穂乃果「嫌だ。自分でカルピス作る」 (14)
ミーンミンミンミン
8月某日。
真姫「暑い…」
この日の気温は39度。炎天下を歩いていると身体が溶けてしまいそう。
普段だったらこんな日は家で冷房をつけて勉強でもしているのだけれど今日は用事があったからそう言う訳にもいかなくて。
真姫「あら?」
そしたら、どこかで見た事ある顔を発見。
亜里沙「ちょっと待っててね」
パキッ。
見覚えのある姉妹が二人。コンビニで買ったアイスを半分に分けている所だった。
亜里沙「あっ、均等に割れなかった…。お姉ちゃん…」
絵里「大きい方は亜里沙が食べなさい」
亜里沙「でも…」
絵里「いいのよ。私は今ダイエット中だから」
亜里沙「本当?」
絵里「ええ」
亜里沙「お姉ちゃんありがとう」
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真姫「絵里がダイエット中なんて初めて聞いたわ」
絵里「あら?真姫」
真姫「優しいのね。絵里は」
絵里「なんの事かしら?」
真姫「ふふっ。別にいいけど」
亜里沙「あっ!真姫さん。こんにちは」
真姫「こんにちは。姉妹でお出かけ?」
亜里沙「はい。今日はお姉ちゃんとお買い物なんです」
へ~、姉妹でお出かけかぁ。私は一人っ子だからちょっぴり羨ましい。
絵里「真姫は何してるの?」
真姫「私は穂乃果に用事があってこれから家に行く所なの」
絵里「そうだったの。じゃあ、穂乃果にもよろしくね」
真姫「ええ。亜里沙ちゃんもまたね」
亜里沙「はい。また今度」
絵里みたいなお姉ちゃんが居たらきっと皆んなに自慢出来るんだろうなぁ。美人で頭が良くて運動も出来て優しくて。絵里お姉ちゃんなんて呼んでみたり…なんて。
真姫「はあ…」
まあ、ないものねだりしても仕方ない。早い所穂乃果の家に行って用事を済ませなきゃ。
真姫「こんにちはー」
シーーン
私にしては割と大きな声を出したつもりなんだけど。
真姫「こんにちは」
雪穂「あっ、真姫さん。いらっしゃい」
真姫「良かった。居たのね。雪穂ちゃん?穂乃果いる?」
雪穂「お姉ちゃんですか?居ますよ。ちょっと待っててください。呼んできますから」
お姉ちゃんか。そう言えば穂乃果もお姉ちゃんなんだよね。穂乃果がお姉ちゃんか。絵里とはタイプが違うけど穂乃果がお姉ちゃんだと毎日が賑やかで楽しそう。
雪穂「そこで座って待ってて下さい」
真姫「うん。待たせて貰おうかな」
そう言って雪穂ちゃんが穂乃果を呼びに行こうとした時。
穂乃果「嫌だ。自分で作る」
穂乃果母「だからダメって言ってるでしょ」
穂乃果と穂乃果のママの声が部屋の奥から聞こえて来た。
雪穂「あっ、あちゃ~。始まっちゃったよ。あはは…お恥ずかしい所を…」
真姫「だ、大丈夫よ」
喧嘩をしてるみたいだけど…大丈夫かしら?もしかして、穂乃果って反抗期?
穂乃果「嫌だよ。自分で作るから」
穂乃果母「だからダメよ。あんた自分で作ると濃くするでしょ?」
穂乃果「しない。しないから」
穂乃果母「じゃあ、自分で作る必要ないでしょ?」
穂乃果「あるよ。お母さんが作ると薄過ぎるんだよ」
穂乃果母「薄いくらいがちょうどいいのよ」
穂乃果「全然ちょうど良くない。あんなの水だよ。ちょっと甘い水」
真姫「あっ…」
ちょっとびっくりした。私はママと喧嘩なんてした事なかったし。それに、何?穂乃果の家は自分でカルピスを作るの?カルピスって自分で作れる物なの?和菓子屋だから?
雪穂「ご、ごめんなさい。たま~に、あるんですよね」
真姫「そ、そうなんだ」
穂乃果「こんだけ暑いんだからカルピスくらい美味しく飲ませてよ」
穂乃果母「そんな事してたらすぐになくなっちゃうじゃない。いい?お母さんが子供の頃なんてカルピスなんて滅多に飲まなかったのよ?たまに飲めてもまあ、薄くて」
穂乃果「だったら、娘には濃いカルピスを飲ませてよ。なんなら原液で飲ませて」
穂乃果母「そんな事してたら病気になるわよ」
真姫「え?穂乃果っていつもあんな感じなの?」
雪穂「そうですよ?お姉ちゃん意地汚いんですから」
穂乃果が意地汚いのは知ってるけど。あそこまで駄々を捏ねるとは。
雪穂「子供の時なんて。チューペットアイスがあるじゃないですか」
チューペットアイス?え?何それ?
雪穂「あれを私と二人で半分つにするんですけど。お姉ちゃん、チューペットの容器の突起がついてる方を絶対に取るんですよ。量が多いからって」
真姫「へ、へ~。そうなの」
ちょっぴりショックだった。チューペットアイスが何かは分からないけど穂乃果がそんな意地悪をするなんて。
穂乃果は確かに子供っぽい所があるけど皆んなに優しくてリーダーシップもあって、私は密かに穂乃果に憧れていたのに。それが…
雪穂「それに、カップアイスの蓋は今でも舐めるし。ケーキの包装に付いたクリームも舐めますからね」
真姫「そうなの…」
穂乃果「じゃあ、お母さん。こうしよう?私が自分で入れるからお母さんストップって言ってよ。それならいいでしょ」
穂乃果母「ダメ」
穂乃果「なんで?」
穂乃果母「どうせ多めに入れるじゃない。穂乃果の事はよく分かってるのよ」
穂乃果「くっ。お母さんのバカァ。グスッ。もう、家出してやる」
そう言って泣きながら私の前に姿を見せた穂乃果。
穂乃果「あっ…」カァァァァ
見る見る顔を赤くしていく。
穂乃果「そ、その…全部聞こえてた?」
真姫「え?さ、さあ?」
次の日、穂乃果は一日中大人しかった。
完
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