蘭「湊さん。ありがとうございます」
友希那「今年はどこか一緒に出かけてみる?」
蘭「……そうですね。まぁ、いつか……」
友希那「なら、今度の土曜日は空いてるかしら?」
蘭「いや急すぎません!?」
友希那「いいから質問に答えて。空いてるの? 空いてないの?」
蘭「……日曜なら……」
友希那「そう。それじゃあ決まりね。日曜朝10時。CIRCLE前のカフェに集合にしましょう」
蘭「わ、わかりました……」
蘭(な、何この勢い……)
・バンドリ! ガールズバンドパーティ! の二次創作SSです。
・蘭ちゃん誕生日おめでとう
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――日曜 CIRCLE前――
友希那「美竹さん。来たわね。おはよう」
蘭「おはようございます。……すいません、待たせて」
友希那「まだ集合時間前よ? 謝ることはないわ。それに私も今来たところだから」
蘭「そ、そうですか……」
友希那「ええ」
蘭「…………」
友希那「…………」
蘭(き、気まずい……)
蘭「え、えっと……今日はどこに行くんですか?」
友希那「え……?」
蘭「……一緒に出かけるって話でしたよね?」
友希那「……ええ。そうだったわね」
友希那(失敗したわ……。勢いで誘ってみただけで何も考えていなかった……)
友希那「ええと……そう、映画。映画を観に行くのはどうかしら?」
蘭「映画ですか……いいですね」
友希那(良かった……)
友希那「じゃあショッピングモールね。向かいましょう」
――ショッピングモール・映画館前――
友希那「美竹さんは何か観たい物はあるかしら?」
蘭「そうですね……あ、確かアレの公開がおとといだったような」
友希那「アレ……? もしかして、あのドキュメンタリー映画かしら?」
蘭「やっぱり湊さんも知ってましたか」
友希那「ええ、もちろん。購読している雑誌にも広告が出ていたわ」
蘭「なら、これはもう決まりですね」
友希那「ええ」
蘭(超大物ロックバンド・KINGの結成から解散までを描いたあの音楽ドキュメンタリー……!)
友希那(聖地・イスタンブールでの猫の生活を余すところなく押さえたあの猫ドキュメンタリー……!)
蘭(こんなところまでしっかりアンテナを伸ばしてるなんて……認めたくないけど、流石湊さんだね)
友希那(それにしても意外だわ。美竹さんも猫が好きだったなんて)
蘭「聞くまでもないことだとは思いますけど、湊さんはどこに惹かれたんですか?」
友希那「愚問ね。私は一目タイトルを見ただけで、電撃が走ったようだった……。これは観にいかなければと思ったわ」
蘭「……へぇ。良い感性してますね、湊さん」
友希那「そういう美竹さんはどうなの?」
蘭「これ、以前からあったやつのリメイクなんですけど、あたしは元の方から好きだったので、それで」
友希那「そうだったの。それは知らなかったわ」
蘭「ちょうど券売機すいてますし、私チケットとってきますよ」
友希那「ええ、お願いするわね。私、こういう所には慣れてなくて……助かるわ」
蘭「そうだ。字幕と吹き替え、どっちにします?」
友希那「…………喋るの?」
蘭「そりゃそうですよ。無声映画じゃないんだから」
友希那「あぁ、そうよね。ナレーションとかがあるものね」
蘭「いや、全員普通に喋りますけど……」
友希那「全員……!?」
蘭「私はやっぱり字幕派ですね。吹き替えは口の動きに合わせて妙な訳になってたりすることも多いし……」
友希那「その、言葉を日本語に直す専門の人とかがいるのかしら……?」
蘭「そうらしいですね。訳す人によって結構個性出ますし、字幕と吹き替えでも別の人が訳してたりしますよ」
友希那「そんなに沢山訳せる人がいるのね……羨ましいわ……」
蘭「羨ましい……? まぁ、そうですね」
蘭(確かにそこまで英語が使えれば、もっと多くの人に歌を届けられる……)
蘭(……湊さんの見すえてる世界は、あたしが思ってたよりもずっと広いのかも)
友希那(……公園にいるにゃーんちゃん達とお喋りできたら、きっとすごく楽しいでしょうね……)
バンドリss貴重なので期待
蘭「さっきタイトルを見ただけで電撃が走って、って言ってましたけど、内容はどれくらい知ってるんですか?」
友希那「……実のところあまり。雑誌に載っていた広告と、CMを何度かみたくらいね」
蘭「あぁ、あのCMですか」
友希那「あのCMにずっと出ていたのが、いわゆる主役なのかしら?」
蘭「そうですね。一番目立ってるのが主役です」
友希那「そうなのね……。あの見た目、あの仕草……」
友希那「どこをとってもかわいいわ」
蘭「はぁっ!?」
蘭(あの髭と胸毛でもじゃもじゃのおっさんが!?)
友希那「……? そんなに驚くようなことかしら?」
蘭「え、いや。だって、その、毛とか……」
友希那「ええ。毛並みもとっても良かったわね」
蘭(えええぇ)
友希那「はぁ……一度撫でてみたいわね……」
蘭(し、知らなかった……。湊さん、ああいうのがタイプなんだ……)
あなたのss好き
友希那「どうしたの、美竹さん。驚いたような顔をして」
蘭「あ、いえ……なんていうか、あたしはどっちかっていうと、カッコいいってイメージかな、って」
友希那「カッコいい……確かに、その気持ちもわかるわ」
友希那「あの堂々とした立ち姿。彼の生き様を表しているかのようだものね」
蘭「ええ、分かります。野性味のある表情とかも、凛々しいですよね」
友希那「確かにそうね。きっと自然の中で逞しく育ったからこそのものでしょうね」
蘭「自然……? いや、育ちはそこまで過酷なものじゃなかったはずですけど……」
友希那「そうなの?」
蘭「まあ確かに食べるのにも困って、とにかく食べられるものをなんでも食べてるシーンとかはありましたね」
友希那「かわいそうに……。虫しか食べられなかったのでしょうね」
蘭「いやそこまでえげつないレベルではないですかね……」
友希那「あら? じゃあ傷んだ生魚……いえ、海外なら生肉とかかしら?」
蘭「いや……すいません。なんでもは言い過ぎました。もっと普通のものです」
蘭(湊さん……どういう生活を送ってたらそんな発想が……)
蘭「あ、でもタマネギは食べられないそうです」
友希那「美竹さん。それは常識よ」
蘭「え。そうなんですか」
友希那「ええ。それとチョコレートも」
蘭「それは初耳でした……」
友希那「うっかり口にしてしまった場合、命に関わる危険があるわ」
蘭「そこまで!?」
蘭(ただの好き嫌いじゃなかったんだ……)
友希那「好きな人でも、まだ知らない人も多いのね……」
蘭「す、すいません」
友希那「いえ、今ここで知ってくれればそれでいいのよ」
友希那「良かれと思ってチョコをあげてしまって重体に、なんて洒落にもならないことだわ。美竹さんもこれからは気をつけるように」
蘭「は、はい……」
蘭(……もう亡くなってる人なんだけどな)
蘭「あと、実はすごく気性が荒くて、一度暴れると手がつけられなかったとか」
友希那「そうなのね」
蘭「酷いときなんて寝てるところをうっかり起こしちゃった人に殴りかかったり噛み付いたりしたとか。まあその辺は映画には入ってませんけど」
友希那「……それくらい普通のことじゃないかしら?」
蘭「えぇっ!?」
友希那「私も前に公園で寝ているところに近づいたら起こしてしまって。ひっかかれて手に怪我をしてしまったことがあるわ」
蘭「いや、それ普通に事件ですよ……。警察とか行かなかったんですか?」
友希那「行く訳ないじゃない。おかしなことを言うのね」
友希那「それに悪いのは起こしてしまった私の方だもの。反省しているわ」
蘭(湊さん……ちょっと心広すぎて怖くなってきた……)
蘭「――――あ、そろそろ始まる時間ですよ。中入りましょう」
友希那「ええ。楽しみね」
友希那「………………あら?」
――帰り道――
友希那「……まさか、最初から勘違いしていたなんてね……」
蘭「いや、まぁ……途中からおかしいなとは思ってました」
友希那「恥ずかしい限りね……。でも、映画の内容はとても良かったわ」
蘭「そうですね。やっぱり映画館は音響もいいですし、音楽ドキュメンタリーは映画館で見るに限ります」
友希那「ええ。とてもいい刺激になったわ」
蘭「…………」
友希那「…………」
蘭「…………あの」
友希那「何かしら」
蘭「……なんで、急に一緒に出かけようなんて言い出したんですか?」
友希那「あら、バンドのボーカル同士、交友を深めようというのはおかしいことかしら?」
蘭「おかしい、ってわけじゃない、ですけど……」
友希那「……何か言いたいことがある風ね。なんでも言って頂戴」
蘭「えっと……じゃあ、正直に言わせてもらいますけど」
蘭「あたしと湊さんって、そういう関係じゃないっていうか……」
蘭「仲良くするとかっていうよりも、その、ライバル、っていうのかな……そんな存在だとあたしは思ってて」
蘭「だからなんていうか……湊さんからしたら、あたしはそうは見られてなかったのかな、みたいな」
蘭「そういう所がなんか、こう……悔しい、っていうか、寂しい? っていうか……」
友希那「…………」
蘭「ああもう、何言ってんだかあたし……! すいません、今のなしで!」
友希那「美竹さん……」
蘭「……今日はありがとうございました。じゃあ、また」
友希那「美竹さん!」
蘭「!」
友希那「初めて貴女に会ったとき。何故あんなに敵対心を向けられているのか分からなかった」
友希那「けど、Afterglowの演奏と歌を聴いたときに分かったわ。貴女の歌への向き合い方が」
友希那「貴女の歌はとても荒削りで、技術もまだまだだった。それでも溢れ出る反骨心や熱量は、誰にも負けていないと思わせるものだった」
友希那「……正直に言って、カッコいいとすら思った。貴女の歌は、私には出せない歌だったから」
友希那「だから私も、負けたくないと思ったわ」
蘭「湊、さん……」
友希那「戸山さんに誘われて一緒に歌ったときも、貴女にだけは負けない。そう想いをこめて歌った」
友希那「そしてきっと貴女も同じように想っているであろうことが伝わってきた。奇妙な形ではあるけれど、気持ちを一つにして歌えた瞬間だった」
友希那「……同じ気持ちで一つの歌を歌えた仲間と、交友を深めようというのは……おかしいことかしら?」
蘭「おかしく……ないです……」
友希那「それに、貴女とは意外と気が合いそうだとも思っていたしね」
蘭「まぁ、否定はしませんけど……」
友希那「ふふ。分かってもらえたようで嬉しいわ」
蘭「……はぁ。なんか、上手く諭されたみたいで負けた気分……」
友希那「あら。なら今回は私の1勝ね」
蘭「むっ……湊さんは映画のとき変な勘違いしてたから既に1敗してます」
友希那「……痛いところを突くわね……」
蘭「じゃ、今回は引き分けですね。決着を着けるのは次回、ということで」
友希那「えぇ。楽しみにしているわ」
友希那「そうだわ、遅くなったけど、これ」
蘭「……袋? なんですか、これ」
友希那「誕生日のプレゼントよ。貴女のイメージにピッタリの本を選んだつもりよ。良かったら読んで頂戴」
蘭「あ、ありがとうございます……」
友希那「それじゃ、今日はこの辺で。これからもよろしくね、美竹さん」
蘭「……ええ、こっちこそ。湊さん」
――翌日――
リサ「ゆっきなー! おはよー☆」
友希那「リサ。おはよう」
リサ「あ、そうそう。頼んでた本、買っといてくれた?」
友希那「ええ。『手作りクッキーアレンジ集』よね。はい、これ」
リサ「ありがとー! この本どこ探しても見つかんなくってさー。たまたま見つけてくれてホントに……」ガサガサ
リサ「……ん? 『世界ロックスター全集』……?」
友希那「え……?」
リサ「友希那……? これって……」
友希那「…………」
カランコローン
つぐみ「いらっしゃいませー! あ、蘭ちゃん! こんな時間に一人でくるなんて珍しいね? どうかした?」
蘭「つぐみ……。あ、あのさ……」
蘭「……クッキーの作り方、教えてくれない……?」
以上で完結となります。読んでいただいた方はありがとうございました。
蘭の誕生日の友希那からのお祝いボイスが衝撃的すぎて急いで書いてしまった……。蘭ゆき、いいですね。
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