【リトバス】ある壊れた男の子の話 (15)

リトバスssです。朱鷺戸沙耶ちゃんがボロボロにされるお話です。暴力描写があるので注意!では始めます

世界を何回もやり直すうちに性格が壊れてしまう事がある。それは鈴が幼児退行を起こしたのと同じような状態、本来なら運命を克服することで治る筈だった。事実、修学旅行明けには全員が元どおりになり、誰も精神を壊すことなどなかった。そう、ただ一人……皮肉にもその運命を克服した筈の直枝理樹だけは違った。

理樹の部屋

理樹「ねえ、いいから出てってよ」

真人「そんな事できねえよ!お前、どうしちまったんだよ!?」

理樹「いいからさぁ!!早く出て!!出ないと殴るよ!!」

真人「……おい、理樹。それは冗談で言ってるんだよな?いくらお前でもそんな事言って許されると……」スッ

謙吾「真人!お前は何をしようとしているんだ!!その手を下ろせ!」

真人「なんだよ謙吾!!お前は理樹に甘すぎるんだよ!!好きなのと甘いのは違ぇだろうが!!」

謙吾「頼む……俺が言って聞かせるから……理樹を責めないでくれ……」

真人「……っ、そんな悲しい顔すんなよ……俺も別に本気でなんて怒ってねえって」

理樹「そう?さっきまでは顔を真っ赤にしてたけど」

謙吾「おい、理樹ももう辞めろ。そもそもお前が悪いんだから……」

理樹「別に?僕は悪い事したとは思わないよ?人の言うことを聞かない来ヶ谷さんが悪いんだよ」

真人(どうしてこんな事に……)

そもそも、最近の理樹は雰囲気が変わっていた。何というか、自分の意見を通そうとするようになった。というよりも、どうしてか来ヶ谷への当たりが強くなった。原因は分からない、ただ、弄ばれるような事を嫌がるようになったのは確かだ


来ヶ谷「だから、そんな意図はないと言っているだろう?少年は最近どうもノリが悪いな」

理樹「別にノリが悪いわけではないよ、来ヶ谷さんがもともと強引なだけだよ」

小毬「ね、ねぇ!もうやめようよぉ!喧嘩はダメ!」

西園「えぇ、そんな事しても得なんてないですよ」

来ヶ谷「そうだな、これ以上言い争うのは不毛だ。少年も、今は気を鎮めるのが一番だろう」

理樹「そうだね。僕はもう帰るよ」

スタスタと立ち去っていく後ろ姿を見送る一同。今までの優しかった理樹の姿はそこにはない

来ヶ谷「……」

西園「そんなに落ち込まなくても大丈夫ですよ、今はちょっとズレているだけです。そう、ほんの少しだけ……」

慰めにもならない台詞を言う西園も、やはり理樹の変化を心配しているのだが、どうする事もできない。そう、彼がどこで変わったのか……それを分かる術はないのだ


恭介「なあ、来ヶ谷。お前はこの世界が本物だと思うか?」

来ヶ谷「……いや、偽物だな」

夜の中庭、恭介は来ヶ谷を呼び出してそう言った。いきなりの質問であったが、まるで待っていたかのように来ヶ谷は語り出す

来ヶ谷「さっきの話をしている時も、『能美クドリャフカ』と『棗鈴』の2人が居なかった。いやはや、恐ろしいものだよ」

恭介「消されたか、それとも初めからこの世界に入っていないのか……」

来ヶ谷「それは秘密を知った我々がどうなるか次第だな。ここで刺客でも送られてくるのではないか?」

恭介「随分とタチの悪い冗談だな……まあ、いざとなれば戦うさ」

2人とも、口では冷静だが、内心かなりの怒りを秘めている。理樹をあんな風にした犯人、それを突き止める事、そらが2人の共通の思いであった


今日はここまでです。注意書きと違って沙耶が出ていませんが、ここから急展開になります。それでは

とりあえず、今後も調査を続ける事を話し、2人は別れた。真相を知る者が増えると消される人数も増えてしまうという事で、まだ何も知らない他の人間にはあえて何も知らせない事に決めた


恭介「しかし……本当に理樹の精神はこの世界の産物なのか?」

ふと、恭介は考える。何者かがこの世界を生み出したとすれば、そこに何らかの意図があるはず。その意図によってあんな攻撃的な性格に変化するとは一体どう言う事なのか、そこを掴めない限り、問題の解決には至らないだろう



「やあ、こんな時間に何してるの?恭介」

恭介「!?」

ビュッ!!ゴシュッ!!!


恭介「~~ぅっ!?」ドサッ

「まだだよ、恭介。この場で始末してあげる」

脳天に凄まじい衝撃が走り、その場に倒れこむ恭介。しかし、攻撃は一向に止む様子が無い

ボカッ!!バキィッ!!グシャッ!!!

恭介「……ぁ……」

恭介「り、り…き……?な……ぜ……」

理由も分からずに退場だけは避けなくてはならない、何か聞き出そうとしなければとの一心で言葉を紡ぎ出す。だが、もう片方にそんな意思は一切無い


「……バイバイ、恭介……『また今度』ね?」

グチャッ


………………


次の日

来ヶ谷「……っ!?おかしい……恭介氏がいないだと?」

謙吾「ん?どうした、来ヶ谷。何かあったのか?」

来ヶ谷「いや、なんでもない……」

来ヶ谷(恐らく、恭介氏もこの世界の秘密を知ってしまったが為に……一体誰が……)

理樹「おはよう、真人」フラフラ

真人「おう、理樹か……どうした?随分眠そうだな」

理樹「あぁ、昨日は夜遅くに外で散歩してたからね、だからいつもより眠くて……」

来ヶ谷「……」


来ヶ谷(おかしい、今朝から西園女史の姿が見えん)


いくらなんでもペースが早すぎる、こんなに大量に行方不明者がいながらそれに気づくものはほとんどいない。しかし、そう考えると何故異変に気付いた私が無事なのか……


理樹「ねぇ、来ヶ谷さん……この世界って何かおかしいよね?」

来ヶ谷「!?」ガタッ

理樹「あはは……やっぱり気付いてたんだね?そう、今日の夜、一階の空き教室に来てよ。そこで話そう?この世界について……」

来ヶ谷「……来ないと言ったら?」

理樹「別に来なくてもいいよ?でも消えた人たちの事も分からないだろうし、これからの事も一切知らないままだけど?」

来ヶ谷「全く……どのみち断れないのを知っていての質問だからな……タチが悪い」

来ヶ谷(正直、何をされるか分かったものではない。他の人間のように行方不明扱いされるかも分からん。ただ……行くしかないだろう)

万全の状態で今日の夜を迎える為、その日の授業は全てサボった。まあどのみち授業に出ようが出まいが関係なんて無いのだが

夜、空き教室


理樹「やあ、本当に来てくれるとはね」

来ヶ谷「勿論だ。逃げていては始まらないからな」

言われた通りにやってきた来ヶ谷、ただし、セリフとは裏腹に少しでも危険を感じたら即逃げ出す準備をしている。ここで自分が倒れれば、それこそ終わってしまう

理樹「まずこの世界についてだけど……ここは僕が作ったんだ」

来ヶ谷「そうか……正直あまり驚きはしなかった……しかし、何故わざわざこんな世界を作ったんだ?それにあそこまで性格を変えて……」

この質問に、理樹は答えられない、いや、答えるのを躊躇っていた。

理樹「……それは見たほうが早いよ」

パラパラっ……

床に写真を落とす理樹、すかさず来ヶ谷は拾うが…-

来ヶ谷「……な、なんだ、これは……!?」


写真の中には、変わり果てた姿をした友人たちの姿であった

来ヶ谷「答えろ……何故こんなことをしたんだ?」

理樹「理由……僕にもよく分からないや」

来ヶ谷「貴様ぁ!!!惚けるのも大概にしろ!!!!」

普段は冷静な来ヶ谷が激昂する。クラスメイトに激怒し、ドアを蹴り飛ばしたあの時の……いや、それ以上かもしれないレベルに

来ヶ谷「君は……いや、なんでもない。間違いなく君は直枝理樹だ。そして……鈴君やクドリャフカ君、その上西園女史に恭介氏を殺した『敵』だ」

理樹「……」

理樹「そうだよ、僕が鈴達を殺したんだ。いや、それだけじゃない。来ヶ谷さんでも気づかなかったけど……誰よりも最初に殺したのは杉並さんなんだ」

来ヶ谷「……」

理樹「そしてその次は笹瀬川さんの取り巻き達、その子達が殺されかけてる中で笹瀬川さんを連れて行った時は傑作だったなぁ……みんな揃って『佐々美様助けて!」なんだもの。その佐々美さんは既に手足を切り落とされてるのに……それで最後はこんな事まで「黙れ!!!!!!!」

来ヶ谷「もういい……貴様は私が始末してやる。一切の慈悲は与えん」

理樹「へぇ……そんな酷いこと言うんだ。来ヶ谷さんも僕の事なんて何一つ分かってないよ……」




来ヶ谷「……何が分かっていないと?」

訝しむように視線を向ける来ヶ谷。目の前にいる少年は、以前の気弱な姿ではなく、しっかりとこちらを見つめている。

「おっと、その話は俺からしようか」

理樹「っ!?な、なんで……?」

恭介「全く……もともと最初にこの虚構世界を生み出したのはこの俺だ。お前じゃあ完全にコントロールはできない」

恭介「……理樹、お前の気持ちは分かってる。お前も怖かったんだろう?」

来ヶ谷「な、何をいきなり……!自分自身も一度殺されかけたのをもう忘れたのか?」

いきなり理樹を庇う恭介に驚く来ヶ谷、しかし、恭介は話すのをやめない







恭介「俺はお前にやられる瞬間ら既視感を覚えたんだ……そう、負けるハズが無かったのにも関わらず、朱鷺戸沙耶に負けた事をな」

理樹「……!」

恭介「あの時の沙耶はいわば殺されすぎのせいで痛みを快感に感じるようなマゾヒストになっていた。その為に俺が不覚を取った訳だが……問題はそこじゃない、何度も殺された沙耶だけではなく、それを目の前で見続けていたお前に対する影響だ」

恭介「ま、簡単に言っちまうと……お前は沙耶の逆、サディストな性格が刷り込まれちまった訳だ」


言われてれば、休み明けから理樹の様子はおかしかった。妙に強い口調で接したり、野球をやっていても他の選手に高圧的に接している事が目立ち始めた

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