勇者「作戦タイム!」魔王「よかろう!」 (67)

また妄想が溜まったので投下していきます。よろしくお願いします。

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――魔王の間――

勇者「とうとうここまで来た。今日こそ暗闇の世界から光を取り戻してみせる!」

女戦士「ああ。行こう勇者!」

魔法使い「ほっほっほ、無茶はするでないぞ、勇者」

盗賊「さてさて、魔王はどんなお宝を持ってんのかな?」

くノ一「……主人の望む世界。それが私の未来……」

勇者「よしっ! 行くぞ、みんな!!」


魔王「はーっはっはっは!! よくぞここまで来た勇者達よ!」

勇者「魔王! お前の野望もここまでだ! 覚悟しろ!!」

魔王「面白い! 我が覇道、止められるものなら止めてみろ!!」ゴゴゴゴ

勇者「うぉぉぉぉ!!!」ザンッ

魔王「そんな攻撃、効かんわぁ!!」

勇者「うあああああ!!!」

女戦士「勇者! くそっ! なんて力だ!」

魔法使い「ならばこれでどうじゃ! 爆炎呪文!!」ゴオッ

魔王「効かぬ! 効かぬわ!!」

盗賊「おいおい、旦那! 全然攻撃が通らないっすよ!?」

勇者「強い……!!」ゴクッ

魔王「ふははは! こんなものか勇者よ! ならばこちらから行かせてもらうぞ!」ゴゴゴゴ

魔王「死ねい! 雷撃呪文!!」

勇者達「「「「うわぁぁぁぁ!!!」」」」

魔王「弱い弱い! 弱すぎるぞ勇者よ!」

勇者「くっそ……!!」



シュンッ!!


魔王「!?」

くノ一「不意打ちなら……どう?」


カキンッ


魔王「甘い!」ドゴッ

くノ一「きゃあ!!」

勇者「くノ一!!」

魔法使い「これは困ったのう……手も足も出んとはこのことか」

女戦士「どうする? 勇者!?」

勇者「………」

女戦士「勇者!!」

魔王「もうお終いか、つまらん。ならばこの永遠の闇に飲まれて消えるがいい!!」ゴゴゴゴゴ

勇者「さ、作戦タイム!!」

一同「「「「はあ!?」」」」


女戦士「こ、此の期に及んでなにを言っているんだお前は!? 正気か!?」

盗賊「そうだぜ旦那!? 作戦タイムってできる訳ないだろ!」

勇者「いやだってこのままじゃ全滅しちゃうし……」

魔法使い「ほっほっほ、やはりお主は面白いのう!」

くノ一「主人の仰せのままに」シュタッ

盗賊「嬢ちゃん、なんでも言う通りにすればいいってもんじゃないんだぜ!?」

女戦士「そうだ! 我々は魔王との戦いの真っ最中なんだぞ!? ルールが決められたスポーツじゃないんだ、そんなことできる訳が……」

魔王「よかろう!」

勇者「よっしゃ!」

女戦士・盗賊「「いいんだ!?」」

魔王「私は寛大な魔王なのだ! お前らの全力を見せてみせよ! 最もそれでも私には勝てんだろうがな! あーっはっはっは!!」

盗賊「なめやがって……!!」

勇者「わかった! ありがとう!」

女戦士「魔王に感謝するな!」

勇者「じゃあ、みんな集まって」

くノ一「主人の仰せのままに」

女戦士「なんか納得いかないな……」

盗賊「姐さん、俺もだぜ」


――作戦タイム――

勇者「えーっと、なんとか作戦タイムを勝ち取ることができたけど……どうしよう?」

女戦士「どうしようって……なにも考えて無かったのか!?」

勇者「いや、あの時はパニクっててさ。まさか本当に貰えるとは思わなくて……」

魔法使い「若さじゃの……まぁ、先ずは今の状況を確認する必要があるじゃろう」

勇者「今の状況は……」


勇者パーティー
勇者、女戦士、魔法使い、盗賊、くノ一

魔王
直接攻撃、魔法を跳ね返す。
強力な雷撃を放つ。
現時点での攻略法、無し


盗賊「無茶苦茶強いっすね」

勇者「攻撃が通用しないのは厳しいなぁ」

魔法使い「わしらの能力が低いのかのう」


女戦士「馬鹿を言うな、今までの戦いでも私達の攻撃が通用しなかったことは一度もなかったじゃないか」

勇者「ならなぜ通用しないんだ?」

女戦士「それは……分からないが」

くノ一「……不意打ちも通用しなかった」

盗賊「なんかバリアでも張ってるのかねー?」

魔法使い「問題はその突破方法じゃのう。なにをもってあの魔王に一太刀浴びせることができるかじゃ」

一同「「「「「………」」」」」

女戦士「ええい! なにかいいアイディアは無いのか!」

魔法使い「騒ぐで無いわい。そんなものがあったらこんなことになってはおらんじゃろ」

勇者「とにかく、魔王の力は強大だ。だけど必ずどこかに弱点があるはずだ。そこを見つけ出すしかない。態勢を整えてもう一度戦ってみよう」

女戦士「結局、無策のまま戦うことになるのか」

くの一「……主様は私がちゃんと守るから」

勇者「ああ、みんなで協力してこの世界を平和にしよう」

盗賊「じゃあ、話がまとまったところで回復でもしましょうかね。ほれ、回復薬。ちゃんと飲むんすよ?」


―――――

魔王「終わったー?」ゴロゴロ

盗賊(寝っ転がって漫画読んでるー!!)

勇者「ああ、待たせたな。覚悟しろ魔王!」

魔王「なにか策がるようだな。面白い。ならば私も全力で相手をしようではないか!」

勇者「うぉぉぉぉぉ!!!」タッ



勇者「さ、作戦タイム!!」

魔王「オッケー!」

勇者「よっしゃ!」


――作戦タイム(2回目)――

盗賊「旦那、作戦タイムって2回もとれるものなんか?」

勇者「取れちゃったね」アハハ

女戦士「完全になめられているのだ我々は! なんとも腹立たしい!」

魔法使い「しかし、攻撃が全く通用しないのは困るのう」

くの一「……主様の剣も魔法使い殿の魔法も一向に通じる気配がない……」

盗賊「旦那、実際どんな感じなんです? 魔王ってのは」

勇者「そうだな、目の前で全て弾かれてしまうと言った感じかな?」

盗賊「鉄をも切り裂く旦那の剣がねぇ……やはり特殊な魔法なんですかね」

魔法使い「わしもそこそこ魔導の道に身を置いているがあのような魔法は見たことが無いのう。恐らくは失われた古の魔法ではないかの」

女戦士「なにか、なにか手立てはないのか? このままでは全滅はもちろん、世界が闇に飲まれてしまう!」

勇者「そうだ。世界の命運は俺たちに掛かっている。とにかく攻略の糸口を探さないと……」

盗賊「あー、旦那。ちょっといいですかい?」

勇者「どうした? 盗賊」

盗賊「俺、さっきダメ元で魔王に盗みを仕掛けてみたんですよ」

女戦士「魔王から盗みなんて成功するわけないだろう」

盗賊「それが成功したんですよ、姐さん」

女戦士「なんだと!?」

勇者「何を盗めたんだ?」

盗賊「これです」スッ

魔法使い「これは……ロケット?」

盗賊「まだ俺も中身は見てないんですが……なにかの役に立ちますかね?」

勇者「とにかく、中身を見てみよう」

くノ一「主様、ここは私が。罠かもしれないので」

勇者「ああ、頼む」

くノ一「……これは」

女戦士「……人間の女の子……か?」

勇者「なんで魔王がこんなものを?」

魔法使い「なるほど、読めたぞい」

盗賊「じいさん、なんかわかったのかい?」

魔法使い「ズバリ! 魔王はロリコンだったのじゃ!」



現在の状況
魔王
直接攻撃、魔法を跳ね返す
強力な雷撃を放つ
ロリコン?←New

女戦士「これ、攻略の役に立つのか?」

盗賊「やっぱりダメっすよね」

勇者「いや、これは使えるかもしれないぞ。みんな、戦いの準備を!」

盗賊「わっかりました! みんな、回復薬を!」

くノ一「……私、これ苦くて嫌い……」

女戦士「わがまま言うな、致し方ないことだ」


――――

魔王「作戦会議は終わった?」ダラダラ

くノ一(……ごろ寝しながらポテチ食べてる……)

勇者「ああ、今度こそお前を倒す!」

魔王「ほう。今度こそなにか切り札があると見える! あ、ちょっと待ってポテチ食べちゃうから」バリバリ

勇者「ああ、切り札はこれだ!」ジャラッ

魔王「そ、それは私のロケット……なぜお前が!?」

勇者「知らなかったぞ、魔王。お前、ロリコンだったんだな!」

魔王「ぐっ!」

勇者「しかも、人間の幼女が大好きなド変態野郎だったんだな!」

魔王「ち、ちがう!! 私は断じて……」

勇者「うるさい! これが動かぬ証拠だろうが! このド変態ロリコン魔王!」

魔王「ちがぁぁぁぁう!!!」



勇者「よしっ! 魔王が動揺してる! 今だ! 一斉攻撃!」

魔法使い「なるほど考えたのう、勇者!」

くノ一「さすが主様……」

女戦士「いいのか? こんな卑怯なやり方で!」

盗賊「勝ち方にこだわってる場合じゃないっしょ! 行きますよ姐さん!」

勇者「覚悟しろ! 魔王!」

魔王「私はロリコンではなぁぁぁい!!!」





勇者「……さ、作戦タイム……!!」ボロッ

魔王「私はロリコンでは無いな?」ゴゴゴゴゴゴ

勇者「いやでもロリコンじゃ……」

魔王「『魔王はロリコンではありません』」ゴゴゴゴゴゴ

勇者「魔王はロリコンではありません……」

魔王「よし、作戦タイムオッケー」

勇者「よ、よっしゃ……」


――作戦タイム(3回目)――

女戦士「……さ、さらに強くしてどうするのだ……」ボロッ

魔法使い「……どうやら大分怒らせてしまったようじゃのう……」ボロッ

勇者「……うまくいったと思ったんだけど……」ボロッ

現在の状況
魔王
直接攻撃、魔法を跳ね返す
強力な雷撃を放つ
ロリコンと言うと怒る←New

盗賊「しかし、本気になった魔王があそこまで強いなんて……」

女剣士「くそっ、どうすればいいんだ? 私達はどうすれば……」

魔王「ロケットを返してくれないか?」


女剣士「いや、ダメだ。あれにはまだなにか使い道があるかもしれないからな」

魔王「じゃあ、しょうがない。このまま一気に全滅させてやるか」

女剣士「なにを言って……って魔王!?」

勇者「い、今は作戦会議中だろ!?」

魔王「もう待ってるの飽きたんだよ。いいじゃん、なにもしないからさ。あとロケット返して。あれ大事なやつなんだよ」

くノ一「……やっぱりロリ……」

魔王「あ?」ゴゴゴゴゴ

勇者「わー! なんでもない! なんでもないから! 盗賊、ロケットを返してやってくれ」

盗賊「はいはい……ほれ、魔王さん。これでいいかい?」

魔王「どうも……なにか思いついた?」

女戦士「も、もちろんだ! 余裕でいるのも今のうちだ! すぐにその首を取ってやる!」

勇者「いや、正直なにも思いついてはいない」

女戦士「勇者!?」

勇者「事実だろ。嘘はつけない」

魔王「では私を倒すのは諦めるということだな?」

勇者「いや、諦めない。俺たちは必ずお前を倒す。なにがなんでもだ」

魔法使い「魔王よ、悪いがこの男、あきらめの悪さと女癖の悪さは天下一品での。一度かみついたら相手が倒れるまで絶対に立ち上がる男なんじゃよ。お主も厄介な奴に目をつけられたと思ってあきらめるんじゃな」

魔王「ふふ、あーはっはっは! 面白い! 気に入ったぞ勇者。この作戦会議、私も混ぜろ」


女戦士「は、はあ!?」

盗賊「あ、あんた自分が何言っているのかわかってるか?」

魔王「ああ、どうやったら私を倒せるのか、だろう? それを一番よく知っているのは私だとは思わないか?」

盗賊「いや、そりゃそうだけどさ……」

女戦士「勇者、耳を貸すな! これは罠だ!」

勇者「魔王、どういうつもりだ?」

魔王「なに、お前らがあまりにも弱すぎるからな。少しは手心を加えてやらんと私がつまらないのだよ。私も待つのも飽きたし、ポテチも無くてな。暇つぶしだ」

勇者「お前が加わればお前を倒せるのか?」

魔王「確率は上がるだろう。それでも私を倒すなど不可能だと思うが」

勇者「……わかった。魔王、お前の知恵を借りよう」

女戦士「勇者!?」

盗賊「本気ですかい!?」

勇者「盗賊も言ってただろう? 今は勝ち方にこだわっている時じゃない」

魔法使い「そうじゃの、綺麗なままでは世界は救えん」


女戦士「しかし……」

くノ一「……主様の御心のままに」

魔王「ふむ、どうやら腹は決まったようだな。勇者よ、ともに私を倒そうではないか」

勇者「……ああ、よろしく頼む」

魔法使い「では会議に戻ろうかの」

盗賊「まずはあれっすね、『どうすれば魔王にダメージを与えられるのか』」

魔法使い「魔王よ、お主はなにかに守られている様に見える。どうすればその守りを破れるのじゃ?」

魔王「魔法使い殿よ、そなたが言っているのはこの黒衣の力のことだろう。この黒衣は持ち主のありとあらゆる災厄から身を守ってくれるものだ」

盗賊「なんすかそれ、無敵じゃないっすか」

魔法使い「ではまずは魔王からその黒衣を引きはがす方法を考えないとのう」

女戦士「引きはがすと言ったってどうやって?」

魔法使い「そこは魔王に知恵を借りるとしようかの」

魔王「引きはがす必要などない。黒衣の守りを破るのは簡単だ。お前たちが通ってきた魔王城のどこかに『聖石』が保管されている。その『聖石』をかざせば黒衣が纏っていた闇の力が晴れ、守りが消える」

女戦士「『聖石』……そんなのあったか?」

勇者「とりあえず戻って探してみよう」

盗賊「それじゃあ、行く前に回復薬っす!」

魔王「………」


現在の状況
魔王
直接攻撃、魔法を跳ね返す←聖石をかざせば守りを突破できる。
強力な雷撃を放つ
ロリコンと言うと怒る
アドバイザーとして魔王が会議に参加


――――

魔王「あ、お帰りー」ピョンピョン

女剣士(スライム伸ばして縄跳びしてるー!?)

勇者「聖石ってこれのことか?」ピカー

魔王「うん、それそれ。それかざせば黒衣の守りは消えるから」

勇者「よしっ! これで魔王にダメージが通るはずだ。行くぞ!」

魔王「こい! 勇者!!」




勇者「作戦タイム!」

魔王「認めよう!」

勇者「よっしゃ!」


――作戦タイム(4回目)――

勇者「ダメージは入った。ダメージは入ったんだけど……」

盗賊「攻撃が激しすぎて近づけないっすね」

魔王「かーっ、自分の強さが怖いわー、かーっ!」

女戦士「会議中じゃなかったらぶった切れるのに」

魔王「おっ、いつでもきていいよ? どうせ無駄だけど」

女戦士「ぐぬぬ……」

くノ一「……でも前よりも一歩前進」

魔法使い「そうじゃの、また次の課題を見つけて取り組めばよい」

勇者「次の課題はというと『どう近づいて攻撃するか』か。魔王、お前は戦闘に関してはどれくらいの腕前なんだ?」

魔王「闇の魔術1級、魔王式魔剣神明流免許皆伝って感じ?」

盗賊「よくわかんないけど強そうじゃないっすか」


勇者「遠近どちらも強力な力を持っているということか、困ったな」

魔王「伊達に魔王はやってないからねー♪」

女戦士「となると、前みたいに動揺させるか、でもどうやって?」

くノ一「……主様、私に任せてくれませんか?」

勇者「なにか作戦があるのか?」

くノ一「……くノ一の世界の秘伝をお見せいたします」

魔王「ほほう! 今度は期待できそうじゃないか!」

盗賊「それじゃあ、準備っすね。回復薬っすよー」


――――

勇者「くノ一、頼んだぞ!」

くノ一「主様、お任せください」

魔王「来い! 勇者よ! 全力で私を超えて見せよ!!」







勇者「……さ、作戦タイム……」ボタボタ

魔王「……み、認めよう……」ボタボタ



――作戦タイム(5回目)――

女戦士「いくらなんでもあれはダメだろ!」バンッ

勇者「……くノ一、頼むからもっと自分を大事にしてくれ……」ボタボタ

くノ一「……はい」シュンッ

魔王「いやー、久しぶりにいいもん見れたね」ボタボタ

魔法使い「わしも枯れたもんだとばかり思ってたがまだまだ現役じゃのう」ボタボタ

盗賊「じいさん、鼻血拭けよ」ボタボタ

魔法使い「お主もな」ボタボタ

くノ一「……くノ一の秘伝、『房中術』……私、まだ未熟で……実践訓練を行う前に主様の旅についていくことになったので……」

盗賊「いきなり魔王の前で脱ぎだしたから焦ったよな」

魔法使い「古い本で読んだことがあるが、くノ一も一応はそういう訓練を受けておったんじゃのう」

魔王「実に初々しい感じがよかったぞ!」ボタボタ

勇者「……確かに魔王を動揺させることはできたけど倫理的にアウトだから使わないでね?」

くノ一「……はい」シュン

女戦士「これだから男どもは!!」ガンッ


現在の状況
魔王
直接攻撃、魔法を跳ね返す←聖石をかざせば守りを突破できる。
強力な雷撃を放つ
ロリコンと言うと怒る
エロいことに弱い←New


勇者「さて、じゃあ次の作戦を考えるとするか」

魔法使い「しかし、どうするかのう。相手は難敵、これはもう一度レベル上げをする必要があるかのう」

魔王「そ、それは困る!」

勇者「ん? なにが困るんだ?」

魔王「あ、いや……あっはっはっは! お前らが逃げ出せば私に刃向かう者は誰もいない! 大手を振って人間界に侵略してやるぞ!」

女戦士「くっ、卑怯な! やはり勇者、魔王はここで倒さなければなるまい!」

勇者「そうだな、だがどうすればいい?」

魔王「あー、私から少しいいか?」

勇者「なんだ? 魔王?」

魔王「ずっと気になってたんだが……お前達のパーティ、バランス悪くない?」

一同「「「「「………」」」」」


魔王「勇者とくノ一、盗賊、魔法使い、女戦士でしょ? 盗賊も前衛っぽいし、後衛1人しかいないけど。今までそれでやってきてたの?」

勇者「……それはその……」

女戦士「お、お前には関係無いだろうが!」

魔王「いや、関係はあるでしょうが。今のところなにも活躍していないペチャパイさん」

女戦士「ペチャ!?」

魔王「回復役がいないんだよ。普通いるだろ? 僧侶とか賢者とか。どしたの?」

勇者「いたさ」

魔王「え?」

勇者「いたんだよ、僧侶。うちのパーティに。今はこの場にいないけど」

魔王「あー……そういうことか。まぁしょうがないよな。こっちも戦争やってるんだし」

勇者「全部、全部俺が悪いんだ……」


魔王「おい、勇者。あんまり自分を責めるなよ」

女戦士「いや、僧侶がこの場にいないのは完全に勇者のせいだ」

盗賊「そうっすね」

魔法使い「そうじゃのう」

魔王「おいおい、そりゃいくらなんでもあんまりじゃないか? 勇者に全責任があるなんておかしいだろう?」

勇者「いや、いいんだ。魔王。こいつらが言っていることはもっともだ。全部、全部俺が悪いんだ! 俺が、俺があんな……」

魔王「勇者!」

勇者「俺が昨日、王女様の誘惑に負けそうになって胸を……」

魔王「へ?」


女戦士「まったく、どうかしているぞ勇者!」

盗賊「そうっすよ! 普通前日にやりますか? 普通!」

魔法使い「英雄色を好むとはよく言ったもんじゃが、お主は見境が無さすぎるのう」

勇者「……すまない」

魔王「え? 僧侶さんはお亡くなりになったんじゃないの?」

盗賊「誰もそんな話してないっすよ」

魔王「ん? どゆこと?」

魔法使い「昨日、勇者は王国の王女様に求婚されたんじゃよ。僧侶に隠れて二人で逢引きしとったらしいわい」

勇者「逢引きって……俺は王女様にいきなり暗がりに連れてかれてだな……!」

魔法使い「勇者は姫様の求婚をきっぱりと断らんかった。そしてその現場を偶然見てしまった僧侶は激怒し、今は魔王の間の前に停めた馬車で引きこもっておる」

勇者「……しょうがないじゃないか、あんなダイナマイトボディの姫様から迫られたら……俺だって男の子なんだぞ……?」

女戦士「この浮気者」

魔王「はあはあ、なるほどなるほど……おい勇者」

勇者「なんだよ?」

魔王「早く馬車から僧侶引きずり出してきなさい」

勇者「うっす」

魔王「お前ら、ラスボス戦なめてる!?」

魔法使い「ほっほっほ」



現在の状況
勇者←僧侶と喧嘩中


僧侶「………」ツーン

勇者「い、一応連れてきました……」

魔王「えっと……大丈夫? 戦える?」

勇者「だ、大丈夫だと思います。な?」

僧侶「話しかけないでくれます?」ツーン

勇者「あ、はい……」

魔王「じゃ、じゃあ始めようか?」

勇者「そ、そうですね。お願いします……」



魔王「さ、作戦タイム!!」

勇者「は、はい!!」



――作戦タイム(7回目)――

魔王「……やめてよ、そういう気まずい空気で世界を掛けた戦いするの」

勇者「はい、すみません」

魔王「みんなそういうの全部片付けてこの場に来るの。あとは魔王を倒すだけ! ってテンションで来るの。いないよ? こんな空気でラストバトル始めるパーティ」

勇者「すみません……」

魔王「僧侶ちゃんも。なんで世界を救う最後の戦いでいつまでも拗ねてるの? 君たちが頑張らないと世界が闇に飲まれちゃうんだよ?」

僧侶「……別にいいですよ、世界なんてどうでも」

勇者「僧侶!? なんてことを言うんだ!」

僧侶「……勇者様だったんです」

勇者「え?」

僧侶「私にとっての世界は勇者様だったんです。勇者様がいてくれたからここまで頑張れた、勇者様に尽くしたくて怖い思いしてここまで来たんです! 愛する人が愛したこの世界を守るために!」


僧侶「でも、それはどうやら私の独りよがりだったみたいですね。だったらこんな世界、どうでもいい! さっさと消えちゃえばいいんです!」

魔王「バカモン!」ペチッ

勇者「魔王!?」

女戦士「貴様、なにをする!!」

魔王「あ、いやなんか流れで叩かなきゃいけないと思って……ちゃんと加減はしたよ?」

僧侶「どうせ、どうせ私なんて……」グスッ

勇者「僧侶……」

魔王「なぁ、勇者。お前、ぶっちゃけどうするつもりなの? 本当にお姫様と結婚しちゃうの?」ヒソッ

勇者「そんなわけないだろ! 俺が僧侶を捨てるわけないじゃないか」ヒソッ

魔王「愛してる?」

勇者「あ、愛してるよ」

魔王「じゃあ、言っちゃいなよ」

勇者「え? ここで?」

魔王「ここじゃなくてどこで言うんだよ。ほら、ちゃんと後ろから抱きしめて自分の気持ち伝えなって」

勇者「いや、みんな見てるし……恥ずかしいって」

魔王「あーあー! 勇者が煮え切らないからもう私、人間界滅ぼしちゃおうかなー!」

勇者「わかったわかったよ! 行くよ! 行けばいいんだろ!!」

魔王「まったく、世話のかかる奴だぜ」

女戦士「お前、段々立ち位置おかしくなってないか?」


――なんやかんやありまして――

僧侶「魔王様を倒したらこ、婚約することになりました///」

勇者「///」

魔王「おめでとう!」

魔法使い「おめでとう!」

女戦士「おめでとう!」

盗賊「おめでとさん!」

くノ一「……おめでとうございます主様」

勇者「なんていうかみんなありがとな!」

僧侶「パーティーの皆さん、それに魔王様、ご心配おかけしました」

魔王「いいっていいって。勇者、僧侶ちゃんを幸せにしてやりなよ?」

勇者「お、おう」

盗賊「あ、旦那が照れてるっす!」

勇者「て、照れてねぇよ!!」

僧侶「……幸せにしてくださいね? 勇者様?」

勇者「も、もちろん!」


魔法使い「……砂糖より甘いわい」

魔王「なんだろう、胸のあたりがキュッとなる……あとすごくイライラする。祝福したいのに素直に祝福できない……」

盗賊「不思議っすね、俺も同じっす」

僧侶「これからもずっと一緒にいましょうね?」

勇者「そうだな、子供は3人くらい欲しいな……って俺なに言ってんだろ! あはは!!」

僧侶「……勇者様が望むのなら私、が、頑張ります……///」

勇者「あ、は、はい///」

魔王「………」プチッ

魔法使い「………」プチッ

盗賊「………」プチッ

魔王「さーて、問題も解決したし戦おうか勇者ー」フッフッフ

魔法使い「そうじゃのー、いつまでもダラダラしてるわけにはいかんしのー」フッフッフ

盗賊「そうっすよー、さっさとこんなこと終わらせないとー」フッフッフ

勇者「あ、そ、そうだったな!」

僧侶「私達の愛があればどんな苦難も乗り越えていけます!」

魔王「……それはどうかなー?」

魔法使い「どうじゃろうなー?」

盗賊「どうっすかねー?」




僧侶「作戦タイム! 作戦タイムです!!」

魔王「獄炎魔法! 獄雷魔法!」

勇者「んぎぁぁぁああああ!!」

魔法使い「極氷魔法! 極風魔法!!」

勇者「んべぇぇぇぇぇぇ!!!」

盗賊「盗む! 盗む! 盗む!」シュバッシュバッ

勇者「お、俺の剣……」ボロッ

僧侶「と、止まらない……! 作戦タイムですよ!」

魔王「はっ! やり過ぎた!」

女戦士「じいさん! 盗賊! あんた達までなにしてんだ!!」

魔法使い「なんかあの甘い空気がどうにも耐えきれんで……ついの」ホッホッホ

盗賊「すんません……」

勇者「………」ボロッボロ


――作戦タイム(8回目)――

女戦士「お前達、ちゃんとやる気あるのか!?」バンッ

盗賊・魔法使い・魔王「「「さーせん」」」

女戦士「我々の肩には全人類の命運がかかっておるのだぞ! ふざけてる場合じゃないだろう!」

盗賊「いや、確かにさっきはちょっとふざけたっすけど俺たちだって真面目にやってますよ姉さん」

魔王「そーだそーだー」

女戦士「大体、私は今もこの場に魔王がいることが納得いかん! 敵に塩を送られるなど情けないとは思わんか!」

魔法使い「そんなことを言ってものう、魔王の助言が無ければここまで戦うこともできなかったわけじゃし……」

女戦士「それが情けないと言っているのだ! そんな腑抜けた態度だから魔王にナメられる。現に見ろ、この魔王の緩みきった顔を! 我々をナメきっているではないか!!」

魔王「……ん?」ボケー

女戦士「私達の役目はなんだ? 魔王を倒すことだろう! もっと真面目になれ!」

僧侶「女戦士様、いくらなんでも言い過ぎじゃ……」

女戦士「拗ねて馬車に閉じ篭ってた奴に言われたくない」

僧侶「……すみません」

女戦士「作戦会議も! こんな緩い感じじゃなく、本当に魔王を地獄の底へ突き落とすくらいの覚悟が必要だ! お前らにはそれが足りん!」

一同「「「「「………」」」」」

女戦士「もっと真面目にいこう! このままでは延々に魔王を倒せないだろう!」

くノ一「……真面目にやって欲しいのはこっちの台詞です」


女戦士「なんだと?」

くノ一「……女戦士殿、あなたは今までの魔王との戦いでどれだけ貢献したのですか?」

女戦士「そ、それは……」

くノ一「……主様と魔法使い殿は魔王にダメージを、僧侶殿は皆様の回復を、盗賊殿は魔王の懐からロケットを盗み、動揺させることに貢献しました」

魔王「ああ、あれ見事だったなー。どうやって盗んだの?」

盗賊「企業秘密っす」

魔法使い「くノ一の嬢ちゃんは不意打ちも食らわせたし、房中術も……」

くノ一「……それは忘れてください」

女戦士「わ、私だって貢献しているだろう! 魔王の攻撃を護ったりとか!」

くノ一「……あなたの役目はアタッカーのはずです。なのにこの有り様……あなたが1番この戦いに貢献していない」

女戦士「ぐっ……」

くノ一「はっきり言ってあなたがこのパーティーのお荷物です」

女戦士「わ、私が……お荷物……」ズーン

盗賊「じょ、嬢ちゃん、流石に言い過ぎずじゃね?」

くノ一「向こうが最初に言ってきたので」

魔王「……なんか空気悪くなってきたね」

魔法使い「……別の生き物同士が意見を交えるんじゃ、ぶつかり合うことくらいあるわい」

魔王「ふーん」


現在の状況
女戦士がお荷物


女戦士「私はお荷物などではない!」

くノ一「ならば証明してください」

女戦士「ぐっ……いいだろう! 魔王! 私と一対一で勝負しろ!」

魔王「お、やる?」

盗賊「姐さん!?」

僧侶「そんな無茶です!」

女戦士「ここまで言われて引き下がれるか! こうなったら私1人でお前を倒してやる!」

魔王「へぇ、面白そうじゃない。相手するよ」

女戦士「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

僧侶「女戦士さぁぁぁぁん!!」







勇者「さ、作戦タイム!!」

魔王「よしっ! 認めよう!!」

勇者「よ、よっしゃ?」

女戦士「………」チーン



――作戦タイム(9回目)――

勇者「俺が気絶している間になにがあったんだ……」

女戦士「………」ズーン

僧侶「ま、まぁ色々です」アハハ

盗賊「一方的っすね」

魔法使い「一撃の威力は強いんじゃが、なんせ当たらんからのう……」

女戦士「……ふぇ」グスッ

魔王「昔の偉い人がこう言った……当たらなければどうということはない!!」

女戦士「……うわぁぁぁぁぁん!!!」

勇者「おい! 泣かすなよ魔王!」

魔王「てへぺろー」


女戦士「言われなくても知ってたよ! 私がこのパーティーのお荷物だってことくらい! 最初の戦闘で気がついてたよ! みんなが速すぎてついていくので精一杯だってことくらい! でも自分から言えるわけないじゃないか!!」ビェェェ

盗賊「ええ……」

女戦士「ああそうさ! 私はこのパーティーのお荷物さ! おっぱいも小さいよ! 女としての魅力も欠落した剣付きのまな板だよ!」

僧侶「そ、そこまで言わなくても……」

女戦士「でも私だって頑張ってるんだ……みんなの役に立ちたいって気持ちはあるんだよ……だから真面目に作戦会議を進めようとしたのに……それを! それを!」バンバン

魔王「色々抱え込んでたんだねー」

魔法使い「じゃのー」

女戦士「もういい! 私、田舎帰る!」

勇者「ちょっ!?」

僧侶「本気ですか!?」

女戦士「思えばこんな剣付きのまな板が勇者様のパーティーの一員だってことがおかしかったんだ。私みたいなまな板は田舎でひっそりと野菜でも育ててた方がいい。そしてその採れたて野菜を自分のまな板で……あはは、いくら私が絶壁でも切りづらいか、そうさ、私はまな板としても使えない……」ブツブツ

盗賊「姐さん、こんなキャラでしたっけ?」

くノ一「……度重なるストレスで少し感情的になっているようです」

魔王「ゴホッ、ゴホッ! あ……」

僧侶「風邪ですか?」

魔王「いんや? 女戦士ちゃんの変わりっぷりが面白くてむせちゃった」


女戦士「勇者、みんな、今までありがとう。こんな役立たずをここまで連れてきてくれたこと、感謝する。あとはみんなで魔王を倒してくれ」トボトボ

勇者「ちょっと待てよ、女戦士! 俺はお前のこと役立たずだなんて……」

女戦士「勇者、お前は優しいな。でもいいんだ。もうわかったから……」

勇者「女戦士……」

くノ一「……ああ、もう! 焦れったいですね! 女戦士殿!」

女戦士「おお、あなたは冷静な判断と素早い身のこなしが武器のくノ一様。こんなチンケな私めに何用でございましょうか?」

盗賊「ダメだ、完全に卑屈になってるっす」

くノ一「あなたの攻撃力は紛れもなくこのパーテイーで1番です」

女戦士「でも当たらなければ意味などないだろう?」

魔王「んだんだ」ウンウン

勇者「魔王、ちょっと黙っててくれ」

くノ一「馬鹿ですね、だったらなんのための仲間ですか。なんのための作戦タイムですか」

女戦士「なんのための……?」

くノ一「私達がいます。私があなたをサポートします。1人じゃ当たらない攻撃も、みんなでならきっと当たります」

女戦士「くノ一……」

くノ一「だから一緒に魔王を倒しましょう? ね?」

女戦士「私は……私はここにいていいのか?」

僧侶「決まってるじゃないですか」

盗賊「姐さん、一緒に魔王を倒しましょうぜ!」

魔法使い「ほっほっほ、誰もお主を役立たずなどとは思っておらんよ」

勇者「女戦士、俺には君の力が必要だ。一緒に戦ってくれ。頼むよ」

女戦士「……ゆうじゃぁぁぁぁぁ……!!!」グスッ

僧侶「ああ、そんなに泣いたら目が腫れてしまいますよ?」

女戦士「ぞうりょぉぉぉ!! ひどいこといっでごべぇぇん!!」

僧侶「ふふっ」




くノ一「………」ホッ

魔王「やるじゃん」

くノ一「! べ、別に私は女戦士殿のことを気遣った訳ではありません。彼女が抜ければ戦力的に厳しいと感じただけです。これも全て主様のため!」

魔王「くノ一たんのツンデレいただきましたー!」ケラケラ

くノ一「ふざけないでください!」

魔王「うむ、それでこそ人間だ。それでこそ私を倒すのに相応しい」

くノ一「……魔王?」

魔王「ちょっと、トイレ行ってくるわ」

くノ一「は、はい……」

勇者「おーい、くノ一! さっさと作戦会議始めんぞー」

くノ一「はい! 今行きます!」





僧侶「こうするのはどうでしょうか」

勇者「なるほど、じゃあ俺はこっちに行けば……」

盗賊「なら俺が旦那をサポートするっす」

魔法使い「ならわしが魔王の目をそらそう」

くノ一「その隙に私は魔王の動きを止めます。そして……」

女戦士「私の出番か……」

勇者「不安か?」

女戦士「正直、怖い。今までなにもできなかった私が、そしてそれに目を背けていた弱い自分が。こんな私が魔王に届くとは思えない……けど今ここで踏み出さなかったら私を信じてくれた仲間を裏切ることになる。それはもっとダメだ」

くノ一「……失敗しても骨は拾ってあげます」

女戦士「そうだな、そうならないように気を付けるよ。みんな、すまないが私に力を貸してくれ」

勇者「ああ、それじゃ行こうか!」

一同「「「「おう!」」」」



魔王「……準備はできたか?」

勇者「ああ、今度こそお前を倒す! 魔王!」

魔王「面白い! かかってこい! 人間よ! その可能性を私に見せてみろ!」

盗賊「上等っすよ! このロリコン野郎!」

魔王「あ? てめぇ、今なんつった?」

盗賊「聞こえないなら何度でも言ってやるっすよ! このロリコン野郎!」

魔王「ロリコンじゃねぇっつってんだろうがぁぁぁぁぁ!!!」ゴゴゴゴゴゴ

勇者「来るぞ! みんな作戦通りにいくぞ!」

盗賊「かかってくるっす! このロリコン!」

魔王「ロリコンじゃねぇぇぇえええええ!!!」カッ



ドガン! ドガン!! ドガン!!!


盗賊「うひゃぁぁぁ!!」

魔法使い「今じゃ! 爆炎魔法!」カッ


ドゴォォン!!


魔王「しゃらくさい!!」ブンッ

魔法使い「よしっ! あとは頼んだぞ! くノ一、勇者!」

僧侶「勇者様! くノ一さん! 防御強化呪文です!」ボワッ

勇者「行くぞ! くノ一!」タッ

くノ一「……はい、主様!」タッ

魔王「くっ、真の目的は攻撃ではなく、煙幕か。どこだ勇者!」

勇者「はぁぁぁぁ!!!」ザンッ

ガキンッ!

魔王「中々やるようになったではないか勇者よ!」


勇者「俺はあんたを倒す! あんたを倒して世界を平和にするんだ!」

魔王「まだまだぁ!」ガッ

勇者「うわっ!」

くノ一「ならば、これでどうです!」シュンッ

魔王「それで背後を取ったつもりか! 甘いわ!!」ガッ

くノ一「きゃあああ!!!」

勇者「くノ一!」

魔王「勇者ぁぁぁぁ!!」

勇者「魔王ぅぅぅぅ!!」


ガキンッ!! ガキンッ!!

魔王「お前は私を倒して何を手に入れる! 私を倒した先にどんな未来を見る!」

勇者「全ての人間が平和に暮らす毎日だ!」

魔王「そうだ! お前が救うのは人間だけだ! お前たちは人間しか救えない!」

勇者「人間しか……?」

魔法使い「耳を貸すな勇者! 戦いに集中するんじゃ!」

魔王「魔法使いの言う通りだ! 集中が乱れているぞ! 勇者ぁ!!」ガッ

勇者「ぐあああああああ!!!」

魔王「どうした、勇者? 作戦タイムでもとるか?」

勇者「……いや、その必要は無い」

魔王「なに? ……っ! 体が!?」ググググ

くノ一「秘術『影縛り』!」


魔法使い「よし、魔王の動きを封じた。準備はいいか嬢ちゃん達!」

僧侶「はい! 女戦士さん、攻撃力強化です!」

女戦士「うぉぉぉぉぉぉおおおお!!!」タッ

魔王「くっ……ここで女戦士か!」

女戦士「みんなが作り上げたチャンス、無駄にはしない!」ダッ

魔王「ぐぐぐっ……」

女戦士「うぉぉぉぉぉ!!!」



ドゴォォォォォン!!!


魔法使い「やったか?」


女戦士「いや、まだだ!!」

魔王「……流石だ、流石だよお嬢ちゃん。君はお荷物じゃなかったようだ」ボロッ

勇者「あれを食らってまだ立つか……」

魔王「悪いけど立っただけだ。もうこれ以上腕一本動かせないよ」ハハッ

魔王「……君たちの勝ちだ。よくここまでやった」

僧侶「魔王さん……」

魔王「とどめはそうだな、やっぱり勇者。君に任せるとしよう」

勇者「……ああ、言われなくてもやってやる」チャキッ

魔王「さぁ、これで世界に平和が訪れる。おめでとう、勇者。君は君自身の未来を勝ち取った」

勇者「………」ググッ

魔王「さあ、その剣を振り下ろすんだ。そして全てを終わらせろ」

勇者「………!!」ブンッ


カランカラン……


盗賊「だ、旦那!?」

女戦士「勇者! 何をしている!? 早く魔王を……」

勇者「作戦タイムだ……」

魔王「認められないな、この状況でなにを考える必要がある?」

勇者「いいから作戦タイムだ!!」


――作戦タイム(10回目)――

僧侶「……魔王さんの回復、終わりました」

勇者「……ありがとう、僧侶」

魔法使い「……どういうつもりじゃ? 勇者。なぜ魔王にとどめを刺さんかった? あまつさえ彼奴の体力を回復させるなどと……」

勇者「なあ、俺はこのまま魔王を殺してもいいんだろうか?」

女戦士「何を言っているかわかっているのか? その発言は私たちの今までの旅を、そして人類を裏切るものだぞ!」

勇者「思えば最初からおかしかったんだ。なんで勇者は俺の作戦タイムを受け入れたんだ?」

女戦士「それは……」

現在の状況
魔王の本当の目的は?

勇者「魔王は恐らく、俺たちに殺されることを望んでいる」

魔法使い「そうじゃろうな、そうとしか考えられんじゃろ。ならその目的はなにか? わしらはそれを知る必要がある」

盗賊「旦那に爺さんもそんなこと知ってなにになるってんです? 魔王討伐は目の前なんだ、さっさとやっちゃいましょうって!」

勇者「それは……できない。あいつが俺たちになにかを残そうとしている限り、俺たちは奴を殺すべきじゃない」

盗賊「なにをそんな悠長なことを! お二人は忘れたんすか!? 魔王に滅ぼされた街を! 村を! あいつのせいでどれだけの人間が傷つき、死んでいったと思ってるんです? 奴をここで殺さなかったらそういう人たちが増えていくんっすよ?」

魔王「……そうだ。盗賊君の言う通りだよ」

勇者「魔王!」


僧侶「魔王さん、まだ動いちゃだめですよ!」

魔王「いやー、女戦士ちゃんの一撃、効いたよー。マジで死ぬかと思った」ヘラヘラ

女戦士「この期に及んでまだそんなヘラヘラと……!」

魔王「この期に及んではこっちのセリフだよ。どうしてあの時殺さなかったんだ勇者?」

勇者「お前の目的はなんだ?」

魔王「お前は私に『この世界を闇に染めることだ! ガハハハハ!!』とでも言ってもらいたいのか?」

勇者「それは……」

魔王「勇者と魔王、どちらかが倒れなければこの戦いは終わらない。どちらかの勝負に決着がつくまでは終わらないんだ。お前はこの魔王と勇者の戦いが何年続いているのか、知っているか?」

勇者「………」

魔王「もう200年だ。私は200年もお前たちの様な人間を殺し続けている。どうだ、憎いだろう?」

勇者「ああ、憎い。憎いさ。今すぐにでもお前を殺してやりたい」

魔王「だったらそうすればいいだろう? お前の心の赴くままに自らの使命を果たすがいい」

勇者「なぜ俺たちをすぐに殺さなかった? なぜ俺たちにチャンスを与えた?」

魔王「……お前には命を賭して守りたいものがあるか?」

勇者「ある。この世界と人類の平和だ」

魔王「まっすぐないい目だ。これなら任せられる」

勇者「え?」

魔王「立て、勇者。そして私と一対一で戦え」

女戦士「一対一でだと!!」

魔法使い「無茶じゃ! 5人がかりでようやくここまでこれたのじゃぞ!」

盗賊「ここにきてそれはないっすよ!」

勇者「わかった。お前がそう望むのなら」

くノ一「主様、無茶です!」

勇者「お前の本当の目的、それを暴いてやる」

魔王「………」




勇者「はあああああ!!」


ザンッ!!


魔王「ぐっ!」

女戦士「やった!」

魔王「……見事だ。勇者よ」ガクッ

勇者「魔王……」チャキッ

魔王「さぁ、その剣を私に突き刺せば世界に平和が訪れる。お前らにとっての平和がな」

勇者「お前の本当の目的はなんだ?」

魔王「答える義理は無いな」

勇者「答えろ!」

魔王「ふふ……楽しかったよ勇者。そしてその仲間たち。お前達との殺し合いは私の人生の中でも最高のひと時だった」

魔王「さぁ、その手で真の英雄になるがいい。勇者。そして人類の平和を手に入れろ」

勇者「くっそ……」ジャキッ


幼女「父上をいじめるな!」


女戦士「子供? 人間の!? どうしてこんなところに」

魔王「……幼女よ、なぜここに? 隠れていろと言っただろう!」


幼女「父上は余が守るのだ!」

勇者「この子は一体……」

盗賊「あああ!! この子! ロケットの子っすよ!」

くノ一「なんですって!?」

魔王「……私の子だ。魔族として産まれるはずが人間として生まれてきた」

勇者「そんなことがあるのか?」

魔王「私も魔族として純血では無いからな。可能性としては考えられる」

くノ一「そうか、それで……」

盗賊「どういうことっすか!?」

魔王「勇者、私はどのみちもうじき死ぬのだ。病に侵されている。もって1年と言うところだろう」

勇者「魔王が……死ぬ?」

魔王「私が死ねばこの子は次の魔王に即位するだろう。だがこの子は人間だ。特別な力も何も持たない人間だ。そんな子が魔王になることを許さない魔族は存在する。この子は命を狙われるだろう」

魔法使い「魔王よ。貴様はわしらになにをさせたかったのじゃ?」

魔王「私の命と引き換えにこの子を人間の世界に連れて行ってくれ。頼む……」

魔王「いずれ消えるこの命。この子を守り続けることは難しいのだ」

勇者「お前は俺たちに殺されるためにこんなことを……」


魔王「ようやくつかんだチャンスだというのにお前らが弱すぎて驚いたがな」ハハッ

盗賊「じょ、冗談じゃないっすよ! 勇者の兄貴、こんな奴の言うこと聞いちゃダメっすよ! 罠かもしれないっす」

女戦士「……ではなぜ魔王は何度も我々を助けたのだ?」

魔王「そ、それは……」

女戦士「魔王が言っていることが本当なら今までの奇行も説明がつく」

幼女「安心するのじゃ父上! 父上のことは余が守るのじゃ!」

魔王「ああ。ありがとう幼女。愛しているよ」パァァ

幼女「う……」ドサッ

勇者「魔王!?」

魔王「心配するな。眠らせただけだ。勇者、この子を頼む。俺の首ならくれてやる。好きなだけ持っていけ」

勇者「魔王……ああ、わかったよ」

魔王「なぁ勇者。図々しいけどもう一つ頼んでいいか?」

勇者「なんだ?」

魔王「どうせだったら人間だけじゃなく、魔族も幸せにしてくれない?」ヘヘッ

勇者「そりゃ難しいな」

魔王「ま、魔王を倒した英雄様ならできるだろうよ」

勇者「ああ、そうだな」


勇者「俺は、あんたを倒して英雄になる……!!」


ザンッ!!!







王様「よくぞ魔王を倒した!」

女戦士「お褒めの言葉ありがたく頂戴します」

王様「これで人類の平和は約束されたであろう。お主たちは英雄じゃ。その名は後世にも語り継がれるものとなるであろう!」

王様「ところで……勇者と僧侶の姿が見えぬのじゃがどこに行ったんじゃ?」

女戦士「彼らならもう冒険の旅に出かけました」

王様「なんじゃと?」

女戦士「真の平和を目指す旅です」





勇者「これでよしっと」

僧侶「できましたね、魔王様のお墓」

勇者「体は魔王城に置きっぱなしだけどな。流石に持っていくことはできないし。形だけだ」

僧侶「幼女ちゃんの様子はどうです?」

勇者「まだ馬車の中でふさぎ込んでる」

僧侶「早く元気になってくれればいいんですが……」

勇者「しばらくは無理だろうな。俺があいつの父親を殺したから」

僧侶「勇者様……」

勇者「とりあえず全部背負っていくよ。魔王の頼みも、幼女のことも」

僧侶「真の平和、探しにいきましょう」

勇者「ああ……」


バァァァン!!


勇者「ぐああああああ!!」


僧侶「勇者様!? 大丈夫ですか!?」

勇者「な、なんて威力の魔法だ!」

幼女「覚悟しろ! 勇者!」

僧侶「よ、幼女ちゃん!?」

幼女「父上の仇は余がとるのだ!!」

勇者「やめろ幼女!」

幼女「うるさい! うるさい! うるさい!」ゴゴゴゴ

勇者「なんて魔力だ……!」

僧侶「これが魔王の血族の力ですか!? このままじゃ……」

幼女「お前ら人間なんて大っ嫌いだ! みんないなくなっちゃえばいいのだ!」

勇者「くっ、こんな時どうしたら……」ハッ


勇者「さ、作戦タイム!!」


僧侶「勇者様!?」

幼女「なにが作戦タイムじゃ! くだらん! お前たち人間は今すぐ死ぬべきなのじゃ!」

勇者「お前の父親はそうやって俺たちに時間をくれた。俺たちに考える時間をくれたんだ」

幼女「その結果、お前たちに殺された!」

勇者「違う。魔王は俺たちに託したんだ。この世界の未来を」

幼女「なんじゃと?」

勇者「作戦タイムだ幼女。俺たちに時間をくれ」

幼女「なにを……そんな、そんな戯言! 余が信じると思うてか!!」

勇者「信じてくれ! 必ず、魔王が望んだ世界にして見せるから。絶対にしてみせるから、頼む。俺たちに時間をくれ!」

僧侶「勇者様……」

幼女「……父上が、望んだ世界……」

勇者「頼む。幼女」

幼女「ううう……父上……」

勇者「作戦タイムだ。幼女」

幼女「………よかろう。認めてやる」

勇者「……ありがとう」


<終わり>

以上です。お付き合いありがとうございました。
また妄想が溜まったら投下したいと思います。ありがとうございました。

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