春香「月の河を渡って」 (16)
p「もしもしああ俺だ、春香明日の撮影なんだが現場へはそっちのほうが近いから車で家に迎えに行く、二宮着いたら電話するから家で待っててくれ、じゃあおやすみ」
小鳥「明日は直行直帰ですか、運転気をつけてください」
p「ありがとうございます、明後日は休みなんで報告は休み明けになると社長に伝えてください」
小鳥「わかりました、観光地のパンフレット撮影でしたね」
p「ついでにイベントとかでウチの子たちを使ってもらえないか営業かけてきますよ、ではお先に失礼します」
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翌朝
朝から俺は首都高を大音量のワルキューレの騎行を聞きながら東名高速目指して走っている
圏央道が出来てからだいぶ渋滞が緩和されたがやはりこの時間は混んでいる
やがて東名に入り多摩川を越えたあたりで空腹を覚えたので、海老名サービスエリアで軽い朝食を取ると
再び車を走らせ厚木インターから小田厚に乗り換える
ここまでくれば春香の地元まで一本だ
しばらく走ると二宮インターから小田厚を降りる
そして車を路肩に止め自販機で春香の携帯に電話をかけた
p「おはよう、今二宮インター降りたとこだ」
春香「おはようございます!じゃあ駅の前で待ってますね」
p「いや、駅だと人目につくから国1沿いの郵便局で待っててもらえるか?」
春香「わかりました、郵便局の前で待ってます」
p「おはよう、悪いけど後ろは資料や衣装積んであるから助手席座ってくれ」
春香「へへっ、なんか助手席って新鮮です」
p「前に渡した資料を読んでくれたか?」
春香「はい、市内の観光スポットはだいたい覚えました」
p「現場まで一時間かからないぐらいだ、寛いで良いぞ」
春香「ありがとうございます」
西湘バイパスに乗り走っていると真っ青な空と穏やかな海が一面に広がる
春香「見慣れた風景なのに不思議な感じがします、あの島は大島ですよ!大島!」
p「んであの半島の先っぽが真鶴の三ツ石海岸だろ」
春香「何でそんなに詳しいんですか?」
p「言わなかったか?今日の現場は俺の地元だ」
春香「えっ?プロデューサーさん静岡じゃないんですか?」
p「静岡県だよ、ただし神奈川との県境にあるからここから割りと近いんだ」
春香「あそこ神奈川だと思ってました」
p「まあ、よく間違えられるよ」
駅前の広場
p「ここで撮影クルーや市の広報の人と待ち合わせだ、ちょっと早く着いたから少し待ってよう」
春香「足湯がありますね、あれ?ここに小さな機関車があったような」
p「三年前に駅前の改装工事があって機関車はほら、あっちの商店街の入口に移動した」
春香「本当だ、思い出すなあ…」
p「ここで何かあったのか?」
春香「誕生日と小学校の入学祝いで昔ここに来て親とはぐれて迷子になったんです」
p「小さい子が見知らぬ土地ではしゃいで親とはぐれるのは良くあるからな、大人になっても通勤中に迷子になるのは勘弁して欲しいが」
春香「その時機関車の前で泣いてたらお兄さんとお姉さんが私の両手を引いて交番に連れてってくれたんです」
p「…その時お姉さんからキャンディーか何かもらったとか?」
春香「何で知ってるんですか?」
p「いや…なんとなくな子どもを落ち着かせるのにお菓子とか有効だから」
春香「交番で両親に会えたんですけど二人とも直ぐに交番から出たみたいでお礼も言えなかったと親から聞きました」
p「春香が小学校入学だと9年前の4月か…」
春香「私の誕生日ですから4月3日ですね」
p「お、撮影クルーの車が来たぞ」
撮影クルーと合流したpと春香、そして二十代位の女性がpに話かける
女性「765プロダクションの方ですね、市の広報を担当しています○○と申します」
p「はい765プロのpと申します、こちらは当社所属の天海春香です今日はよろしいお願いします」
春香「天海春香です、精一杯頑張ります!」
女性「うん、って!p君じゃない!?東京で芸能関係の仕事してるって聞いたけどびっくりしたわ!」
p「そっちも元気そうだね○○、結婚したんだって?おめでとう」
女性「ありがとう、実はもう3ヶ月なんだ」
p「おお、それは良かった大丈夫なのか?」
女性「うん、今度同窓会にも来てよ」
p「行きたいのは山々だけどね、仕事が忙しくてこの子もデビューしたばかりで大事な時期だし」
春香(…プロデューサーさん、いつもと少し違う、笑ってるけど笑ってないように見える)
撮影クルーと合流したpと春香、そして二十代位の女性がpに話かける
女性「765プロダクションの方ですね、市の広報を担当しています○○と申します」
p「はい765プロのpと申します、こちらは当社所属の天海春香です今日はよろしいお願いします」
春香「天海春香です、精一杯頑張ります!」
女性「うん、って!p君じゃない!?東京で芸能関係の仕事してるって聞いたけどびっくりしたわ!」
p「そっちも元気そうだね○○、結婚したんだって?おめでとう」
女性「ありがとう、実はもう3ヶ月なんだ」
p「おお、それは良かった大丈夫なのか?」
女性「うん、今度同窓会にも来てよ」
p「行きたいのは山々だけどね、仕事が忙しくてこの子もデビューしたばかりで大事な時期だし」
春香(…プロデューサーさん、いつもと少し違う、笑ってるけど笑ってないように見える)
撮影クルーと広報の女性とともに市内各所をまわる春香とp
美術館 海水浴場 温泉 海岸にある松の木 干物や饅頭を売る商店街
ヨットハーバー等々
そして海沿いの料理屋でpと春香と広報の女性の三人で食事を取る
春香「プロデューサーさん、鯵ですよ!鯵!」
女性「天海さんって本当にかわいいわね、流石p君が選んで連れてきた子よ」
p「いや~春香もだけどウチの事務所には綺麗で歌やダンスが得意な子が揃ってるよ、夏の山車コンクールや花火大会とかのステージで出演させてみない?」
女性「お、立派に営業もやってるんだ」
p「まあね、今はまだまだ無名だけど少しずつだが売れてきてる、なんとかならないかな?盛り上がる事は保証するよ」
女性「じゃあこの資料持って上に掛け合ってみるわ、大事な友達の頼みだもん」
春香(大事な友達か…)
女性「お疲れ様でした、すっかり暗くなっちゃったね」
p「ラストは夜景の撮影だからね、今日はありがとう、春香もお疲れ様」
女性「今日はもう帰るの?家に顔出したら良いのに」
p「あくまで仕事しに来たから、さあ帰るか」
春香「はい、○○さんも今日はありがとうございました!」
女性「天海さんもこれから頑張ってね、応援するから」
撮影クルーと広報の女性とともに市内各所をまわる春香とp
美術館 海水浴場 温泉 海岸にある松の木 干物や饅頭を売る商店街
ヨットハーバー等々
そして海沿いの料理屋でpと春香と広報の女性の三人で食事を取る
春香「プロデューサーさん、鯵ですよ!鯵!」
女性「天海さんって本当にかわいいわね、流石p君が選んで連れてきた子よ」
p「いや~春香もだけどウチの事務所には綺麗で歌やダンスが得意な子が揃ってるよ、夏の山車コンクールや花火大会とかのステージで出演させてみない?」
女性「お、立派に営業もやってるんだ」
p「まあね、今はまだまだ無名だけど少しずつだが売れてきてる、なんとかならないかな?盛り上がる事は保証するよ」
女性「じゃあこの資料持って上に掛け合ってみるわ、大事な友達の頼みだもん」
春香(大事な友達か…)
帰りの車の中、135号線を小田原方面に向かう
春香「…プロデューサーさん、ちょっと聞いて良いですか?」
p「うん?どうした」
春香「あの広報の女の人、もしかして昔好きだった人とか」
p「……なんでわかった?」
春香「最初に話してた時プロデューサーさん笑ってたけど少しさみしそうだったから」
p「やれやれ、春香に見抜かれるようじゃやっぱ役者じゃなくて裏方のほうが俺向きだったんだな」
春香「変な事聞いてごめんなさい」
p「春香は優しいな、でも人の顔を見て心中を察し過ぎると本当に辛くなるからほどほどにしとけ、あと何か辛い悩みがあったら俺に相談してくれ」
春香「はい、でもプロデューサーさんも何かあったら私に相談してくださいね」
p「じゃあ相談じゃないけど昔話でも聞いてくれ」
あの人は近所に住んでた同級生だったんだ
昔からずっと好きでいつ好きになったかなんて覚えてない
たまに帰りが一緒になったり、マンガの貸し借りしたりするだけだったな
雑談は出来たけど結局勇気がなくてとても告白なんてできなかった
外見なら春香や事務所のみんなのほうが美人だけど
まあアイドルや元アイドルと比較するほうがおかしいが
たった一度だけデートしたことがある
高校二年になる春休みに一緒に三島まで古本屋巡りに行った
二人で古本屋を訪ね歩いて喫茶店でコーヒー飲んであの駅に帰ってきたんだが
改札を出ると小さな機関車の前で赤いリボンを着けた女の子が泣いてた
なんかほっとけなくて俺とあの人はその子に声をかけたんだ
春香「…それって…もしかして」
p「泣き止まないその子にあの人がキャンディーあげてさ」
(大丈夫だよ、お兄ちゃんとお姉ちゃんが助けるから元気だして)
p「そして俺は右手をあの人は左手を持って三人手を繋いで交番まで連れてくとその子の親がいて事なきを得た」
春香「26歳のプロデューサーさんが高校二年だと言うことは9年前…」
p「両親とその子は抱き合って大泣きしたけど」
(p君!もうバスが出ちゃうよ!)
p「バスの時間が来たんで何も言わず立ち去った、二人でバス停までダッシュで、それがあの人とのいちばんの思い出だ」
春香「いつ気づいたんですか?」
p「迷子の話を聞いた時だ、女の子は頭にリボンつけてたの思い出した」
春香「まだあの人の事を…」
p「いや、あくまでも思い出だ年を取ると気持ちの整理が上手くなってく」
春香「じゃあ今は好きな人とかいますか?」
p「う~ん仕事が恋人って答えじゃダメか?」
春香「ダメです」
p「月が綺麗だな、この海岸線から相模湾に浮かぶ月を春香に見せたかった」
春香「誤魔化さないでください、あっでも本当に綺麗なお月様ですね凪いだ海に月の光が反射して光ってるところだけ月の河みたいです」
p「この橋越えたら神奈川県だ、ずっと海岸線通るから月見も悪くないだろう」
春香「月の河を渡ってみたいですね」
p「ティファニーで朝食をみたいだな、いつか一緒に月の河を越えるか」
月明かりに照らされたプロデューサーさんの笑顔はいつもの優しい笑顔でした
終わり
春香「いつ気づいたんですか?」
p「迷子の話を聞いた時だ、女の子は頭にリボンつけてたの思い出した」
春香「まだあの人の事を…」
p「いや、あくまでも思い出だ年を取ると気持ちの整理が上手くなってく」
春香「じゃあ今は好きな人とかいますか?」
p「う~ん仕事が恋人って答えじゃダメか?」
春香「ダメです」
p「月が綺麗だな、この海岸線から相模湾に浮かぶ月を春香に見せたかった」
春香「誤魔化さないでください、あっでも本当に綺麗なお月様ですね凪いだ海に月の光が反射して光ってるところだけ月の河みたいです」
p「この橋越えたら神奈川県だ、ずっと海岸線通るから月見も悪くないだろう」
春香「月の河を渡ってみたいですね」
p「ティファニーで朝食をみたいだな、いつか一緒に月の河を越えるか」
月明かりに照らされたプロデューサーさんの笑顔はいつもの優しい笑顔でした
終わり
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