春香「プロデューサーさん!天使ですよ!天使!」 (23)




高木「本当ならばキミにもう少しチャンスを与えたかったんだが…すまない。」

P「いいえ、あれだけ素質のある候補生がいるのに、開花させられなかった自分の力不足です。」

高木「……形式的なことはまた明日話そう。今日はもう帰りなさい。」




亜美「あれれ、兄ちゃんもう帰るの?」

真美「いつもみたいにザンギョーしないの?」

やよい「プロデューサーさん疲れてるんだから、そんなこと言っちゃダメだよ!」


P「はは、ありがとな。……また、明日。」



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夜 自宅

シュポッ

P「はぁ…いよいよクビか」ゴクゴク

P「やっとの思いで辿り着いた美希のランクアップフェスがあれだったもんな」

P「千早といい美希といい、彼女らの素質を引き出すことは最後まで出来なかったか」



P「みんな素晴らしい候補生なのに、俺がダメダメなせいで候補生のまんまだ。」

P「そうだ、雪歩。お前がダメダメなんじゃない、俺がダメダメなんだ…」


P「何の取り柄も無い自分がやっと辿り着いた天職だ!とか舞い上がってたけど」

P「やっぱ俺には何も出来ねえんだな…」

P「明日色々片付いたら、死んじまおうかなぁ」

P「まあいいさ、今日は飲んで寝よう…」


―――
―――――
―――――――

P「うーん…頭が痛い…飲み過ぎたか」




P「あれ、ここは家じゃないな…雲の上みたいだ。」


P「まさか、俺本当に死んじゃったのか?…なんてな、夢だよな多分」



P「あーあ、もういっそこの夢の世界でずっとのんびりしていたいわ、現実とかクソ喰らえだ。」

P「おーい俺の脳よ、このまま目覚めなくていいぞ、息苦しい社会には戻りたくないんだ」

P「誰もいないし何にもない。どうせ夢だから腹も減らないんだろうな。気楽な世界だ。あー気楽気楽、うんこうんk」

ドンガラガッシャーン

P「!?」

??「ちょっとぉ!さっきから言ってること暗すぎませんか!!」



P「どこからか声が聞こえる…」


??「こっちですよ!こっち!」

P「うわっ、誰だお前」

??「もう、反応が冷たいですね…見て分かりませんか?」



P「んー、真っ白な服着ててで羽が生えてて頭に輪っか…あーーー!!!なるほど!!!」


??「そうですよ!!」




P「コスプレイヤーか!」

??「ちがいます!!」


天使「私は『遥か遠く』の『天の海』からやってきた天使です!」

P「はあ…そうですか」

のワの「えっ、ちょっと……リアクション薄くないですか!?天使ですよ!天使!」

P「いや、そう言われてもなあ」

P(訳が分かんない…けど、なんか可愛いなこの子)

天使「!!…もう、これはあなたの夢の中なんですから、そういう心の声も全部丸聞こえですよ///」

P「まじかよ!不便な世界だなここ」


P「それで、そんな天使さんが明日から無職になるオッサンに何の用ですか?」

天使「その歳でオッサンって言ってたら事務員さん泣いちゃいますよ…」

P「ん?」

天使「そんなことはどうでもよくて!…私は、苦しい選択に迫られている人のもとに現れて、一つだけ願いをかなえて手助けをする天使なんです!」

P「ほう…」

天使「私が現れてるってことは、今あなたはかなり苦しんでいるはずです。助けが必要なはずです。さあ、願い事ですよ!願い事!」


P「……」


天使「あ、あれ…?もっとこう、うおおおおお!みたいなリアクションは…?」


P「いや、そんなこと急に言われてもなぁ、願い事ねえ…」

P「どんくらいの願いまで叶えてくれるのさ」


天使「分かりました、じゃあ私が過去にどんなお願いをかなえてきたか、ちょっとだけ見せちゃいますよ!」


~~~~~~~

音楽家「うー、スランプだ。作る曲がどれもイマイチだ、どうしたら…」

のワの「天使ですよ!天使!」

音楽家「…未来の音楽がどう変わってゆくのかが見たい。私が生きていないほどの遠い未来の音楽を見せてくれないか」

天使「はーい!じゃあドドーンと21世紀までレッツゴー!」




音楽家「うほwww音楽がゲームになってるwwwたのしwww」ドンカッドドカッ



音楽家「しかし難易度が物足りんな…そうだ!それだ!音符をひたすら敷き詰めて…まるで蜂が飛んでいるかのようなおどろおどろしい風に…」



天使「満足していただけましたか、コルサコフさん」

リムスキー=コルサコフ「ああ!ありがとう!おかげでスランプから脱出できそうだ!」

~~~~~~~~~~


天使「はい」

P「いやいやいや、『熊蜂の飛行』ってそうやって作曲されたの!?!?」

天使「そうですよ、私のおかげなんですから!」エッヘン


天使「このように、私の手にかかれば時間操作くらいのレベルなら容易いものですよ!」


P(時間操作と聞いて、ちょっと時間停止モノとか考えちゃった自分が嫌だ)

天使「キコエテマスヨ」

P「悪い悪い!でも、そうだな…時間操作って、一時的に時間を移動出来るだけなのか?さすがに過去に戻れたりはしないよな…?」


天使「あー…えっとそれは…どうだったっけな」




天使「担当の社員さんに確認してくるんでちょっと待っててもらえますか?」

P「どういうシステムなの…スーパーのアルバイトのセリフでしょそれ…」



天使「確認してきました、さすがに完全に過去に戻しちゃうのまではダメって言われちゃいました…」

P「そりゃそうだよな…じゃあもう、頼むことも特に無いかな。」

天使「ええ、そんな…」

P「天使さん来てくれて嬉しかったけど、ちょっと遅かったな。俺もうクビになったからさ、どうしようもないんだよ」

天使「待ってくださいよ!たとえお仕事がクビになったとしても、人生仕事が全てじゃないですよ!」


P「そうかもしれない。でもな、俺にとっては仕事が全てだった。親や教師のいいなりになって受験、進学、習い事と…何一つ自分の意思でやってこなかった俺が、初めて本気になれたことだったんだ。」


P「彼女たちをトップアイドルにしてやりたかった…」


P「なのに俺は……」グズッ


天使「……」


天使「これは独り言なんですけど……私ってうっかりさんなんですよね。」

P「……?」

天使「だから、依頼者を時間操作したあと、うっかり依頼者をその時空に置いてけぼりにしちゃうミスをしてしまうかもしれないんですよね。」


P「……まさか!?」



天使「私に、可愛いって言ってくれたお礼ですよ」ニコッ


P「いや、言ってな(あっ、この笑顔マジ可愛い)」

天使「ほら、また言ってくれた!」

P「そうだった、言ってなくても言ってるんだった。」



P「でもいいのか?そんなうっかりをしたら、お前の立場が…」

天使「大丈夫、そこは成るがままに!トラブルすらも燃料に変えてやりますよ☆さあ、いきましょ!」

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P「すげえ、ドラ●もんの引き出しの中みたいな空間だ…」

天使「そこのトンネルの先は、あなたが入社した日の朝です。」

P「なあ、今まで一切ツッコんでこなかったけど、あくまでこれは夢だよな。だから、目が覚めたら何事も無く明日が始まるかもしれない。そうだろ?」

天使「ふふ、そうですね。だから、あとはこの夢の出来事をあなたが信じて、瞼をそっとあけるだけなんです。信じればいいことありますよ。」


P「…ちなみに、過去に戻ったはいいけど、実は過去にもう一人の俺がいて大変なことになる、とかは?」

天使「大丈夫ですよ、そこはご都合主義でなんとかしますから!」



P「そうか……ありがとな。もう一度、チャンスをくれて。」


天使「いえいえ、何故か分からないんですけど、あなたのことが放っておけなくて…えへへ」


P「…お前みたいな女の子をプロデュース出来たらいいのにな、あっという間にトップアイドルだろうな」

天使「!!!!…さ、さあ!夢から覚めますよ!早くそのトンネルを抜けて!」

P「あ、ああ!天使さん、きっとまた会え――――……」

―――
―――――
―――――――


ガバッ

P「……」

P「変な夢だったな……」


P「…日付と時間は?」


ガサガサ




P「ふふ……案外こういうことも信じてみるものだな」ガッツポーズ



事務所

高木「いやあ、ようこそ!よく我が765プロへと来てくれたね。私としても―――…」


P(この挨拶を聞くのも二度目だな。)


P(巻き戻ったからって上手く行くとは限らない。同じことをしていてはまた最悪の結末が訪れるだろう。せっかくチャンスを貰ったんだ、今まで以上に気を引き締めて行かないと…)




高木「ああ、それと…候補生が12人って話をしていたと思ったんだが、ついさっき13人に増えてなぁ…」

P「えっ(これは前回と違うぞ…?)」

高木「ふふふ、事務所の目の前で出会ったんだがティンと来てな。早速スカウトしてしまったのだよ。おーい」





春香「えへへ…天海春香です!」

P「…お前は!!!!」


高木「おっと、知り合いなのかね?ならば話が早い」

P「え、いや違うんです、あの…」

高木「じゃあまず一人目のプロデュースは天海君から始めてもらおうか。まずは二人で少し話してきたまえ」



~~~~~~~~~~



春香「宜しくお願いします、プロデューサーさん!」

P「あ、ああ…(いや、似てるだけだよな)」


春香「似てるだけって、何の話ですか?」

P「いや、何でもないんだ、何でも……ん?あれ、今俺喋ったか?」




のワの「あっ…うっかり」

P「やっぱお前天使だろ!」

春香「バレちゃった♪」


P「何でここにいるんだ?」

春香「だって、プロデューサーさんが最後に願ったじゃないですか」



春香「『お前みたいな女の子をプロデュース出来たら』って…」



P「マジかよ…でも、お願いは一つしか叶えられないはずじゃ」

春香「過去に連れていけ、とは頼まれていないですよ?私がうっかり連れて行っちゃっただけですから!」


春香「だからプロデューサーさんの願い、叶えに来ちゃいました♪」



P「おおう、なんてこったい…」







春香「まあ、あとはプロデューサーさんをうっかり過去に置き去りにしたミスで天使のバイトをクビになっちゃって、私も元の時間に帰れなくなっちゃって」

P「絶対それが本当の理由だろ!」

のワの「さあ、どっちでしょうね」


P「まあ、理由がどうであれ、お前のことをプロデュース出来るのは嬉しいことだ。」

春香「私も、プロデューサーさんのこと助けに来た時に、一緒に頑張りたいなって思ったんです!」

P「アイドルには輝いてる面の他に、とても辛い側面も沢山あると思う。だが、お前となら乗り越えられると思うんだ。トップアイドル、目指せるか?」

春香「もちろんです!」

P「じゃあ…天使…改め天海春香!よろしくな!」

春香「はい!」

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―――――――
――――


P(これが、後にSランク到達最短記録を樹立するスーパーアイドル天海春香と、13人のAランクアイドルを手懐ける伝説のプロデューサーの、アイドル史に残る最強タッグの第一歩だった…)

春香「それ誰に言ってるんですか?」

P「いいかげん俺の心の声を読むのやめろ!」

終わり


以上です、読んで下さった方ありがとうございました

>P(これが、後にSランク到達最短記録を樹立するスーパーアイドル天海春香と、13人のAランクアイドルを手懐ける伝説のプロデューサーの、アイドル史に残る最強タッグの第一歩だった…)
これだとアイドル14人になるんじゃない?
S一人にAが十三人だと14人になるかなーって
この場合はSランクアイドル一人とAランクアイドル十二人のじゃない?

>>18
ミスですね、すみません。
765プロの超絶美人事務員をアイドルデビューさせたってことにしておいてほしいピヨ

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