唯「てんくうのはなよめ!」 (367)

じょしょう!


唯「じゃじゃーん!!」


律「あ!唯、それ3DSじゃん!」


唯「えへへ~、昨日ゲームセンターで憂が取ってくれましたぁ」


紬「ピンク色でかわいいわね♪」


律「よく譲ってくれたな」


唯「うん、だって二つ取ってたから」


梓「えぇ!?」

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澪「憂ちゃんってクレーンゲームとか得意なのか?」


唯「ううん、なんかね、‘あ、お姉ちゃん今取れるよ’って、
見てたらわかったんだって」


梓(憂って一体何者なの……)


律「で、ソフトは何か買ったのか?」


唯「それがまだなんだよねぇ~、りっちゃんって3DS持ってるの?」


律「うーん、持ってたんだけど、やらなくなって聡にあげちゃったな」


唯「ええ!りっちゃん太っ腹!」

澪「意外と聡に甘いんだよな律は」


律「い、良いだろ別に!」


紬「やっぱり優しいのね、りっちゃんって♪」


律「やめろお!茶化すなあ!」

紬(え、本気だったのに……)


梓「でもソフトがないと宝の持ち腐れですね」


唯「えー?このままでも可愛いけどなー」


澪「いや、それゲーム機の意味ないから……」

律「明日、もうやらなくなったソフト持ってきてやろうか?」


唯「え?悪いよそんなの!」


律「良いんだって、私はどうせもうやらないし、
せっかく憂ちゃんがプレゼントしてくれたんだろ?何かやってみろよ」


唯「わあ、ありがとう、りっちゃん!」


紬「やっぱり優しいわね、りっちゃんは♪」


梓(でも、唯先輩に携帯ゲーム機なんて与えたらますます練習しなくなっちゃうんじゃ……)

その夜、律の部屋


律「あれー?おっかしいなー」ゴソゴソ


聡「ねえちゃんご飯出来たって……あれ、なにしてんの?」


律「いや、もうやらなくなった3DSのソフトさ、唯にあげようと思ったんだけど、
どこに片付けたのか見付からないんだよなー」


聡「え?ねえちゃん中古屋に売ってたじゃん」


律「ん?そうだっけ?」

聡「俺にくれたソフトもあるけど、興味ないって言ったのは確か売ってたよ」


律「むむ……言われてみたらそんな気がしてきた……」


聡「俺も結構人に貸しちゃったりして今あんまりソフトないんだよな……」



律「まあ聡の好きなジャンルは唯向きじゃないだろうけどな……って、あ、一個裸のソフト見っけ!」


聡「お、良かったじゃん!」


律「ケースも何もないんじゃ仕方ないと思って売らなかったやつだなー多分」


聡「ってねえちゃんそのソフト……」


律「え?」


聡「唯さんって人のことよく知らないけど、そのゲームで大丈夫なのか?」


律「…………うーーーーん……」

次の日、部室


律「ってな訳でごめん、唯、これしかなかった!!!」


唯「そんなそんな、謝ることなんてないよぉ~」


律「いやーでも、いらないの持ってきてやるって言った手前さ……」


唯「ちゃんと持ってきてくれたじゃん~」


澪「うーん、でもこれ……」


梓「ドラクエですね」


紬「どらくえ?」

澪「ムギ、ドラクエ知らないのか?」


紬「私、ゲームってやったことがなかったから……」


唯「私、ドラクエってやったことないかも」


澪「私もFF派だからないな」


梓(ああ、それっぽい……)


紬「どんな物なのかしら?」


律「まあRPGってジャンルでな、簡単に言うと敵を倒しながら冒険するゲームだよ」

紬「まあ!なんだか楽しそうね!」

唯「りっちゃんはやったの?」


律「いや、実はやってないんだよな~、っていうか、どうして持ってるのかもよくわからん」


澪「確か福袋買ったらゲームがたくさん入ってたとか前に言ってなかったっけ」


律「あー、じゃあその中にあったのかもな」


唯「でもせっかくりっちゃんがくれたゲームだし、私やってみようかな」


紬「私も見てみたいわ、唯ちゃん!」


律「でもさ、持ってきておいて何だけど、これドラクエの5だぞ?最初の方のやってなくて楽しめるのか?」


澪「大丈夫なんじゃないか?RPGはよっぽどのことがなきゃどこからやっても楽しめるように出来てるし」


唯「おお!澪ちゃん詳しいね!」


澪「ま、まあドラクエはやったことないけどな……」

唯「あずにゃんはドラクエとかわかったりする?」


梓「お父さんがやってるのを見たことがあるような気がしますけど……私はないですね」


唯「うーん、みんなドラクエはよく知らないんだねえ」


紬「でも、それはそれで楽しいかも♪」


唯「そお?」


紬「だってみんな知らないゲームなら、おんなじように盛り上がったりできると思うの!」


梓「ていうかみんなでやる前提なんですね」

澪「RPGは、言ってみたら物語だから、みんなでやる楽しみもあるかもしれないな」


唯「じゃあ、早速やってみる?」


梓「ここでですか!?」


紬「あ、じゃあ私お茶とお菓子もっと用意するわね!」


梓「れ、練習は……」


律「大丈夫だよ、梓。唯の事だから、操作が難しい~、とか言ってすぐ飽きるだろうからさ」


梓「むぅ~……」

澪「まあ、少しだけなら良いんじゃないか?」


梓「澪先輩まで……」


紬「梓ちゃん、お茶、冷めちゃうわよ♪」


梓「も、もう、本当にちょっとだけなんですからね!すぐに練習しますから!!!」


唯「それじゃあ、大変長らくお待たせ致しました!やっとやっと、てんくうのはなよめの始まりです!」


律「誰に言ってんだよ……」


紬「わくわく……!」

ぷろろーぐ!


唯「すごい!なんかお城が出てきた!」


澪「これはタイトル画面だな、この曲くらいはみんな聞いたことがあるんじゃないか?」


梓「はい、CMとかでも流れてますよね」


律「まあ、ドラクエと言えば、ってやつだな」


紬「あ、ドラゴンクエストⅤってタイトルが浮かんできたわ、なんだか映画みたいね」


唯「ねえりっちゃん、どうしたらいいの?」


律「この、冒険の書をつくるっていうのから始めるんじゃないか?なあ澪?」


澪「そうだな」

梓「あ、なんか名前を決めるみたいですよ、唯先輩」


唯「えぇ、名前?決まってるんじゃないんだ」


紬「唯ちゃんどうする?」


唯「うーん、せっかくだし唯にしようかなあ」


澪「でも、これ主人公は男なんじゃないのか?」


唯「え?そうなの?」


澪「いや、なんとなくだけど……」

梓「サブタイトルが《天空の花嫁》だから、主人公は女の人だと思ってました……」


唯「うん、私も……」


律「ソフトのパッケージにはタイトルしか載ってなかったし、箱も説明書もないしな」


澪「でも、もし性別に合わない名前をつけちゃったら感情移入出来なくなるしな……」


紬「RPGゲームって難しいのね……」


五人「う~~~~~~~~ん……」

五分後


唯「じゃあもうホウカゴでいいや」


澪「ホウカゴ!?」


唯「うん、だってみんなでやってるし、男の子でも女の子でもどっちでも行けそうだし」


梓「そもそも人名ですらない気がするんですけど……」


律「ま、まあまだ始まってすらない所で躓いてる訳にもいかないからな、良いんじゃないのか?」


紬「私は、私達!って感じがして良いと思うな、ホウカゴ!」


唯「うん!じゃあ、ホウカゴでけってーい!」ピッ


澪・梓(決まってしまった……)

コッチッコッチッコッチッコッチッ


紬「あら?これ秒針の音ね」


律「なんかオッサンがいるな」


唯「ええ?まさかこのオジサンが主人公……?」


梓「最初に出てきましたし、その可能性大ですね……」


唯「えぇ~?なんだかやる気がなくなってきたよ……」


澪「ま、まあとにかく続けてみようよ」


紬「そ、そうね!」

大臣『パパス王…お気持ちはわかりますが……すこし落ち着いて お座りになってはいかがですかな?』


律「あ、このオッサンは主人公じゃないみたいだぞ、良かったな唯」


澪「っていうか王様か」


梓「王様って顔じゃないような気がしますね」


唯「ていうかパパスって……なんだかパッとしない名前だねぇ」


梓「気の抜けた感じがしますね」


サンチョ『パパスさま!パパスさま!お産まれになりました!』


パパス『そ、そうか!』

唯「あははは!サンチョだって!」


律「もっと気の抜けた名前が出てきたな……」


澪「なんだかこの感じだと、ホウカゴって名前もそんなに悪くないような気がしてくるよ……」


紬「ねえ、産まれたって、もしかして赤ちゃんかしら?」


梓「そうですね、なんかソワソワしてると思ったらそういうことだったんですね」


紬「もしかして、産まれた子が主人公なんじゃないかしら?」


唯「おお!ムギちゃん鋭い!」


律「さすがの推理力だな、ムギ!」


紬「も、もう、唯ちゃんに、りっちゃんったら……」

パパス『よくやったな!おうおう、このように元気に泣いて……。さっそくだが、この子に名前をつけないといけないな』


唯「あれ?でもパパスが名前つけるみたいだよ?」


律「本当だ、じゃあ主人公は一体いつになったら出てくるんだろうな?」


パパス『よし、うかんだぞ!トンヌラというのはどうだろうかっ!?』


梓「……」


澪「……」

唯「ね、ねえ、この世界って、変な名前の人しかいないのかな……?」


マーサ『まあ、ステキな名前!いさましくてかしこそうで……』


梓「なんか奥さんもこんなこと言ってますよ」


唯「うーん、私たちがおかしいのかなぁ?でも、お母さんの名前は普通だよね?」


マーサ『でもね、わたしも考えていたのです。ホウカゴというのはどうかしら?』


澪「あ、でもやっぱりこの赤ちゃんが主人公みたいだぞ」


律「ムギの予想が当たったな」


紬「やったっ♪」


唯「パパスのばか!私達のホウカゴにトンヌラなんて変な名前つけようとするなんて!!」


澪「ホウカゴも充分変だと思うけどな……」

パパス『ホウカゴか…… どうもパッとしない名だな』


唯「な、なんですと!?じぶんだってへんななまえのくせに!!」


紬「ま、まあまあ唯ちゃん落ち着いて」


唯「うぅ、まさかこんな変な名前で、しかもトンヌラなんて名前を付けちゃう人にパッとしないなんて言われると思わなかったよ……」


澪(個人的には唯のネーミングセンスと近いような気もするんだけどな)


梓「もしかして、主人公のお父さんだからパパスなんですかね」


唯「お?それなら良い名前のような気がしてきたよぉ~」


澪(やっぱり……)

パパス『神にさずかった われらの息子よ!今日からおまえの名はホウカゴだ!』


律「まあなんだかんだで話が始まりそうだな」


紬「これからどうなっていくのかしら……」


マーサ『まあ、あなたったら……うっ……ごほんごほん……』


パパス『おい!どうした?大丈夫か!?』


唯「えぇ、なんだかお母さん体調悪そうだよ……?」


澪「こ、子供産んだ後だからじゃないか……?」


梓(ドキドキ)


オギャア、オギャア……

紬「赤ちゃんの鳴き声、暗転、テーマソングにタイトル……」


律「凄いな、本当に映画みたいだ」


梓「な、なんだか惹き込まれますね、ゲームなのに……」


唯「このタイトルのやつさっき見たし飛ばしていいよねー?」ポチッ


澪「ああっ!なんてことするんだ!唯!」


梓「唯先輩!!!」


唯「えぇっ!?」


澪「せっかく物語に浸ってたのに……」


梓「遺憾ですよ!」

たびのはじまり!

唯「ご、ごめんね、澪ちゃんあずにゃん……」


律(澪はともかく、梓のやつもなんだかんだめちゃくちゃ楽しんでるじゃん)


紬「ねえ唯ちゃん、早く続きが見たいわ♪」


唯「そ、そうだねムギちゃん」


梓「あれ?今度はなんか違う所にいますね」


紬「パパスさんがいるわ、ベッドで寝てるのは誰なのかしら」


律「唯、とりあえず何かボタン押してみろよ」


唯「ほいっ」ポチッ

パパス『おうホウカゴ!目がさめたようだな。なに?夢を見た?赤ん坊のときの夢で、どこかのお城みたいだったと?わっはっは!ねぼけているな。眠気ざましに外へでもいって 風にあたってきたらどうだ』


唯「あ、この子がホウカゴなんだね」


紬「パパスさんの言ってることがなんだか変ね」


澪「この、夢っていうのは私達がさっき見ていたプロローグのことだよな」


梓「唯先輩、パパスさんもああ言ってますし外に行ってみましょうよ」


律「ここからは操作出来るみたいだしな」


唯「あ、本当だ、あはは、ホウカゴが歩いてる、かわいい~、パパスと全然似てないねぇ~」

澪「あ、唯ちょっと待って」


唯「澪ちゃんどうしたの?」


澪「ちょっとさ、この樽とかタンスとかの前でボタンを押してみてくれないか?」


唯「?よくわからないけど、やってみるね」


なんと!やくそうを見つけた!


唯「なんと!やくそうを見つけた!」


梓「読み上げなくても良いんですよ唯先輩」


澪「やっぱりな」

紬「澪ちゃんどういうこと?」


澪「RPGだから、今後敵と戦ったり、ちょっとした謎解きをしたりすると思うんだけど、そういう時にアイテムが必要になる場面が度々来るんだよ」


唯「ふむふむ」


澪「お店で買ったりとか、色々入手する方法はあるんだけど、こうしてタンスや樽に入ってたり、道に落ちてたりすることもあるんだ」


紬「とりあえずこれからそういう物を見つけたら今みたいに調べれば良いってことね」


澪「そうだな」


唯「りょうかいしました!」

律「って、うわぁ、タンスは普通に開けてるけど、樽は思いっきり壊してるな」


唯「名前、りっちゃんにしといた方が良かったかなあ」


律「どういうことかな?」


梓「子供なのにやることが過激ですね」


唯「これ、怒られないのかなあ?パパスに……」


梓「近くで息子が樽を壊して回ってるのにノータッチですね」


澪(しかしこれだけRPG初心者が集まると全然話が進まないな)

唯「よし、樽も全部壊したし、外にしゅっぱつだよ!」


梓「ここはどこなんでしょうかね」


紬「うーん、パパスさんの言うとおりなら、お城ではないはずよね」


唯「おお、外に出たよ!」


律「これは船か?」


梓「船ですね」


紬「まあ、もう冒険は始まっていたのね……!」

唯「とりあえずどうしたらいいのかなあ?」


澪「まずは色んな人に話し掛けて回ると良いよ、タンスとかと同じように、近くでボタンを押せば話せると思う。あ、調べられそうなものがあったらちゃんと調べるんだぞ」


唯「ほーい」


『おっ坊や!おなかがすいたのかな?おじさんの料理はうまいだろ、坊やのお父さんとどっちが上手だろうね』


唯「パパスって料理とかするんだ」


梓「うーんあんまり想像出来ないですね」


唯「あんまり美味しくなさそうだよね」


律(ひでぇ言われようだな、パパス……)

『坊やのお父さんは何かを探して世界中を旅してるんだってな』


澪「やっぱりもう冒険は始まってるんだな」


紬「そういえば、お母さんはどうしたのかしら?」


律「家で待ってるんじゃないのか?戦いもあるだろうし、女の人は無理だろ」


紬「パパスさんは夢だって言ってたけど、なんだか王妃様って感じだったものね、きっと戦ったり出来ないわ」

唯「うわあ!宝箱いっぱい!!!」


律「おぉ~、取ろうぜ唯!」


唯「おっ宝おっ宝~って、あれ?開かない……」


梓「これ見よがしに置いてあるのに変ですね」


律「さっき澪が言ってた謎解きじゃないのか?」


紬「それとも、誰かが鍵を持っているとか?」


澪「このタイミングいきなり謎解きはないだろうし、ムギが言うように誰かが持ってるのかもな」

唯「えー?でも他の場所は全部調べたし、ここにいるオジサンたち以外もみんな話しかけたよー?」


紬「とりあえず外に出てみない?」


梓「そうですね、調べ忘れた所があるのかもしれません」


唯「うう、目の前にお宝があるのにぃ~……」


律「あ、どこかに着いたみたいだな」

澪「港だな、物語が進むんだ」


律「パパスを呼んでこいって言ってるぜ」


唯「えぇ!?でもお宝は!?」


澪「うーん」


唯「わかる?澪ちゃん」


澪「もしかしたら、鍵はもっと後で手に入るのかもしれない」


唯「後って?」


澪「それはわからないけど、RPGは特殊な鍵が必要な場面が所々で出てくるんだよ、あの宝箱も、鍵が手に入ってからまた来いってことなのかも」

唯「う~ん、でも諦めきれないよぉ……」


律「まあ、RPG経験者の澪がそう言うんなら、とりあえず信じてみようぜ」


紬「そうね、早く続きが見たいわ、唯ちゃん」


唯「うぅ~……後ろ髪を引かれる思いだよぉ……」


パパス『そうか、港に着いたか!村にもどるのは、ほぼ2年ぶりだ……ホウカゴはまだ小さかったから 村のことをおぼえていまい。ではいくかっ!ホウカゴ。忘れ物をしないように じゅんびするんだぞ』

唯「村ってなんだろね?」


澪「戻るって言ってるし、最初に出てきた所なんじゃないのか?」


唯「ええー?でも、あそこなんだかお城っぽかったよ?」


澪「私もそこは気になるけど……」


紬「パパスさん、村に‘戻る’って言ったわ、故郷なんだとしたら、‘帰る’って言うんじゃないかしら」


梓「なるほど」

律「まあ、進めればだんだんわかってくるっしょ!唯、ガンガンいこうぜー」


唯「うん、そうだねりっちゃん!とりあえずパパス追いかけるよー」


梓「唯先輩、お父さんなんだから名前呼び捨てやめましょうよ!」


唯「えー?でもパパスじゃん」


梓「お父さんです!」


唯「だからパパスじゃん」


梓「お父さん!」


律「否定的だった梓の方が完全にのめり込んでるな」


唯「あれ、なんかまた船にオジサンが来たね」


紬「小さい子も二人いるわ」

紬「ルドマンさんっていうのね、さっき船長さんが言ってた、この船のオーナーさんじゃないかしら」


唯「おおー、ぷっくらしてるからてっきり立派になったサンチョかと思ったよー」


…………



唯「このフローラって子かわいいね」


澪「なんだか緊張してるみたいだな、船は初めてなのかな?」


律「パパス手を貸してあげてんじゃん、見た目の割に良いところあるのな」


唯「りっちゃんみたいだね」


律「どういう意味だ?」

デボラ『おじさん、ジャマよ!』


紬「あら、この子は元気いっぱいね」


澪「これ、元気とはなんか違うと思うけどな」


紬「そうかしら?」


唯「デボラだって、ゴジラと戦ってそうなお名前だね」


律「フローラは良い感じだったんだけどなあ」


澪「この子もルドマンの娘なのか」


律「姉妹で正反対だなー」


唯「姉妹なのにこんなに違うものなんだねえ」


律「いやそれお前が言うか?」


唯「え?なんで?」


律「うん、いい、ごめん、続けろ」


唯「ほい!」

梓「港に出ましたね」


律「なんか寂れてんな~」


パパス『ホウカゴ、父さんはこの人と話があるので、そのへんで遊んでいなさい。あまり遠くへ行かないようにな』


唯「こう言ってます澪先生」


澪「良いんじゃないか?ほら、樽もあるぞ」


唯「よし!ばこんばこん!」

紬「この物置小屋にも入ってみましょう」


唯「これおうちじゃないのかな?」


紬「え?けど、狭いし汚いわ」


律「おばちゃんがいるな」


梓「ベッドもありますね」


澪「家だな」


唯「家だね」


紬「…………」

澪「あ、唯、タンスと本棚も調べるんだぞ」


唯「えぇ?人の家なのに?」


梓「そんな律先輩みたいなことを澪先輩が……」


律「オイ」


澪「ち、ちがうよ、RPGはそれでいいの!」


唯「捕まったりしない……?」


澪「しない!」


唯「ほんとに……?」


澪「しーなーい!」

…………


紬「唯ちゃん、パパスさんに話し掛けるのこれで三回目よ」


唯「パパス長話だよねえ」


澪「そうじゃないだろ、何かやり残したことがあるから物語が進まないんだよ」


律「でも大体話し掛けたし、調べ物もしたし、他に何かやることあるのか?」


梓「唯先輩、ひょっとしたらここから外に出れるんじゃないですか?」


唯「えー?でもパパスが遠くに行くなって言ってたよ?」


澪「でも、他に思い付かないしな、とりあえず出てみよう」


唯「うぅ、なんか怖い気がするよ……」

紬「あら、BGMが変わったわ」


律「外だな」


澪「唯、気を付けろ、多分……」


唯「え!?なんか画面が変わった!?」


律「スライムたちがあらわれただってさ」


唯「なんか可愛くない!?可愛いよね!?ね!?ね!?」


澪「戦闘だな、唯、とりあえずたたかうを押して」


唯「えー!?」


梓「どうしたんですか」


唯「こんな可愛い子達に攻撃出来ない……」

澪「ちょっとわかるけど、戦わないと話が進まないぞ」


唯「うう、これが戦争なんだね……」


律「って、こいつら結構強いな」


唯「この、HPっていうのが0になっちゃうとゲームオーバーなんだよね?」


紬「一匹ならなんとかなりそうだけど、三匹だと辛いわね」


澪「まずいな、セーブしてないから負けたらまたプロローグからだぞ」


梓「振り出しですか……」


唯「それは勘弁だよ……」

紬「あら?パパスさんが来てくれたわよ?」


唯「ええ!?怒られる!?」


澪「いや、戦ってくれるみたいだ!」


梓「え!?パパスHP410ですよ!?」


唯「つよ!!!」

律「パパスつよ!!!」


パパス のこうげき! スライムに 74のダメージ!

五人「つよ!!!!」

唯「お、おとうさん……」


梓(あ、はじめておとうさんって呼んだ)


パパス『大丈夫か?ホウカゴ』


唯「うん、うん!助かったよおとうさん!」


律「一気に態度が変わったな」


澪「躾がされた犬みたいになってるな」


パパスはホイミをとなえた!


唯「おお!?なんかされたよあずにゃん!」


梓「ホイミ……なんでしょうね?」

澪「多分回復をする魔法か何かじゃないかな」


唯「え?回復ってやくそうじゃないの?」


澪「やくそうでももちろん回復出来るけど、こういうゲームは大抵魔法でも代用出来るんだ。っていうか、途中からそっちがメインになる」


唯「へぇ~」


澪「まあまた戦闘になれば回復したかどうかわかるよ」


律「お、言った矢先に戦闘だな」

プリズニャン があらわれた!
マッドプラント があらわれた!
ホイミスライム があらわれた!


梓「回復はしてますけど、なんだかたくさん出てきましたよ」


紬「さっきの子達よりみんな強そうだわ」


律「でもパパスなら余裕だろ、唯、はやく……唯「なにこれ!!!!かわいい!かわいい!!!!!!」


澪「ちょ、唯?」


唯「プリズニャン!かわいいよプリズニャン!!」

律「ええ?か、かわいいか?これ」


梓「唯先輩、いいから早く戦って下さいよ」


唯「アズニャンはかわいいと思わないの!?」


梓「思いません。あとプリズニャンに被せて私までカタカナで呼ばないで下さい」


唯「ばれた?」

唯「うう、アズニャンと同じくらいかわいいこの子とも戦わないといけないなんて……」


梓(私と同じくらい!?この囚人服みたいな模様にラリった目をして舌を垂れ流した猫が!?)ガビーン


…………


律「まあパパスが余裕で倒してくれたな」


唯「うう、アズニャン……じゃなかったプリズニャン……」


梓「わざとですよね今の絶対にわざとですね唯先輩」

澪「二回攻撃までするとは恐れ入ったな」


紬「レベルが上がったって表示されたけど、なんなのかしら?」


澪「強くなった、とだけ考えておけばいいよ、戦えば戦うほどレベルが上がって、強い敵と戦えるようになるんだ」


律「パパスのレベルは27か~、強い訳だよな」


唯「さすがっすお父さん!」


梓「あ、村に着きましたよ」

唯「なんかおとうさん人気者じゃない?」


律「ああ、めちゃくちゃ歓迎されてるな」


紬「でも、やっぱりここはプロローグに出てきた場所ではないみたいだわ」


澪「そうだな」


唯「あれ?でもサンチョがいるよ?」


梓「本当ですね」


律「うーん?やっぱりただの夢だったのかな?知ってる人が出てきても、全く知らない場所にいる夢ってたまに見るじゃん?」


紬「けど、これは物語なんだし、そういうあまり意味のないことするかしら」


律「そうだよなあ……」

ビアンカ『おじさま おかえりなさい』


紬「あら、かわいい女の子が来たわ」


唯「誰だろう?」


律「ビアンカか、この子はまともな名前だな……」


ビアンカ『わたしは8さいだから あなたより2つもおねえさんなのよ。ねっ!ご本をよんであげようか?ちょっとまってね』


紬「うふふ、なんだか頑張ってお姉さんしている感じがかわいいわね」


澪「ホウカゴはまだ6歳だったんだな」

『ビアンカ、そろそろ宿に戻りますよ』


ビアンカ『は~い、ママ!』


唯「あ、ビアンカちゃん帰っちゃった」


律「おっまた自由に動き回れるみたいだぞ!村を探検しようぜ~!」


唯「そだね!行こう行こう~!」

パパス『さて……と 父さんはちょっと出かけるが、いい子にしてるんだよ』


唯「あれ、お父さんどっか行っちゃった」


澪「父親だし、仕事に行ったんじゃないか?」


紬「でも、旅から戻ってきたばかりで大変ね」


唯「実は旅行だったとか?」


梓「一気に冒険っぽくなくなりましたね」

サンチョ『ホウカゴ坊ちゃん、今日はおつかれでしょう。お休みになりますか?』


唯「ホウカゴは休ませてくれるみたい」


澪「なるほど、しばらくはここが宿代わりになる訳だな」


紬「宿って?」


澪「さっきみたいに、戦うとHPを消費するだろ?魔法やアイテムでも回復は出来るけど、宿に泊まると一気に全回復するんだ」


唯「よし!じゃあやすんでみようー!」

梓「ほんとだ、このMPっていうのが回復してますね」


律「これは魔法の数値だっけ?」


澪「そうだな、HPと違って、回復するアイテムに貴重な物が多いはずだから残量を常に気にした方がいい」


唯「うーんなんだか難しいねえ」


澪「でも基本はそれだけだよ」


紬「パパスさんが戻って来てるわよ」


唯「ほんとだ!おとうさーん」

パパス『さて……と 父さんはちょっと出かけるが、いい子にしてるんだよ』


梓「またどっか行っちゃいましたね」


澪「忙しいんだろ、唯、私達も村を見学しよう」


唯「へい!」


…………

唯「んーと、ゴールドに装備に、アイテムに……」


律「これで最低限の基本は大丈夫なのか?澪」


澪「そうだな、後はゴールドと経験者を稼ぎたいんだけど……」


唯「門番のおじさんが通してくれないんだよね」


梓「まあ、モンスターがいる世界ですし、さすがに6歳児を外には出さないですよ」


紬「そういえばさっき話した人、洞窟に行って誰かが帰ってこないなんて言ってなかったかしら」


律「あぁ、確か薬がどうとか……」

梓「洞窟って、村の左上の方にあった穴のことでしょうか?」


唯「そういえばそんなのあったね!行ってみよう!」

…………


唯「澪ちゃん、そろそろ先に進んでもいい……?」

澪「レベル4か、うん、ホイミも覚えたし、ボスがいたとしても平気だろ、多分」


梓「ボスってそんなに強いんですか?」

澪「それはわからないけど、私達みんなドラクエは初心者なんだし、用心するにこしたことはないだろ?」


紬「もう少しレベルを上げた方が安心な気もするけど、時間かかっちゃうし、仕方がないわね」


唯「あれ?なんかおじさんが寝てる」


梓「上に乗ってるのは、い、岩じゃないですか?」

紬「大変!助けてあげないと!」


律「よし!行くぞ唯!……って、なにしてんだよ、おい」


唯「え?おじさんの周りをぐるぐるしてるんだよ?」


梓「そんなことしてないで早く助けてあげましょうよ!」


唯「ういっす、せんぱい~」


…………

パパス『起きてきたか、ホウカゴ!薬が手に入ったので、おかみさんとビアンカは今日帰ってしまうらしい。しかし、女ふたりではなにかとあぶない。ふたりをアルカパまでおくっていこうと思うのだが お前もついてくるか?』


はい
いいえ


律「なるほど、こうして事件を解決していくことで、話がどんどん進んで行くんだな」


紬「だんだん要領が掴めてきたわね」

梓「ここは当然‘はい’です!唯先輩!」


ガチャ


さわ子「あなたたちどうしたの?今日は随分遅くまでいるじゃないの」


五人「」ビクウッ


唯「さ、さわちゃん、ごきげんよう……」


さわ子「なあに?何か様子が変ねあなた達」

梓「そ、そそそそそんなことないですよ」


澪「さ、さーてみんな!今日はもう遅いし、そろそろ帰るぞ!」


紬「そ、そうね!」


律「帰って勉強だー!!」


さわ子「やぁね白々しい」


唯「さ、さわちゃんも早く帰らないと!」

律「そうですわよ?ほら、お化粧が浮いて来ちゃいますわよ?」


さわ子「むわーだそんな歳じゃないわー!!!!!」


五人「ひいいいーーー!!」


ゆいたちは にげだした!


さわ子「ちょっと待てぇ!」


しかし まわりこまれてしまった!


澪「ひぃっ!」

さわ子「ちゃんとティーセット片付けてから帰りなさい?そんなに急がなくてもいいから」


五人「はーい……」


…………


律「ふぃ~、びっくりしたなぁ~」


澪「さすがのさわ子先生も、学校でゲームなんてしてるの見たらきっと怒るだろうからな」

紬「うふふ、でも、なんだか楽しいな、こういうのも」


唯「気が付いたらもう暗くなってるね~」


律「ゲームやってると時間が過ぎるの早いんだよなぁ~」


唯「でも、みんなのお陰でだいぶやり方がわかったよ~、これならおうちで一人でも出来……」


澪「ええっ!?」


梓「一人でやるつもりなんですか!?」


唯「え、え?」


紬「そんな、ずるいわ唯ちゃん!」

唯「で、でもでも、続きが気になるし、今日もこれからやろうかなって……」


梓「ダメです!」


唯「え!?ダ、ダメ!?」ガビーン


梓「みんな揃ってる時にやらないとダメです!」


唯「で、でもでもでも、明日明後日お休みだし、部活もないよね?そうすると月曜日までお預けになっちゃうよ……」

律「あー、じゃあ明日明後日唯の家に集まってみんなでやるか?」


唯「私は別に構わないy梓「ダメです!」


唯「またダメ!?」


梓「唯先輩のことだから、明日まで待ちきれずに今夜勝手にやっちゃいます!」


澪「確かにそうだな」


唯「み、澪ちゃんまで!?」

紬「それに、憂ちゃんがいるのよね……」


唯「え?憂?なんで?」


律「そうだなー、唯のことだからどうせどっかで躓いて……」


唯『え~ん、わかんないよぉ憂ぃぃ~』


憂『もう、見せてみて?お姉ちゃん』


唯『おぉ~、なるほどなるほど!』


憂『そしてこれは~』サクサク


…………

唯『ごめ~んみんな!憂に全クリしてもらっちゃった♪』


憂『ごめんなさ~い♪』


四人「あり得る……」

唯の家


憂「お姉ちゃん遅いなぁ~、みんなと喫茶店でも行ってるのかな?寂しいよぉ~」


憂「はあ、先にご飯食べちゃおっかなぁ……」


ブーッブーッ


憂「あ、メール……お姉ちゃんだっ♪」


『今日から三日間、けいおん部のみんなとうちで冒険の旅に出ます!』


憂「へ?」

憂「…………」


憂「……えっと、泊まりにくるってことで良いんだよね……?」


憂「…………って、大変!皆さんの分のご飯も用意しなきゃ!」パタパタパタッ


…………


憂「えぇっお姉ちゃんにゲームのソフトをプレゼントしてくれたんですか!?そんな、悪いですよ……」

律「あー、そんな気を遣わなくても大丈夫だぞ?もういらないやつだったし……それに結局みんなで楽しんでるしな」


澪「こちらこそ、突然みんなで週末お世話になることになってごめんな、もしダメならうちに泊まれないかも聞いてみるけど……」


憂「そんな!うちのことは全く心配しないで下さい!私も皆さんと一緒にいれて楽しいですから!」


紬「憂ちゃんのお料理は相変わらずとても美味しいわね、毎日食べられる唯ちゃんが羨ましいわ♪」


唯「良かったら毎晩食べに来なよぉ~、大歓迎だよぉ~」

憂「はい!私なんかのお料理で良いなら!」


律「おぉ?じゃあお言葉に甘えて……」


澪「お前じゃないっ」ポカッ


律「うわぁ!20のダメージ!」


澪「はあ?」


唯「た、たいへんだぁ!りっちゃんが黄色くなっちゃってる!」


律「う、うぅ、ゆ、唯……」


唯「待っててねりっちゃん!今やくそうを……はいっ(千切りキャベツ)」


律「キャベツうめぇー!!」

紬「わぁー、りっちゃん回復ー♪」


律「澪の一撃はおおきづち並みだな……」


澪「だ、だれがおおきづちだ!だれが!」


梓「もう!皆さん食事中なんだから静かにして下さい!!」


唯「あ、プリズニャンもあらわれたー!」


梓「な、なにをぉー!」


憂(な、なんか小学校の教室みたい……)


キャッキャッ

おばけたいじ!


唯「ふいー、良いお湯でしたー」


梓「さて、これでみんな準備オッケーですね」


憂「なにやるの?お姉ちゃんからは冒険の旅ってメールが来てたけど……」


律「はは、実はさ、さっき言ってたゲームなんだ」


憂「ゲーム?」


澪「律が唯にあげたゲームをさ、ちょっと部室でやり始めたら、結局みんな夢中になっちゃって……」


梓「それで、それならこの週末使ってみんなでやろうって」


憂「ああ、そういうことだったんだ!」

唯「憂も一緒にやろうよぉ~」


憂「うん!お邪魔じゃなければ!」


紬「邪魔な訳ないわ♪」


憂「わーいっ♪」


ういが なかまに くわわった!

憂「じゃあ私、お夜食とお茶、持って来ます」


梓「あ、私も手伝うよ憂」


憂「ありがとーっ!」


紬(みんなとお泊まりしてゲーム……!あぁっ!楽しい~~~~~~~っ♪)


…………


唯「という訳でアルパカだね」


梓「アルカパです」


唯「どっちでも良いじゃん」


梓「ダメです」

澪「サンタローズと比べると随分栄えた町だな」


律「唯、操作出来るようになったら武器防具屋覗いてみようぜ」


唯「そうだねりっちゃん!」


憂「へぇ~、なんだか楽しそう!」


紬「ごめんなさいね、私達先に部室でやってたから、憂ちゃんは途中からになっちゃって」


憂「そんな、気にしないで下さい!」


澪「まあまだまだ序盤だからな、ここからでもきっと物語にはついていけるよ」

唯「ビアンカのお父さん、大丈夫かなあ?」


澪「重い病気じゃなければ良いんだけど……」


律「それに比べて奥さんは強そうだな」


梓「ほんとですね、ビアンカと二人でサンタローズに行ったくらいですし、本当に強いのかも」


憂「あ、動けるみたいだよお姉ちゃん」


唯「ほい!」


ビアンカ『お散歩にいくの?わたしもつきあうわ』


唯「あ、ビアンカが後ろからついてくる。なんかかわいい~」

澪「ビアンカにもステータスが設定されてるな。ということは、今後一緒に戦うことになるのかな?」


紬「女の子なのに?」


梓「まあ律先輩みたいな女の人もいますからね」


律「おい、中野」


澪「きっと魔法で戦って行くタイプなんじゃないかな。RPGは、戦士タイプとか、武闘家タイプとか、魔法使いとか、それぞれ得意分野があるものなんだよ」

唯「じゃあ、女の子はきっとみんな魔法使いさんなのかもね」


梓「そうですね」


律「でも、女の子で武闘家とかいても面白そうだけどなー」


梓「面白いですけど、さすがにないんじゃないですか?」


唯「いたらかっこいいけどねー」

憂「あれ?お姉ちゃん、猫ちゃんがいるよ?」


唯「え、どこどこ?」


紬「ほら、唯ちゃん、この橋を渡ったところ!」


唯「ほんとだ!ねーこさんやぁ~」


律「ん?この猫いじめられてるんじゃないのか?」


澪「本当だ!」


唯「こ、このワルガキどもめー!」


憂「お、お姉ちゃん口悪いよ!」


梓「でも許せない!猫をいじめるなんて!」

ビアンカ『やめなさいよ!かわいそうでしょう。その子をわたしなさい!』


唯「おお!よく言ったよビアンカ!」


『レヌール城のお化けを退治したら、このネコをあげるよ!』


澪「お、おばおばおばおばお化け……?」


紬「み、澪ちゃん、大丈夫よ、みんないるから」


律「お化け退治かー、きっとモンスターだな、冒険らしくなってきたじゃん」


梓「ですね!」

唯「でも、レヌール城ってどこにあるんだろう?」


憂「町の外に出ないといけないんじゃないかな?」


唯「ふぅーむ、でもこの街にも門番さんがいるんだよねぇ~」


梓「そうだ!お父さんに事情を話すんじゃないですか?」


唯「おお!アズニャン冴えてる!」


梓「お父さん強いですし、きっと一緒に行ってくれますよ!あとカタカナやめてください」


唯「じゃあアズニャンの言うとおり、ビアンカのおうちに帰還しまーす!」


紬「はーい♪」


梓「聞いてないし……」

唯「お父さーん、あのねー」


パパス「待たせたなホウカゴ。ダンカンの病気はどうやらただのカゼらしい。さて そろそろサンタローズの村に帰ることにしよう!」


唯「ええっ!?」


憂「お父さん、協力してくれないのかな?」


律「えー?どうなるんだ?これ」


『パパスさん、パパスさん、このまま帰るなんてとんでもない!せめて今日だけでも泊まっていってくださいな!』


唯「あ、おかみさんナイス!」

パパス『それではお言葉にあまえることにするかっ』


梓「良かったですね……」


憂「お約束破っちゃうところだったね……」


パパス『さてと……。明日は早く出るぞ。村の皆が待っているからな。今日はもう眠ることにしよう。おやすみ、ホウカゴ』


律「って寝るのはえーな」


紬「お風呂入らないのかしら」


唯「ご飯も食べてないよ……」

憂「明日は早く出るって言ってたけど、お化け退治大丈夫なのかな?」


律「ビアンカと何か話せるかと思ったら強制的に寝かしつけられたしな」



『ホウカゴ起きて……ホウカゴ……』


澪「ひぃっ!?」


紬「み、澪ちゃん大丈夫?」


ビアンカ『起きたわね、ホウカゴ。じゃあ はやくいきましょう。どこへって?もちろん、レヌール城へよ。お化け退治をして あの子ネコを助けなくちゃ。レヌール城は この町からずっと北にあるそうだわ。さあ いきましょう』


憂「ほ、ほらビアンカちゃんですよ、大丈夫です、澪さん」


澪「うぅ……」

律「このお化け退治の間は、澪は役に立たないかもしれないな……」


梓「そう考えると憂の加入は心強いですね」


憂「え?そ、そうかな」


唯「あ、門番のおじさん寝ちゃってる」


紬「こんなところで寝て大丈夫なのかしら?」


律「そういえば昼間にビアンカが夜になると寝ちゃうって言ってたけど、あれはこの伏線だったんだな」


梓「そうですね」

憂「お姉ちゃん、ここからは‘はなす’を積極的に使ってみようよ、色々とヒントが隠されてるのかも」


唯「そうだね!お話しできるの楽しいしね!」


梓「レヌール城は北西って言ってましたね」


唯「それじゃあ行ってみますか」


紬「あ、唯ちゃん待って!」


唯「ふえ?」

律「レベルか?」


紬「うん、きっとレヌール城にはボスさんがいると思うの、でも、まだホウカゴちゃんもビアンカちゃんもレベルが低いから、しばらくアルカパの近くでレベルを上げた方が良いんじゃないかしら」


梓「うーん、でも、一晩しか猶予がないんですよね?」


唯「明日は早く出るってお父さん言ってたもんね」


紬「そうよね、それは確かに問題だわ……」


律「おーい、澪?」


澪「ひっ!な、なんだよ!?」


律「やっぱり澪はレヌール城の間は戦闘不能と……」

梓「って唯先輩、どうしてビアンカの家に戻るんですか?」


唯「へ?そういえばタンス調べてなかったと思って……」


憂「ねえお姉ちゃん、戻ったらひょっとして……」


ビアンカ『もどってきちゃったわね。あ~あ、眠いわ…… 今夜はもう やめにしましょう。また明日ね おやすみ、ホウカゴ』


唯「あ、あれ!?」


梓「明日って……」


紬「明日はサンタローズに帰っちゃうのよね?」

律「お、おいどうすんだよ唯?」


唯「そ、そう言われましても~」


パパス『ハクション、ハクション! うう 頭がいたい……どうやらカゼをうつされてしまったらしいぞ。なさけないことだ』


紬「あら?」


憂「お父さん風邪みたいですね」


唯「じゃあ、出発は中止?」


紬「パパスさんには申し訳ないけど……ホッとしたわ」


唯「でもどうしたらいいんだろう?」


律「ビアンカを探してみよう、何かわかるんじゃないか?」


憂「そうですね」

ビアンカ『ねえ、今夜もいくでしょ。今のうちにねておく?』


律「あ、ビンゴだな」


唯「りっちゃん凄い!」


律「へへーんもっと誉めろー!」

唯「律さまー!律神さまー!」


梓「なにしてんすか」


ビアンカ『じゃあ おやすみ。夜、むかえに行くからね……』


紬(私だけかしら……なんだかビアンカちゃんの言葉がどことなくいやらしく感じるのって……)

唯「…………」


律「おい、唯」


紬「唯ちゃん?」


憂「お姉ちゃんどうしたの?」


唯「うぅレベル上げ飽きた……」


律「あーあ、やっぱりこうなったか……」


梓「レベルはともかくとして、装備は揃えられるくらいお金は貯めたいですよ、唯先輩、頑張りましょう!」


唯「もうレヌール城行っても良いんじゃない……?」


梓「ダメです!ビアンカもケガしちゃいますよ!」

唯「それは嫌だけどぉ~」


紬「あ、じゃあ、こんなのはどうかしら!10分ずつ交代でレベル上げをするの!」


律「お!良いな!」


梓「そういえばここまでずっと唯先輩がやってましたもんね、私もやってみたいです!」


唯「おぉー、みんな、助かるよぉ~」


……レベル上げ中……


律「それにしてもパパスの風邪治んねーな」


唯「もう何日目?」


梓「20日は経ってるんじゃないですか?」

律「もうそれ風邪じゃなくて本気でヤバイやつだろ、ゲームだから仕方ないとは言ってもさ」


梓「ホウカゴは毎晩隣で寝てるのにうつされないんですね」


唯「強いからじゃない?」


憂「お父さんはもっと強いよ、お姉ちゃん」


唯「あ、そっか」


梓「でも、だいぶレベルも装備も良くなりましたね!」


紬「これならお化け退治に行っても安心かもしれないわ」


梓「どれくらいやれば良いのかわからなくて、ちょっと上げすぎたかもしれないですね」


律「もうこの辺のモンスターは瞬殺だもんなー」


【現時点】
ホウカゴ
Lv13
ビアンカ
Lv14

唯「おぉ、ここがレヌール城か……」


梓「結構雰囲気ありますね……」


憂「音楽もなんかドキドキするね」


律「おーい澪、レヌール城だぞー」


澪「や、やだぁ!やだあーー!!」


紬「物語追えなくなっちゃうわよ、澪ちゃん」


澪「うぅ……」

唯「??扉が開かないよ?」


憂「うーん、他のところから入るんじゃない?お姉ちゃん」


律「唯、裏に回れそうだぞ、行ってみようぜ」


梓「視点切替もして下さいね」


唯「ほーい、あ、ほんとだ、ここから登れそうだよ!」


律「へぇー、しかしよく出来てるよなー」

澪「お、おい唯……早くクリアしちゃおうよ……」


律「わっ!!!!」


澪「うわあああああああ!?って律!!」


律「クスクスクス」


澪「こ、この……!」


唯憂梓紬「わっ!?」


澪「わああっ!み、みんなまで……?」

紬「ご、ごめんなさい澪ちゃん」


梓「裏口に入れそうな所があったので、入ってみたんですけど……」


憂「入った瞬間閉じ込められちゃって……」


唯「驚いたねぇー」


澪(レ、レヌールやだ、レヌール怖いぃ……)

…………


唯「あれ!?ビアンカが誘拐された!」


澪「ひいっ!?」


梓「あ、あの透明なのって、ひょっとして幽霊……?」


澪「ひえぇぇっ」


憂「や、宿屋さんに泊まったのに、いつのまにか外に出てるよ……?」


澪「うぅぅ……」


紬「あのおじいさん……人間じゃないわね」


澪「きいいいいーー!!」ボカボカボカッ


律「わー!!どうしてそこで私を叩くんだーー!」

…………


唯「よわっちかったね、おやぶんゴースト……」


憂「ちょっと強くし過ぎちゃったのかも……」


紬「でも、これで王様も王妃様も安らかに眠れるのね」


律「やれやれ、猫を助ける為に色々苦労させられたよなー」


ビアンカ『あら?なにかしら?きれいな宝石ね。きっとお礼よ。ねえ、持ってゆきましょう』

ビアンカは金色に光るオーブをひろってホウカゴに手わたした。

ホウカゴはゴールドオーブを手に入れた!

律「お!なんかレアっぽいアイテムだな!」


憂「なくさないように気を付けようね、お姉ちゃん」


梓「でも、これでビアンカとの冒険も終わっちゃうんですね……」


紬「うん……ちょっと寂しいかも……」


唯「大丈夫だよ!きっとまた一緒に冒険出来るよ!」


憂「お姉ちゃん……」


律「そうだな、それにサンタローズとアルカパなんてすぐ近くだし、またいつでも会えるさ」


唯「よし!じゃあアルカパに戻るよー!」


レヌール城のお化けをホウカゴが退治したというウワサはその夜のうちにひろまった。
そして夜が明けた……

唯「おお、大ニュースの予感!」


憂「でも、こっそり夜に抜け出してた意味がなくなっちゃったね」


梓「あはは、そうかも」


唯「あ!猫さんくれるって!良かったねー」


『おまえら、けっこう勇気あるよな!』


唯「ふんす!」


憂「えへへ、誉められたねお姉ちゃん」


律「勇気の欠片もないやつがここに一人いるけどな……」


澪「な、なんだよぉ……」

ビアンカ『そうだわ!このネコさんに名前をつけてあげなきゃ!』


唯「おお!そうだねビアンカ!」


律「どうする?唯」


唯「あずにゃんで良いんじゃないかな?猫さんだし」


梓「却下です!」


唯「えぇ~……」


紬「あら?でも唯ちゃん、ビアンカちゃんが名前決めるみたいよ?」


唯「え?あ、ほんとだ」

ビアンカ『ボロンゴってどうかしら?』


唯「えぇぇ……」


憂「こ、これはダメだねお姉ちゃん」


ビアンカ『じゃあ……プックルってどうかしら?』


澪「ボロンゴよりはマシなんじゃないか?」


律「猫の名前かって言われると疑問だけどなー」


紬「どうやら幾つか候補があるみたいね、とりあえず全部聞いてみましょう?」

ビアンカ『じゃあ……チロルってどうかしら?』


唯「ちろる!」


憂「かわいい名前だね、お姉ちゃん!」


梓「でも、この子にはちょっと可愛すぎるんじゃないかな……?」


ビアンカ『じゃあ……ゲレゲレってどうかしら?』


紬(ゲル状)


唯「うう……なんかトンヌラを思い出すネーミングセンスだよ……」

ビアンカ『じゃあ……アンドレってどうかしら?』


律「プロレスラーかいっ」ビシッ


ビアンカ『じゃあ……リンクスってどうかしら?』


梓「リンクス……私、この名前好きかもしれないです」


ビアンカ「じゃあ……モモってどうかしら?」


澪「うーん、なんかいまいちピントがずれてるよな」

ビアンカ『じゃあ……ソロってどうかしら?』


憂「なんか猫ちゃんの名前から遠ざかったね……」


ビアンカ『じゃあ……ビビンバってどうかしら?』


律「なあ、これビアンカもめんどくさくなってきてるだろ」


唯「なんかそんな感じがするね」


紬「ドラクエの世界にもビビンバってあるのかしらね」

ビアンカ「じゃあ……ギコギコってどうかしら?」


六人「うっ……」


唯「な、なんか私、このギコギコって言葉凄くいや……」


澪「わ、私も……」


律「なんか、いやーなこと思い出しそうになるな……」


憂「み、皆さんもですか……?」


梓「私も……なんか身を切り裂かれるような嫌な感じがします……」


紬「こ、この名前は除外しましょう……」

…………


律「じゃあ、平沢姉妹がチロル、私と澪がプックル、ムギが……ほんとにゲレゲレが良いのか?で、梓がリンクス、と」


澪「多数決だとプックルかチロルになるな」


梓「えー!リンクスが良いですよ!ぜったい!」


紬「ゲ、ゲル……ゲレゲレも良いわ!」


憂「どうしよう、お姉ちゃん?」


唯「うーん……あ!そうだ!」


澪「どうした?唯」


唯「じゃあさ、この中から和ちゃんに決めてもらおうよ~」

紬「和ちゃんに?」


律「まあ、ここでそんなに時間掛ける訳には行かないしな……良いかな?みんな」


みんな「オッケーです!」


唯「じゃあ、メールしてみるね~」


…………


ビアンカ『決まったわね!今日からあなたはゲレゲレよ!』

紬「~~♪」


唯「の、和ちゃんはチロルを選んでくれると思ったのに……」


澪「なんだか和がどんどんよくわからなくなるよ……」


梓「考えてみたら唯先輩の幼なじみなんだし、普通の人じゃないのかも……」


憂「え、ええ?」


律「ま、まあ、決まった物は仕方ないしな、唯、先に行こうぜ!」


唯「そ、そうだねりっちゃん……」


澪「まあ飼うのはきっとビアンカになるだろうし、名前なんて……」


ビアンカ『ゲレゲレちゃんは、ホウカゴが連れて行ってね。わたしの分までかわいがってよ』


澪(こうなるんかい……)

唯「なんかビアンカって、ちゃっかりしてるよね」


律「まあ良いんじゃないか?お母さんが猫アレルギーだって言ってるし」


憂「アルカパともお別れだね、お姉ちゃん」


唯「長かったような短かったようなだよぉ」


紬「夜中にこっそり抜け出してお化け退治なんて、きっとこの二人にとってずっと大切な思い出になって行くわよね」

ビアンカ『ホウカゴ!』


ビアンカ『しばらく会えないかもしれないから、これをあげる……』


ビアンカ『そうだわ!ゲレゲレちゃんにつけてあげるね』

ビアンカはゲレゲレにリボンをつけてあげた!

ビアンカ『ホウカゴ。またいつか一緒に冒険しましょうね』


ビアンカ『ぜったいよ』


ビアンカ『元気でね、ホウカゴ』


憂「な、なんだろう、なんか感動するよお」ウルウル


梓「別れ難いね……」


唯「だ、大丈夫、また会えるから……」ウルウル


紬(ビアンカちゃん、ひょっとしたらホウカゴちゃんのことを……)


憂「ビアンカちゃん……」


唯「ビアンカ……」

律「相変わらず外には出れないみたいだし、洞窟も行けるところまでは行っちゃったしな、どうするんだろ?」


澪「まあRPGの基本、聞き込みだな」


紬「それにしても、ゲレゲレちゃんが一緒に戦ってくれるとは思わなかったわ」


梓「あんまり言うこと聞いてくれないですけどね」


唯「まだ子猫ちゃんだし仕方ないよぉ~」


憂「きっとこれから良い子になってくれるんだよ、梓ちゃん」


澪「ビアンカが抜けて手薄だし、ゲレゲレのレベル上げもしたい所だけど、あの洞窟だともう心もとないよな」


唯「もうレベル上げは嫌っす……」


梓「してもいいですけど、経験値を稼げる所が良いですね」

律「ん?唯、なんか教会の近くに新キャラがいるぞ?」


唯「え?」


澪「本当だ、見た目がなんだか特別っぽいから、あの人に話しかけたら物語が動くのかもしれないぞ」


紬「なんだか服装がホウカゴちゃんと似ているわね」


憂「そうですね、そっくりです」


唯「ゴールドオーブを見せて、だって。澪ちゃんどうしよう?」


澪「悪い人でもなさそうだし、見せるだけなら良いんじゃないか?」

梓「盗まれちゃったりしませんかね」


唯「大丈夫だよお、そしたらお父さんが助けてくれるよ」


『本当にきれいな宝石だね。はい、ありがとう』


唯「あ、ほら、返してくれたよ」


『坊や、お父さんを大切にしてあげるんだよ』


律「……なんか普通に良い人じゃん?」


梓「う、疑ったりして申し訳ない気持ちになります」


『坊や、どんなツライことがあっても、負けちゃだめだよ』


紬(ひょっとしたらこの人、ホウカゴちゃんについて何か知っているのかもしれないけど……今は、まだ黙っておこうかしら)


憂(もしほんとにそうなら、すぐにわかるはずだよね)

澪「うーん、何か変わった物と言えば、あの男の人と、あともうすぐ春なのに妙に寒いって言われてることと……」


律「あとなんかイタズラっ子がいるみたいだな」


唯「もうダメだよりっちゃん!」


律「私じゃねーし!!!!」


梓「でも、どれも別にモンスターとかは関係なさそうです」


唯「あれ?」


憂「また半透明な人がいるね?」


律「レヌール城にいた奴か?ひょっとしてまたお化け退治か?」


澪「ひい!?も、もう嫌だあ!」

『まあっ!あなたには私が見えるの!?よかった!やっと私に気がついてくれる人を見つけたわ!私が何者か、ですって?待って、ここじゃ落ち着かないわ。たしかこの村には 地下室のある家があったわね……
その地下室に行ってて!私もすぐに行くから……』


紬「澪ちゃん安心して?お化けじゃなさそうだわ」


澪「そ、そう……?」


『来てくれたのね!私はエルフのベラ』


梓「エルフ!なんだかファンタジーっぽくなってきましたよ!」

律「お化けの次はエルフかー、ま、エルフなら澪は大丈夫だな」


唯「あ、イタズラしてたのはベラちゃんなんだね」


梓「さっきお鍋のシチューが空になってるっておばさんが言ってましたけど、それもこの子が食べちゃったんでしょうか?」


律「人間に気付いて欲しかったって……シチューは絶対腹減ってただけだろ」


澪「あ、パパスさんが来たぞ」


紬「ベラちゃんの姿は……やっぱり見えていないようね」

唯「妖精の国に来て、だって!楽しそうだね!」


澪「妖精の国かあ、良いなあ、楽しそうだなあ!」


律(こりゃさっきとは正反対になりそうだ)


…………


唯「おぉ、雪が綺麗だねえ」


紬「音楽も、優しげで、幻想的で凄く良いわね」


澪「この人がポワン様か」


唯「ポワンって、綺麗なお名前だね」


梓「とりあえず、春風のフルートっていう物を持ってくれば良いんですね」


澪「妖精の、春を告げるフルートか……」


紬「なんだか歌詞のヒントになりそうって顔をしているわ、澪ちゃん」

澪「ムギ、うん、実はそうなんだ」


憂「私も素敵な世界観だと思います、でも、そんな大事なフルートを奪うなんて……」


唯「許せないね!」


律「お、このベラって子も一緒に来てくれるってさ」


紬「まあ、ビアンカちゃんが抜けて心配だったけど、心強いわね」


…………


律「ベラはこっちの指示を聞いてくれないんだな」


紬「レベルアップもしないみたいね」


澪「妖精の国のみでのスポット参戦だから、かな?」


紬「だとすると、やっぱりビアンカちゃんはまたいつか仲間になってくれるってことなのかしら?」


梓「そういうことかもしれませんね」


唯「きっとそうだね!待ち遠しいよぉ~」

…………


唯「ドワーフの洞窟ってここでいいのかなー?」


梓「とりあえず奥に進んでみましょう、敵もそんなに強くなさそうですし」


憂「あ、誰か住んでるよお姉ちゃん!追い出されたドワーフってあの人かな?」


『カギの技法は、この洞くつ深く、宝箱の中に封印した。どうかザイルを正しき道にもどしてやってくだされ』


紬「カギの技法のことと、ついでに犯人も教えてくれたわね」


律「ザイルか。そいつがボスってことだな」


唯「うぅ~……どうせカギの技法くれるなら、私たちに取りに行かせないで持ってきてくれたらいいのに……」


律「贅沢言うなっ」ビシッ


唯「あうっ」


ベラ『ここって暗いし、ジメジメしてるし、魔物は多いしイヤな感じっ!』


唯「うんうん、わかるよベラちゃん……」

律「このはなすコマンド面白いよなー」


澪「もし律が仲間にいたら、はなすコマンド使わなくても勝手に喋ってそうだよな」


律「秋山さん、それはどういう意味かしらぁ?」


唯「澪ちゃんは洞窟とかだとずっと‘…………’になりそうだよねぇ」


澪「な、なんだよ!それ言ったら唯だってお腹すいたしか言わなそうだぞ!」


律「梓はガルルルルー!とかフニャーゴロゴロだな!」


梓「なんでゲレゲレと同じ扱いなんですか!やめてくださいよ!」


ベラ『やったわね!これでカギのかかったトビラを開けられるわ。あっでも、悪いことに使ったりしちゃダメだからね!』


唯「あ、カギの技法見つけた」


律「ん?思ってたよりあっさり手に入ったな。本番は氷の館ってことか?」


紬「そうかもね、氷の館へ行く前に宿に泊まって、その後にセーブもしておきましょう」


唯「りょーかいです!」

…………


憂「あれ?サンタローズに戻ってきてるね、お姉ちゃん」


唯「ほんとだ、私達ちゃんと妖精の国に泊まったよね?」


律「レヌール城の宿屋でも同じようなことがあったな、確か」


憂「確か目が覚めたら外にいて、そして近くにいたおじいさんが……」


澪「見えない聞こえない見えない聞こえない見えない聞こえない見えない聞こえない……」


憂「わあ、ご、ごめんなさい澪さん!こ、怖がらせようとした訳じゃ……」


…………


唯「よくわかんないけど、妖精の国で寝るとサンタローズに戻ってくるんだねぇ」


憂「お父さんには夢でも見たなって言われちゃったね」

梓「船でもそんなこと言われましたね、そういえば」


律「パパスがついてきてくれたら冒険も楽勝なんだけどなー」


澪「それじゃあゲームにならないだろ」


唯「氷の館に着いたよぉー」


…………


唯「えぇ!?この床滑るよ!?」


梓「所々穴が空いてるのはなんですかね」


澪「罠かもしれない、唯、ゲームオーバーになったらいけないから慎重に……」


ヒューーン


律「一足遅かったなー、澪」

ベラ『いった~い!もう!ここの床ったらツルツルすべるし落とし穴はあるしイヤになっちゃう!』


紬(かわいい)


憂「あ、でも落ちたらやり直しになるだけみたいですよ、澪さん」


澪「それならいいけど、滑る床に落とし穴か、厄介だな」


律「澪が最初に言ってた謎解きか?」


唯「謎解き!?無理っす!」


憂「あ、大丈夫だよお姉ちゃん、私もうわかるよ」


梓(さすが憂……)


…………


紬「あら、あそこにいるのがザイルじゃないかしら?」


律「なんかヘンタイみたいな奴だな」


梓「そうですね、さっさと殺っちゃいましょう」

澪「回復は……憂ちゃんが既にしてくれてるな」


唯「自慢の憂ですから」


憂「えへへ~」


…………


唯「うーん、ザイルもそんなに強くないねぇ~」


律「まあ三人いるし、ホウカゴはレヌールで育て過ぎちゃってたしな」


紬「ベラちゃんも回復に補助に頑張ってくれてるわ」


澪「雑魚敵相手だと自重してくれって思うけど、ボス戦だと頼りになるな」


梓「ゲレゲレは相変わらず言うこと聞きませんけどね……」

憂「あ、やっつけたよ、お姉ちゃん」


ザイル『くそー!お前はなかなか強いな……。え?じいちゃんを村から追い出したのは ポワンさまじゃないって?』


唯「ふんす!見たかざいる!!」


澪「今回戦ってくれたのは憂ちゃんだろ」


梓「でも、良かったですね、これで春に……」


ザイル『けど、雪の女王様が……』


紬「あら?」


唯「雪の女王さま?」


『ククククク……とんだジャマが入ったこと……。やはり、子供をたぶらかしてという 私の考えは甘かったようですね。こんどは私が相手です。さあ いらっしゃい!』


唯「わあ!?」


澪「れ、連戦か!」

紬「黒幕は雪の女王だったのね……」


唯「雪は白いけど、黒幕……!」


梓「憂、大丈夫そう?」


憂「うん、ザイルくんにはそんなに苦戦しなかったから、大丈夫だと思う!」


ゆきのじょおうは こおりつく いきを
はいた!


律「うーん、ちょっと強いな」


紬「ホウカゴちゃんは大丈夫そうだけど、ゲレゲレちゃんとベラちゃんが心配ね」


唯「あうぅ……ゲレゲレ……」


憂「大丈夫です、皆さん」


梓「え?」

律「……強い攻撃の前には必ず回復して予防線を張ってるな」


紬「危なげない戦い方ね……」


澪(まさか憂ちゃん、もう攻撃パターンを読んだのか?)


唯「おぉ~、さすが憂だねぇ」


憂「えへへ」


澪(憂ちゃんもRPGは初心者な筈なのに……本当に優秀な子だよな……)

ポワン『ホウカゴ、よくやってくれました。これでやっと 世界に春を告げることができますわ。なんてお礼を言えばいいのやら……。そうだわ 約束しましょう』

ポワン『あなたが大人になり、もしなにか困ったとき、再びこの国を訪ねなさい。きっとチカラになりましょう。いいですか?よく覚えておくのですよ。さあ、そろそろ お別れの時です』


唯「えへへ、感謝されちゃったね」


憂「困ったことがあったら力になってくれるって!良かったね、お姉ちゃん!」


唯「宿題とか試験勉強とかかな?」


澪「いや、そんなことでエルフを頼るなよ……」


ベラ『ホウカゴ、あなたのことは忘れないわ。あなたも私のこと忘れないように、これを持って行ってね』

ホウカゴは1本の木の枝を受け取った。

ベラ『その枝は、今は寒くて枯れかかっているけど……世界に春が告げられれば、すぐに元気になると思うわ。それじゃあ元気でね、ホウカゴ』

唯「うう、ベラちゃんともお別れだね……」


紬「私、好きだったわ、ベラちゃん」


ポワンは春風のフルートをそっとくちびるにあてた…


唯「わあ!」


憂「さくら!綺麗だねお姉ちゃん!」


梓「なんか……協力出来て良かったって気になります」


澪「私、この妖精の国のお話は凄く好きだったな」


紬「ええ、私も……」


唯「……あ、画面が変わるよ、サンタローズの地下室かな?」


憂「そうだね、戻してくれたんだ」

唯「本当にお別れなんだね、階段も消えちゃった……」


六人「あ……」


唯「さくらが、さくらの花がひとひら舞ってる」


六人「……」


律「…………よし!次の冒険だなっみんな!」


唯「お、おおー!」ウルウル


憂「ひぐっ、が、頑張りましょう……」


梓「またね、ベラ……」グスッ


紬「ベラちゃん……」


澪「また、行けると良いな、妖精の国……」

らいんはっと!


サンチョ『や!坊っちゃん!今までどこにっ!?だんなさまにラインハットの城から使いが来て、出かけることになったんです!坊っちゃんも連れて行くつもりで ずいぶんさがしたんですが……。見つからなくて、だんなさまはたった今お出かけになりましたっ。すぐに追いかければ、まだ間に合うかも知れません。さあ坊っちゃん!』


律「お?いきなり急展開だな」


紬「ラインハット、初めて聞く言葉ね」


憂「使いが来て、ってことは、お城かな?お姉ちゃん」


唯「お使いなら子供じゃないー?」


梓「そのお使いとは違いますよ!とにかくお父さんに追い付かないとまずくないですか?」


澪「そうだな、それに本当にラインハットがお城なんだとしたら、ひょっとするとプロローグに出てきたあの場所かもしれない」


紬「行きましょう唯ちゃん!」

唯「えーと、外に向かえば良いのかな?」


憂「きっとそうだね!」


サンチョ『おや?坊っちゃん ちょっとお待ちください。ポケットから何か……』


唯「この服ポケットあったんだね」


梓「突っ込むところそこですか」


サンチョ『おお!これは見事な桜の枝ですな!そういえば、すこしあたたかくなってきたから、花が咲いたんでしょうか……。それにしても美しい!坊っちゃんたちのお部屋にでも飾っておきましょうか?』


憂「あ……ベラちゃんがくれた木の枝……」


唯「花、咲いたんだねぇ、良かったねぇ……」


律「はいはいしんみりしないー!行くぞ!みんな!」


唯「そ、そうだねりっちゃん!とりあえずお花は飾っておいてもらおう~」

…………


憂「お父さんいないね、お姉ちゃん」


澪「門番も、まだここには来てないって言ってたし村のどこかにはいるんだろうけど……」


梓「建物の中も見てみましょう、唯先輩」


唯「そだね、じゃあ宿屋から~」


憂「えへへ、お姉ちゃん、確かこの宿の宿帳にベラちゃんがイタズラ書きしてたんだよね」


唯「そうそう、確かこれだよね、全く困った子だよ~、まだ残ってるかな~?」ピッ


“ホウカゴ、ありがとう。またいつか会いたいわね。 ベラより”


唯「うぅ……ひぐっベラぁ……」


憂「ベラちゃんん……」


梓「こ、こんなのずるいです、反則です……」


紬「ベラちゃん……来てくれたなら顔を見せてくれたって良いのに……」グスッ


律「ほ、ほら、メソメソしてないで、行くぞ、みんなぁ……」


澪「り、律だってちょっと泣いてるくせに……」


律「う、うるせぇ!」

…………


澪「うーん、それにしてもいないな」


唯「どこ行ってるんだろう?冒険の前だから、怖くなっちゃったのかな?」


梓「そんなわけないですよ、お父さん強いじゃないですか」


憂「冒険の前……あ、わかったよお姉ちゃん!」


唯「え、ほんと?」


憂「冒険の前に行くところといったら、ほら、一つしかないよ!」


澪「ああ!」


みんな「教会!!」

…………


唯「大正解だったね~、憂」


律「もし唯一人でやってたら休み終わっちゃってたかもな~」


唯「むむ、そんなことないもん!」


パパス『この旅が終わったら、父さんは少し落ち着くつもりだ。お前にはいろいろ淋しい思いをさせたが、これからは遊んであげるぞ。さて、行くとするかっ!』


紬「まあ、良かったわね、ホウカゴちゃん」


澪「まだ六歳だもんな、パパに~律「パパ?」


澪「パ、パパスに甘えたいよな!!!」

…………


唯「おぉ~やっぱりお父さんは強いねぇ~」


梓「ホウカゴもゲレゲレもだいぶ強くなったと思いましたけど、まだまだお父さんには敵わないですね」


澪「ホウカゴのレベルは17か。パパスとは10しか変わらないけど、でもなんだかそれ以上の隔たりを感じるな」


憂「これまでのペースでレベル27になっても、HPはお父さんの半分くらいにしかならないですね」


梓「計算したの?憂」


憂「え?うん、多分210くらいになるんじゃないかな?」


梓「そ、そうなんだ……」

律「お、関所だぞ」


紬「ここ、レヌール城の時に来たわよね♪」


唯「そうそう、レベル上げに飽きちゃっていろんなとこ探検したよねぇ」


パパス『ホウカゴ、ここから先はラインハットの国だ。この上からの川のながめはなかなかのものらしいぞ。よし!あまり時間はないが、お前にも見せてやろう』


紬「まあ、肩車だわ♪」


律「改めて、ホウカゴはまだまだ子供なんだなー」


憂「それなのに、お化け退治をして、妖精の国を救って……」


梓「お父さんにいっぱい甘えたいだろうに、きっと強い子なんでしょうね」


澪「主人公だからセリフはないけど、きっとそうなんだろうな」


紬「パパスさんも、きっと同じように思ってるんだわ、だからせめて、親子らしいことがしたいのね」

…………


唯「こっち側に来て、ちょっとモンスターさん達強くなったね」


律「そうだな、でもパパスは問題なく瞬殺してるけどな」


唯「なんかかいしんのいちげき多いよね」


憂「あ、ここがラインハットみたいだよ、お姉ちゃん」


律「まともなお城はここが初めてだな、レヌール城は廃墟だったし」


兵士『待てっ!わが城になに用だっ!!』


唯「むっ!お父さんに偉そうなこと言ったら許さないよ!」


パパス『私はサンタローズに住むパパスという者だ。国王に呼ばれ来たのだが』


唯「そして私はホウカゴだ!」


兵士『おお!あなたがパパスどのですか!?これは失礼いたしました。国王がお待ちかねです。さあ、こちらへっ!』


唯「うむ!よきにはからえ!」


梓「……憂、唯先輩って、いつもこんな感じなの……?」


憂「うん、いつもこんな感じでテレビとも会話してるよ?かわいいでしょ!」


梓「そ、そうなんだ……」

紬「王様に呼ばれるなんて、パパスさんってやっぱりただ者ではないのね」


澪「そうだな、サンタローズのただの村人がわざわざ使いまでよこされるとは考えにくいしな」


律「強いから、兵士になってくれ~とか、そんなんじゃないのか?」


紬「けど、サンチョさんの存在も少し不思議だわ」


梓「サンチョって召使いさんなんですかね?」


律「そうなんだろうけど、家も別に豪邸じゃないじゃん?召使いがいるっていうのも変じゃないか?」


梓「私は、やっぱりお父さんは元々王様だったと思うんですよね、何か事情があって旅をしてるんですよ」


紬「でも、王様が子供を連れて、身分を隠してまでする旅ってなんなのかしら?」


律「も……もしかして……!」


唯「り、りっちゃん、どうしたの……!?」

~~~~


サンチョ『旦那さま、お呼びでございましょうか?』


パパス『うむ、よく来たサンチョ……実は、私はお前を愛してしまったのだ!』


サンチョ『だ、旦那さま!?い、いけません、旦那さまにはマーサ様が……そしてホウカゴ様もお産まれになられたばかりで……!』


パパス『ならばマーサも国も捨て、共に旅に出ようじゃないか!ホウカゴも連れていこう!』


サンチョ『だ、旦那さま…………はい……ぽっ』


~~~~


律「こうして禁断の愛、そして逃避行が始まり、今に至ると……」


澪「そんな訳あるかっ!」バシッ


紬「りっちゃんそれ素敵……ぽっ」


五人(ええっ……)

…………


唯「あ、王様の所に着いたね」


憂「なんだか小声でお話ししてるよ?」


唯「憂、聞こえない?」


憂「さ、さすがに無理かなお姉ちゃん」


梓(憂ならもしかしたら……って少し思っちゃった……)


パパス『ホウカゴ、そんな所に立っていてもたいくつだろう。よい機会だから、お前も城の中を見せてもらいなさい。ひととおり見るうちには、父さんたちの話も終わるはずだ』


唯「あー、お城の人みんなとお話しないと進まないやつだね」


律「おっ唯~だんだんわかってきたじゃん?」


梓「大きそうなお城ですし、なかなか骨が折れそうですね」

律「そうだな、バキバキ!ベキ!ボギ!」


澪「やめろぉー!」ボカッ


律「そ、その攻撃で骨が折れそうなんですが……?」


唯(澪ちゃんって多分スライムくらいなら倒せそうだよね)ヒソヒソ


梓(とげぼうずも行けるんじゃないですか?)ヒソヒソ

…………


『わっ!』ピョン


唯「??」


『ああ、びっくりした。てっきりヘンリー王子かと……。人がカエルをきらいなのを知ってて 背中にカエルを入れるんだよ。ひどいよなあ』


『あ~あ、おでこにタンコブが。まったくヘンリー王子には泣かされてしまいます』


『まったく、ヘンリー王子のわんぱくぶりにはあきれてしまうのう。あんな性格で次の国王がつとまるのか不安でならんわい……』


梓「なんか散々な評判ですね、ここの王子様って」


澪「律が男の子だったらこんな感じだったんじゃないか?」


律「おいおい、私はこんなんじゃないぞ!」


唯「そうだよ!そんなもんじゃ済まないよ!ね!りっちゃん!」


律「いや、それフォローになってねーから……」

『みんなヘンリーさまを悪く言うけど、私はそうは思わないね。小さい時お母上をなくして、王さまは新しい王妃さまをもらったけど……やっぱりヘンリー王子にとっては 本当の母親じゃないし。それに新しい王妃さまが可愛がるのはデール王子だけときちゃ、ひねくれるのも当然だよ』


王妃『なんじゃ、そなたは?わが子デールにあいさつに来たのですか?おほほほほ。
そなたは小さいくせに、なかなか目先がきくと見える。兄のヘンリーよりこのデールの方が次の王にふさわしいと……そう思ったのですね。おほほほほ』


憂「私は、ちょっとヘンリー王子可哀想って思っちゃう……」


唯「そうだね、イタズラするのも、きっと寂しいんだよ」


律「ていうかこの王妃は嫌なやつだなー」


澪「跡継ぎ問題、か……」

律「ムギの家はこういうのないのか?」


紬「ええ、私は一人っ子だから……けど、私か、将来結婚する人が継がないって言ったら、少しこじれちゃうかもね、うふふ」


澪「結婚かあ……」


律「ってことはムギと結婚したら自動的に大企業の社長ってことだよな……あー、私が男だったらなー」


澪「動機不純で却下だな」


紬「わ、私は……りっちゃんがわざわざ男の子にならなくても全然構わないけど……ぽっ」


五人「えっ……」

…………


唯「あ、あの緑色の髪の子ってもしかしてヘンリーかな?」


憂「話しかけてみよっか、お姉ちゃん!」


ヘンリー『だれだ、お前は?あっ!わかったぞ!親父に呼ばれて城に来た、パパスとかいうヤツの息子だろう!オレはこの国の王子。王さまの次にえらいんだ。オレの子分にしてやろうか?』


澪「これはなかなか手強そうだな……」


律「けーっ!生意気な奴だな!」


唯「あはは~子分ごっこ?よーしお姉ちゃんが遊んであげよぉ~」


ヘンリー『わははははっ。誰がお前みたいな弱そうなヤツを子分にするか!帰れ帰れ』


律「こ、このガキめ~!」


憂「断られちゃったね、お姉ちゃんっ」


唯「いやぁ~嫌われちゃいましたなぁ~」


紬「ヤンチャさんね~♪」


梓「こちらの皆さんは全く意に介してないですね……」


律「動物か何か相手にしてるみたいだな……」

…………


唯「あれ、パパスがいないよ?」


澪「話が終わって、ホウカゴを探しに行ったんじゃないか?」


唯「え?ホウカゴはここにいるよ?」


梓「だから、行き違いになっちゃったんですよ」


王『そなたはパパスの息子であろう。なかなかよい目をしておるな。パパスには、わが長男ヘンリーのおもりをしてもらうことにした。そなたもヘンリーの友だちになってやってくれい。たのむぞよ』


澪「パパスがおもりって……」


律「あんま適役とは思えないけどな」

紬「ホウカゴちゃんがまだ小さいから、わかりやすい言葉で言ってくれたんじゃないかしら?」


憂「護衛を頼んだってことかもしれませんね」


律「なるほど、確かに六歳児に護衛なんて言葉は伝わらないかもな」


唯「ごえい?憂、ごえいってなあに?」


澪「ここにもいるぞ、六歳児」

…………


唯「じゃあ、お父さんはヘンリーの所にいるんだね、行ってみよう~」


律「なんか廊下に立ってるな」


澪「もしかして、立たされてるんじゃないか?」


梓「そんな学校じゃないんですから……」


パパス『おう、ホウカゴか!父さんはヘンリー王子のおもりをたのまれたのだ。本当は王子のそばにいたいのだが、まいったことにキラわれてしまったらしい。だが、お前なら子供どうし、友だちになれるかも知れん。父さんはここで王子が出歩かないよう見張ってるから、がんばってみてくれぬか?よろしくたのんだぞ!』


律「あー、なるほどな」


澪「確かにパパスとは相性悪そうだ」


梓「お父さんが困ってる様子が目に浮かびますね……」

唯「もー、お父さん困らせるなんて、いけない子だねぇヘンリー」


憂「遊んであげようよ、お姉ちゃん!」


紬「行きましょ唯ちゃん!」


律「ヘンリーはこの三人に任せた方が良さそうだな」


澪「そうだな、私達はイライラしそうだ」


梓「です……」

…………


唯「あれぇー?ヘンリーがまたいないよ?」


憂「かくれんぼ強いね、ヘンリー……」


紬「また、パパスさんに夢を見たなって言われちゃったわね」


律「口癖なのかもな、パパスの」


澪「人をたしなめるときのな」


梓「でもほんとに、どうなってるんでしょうね?」


唯「宝箱にも子分のしるしなんて入ってないよねー?」


憂「うーん……あ、お姉ちゃんちょっと貸してみて?」


唯「うん、良いよ?」

梓「何かわかったの?夢」


憂「うん、もしかしたらヘンリー、隠れてるんじゃなくて……」


なんと!隠しかいだんを 見つけた!


律「お?凄い憂ちゃん!」


澪「どうしてわかったんだ?」


憂「いえ、なんとなくです。素早く身を隠すなら、あまり移動しなくて良い所かなって思って」


律「よーし、良い子良い子ー!」ナデナデ


憂「わあ、そんな、律さん……ぽっ」


唯「むっ」


澪「むっ」


紬「むっ」

梓「何かわかったの?夢」×
梓「何かわかったの?憂」○

…………


ヘンリー『なんだ、もう階段を見つけてしまったのか…。ふん!つまらないヤツだな。しかし 子分のしるしは見つからなかっただろう。
子分にはしてやれないな』


唯「へっへー、そんなこと言って本当は悔しいくせにぃ~」


律「全く口の減らない子供だよなー」


ヘンリー『ん?』


唯「ん?」


『ヘンリー王子だな!?』


ヘンリー『なんだお前らは!?』


唯「な、なになに?何が起こったの?」

憂「お、お姉ちゃん、落ち着いて?」


梓「突き飛ばされましたよ!?」


『わるいがいっしょに来てもらうぜ。そらよっ!』


ヘンリー『うぐっ!』


紬「大変、ヘンリーちゃんが!」


澪「唯、操作出来ないのか!?」


唯「で、できない……」ガチャガチャ


『おい!モタモタしてねえで はやく王子をイカダへ!』


『へいっ!』


唯「ね、ねえ、これって誘拐だよね……」


憂「う、うん……」


律「いきなり重い展開になってきたな……」

…………


唯「と、とにかく追いかけなきゃ!」


憂「待って、お姉ちゃん」


唯「え?」


紬「唯ちゃん、先にパパスさんに報告した方が良いと思うわ」


澪「そうだな、ヘンリー王子とホウカゴが二人ともいなくなったら大騒ぎになるかもしれない」


唯「う、うん、わかった。じゃあお城に戻るね……?」

…………


唯「あう~、お父さんに話し掛けるの気が重いよ……」


澪「そうだな……」


梓「目の前で拐われちゃった訳ですしね……」


唯「六人もいたのにね……」


憂「ゲームの中ではホウカゴちゃん一人だよ、お姉ちゃん……」


紬「ゲレゲレもいたわ……」


唯「じゃあ一人と一匹だね……っていうかゲレゲレがキラーパンサーっていうモンスターって知ったときはびっくりしたよ……」


梓「今さらその話題ですか……」


紬「猫ちゃんじゃなかったんだものね……」


律「あの、早く話しかようぜ、みんな……」

…………


パパス『どうしたホウカゴ?なにーっ! 王子がさらわれただと!?』


唯「あうー見事なリアクションで……」


憂「無理もないよ、お姉ちゃん」


パパス「なっなんとしたことだ!いいか ホウカゴ。このことは誰にも言うなよ。さわぎが大きくなるだけだからな……。とにかく王子を助け出さないとっ!ついて来いホウカゴ!」


律「お、でも今回はパパスが一緒に行ってくれるみたいだぞ?」


唯「おぉ~、それなら凄く安心だねぇ……ってパパスはやっ!」


澪「お、追いかけるんだ唯!」


梓「先輩急いで!」


唯「で、でもでも速くて……」


憂「行っちゃった……」


六人「…………」


唯「どうしよ、みんな……?」

…………


唯「怪しい洞窟まで行ってみたけど、ゲレゲレがちょっと大変そうだったね」


澪「つい焦って何も準備せずに行ったのがまずかったな」


律「でもこんなの焦るなっていう方が無理だよな……」


梓「ヘンリー王子のことは気になりますけど、一度レベルと装備を整えて出直した方が良いですね」


唯「そうだね、そういえばラインハットに来てまだお店覗いてないよ」


憂「お姉ちゃん、じゃあ私からレベル上げするね!」


唯「おねげぇしますだぁ~」

…………


澪「よしっこれで装備は整ったな」


律「レベルもこんなもんじゃないか?大体のモンスターは一撃だし」


唯「ふわぁ~、もう眠いよりっちゃん……」


紬「私も……」


澪「ちょっと疲れてきたな……ってもう3時じゃん!」


梓「ええ!?もうそんな時間ですか!?」


律「RPGこえー……」


唯「何時くらいから始めたっけ……?」


澪「覚えてないな……」

憂「ふわぁ~むにゅむにゅ」


律「今日の所はここまでにして、ヘンリー救出は明日にするか~」


澪「そうだな……」


紬「そうしましょう……」


唯「おやすみりっちゃん……夜、迎えにいくからね……」


律「それはビアンカだぁ~……」


紬「うふふふ……」


https://youtu.be/Nw8iEI-hEv8

律「うーん……朝か……?何時だ……?」


澪「うーん……あ、律……?」


律「おー澪、起きたか……」


澪「うん……今何時……?」


律「9時だな……」


紬「おはようみんな……」


梓「ふにゃあ、おはようございます……あれ、憂がいない……」


憂「あ、皆さんおはようございます!朝ごはん食べますよね?」


四人(しっかりした子だなぁ~……)

律「うーん……朝か……?何時だ……?」


澪「うーん……あ、律……?」


律「おー澪、起きたか……」


澪「うん……今何時……?」


律「9時だな……」


紬「おはようみんな……」


梓「ふにゃあ、おはようございます……あれ、憂がいない……」


憂「あ、皆さんおはようございます!朝ごはん食べますよね?」


四人(しっかりした子だなぁ~……)

唯「う~ん……ゲレゲレって意外とモフモフなんだね、むにゃむにゃ……」


澪「姉の方は起きる世界ゼロだな……」


律「おーい起きろー、憂ちゃんが朝食作ってくれたぞー」


唯「あ、ビアンカ、良かった、また会えたね、すぴー……」


梓「夢の中でもドラクエしてますね……」


澪「影響されやすい子……」

…………


律「よし!飯も食ったし続きやるか!」


唯「ういー、ごちそうさま~」


梓「ごめんね、朝ごはん作らせちゃって」


憂「ううん、せっかく皆さん来てくれてるんだし、当然のことだよ」


律「うーむ、結婚するならムギも捨て難いが憂ちゃんも魅力的だな……な~んて……」


憂「そ、そんなぁ律さん……」ドキドキドキドキ


唯「むっ」


澪「むっ」


紬「むっ」


律「あ、あの、冗談ですから~……」

>>184

澪「姉の方は起きる世界ゼロだな」×
澪「姉の方は起きる気配ゼロだな」○

…………


唯「さて、じゃあ続きだねぇ~」


梓「ヘンリーを助けに行きましょう!」


唯「あれから結構時間過ぎたし、お父さんがもう助けちゃってたりして~」


澪「いや、それはないから……」


澪「なあ唯、寝る前に通った時は急いでてスルーしたけど、この看板読んでいかないか?」


唯「えー?でも歩くとダメージ受ける地面に囲まれてるよー?」


梓「でも、もしかしたらそれだけ良い情報が書いてあるのかもしれませんよ?」

澪「洞窟で謎解きがあって、そのヒントが書いてあったりするんじゃないか?」


唯「うーん、それなら読んでみる……?うぅ、ホウカゴ、ゲレゲレ、痛いよね、ごめんね……」


“毒のぬまち キケン!入るな!”

…………


澪「なんだよあの看板は!」


梓「キケンなら真ん中じゃなくて端っこに立てておけです!こんなの罠じゃないですか!」


律「ま、まあ落ち着けよ、二人とも……」


紬「そ、そうよ二人とも、きっと立てた頃は沼地がこんなに広くなかったんだわ」


澪「うぅ……」


梓「悔しいです……」


憂「やくそう多めに持ってきてるし、進もっか、お姉ちゃん」


唯「そ、そうだね、憂……」

…………


律「よし、もうこの洞窟のモンスターも余裕だな」


梓「簡単に進めるのは良いですけど、強さが足りなくてハラハラする楽しさも捨てがたいですよね」


唯「えー?簡単に進めた方がいいよぉー」


澪「私は梓の言うこともわかるな。強すぎるとなんか作業してる気になっちゃうよ」


唯「そうかなぁ……」


澪「まあ、ある意味自分の裁量で難易度を決められるから面白いんだよ、RPGは」


紬「あ、唯ちゃんそこ、宝箱よ」


唯「あ、見落としちゃうところだった!ありがとうムギちゃん!」


紬「どういたしまして♪」

…………


『うい~ ひっく……王妃に王子を始末してくれとたのまれたけどよぉ。殺せと言われたわけじゃないし……王子をドレイとして売れば また金が入る。こりゃあ、一石二鳥ってもんだ。ひっく』


梓「この人たちが犯人ですね……!」


律「とっちめてやりたいけど、会話しか出来ないみたいだな」


憂「でも、良いか悪いかは別として、まだヘンリー王子は生きてるってことですね」


紬「唯ちゃん、早くしないとヘンリーちゃんが奴隷にされちゃうわ、急ぎましょう」

…………


唯「あ、お父さん!やっと追い付いた!」


律「姿だけはここに来てすぐ見えたけど、随分遠回りさせられたな」


澪「これ、やっぱり戦ってるよな、唯、手伝おう」


唯「そうだね!お父さんー助太刀致す!!!」


…………


憂「必要なかったね、お姉ちゃん」


梓「やっぱり強すぎますね、お父さん」


パパス『おお!ホウカゴか!お城ではぐれてしまったと思ったが、こんな所までやって来るとは……お前もずいぶん成長したものだな。父さんはうれしいぞ!さて、ともかく王子を助け出さねば!お前が先に行け。後ろの守りは父さんが引きうけたぞ!』


唯「おおっ!?」

憂「お父さんが仲間になってくれたね、お姉ちゃん!」


律「すげぇ!もう敵無しじゃん!」


紬「唯ちゃん、操作は問題なく出来る?」


唯「うん。でも、ベラと同じでめいれいは聞いてくれないみたい」


梓「まあ、お父さんですしね、本来はホウカゴがめいれいされる側ですよ」


律「ザックザク倒してくれるな」


澪「これまでのレベル上げは何だったのかって気になるよ」


梓「相変わらず、ダメージ受けたら必ずホイミしてくれるんですね」


律「けどゲレゲレのダメージは無視だな」


唯「名前が気に入らないんじゃないかなあ」


紬「ええっ?唯ちゃんそんなぁ(涙)」


澪「お前が飼ったんだから、自分で面倒見なさいってことだよきっと」


梓「なるほど、教育な訳ですね」


紬「厳しい所もあるのね」


律「憂ちゃんも見習った方が良いぞー?」


憂「え?」

…………


唯「あ!ヘンリーだ!!」


律「おい、なんか倒れてるぞ?大丈夫か?」


パパス『ヘ、ヘンリー王子!く!カギがかかっている!ぬっ!ぬおおおおおおぉーーーっっ!』

パパスは扉をこじあけた!


憂「わあ」


律「すげ……」

ヘンリー『ふん!ずいぶん助けに来るのが遅かったじゃないか。まあいいや。どうせオレはお城にもどるつもりはないからな。王位は弟がつぐ。オレはいないほうがいいんだ』


唯「ヘンリー……」


憂「やっぱり、寂しかったんだね……」


紬「こんな小さい子が、自分はいない方が良いなんて思っちゃうなんて……」


パパス『王子!』バシィッ


六人「…………!」ドキドキ


ヘンリー『なっ、なぐったな、オレをっ!!』


パパス『王子!あなたは父上のお気持ちを考えたことがあるのか!?父上は、父上は……』


ヘンリー『………』


パパス『………』


パパス『……まあ、ともかくお城に帰ってからゆっくり父上と話されるがいい。さあヘンリー王子!追っ手の来ないうちにここを!』


唯「ヘンリー……」

澪「でも、良かったな、これで無事に……」


パパス『く!さっそくあらわれたかっ!?』


憂「!お姉ちゃん!」


律「追っ手か!」


唯「ようし、みんなで!!」


パパス『ホウカゴ!ここは父さんが引き受けた!お前は王子を連れて、早く外へ!!』


唯「ええっ!?」


澪「……心配だけど、最良の選択かもしれない、ここは大人しく従おう、唯」


唯「で、でもでも……」


紬「パパスさんの強さは私達が一番知っているじゃない、大丈夫よ」


憂「お父さん……」


梓「お父さんなら、きっと大丈夫です。行きましょう唯先輩!!」


唯「うん、そうだね、みんな……!!」

…………


澪「敵が出なくなったな」


律「パパスが全部相手にしてるってことか……?」


梓「お父さんなら有り得ますね、それ」


唯「うぅ、そうだとしたら完全に足手まといだったねぇ……」


憂「でも、お陰で安全に外に行けそうだよ。良かったね、お姉ちゃん」


唯「ヘンリーを助けた後は、さっきみたいにお父さんと一緒に戦えるようになるのかなあ?」


梓「きっとそうですよ。……あ、でもこの冒険が終わったら落ち着くつもりだって言ってましたよね?」


律「そういえばそうだな」


澪「パパスが修行つけてくれるようになったりしてな」


梓「あ、それいいですね、澪先輩!」


唯「えぇ~?遊んでくれた方が良いよお~」


澪「いつもそればっかりだな唯は……」


紬「さあ、もうすぐ出口ね、みんな」

…………


唯「良かったー、これで外に出られるねー、どれ、ちょいとお菓子でも……」


ゲマ『ほっほっほっほっ。ここから逃げ出そうとはいけない子供たちですね』


唯「!?」


律「な、なんだこいつ!?」


澪「ボスか!?」


ゲマ『この私がおしおきをしてあげましょう。さあいらっしゃい!』


唯「ふん!でも、ちゃんとレベル上げしてあるもんねーだ!」


紬「そうね、落ち着いて戦えば大丈夫よ、唯ちゃん」

律「あれ、ヘンリーも戦えるんだな」


澪「うーん、頼りにはならなそうだけど、まあいないよりはマシか」


ゲマは ようすをみている。
ゲマは わらっている。


唯「ね、ねえ憂……なんだか不気味なんだけど……」


憂「だ、大丈夫だよお姉ちゃん、ちゃんとダメージは与えて……」


ゲマの メラミを となえた!
ヘンリーは 60の ダメージを うけた!
ヘンリーは きぜつした!


六人「!!」

唯「へ、へへへへヘンリー……」


澪「だ、大丈夫だ唯、まだホウカゴとゲレゲレがいる!」


梓「マメに回復をすれば大丈夫です!」


ゲマの こうげき!
ゲレゲレは 35の ダメージを うけた!


律「つ、つえぇ……」


唯「う、ういぃ……」


澪「ゆ、唯大丈夫だ、とにかく回復しながら……」


梓「でもそれだと、いつまでも攻撃出来ないですよ!?」


律「ジリ貧になるな……」


紬「突破口はないのかしら……」

ゲマは メラミを となえた!
ゲレゲレは 60の ダメージを うけた!
ゲレゲレは きぜつした!


律「くっ……ゲレゲレまで……」


憂「今までのボスとは段違いに強いよ……」


唯「うぅゲレゲレ……」


澪「……!そうか!」


梓「澪先輩、どうしたんですか!?」


澪「パパスだ!パパスが助けに来てくれるんだよ!」


五人「!」


紬「そ、そうね!」


梓「そうですね!きっと、一番最初に、スライムと戦ったときみたいに……」


ゲマの こうげき!
つうこんの いちげき!
ホウカゴは 97の ダメージを うけた!
ホウカゴは きぜつした!


六人「あ…………」

唯「う、うぅ……もう、MPも、やくそうも、ありませんでした……」


律「唯……良く頑張ったよ……」


紬「そうよ、唯ちゃん。またレベルをして、再挑戦しましょう」


憂「私も頑張るよ、お姉ちゃん」


梓「これでセーブした所からやり直しに……あれ?」


澪「みんな、これ、話が続くようだぞ!?」


唯「え!?」


パパス『こっこれはいったい!ホウカゴ!ヘンリー王子!』


唯「お父さん!」


憂「お父さん!」

律「負けることが前提だったってことか……?」


澪「そうだな、きっと……」


パパス『む?お前は!?その姿はどこかで……』


ゲマ『おや?少しは私のことをご存知のようですね。ほっほっほっほ。ならばなおさら、私たち光の教団のすばらしさをお教えしておかなくては……』
 

ゲマ『出でよ、ジャミ!ゴンズ!』


紬「そ、そんな!」


律「強そうなのが2体も出てきたな……こりゃ、さすがのパパスでも……」

梓「楽勝でしたね……」


澪「こ、これならゲマも……」


唯「お父さん!やっちゃえー!ぼこぼこにしちゃえー!!」


憂「がんばって!お父さん!!!」


ゲマ『ほっほっほっほっ。みごとな戦いぶりですね。でもこうするとどうでしょう……』

なんと!ゲマはホウカゴののどもとに死神のカマをあてがった!


唯「!」


憂「ホ、ホウカゴちゃん!」


澪「な、なんて卑怯な奴なんだ……!」


紬「酷い、そんな……」


梓「う、うう……」


律「このやろー!正々堂々と戦えー!!」

ゲマ『この子供の命がおしくなければ、ぞんぶんに戦いなさい。でもこの子供のたましいは、永遠に地獄をさまようことになるでしょう。ほっほっほっほっ!』


律「こ、このオカマめ!!!」


紬「この子供の命が惜しくなければ、存分に戦いなさい……嫌な言い回しだわ……」


ジャミ『へっへっへっ。さっきはよくもやってくれたな!』


ゴンズ『覚悟しなっ!!』


唯「ええ!?さっき倒したのに!?」


律「まずいな、このままじゃ……」


梓「で、でもお父さんならきっと……!」

パパスは みをまもっている。


紬「パパスさん……」

憂「お、お父さん……」


パパスは ただジッと たえている!


唯「お父さん……いいよ……戦ってよ……いつもみたいに、簡単に倒してよ……お父さん……」


梓「そ、そうです、倒して、そして、いつもみたいに、『では行くとしよう!』って……」


パパスは おおきく息を すいこんだ!


律「くそっ、このままじゃ……」


澪「ど、どうなるんだ、一体……」






パパスは きぜつした!

…………


ゲマ『ほっほっほっ。ずいぶん楽しませてくれました』


唯「お父さんー!お父さんーーー!!うわあーーーーん!!」


パパス『ホウカゴ!ホウカゴ!気がついているか?』


憂「!!お、お姉ちゃん、お父さんが!」


唯「お、お父さん!」


 
パパス『はあはあ…これだけは言っておかねば……』


紬「そんな……最後みたいに……」


澪「パパス……」


パパス『じつは お前の母さんはまだ生きているはず……わしに代わって、必ず母さんを…』


律「ホウカゴのお母さんは亡くなっていたのか……」


梓「で、でも生きているはずって……!」


パパス『ぬわーーーーーっ!!』


唯「…………!!」


六人「お父さんーーーーーー!!!!」

ゲマ『ほっほっほっほっ。子を想う親の気持ちは いつ見てもいいものですね。しかし心配はいりません。お前の息子はわが教祖さまのドレイとして、一生幸せに暮らすことでしょう。ほっほっほっ』


ゲマ『ジャミ!ゴンズ!この子供たちを運び出しなさい』


ジャミ『ゲマさま。このキラーパンサーの子は?』


ゲマ『捨ておきなさい。野にかえれば やがてその魔性を取り戻すはず。うん?待ちなさい。この子供はふしぎな宝玉を持っていますね。この宝玉はもしや……?まあ、どちらにしろこうしておくとしましょう』

なんと!ゴールドオーブはこなごなにくだけちった!


ゲマ『ほっほっほっほっ。さあ 行きましょう』


『ぬんっ!』


六人「……………………」

…………


澪「……唯、大丈夫か?憂ちゃんも……」


唯「う、うん……ひぐっ」


憂「ちょっと、ショックでした……」


律「さすがに、私も少し驚いたかな……」


梓「ゲレゲレ、置いてかれちゃいましたね……」


紬「そうね……」


澪「まさかパパスがあんなことになっちゃうなんてな……」


唯「私、最初に変な名前とか、色々バカにしちゃったけど、こんなことになるならお父さんが考えてくれたトンヌラって名前にしておけば良かったって、そう思っちゃう……」


紬「……ちょっと、お茶にしよっか。気分を入れ換えた方が良いと思うの」


律「そうだな」

梓「本当に、物語を読んでるみたいに一喜一憂しちゃうますね……」


憂「音楽や絵もあるし……自分達で考えながら動くから尚更のめり込んじゃうんだよ……」


澪「私達でこれなんだから、特に唯みたいなタイプには、刺激が強すぎるかもな……」


唯「うぅ~、お父さん……」


律「ほーら、唯、お菓子食べちゃうぞ~……」

…………


どれい!


澪「……よし、じゃあ続きをやって行こうか」


律「どうなるのか、全くわからなくなってきたな」


唯「えーと……あれ?ホウカゴちゃん、大人になってるよね?」


梓「そうですね。背が伸びてます」


律「おいおい、ゲマがドレイが何とかって言ってたけど、まさか……」


紬「六歳の頃から、こんなに大きくなるまでここで働かされていたの……?」


唯「かわいそう……ホウカゴ……」


憂「ねえお姉ちゃん、どこかにヘンリー王子がいるんじゃないかな?」


紬「そうね、きっと一緒に連れてこられている筈だわ」


梓「探しに行ってみましょう!」


律「そうだな!こんな仕事、サボれサボれ!!」

…………


唯「あ、いたいた、ヘンリー」


澪「ヘンリーも大人になってるな、当然だけど」


律「王子から奴隷か……ヘンリーも辛いだろうな……」


梓「元々苦労を知らなかったんでしょうし、ここでの生活はホウカゴより大変だったかもしれませんね」


ヘンリー『やあホウカゴ!こんなところで油を売ってると、またムチで打たれるぞ』


梓「……なんだか爽やかな性格になってますね」


澪「そうだな、成長して毒が少し薄まったんだろ、律もそうだよ」


律「どうして私を引き合いに出すんだ?」

ヘンリー『それともまた逃げ出す相談かい?あれからもう10年になるもんな』


憂「10年もこんな所に……」


唯「私だったら耐えられないよ……お菓子もお茶もなさそうだし、憂のご飯も食べられないなんて……」


憂「大丈夫だよ、もしお姉ちゃんがそうなったら必ず助けに行くから」


唯「うい……」


憂「お姉ちゃん……」


律「おーい、戻ってこーい……」


梓(憂だったらゲマも倒しちゃいそうな気がしてちょっと怖いな……)

ヘンリー『お前の親父さんには本当に申しわけなかったと思っているよ。お前はきっと親父さんの最期の言葉を信じて母親をさがしたいんだろうな。いいよなあ……。オレなんかここを逃げ出しても、お城じゃ弟のデールが王さまになってるだろうし。と、くどくど話してもしかたがないなっ!さあ仕事仕事……』


紬「ヘンリー王子……成長したのね……」


律「……そうだな、でも、ヘンリーが責任を感じることじゃないだろ!悪いのは全部ゲマの奴だ!」


梓「そうですよ!あいつさえいなければ!」


澪「ヘンリーも辛いよな、お城のことを考えると……」


紬「そうね……」

…………


澪「これと言って動きのないまま仕事が終わりになったな」


律「ヘンリーもちらっと言ってたけど、とにかくどうやって脱獄するかじゃないか?」


梓「けど、何度か企ててる口振りでしたから、それだけ失敗してるんでしょうね」


ヘンリー『やあホウカゴ、やっと目がさめたようだな』


澪「ひどい寝床だな……」


唯「かわいそうだよ、みんな……」


ヘンリー『ずいぶんうなされてたようだけど またムチで打たれる夢でも見たんだろ。しかしお前はいつまでたっても反抗的で、ドレイになりきれないヤツだよなあ。その点オレなんか素直になったと自分でも思うよ。わっはっはっ』


律「ホウカゴはまだまだ全然心が折れてないみたいだな。安心したよ」


紬「あのパパスさんの息子だもの、当然だわ!」


澪「それにしてもヘンリー、ほんとに良い奴なってるな」


梓「そうですね、喋り方は変わってないですけど、性格は別人な気がします」


ヘンリー『もっとも、オレが素直になったのは、お前の親父さんの死がこたえたのもあるけどさ。あれから10年……。月日のたつのは早いもんだぜ』


六人「…………」

…………


律「そして今日も労働……か」


梓「あのムチを持った人達、凄く感じが悪いです」


紬「真面目に働けば幸せになれるって、本当かしら……?」


律「…………怪しいもんだけどな」


澪「そうだな、きっと働かせるためのエサだよ」


紬「……そうね」


ヨシュア『まいった……妹のマリアがドレイにされてしまったのだ……なんとかしたいが教祖さまにはさからえないし……と、こんなことをドレイのお前に話しても仕方なかったな……』


憂「マリアさんって、さっきお話した人だよね?」


梓「元々信者だった人だっけ?」


澪「そんな人でもドレイにされちゃうなんて……ほんと酷いところだな、ここは」

…………


律「ん?なんか人だかりになってるぞ?」


紬「本当ね、どうしたのかしら」


憂「!お姉ちゃん、あれ、マリアさんじゃない!?」


唯「ひどい!ムチでうたれてるよ!」


ヘンリー『く…!あいつらっ!』


唯「ヘンリー!」


紬「ヘンリー王子、もしかして……」


ヘンリー『あれホウカゴ!いつのまにそこにいたんだっ!?まあいい……。オレはもうガマンできないぞ!』


唯「おお!ヘンリーかっこいい!やっちゃえやっちゃえーー!!」


澪「唯、応援してないで私達も手伝うんだよ!」


唯「あ、そ、そっか!」


律「やっとあの偉そうなムチ野郎をぼこぼこ出来るぜ!唯!私にやらせろー!」


唯「ういっす!りっちゃん隊員!!」


律「どりゃーーー!!!」

…………


律「ふいー、そんなに強くはなかったけど、武器と防具がないとちょっと大変だったな」


澪「ヘンリーもレベル1だし、危なかったな」


紬「ゲレゲレちゃんがいてくれたらね……」


唯「元気かなあ、ゲレゲレ……」


ヘンリー『いや~まいったな。しかし ムチで打たれるよりマシかな。わっはっはっ』


澪「閉じ込められちゃったな」


紬「けど、マリアさんも手当てを受けられるようで良かったわ」


梓「どうなるんでしょうね、これから」


唯「あ、人が来たよ!」


憂「あれはマリアさんと……ヨシュアさん?」

ヨシュア『妹のマリアを助けてくれたそうで、本当に感謝している。私は兄のヨシュアだ。前まえから思っていたのだが、お前たちはどうも他のドレイとはちがう。生きた目をしている!』


澪「いきなり誉め殺しだな」


唯「ふんす!」


ヨシュア『そのお前たちをみこんでたのみがあるのだ。聞いてくれるな?』


憂「なんだろうね、お姉ちゃん」


律「ここのムチ野郎を全部倒してくれとか?」


ヨシュア『じつは、このことはまだウワサなのだが……この神殿が完成すれば、秘密を守るためドレイたちを皆殺しにするかも知れないのだ』


唯「なんと!」


澪「やっぱりそうか……」


紬「ひどい……」

ヨシュア『そうなれば、当然妹のマリアまでが……!お願いだ!妹のマリアを連れて逃げてくれ!お前が昔さらわれて来たときの荷物やお金も、うしろのタルに入れておいた。この水牢はドレイの死体を流す場所で……浮かべてあるタルは死体を入れるために使うものだ。気味が悪いかもしれんが、そのタルに入っていればたぶん生きたまま出られるだろう。さあ、誰か来ないうちに早くタルの中へ!』


律「!出られるってことか!?」


唯「やったね!りっちゃん!!」


紬「でも、残された奴隷の人達は……」


梓「そうですね……」


澪「……仕方がないよ、ここに残っていても、一緒に殺されてしまうだけなら……」


憂「それなら外に出て、教団をやっつける方法を探しましょう!」


律「そうだな!それに……」


唯「私、お父さんの敵を討ちたい!」


紬「唯ちゃん……!…………そうね!」


律「よーし!行くぞ!みんな!」


六人「おー!!!」


ヨシュアはタルにからめられたクサリのカギをはずし、願いをこめてタルを流れに押しだした!

…………


律「うわぁ、ここ、山の上だったんだな……」


紬「樽、壊れちゃったりしないかしら……」


憂「あ、海に出ましたよ。良かった……」


澪「解放されたんだな……」


梓「あ、夜になった……」


唯「どこに着くのかなあ……」

にげたどれい!


『…まあ、よかった!気がつかれましたのね!もう5日も眠ったままで、このまま起きないのではと心配していましたのよ。しかしタルの中に入っていたのにはびっくりしましたわ。お連れの人から聞いたのですが、とんでもない所から逃げていらしたとか……ここは名もない海辺の修道院。どうか、元気になるまでゆっくりしていってくださいね』


梓「助かったみたいですね」


澪「5日も眠っていたなんて……」


憂「お連れの人って、ヘンリー王子とマリアさんのことだよね?お姉ちゃん、行ってみようよ」


唯「うーん。ねえみんな」


律「どうした?唯」


唯「ホウカゴの服ってさ、もしかして……」


紬「……サンタローズにいた、あの人と同じね」


梓「!そういえば……」


澪「これは……どういうことなんだろうな……」

…………


唯「お!ヘンリー発見!」


澪「ヘンリーはまだ奴隷の格好のままか……」


ヘンリー『それはそうと、マリアさんがこの修道院の洗礼式を受けるらしいぞ。お前は目が覚めたばかりで、いまいちピンとこないだろうけど、まあとにかく出席しようぜ』


律「修道院か……どんなことするんだろうな」


澪「律も入ってみたらどうだ?少しは女の子らしくなるんじゃないのか?」


律「な、なんだとー!」


梓「ほら、そういう喋り方です」


律「ぐぐぐぐ……」


紬「り、りっちゃんは今のままで充分素敵よ!」


律「え、い、いやそんな面と向かって言われても……」

…………


『わが修道院へみちびかれし、われらの友マリアよ。そなたに聖なる神の祝福をさずけましょう』

マザーはグラスに入ったルビー色の水を少しずつマリアにふりかけた。


唯「ねえ、りっちゃん、あのお水、なんか美味しそうだね」


律「飲めるのかな?あれ」


憂「そ、そういうお水じゃないと思うよ、お姉ちゃん、律さん……」


澪「マリアさんはこの修道院で生きていくことを選んだんだな」


紬「あの酷い所から、海に導かれて辿り着いたのがこの修道院って考えると、私もマリアさんと同じように洗礼を受けるかもしれないわ」


梓「……樽に入っていたんですもんね。死んじゃう可能性の方がずっと高かった訳ですから……」

…………


マリア『ああ!やっと気がつかれましたのねっ!本当によかったですわ。兄の願いを聞き入れ、私を連れて逃げてくださってありがとうございました。まだあそこにいる兄や、多くのドレイの皆さんのことを思うと心からよろこべないのですが……今私がここにあるのも、きっと神さまのおみちびきなのでしょうね…ホウカゴさん。これは兄からあずかったものですが、どうぞお役に立ててください』

ホウカゴは 1000ゴールドを 受けとった!


唯「なんか、このマリアちゃんってちょっとムギちゃんに似てるね」


紬「え?そ、そう?」


澪「そうだな、心が綺麗で、優しくて」


紬「そ、そんな、照れるわ」


唯「アズニャンもプリズニャンに似て可愛いから安心してね!」


梓「全然嬉しくないですから!っていうか久しぶりに引っ張ってきましたね、それ」

…………


ヘンリー『マリアさんって、ドレイのときは気づかなかったけどキレイな人だよな~。ここでずっと暮らすなんてもったいないよ。まあ兄さんはまだあの神殿だろうし、ほかに身よりもないらしいからな……さあてと……。これからどうするかなあ……。出かける時には声をかけてくれよ』


唯「お?これはもしかして……」


澪「ヘンリー王子はマリアさんのことを……」


唯「ヘンリーも一緒に冒険してくれるのかなあ?」


澪「そうだな、あと……」


憂「そうだね!良かった、一人になっちゃうかと思って少し不安だったよ」


澪「……」


梓「でも、そうしたらまたヘンリーを育てないとですね、きっと装備品も持ってないでしょうし」


律「めんどくさいけど、仕方ないなー」


澪(あれ?みんな、そうじゃないだろ?今のヘンリーのセリフから読み取れるのって他にもあるだろ?女子としてそれはどうなんだよ、みんな……)

…………


『ホウカゴ、あなたはもう大人です。これからは、自分の道を自分で見つけなくてはならないでしょう。しかし、神さまが見守っていてくださることを忘れずに……。ホウカゴの旅に、神のご加護のあらんことを』


唯「おとな、かあ」


紬「私達の目線でも、ホウカゴちゃんは突然大人になっちゃったと感じるけれど……」


律「ゲームだけどさ。きっと、本人もそう思ってるよ。六歳の頃なんて、私らも記憶が曖昧なとこあんじゃん?そんな頃から奴隷にされてさ、10年も経って、“あなたはもう大人です”なんてさ。ちょっと、残酷だよな」


憂「ホウカゴ……くん。これからは、少しでも良いことが起こってくれたらいいな……」


ヘンリー『さあて、行こうぜ!』


澪「何はともあれ、再出発だな」


唯「よし、行こうー!」


六人「おおー!!」

…………


唯「でも、どこに行けば良いのかなー?」


澪「北に行けば街があるって言ってたよ。とりあえずはそこで装備を整えて、また街の人から情報を聞き出そう」


ヘンリー『こうして外の空気をすうなんて何年ぶりだろうな?なんだか、今はつまらないことでも全部しんせんに思えてくるよ』


唯「そうだねー、それに、今はもうどこへ行くのも自由なんだもんねぇ」


ヘンリー『外を自由に歩けるって幸せだなあ。考えてみれば、ラインハットの城からもほとんど出してもらえなかったからな』


紬「うん、なんだかヘンリー王子の気持ち、わかる気がするな、私も」

…………


ヘンリー『はぁ~にぎやかな町だなあ。なんだかオレ見てるだけでクラクラしてきちゃったよ』


紬「そうね、今まで訪れた街のなかでも一番大きいかも」


澪「ホウカゴもヘンリーも、ずっとあの神殿にいたわけだし、尚更刺激的だろうな」


梓「どうしますか?とりあえず装備品を……」


律「!!おい、唯!カジノがあるぞ!行こう!」


唯「カジノ!?行きたい行きたい!れっつごー!」


澪「おいー!!冒険に関係ないだろ!いけません!!」


律「えー!?良いじゃんケチ!」


唯「ちょっとくらい遊んだっていいじゃんー!」


澪「いや、これゲームだから既に遊んでるんだけど……」


律「じゃあ多数決な!」


澪(いつも多数決の時は負けてばかりだけど……今回は憂ちゃんがいる!)


梓(憂は真面目だからこっち側に付くだろうし、仮にムギ先輩が遊びたいと言ってもイーブンに出来る!)


澪(それに、ムギはどちらかと言うと物語の続きを見たがってるはず、それなら……!)


澪「じゃあまず、カジノに行きたくない人!!!」

…………


ヘンリー『うは~っ!これがカジノってやつか? すごいな舞台まであるぜ。なんだか明るすぎて 目がチカチカしてきたよ』


律「おお!唯!スロットがあるぞ~!」


唯「りっちゃん!りっちゃん!バニーさん!!」


澪(まさかムギも憂もカジノ側に付くとは……)


梓(完全に読みを外しました……)


澪「ごめんね、澪ちゃん梓ちゃん。確かに二人の言うこともわかるんだけど……」


憂「ホウカゴくんとヘンリー王子も、少し遊ばせてあげたいなって、そう思ったんです」


紬「ずっと奴隷をさせられていたし……ホウカゴちゃんには辛いこともあったから……」


梓(しかもこの二人は、あっちの遊び人二人と違って天使のような理由だから反論できないぃ~……)


澪(仕方がない、諦めよう、梓……)

…………


律「ふむふむ、なあ澪、でも、あながち冒険に全く関係ない場所って訳でもないみたいだぞ?」


澪「え?」


律「見ろよ、この景品。なんだか強そうな装備があるぞ」


澪「このメタルキングの剣と、グリンガムのムチか?」


梓「でも、たくさんコイン必要ですよ」


律「だっから凄そうなんじゃん~、きっとこれが取れたら冒険が凄く楽になるぞ!」


憂「でも、メタルキングってなんなんでしょうね?」


澪「メタル……」


唯「キング……」


さわ子『お前らが来るのを待っていたぁ……』ゴゴゴゴゴ


唯「絶対強いよ!この武器!」


澪「そ、そうだなっ!!」

律「と言っても、ちょっと資金が心もと無さすぎたな~」


梓「もっと先に進んで、ゴールドに余裕が出来たらまた来ましょう!」


唯「さわちゃんの剣欲しかったなぁ~」


憂「後で私が取ってあげるよ、お姉ちゃん!」


紬「私も頑張るわ!」

…………


唯「りっちゃん、このスライムみたいな看板なんだろね?」


律「地下に行くのか、一応覗いてみようぜー!」


梓「モンスターとか出ませんよね……?」


憂「街の中だし、大丈夫だと思うけど……」


『わしが有名なモンスターじいさんじゃ』


唯「もんすたーじいさん?」


『なに?わしを知らん?まあよい。ふむ……。おぬしはなかなかよい目をしておるな。しかもふしぎな目じゃ。もしかするとおぬしなら、モンスターですら改心させ仲間にできるかも知れんの』


唯「ええ!?」


澪「モンスターを仲間に!?そんなこと出来るのか!?」


『まず馬車を手に入れることじゃ!そして……憎む心ではなく、愛をもってモンスターたちと戦うのじゃ』


律「おいおい、本当にモンスターを仲間になんて出来るのか……」


紬「でも、本当だとしたらとても心強いわね」


唯「ス、スライムやプリズニャンを仲間に出来るってことだよね!?」


梓「いや、プリズニャンはいいですから」


憂「けど、馬車ってどこにあるのかな?カジノの景品にはなかったよね?」


澪「そういえば、さっき街の人が夜にしか開かない店があるって言ってたけど、そこに行けば買えるかもしれないな」


律「んじゃ、一旦外に出て夜にしようぜ」


唯「そうだね!」

…………


『よし、商談成立だ!馬車は町の外に出しとくからいい旅をするんだぜ!』


唯「澪ちゃんの予想通りだったねぇ~」


梓「3000ゴールドの所を300ゴールドって、得しちゃいましたね」


憂「早速外に出て、お馬さん見てみようよ、お姉ちゃん!」


唯「うん!お馬さんパカパカ~♪」


ヘンリー『おお~!安いから心配したけど、しっかりした馬車じゃないか!これでもっと仲間がふえても安心だな!』


パトリシア『ヒヒーン!』


唯「パトリシアっていうんだねー、よーしよしよし」


律「さて、それで、モンスターが仲間になるってことだけど……」


梓「倒さないとダメって言ってましたね」


憂「あ、早速戦いだよ、お姉ちゃん!」


唯「あ!スライム!よーし!こっちにおいで~」

…………


なんと! スライムが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!


唯「おおおおーーー!!!」


梓「すごい!本当に仲間になるなんて……」


憂「名前をつけてあげますかだって!お姉ちゃんどうする??」


唯「んーとね」


律「ちょっと待った!」


唯「え?りっちゃんどうしたの?」


律「これから多分色んなモンスターが仲間になる訳だし、その度にみんなで決めてたら時間がもったいないだろ?」


梓「それは確かにそうですね」


律「だからあらかじめ名前をつける順番を決めておくっていうのはどうだ?」


澪「ああ、それはいいかもしれないな!」


紬「それなら不満も出ないわね!」


唯「じゃあ順番はじゃんけんで!!」


六人「さーいしょーはぐー!!」

…………


唯「じゃあスライムは私がつけるねー!」


憂「なんて名前にしてあげるの?お姉ちゃん」


梓「変なのはやめて下さいね」


唯「スライムってぇ~ぷにぷにで気持ち良さそうだからぁ~、ぷるん!」


憂「わあ!」


紬「かわいい名前♪」


澪「わ、私もちょっと好きかも!」


律「い、良いと思うか?梓……」ヒソヒソ


梓「いえ、全く……」ヒソヒソ


律「私たちはまともな名前にしような……」ヒソヒソ


梓「そうですね」ヒソヒソ

名付け順
唯→律→憂→紬→梓→澪

…………


唯「あはは、ぷるんがついてくるよぉ~かわいいねぇ~」


澪「でも弱いな……戦わせるのはちょっと怖いよ」


梓「まあ、スライムですからね……根気よく育てるしかないですよ」


律「まあ、装備でカバーするしかないな。おい唯、オラクルベリーに……」


なんと! プリズニャンが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!


唯「お、おお……プリズニャンや……ようこそけいおん部に……」


梓「……」


律「おお!やったじゃん唯!」


紬「二匹目ね♪」


憂「えーと、次に名前を付けるのは……律さんですね」


梓(良かった……唯先輩だったら絶対私をネタにした名前にするだろうけど、ネーミングについては律先輩なら……)


律「じゃあ、アズサで」


梓「にゃ!?」


唯「おぉ~りっちゃんわかってるぅ~」


紬「うふふ、よろしくねアズサちゃん」


唯「アズニャンって呼ぼうよぉ~」


憂「可愛いね~お姉ちゃん♪」


澪「ま、まあまあ梓、ゲームだし、な……?」


梓「ううううう~…………」

…………


唯「あ!りっちゃん占いしてくれそうな人がいるよー!」


律「おー占ってもーらお!」


『わしは占いババじゃ。占ってほしいのか?』


唯「はいはーい!!」


『よろしい。おぬしは男前じゃから 特別にただで見てしんぜよう』


唯「男前だって。りっちゃんのことかな?」


律「私は女だ!」


澪「いや、ホウカゴのことだろ……」


紬「りっちゃんだって男前よ」


律「」

『ふむふむ。おぬしは誰かをさがしておるな。それはおぬしに親しい女と出たぞ。しかしおぬしには、その者がまだ生きているのか分からないと見える……。安心せい!その者はまだ生きておる!そしておぬしに会える日を待っているぞ!まず北に行くがいい。そこでおぬしは なにかを見つけるじゃろう』


ヘンリー『親しい女って、お前の母さんのことかな?オレは占いはキライだけど、この占いの結果だけは当たってほしいと思うよ』


澪「そうだな、私もそう思う」


梓「生きてるかわからないってことは、そうかもしれないですね」


唯「んー、ビアンカってことはないかなあ?」


憂「その可能性もあるね、お姉ちゃん」


律「じゃあ装備も整ったし、北に向かってみるか?」


唯「ようし!新大陸だあー!」


律「未知なる世界が私を待ってるぜー!!」

…………


律「んー?なんかこの辺り見覚えがないか?」


紬「そうね、ここって……」


唯「サンタローズとアルカパの近くだよ!ほら!あれ!サンタローズ!!」


澪「ほ、本当だ!」


憂「行ってみようよ!お姉ちゃん!」


梓「な、なんか感慨深いですね……!」


唯「あ、ドラキーが仲間になったよ!次は憂だよね?」


憂「ドラキーも可愛いよね、じゃあ、ドラッチで!」


梓(良かった、まだまともだ……)

…………


唯「え……?な、なにこれ……?」


ヘンリー『なんだこのさびれた村は…えっホウカゴの村だって?…なんか聞いてたのとずいぶん感じがちがうなあ』


澪「いや、昔はこんなんじゃなかったよ、こんな廃村みたいな……」


律「……まるで何かに襲われたみたいになってんな……」


憂「!お、お姉ちゃん、そういえばサンチョさんは!?」


唯「!!そ、そうだよ!サンチョは……!」


紬「…………なに、これ……」


梓「い、家が……」


澪「他の家も酷いけど……ホウカゴの家が一番酷くやられてるな……」


憂「誰がこんなことしたんだろう……」

唯「あ、階段……地下室は、残ってそうだね……」


憂「お姉ちゃん、毒の沼があるよ……」


唯「いいよ、回復すれば……ここを下ったらさ、妖精の国に繋がって……」


澪「あ……」


紬「これって……」


憂「ベラちゃんがくれた桜の枝……」


唯「ベラちゃん……会いたいね……」


憂「そうだね……お姉ちゃん……」

…………


シスター『その昔、ここはとても美しい村でしたのよ。しかしある日 ラインハットの兵士たちが村を焼きはらいに来て……』


紬「え……?」


澪「ラインハットの兵って、嘘だろ?」


シスター『ひどい!ひどいわ!パパスさんのせいで、王子さまが行方不明になっただなんて!』


梓「!!」


憂「そ、そんな!」


シスター『あらごめんなさい。あたしったら急にとりみだしたりして…。見ず知らずの人にパパスさんの話をしてもしかたなかったですわね……。え?パパスさんを知ってる?あなたの父親ですって?そんなっ…!でも確かにあの時の坊やのおもかげが…。ホウカゴ!ホウカゴなの!?』

唯「うんっうんっそうだよ!シスター!ホウカゴだよ!!」


紬「良かった……やっと、ホウカゴちゃんを知っている人に会えたわね……」


『そうだったの…。そんなことがあってパパスさんはもう…そして、パパスさんに代わってホウカゴがお母さまをさがしだすつもりなのね。ああ、どうかホウカゴに幸運を…神さま!』


ヘンリー『ラインハットの兵士が、村を焼き払っただって?お前の親父さんのせいで、オレが行方不明だって…?す…すまないホウカゴっ。こんなことになってるなんて、オレ思いもしなかった…』


憂「そんな、ヘンリー王子のせいじゃないのに……」


澪「……でも、確かに状況を考えたら……そう考えてしまうことも、自然なのかもしれない……」


紬「けど、だからって村の人達に罪なんてないわ!」


律「そうだよ、村を襲うなんてとんだお門違いだ。……ヘンリーが責任を感じるのだってな」


『…………………』
ヘンリーはうつむいてくちびるをかみしめている…。

…………


唯「あ、りっちゃん、この洞窟懐かしいね」


律「最初の冒険はここだったよな、私達にとっても、ホウカゴにとってもさ」


澪「でも、パパスの後は追いかけられなかったんだよな、おじいさんが通せんぼしていて」


紬「あ、良かった……おじいさん、無事みたいよ」


澪「本当だ、しかも今は通れそうだぞ」


憂「洞窟の奥に大事なもの……だって、お姉ちゃん、行ってみようよ」


唯「うん!もちろんだよ憂!」


ヘンリー『オレもさがすぞ!なんでもいいからホウカゴの手伝いをさせてくれよ』


唯「もちろん!一緒に行こう!ヘンリー!!」

…………


澪「子供の頃と違って、なかなかモンスターが手強いな」


唯「トンちゃんが結構強いね……」


梓「ガメゴンです」


唯「トンちゃんは仲間にならないのかなあ?」


梓「だからガメゴンです!!」


憂「あれ?なんか銀色のスライムだよ?」


澪「本当だ、メタルスライムだって」


律「へえ、色違いか。強いのかな?」


メタルスライムは にげだした!


紬「あら?逃げちゃったわ」


律「澪みたいだな」


澪「なんでだよ」

…………


律「それにしてもさ」


澪「ん?」


律「子供の頃のエピソードはさ、お化け退治に妖精の国に、ファンタジー要素が強めだったけど」


澪「そうだな」


律「大人になった途端、宗教に、政治的な要素に、なんかいきなり現実的になったよな」


紬「そうね……」


澪「律にしては鋭い観点だな」


律「おい」


梓「なんかその辺、ちょっと現実の私達の世界とも近いですよね」


唯「……」


梓「今も、こうしてみんなといて、部活したりゲームしたり、一緒にいられますけど、大人になって社会へ出たら……」


唯「でも、私達はいつも一緒だよ!」


律「唯……」


憂「お姉ちゃん……」


唯「今も、今までも、これからも、ずーっと、一緒!」


梓「先輩」


紬「うふふ」


律「……ははっ。そうだな!」

唯「あ!またメタルスライム!」


律「どうせまた逃げちゃうんじゃないか~?」


紬「唯ちゃん、私にやらせてみて?」


唯「ほい!ムギちゃん!」


紬「とりゃ~!!」


かいしんの いちげき!
メタルスライムに 85の ダメージ!
メタルスライムを たおした!


唯「おお!」


憂「紬さん、凄い!」


紬「やったっ♪」


ホウカゴたちは それぞれ 1350の けいけんちを かくとく!!


律「って経験値たっか!」


澪「なるほど、すぐに逃げるのはこういうことだったんだな……」


憂「倒しにくいから、それだけ経験値を貰えるんですね」


唯「お手柄だよ~ムギちゃん~」


紬「えへへっ」

なんと! メタルスライムが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!


紬「あら?」


律「お!しかも仲間になったじゃん!」


澪「スライム系は仲間になりやすいのかな?ぷるんもすぐ仲間になったもんな」


唯「おお~、銀のスライムも可愛いねぇ~」


梓「名前もムギ先輩の番ですよ!」


紬「え?ど、どうしようかしら……何も考えてなかったわ……」


憂「ゆっくり考えて良いですよ、紬さん」


紬「ありがとう、憂ちゃん。……じゃあ……めるめるなんてどうかしら……?」


唯「おお!かわいいよムギちゃん!」


澪「ぴったりな名前だな!」


憂「紬さんらしいお名前ですね♪」


紬「えへへ~」


律梓「…………」

…………


律「仲間になったのは良いけど、めるめるはちょっと弱いな……」


澪「そうだな、すばやさとみのまもりはなんか物凄く高いけど、HPがな……」


紬「あんなに臆病なんだもの、戦わせるのは可哀想だわ」


憂「そうですね、きっと戦うの嫌いなんですよ」


唯「馬車でくつろいでてもらおうよ~」


梓「ペット感覚ですね……」

…………


唯「あ、なんか剣が刺さってるよ!」


憂「わあ、なんだかかっこいい剣だね!」


澪「手紙みたいなものもあるぞ、なんだろう?」


梓「唯先輩、先に手紙を見てみましょう!」


唯「そうだね!」


“ホウカゴよ。お前がこの手紙を読んでいるということは、何らかの理由で私はもうお前のそばにいないのだろう。

すでに知っているかもしれんが、私は邪悪な手にさらわれた妻のマーサを助けるため 旅をしている。

私の妻、お前の母にはとても不思議なチカラがあった。
私にはよく分からぬが、その力は魔界にも通じるものらしい。

たぶん妻は、その能力ゆえに魔界に連れ去られたのであろう。

ホウカゴよ!伝説の勇者をさがすのだ!
私の調べたかぎり魔界に入り邪悪な手から妻を取り戻せるのは…

天空の武器と防具を身につけた勇者だけなのだ。
私は世界中を旅して天空の剣を見つけることができた。

しかし、いまだ伝説の勇者は見つからぬ…。

ホウカゴよ!残りの防具をさがし出し、勇者を見つけ、そしてわが妻マーサを助け出すのだ。

私はお前を信じている。たのんだぞ、ホウカゴ!”

唯「お父さん……お父さん……」


憂「お父さん……こんな風に手紙を残すっていうことは……」


律「……自分の身に何か起こるかもしれないって予感していたのかもな」


紬「ホウカゴちゃんのお母さんは、まだ生きているのね、良かった……」


梓「天空の装備と伝説の勇者。これがお母さんを助け出す鍵なんですね」


澪「なあ唯、ひょっとすると、天空の装備は、ホウカゴが装備するんじゃないか!?」


律「そうだな!主人公だし、伝説の勇者ってホウカゴのことなんだよ!」


唯「きっとそうだね……」


憂「じゃあ、この剣も持っていこうか、お姉ちゃん」


唯「うん!」


ホウカゴは天空の剣を手に入れた!


律「よし!じゃあ早速装備を……!」


…しかし剣を持つ手に力が入らず身体がなまりのように重くなった。ホウカゴは天空の剣を装備できそうにない…


唯「えーー!?」


澪「ホウカゴは伝説の勇者じゃないのか!?」


梓「主人公なのに……?」


律「うーん、これはちょっと残念だな……」


ヘンリー『お前なら……って思ってたんだけど』


憂「うん、私もだよ……」


ヘンリー『魔界に天空の剣に伝説の勇者か…。まったくとほうもない話だぜ。だがあの手紙を読んだからには天空の防具と勇者をさがすんだろうな。とりあえずさがしものは見つかったし、村へもどるとしようぜ』

…………


『なんと洞くつで天空のつるぎというのを見つけなされたか?しかしその剣は勇者にしか装備できぬと。なるほどのう…』

『かつてパパスどのが、なぜ自分に装備できぬかとなげいておったのはその剣じゃったのか』

『パパスどののあんなにくやしそうな顔を見たのはその時が初めてじゃったのう』


唯「お父さんも悔しかったんだね」


澪「そうだな、今の私たちと同じように……な」


ヘンリー『あれだけ強かったお前の親父さんでも装備できなかったなんてなあ……やっぱり伝説の勇者にしか装備できないっていうんだから、特別な資格が必要なんだろうか』

…………


紬「ねえ唯ちゃん、せっかくここまで来たんだし、次はビアンカちゃんに会いに行きましょうよ」


律「そうだな。ちょっと重い話が続いて気が滅入りそうだし、ビアンカに会って気分転換しようぜ」


唯「うん!私もそう思ってたよ!」


ヘンリー『ビアンカって、ホウカゴが前に言ってた幼なじみのことか。元気でいるといいな』


梓「ホウカゴってセリフが出てこないから無口に見えますけど、ちゃんと喋ってるんですね」


憂「そうだね、どんな性格なのかな?喋ってる所が見れないのは、ちょっと残念かも」

…………


律「うわー、なんか懐かしく感じるな……」


澪「ほんとだな、ゲームの中なのに、ちゃんと時間の流れを感じるよ」


唯「ビアンカー!今から行くからねぇ~」


紬「懐かしいわ……きっと綺麗な女の人になっているんでしょうね」


唯「……あれ?でも、ビアンカいないね?」


澪「宿の中はそんなに変わっていないみたいだけど……唯、色んな人に話し掛けてみよう」


『あたしら夫婦は、7年ほど前ダンカンっていう人からここを買い取って宿を始めたのさ。ぜひ2回以上お泊まりになってあたしに声をかけてちょうだい。記念品をさしあげちゃうよ』


唯「ええ!?じゃあビアンカはもうこの街にはいないの!?」


律「期待してただけに、これは辛いなー」


ヘンリー『7年前か…そりゃずいぶん昔の話だな。ホウカゴ、ガッカリすんな!お前ならいつかきっとビアンカちゃんに会えるさ』


憂「ねえお姉ちゃん、せめて、ビアンカちゃんがどこに引っ越したのか知ってる人がいないか探してみようよ!」


梓「そうだね!先輩、きっと知ってる人がいますよ!」


唯「よ、ようし!聞き込み再開!」


律「ところで記念品ってなんだろな?」


澪「それは後で良いだろ。今はビアンカが先だよ」

…………



『わしは昔この宿をやっていたダンカンさんの知り合いでの、久しぶりに会いに来たのじゃ』


唯「おお!早速手掛かりはっけん!」


『けどダンカンさんは身体を悪くして宿屋をやめ、はるか海の向こうの山奥の村に引っ越して行ったらしい。あのかわいい娘さんにも会いたかったのう。ざんねんじゃわい…』


ヘンリー『そうだったのか…ざんねんだったなホウカゴ。オレもお前のよろこぶ顔が見られなくてざんねんだったよ…』


紬「ダンカンさん、お化け退治の時にも体調を崩していたわよね?引っ越したのが7年前で……元気だといいけれど……」


澪「はるか海の向こう、か。今はまだ会えなさそうだな、残念だけど……」


憂「残念だよぉ、お姉ちゃん……」


唯「そうだね憂……」

…………


律「まあ、ビアンカはいないけど、せっかくここに来たし泊まってかないか?」


澪「そうだな、ホウカゴにとって思い出の場所だし、回復もしておきたいしな」


憂「ビアンカちゃん、元気だと良いですね」


唯「今夜はビアンカの夢を見そうだよ……」


梓「私たちが寝るわけじゃないんですから……でも、ホウカゴはビアンカの夢を見るかもしれないですね」

…………


ホウカゴはふと目が覚めた。
ヘンリーが何か考えごとをしているようだ。


唯「おや?」


澪「ヘンリーも色々思うことがあって眠れないんだよ、きっと」


ヘンリー『起きたのか?ホウカゴ。いや ちょっとお城のことを思い出していてね…』


律「自分の国だもんな。そりゃ気になるよな……」


梓「サンタローズの件もありますしね……」


ヘンリー『街の人に聞いたけど 親父が死んでいたなんて ちょっとショックだったな…弟のデールが王になったらしいけど あんまり評判もよくないみたいだし』


梓「ゲレゲレをいじめていた二人組がそんなこと言ってましたよね」


律「あの二人も大きくなってたよな、そういえば」


ヘンリー『ちょっとだけ帰ってみるかなあ…ラインハットはここから東の方だったよなあ……。まあいいや。今夜はもうねよねねよう!」

…………


梓「先輩、ヘンリー王子の為に、ラインハットに行ってあげましょうよ」


唯「あずにゃん気が合うねぇ~、私もそう思ってたよ!」


ヘンリー『あの国のことは忘れるつもりだったが……なかなかそうもいかねえや』


紬「そうよね、当然だわ。生まれ育って、思い出に溢れた場所を忘れてしまうなんて、そんなこと簡単に出来るわけがないわ」


律「例え嫌なことが多かったとしても、思い出は思い出だもんな。早くラインハットに行ってやろうぜ」


ヘンリー『親父があの後ながくなかったなんて……。できればもう一度会って話したかったんだけど……まあしかたないな』



憂「ヘンリー王子、きっと辛いよね、お姉ちゃん」


唯「うん。もし私だったらって考えると、すっごく苦しくなって来ちゃうよ……」


ヘンリー『もう日が暮れちまったか。でも先を急ぎたいな…。ホウカゴたのむぜ!』

…………


澪「関所か、ここも懐かしく感じるな」


唯「お父さんと一緒にここを通ったよね……」


紬「あの時は、まさかもう目の前にお別れの時が迫っているなんて思いもしなかったわよね」


律「唯、パパスの敵は絶対に取ろうな」


唯「うん!もちろんだよ!りっちゃん!!」


ヘンリー『川をはさんで向こうはもうラインハットの国だ。風のにおいは昔と変わらないな』


梓「なんていうか、解放されてからのヘンリー王子の言葉には、凄く哀愁が漂っていますよね」


紬「それだけの経験をしてきたんだもの、仕方がないわ」


兵士『ここから先はラインハットの国だ。太后さまの命令で、許可証のないよそ者は通すわけにいかぬぞ!』


唯「えぇ~、そん……」


ヘンリーは 兵士に ゲンコツをした!


澪「!」


律「おー!?」


兵士『あたっ!!』


ヘンリー『ずいぶんえらそうだな、トム!』

兵士『あいたた!タンコブが……。無礼なヤツ!何者だっ!?どうして私の名前を???』


紬「うふふ、なんか、やんちゃだったころのヘンリー王子みたいね」


梓「なんだかほっとしますね」


律「いきなりゲンコツなんて澪みたいだなー」


澪「やってやろうか?」


律「No thank you……」


ヘンリー『あいかわらずカエルは苦手なのか?ベッドにカエルを入れておいたときが いちばんけっさくだったな』


澪「ベッドにカエルなんて律みたいだな」


律「やってやろうか?」


澪「No thank you……」

兵士『ヘンリー王子さま!ま、まさか生きておられたとは…。おなつかしゅうございます!思えばあの頃が楽しかった。今のわが国は…』


ヘンリー『なにも言うな、トム。兵士のお前が国の悪口を言えば、なにかと問題が多いだろう』


兵士『はっ………』


ヘンリー『通してくれるな?トム』


兵士『はい!よろこんで!』


紬「ヘンリー王子の言葉、とても御立派ね」


憂「やっぱり、いじけちゃってただけで元々優しい人だったんですね。王族なのに、一介の兵士さんを思いやる気持ちがあるなんて」


梓「教養を感じる言葉でしたね……つい最近まで奴隷をさせられていた人とは思えないです」


兵士『またこうしてヘンリー王子に会えるとは夢にも思いませんでした。あの頃は泣かされましたが、今となってはいい思い出ですなあ』

…………


唯「あ、ねえねえみんな、ここ!」


憂「お父さんに肩車してもらったよね……」


澪「……ホウカゴ、懐かしさと、そして辛さできっと胸がいっぱいだろうな」


律「変わらない川の流れと、目まぐるしく変わっていく環境か。私達も、きっとそんな風景をこれから何度も見ていくんだろうな」


紬「そうね……」

…………


唯「あ!スライムナイト!懐かしいねぇ~」


梓「どんな乗り心地なんでょうかね、スライムって。つるつるしてそうですけど」


なんと! スライムナイトが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!


律「お!スライムナイトも仲間になるんだな!」


澪「まあ、騎士って感じで少し知的にも見えるからな」


憂「強いのかな?スライムナイト」


梓「敵としては結構あれこれしてきて面倒だったし、強いかもしれないね」


律「おーい梓、名前決めるの、次お前の番だぞー」


梓「へ?あ、そっか!」


唯「ブシにしようよ!あずにゃん!」


澪「いや、武士じゃなくて騎士だから……」


梓「そうですね……じゃあ、ナイトでお願いします」


唯「えぇ~、何かふつう……」


梓「い、いいじゃないですか!とにかくこの子はナイトです!良いですね!」


唯「ちえ~」

…………


律「さて、仲間もそれなりに集まってきてるな」


澪「スライム(ぷるん)、プリズニャン(アズサ)、ドラキー(ドラッチ)、メタルスライム(めるめる)、そしてスライムナイト(ナイト)か」


梓「ホウカゴちゃんとヘンリー王子は固定として、枠はあと二つですね」


紬「ぷるんちゃんとめるめるちゃんは、可愛いけど戦わせるのが可哀想よね……」


唯「アズサは結構強くない?」


梓「悔しいですけど、確かに強いです、プリズニャン」


唯「アズサだよ、あずにゃん」


澪「あんまり期待してなかったけど、言うことも聞いてくれるしメンバーに入れても良いと思う」


梓「じゃあプリズニャンも採用として、あと一枠ですね」


唯「あずにゃん、アズサだよ」

憂「ナイトちゃん、使ってみませんか?」


律「うーん、でもまだ仲間に入ったばかりでレベルも1だからなあ」


憂「でもほら、ステータスも高いですし、見てください、もうホイミが使えます」


紬「あら、本当ね」


澪「これまではホウカゴしか回復魔法を使えなかったからな。これは心強いかもしれない」


律「ふーむ、これからの成長に期待しても良いかもしれないな。じゃあメンバーは、ホウカゴ、ヘンリー、アズサ、ナイトで良いな!」


紬「うふふ、なんだか梓ちゃんも一緒に戦ってるみたいね」


唯「かわいいよね~♪」


梓「うう、だから嫌だったんです……」

…………


ヘンリー『もうここに戻ることはないと思ってたんだが…とうとう来ちまったな』


澪「見たところ街に変わりはない……かな?」


律「いや……見ろよ、ほら、掘の前」


梓「あれって、神殿にいた奴隷……ですか?」


『どうかおめぐみを……もう3日も何も食べていないんです』


唯「ええ!?そんな!私だったら死んじゃうよ!!」


憂「お姉ちゃん、助けてあげよう?」


唯「もちろんです!」


『あ、ありがとうございます……このご恩は一生忘れません』


唯「たった5ゴールドで良かったのかなあ……?」


律「1ゴールドって、日本円でいくらぐらいなんだろな?」


梓「宿代もバラツキがありますし、なんとも言い難い所ですよね」


紬「あんな貧困に陥ってしまう人がいるなんて、やっぱりラインハットに何か起きているんだわ……」


ヘンリー『オレもドレイになってすぐは空腹に泣かされたよ。腹がへるって本当につらいよなあ』

…………


律「高い金を払って強い兵士を集めてる……か、怪しいな」


憂「それで税金を高くして国民が苦しむなんて……」


ヘンリー『そうまでして強い兵士を集めるなんて戦争でも始める気かよ!?…いや、その通りなのか?だとしたら何としてでも止めなくちゃ……』


梓「唯先輩、そろそろお城に入ってみましょう」


澪「前国王が亡くなってから国がおかしくなったってことは……悪政を働いてるのはヘンリーの弟ってことになっちゃうもんな」


律「でも、関所でも聞いたけど怪しいのは怪しいのは太后って奴だよ。昔いた、あの感じの悪い王妃のことだろ?」


唯「とりあえずお城にいってみるっす!」


ヘンリー『ちょっと待ってくれよ。言っておくけど、とりあえず事情が分かるまで、オレが誰かはナイショにしておこうと思うんだ。しばらくは、オレはただの旅人だぜ。さあ行こうか』


律「だってさ、みんな」


六人「了解!!」

…………


澪「うーん、あの兵士、奥に入れてくれそうにないな」


唯「やっぱりヘンリーが王子様だって教えてあげた方が良いんじゃないかなー?」


澪「それは嫌だってヘンリーが言ってただろ?」


唯「えぇ~だってぇ」


紬「ヘンリー王子は、王妃様に邪険にされていたわ。そして、ヘンリー王子がいなくなって、自分の思惑通り弟のデールさんが王位を継いだ」


憂「そして今、突然ヘンリー王子がお城に現れたら……」


律「……あまり良い想像は出来ないよな」


唯「じゃあどうするのー?」


憂「街の人で、何か知ってる人はいないのかな?もう一回お話を聞きに行ってみる?」


唯「うーん、憂がそう言うなら行ってみようかなあ……」


ヘンリー『おい!このままひきさがるつもりなのか?といっても、城の奥に入れなきゃしかたないか……』


唯「そうだよヘンリー」


ヘンリー『いや、まてよっ!たしかこの城には、外から中に入れる抜け道があったはずだ。抜け道の入り口はどこだったっけなあ……。水路があやしかったよなあ……』


紬「抜け道……そうね、お城なら、そういう通路は当然あるはずよ!」


律「ちなみにムギの家には?」


紬「あるわよ?」


六人(あるんかい……)

六人じゃなくて五人じゃない?

>>278

六人(あるんかい……)×
五人(あるんかい……)○


…………


律「と言っても、抜け道はどこにあるんだ?」


唯「それならヘンリーがきっとわかるよ~、なんたってヘンリーのお城だもん!ね!ヘンリー!」


ヘンリー『抜け道ってふだん使わないから、どこだったか忘れちまったよ。昼間は見えにくい場所にあったような気がするんだけどな』


唯「な、なんですと!」ガビーン


憂「ま、まあヘンリー王子がお城にいたのは小さい頃だし……10年も経ってるんだし仕方がないよ、お姉ちゃん」


律「昼間は見えにくい所……か、こういう謎解きは我らが誇る名探偵二人に任せて、私はちょいとお茶でも……」


憂「あそこですね、紬さん」


紬「ええ、間違いないわ、憂ちゃん」


律「ってはえーなおい!」

>>279
ありがとう

…………


澪「橋の下……か、よくわかったな二人とも」


紬「うふふ」


憂「たまたまですよ~!」


唯「でもここ、行き止まりだね」


律「なんかスイッチみたいなのがあるぞ?それを踏むんじゃないか?」


唯「どらどら?」カチッ、ズーーン


唯「おお!ほんとだ!凄いりっちゃん!名探偵!!名探偵りっちゃん!!」


律「どうだ私だって負けてないだろー!?」


唯「いよっ!日本一!」


澪(幸せそうな奴ら……)

…………


『おお!よくぞ来てくれた!わらわはこの国の太后じゃ!早くわらわをここから出してたもれ!』


唯「ふえ?」


梓「太后って、凄い権力を持ってるってお城の人言ってましたよね?どうしてこんなところに……」

  
『どうした?わらわが太后だと信じられぬと申すかっ?ええいはがゆい!』


律「でもこのムカつく言い回しは、本人な気がするけどな」

  
『たしかに10年前、ヘンリーをさらわせ亡き者にさせたのはわらわじゃ』


唯「な、なんと!」


律「やっぱりな……」


『しかしそれも、わが息子デールを王にさせたかったあわれな親心から……今では本当に悪かったと改心しておる』


紬「……」

  
『だからお願いじゃ。わらわをここから……うっうっうっ』


ヘンリー『どういうことだ!?あれはどう見ても太后…オレの義理のオフクロじゃないか。なんで城の中でふんぞり返ってるはずの女がこんな地下牢にいるんだ!?』


律「なあムギ、今悪政を働いてる太后ってもしかして……」


紬「ええ、きっと偽物よ」


唯「じゃあ、ここにいるのが本物の太后さん……?」


梓「……こんな姿を見ちゃうと、少し可哀想って思っちゃうけど、でも」


澪「この人のせいで、ホウカゴとヘンリー王子は奴隷にされて、そしてパパスは……」


六人「……」

…………


唯「あ!お城の中に入れたよ!」


律「中庭か。ここに繋がってたんだな」


憂「あ、お姉ちゃん、わんちゃんがいるよ!」


唯「まぁまぁまぁよーしよしよし」


『ガルルルルー!!!!』


唯「ええ!?」


…………


ヘンリー『まさか城の中庭に魔物が放されてるなんてな。犬だと思ったから油断したぜ』


唯「うう、わんちゃんとドラゴンキッズじゃえらい違いだよ……」


梓「まあ確かにちょっとかわいいですけど、見間違えないですよね、普通……」


澪「羽生えてるしな……」


『あら、あなた見かけない顔ね。新しくやとわれた人でしょ。だったら教えてあげる。この国の王はデールさま。でも実権は、デールさまの母上太后さまがにぎっているのよ。くれぐれも太后さまにさからわないことね。でないとクビがとぶわよ』


澪「やっぱり城にはちゃんと太后様がいるんだな」


紬「今実権を握っている方が偽物だということは、まず間違いないと思うわ」


律「けど、その偽物って一体なんなんだろうな?」

紬「ねえりっちゃん、ヘンリー王子が連れ去られたのって、このラインハットの近くにある神殿だったわよね?」


律「ん?ああそうだな」


憂「そして、そこに現れたのはゲマで、ゲマは光の教団の手先だった」


澪「つまり、今ラインハットを乗っ取っているのは光の教団ってことか?」


憂「城内に、明らかに魔物の兵士がいましたし、きっとそうだと思います」


梓「そんな、ヘンリー王子の国が光の教団なんかに……」


澪「やっとの思いで光の教団から解放されて、ようやく辿り着いた故郷にも同じ組織の手が回っていた……か」


律「本当にそうだとしたら、生々しいというか、胸くそ悪い話だよな……」

唯「あそこにいるのがデールかな?」


紬「大きくなってるけど、きっとそうね」


デール『………………………。そこにいる大臣から聞いたであろう。今日は誰とも話したくないのだ。さがるがよい』


唯「え?大臣?」


梓「普通にスルーしちゃいましたね」


澪「うーん、でも話を聞いてくれる雰囲気じゃなさそうだな」


ヘンリー『ですが王さま。子分は親分の言うことを聞くものですぞ』


梓「!」


唯「おお!ヘンリー!」


デール『…………!!そんな……。まさか…………。おい大臣!私はこの者と話がある。さがっておれ!』

…………


唯「さっきのヘンリーのセリフ、なんかかっこよかったね~!」


律『ですが王さま、子分は親分の言うことを聞くものですぞ!』


唯「そう!それそれー!」


唯「月曜日学校行ったら早速使ってみよーっと!」


律「私も私もー!」


澪「誰にどういうタイミングで使うんだよ……」

梓「ねえ憂、デール王は不思議な鏡の伝説って言ってたけど、なんなのかな?」


憂「うーん、まだちょっと情報が少なすぎるから、倉庫の本棚に行ってみようよ!」


澪「不思議な鏡か、どんな鏡なんだろうな?」


律「!」


澪「?律、どうした?」


律「わかったかもしれない……!」


澪「え、ほんとか!?」


律「ああ、澪、ちょっと耳を……」


澪「なんだよ、みんなにも教えてやればいいのに。ほら、聞かせろよ」


律「……かがみ」


澪「え?」


律「ム ラ サ キ カ ガ ミ」


澪「~~~~~~~~~~~~~!!!!」

…………


”○月×日。今日、この城の旅の扉より南の地におもむく。

”南の地には古き塔あり。真実の姿をうつしだす鏡がまつられていると聞く。

”しかし塔の扉は、我には開かれず。そのカギは修道僧が持てり”


澪「真実の姿を映出す鏡、か」


梓「なるほど、その鏡を使って、偽物の太后の正体を暴くんですね!」


紬「旅の扉はこの先にあるのね」


澪「よし、行こう!」


唯「ね、ねえりっちゃん、澪ちゃんになんて言ったの……?」


律「ゆ、ゆい、教会に……連れていってくれぇ……」


澪「私が20になるまで棺桶に入ってろ!!」

…………


唯「凄いね!全く違う場所に来たよ!」


梓「なるほど、だから旅の扉っていうんですね」


唯「良いなぁ~、私の部屋と学校にも置きたいな~、旅の扉」


澪「いや、そんなの旅の扉って言わないから」


紬「南にあるのが不思議な鏡が置かれている塔ね」


憂「でも、修道僧がいないと開かないって書いてありましたよね?」


唯「あ、ねえねえ、ここ、樽で流されてきた修道院じゃないー?」


律「お、ほんとだ、この辺りに繋がってたんだな」


唯「おお、りっちゃんふっかつ!」


紬「ねえねえ唯ちゃん、もしかしたら、修道院の人なら塔の鍵について知ってるんじゃないかしら?」


律「おお、それだな!ムギ」


澪「ヘンリーもマリアに会いたいだろうし、行ってみようか」

…………


マリア『まあ!神さまが私の願いを聞きとどけてくださったのかしら。ホウカゴさまとヘンリーさまにはまたお会いしたいと…。ぽっ。ええ。私は元気です。皆さんとてもよくしてくださるし…』


唯「ぽっ、だって、ねえねえ、マリアちゃんってホウカゴのこと好きなのかな?」


梓「このリアクションは、そうかもしれないですね」ドキドキ


憂「な、なんか照れちゃうね」ドキドキ


澪「でも、ヘンリーは複雑かもな……」


紬「そうね、澪ちゃん」


澪「あ!ムギもヘンリーの気持ちに気が付いてたんだな!」


紬「もちろんよ、澪ちゃん!10年も一緒にいたんですもの。男の子同士だって良いと思う!」


澪「……へ?」

…………


マリア『ここが神の塔ですね。私、ここに来るのは初めてなんです。私でお力になれるとよいのですが……』

マリアはひざまずき、手を合わせ天に祈った…。
なんと扉が開いた!


唯「おお!開いたよみんな!」


律「神につかえる乙女かー、確かにマリアが適任だよな」


唯「でも、ムギちゃんも開けられそうだよね」


紬「え?そ、そうかしら?」


澪「いや、洗礼を受けて、ちゃんと修行すれば私達全員開けられるんじゃないか?」


梓「ですね」


唯「え?なんで?」


憂「そ、それは、アレだよ、お姉ちゃん 」


唯「えー?」


律「少なくとも私と唯は乙女って柄でもないしなー、洗礼を受けてもダメなんじゃないか?」


澪「いや、だから多分、乙女って意味合いが……」


唯「???」


律「???」


澪「だ、だから……ゴニョゴニョ」


律「……」


唯「……」


唯律「!!」ボンッ

…………


律「ま、全くそんなことが理解出来ちゃうなんてどどどどんな教育を受けていらっしゃるのかしらあ?」パタパタ


唯「う、憂も、そそそんな子に育てた覚えはないでござるわよ!」パタパタ


憂「えーそんなあ(涙)」


唯「な、なんか暑くなってきたねりっちゃん」パタパタ


律「そ、そうだな唯」パタパタ


梓「女子高生なんだし、それくらい察しましょうよ……」


律「全く梓がむっつりだったなんて……」


唯「全くあずにゃんたら……」


梓「んなぁ!?ち、違いますよ!」


律「澪は昔からそうだったけどさー……」


紬「あら、そうなの?」


澪「なっ!で、でたらめ言うな!」


律「中学の頃なんてさー、」


澪「~~~~~~~~!!!!」

…………


唯「りっちゃん、またまた大丈夫……?」


律「ゆ、ゆい……教会に……」


澪「ずっと棺桶に入ってろ!」


澪「……あら?あそこにいるのは……」


梓「あ!ゆ、唯先輩!」


唯「ほえ?」


憂「お姉ちゃん、あれって……」


律「誰だ……?何も聞こえねぇ、何も見えねぇ……」


唯「お父さんがいたよ、りっちゃん……」


ヘンリー『ホウカゴ、見たよな?』


唯「うん、見たよ、ヘンリー……」


ヘンリー『オレも……あの人の姿は忘れないぜ。するとあの女の人がもしかして…?』


マリア『そういえば、神の塔はたましいの記憶が宿る場所とも言われているそうです。だからこそ、すべてを見通すふしぎな鏡がまつられているのだとか…。今の幻影も、もしかしたら誰かのたましいの記憶だったのかもしれません』


紬「魂の記憶……パパスさんも、昔ここへ来たことがあるのかしら」


唯「一緒にいたひとは、多分お母さんだよね?お父さんとお母さんも、昔ここに鏡を探しに来たのかなあ」

…………


唯「なかなか手強いモンスターさんが増えて参りました」


澪「そうだな。こっちのレベルも上がってきてるとは言っても、気が抜けないな」


律「しかし憂ちゃんの読みが見事に当たったよなー、ナイトめちゃくちゃつえーじゃん」


梓「べホイミもすぐに覚えましたし、攻撃翌力もありますからね」


紬「アズサちゃんも優秀よ」


梓「……」


唯「そうだね、アズニャンのなめまわしとか、あまいいきとか、凄く便利だよ、べホイミだって覚えたし!」


梓「……」


律「アズサのなめまわしがなかなか便利なんだよなー、色んな敵に効くしな」


澪「なかなかバランスの良いメンバーに育ってきたよな」


憂「??梓ちゃん、急に黙っちゃってどうしたの?」


梓(うう~、プリズニャンに代わるモンスター、早く仲間になってぇ…… )

…………


唯「あ、ホイミスライムが仲間になったよ!」


律「お!これは回復役として活躍してくれるんじゃないか?」


紬「次に名前をつけるのは澪ちゃんね」


澪「あ、私か……」


唯「どうする?澪ちゃん」


澪「そうだな……(あのつぶらな瞳、青くてつるつるの顔?体?そしてあのうねうねした足?触手?そう、この子の名前は……)」


澪「る、ルンルン……」


律「」


梓「」


紬「素敵な名前ね、澪ちゃん!」


唯「よーし今日からキミの名前はルンルンだぁー!」


現在仲間モンスター

スライム(唯命名・ぷるん)
プリズニャン(律命名・アズサ)
ドラキー(憂命名・ドラッチ)
メタルスライム(紬命名・めるめる)
スライムナイト(梓命名・ナイト)
ホイミスライム(澪命名・ルンルン)

…………


澪「うーん、律、あそこ……」


律「通路がないな」


梓「奥にある宝箱にきっと鏡が入ってるんでしょうけど、どうやってあそこまで行くんでしょうね」


律「ムギと憂ちゃん、どう思う?」


憂「うーん。そうですね」


紬「ここまで特にヒントってなかったわよね?」


五人「うーん…………」


唯「あ、通れたよーみんなー」


律「へ?」


憂「え、お姉ちゃんどうやって!?」


唯「んー?なんかねー、右端歩いてみたら行けたよー」


澪「落ちてたらどうするつもりだったんだ」


唯「えー?だって悩んでたって仕方がないしー」


梓「それはそうですけど……」


紬「うふふ、こういうときは、唯ちゃんが一番頼りになるかもしれないわね」


憂「すごいよ!お姉ちゃん!」


唯「えへへー」


律「ま、何はともあれ、これでこの塔はクリアだな!」


ホウカゴは ラーの鏡を 手にいれた!

…………



『いったいどうしたことか!2人の太后さまが会ったとたんとっくみ合いのケンカに!なんとか2人を引きはなしたが、王さまにもどちらがどちらか分からなくなったのだ!』


律「おー、なんかいきなり大変なことになってんなー」


デール『う~ん、どちらが本物の母上だろうか……。兄上だけに苦労させてはとボクなりにやってみるつもりだったのに…。どうもボクのやることはヘマばかりだな』


律「おいおい……」


ヘンリー『あちゃ~。自分から行動してみたらこの結果かよ。そういえば、あいつ昔からどんくさかったんだよな』


紬「自分なりになんとかしてみるつもりだったのね」


梓「その意気込みは良いと思いますけど……」


マリア『さあ、今こそアレを…!』


唯「ラーの鏡だね!よーし!」


律「いけー!唯!!」


唯「……」


憂「お姉ちゃん、どうしたの?」


唯「どっちに使えば良いんだろう……?」

…………


太后(右)『デールや、この母が分からぬのですか?さあこっちへいらっしゃい」


ヘンリー『う~ん。こっちが本物かな? なんかうす汚れてるし……。でも、オレが知ってるこの人はこんなにやさしそうじゃなかったな』


太后(左)『ええい!私が本物だとなぜ分からぬのかっ!このうすぎたない女を早く牢に入れておしまい!』


ヘンリー『ああ、あのヒステリックな声、子供のころを思い出すよ。こっちが本物かな?』


唯「りっちゃんどう思う?」


律「え?私?うーん、ヘンリーの言う通り左じゃないか?あんな感じだったじゃん」


唯「ムギちゃんは?」


紬「私は右だと思うわ。汚れているのは長く牢に入れられていた証拠じゃないかしら」


唯「じゃあ左が偽物だねー」


律「私に聞いた意味な」


唯「使い方はやくそうとかと同じでいいんだよね?ほいっ」


なんと鏡には 魔物の姿がうつし出された!

梓「ムギ先輩大正解ですね!」


紬「たまたまよ♪」


澪「正体は魔物だったんだな……」


律「まさか自分達の国が魔物に支配されてたなんて、国民が知ったらショックだなこりゃ」


太后『そ、その鏡はっ!ええい正体がバレてはしかたがない!』


唯「わあ、変身したよ」


憂「というか、元の姿に戻ったって感じかなあ?」


ニセ太后『こうなったら 皆殺しにしてくれるわっ!』


律「げげ、ボス戦だ!」


澪「そういえばストーリーばかり追いかけていて、意識的なレベル上げはしてなかったな」


梓「唯先輩、大丈夫そうですか?」


唯「が、頑張ってみるよ……」


憂「危なくなったら助けるからね、お姉ちゃん!」

…………


澪「ふう、特に問題なく勝てたな」


梓「でも、これまでのボスと比べると少し戦いにくかったですね……ゲマは別ですけど」


律「ルカナンとかマヌーサの重要性が段々上がってきてるよなー」


紬「そうね、効果がある相手とない相手の見極めも必要かも」


憂「攻撃呪文もそうみたいだよ、お姉ちゃん」


唯「そうだね憂、こりゃ大変だあ」


澪「メンバー構成も、覚える魔法で流動的にして行った方がこれから便利かもしれないな」


唯「ということは、これからぷるんやめるめるの出番も回ってくるかもしれないねえ~」


ニセ太后『おろかな人間どもよ……。オレさまを殺さなければこの国の王は世界の王になれたものを…。ぐふっ!』


唯「なんで最後吹き出したのかな?」


澪「いや、違うだろ」


梓「ていうか男だったんですね」


律「何年も女装してたのか……結構恥ずかしい奴だな、アイツ」


なんと太后さまはニセ者だった。
このウワサはまたたく間に国中にひろがり そして夜が明けた…。

…………


デール『ホウカゴ。兄上と共に、よくぞ母上のニセ者をたおしてくれました。心から礼を言いますぞ。あのままだとこの国がどうなっていたか……まったくボクは王さまとしては失格ですね』


紬「デール王もきっと大変だったのだから、責任を感じることなんてないと思うわ」


梓「悪いのは光の教団ですからね!」



デール『だから、ホウカゴさんからもたのんでくれませんか?兄上が王さまになるように』


唯「ええ!?それはダメだよ!」


憂「お姉ちゃん」


唯「うぅ、ヘンリーは仲間なのに……」


ヘンリー『王さま。その話はおことわりしたはずですが』


唯「ほら、ヘンリーもこう言ってくれてるよ!」


紬「……」

デール『しかし 兄上……』


ヘンリー『子分は親分の言うことを聞くものですぞ。もちろんこの兄も、できうるかぎり王さまを助けてゆくつもりです』


唯「え?ヘンリー、それじゃあ……」


律「……なあ唯、ヘンリーの服装、気付いてるだろ?」


唯「うん……」


澪「ヘンリーは、ラインハットの為に尽力をして行きたいんだよ。そして、その決意の表れが、あの正装なんだよ」


唯「うぅ……もう仲間とのお別れは辛いっす……」


律「まあ、行方知れずのビアンカやゲレゲレとは違ってさ、ヘンリーはずっとラインハットにいる訳だし、元気出せよ、唯」


唯「そうだね、りっちゃん……」


ヘンリー「……というわけで、ホウカゴとはこれ以上旅を続けられなくなっちゃったな。いろいろ世話になったけど、ここでお別れだ。お前に買ってもらった武器や防具は、そのふくろに入れておいたからな。じゃあ、元気でやるんだぜ、ホウカゴ」


唯「ヘンリーもね。これまでありがとね、ヘンリー。またね……」

…………


さすらいのたびびと!


ナイト「そりゃっ!うりゃっ!」

アズサ「ニャーゴ!」

ルンルン「ヒラヒラッ」


律「うーん。とは言っても、なんか味気ないメンバーになっちゃったな」


澪「モンスターが仲間になるって知ったときは嬉しかったけど、さすがに人間がホウカゴしかいないってなると寂しいよな……」


梓(プリズニャン降格の可能性が下がっちゃった……うう……)


憂「お姉ちゃん、そろそろ元気出そうよぉ」


唯「大丈夫だよ、うい~」


紬「唯ちゃんの為にも、早く人間の仲間が増えてくれると良いんだけど……」


澪「まあ、とりあえず港に行こう、久しぶりに船が来るはずだって言ってたしな」


律「あの港に行くのも久しぶりな気がするなー、次はどんな話になるんだろうな?」


唯「そろそろ楽しいお話になって頂けるととてもとても助かるんで~す~け~どぉ~」


憂「そうだね、重たいお話が続いたもんね……」


律「これって子供向けのゲームだよな……?」


澪「その筈だけどな……?」

…………


唯「おー、新しい街に着いたねぇみんなー」


澪「ここはちゃんとした港町って感じだな」


梓「ポートセルミっていうんですね。セルミの意味はよくわからないですけど、街の名称も港町って感じがします」


憂「独特なネーミングが多いですよね?呪文なんて特に」


律「でもなんかそれっぽく聞こえてくるから不思議だよなー、なんか法則でもあったりしてな」


紬「町の名前の由来とかを考えてみたら楽しいかもしれないわね!」


澪「じゃあ、サンタローズは?」


律「うーむいきなり難問だな」


梓「サンタクロースと何か関係あるんでしょうかね?」


唯「え?三太郎って人が作った村なんじゃないの?」


澪「いやおかしいだろ」

…………


農夫『ひーお助けを!』


律「お、なんだなんだ?」


『お助けをはねえだろ!おれたちはおめえのたのみを聞いてやろうってんだぜ』


『だからさっさとその金をわたしな!』


農夫『んにゃ!あんたらは信用できねえだ。この金は村のみんなが村のために…』


澪「よくわからないけど、絡まれてるみたいだな」


『強情なおとっつぁんだぜ!ん?』


『なんだよお前は?オレたちとやろうっていうのか?』


梓「こっちにまで絡んで来ましたね……」


憂「お姉ちゃん、農夫さん困ってるみたいだし、助けてあげようよ」


唯「そうだね!ヘンリーめ!相談もしないで勝手に決めてぇ!!!」


五人(八つ当たり!?)

…………


『けっ!おぼえてやがれよ!』


律「あいつら普通にモンスターだったな」


梓「モンスターって酒場とかに来るもんなんですね……」


澪「まあホウカゴもモンスターを連れて歩いてるから、人のことは言えないけどな」


農夫『あぶねえところをありがとうごぜえました。んだ!あんたなら信用できるだ!おねげえだ。オラのたのみを聞いてけれ!』


律「まーた随分と田舎臭い喋り方だなー」


紬「唯ちゃん、聞いてあげよう?」


唯「もちろんだよ!」

…………


農夫『……んじゃオラは先に村に帰ってるから、きっと来てくんろよ!オラの村はここからずっと南に行ったカボチ村だかんな!』


梓「一気に喋って一気に帰っていきましたね……」


律「まあ、とりあえず化け物を退治してくれってことだよな」


澪「畑荒らしか。きっとまた魔物だよな」


憂「お金も受け取っちゃったし、そのカボチャ村ってとこに行ってみよっか!お姉ちゃん」


唯「カボチ村だよ、憂」


憂「え?」


唯「カボチ村」


憂「カ、カボチャ村!あれぇ?」


律(なんか)


梓(憂の)


澪(意外な側面を見たな)


紬(かわいい……)

…………


律「うーわ、こりゃまた寂れてんな~」


澪「畑を荒らされてるせいで栄えようがないのかもしれないな」


『ここはカボチ村じゃぞ。けんど化け物のせいで近頃作物がとれんでのう。わしもそろそろお山にいこうかと思うとるよ』


唯「お山?お山になにかあるのかな?」


律「いや唯、これは」


唯「?」


紬「待ってりっちゃん」ヒソヒソ


律「どうした?」ヒソヒソ


紬「ただでさえ暗いお話が続いたでしょ?お山の意味を教えたらきっと、唯ちゃん落ち込んじゃう気がするの」ヒソヒソ


唯「りっちゃんー?」


律「ああ……確かに、死のうとしてるなんて知ったら」


唯「ええ!?死ぬ!?」


律「げげ」


憂「お山に行って、木の実とかを取るんだよ、お姉ちゃん」


唯「木の実?」


憂「そうだよ、あと、川にいるお魚さんを釣ったりするんじゃかないかな?」


唯「そっかぁ~、でも、お婆さんお山に登るの大変だよねぇ、手伝ってあげたいなぁ」


憂「そうだね、お姉ちゃん」


律「ふう良かった、唯の扱いは憂ちゃんの方が心得てるよな」


澪「あれで納得しちゃう唯もどうかと思うとけどな」

…………


梓「虎のような狼のような化け物って、やっぱりモンスターですね」


唯「怒ったときのあずにゃんみたいだね」


梓「んな!?」


律「なんか強そうだなー、一応レベル上げしとくか?」


唯「お腹が空きましたぁ~」


澪「そういえば私も……」


梓「あはは……もう13時ですね……」


律「時間過ぎるのはえー」


紬「憂ちゃんに作ってもらってばかりは悪いし、何か買ってくる?」


澪「そうだな、じゃあ、私が……」


憂「大丈夫です!もう出来てますから!」


梓「え!?」


澪「いつの間に!?」


憂「えへへ、きっとこうなるだろうな~って思って、朝のうちに色々準備してたんです。あ、もう晩御飯も出来てますから、安心して下さいね!今夜はシチューですよ♪」


律「唯……憂ちゃんを……くれないか?」


唯「だめです」

律「くう!じゃあ、これでどうだ!!」


唯「!?」


りつが なかまに なりたそうに こちらをみている!
なかまに してあげますか?▼


唯「こっこれは……!」


はい
いいえ←


律「なんでだぁー!なんでだなんでだぁー!」


唯「だってりっちゃんには聡くんがいるじゃん!!」


憂「はーい、お昼はサンドイッチとサラダですよー♪あ、スープもあります!」


みんな「いただきまーす!!」


律「うおー!うんめえ!」モグモグ

唯「うい、ほんとにありがとね?わたしなにも手伝わなくて……」


憂「いいの!私こそごめんね?ゲームが楽しみで、ちょっと手抜きなご飯になっちゃって……」


澪「そんな、こんなにちゃんと用意してくれたのに手抜きな訳がないよ」


梓「そうだよ、それに晩御飯まで……」


紬「ごめんね?ちゃんとお礼はするから……」


憂「いえいえ、ほんとに良いんです!皆さんが美味しそうに食べてくれるだけで嬉しいです」


律(ムギのお礼ってどんなんだろうな)モグモグ


唯「あ、さわちゃんからメールだ」


澪「なんだって?」


唯「トンちゃんのご飯あげたよーって」


澪「あー……明日もお願いしておこうか」


唯「そうだね」

…………


梓「さて、レベルもこんなもんじゃないですか?」


澪「そうだな」


律「しかしナイトほんとに強いな、これホウカゴより強いんじゃないか?」


憂「ヘンリー王子がいなくなって不安でしたけど、ルンルンちゃん(ホイミスライム)がしっかり補ってくれていますよね」


唯「凄いよね!みんな回復出来るし!」


澪「本当にそれは大きいよな。これならよっぽどの相手じゃなきゃ全滅はしないよ」


梓「では、その畑荒らしが来る洞窟に行ってみましょうか」


唯「そうだねあずにゃん!」

…………


澪「ついはなすコマンドを押したくなっちゃうけど、今はあんまり意味ないんだよな」


律「モンスターも喋ればいいのにな」


唯「ナイトは喋ってるよ。……そりゃっうりゃっだけど」


梓「知的なイメージがた落ちですよね」


なんと! まほうつかいが おきあがり なかまに なりたそうに こちらをみている!


律「お、やったじゃん唯」


唯「えええええええええかわいくないいいいいいいいい」


紬「そんなこと言ったらかわいそうよ唯ちゃん」


唯「だってぇ……」


澪「まほうつかいっていうくらいだし、きっと強い魔法を使えるようになるんだよ。仲間にしておこう」


唯「うーん、わかった……」


憂「名前、お姉ちゃんの番だよ」


唯「ぇぇ~……マホウで」


五人(適当……)

…………


憂「お姉ちゃん、多分あのモンスターだよね?」


唯「そうだね、後ろにあるのは剣かな?」


律「なんであいつ、こんなところにいるんだろうな?」


紬「あの剣は大事な物なのかしら?」


梓「なんか強そうですけど、戦ってみましょうか!」


唯「そうだね、カボチ村の人との約束もあるしね!」


『ガルルルルルーーーー!!!』

…………


キラーパンサーが あらわれた!


唯「キラーパンサー?」


澪「キラーパンサーって、あれだよな、妖精の村で」


紬「ゲレゲレちゃんがキラーパンサーの子供だったのよね」


梓「地獄の殺し屋って呼ばれてるモンスターでしたっけ」


キラーパンサーの こうげき!
ホウカゴは 1の ダメージを うけた!


律「あれ?なんか弱くないか?」


梓「強い技を使ってくるかもしれませんよ、油断出来ません」


キラーパンサーは ようすを みている。


唯「あずにゃん、キラーパンサーって、地獄の殺し屋って呼ばれてるんだよね?」


梓「そうですよ、妖精の国で聞きましたよ?」


キラーパンサーの こうげき!
ホウカゴは 3の ダメージを うけた!


唯「うーん……」

梓「どうしたんですか?」


唯「じゃあどうしてこの子は、カボチ村の人達を襲ってないのかなあ?」


梓「それは…………なんででしょうか」


唯「おかしいよね?殺し屋さんなんだよね?」


澪「言われてみればそうだな」


律「戦い方もなんか消極的だしな、なんかあるのかもしれないな」


憂「お姉ちゃん、でも、どうするの?」


唯「わかんない……でも……」


キラーパンサーは なにかを おもいだそうと している。


紬「……!!」


憂「あ……!!」


唯「わかった!!」


律「おいおい、もしかしてこいつ……」


澪「……ゲレゲレか?」


梓「うそ……!」

唯「そう!そうだよ!ゲレゲレは良い子だから、人間を襲うことなんて出来なかったんだよ!」


紬「でも、唯ちゃん」


唯「だけどお腹は空くもん。だからきっと、仕方なく畑を荒らしちゃってたんだよ。悪いことをしてるってゲレゲレにはわからないんだよ」


憂「お姉ちゃん、どうするの?」


唯「……」


ホウカゴたちは にげだした!


律「唯」


唯「ここで、生きていってもらうしかない……かなあ……」


澪「でも、それだとカボチ村の人達が……」


唯「憂、どうしよう?ゲレゲレを連れてく方法ってないのかなあ?」


憂「うーん……」

律「このキラーパンサーがゲレゲレだとしてさ、あの剣ってなんなんだろうな?」


澪「最初からここにあった……とは考えにくいか」


梓「ゲレゲレが守っているようにしか見えないですよね」


憂「ゲレゲレちゃんにとって大事なもの……なのかな?」


紬「大事なもの……大事なものって……思い出?」


唯「思い出…………あ!!!ムギちゃん!思い出!思い出だよ!!」


紬「唯ちゃん?」


梓「何かわかったんですか!?」


唯「うん!ほら、みんな、アルカパで!」


~~~~


ビアンカ『ホウカゴ!』 


ビアンカ『しばらく会えないかもしれないから、これをあげる……』 


ビアンカ『そうだわ!ゲレゲレちゃんにつけてあげるね』 

ビアンカはゲレゲレにリボンをつけてあげた! 


~~~~


澪「ビアンカのリボンか!」


唯「そうだよ!!」

『ガルルルルルーーーー!!!』


キラーパンサーが あらわれた!


唯「だからきっと、こうすれば……!」


ホウカゴは ビアンカのリボンを キラーパンサーの めのまえに かざした!


唯「ほら、ゲレゲレ、こっちにおいで!」


憂「……」


紬「……」


なにかを おもいだしたようだ!


律「おお!」


梓「これは……!」


澪「凄いぞ!唯!!」


キラーパンサーは ホウカゴの かおを なめはじめた!


唯「や、やったあーー!!!」


憂「お姉ちゃん!やったね!お姉ちゃん!!」


唯「うん!やった!やったよ憂!!」


紬「唯ちゃん……本当に凄いわ……」


なんと! キラーパンサーは ゲレゲレだった!

…………


ゲレゲレ『フニャー』


唯「あははは、フニャーだって、相変わらずだねぇ、ゲレゲレ」


澪「大きくなったな」


梓「こんなに大きくなっても、フニャーなんて鳴くんですね」


律「ん?なんだ梓、聞こえなかった」


梓「え?だからフニャーなんて」


律「ん?」


梓「だからフニャーって……は!?」


憂「梓ちゃん猫の真似うまーい!」


律「フニャー♪」


梓(は、はめられた~~!)

紬「あら?ゲレゲレが剣の方に……」


唯「どうしたの?くれるの?ゲレゲレ。大事な物なんじゃないの?」


ゲレゲレは 紋章の入った つるぎを 大事そうに もってきた。


律「お、これは値打ち物なんじゃないか?」


澪「紋章って、何の紋章なんだろう」


この紋章には 見覚えがある……。


憂「ホウカゴくんは知ってるみたいだよ、お姉ちゃん」


唯「えー?なんだろうね?」


なんと!
パパスのつるぎだ!


六人「!!!!!!!!!!」


ホウカゴは パパスのつるぎを 手に入れた!

…………


唯「お父さんの剣……!」


憂「そっか、あの神殿で取り残された後に、ゲレゲレちゃんはこの剣を見つけたんだね」


紬「ホウカゴちゃんの姿も、パパスさんの姿もなくて、この剣だけが残っていて……」


唯「いつか、また会えたときに、渡してくれようと思っていたんだね、ゲレゲレ」


律「……パパスが使っていたくらいだ。きっと良い剣なんだろうな。だから、きっと奪おうとしてくる奴も多かったんだろうに」


澪「だからこうして、こんな洞窟に奥にいて、守っていたんだな。ずっと一匹だけで」


梓「10年ですよ……たった一匹で10年なんて……」


唯「ゲレゲレが守ってくれたのは、お父さんの剣だけじゃないよね」


紬「唯ちゃん」


梓「先輩」


唯「だって、ホウカゴは、お父さんがこの剣で自分を守ってくれるのをずっと近くで見てたんだよ。きっとこの剣は、ホウカゴにとってお父さんそのものだよ。そんな剣だもん。……ゲレゲレは、ホウカゴとお父さんの思い出も守ってくれたんだよ」


憂「そうだね。お姉ちゃん……」


唯「ゲレゲレ、偉かったね、頑張ったんだね……本当によしよしってしてあげたいけど、なでなでしてあげたいけど……私たちには出来ないのが辛いよ。でもこれからは、いっぱいいっぱい、ホウカゴに可愛がってもらえるもんね、可愛がってもらってね。良かったね、ゲレゲレ」


ゲレゲレ「フニャー。ゴロゴロゴロ……」

ゲレゲレが 仲間に くわわった!

…………


律「あ、唯、馬車がいっぱいみたいだぞ?」


唯「え?馬車って思ったより小さいんだね」


澪「まあ、パトリシアが引ける重量にも限界はあるだろうしな……どうする?」


梓「!ゲ、ゲレゲレが帰って来たことですし、キャラの被るプリズニャンを……」


唯「まほうつかいを外そう~」ピッピッ


梓「お、遅かった……」


紬(可愛くないものには結構容赦ないのよね、唯ちゃんって……)

…………


澪「でも、考えてみたらカボチ村の人達になんて説明すれば良いんだろうな?」


紬「村の人達にとっては、ゲレゲレちゃんが脅威だったことは確かだけど……」


唯「うう、ゲレゲレだって生きていくのに必死だったんだよぉ……」


律「それはわかってるって。ゲレゲレを責めてなんかいないよ、唯」


梓「でも、顔を出さない訳にはいかないですよね。約束をしちゃってますし」


憂「ゲレゲレちゃんはこれからずっと私達と一緒ですし、もう村も大丈夫ですよ。きっとわかってくれます!」


澪「そうだな。ああ、あとこれが終わったら、もう一度ポートセルミに行こう。この件があって、ろくに町の中を見れなかったしな」

…………


農夫『話は聞いただ…あんたは化け物とグルだったんだってな。あんたを信用したオラがバカだったよ』


梓「なっ!?」


紬「……」


律「なんだコイツ!!そんな言い方はないだろ!」


『わはははは!こりゃまたけっさくだべ!あんた、化け物とグルだったとはな!あんたもうまい商売を考えたもんずらよっ。とにかく残りの礼金をもらったらとっとと村を出て行ってくんろよ』


唯「……」


憂「……」


村長『わかってるだ。なーーーんにも言うな。金はやるだ。約束だかんな。また化け物をけしかけられてもこまるだし…』

ホウカゴは1500ゴールドを受け取った。

村長『もう用はすんだろ。とっとと村を出て行ってくんろっ』


澪「……なんだよ。こんな言われ方って……」


律「ゲームとは言え頭に来たぞ!!こんな村……」


唯「もう良いよ、りっちゃん」


律「唯、だけど!」


唯「ポートセルミ、行こ」


紬「そうね」


憂「そうしよう、お姉ちゃん」


澪「ムギ、憂ちゃんも……」


紬「良いのよ、二度と来なければ良いだけの話だもの」


憂「そうです」


唯「おいでーゲレゲレ」


律「ここは従うか」


梓「ですね……」


澪「うん……」

…………


唯「りっちゃん、よく見たらここ、ステージがあるんだね?」


律「ああ、そうだな」


唯「この世界にギターってあるのかなあ?」


紬「うふふ、ピアノはあるわよ、唯ちゃん」


唯「そうなんだよねー!ずるいムギちゃん!」


紬「ごめんなさーい♪」


憂「ピアノがあるなら、きっとギターもあるよ、お姉ちゃん!」


唯「そうだよね、憂~」


澪「ポートセルミに入るまではずっと無言で心配したけど、もう大丈夫そうだな」


梓「切り替えの良さが逆に怖いですけどね」


律「いつまでも引きずらずに、私らに気を使わせないようにって思ってるんだよ、本人たちがそう思ってるんだから、ちゃんと汲んであげようぜ」

…………


澪「ここのクラリスっていう踊り子さんは凄い人気みたいだな」


律「澪とどっちが人気だろうな?」


澪「なっ、学校のレベルと比べるな!バカ!」


唯「あ、なんか楽屋の方に行っちゃったよ?話しかけてみよー!」


憂「え?え?良いのかな?勝手に入っちゃって……」


梓「ってもう入っちゃってる」


クラリス『え?あたしがすごい人気ですって?今はね……。でも若いうちだけ。いつまでも続けられるお仕事じゃないし…』


澪「……なんか思ったよりちゃんと先が見れてる人っぽいな」


律「人気商売は辛いよなーさわちゃんもそんなこと言ってた気がするよ」


クラリス『ねえ…。あたしと結婚してくれない?』


六人「」

唯「え?え?え?え?え?」


律「な、なんだなんだなんだ?この急転回は?」


澪「お、おおおおおちつつつつつ」


梓「お、おおちついてくだささささ」


律「だ、だめよ!ホウカゴちゃんはまだ16歳なんだから……!」


憂「お、お姉ちゃん、ど、どうする?」


唯「ど、どうするって、ダメだよ、ホウカゴにはやることがいっぱいあるんだし……」


梓「そ、そうですよ!結婚なんて……」


クラリス『なーんてね。カンタンに決められたらいいんだけど…』


律「な、なんだよからかったのかよ!!」


唯「あー、びっくりしたぁー」


紬「心臓に悪いわ……」

…………


唯「いやいや~、それにしてもいきなり結婚なんて言われると思わなかったよ~」

梓「完全に不意討ちでしたね」


澪「でも、ホウカゴってこれまで不幸続き立ったもんな……せめて結婚はさせてあげたい気もするよ」


紬「そうね、今まで苦労をしてきた分、幸せになってもらいたいわ」


律「なあ唯、さっき灯台に行った時さ、なんか煙があがってるのが見えたじゃん?」


唯「そうだっけ?」


憂「見えたよ、お姉ちゃん」


律「ポートセルミではもうやることなさそうだし、とりあえず煙の方へ行ってみようぜ。何があるんだろ、多分」


澪「ポートセルミを出て西だぞ、唯」


唯「えーと、左でいいんだよね?おけおけ~」

…………


律「それにしてもさ、パパスの剣で戦うってのも、なんか感慨深いよな~」


唯「この、攻撃するときのズシャッが懐かしいよね~」


澪「エフェクトって言うんじゃないのか?」


唯「ええ?エフェクターは音変えるやつでしょ?」


律「おお、唯の奴が珍しく軽音部っぽい発言を」


澪「そのエフェクトとは違うけどな……」


梓「でも、お父さんみたいに会心の一撃や二回攻撃は出来ないんですね」


澪「うーん、てっきり武器の特性かと思ってたんだけどな」


紬「あれはパパスさんの元々の実力だったってことよね」


憂「天空の剣は装備出来なくても、お父さんの剣があればホウカゴも幸せだよね、お姉ちゃん!」


唯「そうだね、うい~!」

…………


律「お、町があったな」


唯「煙が出てたのはここなのかなー?」


澪「うん、きっとそうだよ。入ってみよう」


梓「うわあ、なんだか迷路みたいな町ですね」


紬「ほんとね、どうしてこんな町作りをしているのかしら」


憂「この町では視点切り替えをマメに使った方が良いかもね。お姉ちゃん」


唯「これ、ぐるぐるすると目が回りそうだよねぇ~」


律「唯が一番酔いやすいんだからやり過ぎるなよー?」


唯「うっぷ、あずにゃん、ごめん、ちょっと変わって……」


梓「もう酔ったんですか!?」


律「ほーら言わんこっちゃない……」

…………


『この町に呪文の研究をしている老人がいると聞いてやって来ました。今は失われている古代の呪文をいろいろと復活させるつもりとか…』


澪「呪文の研究か。もしかしたら、何か役に立つ呪文を教えてもらえるかもしれないな」


律「お!そりゃ良いな!……でも、どこにいるんだろな?」


梓「町がごちゃごちゃしてますし、地道に町の人のお話を聞いてみます」


律「おぉ~、梓は唯と違って丁寧だな」


唯「えぇ~?そう?」


澪「唯は私達が言わないと壺も樽もスルーするじゃないか」


唯「えへへ~、だってなんかめんどっちくて……」


『ラインハットのお城でたいそう豪華な結婚式があったらしいですよ。なんでも結婚なされたのは王さまの兄上のヘンリーさまとか…』


澪「へえ、ラインハットで結婚式か」


律「私らが船に乗ってすぐってことか?」


梓「へぇ~、お城の結婚式ってどんな……って……!?」


紬「ヘンリー王子が!?」


律「なにい!?」


澪「なんだって!?」


憂「だ、誰と結婚したんだろう……?」


唯「あずにゃん、ラインハットに戻ってみようよ!!」


梓「で、でもポートセルミからもう船は出てないって言ってましたよ?」


律「そうだったな……」


唯「えー?ヘンリーどんな人と結婚したんだろう……」


律「っていうか、結婚式するなら連絡の一つでもしろってんだー!」


澪「旅に出ちゃってたし、携帯も何もないから難しかったんだろ、きっと……」


唯「そう考えると不便だねぇ……」


紬「ラインハットにはまたいずれ訪れる機会もあるだろうし、ヘンリー王子のことは気になるけど先に進みましょうか」


憂「そ、そうですね」


唯「なんだかポートセルミから結婚の話題が続いてるねぇ……」

…………


梓「魔法助手募集の張り紙がありますね」


律「全く下手なダンジョンよりよっぽとわかりにくいな、この町は……」


澪「防具屋も夜にならないと開かないって言ってたし、ちょっと不便だよな」


憂「ポートセルミから見えた煙はこれだったんですね」


唯「いかにも研究してるって感じだねぇ、オカルト研みたい」


律「あー、確かにオカルト研も呪文とか研究してそうだよな~。怒らせたらメラとか使ってきたりしてな」


澪「それはちょっと失礼じゃないか……?」

…………


ベネット『なんじゃお前さんは?お前さんもけむたいとか文句を言いに来たのかえ?』


梓「文句を言いに来た訳じゃないですし、ここは“いいえ”で良いですよね?」


律「いいんじゃないかー?私たちは別に煙たくないしな」


澪「確かにそうだけど、ちょっと現実に引き戻される発言だな」


憂「そ、そうですよね、ゲームですもんね、ちょっと入り込み過ぎちゃったかも……」


紬「うふふ、ゲームなんて滅多にしないし、こういう時くらいは良いんじゃないかしら?」


唯「私もそう思うっす!」


梓「唯先輩はのめり込みですよ!」


律「おや?そんな事言ってる梓が一番のめり込み注意なんじゃないかー?」


梓「え!?そ、そんなことないです!私はちゃんと距離感を持って……」


律「このゲームやり出してから練習練習って言わなくなったのはどなたかしら~?」


梓「……はっ!」


唯「そういえばちょっとだけやってすぐに練習するって言ってたよね、あずにゃん」


梓「…………はっ!はっ!」


律「あの梓さんが、せっかくの土日にギターを触らずゲームをすることを選ぶなんてぇ~」


唯「雪でも降るかしら?」


律「お空からヒャドかしら?」


梓「ううううう~~!!!」

梓「れ、練習は練習でちゃんとしますからね!この週末しない代わりに月曜日からは猛特訓ですから!」


律「あーはいはい」


梓「り、律先輩にも厳しくしてやるですからね!」


律「おーそれは怖い怖い~」


梓「うぅ……」

…………


澪「知っている場所に移動出来る呪文か、それを覚えられたら冒険が凄く便利になるな」


律「キメラの翼みたいな感じなのかな?」


唯「でもキメラの翼って一番最後に行った所にしか行けないよね?」


憂「キメラの翼をもっと便利にした呪文ってことだね!」


唯「そういう呪文なら私も覚えたいよぉ~」


梓「私も覚えたいかもです」


唯(…………あずにゃんがそんな呪文を覚えちゃったら……)


~~~~


梓『唯先輩!今日から部活の時間延長して練習ですからね!』


唯『えぇ~でもそれだと夕飯の時間に……』


梓『私が呪文で送ってあげるから大丈夫です!』


唯『そ、そんなぁ~』


…………


唯『さーて、そろそろお休みの時間~』


梓『唯先輩!』


唯『わあ!あずにゃん!?どうしたのこんな時間に!?』


梓『寝る前に練習しようと思ったんですけど、せっかく呪文を覚えたので唯先輩も誘いに来ました!さあ私の家で練習しましょう!!』


唯『ひ、ひえええご勘弁をぉ~!!』


~~~~

紬「唯ちゃん?」


憂「お姉ちゃん?どうしたの?」


唯「はっあずにゃん……」


梓「え?」


唯「やっぱり人間は、自分の足で歩くのが一番だよ……!」


律「急に何言ってんだ?」


澪(何を想像したの大体予想がつくな……)

…………



紬「ルラムーン草、夜にしか光らない草って、何だか素敵ね」


唯「でも、タイミング良く夜に行くのはちょっとめんどくさそうだよ」


律「確かになー。ぐるぐる歩き回るのはちょっとな」


紬「あ、そうだわ唯ちゃん、あれを試してみない?」


唯「あれって?」


紬「サンタローズの洞窟で、やみのランプってアイテムを見つけたじゃない?」


澪「ああ、そういえばあったな」


梓「どんなアイテムなのか確認してなかったですね」


憂「あ、紬さんもしかして!」


紬「ええ、もしかしたら昼と夜を入れ換えるためのアイテムなんじゃないかなって思ってたの」


唯「おぉ!だとしたら凄く便利なアイテムだよ!朝起きた瞬間学校おしまいに出来るよ!」


澪「無断欠席になるぞ」


梓「練習もサボりになりますね」


唯「うう、そうか……」

…………


紬「あ、唯ちゃん、この光ってるのががルラムーン草じゃないかしら?」


唯「おお、間違いないねえ!」


澪「よし、無事に手に入ったし、ルラフェンに戻ろうか」


唯「よおし、じゃあキメラの翼で……」


梓「唯先輩、ちゃんと歩いて帰りましょうよ。経験値とお金を少しでも稼ぎたいですし」


唯「ええー?遠いじゃーん、めんどくさいよお」


澪「でも梓の言う通り、こういうときにコツコツ稼いでおけば後でレベル上げする手間が少しは省けるぞ」


唯「それはそうだけど……」


憂「お姉ちゃん、もしかしたらモンスターさんの仲間も増えるかもしれないよ?」


唯「でもこの辺りのモンスターかわいくないし……」


梓「ダメです!歩きますよ!」


唯「うぅ~……」


澪「ゲームやってる時でも唯と梓の関係は変わらずだな」


律「このさまようよろいって強そうだよな~」


梓「確かに強そうですけど、何度か戦ってる割には仲間にならないですよね」


憂「モンスターさんによって仲間になる確率が違うのかもしれないですね。もしかすると、仲間にならないモンスターさんもいるのかも」

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