【モン娘☆は~れむ】×【異世界食堂】リネア「異世界の料理屋?」 (36)

Mene:Sachertorte

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大魔界はすっかり夜である。
1日の業務を終え、青い髪とワインレッドのツノ、ツノと同系統の色をしたの蝙蝠のような羽、臀部から伸びると尻尾は細く、先はハートのような形をしている。服の面積より肌色の面積の方が広く思える扇情的な格好が目を引くその女性は大きく伸びをした。
彼女は先代大魔王より大魔界に仕え、大魔王の側近である。扇情的な格好は本人に言わせれば普通であるという認識であるが、側から見れば家庭的で魔界では数少ない常識人である彼女が間違いなくサキュバスであると認識させられる。

彼女には秘密がある。
大魔王や、大魔王を慕い、大魔王の城に勝手に部屋を作った旧知の魔王であるクロゥリアにもその秘密は知られてはいない……はずである。

「さて、今日は……」

彼女の足取りは軽い。
7日に1度のその日は彼女にとって楽しみの一つである。
それは大魔界が何故「美食の魔界」と呼ばれるに至ったかに深く関わっていた。

彼女がその存在を知ったのは、現代魔界でヘルハウンドのモン娘であり、元人間と称するノルンと知り合ってからである。

「人間……ですか……」

"人間"……一部のモン娘しかその存在を知らず、謎に包まれた存在……。

「大魔王の側近として、もっと詳しく知る必要がありそうですね」

彼女は大魔界の復興をしながら人間について独自の調査を始めていた。もしかしたらかつて先代大魔王を討ち、大魔界を滅亡寸前に追いやった「ユウシャ」という存在と何か関係があるのでは……。
しかし調査はすぐに暗礁に乗り上げた。
復興事業を行いながら、彼女はさまざまな魔界で聞き込みを行なっていたが、人間について知っているモン娘が少ない。当然といえば当然である。かつて魔界の中心的な役割を担っていた大魔界の魔王に仕える側近ですら知り得ない情報を知っているモン娘を探す方が難しい。

「さて、困りました……」

彼女は大魔王城内の大図書室で多くの書物を広げながら途方に暮れていた。
軽い気持ちで始めた人間についての調査、ここまで難航するとは……彼女は机に突っ伏し、独り言ちた。
ふと、彼女の目に「美食の魔界についての考察」という書物が目に付いた。
大魔界はたしかにかつてその料理の斬新さと美味しさから美食の魔界として知られていたことは彼女も当然知っていたし、実際彼女もそれを享受していた。

たまには甘いものも食べたいなぁ……そんなことを考えながら彼女はお菓子魔界にモン娘を探す提案を大魔王に進言することを考えながらその書物を手に取った。
しばらく誰も触っていないであろうその書物を開くと埃が舞い、彼女はたまらず顔を背け、咳をした。
カサ……
小さな紙が落ちた音がした。
彼女はその折り畳まれた紙を拾い、広げる。

「『7日に1度の"ドヨウ"の日』?」

そこに書かれていた文言をそのまま読み上げるも意味がわからずに、その時はその書籍を読むだけで終わった。

とりあえずここまで

日中は大魔王と共にモン娘探しに、夜は大図書室で人間に関する書籍を探す。そんな日が何日か続いた時、彼女は図書室に似つかわしくない「それ」に出会う。

「今日は閉架書庫から探しますか……」

すっかり図書室のどこにどんな本があるか、棚の数や内部の構造を理解する程度には入り浸っていた彼女は、閉架書庫を調べようとしていた。
そこは図書室の奥の奥、誰も近寄らない為にその存在を知っているモン娘は恐らく現在は彼女を除いてゾンビのメイド、マーヤくらいであろう。
大魔王城内で完璧な仕事をするマーヤからその存在を教えてもらわなければ、まさか図書室の棚に隠し扉があろうとは思いもしない。
マーヤ曰く「先代大魔王妃が閉架書庫は入らないよう仰られたので手入れはしていないか、そろそろ閉架書庫の掃除もしたいから許可をもらいたい」とのこと。
彼女は側近権限で閉架書庫の整理を許可し、マーヤより閉架書庫の入り方を教えてもらった。

「棚の下から3段目の右から5番目の本を半分引き、次に上から4段目の一番左の本を抜き、一番下の段の左から36番目の本を抜いてさっきの本と交換して、最初の半分抜いておいた本を元に戻す……なんでまたこんな古典的で手のかかるっ……よっと」

彼女は文句を言いながら半分抜いておいた本を押す。
ズズン……
どこかで鈍い音がした。
からくり仕立てで開くのかと思ったが、彼女は魔法力の流れを見逃さなかった。
どうやら最初の鈍い音は、魔法陣へのアクセスさせるための装置の動作音なのだろう。

「恐ろしく微量な魔法力、私じゃなきゃ見逃しちゃうね……っと」

図書室に入り浸る日々の中で目にした書物にあった言葉を引用しながら棚を見ていると、押し込んだ本が奥に吸い込まれていった。
と同時に本がみるみるうちに扉の形に変わっていき、閉架書庫への入り口に姿を変えた。

「なんでこんな隠すようにしておく必要があったのですかねぇ……」

そんな疑問を口にしながら彼女は扉の取手を掴み押した。
が、

「開かない……!?ならばこちら開きっ!んっ!開かない!?」

押しても引いても開かないその扉を前に、彼女は当惑した。まさか……と思いながら扉を横に引いてみた。
ガララララ……

「なんなんですか!」

思わずツッコミをいれた彼女の声は大図書室に木霊した。

閉架書庫は埃っぽく……なかった。
どうやらマーヤが先に入り、全て掃除を行ったようだ。
閉架書庫はやはり開架と同じくらいの広さで、何列もの棚と書物を広げるための机が3つ並んでいた。
棚は見るためにのものではなく、収納するためなのか、魔法力で動く仕組みになっており、使っていない棚同士はぴったりとくっついていた。
棚の横にあった手形に手を当てて魔法力を少し流してみるとぴったりとくっついていた棚が横にスライドし、モン娘が2人すれ違えるくらいには広がった。

「これは骨が折れますね……」

閉架書庫に手を出そうとした数十分前の自身を恨みながら探そうとすると、閉架書庫の机にメモが置いてあった。

「掃除をした際に本が分別されていなかったのでついでに全て分類しました」

メモの横には分類したジャンルが閉架書庫の見取り図とともに記されていた。
マーヤはここにある本全てに目を通し、全て分類をしたようだ。

(もう彼女に任せてしまった方が速いのでは……?)

そんな事が頭をよぎりつつ、メモ書きを基に人間について書かれた本を探そうととある棚に魔法力を流し、棚を動かした。

その時である。
動かした棚の先、そこに扉があったのである。
彼女は魔法力を練った。
状態異常無効のバリアを展開しつつ魔法力の純度を高め、いつでも攻撃できるように詠唱を済ませた。
マーヤが書き記した見取り図を一通りと見ただけで全体を把握した彼女はこの棚の先に扉などないことは把握していた。
マーヤほどのモン娘が見落とすはずがなく、大魔王の側近たる彼女を罠にかけるような不忠義者ではない。
故にこれはマーヤが整理した後に作られたものである可能性が高い。
害意あるものによるものであれば、排除しなければならない。が、応援を呼びにいく時間があるのかも不明な今、彼女は危険を承知で単身確かめることに決めた。

普段は前線に出ることはないが、大魔王の側近である彼女は相応の実力を持っている。
しかしこの扉の先が「ユウシャ」に関係ある所に繋がっていたら……
彼女は魔法力を練りつつ固唾を飲み、扉に少しずつ進んだ。
扉には見たこともない字と猫の飾りがかかっていた。
いつでも魔法を使えるように左手で魔法を展開しながら、右手で取手に罠がないかを調べる。
仮に取手に毒の罠などがあっても状態異常無効のバリアにより弾かれる。
調べてみたが何かがある様子はない。しかし警戒は解かない。
取手に手をかけ……横に引く。
……当然開くわけがない。

「あのねぇ……いくらなんでも天丼はないですよ」

自分にツッコミ、一呼吸。
覚悟を決め、勢いよく扉を開けた。





ーーチリンチリン

小気味好い鈴の音が室内に響く。
僅かな魔翌力の反応に身構えるが、敵性反応はない。
「いらっしゃいませー!」
「いらっしゃい」
戦闘態勢を取っていたリネアは想像だにしない返しと光景に思わず動きを止めた。
机と椅子、暖炉にカウンター、そしてコック帽を被った料理人と思しき男性と頭からツノを生やしているモン娘と思しきウエイトレス。
そこはどう見ても料理屋である。

「お客様?いかがなさいました?」

その声にハッと我に帰る。

「あの……ここは……?」

伺いつつも警戒は解かずに魔法力を練る。

「ここは『洋食のねこや』です。さ、どうぞこちらへ」

「ただ、その前に……マスター!こっち見ないでくださいね!」

ウエイトレスは店の奥に姿を消し、服を持ってきた。

「肌が出すぎですお客様!見てるこちらが恥ずかしくなりますよ!」

ウエイトレスに叱られた。サキュバスにとっえは正装でもある服は少し刺激が強いらしい。
渡された服に一応魔法力を通してみる。打ち消されたり呪いががかかるような気配はない。何の変哲も無い布のようだ。
マーヤが来ているようなメイド服に似ている。

服を着るとウエイトレスに案内される。

(とりあえず危険は感じない……かな?)

自身の警戒レベルを最高から引き下げた。


「『ヨウショクヤ』とおっしゃいましたが、こは料理屋なのですか?」

「ええ、こちらがメニューです。お客様は東大陸語はわかりますか?」

差し出されたメニューを開いてみるが、見たこともない字で書かれており、読むことはできない。

「いいえ申し訳ございません。この文字は我々が使う文字ではないようです」

「そうですか……それでは何か食べたい物はございますか?マスターが作れるものであればご用意いたしますが……」

彼女は少し考え、そういえば甘いものが食べたいが為に大魔王にお菓子魔界でモン娘探しをすることを進言しようとしていたことを思い出した。

「それでは……チョコレートケーキを」

「かしこまりました。マスター!チョコレートケーキって……」

奥に消えていったウエイトレスを目で追いかけながら少し申し訳ないことをしたと思った。
何故ならここは料理屋。ケーキを作れるとは思えない。
少し無理難題を出してしまった……その事が彼女を後悔させていた。

「あの……」

無理であれば結構です、と言おうとした。

「お客さん、運がいいですね。たまたま今日はチョコレートケーキ用意してるんですよ」

マスターと呼ばれていた男性がお皿に可愛く盛り付けられたチョコレートケーキが出された。

「これは……ザッハトルテですか?」

彼女は大魔界に住まう同名のグールのことを思い出した。
ザッハトルテは大魔界にも存在するチョコレートケーキの一つである。
こってりとした濃厚な味わいは彼女もお気に入りである。
彼女の名もおそらくこれにちなんでつけられたものであろう。

「お客様詳しいですねー。私は異世界の料理はよくわからなくて……」

ウエイトレスは頭を掻きながら苦笑いしていた。

「確かに詳しいな。ザッハトルテを食べたことがあるなんて珍しいこともあるもんだ。これはうちの上にあるケーキ屋からケーキを丁度買ってたんだ」

ここの上……?彼女は間取りからこの上考えてみたが、考えてみなくてもこの上にケーキ屋などありはしないことを確認した。

「ここは一体どこなんですか?」

「ああ、その説明がまだでしたね。ここは7日に1度の土曜にだけ異世界に繋がる洋食屋なんですよ」

異世界!と、7日に1度と"ドヨウ"という文言に聞き覚えがあった。
彼女はふと思い出し、しまっておいたメモ書きを取り出した。
間違いない。同じ文言である。これは一体……?

「おや?このメモ書きは……お客さんもしかして大魔界の扉から来たのかい?」

「えぇ?!」

マスターと呼ばれた男性がまだお客さんが少ないからと話してくれた。この扉は色んなところに繋がっていて、様々なお客さんが来ること。その中で東大陸語が読めないお客さんもいたこと。そのお客さんは「大魔界から来た」と言っていたのを思い出したのと、熱心にメモをしていた人がいたこと。そしてその人の字とよく似ていたこと。
つまり7日に1度だけ異世界に通じる扉が現れること、そこは料理屋で、かつて大魔界から来た人もいること。

「さて、せっかくだから食べてくださいよ。俺の友達が作ったケーキだ。味はお墨付きですよ」

マスターに促され、チョコレートケーキをみる。念には念を。状態異常無効バリアを展開する。毒が入っていてはひとたまりもない。疑っているわけではないが、念のため。
一口。
これは……!

「美味しいですっ……!」

「そいつは良かった。ま、ゆっくりして言ってください」

マスターはそういいながら厨房に戻っていった。

綺麗な層が織りなすスポンジとチョコレートクリームの舌触り、チョコレートの香り、ほろ苦さと甘さの絶妙なバランス、どれを取っても一級品であった。
ザッハトルテ特有のアンズのジャムが程よい酸味を演出し、表面を覆う光沢あるチョコレートソースは濃厚でありながらしつこさがなく、どれだけ食べても飽きがこなかった。
何故かその味はどこか懐かしさを感じさせた。

(大魔界で食べたそれと味がよく似てる)

彼女は懐かしさの原因をそれと結論付けた。では何故異世界の料理が……?

「コーヒーもどうぞ」

ウエイトレスがテーブルにコーヒーも持って来てくれた。
丁度コーヒーが欲しいと思い始めていた。コーヒーは彼女が淹れたものらしい。

「これも美味しいですね」

「ありがとうございます!」

ウエイトレスは笑顔で謝辞を述べた。
お世話ではなく本当に美味しい。美味しさでいえばマーヤさんの淹れたものに匹敵するかもしれない。
後にコーヒーを飲む時にバリアを貼るのを忘れていたことを思い出す。その時にはこのねこやに対する警戒レベルは完全に引き下げられていた。

「ふぅ……ご馳走様でした」

彼女はザッハトルテに満足しながら、厨房にいるマスターの方をみる。

「あの、つかぬ事をお伺いしますが、もしかしてマスターは人間ですか?」

「ええ、そうですが」

厨房で下ごしらえをしながらマスターが応えた。

やはり……まさかここで人間に出会えるとは!
思わぬ収穫に喜ぶ彼女であった。

「大魔界から来たあの人も同じことを言って驚いてたっけな。大魔王では人間は珍しいのかい?」

「珍しいってもんじゃありませんよ。人間の存在を知る者はほとんどいません」

「へえ、こいつは驚いた。人間がいないところなのか大魔界ってのは」

「えぇ、厳密には元、人間はいますよ」

「元?」
マスターは腕を組みながら聞き返した。

「はい、どうやら魔界に来た際にモン娘となってしまったようで」

「私も大魔界に行ってみたいなぁー!」
ウエイトレスがお盆を胸に話を聞いていた。赤みがかった金髪が店内の灯りに揺れていた。

「あら貴女なら大魔界に来ても違和感はないと思いますよ。是非一度いらしてみてくださいよ」
事実、彼女もツノと尻尾と羽を除けば殆ど人間と見分けがつかない。
ウエイトレスくらいのツノしかないモン娘も数多い。彼女のツノはバロメッツのモン娘、あさつきによく似ていた。
是非大魔界来てほしい。その気持ちに偽りはなかった。

「それができないんですよ」
マスターが応える。

聞くところ、扉は入ったところにしか行けないらしい。つまり彼女が大魔界に通じる扉以外に行く事は出来ず、ウエイトレスが大魔界に来ることは叶わないらしい。
彼女は人間について詳しく知ることができるであろう外の世界に想いを馳せていただけに少しばかり落胆した。

「なんで人間について調べたいんだ?」

「実はですね……」

彼女は「ユウシャ」についての顛末と、ヘルハウンドのモン娘ノルンについて語った。

「なるほど……そんなことが……」

「ユウシャってのはこっちじゃお話に出てくる勇者くらいです。マスターの世界ではどうなんですか?」

「こっちも似たようなもんさ。ゲームやお話に出てくるくらいだ」

「でもお話を聞く限り、そちらの扉から誰かが攻めて来ることはなさそうなので安心しました。」

彼女はそういうと残りのコーヒーを飲み干した。

「人間についての調査は少しずつ進めていきます。もしかしたからお話を伺うこともあるかもしれません。いやーそれにしてもザッハトルテもコーヒーも美味しかったです。昔食べたような懐かしい味でした」

「そいつは良かった。また是非今度はうちの料理を食べてくれ」

「マスターの料理はどれも絶品なんですよ」

「あのーお代は……あいにく今日は持ち合わせが無くて……」

「また今度いらした時で結構ですよ」

「……はい!また必ず!」

「ただ、その時は……その……少し布の面積を多くしてもらえると嬉しい」
マスターはウエイトレスに服を返した彼女の格好を見てやや頬を赤らめた。
マスター!見ちゃダメです!とウエイトレスが怒る声が店内に響く。

ありがとうございましたという二人の声。チリンチリンという扉を開けるとそこは閉架書庫であった。
扉が閉まる。と、先程までそこにあった扉は跡形もなく消えていた。

「『7日に1度の"ドヨウ"の日』か……」

彼女はそのメモが誰のものか見当がついていた。
料理が好きで大魔界から扉を通って異世界食堂へと足繁く通いつめていた存在。
禁じられていた閉架書庫への立ち入りが唯一可能であったその方を彼女は知っていた。
先代魔王に仕えていた彼女だからこそ知っていた。その方は何日かおきに今日はもう寝るからと部屋への立ち入りを拒む日があった。
彼女は久しぶりにその方の部屋を訪れ、その方の本棚に手を当てた。
……僅かであるが、閉架書庫と似た魔力痕がある。

(やはり……)

おそらくここの本棚も閉架書庫への転移魔法が施されている。

食べることと料理が大好きで大魔界を「美食の魔界」と呼ばれる食の聖地にまで押し上げた立役者であり、先代魔王の奥方様。
間違いなくメモはその方のものであろう。

あのザッハトルテはかつて奥方様が私に作ってくださったものとよく似ていた。
おそらく奥方様は時折異世界食堂に出向き、料理を教わりつついただいたケーキの味の再現を試みていたのではないだろうか。
何らかの調べ物をしていた奥方様はたまたま異世界食堂への扉を発見し、そこで食べた料理を大魔界で再現して皆に振る舞い、その味に感動したモン娘が店を出し……。

これはどの書物にも残っていないものなので、彼女の憶測に過ぎない。が、奥方様が先代魔王に嫁いで以降料理を頻繁に振舞っていたのは事実で、その料理が大魔界を盛り上げた要因であることもまた事実である。

人間調査が、思わぬ大魔界と先代の奥方様との繋がりに発展してしまったことに驚きつつも、またあそこの料理を食べてみたい。料理がお上手であった奥方様がそこまで感銘を受けたあのねこやの料理はいかほどのものなのか、その舌で確かめなくては!
と不思議な使命感が彼女をまたあの食堂へと導くことになる。

その不思議な使命感の源は彼女すらも知る由も無い。
それは現大魔王への仄かで当人もまだ気付いていない恋心。
好きな人に料理を作ってあげたいという気持ち。
彼女がその気持ちに気付くのはもう少し先の話である。

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今日は"ドヨウ"の日である。
彼女はこの日のことを誰にも言っていない。
無論大魔王にも。マーヤには大図書室の掃除の日はドヨウとあえてずらした日にやるように申し付けてあった。

「どうしても秘密にしたくなるんですよね。何ででしょうか?」

不思議な気持ちに心を揺られながら、彼女はいつもの服より少し布の面積が広い服を着込み(それでも側からみればかなり薄手に見える)、足取り軽く大図書室に向かっていた。
古典的な暗号じみた手段を用いた閉架書庫の奥、似つかわしくない扉に手をかける。



ーーチリンチリン


本作はスマホ向けRPG「モン娘☆は~れむ」の登場人物を基にしたSSでした
是非機会があればダウンロードしてみてください
設定の都合上、ゲーム内で語られていない話をでっち上げています

店長やアレッタの口調に違和感があったら申し訳ないです
ありがとうございました

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