ロボットくん/すていないと (17)
ロボットくんというのは名前です
その名のとおりかれは体がきかいでできているのです
ぎんいろのブロックをふたつくっつけて、そこに手足がはえただけのかんたんなつくりなのですが、あるとくしゅな技術によってまわりからはキチンとしたニンゲンに見えているのです
だからロボットくんは人間たちのなかにまぎれてせいかつできました
ロボットくんはまいにち決まったじかんにおきて、決まったにっかをこなし、よくものぞみもなくひたすらひとだすけの日々を送ります
「ロボットくん 。 ストーブがこわれたからなおしてくれないかい?」
「わかったよぼくにまかせて」
「ロボットくん。ぼくのかわりにこれやっといて」
「わかったよぼくにまかせて」
「おいロボット、そうじやっておけよ」
「わかったよぼくにまかせて」
「ロボットさんおねがいしますあの子をたすけてください。 あの子はわたしのたからなんです」
「わかったよぼくにまかせて」
「ロボットさんおねがいしますこのむらをたすけてください。 あなたにはなにもかえせるものがありませんが、わたしたちはしにたくないのです」
「わかったよぼくにまかせて」
「ロボットさんおねがいしますあいつを殺してください。 あいつのせいでわたしたちはこんなせいかつをしいられているのです」
「わかったよぼくにまかせて」
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ある日、ひとだすけの日々をおくるロボットくんにこんなことをきくひとがいました
「どうしてあなたはひとだすけをするのですか?」
「ボクをつくったハカセからそのように祈りをたくされました。 ハカセは正義の味方になりたかったのです」
「じゃああなたは、べつにひとだすけがしたくてやっているわけではないのですね」
「よくわかりませんそれはどういうイミですか」
「じぶんをすくうためにだれかをすくっているわけではないのですか」
「フム、だれかをすくうことがジブンをすくうことにつながるというのはざんしんなしてんだなぁ。
でも、ちがうとおもいます。 ただ、そのようにからだがうごくのです。 そのようにつくられたのです」
「それっておかしいです」
「おかしいですか?」
「はいおかしいです」
「でも―――
>>2訂正します
ある日、ひとだすけの日々をおくるロボットくんにこんなことをきくひとがいました
「どうしてあなたはひとだすけをするのですか?」
「ボクをつくったハカセからそのように祈りをたくされました。 ハカセは正義の味方になりたかったのです」
「じゃああなたは、べつにひとだすけがしたくてやっているわけではないのですね」
「よくわかりませんそれはどういうイミですか」
「じぶんをすくうためにだれかをすくっているわけではないのですか」
「フム、だれかをすくうことがジブンをすくうことにつながるというのはざんしんなしてんだなぁ。
でも、ちがうとおもいます。 ただ、そのようにからだがうごくのです。 そのようにつくられたのです」
「それっておかしいです」
「おかしいですか?」
「はいおかしいです」
「でも――― こういうふうにしか生きられないのです」
ロボットくんはじぶんをかえりみることがありません
いつでもだれかを助けることがさいゆうせんなので、しょっちゅううでやらあしやらがけいきよくとんでいきます
そのたびにだれかが泣いて、ロボットくんはおろおろしながらまとはずれなことばかりいうのです
「泣かないでください。 こわいものをおみせしました。 でもだいじょうぶです。 すぐなおります。 がんじょうだけがとりえなのです」
「ちがいますちがいます」
「ではどうして泣くのですか」
「あなたがジブンをたいせつにしないからです」
「だってそれではひとだすけになりません」
「ひとよりさきに救うものがあるでしょう」
「ごめんなさい。 それはどういうイミでしょう? あの、どうか泣かないでください。 あの、しょくじでもつくりましょうか?」
ロボットくんはせかいじゅうを旅します。 もちろん、ひとだすけの旅です
さばくのまち
ごっかんのまち
ころしあいでひとがしにたえたまち
ロボットくんのやることはかわりません
うでやらあしやらをふっとばし、時にはないぶのパーツをぶちまけながら、なまえもしらないあかのたにんをすくっていきます
ロボットくんはなんのみかえりももとめません
はじめこそひとは、かれをキュウセイシュだと言いました。 かれをセイジンのうまれかわりだとほめたたえました
けれど、時がたつと、そのニンゲンばなれしたむよくさをかえってキミわるがりはじめました
イノチをかけてたすけたあいてに、よけいなことをとにくまれたことがあった
トモとよびあったにんげんにうらぎられたことがあった
サイガイからすくいだしたむらのにんげんから、そうででいしをなげられおいやられたことがあった
イノチをねらわれるようなめにあったのはにどやさんどではきかない
いつしか、ピカピカだったロボットくんのからだはすっかりサビつき、ガラクタのようになっていきました
(もうヤめてしまえ)
ロボットくんがなにがしかのじゅなんにそうぐうするたび、かれはむねのなかでつぶやきました
もうヤめてしまえ
もうあきらめてしまえ
いっそのこともうシんでしまえ
しかしロボットくんはしぶとくいきのこり、こりもせずあきもせず、おなじことをくりかえします
たびをつづけるロボットくんは、ある時ユメをみました
ロボットであるかれがユメなんてものをみるのはありえないのですが、なぜかきょうこのときだけはロボットくんはユメをみたのです
「わぁ、キレイだなぁ」
ユメのなかのせかいは、そらいちめんにホシが輝いています
『やぁ、キミがロボットくんだね』
「あなたはだれですか?」
『だれ、か。 フム、残念ながらまだ名前を明かすことはできないんだ。 ボクはつい我慢ができなくなってキミの物語に『夢』という形で割り込んだ迷惑なファンだからね。 夢である以上、キミにはなにも残せないんだよ』
『まぁそもそもボクは夢魔であり人でなしだからね、夢から何かを奪うことはあっても夢に何かを残すことはしたことがないしできないんだ』
インキュバス、となのるしろいせいねんのことばはロボットくんにはよくわからないものでしたが、ユメというものは整合性がないとききますし、それにこんなにキレイなホシゾラをみてたらそんなことはどうでもよくなりました
『ところでキミは、これからどこに行くんだい? あぁ、夢の中ではなく、キミが生きる現実の話だよ』
「それはもちろん、たすけをもとめるひとびとのところです。 そのつぎのもくてきちも、そのつぎのもくてきちもです」
『ハハハ。 キミの冗談は面白くないね。 そんな事をしていたらキミの旅は終わらないじゃないか』
「いえ、その、おはずかしいはなしなのですが、じつはボク、旅のおわりをさだめてはいないのです
なにをすればおわりなのか、どこにいけばゴールなのか、そういうのをきめずにでてきたものですから」
『オイオイ、何だいそれは? 普通そういう事は旅立つ前に決めておくものさ。 キミの旅は実のところ始まってすらいない。 始まっていないものには終わりもない
キミのやっている事はつまりーー」
しろいせいねんは、夜空のホシにゆびをさしてーーー
『歩いてあのホシまで行きましょうというようなものじゃないか』
ロボットくんはいいます
「ホシはすきです」
『ボクだって好きさ。 だから良く知っている。 アレはおよそ人間の目指す場所じゃない』
ロボットくんはいいます
「ホシはすきです」
『目標にしてはいけないんだ。 ホシは眺めるものであって決して向かうべきものではない。 届くわけがないんだから
ーーどこにも辿り着けずに果てる人生なんて、虚しくはないのかい?」
それでもロボットくんはいいます。 まるで、コワれたロボットのように/まばゆいニンゲンのように
「ホシはすきです」
「いつか、ホシをながめたのです。 とどかないホシです。 しょうじきどんなホシであったのかおぼえていないのですけれど、あこがれたことだけはおぼえているのです。 それでじゅうぶんなのです
ーーーそれをおいかけているだけで、もう、この生は満足でーーー」
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