キーンコーンカーンコーン
烏丸「あら、もうこんな時間。今日はこのへんで終わりにしましょう」
烏丸「来週は次の章に入るから、みんな分からない単語は調べてきてくださいねー」
忍「すーすー」
アリス「シノ、起きて……」
烏丸「大宮さんも分かりましたか?」
忍「YES,WE CAN」すーすー
綾「寝言で答えてるわ!」
陽子「しかも流暢な英語で!」
アリス「でもいろいろ合ってないよ!」
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―自習室―
忍「すみません、昨日夜更かしをしてしまいまして……」
陽子「いつも早く寝るしのにしては珍しいな」
綾「もう受験も近いし、徹夜で勉強してたのね。でもそれで授業中に寝てたら本末転倒だわ」
忍「いえ、カレンのコスプレ衣装を作っていました」
カレン「ヘイ提督、紅茶が飲みたいデース!」キラキラ
綾「誰が提督よ~!」ぱかーん(大破)
陽子「冷静なツッコミ!」
アリス「シノ、徹夜してまで頑張って作ったのはカレンの服だったの……」
アリス「わたしの服のときより、気合入ってたよね。シノはわたしよりカレンのことのほうが頑張れるんだね……」
忍「ア、アリス! そんなつもりは……。それでは今夜はアリスの衣装作りのため徹夜します!」
カレン「では私も一緒に徹夜して隣でゲームするデス!」
陽子「ダメなスパイラルだ! てかせめて手伝えよっ」
綾「もう。カレンもだけど、しのももっと危機感を持たないと受験を乗り越えられないわよ」
忍「そ、そうですかね」
綾「お裁縫や衣装作りは、別に学校を卒業してからでもいつでも出来るでしょ」
アリス「うんうん」
綾「でも、大学受験は人生で一度きりなのよ。受験に失敗したらどんな人生が待っているか……想像してみて」
陽子「想像か」
カレン「ふむ」
忍「……ごくり」
~~~~~
【合格発表】
綾「やったわ。意中の女子大に無事合格よ。陽子は?」
陽子「ごめん……落ちた」
綾「え・・」
陽子「まあ、もともとD判定だったし。仕方ないよね。私は地元のFラン大に通うことにするよ!」
綾「ち、ちょっと」
陽子「綾は女子大でキャンパスライフ満喫してね! じゃあな!」
綾「陽子……待って陽子ぉぉおおおっ!」
【大学】
女学生「キャハハハッ」
綾「……」ぽつーん
綾(おかしいわね、大学生になって3か月たつけど、まだ友達ができないわ)
綾「あ、陽子からメールが!」
綾「写真がついてる。『大学でできた友達とバーベキューに行ったよ! 綾も一緒にどう?』」
綾「……うっ」(そっ閉じ)
【同窓会】
綾(久々に陽子やみんなと会える! 楽しみだわ!)
ざわ・・
忍「受験には失敗しましたが、今は服飾系の専門学校に通ってます。毎日楽しいですよ。アリスともすぐ会えますし」
アリス「わたしはシノの学校に近い大学に進学して古典文学を専攻しているんだ。日本人の心は奥深いよ」
カレン「私は受験どころか留年シマシタが、クゼハシ先生やカラスマ先生と一緒で毎日ハッピーデース」
穂乃花「私は香奈ちゃんと同じ地元の大学に通ってるよ。カレンちゃんにもすぐに会いに行けるし、金髪サークルも作ったよ」
香奈「穂乃花と一緒だと外国人留学生(金髪)との関わりも増えて楽しいかな。あとアニメのイベントとか行きやすくて学生最高!」
綾(みんないろいろあったのに……今、凄く楽しそう……)
陽子「綾は最近どうなの? 大学楽しい?」
カレン「面白いバイトやサークル活動はしてるデス?」
穂乃花「か、彼女さんとか……できちゃったりしたのかな?」
綾(みんなの存在が……とても遠く感じるわ)
綾(もう高校生の頃のあの時間はかえってくることはないのね……)
【10年後】
綾(何とか事務職に就職することはできたけれど……)
お局様「ちょっと小路さん! この書類、また体裁が間違ってるザマス!」
綾「ひぃぃ! ご、ごめんなさい……」
綾(仕事ではおっちょこちょいで失敗続き……上司から目をつけられて嫌みばかり言われる毎日)
綾「ただいま……って言っても一人暮らしだから誰もいないけれど」
綾「テレビでも見ましょ……」
綾「あ、ドラマに勇さんが出てる。最近テレビで勇さんを見ない日がないわね……」
綾「……。買ってきた本でも読みましょ」
綾「このイギリス人作家の本、前から読みたかったのよね。なかなか日本語版が出なかったけど」
綾「誰が翻訳したのかしら。大宮忍……、しの!?」
綾「訳者紹介……間違いないわ、あのしのなのね」
綾「しの……夢を叶えたのね」
綾「私の……あの頃の夢ってなんだったっけ」
お嫁さんになりたい――
綾「私は……私は……誰のお嫁さんになりたかったのかしら」ぽろ・・ぽろ・・
綾「うああああああっ」
~~~~~
忍「そして綾ちゃんは――。う、ううっ……綾ちゃん……可哀想です~」
穂乃花「綾ちゃんの気持ち……分かってあげられなくてごめんね」
陽子「綾、どうして言ってくれなかったんだ! 私はいつでも綾のそばにいるぞ!」
アリス「アヤ、大丈夫だよ……みんなに頼っていいんだよ」
綾「うっ……ひっく……みんな、ありがとう……」
香奈「何この茶番」
カレン「シノのストーリーテラーぶりは相変わらずデスね……」
綾「って何なのよこれぇぇぇ!? 何で私目線なの!? 受験に成功したのに不幸になってるの!?」
陽子「我に返るの遅せぇ! にしてもこの話ツッコミどころ多すぎる!」
アリス「あれ、シノの夢って通訳者だから翻訳家とはちょっと違うんじゃ?」
忍「へ。そんなに違いましたっけ……?」
カレン「カナは実際大学でオタクライフを満喫してそうデスよね~」
穂乃花「香奈ちゃん、大学にアニメ学部とかあったらいいねー」
香奈「だから私そんなにオタクじゃないってば!」
香奈「それじゃ、私たち貸出用の赤本借りに来ただけだから」
穂乃花「今日は家で香奈ちゃんと二人で勉強するの。またね、カレンちゃん」
カレン「GOODBYE! 今度は私も交ぜてクダサイ」
穂乃花「うん、いいよっ。いつでも大歓迎だから!」
カレン「カナは今度一緒にアキハバラでも行きマショウ!」アキハバラ~
香奈「勉強は!?」
綾「さて。穂乃花と香奈も行っちゃったし、そろそろ私たちも」
カレン「帰って遊びマショウ!」
綾「ここで勉強するの!!」くわっ
カレン「ヒエッ・・」
陽子「綾が激おこモードだ!」
アリス「受験勉強も大事だけど、ふだんの授業の予習復習も大事だよ。まずはシノが苦手な英語からしようね」
忍「そうですね」
陽子「そういや分からない単語を調べとけってからすちゃん言ってたな」
綾「事前にちゃんと調べておけば、次に授業で扱う文章も理解しやすくなって効率的よ」
【LGBT】
忍「えるじーびーてぃー?」
陽子「何だこりゃ……いきなり変な単語が出てきたぞ」
カレン「これ私分かりマスよ。色の3原色デス!」
忍「色?」
カレン「Lはレッド、Gはグリーン、Bはブルーデス」ドヤ
陽子「なるほど」
忍「さすがカレンです」
綾「いや違うでしょ、たぶん(この単語、私も知らない……)」
アリス「カレン、赤はRED。頭文字はRだよ……」
カレン「OH……」
陽子「マジで間違えたのかよ!」
綾「陽子も納得してたわよね……」
カレン「ノーノーちょっとしたジョークデスよ~。ここは『じゃあTは何やねん!』と言ってほしかったデス」
綾「まじめにやりなさいっ」ぱちんっ(ハリセン)
カレン「どこから出したデス!?」
陽子「話がなかなか進まねえ!」
アリス「LGBTっていうのは、レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの頭文字をとった略語なの」
綾「レ、レズ!?」//////
アリス「アヤ!」
綾「な、なにアリス!?」
アリス「『レズ』って略すのは差別的な表現だから使っちゃダメなんだよ(『ビアン』や『ホモ』もNG)」
綾「へ、へぇそうなんだ……」
アリス「アルファベット略語はいろいろあって、日常生活でよく目にするものも多いよ。例えば」
AED automated external defibrillator 自動体外式除細動器
AI artificial intelligence 人工知能
LED light emitting diode 発光ダイオード
NEET not in education,employment or training 若年無業者
RPG role-playing game ロールプレイング・ゲーム
TDN tadano kazuhito 多田野数人
UV ultraviolet rays 紫外線
陽子「まあRPGぐらいは分かるな。あとATMとかSNSとかAKBとか」
アリス「AKBはちょっと違うけどね……」
忍「私たちって思った以上に英語に触れて生活しているのですね」
カレン「レズビアンは女の子同士のLOVEデシタっけ、アヤヤ?」
綾「何で私に聞くのよっ。……え、ええ確かそうだったかしらね。よく知らないけど」プイ
陽子「ゲイはあれだよね。何か腹筋とかモリモリの人達」
アリス「ヨーコ、それどういうイメージなの?」
カレン「そういえば私達の周りには腐女子はいないデスね」
忍「? 婦女子ならたくさんいると思いますが?」
綾「バイセクシャルはどっちでもいける人達……なのよね? じゃあ最後のト、トラ?」
陽子「トランジスタ?」
カレン「トランスフォーマー?」
忍「何だか強そうですね」
アリス「全部違うよ!」
アリス「トランスジェンダーっていうのは、簡単に言えば『異性の社会的・性的役割や規範に収まりたい人』のことなの」
忍「WHAT?」
陽子「なるほどわからん」
カレン「全然簡単じゃないデス」
アリス「えっとね、例えば体は女の子だけど、心は男の子で、男の子みたいな服を着たいとか」
綾「ああ、性同一性障害ってやつね」
アリス「うん。みんなが診断されるわけじゃないみたいだし、トランスジェンダーは定義自体が難しいけど」
陽子「なるほど、ちょっと分かるかも。私も男子に交じって外で遊ぶのとか好きだったし」
綾(えっっ、陽子って実はトランスジェンダー!?)
綾(心は男の子ってことは、やっぱり女の子のことを好きになるはずよね……じゃ、じゃあ私のことを『好き』って言ったのは!)//////
忍「陽子ちゃんは昔からやんちゃでしたもんね」
カレン「でもそれくらいなら男勝りなだけでは?」
陽子「まあ確かにそうかも」ハハハ
綾「よかった……陽子が特殊な性癖をもっていたらどうしようって思ったわ」
アリス「アヤの気持ちがだだ洩れだよっ」
陽子「特殊な性癖ってどんなのなんだろ?」
忍「さあ」
陽子「で、LGBTってどう訳せばいいの。さっきの全部並べるとめっちゃ長いけど」
アリス「日本では一般的に4つをひっくるめて『性的マイノリティー』って訳す場合が多いよ」
忍「なるほど」
アリス「それじゃ、ここのパラグラフ全体を訳していこうか」
陽子「よし、やるぞ~」
忍「ところでマイノリティーってどういう意味ですか?」
アリス「シノ、さっき納得しなかった!?」
綾(陽子は男っぽいがさつなところはあるけれど、やっぱり普通の女の子なのよね。あれ……じゃあ、私は)
綾(綾も普通の女の子のはずよね。そうよ、そうに決まっているわ。でも、じゃあ陽子に対するこの感情って)
綾(嘘……私って……もしかして普通じゃないの? 私って一体……何なの?)ガクガク
カレン「アヤヤ」ぽん
綾「カレン?」
カレン「LGBTは少数派デスが、みんな違ってみんないいと私は思いマス」
カレン「アヤヤも自分の気持ちに正直に生きればいいんデスよ。人生は一度きり、自分の人生は自分で切り開くのデス!」
綾「カレン……ありがとう」
綾「って何よその言い方!? まるで私が特殊なヘンタイみたいじゃない!」
カレン「おや、違ったデス?」
綾「違うわよっ!」
アリス「アヤ、カレンも勉強するよ~」
陽子「分からない単語がたくさん出てくるな」
忍「ほとんど全部の単語を辞書で調べないといけませんね」
アリス「シノ、それはちょっと……」
カレン「アリスー、私も英語教えてクダサイ~」
アリス「も~、カレンも英語はできるでしょ」
綾(まったくもう。自分に正直に……それが簡単じゃないからあれこれ思い悩むんじゃない)
綾(でも)
綾(自分の幸せは、自分の手で掴み取らなくちゃね)
陽子「綾、ここ教えてー」
綾「もう仕方ないわね、この大バカ野郎!」にこっ
陽子「笑顔で罵倒!」
【大宮家】
忍「今日はしっかり次の授業の予習ができました。ありがとうございます、アリス」
アリス「うん。これからも頑張ろうね、シノ」
忍「それにしても、LGBT……そういう人達もいるんですね」
アリス「そうだね。彼らは少数派だけど、ちゃんと理解してあげることが大事なの」
忍「理解するって、難しくないですか」
アリス「わたしだって、イギリス人は日本の中では少数派だけど、シノやみんながわたしのこと受け入れてくれてるでしょ」
アリス「だから日本で楽しく生活できているんだよ。ありがとう、シノ」
忍「アリス……こちらこそ」
ぎゅっ
アリス「わたし、もっともっとシノのことが知りたいよ」
忍「私もです。アリスの金髪のすべてが知りたい」
アリス「もう~シノはわたしの金髪だけが目的なの~」
忍「ふふ、冗談ですよアリス~」
きゃっきゃっ
勇(あの二人……もしかして同性愛者?)
今更そう思う勇であった。
(おしまい)
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