P「季節の変わり目に油断していると風邪を引く」(18)



ありす「プロデューサーさん。確か、もうすぐ誕生日でしたよね」

P「明後日が誕生日だけど、それがどうかした?」

ありす「せっかくですから、なにか手料理でお祝いがしたいと思いまして!」

P「おおっ……! それはありがたい。で、なんの料理を作ろうとしてたわけ?」(タブレット覗き込み)


い ち ご パ ス タ


P「わかってたけどやっぱりそれかぁ!! 橘のクックパッドにはいちご料理しか公開されてないのか!?」

ありす「失礼なこと言いますね……ちゃんと他の料理も掲載されてますよ。ほら、これを見てください──」


いちごのベーグル by歩くラクロス


P「これ間違いなく知ってる人だよ!? ていうか確実に新田さんだよね!! なんで彼女もいちご教の信者になってるの!?」

ありす「匿名のレシピ投稿者を捕まえてなに言ってるんですか……連想できる単語だけで決めつけないでください」

P「いや、まあ……その、言われてみればその通りではあるんだけど。なんていうか、最近いちご食べさせられることが多くて、変に勘ぐってたところあるから」

ありす「他のレシピを見れば、誤解だったと気がつくはずです」

P「あ、ああ。他の投稿者を見せてくれるかい?」

いちごミルク byゆるふわタイム

いちごムースタルト by真夏の夜のゆーみん


P「知人ばっかりじゃんか!! なんでみんな揃っていちご料理投稿してんだよ!!」

ありす「ところでプロデューサーさん。どうやったら世界が平和になると思います?」

P「なんで今その話したの!? 世界平和といちごに関係性ある!?」

ありす「いちごパフェが食べたいです」

P「お腹空いてるなら最初からそう言って!!」


文香「…話は全て、聞かせてもらいました…」バンッ!!


P・ありす「そ、その声はッ!!」


文香「…お二人に、本物のいちご料理というものを…お教えしましょう」

P「すげえ!! 鷺沢さんが究極のメニューの担当みたいになってるッ!!」

文香「私が紹介したい料理は…こちらです…」


い ち ご


ありす「……見たところ、ただのいちごですが」

文香「侮るなかれ…昨今の料理は素材の味を活かさず、余計なソースや調味料で真の美食から遠ざかるばかり……その点、この料理を見てください。どこからどう見ても、ただのいちごでしかない」

P「つ、つまり──」



幸子「やっぱりボクが世界で一番カワイイってことですね!!」シュババババ(走り寄ってくる音)



ときをこーえて 君を愛せるか ほんとうに 君をー まーもれるか♪(CV:高垣楓)


文香「………………」(左脇に抱えていた書物を振り被る音葉)

P「やめろォ!! 鷺沢ァ!!」ガシッ!!



この世には目には見えない闇の住人たちがいる

奴らはときとして牙をむき、君達を襲ってくる

彼女は…そんな奴らから君達を守るため、地獄の底からやってきた

正義の使者──なのかもしれない…

ちひろ「なんやかんやあって右手が鬼の手になりました」

P「なんやかんやって一体何なんです!?」

ちひろ「なんやかんやはなんやかんやです!!」

P「あっ、はい、ごめんなさい」

ちひろ「この手があれば、もうスタドリの仕入れ先に法外な値下げ要求したりSSR排出率絞ったりしなくて済みます」

P「一体どんな使い方するつもりなの!? ていうか、えっ…やっぱりSSR排出率絞ってたんですか? 僕がそのせいで一体どれだけの憎しみに苛まれてきたと思ってるんです?」

ちひろ「誇りで飯が食えるんですかねぇ……」

P「汚ねえッ!! この事務員、金にがめついだけじゃないっ……! においが…においがする……生まれついての悪(ワル)のにおいだッ!!」

ちひろ「ではさっそく使ってみましょう。プロデューサーさん…少し手を握りますよ」

P「はあ、別に手を握るぐらいどうってことありませんけど。これになんの意味があるんです?」

ちひろ「鬼の手にはあらゆる霊体を引き裂き砕く、剛力があります。ですが、凄いのはそれだけじゃないんです」

P「へえ、じゃあ他になにが──」


ちひろ「相手の気持ちを読み取ったりできます」


P「それってつまり、心の中がコンビニのエロ本コーナーの表紙並に丸見えってことですよね……! 隠してることも、全部知られてしまうってこと!?」

ちひろ「宇宙天地 與我力量 降伏群魔 迎来曙光 鬼の手よ、今こそその力を示せッ……!」
(うちゅうてんち よがりきりょう こうふくぐんま ごうらいしょこう)


P『好きだ』


あーの日 あの時 あの場所で 君に会えなかったらー 僕らーはいつまでも 見知らぬ二人のまま♪(CV:高垣楓)


ちひろ「あのっ、す、すいません……冗談半分だったんです…悪気はなくて…その──」バッ!!

P「千川さん」(手を再び握り返す音葉)

ちひろ「はっ、はい!!」

P「千川さんは蕎麦屋の厚い湯呑と、高嶺の薄いティーカップ……どちらが割れにくいと思います?」

ちひろ「それは、やっぱり……湯呑みに決まってます。薄い器は、すぐに割れてしまうから」

P「それでも……! それでも、高嶺のティーカップは割れません」

ちひろ「どうして?」


P「大切にされるから。僕が大切にするからです」

ちひろ「プロデューサーさん……」

エンダァァァァアアアアイヤァァアァァアアアアア!!!


ありす「………………」


P・ちひろ「めちゃくちゃこっち見てる!?」

ありす「……やりようはいくらでもあるんですよ」グギギッ…


P「な、なんて冷たい目…養豚所のブタでも見るかのように残酷な目だ……冷たい目だ!」

ちひろ「アイドルが『かわいそうだけどあしたの朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね!』みたいな顔をしてちゃダメですよ!」

ありす「愛は惜しみなく奪うものだと書いてありました……文香さんから借りた本に」

P「鷺沢ァァァァ!!!!」


書物が橘の見聞を広めた

3

裕子「……私、アイドル辞めようかと思ってるんです」

早苗「いきなりなに言ってんの、この娘!? アニメのちゃんみおにだってもうちょい前振りあったよ!!」

裕子「だって、だって……こんなにもファンの人達が応援してくれたのに、私…総選挙で結果を残せなかったから……みんなに申し訳なくて…」グスッ

早苗「ああ、そういうことね…それぐらいで落ち込んでどうするのよ。中間発表の時点で圏外だった人達のことも考えてみなさい」

裕子「言われてみれば……確かに…」

早苗「ユッコちゃんは悩むところ間違えてるの。引くか引かないかをうじうじ悩むぐらいだったら、どうやったら上にいけるかを考えた方がいいわ。辞めるのはできること全部やってからでも遅くない……違う?」

裕子「え、ええ、その通りです!!」


雫「じゃあ、手始めに脱いでみましょうかー」


裕子・早苗「何故ぇ!?」

雫「えー、だって裕子ちゃんは一番になりたいんですよねー。だったら、一位の人の真似をするのが手っ取り早いんじゃないですぅ?」

裕子「でも菜々さん脱いでなかったですよね!? アイドル年齢的にはギリギリッスのツカギリスぐらいギリギリだったけど、見事一位に輝きましたよね!?」

早苗「いえ、どちらかというとKAT-TUNのグループ存続ぐらいギリギリだったわ」

裕子「リアルフェイスッ!?」

早苗「つまり、新たなキャラ付けを試みることでユッコちゃんのキャラの弱さを補おう…ということね!!」

雫「ざっくり言うとそんな感じですー」

裕子「ざっくりしすぎでしょ!! なんで新たなキャラ設定に脱衣を追加しなくちゃいけないんですか!!」

雫「趣味『サイキックトレーニング・脱衣』とか、まるで痴女みたいですねー」

裕子「他人事だと思って言いたい放題言いやがりましたね! サクマドロップスがハッカ味にしか感じなくなるエスパーかけてやる!!」

雫「……ゆ、裕子ちゃんは、飾らない…ありのままの、裕子ちゃんが一番ですよ」


早苗「折れるのはやッ!! どんだけハッカ味嫌いなのよ!」

雫「心という器は、ひとたび…ひとたびひびが入れば二度とは…二度とは…」

早苗「どうすんのよ、これっ! めちゃくちゃテンション低くなっちゃったじゃない!?」

裕子「冗談のつもりだったんですが、まさかこれほどまでにダメージがあるとは──」


P『ユッコや、よくお聞きなさい』


裕子「ムムッ、なにやら脳内に直接語りかけてくる妖しい声が!?」

P『お前は今後、みくにゃんのように隠れメガネキャラとなるのです』(願望)

裕子「何故ぇ!?」

P『お前は自分の中に隠された秘めたる力に気がついていない。今こそ、その力を解放するべきなのです』

裕子「私の中に隠された力、それは一体──!?」


P『それは、JK力です!!』


裕子「JK力だってぇぇぇ──!! すいません、JKってなんですか」

P『そこから説明しないとダメ!? もうちょっと考えようよ! 答えとかすぐ出るから!』

早苗「常識にとらわれない片桐の略よ」

裕子「私の中にある……常識にとらわれない早苗さん…? わかりません…世界の不思議は、宇宙の心はどうして、こうも私を責め立てるのでしょう…」

P『片桐ィィ!! ギルティッ!! 唐突に横槍入れたからユッコが思考停止してるじゃねえか!!』

早苗「がんばって、ユッコちゃん……今日をがんばり始めた者にのみ、明日が来るのよ…!」


裕子(ハッ…!? そ、そうでした! 暗く落ち込んでばかりでは、みんなを笑顔にするエスパーなんて使えるはずもありません。JK力とはすなわち、常識にとらわれない早苗さんのように、自由で元気に愛嬌良く振る舞える力のことっ…!! プロデューサーは、きっとそのことを伝えたかったんですね)


裕子「はいっ! よくわかりませんけど、みんなの期待に応えられるよう、サイキックアイドル・ニューエスパーユッコとしてがんばります!」

P『がんばれユッコ、お前が未来のナンバーワンだ!!』

裕子「私はようやくのぼり始めたばかりです! この果てしなく長いアイドル坂を──!!」


とりあえず次のライブは制服でステージに立つことにしたユッコだった

制服ユッコとかいうエスパー美少女と青春したい。
登場した料理のレシピは全てクックパッドに投稿されています。
お暇な方は作ってみてはいかがでしょうか。
短いですが、読んでくださった方…ありがとうございました。

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