P「アイドル達の親愛度がマイナスになった……」 (75)

とある日、事務所

P「おはようございます」

小鳥「あっ、プロデューサーさん! ちょうど良かったです!」

P「ちょうど良かった? 何かあったんですか?」

小鳥「はい。実は今朝事務所に来たら、机の上にこんなものがあって……」

P「? これは、小瓶と……手紙?」

小鳥「社長が置いていったものみたいなんですけど、とにかく、読んでみてください!」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1522499670

P「どれどれ、えっと……」

 『これは知人からもらった、親愛度をマイナスにする薬だ。
 これを飲むとアイドル諸君の親愛度がマイナスになる。
 プロデュースをする上でアイドルに嫌われる経験というのも貴重だろう。
 ぜひ活用してくれたまえ!』

P「ええ……」

小鳥「社長ったら、またこんな怪しげなものを……。どうしましょうプロデューサーさん?」

P「う、うーん……。なんだかよく分かりませんけど、
 取り敢えず飲んでみようという気にはなりませんね」

小鳥「ですよね? そもそも本当に効果があるのかも分かりませんし……」

P「だからって飲んで効果を確かめるわけにもいきませんから……。
 しかし一体どういう……ちょっと匂いだけでも嗅いでみますね」

小鳥「は、はい。うっかり飲んじゃったりしないでくださいね!
  絶対ですよ! 絶対うっかり飲んじゃったりしないでくださいよ!」

P「あはは、大丈夫ですよ。いくらなんでもそんなうっかりはしません。
 さてと、どんな感じかな、と……。ふむ、」

亜美真美「わーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!」

P「!?」ビクッ

小鳥「きゃあっ!?」

小鳥「あ、亜美ちゃん、真美ちゃん! いつの間に!」

亜美「んっふっふ~! おどかし作戦大成功~!」

真美「兄ちゃんピヨちゃん、びっくりした? びっくりしたっしょ? んっふっふ~!」

P「……」

真美「? どしたの兄ちゃん、固まっちゃって」

亜美「っていうか、さっき二人で何見てたの? もしかして、エッチなもの~?」

P「い、いや違う、そうじゃないけど……」

小鳥「まさかプロデューサーさん……」

小鳥(の、飲んじゃったんですか、さっきの薬!)

P(……びっくりした反動で、口に入って……)

小鳥(そんな! それじゃあ、その薬が本物だとしたら……!)

P(はい……。俺に対するアイドルの親愛度が、マイナスに……)

小鳥(ということは……今ここに居る亜美ちゃんと真美ちゃんも!?)

小鳥「ね……ねぇ亜美ちゃん、真美ちゃん!
  二人とも、プロデューサーさんのこと……って、あれ?」

亜美真美「……」

小鳥(ふ、二人ともさっきまですぐそこに居たのに……)

P(いつの間にかソファに移動してゲームをしている……)

小鳥「あ、亜美ちゃん、真美ちゃん?」

亜美「ん? なにピヨちゃん」

真美「どしたの? 何か用?」

小鳥「え、えっとね、ちょっと聞いてみたいことがあるんだけど……。
  二人とも、プロデューサーさんのこと、どう思う?」

亜美「……」

真美「……何、急に。なんでそんなこと聞くの?」

小鳥「え? えっと……な、なんとなく?」

真美「……知んないよ、そんなの」

小鳥「し、知らないって……。あ、亜美ちゃんは?」

亜美「……」

小鳥「えっと、亜美ちゃん? 亜美ちゃんはプロデューサーさんのこと……」

P「すいません小鳥さん、もういいです。わかりました。もう大丈夫です」

小鳥「あっ、はい、そうですねすみません……」

真美「もういい? じゃあ真美たち、レッスンルーム行ってくるね。またねピヨちゃん」

小鳥「あ、うん……」

真美「ほら行こ、亜美」

亜美「ん……。ごめんね、ピヨちゃん」

小鳥「え、いや私は別に……」

真美「んじゃ、いってきまーす」

 ガチャッバタン

P「……」

小鳥「……」

P「なんですかこれ!? 辛すぎるんですけど!!」

小鳥「プ、プロデューサーさん! 落ち着いてください!」

P「もう無理なんですけど! たった二人で限界ですよもう!
 どうやったら元に戻るんですかこれ!!」

小鳥「え、えっと、社長の手紙には……十年経てば効果は切れる、って……」

P「はああああああああああ!? 十年!? 何考えてんですかあの社長!!」

小鳥「あっ、でも待ってください! 強制的に治す方法もあるみたいです!」

P「! 本当ですか! 教えてください!」

小鳥「えっと……。『誰か一人でいいから、親愛度を更にマイナスに振り切ること』だそうです」

P「さ、更にマイナスに?」

小鳥「つまり、限界まで嫌われろと……」

P「どういう仕組みなんですかそれ! 意味不明すぎる!」

小鳥「わ、私に言われても……」

 ガチャッ

律子「おはようございます」

P&小鳥「!」

小鳥「り、律子さん!」

P(な、なんてことだ……! 亜美と真美で既に限界なのに、
 この上律子にまであんな態度を取られたら泣いてしまいかねない!)

律子「おはようございます、小鳥さん。プロデューサーも、おはようございます」

P「えっ? あ、あぁ、おはよう」

P(あれ……? なんか普通に挨拶してくれたぞ)

律子「ところで小鳥さん、ちょっとお手洗いに来てもらっていいですか?
  なんだか、蛇口の調子が悪いみたいで見てもらいたいんですけど」

小鳥「えっ? はい、分かりました。
  すみませんプロデューサーさん、ちょっと行ってきますね」

P「あっ、はい……」

 ガチャッバタン

P「……」

P(と、取り敢えず一旦落ち着いて状況を整理しよう……。
 まず俺はあの薬を飲んで、アイドル達の親愛度がマイナスの状態になっている。
 そして元に戻すには、十年待つか、誰かの親愛度を限界までマイナスにする……と)

P「……なんか整理してもよく分からない状況だ……。
 しかし、律子はどうだったんだろう。さっきの感じだと、いつもと変わらない気が……」

P(もしかして、律子の親愛度は変わっていないのか?
 いやそれとも、変わっていたのは亜美と真美だけとか……。
 あっ、まさか、実は最初からあの二人のイタズラだったのか!?
 あり得る! きっと今頃二人して、レッスンルームで笑って……)

 ガチャッ

やよい「おはようございまーす!」

P「! あぁ、おはようやよい!」

やよい「っ……!」ビクッ

P「えっ」

やよい「あ、あの、その……」

P「や、やよい? えっと、どうしてそんな……」

やよい「ひっ! ご、ごめんなさい! なんでもないです! ごめんなさい!」

P(あっ、ダメだこれ)

 ガチャッ!

伊織「やよい、どうしたの!?」

やよい「伊織ちゃん……!」

P「い、伊織」

伊織「ッ……! ちょっとあんた! やよいに何したのよ!?」

P「え!? い、いや、俺は何も……」

伊織「なんであんたがここに居るの!? っていうか、いつまで765プロに居座るわけ!?」

P「ええ……」

伊織「いつも言ってるでしょ! 私たちの半径10m以内に近寄らないで!
  視界にも入らないでちょうだい! もし次やよいに何かしたら、
  水瀬財閥の力で765プロどころか日本から、いえ、地球から追放してやるわよ!」

やよい「伊織ちゃん……」

伊織「大丈夫よ、やよい。もう一人で事務所に行っちゃダメよ?」

やよい「うん、ごめんなさい……」

伊織「さ、外に行きましょう。……あんたは、さっき言ったこと覚えてなさいよね。フン!」

 ガチャッバタン!

P「……」

P(マジか……伊織が家の力に頼るのも辞さないレベルで嫌われてんのか……。
 それもだし、やよいの怯えた視線めっちゃ心に来た……)

美希「ん~、騒がしいの……ミキ、せっかくお昼寝してたのに……」

P「! み、美希、居たのか!」

美希「えっ? うわっ……」

P(『うわっ』!?)

美希「……」

P「な、なんだ? なんでそんな、じっと見て……」

美希「……オジサン、ミキに何もしてないよね?」

P「お、おじさん!?」

美希「オジサンじゃなかったら、そこの人。
  お昼寝してるミキに、何か変なこと、してないよね?」

P「す、するわけないだろ!」

美希「……あーあ、朝からサイテーな気分なの。
  ミキ、今日はそこそこ頑張ろーって思ってたのにな。やる気なくなっちゃったの」

P「え? ど、どこへ行くんだ、美希!」

美希「帰るの。ミキ、オジサンのこと嫌いだから一緒に居たくないって感じ」

P「」

美希「さよならなのー。あふぅ」

 ガチャッバタン

P「……」

 ガチャッ

小鳥「プ、プロデューサーさん」

P「音無さん……」

小鳥「えっと……今、美希ちゃんとすれ違ったんですけどもしかして……」

P「はい……ばっちりマイナスでした。あとやよいと伊織も」

小鳥「やっぱり……」

P「……そう言えば律子はどこへ?
 戻ってきたらちょっと確認しようと思ってたんですけど」

小鳥「確認っていうのは……律子さんの親愛度ですか?」

P「はい。だってほら、さっきは普通に俺にも挨拶してくれたでしょう?
 だからもしかしたら律子はマイナスになってないんじゃないかと思って」

小鳥「そ、そのことなんですが……」

P「え?」

小鳥「……やっぱり、律子さんもダメでした」

P「え……」

数分前

小鳥「それで律子さん、調子が悪い蛇口っていうのは……」

律子「すみません、小鳥さん。それは口実です。
  ちょっと、プロデューサーの居ないところで話をしたくて」

小鳥「えっ?」

律子「亜美と真美から聞きました。
  さっき、小鳥さんにプロデューサーをどう思ってるか質問されたって」

小鳥「え、えぇ、質問しましたけど……」

律子「えっと、ですね。やっぱり、出来ればあの子達にプロデューサーの話はしないで欲しいんです。
  私や何人かの子は、仕事相手だと割り切ってある程度は接することができますが、
  あの子達はまだ、それは無理ですから……」

小鳥「……は、はい、わかりました」

律子「それで、その……今日プロデューサーは、いつまで事務所に?」

小鳥「え? 確か、午後から営業に行く予定でしたからそれまでは……」

律子「う……それじゃあ、まだしばらくは居そうですね。
  わかりました。私は亜美達のレッスンを見てきます。
  午後になれば戻るので、それまではすみません、よろしくお願いしますね」

小鳥「は、はぁ……」

律子「……いつもすみません。小鳥さんにこんな役目を押し付けちゃって……」

小鳥「い、いえ私は別に」

律子「それじゃ……行ってきます」




小鳥「ということがあって……」

P「……」

小鳥「プ、プロデューサーさん、大丈夫ですか?」

P「めっちゃ泣きそうです……」

小鳥「き、気持ちは分かります」

P「音無さん……俺、決めました。
 次に事務所に来たアイドルの親愛度を、マイナスに振り切ります。
 そしてこの地獄に終止符を打ちます……!」

小鳥「わ……わかりました。でも気をつけてくださいね。
  親愛度自体は元に戻っても、それで記憶も消えるとは限りませんから」

P「! そ、そうか、そうですね。嫌われるためにあまり酷いことをしすぎると、
 後々まで気まずくなってしまう恐れが……。
 い、いや大丈夫、俺はプロデューサーなんだ。
 後々に影響しないラインを見極めつつ、アイドルに合わせた嫌われ方を……」

 ガチャッ

雪歩「おはようございますぅ」

P「! 来たな雪h」

雪歩「ひいっ!? 嫌ぁああああああああ来ないでぇええええええええええええ!!!!!」

 ガチャッバタン!

P「……」

小鳥「……」

P「つ、次です。次のアイドルにします」

小鳥「は、はい」

P「えっと、次はそろそろ……」

 ガチャッ

響「お……おはようございまーす」

P「! 響!」

響「っ……! あ、お、おはようございます、プロデューサー……」

P「……」

響「……」

P「えっと……」

響「ひっ……!」ビクッ

P「……」

響「あっ、ご、ごめんなさい、じぶ……私、その……」

P(口調が違う……よそ行きの響だ……他人に接するときの響だ……)

小鳥(プ、プロデューサーさん)

P(わ、わかってます! 俺、今から嫌われますから……! やってやります!)

響「あ、あの……?」

P「ひ……響! ちょっとこっちに来るんだ!」

響「ひっ!? や、嫌っ……!」

 ガチャッ!

貴音「響ッ!」

P「!?」

P「た、たかn」

貴音「ッ!!」パァン!

P「ぶへっ!?」

小鳥(ビンタ!?)

貴音「痴れ者が! 恥を知りなさい!」

響「う、うわぁあ~ん貴音ぇ~~!!」

貴音「もう大丈夫です……! さあ響、一刻も早くここから去りましょう!」

  ガチャッバタン!

小鳥「……」

P「……」ヒリヒリ

小鳥「……」

P「……俺まだ何もしてない……」ヒリヒリ

小鳥「だ、大丈夫ですか? 思い切りビンタされましたけど……」

P「めっちゃ痛いです……心が……」

小鳥「ですよね……」

P「い、いやしかし、考えてみれば当然のこと……。
 俺は今からアイドルに嫌われるような酷いことをするんだ。
 ビンタくらいされる覚悟はしておかなければ……!」

小鳥「プロデューサーさん……」

P「俺は諦めませんよ、音無さん。必ず、アイドルから限界まで嫌われてみせます!」

 ガチャッ

あずさ「おはようございます~」

春香「おはようございます!」

真「おはようございまーす!」

P(! 三人同時に来た……!)

小鳥「お、おはよう、みんな」

あずさ「小鳥さん、おはようございま……あっ」

P「……お、おはようございます、あずささん。春香と真も、おはよう」

あずさ「あ、えっと……おはようございます、プロデューサーさん」

春香「お、おはようございます」

真「……」

小鳥(プ、プロデューサーさんに対してすごくよそよそしいわ。笑顔もぎこちないし……)

P(真に至ってはものすごく睨んできている……)

春香「えっと……確か今日はプロデューサーさん、お仕事は午後からだったはずじゃ……?」

P「え? いや、営業は確かにそうなんだけど、
 その前に事務作業を少ししておこうと思って……。それが、どうかしたか?」

春香「あ、あぁいえ、別になんでもないんです! お仕事、頑張ってくださいね!」

P(う……早くどこかに行ってくれないかなオーラをひしひしと感じる)

真「……小鳥さん。ボク、ランニングに行ってきます。
 春香とあずささんもどうですか? 一緒に行きません?」

春香「う、うん! 行く行く!」

あずさ「だったら、えっと……そのままレッスンに行くのはどうかしら~?」

真「あっ、いいですね! そうしましょう!」

P(な、なんだって! 三人とももう行ってしまうのか! まだ何もしていないのに!)

春香「それじゃ、私たち行ってきますね!
  多分、しばらく事務所には戻って来ませんから……」

P「ま、待つんだ三人とも!」

三人「っ……!?」ビクッ

小鳥(プロデューサーさん……やるんですね!? 今……! ここで!)

P(はい! 勝負は今、ここで決めます!)

春香「え、えっ……!?」

P(さぁどうする! 相手は三人! 誰か一人に嫌われればそれでいいんだ! それなら……!)

真「ふ、二人ともボクの後ろに!!」

P「!」

あずさ「真ちゃん!?」

春香「真!?」

真「それ以上近付くな……!
 何をするつもりか知らないけど、二人には絶対に手を出させないぞ!」

P「っ……」

真「二人とも、今のうちに早く逃げて! ここはボクが相手をするから!」

P(な、なんだかよく分からないことになったが……。
 しかし、俺ももう後には引けない! 流れに身を任せるんだ!)

P「い、いいのか、真、そんなことをして!? 俺はプロデューサーだぞ!
 俺の意思一つで、お前たちのアイドルとしての進退は決まるんだ。
 お前だけじゃない、他のみんなもな!」

真「なっ……! 相変わらず、なんて卑怯な奴なんだ……!」

P(あ、相変わらずなのか、今の俺は)

P(ま、まぁいい。なんかいい感じっぽいし、このままやってやる!)

P「ククク……つまりお前は俺の言うことを聞くしかないってことだ!
 今からお前にものすごく悪いことをするが、もちろん抵抗せず受け入れるよなぁ!」

真「っ……」

P「いいか? 殴ったり蹴ったりするなよ?
 嫌がってもいいけど痛いことはするなよ? いいな?」

P(よ……よし、いけそうだ。このまま……!)

あずさ「……もう、やめてください!」

P「えっ」

真「あ、あずささん……!?」

あずさ「真ちゃんに酷いことをするなんて、許しません……!
   何かするのなら、わ、私に……!」

真「だ……ダメですあずささん! ここはボクが我慢すれば……!」

あずさ「いいえ、真ちゃんこそ、そんなことを言っちゃダメ。
   私が一番お姉さんなんだから……!」

真「そんなっ……」

あずさ「……プロデューサーさん、私のことは、好きにして構いません。
   でも、他のみんなには、絶対に何もしないと、約束してください……!」

P「……」

P(こ……心が痛い!!)

P(っていうかもういいだろ! これかなり嫌われてるだろ! なんでダメなんだこれで!
 これ以上嫌われるなんて、それこそ本当に……)

春香「だ、ダメ、です……! こんなの、間違ってます……!」

あずさ「は、春香ちゃん……!」

春香「お……お願いします、プロデューサーさん……。
  私たちの中の、誰にも……何もしないでください……」

真「春香……」

春香「お願いします……。何も、しないで……。お願いします……」

P(な……泣いて震えながら消え入りそうな声で頭を下げている! もう無理!)

P「も、もういい……行ってくれ……」

春香「え……?」

P「音無さん、お願いします……」

小鳥「あっ、は、はい。それじゃ、行きましょう、三人とも。もう大丈夫だから」

あずさ「ぐすっ……小鳥さん……」

真「うぅ……」

小鳥「そ、それじゃ、プロデューサーさん。すぐ戻ってきますね」

 ガチャッバタン

P「……辛い……」

P(いや無理だろあんなの……。あんなの見せられたら何もできないだろ……。
 あんな震えながら庇いあって……。
 っていうかあの子らの中の俺は一体どういう人間なんだ……)

 ガチャッ

小鳥「ただいま戻りました……。みんな、レッスンルームに行きましたよ」

P「はい……ありがとうございました」

小鳥「すみません、私、見てるだけで何も……。
  私にも何か、お手伝いできればいいんですけど……」

P「いえ、仕方ないですよこればっかりは……。
 それより、あと事務所に来てないのは……」

小鳥「千早ちゃん、ですね」

P「千早か……。今はまだ家ですかね?」

小鳥「そうみたいです。さっき、一応春香ちゃんに聞いておきました。
  もしかしたらプロデューサーさん、直接お迎えに行くかも知れないと思って」

P「! はい、まさに今そう考えていたところです」

小鳥「午後の営業は千早ちゃんと一緒でしたよね?
  お迎えに行って、そのまま向かわれますか?」

P「そうしようと思ってます。出来れば、親愛度を元に戻してから」

小鳥「プロデューサーさん……。私も、事務所から応援してます! 頑張ってください!」

P「はい、ありがとうございます! それじゃ……行ってきます!」

P(長引くと俺のメンタルがもちそうにない……!
 次がラストチャンスだと思って、絶対に成功させてやるぞ!)




千早宅前

P(さて……そろそろ、千早が出てくるはずだ。
 シミュレーションも心の準備もしてきた。
 千早がどんな反応をしようと、最後までやり遂げてみせる……!)

 ガチャッ

千早「……」

P「来た……! 千早!」

千早「え!?」

千早「ぷ、プロデューサー!? どうしてここに……!」

P「おはよう千早! 悪いけど、ちょっと上がらせてもらうぞ!」

千早「は!? な、何を言って……ちょっと、何をしてるんですか!?」

P「いやー千早の家に入るのも久しぶりだなぁ! 懐かしい気分だ!」

千早「何を考えているんですか!? 人の家に強引に上がり込むなんて、非常識です!
  信じられません! 今すぐ出て行ってください!」

P「おいおい、俺はお前の迎えに来たんだぞ。外に出るなら一緒にだろ!」

千早「頼んでいません! 迎えなど不要です! 一人で行きますから早く出てください!」

P(くっ、まだ駄目だ……! やはり勝手に上がり込むくらいじゃ足りないか!)

P「大体、プロとしてなってないぞ千早!
 午後から営業なのは分かってただろ? ならもっと早くに事務所に来ないとな!
 そうすれば俺だって、迎えに来なくても済んだんだぞ?」

千早「っ……なら、はっきり言います。
  あなたと極力顔を合わせないよう、時間を調節したんです!
  わかったら、早く出て行ってください!」

P(うぐっ……はっきり言われるのはなかなか聞いたぞ、千早! だがこの程度は想定済みだ!)

P「そうだ、上がったついでにちょっと部屋の中をチェックしちゃうか!
 さーて、ものは増えたかなーっと! 前は殺風景だったからなぁ!」

千早「なっ……いい加減にしてください!
  あなたのそういうところが、本当に不愉快です!」

P(ぐっ、こ、これはきつい……! だが、まだだ……!)

P「おっ? あれは洗濯物か? プロデューサーとしてこれは見逃せないなぁ!
 アイドルの私服は隅から隅まで、内から外までチェックしないとな!」

千早「ふ、ふざけないで! 今すぐ出ていかないと人を呼びますよ!?」

P(っ……これでもダメなのか! なら最終手段だ!
 千早の親愛度をマイナスに振り切るにはもう……これしかない!!)

1.生理用品をチェックする
2.優くんを馬鹿にする
3.抱きしめて告白する

>>48

クソスレ

3.抱きしめて告白する

P(嫌いな男に告白されるほど不快なことはないはずだ!
 しかも抱きしめられるとなると不快レベルは急上昇するはず! これしかない!)

P「ち……千早!」ガバッ!

千早「ひっ……!? 嫌ぁッ!! は、離して!!」

P「いいや離さない! 絶対にだ!」

千早「やっ、だ、誰かぁ! 誰か助け……」

P「千早、俺は……! お前のことが好きだったんだよ!」

千早「……!?」

P(ど、どうだ! 頼む、これで元に戻ってくれ……!)

千早「あ、え、えっと……ぷ、プロデューサー……」

P「! 千早……!」

千早「ぁ、あの、その……」

P(か、顔が真っ赤になっているが、もうほとんど抵抗はしていない! これは……!)

千早「ぷ、プロデューサー……わ、私は、その……。
  お、お気持ちは、と……とても、嬉しいのですが、でも、いきなり、そんな……」

P「良かった……! 元に戻ったんだな、千早!」

千早「えっ……?」

P「いやあ、安心したよ! もうどうしようかと思ってたところだった!
 良かった、本当に……!」

千早「あ、あの、プロデューサー……?」

P「あっ、さっきはいきなり変なことを言ってすまなかった! 全部忘れてくれ!」

千早「は……はい? ど、どういう、ことですか?」

P「実はかくかくしかじかで、仕方なかったんだ!
 お前やみんなを元に戻すためにはああするしかないと思ってさ!」

千早「……では、先ほどの言葉は……」

P「大丈夫だ、安心してくれ! 俺はプロデューサーで、お前はアイドルだからな!
 その関係は、これからもしっかり守っていくよ!
 仕方なかったとは言え変なことを言ってごめんな、千早!」

千早「……」

P「よし、それじゃあ万事解決ってことで、早速仕事に……って、千早?
 大丈夫か、さっきより顔が赤くなってるけど……」

千早「っ……なんでもありません! 私、先に仕事に行ってます!」

P「えっ? 先にって、一緒に行けばいいだろ? そのために車で迎えに……」

千早「結構です! 放っておいてください!」

P「そんな、どうして……。ま、まさか!
 あれでもまだ親愛度は戻らなかったっていうのか……!?
 ま、待て、待ってくれ、千早!」

千早「待ちません! もうプロデューサーなんて知りませんから!」




その後、事務所

春香「ぷ、プロデューサーさんごめんなさい!
  薬のせいとは言え、私、あんなこと言っちゃって……!」

貴音「真、申し訳ございません……。
  よもやプロデューサーの頬を張るなど、なんという恩知らずなことを……!」

美希「ハニー! ミキ、ハニーのこと大好きなの! 本当だよ!
  あんなの全部、ぜーんぶ嘘だからね!」

P「あ、あぁ大丈夫、わかってるよ」

雪歩「ぷ、プロデューサー、お茶入れました! 最高級の玉露ですぅ!」

真「うぅ、すみませんプロデューサー……!
 そうだ、ボク、肩でも揉みますね! さ、座ってください!」

やよい「わ、私も! 私も揉みますー!」

亜美「じゃあ亜美、お菓子あげる! めっちゃお気に入りのやつ!」

真美「真美はゲーム貸したげる! 超面白いやつ!」

あずさ「あ、あらあら、私はどうしましょう~……。
   それじゃあ、今度とっても素敵なカフェでご馳走を……」

響「さ、サーターアンダギー! サーターアンダギー作って持ってくるぞ!
 あ、ゴーヤチャンプルーの方がいいかな!?」

律子「本当にすみません、プロデューサー。
  それにしてもあの社長は本当に……。帰ってきたらどうしてしまおうかしら……」

伊織「わ、私は謝らないわよ! 薬を飲んだあんたに原因があるんだから!
  で、でもどうしてもって言うなら、特別に、オレンジジュースを奢ってあげても……」

P「い、いや、みんな、本当に大丈夫だから。気にしないでくれ」

小鳥「な、なんだか大変でしたけど、みんな元に戻って良かったですね、プロデューサーさん」

P「はい……。でも、さっきも言いましたけど……」

千早「……」

P「千早がやっぱり、目を合わせてくれないんです……。
 一体どうして、千早だけ元に戻らないんでしょう……」

小鳥「……それは、まぁ。私からはなんとも……」

P「くっ、どうして千早だけ! どうすればいいんだ……!」

P(もしかして、やっぱりまだ足りないってことなのか?
 仕方ない……。今度二人きりになった時、もう一度同じ方法を試してみよう)



  おしまい

付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした

でもせっかく展開考えたので選択肢1と2も書きます

1.生理用品をチェックする

P「あっ、そうだ! プロデューサーたるもの、アイドルの健康状態も把握しておかなくちゃな!」

千早「!? な、何を、そこはお手洗い……!」

P「おっ、ここここ! 汚物入れ! オープン!」

千早「ひっ……!?」

P「あ り ま し た」

千早「いッ……嫌ああああああッ!! だ、誰か、誰か来てください!! 誰か……」

P「ハムッ、ハフハフ、ハフッ!! うーん、これは健康体!w」

千早「あっ……」フラッ

P「! 千早!」ガシッ

千早「……ん……」

P「あまりのショックに気を失ったか……! 大丈夫か、千早! 千早!」

千早「あ……プロデューサー? 私……」

P「千早……!」

千早「私、何を……今のは、夢……?」

P(や……やった! 元に戻ってる! 俺はやったぞ! やったんだ!
 異常者にまで身を落とした甲斐があった……!)

千早「……ぷ、プロデューサー?」

P「あぁ、なんだ、千早!」

千早「その……口の周りに、ついているのは……」

P「え……あっ!? し、しまった! 違うんだ、これは……!」

千早「……ひッ……い、嫌! 離して!!」

P「うわっ!? ま、待て! 待ってくれ千早!」

千早「こ、来ないで! 誰か、誰か来てください! 誰かぁああ!!」

P「き、聞いてくれ! 違うんだ! 千早ぁ!!」

その後、俺は駆けつけたマンションの住人に取り押さえられ、警察まで呼ばれた。
その間に音無さんが千早に事情を話してくれたようだが、
それで俺の異常行動が無かったことになるわけではない。
話は瞬く間に事務所全体に広まった。
異常者のレッテルを貼られた俺への親愛度はもちろん全員マイナスだ。
今度社長にお願いして、マイナスをプラスにする薬がないか、探してもらおう。

2.優くんを馬鹿にする

P「あっ、そう言えば……千早って弟が居たんだよな?」

千早「え……」

P「事故で死んだらしいけど、馬鹿だよなーほんと」

千早「ッ……!!」

P「道路を渡る時には周りを見るって、基本中の基本だろ?
 その程度のこともできずに死ぬなんて、本当に間抜け……」

 パァン!!

P「……」

千早「……説明、してください」

P「千早……。もしかして、元に戻ったのか……?」

千早「……私が、何か、おかしくなっていたことは、わかります。
  きっと……今のプロデューサーの発言にも、理由があるのだということも……」

P「……」

千早「お願いです、プロデューサー……。説明してください……。
  説明していただけなければ……私は、あなたを……」

P「ああ……わかった。ちゃんと、説明するよ――」

P「――ということがあったんだ。信じられないかも知れないが、全部、事実だ」

千早「……」

P「すまなかった……。きっと、もっと他にいい方法があったと思う。なのに俺は……。
 本末転倒、だよな。千早に嫌われることが耐えられなくて、それなのに、こんなことを……」

千早「……事情は、分かりました。覚えもありますし……事実だと信じます。
  頬を叩いてしまったことは、悪かったとも思っています。
  ただ……それでも、優のことをあんなふうに言われるのは……
  私にとって、本当に……許しがたいことだったんです……」

P「……すまない。もし千早が望むのなら、俺はもう、765プロを……」

千早「ですから、プロデューサー。これからもずっと、私のプロデューサーで居てください」

P「え……?」

千早「私はまだ、完全にはあなたのことを許せていない……のだと、思います。
  頭では、理解しています。私に嫌われる必要があったことも……。
  私のことをよく知っているプロデューサーだからこそ、
  嫌われるために一番確実で、効果的な方法を取ることができたのだということも。
  理解は、しているんです。でも……感情の部分が、まだあなたを……」

P「……それじゃあ、どうして……」

千早「けれど、私は……私が今まであなたに寄せていた信頼が、
  間違いだったとは思いたくありません……。
  これまでのプロデューサーとの思い出まで……辛いものに、したくないんです」

P「……」

千早「だから……。信頼、させてください。
  もう一度……私に、あなたのことを……」

P「……それが千早の望みであれば、必ず叶えるよ」

千早「! プロデューサー……」

P「千早が俺を信頼してくれたこと……絶対に、後悔させない。
 だから……俺からも、お願いだ。もう一度俺に、プロデュースをさせてくれ」

千早「……約束、していただけますか。必ず、私の信頼を取り戻すと」

P「ああ、約束する……! 必ずだ!」

そこで初めて、少しだけだが、千早は笑ってくれた。
それから改めて、俺の頬を張ったことを謝ってくれた。
事情があったとは言え、殴られて当然のことを言ったのに……本当に、優しい子だ。
俺は……こんなに優しい彼女の心を、傷つけてしまったんだ。
その贖罪の意味も込めて、俺は千早のプロデュースを続けることにした。
千早がもう一度、俺に心からの笑顔を向けてくれるまで。
どのくらい時間がかかるかはわからないけれど、いつか必ずその日が来ると信じて。

これで終わりです
お疲れ様でした

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