おっさん「無職になったし勇者でも始めてみるか」(9)

会社をクビになってから半年が経った頃、とある男の元に一通の手紙が届いた

『ゆうしゃはじめてみませんか?』

おっさん「何だこれ」

その一文だけ書かれた一枚の紙切れ

ただの悪質ないたずらだと思った男はゴミ箱に捨てた

おっさん「はぁ…」カチカチ

男はパソコンで就職支援サイトへアクセスし今日も自分に出来そうな仕事を探す

貯金も残り数十万といったところでもうそろそろ後がない

おっさん「ん?」カチッ

男はある広告に目が止まった

広告『ゆうしゃ募集中!適正者には通達済み!』

おっさん「…これって」カチカチ

男は広告のリンクを踏み専用サイトへと飛んだ

おっさん「…」

そのサイトは国家が運営している対魔王軍に対するゆうしゃ募集のサイトであった
広告自体も適正者が契約しているプロバイダのみに表示されるようになっており
サイト中央に希望者には期日にとある場所へ集合してもらうよう案内も載せてあった

おっさん「だが待てよ・・・何で俺にゆうしゃの適性なんかがあんだよ」

???「それについては私が説明させていただきます」

おっさん「…!?」

1人しかいないはずの部屋に唐突に女性の声が響き渡る

おっさん「だ、誰だ!?何処から入った!」

男は嫌な汗をかきはじめた。それと同時にとある不祥事で会社を
辞める羽目になった苦い過去が脳裏をよぎる

女性「いきなり出てきて申し訳ございません。わたくしは通達した手紙に
同封されていたあなた専用のアンドロイドでございます」

おっさん「アンドロイド・・・?」

アンドロイド「はい。あなたが手紙を開封したのと同時に私はこの場所へ
国の機密機関から転送されて参りました」

おっさん「転送?成人女性サイズのものをデータ転送したと?
おまけにそれの受信機はどこにあるんだ?大体データを可視化するにしても
こんなくっきり立体的に…影があるということはこの場に存在しているよな?」

現代の科学力では説明のつかない登場方法をした女アンドロイドに男の疑問は尽きない

アンドロイド「これらは国が公表していない技術である『魔力』の一端です」

おっさん「魔力?数年前から現れた魔王や魔物が使うアレか?」

アンドロイド「ええ。その技術を会得した一部の科学者が私たちをこのように
『ゆうしゃ適正者』のもとへ転送しているのです」

おっさん「…」

アンドロイド「にわかには信じ難いかもしれません。まだあなたはこれらの技術と
干渉し合うことのない世界でしか生きてこなかったわけですから」

おっさん「…まあいいや。それで何で俺が適正者なんだ?
もっと若くて力のあるやつの方がゆうしゃなんて向いてるんじゃないか?」

アンドロイド「…それにつきましてはサイトに記述してある場所にて後日説明いたします」

おっさん「…」

半年も無職で過ごしたからだろうか。案外このファンタジックな出来事も
それほど驚嘆せずに受け入れ始めている自分がいることに情けなさを感じた

後日

仕事もしておらず暇な男は指定の場所へと向かった
そこは王都にあるビルの最上階で関係者以外は立ち入り禁止だった
男はエレベーターに乗り、まず誰でもいける一番高い階へと向かう
そこでスーツの男が案内人として待っているので声を掛けるところから始まる

おっさん「どうも」

スーツの男「上の階でのパーティの参加者でしょうか?招待状を拝見できますか?」

おっさん「はいはい」ぺらっ

スーツの男「確認致しました。では案内いたしますのでこの階層の外にある非常階段まで御同行ください」

おっさん「なぁ…やっぱりこれって機密事項なの?パーティとかいってるし」

スーツの男「…」

男は黙って答えなかった

おっさん「…やれやれ」

ゆうしゃってもっと華やかになるものではないのかと皮肉な笑みを浮かべた

非常階段を登りビルの最上階のさらに上の階層にある一室へと移動した

そこは広大な面接会場のようになっており男以外にも3人の一般人の姿があった

彼らは並べられた椅子に横一列に座らされており1つだけ空席があった

恐らくここが自分の座る場所なのだろうと思った男はその席へと向かった

席に着いた男はとりあえず隣にいた別の男性へと話し始めた

おっさん「…あなたも適正者とかなんとかで?」

白髪の男「えぇ…何やら『そうりょ適正者』とやららしくて」

おっさん「そうりょ?ゆうしゃじゃなくて?」

白髪の男「はい…」

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