塩見周子「何かが始まる予感」 (16)
モバマスSS、地の分風味。短め。
お題メーカー的なものを使ったら思いついたので。
次から投稿していきます。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1534422111
最初は何とも思っていなかった。
家出して途方にくれる中に出会った時も。
その流れでアイドルにスカウトされた時も。
実情を話しその日の宿がないと言った時も。
『ホテルがどこも空いてないから』という理由で家に泊めてもらった時も。
そして本当にアイドルになれた時も。
『スカウトしたから』という単純な理由であたしのプロデューサーになってくれた時も。
無事にデビューが出来て褒めてくれた時も。
お礼を言ったら「周子は元が良いからな、流石だよ」と褒めてくれた時も。
別に何とも思っていなかった。
家出娘と社会人。
アイドルとプロデューサー。
仲の良いビジネスパートナー。
お互いの関係をそんな風に思ってた。
でもいつからだろう?
そんな関係じゃ嫌だと思い始めてきたのは。
『何とも思っていなかった』なんて言いたくなくなってきたのは。
貴方がくれたお仕事が徐々に増えていって。
貴方といる時間が徐々に増えていって。
貴方との思い出が徐々に増えていって。
その『徐々に』が積もり積もって、いつの間にか、一日中貴方の事ばかり考えるようになってしまった。
今日会ったらまず何を話そう。
今日はいつ一緒に居られるかな?
ふと気づくと貴方の事を目で追ってる。
他の誰よりも貴方と一緒の時間が嬉しい。
ある感情がこんなあたしにさせたのだ。
だけどあたしと貴方は、アイドルとプロデューサー。
今は結ばれない、結ばれちゃいけない。
そんな事は浮かれた自分でも分かってた。
だからずっと我慢した。
先人達と肩を並べる程の大きなライブが成功した時も。
2人の努力が実って栄えあるシンデレラガールに選ばれた時も。
貴方がこっそり誕生日を祝ってくれた時も。
ずっとずっと、ずっーと我慢した。
でも今日はあたしの引退ライブ。
これが終ればアイドルのあたしは終わり。
明日からはただの一般人。
どこにでもいる、恋する1人の女の子。
そしたらあたしと貴方は、アイドルとプロデューサーじゃない。
1人の女の子と1人の男。
ずっとずっと我慢してきたんだからね?
その分、本気を出して一気にいくよ。
覚悟しててよねPさん?
「そろそろ引退ライブ始まるぞ。大丈夫か?」
「任せといてよ!あたしを誰だと思ってるの?」
「そうだったな、信頼してるよ周子」
「信頼に絶対答えてみせるからさ……だから一番近くで見守っててよ」
「あぁ……見守ってるよ。今まで通りな」
貴方が傍にいるならあたしは大丈夫。
今までは大丈夫だった。
今日もきっと大丈夫だろう。
出来れば明日からもそうであってほしいな。
そんな事を思ってると出番が間近になった。
その残り少ない貴重な時間を未来のために使わせてもらう。
「そういやPさん、明日の予定空けといてね。大事な話があるからさ」
「奇遇だな、俺も周子に話したい事があったんだ」
「奇遇やね。以心伝心やん」
「長ーい付き合いだからな。でもやっぱり口にして話したい事だっていくらでもあるさ」
「あたしも沢山話したい事があるんだ。これからもいっぱい話していこうよ」
「そうだな。でも、まずは今日のことを終わらせてからだな」
「そうだね。それじゃあ、バシッと一つ決めてきますか!」
そうしてあたしは舞台に向かっていく。
これから何かが始まる予感がした。
おわり
以上です、ありがとうございました。
書き出しと終わりの言葉と文字数を指定してくれるお題メーカー的なものからネタを拝借して書きました。
こんな関係だったらいいなと思って書きました。
少しでも魅力が伝わって、もっともっと周子SSが増えてくれたらいいなぁ…(希望願望)
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