梨子「私はレクイエムを捧げる」 (67)

前に書いた物の修正版です。

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梨子「あれから何年経ったのかしら・・・」

作曲に没頭していた彼女はついに最後のページを書き終えた。

左腕を押さえながら椅子に座り、一枚の写真を見ている。

梨子「みんな・・・」

彼女はそう呟き、ゆっくり目を閉じた。

ーーーーーーー

千歌「みんなで遊びに行こうよ!」

ダイヤ「急にどうしたんですの?」

千歌「なんかさ、最近練習ばっかりで全然休めてないじゃん!」

果南「確かに・・・」

千歌「だから、たまには何処か行って息抜きしたくない?」

善子「まぁ…でも、何処かって、案はあるの?」

千歌「うん。一カ所面白そうな場所があるんだ!」

ーーーーーー
一週間後 山道入口

善子「ど、どうして山なのよ!」

曜「まぁまぁ」

鞠莉「それにしてもこんな場所に山道なんてあるのね」

果南「えーっと、アザミ山道?」

八人「アザミ山道?」

果南が見ていたのは古い立て札。そこには『唖坐魅山道』とあり、上には『アザミ』と書かれていた。

梨子「アザミって花だよね?」

花丸「そうずら」

果南「まぁ、面白そうだし行ってみよ」

曜「ヨーソロー!」

彼女たちは山道に入っていった。

山道は多くの木に囲まれ薄暗く、とてもじめじめしていた。道は整備されているが、人がいる気配はない。

ダイヤ「薄暗いですわね」

千歌「懐中電灯持ってきて良かったね」

ルビィ「ピギィ!何か、鳴いてるよ?」

花丸「大丈夫ずら。ただの鳥ずら」

果南「ダイヤ~鞠莉~」

ダイヤ「果南さん、涙目ですわよ」

善子「くっくっくっ・・・闇に住み着きリトルデーモン達よ・・・」

花丸「善子ちゃん、入る前とは大違いずら」

善子「善子じゃなくてヨハネ!」

数十分後

果南「やっと明るい道になったね」

曜「みんなは?」

善子「疲れた・・・」

鞠莉「I'm tired…」

千歌「もう少しゆっくり…」

梨子「そういえば千歌ちゃん、ここには何があるの?」

千歌「分からない」

梨子「え?」

千歌「なんか、うちに泊まった人がここに面白い場所があるって教えてくれたんだ」

梨子「はぁ・・・」

曜「何だろ、あれ?」

曜が見つけたのは古い、人工的なトンネル。

ダイヤ「トンネル・・・ですわね」

鞠莉「入ってみる?」

梨子「やめておいた方が」

花丸「この先は展望台ずら」

梨子「?」

花丸は近くにあった立て札を指差した。立て札には確かに『この先展望台』と書かれていた。

曜「どうする?」

千歌「うーん」

その時、強い風が吹いた。

曜「うゎ、すごい風!」

風はすぐに止まったが、梨子は今の風が不気味に思えた。

梨子(風でこんなに鳥肌が立つのは初めて…)

千歌「よし!」

千歌「せっかくだし、行ってみヨ」

千歌の一声で各自トンネルに入っていく。

果南「梨子ちゃん、大丈夫?」

梨子「だ、大丈夫です…」

果南「そう。なら早く行こ」

果南に連れられ、梨子もトンネルに入る。

トンネルの内部は懐中電灯のおかげで明るいが、山道よりじめじめしていた。また、虫の姿はないが、雑草が一面に生えている。

曜「千歌ちゃん、頭に何か付いてるよ」

曜は千歌の頭から一枚の花弁を取った。

千歌「ありがと、曜…ちゃん」

ダイヤ「ルビィ、転ばないように気を付けなさい」

ルビィ「うん!」

しばらく進むと曜が足を止めた。

曜「道が三つに分かれてるヨ?」

果南「何か、道を示すものはない?」

全員で探すが見つからない。

鞠莉「どの道に進むの?」

千歌「三つに分かれて進んでみたら?」

果南「それだと、展望台に行けるのは三人だけになるよ」

花丸「マルも、果南ちゃんの言う通りだと思うずら」

善子「どうするの」

梨子「・・・?」

梨子「あれ、何か空気が重く・・・」

ルビィ「うっ」

善子「ル、ルビィ、大丈夫!?」

善子の慌てた声を聞き、後ろを振り向くとルビィがふらつき、今にも倒れそうになっていた。

花丸「ルビィちゃん、しっかりするずら!」

皆でルビィを支えようとすると、

果南「うぅ・・・」

ダイヤ「何故でしょう…急に…目眩が」

鞠莉「果南!ダイヤ!」

千歌「みんなしっかりして!」

果南とダイヤも急に倒れてしまった。

倒れた果南とダイヤを鞠莉と曜が、ルビィは花丸と善子が支えていた。

梨子(わ、私も手伝わないと・・・)

梨子も皆を手伝おうとするが、急に激しい目眩に襲われた。

梨子「あぁ・・・」

千歌「梨子ちゃん!」

千歌が梨子の様子に気付き、急いでやってきたが、千歌の手が届く前に彼女は倒れてしまった。

目の前が真っ白になった。

意識が段々と遠くなっていく。

誰かが呼んでいる。

そう、誰かが・・・

ーーーーーー
「梨子さん、梨子さん」

梨子「うぅ・・・」

倒れていた彼女は目を覚ました。

起き上がってみると視界に見慣れた顔が入った。

梨子「ダ、ダイヤさん!」

ダイヤ「梨子さん、ご無事で何よりですわ」

ダイヤの話では、彼女もついさっき目が覚めたらしい。

近くには梨子と曜が倒れており、一人での行動は危険と思ったため、二人が目を覚ますのをまっていたらしい。

ダイヤ「そういう訳です」

梨子「そうだったんですか・・・」

曜「あれ、二人共どうしたの?」

梨子「曜ちゃん!」

曜「えーっと、ここ何処ですか?」

ダイヤ「私に聞かれても分かりません…」

梨子「ダイヤさん、他のみんなは・・・」

ダイヤ「残念ながら、見ていません」

曜「これからどうします?」

ダイヤ「まずは他の人達を探してみましょう…」

梨子「そう、ですね」

梨子「もしかして、あれって」

三人は木に囲まれた道を歩いていた。そこで、梨子はあるものを見つけたのだ。

曜「これは・・・」

ダイヤ「立て札ですわね」

曜「ハナズオウ樹海って書いているよ」

ダイヤ「ハナズオウ・・・」

曜「何々、『迷わず進み宝玉に触れろ 望む者はそこにある 迷いは死を招く』」

梨子「死って・・・そんな事」

ダイヤ「そんな事あるはずないですわ!」

曜「ダイヤさん、落ち着いて・・・」

ダイヤ「すいません・・・」

梨子(ダイヤさん、どうしたんだろう…)

曜「でも、このまま進めばこの宝玉も他のみんなも見つけられるじゃない?」

ダイヤ「それはそうかもしれませんが…」

曜「望む者はそこにあるって書いてあるし、もしかしたら合流出来るかもしれないよ!」

ダイヤ「仕方ありません…このまま進みましょうか・・・」

ーーーーーー

ーーーーーー
果南「『隠されし道を進め 仏の持つ宝玉に触れろ 探し人はその中に』?」

ルビィ「つまり、どういう事ですか?」

千歌「要するに、道を進んで仏様が持つ宝玉に触れれば、みんなに会えるって事だよ」

三人は今、霧のかかった草原にいた。

ルビィ、果南、千歌はそれぞれこの草原で合流し、この立て札を見つけた。

果南「じゃあ、どうする?」

ルビィ「ルビィは、先にみんなを探した方が・・・」

千歌「でもさ、立て札には宝玉に触れるとみんなに会えるってあるんだよ!」

果南「うーん、千歌の言う通りかも。ルビィちゃん、悪いけど先に宝玉を探してみよう」

ルビィ「は、はい」

果南(それにしてもここ、フキノトウがいっぱいあるな…)

ーーーーーー

ーーーーーー
善子「何、この漆黒に染まりし巨大な城は!」

花丸「善子ちゃん、城じゃなくて館ずら」

善子「ヨハネ!」


鞠莉「うーむ、入るべきか入らないべきか・・・」

花丸「鞠莉ちゃん、どうするずら?」

鞠莉、善子、花丸は平野にそびえ立つ大きな館の前に立っていた。

三人共違う場所で目を覚ましたが、それぞれこの館を目指し歩いた結果、合流する事が出来た。

シャン シャン

鞠莉「二人共、何か聞こえない?」

善子「何も聞こえないけど」

花丸「いや、確かに何か聞こえるずら。善子ちゃん、良く耳聞いてみるずら」

善子「わ、分かったわよ」

シャン シャン

善子「!」

鞠莉「何か、悪い予感がするわね…」

花丸「しかもこの音、段々こっちに近づいてる気がするずら」

善子「ど、どうするの?」

鞠莉「とりあえずこの館に隠れるしか・・・」

ーーーーーー

ーーーーーー
果南「何かあった?」

千歌「全然・・・」

ルビィ「こっちも・・・」

果南「そうだよね・・・あるのは草ばかり・・・」

ルビィ「あ、あそこ」

千歌「ん?」

ルビィ「あそこです」

ルビィは丸太が積み重ってある所を指差していた。

果南「ちょっと行ってみようか」


果南「これって、階段?」

ルビィ「そうみたいです」

千歌「登ってみない?」

果南「本気?」

千歌「もちろん。私は早くみんなに会いたい」

果南「千歌…」

ルビィ「ルビィも・・・花丸ちゃんや善子ちゃん、それにお姉ちゃん、みんなにも会いたい」

果南「二人共・・・分かった。それじゃあ、登ってみよ!」

千歌「うん!」

千歌「な、長いよー」

果南「そう?」

千歌「ルビィちゃんは大丈夫?」

ルビィ「ハァハァ…大丈夫…です」

果南「あ、そろそろだね」

果南はそう言うと最後の段を登った。

千歌「着いたー!」

ルビィ「や、やっと・・・」

千歌「あれ、果南ちゃん?」

果南「ち、千歌・・・」

千歌が周りを見てみると、多くの石が立ててあるのに気付いた。

ルビィ「ここって、もしかして、お墓?」

果南「あああ、あれ・・・」

果南が指差した先には何か白いものがあった。

ルビィ「えっ…あれ」

千歌「人の骨・・・」

ーーーーーー

ーーーーーー
梨子「あ、あの」

曜「どうしたの?梨子ちゃん」

梨子「その、さっきから誰から見られてる気が・・・」

曜「きっと、気のせいだよ」

曜「さぁ、どんどん進も!」

梨子(曜ちゃんの言う通り、気のせいだといいけど・・・)

ダイヤ「り、梨子さん」

ダイヤは小声意を決したような顔をし、話かけてきた。

ダイヤ「実は私も誰かに見られてる気がするんですわ」

梨子「ダイヤさんもですか」

ダイヤ「はい・・・」

ダイヤ「あと、知っていますか?ハナズオウの花言葉・・・」

梨子「え、いや知りません…」

ダイヤ「そうですか・・・」

梨子「花言葉が何かあるんですか?」

ダイヤ「あ、いえ…何でもないですわ」

ガサッ ガサッ

曜「誰!?」

梨子「何?」

「コ……ス 二ン…ゲ」

「シ…」

ダイヤ「な、何ですのこの声・・・」

しばらくすると、声の主の姿が現れた。

「ニン…ゲ…ン キエ……」

その姿はとても不気味だった。

顔には仮面を被っており、白い袴着のような服を着ている。

梨子「手に持っているのってまさか・・・」

その仮面の者は、日本刀を手に持っていた。

仮面「ニンゲン……シ……ネ」

そう呟くと、日本刀を梨子に向けた。

梨子(こ、殺される…)

ダイヤ「梨子さん、走って逃げますわよ!」

ダイヤは梨子の腕を掴み、全速力で走り出した。

仮面「ニガサナイ……」

ーーーーーー

ーーーーーー
善子「失礼します・・・」

花丸「誰かいないずら?」

三人は扉を開き、館の中に入った。

鞠莉(館の中に入れたから、少し安心は出来る。でも、またあの音が近づいてくると思うと、身震いするわね)

花丸「それにしても」

善子「物凄く豪華な館ね」

エントランスは赤いカーペットが敷かれ、天井には大きなシャンデリアがあった。壁の模様も美しく、階段の横には騎士の像が置いてある。

鞠莉「左右どちらにも廊下があるのね」

花丸「あと、階段もあるずら」

鞠莉「さて、どうする・・・」


カチャ

善子「何、今の音?」

鞠莉「今の音ってまさか・・・」

鞠莉「善子、扉を開けて!はやく!!」

善子「え?あ、うん」

善子は扉を開こうとした。しかし、

善子「あれ、開かない…」

鞠莉「やっぱり・・・」

花丸「鞠莉ちゃん?」

鞠莉「落ち着いて聞いて。私達は多分、この館に閉じ込められてしまったわ…」

善子「閉じ込めらたって・・・本当に?」

鞠莉「Yes」

善子「でも、どうして?」

鞠莉「分からない…」

花丸「どうやってここから出るずら?」

鞠莉「・・・」


善子「こ、こういう時は鍵を見つければ出れるんじゃない?ゲームだってそうだし・・・」

花丸「うん。この館を調べる必要はあると思う」

鞠莉「確かに、そうね、分かった。じゃあ、何処を最初に調べる?」

善子「ここは、無難に右からじゃない?」

ーーーーーー

ーーーーーー
ルビィ「ピギィ!また骨・・・」

千歌「隠されし道、全然見つからないね・・・」

果南「そ、それにしても、このお墓、何も書いてないね」

ルビィ「た、確かに…」

千歌「あ、見て!あそこ」

ルビィ「これって…家?」

果南「廃屋みたいだね」

千歌「隠されし道ってここかなぁ」

果南「一理あるね」

千歌「じゃあ、入ってみるよ」

ルビィ「はい!」

ルビィ(これで、やっとみんなに会える・・・)

千歌「お邪魔しまーす」


ルビィ「ほ、埃がすごい・・・」

果南「しかも、何か生臭い…」

千歌「人は住んでいなそうだね」

果南「そうみたい…」

廃屋の中はボロボロで、色は良く分からないが多くのシミがあった。

千歌「あれ、仏様じゃない?」

千歌は奥にあった古い仏像を見つけた。

ルビィ「ボロボロ・・・」

果南「手に何か持ってない?」

千歌「いや、何も」

ルビィ「でも、下を指差してるよ」

果南「下を…もう少しここを調べてみよ?」

ルビィ「み、見て!」

千歌「どうしたの?」

ルビィ「ここ・・・」

ルビィは床に置いてある木材を見ていた。
良く見ると少しだけある隙間から光が漏れていた。

果南「よいしょ」

果南が持ち上げると、下にスペースがあった。

ルビィ「これって、隠し階段?」

千歌「そうみたいだね」

ーーーーーー

ーーーーーー
館一階 西館

鞠莉「こっちも開かない・・・そっちは?」

花丸「ひ、開いたずら」

鞠莉「じゃあ、その部屋を調べましょ」

エントランスから右に進むと二つの扉があった。

しかし、どちらも開かなかったため、反対側の廊下を進んだのだ。

善子「広い・・・」

部屋の中を見ると、書斎のようだった。

鞠莉「棚とか色々見るわよ」


花丸「難しい本がいっぱいあるずら」

善子「こっちも」

鞠莉「!」

花丸「善子ちゃん、この花、なんて名前ずら?」

善子「ヨハネ。どれ?」

花丸が見ていたのは、青色の花だった。

善子「知らないわね」

花丸「鞠莉ちゃんは知らないずらか?」

鞠莉はハッとすると引き出しを閉め、花を見に来た。

鞠莉「これは、オダマキだった気が・・・」

花丸「オダマキ・・・ずら?」

鞠莉「えぇ・・・ふ、二人共、ここは特に何もなさそうだし、次行きましょ!」

善子「まだよく見てないんだけど」

鞠莉「マリーがちゃんと調べたから平気よ」

善子「そ、そう・・・」

ーーーーーー

ーーーーーー
梨子「ハァハァ」

彼女は一人、木に寄りかかっていた。

梨子(あの仮面の声は聞こえなくなったけど、二人とはぐれちゃった…)

梨子(動きたくない・・・見つかったら次こそは殺される・・・でも、二人と合流しないと・・・)

彼女は覚悟を決め、周りをしっかり見渡し、また動き始めた。

彼女は走った。なるべく音を立てず、速やかに。

梨子「も、もう少し・・・」

何とか樹海を抜け出した。

梨子「ハァハァ…ここなら見通しも・・・」

グチャ

嫌な音がした。何かが落ちた音だ。

梨子「ま、まさか・・・」

彼女は急いで音がした方へ向かった。

音のした場所は崖だった。

梨子「う、嘘・・・」

崖を見下ろすと、下に黒髪の女性が倒れている。

梨子「ダ、ダイヤ・・・さん」

ーーーーーー

ーーーーーー
果南「ここは牢獄かなぁ」

地下階段を降りた先は、鉄の柱で囲まれている牢屋だった。

千歌「牢屋の中にも人がいたみたいだね」

千歌はそう言うと牢屋の中を指差した。

その先には白骨化した遺体があった。

果南「え…ここにも・・・」

ルビィ「もう・・・やだ・・・」

千歌「ルビィちゃん・・・」


果南「あ、あそこにあるのって!」

果南が急に大声を出した。

千歌「どうしたの?果南ちゃん」

果南「見つけたんだよ、隠されし道を!!」

ーーーーーー

ーーーーーー
館二階 東館

善子「ここも、本棚ばっかりね」

花丸「隣の部屋と同じみたいずら」

鞠莉「あれは」

鞠莉は一人、中央にある机に近寄った。
そして、机の上に置いてあった本を開いた。

花丸「鞠莉ちゃん?」

鞠莉「・・・」

鞠莉「これは、恐らく・・・」

本と一緒に置かれていた紙に何かを書き始めた。

鞠莉「よし」

彼女はペンを置き、紙を折ると、花丸に手渡した。

鞠莉「これは、みんなが合流した時に見て」

花丸「わ、分かったずら…」

鞠莉「そういえば、善子は?」

花丸「善子ちゃんなら、廊下で何か見てたずら」

善子「・・・」

鞠莉「善子?」

廊下で善子が見ていたのは一枚の絵だった。

鞠莉「奇妙な絵ね…」

絵にはボロボロの衣服を着た人達が、高貴な衣服を着た人間に痛めつけられているような絵だった。

鞠莉「?」

鞠莉(どうしてこんな所に仮面を飾っているのかしら?)

変に飾られた仮面に鞠莉は目を向けた。

鞠莉(異様な仮面ね・・・)

彼女が仮面を壁から外す。

鞠莉(何か、この仮面がすごく気になる…)

鞠莉「!」

鞠莉「あったわ!」

善子「え?」

仮面の裏には何か貼られていた。

善子「か、鍵!」

ーーーーーー

ーーーーーー
曜「梨子ちゃん」

梨子「うっ…曜・・・ちゃん?」

ショックで気絶していた梨子は目を覚ました。

曜「梨子ちゃん、大丈夫?」

梨子「うん…で、でもダイヤさんが…」

梨子が言い終わる前に、曜は思いっきり彼女を抱きしめた。

曜「ごめん……守れなくて…」

梨子「曜ちゃん・・・」

ガサッ ガサッ

仮面「フッフッフッ……ミツ‥ケタ」


梨子「そんな・・・」

曜「梨子ちゃん、走って!」

ーーーーーー

ーーーーーー
ルビィ「ほ、本当に?」

果南「うん!」

千歌「隠されし道は何処にあったの?」

果南「見て、これを!」

果南が見せたのは地形図のようだった。

果南「壁に掛けられてたれだ」

その地形図を見てみると、廃屋の裏に階段があり、その先には大仏像と書かれていた。

ルビィ「それじゃあ、ここにいけば・・・」

果南「そう。みんなに会えるかもしれない」

千歌「なら、早く行こう!」

果南「もちろん、気を付けてね…」

果南「ここが階段みたいだね」

ルビィ「た、高い…」

シャン シャン

ルビィ「ん?何か聞こえたような…」

千歌「頂上目指して進もう!」

果南「おお!」

ルビィ(気のせい・・・かな)

千歌「きつい・・・」

果南「ほら、千歌。さっきの気合は?」

千歌「こんなにも長いなんて思わないじゃん!」

シャン シャン

ルビィ(やっぱり…聞こえる…)

ルビィ「あの、何か音が聞こえませんか?」

果南「音?」

シャン シャン

果南「言われてみれば…」

千歌「確かに」

シャン シャン

果南「音がどんどん大きくなってない?」

ーーーーーー

シャン シャン

千歌「そうだね。この階段を登っているみたい・・・」

シャン シャン

果南「と、とにかく早く行こう!」

果南(分かんないけど、追い付かれたらダメな気がする・・・)

果南(早く・・・)

三人は今までにないほどのスピードを出して走った。

そして、ついに仏像の場所に辿り着いた。

ルビィ「ハァハァ…」

千歌「あそこ!」

千歌は仏像の持つ宝玉を指差した。

果南「あれに触れば…」


「マテ…」

「ニガ…サナ……イ…ゾ」

ルビィ「ピギィ!」

千歌「何、この声?」

果南「みんな早く触って!」

果南の合図で一斉に宝玉に触れた。

ーーーーーー

ーーーーーー
館二階 東館 廊下

善子「まさか、仮面の裏に鍵があったとはね」

花丸「鞠莉ちゃんのお手柄ずらね」

鞠莉「えぇ」

花丸「鍵も見つかったし、そろそろ玄関に戻るずら」

善子「そうね」



「モウ……オソイ…」

善子「だ、誰?」

その瞬間、辺りに煙が立ち込めた。

煙の中からは、人型の影が見える。


「オマエ……タチ…イケニエ…」

「トラ…エル」


善子「生贄って・・・」

気付いた時にはその影に包囲されていた。


「オトナシク……コッチニ…コイ」



パーン

鞠莉「残念だけど、それは出来ないわ」

花丸「鞠莉ちゃん!?」

鞠莉の手には一丁の拳銃が握られていた。

善子「そんな物、何処にあったの?」

鞠莉「一階にあった書斎の引き出しに入っていたわ」


「ニンゲン……


パーン

鞠莉が撃った二発目の弾が相手の顔の中央に当たった。

鞠莉「少し静かにしてくれるかしら」

周りを包んでいた煙が消えていった。

煙が収まったため、ついに彼女達は相手の姿を見ることが出来た。

善子「ひっ・・・」

周りを囲んでいたのは仮面を被った七人の人間?だった。


「オマエ……タチ」

パーン

鞠莉「動かないで」

鞠莉は天井に向かって威嚇射撃をした。

仮面「オロカナ…タマニハカギリガアル」

仮面達はナタを構えた。

鞠莉「くっ・・・二人共、早く扉に!」

花丸「鞠莉ちゃんは・・・」

鞠莉「私はここで、こいつらを足止めさせる」

鞠莉「すぐに、いくから・・・」

善子「・・・」

仮面「ヤレ……」

パーン パーン

鞠莉「急いで!」

善子「・・・」

善子「ごめん・・・ずら丸行くわよ…」

善子は花丸の手を引っ張って走っていった。


鞠莉「ありがと、ヨハネ・・・」

彼女は拳銃を構えた。

鞠莉「さあ、貴方達の合図は浦の星女学院 理事長 そして、スクールアイドル『Aqours』の一人、小原鞠莉デース」

館 エントランス

善子「ハァハァ…ここまでくれば…」

パーン パーン


花丸「鞠莉ちゃん…」

館の二階では銃声が鳴り響いている。

善子「よし、開いた・・・後は鞠莉が来るだけ・・・」

パーン

その音を最後に、銃声が聞こえなくなった。

花丸「鞠莉ちゃん…鞠莉ちゃんは大丈夫ずらよね!・・・」

善子「ずら丸・・・」


仮面「オイ…ツイタゾ」


善子「チッ・・・」

階段の上に仮面が立っていた。

善子「ずら丸、早くここを出るわよ」

花丸「・・・」

仮面は花丸にナタを向けた。

善子「国木田花丸!!鞠莉は・・・私達を守るため、戦ったのよ!」

善子「それを…それを無駄にする気?」

花丸は善子の顔を見た。目からは涙が流れている。

仮面「シ……」

花丸「・・・!」

花丸は仮面のナタを避けると、善子と扉に向かった。

善子「いくわよ」

善子は扉を開き、花丸と共に飛び込んだ。


善子(ありがとう、鞠莉・・・)

ーーーーーー

ーーーーーー
ガサッ ガサッ

曜「もうすぐだよ!」

曜は梨子を連れ、道無き道を必死に進んだ。

曜「あそこ!」

梨子「あれが宝玉・・・」

曜「梨子ちゃん、早く」

梨子「う、うん」

梨子と曜は宝玉の前に立った。

梨子「ダイヤさん・・・」

梨子は大きな深呼吸をした。

そして、二人はゆっくりと宝玉に手を置いた。

ーーーーーー

ーーーーーー
「働け!」

「これだけかよ。使えねぇな」

「お前が死のうが変わりはゴミのようにいるんだよ」

梨子『ここは?』

梨子(ボロボロの服を着て、みんな働いてる…)

梨子(子供も老人も女性も)

女性「す、少し病気で…」

「知らねーよ、そんな事より早く耕せよ!」

梨子『ひどい・・・』

梨子『うっ、頭が・・・』

ーーーーーー

ーーーーーー
梨子「うっ・・・」

目を開いた。

梨子「あれ、さっきまで樹海にいたはず・・・」

周りには木は一本もない。

梨子「じゃあ、ここは?」

「梨子ちゃーん」

梨子「え?あっ、千歌ちゃん!」

曜「梨子ちゃん、早くこっちに来て!」

梨子「分かった。今行くわ」

千歌と曜が呼んでいた場所に行くと、そこには二人の他に果南、ルビィ、善子、花丸もいた。

ルビィと果南が泣き叫んでおり、善子と花丸が二人を慰めている。

梨子「鞠莉さんは?」

千歌「・・・」

梨子「そんな・・・」

梨子の目が涙で溢れた。

いつも優しかったダイヤ。それに『Guilty Kiss』などでいつもお世話になった鞠莉。

その二人が・・・と思うと自然に涙が出てくる。

梨子「どうして・・・どうして!」

千歌「梨子ちゃん…落ち着けないけど、ここは」


「コンナ……トコロニイタ…」


背後から声がした。振り向くと、奴らがいた。

梨子「くっ・・・」

仮面「サア……」

一人の仮面が一歩出てきた瞬間、

バッ

果南が仮面に飛び掛かった。

果南「お前達さえ、お前達さえいなければ、ダイヤも鞠莉も!」

仮面「スデデサワルトハ……オロカナ」

果南「黙れ!」

果南は両手で心臓らしきドロドロしたものを取り出すと、それを握り潰した。

仮面「グッ……」

仮面はそのまま溶けていった。

果南「まだまだ…」

果南は次の獲物を捉え、心臓を抜き取り、握り潰していった。

果南の目は復讐に燃える本気の目だった。

やがて、周りにいた仮面達は消え去っていた。

果南「まだだ!奴らを全員殺してやる!」

千歌「か、果南ちゃん…」

幼馴染の千歌と曜でも果南を止めることが出来ない。

その時、一人の少女が果南の正面に立った。

善子「落ち着きなさい、果南!」

果南「邪魔しないで善子!」

パチィン

果南「くっ・・・」

善子は、果南の頬にビンタした。

善子「冷静になりなさい!」

善子「今、ここで奴らを全員殺して何になるの?」

善子「二人の仇は取りたい。でも、その前にやることがあるでしょ!」

果南「・・・」

果南「ごめん・・・」

花丸「これからどうするずら?」

千歌「花丸ちゃん、ルビィちゃんは?」

花丸ルビィちゃんならぐっすり寝ちゃったずら」

千歌「そっか…」


曜「何かないかな?」

梨子「見た感じ何もないわね」

千歌「うーん、少し探索してみようか」

ーーーーーー

???

「イイゾ……ケイカクドオリダ……」

前半はここで終わりです。ありがとうございました。

後半も投稿する予定ですので、よろしくお願いします。

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