キョン「お詫びに足を舐めてやるよ」佐々木「全然懲りてないみたいだね」 (31)

その日、めくるめく三連休初日を迎えた俺は自宅に引き篭もって怠惰を貪っていた。
せっかくの連休なのに何をしてるかって?
見ての通り休んでいるのさ。休日なのだから。

休みの日に休んで何が悪い。とことん休む。
出かけるのもいいがそれで疲れてしまっては本末転倒だ。わざわざ転びにいくつもりはない。

とはいえ、価値観は人それぞれだ。
好きに三連休を消化すれば良いさ。
他人に自分の考えを押し付けるつもりは毛頭ないが、世の中にはそうした公衆道徳を無視する輩も存在する。もちろん、ハルヒのことだ。

キョン「ええい、しつこい奴め」

さっきから携帯の着信音が鳴り止まない。
リダイヤルしまくっているようだが、気にしない。電源を切った。なにせ外は暑い。熱々だ。

こんな日に外に出るなど馬鹿げている。
それに果報は寝て待てと言うだろう?
別段、何かしら期待していたわけではなく、ましてや約束を取り交わしたわけでもなく、文字通り寝て待つ俺のもとへ、果報がやって来た。

佐々木「やあ、キョン。遊びに来たよ」

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やって来たのはネギを背負ったカモではなく、佐々木だった。意外な来客に少々面食らう。
まあ、いいさ。俺たちはわりと気安い仲だ。
事前連絡なしでの来訪を咎めるつもりはない。

一応、佐々木について説明すると中学時代の同級生であり、性別は女だったりする。
現在は女子高生だ。それなりに美少女だろう。

もっとも、後述する諸々の事情により、俺は特段佐々木を女として意識したことはなかった。

佐々木「ネギを背負ってなくて悪かったね」

見透かしたようなことを言って、くつくつと喉の奥を鳴らす佐々木。特徴、その1である。
特徴的なその笑い方は旧友の不変性を示すものであり、ついでに佐々木がネギを背負っている姿を想像すると少々愉快な気分になった。

キョン「それは残念だな。なんなら台所からネギを持ってきてやってもいいぞ」

佐々木「その好意は有り難いけれどここはネギよりも冷えた麦茶を所望するよ。いや、切望と言ってもいい。もう僕は喉がカラカラなんだ」

涼しげな口調とは裏腹に水分を要求してきた。
珍しいことに薄っすらと額に汗が滲んでいる。
いつも冷静沈着な佐々木も熱波にやられたか。
それだけ、外の日差しは凶悪だった。

そして、特徴その2。
佐々木の一人称は、『僕』である。
なので、異性として意識することはない。
これは佐々木なりのメッセージと受け取ることも出来る。恐らく、異性として意識されたくないのだろう。無論、真意は定かではないが。

何はともあれ、それによって性別の垣根を越えた気安さを、俺は感じていた。

キョン「まあ、とりあえず上がってくれ」

佐々木「最近、涼宮さんとはどうだい?」

佐々木を自室に招き、要望に応えてキンキンに冷えた麦茶を提供してやったところ、それをひと息に飲み干して、そんな質問をしてきた。

同時に突き出された空のコップに新たな麦茶を補充してやりつつ、俺は質問に答える。

キョン「どうもこうも、いつも通り振り回されてるよ。こないだも散々な目に遭った」

佐々木「ほう? 聞かせてみたまえよ」

2杯目の麦茶を半分ほど飲んだ佐々木が、不遜な口調で詳細を求めてきた。特徴、その3である。
まるで神か何かのように偉そうな佐々木は、傲岸でこそないが、不遜と表現できよう。
それも其の筈、その筋の関係者の垂れ込みによると、佐々木もハルヒと同じく神らしい。
世界を創り変え、願望を実現する能力がある。

とはいえ、佐々木は世界の変革を望まない。
その点がハルヒとは違うところだった。
我らが団長様は紛れもなく傲岸であり、不遜の極みだからな。さて、そんなことは兎も角。

キョン「愚痴になるが、構わないか?」

佐々木「水臭いことを言わないでくれ。僕とキョンの仲じゃないか。洗いざらい話したまえ」

ならば、洗いざらい話すとしよう。

あれは先週のことだったか。
いつも通り、部室で意味不明な部活動に興じていた我らSOS団一同だったのだが、その日は輪にかけて壊滅的な内容の活動を行なっていた。

ハルヒ「みくるちゃんがおしっこを漏らすまで脇の下をくすぐるわ!」

みくる「ふええぇぇーっ!?」

突然の宣告。
言うが早いか、ハルヒが動く。
瞬時に背後に回り、朝比奈さんを捕縛。
呆気に取られる彼女の脇の下に手を差し込む。

ハルヒ「うりうり~!」

みくる「ひゃああああんっ!?!!」

ハルヒ「さっさと漏らしなさーい!」

みくる「嫌です~!」

響き渡る朝比奈さんの悲鳴とハルヒの大声。
イかれてるかって? ああ、そうさ。
そしてこれが平常運転なのだから驚きだ。

古泉「何分持つか、賭けましょうか?」

口元に腹立たしい微笑を浮かべた古泉が提案してきた悪趣味な賭けを即座に却下する。

キョン「そんな賭けは成立しないだろ」

古泉「おや、それは何故ですか?」

キョン「60秒も持つわけがないからだ」

俺の読み通り、1分も経たずに部室に琥珀色の水溜まりが出現した。

みくる「うぅ……酷いですぅ」

ハルヒ「でも気持ち良かったでしょ?」

みくる「はぃ……ちょっとだけ」

そこで肯定するからダメなんですよ。
とは思うが、これ以上傷つけるのはやめよう。
この状況でネガティブになれば、命が危うい。
一時の快楽に身を委ねることで天使の儚い命が救われるならば、余計なことは言うまい。

それよりも天使の足元の水溜まりが気になる。

古泉「僕のでよろしければ、汲みますか?」

キョン「よろしい要素が見当たらないぞ」

古泉の気持ち悪い謎発言には取り合わない。
どうにかしてあの天使の泉から聖水を汲めないものかと思案に耽ける俺の袖口が、くいっと引かれた。見やると、そこに長門が立っていた。

長門「……私もくすぐって欲しい」

是非もないとはこのことだった。

鶴屋さん「やっぽー! 遊びにきたにょろ! って、どうしたんだいっ! この状況は!?」

俺が懸命に長門の脇をくすぐっていると、鶴屋さんが乱入してきた。状況に慄き、絶叫した。
しかしながら、持ち前の順応性の高さを遺憾なく発揮して、即座に自らの役割を見つけ出す。

鶴屋さん「おっけー把握したよっ! 要するに、今日はみんなでお漏らしする日だねっ!」

ハルヒ「大正解!」

むしろこの状況における不正解とは何なのか。
ひとつ言えるのは、俺は正答に辿り着けずにいた。長門がちっとも笑ってくれないのだ。

キョン「長門、どうだ?」

長門「……ぴくりとも来ない」

畜生。鉄壁過ぎる。
どれだけくすぐっても効果はなかった。
流石は情報統合思念体お手製の対有機生命体コンタクト用、ヒューマノイド・インターフェースだ。くすぐり耐性がカンストしてやがる。

古泉「んっふ。お困りですか?」

キョン「困ってないから帰ってくれ」

何やら助言したそうな古泉を追い払う。
実際、何ひとつとして困ってなどいなかった。
たしかに、ここまでくすぐっているのに長門が一切反応示さないことには不甲斐なさを感じるが、こうして触れ合えているだけで満足だ。

古泉「これはこれは……あなたのあまりの辛辣さにチビってしまいました。困ったものです」

キョン「消え失せろ」

古泉「あはっ」

勝手に股間を濡らした古泉。
困った存在なのはお前だけだ。
侮蔑の視線を向けて吐き捨てると、何故か奴は恍惚な表情を浮かべて身を震わせた。
本当になんなんだろうね、こいつは。

古泉「ふぅ……少々、達してしまいました」

キョン「いちいち言わなくていい」

古泉「甘美な快楽のお礼に、くすぐりの秘訣をお教えしましょう」

キョン「いらん」

古泉「まあまあ、そう仰らずに。いいですか、何も脇の下に拘る必要はありません。今度は足の裏を攻めてみては如何ですか?」

賢者モードの古泉の作戦は存外まともだった。

キョン「長門、靴下を脱いでくれ」

古泉の策に乗るのは少々癪ではあったものの、背に腹は代えられない。足裏を攻めてみよう。
しかし、ここで長門が予想外の反応を示した。

長門「……あなたが脱がせて」

そう言って床を指差す長門。
跪けというわけか。仕方ない。
大変不本意ながらも、俺は膝を折った。
嫌で嫌で堪らなないのに動悸が加速する。

長門「……手は、使わないで」

なかなか難度が高いクエストになりそうだ。
椅子に座った長門が、足をこちらに伸ばす。
流石に上履きは脱いでくれたが、季節は初夏。
いい感じに蒸れた紺色のソックスから、芳ばしい長門の香りが鼻腔を刺激する。垂涎ものだ。

キョン「あむっ」

長門「……んっ」

靴下の先を噛んで、引っ張る。
敢えて、頂きますとは口にしない。
ここは、あくまでも不本意を装う。
素直になれって? わかっちゃいないな。

これは嫌々やってこそのプレイなんだよ。

長門「……つま先を噛まないで」

キョン「無茶言うなよ」

長門「……謝って」

キョン「ごめんなさい」

長門「……それでいい」

なんてやり取りをしつつ、脱がせた。
蒸れ蒸れ素足の登場だ。よだれがとまらん。
だが、早るな。急いては事を仕損じる。

まずは匂いを堪能しよう。

キョン「くんかくんか!」

長門「……まるで犬のよう」

キョン「わん!」

何をやってるんだろうね、俺は。
頭が沸いているかって? ああ、沸いているさ。
長門の香りでガツンと脳天を刺激された俺はもう止まらない。舌を伸ばして、足裏に触れる。

長門「……ッ!?」

反応は劇的だった。
ついに長門が嬌声を漏らした。
そしてついでに、神秘の雫も漏らした。

長門「……そんな、この私が」

まるでどこかのラスボスみたいな台詞だな。
自分でもまさか漏らすとは思わなかった様子。
いやはや、良いものが見れた。眼福眼福。

まあ、どれだけ漏らそうとも構わないさ。
俺はただ長門の足裏を舐め続けるだけだ。
そんな得体の知れない使命感に燃えていると。

鶴屋さん「あっ! キョンくんっ! 次はあたしの足を舐めて欲しいにょろっ!!」

流石に目敏いですね、鶴屋さん。

鶴屋さん「ふわぁ~! キョンくんってば、すっごく舐めるの上手だねっ!」

キョン「お褒めに預かり光栄です」

俺の舌技を絶賛する鶴屋さん。
普段ならばお世辞と受け取る場面であるが、この時ばかりは本音だと思われた。
なんてったって、漏らしている。

そう、あの鶴屋さんまでもが、漏らしたのだ。

ハルヒ「ちょっとキョン! 有希と鶴屋さんばっかりずるいじゃないの! あたしの足も舐めなさいよっ!!」

キョン「とりあえずお前は後回しだ。次は朝比奈さんの番ですよ。こっちに来て下さい」

みくる「ふぇっ!? わ、私もですかぁ!?」

ハルヒ「なんであたしが後回しなのよ!!」

結局、その日朝比奈さんは2度漏らし。
最後は団長が盛大に漏らして部活動を終えた。
えっ? 古泉はどうしたかって?
あいつはずっと、俺の上履きを齧ってたよ。

キョン「とまあ、こんなことがあったわけだ」

近況を語り終えて、ひと息つく。
我ながら、支離滅裂な物語だったとは思う。
しかしながら、これが現実だった。
改めて、現実とは小説よりも奇なりとはよく言ったものだと感心していると、終始無言で耳を傾けていた佐々木が、おもむろに口を開いた。

佐々木「キョン」

キョン「ん? どうかしたか?」

佐々木「そこに正座したまえ」

そう命じて床を指し示す佐々木。
なんの冗談だろうかと思ったが、目がマジだ。
とりあえず、言われた通りに正座しておく。

佐々木「いいかい、キョン。これはあくまで、友人として君に忠告しておくよ」

そんな前置きをして、佐々木は説教を始めた。

佐々木「まず君は朝比奈さんをくすぐる涼宮さんを止めなければいけなかった。全ての発端はそれだからね。次に君は長門さんの要求を拒否するべきだった。そうすれば2次被害の拡大を抑えることが出来ただろう。何か反論は?」

特に見当たらない。
佐々木の言うことはもっともである。
暴論を振りかざすハルヒとは違い、佐々木は正論を掲げて、反論を封[ピーーー]る神だった。

佐々木「やれやれ。もう少し君には自制心があると思っていたのに、失望させないでくれ」

キョン「面目ない」

知らないうちに、失望されてしまったらしい。
くそっ。どうしてこんなことに。
何にせよ、これはすこぶる不味い状況だ。
旧友に嫌われたままなのは嫌だ。

どうにかせねばと悩み、そして閃いた。

キョン「お詫びに足を舐めてやるよ」

佐々木「全然懲りてないみたいだね」

起死回生の提案はにべもなく却下された。
佐々木が軽蔑の眼差しでこちらを見下す。
すると何故か、ゾクゾクした。たまらん。
今ならば古泉の気持ちがわかる気がする。

キョン「……頼む、許してくれ」

佐々木「駄目だよ。僕はもうカンカンなんだ」

どうやら相当お冠らしい。
いつも冷静沈着な佐々木がここまで怒るとは。
何が彼女をそこまで怒らせたのか。
それがどうにも気になっていた。

キョン「なあ、佐々木」

しばらく、気まずい空気を味わった。
佐々木は片頬を膨らませてツンとそっぽを向いている。そんな旧友に、根気よく尋ねてみた。

キョン「どうしてそんなに怒っているんだ?」

佐々木「君には一生わからないだろうね」

これには流石にかちんときた。
そこまで言われたなら、看破してみせよう。
そんじょそこらの鈍感系主人公ではないのだ。

キョン「腹が減ったのか?」

佐々木「そんなわけないだろう」

キョン「肩でも揉んでやろうか?」

佐々木「身の危険を感じるから遠慮しておく」

空腹を疑ったが、違うらしい。
ついでに機嫌を取ろうとしたが、拒絶された。
これは地味に堪える。悲しくて涙が出そうだ。

佐々木「泣いたって駄目だよ」

キョン「ッ……!」

これほど悲壮感を漂わせても効果なし。
泣いても意味はない。佐々木は甘くなかった。
ならば、もう泣くのはやめよう。

キョン「このままで、終われるか……!」

目尻に浮かんだ涙を拭って最後の賭けに挑む。
これから口にする言葉は危険なワードだ。
しかし、世の中にはこんな格言がある。

押して駄目なら、引いてみろ、だ。

キョン「佐々木」

佐々木「なんだい?」

キョン「お前は俺に失望したんだよな?」

佐々木「そうさ。君の節操のなさは許し難い」

それについては非常に申し訳なく思っている。
しかし男子高校生に節操を求められても困る。
んなものは、枯れた木と同じだ。乾いている。

若さとは、潤いに他ならない。
ならば俺は、それを渇望しよう。
ジューシーさこそ、若人の特権なのだから。

キョン「俺は佐々木が漏らしてる姿が見たい」

佐々木「……は?」

目を丸くして、首を傾げる佐々木。
当然の反応だ。耳を疑っている様子。
俺自身、自分が何を言ってるのかわからない。
事もあろうに、漏らしている姿が見たいなど。
完全に頭がおかしい発言だ。自覚はあった。

だがしかし、既に賽は投げられたのだ。
今更引き返すことは出来ない。
こうなったら、やるだけやってみるさ。

キョン「実を言うと俺もお前に失望している」

佐々木「へっ? ど、どうして……?」

よし、食いついたぞ。

キョン「ハルヒは漏らしてくれたのにお前が漏らさないなんてどうかしていると思わないか? あまりがっかりさせないでくれよ、佐々木」

どうかしているのは、紛れもなく俺の方だ。
しかし、今の佐々木はそれに気づけない。
俺が失望されてショックを受けたのと同様に、今度は佐々木がダメージを負った。
旧友に失望されるのは、それほどキツい。
だからこそ、焚き付ければ、ほら簡単に。

佐々木「ぼ、僕だってお漏らしくらい朝飯前さ! あまり見くびらないでくれたまえよっ!」

まったく、チョロい神様がいたもんだ。

キョン「なら、見せて貰おうか」

完全に流れがこちらに傾いた。
特に誘導した覚えはないが、美味しい展開だ。
別に、俺は人の排泄が見たいわけではない。
そうした特殊な趣味など持ち合わせていない。
しかし、見れるのならば見ておくべきだ。
排泄とは、そういった類いの代物だと思う。

佐々木「やれやれ、すっかり君にしてやられたよ。流石に僕の扱いを心得ているようだね」

キョン「伊達に長い付き合いじゃないさ」

佐々木「まったく、君だから特別だよ?」

どうやら冷静さを取り戻した様子の佐々木は、自分が口車に乗ってしまったことに気づいたらしく、自嘲げにくつくつと喉を鳴らした。
とはいえ、後からやっぱり今のはなしと、発言を取り消さないのが、佐々木の魅力だ。
竹を割ったようなと言うと語弊があるかもしれないが男友達に似た潔さを持ち合わせている。

そうした部分を俺は好ましく思っていた。

キョン「ほら、足を出せよ」

佐々木「いや、そこまでして貰うのは……」

キョン「いいから、全部俺に任せろ」

半ば強引に、佐々木の足を確保。
困った顔をしつつも、特に抵抗はしない。
これが俗に言うOKサインだろう。間違いない。

キョン「いま、靴下を脱がせてやるからな」

長門にしてやったように靴下を脱がせる。
違いは脱がせ方だ。長門の時は先端を咥えて引っ張るという乱暴なやり方だったが、佐々木に対しては詫びも兼ねて丁寧に作業した。

キョン「はむっ」

靴下のゴム部分を噛んで、ゆっくり脱がせる。
唇がすべすべの佐々木の素肌をスライド。
すると、びくりと身を震わせ、悶える仕草。

佐々木「っ……ぁんっ」

隠しきれない嬌声が耳朶を打つ。
俺はちらりと佐々木の様子を伺った。
すると、顔を真っ赤にして唇を噛んでいた。

それを目撃した瞬間、俺に電流が走った。

あれ? なんだ、この可愛い美少女は。
もしかして、佐々木なのか? 信じられない。
今の今まで、俺は一体何を見てきたのか。
己の目が節穴だったと実感せざるを得ない。

佐々木、かわいい。
かわいいぞ、佐々木。
ポニテ好きな俺でも、このときばかりはショートヘアを見直した。長門には申し訳ないが、やっぱり佐々木が一番かも知れない。

まるでAnotherに出て来そうなその美少女ぶりに見惚れていると。

佐々木「キョン、焦らさないでくれたまえよ」

おっと、いかんいかん。
我に返った俺は、作業に没頭する。
それでは皆さんお待ちかね。炎天下の道中で蒸れた佐々木の素足を、堪能するとしよう。

キョン「じゃあ、いくぞ」

佐々木「ああ、覚悟は出来ている」

何事にも同意は必要不可欠だ。
あとから裁判沙汰になっては困る。
まるで魔王に挑む勇者のような決意の眼差しを向け、しっかりと佐々木が頷いたのを確認してから、俺はその柔らかな足裏に舌を伸ばした。

佐々木「ひゃんっ!?」

嬌声が響き、目的を達成したことを悟る。

キョン「レロレロレロレロレロレロレロレロ」

佐々木「キョン!? もうやめたまえよ!?」

佐々木は漏らした。
だが、君がイクまで、舐めるのをやめない。
ぴんと伸びた足が、断続的に痙攣している。

佐々木「んんっ……ッ……あぅっ……きゃっ!」

大きく仰け反り、一際激しい痙攣が起こった。
これで、ミッション・コンプリート、だ。
俺の舌技は、もう1人の神にも通用したらしい。

キョン「佐々木、大丈夫か?」

佐々木「はあ……はあ……もう、君ってやつは」

参ったな、やりすぎてしまったらしい。
肩で息をしている佐々木の痙攣が止まらない。
ちょっと涙目で、頬が上気している。
なんとも色っぽくて、どうにもムラムラした。

しかし、ここは自制心を持たねばなるまい。
なにせ、さっき怒られたばかりだ。
鋼の精神力により、せっかく仲直りした旧友に襲いかかるような最悪の事態はなんとか回避。

気持ちを切り替えるべく、話題を自室に生まれた大きな水溜まりに変更しておく。

キョン「随分沢山出たな」

佐々木「おや、それを見越して麦茶を大量に飲ませたのではないのかい?」

キョン「まさか。だいたい、麦茶をがぶ飲みしたのはお前の自由意志によるものだろうが」

佐々木「そうだったね。つまり、僕は無意識に君の前で漏らすことを望んでいたわけだ」

そう言って、くくっくと、嗤う佐々木。
もちろん冗談だろうが、嬉しくなった。
こうした何気ない一言が、佐々木の良さだ。

キョン「さてと、それじゃあ後片付けを……」

佐々木「待ちたまえ」

心温まるひと時を存分に味わった俺が水溜まりを掃除しようとしたら、佐々木に止められた。
一体何の用かと首を傾げると。

佐々木「キョン、君だけ綺麗なままというのは頂けないな」

キョン「は?」

佐々木「聞くところによると、部活動中も君だけは漏らしてしないようじゃないか」

急におかしなことを言い始めた佐々木。
たしかに、指摘通り、俺は漏らしていない。
だが、それがなんだと言うのか。

佐々木「僕は君が漏らしている姿が見たい」

おいおい、勘弁してくれよ。
俺が漏らす姿が見たいだって?
どこにそんな需要があるってんだ。

佐々木「他ならぬ、僕の望みさ」

他ならぬ、佐々木の願い。
そしてこいつには願望を実現する力があった。
瞬時に俺の排泄ゲージが跳ね上がる。

こうなったら仕方ないな。やむを得ない。

キョン「わかったよ、特別だぞ?」

佐々木「キョン、君のそういうところが、僕は素敵だと感じるよ」

くつくつと喉を鳴らして、佐々木が褒める。
顔が熱い。嬉しくて堪らなかった。
これ以上の殺し文句は存在しないだろう。

佐々木「さあ、足を出したまえ」

キョン「いや、それは流石に……」

佐々木「何を遠慮してるんだい? 僕と君の仲じゃないか。全てを僕に委ねたまえよ」

そこまで言われては、拒否出来ないな。
言われるがまま、足を差し出す。
ちなみに今日は一歩も外に出るつもりはなかったので、最初から素足だ。蒸れてない。

佐々木「くんくん……キョンの匂いがする」

これ、自分がやられると相当恥ずかしいな。
頭がどうにかなっちまいそうだ。たまらん。
熱心に足の匂いを嗅いでいた佐々木がちらりとこちらに目を向けてきてばっちり目が合った。
あまりの気恥ずかしさに、顔を背ける。

すると佐々木は如何にもおかしそうにくっくくと含み笑いを漏らして、赤い舌を覗かせた。

佐々木「キョン、覚悟はいいかい?」

キョン「それはこっちの台詞だ」

やられっぱなしは、癪だ。
度肝を抜いてやる。勝って終わらせる。
逆を言えば、最後に勝った者が、勝者だ。

佐々木「では、お手並み拝見といこうか」

佐々木の舌が、俺の足裏に、触れた。

キョン「フハッ!」

まるで階段を踏み外したかのような衝撃。
それと共に込み上げる、愉悦。悦が漏れ出た。
恐らく、佐々木は尿を想定していただろう。
それは当然だ。当たり前の発想である。
常識的に考えれば、それしかない。

なればこそ、俺は常軌を逸脱する。

ぶぼっ!

佐々木「きゃあっ!?」

キョン「フハハッ!!」

ぶぼぼぼぼっ!!

キョン「フハハハハハハッ!!」

ぶぼぼぼぼぼぼぼぼっびちびちびちっ!!!!

佐々木「きゃあああああああああっ!?!!」

キョン「フハハハハハハハハハハッ!!!!」

選んだのは、尿ではなく、便だった。

これぞ、最強の一手。
佐々木の悲鳴が心地いい。
世界は全て、我が手に落ちた。
願望を実現する能力?
そんなもんは、屁みたいなものだ。
実体を持つ大便こそが、最強也。

その瞬間。

大規模な大便色の閉鎖空間が、出現した。

古泉「何をやっているんですか、あなたは」

キョン「……つい、勢いで」

大便色の閉鎖空間に漂う、火の玉。
明滅を繰り返すその玉から聞こえる古泉の声。
どうやら、超能力で駆けつけたらしい。

ちなみに佐々木はあまりのショックで気絶中。
すやすやと穏やかな寝息を立てている。
恐らく、今日の出来事は全て夢だと思う筈だ。

古泉「これからは僕の居ないところでは漏らさないように気をつけて下さい」

キョン「お前の居るところでは漏らさん」

古泉「おや、それはそれは残念です。……佐々木さんが羨ましいですね」

最後の一言は聞こえないふりをしておく。
赤い玉の姿をした古泉は、爆心地まで飛び。
俺が漏らしたグラウンド・ゼロに特攻した。

古泉「ふんっもっふ!」

糞にダイブした古泉。
それによって大便が霧散。
空間がひび割れ、元の世界に帰還した。

キョン「佐々木、起きろ」

佐々木「ん? あれ? 僕はいったい……」

キョン「随分よく眠れたみたいだな」

現実へと帰ってきた俺は、佐々木を起こした。
一応念を押しておくが、普通に肩を揺すった。
どこぞの眠り姫のような手法は使っていない。

佐々木「ということは、さっきのは夢……?」

キョン「ん? どうかしたのか?」

佐々木「い、いや、何でもない!」

なかなか面白い反応が見られた。
閉鎖空間の消滅に合わせて、現実世界の便や尿の痕跡は消え去っている。本当に夢みたいだ。

だが、俺はそれが現実だと、知っている。

キョン「佐々木」

佐々木「なんだい、キョン?」

キョン「可愛かったぞ」

具体的な場面の言及は避けた。
それでも、言いたいことは伝わったらしい。
みるみる顔が赤くなった佐々木は口を尖らせ。

佐々木「……キョンのいじわる」

そんな拗ねたようなことを口走り自分でもおかしくなったのか、くつくつ喉を鳴らす佐々木。
これ以上、三連休初日の締めくくりに相応しい台詞なんざ、存在しないだろう?


【佐々木とキョンの糞尿空間】


FIN

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