨晩は闇の魔王様がお忍びで来ていてな?」

地女「それで、まあ……なっ? わかるだろう?」


勇者「ああもう、お前本当何なの!?」

地女「今は、大地の魔女――お前達の仲間だ」

勇者「……本当に、頼むぞ」

地女「うむ、祝福の聖女と、剣の乙女の事は任せておけ」

勇者「……本当の、本当に頼むからな」


地女「光の勇者よ、お前には世話になっている」

地女「それに俺は、このパーティーが気に入っているのだ」

地女「俺に出来る事ならば、喜んでやろうではないか」


勇者「……四天王の言葉とは思えないよな、本当に」

  ・  ・  ・

祝福の聖女(以下、聖女)「あの……お話って、何ですか?」

地女「まあまあ! まずは、ケーキを食べるぞ!」

聖女「……」

地女「この店のケーキは、街でも評判なのだ!」


地女「――ケーキは、悩みごとを解決してはくれん」

地女「だが、食べれば幸せな気分になるだろう?」


聖女「……大地の魔女さん」

聖女「……私が悩んでるのに、気付いてたんですね」

地女「当たり前だろう?」

聖女「えっ?」

地女「加入して日が浅いが、もうパーティーの仲間なのだからな!」


地女「……ままっ、そんな事はどうでも良い!」

地女「ケーキはいくつ食べる? 二つか? 三つでも良いぞ!」


聖女「ひ、一つで十分です」

聖女「……すみません、ご迷惑をおかけして」

地女「むう?」

聖女「私のために、こんな事まで……」

地女「何を言っているのだ」


地女「今日は、ケーキを食べて女子トークをしに来ただけ」

地女「迷惑だとは、微塵も考えてはいないぞ」

地女「……食べ終わって、美味しかった、との礼は受け取るがな!」


聖女「……ふふっ」

聖女「……ありがとう、ございます」

地女「お前が話したいというなら、聞くのもやぶさかではない」

聖女「……」

地女「言えないというのなら、それもまた良し」

聖女「……大地の魔女さん」


地女「ただ、礼を言われる時は、笑っていて欲しいものだな!」

地女「最近の作り笑いでない……先程のような、自然な笑顔で」


聖女「……うふふっ」

聖女「美味しくてお礼を言うって、決まってるんですね!」

聖女「……少しだけ、相談しても良いですか?」

地女「うむ! かかってくるが良い!」

聖女「これは……私の友達二人の話なんですが」

地女「二人?」


聖女「私の友達二人が……悪い、一人の男に弄ばれてるんです」

聖女「けれど……二人共、その男を信じているんです」

聖女「私は……その事を告げるべきなんでしょうか?」


地女「……とんだ悪人が居たものだな!!」

地女「何処の痴れ者だ、その男は!」

聖女「それは……約束なので、言えないんです」

地女「ふむ……そうなのか」

聖女「二人共、私を信頼して……相手が誰か教えてくれたんです」


地女「……祝福の聖女」

地女「お前は、よっぽどその二人に信頼されているのだなぁ」


聖女「……はい」

聖女「お互い、立場があるけれど……とっても仲良しなんです」

地女「どちらも、得難い友人という訳か」

聖女「……はい」

地女「……ならば、答えは決まっている」


地女「祝福の聖女よ」

地女「その事で悩むのは、もうやめるのだ」


聖女「……」

聖女「えっ?」

地女「お前の悩みとは、そもそも他人の恋愛」

聖女「だ、だけどっ!」

地女「それにな? 祝福の聖女よ」

聖女「……何ですか」


地女「その二人が、男を信じ切っているのならば……」

地女「女同士の、壮絶な戦いが始まるかも知れんぞ?」


聖女「あり得……無いとも言い切れない!!」

地女「だから、放っておくのが一番なのだ」

聖女「でも……私は、どうしたら……」

地女「何を言っているのだ? そんなものは決まっている」

聖女「えっ?」


地女「まず、食べるケーキを選ぶ!」

地女「甘い物無くして、女子トークとは言えないからな!」


聖女「……」

聖女「あ……あはははっ!」

聖女「……何も解決してないけど、ちょっと気が楽になりました」

地女「うむ! それは良かった!」

聖女「でも……また、その事で悩むと思います」

地女「難儀な性格だな」


聖女「その時は……また、お話を聞いて貰えますか?」


地女「任せておけ!」ニコッ!


聖女「そ……それと、ですね……?」

聖女「あの……お姉ちゃん、って呼んでもいいですか……?」

  ・  ・  ・

剣の乙女(以下、乙女)「――ふっ!」

ブンッ!

乙女「……くっ」


「――剣の乙女よ、此処に居たのか」


乙女「……お姉様」


地女「うむ! 大地の魔女のお姉様なのだ!」

乙女「……どうして、此処に?」

地女「迷っていたら、辿り着いた……というのは、どうだ?」

乙女「……」

地女「まあ、それは冗談としてだ」


地女「剣を振るう時には、迷うな」

地女「お前の剣技には、迷いは似合わない」


乙女「……お姉様」

乙女「あ……あのっ!」

地女「む? 何だ?」


乙女「大地の魔女のお姉様……!」

乙女「お姉さまは、私に何か隠していませんか!?」


地女「うむ!」

地女「お前には、沢山の事を隠しているぞ!」


乙女「えっ、あ……いえ、あのっ!?」

乙女「そんなに開き直られると……え、ええっ!?」

地女「誰でも、隠し事の十や二十はあるものだろう?」

乙女「一つや二つ、ではなく!?」

地女「ふはは! 恐れ入ったか!」

乙女「多すぎます! 何を隠しているんですか!?」


地女「剣の乙女よ、とりあえず一つ教えよう!」

地女「隠し事のある女というのは、何故か魅力的なのだ!」


乙女「何か違います、お姉様!」

乙女「私の質問への答えとしては、何か違います!」

地女「違ったか?」

乙女「違うわよ! 私が聞いたのは、秘密! 秘訣じゃないわ!」

地女「おおっ、やはりお前は敬語よりそっちの方がいいな!」

乙女「きゅ、急に何を……」


地女「それで? この大地の魔女の何が知りたい?」

地女「遠慮せずに、何でも聞くが良い!」


乙女「な、何が……って……」

乙女「……」

地女「さあ、遠慮するな! 答えるとは限らんがな!」

乙女「……ふふっ、何よそれ?」

地女「年長者として、出来る限りは答えよう!」


乙女「……やめておくわ」

乙女「だって、隠し事が魅力なら……えっ!?」

乙女「まっ、待って!? 年長者って言った!?」


地女「む? 言っていなかったか?」

乙女「だって、どう見ても私より年下じゃないの!」

地女「魔法で姿を変えているのだ」

乙女「ま……待って……! えっ、ちょっと……!」

地女「どうした? 頭が痛いのか?」


乙女「あ、貴女は……一体、何者なの?」

乙女「どうして、此処に居るの?」


地女「大地の魔女は、迷う少女を助けに来た」

地女「仲間を助けるのは、当然の事だからな!」


乙女「しょ……少女って……!///」

地女「剣の乙女よ、お前に聞こう!」

乙女「……私に、何を?」

地女「そんなものは、決まっている!」

乙女「……」


地女「最近、お前の剣には迷いが見られる!」

地女「その理由、話して貰うぞ!」

地女「さあ……ガールズトークの始まりなのだ!」


乙女「……」

乙女「へっ?」

乙女「ねえ……全然、何もわかってなかったの?」

地女「ああ、サッパリな!」

乙女「……」

地女「わからない事は聞く! ふはは、素直だろう!」


乙女「……ふふっ」

乙女「あっ、あはははっ! 何よ、それ!」

乙女「ふふふっ、あはっ、あははははっ!」


地女「むう……?」

地女「どうして笑っているのだ……?」

  ・  ・  ・

地女「――と、言う訳だ! 二人共、元気になったぞ!」

勇者「……お前、凄いな」

地女「光の勇者よ、もっと褒め称えても構わんぞ!」

勇者「いや……素直に凄いと思った」


地女「――祝福の聖女の悩み」

地女「一瞬だけ、俺のことかとも思ったがな?」

地女「俺は、ヤっちゃった数は二人ではきかぬ!」

地女「それに、酔ってただけで、弄んだつもりはない!」

地女「――だから、どこかのクズの話なのだ!」


勇者「いや、お前の方がクズだろう!?」

地女「光の勇者よ、俺の事よりも、聖女に笑顔が戻った事を喜べ」

勇者「……俺が聞いても、大丈夫としか言ってくれなかったからな」

地女「愛する者に心配をかけまいと……健気ではないか」

勇者「あ、愛するって……う、うるせえよ!///」


地女「――剣の乙女の迷い」

地女「あれは恐らく……まあ、何だ」

地女「……年齢に関する事だな」

地女「ほら……今の俺の見た目は美少女だろう?」

地女「だから、まあ、色々とな? 気を付けていこうな?」


勇者「……ああ、そうだな」

地女「それに……安心ばかりもしてられん」

勇者「お前は、安心してる暇なんか全く無いと思うぞ」

地女「それを言うならば、お前もだぞ? 光の勇者よ」

勇者「……あん?」


地女「光の勇者よ!」

地女「祝福の聖女に、お前からキスをし――」

地女「――舌を入れるのだ!」


勇者「……」

勇者「…………」


勇者「はっ?」

勇者「まっ、待て! 待て待て待て待て! 何だそれ!?」

地女「いやぁ! 女子トークをしてたら、つい……な?」

勇者「つい!? 何でだ!? どうしてそうなった!?」

地女「うむ!」


地女「なんか、楽しくなっちゃってな?」

地女「――次は、勇者からキスをしてくると予言しよう!」

地女「――それも、とても熱いキスだ!」

地女「そう言って、盛り上がっちゃったのだ」


勇者「何してくれてんだよお前はよおおおおお!?」

地女「光の勇者よ、お前も男だろう!」

勇者「だけど、お前……!」

地女「祝福の聖女は、待ち望んでいるのだぞ! 物凄く!」

勇者「お前のせいでな! ってか、物凄くとか言うんじゃねえ!」


地女「ふはは! 観念するが良い、光の勇者よ!」

地女「お前は、決して逃れられぬ!」

地女「この新たな力――お姉ちゃんパワーからはな!」


勇者「めんどくせえ力をつけてんじゃねえええええ!!」



おわり

書きます


闇の魔王「地の四天王は、お前達の中でも最弱」

闇の魔王(以下、魔王)「お前達が居れば、問題あるまい」


火の四天王(以下、火王)「……」

水の四天王(以下、水王)「……」

風の四天王(以下、風王)「……」


魔王「――捨て置け」


魔王(……と、命じておけば良いだろう)

魔王(奴が戻っては、二人の時間が取りにくくなってしまう)

水王「――魔王様の仰る通りですわ」

水王「そもそも、私はあの男が四天王である事が疑問でしたの」

水王「あの男は……ねぇ?」


水王「――品位というものが、欠けていますでしょう?」


水王(いやあああああ!! いやあああああ!!)

水王(一刻も早く、彼を探したいのに!!)

水王(……ああっ、昔の私はなんて愚かだったのかしら!)

水王(職場では仲が悪いフリを続けよう、なんて……どうして!)

火王「――確かに、水の四天王の言う通りだ」

火王「奴は、四天王を名乗るには力も足りていなかった」

火王「ふん! 居なくなって、清々した!」


火王「――真の強者しか、私は認めん」


火王(うわあああああ!! うわあああああ!!)

火王(浮気をしてしまって気まずいからと、何て事を!!)

火王(ででででも! 強くなったら帰って来ると!)

火王(……どんな顔して会えば良いんだあああああ!!)

風王「――僕の意見も、似たようなものかな」

風王「彼は、美しくなかった」

風王「上に立つ者として、相応しい容貌とは言えなかったからね」


風王「――ブ男が居ては、気分が盛り下がるよ」


風王(――さあ、考えろ考えろ考えろ!!)

風王(如何に彼を――地の四天王を切り捨てさせるか!)

風王(戻るべき場所を失った彼は、僕の元へ来るしかなくなる!)

風王(いや、いっそ二人で何処か遠くへ……あっ、良い! それ良い!)

魔王「……ふむ」

魔王「お前達の意見がここまで揃うとは、珍しいな」


火王・水王・風王「……」


魔王「奴が戻っても席が無いのならば……ふふっ!」

魔王「――いっそ、余の小間使いでもさせるかな」


火王・水王・風王「……」

火王・水王・風王「えっ!?」

魔王「どうした? 何を驚く事がある」


魔王(……ふん、命拾いしたな)

魔王(余の前で、奴を侮辱するなど……到底許せるものではない)

魔王(――だが、今日の余は寛大だ)

魔王(昨晩、奴の所へ赴きイチャコラして来たばかり……)


魔王「奴でも、それ位は務まるであろう」


魔王(――そして!)

魔王(この案を通せば、二人の時間が増えると言うものよ!)

水王「――まあ、そんな!」

水王「……魔王様、恐れながら申し上げます」

水王「あんな野蛮人に、小間使いが務まるはずがありませんわ」


水王「――ふふっ、お戯れも程々になさってくださいな」


水王(小間使いなんて出来るはずないわ!)

水王(彼は、全然気が利かないし、器用でも無いし!)

水王(だからこそ、誰かが支えてあげないと……!)

水王(……おはようから、おやすみなさいまで!)

火王「――魔王様の側に仕えるなら、強くなくては」

火王「奴が、魔王様の戦いの邪魔になる事も有り得る」

火王「……例え、どこで何をしていようとも――」


火王「――奴が、その資格を持てるとは思えない」


火王(戻ってきたら、私と結婚するんだから!)

火王(強くなって帰ってきて、プロポーズを――)

火王(――された時……なんと言えば良い……?)

火王(お前以外の者に体を弄ばれ、喜んでしまっていたと!?)

風王「――!」

風王(これは……好機!)


風王「――闇の魔王様」

風王「地の四天王が戻ったら、僕に預けて貰えませんか?」


魔王「えっ?」

魔王(ほう?)


水王・火王・風王「えっ?」


魔王「……」

魔王「……ほう?」

魔王「風の四天王よ、其方は何を考えている?」

魔王「……申してみよ」


水王(今……魔王様、「えっ?」って素で仰ったわ)

火王(今……魔王様、「えっ?」と素で言われたぞ)

風王(今……魔王様、「えっ?」って素で言ったよね)


風王「……」

風王「僕が、彼を教育します」

風王「……魔王様の側に仕えるに相応しい者に」


風王(教育期間は……彼が、僕のものになるまで!)

魔王「……ふむ、成る程」

魔王「其方ならば、属性の相性も良い」

魔王「……躾をするには、適任という訳か」


魔王(だが! それでは、余との時間が今よりも減ってしまう!)

魔王(風の四天王の目を欺くのは、余とて容易ではない!)

魔王(――いっそ、皆に余と奴の関係を告げるか!?)

魔王(嗚呼、そうだ! そうすれば――)


火王・水王「――お待ち下さい」


魔王「……む?」


風王「……!」

水王「――教育係ならば、私にお任せを」

水王「主に仕えるとは、どういう事か……」

水王「この、水の四天王が教えて差し上げますわ」


水王(凄い……凄いわ、風の四天王!)

水王(教育係になれば、彼と二人っきりになり放題じゃない!)

水王(二人でお買い物に行って、ふ、夫婦と間違われたり……!)

水王(嗚呼、駄目よ! 「うむ!」だなんて……もう! もうっ!)


魔王「……ふむ」

火王「――いや、私にお任せください」

火王「奴は、武人として私が鍛え直してくれる」

火王「魔王様、その任……この、火の四天王に」


火王(けっ、こっ、けこっ、結婚前に! 同棲期間が!)

火王(ぱ、パパ! 「孫の顔が見たい」なんて、そんな!)

火王(いや、しかし私は……ああっ、「うむ!」と、言われても!)

火王(だが……う、「生む!」なーんて……あ、出る! 翼出る!)


魔王「……ふむ」

風王「――何を言ってるんだい、君達」


水王・風王「?」


風王「水の四天王」

風王「君は、属性的に彼を抑えられないだろう?」

水王「……確かに、そうですわね」

水王(相性は良いんですのよ! 何のとは言えませんけれど!)


風王「火の四天王」


火王「何だ?」

―バサァッ!


風王「……熱いから、翼をしまって貰えるかな?」

火王「む……これはすまなかった」

火王「魔王様のお役に立てる喜びに、我が身の抑えがきかなんだ」

火王(あわっ! わ、わっわわっ!?)


風王「――君は、なんだかんだで情に厚いからね」

風王「訓練ならばともかく、躾は向いていないと思うよ」

火王「……確かに、お前の言う通りかも知れん」

火王(子供が出来たら……し、叱れない! 甘やかしてしまう!)


風王「闇の魔王様」


魔王「……」


風王「地の四天王の教育係は、僕にお任せください」

風王(ふふふ……ははははっ! やった! やったぞ!)

風王「……」

風王(地の四天王……君は、僕の物になる!)

風王(当然だろう? 僕に、屈辱を味あわせたんだから!)

風王(ふふふ……! 楽しみでしょうがないよ……!)

風王(地の四天王、君が僕に直に与えてくれる――)


風王(――辱めの数々が!)


風王「……!」ゾクゾクッ!


水王・火王「くっ……!」

水王・火王(風の四天王め……!)


魔王「……」

魔王「――其方達の申し出はわかった」


水王・火王「っ!」

風王「!」

風王「では――!」


魔王「が、決めるのは今ではない」

魔王「奴に――地の四天王に、選ばせようではないか」

魔王「……誰の元へ行くかをな」


水王・火王・風王「!」


魔王「……ふふっ、己の運命を選ばせてやると言うのだ」

魔王「これ程慈悲深い裁きはあるまい?」

水王「……成る程、さすがは魔王様」

水王(やりましたわ――っ! 私、とっても有利じゃないの!)


火王「……寛大なご処置を賜るとは、奴は幸せ者です」

火王(私も幸せです! 私達……幸せになります!)


風王「……それは、今から楽しみですね」

風王(彼は、僕を選んでくれる! ああっ、なんて待ち遠しいんだ!)


魔王「地の四天王が誰を選ぶのか……見物だな」

魔王(余を選ぶ事は、最早決まっているのだがな……うふふっ!)



魔王・水王・火王・風王「――ふふふふふっ!」




おわり

書きます


地の四天王「光の勇者よ、いざ出陣の時!」

光の勇者(以下、勇者)「いや……お前、出陣とか言うなって……」

地の四天王(以下、地王)「ええい、なんだその腑抜けた顔は!」

勇者「いや、だからな……」

地王「気合を入れろ! 歯を食いしばれ!」


地王「祝福の聖女と、熱い口付けをしに行くのだろう!」

地王「この俺自ら、歯の磨き残しが無いかチェックしてくれるわ!」


勇者「余計な気を回してんじゃねえええええ!」

勇者「そもそも! なんでそう思うんだよ!?」

地王「ふん! わからぬと思ったか!」

勇者「だから、何でだっての!」

地王「知れたこと!」


地王「――今晩、大事な話があるんだ」

地王「……そう言われたと、祝福の聖女に相談されたからよ!」


勇者「筒抜けじゃねえか糞があああああ!」

地王「ふはは! 普段の俺は、大地の魔女だからな!」

勇者「ああ、そうだな! お姉ちゃんとか呼ばれてるもんな!」

地王「うむ! 色々アドバイスしておいたぞ!」

勇者「お前、本当余計な事ばっかしてくれるよな!」


地王「光の勇者よ、お前はもう逃げられぬ!」

地王「祝福の聖女の愛と――」

地王「――この俺の! お姉ちゃんパワーからはな!」ムキムキッ!


勇者「姉ぶるのは、せめて女の姿の時にしてくれ!」

勇者「そもそも! なんでその姿で居るんだよ!」

地王「何? わからんのか?」

勇者「……魔王が来てたんだな! ああ、そうだろうよ!」

地王「む? それは違うぞ、光の勇者よ」


地王「女の所へ行く男を見送るのに、女の姿では締まらんだろう」

地王「仲間として……男として、決戦に赴くお前を送り出すためだ」


勇者「……変な気遣いすんなよな」

地王「そもそも、何が不満なのだ」

勇者「あん?」

地王「宗教関連? 女神に見られている気がする?」

勇者「……」


地王「そんなもの、女神教を滅ぼしてしまえば良いだろう」

地王「女神には、まあ……なんだ」

地王「見せつけてやれば良いのだ! 余す所なくな!」


勇者「大雑把過ぎるアドバイスをありがとうよ!!」

地王「何か、他に気になることでもあるのか?」

勇者「……言いたくねえ」

地王「ふむ、ならば当ててやろう」

勇者「……」


地王「お前達――光の勇者、祝福の聖女、剣の乙女は三人」

地王「二人が付き合うと、残った一人が非常に気まずいから……だろう?」


勇者「……まあ、それはある」

地王「今は、俺が居るではないか」

勇者「お前は地の四天王で敵だけどな!」

地王「ええい! いい加減、腹をくくれ!」

勇者「お前には言われたくねえ台詞だよ!」


地王「祝福の聖女は、今日は薄化粧をしてくる!」

地王「照れていないで、褒めるのを忘れるなよ!」


勇者「お前……お前本当さあああああ!?」

勇者「なんでそこまで詳しいんだよ!?」

地王「無論! 俺が、聖女のお姉ちゃんだからだ!」

勇者「なんでそこまで親身になってんだよ!?」

地王「……ふっ」


地王「愛の女神の祝福とは……恐ろしいな」

地王「お姉ちゃん、と呼ばれるとな?」

地王「任せなさい! という気分になってしまうのだ」


勇者「祝福関係あんのかそれ!?」

  ・  ・  ・

闇の魔王(以下、魔王)「祝福の聖女よ、其方に力を授けよう」

祝福の聖女(以下、聖女)「!? な、何を言って……!?」

魔王「この宝石には、余の闇の魔力が込められている……」

聖女「闇の魔力が!? う、受け取れません!」


魔王「この宝石に、影よ、と念じるのだ」

魔王「さすれば……三時間は女神の目すら欺けるだろう」


聖女「さ、三時間!? それに……どんな意味が!?」

魔王「其方は、今宵……光の勇者と口付けを交わすのだろう?」

聖女「ふえっ!?/// ど、どうしてそれを!?///」

魔王「余の魔眼は、其方の考えなど全て見通している」

聖女「ま……まさか、心を!?」


魔王「普段は、男では気付かぬ……肌の色を整える程度」

魔王「だが、今日は――色付きのリップもしているのでな」


聖女「はいっ! 街で見かけた、唇がプルプルに見え――」

聖女「……心を読まれた方がマシな感じです!///」

聖女「だけど……どうして、そんな物を?」

魔王「……先日、余の発言が其方を不快にさせてしまったからな」

聖女「あ、あれは……魔王さんが悪いんじゃありません!」

魔王「ならば、ただの贈り物として受け取るが良い」


魔王「……次の機会には十四時間のものも用意しよう」

魔王「今後、必要になってくるだろうからな」


聖女「ですから、どうして女神様の目を欺く必要が!?」

聖女「私達は、女神様にやましい事はありません!」

魔王「……ふむ」

聖女「キスだって、その……神様の前で、誓いのキスもしますし!///」

魔王「……祝福の聖女よ」


魔王「其方は、甘いな」

魔王「光の勇者と言えども……奴は男なのだぞ?」


聖女「男だから何だって言う……」

聖女「……」

聖女「あっ」

聖女「いや……いやいやいや!/// えっ、ええっ!?///」

魔王「祝福の聖女よ、其方は……深い口付けを侮っている」

聖女「いやっ、でも!/// そんな……えー!?/// ええーっ!?///」

魔王「余とて、あれには抗う術を知らぬ」


魔王「闇の魔王の言葉が信じられぬか?」

魔王「ふふっ……どうする?」

魔王「――祝福の聖女よ」


聖女「……」

聖女「…………」


聖女「……わあっ、とっても素敵な宝石ですね!」

聖女「ありがとうございます、魔王さん!」

聖女「やましい事は……やましい事は、ありませんけど!」

魔王「見られながらと言うのも、な」

聖女「ほ、他に……何か、気をつける事ってありますか?」

魔王「……ふむ、そうだな」


魔王「祝福の聖女よ、流れに身を任せすぎるな」

魔王「――相手は、光の勇者」

魔王「――其方は、祝福の聖女」

魔王「今、愛の奇跡が起きては……困るであろう?」


聖女「きっ、気をつけます!」

聖女「その奇跡に関しては……二人で相談して……」

聖女「けっ、計画的に!/// 計画的にミラクルします!///」

  ・  ・  ・

地王「――ふはは! 思い通りに事が進んだわ!」

地王「光の勇者……そして、祝福の聖女!」

地王「――なんと、御しやすい!」

地王「今日のこの状況が――」


地王「この、地の四天王と!」

地王「闇の魔王様の狙い通りだとも知らずに!」

地王「……ふはははっ! ふっはははははっ!」


地王「……この旅が終わったら、なーんぞ認められるものか!」

地王「その時は、奴らか俺たちのどちらかが倒れているではないか!」


地王「光の勇者と、祝福の聖女に――幸あれ!」


地王「はっはっは! はぁっはははははっ!」

地王「……さて、今宵はもう何の予定も無い」

地王「魔王様も、城に戻り……静かに応援すると言っていたからな!」

地王「――むん!」


パァァ……ァァァ


大地の魔女(以下、地女)「――ならば、この大地の魔女は!」

地女「昼に買っておいた、菓子を食べるまでよ!」


地女「……いや、待つのだ」


地女「――今は、飲みに行くなという勇者が居ない」

地女「つまり……」


地女「……完全に自由だな?」

地女「……」

地女「――ぬうう! リーダー不在とは!」

地女「ええい! 光の勇者め、面倒をかけさせてくれる!」

地女「こうなったら、各々が判断し行動する他あるまい!」

地女「……ならば!」


地女「――いざ、酒場♪」

ぴょいんっ♪


ガチャッ!


火の四天王(以下、火王)「――大地の魔女よ」


地女「ぬおおおおっ!?」

火王「す……すまない、驚かせてしまったな」

地女「な、何なのだ!? 急に現れて……」

火王「それは……お前に、頼みがあって来た」

地女「頼み?」


火王「……理由は聞かず――」

火王「――私と、きっ、キスをして欲しい!」


地女「何故だ!?」


火王「いや、即座に聞き返さないでくれるか!?」

地女「しかしだな……突然現れて、キスをねだるなど……」

火王「いっ、言いたいことはわかっている!///」

地女「あまり……そのな? 良くないぞ? わかるか?」

火王「わかっていると言っているだろう!?///」


地女「……火の四天王よ」

地女「ストレスが溜まっているのなら、飲みに行くか?」

地女「奢るぞ? どうだ? 遠慮はするな?」


火王「優しさで畳み掛けて来ないでくれ、頼むから!///」

地女「悩みでもあるのか? ん?」

火王「そのっ! 飲んだあとの事が悩みだ!」

地女「飲んだ後?……あー……あーあーあー……」

火王「私は、未だに信じられん!」


火王「お前ときっ、キスしただけで翼が出たなど!」

火王「婚約者を差し置いて、体がお前を選んだなどと!」


地女「……まあ、なんだ」

地女「……体は正直だったと言うことで、一つ」

地女(何だ!? バレたのか!? バレているのか!?)

地女(キスして、俺が地の四天王だとバレるなど、あるのか!?)

火王「私の心は、奴のものだ!」

火王「私の精神は……肉体なんぞには負けない!」

火王「むしろ――心の力で!」

火王「この体を御し切ってみせる!」


地女「うむ! その心意気、天晴!」

地女「……それでは、もう行くな?」


火王「待て待て待て待て!」

火王「話を聞いていなかったのか!? 行くな!」

火王「行かせんぞ、大地の魔女!」

がしっ!

地女「ふん! そんな細腕で、止められると思ったか!」

火王「お前の方が腕は細いぞ!」

地女「ぬおお!? そうだったのだ!」


火王「暴れるな! 大人しくしろ!」

火王「チュッとするだけだ! それで済む!」


地女「それだけで済まぬかも知れんではないか!!」

火王「……ぬぐぐううっ!」

地女「……ふんぎぎぎっ!」


火王「……!」

火王(私に……私に力を貸してくれ!)

火王(お前への愛が、本物であると証明させてくれ!)


火王「――出るな、龍の翼よ!」

チュッ!

地女「んむっ!?」


火王「!」

―バッサァッ!

火王「……」バサバサッ!

地女「で、出たな! もう離せ! なっ!」

火王「……」タシンッ! タシンッ!

地女「し、尻尾も出ているな! なっ!」


地女「――火の四天王よ!」

地女「もう、大地の魔女に用は無いな!?」


火王「……ああ、無い」

火王「私が、話があるのは――」


火王「――地の四天王だ」


…タシンッ!



おわり

書きます


地の四天王「光の勇者よ、やり遂げたようだな!」

地の四天王(以下、地王)「良い面構えになっているぞ!」

光の勇者(以下、勇者)「その……変に察するのやめろって」

地王「いやぁ、めでたいめでたい!」

勇者「……なんか、妙に嬉しそうじゃねえか」


地王「いやな? お前がブチュッとしてる間に、火の四天王が来てな?」

地王「正体がバレたと思いきや、バレずに済んでいたのだ!」


勇者「命が助かったんなら、そりゃ喜ぶよな!」

地王「さすがの俺といえど、あの時は肝を冷やしたぞ!」

勇者「火の四天王に冷やされるなんて、皮肉っぽいな」

地王「奴め、唐突にあらわれてキスを迫ってきてだな……」

勇者「はぁ!? なんだ、火の四天王は女のお前に――」


地王「うむ! 大地の魔女に惚れているようなのだ!」

地王「チュッとしただけで翼と、さらに尻尾まで出てだな?」


地王「――地の四天王が戻ったら、婚約の解消を申し出る」


地王「……と、笑いながら言っていたぞ!」


勇者「それは……お前としては助かった、のか?」

地王「うむ! 当初の計画通りだな、光の勇者よ!」

勇者「火の四天王と婚約を解消して、時間稼ぎ……ってあれか」

地王「そうだ! ふはは、光の加護の効果は凄いな!」

勇者「敵のお前を守ってる形なのが癪だよ!」


地王「しかし……あの様な危機が訪れるとは」

地王「まるで、三時間程……光の加護が消失したようだった」

地王「光の勇者よ、今後はこのような事の無いように頼むぞ」


勇者「痴情のもつれで光の加護を頼るんじゃねえええええ!!」

地王「火の四天王に関しては、これでもう安心だな!」

勇者「婚約を解消したから、戻っても大丈夫だと?」

地王「うむ! いやー、助かった助かった!」

勇者「……」


地王「まさか、あちらから婚約を解消してくれるとは!」

地王「この俺の未来は、光で溢れているな!」

地王「はっはっはっはっは!」


勇者「……」

勇者「おい」

地王「む? 何だ?」

勇者「良いのか?」

地王「光の勇者よ、何を言っている」


地王「俺は――酔って、他の女達とヤっちゃってるのだぞ?」

地王「火の四天王も、そんな男が婚約者では……な?」


勇者「いや……そりゃまあ、本当にそうだけどよ」

地王「火の四天王は、大地の魔女に想いを寄せた」

地王「つまり、奴にとって――」


地王「――この、地の四天王は用済みなのだ!」


地王「あとは、大地の魔女の姿でな?」

地王「こう……良い感じに、新しい相手を探すのだ、と」

地王「その様な事を言って、スッと消え去れば完璧だ!」


勇者「……」

地王「水の四天王は、まあ、このまま放置で良いだろう」

勇者「……そうなのか?」

地王「うむ! 奴とは、しばらく会っていないのでな!」

勇者「……だから何だよ?」


地王「遠距離で、会えない期間が長ければ――」

地王「――なんとなく! 自然消滅するだろう!」


勇者「ああ……まあ、そうかも知れないな」

地王「闇の魔王様は……素面でヤっちゃっているのが、なぁ」

勇者「……」

地王「風の四天王も……何を考えているか、良くわからんからな!」

勇者「……」


勇者「――地の四天王、もう一度だけ聞く」

勇者「火の四天王に関して……本当に、これで良いんだな?」


地王「……うむ、これで良いのだ」


地王「俺の命が助かりつつ、火の四天王も前へ進める」


地王「……ふはは! これ以上の結末はあるまい!」

勇者「……お前がそう言うんなら、良いさ」

地王「うむ!」

勇者「まぁ……たまには、二人でメシでも行くか」

地王「ほう!」


地王「それは――」

パァァ……ァァァ

大地の魔女「――大丈夫か? 浮気と誤解されんか?」


勇者「まあ、街に繰り出すならその姿になるよな!」

勇者「っつーか、お前に浮気の心配なんかされたくねえよ!!」

  ・  ・  ・

火の四天王(以下、火王)「……ふぅ」

火王「……」

火王「もう……眠るか」

火王「……」


…ぼふっ!


火王「……」

火王(……起きていると、考えてしまうから)


火王(大地の魔女――地の四天王の事を)


火王「……」

火王「……奴め、私が気付いた事に……気付かないとは」


火王(私に正体を明かさなかった)

火王(それは……理由あっての事)

火王(その理由とは、恐らく……)


火王「剣の乙女は……美しいからな」


火王(この、醜い顔の私とは違う)

火王(男ならば、美しい者を選ぶのは当然の事だろう)

火王(それに……剣の乙女は、精神的にも素晴らしい奴だ)


火王「……っふ……うっ……!」

火王「うぅ……えっ……!」


火王(剣の乙女は、気付いているのだろうか?)

火王(大地の魔女の正体が、地の四天王という事に)

火王(……いや、私には関係無いか)

火王(もう、婚約者では無くなるのだから)


火王「っ、ふぅっう! ぐすっ! うっ、ううっ、えぇぇっ……!」


火王(奴らが、何処で何をしようと私には関係無い)

火王(むしろ……私は、邪魔者なんだ)

火王(あの二人の――地の四天王の、邪魔者)

火王(そう思われて居るなら……)


火王「……もう……会えないよぉっ……!」

  ・  ・  ・

剣の乙女(以下、乙女)「――出てきなさい、火の四天王」

火王「……よく気付いたな」

乙女「ええ、当然でしょう」

火王「……」


乙女「もう、この私――剣の乙女に迷いは無いもの」

乙女「今なら、斬れない物は無いんじゃないかしら?」


火王「……ふふっ、頼もしいな」

乙女「以前の私だったら、気付かなかったでしょうね」

火王「……」

乙女「……って、何かあったの!? その顔……」

火王「……」


火王「剣の乙女よ、最後に一つだけ聞かせて欲しい」

火王「関係無いと思いはしたが……」


火王「――私は、お前を友だと思っているから」


乙女「火の四天王……?」

乙女「最後って……何よ、それ?」

火王「剣の乙女」

乙女「……何、聞きたいことって」

火王「……」


火王「……剣の乙女よ」

火王「お前は、大地の魔女のあの姿が――」


乙女「――知ってるわ」

乙女「けれど、姿形なんて……些細な問題でしょう?」


火王「……やはり、知っていたのか」

乙女「聞きたいことって、それだけ?」

火王「ああ、それだけだ」

乙女「ねえ……貴女、様子が変よ?」

火王「……」


火王「……剣の乙女」

火王「奴と……幸せにな」


乙女「……火の四天王」

乙女「そんなの、言われるまでも無いわ」

  ・  ・  ・

水の四天王(以下、水王)「祝福の聖女よ、光の勇者とは?」

祝福の聖女(以下、聖女)「えっ……えー?/// それはぁ……///」

水王「もーう! 勿体ぶらないで、教えてくださいな!」

聖女「えっと……えっとですね……///」


聖女「チュッとされてぇ……/// しっ、しっ、しし舌が……///」

聖女「それでそれで……/// あぅあ、思い出すと……///」…ツーッ

聖女「――びばばべばびぼびべびば!///」タパパッ!


水王「聖女、鼻血!! 物凄く鼻血が吹き出してますわ!!」

水王「あああ服が! それに、顔が血だらけで!」

聖女「ぶうばばま゙……ぼべぼびょうべぶべびべ///」タパパッ!

水王「何を言っているか、全くわかりませんわ!」

聖女「あぶぁ?」タパパッ!


聖女「……」タパパパ…

聖女「」

…ドサッ!


水王「しゅ……祝福の聖女――っ!?」

  ・  ・  ・

聖女「……す、すみません……ご迷惑をおかけしました」

水王「もう! 興奮して鼻血を出すだなんて、ウブすぎますわ!」

聖女「その……後から冷静になって思い出すと……ですね///」…ツーッ

水王「!? 水よ!」


水王「――そんな事では、先が思いやられますわ!」

水王「この先、もっと凄いことをするんですから!」


聖女「は……はの……」

聖女「みふへ、はなへんは……」


水王「水で鼻栓をしないと、また倒れてしまうでしょうに!」

水王「結婚までに、何とかしないといけませんわね……」

聖女「……あい」

水王「けれど、私……しばらく来られそうにありませんの」

聖女「ほうはんへふは?」


水王「火の四天王が――」


聖女「?」


水王「――婚約を発表したんですのよ」


聖女「え――っ!?」

スポンッ!

聖女「それ、本当なんですか!?」

水王「以前より、結婚を申し込まれていた――」


水王「――赤龍王と」


水王「まあ……所謂、政略結婚ですわね」

水王「けれど、これで火の領地は一枚岩になりますわ」

水王「その、正式な発表の場に招待されましたの」


聖女「へええ……でも、結婚ですか!」

聖女「それは、とても素晴らしいことですね!」

水王「どうなんでしょうね?」

水王「噂によれば、火の四天王の魔力が急激に弱まり……」

水王「……その話を受けざるを得なかった、という事ですけれど」


聖女「えっ、どうしてですか?」


水王「龍族は、力を至上としていますもの」

水王「そのトップが弱いとなれば、抑えがきかなくなってしまうの」

水王「本当、野蛮で困りますわね!」

水王「私の水で、全て飲み込んでしまいたくなりますわ!」


聖女「あ……あはははは……」

水王「けれど……結婚、良いですわよねぇ」

聖女「はい……羨ましいです」

水王「ああっ! 地の四天王が戻ってくるのが、待ち遠しいですわ!」

聖女「…………そう、ですね」


水王「……祝福の聖女よ」

水王「式には、来てくださいましね!」ニコッ!


聖女「……」

聖女「は……はい……」


聖女(一体……なんの式になるんでしょうか……)



おわり

書きます


祝福の聖女「火の四天王が、婚約発表するそうです」

剣の乙女(以下、乙女)「えっ? それは本当なの?」

祝福の聖女(以下、聖女)「はい、確かな情報です」

乙女「成る程……だから……」

聖女「あ、あの……大丈夫ですか?」


大地の魔女(以下、地女)「なんっ、ななななんっ、何がだ!?」

地女「これは……ちょっと床板の触り心地を確かめてな! うむ!」


光の勇者(以下、勇者)「……触り心地はどうだよ?」

乙女「火の四天王の婚約者というのが、誰か知ってる?」

聖女「赤龍王……という方みたいです」

乙女「ふぅん? 聞いたこと無いわね」

聖女「あ、あの……大丈夫ですか?」


地女「うむ!! うむ!! 大丈夫だ!!」

地女「いやぁ! この床板は触り心地が最高だな!」


勇者「……そいつは良かったな」

  ・  ・  ・

地女「――焦った! 本当に肝が潰れるかと思ったぞ!」

勇者「二人は不審がってたけどな」

地女「だが! これで完璧に、火の四天王に関しては解決だ!」

勇者「……」


地女「いやぁ、大地の魔女の姿の――俺に惚れてると思いきや!」

地女「赤龍王と婚約発表など、想像以上に良い結果だぞ!」


勇者「……」

勇者「どうして、火の四天王の魔力は急激に弱まったんだろうな」

地女「恐らく……マリッジブルーというやつだな」

勇者「そうか?」

地女「うむ!」


地女「火の四天王の魔力の源は――喜びの感情」

地女「結婚を前に、不安になっているだけだろう」


勇者「……」

勇者「赤龍王ってのは、どんな奴なんだ?」

地女「出来た男だぞ! 顔も、性格も良い素晴らしい奴だ!」

勇者「そうなのか?」

地女「うむ!」


地女「火の領地は、火の四天王の父――火龍王」

地女「そして、赤龍王の大きな二つの勢力が存在していた!」

地女「その二つが一つになれば――繁栄は約束されたようなものだ!」


勇者「……そうか」

勇者「お前は、それに関してどう思う?」

地女「予想以上に、最高の結果だ!」

勇者「どうしてだ?」

地女「うむ!」


地女「まあ、火の四天王もな?」

地女「俺の様な男よりも、赤龍王と一緒になった方が幸せだと思うのだ」

地女「さらに、領地は栄える!」

地女「――これを最高と言わずして、何と言う!」


勇者「――‘らしく’無い事言ってんじゃねえええええ!!」


地女「ゆ……勇者?」

地女「ど、どうしたのだ? 男の子の日か?」

勇者「なんだそれ!? そんなもんねえよ!」

地女「ええい! ならば、一体何だと言うのだ!」

勇者「わかんねえなら言ってやるよ!」


勇者「俺の知っている、地の四天王は!」

勇者「自分の都合で女を振り回す、どうしようも無いクズだ!」

勇者「それが、何だ!? 何だ、今のお前は!」

勇者「今のお前は、最高に気持ち悪いんだよ!」


地女「ぬうう……! どう反応して良いかわからん……!」

地女「……しかしなぁ、今更どうも出来んぞ?」

勇者「糞が! 俺だって、こんな事言いたくねえんだよ!」

地女「では、この話は終わりということで……」

勇者「終わるな!」


勇者「――大地の魔女!」

勇者「お前の言葉が本当なら――」


勇者「――火の四天王と、赤龍王の結婚は認められない!」


勇者「俺達パーティーにとって、大きな障害になる可能性がある!」


地女「……光の勇者?」

地女「お前……何を言っているのだ?」

勇者「一枚岩になった火の領地は勢いを増す……そうだな?」

地女「うむ……まあ、そうだろうな」

勇者「だったら、決まってるだろうが!」


勇者「光の勇者は!」

勇者「魔王軍の勢力の一つが、勢いを増すのを止める!」

勇者「婚約発表だぁ? させるかよ、そんなもん!」


地女「光の勇者よ、正気か!?」

地女「お前それは……人として、かなり最低だぞ!?」

勇者「俺が、どうして気を遣わなきゃならねえんだ!」

地女「気遣いを覚える事が、大人への第一歩なのだ」

勇者「そういうこっちゃねえんだよ!」

地女「むう……?」


勇者「お前は……地の四天王はクズだ!」

勇者「そのくせ、変におせっかいを焼いてきやがって……!」

勇者「それで、大地の魔女はパーティーメンバーで……!」

勇者「ああもう! 俺にも、よくわかんねえんだよ!」

勇者「――わかれ!!」


地女「……」

地女「……光の勇者よ、相わかった」

勇者「……」


地女「お前は、俺を心配してくれているのだな」

地女「婚約者――火の四天王が、俺から離れていく」

地女「その事を聞き、俺の様子が普段とは違ったので、だ」

地女「うむ……確かに、少し前から‘らしく’無かったかも知れんな」

地女「そんな俺を――敵である俺を気遣ってくれた」

地女「敵ではあるが、旅の仲間として過ごしてきたのだ……」

地女「だが……それを素直に言うのは、気恥ずかしかったのだろう?」


勇者「……そこまでわかれとは言ってねえんだよおおおお!!」

勇者「何なんだよ! お前、本当さぁ!?」

地女「だがなぁ……それでもなぁ……」

勇者「……何だよ」

地女「うむ」


地女「せっかく、良い感じに出来たのにだな?」

地女「婚約発表を止めに行くとなると……な?」

地女「それに、光の加護があってもバレるかも知れん」

地女「そうなっては……俺の命が危ない!」


勇者「……」

勇者「……成る程、わかった」

地女「おお、わかってくれたか!」

勇者「お前は、今の時点から――」


勇者「俺の、パーティーメンバーじゃねえ」


地女「? 光の勇者よ、何を言って――」

地女「――っ!?」

地女「ぬうう! この身を包んでいた、聖なる力を感じぬ!?」


勇者「えっ……いや、マジで?」

勇者「光の加護って、こんなんでオフになるのか!?」

地女「光の勇者よ、助けてくれ!」

地女「光の加護が無いと、色々とバレてしまう!」

勇者「だったら、条件がある」

勇者「火の四天王に関して、お前の本音を聞かせろ」


地女「火の四天王は可愛い!」

地女「魔族の生は長いので、結婚なんぞ御免だが!」

地女「他にバレずにヤれるなら、ヤっちゃいたい所だ!」

地女「他の男にくれてやるなんぞ、勿体無い感が凄い!」

地女「――ほれ、パーティーに入れてくれ!」


勇者「予想以上にクズで入れたくねえええええ!!」

地女「早く! 早く入れてくれ! 早ーく!」

勇者「……駄目だ!」

地女「ひっ、ひどいではないか!? 騙したのか!?」

勇者「……入れて欲しきゃ、さっさと行ってこい!」


勇者「クズは、クズらしく!」

勇者「火の四天王の婚約発表をぶっ潰して来い!」


地女「ぬうう……ぜ、絶対だぞ!?」

地女「戻ったら、絶対入れてくれ!」


勇者「……ははは!」

勇者「光の加護が欲しいなら、急ぐんだな!」


勇者「……ま、たまには俺が振り回すのも悪くねえだろ?」

  ・  ・  ・

乙女「――逃げるなクズがあああああっ!」

聖女「――勇者様? どうして逃げるんですか?」


勇者「誤解だああああっ!!」


乙女「おっ、おおっ、お姉様に!」

乙女「入れてくれと……おっお、おねだりさせるるるるううるうるううう!?」

聖女「勇者様のあの時の誓いは嘘だったんですか?」

聖女「ねえ、答えてください……答えて、答エテ、こタエテ、コタエテ……?」


勇者「怖い怖い怖い怖い!!」

  ・  ・  ・

地女「……ふっ、光の勇者め」

地女「婚約発表の場を壊しに行けなど……」

地女「はっはっは! 勇者らしからぬ言葉よな!」

地女「……」


地女「やはり、俺が見込んだ通り……天晴な奴だ」

地女「まさか、この俺に使いっ走りをさせるとはな!」


――キランッ!


地女「流れ星……か」


地女「……光の勇者よ」

地女「お前の出した条件――見事果たして見せよう!」



おわり

書きます


火の四天王「……婚約発表は、三日後か」

火の四天王(以下、火王)「こんなにも……簡単だとは」

火王「私と奴の婚約は……ずっと、秘密だったと言うのに」

火王「……」

火王「……うっ……ふぅっ……うぅっ……!」ポロポロッ…


地の四天王(以下、地王)「火の四天王よ」

地王「何を泣いているのだ?」


火王「……」

火王「はいっ!?」

火王「ど、どうやって……私の部屋まで!?」

地王「石造りの建物など、俺の前では何も無いに等しい」

火王「ど、どうして……此処に来た!?」

地王「うむ!」


地王「まあ、大きな声では言いにくいんだがな?」

地王「ちょっと夜這いに来た」


火王「本当に大きな声では言えない理由だな!?」

地王「俺だって、色々と考えたのだぞ?」

火王「なっ、何を考えたと言うんだ!」

地王「お前の、婚約発表の場を潰す方法だ」

火王「……えっ?」


地王「正式に発表されるパーティーに颯爽と登場、とも考えた!」

地王「だが、水の四天王と風の四天王が前入りしていたのだ!」

地王「いくら俺でも、その状況では無理だ!」


火王「待て! 待て待て待て待て!」

火王「お前は、何を言ってるかわかっているのか!?」

地王「当たり前だろう」

火王「私は、婚約発表を三日後に控えているんだぞ!?」

地王「それならば、延期になるぞ」


地王「ちょっと赤龍王をボコボコにしてな」

地王「あれは恐らく、二ヶ月は静養が必要だろう」


火王「お前は何をやってるんだ!?」

地王「いや、最初は話し合いに行ったのだ!」

火王「何を話すことがある!?」

地王「無論、婚約発表を取りやめる事だ!」

火王「断られて、赤龍王を闇討ちしたのか!?」


地王「いやぁ……」


地王「――火の四天王は、顔こそ美しいとは言えない」

地王「――だが……」


地王「……まで聞いて、カッとなって手が出てしまったのだ」

地王「俺の魔力の源は怒りなので、奴が生き残れたのは奇跡だった」


火王「お前は……お前は、本当に何をしている!?」

地王「美しくない、なんて……なあ? 腹が立つではないか」

火王「だが! だが、と……内面を褒めようとしていただろう!」

地王「お前は、可愛い! 自信を持つのだ!」

火王「……うるさい!」


火王「お前は……私を捨てて、剣の乙女を選んだだろう!?」

火王「そんなお前が、どうして今更私の前に現れる!?」


地王「何を言う! 酔って、朝起きたらベッドに居ただけだ!」


火王「そんな訳があ――……」

火王「……」

火王「うん」

地王「それでな? お姉様と呼ばれていてな?」

火王「……ああ、呼んでいたな」

地王「そんなのは、なあ? 男と言い出しにくいだろう」

火王「……まあ……確かにそうだな」


地王「覚えてはいないが、ヤっちゃった時は女の姿だった」

地王「女同士ならセーフ! という事にならんか?」


火王「……な、何とも言えん!」

地王「まあ、とりあえず婚約発表の場は潰させて貰った」

火王「……そうみたいだな」

地王「うむ!」

火王「……剣の乙女は、どうする気だ?」


地王「……まあ、なんだ」

地王「火の四天王よ、お前に任せたい」

地王「ただならぬ関係ではあるわけだからな!」


火王「えっ!? わ、私が何とかしないといけないのか!?」

地王「……まあ、他の事は後で考えるとしよう!」

火王「いや、待て!」

地王「待たぬ!」

火王「おい! 勝手にベッドに寝転がるな!」


地王「それは違うぞ、火の四天王よ!」

地王「俺は、ひっくり返っているのだ!」

地王「それが、お前の可愛さを引き出すと知っているからな!」


火王「……お前……覚えていたのか?」

火王「あの……初めて会った時の事を……」

地王「? 何を言っている、当たり前だろう」

火王「……」

地王「あの後、火龍王に半殺しにされたのも良い思い出だ!」

火王「……」


地王「それに、翼と尻尾が出たらな? やりにくいと思うのだ」

地王「後ろからだと、可愛い顔が見えなくなってしまうだろう?」

地王「つまり――尻に敷かれに来たのだ!」


火王「そ……それって……」

火王「本当に……良いのか……?」

地王「この、鍛え抜かれた肉体を……ぬう、袖が引っかかって……!」

火王「あ……うん、脱ぐの手伝うぞ」

地王「おおっ、すまぬな!」


地王「――この、鍛え抜かれた肉体を見るが良い!」

地王「例え、相手が何者であろうとも!」

地王「最後まで――支えきってみせるわ!」


火王「……!」

―バサァッ! タシンッ!


地王「むしろな? 下から突き上げて――」


火王「――嬉しいっ……!」

  ・  ・  ・

大地の魔女(以下、地女)「……と、言うわけだ!」

光の勇者(以下、勇者)「お前、それ……」

地女「光の勇者よ、お前の出した条件は達成したぞ!」

勇者「いや、だが……」


勇者「お前……プロポーズした事になってないか?」


地女「なっていないだろう?」

地女「上に乗って、存分に腰を振れという意味でしかないぞ?」


勇者「そうか……いや、そうか!?」

地女「とりあえず、ほれ! パーティーに入れてくれ!」

勇者「あ、ああ……お前はパーティーメンバーだ」

地女「……おおっ! 聖なる力で覆われていく!」

勇者「とりあえず……後で、二人の誤解を解いてくれ」


地女「全く……お前は、いつも誤解されているな」

地女「もう少し、言動には慎重になった方がいいぞ?」


勇者「あのな!? 全部お前が原因だからな!?」

勇者「って言うか……お前、やっぱり強いんだな」

地女「赤龍王には……まあ、菓子折りでも贈っておこう」

勇者「それで良いのか!?」

地女「安心するのだ、正体はバレていないぞ!」


地女「ボコった時は、この美少女の姿だったからな!」

地女「だが、ボコった後……」

地女「――貴女のお名前は……?」

地女「と、妙に熱っぽい視線を送ってきていてな?」

地女「あれは……一体何だったのだろうか……?」


勇者「お前はどうしてそう……そう、ぬああああ!?」

勇者「火の四天王は……どうしたんだ?」

地女「とても、幸せそうな寝顔をしていてな……」

勇者「……それで?」

地女「……うむ」


地女「長居して、水の四天王と風の四天王にバレるとも限らんしな」

地女「起こさないよう、コッソリ抜け出して戻ってきた」

地女「こう……ちゃんと、肩まで布団をかけてだぞ」


勇者「それ大丈夫なのか!?」

勇者「っつーか、最後のくだり要るか!?」

地女「光の勇者よ、案ずるな!」

勇者「いや、だってお前!」

地女「ええい、俺を信じろ!」

勇者「お前の、どこを!?」


地女「火の四天王は、今回の事は誰にも言わん」

地女「火龍王の娘にして、誇り高き武人が、だ」

地女「夜這いされてお楽しんじゃいました……」

地女「……などと、言える筈が無いだろう?」


勇者「……本当クズだな、お前はよぉ!?」

地女「だが、祝福の聖女と剣の乙女の誤解を解けるのは?」

勇者「ああ、そうだな! お前だけだよクソッタレ!」

地女「ふっ……パーティーには、役割というものがあるからな!」

勇者「お前のせいで生まれた役割だよ!」


地女「ふむ……つまり――」

地女「――母なる大地、という事だな?」


勇者「お前、本当に言葉を考えてくれない!?」

勇者「それは今後使うなよ!? 絶対、誤解を招く!」

地女「誤解など、恐るるに足らんぞ」

勇者「少しは恐れてくれ、頼むから!」

地女「……光の勇者」

勇者「……何だよ」


地女「誤解があってもな?」

地女「こう、割と何とかなったりするものなのだ!」


勇者「だけど……どんどん、状況が悪くなって無いか?」


地女「なぁに、何とかなる!」

地女「光の勇者よ、明日を信じられぬ者に未来は無いぞ!」


勇者「四天王らしくないなぐさめすんじゃねえよ!!」



おわり

書きます


大地の魔女「光の勇者よ、傍を離れるな!」

光の勇者(以下、勇者)「くそっ、離しやがれ!」

大地の魔女(以下、地女)「ええい、離すものか!」

勇者「離せっつってんのがわかんねえのか!」

地女「離れるなと言っているのがわからんのか!」


風の四天王(以下、風王)「……僕は、二人まとめででも構わないよ」

風王「さあ、始めようか……!」


地女「! 来るぞ、勇者!」

地女「……――説教だ!」

勇者「だから、なんで俺を巻き込むんだよおおおおお!?」

風王「僕が、どうして怒っているかわかるかい?」


地女「光の勇者よ、油断するな!」

地女「あれが、奴のいつもの手なのだ!」


勇者「お前、そんなに風の四天王に説教されてんのか!?」


地女「うむ! 領地が隣だからな!」

地女「……ああやって、ポロッと自白するのを誘っているのだ!」

地女「あの手に、何度してやられた事か!」


勇者「そりゃあ、心当たりが多ければしてやられるだろうよ!」


風王「……」

風王「それじゃあ、単刀直入に聞くよ」

風王「火の四天王の婚約発表の場をぶち壊したのは――」


地女「光の勇者が指示した事だ!」

勇者「オイコラてめえええええ!?」

地女「俺は、最初は反対していたのだ!」

勇者「いや、そりゃしてたけど……!」

地女「ぬうう、光の勇者め! 人の幸せを妬むなど!」

勇者「違うからな!? いや、そうだけど……違うぞ!?」


風王「……」

風王「方法は、勇者が決めたのかい?」


勇者「違う! コイツが決めた!」

地女「かぁっ! 一回、パス!」

勇者「……なんだよ、それ?」

地女「パスした事により、方法を決めたのはお前になったのだ」

勇者「ふっざけんなよ!? 一回って事は――」

地女「察しが良いな! 俺は、あと二回パスを残している!」

勇者「コイツだ! コイツが決めた!」


風王「……」

風王「……じゃあ、方法を決めたのも勇者で良いさ」


勇者「はあっ!? おい、なんだよそれ!」

地女「むっ!? 裁定に文句をつけるつもりか!?」

勇者「ったりめえだろ!? 俺じゃねえからな!」

地女「ええい! 光の勇者よ、見苦しいぞ!」

勇者「風の四天王! 裁きは公平に行え!」

地女「風の四天王! 人生は平等では無い!」


風王「……」

風王「…………そろそろ、良いかな?」


地女・勇者「……はい」

風王「君達、バレないとでも思ったのかい?」

風王「僕が――風の四天王が、見逃すとでも?」


勇者「いや、だけど……」

地女「その……なあ?」


風王「事が公にならず、今も呑気にしてられるのは……」

風王「……一体、どこの四天王のおかげだい?」


地女「……」スッ…

勇者「っふ!……っくく、おい……手ぇ上げるなよ……!」


風王「この僕が! 風の四天王が、隠蔽工作をしたからだよ!」

風王「方法は、他にいくらでもあっただろう!?」

風王「どうして、赤龍王を襲ったりしたんだ!」


地女「その、な?……つい、カッとなって」


風王「そもそも! 上手くいっていた筈だろう!」

風王「放っておけば、火の四天王は君から離れた!」

風王「――光の勇者、どうして彼を煽ったんだ!?」


勇者「いや、なんか……つい、と言うか」


風王「つい、じゃないんだよ! つい、じゃ!」

風王「僕の苦労がわかるか!?」

風王「……ああ、言ってもわからないだろうね!」

風王「本当に……これだから、男ってやつは!」


地女「……」

勇者「……」

地女「……なっ、恐ろしいだろう?」ボソボソ

勇者「ああ……何も言い返せない」ボソボソ


風王「っ!」キッ!


地女・勇者「……何でもありません」

風王「……僕が、どうしてそこまでしたかわかるかい?」


地女・勇者「……」


風王「……」


地女「……」

勇者「……おい」ボソッ

地女「……何だ」ボソッ

勇者「……何か言えって」ボソボソ


地女「――サッパリわからん!」


風王「君に、死んで欲しくないからだよ!」

風王「あのね、そのくらい分かって貰えるかな!?」

風王「だから……死なれちゃ、困るんだ」

風王「そのためなら――何だってするさ」


地女「あー……つかぬ事を聞くがな?」

地女「……アレも見ていたのか?」


風王「……見たくなんてなかったさ!」

風王「けど、火の四天王の魔力があんなに高まったら……」

風王「……意識を集中せざるを得なかったんだよ!」


勇者「お前……凄いな」


風王「……うるさい、黙れ」

風王「アレが露見――水の四天王にバレていたら」

風王「水の四天王の事だ……」

風王「……きっと、火の四天王を手にかけていただろうね」


地女・勇者「……」


風王「そして――怒り狂った君は、水の四天王を殺しただろう」

風王「その怒りを鎮める事は……きっと不可能だ」

風王「それこそ……殺してしまわない限り」

風王「白羽の矢が立つのは……まあ、僕で間違いないかな」


地女・勇者「……」

風王「僕に……君は、殺せない」

風王「かと言って、殺されるのも御免だ」

風王「だって――僕は、君を手に入れたいんだから」


勇者「なあ……コイツが、何人に手を出してるか知ってんのか?」

地王「うむ!」

地王「俺が言うのも何だが……他に、良い男は居るぞ?」


風王「……かも知れない」

風王「いや……きっと、そうなんだろうね」


風王「――けど、僕は君が欲しいんだ」


地女「……風の四天王」


勇者「な、なあ……すまん、物凄く居辛いんだが……!?」

風王「終わり良ければ全て良し、って言うだろう?」

風王「……魔族の生は長いんだ」

風王「意中の相手に、過去に別の相手が居たなんて当たり前の事」

風王「……今は、それが偶然近い時期なだけ」


風王「――最後に、僕を選んでくれればそれで良い」


地女「……むう」


勇者「……!」

勇者(なんで俺が居るのにこういう空気出すんだよおおおお!!)

風王「……こんなに心の内を晒したのは、初めてだよ」

地女「あー……まあ、何だ」


地女「お前が、そこまで俺にこだわるのは……」

地女「――‘あの時’の事が、きっかけか?」


風王「……そうだね、‘あの時’からだよ」

風王「でなければ……体を許したりはしなかったさ」


地女「……むうう」


勇者「……!?」

勇者(‘あの時’って何だよ!?……なんて聞ける空気じゃねえ!)

  ・  ・  ・

地女「……風の四天王め」

地女「……」

地女「まさか……‘あの時’の事をそこまで……」

地女「……むううっ!」


地女「――答えは、いつまででも待つ」

地女「……と言われても! 俺は、どうしたら良いのだ!」

地女「光の勇者よ、助けてくれ!」


勇者「‘あの時’って何なんだよおおおおお!?」

  ・  ・  ・

風王「……」


風王(風を自在に操り、地に縛られた者達を蔑んでいた……あの時)

風王(僕は――君に破れた)

風王(気付いた時には……僕は地に転がり、君に見下されていた)

風王(敗北の屈辱を――恥辱を受けた)


風王「風が……地に負ける」


風王(有り得ないと信じられず……死を覚悟した)

風王(……いや、みっともなく……怯えた姿を見せた)

風王(そんな僕に……君は、手を差し伸べたんだ)


風王(――四天王として、俺と共に魔王様に仕えんか?)


風王(……なんて、満身創痍の姿で……笑いながら)

  ・  ・  ・

地女「光の勇者よ、俺が教えたとは……絶対に言うなよ?」

勇者「良いから、さっさと教えろ!」

地女「良いか? 絶対に言うなよ!?」

勇者「良いから言え! 気になるだろうが!」


地女「四天王になっての最初の命令が、奴の討伐だったのだ」

地女「もう、本当に運良く勝ててな! あれは豪運だった!」

地女「そうしたら、奴め……殺されると思ったのか、な?」

地女「まあ、なんだ……オシッコちびっちゃってな?」


勇者「あっ! これ、聞かない方が良かったやつだな!?」

  ・  ・  ・

風王「……!」ゾクッ!


風王(……ああっ、思い出すだけでも体が震える!)

風王(僕に、この感覚を与えてくれるのは君しか居ない!)

風王(……だから、絶対に君は死なせない)

風王(……生きて、僕に――)

  ・  ・  ・

地王『あー……なんだ……これで拭け、遠慮するな?』

  ・  ・  ・

風王「……!」ゾクゾクッ!


風王(――恥辱と、生の実感を与え続けてくれ!)

  ・  ・  ・

地女「……変に真面目で、プライドが高かった分……な?」

勇者「……歪んだのか」

地女「趣味嗜好は自由だが、奴は特殊でなぁ」

勇者「……まともな奴だと思ったのに……!」


地女「だからな……いくら俺でも、ちょっと責任を感じるのだ」

地女「まあ……これ以上は、な?」

地女「プライバシーというものは、大切にしなければいかん」


勇者「……ああ、そうだな」

地女「……だが、奴のお陰で助かったのだ!」

勇者「……まあ、今後は十分気をつけよう」

地女「うむ!」

勇者「風の四天王に関しては……まあ、頑張れ」


地女「……光の勇者よ」

地女「地属性の俺では……風属性の奴に、今はもう対抗出来ん」

地女「……いざという時は、頼むぞ」

地女「本当に責任は感じるが……ちょっと、本当に勘弁なのだ」


勇者「物凄くお似合いな気がしたが……」


勇者「……苦手属性は、しょうがねえよな」



おわり

書きます


水の四天王「祝福の聖女よ、式が中止になりましたわ」

祝福の聖女(以下、聖女)「えっ、婚約発表の式が……ですか?」

水の四天王(以下、水王)「ええ、何者かが侵入して……」

聖女「そ、それって一大事じゃないですか!?」

水王「……そうですわね」


水王「この私――水の四天王の顔も潰してくれましたの」

水王「犯人を捕らえたら……ふふっ、どうしてくれましょうね!」


聖女「と、とりあえず落ち着きましょう! ねっ!?」

水王「はぁ……全く、事後処理も大変でしたのよ」

聖女「水の四天王さん……お疲れ様です」

水王「うふふっ、貴女のその言葉だけでも癒やされますわ」

聖女「そ……そうですか?///」


水王「ええ、貴女のお陰でこれからも頑張れそうですわ」

水王「彼の――地の四天王の領地を侵略するのを!」グッ!


聖女「それは良かった……」

聖女「……って、侵略!?」

聖女「えっ!? 四天王同士で……戦争ですか!?」

水王「うふふっ、まあ……ある意味ではそうですわね」

聖女「だっ、大丈夫なんですか!? そんな事して!」

水王「勿論、抜かりはありませんわ」


水王「地の四天王の領地の民達も……ええ」

水王「とても、感謝してくれているんですのよ」


聖女「か……感謝……?」

聖女「し、侵略で……戦争なんですよね?」

水王「貴女は、私と地の四天王の領地が隣なのはご存知?」

聖女「はい……知っています」

水王「それで……彼は、今不在でしょう?」


水王「その隙を突いて、ね?」

水王「――水の四天王が居ると、地の領地はとても助かる」

水王「……と、地の領地の民達が思う様に行動してるんですの!」


聖女「それって……どういう事ですか?」

水王「具体的には、上下水道設備の充実ですわね」

聖女「は、はあ……」

水王「あとは、農耕に必要な河の流れを操作したり……」

聖女「……えっと、つまり」


水王「地の領地の民達に、感謝の言葉と共に聞かれますの」

水王「――水の四天王様は、地の領地のためにどうしてここまで……?」

水王「……うふふっ! なんてね!」


聖女「……外堀を埋めてるってことですか!?」

水王「私、聞かれたらこう答えるようにしてますの」

聖女「な、何て答えてるんですか……?」

水王「……うふふっ!」

聖女「……!」


水王「――貴方達は、彼の愛する領地の民達ですもの」

水王「――ならば、彼が不在の時に私が動くのは当然ですわ」

水王「……ってね! うふふっ!」


聖女「物凄く色んな憶測が飛び交いそうな返しですね!?」

水王「この間も、街を視察していたら言われましたの……」

聖女「なっ、何て!? 何て言われたんですか!?」

水王「小さな子供と言うのは、時に驚くような事を言いますわよね……」

聖女「えっ?」


水王「――地の四天王様と、水の四天王様っていつ結婚するの?」

水王「……ですって! うふふふっ!」

水王「私、驚いてしまって! もう! うふふっ!」


聖女「小さな子供まで、そういう風に思ってるんですか!?」

水王「周囲に居た大人達は、慌ててしまって……」

聖女「他の領地を収める四天王相手……ですもんね」

水王「けれど、小さな子どもに罪はありませんわ」

聖女「水の四天王さん……」


水王「だから、ね?」

水王「その子の頭を撫でながら――」

水王「――残念ですけど……水の四天王の私でも、わかりませんの」

水王「――地の四天王様に、聞いてくださいな」

水王「……と、微笑み、許してあげましたわ」


聖女「……想像しただけで和やかになります!」

水王「それを見ていた、伝統の職人の方が居ましてね?」

聖女「地の領地で、伝統と言うと……」

水王「石工や、彫刻ですわね」

聖女「そうでした! 本当に、見事な細工ですよね!」


水王「その……職人の方達がね?」

水王「広場に建っている、地の四天王の像の隣に……」

水王「私の――水の四天王様の像を立てる……と、盛り上がってしまって」

水王「……うふふっ! 困ってしまいましたわ!」


聖女「……」

聖女(すみません、魔王さん……今だけは……!)


聖女「……もおおおお! 困ってる顔じゃないですよー!」

水王「けれど、彼の像よりも大きく作ると言っていたんですの!」

聖女「えっ? それって……良い事じゃないんですか?」

水王「……いいえ、そんな事はありませんわ」

聖女「えっ?」


水王「――私は、支えに来たのです」

水王「――決して、あの方より目立とうとは思いません」

水王「……ねっ? わかるでしょう?」


聖女「すっ、凄いです! えっ、あっ、あっ、わっ!」

聖女「わ、私も……その台詞、どこかで使って良いですか!?」

水王「……結局、そのお話はお断りしましたわ」

聖女「えっ!? どうしてですか!?」

水王「……言い出した職人の方達が、ね?」

水王「地の四天王の像を作った方達だったみたいで……」

聖女「……どう断ったんですか?」


水王「――腕の悪い職人には、頼めませんわ」


聖女「ええっ!? そんな事言っちゃったんですか!?」


水王「――広場の、地の四天王の像を見れば……腕はわかります」

水王「――地の四天王は、もっと凛々しい顔立ちですわ」


聖女「うう――っ!?/// 聞いてるこっちが恥ずかしいです!///」

水王「なので、今は……地の四天王の像を作り直してますの」

聖女「えっ、と……出来はどうなんでしょう?」

水王「私も、その原因なので見に行きはするんですけれど……」

聖女「その言い方だと、見られてないんですか?」


水王「私の意見を全て聞いたら、別人になってしまう、って」

水王「……うふふっ! だから、出来てからのお楽しみなの!」


聖女「もーっ、水の四天王さんったら!///」

聖女「ふふっ……似てない様に見えても、怒っちゃ駄目ですよ?」

水王「けれど……彼の妹が問題なのです」

聖女「えっ? 地の四天王に……妹さんが居たんですか?」

水王「ええ、とても可愛らしい子ですのよ」

聖女「へええ……でも、問題って?」


水王「――義姉上、と」

水王「‘まだ’そう呼んではいけないと、何度も言うのに……うふふっ!」


聖女「もう、妹さんも攻略済みなんですか!?」

水王「彼の両親は、もう遠方でご隠居なさってますし」

聖女「えっ、それじゃあ……」

水王「彼が不在の今、留守を預かっているのは彼の妹ですの」

聖女「それは……大変そうですね」


水王「当然、不慣れな事もありましたわ……」

水王「けれど、水の四天王の私もフォローしましたもの」

水王「……あの兄には勿体無い――と、言われていますわ!」


聖女「……」

聖女「水の四天王さん、あのっ……!」

水王「? どうかしましたの?」

聖女「……!」


聖女「もし! もし……恋敵が出てきたら、どうしますか!?」


水王「……祝福の聖女?」


聖女「お願いします、答えてください!」


水王「……」

水王「――当然、戦いますわ」


聖女「……!」

聖女「ま……魔法の撃ち合いとか、ですか」

水王「えっ!? そ、そんな事しませんわよ!?」

聖女「えっ!? そ、そうなんですか!?」

水王「もうっ! 貴女は、とんだ勘違いをしていますわ!」


水王「――水の四天王の戦いは、とても静か」

水王「それは……恋の戦争と言えど、同じ事ですわ」

水王「……うふふっ!」

水王「陣地の形成は……もう、済んでいましてよ?」


聖女「……水の四天王さん」


水王「まあ、最悪の場合は武力行使をしますけれどね?」


聖女「やっぱり、勘違いじゃなかったじゃないですかー!」

  ・  ・  ・

光の勇者(以下、勇者)「おい」

大地の魔女(以下、地女)「んー?」モグモグ

勇者「寝転がって菓子を食いながら返事をするな!」

勇者「お前……そういえば、自分の領地は良いのか?」


地女「うむ!」

地女「俺の配下の者達は、出来る者達が揃っているからな!」

地女「ふはは! それは、俺を見ればわかるだろう?」


勇者「ああ……お前が頭でも、うまく機能してたんだもんな」

勇者「気になったりはしないのかよ?」

地女「それは、まあ……多少はな?」

勇者「たまには、見に行かなくて良いのか?」

地女「大丈夫だろう」


地女「俺の――地の四天王の領地の民達」

地女「奴らは、心配せずとも大丈夫だ」

地女「ふっ……何せ、俺が帰るべき場所の者達だしな!」


勇者「……早く問題を片付けて、帰ってくれよな」

地女「ふむ……その時は、お前も遊びに来い!」

勇者「勇者を遊びに招く四天王が何処に居る!」

地女「ふはは! 罠の可能性を恐れているのか!」

勇者「罠の方が気分的にマシだよ!」


地女「俺の妹は、この姿の俺に似て美少女だぞ!」クネッ!

地女「お前が祝福の聖女にフラれたら、紹介してやろう!」


勇者「余計なお世話だ!」

勇者「地の四天王! 俺は、お前とは違う!」

勇者「……って、お前妹居たのかよ!?」


地女「……はっはっは!」


地女「何にせよ、領地に戻る時が楽しみだな!」



おわり

書きます


火の四天王「剣の乙女、お前に大事な話がある」

剣の乙女(以下、乙女)「あら、思ったよりも元気そうじゃない」

火の四天王(以下、火王)「……ああ、まあな。それで、話というのは――」

乙女「――待って」

火王「? 剣の乙女?」


乙女「……火の四天王」

乙女「随分と雰囲気が違うけれど……何があったの?」


火王「っ!? す、鋭いな……」

火王「それは……これからする話に関わりがある」

乙女「……ふぅん?」

火王「その……だな……!」

乙女「……随分と、言いにくそうね」


乙女「……当ててあげるわ」

乙女「火の四天王、貴女――‘女’になったわね?」


火王「っ!!?」

火王「すっ、鋭すぎないか!!?」

火王「なっ、何故それがわかった!?」

乙女「脚さばき、雰囲気、そして……魔力が増しているもの」

火王「……それでわかるのは、お前位なものだろうな」

乙女「もう、話はわかったわ」


乙女「貴女……私を笑いに来たんでしょう!?」

乙女「光の勇者は――光の加護」

乙女「祝福の聖女は――愛の祝福」

乙女「剣の乙女は――鉄の処女、って!」


火王「鈍い!!!」

火王「私が、そんな事でお前を笑う筈がないだろう!?」

乙女「良いのよ、わかってるわ」

火王「全然わかっていないぞ!?」

乙女「良いのよ、慣れてるもの」


乙女「男には――あれだけ美人で‘まだ’って……なんか怖くね?」

乙女「……とか!」

乙女「女には――剣の道を歩いてるのに、バージンロード歩いてるよね」

乙女「……とか!」

乙女「……陰で、散々言われてきたんだから!!」


火王「剣の乙女! おっ、落ち着いてくれ! 頼む!」

火王「私は、お前を笑ったりなどはしない!」

乙女「相手は誰? 中止になった、婚約発表の相手?」

火王「ち、違う! お……お前の……よく知る人物だ」

乙女「私の、よく知る人物……?」


乙女「……」

乙女「……光の勇者?」


火王「あああ、違う違う!」

火王「光の勇者ではない! 良いか!? 違うからな!?」

火王「ほら! い、居るだろう!?」

乙女「私のよく知る人物となると……ねえ、まさか……?」

火王「その……だ、大地の魔女だ……!」

乙女「……ねえ、待って頂戴」


乙女「それが本当なら……」

乙女「……大地の魔女のお姉様は――」


乙女「――おちんちんが、生やせるって事?」


火王「ま、まあ……ある意味では」

火王「しかし、何というか……真剣な顔で、その単語はやめてくれるか?」

乙女「もしかして、婚約発表の場を壊したのも……お姉様?」

火王「……そう、だな」

乙女「そして、貴女を‘女’にした……と?」

火王「……ああ///」


乙女「――閃!」

ヒュッ―!


…ゴガァァンッ!


火王「っ!?」

火王(何という剣速だ! それに、離れた場所の岩を真っ二つに……!)


乙女「……」

乙女「……火の四天王、ここからは偽りは許さないわ」

火王「……ああ、無論だ」

乙女「少し、移動しましょう」

火王「私は……此処でも構わない」


乙女「? 何を言ってるの?」

乙女「あの、斬った岩の所まで行くわよ」


乙女「――それで、どんなだったか描いて教えて頂戴」


火王「……か」

火王「描いて教える!?」

乙女「貴女、絵は得意かしら?」

火王「まあ……苦手ではないが……」

乙女「だったら、早く……ん、この小石で良いわね」

火王「まっ、待て! 私に、何を描けと!?」


乙女「そんなの、決まってるでしょう」

乙女「大地の魔女のお姉様の――おちんちんよ」


火王「剣の乙女!? お前、本気で言っているのか!?」

乙女「……敵を知り己を知れば、百戦危うからず」

火王「こ、小石を握らせないでくれ!」

乙女「? なら、どうやって描くつもり?」

火王「描くつもりは無い!」


乙女「良いじゃないの!! 描いて教えてよ!!」

乙女「もおおおおお!! もおおおおお!!」

乙女「ねえ、火の四天王!! あのね!!?」

乙女「私が!! 怒ってないと!! 思ってるの!!?」


火王「すっ、すまない! 描く! 描くから、落ち着いてくれ!」

乙女「出来るだけ、正確に描いて頂戴」

火王「……静と動が、ハッキリしているな」

乙女「ねえ、早くして」

火王「……どうしてこうなってしまったんだ……!?」


火王「た、確か……こんな感じ、で」

カリカリ…


乙女「……嘘でしょう?」


火王「こう……だったぞ(ボワッ)///」

カリカリ…


乙女「……絵が下手過ぎて、全然わからないわ!!」

乙女「ねえ、私は何を描いてと言ったか覚えてる?」

火王「お、おちん……お、覚えている!(ボワッ)///」

乙女「他の物を描いてとは、言ってないわよ?」

火王「わ……わかりやすいかと思ったんだ!」


乙女「火の四天王、貴女――……」

乙女「……」

乙女「口頭と……こう、手で教えて頂戴」


火王「可哀想な物を見る目を向けないでくれ!」

乙女「長さは?」

火王「な、長さは……こ、この位?」

乙女「!? ふ、太さは!?」

火王「確か……こ、この位だった気がする」


乙女「……」ジィッ


火王「どうした?」


乙女「いえ、そこに……こんなのが入ったのかと」ジィッ


火王「!?(ボワッ)///」

火王「そういう目を向けるのもやめてくれ!(ボワッ)///」

乙女「や、やっぱり痛かった?」

火王「喜びで、体の昂ぶりが凄くて……(ボワッ)///」

乙女「ど、どんな風に? ねえ、どうやって?」

火王「こう、私が上になって……(ボワッ)///」


乙女「うっ、上になって!?」

乙女「……うう、上になって!?」


火王「この話は、そろそろやめにしてくれないか!?(ボワッ)///」

火王「大事な話があると言っただろう!?」

乙女「そんな……ええっ……?/// う、上に……?///」

火王「剣の乙女、戻ってきてくれ!」

乙女「……え、な……何?」


火王「――剣の乙女」

火王「お前は人間で、敵だが……私にとって、大切な友人だ」

火王「だから――」


火王「――こちら側に、付く気は無いか?」


乙女「……」

乙女「……残念だけど、それは出来ないわ」

火王「……やはり、そうか」

乙女「ええ、私がこう答えると……わかってたでしょう?」

火王「……まあ、な」


火王「それd」


乙女「じゃあ、話を戻すわね」

乙女「上に乗って……あ、貴女が腰を振ったの?」ジィッ!


火王「~~~っ!(ボワッ)/// 剣の乙女!(ボワッ)///」

火王「お前は、どうしてそう……そっちに話を行かせたがる!?」

乙女「だ、だって……仕方ないじゃないの!」

火王「何が仕方ないんだ!?」

乙女「……だって!」


乙女「こんな事を聞けるの、貴女位なんだもの!」

乙女「他に、誰に聞けって言うの!?」


火王「つ、剣の乙女……」


乙女「世界を救う勇者パーティーの一員の――剣の乙女が!」

乙女「おちんちんや、初体験の事を誰に聞けるって言うの!」


火王「す、すまない……確かに、お前の言う通りだ」

乙女「私だって……怖いものは、怖いの」

火王「……わかった」


火王「――この、火の四天王!」

火王「お前のために、出来うる限りの事はしよう!」


乙女「火の四天王……!」


火王「お前には……色々と借りもあるからな」


乙女「じゃ、じゃあ――」

乙女「私の時は、一緒に居てくれる!?」


火王「……」

火王「えっ!!?」

  ・  ・  ・

光の勇者(以下、勇者)「おい」

大地の魔女(以下、地女)「んー?」パタパタ

勇者「寝転がって足パタパタさせて本読んでんじゃねえ!」

勇者「お前……火の四天王は、どうなったんだ?」


地女「うむ!」

地女「よくわからんが、時間が欲しいらしい」

地女「愛と友情と仕事と……とにかく、板挟みだそうなのだ」


勇者「……その点、お前は悩みがなさそうだな」

地女「何を言う、俺とて悩みの一つや二つはある」

勇者「お前の行動からすると、少なすぎるぞ?」

地女「悩んでいても、始まらんしな」

勇者「……で? その、悩みってのは何だよ?」


地女「いや、最近……剣の乙女がな?」

地女「――私も、覚悟しています」

地女「と言ってくるのだが……何の覚悟かわからんのだ」


勇者「……くれぐれも、これ以上ややこしくするなよ?」

地女「まあ……時が来れば、自ずと分かるか」

勇者「……お前、考えるのやめたな?」

地女「うむ! なるようにしかならんからな!」

勇者「どうしてそんなに楽観的になれるんだよ!」


地女「ふはは! それが俺の長所なのだ!」

地女「並大抵の輩には、真似出来んだろうがな!」


勇者「真似したいとも思わねえよ!」

勇者「地の四天王! 絶対に、パーティー内で揉めるなよ!?」

勇者「……最近、祝福の聖女も時々様子が変になるし……!」


地女「……はっはっは!」


地女「光の勇者よ、存分に思い悩むが良い!」



おわり

書きます


大地の魔女「祝福の聖女よ、相談とは何だ?」

祝福の聖女(以下、聖女)「……すみません、急に呼び出して」

大地の魔女(以下、地女)「なぁに、気にすることはない!」

聖女「……お姉ちゃん」

地女「うむ! お姉ちゃんに、何でも相談するが良い!」


聖女「……」

聖女「……奇跡が……起きちゃったんです」


地女「……」

地女「奇跡?」

地女「奇跡が起きたのなら、良い事では無いか?」

聖女「はい……そう、なんですけど……」

地女「祝福の聖女よ、何を暗い顔をしているのだ?」

聖女「……」


聖女「……」

聖女「……子供が……出来たんです」


地女「……」

地女「……何だと?」

地女「誰が?」

聖女「……私に」

地女「誰との?」

聖女「ゆ、勇者様とのです!」


地女「それは――」


聖女「っ……!」ビクッ!


地女「めでたいではないか!!」


聖女「……」

聖女「えっ?」

地女「光の勇者は、その事を知っているのか!?」

聖女「い、いえ……まだです……」

地女「ふはははははっ! 奴が、父親か!」

聖女「あ……あのっ!」


聖女「おっ……怒らないんですか!?」


地女「何故だ!?」


聖女「え……ええっ!?」

地女「怒る理由が、何処にあると言うのだ!?」

聖女「で、でもっ!」


聖女「私達は、世界を救う旅をしてる最中なんですよ!?」

聖女「そ、それなのに……妊娠だなんて……!」


地女「子を授かった事を喜ばぬ世界など滅びれば良いのだ!!」

地女「ええい! 何ならば、この手で直々に滅ぼしてくれる!!」


聖女「……!」

聖女「お……お姉ちゃん……!」ポロポロッ

地女「あああ……!? な、何故泣く……!?」

聖女「わ、わた……ふ、不安で……!」ポロポロッ

地女「……大丈夫だぞ、何も不安になる事など無い」

聖女「だ……誰にも、言えなくっ……て……!」ポロポロッ


地女「大地の魔女の――お姉ちゃんの胸で好きなだけ泣くのだ」

地女「……ほうれ、触り心地の良い美乳だぞ!」

ぎゅっ!

聖女「っ……! うっ、えええっ……!」ポロポロッ


地女「……」

地女(……ぬうう! どうしたものか!?)

  ・  ・  ・

聖女「……えへへ、いっぱい泣いちゃった///」

地女「うむ!」

聖女「……ありがとう、ちょっとスッキリした」

地女「はっはっは! おかげで、服がビショビショだ!」


聖女「……お願いがあるの」

聖女「この事は……誰にも言わないで」


地女「……」

地女「……むう」

地女「誰にも言わず、どうするつもりだ?」

聖女「……パーティーを抜けて、隠れて過ごすつもり」

地女「何だと?」

聖女「だって……子供が出来たって、バレたら――」


地女「うむ」

地女「お前は、確実に狙われるだろうな」

地女「光の勇者と、祝福の聖女の子など……生かしておく訳にはいかん」

地女「魔の者にとっては、天敵の様な存在だからな」


聖女「……うん」

地女「だがな? お前が抜けて、どうなる?」

聖女「えっ?」

地女「抜けた後のパーティーの事を考えてみるのだ」

聖女「それは……」


地女「うむ」

地女「祝福の聖女が不在のパーティーなど、取るに足らんな」

地女「最初の内は良いかもしれんが、次第に厳しくなるだろう」

地女「それ程までに、お前の存在は大きい」


聖女「……」

地女「まあ、お前もそれがわかっていたのだろう?」

聖女「うっ……ふぅっ……!」ポロポロッ

地女「あああ! 責めているのではないぞ!」

聖女「で……でもっ……!」


地女「一緒に、考えるのだ」

地女「なぁに、大抵の事はなんとかなるものだからな!」


聖女「……ふふっ」

聖女「お姉ちゃんが言うと……本当に、そんな気がしてくる」

  ・  ・  ・

地女「……」

地女(今日は、それぞれが考えて、明日……という事になったが)


地女「……どうしたものかなぁ」


地女「……」

地女(地の四天王として考えるならば――またと無い好機)

地女(聖女を庇いながら戦う勇者を仕留め……)

地女(後は、残った剣の乙女と祝福の聖女を殺す……と)


地女「光の加護も、愛の祝福も無くなり――」

地女「――多分、色々バレて俺も死んでしまうなぁ」


地女「……どうしたものかなぁ」

地女「むう……!」


地女(闇の魔王様は、祝福の聖女を友人と仰っているが……)

地女(むう……どう動かれるか、わからんな)


地女「むうう……!」


地女(他の四天王達も……どう動くかわからん)

地女(……ええい、女心は理解出来ぬ!)


地女「むううう……!」


地女(剣の乙女は? そもそも、光の勇者の加護はどうした!)

地女(この俺――地の四天王が、追い詰められているではないか!)


地女「……ええい! わから――んっ!!」

地女「俺は、こういった小賢しい事は考えられんのだ!」


地女「大地の魔女として生きようとも!」

地女「追い詰められていき……俺は死ぬ!」

地女「光の勇者、祝福の聖女、剣の乙女……」

地女「……誰が欠けても、俺は死ぬ!」

地女「そもそも!」


パァァ……ァァァ


地の四天王(以下、地王)「正体が、地の四天王とバレている!」

地王「そして、勇者達を全滅させたら……俺は死ぬ!」

地王「酔った勢いで、ヤっちゃったので……」

地王「……痴情のもつれで、俺は死ぬ!」


地王「……ぬあああん! どうすれば良いのだ――っ!?」

地王「何か……何か無いものか……!?」

地王「こう、良い感じに……」


地王「勇者達の旅が休止しつつ……」


地王「魔王様達も、動きを止め……」


地王「……俺が! 生き残る方法は!」


地王「……」


地王「ええい、駄目だ!」

地王「思いつく考えは、どれも最終的に俺が死ぬ!」

地王「ぬうう……! どうすれば良いのだ……!?」


―ガチャッ

勇者「おい、微妙に外に声が漏れて――」


地王「おっ、おのれぇ……光の勇者……!」

地王「この俺をここまで追い詰めるとは……!」


勇者「……はっ?」


地王「! 現れたな、このクズめ!」


勇者「はあっ!?」

勇者「……」


…バタンッ!


勇者「――おい! 誰がクズだ! 誰が!」

地王「ええい、お前以外に居らんだろうが!」

勇者「お前が言える台詞じゃねえよ!」

地王「何を言っているのだ!」


地王「父親になるとも知らず、のほほんとしおって!」

地王「……」

地王「今の無し!」


勇者「……」

勇者「はっ?」

地王「地の四天王、何も言っていない」

勇者「何だその一人称!? おい、もう一度言え!」

地王「地の四天王、何も言っていない」

勇者「そっちじゃねえよ! 父親とか言ったよな!?」


地王「……光の勇者よ」

地王「祝福の聖女には、誰にも言わないでと言われたのだ」

地王「だから……なっ? この通り、なっ?」


勇者「な……何で……! よ、よりによって……!」

勇者「お前の口から聞かされなきゃいけねえんだよおおおおお!?」

勇者「おい、何でお前がそれを知ってる!?」

地王「俺が、聖女のお姉ちゃんだからだ」

勇者「……聖女の所へ行ってくる!」

地王「っ!?」


地王「待て! 行って、どうするつもなのだ!?」


勇者「抱き締めるに決まってんだろうが!!」


地王「うむ!! 行け、光の勇者よ!!」

  ・  ・  ・

地王「いやぁ~……どうしたものかなぁ」

地王(勇者のあの様子なら……旅の休止は受け入れられるだろうな)


地王「……だがなぁ」

地王(腹が出てくれば、確実にバレるからなぁ)

地王(下級の魔族でも、数が多ければ凌ぎきれんだろうしなぁ)


地王「……むうう」

地王「どうしたものかなぁ」

地王「ぬうう……!」


闇の魔王(以下、魔王)「地の四天王よ、どうした?」


地王「!? ま、魔王様!」

魔王「魔王様、だと?」

地王「! も、申し訳ありません……!」


魔王「二人きりの時は……ハニー、と」

魔王「そう、呼ばないと拗ねると言った筈だが?」


地王「も、申し訳ありません……ハニー……!」

地王「し、しかし……恐れながら!」

魔王「どうした? 其方は、何を恐れる?」

地王「は……ハニー呼びは、流石に恥ずかしいのです!」

魔王「何を言う」


魔王「其方は――余の、彼ピッピであろう?」モジモジ

魔王「ハニーと呼ぶは、当然の義務と知れ」モジモジ


地王「は……はっ!」

魔王「だが……余の影に引き込まれても、気付かぬとは」

地王「い、いつの間に!?」


魔王「地の四天王よ、椅子になれ」


地王「……御意!」

…どすっ!

地王「……さ、どうぞ」


魔王「うむ」

…ぽすんっ


魔王「地の四天王の玉座は――城の玉座よりもほっこりするな」


地王「……勿体なきお言葉」

魔王「して……其方は、何を考えていた?」

地王「いえ……大した事ではありませぬ」

魔王「余の魔眼を欺けると思っているのか?」

地王「っ……!」


魔王「余ではない、他の女の事で思い悩むとは……」

魔王「……地の四天王よ、其方に罰を与える」


地王「ば、罰……ですか……!?」


魔王「――今日は、敬語を禁ずる」


地王「な、何と……!? 敬語を……!?」

魔王「余の命に、逆らうつもりか?」

地王「では、普通に話させて貰うぞ」

魔王「……ふふっ、それで良い」

地王「しかし、ハニーよ」


地王「毎回、このやり取りをする必要があるのか?」

地王「最近、ちょっとまどろっこしく思ってきたのだ」


魔王「……ある!」

魔王「これをやらぬと……その、上手く切り替えが出来ぬ!」

魔王「それで? 其方は、何を悩んでいた?」

地王「……それは、秘密なのだ」

魔王「何? 余にも言えぬ事なのか?」

地王「言えんなぁ……」


魔王「もしも、余以外の……他の女の事だった場合――」

魔王「――今、言わねば……」

魔王「誰のとは言わぬが、命は無いと思え?」


地王「祝福の聖女の事なのだ!」

魔王「そうか……祝福の聖女、か」

地王「うむ」

魔王「お姉ちゃんと呼ばれ、慕われているそうだな」プクー!

地王「……」


地王「うむ……お姉ちゃん、困っているのだ」

もにっ、もにもにっ

魔王「ぷふっ! んむむむっ……ん~っ」


地王「……はぁ、困ったのだ」

魔王「……頬のもにもにを続けよ」

魔王「祝福の聖女の事で、悩んでいる……と」

地王「うむ……こんなに悩むとは、思わなんだ」

魔王「……不愉快だな」

地王「?」


魔王「祝福の聖女は、余の……ゆ、友人」

魔王「だが、其方は余の事だけ考えて居れば良い」

魔王「……ふふっ、喜べ」


地王「ぬう……?」


魔王「地の四天王よ、祝福の聖女に関する悩み」

魔王「……闇の魔王が――滅してやろう」



おわり

書きます


闇の魔王「祝福の聖女よ、余の魔眼は欺けぬ」

祝福の聖女(以下、聖女)「っ……!」

闇の魔王(以下、魔王)「ふふっ、そう構えるな」

聖女「貴女は、私を……どうするつもりですか……!?」

魔王「何、少しばかり話をするだけだ」


魔王「その、子の――」

魔王「――名前は考えているのか?」


聖女「……き」

聖女「気が早すぎやしませんか!?」

聖女「それに……祝福の聖女と、光の勇者様の子なんですよ!?」

魔王「ああ、聖なる力を其方の内から今でも感じるぞ」

聖女「っ……!?」


魔王「さて、では――」

スッ―


聖女「影から……それは、魔導書!?」


魔王「――この書から、名付けの方法を学ぶが良い」


聖女「……」

聖女「えっ!?」

魔王「どうした? 祝福の聖女よ、受け取れ」

聖女「あ……ありがとう、ございます」

魔王「礼は要らぬ」


魔王「さて、では――」

スッ―


聖女「影から……無数の魔導書が!?」


魔王「――結婚の情報に関する書」

魔王「――妊娠、出産に関する書」

魔王「――育児に関する書」

魔王「ふふっ……余は、一通り揃えている」


聖女「か……数が多いので、とりあえずしまってください!」

聖女「え、ええと……!?」

魔王「この様な時、男は頼りにならぬと言うからな」

聖女「そ、それは……はい、よく聞きますね」

魔王「ならばこその、備えよ」


魔王「祝福の聖女よ」

魔王「何かあれば……何時でも余を頼れ」


聖女「……魔王さん……!」

聖女「本来、敵である私を……見逃してくれるんですか?」

魔王「其方は、何を言っている?」

聖女「えっ? だ、だって……」

魔王「……ふむ」


魔王「――闇の魔王に、敵など居らぬぞ」

魔王「何人足りとも、余の前では無力」

魔王「我が闇の魔力は――全てを呑み込むのだから」


聖女「ぜ、絶望的な台詞なのに……それが頼もしい!」

魔王「力の差を知り、まだ抗うと言うのなら……それも良かろう」

聖女「わ、私達は……人間は、負けません!」

魔王「ほう、面白い」

聖女「……!」


魔王「ならば――三年の時を与える」

魔王「それだけの時があれば、赤ちゃんに関しても落ち着……」


聖女「えっ!?」


魔王「……それだけの時があれば、余を楽しませるだけの」

魔王「――戦いになる程度には、力を付けられよう」


聖女「……」

聖女「……闇の魔王さんっ!」

  ・  ・  ・

光の勇者(以下、勇者)「――クソッ! 一体、何を話してるんだ!?」

地の四天王(以下、地王)「光の勇者よ、心を鎮めるのだ」

勇者「だけど! 聖女と魔王が、二人きりなんだぞ!?」

地王「だが、今のお前に何が出来ると言うのだ」


地王「……光の勇者よ」

地王「俺は――既に、死を覚悟しているぞ」


勇者「地の四天王……まさか、お前……!?」

勇者(魔王を裏切って……こちら側について、戦うつもりか!?)


地王「……」

地王(酒を飲んで寝ている内に、全て解決しておらんかなぁ)

聖女「で、でも……他の魔族が、黙ってないと思うんです」

魔王「余の意に反し、其方を襲う者が出てくると?」

聖女「……はい」

魔王「ふむ……そうかも知れぬな」


魔王「ならば、全て滅ぼすか?」

魔王「余は、地の四天王が――」

魔王「――彼ピッピが居れば、それで良い」


聖女「そ、それは……暴君すぎませんか!?」

聖女「それとあと、教えたのは私だけど……彼ピッピ呼びはやめません!?」

  ・  ・  ・

勇者「地の四天王……お前、良いのか?」

地王「良いも何も、こうなっては仕方が無いのだ」

勇者「っ……!」

地王「心残りがあるとすれば……」


地王「光の勇者よ」

地王「お前と、心ゆくまで存分に酒を酌み交わしたかったぞ」


勇者「っ……地の四天王っ……!」

  ・  ・  ・

聖女「だ、だけど……もし、そうなっても……」

魔王「人間側が――其方が子を生む事を良しとせぬ、か」

聖女「はい、私が……しばらく、戦えなくなりますから」

魔王「ふむ……」


魔王「やはり、全て滅ぼすか」

魔王「そう……全てをな……!」


聖女「そ、それもちょっと!」

聖女「あのっ! 一度、滅ぼす所から離れませんか!?」

  ・  ・  ・

勇者「……馬鹿野郎、何言ってやがる」

地王「む?」

勇者「酒なんか、いくらでも飲めば良いじゃねえか」

地王「……光の勇者?」


勇者「最後まで、諦めるんじゃねえ」

勇者「お前は――光の勇者の仲間だろ?」


地王「っ……光の勇者……!」

  ・  ・  ・

魔王「だが、滅ぼさぬとなると……少し面倒だな」

聖女「……」


魔王「勇者の一行が、旅を中断せざるを得ず……」


魔王「そこに、迂闊に手を出せぬと思う状況……」


聖女「そんな状況……!」


魔王「――ある」


聖女「……」

聖女「えっ?」

  ・  ・  ・

勇者「……行こう、二人の所へ」

地王「……まあ、逃げられはせんだろうからな」


地王「――むん」

パァァ……ァァァ

大地の魔女(以下、地女)「はあ……どうしてこうなったのだ」

地女「……光の勇者よ」

地女「お前の光の加護を……頼りにしているぞ」


勇者「……ああ、任せとけ」

勇者「っと……こういう時は、やっぱり言っておくべきだよな」


地女「む?」


勇者「地の四天王よ、助けてくれ」

  ・  ・  ・

地女「――地の四天王よ、助けてくれ」キリッ!

勇者「お前! 本当もうマジでやめろってえええええ!!」

地女「はっはっは! 良いではないか、良いではないか!」

勇者「クソッ……チクショウ……!」


地女「さすがは、闇の魔王様だ!」

地女「まさか、あんな案を思いつくとはな!」

地女「やはり男は駄目だな、男は!」


勇者「お前も男だろうがよおおおおお!!」

勇者「っていうか、どうして聖女と魔王があんなに仲が良いんだよ……!」

地女「ぷくく! お前の顔、傑作だったぞ!」

勇者「っぐ……うおお……!」

地女「床に、正座させられ――」


地女「――考えの足りぬ男だな」

地女「――己が欲望を制御出来んとは」

地女「――其方は、それでも光の勇者か?」

地女「……と、魔王様に説教されているお前の顔はだ!」


勇者「ふっ……ぐうおお……!」

地女「うむ、だが……奇跡は仕方無いよな? うむ、奇跡は」

勇者「変ななぐさめすんなよ!」

地女「お前も、避妊魔法は使っていたのだろう?」

勇者「その……盛り上がって、雰囲気で……」


地女「――この、馬鹿者が!」

地女「男側が魔法を使うのがエチケットだと教えたではないか!」

地女「それに、女の言う――大丈夫――は、信用するなと!」

地女「お前の油断が、この事態を招いたのだ!」


勇者「言い返せないからって……ここぞとばかりに……!」

地女「だが――魔王様の智謀には恐れ入ったぞ!」

勇者「ああ……本当にな」

地女「うむ!」


地女「大地の魔女に――地の四天王が封印された事にする」

地女「こうなれば……魔族は、迂闊に手を出せぬ」

地女「何せ、この俺を封印する程の力があるのだからな!」

地女「この、地の四天王を!」


勇者「だが……それと引き換えに、大地の魔女も大量に魔力を失った」

勇者「それに気付かれないよう、一時的に身を隠す」

勇者「……地の四天王を封印する程の力の持ち主だ」

勇者「人間側としても、無理をさせて失うのは大きな痛手になる」


地女「うむ!!」

地女「主要な者達に、声をかけておく必要があるがな!」

勇者「……ああ、そうだな」

地女「と、言うわけで……ちょっと行ってくるのだ!」

勇者「いやお前、軽く言ってるけど大丈夫か!?」


地女「光の勇者よ、案ずるな!」

地女「俺から説明しないと、納得せぬ者も居るだろう」

地女「それにな? ほら……あれだ」

地女「色々と、バレちゃうかも知れんしな?」


勇者「俺は、そっちの心配をしてんだよ!」

地女「無論、わかっている」

勇者「本当にわかってんだろうな!?」

地女「うむ! 俺は、この計画の要だからな!」

勇者「……そうじゃねえよ」


勇者「……地の四天王」

勇者「お前は、俺と思いっきり酒を飲むんだろう?」

勇者「だから――必ず、生きて帰って来いよ」


地女「……ぬうっ……不覚!」

地女「この地の四天王をキュンとさせるとは……!」


勇者「キュンとか言うんじゃねえよ気持ち悪ぃな!!」

地女「浮気は――聖女のお姉ちゃんとして、許さんぞ?」

勇者「するわけねえだろ!」

地女「妊娠中に娼館に行くのはセーフか、話し合っておけよ?」

勇者「行くわけねえだろ!?」


地女「……うむ! それでこそ、俺が見込んだ男!」

地女「光の勇者よ、やはりお前は天晴な奴だ!」


勇者「ああもう、わかったら行ってこい!」


地女「だが、お前に……一つだけ忠告しておこう」

地女「――酒は、飲んでも呑まれるなよ?」


勇者「良いからさっさと行けってんだよおおおおお!!」



おわり

書きます


地の四天王「光の勇者よ、俺は無力だった」

光の勇者(以下、勇者)「地の四天王!? もう戻ってきたのか!?」

地の四天王(以下、地王)「……うむ」

勇者「無力だった、って……何があったんだ?」

地王「俺には……もう、何も出来ぬ状況だったのだ」


地王「……地の領地、水の領地、火の領地、風の領地」

地王「どこも、顔を出したら結婚せざるを得ない感じになっていたのだ!」


勇者「……」

勇者「はあっ!?」

勇者「待て待て! どうしてそうなった!?」

地王「俺は、まず自らの領地――地の領地に向かった」

勇者「ああ……妹さんに、留守を頼むって話だったな」

地王「……ところがな」


地王「俺の留守中に、水の四天王が妹を懐柔していたのだ!」

地王「俺の屋敷に、何故か水の四天王の部屋があったのだ!」


勇者「滅茶苦茶入り込まれてるじゃねえか!?」

勇者「それ、本当に水の四天王の部屋だったのか!?」

地王「間違いない! これを見るが良い!」

勇者「……ん? なんだコレ……?」

地王「うむ!」


地王「水の四天王の、お気に入りの下着なのだ!」

地王「見ろ! 水の魔力で編まれた、スケスケの下着だ!」


勇者「自宅で下着泥棒して帰ってきてんじゃねえええええ!!」

地王「水の四天王はナイスバディな上、この下着……そそるぞ~?」

勇者「あ、ああ……って、そういう話じゃねえだろ!?」

地王「加えて、広場の俺の像の隣に……水の四天王の像が建っていたのだ」

勇者「……えっ?」


地王「なのでな? 見つかったらマズイと思い、撤退した」

地王「すまぬ……成果は、この下着しか無い」


勇者「お前、本当にそれは心の底から謝ってくれ!!」

地王「そして、水の領地の――水の四天王だ」

勇者「!? 水の四天王に会ったのか!?」

地王「はっはっは! そんな訳が無かろう!」

勇者「そうだよな! 外堀埋められまくってるもんな!」


地王「色々と、仕事の引き継ぎをしているようだったな」

地王「水の四天王は――嫁に来る準備を着々と進めているようだ」


勇者「なんか……本当に、地に足ついた生き方してんな」

地王「まあ、なので……次に行ったのだ」

勇者「次って言うと――火の四天王だな」

地王「うむ」

勇者「火の四天王なら、割と話が簡単に行ったんじゃないか?」


地王「それがな? 火の領地に踏み入ったらな?」

地王「火龍王に決闘を申し込まれたのだ」


勇者「……」

勇者「はああっ!?」

勇者「火龍王って、火の四天王の父親にか!?」

地王「うむ! 先代の、火の四天王なのだ!」

勇者「それで……ど、どうなったんだ!?」

地王「うむ!」


地王「――我を倒さねば、娘には会わせぬ!」

地王「……と、言われてな」


勇者「お前……それ、よくある‘アレ’じゃねえか!!」

勇者「お前のような奴に娘はやれん、とか言われたんだろ!?」

地王「おおっ! 光の勇者よ、よくわかったな!」

勇者「やっぱり、プロポーズした事になってんじゃねえか!!」

地王「うむ……それには、俺も慌ててな」


地王「――ならば、帰る!」

地王「……と、一旦出直そうとしたのだ」

地王「火龍王には……幼き頃から、世話になっているからな」

地王「そんな、恩のある相手をボコる訳にもいくまい?」


勇者「いや……それ! それ、お前……!?」

地王「すると、火龍王は怒り狂ってな……」

勇者「そうだろうな! 父親の立場なら、怒るよな!」

地王「プロポーズは誤解だ、と言おうとしたのだがな?」

勇者「言ったのか!?」


地王「……言えなかったのだ」

地王「――火の四天王と、その母君が突然現れてな」


勇者「……陰で見てたんだろうな」

地王「もう怒る怒る……怒りに釣られて火山も噴火してな」

勇者「……妻と娘に怒られる父親、か」

地王「絶え間ない口撃に、火龍王も為す術が無かったぞ」

勇者「それで……お前は、どうしたんだよ?」


地王「――また今度、出直して来て!」

地王「……そう、二人に言われてな」

地王「助けを求めるような火龍王の視線を振り切り、撤退した」


勇者「その状況なら……まともに話も出来なさそうだしな」

地王「そして、俺は風の領地――風の四天王を訪ねたのだ」

勇者「流石に、風の四天王は話がスンナリ行ったよな!?」

地王「まあ……話すには、話したぞ!」

勇者「? 何か、ひっかかる言い方だな」


地王「身を隠す間、風の領地に留まる事を条件に出された」

地王「風の四天王の狙いは、恐らく――事実婚なのだ」


勇者「いや……えっ、そうなのか!?」

勇者「純粋に……善意とかじゃないのか?」

地王「残念だが、それは無いぞ」

勇者「いや、そんなのわからねえだろ!?」

地王「光の勇者よ、風の四天王を甘く見るな」


地王「奴は――風の結界を用意していた」

地王「地属性の俺では……その結界の出入りは出来ぬのだ」


勇者「……お前、さりげなく一番の危機だったのか!?」

地王「ふはは! だが、みすみすやられる俺では無い!」

勇者「まあ……此処に居るってことは、逃げられたんだもんな」

地王「うむ!」

勇者「お前……どうやって逃げたんだよ?」


地王「――お前は、良い嫁になりそうだな!」

地王「と、そう言って照れている間に颯爽と撤退した」

地王「……死中に活を見出したのだ!」


勇者「お前……邪推だったら、自分で自分の首を締めただけだぞ!?」

地王「しかし、まあ……風の四天王の協力は取り付けた……な?」

勇者「ああ、まあ……そうだな」

地王「水の四天王は顔を合わせられず……火の四天王は保留だ」

勇者「……それで、こんなにすぐ帰ってきたのか」


地王「……こんな成果では、おめおめと帰れなかった」

地王「己の無力を嘆いた俺は――酒場へと赴いたのだ」


勇者「……」

勇者「待て」

地王「久々の酒は美味かった! ああ、美味かった!」

勇者「お前……飲んで、どうした!?」

地王「銘酒『竜殺し』! スルリとした飲み口で、カパカパいけた!」

勇者「酒の感想なんか聞いちゃいねえんだよ!」


地王「朝起きたら見知らぬ女がベッドに居たのだ!」

地王「薄らぼんやりと、ヤっちゃった記憶があるのだ!」


勇者「なんでお前はそうなんだよおおおおお!?」

勇者「お前! それでどうしたんだ!?」

地王「うむ! その女が寝てる間に逃げてきたぞ!」

勇者「このクズ! んあああもう、このクズ!」

地王「大丈夫だ! 俺が、地の四天王とはバレていない! 多分!」


地王「それでな? 確か……」

地王「雷の――勇者だったか、女帝だったかと言っていたのだが……」

地王「光の勇者よ、どちらだと思う?」


勇者「俺に聞くんじゃねえよおおおおお!!」

勇者「お前って奴は……どうしてだよ!?」

地王「うむ……俺も、自分で自分が恐ろしい」

勇者「いっそ、全部話した方が早いんじゃねえか!?」

地王「光の勇者よ、何を言っている!」


地王「和平など、有り得ぬ!」

地王「――全滅か!」

地王「――先延ばしか!」

地王「既に……和解など出来ぬ状況なのだ!」


勇者「お前のせいでな!」

地王「それでな? 先延ばししている間に、なっ?」

地王「良い感じに、時が解決してくれると……俺は信じているのだ」


勇者「クソッ……どうして、こんなにややこしくなったんだ!」


地王「――光の勇者よ、すまぬな」

地王「俺が、酔ってヤっちゃったばかりに、迷惑をかけている」


勇者「本当にな!?」


地王「だが……そのおかげで、こうして気安く話せる仲になれた」

地王「その点に関しては、俺に感謝しても良いのではないか?」


勇者「うるせえよ!……うるせえよ!!」

地王「何にせよ、あまり時間は残されていない」

勇者「まあ……そうだな」

地王「祝福の聖女のお腹が目立つ前に、何とかせねばな!」

勇者「……本当にな!」


地王「さて……それでは」

パァァ……ァァァ

大地の魔女「――明日に備えて、今日はもう寝るか!」


勇者「くそっ……どうしてこうなったんだ……!」

  ・  ・  ・

祝福の聖女(以下、聖女)「……という訳なんです」

剣の乙女(以下、乙女)「……なるほどね」

聖女「すみません……迷惑をかけちゃいますよね」

乙女「何を言ってるのよ、水臭い」


乙女「――赤ちゃんと、光の勇者との結婚」

乙女「祝福の聖女……本当に、おめでとう」



聖女「ふふっ……ありがとうございます」

乙女「旅が中断している間……私達が、貴女も守るわ」

聖女「剣の乙女さん……」

乙女「光の勇者と、私と……大地の魔女のお姉様の三人で、ね」

聖女「本当に……ありがとうございます……!」


乙女「猶予は三年、でしょう?」

乙女「それだけあれば……私も、お姉様との子供を授かれると思うの」

乙女「だから、私も感謝してるわ」


聖女「……はい?」


乙女「ふふっ! きっと――奇跡が起きると思うのよね!」


聖女「……」

聖女「えっ!?」



おわり

書きます


地の四天王「光の勇者よ、世話になった!」

地の四天王(以下、地王)「俺とお前は、本来ならば敵同士!」

地王「だが、お前は……そんな俺を救ってくれた!」

地王「お前が居なければ、とうに俺の命は尽きていただろう!」

地王「……ふっ」


地王「光の勇者よ! 例え、敵同士であろうとも……」

地王「お前は……俺の――真の友だ!」


地王「友よ、本当に世話になった!」

  ・  ・  ・

光の勇者(以下、勇者)「……まあ、そうだな」

勇者「だけどな? 地の四天王」

勇者「なんで……こんな朝っぱらから、そんな事を言うんだ?」

勇者「……と、いうか――」


地王『む、ちょっと待つのだ光の勇者よ』

地王『酔い止め? 何を言う!』

地王『この俺は、酒には酔うが船酔いなどせぬわ!』


勇者「――お前はどこに居んだよおおおおお!?」

勇者「起きたら、お前の痕跡は綺麗サッパリなくなってるし!」

勇者「大体、どっから思念波飛ばしてんだ!? 酔い止め!?」

勇者「地の四天王! まさかとは思うが……」

勇者「――全部放り出して、逃げる気じゃねえだろうな!?」


地王『光の勇者よ』

地王『大地の魔女として、お前達と……仲間と過ごした日々!』

地王『俺は、決して忘れる事はないぞ!』


勇者「待て! 待て待て待て待て! 待て!!」

勇者「お前、ふざっ……ふざけんなよ!?」

勇者「計画にしても、まだお前の仕事が残ってんだろうが!」

勇者「せめて、それを片付けてからにしろよ!」

勇者「やる事をやってからだろ!? なあ、おい!!」


地王『光の勇者よ、後は任せた!』

地王『……と、引き継ぎは果たされた!』

地王『お前ならば、見事やり遂げてみせるだろう!』


勇者「ふっざけんじゃねえぞこらあああああ!?」

勇者「お前は、真の友と言っておきながらそういう事するのか!?」

勇者「状況が状況なら、感動する台詞だよ!」

勇者「けどなぁ! この状況で言われても怒りしか湧かねえよ!」

勇者「さっさと戻って来い! 冗談じゃねえぞ!?」


地王『光の勇者よ、何を言っているのだ』

地王『――俺とお前は、本来ならば敵同士!』 

地王『……と、言う訳でな?』

地王『お前を困らせる事に、何の躊躇いもない!』


勇者「……こんのクズ野郎があああああ!!」

  ・  ・  ・

地王「まあ、俺とてこの決断をするのは躊躇った」

地王「……だが!」

地王「俺は、気付いた! 気付いちゃったのだ!」


地王「――あれ?」

地王「何がどう転んでも、俺が死ぬ状況になっているな?」

地王「……とな!」


勇者『俺がぶっ殺してやるから戻って来いやあああああ!!』

  ・  ・  ・

勇者「そもそも、お前が原因だろうが!」

勇者「勇者に尻拭いを頼む四天王が何処に居る!?」

勇者「っつーか、友とかいう発言はどうしたんだよ!」

勇者「お前、友に対する仕打ちがこれか!?」


地王『ほう! クラーケンが出るかも知れぬと!』

地王『ふはは! 酒のツマミにしてくれるわ!』


勇者「聞けよお前はよおおおおお!?」

勇者「……もうキレた」

勇者「ああ、上等だよ! 地の四天王!」

勇者「お前の所業を洗いざらいぶちまけてやるよ!」

勇者「そうすりゃ、魔王や四天王達がお前を追うだろうからな!」


地王『光の勇者よ、やめておくのだ』

地王『――何故、お前がそれを知っているのか?』

地王『と、いう流れになったらな? なっ? わかるだろう?』

地王『――俺の次に詰んでいるのは、お前なのだ』


勇者「……どチクショウがあああああ!!」

  ・  ・  ・

地王「それになぁ……嫌な予感がするのだ」

地王「こう、何と言うかな?」


地王「――今が、限界」


地王「――これ以上は、必ず誰かが不幸になる」


地王「……とな」

地王「まあ! その、誰か、の中に俺は確実に含まれているが!」


勇者『今は俺が不幸の真っ最中だよこらあああああ!!』

地王「――光の勇者よ!」

地王「お前は、この俺が見込んだ男!」

地王「どんな苦難にも負けず、未来を掴み取る!」

地王「――真の勇者だ!」


地王「それに……お前は、父親になるのだろう」

地王「へこたれている暇など……あるまい?」


勇者『余計なお世話だよくそったれえええええ!!』

  ・  ・  ・

勇者「あああもう! 何て言えば良いんだよ!?」

勇者「聖女は魔王と仲良くなってて……」

勇者「剣の乙女も、火の四天王と……」

勇者「それに! 他の四天王にも何て言えば!」


地王『光の勇者よ、案ずる事は無い!』

地王『お前が、良い感じに立ち回り……ほとぼりが冷めた頃!』

地王『――俺は、必ず戻ってくる!』

地王『お前と酒を酌み交わし……お前と聖女の子を見に、な』


勇者「まるっきり俺任せじゃねえかあああああ!!」

  ・  ・  ・

地王「ふはは! ならば、今一度言おう!」


地王「光の勇者よ、助けてくれ!」


地王「……と、言うわけで俺はもう船に乗り込む」

地王「なので、別れの挨拶はこれで終わりなのだ」


地王「――船に乗り遅れる訳にはいかんからな!」

地王「そして!」

地王「――もし出港が遅れでもしたら、気まずいのでな!」


勇者『なんでそういう所はまともなんだよお前はよぉ!?』

  ・  ・  ・

地王「まあ、なんだ」

地王「――待っていてくれ、必ず戻る」

地王「……とか言っておけば大丈夫なのだ! 多分!」

地王「それでは――光の勇者よ、さらばだ!」

地王「また、相まみえる日を楽しみにしているぞ!」


勇者『っ!? おい、ちょっとまっ』


地王「はい、終了……と」

地王「……さて」


地王「船室に行き、たらふく酒を飲んでくれるわ!」

地王「はっはっはっ! はぁ―――っはっはっはっ!!」

  ・  ・  ・

勇者「おい! ちょっ……おい、マジでか!?」

勇者「……」

勇者「マジでかぁ……!?」

勇者「……」


勇者「本当に……俺がやるしかねえのか……!?」

勇者「アイツの……超弩級の尻拭いを……!?」


勇者「……」


勇者「こんな事になるなら……!」


勇者「最初から、奴を倒しておくんだった……!」

  ・  ・  ・

地王「……う……むむ」

地王「……ふわぁぁあ……む」

地王「……」

地王「あー……たらふく飲んで、寝てしまったのだ」


地王「……む?」


地王「船室で飲んでいた筈なのだが……」


地王「……むうう?」



地王「俺は、どうして砂浜で寝ているのだ?」



おわり

書きます


光の勇者「地の四天王、戻って来るなよ」

光の勇者(以下、勇者)「……頼むぞ、本当に」

勇者「……」

勇者「顔も見たくない、ってのは正直ある」

勇者「……」


勇者「地の四天王、本当に頼むぞ」


勇者「……お前が戻って来たら――」


勇者「――地獄が始まる」

  ・  ・  ・

祝福の聖女(以下、聖女)「ふんふん~ん♪」

聖女「……ふふっ!」


聖女(突然居なくなっちゃって……悲しかったけど)

聖女(でも――帰って、来るんだよね)

聖女(大地の魔女の……お姉ちゃん)

聖女(戻って来るの……楽しみだなぁ)


聖女「お姉ちゃん……闇の魔王さんとは、もう知り合いだから――」

聖女「――水の四天王さんも紹介したいな!」


聖女「それで、光の勇者様と、剣の乙女さんと……」

聖女「……私達の赤ちゃんと、皆で……えへへ///」

  ・  ・  ・

闇の魔王(以下、魔王)「……ふふっ」

魔王「地の四天王よ……まさか、余をも欺くとは」


魔王(隠れ潜む間、余の側近として傍に置こうとしていたのだが)

魔王(計画が露見せぬ様、念には念を……という訳か)

魔王(ふっ……余は、きっと引き止めてしまっただろうな)

魔王(……地の四天王よ)


魔王「――其方は、今何処に居る?」

魔王「嗚呼、何故……余は、こんなにも苦しい思いをせねばならん」


魔王「……戻ったら、この苦しみの代償を支払って貰わねば」

魔王「ふふっ……地の四天王――其方自身で、な」

  ・  ・  ・

水の四天王(以下、水王)「……ふぅ」

水王「地の四天王は……貴方は、まだ戻らないのね」


水王(けれど――待っていてくれ、必ず戻る)

水王(貴方がそう言ったらしいと……魔王様にお聞きしましたわ)

水王(皆の前では、戻ってこなくても良いと……虚勢を張るのが精一杯)

水王(けれど……次に貴方の顔を見た途端、涙が溢れてしまうでしょうね)


水王「――早く、戻ってきてくださいな」

水王「地の領地の民も、妹君も……祝福してくれますわ」


水王「……戻ったら、皆に二人で言いましょうね」

水王「私達が――愛し合っている、と」

  ・  ・  ・

剣の乙女(以下、乙女)「――閃!」

乙女「……少し、休むか」


乙女(お姉様……あんまりよ)

乙女(恋人である私と、顔も合わせず行ってしまうなんて)

乙女(……けれど、もし面と向かって言われたら)

乙女(……私は、無理にでも貴女に着いて行ってしまったでしょうね)


乙女「……大地の魔女のお姉様」

乙女「貴女の思惑通り――戻るまで、私が聖女を守るわ」


乙女「その役目が終わったら……きっと」

乙女「私達にも――愛の奇跡が起きるわよね」

  ・  ・  ・

火の四天王(以下、火王)「……はぁ」

火王「地の四天王……私の、愛しい人」


火王(パパは……ママと二人で叱り倒しておいたぞ)

火王(――言ってみたかった)

火王(……なんて、そんな理由だったんだからな)

火王(そもそも……婚約の話も、パパが最初に言い出したのに!)


火王「お前は……私を奪いに、単身乗り込んできてくれた」

火王「あの時の喜びが、今でも私に力を与えてくれる」


火王「……戻ったら皆に……剣の乙女に二人で言おう」

火王「地の四天王――大地の魔女は……火の四天王と結婚する、と」

  ・  ・  ・

風の四天王(以下、風王)「どれ、少し味見……」

風王「……少し薄いけど、その方が良いかな」


風王(――お前は、良い嫁になりそうだな!)

風王(地の四天王……君は、恐ろしい男だよ)

風王(まさか、この僕が……料理の練習をするだなんて、ね)

風王(それもこれも……全部、君が悪いんだ)


風王「君を逃さないための風の結界に気づいていながら……」

風王「僕にあんな言葉をかけた意味が……わからない筈、ないだろ?」


風王「ははっ! エプロン姿は……気に入ってくれるかな?」

風王「君が戻ったら……誰を犠牲にしてでも、二人で居ようね」

  ・  ・  ・

勇者「……お前がきっかけで、結ばれた友情もあった」

勇者「……」

勇者「それが無ければ、俺と聖女も……ただの仲間のままだった」

勇者「……ああ、驚いたよ」


勇者「――勇者様が浮気しても、私は怒りませんよ」

勇者「――全身の毛穴から血が吹き出し、激痛で発狂しますから」


勇者「……感謝はしてるさ!  ああ、凄くしてる!」

勇者「だけど……何か……! 何かなぁ!?」

勇者「……だけど、地の四天王」

勇者「……」

勇者「お前が戻ってきたら……全部、終わるんだ」

勇者「……」


勇者「地の四天王よ」

勇者「頼むから……帰って来ないでくれ……!」


勇者「それが……俺の望みだ……!」

  ・  ・  ・

地の四天王(以下、地王)「帰りたい! 今すぐにでも、帰りたい!」

地王「ええい、何なのだこの島は!」

地王「何故、溢れんばかりの聖なる力に包まれている!」

地王「おかげで、思念波も全く使えん!」


地王「伝説の、妖精達の楽園でもあるまいに!」


地王「泳いで離れようとしても、島の反対側についてしまう!」

地王「これでは、島から離れることすら出来ぬではないか!!」

地王「何が楽園だ、図に乗るな!」

地王「まあ、確かに? 素晴らしい場所ではあるが?」

地王「俺は――」


地王「――肉が食いたい!」


地王「それに何より――酒が飲みたい!」


地王「どちらも無い島でなど、バカンスにならんわ!」

地王「……ええい!」


地王「魔法で、島を海の底に沈めてやろうか!」

地王「そのためには……島の中央に行く必要があるな」

地王「あのでかい樹が……恐らく、島の中央か」

地王「……何とも見事な」

地王「もしもこの島が妖精達の楽園ならば……あれは世界樹か」


地王「まあ、だからどうしたという事も無いな!」

地王「俺は、一刻も早く酒が飲みたいのだ!」


地王「酒よ、待っていろ!」


地王「この地の四天王、すぐにでも舞い戻るぞ!」



第一部 おわり

暇つぶしに蛇足書いてましたが、第二部の予定は一切ありません
全員の死亡フラグ立てての島流しENDです
続き書きたい人が居たら、書いちゃっておkです

三日三晩反省したので、全然違うの書いて練習します


狼男「勇者達に相談がある」

女勇者(以下、勇者)「ワンコが……相談?」

女魔法使い(以下、魔法)「どうしたの、ワンコ」

女僧侶(以下、僧侶)「ワンコちゃん?」


狼男「……確かに、仲間になる時に好きに呼べと言った」

狼男「……」

狼男「いや、その話は今は置いておこう」

狼男「相談というのは、戦闘中の事だ」


勇者・魔法・僧侶「戦闘中の事?」

勇者「別に……問題なんてある?」

魔法「無い、いつも安定してると思う」

僧侶「私も、そう思いますけど……」


狼男「君達にとっては問題では無いかも知れない」

狼男「……」

狼男「しかし、私にとっては改善したい事がある」

狼男「手間を取らせてしまって済まないが……」


勇者・魔法・僧侶「……」

勇者「良いよ! ワンコは、大事な家族だから!」

魔法「私も。家族を大事にするのは、当然」

僧侶「はい!……あっ、家族会議ですね!」


狼男「……仲間で」

狼男「パーティー会議という認識で頼む」

狼男「まず、勇者」

勇者「えっ、僕?」

狼男「ああ、そうだ」

勇者「えっと……何かな?」


狼男「私が、敵に効果的な攻撃を与えた時」

狼男「――その都度、小さな干し肉を放らないで欲しい」


魔法「そんなことを……」

僧侶「……してたんですか?」


勇者「……え、えへへ!」

魔法「でも、そんな素振りは見られなかった」

僧侶「いつの間にそんな事を?」


勇者「こう……ナイス! ってさ」


魔法「親指を立てて……」

僧侶「……よく言ってますね」


勇者「あれ……親指で、干し肉をワンコの方に弾いてたんだよね」


魔法・僧侶「……」

勇者「でも、本当に小さい干し肉だよ!?」

魔法「そういう問題じゃない」

僧侶「そうですよ! 危ないです!」


狼男「勇者、二人の言葉をよく聞いてくれ」


魔法「オヤツのあげすぎは、良くない」

僧侶「ちゃんとゴハンが食べられなくなります!」


狼男「勇者、二人の言葉は聞かなくて良い」

狼男「戦いの最中、隙を作るべきではない」

勇者「……うん、そうだね」

狼男「ありがとう、わかって貰えて良かった」


勇者「今度から、一匹倒した毎にするね!」

勇者「だから、今までよりも大きめな干し肉で!」


狼男「勇者、そうではない」

狼男「頻度と、干し肉の大きさは関係ない」

狼男「……次に、魔法使い」

魔法「私も?」

狼男「ああ、そうだ」

魔法「何?」


狼男「敵のモンスターを火の魔法で倒した時」

狼男「――その都度、焼き加減を報告しないで欲しい」


勇者「焼き加減を……」

僧侶「……報告?」


魔法「……」

勇者「確かに……何か、言ってるよね」

僧侶「小さな声で、戦闘中だから……」


魔法「ワンコなら、聞こえるから」


勇者「ワンコ、耳良いもんね!」

僧侶「はい! ピンと立った耳が、可愛いですよね!」


魔法「でも、食べてくれた事はない」


勇者・僧侶「……」

魔法「どれだけ上手に焼けても、食べてくれない」

勇者「上手に焼けたは関係ないって!」

僧侶「そうです! 魔物を食べるなんて、駄目ですよ!」


狼男「魔法使い、二人の言葉をよく聞いてくれ」


勇者「オヤツじゃなくて、ゴハンじゃん!」

僧侶「ワンコちゃんには、ちゃんとゴハン買ってるんですから!」


狼男「魔法使い、二人の言葉は聞かなくて良い」

狼男「魔物には、体内に毒を持つものも居る」

魔法「……確かに」

狼男「ありがとう、わかって貰えて良かった」


魔法「今度から、しっかり中まで火を通す」

魔法「ベリーウェルダンなら、大丈夫」


狼男「魔法使い、そうではない」

狼男「よく焼けば良い、という話ではない」

狼男「……最後に、僧侶」

僧侶「わ、私もですか!?」

狼男「ああ、そうだ」

僧侶「な、何ですか……?」


狼男「回復魔法を詠唱中、私がカバーに入っている時」

狼男「――その都度、撫で回さないで欲しい」


勇者「魔法を唱えてる間……」

魔法「……撫で回してる?」


僧侶「……あ……あははは……!」

勇者「えっ? 何? ズルくない!?」

魔法「ズルい、卑怯千万」


僧侶「ま、マイナスイオン! マイナスイオンです!」


勇者「わかるけど! 僕だって撫でたい!」

魔法「私も、詠唱中は撫でる権利がある」


僧侶「じゃあ――今度から皆で撫でましょう!」


狼男「駄目に決まっているだろう」

勇者「ワンコ、すっごく毛並みが良いもんね!」

魔法「毎日のシャンプーの甲斐があった」

僧侶「はい! 栄養にも、気を使ってますもんね!」


狼男「三人共、私の言葉を聞いてくれ」


勇者「尻尾もさ、フワッフワだし!」

魔法「ブラッシングも完璧」

僧侶「癒やされますよねぇ~」


狼男「三人共、頼むから聞いてくれ」

狼男「僧侶の撫で方は、最近本格的になりすぎている」

僧侶「……そう、ですね」

狼男「ありがとう、わかって貰えて良かった」


僧侶「……詠唱中、無防備な私」

僧侶「撫でられて、お腹を上に向けてゴロンとなったワンコちゃん」

僧侶「――こうなれば、仲良しですね!」


狼男「僧侶、そうではない」

狼男「仲良くあの世行きになりはするが、そうではない」

狼男「勇者、魔法使い、僧侶」

狼男「君達の行動は、とても危険だ」

狼男「戦闘中は――戦闘に、集中するべきだろう」


勇者・魔法・僧侶「……」


勇者「――うん、わかったよ」

魔法「――ワンコが、そこまで言うなら」

僧侶「――今度から、気をつけますね!」


狼男「ありがとう、わかって貰えて良かった」

  ・  ・  ・

勇者「ほ~ら、干し肉だよ! 頑張ったねー!」

魔法「ホネは残した、好きに噛んで良い」

僧侶「ワンコちゃ~ん! モフモフさせて~!」


狼男「三人共、そうではない」

狼男「戦闘が終わったら良いと言う話では無い」


勇者・魔法・僧侶「……えっ?」

勇者・魔法・僧侶「言われた通りに我慢して……」

勇者・魔法・僧侶「……勝ったのに?」


狼男「……わかった」


狼男「今回は、私の負けだ」



おわり

反省点は山のようにあります
そこを修正したいので慣らし書き、って感じです


勇者「仲間を三人、全員男で」

店主「全員……男、ですか?」

勇者「ああ、全員男で頼むよ」

店主「職業の指定……ではなく?」

勇者「ああ、まずは男が第一条件だ」


勇者「女は駄目だ、絶対に」


店主「は、はあ……そうですか」


女達「……」

女戦士「――待ちなよ、勇者の坊や」

女戦士「女は駄目って、どういう意味だい?」


勇者「……そのままの意味だが」

店主「も、揉め事はやめてくださいよ!?」


女戦士「それは……そこの坊やの返答次第さ」


勇者「……」

女戦士「坊や、もう一度聞くよ」

女戦士「アタシは、剣の腕ならそこらの男に負けない」

女戦士「……それでも不服かい?」

女戦士「女だからって――舐めるんじゃないよ!」


勇者「……じゃあ、こっちも言わせて貰う」

勇者「男の性欲――舐めんじゃねえよ!」


女戦士「……」

女戦士「えっ?」

女戦士「そりゃ……どういう意味だい」

勇者「アンタは美人だし、それにセクシーだ」

女戦士「お、おう」

勇者「鍛え抜かれた肉体も、美しいの一言だよ」


勇者「そんなアンタがパーティーに居てみろ!」

勇者「前かがみになっちゃって、戦いにならないだろうが!」


女戦士「……」

女戦士「はあ」

女戦士「何だい……そんな事かい」

勇者「そんな事!? 一大事だろうが!」

女戦士「はっは! なら、アタシが夜の相手もしてやるよ!」

勇者「馬鹿な事を言うな!」


勇者「そんな事をしたら、好きになっちゃうだろうが!」

勇者「好きになったら、帰りを待ってて欲しくなるだろうが!」


女戦士「……」

女戦士「はい」

女戦士「体だけ、って訳にはいかないのかい?」

勇者「無理だ! 好きになっちゃう!」

女戦士「隣で戦って支え合う、って訳には?」

勇者「無理だ! 危機に陥ったら、ハラハラする!」


勇者「とにかく、アンタは駄目だ!」

勇者「これ以上話しかけないでくれ、好きになる!」


女戦士「……」

女戦士「お、おう」

勇者「……という訳で、全員男で頼む」

店主「勇者様の仰ること、少しわかりますよ」

勇者「女だと、途中でパーティーを抜けて貰う事になる」

店主「なら、最初から男だけの方が……ですか」


勇者「女は駄目だ、絶対に」


店主「男のメンバーを……見繕ってみます」


女達「……」

女魔法使い「――待って」

女魔法使い「私なら、その心配は無い」


勇者「……どういう意味だ?」

店主「あの、私に聞かないで頂けますか?」


女魔法使い「私は、他人に好かれるような性格じゃない」


勇者「……」

女魔法使い「好きになるのは、性格も考慮するはず」

女魔法使い「……女戦士は、性格も良い」

女魔法使い「けれど、私は彼女の様に優しくはない」

女魔法使い「――笑わない女なら、問題ない」


勇者「……性格が悪い? 笑わない?」

勇者「そんなの――笑顔が見たくなるだろ!」


女魔法使い「……」

女魔法使い「えっ?」

女魔法使い「私は、決して笑ったりしない」

勇者「ああ、今まではそうだったのかも知れないな」

女魔法使い「……」

勇者「性格も、どういう風に悪いかはわからない」


勇者「だけどキミがふとした瞬間笑ってみろ!」

勇者「そんなの、絶対に好きになっちゃうだろうが!」


女魔法使い「……」

女魔法使い「はあ」

女魔法使い「私は、笑ったりしない」

勇者「もういい! もう、やめてくれ!」

女魔法使い「戦闘だけでなく、探知の魔法も使える」

勇者「やめてくれって言ってるだろ!」


勇者「笑わないと言っておいて、笑っちゃう恋の罠だろ!」

勇者「そんなの、恋と言う名の落とし穴に落ちちゃうだろうが!」


女魔法使い「……」

女魔法使い「そう」

女魔法使い「なら……万が一笑う時は、顔を隠す」

勇者「逆効果だ! 好きになっちゃう!」

女魔法使い「性格が悪いのは、良いの?」

勇者「逆効果だ! 俺はどっちかと言うとMだ!」


勇者「とにかく、キミは駄目だ!」

勇者「これ以上話しかけないでくれ、好きになる!」


女魔法使い「……」

女魔法使い「……残念」

勇者「……という訳で、全員男で頼む」

店主「勇者様の仰ること、物凄くわかりますよ」

勇者「旅って言うのは、人間を変えるものだからな」

店主「やはり、最初から男だけの方が……ですね」


勇者「女は駄目だ、絶対に」


店主「すぐに、男のメンバーを見繕います」


女達「……」

女僧侶「――待ってください!」

女僧侶「私を仲間に……パーティーに入れてください!」


勇者「……」

店主「彼女は、顔も性格もスタイルも……実力的にも完璧ですね」


女僧侶「お願いします、勇者様!」


勇者「じゃあ、彼女が一人目で」


女僧侶「……」

女僧侶「えっ!?」

女僧侶「あれっ……い、良いんですか!?」

女僧侶「えっ、と……あ、あれっ?」

女僧侶「さっきまでみたいに、問答をしなくても?」

女僧侶「ええと……や、やったぁ~……?」


店主「宜しいんですか?」

勇者「ああ、全然タイプじゃない」


女僧侶「……」

女僧侶「な、なんか……なんかなんか!」

女僧侶「そ、そんなに私って魅力ありませんか!?」

勇者「えっと、その……ごめん」

女僧侶「謝らないでいただけますか!?」

勇者「……しょうがないだろ!」


勇者「なんか、パッと見で全然ピンと来ないんだから!」

勇者「好きになっちゃう可能性は無いな、って思うんだから!」


女僧侶「……」

女僧侶「……ぬぐうう……!?」

女僧侶「あっ……貴方みたいな失礼な人、初めてです!」

勇者「ごめんって! 謝ってるから良いだろ!」

女僧侶「やっぱりやめます! 仲間になりません!」

勇者「えっ、マジ? オッケ!」

女僧侶「~~っ! ちょっとは食い下がってくれませんか!?」


勇者「店主、やっぱり男三人で頼む」

店主「はい、こちらがリストになります」


女僧侶「そんなに!?……そんなに!?」

店主「しかし……淫魔の類の対策は?」

勇者「ああ、男を惑わすってアレだろ」

店主「男だけだと、最悪全滅の可能性が」

勇者「大丈夫だ、ちゃんと考えてある」


勇者「仲間になった男三人の内、一人の玉を潰す」

勇者「これなら――何の心配も無いだろ?」


男達「!!?」

店主「それは……また……」

勇者「だけど、確実な方法だ」

店主「まあ……そうですね」

勇者「一人の玉を潰すだけで、全滅を免れるしな!」


勇者「さあて……」

勇者「だ、れ、に、し、よ、う、か、な……」


男達「……!!?」

女僧侶「――待ってください」

女僧侶「勇者様のやり方では、誰も着いてきませんよ」


勇者「……何?」

勇者「そんな事無いよな!?」

勇者「世界と玉を天秤にかけるような男は、此処に居ないよな!?」


男達「……」フイッ


勇者「……」

勇者「あれっ!?」

勇者「おい、どうしたんだよ皆!」

勇者「まさか……玉を潰されるのが嫌なのか!?」


男達「……」


勇者「……おい、おいおいおいおい!」

勇者「お前ら、それでも男か!?」

勇者「我こそは、って奴は居ないのか!?」


男達「……」フイッ


勇者「……クソッ! 計画が水の泡だ!」

女僧侶「勇者様、諦めちゃ駄目ですよ」

勇者「えっ? いや、だけど……」

女僧侶「勇者様のさっきの言葉、とても感動しました」

勇者「は? さっきの言葉……?」


女僧侶「――世界と玉を天秤にかけるような男は、此処には居ない」


勇者「……」


女僧侶「……誰かさんの玉を潰せば、色々と問題が解決しますね?」


勇者「……」

勇者「ピンと来なかった理由がわかった」

勇者「店主……全員キャンセルで、一人で旅立つよ」

店主「一人で……ですか?」

勇者「ああ、俺の玉の安全が第一だ」

店主「旅の安全が犠牲になりますが」


勇者「俺の玉は駄目だ、絶対に」


女達・男達「……」

…ガタッ!


勇者「……店主、囲まれたぞ!?」


店主「敵は男女、全員ですね」



おわり

書きます


盗賊「止まれ、前方に魔物が二匹居る」

勇者「凄いな、わかるのか?」

僧侶「何も見えませんけど……」

戦士「アタシもサッパリだ」


盗賊「俺の目を甘く見るなよ」

盗賊「あの二匹は……番だな」


勇者・僧侶・戦士「……」

勇者「番ってことまでわかるのか」

僧侶「魔物の恋人……ですか」

戦士「恋人ねぇ……ただの番だろ?」


盗賊「あれは群れの戦士と、ボスの娘だな」

盗賊「どうやら、許されざる恋みたいだ」


勇者・僧侶・戦士「そこまで正確に!?」

勇者「どこでそんなの判断するんだよ」

僧侶「ゆ、許されざる恋……?」

戦士「待ちな、変に食いつくんじゃないよ」


盗賊「雄の方は、少し困ってるみたいだな」

盗賊「雌の方が、雄に縋り付いてやがる」


僧侶「ちょ……ちょっと様子を見ましょう!」

勇者・戦士「……」

勇者「様子を見るっつったって……」

僧侶「ちょっとだけ! ちょっとだけですから!」

戦士「はぁ……全くアンタって子は」


盗賊「! 待て!」

盗賊「雄が……雌を抱きしめたぞ!」


僧侶「! やりましたね!」

勇者・戦士「何が!?」

勇者「なあ、さっさと倒しに行こうぜ」

僧侶「勇者様!?」

戦士「ああ、もう良いだろう?」


盗賊「そうだな……雄の方は死を覚悟してるようだ」

盗賊「だから、今まで雌の気持ちに応えられなかったらしい」


僧侶「そんな……!」

勇者・戦士「や、やりにくい……!」

勇者「俺たちが来るって知ってたのか」

僧侶「魔物にとっては、死活問題ですもんね」

戦士「そんなの気にしてたらやってられないだろう」


盗賊「……チイッ!」

盗賊「奴ら、甘く……とろけるようなキスをしてやがる!」


勇者・僧侶・戦士「……」

勇者「……ちょっとだけ、待ってやるか」

僧侶「勇者様……! はいっ!」

戦士「……やれやれ、アンタ達は甘いねぇ」


盗賊「! 待て!」

盗賊「奴ら……交尾を始めるつもりだぞ!」


勇者・僧侶・戦士「!?」

勇者「こ、交尾……!?」

僧侶「あ、あうあ……!?///」

戦士「なあ……どうするんだい?」


盗賊「雄の奴、本能のままに交尾するかと思いきや……」

盗賊「――なんて丁寧な愛撫をしやがるんだ」


戦士「そっちの方は聞いてないよ!」

勇者「……」

僧侶「……///」

勇者「魔物にも、そういう理性はあるんだな」

僧侶「……///」

戦士「丁寧かどうかなんて、どうでも良いんだよ!」


盗賊「……なんてこった」

盗賊「雌の方が、焦らされて雄を押し倒しやがったぞ!」


戦士「アタシに喧嘩売ってるのかい!?」

勇者「落ち着け! 落ち着け、戦士!」

僧侶「お、女の子の方から……!?///」

勇者「あまり大声を出すと、敵にバレる!」

戦士「だ、って……ああもう、悪かったよ」

僧侶「そ、それから?/// それから?///」


盗賊「あれは……始まったな」

盗賊「遂に、本格的に交尾を始めやがった」


勇者・戦士「……」

僧侶「……!///」

勇者「まあ……雌の方が力が強い場合も多いしな」

僧侶「雌の方が体が大きい事も、少なくありませんしね」

戦士「……ふんっ! 情けない雄だねぇ!」


盗賊「いや……そうでも無いみたいだ」

盗賊「あの雄、下から雌を突き上げて――主導権を握ってる」


戦士「……や、やるじゃないか」

勇者「? どうした僧侶?」

僧侶「し、下から……!?/// 突き上げ……!?///」

勇者「……終わった瞬間を狙おう」

僧侶「……は、はい///」

戦士「……さっさと倒したい」


盗賊「凄い……流れるように体位を変えたぞ」

盗賊「今度は、雄が雌の上に――」

盗賊「っ!? なんて、ねっとりした腰使いなんだ……!」


勇者・戦士「……」

僧侶「……!/// ……!///」

勇者「……おい、冷静になるんだ」

僧侶「ね、ねっとり……!?///」

戦士「……駄目だね、聞いちゃいないよ」


盗賊「あの雄、緩急もつけてるな……」

盗賊「っ!? いや、待て!」

盗賊「雌の方も、負けじと腰を振り出したぞ!」


僧侶「そ、そそっそ、そんなっ……!?///」

戦士「勇者、この子をなんとかして正気に」

勇者「……俺がか!?」

勇者「僧侶」

ぽんっ!

僧侶「うひゃうっ!?/// ゆ、勇者様……?///」

戦士「……アンタらが始めたら、たたっ斬るからね?」


盗賊「……お前達、何をやってるんだ?」

盗賊「あの激しさ――そろそろ終わりが近そうだぞ」


勇者・僧侶・戦士「……」

勇者「相手は魔物だが……まあ、最期だからな」

僧侶「そ……そうですね。これも、神の慈悲ですから」

戦士「アンタ達……準備は良いかい?」


盗賊「よし、同時に果て――」

盗賊「――っ!? 何っ!?」


勇者「っ! どうした盗賊!?」


盗賊「そのまま、二回戦が始まった!」


僧侶「そ、そのまま……!?///」

戦士「ああもう、さっさと行くよ!」

  ・  ・  ・

盗賊「――まあ、コイツらも最期に愛を確かめ合ったんだ」

盗賊「そして、俺たちもやるべき事をやった」

盗賊「だから……そんなに自分を責めるな」


勇者「あれだけ、細かに実況するから……!」

僧侶「動物系の魔物だとばかり思ってましたけど……!」


盗賊「? どうして俺を睨んでるんだ?」


戦士「植物系の――まんま樹の形の魔物じゃないか!」


盗賊「! 見ろ!」

盗賊「倒れた雌から、もう子供が――新芽が出てる!」


勇者・僧侶・戦士「知らねえよ!」



おわり

書きます


女勇者「パーティー内の性の乱れ」

女勇者(……いつから、こうなってしまったか)

女勇者(今となっては、もう思い出せない)

女勇者(私達は、命がけの旅をしている仲間同士)


『もう……アタシ、我慢出来ない』

『おいおい、しょうがないな』


女勇者(……こうなる事は、必然だったのかも知れない)

女勇者(今日は、久々に街で宿泊)

女勇者(高級な宿じゃないけど、ベッドがある)

女勇者(昼間には、皆で浴場にも行った)


『ふふっ……もうビンビン』

『ああ、何せ溜まってたからな』


女勇者(……この宿、壁が薄いな)

エロ書くならR行かないとだめなの知ってるかな
こっちはエロNG

女勇者(声を抑えてって、注意した方が良いかな)

女勇者(……ううん、多分無駄だよね)

女勇者(だって……)


『ほら見て、アタシも……』

『ははっ、こりゃ凄いな』


女勇者(こういうの、本当に久々だから)

>>792
では、オチ書いてこのネタ終わります

  ・  ・  ・

男戦士「さあ、今日も張り切って行きましょ!」

男僧侶「……元気だねぇ」

男戦士「勿論よ! アタシ達、あんなに愛し合ったじゃないの!」

男僧侶「……そのせいで、こっちはクタクタだよ」


女勇者「ねえ、大丈夫?」

女賢者「ちょっと腰が……手、繋いで良い?」

女勇者「うん、勿論」


女勇者(パーティー内の性は乱れている)


女勇者(だけど、そんなに悪くない)



おわり

書きます


勇者「俺、実は武道家なんだ」

戦士「えっ!?」

賢者「はっ!?」

僧侶「へっ!?」


勇者「明日の魔王との決戦の前に、話しておこうと思って」


戦士・賢者・僧侶「遅い!!」

戦士「お前、今までは本気じゃなかったのか!?」

勇者「そんな事は無い」

戦士「! そうだよな! 何せ、伝説の剣も持ってるし!」

勇者「……その事なんだけどな」


勇者「……戦士」

勇者「明日は、お前がコレを使ってくれ」


戦士「やめろよ勇者! 伝説の剣を差し出すなよ!」

賢者「勇者、貴方……本当に武道家なの?」

勇者「ああ、実は」

賢者「でも、伝説の鎧を装備出来てるじゃないの」

勇者「……ああ、これな」


勇者「……伝説の鎧」

勇者「正直、重くて動きにくいと思ってたんだ」


賢者「謝って! 手に入れるため苦労した私達に謝って!」

僧侶「ほ、本当に武道家なんですか!?」

勇者「ああ、ごめんな」

僧侶「だ、だって! 伝説の盾もあんなに使いこなして!」

勇者「……ああ、あれか」


勇者「……実を言うとな」

勇者「見えないように、コッソリ手で捌いてたんだ」


僧侶「使いこなしてたのは、盾じゃなく体って事ですか!?」

戦士「だが! お前は、剣も使えるだろう!?」

勇者「使えなくは……無いけれども」

戦士「だろ!? 今まで、剣で敵を倒してきたじゃないか!」

勇者「……ああ、それは」


勇者「……こう、パッと剣から手を離してな」

勇者「ドカッと殴って、死んだ所を追撃で斬ってたんだ」


戦士「お前、そんな曲芸を今までやってたのかよ!?」

賢者「ねえ……伝説の鎧、邪魔なの?」

勇者「邪魔って程じゃ……無いけれども」

賢者「邪魔なのね!? あの苦労は何だったの!?」

勇者「……それには感謝してる」


勇者「……だから、ほら」

勇者「傷がつかないよう大事に保管しないと……な?」


賢者「決戦に着ていくつもりは無いって事ね!?」

僧侶「じゃ、じゃあ……私をかばってくれた時も!?」

勇者「こう、クルッと回し受けしてた」

僧侶「伝説の盾が役に立った事は無いんですか!?」

勇者「……いや、そんな事は」


勇者「回し受け出来ない攻撃とか、あるしな」

勇者「そういう時は……ほら、丈夫だし」


僧侶「傘感! いえ、正しい使いみちなんでしょうけど……傘感!」

戦士「お、お前は伝説の剣に選ばれたんだろう!?」

勇者「……あー」

戦士「その剣を引き抜いて、勇者になったんだ!」

勇者「……実は、さ?」


勇者「刺さってた台座が普通の岩だったから、さ」

勇者「……あ、誰にも言うなよ?」


戦士「砕いたんだな!? 台座の岩を砕いたんだな!?」

賢者「あの時の苦労は何だったの……!」

勇者「ごっ、ごめん……ごめんて」

賢者「謝らないで! 明日は、皮の鎧でも着るつもり!?」

勇者「……あ、いや」


勇者「皮の鎧もアレだし……」

勇者「少し前に買った、お気に入りの布の服で行こうかな、って」


賢者「決戦に、そんなカジュアルな感じで臨むつもり!?」

僧侶「で、でも! 伝説の盾は役立つんですね!?」

勇者「まあ……時には」

僧侶「絶対! 絶対、明日の決戦は役に立ちます!」

勇者「……そう、かな」


勇者「左手に持った盾で、攻撃を塞ぐよりも……」

勇者「左のジャブで、攻撃させる暇を与えない方が……」


僧侶「左のジャブで、平和な世界を勝ち取るんですか!?」

戦士「岩を砕いたんなら、お前は勇者じゃないのか!?」

勇者「あ、それは大丈夫だ」

戦士「わかってるのか!? 伝説の剣の重みを!」

勇者「……勿論だ」


勇者「この……伝説の剣が、俺に語りかけてきた」

勇者「――もう貴方が勇者で良いよ」

勇者「ってな」


戦士「伝説の剣、軽い!!」

賢者「どれ!? どの布の服!?」

勇者「この服だ」

賢者「これは、体に張り付くような服で……動きやすそうね」

勇者「……それだけじゃない」


勇者「体にフィットして、動きを阻害しないだけじゃない」

勇者「この布の服、なんと……汗の吸収性も凄いんだ」

勇者「更に――通気性も、抜群だ」


賢者「運動着じゃないの!!」

僧侶「じゃあ、剣も盾も! 鎧すら要らないんですか!?」

勇者「まあ……うん」

僧侶「勇者様は、身一つで決戦に臨むと!?」

勇者「……いや、違う」


勇者「俺には、皆という仲間が居る」

勇者「仲間との絆が……最大の武器だ」


僧侶「勇者様……!」

僧侶「……」

僧侶「あ、違う! 結局、勇者様は身一つですよね!?」

戦士「……決戦前の緊張を和ますための、冗談だろ!?」

勇者「戦士?」

戦士「俺には信じられねえ! 武道家だって、証拠を見せてくれ!」

勇者「……わかった」


勇者「はぁぁぁっ……!」

勇者「アァッタタタタタタタタタ! ホワチャァッ!」

勇者「……どうだ? 今の拳の連打は」


戦士「確かに凄まじい、が……掛け声はそんな感じなのかよ!」

賢者「……でも! 万が一、攻撃を受ける事もあるわ!」

勇者「賢者?」

賢者「不意をつかれたら、どうするつもり!?」

勇者「……その時は」


勇者「――硬っ!」

勇者「こうやって、己の生命エネルギーを高め、肉体を鋼と化す」

勇者「……伝説の剣なら、ギリギリ刃が通るかな」


賢者「伝説の剣でもギリギリなの!?」

僧侶「本当に……武道家なんですね」

勇者「ごめんな、今まで黙ってて」

僧侶「でも、どうして今になって……?」

勇者「……それは」


勇者「明日の決戦で、誰も失いたくないから……」

勇者「伝説の剣は――戦士」

勇者「伝説の鎧は――賢者」

勇者「伝説の盾は――僧侶」

勇者「……こう、それぞれ装備して欲しいんだ」


戦士・賢者・僧侶「……」

戦士「ま……そういう事なら、しょうがねえか」

勇者「戦士」

賢者「あ、この鎧って体型に合わせて形状が変わるのね」

勇者「賢者」

僧侶「この盾があれば、庇われなくても大丈夫です!」

勇者「僧侶」


勇者「……皆!」

勇者「明日の決戦は……絶対に、生きて帰るぞ!」


戦士・賢者・僧侶「おーっ!」

  ・  ・  ・

魔王「その伝説の剣……貴様が勇者か!」


戦士「いいや! この剣は借りてるだけだ!」


魔王「何? ならば……伝説の鎧を装備している、貴様か!」


賢者「いいえ! 私のこの鎧も、借り物よ!」


魔王「? な、ならば……伝説の盾を持つ、お前か!」


僧侶「違います! この盾は、私のじゃありません!」


魔王「!?」

魔王「ぬうう、誰が勇者なのだ!」

勇者「魔王! 俺が勇者だ!」

魔王「何、貴様が!? ええい、何とカジュアルな!」

勇者「……行くぞ、魔王!」


勇者「人々の願いが乗った、この拳で!」

勇者「必ずお前を――」


勇者「――撲殺してみせる!!」


戦士・賢者・僧侶「せめて『倒す』って言って!?」



おわり

書きます


勇者「魔王、こっちも切り札を使わせて貰う!」

魔王「はっはっは! 切り札だと?」

魔王「――笑止!」

魔王「ワシの真の姿の前では……全てが無力!」


勇者「来いッ!!」

―バッ!

勇者「勇者ロボォ――ッ!!」


魔王「……」

魔王「ロボ?」

ゴゴゴゴゴッ!


魔王「な、何だ……この地響きは!?」


ゴガァァンッ!


魔王「な、何だ!? 城の壁が!?」

魔王「きょ……巨大な手!?」


勇者「――とうっ!」


魔王「えっ、えっ、えっ、えっ!?」

勇者ロボ『待たせたな、勇者!』

勇者「いいや、良いタイミングだ!」

勇者ロボ『さあ、早く乗り込め!』

勇者「おうっ!」


パシュィ~ン…


勇者『――さあ、魔王!』

勇者ロボ『ここからが――』


勇者・勇者ロボ『本当の戦いだ!』


魔王「待て待て待て待て!!」

魔王「何だそれは!?」

魔王「巨大なゴーレムか!?」


勇者『違う! コイツは、俺の真の友!』

勇者ロボ『――熱き魂を持ち! 正義を愛する!』

勇者『――鋼鉄の勇者! その名も、勇者ロボ!』


勇者・勇者ロボ『悪を倒しに、只今参上!!』


魔王「世界観が違う!!」

魔王「さっきまで、剣と魔法で戦っていただろう!?」

魔王「何だ!? 踏み潰すつもりか!?」


勇者『……剣なら――あるッ! 勇者ロボ!』

勇者ロボ『オーケー、勇者!』

バッ!


勇者・勇者ロボ『来いッ! ブレイブ・ソォ――ドッ!!』


――キランッ!


魔王「何!? 何何何何!?」

魔王「な、何だ……!?」

魔王「魔王城の上空の暗雲が晴れて――」


…ズドシュウッ!!


魔王「――きょ、巨大な剣が降ってきた!?」


勇者ロボ『……ふんっ!』

ガシッ!


勇者・勇者ロボ『――待たせたな、魔王!!』

ジャキィィンッ!(キラーンッ!)


魔王「待て待て待て待てちょっと待て!!」

魔王「その剣の巨大さ……城も真っ二つになるぞ!?」

魔王「えっ、えっ……えええっ!?」


勇者ロボ『勇者! 魔王が混乱しているぞ!』

勇者『――騙されるな、勇者ロボ!』

勇者ロボ『何っ?』


勇者『あれは恐らく……俺達を油断させるための演技だ!』


勇者ロボ『何だって!? それでは、迂闊に手が出せない!』


魔王「……」

魔王「…………」


魔王「ふ、ふははははっ! よくぞ見破ったな、勇者よ!!」

魔王「そ、その程度の鉄の塊なぞ、ワシの敵では無いわ!」

魔王「剣を振り下ろした時が、お前達の最期よ!」


勇者『くっ……! さすがは魔王……!』

勇者ロボ『――諦めるな、勇者!』

勇者『勇者ロボ……!?』


勇者ロボ『この地上の愛と平和を守るのが、私達の使命!』


勇者『……ああ、そうだったな!』

勇者『俺達は、負けるわけにはいかないんだ!』


勇者・勇者ロボ『――勇気と希望がある限り!!』

…パァァァッ!


魔王「な、何だ……胸のクリスタルが光りだした!?」

魔王「な、何をしても無駄だぞ!」

魔王「諦めて、ここから立ち去るが良い!」


勇者『――勇者ロボ!』

勇者ロボ『オーケー、勇者!』

バッ!


勇者・勇者ロボ『来いッ! ブレイブ・バァァ――ッドゥッ!!』


――キランッ!


魔王「……え、ええい! ちょこざいな発音を!!」

魔王「んんんんまた来た!」

魔王「空の彼方から――」


…バサァァッ!!


魔王「――巨大な鋼鉄の鳥が現れた!!」


勇者ロボ『――チェィィンジッ!!』ガキンガキンッ!

…ガッシィィンッ!


勇者ロボG『勇者ロボ・グレェェ――ト!!』

ピキュァァンッ!(キラーンッ!)


勇者『――待たせたな、魔王!!』


魔王「……ふ」

魔王「ふーん!?」

魔王「た、たかが翼を持った程度で!」

魔王「ワシには、お前達の攻撃など通用せんわ!」


勇者『……勇者ロボ』

勇者ロボG『……ああ、勇者』


勇者『一撃に、全エネルギーを集中するんだ!』


勇者ロボG『わかっているとも!』

勇者ロボG『――とああっ!』

ブワアァッ!!


魔王「空に飛び上がって……」

魔王「……か、帰るのか!?」

魔王「ふ……ふはははっ!」

魔王「良かろう! 見逃してやろうではないか!」


勇者『――俺たちは、逃げないッ!』

勇者ロボG『――例え、この身が砕けようともッ!』


勇者・勇者ロボG『――勇気ある限りッ!』

勇者・勇者ロボG『ブレイブ・ソォ――ドッ!!』

ジャキィィンッ!(パァァァァッ…!)


魔王「な、何だ……!?」

魔王「巨大な剣が、輝いている……!?」

魔王「よ、よせ! 何をする気だ!?」


勇者『勇者の剣よ……力を貸してくれ!』

勇者ロボG『――!』


勇者ロボG『ブレイブ・ロォォ――ド!!』


ブワアアアッ!!


魔王「ぬ、ぬおおおおっ!?」

魔王「ま、魔王城が!」

魔王「魔王城が、巨大な力の渦に飲み込まれた!?」

魔王「よせ……よせ、やめろ!!」


勇者『いくぞおおおっ!! 魔王おおおっ!!』

勇者ロボG『――!』


勇者ロボG『ブレイブ・スラァァ――――ッシュ!!』


グワアアアッ!


魔王「ひ、ひえええっ!?」

サッ!


―スパァァァンッ!!


魔王「……ま」

魔王「魔王城が真っ二つに!?」

魔王「……!?」

魔王(あ……あんなものを食らったら、ひとたまりもない!!)


勇者『どうだ、魔王――む……無傷!?』

勇者ロボG『……ぐっ!』

…ズシィンッ!

勇者ロボG『全てのエネルギーを注ぎ込んだ一撃が……!』

勇者『大丈夫か!?』

勇者ロボG『ああ……だが、私はもう戦えそうにない……!』


魔王「!」

勇者ロボG『……すまない、私の攻撃は奴に通じなかった』

勇者『……いや、後は任せてくれ』


魔王「……!」ドキドキ!


勇者『俺が、この手で奴との決着をつけてくる!』

勇者ロボG『――任せたぞ、勇者!』

勇者『――ああっ!』


パシュィ~ン…


勇者「――さあ、魔王! ここからが本番だ!」


魔王「うむ!! うむ!! そうだな!!」

魔王「やはり、こうでなくてはいけないな!!」


…キィィィンッ!!


魔王「……何だ、この音は」


勇者ロボG『! あれはっ!』


戦士ロボ『――だらしないぜ、勇者ロボG!』

忍者ロボ『――使命を果たさず、膝をつくなど!』

賢者ロボ『――こんな事もあろうかと、燃料は積んできましたよ!』


勇者「皆……来てくれたのか!」

勇者「ようし……――合体だッ!!」


ロボ達『オーケー、勇者!!』


魔王「もういいよ!!」




おわり

魔王はライダー派だったんだろう

>>836
書きます


魔王「ワシの真の姿を見せてやろう!」

勇者「何!? 真の姿だって!?」

魔王「フハハ! もう、遊びは終わりだ!」

勇者「くっ……まだ、力を隠していたのか!?」


魔王「……フフフ」

―バッ!


勇者「な……何だ!?」

勇者「あの、腰に光る銀色のベルトは!?」

勇者「あのベルトから、もの凄い力を感じる……!」


魔王「!」

シュピンッ!

魔王「変んんん……」

スウゥッ―

魔王「……身ッ!」

キュワアアアッ!

魔王「――トアッ!」

トンッ―


―スタッ!

真・魔王「――真・魔王!」


勇者「何だその変身の仕方は!?」

真・魔王「ワシがこの姿となったからにh」

勇者「ちょっと待て、魔王!」

真・魔王「何だ? 命乞いでもする気か?」

勇者「違う! 俺はそんな真似はしない!」


勇者「お前の変身は、今の方法で良いのか!?」

勇者「今のだと……何と言うか……」

勇者「――お茶の間の子供の応援を受けるぞ!?」


真・魔王「何!?」

真・魔王「絶望に落ちるべき、人の子に応援されるだと!?」

真・魔王「馬鹿な! そんな事は有り得ん!」

勇者「いいや、ある! 男の子なら、特にそうだ!」

真・魔王「ええい! 根拠でもあるのか!」

勇者「……根拠は、ある!」


勇者「根拠は、俺だ!」

勇者「幼き頃の俺が、お前の変身を見たら……」

勇者「――勇者の俺でなく、お前を応援してしまう!」


真・魔王「ば……馬鹿な!?」

真・魔王「魔王であるワシが……人の子に希望を与えるだと!?」

勇者「今だって、正直変身のポーズを真似したい!」

真・魔王「何だと……!?」

勇者「良いのか、魔王!? 今の変身の方法で!」

真・魔王「ぬ……ぐうおお……!」


真・魔王「――ハァッ!」

バサァッ!

魔王「……しばし待て、やり直す!」


勇者「ぐああっ! マントを翻して変身解除だと!?」

勇者「お、俺の少年の心をくすぐりやがる……!」

魔王「勇者よ、今の変身の何がいけかったのだ!?」

勇者「いけなかったというか、凄くいけてた!」

魔王「答えろ、勇者! どうすれば、希望を与えない変身になる!」

勇者「そう……だな……」


勇者「こう……変に無駄な動作をいれて」

勇者「変身の声も、手短にすれば……あるいは」


魔王「……フハハハ! かかったな!」

魔王「再び変身し、絶望を与えてやろう!」


勇者「っ!? し、しまった! つい!!」

勇者「クソッ! 図ったな、魔王!」


魔王「!」

バッ!

魔王「――!」

バッ! ババッ! バッ!

魔王「……――変身」


キュワアアアッ!


真・魔王「――見よ、これが絶望だ」


勇者「格好良い!!」


真・魔王「何ぃっ!?」

真・魔王「お前の言う通り、無駄な動作を入れたぞ!?」

勇者「馬鹿! あの手の動き、最高だった!」

真・魔王「変身の声も、短く! 聞こえない程度に抑えた!」

勇者「阿呆! 激しい手の動き――動! からの静、最高だ!」


勇者「ああ、クソッ! チクショウ!」

勇者「魔王! 今の手の動き、もう一回やってくれ!」


真・魔王「や、やめろ!」

真・魔王「魔王であるワシをキラキラした目で見るな!!」

勇者「仕方がないだろ! 格好良かったんだから!」

真・魔王「ぬうおお!? 夢と希望に溢れた視線が!」

勇者「! 必殺技! 必殺技とかあるのか!?」

真・魔王「ま……まずい! このままでは!」


真・魔王「……ぐうっ!?」

―パキィンッ!

魔王「……くっ、何という事だ……!」


勇者「変身が……勝手に解けたのか!?」

勇者「大丈夫か!? 魔王!!」

勇者「おい、しっかりしろ! どうした!?」

魔王「ワシは、恐怖と絶望を力としている……!」

勇者「!? お、俺が……キラキラした目を向けたからか!?」

魔王「そうだ……!」


魔王「――だが、この魔王は負けぬ!」

魔王「この世を闇とする、その時まで!」

魔王「何度でも蘇り、お前達を苦しめ続ける!」


勇者「そうだ、魔王! その意気だ!」

勇者「立ち上がれ、魔王!」


魔王「……ぬおおおおっ!」

バッ!

魔王「――変身ッ!!」

キュワアアアッ!

真・魔王「――真の力、見せてくれる!!」


勇者「うわあああっ! か、格好良いいいっ!」


真・魔王「ぐあああっ!?」

―パキィンッ!

魔王「へ……変身があああっ!?」

勇者「まっ、魔王!? 大丈夫か!?」

魔王「ゆ、勇者め……! ワシに、変身させぬつもりか!」

勇者「そんな事はない! 出来る限りの協力はするぞ!?」

魔王「……ほう、その言葉に偽りは無いな?」


魔王「――ならばっ!」

魔王「ワシが変身を終えるまで、向こうを向いていろ!」


勇者「な、何だって!?」

勇者「俺に、お前が変身する所を見せないつもりか!?」

勇者「その言葉は、受け入れられない!」

魔王「出来る限りの協力をすると言ったではないか!?」

勇者「出来ないものは、出来ない! 見たいからだ!」

魔王「……ならば、仕方あるまい」


魔王「――玉座の裏に回り!」

魔王「隠れて変身してくれるわ!」


勇者「な、何だと!?」

勇者「よせ! やめろ、魔王!」


魔王「ふはは! もう遅いわ!」

―サッ!


「変身ッ!!」


「――トアッ!」


――クルンッ――ズシャァッ!


真・魔王「……待たせたな、勇者」


勇者「ひいいいっ! な、なんて格好いい登場の仕方を!」


真・魔王「ぐあああっ!?」

―パキィンッ!

魔王「ま、またもや変身があああっ!?」

魔王「ぬうう……ぐ、おおっ……!」

ズシャッ!


勇者「!? どうした、魔王!?」

勇者「何てこった……どんどん力が弱まってる!」


魔王「ゆ、勇者よ……!」

魔王「ワシの真の力を抑え込むとは……み、見事だ……!」


勇者「何言ってるんだ! 立て、魔王!」

勇者「お前の力は、そんなもんじゃない筈だ!」

勇者「死ぬな! しっかりしろ、魔王!」


魔王「ふ、ふははは……!」

魔王「――ワシは死なぬ!」

魔王「人の心に闇が有る限り、何度でも蘇る!」


勇者「本当か!? 良かった……良かった!」


魔王「ぐあああっ!?」

シュウウウッ…


勇者「ああっ!?」

勇者「ま……ま……魔王おおおおおおっ!!」

  ・  ・  ・

そして、月日は流れた……


勇者「……」


勇者(そろそろ……お迎えが来たみたいだな)

勇者(魔王……お前が消えて、世界は平和になった)

勇者(だが、俺はお前が復活するのを待ってたんだぜ……)

勇者(……いや、俺だけじゃない)


勇者(世界中の子供が、お前の変身を見たいと思ってるんだ)


勇者「俺が……ちゃんと、語り継ぐ様に言っておいたぞ」

勇者「お前の変身は……物凄く格好良い、って」

勇者「人の心に闇が有る限り、お前は蘇る、って」


勇者(皆……お前が復活するのを待ってるんだ)

勇者(世界中が……魔王の復活を待ってるんだ)

勇者(お前の変身を見たくてしょうがないんだ……)


勇者「……もしも、あの世で会えたなら」


勇者「見せてくれよ……お前の……」


勇者「変……身……」

…トサリ



おわり

書きます


勇者「皆、忘れ物は無いな?」

戦士「当たり前だろ、子供じゃねえんだから」

僧侶「いえ、あの」

勇者「ははっ、それもそうだな!」

僧侶「すみません、あの」


勇者・戦士「よし、出発するか!」


僧侶「賢者さんを置いていく気ですか!?」

勇者「僧侶、この旅はとても辛いものだ」

僧侶「はい、それはわかってます」

戦士「賢者は、気が強いがあれでも女だからな」

僧侶「はい、私も女です」


勇者・戦士「よし、出発しよう!」


僧侶「!? 待ってください待ってください!」

勇者「俺だって、黙って別れたくはないさ」

僧侶「だったら」

戦士「だが、顔を合わせたら辛くなる」

僧侶「その、ですから」


勇者・戦士「よし、出発しよう!」


僧侶「宿屋に置いてきちゃっただけですよね!?」

僧侶「それで、怒られるのが怖いだけですよね!?」

僧侶「私は、教会に寄ってから合流するって言いましたよね!?」

勇者「……ああ」

僧侶「それで、どうしてお二人だけが街の入り口に!?」

戦士「……いや」


勇者「こう……門に背中を預けて、さ」

戦士「――よう、遅かったじゃねえか……ってのをな」


勇者・戦士「偶然……俺たち二人共、やりたくなっちゃって」


僧侶「なんでそんな所で息ピッタリなんですか!」

僧侶「じゃあ、賢者さんはまだ宿に居るんですね!?」

勇者「……ああ、多分」

僧侶「だったら、すぐに迎えに行きましょうよ!」

戦士「……それは、アレだ」


勇者「……多分、察してると思うんだよ」

戦士「宿前で待ち合わせだったのに、俺達が居ない理由な」


勇者・戦士「……確実にブチ切れてる」


僧侶「当たり前じゃないですか!」

僧侶「ほら! 早く賢者さんを迎えに行きましょう!」

勇者「僧侶!? 今の話を聞いてなかったのか!?」

僧侶「聞いてましたよ! ほら、行きますよ!」

戦士「待て! 待ってくれ、僧侶!」


勇者「賢者の怒り方は、何て言うか……賢いんだよ!」

戦士「理詰めで、反論も出来ずに……なんか、こう!」


勇者・戦士「泣きそうになるんだよ!!」


僧侶「……成る程」

僧侶「――だから!?」

  ・  ・  ・

賢者「……」オオォォ…!



勇者「ほらあああ! めっちゃ怒ってるものおおお!」

戦士「何て眼光だ! 真っ直ぐ勇者を射抜いてやがる!」

勇者「はあ!? 俺じゃなくてお前だろ!?」

戦士「馬鹿言うんじゃねえよ! 絶対にそっちだっての!」


勇者・戦士「……!」


勇者・戦士「どっちを睨んでるか、街の外で決闘で決めるぞ!」


僧侶「戦いに逃げないでくださいよ!」

賢者「……」オオォォ…!



勇者「……戦士、俺はわかってるんだぞ」

戦士「あぁ!? 何をだよ!?」

勇者「お前――賢者に惚れてるんだろ?」

戦士「なっ……!?」


勇者「惚れた女を置いて、お前は何をしてるんだよ!」


戦士「っ……!」


僧侶「えっ!? えっ、そうなんですか!? ええっ!?」

賢者「……」オオォォ…!

ちょいちょい



勇者「ひっ!? 指で『来い』ってやってるよおおお!?」

戦士「ゆっゆゆゆ、勇者! お前の出番だ!」

勇者「好きなんだろ!? お前が行けよ! 告れよ!」

戦士「今じゃないだろ! 今は無理だろ! 死ぬよ!」


勇者・戦士「……!」


勇者・戦士「僧侶、頼む!」


僧侶「二人が悪いんですから、駄目ですよ!」

賢者「……」オオォォ…!

ポイッ…ドサッ!



勇者「あ……あれは、俺の盾!? どうして!?」

戦士「はぁっはっはぁ! 馬鹿め! 今頃気付いたのか!」

勇者「っ!? おい、どういう事だ!?」


戦士「忘れ物だよ、勇者!」

戦士「おら! さっさと忘れ物を取りに行けやぁ!」


勇者「そ……そんなっ!?」


僧侶「えっ、ちょっと!? 伝説の盾を忘れてたんですか!?」

賢者「……」オオォォ…!

ポイッ…ドサッ!



勇者「嫌だ! 嫌だ、死にたくな――……ん? あれは?」

戦士「装備は、旅に必須! さあ、行け! さあさあさあさあ!」

勇者「……おい、あれを見ろ」


戦士「……」

戦士「お、おおお、俺の剣じゃねえか!?」


勇者「かっかっか! お前も忘れ物か、戦士ぃっ!」


僧侶「二人共、大事な物を忘れすぎでは!?」

賢者「……」オオォォ…!

――ハ――ヨ――コ――イ



勇者「く……口の動きだけで『はよ来い』ってやってるよおおお!」

戦士「ぅ慌てるな勇者ぁい! 何かの暗号の可能性もある!」

勇者「! さすがは戦士! 何の暗号か聞いてきてくれ!」

戦士「いや、俺は戦う事しか出来ない不器用な男だ!」


勇者・戦士「……」


勇者・戦士「――僧侶!」


僧侶「……!」

僧侶「もうっ! わかりましたよ!」

  ・  ・  ・

賢者「――」

僧侶「――」



勇者「おい、戦士……二人の会話が聞こえるか?」

戦士「いや、自分の心臓の音がうるさくて聞こえねえ」

勇者「奇遇だな、俺はそれに加えて耳鳴りもしてきた」

戦士「恐怖でか? 何言って――あ、俺もしてきた」


僧侶「――」

ちょいちょい


勇者・戦士「……手招き?」

賢者・僧侶「……」



勇者「なあ……どう思う?」

戦士「賢者が、僧侶を使って俺達をおびき寄せようとしてるな」

勇者「成る程、恐ろしい程に思考が冴え渡ってるな」

戦士「生きるってのは、戦う事だからな」



僧侶「――」

ちょいちょい



勇者・戦士「……」

賢者・僧侶「……」

…スッ



勇者「二人が持ってる袋……あれは……」

戦士「財布に……道具袋!?」

勇者「お前、持って出なかったのかよ!?」

戦士「後から来るお前が持ってくると思ったんだよ!」

勇者「俺だってそうだよ! 何やってんだ!?」

戦士「そりゃこっちの台詞だ! それでも勇者か!」


賢者・僧侶「……」ニコリ

ちょいちょい


勇者・戦士「……!」

  ・  ・  ・

賢者「――本当、男ってどうしてああなのかしら」

僧侶「全くです! まさか、あんなに忘れ物をしてるなんて!」

賢者「格好つける事ばっかり考えてたからでしょ」

僧侶「二人共、反省してくださいね!?」


勇者・戦士「――すみませんでした!」


賢者・僧侶「……」

賢者・僧侶「……はぁ」

賢者「忘れ物をして怒られそうだからって……」

僧侶「はい! それで、賢者さんを置いて行こうとするなんて!」

賢者「ん? 私を……置いて行こうと?」

僧侶「はい! 逃げようとしてたんですよ、二人共!」


賢者「……」


勇者「忘れちまったよ、そんな昔の事」

戦士「振り向いてばかりいちゃ、真っ直ぐ進めないぜ」


賢者「……わかったわ」


賢者「――思い出させて」

賢者「忘れられないようにしてあげる」



おわり

書きます


男「先生、勇者と魔王に挟まれてます」

勇者「魔王……まさか、お前も生まれ変わったのか」

男「左隣が勇者みたいです」

魔王「勇者……まさか、この様な形で相見えようとは」

男「右隣が魔王みたいです」


勇者・魔王「……!」


先生「それじゃ、最初のHR始めるぞー」


男「先生、俺の最期が始まりそうです」

勇者「その様子だと、お前も普通に暮らしているらしいな」

男「先生」

魔王「当然だろう。今の余は、普通の女子高生よ」

男「先生」


勇者・魔王「……!」


先生「今日から、俺がお前達の担任だ」


男「先生、俺の担任は今日で最後かも知れません」

勇者「ふん! 世界を震え上がらせたお前が、普通?」

男「先生」

魔王「そう言う貴様も、以前の勇猛さは欠片も見られんぞ」

男「先生」


勇者・魔王「……!」


先生「それじゃ、出欠を取りがてら自己紹介をして貰おうかな」


男「先生、両隣の情報が嫌でも入ってきます」

勇者「……まさか、同じ高校、同じクラスになるとは」

男「先生」

魔王「……ふふっ、運命とは皮肉なものだな、勇者」

男「先生」


勇者・魔王「……!」


先生「出席番号一番からだから、こっちからだな」


男「先生、俺の明日はどっちですか」

勇者「だが……見過ごすわけには行かない」パァァ…!

男「眩しい」

魔王「ほう……ここで、先の戦いの決着をつけるか?」ボォォ…!

男「熱い」


勇者・魔王「……!」


先生「全員に聞こえるよう、大きな声で頼むぞー」


男「勇者と魔王に挟まれてるの助けてええええええっ!!」

勇者「そのつもりで、結界を張ったんだろう」

男「ちょっとおおお! ねえええ!」

魔王「貴様も、余と同じ結界を張っているではないか」

男「聞いてえええ! 助けてえええ!」


勇者「結界内で起こっている出来事は――」

魔王「――外には、一切影響を与える事は無い」


先生「……はい、拍手ー!」


男「凄いねええええええ!!」

パチパチパチパチ!!

男「ねえ、どうして俺を巻き込んだの!?」

勇者「すまない、咄嗟の事で……つい」

男「やっぱり、俺の事は無視してただけなんだね!?」

魔王「旧知の人間と出会ったのだ、許せ」


勇者「……魔王、話は後だ」

魔王「……ああ」


魔王「もうすぐ――余の自己紹介の番だからな」


先生「……はい、拍手ー!」


男「くそったれええええええ!!」

パチパチパチパチ!!

  ・  ・  ・

魔王「――待たせたな」

勇者「魔王、お前は……変わったな」

魔王「人の身になったのだ、変わらぬ方が不思議と言うものよ」

勇者「いや、そう言う事じゃない」


先生「……終わりか? あー……はい、拍手ー!」


男「あはっはっはっは! 声ちっさ! 照れ屋かよ!」

パチパチパチパチ!!


魔王「殺すぞ」

勇者「魔王、お前に何があった?」

魔王「たかが人間と見下して生きてきたら、こうなっていた」

勇者「お前も、人の身になったと言うのに……」

魔王「パパとママは、無理をしなくて良いと言っている」


先生「……はい、拍手ー!」


男「あはっはっは! っひっひっひ!」

パチパチパチパチ!!


魔王「……本当に殺すぞ」

勇者「……ふん! 随分とだらしないな!」

魔王「何だと?」

勇者「この勇者が、お前に手本を見せてやろう」

魔王「……ほう、面白い」


先生「……はい、拍手ー!」


男「もうすぐ俺の自己紹介なんだけど、結界解いてくれる?」


勇者「すまないが……この事は、黙っていて貰えるか?」

魔王「喋ればどうなるか……わからないとは言わせぬぞ?」


男「……うい」

  ・  ・  ・

勇者「……次が、私の番だな」


魔王「家が学校の近くと言っていたが?」

男「うん、チャリで10分。って言うか、普通に話せるのな」

魔王「この口調ならば、造作もない」

男「その口調で喋ったら、物凄く浮くだろうな」


先生「……はい、拍手ー!」


勇者「あの……見ていろ? 魔王?」

  ・  ・  ・

勇者「――どうだ、魔王」

魔王「勇者、貴様……まさか!?」

勇者「ふっ……私はもう、以前の私では無い」

魔王「っ……!?」


先生「……はい、拍手ー!」


男「ギャルっぽく喋ってたけど、高校デビュー?」

パチパチパチパチ…


勇者「何っ!? 何故、それを見破った!?」

魔王「くっくっく……高校デビューだと?」

勇者「くうっ!? しまった……!」

魔王「はっはっは! 愚かなり、勇者!」

勇者「特訓をしたと言うのに……!」


先生「……はい、拍手ー!」


男「まあでも、かなりそれっぽかったよ」

パチパチパチパチ…


勇者「……下手な慰めはよしてくれ!」

魔王「……確かに、余も貴様がギャルと錯覚したぞ」

勇者「本当か!? モテそうか!?」

魔王「モテ? 勇者よ、貴様……それが目的か?」

勇者「そうだ! 私は……恋が! 青春がしたい!」


先生「……はい、拍手ー!」


男「勉強しろよ」

パチパチパチパチ…


勇者「良いじゃないか!……良いじゃないか!」

勇者「あの頃は、そんな余裕なんて無かったんだ!」

男「でも、多分クラス全員が高校デビューって見抜いたぞ」

魔王「……当然、余も見抜いていたがな」

男「錯覚したって言ってたじゃねーか」


勇者・魔王「……!」


先生「……はい、拍手ー!」

先生「さて、それじゃあ自己紹介も終わったことだし……」


先生「早速、席替えでもするか?」


男「!!」

  ・  ・  ・

魔王「――くっ! まさか、勇者に背を向ける事になるとは!」

男「前の席が魔王です」

勇者「魔王、おかしな真似をしたら……わかっているな?」

男「後ろの席が勇者です」


勇者・魔王「……!」


先生「黒板の字が見えないとか、問題ある奴は居ないなー?」


男「先生、勇者と魔王に挟まれてます」



おわり

続けてみます


勇者「買い食い……」魔王「だと……!?」

勇者「馬鹿な! 何を考えている!?」

魔王「貴様! 何を購入するつもりだ!」

勇者「魔王!? まさか、お前まで!?」

魔王「慌てるな、勇者。参考までに、聞いておくだけよ」


男「アイス食べたい」


勇者「この寒空の中……!?」

魔王「アイスを……!?」

勇者「確かに、この世界のアイスは美味い!」

魔王「うむ……様々な味覚で舌を楽しませてくれるな」

勇者「だが! 校則では、買い食いは禁止されている筈!」

魔王「! 見ろ、勇者!」


勇者「――もう、店内に入っているだと!?」


魔王「奴め……この魔王をも凌ぐ程の力を持っているのか……!」

勇者「……私も店内に入り、何か買う」

魔王「!? 一度、家に帰ってからではなく……!?」

勇者「ああ、そうだ!」

魔王「ば、馬鹿な……!」


勇者「――今の私は、ギャルJK!」

勇者「学校帰りにコンビニに寄る事に、躊躇う必要は無い!」


魔王「この気迫……本気のようだな」

勇者「……私は、今まで勇者として正しくあろうと生きてきた」

魔王「確かに、予習復習もキッチリとやってきているな」

勇者「規則を破る等、あってはならないと思ってきた!」


勇者「――だが、私は生まれ変わった!」

勇者「ギャルならば、買い食い一つ出来ずしt」


男「それじゃ、お先~」


勇者「待って待って待って待って!」

がしいっ!

勇者「お前は、私を見捨てるというのか!?」

男「意味がわからない」

勇者「私に、学校帰りに一人でコンビニに寄れと!?」

男「そんな事は一言も言ってない」


勇者「頼む! 私と一緒に戦ってくれ!」

勇者「同じ人間……仲間だろう!?」


男「クラスメイトだ」

魔王「ふはははは! 臆したか、勇者よ!」

男「なんで偉そうなの」

魔王「所詮は、貴様のギャルなど付け焼き刃にすぎん!」

男「付け焼き刃って」


魔王「貴様は、買い食いなど出来はせぬわ!」

魔王「そこに居る、余の配下の足元にも及ばぬ!」


男「クラスメイトだ」

勇者「頼む! 私と共に、店内に!」

魔王「聞くことはない! 捨て置け!」

勇者「魔王!? 私の邪魔をするつもりか!?」

魔王「ふはは! その絶望の表情、実に心地良いぞ!」


男「……じゃあ、このパピコあげるから」

男「二つに割って、二人で食べてろよ」


勇者・魔王「何ぃっ!?」

勇者「お……お前は、戦利品を私達に!?」

男「戦利品て」

魔王「貢ぎ物のつもりか? 貴様、何を考えている!」

男「貢ぎ物て」


男「……大したことじゃない」

男「アイスを持って外に出たら『あっ、寒い』って思った」

男「その瞬間――肉まんの気分になっただけさ」


勇者「肉まん……!?」

魔王「だと……!?」

勇者「くっ……肉まんなら――食べたい!」

魔王「貴様……! 余をどこまで惑わすつもりだ!」


勇者・魔王「……!」


男「……一つだけ言っておく」

男「さすがに、二人に肉まんは買ってこないからね?」

男「アイスをあげるのだって、どうしようか迷ったんだから」


勇者・魔王「そんなっ!?」

勇者「ど、どうして買ってきてはくれないんだ!?」

男「お金が無いからだ」

魔王「ええい、嘘を申すな! 高々数百円だぞ!」

男「無いものは無い」


男「……男子の小遣いってのは、女子よりも低いんだ!」


勇者「……あー」

魔王「……うむ」

勇者「それなのに……手に入れたパピコを」

男「ああ、そうだ」

魔王「寒さを感じたからと言って、手放すとは……」

男「勿論、それだけじゃない」


男「今日のこの出来事が尾を引き……」

男「明日、俺を挟んで前後でやりとりされると嫌だなぁ、って」

男「……そう、思ったんだ」


勇者・魔王「……」

勇者「……約束しよう、そんな事はしないと」

男「勇者」

魔王「……うむ、余とてそこまで狭量ではない」

男「魔王」


勇者・魔王「――この、パピコに誓って!」


男「それじゃ、肉まん買ってくるけど……」

男「二人も買うなら、とりあえず店内入ろう」


勇者・魔王「!?」

勇者「い、一緒に店内に入ってくれるのか!?」

男「うん、寒いし」

魔王「……良かろう、余の手を引く事を許可する」

男「えっ?」

勇者「! わ、私も頼んでいいだろうか!?」

男「……」


男「――恥ずかしいから、嫌だ」


勇者・魔王「っ……!?」

勇者「恥ずかしい!? 買い食いは出来るのにか!?」

男「普通はそうだ」

魔王「己が身を恥ずかしがるとは、人間にしては良い心がけだ」

男「違う、そうじゃない」


勇者・魔王「ならば、何故だ!?」


男「いや……なんて言うか、ほら」

男「……なっ?」


勇者・魔王「……」

勇者「……ならば、仕方ない」

ガシッ!

男「!? 左の手首を……!?」

魔王「うむ、致し方あるまい」

ガシッ!

男「!? 右の手首まで……!?」


勇者・魔王「――いざ、買い食い」

ガァキィ!


男「りょ、両方の腕の関節が……!」

男「ぐうっ、お、あああっ……!?」

  ・  ・  ・

勇者「え、え~っとぉ、どれにしよっかなー」

魔王「……」

ガァキィ!

男「……」


店員「あの……痛く、無いんですか?」


勇者「やっぱりぃ、温かいの食べたいよねぇ~!」

魔王「……」

ガァキィ!

男「肉まん三つください」


店員「……かしこまりました、少々お待ち下さい」



おわり

書きます


男「友達は?」勇者「欲しい」魔王「要らぬ」

勇者「そう思い続けているのに、出来ない」

男「うん」

魔王「そう思い続け、孤高の存在でいる」

男「うん」


男「ここで、二人にお知らせがあるんだけど」

男「キミら――二人は、セットの扱いを受けている」


勇者・魔王「……セット?」

勇者「……確かに、勇者と魔王は表と裏」

男「いや」

魔王「対極ではあるが、光と影と言うべきものだな」

男「違くて」


男「いつも二人は一緒に居るじゃん?」

男「つまり――女同士のゴニョゴニョだと思われている」


勇者・魔王「……ゴニョゴニョ?」

勇者「ゴニョゴニョ? それは、流行の言葉か?」

男「ううん」

魔王「女同士の? 性別に、何の関係があると言うのだ?」

男「そうじゃなくて」


男「学校に、何故か一組は必ず居る……」

男「――あれ? もしかして、そうなの?」

男「……と思う、二人組だと思われてるんだ」


勇者・魔王「……?」

勇者「ハッキリ言ってくれ、皆にどう思われているんだ?」

男「言いにくいんだ」

魔王「申してみよ。余と勇者は、どう見えているのだ?」

男「まあ、ぶっちゃけ」


男「女同士で、付き合ってると思われてる」

男「だから皆、何となく遠慮して近づいて来ないんだ」


勇者・魔王「……」

勇者・魔王「!?」

勇者「私と魔王が!? 馬鹿な、有り得ん!」

男「うん」

魔王「何故、そう思われている? 理解出来ぬ」

男「うん」


男「例えば、授業中に二人でペアになる時」

男「二人は、誰を相手に選ぶ?」


勇者「魔王」魔王「勇者」

勇者「魔王から、目を離す訳にはいかないからな」

男「うん」

魔王「勇者ならば、余の相手も務まるというもの」

男「うん」


男「じゃあ、休み時間中」

男「二人は、誰と一緒に過ごしてる?」


勇者「魔王」魔王「勇者」

勇者「魔王から、目を離す訳にはいかないからな」

男「さっき聞いた」

魔王「勇者ならば、話し相手も務まるというもの」

男「それも聞いた」


男「それじゃあ、帰る時」

男「二人は、誰と一緒に帰ってる?」


勇者「魔王」魔王「勇者」

勇者「帰り道が、途中まで一緒なんだ」

男「普通の理由だ」

魔王「ふっ、余の方が此奴よりも家が学校に近い」

男「それは聞いてない」


男「勇者と魔王」

男「――いつも一緒に居ると思わない?」


勇者・魔王「思う」

勇者・魔王「……」

勇者・魔王「ああっ!?」

勇者「そんなっ!? まさか、それだけで!?」

魔王「腹立たしい限りだ! 余が、勇者と!?」


男「――結界を解いている時」

男「二人は、どんな風に呼び合ってる?」


勇者「まおちゃん」

魔王「ゆうちゃん」


男「……」

男「うん、そうだね」

勇者「勇者と魔王だと、知られる訳にはいかないからな!」

男「うん」

魔王「余とて、無闇に騒動を起こそうとは思わぬ」

男「うん」


男「その呼び方をしてるの、お互いだけだよね」


勇者・魔王「そうだ」

勇者・魔王「……」

勇者・魔王「ああっ!?」

勇者「待ってくれ! 私の見た目は、ギャルなんだぞ!?」

男「うん」

魔王「見よ、この眼鏡を! 伊達ではあるが、清楚そのもの!」

男「うん」


男「表と裏、光と影とかじゃなく……」

男「陰キャと陽キャで、付き合ってると思われてる」


勇者「陽キャと……!?」

魔王「陰キャだと……!?」

勇者「私は、誰とでも喋るぞ!?」

男「一番話してるのは、魔王だ」

魔王「余は、誰とも話さぬ!」

男「唯一話してるのは、勇者だ」


男「俺も、たまにこうやって会話に加わるけど、さ」

男「その時は、結界が張られてるのがほとんどだもの」

男「百合ップルの間に挟まれてる被害者扱い受けてるもの」


勇者・魔王「……!?」

勇者「ごっ、誤解をとかなくては! 今、すぐに!」

男「どうやって」

魔王「人と人とは、わかり合えるものだろう!?」

男「いやいや」


男「ムキになって否定すると、余計怪しい」

男「それに、実際? ただならぬ関係だし?」


勇者・魔王「違う! そうだが、違う!」

勇者「私は、彼氏が欲しい! 恋がしたいんだ!」

男「……頑張れ!」

魔王「余は、静かに過ごしたい! おかしな噂になるなど!」

男「……頑張れ!」


男「二人の気持ちは、痛い程伝わってきた!」

男「……頑張れ! 頑張れ!」


勇者「そんな、無責任な!」

魔王「ええい、応援なぞ要らぬ!」

勇者「魔王の正体を知る仲間じゃないか!」

男「仲間じゃない」

魔王「余の配下ならば、何とかしてみせよ!」

男「配下じゃない」


男「……それで、何なんだけどさ」

男「昼休み、俺は友達と弁当を食べたいんだ」


勇者・魔王「……友達と?」

勇者「そ、それは……お、男友達という事か?///」

男「うん、男友達だ」

魔王「と、友だと?/// 貴様、何を言っている?///」

男「昼休みの過ごし方だ」


勇者・魔王「……///」


男「だから、この結界を解いて欲しい」

男「……友達が、待ってるんだ」


勇者・魔王「……」

勇者・魔王「うん?」

勇者「それは……私とお前は、仲間ではなく――」

勇者「――友達として過ごしたい」

勇者「……という意味では?」


男「無い」


魔王「貴様……余の配下では、満足出来ず――」

魔王「――余の友になりたい」

魔王「……という意味では?」


男「無い」


勇者・魔王「……」

勇者「今日のお弁当のオカズは何か、楽しみだ」

魔王「貴様、そんな事も知らぬのか?」

勇者「どういう意味だ?……まさかっ!?」

魔王「その、まさかよ」


魔王「余は……ふふっ!」

魔王「ママに、料理を習いだしたのだ……!」


勇者「ば……馬鹿なっ!?」

勇者「魔力だけでなく、女子力までも高めようと!?」


男「いやあの、結界」

魔王「見るが良い……この、美しく焼かれた卵焼きをな!」

勇者「これを魔王が!? チョー美味しそうなんだケド!」

魔王「ふはは! どれ、一つくれてやろうではないか」

勇者「どれどれ……んっ、美味しい! 甘い卵焼き好き!」


魔王「卵に砂糖を加えるなど、菓子だけだと思っていたが……」

魔王「――この世界は、和食の素晴らしさを余に教えてくれた」


男「だから、結界」

勇者「私は……あっ、青椒肉絲!」

魔王「ほう、貴様の弁当も中々やるではないか」

勇者「……私は、幼い頃はピーマンが苦手だった」

魔王「うむ、苦味と青臭さが鼻につくからな」


勇者「だが、青椒肉絲と、ピーマンの肉詰めに出会った」

勇者「――この二つが、私の世界を広げてくれた」


男「それより、結界」

勇者「魔王、一口どうだ? 美味いぞ」

魔王「余に施そうというのか?」

勇者「違う。借りを作りたくないだけだ」

魔王「ふむ……そういう事にしておくか」


男「勇者と魔王」

男「俺に嫌がらせをして、悪いとは?」


勇者・魔王「思わない」


勇者・魔王「友達じゃないから」



おわり

書きます


勇者「この戦いが終わったら、プロポーズするんだ」

戦士「うお、そりゃ本当か!?」

勇者「ああ、まあな」

戦士「はっは! そいつぁ死ぬわけにはいかないな!」

勇者「そうだな」


勇者「魔王を倒したら」

勇者「――故郷の幼馴染に、プロポーズするんだ」


戦士「……」

戦士「……故郷の幼馴染?」

戦士「故郷の?」

勇者「ああ、小さい頃はいつも一緒でな」

戦士「幼馴染?」

勇者「旅立つ時も、ずっと手を振ってくれてた」


勇者「――帰ってくるのをいつまでも待ってる」

勇者「そんな風に、笑いながら……な」


戦士「……」

戦士「……!?」

戦士「なあ、勇者?」

勇者「? どうした、戦士」

戦士「お前にとって、僧侶はどんな存在だ?」

勇者「? 決まってるだろ」


勇者「僧侶は、大切な仲間だ」

勇者「旅が終わっても……そう、いつまでも、な」


戦士「……」

戦士「……!!?」

戦士「……勇者、お前に大事な話がある」

勇者「? どうした、戦士」

戦士「今の話をしたのは、俺だけか?」

勇者「いや、戦士だけじゃない」


勇者「さっき、僧侶にもこの話をした」


戦士「!?」

戦士「……!!?」

戦士「僧侶に!? 言ったのか!?」

勇者「? ああ」

戦士「僧侶は、何て言ってた!?」

勇者「いや、特に何も言われなかったな」


勇者「……あ、そういえば」

勇者「何故か突然、神に祈りを捧げてたぞ」


戦士「ですよね!!」

戦士「なんで、今の話をする流れになったんだ!?」

勇者「いや、何でって……」

戦士「勇者、これは大事な質問だ!」

勇者「……ああ、何かな?」


勇者「魔王との戦いに生き残ったら、伝えたい事がある」

勇者「……って、真面目な顔で言われたんだ」


戦士「……」

戦士「……そっ……かぁ」

戦士「そう言われたら、お前も幼馴染の事言うよな」

勇者「ああ、大切な仲間だしな」

戦士「……どんな風に、祈りを捧げてたんだ?」

勇者「それが、かなり本格的でな」


勇者「こう、胸の十字架を握りしめてだ」

勇者「地面に額をこすりつけて」

勇者「――神よー!」

勇者「……って感じだった」


戦士「……なるほ……ど~」

戦士「……それから、どうなったんだ?」

勇者「ん? ああ、いくつか質問されたな」

戦士「僧侶……」

勇者「だが、意味がわからないものが多かったんだ」


勇者「幼馴染を狙ってる、意地悪な村長の息子が居ないか」

勇者「……とかな?」


戦士「アイツ、何を期待してんだ!?」

戦士「居るのか!? そんな奴が!」

勇者「意地悪、ではないと思う」

戦士「居るのか!? 幼馴染を狙う村長の息子が!」

勇者「……まあ」


勇者「俺が村長の息子だ」

勇者「狙ってると言うか……もう、射止めてるな」


戦士「……」

戦士「お前、次期村長だったのな!」

戦士「……他に、どんな事を聞かれたんだ?」

勇者「幼馴染は、どんな人か……って聞かれたな」

戦士「あ、それは俺も気になる」

勇者「あー……何て言うか、な」


勇者「二つ年上だけど、可愛くて……」

勇者「あ、眼を見張るほどの美人って訳じゃないんだぜ?」

勇者「だけど、俺にとっちゃ世界で一番なんだ」

勇者「しっかり者ぶってるけど、抜けてる所もあっt」


戦士「おうけい、ストップ勇者」

戦士「今みたいな事を僧侶に言った、と」

勇者「ああ、笑いながら最後まで聞いてくれたぞ」

戦士「最後まで語っちゃったのか」

勇者「ああ、そしてだ」


勇者「――僧侶は、そういう相手は居ないのか?」

勇者「って、聞いてみたんだよ」


戦士「……」

戦士「……ワーオ」

戦士「お前は、凄い所で会心の一撃を出すな」

勇者「? どういう意味だ?」

戦士「……いや、何でもない」

勇者「まあ、そうしたらな?」


勇者「――内緒です」

勇者「って、笑った後にな?」

勇者「――幼馴染さんに、是非会ってみたい」

勇者「……なんて言われてなぁ」


戦士「アイツ、何するつもりだ!?」

戦士「勇者! お前、それを了承したのか!?」

勇者「? ああ、勿論だ」

戦士「絶対にやめておけ! 良いか、絶対にだ!」

勇者「ははっ、どうしてだよ?」


勇者「……まあ、せっかくだからさ」

勇者「僧侶に、結婚式の司式を頼んだんだ」


戦士「……」

戦士「はー……はーはーはー」

戦士「勇者は、本当に勇気があるな」

勇者「? どうしたんだ、突然」

戦士「……僧侶は、それを受け入れたのか?」

勇者「勿論、二つ返事で了承してくれた」


勇者「――本当に、楽しみですね」

勇者「なんて、見たことのない笑顔をしてたぞ」


戦士「アイツ、挫けなさすぎだろう!」

戦士「……僧侶の伝えたい事って、何だと思うよ?」

勇者「魔王との戦いに生き残ったら……だからな」

戦士「そうだ、アイツにとって大事な事だろうよ」

勇者「……っ!」


勇者「僧侶も惚れてる相手が居る、と!」

勇者「それを……仲間である俺に伝えようと!?」


戦士「鋭い! が、鈍い!」

戦士「そこまで察せるのに、どうしてだ!?」

勇者「! そうか……!」

戦士「……わかったか、勇者」

勇者「……ああ」


勇者「僧侶は、戦いが終わった後に伝えようとしてくれてたのに!」

勇者「俺は、戦いの前に幼馴染の事を言っちまった!」

勇者「あー……俺も、全部終わった後に言うべきだったなぁ!」

勇者「な!」


戦士「本当にな!」

戦士「お前の考えてる事とは違うが、本当にな!」

戦士「こんなんで、明日の決戦は大丈夫なのかよ……!」

勇者「俺たちなら――絶対に勝てるさ!」

戦士「ちょっと前まで、俺もそう思ってたよ!」

勇者「おいおい、弱気になるなよ」


勇者「僧侶なんか、凄いやる気だったぜ?」

勇者「――必ず手に入れてみせる」

勇者「……ってな」


戦士「……はい」


勇者「明日の戦いに勝って、必ず生きて帰るんだ!」

勇者「――平和をこの手に掴むぞ!」



おわり

書きます


男勇者「古い装備を買い取ってくれるってよ!」

女戦士「へえ、そいつは助かるね!」

女武道家「うん、捨てるのも何だしね!」

女賢者「それで、どの人が買い取ってくれるのかしら?」

男勇者「あの人だ!」


男商人「ぐふふ! 高値で買い取りますよぉ、ぐふふふ!」


女戦士・女武道家・女賢者「……」

女戦士・女武道家・女賢者「勇者、本気?」

戦士「アンタ、何考えてるんだい!」

武道家「ねえ、本当に売るの!?」

賢者「あの顔、良からぬ事を考えてるわよ!?」

勇者「えっ!?」


商人「いやいや、そんな事はありませんよぉ!」

商人「……ぐふ! ぐふふふふっ!」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士・武道家・賢者「絶対、嫌!」

戦士「売る位なら、捨てた方がマシさね!」

武道家「そうだよ! ねえ、売るのやめよう!?」

賢者「勇者、もう少し考えて行動してくれる?」

勇者「いや、でも!」


商人「相場の三倍……いや、五倍出しますよぉ!」

商人「何せ、世界を救う勇者様達御一行ですから……ぐふふ!」


戦士・武道家・賢者「ご……」

戦士・武道家・賢者「五倍……!?」

戦士「ふ、古くなった剣もかい?」

武道家「あ、あたしの鉄の爪も?」

賢者「わ、私の杖もかしら?」

勇者「どうなんですか?」


商人「いえいえ、さすがに持ちきれませんので……」

商人「布製の防具だけ、ですね……ぐっふふふひょう!」


戦士・武道家・賢者「ぬ……」

戦士・武道家・賢者「布製の防具だけ……!?」

戦士「あるには……あるねぇ」

武道家「あー……あたしの、結構ある」

賢者「私も……布製のは多いわ」

勇者「本当に、相場の五倍なんですか?」


商人「ぐふふ、勿論ですともぉ!」

商人「ぐふふっふ! ぐふっ、ぐふふふふ!」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士「……どうする?」

武道家「どう、って言われても……」

賢者「……五倍で売れる機会なんて、滅多に無いわ」

勇者「五倍で買って、儲けは出るんですか?」


商人「ぐふふ、儲けようとは思っていませんよ」

商人「個人的……そう、個人的な……ぐふっ! ぐふふっ!」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士「じゃあ……こいつなら、いくらだい?」

武道家「あっ、それって――昔着てたやつじゃん」

賢者「懐かしいわね……本当に、初期の物よね」

勇者「戦士の、最序盤の布の服――おいくらですか?」


商人「ぐふふ、そうですねぇ……戦士様の物でしたら」

商人「――相場の、六倍は出しましょう! ぐふふふ!」


武道家・賢者「ろっ……!?」

戦士「六倍だって!?」

戦士「あ、アタシの布の服が……六倍!?」

武道家「じゃじゃじゃじゃあ! あたしの、これは!?」

賢者「それは……二つ前に着てた、武闘着ね」

勇者「武道家の、二つ前の武闘着――おいくらですか?」


商人「ぐふふ、武道家様で……二つ前の物でしたら」

商人「――相場の、七倍は出しましょう! ぐふふふ!」


戦士・賢者「なっ……!?」

武道家「七倍!? えっ、ウソ! ホントに!?」

戦士「聞いたかい、七倍だってよ!?」

武道家「きっ、聞いた! なっ、ななな七倍だって!」

賢者「なら、私が一つ前に着てた、水の羽衣は!?」

勇者「賢者の、一つ前の水の羽衣――おいくらですか?」


商人「ぐふふ、賢者様で……一つ前の物でしたら」

商人「――相場の、三倍は出しましょう! ぐふふ!」


戦士・武道家「さっ……!?」

賢者「……」

賢者「……三倍?」

戦士「凄いじゃないか、三倍なんて!」

賢者「あ……いや、凄いんだけどね!?」

武道家「うんうん! かなりの高額になるよ!」

賢者「そうなんだけど! そうなんだけれども!」

勇者「どうしたんだ? 何が不満なんだ?」


賢者「なんか……なんか、なんかー!」

賢者「六倍で、七倍で、それなのに三倍って……なんか!」


勇者「どうした賢者!?」

勇者「賢さが大幅に下がってるぞ!?」

戦士「どうしたんだい!? らしくないじゃないか!」

賢者「だって、なんか! なんか……なんかー!」

武道家「ごめん賢者! あたしにも、わかるように言って!?」

賢者「なんか、なんか……なんかなのよ!」

勇者「良いじゃないか、三倍だぞ!?」


商人「ぐふっふっふっふ! わかりました!」

商人「――相場の、四倍は出しましょう! ぐふふ!」


戦士・武道家「よっ……!?」

賢者「……」

賢者「四倍でも……なんか!」

戦士「さすが賢者、交渉も上手だねぇ!」

武道家「うんうん! 賢者、これを狙ってたんだね!」

賢者「いや、でも! 六、七ときて……四は、なんか!」

勇者「じゃあ、俺の昔着てた旅人の服――おいくらですか?」


商人「ぐふふ、そうですねぇ……勇者様の物でしたら」

商人「――相場の、十倍は出しましょう! ぐふふふ!」


勇者「じゅっ……!?」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士・武道家・賢者「……十倍?」

戦士「アタシのが……六倍」

武道家「あたしのが……七倍」

賢者「私のが……四倍」

勇者「おっ、俺のは十倍!? 本当ですか!?」


商人「はぁい、勿論ですとも! ぐふっふっふっふ!」

商人「勇者様の身に付けていた物ですから! ぐふふ!」


戦士・武道家「……」

賢者「……今の気持ちは?」

戦士・武道家「……なんか……なんか、なんか!」

戦士「いや、わかるんだよ!? 言ってる事は!」

武道家「わかるけど……なんか! なんかー!」

賢者「でしょう!? なんか……なんかでしょう!?」

勇者「さっ、さすがに悪いですよ!」


勇者「俺のは――多くても、二倍で良いです!」


商人「ぐふふ、何ですって? 二十倍ですってぇ?」

商人「――よろしい! 相場の二十倍は出しましょう! ぐふふ!」


戦士・武道家・賢者「にじゅっ……!?」

勇者「二十倍!?」

勇者「そんなっ!? これ、母さんが作った物ですよ!?」

商人「何と!? 二十五倍は出します! ぐふひょう!」

勇者「破れた所は、俺が繕って不格好になってますし!」

商人「何と!? 三十倍出させてください! ぐふっふっふ!」


勇者「も、もう! もう、結構ですから!」


商人「結構ですと!? ぐふふっ、私も覚悟を決めましたよ!」

商人「――よろしい! 相場の四十倍は出しましょう! ぐふふ!」


勇者「ああっ!? そっちの意味の『結構』じゃなくて!」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士「アタシも……六倍じゃあ売れないね」

武道家「うん……あたしも、七倍じゃ無理かな」

賢者「私は、最初から売る気なんか無かったわ」

勇者「えっ!? ど、どうしたんだよ皆!?」


商人「何と!?」

商人「で……では! せめて、勇者様の物だけでも!」

商人「……ぐふふ! 五十倍! 五十倍なら、どうでしょう!」


勇者「ごじゅっ!?」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士・武道家・賢者「なんか……なんか――っ!!」

  ・  ・  ・

勇者「――なあ、どうして買い取りの話を断ったんだ?」


戦士・武道家・賢者「……」


戦士「やっぱり、変に甘えるのは良くないからねぇ」

武道家「うんうん、商人さんに悪いもんね」

賢者「いくら高額でも、あの場合は断るべきよ」


勇者「そっ……か」

勇者「うん! 確かに、皆の言う通りだよな!」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士「でも、さすがに五十倍は惜しかったねぇ」

武道家「元の値段を考えても、そこそこの値段だもんね」

賢者「勇者、あの旅人の服はどうしたの?」


勇者「……商人さんには、期待させるだけさせちゃったしさ」

勇者「また次に会った時にサービスしてください、って……」

勇者「……ははは、タダであげちゃったよ」


戦士・武道家・賢者「……」

戦士・武道家・賢者「本当、お人好しなんだから」

  ・  ・  ・

商人「――ぐふっ! ぐふふふふっ!」

商人「勇者様が、旅立ちの日に身に付けていた!」

商人「さらには、勇者様の母上手製の装備が手に入るとは!」

商人「これは、物凄い価値が出ますよぉ! ぐふふっふっふ!」


商人「――ぐふふ、誰にも売るつもりはありませんがねぇ!」


商人「個人的なコレクションに加えるつもりでしたからね! ぐふふ!」

商人「これは、コレクションでも、一番の価値ある品になるでしょうな!」

商人「……ぐふっ! ぐふふっふっふふ!」


商人「正に、タダより高い物は無い!」



おわり

このSSまとめへのコメント

このSSまとめにはまだコメントがありません

名前:
コメント:


未完結のSSにコメントをする時は、まだSSの更新がある可能性を考慮してコメントしてください

ScrollBottom