「狼が出たぞー!」
村人A「狼!?」
村人B「狼だと!?」
村人C「丘の上の牧場から聞こえたぞ!」
ワーワー
ギャーギャー
村人A「羊飼い!無事か!」
村人B「狼は何処だ!」
村人C「助けに来たぞ!」
羊飼い「はい、遅い」ピッ
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村人A「おお、羊飼い、無事だったか」
村人B「羊達は無事か!?狼は!?」
羊飼い「狼はいません」
村人C「え?」
羊飼い「皆さん初動が遅すぎます、牧場まで来るのに30分以上かかっているじゃないですか」
羊飼い「そんなんじゃ駄目です、駄目駄目です、もし本当に狼が来た時に対応し切れません」
羊飼い「いいですか、私達の村は小さくてそれほど裕福ではないのですよ」
羊飼い「村の共有財産であるこの牧場の羊たちが減ると、皆さんの生活に大きな影響が出てしまうのです」
羊飼い「勿論、その影響は決してよいものではありません」
羊飼い「それが故に緊急時に対する備えは必要なのです」
羊飼い「その件については以前から村長さんに口すっぱく説明しているのですがどうも皆さんの」
羊飼い「危機意識が」
羊飼い「リスク回避が」
羊飼い「マニュアルが」
羊飼い「ぺらぺーらぺらぺーら」
村人A「……ああ、そうか、コレ、村長が言ってたアレか」
村人B「緊急訓練かぁ……」
村人C「驚かせるなよまったく……」
羊飼い「驚かせるなじゃありませんよ村人さん!」ドンッ
村人C「ひっ!」
羊飼い「もし本当に狼が出ていたらどうするのです!」
羊飼い「私が預かっている大切な羊たちが食い殺されるかもしれないんですよ!」
羊飼い「いえ、それだけで済めばまだ良いほうでしょう」
羊飼い「もし、もしも狼が村の中にまで侵入したらどうするのです」
羊飼い「いいですか、狼というのは人を騙します」
羊飼い「他人の名を騙って、家に入り込もうとしてくるのです」
羊飼い「ノックして挨拶をして家の中に入り込んで」
羊飼い「そして、そして……」
羊飼い「貴方を頭からガブリと飲み込んでしまうかもしれないのですよ!」
村人A「いや、そんな童話みたいな……」
羊飼い「童話の中に真実が含まれていないと誰が言いましたか!」ドンッ
村人C「ひっ」
羊飼い「世界の隅の隅にある小さな村に済んでいる私達に、世界の真実を見通す目が宿るはずがありません」
羊飼い「それが故に、危険に対応する専門家が必要なのです!」
羊飼い「世界に存在する危険に対して広い見聞を持つスペシャリストが!」
村人A「わかった、判ったから落ち着こうか羊飼い」
羊飼い「はぁ、はぁ、し、失礼しました」
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