モルジアナ「巨人……?」 (163)

モルジアナ「うう……ん」



モルジアナ『私は下のザガンを倒してきます!』

モルジアナ『これでもっと皆の役に立てる!』

モルジアナ『皆さん……私……やりました……!』



モルジアナ『せっかく……これから……皆の役に立てると思ったのに……!』


モルジアナ「はっ!」ガバッ

モルジアナ「はぁ……はぁ……」

モルジアナ(私は……)

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1371870534

モルジアナ(確か、ザガンを倒すために力を使い果たして……それから……)

モルジアナ「ここは……どこ?」キョロキョロ

モルジアナ(街……? 見たことない景色……まだ迷宮の中なのかしら……)

モルジアナ(体は……動く。なんともない)

モルジアナ「アリババさん! アラジン! 白龍さん!」

シーン

モルジアナ「みんな……どこに……?」

モルジアナ「! これは……!」クンクン

モルジアナ(何かが焼けるような臭いと……死臭……!)

ズンッ ズンッ

モルジアナ「何か……近づいてくる……!」

巨人「……」ヌッ

巨人「」ニタァ

モルジアナ「!」ゾクッ

巨人「アァァァァ!」ブンッ

ズドォン

モルジアナ「くっ!」

モルジアナ(何だかわからないけど……死臭の元はこいつだ……)

モルジアナ(確実に"良いもの"じゃない! とにかく倒す!)バッ

巨人「ア゙ァァァァ!」

モルジアナ「まずは……足首を」ダンッ

モルジアナ「蹴り砕くっ!」

グシャッ

巨人「オ゙アァァァ!」

モルジアナ(あまり動きは速くないみたいだけど……敵の機動力を削ぐのは大事、ってマスルールさんが言ってたし……)

巨人「……」

巨人「」ガバッ

モルジアナ「! しまっ……」

ガシッ

巨人「」ニタァ

モルジアナ「何、で……動け……!」

シュゥゥゥゥ

モルジアナ(足が……治ってる……!?)

ギリギリギリ

モルジアナ「く……あっ……!」

モルジアナ(早く抜け出さないと……握りつぶされ……)

モルジアナ(! 違う……)

巨人「」ガパァ

モルジアナ(私を……喰う気だ……!)

モルジアナ「ぐ……うっ!」

モルジアナ(くっ……上手く力が入らな……)

ヒュッ

巨人「?」

「うおぉぉっ!」

ザクッ

巨人「! ァァ……」

モルジアナ「え……?」

ズシィィン

モルジアナ「な、何……?」

兵士A「怪我は?」

モルジアナ「だ、大丈夫です」

兵士B「おーい、どうした!?」スタッ

兵士A「この子が今し方巨人に襲われてたんで救助した」

モルジアナ「巨人……?」

兵士B「マジかよ! 生存者……ってことか?」

兵士A「らしいな。もしかしたら、領土奪還作戦の時の難民かもしれん」

兵士B「まさか! こんな子供が参加してるわけないだろ!」

モルジアナ「?」

兵士A「とにかく安全なところに行こう。君、俺の肩に捕まってくれ」

モルジアナ「は、はい」

…………………

…………

……

兵士B「まさかウォールローゼ外に人が取り残されてるとは思わなかった」

兵士A「君、名前は? 出身はどこだ?」

モルジアナ「モルジアナです。出身は……ええと、カタルゴ……です」

兵士A「カタルゴ……? 聞いたことあるか?」

兵士B「いや、ねぇな。南部にそんな土地あったかな」

モルジアナ「あの……私気づいたらあそこにいて……友人たちともはぐれてしまって……」

兵士B「なるほど……」

兵士A「巨人に襲われたショックで気絶してしまったか……あるいは記憶が飛んでいるのかもしれん」

兵士B「無理もないな。とにかく、宿舎まで案内するよ」

モルジアナ「え、でも私……」

兵士B「心配いらない。まあ、難民用の宿舎だから色々と不便はあると思うけどな……」


《ウォール・ローゼ内地南部 難民宿舎付近》

モルジアナ(あの後、私を助けてくれた兵士さんは色々教えてくれた)

モルジアナ(壁に囲まれた街の事、巨人の事、『この世界』は壁の中にしか存在しないこと)

モルジアナ(それを聞いて、私は呆然とするしかなかった)

モルジアナ「アリババさん……私、どうすれば……」トボトボ

キィィィン

モルジアナ「! 私の眷属器……」

モルジアナ(力は宿ってる……アリババさんは無事なんだ……)

モルジアナ(それがわかっただけでも一安心……かな)

短いけどとりあえずここまで
ちまちまゆるゆる投下していきます

「ぐぐぐ……ぜぇぜぇ」

モルジアナ「?」

サシャ「重っ……こんな荷物一人で運べるわけないじゃないですかぁ……ぐすっ」

モルジアナ「……あの」

サシャ「ひゃいっ! すみませんサボってたわけじゃありませんんん!」

モルジアナ「」ビクッ

サシャ「え、あ! すみません! つい条件反射で!」

モルジアナ「いえ……その、手伝いましょうか?」

サシャ「え! いいんですか!?」

モルジアナ「はい」

サシャ「あっ、でも手伝ってるとこみられたら教官が……またご飯抜きとか……でも……」ブツブツ

モルジアナ「?」

サシャ「じゃ、じゃあちょっとだけ。えへへ……」

サシャ「あっ、私、サシャです! サシャ・ブラウスと言います!」

モルジアナ「モルジアナです。よろしくお願いします、サシャさん」

………………

…………

……

サシャ「──で、なけなしの芋半分上げたのに『死ぬまで走れ』&『飯抜き』ですよ! ありえなくないですか!?」モグモグ

モルジアナ「は、はぁ……大変なんですね、訓練生って……」

サシャ「それにしても……モルジアナはすごく力持ちなんですねぇ」モグモグ

モルジアナ「えぇ、割と。それより、一つ訊いて良いですか?」

サシャ「はい、なんなりと」

モルジアナ「この荷物、その教官から運ぶよう言われてるんですよね」

サシャ「そうですね」

モルジアナ「で、今サシャさんが食べてるそれはこの荷物の中身ですよね」

サシャ「はい。兵団御用達の保存食です。これがなかなか美味しいんですよー」ムシャムシャ

モルジアナ「……大丈夫なんですか?」

サシャ「へ? 何がですか?」

モルジアナ「……いや、良いなら良いんです」

サシャ「? モルジアナも食べますか?」ムシャムシャ

モルジアナ「いえ、要りません。それよりサシャさん、嫌な予感がするんでそれ食べるのもう止した方がいいと思います」

サシャ「嫌な予感? 不思議なことを言いますねぇモルジアナは」

「不思議なのは貴様の頭の中だ、サシャ・ブラウス」

サシャ「!?」

サシャ「ひいぃっ!? キース教官んんん!! あっ! いつの間にか兵舎の前じゃないですか、やだー!」

モルジアナ(この人が……芋半分の教官……)

キース「何故隣の少女が荷物を抱えているのか、何故貴様が荷物の中身を貪っているのか、言いたいことは色々とある……が、ともかく貴様には更なる罰を与えねばならんな」

サシャ「ぐぁうぅ……無念……」ガクリ

モルジアナ「あ、あの」

キース「……なんだね?」ギロリ

モルジアナ「荷物運びに関しては私が無理矢理手伝ったことなので、サシャさんは悪くありません」

サシャ「も、モルジアナ……」

キース「……君は何者だ。サシャ・ブラウスの友人か?」

モルジアナ「いえ、先ほど知り合ったばかりです」

キース「ふむ……」

モルジアナ「……?」

キース「なかなか複雑な目をしている……」

モルジアナ「えっ?」

キース「……ただの独り言だ」

キース「では、この少女に免じて荷物運びの件は不問としよう」

サシャ「わーい! モルジアナ、ありがとうございます!」

キース「しかし勝手に食料に手を出した件が残っている」

モルジアナ「それについてはちょっと擁護できません……すみません」

サシャ「……」

キース「今日は就寝時間までずっと営倉行きだ。いいな?」

サシャ「え? ってことは晩ご飯は?」

キース「いいな?」

サシャ「ひゃい……」トボトボ

モルジアナ(……だから言ったのに)

キース(あれさえなければ優秀な訓練生なのだが……)

キース「さて……君、名前は何という?」

モルジアナ「モルジアナです」

キース「出身は?」

モルジアナ「カタルゴです」

キース「カタルゴ……聞いたことがないな」

モルジアナ「あ、ええと……」

モルジアナ「私、記憶がその……巨人に襲われる前までがあやふやで……助けてもらったんですけど、友達ともはぐれてしまって……」

キース「そうか……悪いことを訊いてしまったな」

モルジアナ「いえ」

モルジアナ(優しい人……サシャさんは血も涙もない鬼教官だって言ってたけど……)

キース「見慣れないが……綺麗な赤髪だ。生まれつきか?」

モルジアナ「はい」

キース「そうか……では、私は失礼する。また会おう、モルジアナ」スタスタ

モルジアナ「? はい……」

とりあえずここまで
ではまた

《翌日 訓練兵舎前》

モルジアナ(なんとなくまた来ちゃった……)

モルジアナ(他に行くところもないし……ここに来たところで何をするわけでもないけど……)

「あんた誰?」

モルジアナ「?」クルッ

コニー「なんか用? 訓練生には見えねえし……ここは一般人が来るところじゃないぜ」

モルジアナ「えっと、特に用があるわけでは……」

サシャ「あっ! こんなところにいたんですかコニー! サボってるとまた教官に怒られますよ!」

コニー「サボってるわけじゃねえよ! 俺は見知らぬ人影が見えたから不審者じゃないか確かめに……」

サシャ「あれっ? モルジアナじゃないですか!」

コニー「聞けよ!」

モルジアナ「こんにちは。サシャさん」

コニー「何、お前の知り合い?」

サシャ「女神その2です」

コニーモルジアナ「?」

キース「貴様等……今は対人格闘術訓練をしろと言ってあるはずだが?」ヌッ

サシャコニー「」ビクッ

キース「特にブラウス……昨日の今日でまたしても問題行動とは良い度胸……ん?」

キース「モルジアナ……」

モルジアナ「どうも」ペコリ

キース「また会ったな」フッ

サシャコニー(教官が笑った! 気持ち悪っ!)

コニー「つーか何? 教官とも知り合いなの?」ヒソヒソ

サシャ「そうですね」

コニー「もしかして教官の娘とか!?」ヒソヒソ

サシャ「いやいやまさか! あの教官からあんな可愛い娘さんが生まれてくるわけないじゃないですか!」

コニー「あ、おいバカ……」

キース「……ブラウス、スプリンガー、走ってこい」

サシャコニー「」

サシャ「あの……どれくらい?」

キース「無論、死にかけるまで」

………………

…………

……

モルジアナ「すみません……お邪魔してしまって」

キース「かまわん。あの二人はいつもあの調子だからな」

キース「それより……何か用があってきたのか?」

モルジアナ「いえ……なんとなく、なんです。私、行く宛がなくて」

キース「ふむ……ならば、訓練の様子を見てみるか?」

モルジアナ「いいんですか?」

キース「ああ。ついてきなさい」

モルジアナ「……」

キース(この少女は……いったいどれほどの地獄を見てきたのだろう)

キース(これから巨人と戦う者達の姿を見て……何を思うのだろう)

キース(不謹慎なことに……何故かそれに強く惹かれる自分がいる)

………………

…………

……

モルジアナ「……」

ジャン「……」

キース「では、キルシュタイン! モルジアナ! 対人格闘術訓練を始めろ!」

ジャンモルジアナ(なんでこんなことに……)

とりあえずここまで
ちまちま

《数分前》

キース「対人格闘術訓練は決して無意味なものではない! 憲兵団を目指す者にとっては尚更だ! 貴様らはどうやら、兵士としての自覚が足りないらしいな!」

訓練兵A(そんなこと言われてもなぁ)

訓練兵B(点数気にして訓練やってないと身が持たねえよ……)

キース「……言いたいことがある者が多数いるようだが……良いだろう」

キース「今日の訓練はこれで終わりにしよう」

訓練兵C「え、ホントですか」

キース「ただし!」ツカツカ

キース「誰か一人でも、この少女に勝つことが出来たらな!」

モルジアナ「!?」

一同「!?」

モルジアナ「あの、教官さん、私……」

キース「遠慮はいらん。すまないが、完膚なきまでに叩きのめしてやってくれ」

モルジアナ「……は、はい」

モルジアナ(教官さん、私が戦ってるところなんか見たこと無いはずなのに……?)

キース「では、そうだな……キルシュタイン! 前に出ろ!」

ジャン(げっ……俺かよ)

モルジアナ(とは言ったものの……)

ジャンモルジアナ(なんでこんなことに……)

ジャン「……」

モルジアナ「……」

ジャン「あー、じゃあ俺がならず者役でいいのか?」

モルジアナ「……かまいません。本気でかかってきてください」

モルジアナ「私は与えられた使命を全うするのみです」サッ

ジャン(なんだそりゃ。大げさな)

モルジアナ「殺す気でどうぞ」

ジャン「っつってもなぁ……あんた、そんなに強そうに見えな」

モルジアナ「……」パキッ

ビュンッ

モルジアナ「本気で、かかってきてください」ピタッ

ジャン「!?」

一同「!?」

ジャン(は!? な、なんだ、今、10メートル以上離れてたよな!?)

ライナー(一瞬で距離を詰めた……誰も、反応できないレベルの速度で……)

ベルトルト「何者なんだ、あの子……?」

アニ「……」

ミカサ「……」

ジャン(く、くそっ! これじゃ距離取っても安心できねぇ!)

エレン「ジャン」

ジャン「あ!? な、なんだよ!」

エレン「もう勝負ついてるぞ」

モルジアナ「短剣を奪ったらおしまい、でしたよね」パシッ

ジャン「……」ポカン

一同「……」

シーン

キース(……想像以上だ)

モルジアナ「次は誰ですか? それとも」

モルジアナ「今度は私が攻め手をやりますか?」ギロリ

ジャン「い、いや……参った」

キース「では次だ! 誰か挑む意志のある者はいるか!」

一同「……」

キース「……では、全員訓練に戻れ」

「待ってください」

キース「?」

アニ「私がやります」

ベルトルト「アニ……?」

ライナー「珍しいな。お前が……」

アニ「別に。ただちょっと、興味が湧いただけ」

とりあえずここまで
ではまた

アニ「あんた、強いんだね」

モルジアナ「ただ間合いを詰めただけですけど……」

アニ「それだけでも充分わかるよ」

モルジアナ「……どうも」

アニ「どうする? あんたがならず者をやる?」

モルジアナ「かまいませんが……あまり武器を使うのは好きじゃありません」

アニ「じゃあいいよ。お互い武器無しでやろう。相手を制圧できたら勝ちってことで」ポイ

アニ「いいですか、教官?」

キース「……いいだろう」

………………

…………

……

モルジアナ「……」

アニ「……」

ジリジリ

アニモルジアナ(隙が無い……)


ジャン「お、おい……いつまでにらみ合ってんだよ、あの二人……」

ユミル「……黙って見てろ」


アニ「……」

モルジアナ(どうする……相手が動くのを待つか……さっきみたいに考えなしに飛び込むのは危ない……気がする)

モルジアナ(いっそ力任せに……いや、もし加減を間違えたら相手を殺しかねない……)

モルジアナ(……これは相手を殺す戦いじゃない)

モルジアナ(……難しい。そういう戦いに慣れすぎたせいだ)

モルジアナ(私のこの力は……誰かを守るためにありたいのに……)

アニ(……チャンスか?)ピクッ

アニ「」ダッ

モルジアナ(! 仕掛けて来た!)

アニ(さあ突っ込んでくる相手にどうでる? 腕を伸ばしたら取って固める……脚を払いに来たら避けて軸足を狙う……)

モルジアナ(ここは……脚を狙う!)

アニ「……だろうね」ヒュッ

モルジアナ(飛んで避けた! これで隙だらけ……っ)

アニ(空中じゃ身動き取れないと思ってるんだろ)

アニ「それは……どうかな!」グルッ

モルジアナ(! 回し蹴り……!)

バシィッ

モルジアナ「……くっ!」ビリビリ

アニ「……」スタッ

モルジアナ「……空中で体を捻っただけとは思えない威力です」

アニ「立体機動のコツは空中での姿勢制御。猫みたいだろ。もちろん、地に足着けた方が強く蹴れるけど」

アニ「……こんな風に!」ブンッ

モルジアナ「っ……!」サッ

アニ(上体を反らして避けたら……そのまま体重をかけて組み伏せる。あの体勢からじゃ何も……)

モルジアナ「ふっ!」ダンッ

アニ「!?」

アニ(飛んだ……! 爪先の力だけで……!)

モルジアナ「……」フワッ


ユミル「おい……ありゃ立体機動でも使ってんのか」

ライナー「5、6メートル級の巨人なら軽く飛び越せるな……」

クリスタ「見えちゃう! スカートの中見えちゃう! みんな目を閉じて!」


アニ(参ったな……対空迎撃なんて教わったことないよ)

アニ(一旦離れるしか……)

モルジアナ「でやぁぁぁぁ!!」ゴウッ

アニ「!」

モルジアナ(当てるつもりはない!)

モルジアナ(制圧……相手の動きを抑えることを制圧というのなら……)

モルジアナ(圧倒的な力を見せつけて、相手の戦意を喪失させればいい!)

モルジアナ「はあぁっ!」

ズドォォン

アニ「……」

一同「……」

モルジアナ「……」スクッ

シュウゥゥ

アニ(地面を……蹴り砕いた……いや、踏み砕いた……)

モルジアナ「……」

アニ「……脚」

モルジアナ「?」

アニ「脚、痛くないの?」

モルジアナ「え? ええ、大丈夫です」

アニ「そう……」

モルジアナ「……」

アニ「……はあ、さすがに参った。降参だ」


ライナー(そりゃそうだろ)


モルジアナ「……」ホッ

キース「ふむ……では、全員訓練に戻れ!」

キース「……モルジアナ、感謝する」

モルジアナ「?」

………………

…………

……

モルジアナ「……」

アニ「見学中悪いね。隣、良い?」

モルジアナ「はい」

アニ「えっと、モル……何?」

モルジアナ「モルジアナです。アニさん、でしたよね?」

アニ「ああ」

モルジアナ「アニさん。私さっき教官さんにお礼を言われたんですけど……どういうことなんでしょう」

アニ「さあ? あの人の考えること、よくわかんないから」

アニ「ただ、何人か腑抜けたやつは気合い入れ直したみたいだし、訓練のプラスにはなったんじゃない?」

モルジアナ「私、ほとんど何もしてないです」

アニ「かなり化け物じみたことしてたよ」

アニ「あんた、訓練生になってみる気ないの?」

モルジアナ「え?」

アニ「あんたくらい強かったら良い成績残せると思うけど。肝は据わってるみたいだし」

モルジアナ「……私のような得体の知れない人間に兵士が務まるとは思えません」

アニ「? 教官の知り合いなんじゃないの?」

モルジアナ「昨日知り合ったばかりです」

アニ「ふーん……ま、構わないんじゃない? 今、内地の連中は少しでも多く優秀な兵を集めようとやっきになってるみたいだし。戸籍なんか適当にでっち上げられるでしょ」

モルジアナ「……」

アニ「……」

モルジアナ「兵士になったら……」

アニ「?」

モルジアナ「誰かを守る為の戦いが……できるんでしょうか」

アニ「できる……んじゃない? わからないけど」

モルジアナ「……」

アニ「ま、勧められるような話じゃないか。忘れてくれて構わないよ」

モルジアナ(……アリババさん……アラジン)

モルジアナ(立ち止まっていても、何も変わらない)

モルジアナ(探すんだ……今、私に出来ることを)

アニ「じゃあ、私は行くよ」スクッ

モルジアナ「アニさん、一つ訊いても良いですか?」

アニ「?」

モルジアナ「私と戦ったとき、全然本気じゃなかったですよね」

アニ「……」

モルジアナ「たった二撃でしたけど……手を抜いてるのはわかりました」

アニ「……そりゃお互い様でしょ。私が飛んで無防備になったとき、どうするか一瞬迷ったよね、あんた」

モルジアナ「……」

アニ「まあ、またあんたと戦うことがあったとしても全力は出したくないし、出されたくもないね」

とりあえずここまで
地の文無しの戦闘描写なんてやるもんじゃない

後今更ですが、マギと進撃の巨人のクロスです
ではまた

………………

…………

……

モルジアナ「教官さん」

キース「む?」

モルジアナ「訓練生になることは私にも可能でしょうか」

キース「なりたいのか」

モルジアナ「……はい」

キース「……訓練を終えた者達には、三つの選択肢が与えられる」

モルジアナ「?」

キース「壁を守る駐屯兵団、壁の外に赴く調査兵団、内地の安全を守る憲兵団」

キース「憲兵団に志願できる者は、上位成績者10名のみだ。しかし、中途入隊した者に、その資格は与えられん」

キース「つまり今から訓練生になれば、巨人に近づくリスクを背負うだけということだ」

モルジアナ「構いません。それでも」

モルジアナ「私は、私の力を誰かを守る為に使いたいと願ってきました」

モルジアナ「兵士としての戦いの中に身を置けば、私のすべきことが……見つかるかもしれないんです」

キース「……いいだろう。来る者は拒まん。その覚悟、見届けさせてもらおう」

モルジアナ「ありがとうございます」

キース「……すまない」

モルジアナ「え?」

キース「いや、なんでもない。上には話を通しておこう」

モルジアナ「それで、教官さんには話しておきたいことがあるんです」

キース「『教官』だ。明日から貴様も訓練生だからな」

モルジアナ「はい、教官」

キース「話しておきたいこと……とは?」

モルジアナ「私のことを……全て」

………………

…………

……

キース「バルバッド、シンドリア……奴隷……"金属器"をめぐる争い……なるほど妄想にしてはよく出来た話だ」

キース「つまり貴様は外の世界……いや、全く別の世界から来たと?」

モルジアナ「恐らく……自分でもよくわかっていません」

キース「なるほど。にわかには信じがたいな」

モルジアナ「見てもらったほうが早いと思うので、少し時間をください」

キース「いいだろう」

モルジアナ「兵士の皆さんは、りったいきどう、という装具を使うと聞きました」

キース「うむ」

モルジアナ「私、似たようなことができるんです。この腕輪と鎖を使って」

キース「何……?」

モルジアナ(アリババさん……少し力をお借りします)キィィィン

モルジアナ「やっ!」ギュルルル

ドスッ ドスッ ヒュッヒュッ

キース「!」

キース(鎖を壁に打ち付けて……反動を使って飛んでいる)

キース(確かに立体機動術に酷似しているな)

モルジアナ「……っと」スタッ

モルジアナ「これが私の力です」

キース「ああ、充分見せてもらった。だが……兵舎の壁に穴を開ける必要はあったのか? そこの岩壁で良かったのでは?」

モルジアナ「あっ」

モルジアナ「ごめんなさい」シュン

キース「構わん。それより、それが例の金属器という代物か?」

モルジアナ「厳密に言うと違いますが、似たような物です」

キース「その鎖の原動力は何だ? それは実践に耐えうるものか?」

モルジアナ「自分の魔力(マゴイ)が尽きるまではいくらでも使えます」

キース「マゴイ?」

モルジアナ「ええと、気力というか、体力というか……魔法の力というか」

キース「魔法……だというのか、それを」

モルジアナ「はい」

キース「……」

今日はこれだけ
ではまた

《翌日 兵舎》

コニー「あ、昨日の赤頭!」

サシャ「あれぇ? なんでここに?」

モルジアナ「色々あって訓練生になりました。よろしくお願いします。それと、赤頭ではなくモルジアナです、コニーさん」

コニー「モル……何? 覚えづらいなぁ、お前の名前」

モルジアナ「……」

コニー「それによく見たら背、ちっちぇーし。そんなんで戦えんの?」ペチペチ

モルジアナ「それに、って何ですか。身長のことコニーさんに言われたくありません」ムスッ

ライナー「おい、あんまりその子を舐めない方が良いぞ、コニー。なんたってあのアニに格闘術の訓練で勝ったんだからな」

コニー「え!? マジかよ!」

ライナー「な、アニ?」

アニ「ああ」

モルジアナ「勝ってません。あれは……引き分けです。決着はついてませんから」

コニー「いや引き分けでもすげぇよ……」

………………

…………

……

サシャ「はー、昨日そんなことがあったんですね」

モルジアナ(本当にずっと走らされてたんだ……)

ユミル「短剣取られた時のこいつの間抜け面が見物だったな。ぷくくっ」

ジャン「うるせぇ!」

モルジアナ「すみません。ついカッとなってしまって」

ジャン「謝るんじゃねぇよ……余計惨めになるだろが……」

クリスタ「な、泣かないでジャン」

ジャン「泣いてねぇよ!」

ライナー「というかお前ら揃いも揃って集まってきて……そんなに新入生が珍しいか」

ベルトルト「人のこと言えないよライナー」

ユミル「そりゃあんだけ強烈な格闘術見せられりゃあな。興味も湧くさ」

モルジアナ「あまり大したことはしてませんが……」

ジャン「……」

ライナー「やめてやれ。ジャンが早くも限界だ」

コニー「なぁ、モルはどこの生まれだ? 北とか東の方か?」

ベルトルト「確かにその赤髪といい、見慣れない風貌だね」

クリスタ「綺麗だよねぇ。お父さん譲り? お母さん譲り?」

モルジアナ「わかりません。父の顔も母の顔も、私はよく覚えていませんから」

一同「……」

モルジアナ「?」

ユミル「クリスタ……触れちゃいけない部分に触れたな」

クリスタ「ご、ごめんなさい! その……なんていうか……」

クリスタ「ごめんなさい……」ズーン

モルジアナ「い、いえ、大丈夫です!」オロオロ

モルジアナ「父も母も幼い頃に生き別れただけで、亡くなっているとは限りませんし」

ライナー「そ、そうか……」ホッ

クリスタ「元気だと良いね! お父さんとお母さん!」

モルジアナ「はい。ですが父と母も奴隷になっている可能性が高いので元気とはいえないかもしれません」

一同「……は?」

モルジアナ「あっ」

ユミル「……奴隷?」

アニ「……父と母"も"?」

モルジアナ(し、しまった……何を正直に話してるの、私……)

コニー「ドレーって何だ? 聞いたことねぇぞ」

ライナー「ああ、少なくとも南部にそんなイカレた制度はない」

サシャ「ライナーライナー。コニーは言葉の意味そのものを理解していないんだと思います」

ユミル「……また禁忌に触れたみたいだぞ、クリスタ」

クリスタ「ごめんなさい……なんていうかその……」

クリスタ「ごめんなさい……」ズーン

モルジアナ「ち、違うんです!」

コニー「なぁ! ドレーって何なんだよ!」

アニ「売り買いされる人間のことだよ」

ユミル「本人の意志関係なく、ってとこが重要だな。買われた後何させられようがお構いなし」

サシャ「ず、ずっと鎖に繋がれて食べ物も満足に食べられないとか……」

ジャン「バカみてぇな話だ」

ベルトルト「モルジアナ。君もその……奴隷だったと?」

ライナー「おい、ベルトルト。モルジアナにとってつらい話かもしれんぞ……」

クリスタ「ごめんなさい……ごめんなさい……」

モルジアナ(も、もう収まりがつかない)

モルジアナ「……確かに私は奴隷でした。思い出すのも辛い過去です」

クリスタ「……」ズズーン

モルジアナ「で、ですが、今はもう違います!」

モルジアナ「ある方々の力を借りて、私は自由の身になりました。主人の言いなりになるだけの私に手を差し伸べ、鎖を断ち切り、一緒に太陽を見ようと言ってくれました」

モルジアナ「今は、その恩義を返す為に生きています」

コニー「良い話だなぁおい……」

アニ「ふーん……」

ライナー「そうか……それは何よりだ。お前を助けた人たちからしても、甲斐があったってもんだな」

クリスタ「じゃ、じゃあ今まではその人達と暮らしてたんだね!」

モルジアナ「えっと……」

一同「……」

ジャン「おい、まさか……」

ユミル「もうはぐらかすことねぇだろ。包み隠さず話しちまえ」

モルジアナ「一人は亡くなりました」

クリスタ「ああぁぁぁぁ……」

サシャ「大変です! クリスタの目が濁りきってます!」

ユミル「しばらくほっとけ」

モルジアナ「ですが、後二人は生きています。つい最近まで一緒でした。今ははぐれてしまいましたが、会えると信じています」

ベルトルト「根拠のある話、みたいだね」

コニー「会えるといいな! そいつらによ!」

モルジアナ「はい」

ユミル「はぐれたのはどの辺りなんだ?」

モルジアナ「……わかりません。私は気がついたらローゼという壁の外にいて、巨人の襲撃を受けたところを兵士さんに助けてもらいました。それ以前の記憶は……少し曖昧です」

ジャン「っつーことは、その二人も巨人に襲われたんじゃねぇの」

一同「……」

コニー「運が悪けりゃそのまま巨人の餌に……」

クリスタ「……」チーン

サシャ「大変です! クリスタが泡を吹き始めました!」

ユミル「地雷踏みまくったからな。自分を責めすぎたんだろ。可哀想に」

ライナー「落ち着けクリスタ! 今のはジャンとコニーのせいだ!」

モルジアナ「……」

モルジアナ(……大丈夫。二人は生きている。絶対に) 

モルジアナ(見つけてみせる。どこにいたって、必ず)

今日はここまで
人類側無双になんてさせない

皆さんレスありがとう
心臓捧げたい

声優ネタはやんわりやりたいです

《兵舎前訓練所》

モルジアナ「軽いけど動きづらいですね、この服……」

ユミル「いや、あの布切れの方がよっぽど動きづらいだろ……スカートで飛び回る気かよお前」

ライナー「なあ……その腕輪、訓練の時もつけてるのか? 邪魔になると思うんだが」

モルジアナ「これは……」

モルジアナ(どうしよう……これのこと、なんて説明しよう)

キース「……」

キース「モルジアナ! 貴様はこちらで適正試験だ! 来い!」

モルジアナ「は、はい!」

………………

…………

……

キース(ふむ……わかってはいたが、姿勢制御に関しては問題なさそうだ)

モルジアナ「教官」ブラーン

キース「なんだ」

モルジアナ「この腕輪のことなんですが……」

キース「訓練の時は外しておけ」

モルジアナ「は、はい」

キース「そして、立体機動も半刃刀身の扱いも、死ぬ気で学べ」

キース「貴様が強いのは重々承知している。しかし、それらは貴様の枷にはならん。必ず役に立つ」

キース「……訓練に合流しろ」

モルジアナ「はい」

………………

…………

……

モルジアナ「この岩壁を登ればいいんですか?」

クリスタ「うん。気をつけてね」

コニー「死ぬなよー」

モルジアナ「? ちゃんと命綱があるようですが」

ライナー「ああ、これは体力強化の他に精神力と状況判断力を図る意味合いもあってな。"闇討ち"と言って、教官が故意に命綱を切る場合が……」

モルジアナ「では行ってきます」キリッ

ライナー「聞けよ」

モルジアナ「……」サッ

ユミル「……壁から離れて何やってんだ? 助走なんかつけたって意味な……」

モルジアナ「ふっ!」ダダッ

ズドドドド

一同「!?」

ジャン「壁を……」

サシャ「垂直に駆け上がってる……」

アニ「靴が思いっきり岩に刺さってるけど、痛くないのかな」

ベルトルト「彼女なら裸足でも平気なんじゃないかな……多分」

コニー「おい! あいつもういよいよ人間じゃねぇだろ!」

モルジアナ「……っと」スタッ

モルジアナ(思ったより高い……みんながこっちを見て何か言ってるけどよく聞こえない)

モルジアナ(うーん……裸足じゃないと動きづらい……)

「なぁ! お前すごいな!」

モルジアナ「?」クルッ

エレン「どんだけ鍛えたらそんな脚力が……つーか、そもそも脚力だけでなんとかなるもんなのか?」

モルジアナ「ええと……」

エレン「あぁ、悪い。俺はエレン・イェーガー。よろしくな」

モルジアナ「モルジアナです」ペコリ

エレン「昨日の格闘術訓練も見てたけどさ……いやホントにすげぇ。闇討ちさせる暇も無かったな」

モルジアナ「闇討ち?」

エレン「訓練中に教官が命綱をわざと切るんだ。度胸試し」

モルジアナ「あ、そういえばライナーさんがそんなことを言っていたような、言ってなかったような」

エレン「甘く見んなよ。それで大怪我して脱落する奴もいるんだぞ?」

エレン「まあ、モルジアナにはそんな心配いらないか」

モルジアナ「……」

モルジアナ(なんだろう……この人、アリババさんに雰囲気が似てる……)

モルジアナ(……アリババさんはもっとおちゃらけた人だけど……)

短いけど今日はこれだけです
また今度

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+ ' . '!     '!        ∧,,∧    みんな関西人にな~れ!
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             ジョウダンヤナイデ   カメヘンガナ
       ナルカッチュウネン    ドナイヤユウネン  セヤナ  エエンチャウ?

         ,ハ,,,ハ  (ヽ_/) ∩w∩ ∧,,∧ γ''""ヽ ヘ⌒ヽフ
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このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2014年01月18日 (土) 04:59:23   ID: ThhWxmNQ

続きを!

2 :  SS好きの774さん   2014年08月18日 (月) 20:10:37   ID: zXwwVXt1

続きお願いー

3 :  SS好きの774さん   2014年09月20日 (土) 20:21:46   ID: H3_pt1Dp

このssの続きが早く読みたい…ので、早く書いてほしい…

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