モバマスの持田亜里沙さんと柳清良さんが同棲しているという前提で書かれた短編集です。
ギリギリ全年齢向け。
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【おはよう】
ピピピピピッ
無機質で無慈悲な朝を告げる音が清良の頭上で鳴る。
ゆっくりと左の手でその音を止めて、右手に意識をやる。
「もう起きてるのね…」
少し寂しそうにそうつぶやいて、ベッドから出る。
台所からいい匂いととんとんと軽快な包丁の音がした。
「おはようございます、清良さん」
「おはよう亜里沙ちゃん、ごめんなさいね1人で朝ごはん作らせちゃって」
「いいんですよ、昨日は1人でずいぶんお楽しみだったみたいですから」
「もしかして、妬いてるの?」
「だってひどいじゃないですか私をおいて皆で飲みに行くなんて」
「しょうがないじゃない、亜里沙ちゃんは遅くまでお仕事があったんだから」
「それはそうなんですけど…」
亜里沙はむぅと口を尖らせて、また野菜を切り始める。
「寂しかったの?」
後ろからそっと亜里沙の肩を抱く。
「ウサコちゃんと一緒だったから寂しくありません」
清良から顔をそむける。
「ふふっ、妬けちゃうわね」
「本当に妬いてます?」
「もちろん、昨日だって亜里沙ちゃんが居なくて寂しかったんだから」
「嘘つき…」
「嘘じゃないわよ」
「嘘です。昨日すぐ寝ちゃったじゃないですか」
「それは…。ごめんなさい疲れてて」
「…思いっきり甘やかしてくれたら、許してあげます」
「ど、どうすればいいのかしら」
「それは、ご自身で考えてください」
口を尖らせたまま、少しだけ期待するような目でちらりと清良を見る。
口角をあげたまま少しだけ困ったような目をしていた清良が、
何かを思いついたようにはっと目を見開いていた。
「よーしよしよし」
愛犬にそうするかのように、清良は亜里沙の髪を撫で回す。
髪を乱すように乱暴に撫でたり、耳たぶを触ったりもした。
「あっ、くすぐったいけど…でも気持ちいです」
「亜里沙ちゃんの髪、もふもふで本当に犬みたい」
いつの間にか亜里沙は包丁を手放し清良に身を預けていた。
「甘えん坊なワンちゃんね、ここがいいのかしら」
耳をなぞるにように優しく触れる。
「あっ…それ好きかもっ…」
「ふふっ、くせになりそう」
それから二人はしばらくじゃれあった。
遠くのほうでテレビが時間を告げ、二人は我に返った。
「こ、これでいいかしら?」
「あっ…はい、あの…元気でました」
もう触れられていないはずの耳が真っ赤になるのを、亜里沙は自分で感じた。
「ご飯作ってますから…あの…あっちで待っていてください」
「わかったわ。ありがとう」
ほんの少し触れるように清良は亜里沙の頬に口づけをしてリビングへ歩いていく。
亜里沙の耳が朝日のようにさらに赤くなった。
【おうち女子会】
清良と亜里沙は月に一度、二人でおうち女子会なるものを開いている。
ただ二人のオフが重なった日のお昼に少しだけ豪華なものを食べて過ごすだけ。
そんな、ささやかな女子会だ。
今日のお昼はお寿司の出前だ。
「朝からお寿司なんて、お金持ちになったみたいですね」
「ふふっ、そうね。それにこんなにかわいい人と一緒にお寿司を食べられるなんて、お金持ちでさえ叶えられない贅沢だわ」
「清良さん、もう酔ってるんですか?」
「いいじゃない、たまのオフなんだから昼間から酔っ払っても」
「ふふっ、そうですよね」
少し顔を紅潮させた清良に、亜里沙は身体を擦り寄せる。
「亜里沙ちゃんこそ酔ってるんじゃないの?」
「いいじゃないですか、たまのオフなんですから」
「そうね」
亜里沙の肩に手を回して、そっと抱き寄せる。
「最近は忙しくてなかなかお家女子会できなかったですもんね」
「そうね、でも忙しいのはありがたいことよ」
「忙しくてできませんでしたし、その…今日は…」
「そうね、でもその前にお寿司を食べましょう」
「はい。……あっ、そうだ清良さん。どれがいいですか?」
「えっ?」
新しい遊びを思いついた子どものように、亜里沙はお皿と箸を構えて清良を見る。
いくら、えび、たい、サーモン…多くの寿司が寿司桶の中でひしめきあっていた。
「食べさせてくれるの?」
「はい、いつも甘えてばっかりですから。たまには」
「それじゃぁいくらをもらおうかしら」
「わかりました」
箸で掴まれたいくらがゆっくりと清良の口元へ向かう。
恥ずかしそうに微笑んで、それからゆっくりと口が開かれる。
箸が口に当たらないように、慎重に寿司を食べさせる。
「どうですか、おいしいですか?」
「…………」
咀嚼しているのでそう焦らないでくれと言わんばかりに清良は手のひらを見せる。
「………うん、美味しいわ」
「誰かにものを食べさせるって、ちょっとドキドキしますね」
「やっぱり亜里沙ちゃんってサドよね」
「清良さんこそ、よく私のこといじめるじゃないですか」
「だって亜里沙ちゃんが可愛い反応するから、つい」
「そういうこと言っちゃうんですね、もう怒りました」
清良の肩を掴んで馬乗りになり、顔を近づける。
「今日は私が清良さんのことたくさんいじめますからね」
「ふふっ、どんなことされちゃうのかしら」
サディスティックな白衣の天使は、不敵に笑った。
【じゃんけん】
薄暗い寝室で、壁掛け時計がシンデレラがそわそわと時計を気にしだす時間を指していた。
亜里沙と清良はダブルサイズベッドの上に座って真剣な面持ちで向き合っている。
「いきますよ」
「えぇ、いいわよ」
「じゃんけんぽん」
亜里沙の掛け声とともに、二人は同時に手を繰り出す。
「やった。私の勝ちです」
「それじゃぁ今日は亜里沙ちゃんが先攻ね」
「今日はいっぱい意地悪されたから、たくさんお返ししますよ」
「あら、そんなことしたかしら?」
「したじゃないですか、家のパソコンの背景を急に早苗さんの水着に変えたり」
「びっくりした?」
「びっくりしましたよ。一瞬壊れちゃったのかと思って。しかもその…水玉模様のせいでちょっと裸に見えて」
「刺激的でしょ?」
「刺激的でしょ、じゃないですよ。どこから持ってきたんですかあんなの」
「どうだったかしら、この前偶然見つけたのよ。それで面白いと思って…。でもびっくりしてくれてよかったわ」
「清良さんはああいうグラマラスな女性が好みなんですか?」
「そうね…」
「もう寝ます、おやすみなさい」
「じょ、冗談よ」
「ウサコちゃんが見てますから、変なことしないでくださいね」
亜里沙はベッドの横においてあるウサコを清良に向けて、布団をかぶる。
「今日はせっかくジャンケンに勝ったのに、いいの?」
「ふん、清良さんはおっぱいの大きい女の人と遊んでたらいいじゃないですか」
「あらあら、完全にへそをまげちゃったのね」
返事をする代わりに、清良に背を向けるように寝返りをうつ。
これは少し治療が必要ね、清良は意地悪そうな笑みを浮かべて亜里沙の布団に入り込む。
「なんですか清良さん」
「亜里沙ちゃんあのね、私は別に大きいおっぱいが好きなわけじゃないわ」
後ろから抱きしめるように清良は亜里沙に身体をくっつける。
「じゃぁなんでさっきそうねって言ったんですか」
「つい、亜里沙ちゃんの反応が見たくて」
「そういういじわるは好きじゃないです」
「じゃぁ、こういうのはどうかしら?」
清良は亜里沙のパジャマの中に下から手を入れてお腹を擦る。
「ふふっ、くすぐったいです」
「明日は休みだから、こっちもいいわよね」
真っ白な亜里沙の首筋に、採血をするように吸い付く。
「あっ、ちょっ、それはだめです」
とっさに亜里沙は清良の方へ向き優しく突き放す。
「これでも機嫌直してくれないの?意外と強情ね」
「そうじゃないんです」
清良は不思議そうに首を傾げる。
「あの…今日私…じゃんけんで勝ったから…」
「ふふっ、そういうことね。いいわよ」
「ウサコちゃん、ちょっとだけ向こうに向いててね」
ウサコちゃんを今度は壁に向ける。
「それじゃぁ亜里沙ちゃんの好きなようにしていいわよ」
「覚悟してくださいね、清良さん」
亜里沙は清良に馬乗りになり両手を彼女の頬に当てた。
「さっき悪さをしたのはこのお口ですね、お仕置きです」
「あら、このお口はどんなお仕置きをされちゃうのかしら」
「それは、こうです」
亜里沙は右の親指を清良の口に入れる。
親指の腹で舌を撫ぜたり、歯に触れたりする。
「はぁ…はぁ…。結構息苦しいわねこれ」
「当たり前です、お仕置きですから」
「ふふっ、次はどんなお仕置きをされちゃうのかしら」
「今日は寝かせませんからね」
シンデレラ達がおやすみを言い合うのは、それからずっとあとのことだった。
おしまい
以上です。
最後まで読んで頂き、ありがとうございます!
前作です。
芳乃「わたくしの姉力を世に知らしめるのでしてー」
【モバマス】芳乃「わたくしの姉力を世に知らしめるのでしてー」 - SSまとめ速報
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