舞「ケーキ食べるでしょ?」愛「いらなーい!」 (35)

舞「え、いらない?」

愛「実はね、最初は事務所のみんながあたしの誕生日を祝ってくれるって話だったんだけど、
  前から企画してたライブの話がちょうどきて……」

愛「せっかくだからあたしの誕生日に一緒にやって、盛大なバースデーパーティにしようって話になったんだー!」

愛「その方が盛り上がるからって!」

愛「そこですごく大きいケーキとか、豪華なお料理も作ってくれるんだって!」

愛「だから大丈夫!」

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舞「そ、わかったわ
  愛、食べ過ぎて迷惑かけないようにしなさいね」

愛「わかってるよー!だから今日は夕ご飯いらないから!じゃあねー!」

ブツッ!


ツーツーツー

舞「……そう」




舞「せっかく作ったのに」

わー!すごいケーキ!おいしそー!!

ダメよ、愛。手を洗ってきてからでしょ

わかったー!

こら、走らない!

舞「……」

ピト……パク

舞「……おいし。気合いいれて作っただけはあるわね」

えー!?もう食べちゃダメ!?どうして!?

ダメよ、もう。ご飯食べられなくなっちゃうでしょ

そんなことないよ!ご飯もちゃんと食べられるから!
ね?お願い!後一口だけでいいからぁ!

ピト……パク

舞「……」

ポパピプペ!トゥルルルル

舞「私よ。そう、ちょっと来てくれない?」

まなみ「どうしたんです?舞さん、なにかありました?」

舞「ご飯のお誘いよ」

まなみ「食事ですか」

舞「作りすぎちゃってさ。ちょっと食べていってよ」

まなみ「え、今日はとっても豪華ですね!」

まなみ「さっすが舞さん、料理も上手でレパートリーも多くてすごいです!」

舞「誉めたってそれ以上はでないわよ」

まなみ「でもどうしてこんなに作ったんです?」

まなみ「あ、これ……シュガー……パイ……」

まなみ(愛ちゃんの大好物……)

まなみ「……?舞さんは行かないんですか?愛ちゃんの誕生日パーティー?」

舞「呼ばれてないからね」

まなみ「え」

舞「ま、普通は呼ばないわよね。自分の親を友達とのパーティーにはさ」

まなみ「……」

舞「……自分の」

まなみ「?」

舞「自分の誕生日を祝ってくれるような人達ができて」

舞「一人でもお金を稼げるようになって」 

舞「そうしてみんな」

舞「親を必要としなくなっていくのね」

舞「そうやってみんな」




舞「大人になっていくのね」

舞「嫌ね、私。自分だってそうやって大人になってきたくせに」

まなみ「……」

舞「……子どもが」

舞「子どもが、親を必要としなくなるくらい育つことが」

舞「親にとって幸せというなら」

舞「それを寂しいと思う気持ちは」

舞「親の……ううん」

舞「私の」



舞「ワガママかもね」



まなみ「舞さん……」

舞「……この家、こんなに広かったかしら」

まなみ「……」

舞「ほら、食べましょ。せっかく作ったのに冷めちゃうわ」

まなみ「……らしくないですよ!舞さん!」

舞「え?」

まなみ「天上天下に唯一無二!」

まなみ「人がアイドルを思うところに日高舞あり!」

まなみ「それがあなたじゃないですか!」

舞「まなみ……」

まなみ「行きましょう!」

舞「行くってどこへ?」

まなみ「もう、そこがらしくないじゃないですか!」

まなみ「舞さんがいきたいところ、自分でわかってるくせに」

舞「……」

いつか子どもが

愛が

巣立っていくのはわかってる

覚悟も決めてる

でも

でもさ

もうちょっとの間くらいは

ライブ会場中のみんな「愛ちゃん!誕生日おめでとー!!!」

愛「みんなー!!ありがとおーーー!!!」

愛「今日はあたしの誕生日!!だから……」

愛「セーブしないよぉーーーー!!!」

ライブ会場中のみんな「わああああ!!!!」

愛「いつも以上に!心を込めて歌います!」

愛「それでは聞いてください!一曲目はー!」

?「ちょぉっとまったあ!!」

愛「げ、その声は!?」

舞「げ、ってなによぉ!」

舞「世界が求めるスーパーアイドル!日高舞ちゃん登場よ!」

愛「やっぱりママだぁーーー!!?」

会場中のみんな「うおおおおおおお!!!!?」

愛「もう、いったいなにしにきたのー!!」

舞「なにしにってずいぶんね!もちろん娘の誕生日を祝いにきたのよ♪」

舞「というわけで、私が一曲歌ってあげるわ!」

愛「そんなのライブ進行上にないよー!!」

舞「ならライブバトルよ!」

愛「ライブバトルってなによー!!?もうー!!」

ライブ会場中のみんな「うおおおおおおお!!!!」

愛「うおおおお!じゃないよー!!」

まなみ「がんばって、舞さん」

舞「……ありがとう、まなみ」

まなみ「私はあなたのマネージャーですからね」

舞「ふ、あんたもようやくわかってきたじゃない?」

まなみ「ふふふ……」

まなみ(でも舞さん、寂しがることなんてないんですよ……)

回想まなみ「え?舞さんを連れてくる役目を私に引き受けてほしい?」

回想愛「そうなんです!お願いできませんか?」

回想まなみ「それはいいけど、愛ちゃんから頼んだ方が、舞さんも喜ぶと思うよ?」

回想愛「それだとなんか、恥ずかしいっていうか、照れくさいというか、別に来ても来なくてもいいけど、なんか後でママになんか言われるだろうなーというか……とにかくお願いします!」

舞「それじゃあ!いっくわよー!」

愛「ああ!やっぱりママは暴走しちゃうよー!!」

まなみ(ごめんね、愛ちゃん)

まなみ(でも今日は許してあげて)

まなみ(子どもの誕生日って……)

まなみ(それってつまりさ)




まなみ(お母さんにとっても特別な日ってことだから……ね?)



 

いつか

私の代わりに

愛のことを守れる誰かに出会う

その日までは

もうちょっとだけワガママでいても


いいわよね?

終わりです
見てくれた人、ありがとう

愛ちゃん誕生日おめでとう

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