提督「ただいま大淀。出張大変だったよ」

大淀「お帰りなさい提督。また変な物を買ってきたんですか？」

提督「変な物とは失礼な。ちゃんとしたお土産だぞ」

大淀「そう言ってこの前駆逐艦の娘達に虫の佃煮あげたの誰でしたっけ？」

提督「泣かれちゃったけど、空母や一部の娘には好評だったじゃないか」

大淀「みんなに指輪買ってきた！　って言って、一時鎮守府を混乱させたのは誰でしたっけ？」

提督「指輪キャンディの事か？　懐かしいなその事件」

大淀「前々から言おうと思っていましたが、この際だから言わせて頂きます」

大淀「出張や大本営へ会議に行く度にお土産を買ってこなくてもいいです」

大淀「と言うか少し自重して下さい！」

提督「えええ～遠出したんだし、記念の物や皆に配る物を買ってきたくなるじゃん」

大淀「そのお気持ちだけで十分です。ですから少し自重を……」

提督「そんな事よりもさ、食堂に飾れる良い物を買ってきたんだけど」

大淀「話をちゃんと聞いて下さい！！」

提督「じゃ～ん。どうだ」

大淀「……何ですかコレ」

一つ目の銅像『』

提督「出張先で古物市場があってな。そこに売ってたんだよ」

提督「食堂には風景画とか無くて殺風景なのが前々から気になってたからな」

提督「値段も安かったし、思い切って買ってみた」ﾄﾞﾔｧ

大淀「そもそも何の銅像なんですかコレは」

提督「え～とな、売ってた人の話では古代フトール帝国っていうとこの人間が祀ってた像だって」

提督「一つ目が何となく可愛いだろ？」

大淀「ええ……」ﾄﾞﾝﾋﾞｷ

提督「可愛い物好きな駆逐艦や海防艦の娘達ならきっと気に入ってくれる筈だ。早速飾りに行くぞ」

大淀(絶対それは無いと思う……)


～食堂、飾り付け中～


睦月「可愛くないにゃしぃ」

夕立「何か気持ち悪いっぽい」

叢雲「何コレ。また司令官が変な物買ってきたのね」

時雨「う～ん……」

江風「時雨姉が言葉に困ってる……」

川内「あっははは！　何コレ。太ってるのがまた面白い！」

鬼怒「これは駄目な意味でパナイわ」

北上「お～お～、提督ってばまた面白い物買ってきたねえ」

大井「趣味が悪いだけですよ」

提督「何でだ！？」

大淀「いや当たり前ですよ」

提督「一つ目可愛いじゃん！　ぽっちゃり系の体系だよ！」

長門「提督よ。あれは最早単に太ってるだけの像だぞ」

長門「更に言うなら別段可愛くもない」

陸奥「流石の私もフォロー出来ないわね」

提督「むむむむ……」

間宮「ま、まあそこまでも言わなくてもいいと思いますよ。提督も善意で買ってきてくれたんですから」

大淀(それがまた困り者なんですよね……)

提督「流石は間宮さん！　間宮さんは可愛いと思いますよね？」

間宮「…………」ﾆｺｯ

提督「間宮さーーーーん！？」

長門「当然の反応だな」

陸奥「皆の反応も悪いし、すぐ撤去した方が良いんじゃない？」

提督「…………嫌だ」

大淀「え？」

提督「嫌だ！　こうなったら誰か一人でも可愛いって言ってもらえるまで飾る！！」

長門「子供か！　変な意地を張るんじゃない！」

提督「せっかく買ったんだ！　一時間も経たない内に撤去なんて嫌だい！」

陸奥「あらあら」

大淀「どうしますか間宮さん」

間宮「う～ん……提督のお気持ちも分かりますし、少しだけなら構いませんよ」

長門「良いのか？　提督に遠慮する事はないぞ」

間宮「一目見ようと、お客さんが増えるかもしれないですからね」

陸奥「まあ、あれじゃあね」


ﾜｲﾜｲｶﾞﾔｶﾞﾔ


長門「おい提督、早速卯月が落書きしようとしてるぞ」

提督「ちょ、待て卯月！？」

陸奥「あらあら」

こうして食堂に提督の買ってきた一つ目のぽっちゃり銅像が置かれる事になった。

間宮の予想通り一目見ようと食堂へ訪れる艦娘が増えたが、それも一時の事。

銅像への評判も改善される事なく、提督は泣く泣く銅像を撤去した。

…………だが、鎮守府へ降りかかる悲劇は刻々と迫っているのだった。


一つ目の銅像『か、艦娘共め……絶対に許さん。散々私の事を馬鹿にしおって』

一つ目の銅像『この私……グラヴィトンの力、思い知るが良い……！』

グラヴィトン『……私を買ってくれたあの男は呪わないでおいてやろう』