【ガルパン】アズミちゃんの初恋 (33)

 戦車道チーム/ロッカールーム



アズミ「ふー、遅くなっちゃた。さっさと着替えて帰ろっと……ん?」

アズミ(……? なにこれ)

アズミ(私のロッカーのドアに──紙? 何か挟んである……)

アズミ「……メモ用紙?」

 ぴらっ……

アズミ「何か書いてある……。……げっ」


  <『アズミさん、貴方が好きです』


アズミ「げっ……。」

アズミ「……。」

アズミ「も~……ちょっとぉ……」


アズミ(ハァー……勘弁してよ……ここ最近は安心してたのに、またこーいうのかぁ……。ほんと、いったい誰……?)


アズミ「……。」ぺらっ……

   <『当方女ですが、よかったら付き合ってください。YES/NO 』


アズミ「っ……ったく……!」


 びりーっ、びりーっ!


アズミ(どこの誰かは知らないけれど、大学生にもなって──ラブレター!?)

アズミ(『女ですが』ってゆー前置きが余計にむかつく、なっさけないわねぇ……)

アズミ(こんな回りくどいこと何度も何度も……そんな無駄な事してないで、さっさっと面と向かって直接告れっつーの! きちんとお断りしてあげるからさっ)

アズミ(同性だからなんだってのよ……振られる勇気もない傷つく勇気もない、その軟弱な態度がそもそもアウトでしょ!)

アズミ(ていうか……チームメイトの誰かかもしれないって思ったら──普段の練習もなんか微妙にやりづらいんだからねっ!?)

アズミ「……ええい、こんなものっ」


 グシャグシャ……ぽいっ!


アズミ「ふん」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1507243836

*再掲です。
まとめてもらえなかったのはタイトルが悪かったのではと思い立ち、試しに。

アズミ(あーあくだらない。せめてさぁ、時間差でこの現場にいきなり現れるくらいのサプライズを──)



 ──ガチャ!!(ロッカールームのドアノブ)



アズミ「う゛ぇっ!?」

アズミ(!? !!!??)

アズミ(──ちょっ、えっ──まさかマジで!? ──やだ! いきなりやめてよ心の準備が──!)





 ──??「おーい、まだ誰か残ってる~~?」





アズミ「……あっ」

アズミ(……なぁんだ……この声は──)


ルミ「──ん、アズミ。あんたまだ残ってたんだ」


アズミ「ルミ……。」

ルミ「早く着替えてよねー、最後の鍵閉めるの私なんだから」

アズミ「う、うん……。」

アズミ(……ほ、良かった……)

アズミ(あぁ、ドキドキした……)

ルミ「……。何? 人の顔見て、ぼけっとして」

アズミ「あっ」

アズミ(っ……安心して、惚けてた……)

アズミ「い──いきなりドアを開けないでよね、ちゃんとノックしなさい!」

ルミ「はぁー? ロッカールームはいつからアズミの自室になったのよ」

アズミ「昨日からよ!」

ルミ「はいはい……」


アズミ(もー……まだ心臓がどくんどくんいってる。ビビらせないでよ……)


ルミ「あ、ちょっと誰だぁ? 床にゴミ投げ捨てたは……」

アズミ(え──)

ルミ「まったくもー」

 つかつかつか──


ルミ「綺麗にしとかないとさ、愛里寿隊長がぷんぷんしちゃうでしょ」


 かさっ……


アズミ(……!)

アズミ「ちょっ、待っ、ルミっ」

ルミ「へ?」

アズミ「……、あ、いや……」

アズミ(っ……しまった……)

アズミ(『見るな』って言ったら、この子絶対みるし──ていうかべつに、見られてもよかった? 私は知らんぷりしてれば──あぁいやいやいや駄目だ、もろに私の名前書いてあるし……ぬあーーっ……投げ捨てるんじゃなかった……!──)

ルミ「?? ん? これ、アンタの?」

アズミ「……あぁ……いや、べつに……。」

アズミ(……あーもー、最適な返事が見つからない……っ)



ルミ「?? よくわかんないけど……」

 カサカサカサ……

 ……ぺら、ぺら


ルミ「──ったく、破り捨てて……んー、何か書いてあるけど──」

アズミ「……っ」

ルミ「んっと──……。……はい? 『付き合ってください──等方女ですが──』……『アズミさん』……へ?」


アズミ「……。」

ルミ「……。ねぇ……これって」

アズミ「……っ……あーもー……うっさい、こっちみんな……」

ルミ「えっと、あんたって、たしか……えっと、アズミさんでしたっけ」

アズミ「……違うし。私じゃないし。……だからこっち見んなっての……」


ルミ「……。」

ルミ「………。」

ルミ「…………。」


ルミ「……………………っプッ!」


アズミ(ッ……)


ルミ「……あーっはっはは!! だーっはっはっは! ひゃーっ! ほんとにこういうのって、あるんだっ!」

アズミ「ぬぐぐぐ……あぁぁ、もぉぉぉぉ……」

ルミ「あーっっはっははっははっはは! さすがアズミさんはモテモテだなぁーっっはっはっは!」

アズミ「~~~~ッ」

アズミ(んもぉ~~~! 絶対しばらくネタにされる!! めんどくさいっ……)

アズミ(誰かしらないけど──いい迷惑なのよぉぉおーーー!!)


 ──────────。

 ──翌日の昼・大学の中庭


アズミ「──ていうことが昨日、あってさぁ」

メグミ「ふぅ~ん」

アズミ「メグミには先に伝えとくから。ルミのやつがなんか言っても、あんまり乗らないでね。ネタにされるとウットオシイから」

メグミ「はいはい。……けど、ふぅん……もてるのねぇ、アズミ」

アズミ「……、同性にもてても仕方ないでしょ」

メグミ「でも私なら──そんなラブレターをもらえたら、ちょっと嬉しいけど」

アズミ「えぇ……?」

メグミ「可愛いらしいじゃない。ついでに顔も可愛いこなら──ちょっぴり、お試ししてもいいかもね」

アズミ「……やだちょっと……あんたって、そっちの気があるの?」

メグミ「違うけど、まぁ、何事も経験でしょ?」

アズミ「……。」


アズミ(……『経験』ねぇ……)


メグミ「……? 何よ、急に黙り込んで」

アズミ「べつに。ただ──当人の純情を、あんたの経験の糧にされる誰かさんは──可哀想だなって」

メグミ「へ……?」


アズミ(……っ、あー……もう、余計な事をいって──)


メグミ「……。……アズミってさぁ」

アズミ「……なによ」

メグミ「いっ、~~~がいと真面目なのところあるのよね、そんなふうに胸をべっろ~んとはだけさせてるくせに」

アズミ「うっさい」


アズミ(……。)


アズミ「……とにかく……今日の宅飲み、ルミが手紙のことネタにしても、ちゃんとスルーしてよね」

メグミ「はいはい、わかったわよー」






 ──────────。

 同日・夜、メグミ宅飲み


ルミ「ねー、聞いてよメグミィ、アズミってばねぇ……すっごおくモテるんだよォ……?」

アズミ(ほらきた、案の定か、この酔っ払いは……)

メグミ「──あぁ、ラブレターのことでしょ? もう知ってるわよ」

ルミ「ふぇ?」

ルミ「なんだ、知ってるのぉ?」

メグミ「うん」

ルミ「……なんだぁ……鉄板爆笑ネタだと思ったのになぁ」

メグミ「こーら、人の恋路を笑っちゃ駄目でしょ?」


アズミ(……。)


ルミ「むー……べつに……そーいうわけじゃなくて……アズミが女から告られたって所が面白いだけで……むー」

メグミ「わかったわかった。ちょっと水をのみなさい、あんた顔真っ赤よぉ? ほら」

ルミ「……うぃー……」


 ごく、ごく、ごく……


アズミ「……ありがと、メグミ」

メグミ「どういたしまして」

ルミ「……はぁー……ちょっと、うたた寝しようかなぁ……」

メグミ「あら、寝ちゃうの?」

アズミ「寝な寝なっ。そのまま朝までねちゃいなさい」

ルミ「だめよぉまだラブレターの件、話は終わってないんらからねぇ~?」

アズミ「あーもー……記憶を消してやりたい……」

メグミ「ルミ~、ほら枕」

ルミ「んぁ、ありがとぉメグミぃ、愛してるわぁ~」

メグミ「はいはい私もよ」

ルミ「私女だけど、よかったら付き合ってくださいメグミさん……」

アズミ「っ、このぉっ……さっさと寝ろっ」


 ばふん!


ルミ「ぐえ! ……むきゅー………………ぐ~、が~……」

アズミ「ったく……」

メグミ「ふふ……まぁまぁ、ルミって処女だし、恋人もいないからさ、この手の話が楽しいのよ」

アズミ「……、……自分は違う、見たいな口ぶりね」

メグミ「何が?」

アズミ「……。あんたって、性格悪い」

メグミ「うん、ごめんね、酔っぱらうと素がでちゃって」

アズミ「もー……どいつもこいつも……」


 ……ごく、ごく、ごく


アズミ「……ふはぁ……」

メグミ「……けどさ」

アズミ「んー?」

メグミ「誰なのかしらね? 件のラブレターの送り主。やっぱ……チームのだれかだと思う?」
 
アズミ「……。」

アズミ「さぁ、ね……。」

メグミ「……。」

アズミ「……ねぇ、一応、聞いとくけど──」

メグミ「?」

アズミ「まさか……送り主、アンタじゃないでしょうね」

メグミ「……、はぁ?」

アズミ「どーなのよ」

メグミ「んー……じゃあ──私だったら、どうする?」


アズミ(……ったく……この子は、すぐこーやって意味ありげな態度をするんだから……)

アズミ(……ふぅ)


アズミ「アンタだったら──そーね、くだらないイタズラすんなって、砲撃のマトにしてあげる」

メグミ「……。ふぅん」

メグミ「……。」

メグミ「……結構、残酷なこと言うよね、アズミ」

アズミ「……は?」

グミ「そりゃ、うっとうしい事してるかもしれないけど──私は自分の気持ちを正直に記した。それを一方的に『イタズラ』って、決めつけないでほしいな……」

アズミ「へ……。あ? え?」

アズミ「……。」

アズミ(──!?)

アズミ「……は!? ちょ……冗談……よね?」



メグミ「……。」



メグミ「……まぁ、冗談だけど」

アズミ「っ、あんたねぇーー!!!」

メグミ「あははは、ごめんごめん」

アズミ「んもぉ~……っ」


メグミ「じゃあ──隊長だったら、どうする?」

アズミ「え──」



アズミ「……。」

アズミ「…………。」



 ~~愛里寿『アズミ……、……。……好き……。』~~

アズミ(~~~~~~~っ!!)



アズミ「やばい……OKしちゃうかも」

メグミ「あははは。」

アズミ「あー、でもなぁ……家元が義理のお母さんかぁ……」

メグミ「いきなり結婚の話になるの……?」

アズミ「女ならそこはやっぱり考えるでしょ」

メグミ「まぁそうかもね、あはは……は……」

メグミ「……。……ふー」



アズミ(……?)



アズミ「……メグミ?」

アズミ(何よ、急に真顔になって──)

メグミ「──あのさ、前から、一個だけ聞いてみたかったんだけど……」

アズミ「え……何?」

メグミ「答えたくなければ、別にいいけど……」

アズミ「だから、何なのよ」


メグミ「……。」

メグミ「アズミってさ……。」

アズミ「うん」

メグミ「ちょっとだけ──ビアンの血、入ってない?」



アズミ(……!)



アズミ「はぁー……? いきなり何いってんの……?」

アズミ(……。)


メグミ「もしかして、そうなんじゃないかなって」

アズミ「なんでそう思ったのかが素直に疑問」

メグミ「……。私ってさ、けっこう──人間観察、好きなのよね」

アズミ「……悪いけど、趣味『人間観察』です、ってゆーやつ、私はあんまし好きじゃない」

メグミ「だよねー。だから、普通はあんまり人には言わないんだけどさ」

アズミ「……。」

メグミ「アズミって、ボディコンぶった服装してる割には、根はすっごくマジメなのよね。そういうのって……なんか、歪んでる感じ」

アズミ「アァ……?」

メグミ「それと、ラブレターの事──ふつーだったら、もっと面白おかしく騒がない? だけどアズミは──なんだか、とっても真剣に受け止めてるよね。それも──なんだか、違和感」

アズミ「……、感覚的な話ばっかりで、全然説明になってないんだけど?」

メグミ「遣ろうと思えば論理だてて説明できるけど──でも、自分のこと冷静に分析されるのって、すっごくイラつかない? だから、私の直観、ってことに、しときたいんだよね。」

アズミ「……あんたって澄ました顔してそんな事ばっかり考えてるの? なんかショックなんだけど」

メグミ「ごめんね。でも私、そーいう性格なのよ。……アズミには、白状してもいいかなって」

アズミ「ごめん、そういうなんか思わせぶりな言い回しも止めてくれない?ちょっと、むかつく。」

メグミ「ん……ごめん」

アズミ「……っ」


アズミ(……急に素直に謝るんじゃないわよ)

メグミ「ま……怒られて当たり前なんだけどね……」

アズミ「……?」

メグミ「仲間と一緒に酒飲んで酔っぱらって──他人には言えないような事を語り合うっていうの? そーいうシチュエーション、憧れるのよね」

アズミ「はぁ……?」

メグミ「だから、私としては、アズミがそれくらいの秘密を抱えてくれてるほうが──嬉しいなぁ。……うふ」

アズミ「……。……あんたさ……実は結構酔ってるでしょ」

メグミ「んふ……ばれた?」

アズミ「ばれた? じゃないわよ……」


メグミ(ったく……)


アズミ「じゃーさ、仮に私がレズだとしてさ、──あんたは?」

メグミ「私?」

アズミ「アンタは何か、それに見合う秘密……あんの?」

メグミ「ん……私はほら──、趣味『人間観察です』って言っちゃうような、ちょっとアレな子なんだよって……そんなとこかな?」

アズミ「そんなの、たいした秘密でもなんでもないじゃないの」

メグミ「……ほんと? ほんとにそう思う?」

アズミ「ほんとにって……何よ」

メグミ「大したことじゃないって──今まで通り、一緒にいてくれる?」

アズミ「え……」

メグミ「私さ、自分のこーいう性格、あんまり好きじゃないのよね。ほんとは……ルミみたいに、裏表みたいにあっけらかんとしてる人間になりたかった。……って、こーいう事ぐじゃぐじゃ言っちゃう自分も、嫌」

アズミ「……。」

メグミ「私は、もしもアズミがビアンだとしてもそんなこと全然気にしないわ。あんたの人格を信じてる。だからお返しにあんたも──私にこーいうメンドクサイ嫌な所があるって分かっても、アズミが私を好きでいてくれるといいなって。……あー、えへへ、酔ってるなぁ……」

アズミ「……。」


アズミ(……。)

アズミ(……くそ……)

アズミ(こーいう雰囲気──悪く無いなぁーとか……思ってんじゃないわよ、私……っ)


アズミ(……っ、)

アズミ(──ああもぉっ、なんか、白状してみたくなっちゃうじゃない……!! 受け入れてくれるなら嬉しいなって──思っちゃたじゃないのよっ!!)

アズミ(──メグミのアホっ)



アズミ「……違う」

メグミ「?」

アズミ「私は──ビアンじゃないわ。違う」

メグミ「……。……そっか」

アズミ「違うはずだと──と、自分ではそう思ってる。」

メグミ「……?」

アズミ「こーやって胸おっぴろげてるのだって──女アピールして男どもの注目を引くのが快感だからやってるんだし……。私はイイ女なんだぞーって、なんか自尊心が満たされる」

メグミ「ビッチ……」

アズミ「お黙り。ただ──」

メグミ「ただ……?」

アズミ「たまーにね、ほんと、たまーにだけど……感じちゃう時があって」

メグミ「何を?」

アズミ「つまり、その──」

メグミ「なになに?」


アズミ(……っ、こんな事、誰か白状しちゃうなんて──)


アズミ「──あ私これ、女の子もいけるかなーって……ね」


メグミ「……え、え……あー……」

アズミ「……。」


メグミ「そっかぁ……」

メグミ「レズじゃなくて……バイなんだ……」


アズミ(……っ)

アズミ「わからないよ、わからないけど……私、女でも普通にイケるなぁって……」

メグミ「マジかぁ……」

アズミ「……。」


アズミ(……他人にこんなこれを打ち明けたのは、初めてね……)

アズミ(そっか……こんな風な気持ちになるのね……)

アズミ(メグミの表情から、目が離せない──この子はどんな顔をするだろうどんな反応をするだろう──不安と、やっぱりやめとくんだたっていう後悔と──受け入れてもらえるかなって、かすかな期待……)


メグミ「それってさ、冗談──じゃないのよね?」

アズミ「……冗談あつかいするの?」

メグミ「ごめん、今の発言は無し。けど……おー……ほんとにこうなるとは……。」


アズミ(……。)


アズミ「引いた?」

メグミ「え……。……ううん、いや……べつに……」

アズミ「どうだかね」

メグミ「ほんとよ。引いてないんかいない。ていうか──そうね、むしろ興味深いわ」

アズミ「はぁ? 興味深い……?」

メグミ「ええ。人間観察好きとしては──すっごく興味がわいてくる。アズミの事」

アズミ「……うわ、なんか私の方が引いちゃった。あんたねぇ……友達がLGBTのカミングアウトしてんのに……」

メグミ「ごめんごめんごめん! でも……ね、ね、同性にときめくって──どんな感じなの?」

アズミ「アンタねぇっ、あやまりゃなんでも許されると思ってんでしょっ」

メグミ「そんなことないって」

アズミ「ったくもー……ったく……、……」


アズミ(……あーっ、もぅ、もぅっ……少し喜んじゃってるなぁ、私。だってこいつt-)


アズミ「んもう、……べつに、普通よ」

メグミ「だからー、その『普通』っていうのが分からないの」


アズミ(変わらずこうして、私にこうやって接してくれてるんだもの──)

アズミ(ええい、くやしいじゃないっ……)


アズミ「──あんただって男にドキっとしたことはあるでしょ?」

メグミ「そりゃ、あるけど」

アズミ「なら分かるでしょ? その気持ちと一緒だってば」

メグミ「ふむ……じゃ、道端で可愛い女の子とすれ違ったら──ドキドキしたりするの?」

アズミ「目で追っちゃうことぐらいはあるかもしれないけど──別に、誰も彼もにドキドキしたりはしないわよ」

メグミ「そうなの?」

アズミ「好みってもんがあるでしょうが」

メグミ「……あ、なるほど、そういう……。ふむふむ……」

アズミ「難しく考えることないんだてば。単純な話でしょ」

メグミ「言われてみればそうなんだけど……──あ、じゃあさ」

アズミ「?」

メグミ「私にドキッとしたことは? ある? 私て、アズミの好み」

アズミ「……あのさぁ……アンタ、自分からそゆこと聞く?」

メグミ「え……変?」

アズミ「考えてみなさいよ、あんた、私が男だったとしたら、そーいうこと聞く?」

メグミ「アズミが男だったら? ……ん~……」


メグミ「………………。」


メグミ「……あー、……聞かないかも……なんか、そうゆうこと聞いちゃうのって……『小悪魔』って感じ」

アズミ「でしょ? あんたはそーいうキャラじゃないもん」

メグミ「うーん……言われてみれば理解はできるけど、なんかややこしいわねぇ」


アズミ(……ややこしい、か)


アズミ「結構さ、そういう感覚的なズレが、一番寂しいかったりするのよね」

メグミ「え……?」

アズミ「なんていうのかなぁ……『恋愛』って本能でしょ? ノーみその根っこの部分にある感情。そーいう部分がさ、周りと共通認識できってないっていうのって……すっごい疎外感」

メグミ「……。……そっか、そうよ。……そのアンタの気持ちは、なんかわかる」

アズミ「ありがと。……ま、しかたないことなんだけどねー……」


メグミ「……。」

アズミ「……。」


アズミ(……とはいえ、メグミの言う通りなのかもね──)

アズミ(悪くないなぁ、こーいう雰囲気……。なんか、分かり合えてるっていうか──)

アズミ(……。)

アズミ(……メグミ……。)


アズミ「……あのさ?」

メグミ「ん……?」


アズミ(──だめよ、アズミ……)


アズミ「私からも聞きたいんだけど」

メグミ「ん、何?」


アズミ(──やめなさいアズミ……)

アズミ(そんなダサい真似──アズミ……!)


アズミ「──試しに私と付き合ってみないって、私が言ったら──アンタ、どうする?」

メグミ「……え……」

アズミ「何事も経験なんでしょ? 一度くらい、いいんじゃない? 女と──付き合ってみるのも」


アズミ(……っあぁぁぁっ……馬鹿……だっさ……)

メグミ「……。……ごめん、悪いけど──お断りだわ」

アズミ(……っ)

アズミ「……、あ、そう」


アズミ(……。)

アズミ(なんで……?)


アズミ「……何事も経験だとか、お試しがどうのって、いってたくせに……どうして? ……やっぱ、私のこと、気持ち悪い?」

メグミ「……馬鹿っ、誰が気持ちわるいだなんていった? ……もしも──あんたが、完全なノーマルだったら──お試しで付き合ってもいいかなって、思う」

アズミ「……?」

メグミ「アズミは、バイかもしれないんでしょ。だったら──お試しだなんて、そんなのアズミに失礼だもの」


アズミ(……メグミ……。)


メグミ「私、そーいう事は出来ないわ」



アズミ(……。)

アズミ(………………。)

アズミ(……ッ)


アズミ「……アンタってさぁ」

メグミ「何よ」

アズミ「処女でしょ」

メグミ「……。ほんと何よ急に。……意味わかんないんだけど」

アズミ「ルミのことあーだーこーだ言っときながらさぁ……あんたこそ、倫理感で恋愛考えてるじゃん」

メグミ「あぁ?」

アズミ「そーいうのも大切だけどさぁ……ま、とにかくいろいろ、まだまだよねぇ~」

メグミ「んぁっ……なに? え? なに? なんか……すごくムカつくんだけど、あんたこそ純情を糧にされるのはドーたらコーたらとか言ってたじゃない!」

アズミ「はいはい……人間観察がまだまだ甘いわねぇ」

メグミ「……っ、なっ」

アズミ「あーもー疲れてきちゃった。寝よ寝よ」

メグミ「ちょっとっ」

アズミ「お休みお休みーーーーー」

メグミ「こらぁっ」



アズミ(──……。)

アズミ(あーもー……ヤバいどうしよ……)

アズミ(私の体……すっごくメグミと──付き合ってみたくなっちゃってる……)

アズミ(……うぁー……こんなに軽い女だったの? 私って……)



 ──────。








///////数日後・夕暮れロッカールム

アズミ(……うー……)

アズミ「ムラムラするぅ……」

アズミ「……うー……」


アズミ(メグミに打ち明けて──メグミに受け止めてもらえて──だから、もっともっと……って、気持ちが欲望しちゃってる……)

アズミ(なんつー尻軽。しっかりしなさいよ前頭葉……中学生じゃないんだから……)

アズミ(……。)

アズミ(ちくしょー、他には誰もいないし──メグミのロッカー、覗いてやろうかしら……)

アズミ(……やめなさい、それじゃ変態じゃない……)

アズミ(……うー、でもメグミの臭いが嗅ぎたい……)

アズミ(……ぐぅ、こんな衝動、今まで感じた事なかったのに……)



アズミ(……。)


アズミ「付き合えってくれって──マジで迫ったら──」

アズミ「……マナー違反……なのかなぁ、やっぱり……」


アズミ(……。)

アズミ(せっかくメグミが私のバイを受け入れてくれてたんだから──、私からそれを壊すような事は……しちゃいけないのかなぁ)

アズミ(……うー……)


アズミ「はぁー……さっさと着替えて帰ろ」



 ──ガチャ(ロッカーのドアを開ける音)


 …………ひらり…………



アズミ「……ん?」

 ……ひら、ひら……

アズミ「……。はー…またか」


アズミ(隙間に押し込んであったのね、開けるまで気付かなかった……)


アズミ「誰だか知らないけど──あんたもさぁ、懲りないわよねぇ……」


 ──かさ……


 <メモ用紙『──付き合ってください。女ですが。アズミさんへ YES/NO』


アズミ「……。」

アズミ「ビアンを打ち明ける勇気はなくて、──でも、自分の気持ちを殺しきることもできなくて──」

アズミ「もしかすると、悩んでるのかしらねぇ、あんたもさ……」

アズミ「……。」



アズミ(……。)

アズミ(……もー、世話が焼けるっ……)



 ……ごそごそごそ……びりっ(アズミがキャンパスノートを破る音)


アズミ「……えっと……」

 ──かきかきかき



  『どこかの誰かさんへ。
   
   そろそろちゃんと面と向かって告ってきなさい。
   そうしたら、ちゃんと一人の女として貴方に向き合って、貴方にきちんと返事をしてあげる。
 
   こんな事を続けても、貴方の青春がもったいないわよ。
   私の携帯の番号をメモしておくから、いつでも電話して。合う場所をつたえるから。

     090-XXXX-XXXX

   ps.たぶんあんたも多分戦車乗りでしょ? だったら根性見せなさい。そのほうがきっとあんたのためだから。
 
  』

アズミ「……あ、そうだ。」

 ──かきかきかき

  『
   関係ない奴はこのメモ用紙を見てもスルーすること!
   面白可笑しくはやしたてないこと!
   人の恋路をバカにするやつはウマに蹴られてしぬわよ。
   中隊長:アズミ
  』



アズミ「……これでよし。」

アズミ(ロッカーのドアにこのメモ用紙を挟んどいてやるから──ちゃんと手にとりなさいよ……)








 ────────────。





///////////////翌日・昼休み・ロッカールーム

アズミ(挟んでおいたメモ用紙は……まだ残ってるわね)








 ────────────。

///////////////同日・戦車道練習前・ロッカール―ム

 ワイワイガヤガヤ──


ルミ「今日は久々に隊長との一騎打ち練習だねぇ」

メグミ「えぇ、腕でがなるわね」

アズミ「……。」


アズミ(メモ用紙……まだ残ってた。ということはやっぱり、この後のタイミングで……?)


アズミ(……それはさておき……。)


メグミ「──アズミ? あんたもさっさと着替えなさいよ」

アズミ「え、ええ」


アズミ(……。)

アズミ(……はぁー、メグミのお尻、ムラムラする……)






////////////////同日・練習後・ロッカール―ム

アズミ「──あ」


アズミ(メモ用紙……無くなってる……)

アズミ(……。)

アズミ(──、電話、ちゃんと、かけてきなさいよ)








//////////////////同日・夜

 ──ヴィ゛ーーーッ、ヴィーーーッ……



アズミ(──!)

アズミ(携帯の、着信……)

ごそごそ……


アズミ「……非通知だわ」

アズミ(メモ子ちゃん、かな……?)


 ──ヴィ゛ーーーッ、ヴィーーーッツ……


アズミ(……、さすがにちょっぴり、ドキドキするわね)


 ──ぴっ……。


アズミ「……もしもし」


 ──『……。』


アズミ「メモ子ちゃん?」


 ──『……っ……』


アズミ(かすかだけど──今の声の音は、やっぱり女性のものね)


アズミ「聞こえてる?──一時間後に、大学の裏門のところにきて。待ってるから」

 ──『……っ……』

アズミ「いい? OK?」

 ──……ぷつっ……

アズミ「あ」

 ──ツー、ツー、ツー……

アズミ「ふー……これで現れなかったら──覚えてなさいよ。メモ用紙のこと、容赦なく話のタネにしてやるんだから──」


 ──────。



 ──────。

アズミ(伝えた時間まで、あと5分、か……。)

アズミ(ちゃんと来るのかしらね)

アズミ(ビビッてこないってのなら──それはそれで、いいけど。……さすがにメモ用紙挟むのもやめるでしょ)

アズミ(……。)

アズミ(現れなさいよ、私が、ここまでしてあげてるんだからね)



アズミ「だけどさ……どうしてこんなことしてあげてるんだろうねぇ、私は……。」

アズミ(……。)



 ──ジャリっ……



アズミ(──!)



??「あ、──あのぅ……」



アズミ「……あ……」



アズミ(……やっぱり──戦車道の子だったのね)

アズミ(今年入学してきた一年生で、少し、大人し目な子──でも、操縦の腕は結構見れるものがある……。)


 「……先輩……」


アズミ(……君がそういう子だとは、全然気づかなかったわ──)

アズミ「……、偉いわね。よく、逃げずにちゃんと来た」


 「……っ……」

 「ほ、──本当に申し訳ありませんっ!」


アズミ「……。」

 
 「こんな、ストーカーみたいなことを、ずっと、……ごめんなさい!」

 「もう二度としません! だから──皆には黙っていてください! 私が……その……」


アズミ「……レズだって、ことを?」

 
 「……っ、……はい……。」


アズミ「そう……冗談のイタズラかとも思ってたけど……本気だったんだ」


 「……。すみません、本当にすみません、……気持ち、悪いですよね……」


アズミ(……っ)

アズミ(……必死に頭を下げて──一向に顔をあげようともしない君……)

アズミ(『どうしてこんなことしてあげてるんだろうねぇ、私は』……って)

アズミ(……あなたの情けない姿をみて……やっと理由がわかったわよ……)


アズミ「顔……上げて」

 「……でも……」

アズミ「いいから」

 「は……はい……」


 す……。


 「……。」


アズミ(……。)

アズミ(怯えて、強張って……ナイフで腹を刺されてるみたい……)

アズミ(……。)

アズミ(貴方はただ人を好きになっただけなのよ。ねぇ、どうして──そんな顔をしなきゃいけないの……?)

アズミ(……。)

アズミ「あのね、人のロッカー弄って──やることが陰湿よ」

 「……っ、すみません、すみません……でも、中を見たりは、してないです……」

アズミ「ふぅん。じゃあ、メモを挟んだだけ? 中をあさったりとかはしてない?」

 「はい、嘘じゃありません……本当です、そんなこと……しないです……」

アズミ「……。そのメモにしたって……ダサいし、しつこいし、何がしたいのか全然わかんないわ」

 「っ……ごめん……なさい……」

アズミ「あんたも戦車乗りならさ、好きなら好きって、もっと堂々と……堂々と……。……。……ハァ……。」

 「……、……?」


アズミ(……。誰かを好きになって──精一杯青春を楽しむ権利は誰にだってあるはずなのに……どうして私達には、それが無いのよ……)


アズミ「……不公平だわ」

 「? は、はい……すみま……せん……?」

アズミ「……、あのね、いい加減そんな顔はやめてちょうだい。イライラする」

 「は、はい……。」

アズミ「……。逃げなかった貴方の勇気に免じて……一つだけ、私の秘密を教えてあげる。」

 「秘密……?」


アズミ(……。すぅ、はぁ……)


アズミ「私ね──バイだから」

 「……え?」

アズミ「バイよ、バイセクシュアル、貴方ならその言葉──知ってるでしょ」

 「え、あ……え……!?」


アズミ「そういうわけだからさ……」

アズミ「……ね、私はあんたのこと、気持ち悪いと思ったりはしないわよ……」


 「……!」

アズミ「だから──余計な心配をしてないで……さぁ、告白なさい」


 「先輩……!」


アズミ「ちゃんと、一人の女として、返事をしてあげる! ……もちろん、YESって答えるかNOって答えるかは、知らないけどさ」


 「……っ、っはいっ! はい……!!」

 「します……ちゃんと告白──します!!」


アズミ「……ん! そうそう、そういう顔をしてなきゃ。さぁ──私のを振り向かせるくらいの熱い告白──あんたにできるかしらね……!?」


 「……っ!!」

 「はい! やります……やってみせますっ!! アズミ先輩──!」












  ──────────────────。





 ──数日後、昼・学食 


ルミ「ねー……メグミィ……」

メグミ「んー?」

ルミ「あんた聞いた? アズミのやつってば──」


メグミ「──後輩の子と、付き合ってるって?」


ルミ「そうそれ。……。……ハァ……」

メグミ「どうしてルミがへこむのよ? ……まさか、ルミって……実はアズミの事が好きだったの?」

ルミ「いやそうじゃなくてぇ……。」

メグミ「じゃあ、アズミがレズだったことがショックだった?」

ルミ「違うわよっ。私さ……初めて手紙を見た時、アズミに向かって大爆笑したの。それって……アズミとその子に、酷い事してたんだなぁって……」

メグミ「……あぁ、なるほど……。」

ルミ「アズミは、気にしてないっていってくれるけど……」

メグミ「まぁしかたないわよ。その時は何も知らなかった名から」

ルミ「……そう、そこなのよ。」

メグミ「うん……?」

ルミ「私は何も知らなかったの。そこもちょっと、もやっとしててさぁ……」

メグミ「どういうこと?」

ルミ「だってさ……言ってくれりゃあいいじゃん! レズだかバイだか知らないけど──私はぜんぜん、気にしないわよ!」

メグミ「あー……そういうことね」

ルミ「なんだかさ……信頼されてなかったのかなぁって」

メグミ「でもねぇ、デリケートな問題だから……簡単には言えないんじゃないかなぁ」

ルミ「うん……それはわかる。だからさ、。教えてほしかったっていうのは私の我満なんだけど──それはわかるんだけど、でも……はぁー……。」

メグミ「……。ルミって、素直ねぇ」

ルミ「なによぉ、バカにしてる?」

メグミ「ぜんぜん。……だけど、そういえばねー、実は私もね、少し、もやっとしたことがあって」

ルミ「? なに……?」

ルミ「うん……それはわかる。だからさ、。教えてほしかったっていうのは私の我満なんだけど──それはわかるんだけど、でも……はぁー……。」

メグミ「……。ルミって、素直ねぇ」

ルミ「なによぉ、バカにしてる?」

メグミ「ぜんぜん。……だけど、そういえばねー、実は私もね、少し、もやっとしたことがあって」

ルミ「? 何……?」

メグミ「あのね……。……マジメぶった事言わずにね、、思い切って──お試ししてみればよかったかなって……。少し、くやしい気がしてる」

ルミ「?? お試しって?」

メグミ「せっかく、あの子といろんな話ができたのに──あ~あ、つまんない事しちゃったかなぁ」

ルミ「?? えと……ごめん、何の話しかよくわかんないんだけど……?」



メグミ「……。」

メグミ「……はぁ~」

メグミ「……。」



ルミ「……ちょっと……ひとりで遠い目してないで、説明してよぉ」


メグミ「……。」


メグミ「ねぇ、ルミ」

ルミ「?」

メグミ「私達も──付き合ってみよっか」

ルミ「へ……。……はぁっ!?」

ルミ「な……えぇ……? ねぇ待ってよォ……あんたまで私に隠し事してたのぉ?」


メグミ「へ……?」


メグミ「……。……ルミ―のそーいうところは、けっこうマジに好きかもね」

ルミ「ちょっとぉ、もぉやだぁ……、とりあえずさぁ、頭整理させてよぉ……もうわけわかんないわよぉ」

メグミ「ね……来週二人で、江の島にいきましょうよ、江の島、連れてってよ」

ルミ「えぇぇぇぇ……? ちょっとぉ、どうしたらいいのよぉ……」

メグミ「あははは……」







【ガルパン】アズミちゃんの初恋

~完~

ありがとうございました。

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