ドロシー「またハニートラップかよ…って、プリンセスに!?」 (710) 【現行スレ】

L「今さらながらプリンセス・プリンシパルのssだ…注意事項があるので任務開始前に読んでおけ」

7「…注意事項はこれです」


…注意事項…

主要な登場人物は百合・レズのみ(ユリ・アイズ・オンリー)

投下遅い

キャラ崩壊あり

シリアス少なめ


L「…以上だ。この内容を理解してから任務を開始しろ」

………


…case・ドロシー×プリンセス…

ドロシー「…は?」

L「聞こえたはずだ、『D』」

ドロシー「いや、聞こえたけど……プリンセスにハニートラップを仕掛けろ…って」

L「そうだ。今の所「チェンジリング作戦」は上手く行っている……が、この世界に『シロ』の者などいない、いるのは黒か灰色だけだ」

ドロシー「ましてや自分からこっちに加わってきたプリンセスとあらば、なおの事信用できない…か?」

L「そうだ。そこで『D』、お前がプリンセスに甘い顔を見せて本音を聞き出せ…どんな手段を使っても構わん」

ドロシー「…了解」


…部室…

プリンセス「美味しい紅茶ね…ドロシーさんもいかが?」

ドロシー「そうだなぁ、あたしは酒の方がいいけど…ま、頂くよ」

ベアトリス「珍しいですね、ドロシーさんがそんなに素直に」

ドロシー「なんだとぅ?」むにぃ…!

ベアトリス「い、いふぁいれすぅ…もう、ほっぺたがちぎれるかと思ったじゃないですか」

ドロシー「ふふ、そういう生意気な口をきくからだろ……っと、あちっ!」パチャ…!

ベアトリス「ほら、そうやってふざけているからですよ!」

ドロシー「あちゃー…なぁベアトリス、悪いけどあたしの部屋から代わりの服を取って来てくれないか?」

ベアトリス「えぇー?私はドロシーさんのメイドじゃないんですよ?」

ドロシー「仕方ないだろ…まさかこの濡れた服で帰るわけにはいかないし、ここに置いてある着替えって言ったら『活動用』の服だけなんだよ」

プリンセス「…ベアト、ドロシーさんの着替えを取って来てあげて?」

ベアトリス「姫様がおっしゃるなら……じゃあ取ってきますね」

ドロシー「頼んだぞ…クローゼットの中の服を見て鼻血を噴くなよ♪」

ベアトリス「誰がですか!…まったくもう……」

プリンセス「くすくすっ…表向きはああ言ってはいるけれど、ベアトはドロシーさんが嫌いじゃないのよ♪」

ドロシー「分かってるさ…何しろスパイだもんな?」

プリンセス「ふふ、スパイにしてはベアトは正直だけど♪」

ドロシー「かもな…って、冷たいな」

プリンセス「ティーカップ一杯分を浴びてしまったものね…ハンカチを貸してあげるわね?」

ドロシー「いや、胸元だけだし着替えも取って来てもらってるからな……よいしょ…」するっ…

プリンセス「…」

ドロシー「……ところで、プリンセス」

プリンセス「何かしら?」

ドロシー「ベアトリスもいないから言うけどさ……あたしの事、どう思ってるか…教えて欲しいんだ///」

プリンセス「それはもう、大事なお友達で『チーム白鳩』の頼れるメンバーよ?」

ドロシー「そうじゃなくて……あたしはさ、プリンセスの事が…」ずいっ…

ベアトリス「はい、取ってきましたよ……って、なんでそんな格好をして姫様に迫ってるんですか///」

ドロシー「お、悪いねぇ…って、真っ赤になってるってことはあたしに気があるのかー?」

ベアトリス「な、何いってるんですか…とにかく着替えて下さいっ!」

ドロシー「はいはい」

プリンセス「…ふふふ」

…夜・寝室…

ドロシー「それにしても…昼間は上手くかわされちゃったし、これからどう聞き出すか……はーい?」

プリンセス「…こんばんは、ドロシーさん♪」

ドロシー「うぇっ、プリンセス…!?」

プリンセス「ふふ…お茶の時はお答えできずじまいだったでしょう?きっと答えを早く聞きたいだろうと思って…♪」

ドロシー「いや、それは嬉しいけどさ……ネグリジェだけで来たのかよ///」

プリンセス「ええ」

ドロシー「と、とにかく中に入ってくれないか……寮監だのに見つかるとうるさいからさ」

プリンセス「そうだったわね。それでは、お邪魔します♪」

ドロシー「あー…えーと……飲み物でもだそうか?」

プリンセス「お気遣いなく♪…ベッドの上に座ってもいいかしら?」

ドロシー「あぁ、どうぞ…あたしもベッドに座るから、隣にかけなよ」

プリンセス「ありがとう♪…そういえば、ベアトはアンジェたちと一緒に監視任務に就いているのよね」

ドロシー「ああ…何でも王国側のスパイが入り浸っている部屋があるとかで……」

プリンセス「と言うことは…お昼みたいにお話が途中で止まることもないわけね♪」

ドロシー「お、おい…プリンセス……その、近いって///」

プリンセス「だって、私の事を好きって言ってくれたのはドロシーさんでしょう?」

ドロシー「いや、まぁ…それはそうだけどさ……だいたいプリンセスにはアンジェもベアトリスもい…」

プリンセス「二人きりの時に他の女の子の名前を出すのはいけないわ…♪」

ドロシー「いや、プリンセスもアンジェとベアトリスの名前を言ってたろ…」

プリンセス「だって…私はプリンセスだもの♪」

ドロシー「……横暴だな、おい」

プリンセス「ところで…私がドロシーさんの事をどう思っているか……だったわね?」

ドロシー「あ、あぁ…正直、プリンセスはあたしたちの…いや、あたしの事……どう思う///」

プリンセス「そうねぇ……食べちゃいたいわ♪」

ドロシー「…は?」

プリンセス「だって…あんな美味しそうな胸元を見せつけられたら……我慢できる人はいないんじゃないかしら///」ぐいっ…!

ドロシー「おわっ…ち、ちょっと待った!」

プリンセス「何かしら?」

ドロシー「いや、こういう物ってもう少し…その……なんか準備とかいるんじゃないか?…たとえば、ロウソクで照らされたステキなディナーとか……星空の下で告白とか……///」

プリンセス「ふふ、そうね…それじゃあ♪」

ドロシー「いや、カーテンを開けてどうするんだ…?」

プリンセス「ドロシーさん…好きよ///」

ドロシー「うえぇぇっ…!?」

プリンセス「はい「星空の下での告白」完了…では改めて♪」

ドロシー「うわっ、ちょ……待って…アンジェ、助けてくれぇ……ああぁぁっ!」

………



…翌朝…

プリンセス「ふふ、楽しかったわ…それじゃあ、また♪」

ドロシー「…ぜぇ、はぁ……死ぬかと思った…今までのケースの中で一番あの世に近づいたな……」

…図書館…


7「それで…?」

ドロシー「あー…プリンセスがダブル・クロスって言う可能性はない」

7「その根拠は?」

ドロシー「…プリンセスが『チーム白鳩』のメンバーを気に入っているから///」

7「それだけ?…理由にしては弱いわね」

ドロシー「いや、あたしが直接ハニートラップを仕掛けて聞き出したんだから間違いない…って、なんてこと言わせるのさ///」

7「スパイとはそういう物よ……で、どうだった?」

ドロシー「…何が」

7「夜のプリンセスよ…聞かせてちょうだい、そのためにこの作戦を『L』に提案したんだから」

ドロシー「おい」

7「こほん…いえ、今後プリンセスの寝返りを防ぐための予防線、あるいは弱点として記録しておかないと……」

ドロシー「…正直、あの状態のプリンセスは極めて危険だと思う」

7「なるほど」

ドロシー「正直、チームの全員をぶつけても勝てるかどうか……あたしは無理だと思う」

7「…つまり、プリンセスはタチ、と……とりあえずよくやってくれたわ」

ドロシー「ああ…あと、今回の件で」

7「なにかしら」

ドロシー「危険手当と傷病手当を加えておいてくれ…」



…寮の一室…

プリンセス「ふふふっ…♪」

ベアトリス「なんだか今日の姫様はとても肌艶がいいですね?」

プリンセス「そう?」

ベアトリス「はい、なんだかウキウキしていらっしゃいますし…何かいいことでもあったんですか?」

プリンセス「…かもね♪」

ベアトリス「?」


………

…case・ドロシー×ベアトリス「The perfume」(香水)…


アンジェ「さてと…今回の任務は王国防諜機関のトップ、『ノルマンディ公』の情報を提供してくれる人物と接触することにあるわ」

ドロシー「なぁアンジェ、どうして直接接触しなきゃいけないんだ?…メールドロップで受け取る「デッド・レター・ボックス」方式じゃダメなのかよ?」

アンジェ「仕方ないわ…該当の人物は情報提供の代わりにこちらへの亡命を希望しているの」

プリンセス「ロンドンの壁を越えるには私たちが手引きしてあげないといけないものね……接触場所はとある貴族の舞踏会よ」

アンジェ「当然、プリンセスと私たち『ご学友』の分の招待状は届いているわ」

ドロシー「なるほどな……じゃあ車を出そうか?」

アンジェ「ええ…接触は私とドロシー。プリンセスは動くと何かと注目を浴びるから、ベアトリスと一緒にカバーを」

プリンセス「ええ♪」

ベアトリス「はい」

ちせ「ならわしはどうすればよいのじゃ?」

アンジェ「ちせは今回の接触が罠だった時に備えて潜んでいてほしい…銃は音が大きいし、よっぽどの事態でない限り抜けない。その分刃物なら静かに処理できるから」

ちせ「…うむ、承知した」

ドロシー「それじゃあ、お洒落なドレスで行くとしますか♪」

…舞踏会…

プリンセス「あら、伯爵夫人…ごきげんよう♪」

アンジェ「…予想通りプリンセスが会場の注目を集めているわ」

ドロシー「まぁ、プリンセスだもんな…おっ、ノルマンディ公が来たぞ」

アンジェ「……プリンセスに接近しているわね」

プリンセス「ご機嫌麗しゅう……あら」

ノルマンディ公「これはこれは奇遇ですな、姫君…舞踏会は楽しんでおられますか?」

プリンセス「ええ、とっても♪」

ノルマンディ公「それは何より……では、失礼」

プリンセス「…おかしいわね」

ベアトリス「何がです、姫様?」

プリンセス「伯爵の主催とはいえ小ぶりな舞踏会なのに、ノルマンディ公が来るなんて……何かあるわ」

アンジェ「…どちらにせよ、接触の時間はもうすぐよ……場所は中庭。「舞踏会の最中に気分が悪くなって、新鮮な空気を吸いに出た」と言うことになっているわ」

ドロシー「了解……で、あたしが付き添いってことだな」

アンジェ「ええ…年齢的にもオールドミスになりかかっているし、ちょうどいいわ」

ドロシー「う、うるさい!……これも任務なんだから仕方ないだろ?」

アンジェ「冗談よ」

ドロシー「…」

アンジェ「それじゃあ、スリー、トゥー、ワン…任務開始。……あー、急に頭が痛くなってきただー」

ドロシー「…ここでその田舎者設定を使うのかよ……気分がすぐれなくていらっしゃるの?」

アンジェ「んだー、頭が痛くて割れそうだー……空気を吸いにお庭に連れて行ってくんろー……」

ドロシー「ならお手をお貸ししますわ……あと、その顔で棒読みするのはやめろよ…噴き出しそうになるだろ」

アンジェ「…いいから……ランデヴーまであと五分二十秒よ」

…中庭…

アンジェ「…おかげで生き返っただー」

ドロシー「おい……さっきから聞いてるけどかなり雑だろ」

アンジェ「…ドロシー、こんな時にふざけないで」

ドロシー「いや、それは私の台詞だろ……おい、向こうの女…紺のドレスに白い花のコサージュを付けているぞ。対象はあれか?」

アンジェ「間違いないわね…合言葉は『ダンスはお嫌いですか』よ」

ドロシー「で、答えが『ええ、ワルツはあんまり得意ではないので』だったな」

アンジェ「その通りよ。それじゃあ接近するわ…」

ドロシー「…待てアンジェ、もう一人来た……って、あいつ!」

アンジェ「あの時の褐色女ね」

ドロシー「『ガゼル』だったか?…ノルマンディ公の子飼いの部下っていう話だったな」

アンジェ「……まずい」

ドロシー「…あいつ、情報提供者を片づける気だぞ……どうする?」

アンジェ「仕方ないわ…」ばさっ…!

ドロシー「…やれやれ、やっぱりそうなるか」しゅるっ…!

ガゼル「おや……こんなところでお散歩ですか、それとも…誰かと密会の予定でも入っているのかしら」

情報提供者「な…何の事かさっぱりですわ……」

ガゼル「そう…なら仕方ないですね……」ナイフを抜くガゼル…と、「Cボール」の閃光がきらめく

アンジェ(潜入バージョン)「…早く」情報提供者を抱え中庭を離れるアンジェ…

情報提供者「きゃっ…!」

ガゼル「…待て!……くっ!?」

ちせ(潜入バージョン)「ふんっ!」たたたっ…と駆けより袈裟懸けに一太刀浴びせる

ガゼル「…ちっ!」パンッ!……滑らかな動きでクリーム色をしたドレスの裾をはねあげると内腿に差していたリボルバーを抜き撃ちで放った…

ちせ「む…!」

ドロシー「……っ!」パン、パンッ!…六連発、.455ブリティッシュ口径の「ウェブリー&スコット」リボルバーを抜き、二発撃つ

警備隊「銃声だ!庭の方からだぞ!」

ガゼル「ちいっ…!」パンッ、パン!…ドロシーに牽制射撃を加えながらちせと渡り合う

ちせ「くっ…!」ガキンッ…キンッ!

ドロシー「…」パァン!…ちせとガゼルが切り結んだところでバラの花壇から腕を伸ばし、精密に狙って一発放った

ガゼル「うっ!」銃弾が身に着けていた何かを弾き飛ばすと、ガゼルはパッと身を翻し、何かを放り投げてから飛びのいた…

ちせ「…待て!……くうっ!」追いかけようとした瞬間に発煙弾の煙がもうもうとたちこめる……

ドロシー「…ちせ、深追いは厳禁だ。どの道警備だの野次馬だのがうじゃうじゃやって来るからな……さ、早く逃げるぞ」

ちせ「うむ…わしとしたことが勝負を焦り過ぎた」

ドロシー「なぁに、いい腕だったじゃないか…ん?……あいつ、何か落としていったな…香水か?」

ちせ「さぁ、急ぎ撤収じゃろう?」

ドロシー「あぁ、そうだな」

…部室…

アンジェ「とりあえず情報提供者の身の安全は確保できたわ」

ドロシー「まずは何よりだな…しかし、あの『ガゼル』とか言う褐色女……相当な腕だ」

プリンセス「それにノルマンディ公が情報の引き渡しを察知していた…ゆゆしき事態ね」

ドロシー「あぁ、全く……あ、そう言えばあの女がこれを落としていったんだが」…コト

プリンセス「ピンクのガラス瓶……香水?」

ドロシー「あぁ、プリンセスにもそう見えるよな?」

プリンセス「ええ…アンジェはどう思う?」

アンジェ「私も香水だと思うわ。香水は女性スパイの必需品だもの…でも、どこに入れていたって?」

ドロシー「多分、ふともものガーターベルトに差していたと思う……脚を止めようとして弾を撃ちこんだときに弾き飛ばしたみたいだからな」

ベアトリス「普通は香水をそんなところに入れたりはしませんよね?」

ちせ「もしや、毒薬かも知れんの」

ベアトリス「うーん…瓶は一見普通の香水にしか見えませんが……」持ち上げてランプの灯りに透かしてみる

ドロシー「ちょっと待て、棚に試薬があったよな……あれで…」

ベアトリス「きゃっ!」…プシュ

プリンセス「ベアト!?」

ドロシー「うぷっ!…おい、何やってるんだ」

ベアトリス「だってふたが外れていて…大丈夫ですか?」

ドロシー「あ、あぁ…ベアトリス、そっちは?」

ベアトリス「私も少し浴びましたけど…まさか死んだりしないですよね?」

アンジェ「今調べるわ……一応試験紙には反応がないわ」

ドロシー「…じゃあ、ただの香水だって言うのか?」

アンジェ「確証は持てないけど、そう言うことになるわ」

ドロシー「あんな『歩く兵器庫』みたいな女が武器じゃない物を持っているなんて信じられないけど……な」

アンジェ「どうしたの、ドロシー?」

プリンセス「ドロシーさん?」

ドロシー「い、いや…ベアトリスってよく見ると……ちんまいし可愛いよな///」

アンジェ「!?」

プリンセス「ええ、そうね♪」

ベアトリス「…な、何言ってるんですか!?」

ドロシー「いや…何ていうか……こう…抱きしめて押し倒したら涙目になって抵抗するんだろうなって思ったら…はぁはぁ///」

アンジェ「…どうやらこれは、媚薬か何かのようね」

ちせ「そのようじゃな…」

ドロシー「なぁベアトリス、よかったら私の部屋で泊まっていかないか……イケナイ事なんてしないって///」

ベアトリス「うわ…絶対に嘘じゃないですか!」

ドロシー「大丈夫大丈夫、ちょっとイイコト……したいだけだから///」わきわき…♪

ベアトリス「ひぃ…!」

アンジェ「こういう物は数時間で効果が切れるものよ…それじゃ」

プリンセス「…ベアト、ドロシーさんと仲良くね♪」

ちせ「うむ、わしもぬか漬けのぬか床をかき回しに行かんとな…さらばじゃ」

ベアトリス「えっ、ちょ……ちょっと待ってくださいよ!?」

ドロシー「よーし、捕まえたぞぉ♪」

ベアトリス「ちょ、ちょっと待って…んぅっ!?」どさっ…!

ドロシー「んちゅぅ、ちゅぅ……ちゅっ……ぷはぁ、ベアトリスは甘くって美味しいなぁ♪」

ベアトリス「ドロシーさんっ…や、止めて下さいっ!」

ドロシー「大丈夫だって、『チーム白鳩』はいつも一緒だから…安心してあたしに任せなって♪」

ベアトリス「…誰も残ってくれませんでしたけど……って、何をする気ですか!?」

ドロシー「そりゃあもちろん…このつつましいお胸をじっくり吟味させてもらおうと思って……な♪」ふにっ…もみゅ♪

ベアトリス「きゃぁぁぁっ!?」

ドロシー「おー…可愛いなぁ、この手のひらに収まるサイズ感に……おほぉ、サクランボはピンク色かぁ……よーし、優しいドロシーお姉さんが摘まんじゃうぞぉ♪」

ベアトリス「…いい゛っ、まるっきり変態じゃないですかぁ!」

ドロシー「んふふ、ベアトリスが可愛いのがイケナイんだろ…ホント、罪作りだなぁ♪」ちゅぅぅっ♪

ベアトリス「ん、んぅぅぅっ///」

ドロシー「さてさて、お次は…と♪」するっ…手早くスカートとズロースを引き下ろす……

ベアトリス「ちょ、ちょっと…!?」

ドロシー「やっぱり下はつるつるかぁ…うんうん、そうじゃないとな♪」ちゅる…くちゅっ♪

ベアトリス「ひぐっぅっ…んぁぁっ!?」

ドロシー「おー、喘ぎ声も可愛いけど…見つかったらことだもんなぁ……よいしょ♪」キチッ…カチカチ…

ベアトリス(CV・玄田哲章)「ちょっと、どこをいじってるんですかぁ!」

ドロシー「大丈夫大丈夫…天井のシミを数えている間に終わるって♪」くちっ…ぬちゅっ、ずぶっ♪

ベアトリス「…っ!……!!」

ドロシー「それじゃあいよいよ…んっ、おぉぉ///」にちゅ…くちゅっ♪……ベアトリスを押し倒し脚を広げさせて自分の秘所と重ね合わせると、一気に腰を動かす…

ベアトリス「…んー、んーっ!!」ぐちゅっ、じゅくっ…♪

ドロシー「うわ…これ気持ち良すぎるだろ……プリンセスはいつもこんなにいい思いしてたのかよ、おっ、おほぉぉっ…♪」ずちゅっ、ぐちゅっ…ぐちゅ♪

ベアトリス「んーっ…んっ、んー///」

ドロシー「分かってるって…ドロシーお姉ちゃんと一緒に気持ち良くなりたいんだよな♪」机に両手をつかせると背中に回り込んで、広げた脚に人差し指と中指を入れてかき回す…

ベアトリス「んーっ、んっ…んんぅ///」ぐちゅっ……とろとろっ…とぽっ……ぽたっ♪

ドロシー「んっんっ、んんっ…ほぉら、こんなとろっとろに濡らしちゃって……それじゃ、失礼して♪」じゅる…じゅうぅっ、ぴちゃっ♪……今度はしゃがみこんで舌を這わすドロシー…

ベアトリス「んっ、ん゛ぅぅーっ…んぐぅぅーっ!!」とろっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

ドロシー「おいおい、私の顔にそんなに浴びせるなよぉ……でもまぁ、温かくて気持ちいいし……よーし、もっとイっちゃえ…そーれっ♪」

ベアトリス「ん゛んんぅぅ…っ!!」がくがくっ…ぷしゃぁぁ…っ♪

ドロシー「おー…派手にイったなぁ……よしよし♪」

ベアトリス「んーっ…んぅ///」

ドロシー「なに、『もっとイかせてください、ドロシーさん』だって?…よーし、ならあたしもうんと頑張っちゃうかな♪」

ベアトリス「んぐぅぅっ…んーっ!!」

…廊下…

プリンセス「……わぁ、すごい…今度私も試してみましょう♪」


………

期待してコメントを下さる皆さま、ありがとうございます…引き続きがんばりますのでどうぞよろしくお願いします

…case・アンジェ×プリンセス「The codebook」(暗号表)


…中庭…

アンジェ「…みんな、新しい任務が入ったわ」

ドロシー「うぇぇ、また任務かよ?…この間の任務であんな目にあったばっかりだって言うのに……もっとも、ベッドの上で喘ぎながらよがるベアトリスは可愛かったけどな♪」

ベアトリス「ちょ、何てことをいうんですかっ!?」

ドロシー「まぁまぁ…寂しくなったらいつでもあたしが慰めてやるからさ♪」

ベアトリス「ド、ドロシーさん…///」

ドロシー「お…おい、そういう表情するなって!…その……こっちだって反応に困るだろ///」

プリンセス「まぁまぁ、二人ともかーわいい♪」

ちせ「こほん……で、任務の内容はなんなのじゃ?」

アンジェ「ええ…今回の任務はアルビオン王国海軍のコードブックを入手すること、場所は海軍省の情報部」

ドロシー「おいおい、海軍省だって?…そんなところ、あたしたちみたいな女学生がノコノコ出かけていったって入手どころか近寄ることすらできる場所じゃないだろ」

アンジェ「大丈夫、すでにコードブック自体は海軍省から持ち出されているわ」

ドロシー「…どういうことだ?」

アンジェ「海軍省内部の人間で、見返りと引き換えにこちらにコードの写しを提供した人物がいる……つまり欲得ずくでコードブックを売り払ったということね」

ドロシー「やれやれ、この世界にはそんなやつばっかりだな…で?」

アンジェ「コードブックは現在カットアウト(切り捨て可能な連絡役)の所まで来ているわ…私たちの任務はカットアウトからコードブックを受け取り、持ち帰ること」

ドロシー「そのカットアウトとはどうやって?」

アンジェ「とある貴族がダンスパーティを開く予定なんだけど、その時にカットアウトがメールドロップにコードブックを置いていくことになっている。私たちはそれを入手して持ち帰るだけ…お互い、顔も見ないで済むわ」

ドロシー「そりゃいいや…だけどアンジェ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「ノルマンディ公のワナじゃないだろうな?」

アンジェ「可能性がないとは言えないわ…ただ、今回の情報提供者にしろカットアウトにしろ、いずれも切り捨ては可能よ」

ドロシー「なるほどな…で、その舞踏会はいつなのさ」

アンジェ「三日後よ」

ドロシー「なるほどな…それじゃあ、うんとおめかししていこうかね♪」

ちせ「うむ…」ぽりぽり…

ベアトリス「んむむ…何なんですかっ、その変なのは!?」

ちせ「『たくあん』じゃが…食うか?」

ベアトリス「いりませんよっ!」

プリンセス「ふふふっ♪」

…舞踏会…

ドロシー「おーおー…綺麗な会場だ……しかも壁に入れこみやカーテンのかかった場所もたくさんあるな」

プリンセス「とっさの隠れ場所には困らないわね?」

ドロシー「ご名答…もっとも、相手側にとってもそうなるけどな」

アンジェ「大丈夫、入れこみに隠れている人間はいないわ」

ドロシー「どうしてわかる」

アンジェ「人が潜んでいたらカーテンのドレープ(ひだ)にムラが出来る…でも、ここのカーテンはどれも綺麗なものよ」

ドロシー「そうだな…それじゃああたしは一杯もらってくるかな♪」

アンジェ「タダだからって飲みすぎないでよ」

ドロシー「…ばか言え、それを口実に化粧室に入るんだよ」

アンジェ「知ってるわ」

ドロシー「相変わらず食えない女だな…それじゃあ、あたしはワインでももらってくる」

プリンセス「行ってらっしゃい♪」

貴族女性「あら、これはこれは王女様…お目にかかれて光栄でございますわ!」

プリンセス「まぁ、ムーンウォーク卿の奥さま……わたくしこそ、お会いできてうれしいですわ」

貴族女性B「まぁまぁ、王女様のお召し物はいつにもましてお綺麗ですこと…!」

プリンセス「ふふ…お褒めの言葉はありがたく頂戴いたしますわ、レディ・スマイリー」

アンジェ「……ベアトリス、プリンセスをお願い。私は先に受け渡し場所を確認してくるわ」

ベアトリス「…はい」

貴族女性C「おほほほ、王女様はお上手ですわねぇ」

プリンセス「いえいえ、わたくしなどミス・チャーミングの足元にもおよびません♪」

…数十分後…

プリンセス「あら、どうかなさいましたの?」

ドロシー「ええ、わたくし少々頭が痛むんですの…」

プリンセス「まぁ、それはいけません……さ、一緒にお化粧室に参りましょう?」

ドロシー「……お願いいたしますわ」

…化粧室…

ドロシー「あぁ、頭が痛いですわ…っと、メールドロップはここだよな……」

プリンセス「ええ…左から二番目の化粧台の、化粧筆の柄の中に……どう?」

ドロシー「あー…よし、あった」

プリンセス「よかったわ…それじゃあ後はドロシーさんの頭痛がひどくなって……」

ドロシー「アンジェたちがあたしを連れ出す…と」

アンジェ「……そう言う話だったけど事情が変わったわ」

ドロシー「どうした、アンジェ?」

アンジェ「王国防諜部が来たわ……どうも海軍省の裏切り者が捕まって歌った(白状した)みたいね」

ドロシー「ちっ…それでカットアウトの所にまでたどり着いたってわけか。手が早いな」

アンジェ「そうね……そこで計画を変更するわ」

ドロシー「ああ、どうする?」

アンジェ「ドロシーは予定通り早めに出ていくことになるわ……当然、彼らからすれば「防諜部が来ていたらどんなスパイでも真っ先に出ようとする」と、考える……」

ドロシー「が、そうじゃない…と♪」

アンジェ「ええ……私とプリンセスはコードブックを持ったまま最後まで残って、パーティを楽しむわ」

ドロシー「了解、それじゃああたしはさっさと出て行くことにするよ」

…玄関…

憲兵「お帰りの方は入り口で止まって下さい。実はこちらのお屋敷から「宝石が盗難にあった」と通報を受けまして…失礼ながら持ち物を確認させてもらいます……おや、具合が悪いようですね?」

防諜部エージェント「…」憲兵の後ろでドロシーの表情を注視している私服の男女

ドロシー「ええ、わたくし頭が痛くて……美味しいからとワインを頂きすぎてしまったようですの」

憲兵「それはそれは…お車ですか?」

ドロシー「ええ…」

憲兵「なるほど…ではハンドバッグの確認をさせてもらいます……何もありませんね、どうぞお気をつけて♪」

ドロシー「ありがとう…♪」

防諜部女エージェント「…失礼、お嬢さん」

ドロシー「まだ何か?」

防諜部女「ええ…少しこちらに来てもらえますか?」…物陰に連れて行くと胸の谷間をのぞき、コルセットを上から撫でて、さっとドロシーの身体検査を済ませる

ドロシー「もう構いませんかしら?…正直気分が悪くって、早く休みたいんですの」

防諜部女「ええ、結構です」山高帽の男の方に首を振る

防諜部男「では、お気をつけて…後は中だ、行くぞ」

ドロシー「ええ、ありがとう……ふぅ」車に乗ってからほっと息を吐くドロシー…

…邸内…

憲兵「お静かに願います!…実はこのお屋敷にあります宝石類が盗難にあったので、犯人捜索のために持ち物を調べさせてもらっております。何かと不快に感じるでしょうが、ぜひともご協力をお願いします」

貴族「ほう、君は我々のような身分の者を疑うのかね?」

貴族女性「それに男性に持ち物を見せることなどできませんわ!」

防諜部女「…無礼は重々承知しておりますが、これも犯罪取り締まりのためですので……また、女性の方は私がお調べします」

貴族女性「なら…仕方ないですわね。それにしても貴族のわたくしたちを疑うなんて……」

プリンセス「…アンジェ」

アンジェ「ええ…男のエージェントだけなら触られずに済むからあっさり持ち出せる所だったけれど……」

ベアトリス「どうします?」

アンジェ「そうね……ベアトリスはここに残って。プリンセス、もう一度化粧室に行きましょう」

プリンセス「何か策があるのね?」

アンジェ「ええ」

…化粧室…

プリンセス「それで、どうするの?」

アンジェ「…プリンセス、コードブックはカプセルに入っているわね」

プリンセス「ええ、そうよ」

アンジェ「…入れて」ドレスの裾をたくし上げ、ペチコートを下ろす…

プリンセス「アンジェ?」

アンジェ「何をしているの……いくら防諜部でも女学生のこんな所までは調べないわ」

プリンセス「分かったわ…じゃあ、入れるわね」つぷっ…くちゅ……

アンジェ「…んっ」

プリンセス「……大丈夫、入ったわ」

アンジェ「ならもういいわ…さぁ、あまりここにいると感づかれる」

プリンセス「ええ、そうね」

防諜部女「…所持品の検索終了。誰からも出ませんでした」

防諜部男「ならまだ屋敷内か……よし、捜索を続けろ」

プリンセス「…ふふっ♪」

………

…部室…

ドロシー「おう、お帰り…いやはや、さっきのはさすがに冷や汗が流れたな?」

アンジェ「別に」

ドロシー「相変わらずだな……で、上手く行ったか?」

プリンセス「ええ、みんなのおかげよ♪」

ベアトリス「そんな、姫様に褒めて頂けて光栄です…///」

ちせ「うむ、かたじけない」

ドロシー「なぁに、ちょろいもんさ♪」

プリンセス「ふふ、それじゃあ「今日の活動」はここまで……みんな、お休みなさい♪」

ドロシー「ああ、お休み」

ちせ「うむ、それでは…」

ベアトリス「私は姫様がお休みするまでお側に……ふわぁ…」

ドロシー「ほらほら、小さいベアトリスはもうねんねの時間だろ?」

ベアトリス「あー、またそうやって私の事を子供扱いして!」

プリンセス「ふふ、いいのよベアト…あとは私とアンジェさんでやるから、先にお休みなさい♪」

ベアトリス「そうですかぁ…でしたらお言葉に甘えて……ふわぁぁ……」

ドロシー「…それじゃあ、お休み」

プリンセス「ええ、お休みなさい♪」

アンジェ「…プリンセスも先に休んでいいのよ?」

プリンセス「ふふ…「シャーロット」が頑張っているのに、私だけ休むわけにもいかないでしょう?」

アンジェ「そう…ならご自由に///」

プリンセス「ええ、そうさせてもらうわ♪……さ、コードブックを取り出しましょう?」

アンジェ「ええ……んっ、く…」

プリンセス「…どうしたの、アンジェ?」

アンジェ「…出てこないわ」

プリンセス「え?」

アンジェ「カプセルが上手く出てこないわ…///」

プリンセス「え、それは困ったわね…」

アンジェ「仕方ないわ…ベアトリスの工具をつか……」

プリンセス「ダメよ、金属の工具で怪我をしたらどうするの?」

アンジェ「でも、そうでもしないと取り出せないわ」

プリンセス「なら…私が手伝ってあげる♪」

アンジェ「何ですって…?」

プリンセス「要は取り出せればいいのよね…さぁ、裾をたくし上げて?」

アンジェ「…これでいいかしら」

プリンセス「それじゃあよく見えないわ…もっとたくし上げて?」

アンジェ「ふぉれでいいふぁしあ(これでいいかしら)…?」真っ白なふとももをさらし、ドレスの裾をくわえているアンジェ…

プリンセス「ええ、これでよく見えるわ……あー、ちょっと奥まで入っちゃったのね♪」くちゅ…こりっ……

アンジェ「んっ、ん…///」

プリンセス「…それにしてもアンジェのふとももはすべすべね、とても触り心地がいいわ♪」

アンジェ「んぅぅ…ふざけてないで早く取り出して///」手で裾を持ちなおすと、顔を赤くしながら言った

プリンセス「だって…うまく取りだせないんですもの♪」くちっ…ちゅぷっ……

アンジェ「んっ…そんなに奥まで入っているはずがないわ///」

プリンセス「でもうまく取りだせないの……ふふ、アンジェのここってつるつるなのね♪」

アンジェ「んくっ…んぅぅ……そんなことはいいから///」

プリンセス「そうは言っても…乱暴にやってアンジェの大事な所に傷をつけたらいけないわ……あ♪」

アンジェ「…取りだせたの?」

プリンセス「いいえ…でも、何か滑りやすくするものを塗ったら取り出しやすくなるんじゃないかしら?」

アンジェ「そんなものあったかしら…んっ///」

プリンセス「ちょっと待って…これならどうかしら♪」

アンジェ「石けんね…」

プリンセス「少しお湯で溶かして…いいかしら?」

アンジェ「ええ…///」

プリンセス「わぁ…ぬるぬるになったわね、これなら滑って出てくると思うわ♪」

アンジェ「なら早くしてほしいわね…脚が冷えてきたから」

プリンセス「なら…私が温めながらやってあげる♪」

アンジェ「ちょっと……ふとももにほっぺたをこすりつけるのは止め……んくっ、んぅぅっ///」

プリンセス「何か言ったかしら♪」

アンジェ「…何でもないわ……んっ、んぅっ///」

プリンセス「うーん…なかなか出てこないわねぇ♪」くちゅくちゅっ…♪

アンジェ「んんっ、あんっ…んっ///」

プリンセス「ねぇアンジェ……アンジェったら、もしかして感じちゃってるのかしら?」

アンジェ「さぁ、何の事かしら…んんっ!」

プリンセス「ふふ『スパイは嘘をつく生き物』だったわよね…どう、気持ちいい?」

アンジェ「全然…裾を持ちあげている腕が疲れたから早く取りだして欲しいだけ……んくっ///」

プリンセス「ほんとに…そうかしら♪」くちゅっ、にちゅっ…じゅぶっ♪

アンジェ「んくっ、んんぅ…ええ……んぁぁぁっ///」

プリンセス「シャーロットは私にまで嘘をつくの?」

アンジェ「それがスパイよ……んくぅぅっ、あぁっ///」

プリンセス「ふぅん…なら、これはどうかしら♪」ぐちゅぐちゅっ…にちゅっ♪

アンジェ「んっんっ、んっ……んぅぅぅっ///」

プリンセス「あらあら…シャーロットったらこんなに濡らして……もうこれなら滑りやすくするものも要らないわね♪」

アンジェ「んっ、んんぅぅっ…///」

プリンセス「…大好きよ、シャーロット……ちゅっ♪」身体を伸ばしてアンジェの耳たぶに甘噛みするプリンセス…

アンジェ「あっあっ、あぁぁぁっ…そんなのっ…ず、ずるいっ……んあぁぁぁっ♪」ぶしゃぁぁ…っ♪

プリンセス「あっ、やっとカプセルが出てきたわ…よかったわね、アンジェ♪」

アンジェ「…はぁ、はぁ…はぁ……んあぁぁ…んっ、くぅっ///」くちゅ…くちゅっ♪

プリンセス「あら、まだし足りないの?」

アンジェ「…いいえ///」

プリンセス「ふふ…シャーロットは素直じゃないんだから♪」…くちゅくちゅっ♪

アンジェ「んっ…あぁぁぁっ♪」

………


見てるぞ

>>21 見て下さってありがとうございます、引き続きがんばります

…case・アンジェ×ベアトリス「The spy who loves princess」(プリンセスを愛したスパイ)…


…部室…

アンジェ「…さてと、前回の任務では上手くコードブックを入手できたわね」

ドロシー「色々ヒヤッとさせられたけどな」

アンジェ「スパイ活動なんてそういうものよ」

ドロシー「まぁね……で、また任務だって言うんじゃないだろうな?」

アンジェ「それで、新しい任務があるわ」

ドロシー「…おい」

プリンセス「まぁまぁ、それだけ私たち「チーム白鳩」が有能だって言う証拠じゃありませんか……ね、ドロシーさん♪」

ドロシー「うっ…まぁそうなんだけどさ///」

ちせ「それで、今度の任務は何なのじゃ?」

アンジェ「『7』から受けたブリーフィングによると、前回入手したコードブックのおかげでアルビオン王国海軍の動きがある程度察知できるようになったわ…とはいえ、王国側もこちらがコードを入手したかもしれないと危ぶんでいる……急に暗号を変更する可能性もある、ということね」

ベアトリス「じゃあ、また暗号表を入手しなくちゃいけないんですか?」

アンジェ「いいえ…今度は王国側に「暗号表がまだ手に入っていない」と思わせる必要がある」

ドロシー「なぁるほど…ある種のディスインフォメーション(偽情報・逆情報)ってやつか♪」

アンジェ「ええ…私たちはロンドン郊外のドックに停泊している王国海軍の空中戦艦へ侵入、わざとコードブックの奪取に失敗する」

ドロシー「で、王国の連中はこっちが「コードブックを手に入れてない」…って思ってくれるわけか」

アンジェ「ええ」

プリンセス「それで、侵入方法はどうするの?」

アンジェ「もちろん、非合法に接近して侵入することになるわ。王国がコードブックを入手できていないと思ってくれるなら、侵入に失敗しても構わない」

ドロシー「しかし相手は海軍の施設だからな……雨あられと鉛玉が飛んでくること請け合いだろ」

アンジェ「そうなるわね。なのでプリンセス…あなたは後方支援に回って」

プリンセス「ええ、分かったわ」

アンジェ「それで、ちせとドロシーが陽動…派手に暴れてくれて構わないわ」

ちせ「うむ、承知した」

ドロシー「はいよ」

アンジェ「で、私とベアトリスが侵入…ベアトリス、あなたは機械いじりが得意だから警報装置や通信設備の無力化をお願い」

ベアトリス「はい」

アンジェ「任務決行日は空中戦艦の乗員が一斉に休暇を取る訓練航海の後……二週間後になるわ。その時までに各自で相手の警備体制や装備を確認しておくこと」

………

…二週間後…

ドロシー「さてと……それじゃあ準備に取りかかりますかね♪」…アンジェに「スパイなら絶対にこれよ」と渡された黒に紫の裏地がついたマントを羽織り、鳥打ち帽をかぶり、黒の揃いを身にまとう……

ドロシー「それから…と……」ブリティッシュ.38口径の頑丈な六連発リボルバー「ウェーブリー・スコット」4インチ銃身モデルを取り出すと中折れ式のシリンダーを開いて一発づつ弾を込め、ふともものガーターベルトや腰回りに、ナイフ、煙幕手榴弾、爆薬とベアトリスお手製の時限装置数個、細いが丈夫な絹のロープと「七つ道具」を身につけていく…

ベアトリス「私も準備しないと…」ベアトリスは黒一色のメイドのような恰好をし、形も用途も様々な工具一式の入った小さいカバンと小型のリボルバーを一丁…

ちせ「うむ」狭い艦内で取り回しがいいように脇差と小柄を差し、笠と黒備えで身を固める…

アンジェ「私はいつも通り…それで十分」オートマチック・リボルバーという珍品「ウェブリー・フォスベリー・リボルバー」に弾を込め、シリンダーのある上部をスライドさせる…後は黒のマントにシルクハット、口元を隠す黒のスカーフに裾の短いドレス風の服…そしてコントロールから渡されている秘密兵器「Cボール」を腰にぶら下げた…

プリンセス「みんなよく似合っているわね…♪」プリンセスは黒のドレスに黒のケープ、顔にヴェールをかけて、3インチ銃身の小型リボルバーをしのばせる…

アンジェ「みんな、準備はいい?」

ドロシー「もちろん…さ、乗った乗った♪」ドロシーのカスタム・カーに乗り込んで霧がかった夜のロンドンを疾駆する…


…アルビオン王国海軍・空中戦艦用ドライ・ドック…


ドロシー「さて…じゃあ上手くやれよ、アンジェ?」

アンジェ「ええ」

ちせ「では…ドロシー殿、参ろうか?」

ドロシー「はいよ♪」にっと笑ってドライ・ドックの裏手に回る……

ベアトリス「じゃあ私たちも行きましょうか?」

アンジェ「ええ…」

プリンセス「行ってらっしゃい…アンジェ♪」ちゅ…♪

アンジェ「……行ってくるわ///」

…ドロシー・ちせ組…

ドロシー「…それにしても警備が甘いな」

ちせ「うむ…まさかここに侵入するような愚か者はおらぬと思っておるのじゃろう」

ドロシー「じゃあ、あたしたちは「チーム・愚か者」ってわけか…♪」

水兵「……おい、誰かいるのか?」

ドロシー「…ちせ」

ちせ「うむ…」たたたっ…と駆けると、刀の鞘走る音もさせずに首筋を一撃した……

水兵「ぐえっ…!?」

ドロシー「ひゅー…それが「峰打ち」って言うやつか……」

ちせ「うむ。一介の兵士なのじゃ、斬るまでもあるまい」

ドロシー「かもな…さ、行こう」水兵のライフルから弾薬のクリップを弾きだし、舷窓の外にぽいと放り出す…

…アンジェ・ベアトリス組…

ベアトリス「これが電信用のコード…こっちが警報用のコード……変換機がここにあって……」手際よくコードの配線を切ったり、ちぐはぐに並び替えたりしてしまう…

アンジェ「…もういいかしら」通路を見張るアンジェ…

ベアトリス「あと少し待って下さい……はい、できました♪」

アンジェ「そう、なら行くわよ」

ベアトリス「あ、待って下さい…道具をしまわないと……」

………

…ドロシー・ちせ組…

ドロシー「しかしこうも綺麗に片付いちまうと、陽動にならないよな♪」

ちせ「うむむ…普段から隠密行動に慣れているせいか、つい静かにカタをつけてしまうのぉ」

ドロシー「ま、そろそろベアトリスお手製の時限爆弾が…ほぉらきた♪」…空中戦艦の武器庫や副砲のケースメイトに仕掛けた時限爆弾が炸裂した

水兵「…何だぁ!?」

水兵B「警報っ!」

ドロシー「……それじゃあいっちょう…派手にやるとしますか♪」


♪~(劇中おなじみのピアノ曲)


水兵「…おい、誰だ!?」

ドロシー「お……悪いね、水兵さん…っ!」パンッ!

水兵「うぐっ…!」

水兵D「何だ…銃声っ!?」

ちせ「…」

水兵D「うぐっ…!」

水兵E「…こちら右舷通路、衛兵詰所どうぞ!…衛兵詰所どうぞ!?」

ドロシー「…止せばいいのに」パァン!

水兵E「ぐっ…!?」

下士官「警報!第一分隊は直ちに右舷第一甲板へ!…甲板の旋回機銃、用意急げ!」

ドロシー「おいおい…機関銃はまずいだろ!?」

水兵F「機関銃班、急げ!…装填しろ!」真っ直ぐな弾倉を上から込め、甲板の旋回銃座に装備された水冷式機銃が用意される

士官「探照灯、照射しろ!…なぜ点灯しないか!?」

水兵G「電源喪失、探照灯つきません!」

士官「ええい…破壊工作か……憲兵隊聞こえるか!」隔壁の電話に取りつき声を張りあげる…

烹炊員「…少尉どの?…こちら士官食堂ですが、何があったんです?」

士官「士官食堂だと!?…なんで貴様がこの回線に出るんだ!?」

烹炊員「なんでも何も……これは士官食堂の回線ですよ?」

士官「何!?」

水兵F「あっ…少尉どの、あそこ!」

士官「何だ!?」

水兵F「…分かりません、薄暗くてはっきりしませんが……あの影に発砲許可を!」

士官「よぉし!…構わん、撃て!」

ドロシー「……うへぇ、まるでハチの巣をつついた騒ぎだな」

ちせ「うむ…じゃが、これでアンジェたちは楽できるじゃろうな」

ドロシー「だな…!」機関銃が弾倉を交換するタイミングで身体を乗りだし、機銃手を撃ち抜く…

水兵F「うわぁ!」


………

…アンジェ・ベアトリス組…

アンジェ「始まったわね……ベアトリス、準備はいい?」

ベアトリス「…はい」

アンジェ「…そう、なら行くわよ」艦隊司令官用の居室に閃光弾を投げ込む…

衛兵「何だ…うっ!?」

衛兵B「うわっ……!!」

アンジェ「…」パン、パンッ!

ベアトリス「…情報通り機密書類の保管庫がありますね」

アンジェ「そうね…さあ、開けて」

ベアトリス「待ってくださいね……えーと、組み合わせ鍵ですね…」

水兵H「…おい、こっちだ!」

下士官B「侵入者は司令官室にいるぞ、急げ!」

アンジェ「……ベアトリス、急いで」パン、パンッ…!

ベアトリス「待ってください!…ね、お願いだから開いてください……」

アンジェ「…っ」パンッ!

水兵I「うわっ…ぐぅっ!?」

アンジェ「…はっ!」相手の四銃身式短機関銃をもぎ取り通路を薙ぎ払う…

下士官B「うぐ……くはっ…」

士官B「…第二しょうたーいっ、整列っ!銃構え!」

アンジェ「…ふぅ、教本通りにしか動けないなんて愚かね」鮮やかな紅い上着のアルビオン王国海軍の海兵隊を掃射する

士官B「がは…っ!」

海兵「ぐわぁ…!」

アンジェ「……まだなの?」

ベアトリス「もうちょっとで……やった、やりました!」慌てて暗号表を手に取るベアトリス…

アンジェ「…ならもうここに用はないわ」海兵隊に閃光弾を放ると司令官公室の大きな窓をピストルで撃ち抜き、全力疾走したままベアトリスを抱えて飛び出した…

ベアトリス「きゃぁぁぁ…っ!?」

アンジェ「ベアトリス、うるさいわ」腰の「Cボール」が鮮やかな緑色に光り、そのままドックの可動式屋根を構成する梁に飛び移った……と同時に暗号表を放り出し、叫んでいるベアトリスの声帯をいじる…

ベアトリス「…っ!……!?」

アンジェ「さ、後は脱出あるのみね…」

…ドロシー・ちせ組…

ドロシー「…なぁ、ちせ?」

ちせ「はっ!……なんじゃ?」

ドロシー「陽動は……もういいよな?」艦内の右舷側を暴れ回りながら、次々と現れる水兵や海兵隊員を打ち倒していく…

ちせ「…と、思うがの」

ドロシー「そんじゃ……撤退としゃれこもうか♪」

ちせ「うむ…頃合いじゃろうな……やっ!」

海兵「う、ぐぅ…!」

ドロシー「それじゃあ…お先にどうぞ♪」発煙弾を放ると、束ねてあった絹のロープを船外に垂らした

ちせ「うむ…かたじけない」

ドロシー「はいよ…下からスカートの中をのぞくなよ♪」最後に奪った小銃弾薬のクリップ数個を燃えている船室に投げ込み、熱で暴発して一斉射撃のように聞こえるのを確認してから、にやっと笑って滑り降りた…

………

…郊外・ドロシーの自動車…


ドロシー「ふぃー……なぁアンジェ、もうあんな任務は二度とやらないからな?」

アンジェ「ええ。それにその必要もないわ……予定通り暗号表は『落として』きたもの」

ベアトリス「それにしても、組み合わせ鍵の形式が変わっていたのには驚きました」

ドロシー「…誰かが暗号表を盗みに来ると思ったんだろうな」

ちせ「うむ。事実こうして「盗みに」入ったわけじゃからな」

ドロシー「まぁな…よし、ロンドン市街にはいるぞ♪」

プリンセス「まぁ、早いのね♪」

ドロシー「…とはいうものの、このまま広い道路を使って入ったら間違いなく検問か何かに引っかかるから……みんな、振り落とされるなよ♪」

ベアトリス「ちょっと、どこを走ってるんですかぁ!?」

ドロシー「見て分かるだろ、裏通りさ♪…うかつにしゃべると舌をかむぞ?」

アンジェ「十数分は早くなるわね」

ドロシー「おう。連中だって馬鹿じゃないからな、ロンドン市街まで車を走らせたときの最短時間を割り出して、それ以降に市街に入ろうとする車を取り調べるはずだ……ところがこっちはレコード破りの時間で、検問の準備が出来る前にロンドンに入っちゃおう…ってわけさ♪」

ベアトリス「ドロシーさんっ、岩…岩っ!」

ドロシー「分かってるって…踏ん張ってなよ♪」

プリンセス「…うふふっ、何だか愉快ね♪」

ちせ「ふむ…まるで「超高速ロンドン観光」じゃな」

ドロシー「それじゃあ「左手に見えますのがロンドンの壁にございます」……なんてな♪」

ベアトリス「ひゃあぁぁぁ…っ!?」

アンジェ「ドロシー、ここで右よ…運河にかかっている跳ね橋があるわ」

ドロシー「あいよ……って、おいおい!」跳ね橋が徐々にせり上がって、蒸気船に引かれた艀(はしけ)がゆっくりやってくる…

アンジェ「…ドロシー、いける?」

ドロシー「…もち♪」アクセルをふかし、開きかけた跳ね橋を踏み台にして対岸まで飛んだ…

ベアトリス「ひぃぃぃっ…!?」

プリンセス「まぁまぁ…空飛ぶ車なんて王室にもないわ♪」

ドロシー「…うっ、ぐうっ!……ふぅ、さすがにステアリングが暴れたな…スポークも何本かイったかも知れない……経費で落ちるかな?」

アンジェ「落ちるわ…ところで、車庫に着いたようね」

ドロシー「ああ…ところでアンジェ、時間は?」

アンジェ「零時五分前」

ドロシー「ってことは…十九分?……ひゅー、こりゃ史上最速記録かもな♪」

アンジェ「…大したものね」

プリンセス「ふふ、これならシンデレラの魔法も解けなくて済むわね♪」

ドロシー「ははは……それでは、どうぞカボチャの馬車から降りて下さいませ♪」

プリンセス「ええ。今日は素晴らしい舞踏会でした♪」

ドロシー「いえいえ、こちらこそ♪……ところでベアトリスはずいぶん静かだけど、途中で落っことしたかな?」

ちせ「いや、ここにおるが…ベアトリスよ、着いたぞ?」

ベアトリス「…うっぷ、話しかけないで下さい……うえぇ」

ドロシー「…やれやれ♪」

ベアトリス「うぇぇ…まだ目がぐるぐる回ってます……」

ドロシー「おいおい…だらしないな♪」

プリンセス「ふふ、ベアトはそこが可愛いのよ♪」

アンジェ「なら私は可愛くないわけね」

プリンセス「いいえ、アンジェはそうやってすぐやきもちを焼いたり、冷静なふりをして強がるところが可愛いわ♪」

アンジェ「もう……ばか///」

プリンセス「うふふっ…♪」

ちせ「…さて、それではわしは寝るとするかの…では、失礼する」

プリンセス「おやすみなさい♪…それじゃあ私もお休みしますから、ベアトは好きにしてていいわよ♪」

ベアトリス「はい、姫様…うっぷ……」

ドロシー「んじゃ、あたしは車のメンテをしに行くから…♪」

アンジェ「あまり遅くなると身体に悪いわよ、ドロシー」

ドロシー「はいはい、分かってますっての……全く口うるさい女だな」

アンジェ「……ご老体の貴女を気遣ってあげているのよ。お休み」

ドロシー「…まだ二十歳だってば!」

…廊下・アンジェの私室前…

アンジェ「それじゃあお休み……ベアトリス、どうしたの?」

ベアトリス「…いえ、さっきのアンジェさん」

アンジェ「さっきの私がどうかした?」

ベアトリス「姫様にからかわれて嬉しそうでした…」

アンジェ「そんなことないわ…だって私はプリンセスが嫌いだもの」

ベアトリス「…じゃあ私が姫様を取ってもいいんですね?」

アンジェ「そうは言ってない」

ベアトリス「なら姫様の事が好きなんじゃないですか♪」

アンジェ「そんな訳ないわ」

ベアトリス「どうしてですか?」

アンジェ「…だってプリンセスは王国の象徴で、共和国とは相いれない存在だし……」

ベアトリス「それは建前じゃないですか…本当はアンジェさんも姫様が好きなんでしょう?」

アンジェ「そんなことないわ、嫌いよ……じゃあ、もう寝るわ」

ベアトリス「あー、そうやって逃げを打つんですかぁ?」

アンジェ「……逃げなんて打つ必要はない、事実なのだから…そこまで言うなら私の部屋に来ればいいわ」

ベアトリス「ええ、そうさせてもらいます!」

アンジェ「…で、何ですって?」

ベアトリス「アンジェさんは姫様の事が好きなんでしょう?」

アンジェ「いいえ、嫌いよ」

ベアトリス「なら私と姫様で結婚してもいいんですねっ?」

アンジェ「ダメよ」

ベアトリス「なんでですか?」

アンジェ「…お互いに釣り合わないわ、一国のプリンセスとそのメイドではね……それにスパイの世界では結婚もカバー(偽装の身分)でしか与えられないものよ」

ベアトリス「だったら引退して結婚すれば…」

アンジェ「ダメよ」

ベアトリス「…やっぱりアンジェさんは姫様の事が……」

アンジェ「嫌いよ」

ベアトリス「素直じゃないですね、アンジェさんは…♪」

アンジェ「スパイは嘘をつく生き物よ」

ベアトリス「あー、引っかかりましたねっ♪」

アンジェ「…何が」

ベアトリス「だって嘘をついていたのだとしたら、「アンジェさんは姫様が大好き」だっていうことになりますし…かといって本当の事を言っていたのなら事実をしゃべっちゃう「二流スパイ」ってことじゃないですかぁ♪」

アンジェ「…失礼ね。スパイは嘘をつく生き物……だけど、必要のない所でまで嘘をつく「ただの嘘つき」である必要はないわ」

ベアトリス「じゃあ姫様の事が嫌いなんですね…姫様に伝えておきます♪」

アンジェ「…!」

ベアトリス「それじゃあ姫様に…んんっ!?」

アンジェ「ん、ちゅっ……れろっ、ちゅぱ…んちゅぅぅ……ちゅるっ……」

ベアトリス「んぐぅ…んんっ、んむっ……ちゅぱ…んくっ///」

アンジェ「…ぷは」

ベアトリス「い、一体何をするんですか…っ!?」

アンジェ「…これであなたは何も言えなくなった……もしあなたが「私がプリンセスの事が嫌いだと言っていた」とプリンセス本人に伝えようとしても、なぜ私の部屋にいたのか聞かれる…その時に私から「濃厚なキスをされていた」とは言えないし、もしそれを言ったとしても私と……ベアトリス、あなたとの喧嘩がこじれて、あえて私をおとしめ、プリンセスへの心証を悪くしようとしているようにしか聞こえなくなる」

ベアトリス「そ、そんな理屈で私にこんなキスをしたんですかっ…!?」

アンジェ「ええ」

ベアトリス「…って言うことは、やっぱりアンジェさんは姫様の事が好きなんじゃないですかっ!」

アンジェ「しつこいわね……今度はキス程度じゃすまないわよ?」

ベアトリス「構いませんよ、なにせ姫様の事が一番好きなのは私なんですから…素直に気持ちも言えないようなヘタレのアンジェさんなんかには負けませんっ!」

アンジェ「…ベアトリス、一つだけ言っておくことがあるわ」

ベアトリス「な、何ですか……急に改まって」

アンジェ「私が学んだスパイ養成所では「ハニートラップ」についての講義があったわ」

ベアトリス「ハニートラップ…って、確か色仕掛けの事でしたよね?」

アンジェ「ええ…ちなみに王国では若い貴族の男女が一緒にいることは「はしたない事」とされているわね」

ベアトリス「ええ、そうですね…それが?」

アンジェ「つまり……私は養成所で「一緒にいる女性を堕とすためのテクニック」を学んできた…当然、実習もあったわ」

ベアトリス「……あの、それって」

アンジェ「私は優秀なスパイであることを自覚している…優秀なスパイは常に本番に備え練習を怠らない……」じりっ…

ベアトリス「あの…アンジェさん、ちょっと待ってくだ……」

アンジェ「大丈夫、死にはしないわ」

ベアトリス「いや…ちょっと待ってくださいってば!」

アンジェ「…こうして見るとベアトリスは守ってあげたくなるよう小さい姿で可愛いわね」

ベアトリス「な、な…///」

アンジェ「もう我慢できそうにないわ…甘いいい匂いがして、身体がうずくの……」

ベアトリス「ち、ちょっと…脱がないで下さいっ!」

アンジェ「どうして?……こんなに胸が高鳴っているのに…ベアトリス……///」

ベアトリス「…アンジェさん……って、不覚にも「綺麗」って思っちゃったじゃないですかっ///」

アンジェ「…お願い、キスだけでいいの……///」

ベアトリス「う、うぅぅ…こんなの絶対おかしいです!」

アンジェ「だめ…もう耐えられないわ……はむっ、んちゅ……ちゅぷ…んちゅ、ちゅ…っ///」

ベアトリス「んんっ、んぅ…あふっ……んっんっ…ふわぁ…ぁ///」

アンジェ「ちゅむ…ちゅるっ……ちゅぷっ…んちゅ…っ///」

ベアトリス「ぷはぁ…はぁっ、はぁっ……はぁ!!」

アンジェ「可愛いベアトリス…お願い、触って私の胸がときめいているのを確かめてみて……///」

ベアトリス「な…っ!?」

アンジェ「お願いよ…ベアトリス……私だけの愛しいベアトリス…///」

ベアトリス「うぅ…それじゃあ……さ、触りますよ…?」

アンジェ「ええ…じゃあ貴女の手を、私の手に重ねて……ね?」

ベアトリス「…わわっ……アンジェさんの胸、引き締まっているのに柔らかい…」

アンジェ「お願い…っ、もっと触って……揉みしだいて…貴女の繊細な指で私を感じてほしいの…///」

ベアトリス「アンジェさん…///」もにゅ…むにっ♪

アンジェ「はぁぁ…んんぅ……ベアトリスっ、もっと…ぉ///」

ベアトリス「うえぇ…!?」

アンジェ「…ごめんなさいベアトリス……今まで我慢してたけれど…脱がせるわね……///」ブラウスのボタンを外すとそっと胸元を開き、慎ましやかな胸に手を伸ばす……

ベアトリス「ひぁぁっ…!?」

アンジェ「んんぅ…慎ましやかで、とってもひんやりしてる……ちゅっ///」

ベアトリス「うひゃぁっ!…ど、どこにキスしてるんですかぁ!?」

アンジェ「だって…とっても綺麗な桃色で……あむっ、ちゅぅ…ちゅぅぅっ///」

ベアトリス「んっ、んぅぅぅっ…///」

アンジェ「ねぇ…ベアトリス……」

ベアトリス「な、なんですかっ…///」

アンジェ「本当は…貴女が欲しかったの……///」ちゅぅ…ちゅぷっ♪

ベアトリス「ひゃぁ…んっ、んんぅぅっ///」

アンジェ「ね…ベアトリス……ふぅぅ…っ♪」

ベアトリス「み、耳は反則っ…んっ、んあぁぁぁっ///」

アンジェ「ふふ、ひくひくしちゃって可愛いわ……」くちゅ…♪

ベアトリス「あんっ♪…って、いつの間に下着を脱がして……んくぅ///」

アンジェ「はぁぁ…とっても温かくてしっとりしてるわ……ね、ベアトリスも私のここを……触って?」

ベアトリス「あ、アンジェさん…///」

アンジェ「お願い…っ///」

ベアトリス「じ…じゃあ、行きますよ……」くちゅ…っ♪

アンジェ「んぁぁぁっ、そこ気持ちいい…っ!」

ベアトリス「わわっ…すごい濡れてきましたね……///」

アンジェ「だって…ベアトリスの指……とっても気持ちいい…んっ、あぁぁぁっ!」

ベアトリス「そ…そうですかぁ?」

アンジェ「え、ええ…もう…イきそうなの…っ……んくぅ、んっ…んんぅ///」

ベアトリス「…へぇ、アンジェさんってば「優秀なスパイ」なんて言っておきながら……私なんかにイかされちゃうんですかぁ?」

アンジェ「だって…ぇ……あぁんっ…んっんっ、んあぁぁぁっ///」

ベアトリス「アンジェさん…イっちゃいましたね♪」

アンジェ「はひぃ……ベアトリス…ぅ……もう、だめ…ぇ///」

ベアトリス「じゃあ私の勝ちでいいんですよね、それじゃあ……」

アンジェ「さてと…じゃあ今度は私が貴女を悦ばせてあげるわね」

ベアトリス「…あれ?」

アンジェ「大丈夫、痛くはしないわ……それじゃあ行くわよ」

ベアトリス「い、嫌ですよっ…!」

アンジェ「…逃がさないわ」

ベアトリス「ひぃやぁぁ…っ!?」

アンジェ「ふふ…ベアトリスは四つん這いでされるのが好みなのね」

ベアトリス「ち、ちがいますっ///」

アンジェ「そうかしら……まぁいいわ、身体に聞けば分かる話だもの」

ベアトリス「ひぃぃ…っ……んんっ!?」

アンジェ「…なんのかのと言ってもベアトリスのここはすっかりとろとろね」

ベアトリス「ひぅっ…あうぅ……んっ、くぅぅ///」

アンジェ「どうかしら、こうやって四つん這いで中をかき回される気分は」

ベアトリス「ひうっ…あぅ……んあぁぁっ///」

アンジェ「…さてと、ベアトリスはいやらしい娘だからもっと欲しいわよね」

ベアトリス「そ、そんなことありません…っ///」

アンジェ「そうかしら…それじゃあ指を二本にしてみるわ」ぐちゅ、じゅぶっ…♪

ベアトリス「ひゃぁ…んんぅ、あふぅ……ひぅん♪」

アンジェ「あら…強がりを言っていた割にはすんなり入るし、しかもすっかり呆けたような表情を浮かべているわね」

ベアトリス「だ、だって…ぇ……あひぃぃ♪」じゅぶっ…ぐちゅり……

アンジェ「そうね…せっかくだから表情も見てあげるわ」ベアトリスの横に回って膝をつき、片手でくちゅくちゅと秘所をかき回しながら耳たぶを甘噛みする…

ベアトリス「ひぁぁぁっ…あっ、んあぁぁぁっ♪」

アンジェ「あら、ずいぶんと濡らしたわね……ストッキングがびしょびしょよ?」…じゅぶっ、ぐちゅぐちゅっ!

ベアトリス「ひうっ…はぁ、はぁ……あひぃい゛っ!?」ぶしゃぁぁ…っ♪

アンジェ「こんな所をプリンセスに見られたらどうなるかしらね…あるいはドロシーたちでもいいわ」

ベアトリス「ひぅぅっ…そんなの……絶対にダメですぅ…っ///」

アンジェ「そう…その割には入っている指をきゅうきゅう締め付けて来るわね……本当はプリンセスにはしたなくよがっている所を見せたいのじゃないかしら」

ベアトリス「そ、そんなこと…っ///」

アンジェ「別にいいのよ、私しか聞いていないのだから……プリンセスの前でメイド服をぐしゃぐしゃに濡らしたまま、スカートをたくし上げたら…なんて思った事くらいあるのでしょう?」

ベアトリス「お…思ってません///」

アンジェ「それなら…こうやってふとももまでびちゃびちゃにしながらひもと首輪を付けられて、プリンセスにお散歩させられたいとか」

ベアトリス「な、ないです…っ///」

アンジェ「いいのよ、別に…それともプリンセスからお仕置きの鞭を振るわれたい?」

ベアトリス「うぅ、アンジェさんのいじわる…ぅ///」

アンジェ「ええ、そうね…でもその「意地悪」でこんなに濡らしている貴女はとんだ変態って言うことになるわね」

ベアトリス「そ、そんなこと言わないで下さいよぉ…」

アンジェ「そうね…変態のベアトリスはそういうことを言われると感じてしまうものね……ほら、今だって私の手がべとべとになるくらい濡らして……ふーっ…♪」耳に息を吹きかける…

ベアトリス「あっあっあっ…あひっ、はひぃぃ……♪」ひくひくっ…ぶしゃぁぁ…っ♪

アンジェ「…ここまで六分…どうやら私の腕は鈍っていないようね……さ、私も寝るから帰ってちょうだい」

ベアトリス「……アンジェさぁ…ん///」

アンジェ「何?」

ベアトリス「姫様が好きなのは譲れません……でも…いやらしい私にもっとお仕置きしてくださ…い///」

アンジェ「…仕方ないわね」するりと服を脱ぎ捨てて、ベアトリスを抱えてベッドに倒れ込んだ…

………

…case・ドロシー×ちせ「The cover story」(偽装された身分)…


…学校・屋上…

ドロシー「…ふわぁぁ、それにしても暇だなぁ……いい天気だし」

アンジェ「……ここにいたの、ドロシー」

ドロシー「あぁ、嫌な授業だったからな…すっぽかしてきた」

アンジェ「そう…ところで新しい任務の話があるわ。詳細は昼下がりに中庭で」

ドロシー「おー……ふぁぁ…」


…昼下がり…

ドロシー「…で、新しい任務って言うのは?」

アンジェ「ロンドンにある、とある『事務所』の監視よ…出入りする人物の顔と頻度を確かめることになるわ」

ドロシー「監視任務か…ってことはまた「屋根裏暮らしの貧乏な娘」だとか、「二流のヘボ芸術家」に化けたりしなきゃいけないのかよ……」

アンジェ「いいえ…周囲の屋根裏部屋は対象を監視するのに位置が悪い上、監視に適している二階の部屋は軒並み空きがないわ」

プリンセス「ならどうするの、アンジェ?」

アンジェ「実はすでに「コントロール」から指示が来ているわ…その「事務所」を監視できるちょうどいい場所につぶれたパン屋がある。資金は用意されているからそこを買い取ってしばらく「開店」しておくことになったわ」

ベアトリス「でもパン屋さんって…私たちの誰もパンなんて焼けませんよ?」

プリンセス「そうねぇ…私もクッキーくらいなら作れるけど……」

アンジェ「何も焼く必要なんてないわ。パンは事情を知らないこちらの協力者が焼いて提供してくれるから並べるだけでいいし、あまり人気のパン屋になられても監視がしづらくなるから、経営も適当でいい」

ドロシー「なるほどな…で、店員は?」

アンジェ「そのことだけど、パン屋は朝から開店していないとおかしい……でも私たちは「学生」と言う以上、学校を休み続ける訳にはいかないわ」

ちせ「うむ、もっともじゃな」

アンジェ「そこでドロシーとちせが適当な理由を付けて休学して、監視にあたる」

ドロシー「おい、ちょっと待てよアンジェ…なんであたしとちせなんだ?」

アンジェ「ドロシーは普段から不良だから、ちょっとしたトラブルを起こしたとでもすればいい……どうせ授業もサボっているわけだし」

ドロシー「…おい」

アンジェ「それで、ちせは留学生だから「ホームシックで体調を崩した」とでもいえば済むわ」

ちせ「うむ、なるほど……しかし監視にうちのような「東洋人」だと目立つんじゃないかのぉ?」

アンジェ「大丈夫…あなたには悪いけど、どうせイギリス人からしたら東洋人はどれも「毛色の変わった外国人」にしか見えないわ」

ちせ「ふむ…「さもありなん」じゃな……」

アンジェ「という訳で、ドロシーは「飲んだくれてばかりいる両親のもとから飛び出した気の強い下町娘」で、ちせは「言葉もよく分からない下働きの東洋人」と言うカバーストーリーが出来ているわ」

ドロシー「…リアルな設定で笑えるな……」

アンジェ「ええ…そうね」

ちせ「うむ……まぁ言葉が分からんふりをしていれば、何かポロリと耳に入ってくることもあるやもしれんな」

アンジェ「かもしれないわ…で、普段の連絡と報告は定期的に「パンを買いに」行くからその時に……緊急の連絡は伝書鳩か、パンの配達を装って行うこと」

ドロシー「了解」

アンジェ「任務開始は月末から。終了はコントロールが交代要員を用意するか、対象の監視を完了するまで」

ちせ「うむ、承知した」

アンジェ「以上よ……さぁプリンセス、お茶をどうぞ♪」

プリンセス「ええ、ありがとう♪」

ドロシー「……パン屋ねぇ」

………

…ロンドン・下町…


ドロシー「…で、買い取る店はここか……予想以上に煤けてるな」下見を兼ねて幌を張った車から店の様子を偵察する…

アンジェ「そうね…でも問題ないわ、元の持ち主はお酒ですっかりダメになって、今は借金まみれになっているし……適当な値段を出せばすぐにでも売ってくれるわ」

ちせ「なるほど…しかしアンジェどのの情報の速さには恐れ入るのぉ」

アンジェ「黒蜥蜴星では当然の資質よ」

ドロシー「でたな、黒蜥蜴星人…って、おいアンジェ」

アンジェ「あの男…またこんなところに首を突っこんでいるのね」

ドロシー「懲りないというか……つくづくタイミングの悪い奴だな」

ちせ「…どうするのじゃ?」

ドロシー「もしかしたら…あたしらがものすごくツいていて、奴の目的は他の店なのかもしれ……どうやら、そんな都合のいい話はないらしい。真っ直ぐあのパン屋に向かってるぜ…?」

アンジェ「…この店を買い取れないと困る。行くわよ」

ドロシー「お、変装は済ませたから大丈夫だ…行こうぜ♪」

…パン屋前…

フランキー(オネエ言葉の借金取り)「…で、いつになったら返してくれるのかしら?」

パン屋「フランキーさん…頼むよ、この店を売り払ってその金で……」

フランキー「アンタねぇ…こんなボロい店なんか一ポンドにだってなりはしないわよ!」

パン屋「だったら俺が……」

フランキー「そもそも借金まみれで酒浸りのアンタが何かを約束なんて出来る訳ないじゃないの…お前たち!」

ちんぴらA「うす…っ」

ちんぴらB「…たたんじまいますか、フランキーさん?」

フランキー「ええ、あばら骨の一本か二本折ればちっとは分かるでしょうよ……って、アラ?…お前たち?」

ドロシー「残念だったな…どうやらあの二人は昼飯にでも当たっちまったらしい、そこで伸びてるよ♪」

ちせ「うむ…どうやら無駄骨とあばら骨を折ったのはそこの二人らしいの」

ちんぴらA「…ぐぇぇ」

ちんぴらB「うげぇ…」

フランキー「げっ…またアンタたちなの!?」

ドロシー「ああ、その「アンタたち」さ……ちょっとこっちに来て真面目な話をしようじゃないか」

フランキー「あのねぇ…アタシだってやられっぱなしでいるわけじゃないのよ!」やたら派手な背広の内ポケットに手を伸ばした……が、その瞬間に手が止まった…

ドロシー「分かったからその豆鉄砲はしまっておけよ…な♪」ロングコートの下から、一フィート銃身のモーゼル・ピストルがぴたりと体を狙っている…

フランキー「…わ、分かったわよ」けばけばしい金メッキの入った小型リボルバーを地面に落とす…

ドロシー「オーケー、じゃあこっちでじっくりと話そうぜ?」

フランキー「仕方ないわね、アタシの負けよ……とでも言うと思った!?」裏道に入った瞬間、もう一丁隠していた小型リボルバーに手を伸ばす…その瞬間ドロシーの編み上げブーツがみぞおちに叩きこまれ、ゴミくずと一緒にレンガ塀まで吹っ飛んだ…

ドロシー「おおかたそんなことだろうと思ってたさ……ま、こうなったら落とし前をつけさせてもらおうじゃないか♪」にこにこしながらモーゼルを抜いて遊底を引いた

フランキー「ひっ…ア、アタシを殺したって何にもなりはしないわよ!?」

ドロシー「おいおい、冗談だろ?…少なくともロンドンが少し綺麗になるじゃないか♪」

ちせ「…うむ。ところで「これ」はうちがやりたいのじゃが」

ドロシー「よせよ、お前の刃物で切り刻んだらミートパイの具にだってならなくなっちゃうだろ♪」

アンジェ「…この銃、せっかくの新品だから楽しみたいと思ってたの…脳天に接射したら後ろはどんなふうに穴が開くのかしら」かちりと撃鉄を起こす…

フランキー「ひぃっ…神様お助け……!!」

ドロシー「ぷははっ、聞いたかよ♪……こいつ今になって神様に祈ってやがる…ドブネズミの祈りの方がまだ聞いてもらえるだろうよ♪」

アンジェ「ええ、ここ一番のジョークね…今度お友達と話すときに使わせてもらうわ」

ちせ「うむ、面白い奴じゃな…殺すのは最後にしてやろうかの♪」

ドロシー「あ、それじゃあ表の手下どもとこいつを山分けにするのはどうだ……一人で一人ずつ楽しめるぜ?」

アンジェ「あの二人はもう動かないわ…面白くないから却下」

フランキー「あわわわ…お願いよ、アタシなんだってするわ!」

ドロシー「よせよ、お前の命なんてあのパン屋の玄関マットの分にもならないっての♪」

アンジェ「おしゃべりはもういいわ…さ、楽しませてちょうだい」

ちせ「うむ、それがよいの」

フランキー「わ、分かったわ!…あのパン屋はアンタたちにあげるから!」

ドロシー「ふわぁぁ…おっと、あくびしたら引き金を引きそうになっちまった……で、何だって?」

フランキー「こ…今後この辺りのシマは全部あんたたちに譲るわ!」

アンジェ「…悲しいことに世の中には口約束だからって、平気で約束を破る人がいるのよね……あら…この銃、引き金がずいぶん軽いみたいね」

フランキー「あ、あのパン屋の証文ならちゃんとあるわ!……法律事務所だって文句も付けられないやつよ!」

ドロシー「そうか…それじゃあとりあえず「あの店の権利は全て放棄します」とでも書いて、ばっちりサインしてもらおうか」

フランキー「か、書くわ…っ!」

ドロシー「うん、よく書けてるな…それじゃあ、地獄の門番によろしくな♪」

フランキー「そんな…アタシはちゃんと……!?」ガツン…ッ!

ドロシー「……あーあ…せっかくの銃が汚れちまったな」重い固定弾倉の所で頭を一撃し、借金の証文をひらひらさせるドロシー

アンジェ「頭の骨が陥没しそうな勢いだったわね…生きてる?」

ドロシー「あぁ…死体を作ると後が面倒だからな。それに生かしておいてもこういう奴は警察にも駆けこめないし、沈黙しててくれるさ」

アンジェ「そうね…それじゃああの店主に、店を買い取った事を伝えましょうか」

ドロシー「ああ、そうしようぜ」


もし全通りの組み合わせやるならちせベアトをどうやって絡ませるか気になる

>>38 個人的に組み合わせやすそうなメンバーを行き当たりばったりで組み合わせているので「全カップリング作戦」は考えていませんでした…が、どうにか組み合わせてみます……多分「納豆・ぬか漬け」ネタを使うことになるでしょうから、ベアトが手をわきわきさせることになるかと…

…という訳ですので「このカップリングがまだない」と言うのをリクエストして下さればそのうちに……









…パン屋・店内…

ドロシー「なぁアンジェ…とりあえず「パン屋の店員らしい」格好になってみたけどさ……」えんじ色のスカートに同色の上衣、白いエプロン…と、ハウスキーパーのような恰好で、頭にはキャップまでかぶっている

アンジェ「ええ。よく似合っているわよ、ドロシー」

ドロシー「……どこが。正直全く似合ってないだろ…///」

アンジェ「そうかも知れないわね…でも、任務のためよ」

ドロシー「そうでもなきゃこんな格好をするかよ…ちせは?」

ちせ「うむ、着替えて参った…しかし、アンジェどのの持って来たこれを着てはみたのじゃが……何でこんな中華風なのじゃ」後頭部脇にお団子を二つ作った髪型にまとめ、チャイナカラー(中華風の襟)でクリーム色をした上衣に、生地のたっぷりしたズボンをはいている…

アンジェ「……こういう格好もいいと思ったけど……なかなか可愛い感じになったわね」

ドロシー「…おい、今何て言った?」

アンジェ「こほん……ちせ。あなたは日本人だけど、今ロンドンにこのくらいの年齢の日本人はどれだけいると思う?」

ちせ「まぁ…そう多くはあるまいな」

アンジェ「ええ、そうよ…と言うことは王国の防諜部が一人ずつ調べ始めたらすぐ面が割れる。だけど中華系ならうんといるし、前にも言ったように日本人と区別のつくようなイギリス人なんていやしない……となれば、中華系に化けた方がカバーとしては優れているし、格好も特徴的で目立つから、逆説的ではあるけれど顔や素性に意識を向ける者が少なくなる」

ドロシー「確かに……たとえ防諜部の奴らが「この辺で怪しい奴を見ましたか」と聞いても「はい、中国人の女が歩いていきました」となるだけだもんな」

ちせ「なるほど…さすがじゃな」

アンジェ「その通り。決して二人に色んな衣装を着せて遊んでいるわけではないわ」

ドロシー「……そういうことにしておいてやるよ」

アンジェ「それじゃあ監視は三日後から…寝泊まりには上の部屋を使って、監視は交代で一日中続けること」

ドロシー「はいよ…どうやらうんと頑張らないといけなくなりそうだな」

アンジェ「そうね…でも週末は私たちも「遊びに」やって来るから、その時にゆっくり寝だめしてちょうだい」

ちせ「うむ…それもまたよい鍛錬になろう」

ドロシー「そう言えば武器はどうする…監視任務だから必要ないって言われればそれまでだけどさ……」

アンジェ「もちろん監視には必要ないでしょうが、何もないと心細い気持ちになるのも分かるわ……こっちに来て」

…パン屋・工房…

アンジェ「……ここのレンガに…ドロシー、見える?」二つあるパン焼き窯の片方は半分崩れている。そこに四つん這いになって、ぐらぐらになっているレンガを数個抜く……

ドロシー「ああ…綺麗なふとももだな」

アンジェ「どこを見ているの……このレンガよ」

ドロシー「冗談さ…ああ、そこのレンガだな」

アンジェ「ここの奥に空間がある…貴女の銃なら充分入るわ」

ドロシー「よし…それじゃあそこに入れておこう」

ちせ「うむ…ならばうちも刀をどこかに置いておきたいのぉ……」

アンジェ「それは難しいわね…銃は誰でも使えるけど、日本刀は日本人しか持っていない物よ……中華系に化けた意味がなくなるわ」

ドロシー「おいおい、本気のちせが刀を抜いた後に、姿かたちを生きて証言できる奴がいると思うのかよ?」

アンジェ「それもそうね…なら、そこの小麦袋の中にしまっておくといいわ……粉まみれにならないように、袋か何かで覆った方がいいわね」

ちせ「うむ、助かるぞ…が、脇差と小柄だけにしておこう」

ドロシー「どうせ屋内であの長いやつは振り回せないもんな…あとは……と」

アンジェ「まだ何か武器を持っているの?」

ドロシー「ああ、武器はないよりあった方がいいからな…それに音を立てたくないときのために、スティレット(刺突用ナイフ)がある」

アンジェ「それは服の折り返しか縫い目にでも忍ばせておくのね」

ドロシー「ああ、そうするよ」

アンジェ「それじゃあ監視をよろしく……私は裏口から出ていくわ」

ちせ「うむ」

ドロシー「…それじゃあ週末にな」

………

ドロシー「あーあ、しっかし監視任務って言うのは身体にこたえるんだよなぁ……ま、二人っきりだし仲良くやろうよな♪」一つきりの古ぼけたベッドに寝っころがり、組んだ腕を枕に鏡を眺めている…

ちせ「うむ…しかしぬか床をかき回せないのは困るのぉ……一応アンジェどのに頼んではきたのじゃが」ガタのきた椅子に腰かけ、欠けたティーカップで緑茶をすすっている…

ドロシー「ぬか床っていうのは…あのヘンテコな和風ピクルスの入れ物か」

ちせ「うむ…ぬか漬けと言うのは面白い物での、日に一回はかき回さんと空気が通わず腐ってしまうのじゃ」

ドロシー「ほーん…そう言うもんなのか」

ちせ「うむ…とはいえ堀河公にお願いするわけにもいくまい?」

ドロシー「堀河公…確かちせの所のボスだよな?」

ちせ「うむ」

ドロシー「でも、もしそうなったら面白いだろうな…♪」

ちせ「……うむ、その場面を想像したら存外愉快であった」

ドロシー「な?……あ、客が来たぞ」

ちせ「うむ…あれは……普通の客かの?」

ドロシー「…みたいだな。あんな流行らない貿易会社から何を買うのかは知らないけどな」…古びたレースのカーテン越し、窓からの眺めが上手く映るように三面開きの化粧台を置き、それに反射して映る姿を監視する二人……

ちせ「出てきたようじゃ…あれはジャムの瓶じゃな」

ドロシー「ああ、あのブランドなら知ってる」

ちせ「…顔の特徴も当てはまらぬようじゃ」

ドロシー「ま、最初からってことはないだろ」

…数日後…

ドロシー「なんだよ、客か…?」

主婦「あ、ああ…そうだよ。パンを買いたいんだがねぇ」

ドロシー「なら買えばいいじゃねぇかよ…違うのか?」

主婦「…な、なんだい…態度の悪い娘だね!」

ドロシー「……パン屋って言うのも意外と楽だな♪」

ちせ「ふむ…客を追い帰してばかりじゃがな」

ドロシー「なに、構うもんか。どのみちカバーなんだ、ロンドン一のパン屋になる必要もないしな」

ちせ「それもそうじゃな…おや、また客がきたようじゃぞ」

ドロシー「じゃあ今度はちせの番な」

ちせ「うむ…承知した」

労働者「おっ、そこの可愛い嬢ちゃん。パンを一斤くんな」

ちせ「…何アルか?…わたし英語少ししゃべる……パンは焼きたてよ、とても美味しいネ」

労働者「おう、それじゃあなおの事そのパンをくれねぇかな…ほら、金はちゃんとあるんだからよ」

ちせ「これ一ポンドか?…主人いないからわたし分からないアルよ、パンの値段ちゃんと見るヨロシ!」

労働者「あぁ、もうじれってぇな…じゃあ今度にするぜ」

ちせ「ちょっと待つヨロシ、なんで帰る!…ここのパン不味いことない、王室御用達ヨ!……ふぅ、なかなか難しいのぉ」

ドロシー「……くっくっく…ぷっはははっ♪」

ちせ「そんなにおかしかったかのぉ…」

ドロシー「あぁ、最高におかしかった…あははっ♪…今度劇場でやってみろよ、大ウケ間違いなしだ……ひぃー…腹の皮がよじれそうだ♪」

ちせ「……そうアルか?」

ドロシー「ひぃー、もう止めろってば…ぷっはははっ♪」

………

ドロシー「……とか何とか言ってかれこれ二週間はたったわけだけど…」

ちせ「…何も引っかからんのぉ」

ドロシー「ああ…王国の諜報部は開店休業中なのか、それともコントロールの入手した情報がスカだったのか……」薄汚れた天井を眺めながらぼーっとしている…

ちせ「うむ…とりあえずうちは今日の報告を準備いたそう……」

ドロシー「ああ、よろしく頼むわ…」

ちせ「うむ」…机の上に置いてある食パンの山形の部分に小さな切り込みを入れると、そこに暗号に置き換えた報告のメモを差し込む……それを油紙に包み、見分けがつくようバターの染みを二か所につける…

ドロシー「おーし、できたみたいだな…後は連絡員に渡すだけ……と」

ちせ「そうじゃな…しかしこの格好にもすっかり馴染んでしまったのぉ……」

ドロシー「ああ、こっちも…ま、あたしなんかよりも、ちせの「偽チャイナ」の方が可愛げがあると思うけどな?」

ちせ「うむむ…そう言われても嬉しいような嬉しくないような気分じゃが…」

ドロシー「まぁそう言うなよ…さてと、それじゃあパン屋を開店させますかね」

………

ドロシー「おーう…いらっしゃい……冷やかしはお断りだよ。買うならとっととしな」

連絡員「…それじゃあそこの食パン一斤を」

ドロシー「…ちっ、食パン一斤かよ…しけてんなぁ……ほらよ」

連絡員「はい…お代ね」

ドロシー「はいはい、またどーぞ……おーい、交代だぞ」

ちせ「…しーっ」

ドロシー「…どうした?」

ちせ「あそこに「本物の」客じゃ…間違いないぞ」鏡には「事務所」に入っていくハンチング帽にチェックの上衣、茶色のズボンを着た男が写っている…

ドロシー「どれどれ……ああ、確かに王国諜報部のエージェントだな」

ちせ「うむ…」

ドロシー「よし、それじゃあ「特別便」を出そうぜ…今度はあたしが書くよ♪」

ちせ「承知した…ではうちが店番をしておく」

ドロシー「ああ、頼んだぜ…それじゃあ、行ってくる♪」…いかにもパン屋の御用聞きが書きそうな単語を使った暗号文を書き起こし、伝票用紙に書きこむ…それと、紙袋に詰めた数個のパンやパイを持ち、エプロン姿で表に出た……

…ロンドン市街・コントロールの連絡所…

ドロシー「ちわー…パン屋からご注文の品を届けにきましたー…えーと、食パン二斤に「ミートパイ」一個ですね」

連絡員「…そう、「ミートパイ」ね?…はい、ありがと」

ドロシー「へいへい…いつもごひいきに……」

…しばらく後・パン屋…

ドロシー「…うーい、ただいまー……で、どうだった?」

ちせ「以後は動きなしじゃが……どうやらこれであそこが王国諜報部の事務所…あるいはセーフハウス(隠れ家)であることが分かったの」

ドロシー「ああ、安心したよ…何しろこのままパン屋住まいじゃないかと思ってたところだったからな♪」

ちせ「それは堪忍して欲しいところじゃな…まぁ、任務を完了出来て何よりじゃ」

ドロシー「だな……後は交代のエージェントが来てくれるのを待つばかり…と」

ちせ「うむ」


ドロシー「…で、どうしてアンジェがここに来たんだよ?」

アンジェ「コントロールはあなたたちの報告を読んだわ…だけど都合があって、同クラスのエージェントを送り込むまでにあと一日かかる……だから交代の投入まで私が監視を引き継ぐわ。…ご苦労さま、ゆっくり身体を休めてちょうだい」

ドロシー「あぁ、そうさせてもらうよ…あいたた……肩ががちがちに凝ってやがる…」

アンジェ「姿勢が悪いんじゃないかしら。さもなければ年ね」

ドロシー「……相変わらず可愛げのないやつ…全く冷血なんだからな」

アンジェ「黒蜥蜴星人だから仕方ないわ」

ドロシー「そうかよ…あ、ちょっと待てよ?」

アンジェ「何?」

ドロシー「いや、肩こりの理由さ……一つ思い当たるフシがあった♪」

アンジェ「そう、それはよかったわね…それで、その「理由」って言うのは何かしら?」

ドロシー「…これだ、これ…まぁアンジェには分からないよなぁ♪」たゆん…っ♪

アンジェ「……それは結構ね…もう寝たら?」

ドロシー「はいはい…そんじゃお休みー♪」

ちせ「うちも下がらせてもらうので…では、失礼いたす」

アンジェ「ええ」

…寝室…

ドロシー「あー…やっとゆっくりベッドに入れるなぁ……この厄介なメイド服みたいなのともおさらばだし、さばさばしていいや♪」

ちせ「うむ。うちもようやく偽チャイナから解放じゃ…ふぅ」

ドロシー「はぁぁ…そういえば、ちせ」

ちせ「何じゃ?」

ドロシー「せっかくだから一杯やらないか…本当はラムレーズン用のラムだけどさ、成功を祝って……どうだ?」

ちせ「…うむむ、酒は剣士にとっては大敵……とはいえ朋友から差しだされたねぎらいの杯を断るのもまた無礼というもの……むぅ」

ドロシー「あー…じゃあ少しだけにしておけばいいさ、あたしも寝酒に少し入れたいだけだからな」

ちせ「うむ、そう言うことなら頂戴いたそう…アンジェどのにはちと済まんがの」

ドロシー「なに、あたしたちはこの数週間ここに缶詰めだったんだ、少しくらい祝杯を挙げたってとがめられることなんてないだろ……こんなもんでいいか?」

ちせ「う、うむ…ちと多い気がするが……まぁ大丈夫じゃろう」

ドロシー「うーし…それじゃあ監視任務お疲れさん♪」

ちせ「うむ…では……ごくっ……けほけほっ!」

ドロシー「おいおい…大丈夫か?」

ちせ「う、うむ…ずいぶん強烈じゃな……」

ドロシー「ははっ、かもな……んぐっ…ごくっ、ごくっ……くーっ♪」

ちせ「…ドロシーどのはずいぶんと酒が強いんじゃな」

ドロシー「まぁ…強いって言うよりも、監視任務が終わった喜びを味わいつつ飲みたい気分なのさ……もう少しだけ飲まないか?」

ちせ「…で、では……むげに断るのも何であるし…」

………

ドロシー「うーい…ずいぶん気持ち良くなってきたなぁ……ちせはどうだー?」

ちせ「うむぅ…身体がぽーっと暖かいのぉ……それにふわふわと地に足がついておらん感じじゃぁ…ひくっ♪」

ドロシー「おー…それはいいや……って、どうもおしまいみたいだ…♪」コップの上で瓶を逆さに振ってみたり、瓶の中をのぞいてみる…

ちせ「そうか…それではドロシーどの、うちらは寝るとするかの……ぉ♪」

ドロシー「あー…そうだな……よいしょ♪」

ちせ「うむむ…それもロンドンに来てから驚いたことの一つじゃ……」

ドロシー「あー…寝るときの格好か?」

ちせ「うむ…日本では寝るときも何かを着ておる……裸か、そのような下着だけで寝床に入ることは想像も出来んかった……ひっく♪」

ドロシー「あぁ、かもな……でも慣れたらきっとこっちの方が楽だぜ…?」

ちせ「かもしれぬ……それにしてもドロシーどのの身体は何とも色つやがよくてきれいじゃの。酒が入っているせいか全身がほんのり桜色で…何とも柔らかそうじゃ♪」

ドロシー「…良かったら触ってみるか?」

ちせ「ふむ……しからばご免…っ♪」ふに…っ

ドロシー「…どうだ」

ちせ「おぉぉ…♪」

ドロシー「手ざわりはいいと思うけどな……これでもハニートラップだの何だのに備えて手入れはしっかりしてるんだから♪」

ちせ「……おぉ…おおぉぉ…何とも柔っこい饅頭じゃの♪」

ドロシー「なんだ…気に入ったか?」

ちせ「うむ、うちのちんまい身体ではこんな手ざわりは体験できんゆえ……おぉぉ、ドロシーどのの柔肌はすべすべでもちもちじゃ…♪」

ドロシー「おいおい、あんまり胸ばっかり触るなよ♪…やりかえしちゃうぞ?」

ちせ「かまわぬ…どうせ触る胸もありはせん」

ドロシー「おいおい、そんなこと言うなって……小さいけど引き締まってて揉みごたえがあるじゃないか♪」

ちせ「んっ、く…んん…ぅ///」

ドロシー「…お、おい…あんまりそう言う声を出すなって……なんかこっちが恥ずかしくなってくる///」

ちせ「す、済まぬ…しかしドロシーどのの手つきが……んんっ、くぅ…ぅ///」

ドロシー「あー……ちせの喘ぎ声を聞いてたら、なんだかムラムラしてきた…♪」

ちせ「…それを言ったらうちも……ドロシーどのの下着姿にのぼせておるぞ///」

ドロシー「…なぁ、この部屋ってベッドは一つだよな」

ちせ「うむ…それが何なのじゃ?」

ドロシー「いや、一緒のベッドに入ろうと思ってさ……んちゅっ♪」

ちせ「んっ…んんっ……ちゅぅ///」

ドロシー「んむっ…ちゅ……ちゅくっ…ちゅぷっ……んちゅ…♪」

ちせ「あむっ…ちゅぅぅ…んはぁ、ちゅっ……んちゅ///」

ドロシー「よーし…それじゃあこの着物の帯を解いちゃうぞ…っと。……おぉ、しっとりしてて綺麗なもんじゃないか♪」

ちせ「う…こうやって着物をはだけさせられていると……ち、ちと恥ずかしいの…///」

ドロシー「なぁに、あたしだって下着だろ…おたがいにフェアさ♪」

ちせ「そ、それはそうなのじゃが……んあぁ…っ///」

ドロシー「おー…可愛い声を上げちゃって……そーれ♪」くにっ、ちゅぷっ…♪

ちせ「んっんっんぅぅ…んあぁぁ、はぁぁ…んっ♪」

ドロシー「…何て言うかな…ちせが濡らしてる所を見てると背徳感がすごいな……最高だけど♪」

ちせ「な、何じゃ…さっきからうちがやられっぱなしではない…かぁ、あぁぁんっ///」

ドロシー「わりぃ、理性が吹き飛んだわ……そういう訳で重ねるぞ…んっ、んはぁぁ♪」

ちせ「ち、ちょっと待たれよ…んっ、あぁぁぁっ!」

………


わりかし真面目な任務シーンからのこの落差

>>46 オン・オフははっきりさせないといけないですから…という訳で引き続き任務はかっちり、あとはただれた関係の「チーム白鳩」をお送りしていきます……また、そろそろ「カサブランカでの夏休み」編でも投下しようかと…

…翌朝…

恰幅のいいおばちゃんエージェント「…それじゃあ、あとは任せておきな……それよりそっちの二人はちょっとばかし休んだ方がいいんじゃないかねぇ?」

ドロシー「あー…昨夜はちょっとばかし睡眠不足でね」

ちせ「///」

若いエージェント「なら私たちの分まで休んでちょうだい、こっちはしばらくベッドが恋しくなりそうだもの…」

ドロシー「ご忠告どうも……ふわぁぁ…」

アンジェ「それじゃあ後は任せたわ」

おばちゃんエージェント「あいよ…それじゃあね」

アンジェ「ええ…」

…寄宿舎・部室…

ドロシー「ふぃー…やっと「休学」も終わったな」

ちせ「うむ…まずはぬか床をかきまわし、遅れた分の勉学と鍛錬を取りもどさねば……しからばご免」

アンジェ「ええ、お疲れさま……ところでドロシー、少しいいかしら?」

ドロシー「んー?」

アンジェ「昨日のことで少し言いたいことがあるの」

ドロシー「……何かドジったか?」

アンジェ「いいえ、活動そのものには問題ないわ」

ドロシー「じゃあ何だ?」

アンジェ「ええ…別にあなたがちせと何をしていようと、私は全く構わないわ……ただ、監視任務をしているその隣室で「事に及ぶ」のは、少しやり過ぎじゃないかしら」

ドロシー「あー…聞こえてたのか、悪いな……何しろほど良くラムが入って、やらしいことがしたい気分だったもんでな♪」

アンジェ「いいえ、その事はまだ許せるわ…ただ」

ドロシー「ただ…なんだ?」

アンジェ「昨夜のちせとの会話…覚えている?」

ドロシー「えーと…昨夜はちせとベッドでいちゃつきながら……あー」

…前夜…

ちせ「ほわぁぁ…何とも言えぬ愉悦であった///」

ドロシー「それはこっちもさ……ちせは肌がすべすべだもんな。どうやってこんなもっちり肌を作ってるんだ、んー?」ふにっ…♪

ちせ「そ、そうほめられると困るの…別段普段から風呂に入って石けんで洗っているだけじゃし……時折、椿油を塗ったりはするがの///」

ドロシー「ほーん…それでこのすべすべボディか、たまらないな……うりうり♪」

ちせ「あふっ…んあっ、あんっ……///」ぷしゃあぁ…♪

ドロシー「おー、ちせはイくところも可愛いな…それにしてもあの「黒蜥蜴星人」のやつ」

ちせ「アンジェどのか…?」

ドロシー「ああ…まったく、無表情でこっちの事を酷使してくれやがって……きっと血管に流れているのは氷水だぜ?」

ちせ「ふむ、そうかの……んんぅ、そんなにうちの乳房を揉むでない…んぁぁっ///」

ドロシー「なーに、遠慮するなって♪……それでだ、あの「ミス・パーフェクト」の冷血女め…何でも一人でこなして平気な顔をしてやがる…一度くらい慌てふためく顔がみてみたいぜ……まったく♪」

ちせ「ふむ……あふっ、んくっ…んあぁぁ……ドロシーどの…もっとして欲しいのじゃ…んくっ///」

ドロシー「あいよ、あたしがうんと気持ち良くしてやるよ……今度プリンセスを焚きつけてあのトカゲ女をわたわたさせたら面白いだろうな…♪」

ちせ「…ふむ、なかなか面白そうじゃの……あんっ、んっ♪」

………

ドロシー「あー…」

アンジェ「無表情のトカゲ女…は、まぁ良いわ」

ドロシー「…いやぁ、あれはちょっと酔った勢いで……」

アンジェ「酔った勢いで口を滑らせるような二流エージェントでないことくらい私が一番よく知っているわ……それから何だったかしら…氷の女王とか言ってたわね?」

ドロシー「…」

アンジェ「それよりも何よりも……ドロシー、あなたは「プリンセスを焚きつけて」どうするって言ってたかしら?」

ドロシー「いや、それはあくまでも「言葉のあや」っていうか……さ」

アンジェ「そう…それにしてもプリンセスをだしに使おうって言うのはいただけないわね」

ドロシー「うっ…いや、あのさ……」

アンジェ「まぁいいわ…昨日は疲れたでしょう、ドロシー……しばらく休んだら?」

ドロシー「お…おう、何かわりぃな……?」

アンジェ「そのかわりに……起きたらここと車庫の道具を手入れしてもらうから」

ドロシー「……この冷血トカゲ女」

アンジェ「何か言った?」

ドロシー「いや、何も」

アンジェ「そう…それならもう話はないわ、お休み」

ドロシー「ああ…んじゃ寝て来るわ」

アンジェ「……まったく、私のポーカーフェイスもプリンセスに関してはまだまだね……でも、プリンセスならドロシーに焚きつけられなくても…///」

プリンセス「あの…私がどうかして?」

アンジェ「…っ///」

プリンセス「どうしたの、アンジェ?」

アンジェ「な、何でもないわ……監視任務で疲れたからぼーっとしてただけよ///」

プリンセス「ふふ…アンジェは私の前だと絶望的に嘘が下手になるわね♪」

アンジェ「嘘はついていないわ」

プリンセス「ふふっ…ならそう言うことにしておくわ……ところでアンジェも疲れているのだから、少し休憩しなさいな♪」

アンジェ「いえ…まだ個人装備の後片付けが済んでないわ」

プリンセス「ふぅ……くたびれた状態で後片付けをしても、手順が狂ったりミスが増えるからいいことはないし…少し休んでからにした方がいいわ」

アンジェ「いえ、それでも…っ!?」

プリンセス「ふふ…私からの不意打ちとはいえ、キスをかわせない時点で疲れているわ……ベッドを貸してあげるから少し寝てちょうだい?」

アンジェ「…わ、分かったわ……ベッドは貸してもらわなくても結構、自室で寝るわ///」

プリンセス「ええ…お休みなさい♪」

アンジェ「…お休み///」

プリンセス「……ふふ、「シャーロット」の唇…柔らかかった♪」

………

…case・アンジェ×ドロシー「The summer vacation」(夏休み)…


…とある日…

アンジェ「今日はみんなにニュースがあるわ…ちなみに「いいニュース」と「悪いニュース」があるけれど、どっちから聞きたいかしら?」

ドロシー「あー…それじゃあ悪いニュースからだな。「いいニュース」とやらで口直しにさせてもらうさ」

アンジェ「そう、なら悪いニュースね…実はこっちの組織に王国諜報部のモール(もぐら。潜入エージェント)が潜りこんでいたことが判明したわ」

ドロシー「おい、嘘だろ……悪いニュースどころか最悪だ」

ベアトリス「あ、あの…アンジェさん……私たちの存在も知られてしまったんでしょうか?」

アンジェ「いいえ。それは「コントロール」が食い止めたわ」

ドロシー「ふぅ…やれやれだな」

アンジェ「そしていいニュースよ……幸いにして私たち「白鳩」の事は知られずに済んだ…けれど、それが事実かどうかはまだ分からない」

プリンセス「…困ったわね」

アンジェ「ええ。そこで、コントロールとしては安全と推測できるまで私たちを活動させずにおくことを決めた……幸い、寄宿舎も夏休みに入るから「この機会にうんと羽を伸ばしていらっしゃい」とメッセージを受けとったわ」

ドロシー「ひゃっほう、コントロールにしちゃ気前がいいな♪」

ちせ「うむ…まぁ最近は商売繁盛だったからの」

プリンセス「なら私の別荘にご案内するわ…ね、アンジェ?」

アンジェ「そうね、それがいいかもしれないわ」

ベアトリス「でしたら私が姫様の旅支度を整えさせていただきますね♪」

ドロシー「あー、旅支度ね…と言っても、何にも持って行くものなんてないしな。せいぜい着替えくらいか……」

アンジェ「そうね、支度はすぐ済むわ」

ちせ「うむ…ならばうちは「ぬか床」を冷たい場所で保存しておくことにしよう……それならば数週間は持つはずじゃからの」

ベアトリス「お願いですから私の部屋とか言わないで下さいよ…?」

ちせ「そんなことは言わぬ…そうじゃな、地下室でも借りるとするかの……」

アンジェ「それは好きにするといいわ…ちなみに夏休みは一週間後よ、私はそれまでに飛行船の手配を「コントロール」にお願いしておく」

プリンセス「ふふ、楽しみね…アンジェ♪」

アンジェ「そうかもしれないわね」

………

…数週間後・飛行船発着場…

アンジェ「いよいよ夏休みね…プリンセス、準備はいい?」

プリンセス「ええ。アンジェは?」

アンジェ「私はいつも通りよ…特に何も変わらないわ」すっきりした白を基調にした、黒い腰リボンつきのデイドレスと飾り付きの帽子…

ドロシー「と、言う割にはお洒落してるよな……ま、プリンセスとのハネムーンに備えた予行演習だと思っておけばいいんじゃないか♪」ドロシーはえんじ色で裾にしっかりしたドレープ(折り目)が入った大人っぽいドレスと、黒レースの長手袋…頭には黒い羽根飾り付きのボンネットをかぶっている……

アンジェ「…いつ私が「プリンセスと結婚する」なんて言ったかしら……///」

ドロシー「別に言ってないぜ?…お、そうやって赤くなったところを見ると脈ありかぁ?」

アンジェ「少しいいかしら、ドロシー……飛行船からの「不幸な墜落事故」に遭いたくないなら黙っていることね」

ドロシー「はいはい…あー、おっかない♪」

プリンセス「まぁまぁアンジェ…私は制度さえ整えばいつだっていいのよ♪」いたずらな上目遣いで両手を握りしめる……きらきらと光の加減で色が変わって見えるクリーム色のドレスに、柄に紫檀を使った優雅な同色のパラソル…

アンジェ「うっ…いえ、そう言うのは任務遂行の……///」

プリンセス「…ふふ、遠慮しないでいいのよ「シャーロット」……今度は「本番」の時に、二人だけで来ましょうね?」

アンジェ「べ、別に貴女の事が好きなわけじゃないわ……///」

プリンセス「もう、アンジェったら……ふふ、せっかくだから後で私の船室に来て…ねっ♪」

アンジェ「…そんなに飛行時間はかからないわ///」

ベアトリス「むぅぅ、アンジェさんはまた姫様といちゃいちゃして……もう、姫様には私だっているじゃないですか…///」ごくごくあっさりとまとめた淡い桃色のドレスで、頭には白いレース付きのボンネットをかぶっている…

プリンセス「ふふ、ベアト…あなたも私の大事な人よ……だから「どっちかを選べ」なんて言わないでね?」

ベアトリス「言いませんよ…姫様はどうであっても私の姫様ですから!」

プリンセス「よろしい…♪」

ちせ「おぉ、これが例の飛行船じゃな……空の上を旅するとは、ちとおっかない気もするが…それもまた鍛錬じゃ……うむ」武者震いをしながらタラップに脚をのせるちせは、暗緑色と銀ねず色の落ち着いたドレスで、腰のバスル(ふくらみ)が小ぶりで、いざと言う時にも動きやすいように仕立てられている…

アンジェ「それじゃあ乗り込みましょう、プリンセス」

プリンセス「ええ、アンジェ…嬉しいわ、久しぶりの旅行だもの♪」

アンジェ「そうね」

…飛行中…

プリンセス「綺麗な眺めね…ところでベアト。いつもベアトが身支度を手伝ってくれるけれど、何かと疲れるでしょうし……夏休みの間は私のお世話をしなくていいですからね?」

ベアトリス「疲れるだなんて、そんな……私は姫様のお世話をするのが好きだからやっているんです///」

プリンセス「まぁ…ならこうしましょう」

ベアトリス「はい、何でしょうか?」

プリンセス「ベアトが私の、私がベアトの支度を手伝うことにしましょう♪」

ベアトリス「うわわっ、そんなの駄目ですっ…///」

プリンセス「そう?…ならさっき言ったように私のお世話はしなくていいわ……それとも命令しなくちゃダメ?」

ベアトリス「そ、そんなことないです…分かりました」

プリンセス「ふふ、よろしい…あ、島が見えてきたわね♪」

アンジェ「あれはイベリア半島よ、プリンセス」…普段かけている「ドジな田舎娘風」の眼鏡を外し、さりげなく隣に立った

プリンセス「まぁ、アンジェは物知りなのね♪」

アンジェ「プリンセスだって航路は覚えているでしょう…まだエスパーニャ(スペイン)の上空よ」

ドロシー「おー…綺麗なもんだなぁ……ところで甲板で振る舞われているポンチ酒をもらってきたらどうだ、いい味だぜ?」

アンジェ「…それはいいけど、一体何杯飲んだの?」

ドロシー「おいおい…あたしがそんなレディらしからぬほどがぶ飲みすると思ってるのかよ?」

アンジェ「ええ、ひどくお酒臭いわ」

ドロシー「相変わらず口が悪いな……ちせ、どうした?」

ちせ「いや、ずいぶんと高いのじゃが…本当に大丈夫なんじゃろうな?」

ドロシー「はは、大丈夫だって…こいつは表面に薄い金属板を張ってある硬式飛行船だから、気嚢がむき出しの軟式飛行船みたいにヤワじゃない……おまけに「ケイバーライト」のおかげで今までの飛行船よりずっと揚力が稼げるんだ…あそこの綿雲よりもふわふわ浮くって♪」

ベアトリス「そうですよ、ちせさん…あの推進器だって一ポンド当たりの推力がぐっと大きい新式ですし♪」

プリンセス「二人とも詳しいわね♪」

アンジェ「そうね…つまり安全よ、ちせ」

ちせ「うむむ、では…お、おぉ……」

ドロシー「どうだ、いい眺めだろう♪」

ちせ「うむ…で、あの陸地が……どこなのじゃ?」

アンジェ「イベリア半島よ」

ちせ「なるほど…して、目的地まではどのくらいじゃ……やはり地面の上でないと背中がむずむずしていかん」

アンジェ「約三時間ね…船室で昼寝でもしていればいいわ」

ドロシー「そうそう「雲の上で昼寝」なんて、白い羽根のついた天使さまでもなきゃ味わえないんだ…な、贅沢だろ?」

ちせ「ふむ…それではちと午睡を取ることといたそう」

ドロシー「あいよ…プリンセスは?」

プリンセス「そうねぇ…お昼寝もいいかも知れないわ♪」

ドロシー「お…そんならベアトリス、ちょっと推進器の方をのぞいてこようぜ♪」

ベアトリス「わぁ、いいですねぇ…って、機関部の辺りはお客さんが入れないんじゃ……?」

ドロシー「それが「ちょっと見てみたいのだけど、よろしいかしら♪」…ってクルーにウィンクしたら、あっという間に通してくれたぜ?」

ベアトリス「やっぱり……でも見られるなら見ておきたいですし、行きましょう♪」

ドロシー「お、いい返事だな。それじゃあ二人とも、また後で……ま、アンジェもよかったら「昼寝」して来いよ♪」

アンジェ「……余計なお世話よ///」

プリンセス「ふふ…でも「お昼寝」の時間が三時間じゃ、ちょっと少ないかもしれないわね♪」

アンジェ「///」

…カサブランカの別荘…

ドロシー「おー…何とも綺麗な別荘だな♪」

ベアトリス「ほんとですね」

ちせ「白い壁が日光を反射して、もはや眩しいくらいじゃのぅ」

プリンセス「ふふ…ここは私の別荘だから、遠慮せずにくつろいでね♪」

ドロシー「ありがとな、プリンセス……おいアンジェ、聞いてるか?」

アンジェ「……そうね」

ちせ「アンジェどのは一体どうしたのじゃ…そんなにげっそりと疲れたような顔をして?」

ドロシー「あー…そりゃあきっと「空酔い」だろ。な、そうに決まってるよな、ベアトリス?」

ベアトリス「え?…あっ……そ、そうですよ♪」

ドロシー「ほら、ベアトリスもそう言ってるだろ?」

ちせ「ふむ……しかし「空酔い」とやらでアンジェどのがやつれているのは、まぁ分かるのじゃが……しからばなにゆえに、プリンセスどのはああもつやつやとしておるのじゃ?」

ドロシー「それはまぁ…あれだ、久しぶりに公務だの何だのから離れられたから嬉しいのさ」

ちせ「なるほど…確かに姫君の務めは何かと大変じゃろうからな……お察しいたします、プリンセスどの」

プリンセス「ええ、うふふっ…♪」

ドロシー「とにかく別荘に入ろうぜ…ここじゃ眩しくてやりきれないしな」

ベアトリス「そうですね」

プリンセス「なら私が案内するわね……ほらアンジェ、行きましょう?」

アンジェ「…え、何かしら」

プリンセス「ふふ、「行きましょう?」って言ったの…♪」

アンジェ「あ、あぁ…そうね」

ドロシー「…あのアンジェがあんなにがくがくになるって……飛行船の中でどれだけ責めまくられたんだよ……」

ベアトリス「あー…それはほかでもない姫様のことですから……///」

プリンセス「んー、二人とも何か言ったかしら?」

ドロシー「いや、何でもないって!」

ベアトリス「ひ、姫様に聞こえないようなところで何か言うはずがないじゃありませんか!」

プリンセス「ふふ…変なベアトとドロシーさん……さ、荷物を置いたら水着になって日光浴でもしましょう♪」

ドロシー「お、おう…そいつはいいや♪」

ベアトリス「で、ですねっ…わー、楽しみだなー」

ちせ「ふむ…砂浜でなら足腰によい鍛錬が出来そうじゃな」

アンジェ「あー、日光が眩しいわね……ほわぁ…」

ドロシー「……だめだこりゃ」

………

…しばらくして・浜辺…

ドロシー「うーん、やっぱりいいもんだなぁ……ロンドンの陰鬱な空気とは大違いだ♪」パラソルの下、デッキチェアに寝そべって伸びをするドロシー…

ベアトリス「ですねぇ…はぁぁ、暖かくて気持ちいいですし」

ちせ「うむ…しかしこの婦人用の水着とやらは……ずいぶんとけったいな外見をしておるのぉ」袖口や裾回りがふくらませてあって、いわゆる「かぼちゃパンツ」のスタイルに近い全身用水着を胡散くさい目で見おろしている…

ドロシー「あー、まぁ日本から見ればそうなのかもなぁ……やっぱり泳ぐときも「キモノ」なのか?」

ちせ「まぁ、似たようなもんじゃな…それにしてもプリンセスどのとアンジェどのは遅いのぉ」

ドロシー「プリンセスなんていうものは、支度に時間がかかるのさ…ふわぁぁ…♪」

…邸内…

プリンセス「うーん…どっちがいいと思う、アンジェ?」

アンジェ「別にどっちでもいいわ、プリンセスなら何だって似合うもの…///」

プリンセス「ふふ、嬉しい……じゃあこっちの桃色の水着にしましょう♪」

アンジェ「そう、ならそうするといいわ…」

プリンセス「ところでアンジェ」

アンジェ「なに?」

プリンセス「着替えるのを手伝って下さらない?」

アンジェ「え?」

プリンセス「ふふ、聞こえなかったかしら…♪」

アンジェ「いえ、よく聞こえたわ…」

プリンセス「なら後ろに回って…背中のホックをはずして下さいな♪」

アンジェ「わ、分かったわ…」

プリンセス「ふぅ……やっぱりカラーがきついのかしら」

アンジェ「かもしれないわね」

プリンセス「うーん…とはいっても跡が残っているわけでも、擦れているわけでもないし……どう思う?」ドレスを脱ぎ、下着姿で鏡の前に座っているプリンセス…

アンジェ「別に…///」

プリンセス「…それだけ?」

アンジェ「だって私が決めることじゃないわ、プリンセスが着やすいかどうかでしょう…///」相変わらずのポーカーフェイスながら、顔を微妙にそむけている…

プリンセス「うふふ…アンジェったら恥ずかしいの?」

アンジェ「そんな訳ないわ」

プリンセス「だってそんな風に横を向いちゃって…今までだってこういうことはあったのに、今日は私の身体を見るのがそんなに恥ずかしいの?」

アンジェ「それとこれとは話が別よ。だって、こんな明るさの下で見たことはなかったもの……///」

プリンセス「なら…ここで口づけをしたら「こんな明るさの下」でした、初めてのキスになるわね♪」

アンジェ「ちょっと…何を考えているの///」

プリンセス「ふふ…さて、何を考えているでしょうか♪」

アンジェ「……こと」

プリンセス「んー?」

アンジェ「私が…考えているような事……///」

プリンセス「ふふ…正解♪」ちゅっ…♪

アンジェ「///」

プリンセス「ふふ…せっかくの夏休みですもの、いっぱい楽しみましょうね……シャーロット♪」ぐいっ…♪

アンジェ「あっ…///」

プリンセス「ほんと、シャーロットは肌が白くてすべすべしていて…とっても綺麗ね♪」するするとアンジェの着ている物を脱がしていくプリンセス…ドレスの胸元を開き、スカートはたくしあげ、ペチコートは引き下ろす……

アンジェ「…褒められても何も出ないわ///」

プリンセス「…それはどうかしら♪」むにゅ…むにっ♪

アンジェ「んんぅ…んっ///」顔をそむけて唇をかみ、声が出そうになるのをこらえるアンジェ…

プリンセス「ふふ、可愛い…♪」ちゅ…ちゅぱっ♪

アンジェ「んぅ…んくっ……はぁ、はぁ…///」

プリンセス「ふふ…そんな風に頬を赤らめて……まるで「召し上がれ」って言っているみたい♪」

アンジェ「……そんなつもりじゃないわ」

プリンセス「あら、ならどういうつもりなのかしら…普段は何があっても顔色一つ変えないのに♪」

アンジェ「あれは任務だから……それに、プリンセスは別よ///」

プリンセス「…まぁ///」

アンジェ「///」

プリンセス「まぁまぁまぁ…シャーロットったらやっと本音を言ってくれたわね、嬉しいわ♪」ちゅっ…ちゅぱ、ちゅぷっ……♪

アンジェ「んぅ…んちゅ、ちゅぱ……んふっ、ちゅぅぅ…ちゅるっ…ちゅぅ///」

プリンセス「ふふっ…ちゅっ、ちゅうぅぅ…んちゅ、ちゅる…っ……♪」

アンジェ「んはぁ…はぁ、はぁ……ちゅぅ、ちゅぱ…っ……あふっ…///」

プリンセス「あらあら、シャーロットったらすっかり表情をとろけさせちゃって…♪」

アンジェ「んはぁ…だって……プリンセスが…んくぅ///」

プリンセス「私が…何かしら♪」

アンジェ「…プリンセスが……好きだからよ…///」

プリンセス「…ごめんなさい、シャーロット……」

アンジェ「……プリンセス?」

プリンセス「あのね…私、これでも結構我慢して来たのだけど……今ので理性が振り切れちゃったわ♪」

アンジェ「え……それって、どういう…んんっ!?」

プリンセス「もう、可愛いシャーロットがイケナイのよ…そんな風に目をうるませて告白されたら、我慢なんてできっこないじゃない♪」

アンジェ「んっ、んっ、んあぁぁぁっ…!?」

プリンセス「はぁ、はぁ…愛しいシャーロット……もう、涙目になるまでイかせてあげるわね♪」くちゅっ、にちゅ…っ♪

アンジェ「んあぁっ、あん…っ♪」

プリンセス「ふふ…これでも私だって色々勉強しているんですもの、きっと気に入ってくれると思うわ♪」じゅぶじゅぶっ…ぐちゅっ♪

アンジェ「ちょっと待っ……んひぃぃっ♪」

プリンセス「ふふ、シャーロットったらもうこんなにとろっとろにして…そんなに気持ちいいの?」

アンジェ「んぁぁ…き、気持ちいいわ……腰が…抜けそう……///」

プリンセス「まぁ…でもまだ「抜けそう」なだけ?……ならもっと頑張らないとダメね♪」ぐちゅり、じゅぶっ……♪

アンジェ「んぁぁ、あっ、んんぅ…ひぅっ、んぁぁ……あ、あっ…んはぁぁっ♪」



…浜辺…

ちせ「それにしても遅すぎではあるまいか…いくら姫君とはいえ着替えにそこまでかかるものかのう?」

ドロシー「あ、あー……まぁ、何だ…ほら、プリンセスだから「日焼けしないように」とか…なんかあるんだろ、きっと」

ベアトリス「そ、そうですよ……私たちと違って姫様は何かと大変でいらっしゃいますし…」

ちせ「それにしてもじゃ…もしや、刺客か何かが差し向けられたのではなかろうな……こうしてはおれぬ、すぐ我が刃をもって助けに参らねば!」

ドロシー「ちょっと待てって、ちせ……プリンセスの脇にはアンジェがいるんだぜ、刺客だろうが何だろうがあの「黒蜥蜴星人」にかなうと思うか?」

ちせ「それはそうじゃが……不意を突かれれば剛の者とて敵わぬ。ましてや飛び道具をもってすれば女子供でも名人上手を屠ることができると言うもの…」

ドロシー「まぁ道理だな…ところが、アンジェはその「飛び道具」の名人上手ときてやがる……あのウェブリー・フォスベリーの銃口をのぞきこんだら、次に会うのは三途の川の渡し守「カロン」の顔…って所だろうよ♪」

ベアトリス「そうですよ、アンジェさんが勝てない相手なんている訳ないじゃありませんか」

ちせ「うむむ…二人がそうまで信用しているのならうちもとかく言うのは差し控えよう…じゃが、遅いの……」

ドロシー「まぁ、そう言うなって…ほら、これで沖合でも眺めてみろよ♪」真鍮の小さいオペラグラスを差し出す

ちせ「うむ…おぉぉ、沖合にいる汽船がよく見えるのぉ……」

ドロシー「な、ベアトリスのお手製だから視界の良さが段ちがいなんだ」

ちせ「うむぅ…見事なものじゃ……」

ドロシー「だってよ、ベアトリス?」(…二人とも早くしろよ、いい加減引き伸ばしのネタが尽きてきてるんだからさ……)

ベアトリス「よ、喜んでもらえてよかったです…」(うー…姫様、早くしてくださいよ……)

…邸内…

プリンセス「…ほぉら、シャーロットは「ふみふみ」されるのが好きなのよね♪」ベッドの上で両腕を横に伸ばして立ち、つま先でアンジェの身体をなぞりつつ、時折軽く踏みつけるプリンセス…

アンジェ「うんっ、好き…ぃ♪」

プリンセス「ふふふ、すっかり甘えんぼさんになっちゃって♪」

アンジェ「だって……あなたと二人きりだから///」

プリンセス「ふふ、素直でよろしい…それとも、それも嘘かしら?」

アンジェ「スパイは嘘をつく生き物……だけど、必要でない時まで嘘はつかないわ///」

プリンセス「そう…ふふっ♪」ぐりっ、ぬちゅ…♪

アンジェ「んあぁ…っ♪」ひくっ、とろとろ…っ♪

プリンセス「うふふ……愛しい私だけのシャーロット♪」

アンジェ「んんっ、そんなのずるい…わ♪」ぷしゃぁぁ…♪

プリンセス「ふふ、私はずるい女なの…可愛いシャーロットを独り占めしたくてたまらないわ♪」

アンジェ「大丈夫よ、私はプリンセス専用だから…///」

プリンセス「まぁ、嬉しい……それなら私の好きなようにしてもいいのね♪」

アンジェ「…ええ」

プリンセス「それじゃあ……ふふっ♪」

アンジェ「///」

プリンセス「…想像しちゃった?」小首を傾け、いたずらっぽい笑みを浮かべて見おろした…

アンジェ「別に…///」ぷいとそっぽを向くアンジェ…が、頬がわずかに赤い……

プリンセス「ふふ、いいのよ?……そろそろ浜辺に行かないと、ちせさんに怪しまれちゃうわね♪」

アンジェ「…そうね、行きましょう」

プリンセス「その前に……色々拭いた方がいい所があるんじゃないかしら?」

アンジェ「…そ、そうね」

…浜辺…

プリンセス「遅れてごめんなさいね♪」

ベアトリス「姫様、お待ちしておりましたよ♪」

ドロシー「おー、二人とも待ちくたびれたぜ……ま、プリンセスは着替えだの何だのに時間がかかるもんだから…仕方ないよな?」意味ありげに眉を上げて見せるドロシー

プリンセス「…ふふ、そういうことです♪」

ドロシー「だから私がそう言ったろ、ちせ?」

ちせ「うむ。疑ってすまなかったの」

プリンセス「何かあったのですか、ちせさん?」

ドロシー「いや…ちせが二人の来るのがちょっと遅いから「何かあったんじゃないか」って言ってね……でも、あたしだってここまで来て刃物だのハジキ(銃)だのは見たくないしさ、アンジェがいるなら大丈夫って言ってたんだ」

プリンセス「まぁ…心配かけてごめんなさいね、ちせさん」

ちせ「いや、こちらこそ」

ドロシー「……ところでアンジェ、無事か?」ニヤニヤしながら耳元にささやいた

アンジェ「何の話」

ドロシー「おいおい、とぼけるなって…な?」

アンジェ「別に何もなかったわ…プリンセスと着替えてここに来た。それだけよ」

ドロシー「へぇー……それじゃあそのふとももの粘っこい液体は何だ?」

アンジェ「…」ちらっと自分のふとももを見おろすアンジェ…

ドロシー「ははっ、引っかかったな…おおかたそうだろうと思ってたぜ♪」

アンジェ「ふとももに「得体の知れない液体がついている」って聞いたら、誰だって気になるはずよ」

ドロシー「普通ならな…アンジェ、お前ならどうでもいいものだったら気にしないのはよく分かってるんだ……で、どうだったんだ?」

アンジェ「…言うことはないわ」

ドロシー「おいおい…まぁあのプリンセスの事だ、きっとお前がひーひー言わされてたんだろうな♪」

アンジェ「余計なお世話よ」

ドロシー「相変わらずつれない返事だことで…それがベッドの上じゃ真っ赤になってプリンセスの下敷きになってるときた……想像するだけで愉快だな♪」

アンジェ「ドロシー、あんまり人をからかうものじゃないわ」

ドロシー「へいへい…それにしても見たかったなぁ、アンジェがプリンセスに押し倒されてよがってる所……」

プリンセス「……私がどうかしましたか♪」

ドロシー「うえっ…!?」

プリンセス「あら、そんなに驚かなくても……わたくしの事をお話しているようでしたから、つい交ぜていただきたくて…ふふ♪」そっとドロシーの肩に両手をかけ、後ろからドロシーの胸元をのぞきこむようにしながら「ふーっ」と耳元に吐息を吹きかける…

ドロシー「…っ///」ぞくぞくっ…

プリンセス「ふふ……わたくしとアンジェさんは仲良く「お着替え」していただけですわ。聞きたいことはそれでよろしいかしら?」

ドロシー「え、ええまぁ…」

プリンセス「そう、ならよかったわ……でもわたくし、この休みはドロシーさんたちともいっぱい「遊び」たいですから…うふふ、楽しみです♪」

ドロシー「///」

プリンセス「それではドロシーさん、また後で……ベアト、せっかくですし隣のデッキチェアにいたしましょう♪」

ドロシー「…あれじゃ勝てっこないな」



…夕刻…

プリンセス「綺麗な夕日ね、アンジェ…♪」

アンジェ「そうね、ロンドンでは霧と煤煙のせいで夕日なんて見られたものではなかったものね」

プリンセス「ええ、それもそうだけれど……///」

アンジェ「…なに」

プリンセス「隣にシャーロットがいるんですもの…なおの事綺麗に見えるわ」

アンジェ「…じ、冗談は止して///」

プリンセス「私の言っていることが冗談に聞こえる…?」

アンジェ「…」

プリンセス「あのね…シャーロットとここでいっぱい楽しい事がしたいの……それで、うんと二人だけの思い出を作ろう…って///」

アンジェ「……プリンセス」夕陽に照らされてきらりと目に光るものが浮かぶ……

プリンセス「…だからえっちしましょう♪」

アンジェ「…は?」

プリンセス「聞こえなかったかしら。それじゃあもうちょっと大きい声で言うわね……すぅー…」

アンジェ「待って。待ってちょうだい…言った言葉は聞こえたわ……ただ、頭が理解するのを拒んでいるの」

プリンセス「あら、どうして?」

アンジェ「いえ…だって、その……///」

プリンセス「もしかして私が「プリンセス」だから…?」

アンジェ「いいえ、むしろ喜ばしいことだわ」

プリンセス「それじゃあ…誰か他に意中の人がいて、私とベッドに入るのが嫌?」

アンジェ「全くないわ」

プリンセス「…じゃあさっきのでヘトヘトになっちゃった?」

アンジェ「いいえ。あの程度でくたびれていたらスパイなんて務まらない」

プリンセス「じゃあどうして?」

アンジェ「……から」

プリンセス「んー?」

アンジェ「…プリンセスの前でそういうことを言うなんて恥ずかしいから///」

プリンセス「まぁ……まぁまぁまぁ♪」

アンジェ「な、何がおかしいの」

プリンセス「うふふふっ、シャーロットったらそんな可愛い事を言ってくれるなんて……ごめんなさい、もう我慢できないわ♪」

アンジェ「えっ…ちょっと待って」

プリンセス「さぁさぁシャーロット、寝室には大きなふかふかのベッドが待ってるわ♪」

アンジェ「プリンセス、待って……何で私が腕を振りほどけないの…っ」

プリンセス「ふふ、どうしてかしらね…さぁ、夜は長いんだもの。うんと愉しみましょうね♪」

アンジェ「ちょっと……ねぇ、待ってったら///」

プリンセス「いいえ、待たないわ…そーれっ♪」ベッドにアンジェを放り込み、ついで自分もダイブするプリンセス…

アンジェ「///」ぽすっ…と一つバウンドしてからベッドに「着地」する二人…

プリンセス「んふふ、可愛い……っ♪」胸元をはだけさせ、夕日に照らされる白い肌をじっくりと観察する…

アンジェ「…あなたこそ///」プリンセスの胸元に手を伸ばし、首元のブローチを外すとボタンに手をかけて胸元を開いた……

プリンセス「ふふっ…♪」

………

…そして夕日が沈み…

アンジェ「……あぁっ、んんっ、んぁぁ…っ///」

プリンセス「んっ、んっ……んんっ♪」

アンジェ「はぁ、はぁっ…プリンセス、脱がすわよ……」

プリンセス「ええ、私もシャーロットの事脱がしてあげ……痛っ」

アンジェ「…どうしたの」

プリンセス「あのね、アンジェのふとももの所に何か固いものがあって…膝をついたら食い込んじゃったわ……」

アンジェ「あ…ごめんなさい」気まずそうにガーターベルトのように取りつけていた革ベルトとホルスターを外すと、中身の「ウェブリー・フォスベリー」リボルバーごとナイトテーブルの上に置いた

プリンセス「ううん、いいのよ…それじゃあ脱がすわね……あら、上等な万年筆ね」二本あるうちの一本に手を伸ばした…

アンジェ「だめ、触らないで…!」

プリンセス「?」

アンジェ「…こっちのはインクが劇薬になっているの…うかつに触ると確実に死ぬ。ちなみにこの便せんは毒じゃない方のペンで書いて少し熱すると、書いた文字が化学反応で透明になる」

プリンセス「ふぅ……アンジェ、他にも「びっくりスパイ道具」があるなら自分で外してもらえるかしら?」

アンジェ「ええ、そうね…プリンセスを怪我させるわけにはいかないもの」

プリンセス「全く、私の別荘にまでそんなものを持ちこんで」

アンジェ「全てプリンセスの安全のためよ…」黒革の胴衣(ボディス)を縫っている糸の一本を抜き取り、ナイトスタンドの柄に巻きつけた…

プリンセス「それは?」

アンジェ「細い金属ワイヤー…相手の首を絞めるのに使えるわ。それから……」胴衣の型崩れを防ぐため縦に入っている「骨」の数本を引き抜いた…

プリンセス「まだあるの?」

アンジェ「ええ。こっちが刺殺用のニードル、こっちは鍵開け用のキーピック二本……あとは…」銀鎖のついた懐中時計をナイトテーブルの上に置く…

プリンセス「それは私も持っているわ…裏面の蓋を開けると粉薬が入っているのよね?」

アンジェ「ええ……故障した時計をいじるふりをしながら相手のグラスに薬を入れることができる……私の場合自白剤だけど、プリンセスは眠り薬だったわね」

プリンセス「ええ、そうよ……それは?」

アンジェ「普通のコンパクト……に見えるけど二重底になっていて手紙を隠せる。手鏡自体は外して正しい位置の窪みにはめ込むとルーペになるから、ものを拡大したり…光を反射させて合図を送ってもいい」

プリンセス「ふんふん…」

アンジェ「この印章付きの指輪は、印章の部分を半回転させておいてから相手に押し付けると小さい針が出てくる…これも触ると毒よ」

プリンセス「ずいぶんたくさん持っているのね…?」

アンジェ「ええ…この不格好な眼鏡のフレームは鉄で出来ているから、いざとなれば相手の喉を突く武器になる」

プリンセス「……まだあるの?」

アンジェ「このハンカチはなかなか破けない生地になっているし、特定の角度で日に当てながらロンドンの地図と合わせると……月ごとに変わるセーフハウス(隠れ家)の位置が分かるようになっているわ。…これはみんな持っているわね」

プリンセス「ええ…♪」

アンジェ「それから……」

プリンセス「ねえ、アンジェ」

アンジェ「なに?」

プリンセス「まだかしら…私はもう脱ぎ終わってしまったのだけど♪」白い絹の下着だけでにこにこしながら立っている…

アンジェ「…ごめんなさい、すぐ脱ぐわね///」慌てて「Cボール」を置こうとする…と、プリンセスがそれを取り上げる

プリンセス「ふふっ、これって「Cボール」よね……アンジェ♪」片手でCボールをもてあそびながら、急に意地の悪い笑みを浮かべた……

アンジェ「ええ…Cボールを手にしてどうするつもり?」

プリンセス「ふふふっ……えいっ♪」

アンジェ「えっ、ちょっと…///」二人とも寝室の天井近くまで浮き上がり、緑色の光に包まれている…


アンジェ「…プリンセス、Cボールで何をする気?」

プリンセス「ふふっ…♪」アンジェが下着に着ている胴衣の胸元をほどくと、空中で脱がせるプリンセス…

アンジェ「ねぇ、ちょっと…///」

プリンセス「一度空中でアンジェとえっちしてみたかったのだけど、いつもはCボールを手元から離したことがないし……ふふっ、やっとスキをみせてくれたわね♪」

アンジェ「別に意地悪でしていたわけじゃないわ…Cボールはトップ・シークレットの道具だし扱いが難しいから……って、何をしているの///」

プリンセス「んー…空中でアンジェのここを眺めるなんて新鮮な気分ね♪」

アンジェ「わ、悪ふざけはよして///」

プリンセス「もう。私は「シャーロット」の事が大好きなのに、どうしてそういうことを言うのかしら……んちゅ…っ♪」

アンジェ「プリンセス、止めて……だめ、そんなところを舐めないで…っ///」

プリンセス「んふ、んくぅ……ふふ、アンジェの味がするわ」ちゅく…っ、くちゅり……♪

アンジェ「ゆ、指も駄目……っ///」

プリンセス「でも、だとしたら……あ、分かったわ♪…アンジェは「貝合わせ」がしたいのね♪」

アンジェ「!?……プリンセス、今…か……って…///」

プリンセス「あら、間違えたかしら…お互いに「めしべ」と「めしべ」をくっつけ合うことでいいのでしょう?」

アンジェ「ええ…合っているわ///」

プリンセス「ならそれをしましょう♪…ふふ、空中だと姿勢を変えるのが難しいわね♪」くるりと一回転してしまい、アンジェの顔を胸で挟んでしまうプリンセス……

アンジェ「…っ///」

プリンセス「あら、ごめんなさい…どう、気持ちいいかしら?」

アンジェ「……い///」

プリンセス「んー?」

アンジェ「…柔らかくていい匂い///」そのまま胸元に顔をうずめるアンジェ…

プリンセス「もう、アンジェったら…ふふ♪」白く滑らかなアンジェの背中に手を回して抱きしめる…

アンジェ「んんぅ…すぅぅ……れろっ///」

プリンセス「きゃっ…もうアンジェったらどこを舐めているの♪」

アンジェ「…谷間」

プリンセス「んっ、もう……で、お味はいかが?」

アンジェ「……甘酸っぱい初恋の味///」

プリンセス「まぁまぁ…♪」

アンジェ「…もういいでしょう、遊びの道具じゃないわ」

プリンセス「だーめ、まだ空中でしてないもの♪」

アンジェ「……本当にする気なの?」

プリンセス「ええ。それじゃあ行くわね♪」くちゅ…っ♪

アンジェ「えっ、ちょっと待って…んんっ///」

プリンセス「あっ、これすごく気持ちいい…っ♪」

アンジェ「んひっ、んんぅ、んあぁぁっ…!」

プリンセス「はぁ、はぁ、はぁっ……これ…っ、アンジェの柔らかい感触だけが伝わってきて……すごく幸せ…っ♪」ぐちゅぐちゅっ、にちゅ…っ♪

アンジェ「んんっ、んひぃ…んっ、ひぐぅ……は、早く降ろして……っ…あぁぁん…っ♪」ひくっ、とろとろっ……くちゅり…っ♪

プリンセス「んっ、んっ……あぁぁ、これ癖になっちゃいそう♪」

アンジェ「そんな癖は求めてないわ…んぁぁぁっ///」ぷしゃぁぁ…っ♪

プリンセス「んっんっんっ…あぁ、アンジェのイっている顔……とっても可愛い♪」

アンジェ「…ば、ばか///」

………

アンジェ「プリンセス……んんぅ」

プリンセス「シャーロット…あむっ、んちゅ……///」

アンジェ「んふぅ…んちゅぅ、ちゅぷ……///」

プリンセス「んんっ、シャーロット……もっと、して…///」

アンジェ「ええ、行くわよ…///」くちっ…にちゅ……っ

プリンセス「あぁ、あぁぁ…んぅ……っ!?」Cボールの明るい緑の光に包まれ、空中に浮かんだままいちゃついていた二人…が、プリンセスが間違ってCボールを解除してしまった……

アンジェ「…わっ!?」ぼふっ…!

プリンセス「ごめんなさい……大丈夫、シャーロット?」

アンジェ「私は平気よ。プリンセスは?」

プリンセス「私も大丈夫よ……ところで、重くなかった?」

アンジェ「大丈夫、羽根のように軽かったわ…///」

プリンセス「もう、シャーロットったら…♪」

アンジェ「…ふふ」

プリンセス「ふふふふっ…♪」

アンジェ「ふふふっ♪」

プリンセス「あはははっ♪」

アンジェ「あははっ♪」

プリンセス「あーおかしい…自分で始めておきながら心配ばかりして♪」

アンジェ「全くね。しかも機密扱いの道具をこんなことに使うなんて…でも気持ち良かったわ……///」

プリンセス「ふふ、もう終わりのつもり?」

アンジェ「だって……もう数時間は経ったはずよ?」

プリンセス「ふぅん…でも私はまだまだ大丈夫だし、シャーロットだってもっとしたいんじゃないかしら?」

アンジェ「わ、私はそんな風に思ってないわ…///」

プリンセス「ふふ…相変わらず私の前では嘘が苦手ね?」

アンジェ「そんなことないわ……私はもう充分よ」

プリンセス「……そうかしら?」ベッドの上に両手をつくと、じりじりとアンジェに覆いかぶさるプリンセス…

アンジェ「え、ええ…だから放してちょうだい」

プリンセス「…本当は?」

アンジェ「……もっとしたいわ///」

プリンセス「ほらやっぱり♪」

アンジェ「…明日は確実に寝不足ね」

プリンセス「それなら一緒にお寝坊しましょうよ…シャーロット♪」…ちゅっ♪

アンジェ「ええ…どうやら私に選択肢はないようだものね」……ちゅ♪


………

…翌朝…

ドロシー「おー、起きてきたか……」

アンジェ「ええ…太陽が黄色いわ……」

ドロシー「…で、プリンセスは?」

プリンセス「おはよう、ドロシーさん♪」

ドロシー「うわ!」

プリンセス「どうかなさったの?」

ドロシー「い、いや…何でもない……」

プリンセス「ふふ、変なドロシーさん…おはよう、ベアト♪」

ベアトリス「おはようございます、姫様。紅茶でよろしいですか?」

プリンセス「ええ、ありがとう♪」

ドロシー「アンジェは何がいいんだ……おい、アンジェ!」

アンジェ「…なに?」

ドロシー「朝食は何がいいんだ……って言ってもこの時間だとブランチ(朝食と昼食の間)って所だけどな」

アンジェ「…任せるわ」

ベアトリス「もう、アンジェさんったら仕方ないですね……じゃあ私が適当に作ってきますから」

アンジェ「ええ、それでいいわ」

ちせ「…ふむ、規則正しい生活を送らぬと身体に悪いぞ」

アンジェ「こればかりは不可抗力よ」

ちせ「…ふむぅ?」

ドロシー「あぁ、まぁなんだ…普段頑張ってるわけだし、ちょっとくらいいいんじゃないか?」

ちせ「まぁそれもそうじゃが……しかしアンジェどのがこのような寝ぼけまなこなのは珍しいの」

ドロシー「あー…まぁ、そのぉ……あれだ…時差とか旅行疲れとかそういうのだろ」

ちせ「アンジェどのがそのようなことで、かくも疲れた様子なのはどうも奇妙じゃがの」

ドロシー「えーと…あ、アンジェはポーカーフェイスだけど、意外と旅行の前とかわくわくして寝られないタチなんだよ!」

プリンセス「ふふ、そうなの…アンジェったらはしゃぎ過ぎちゃったのね♪」

ちせ「さようか……ならばしばし休まれるとよかろう」

ドロシー「お、おう…それがいいや。ところで、よかったらこの後あたしと海岸へ遊びにでも行こうぜ?」

ちせ「ふむ、たまにはそれもよかろう……ご一緒いたそう」

ドロシー「うーし、そんじゃああたしたちはお先に…プリンセスもよかったら後からどーぞ♪」

プリンセス「ふふ、そうね♪」

ベアトリス「あれ、ドロシーさんにちせさん…お出かけですか?」

ドロシー「ばか言え、ちょっと浜辺で遊んでくるだけさ……ベアトリスも後で来いよ♪」

ベアトリス「全く、ドロシーさんは元気ですね…姫様、半熟のゆで卵にトースト、フルーツの盛り合わせです♪」

プリンセス「ありがとう、ベアト…片付けは後で構わないから海岸へ行ってらっしゃい♪」

ベアトリス「姫様、よろしいのですか?」

プリンセス「ええ、もちろん…私はアンジェさんとブランチをいただいてから浜辺に参りますから♪」

ベアトリス「分かりました、それでは失礼します」

プリンセス「はい……ふふ、それじゃあアンジェ…「あーん」してあげる♪」

アンジェ「別にいいわ、自分で食べられるもの…」

プリンセス「はい、あーん♪」

アンジェ「…あーん///」

プリンセス「はい、よくできました♪」

…浜辺…

ドロシー「そぉれ、捕まえちゃうぞぉ…♪」

ベアトリス「いやあぁぁ…なんでドロシーさんったら飲んだくれているんですかぁ!?」

ドロシー「おいおい、朝から飲んだくれる奴があるかよ。あたしはしらふだ……ただ、ちっこいベアトリスを抱きしめてあちこち触ったりしたいなぁ…ってだけさ♪」

ベアトリス「それでしらふだなんて、余計タチがわるいですよぉぉ…!?」

ドロシー「そう気にするなって…あたしら仲間だろ?」

ベアトリス「それ、「仲間」の使い方が間違ってますよ…ひぃぃ!」

ちせ「…おぉ、よい走りじゃ。鍛錬としては充分な効果があるじゃろうな」

ベアトリス「ひぃいやぁぁ…っ!?」

ドロシー「よぉーし、ベアトリスが一生懸命逃げるなら……あたしも全力で追いかけないとなぁ♪」

ベアトリス「いやぁぁぁ…!」

アンジェ「ベアトリス、うるさい」

ベアトリス「えぇぇ、私が悪いんですかぁ!?」

アンジェ「ええ…だいたい走って逃げるのに叫んでいると息が無駄になる。黙って走るべきよ」

ベアトリス「そ、そんなこと言ったってぇぇ…!」

アンジェ「それにドロシー、貴女も……ベアトリスが嫌がっているのに追い回すのはよくないわ」

ベアトリス「はぁ、よかった…そうですよドロシーさん!」

アンジェ「私は疲れているからそう言う声は聞きたくないの…ベアトリスで何かしたいなら向こうでやって」

ベアトリス「…え?」

ドロシー「あいよ……それ、つーかまーえた♪」

ベアトリス「いやぁぁぁっ!?」

アンジェ「だからうるさい」カチリ…

ベアトリス「…!……!!」

ドロシー「それじゃあまた後で…んふふ♪」

プリンセス「…あら、ドロシーさんったらベアトを抱えてどちらまで?」

ドロシー「あぁプリンセス…いやぁ、ちょっと抱きしめてなでなでしようかなぁ……なんてね?」

プリンセス「そうですか……ふむふむ」

ドロシー「あぁ、いや…もちろんプリンセスが「ベアトは私の専用です」って言うならお返しするけどな?」

プリンセス「そうですねぇ…」

ベアトリス「…!……!!」パクパク…

ドロシー「…で、どうする?」にいっ…と口の端に笑みを浮かべる

プリンセス「決まりましたわ」

ドロシー「それで、プリンセスはどうする…?」

ベアトリス「……!!」

プリンセス「わたくしも参りますわ…ふふ、ベアトとドロシーさんを一緒に味わえるなんて……なかなかそんな機会ありませんものね♪」ドロシーの耳元でささやいた…

ドロシー「…お、おい///」

ベアトリス「!?」

プリンセス「…それじゃあ参りましょう、ドロシーさん……♪」ドロシーの腕に自分の腕を絡め、にこにこと邸宅の方に戻っていく…

アンジェ「…」

ちせ「おや…プリンセスどのはせっかく水着になったと言うのに、どうして戻ってしまったのじゃろう?」

アンジェ「きっと色々あるのでしょう……まったくもう」

ちせ「?」

…その日の夕食時…

ドロシー「…なぁアンジェ」テーブルナイフで「鴨肉のロースト・オレンジソースがけ」を切りつつ声をかけた…

アンジェ「何?」

ドロシー「……ベッドの上のプリンセスっていつもああなのか?」

アンジェ「ノーコメント」

ドロシー「そうかよ…それにしても可愛い顔してとんだじゃじゃ馬……」

アンジェ「ドロシー、今なんて言った?」

ドロシー「な、何も言ってないぞ。…って言うかその表情でナイフをつかむなよ、心臓に悪いだろ……」

アンジェ「なら結構」

プリンセス「ねぇアンジェ、二人だけの内緒話も結構だけれど……せっかくですしわたくしも混ぜて?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「……なんでプリンセスはくたびれた素振りすらないんだよ。あたしはもうヘロヘロだっていうのに…」

ベアトリス「…うぁぁ」

ドロシー「ベアトリスにいたっては…ありゃ魂が出て行った後の抜け殻だな……」

ちせ「どうしたのじゃ、ベアトリスどのはずいぶん気が抜けておるが…?」

プリンセス「…きっと日頃の雑用から離れて気が抜けているのでしょう……こんなに疲れさせていたかと思うと、わたくしも何かとベアトに頼る癖を改めなくてはなりませんね……ふふっ♪」

ベアトリス「あー……」

ちせ「それにしても疲れ切っておるな…そういう時は……」ごそごそと着物のたもとをかき回すと、何やら赤っぽいものを取り出した…

プリンセス「それは何ですか?」

ちせ「これは「梅干し」と申す酸っぱい漬物じゃ…わが国では疲労回復に効果があると伝えられておる。それ、ベアトリスどの…」

ベアトリス「ふぇ…?」

ちせ「口を大きく開けて「あーん」…じゃ」

ベアトリス「はい、わかりました……あーん…」

ちせ「ほい」

ベアトリス「………すっぱ!?」

ちせ「そういう物じゃからな」

ベアトリス「な、何を放り込んでくれたんですか!?」

ちせ「じっくり漬けた「梅干し」じゃ…疲れに効くぞ?」

ベアトリス「何か酸っぱくてぱさぱさした皮とにゅるにゅるした果肉が…うわぁぁ!」

ちせ「ふむ、見ての通りあっという間に元気になったじゃろう?」

ベアトリス「違います!おかしなものを口に放り込まれたせいでパニックなんですよっ!」

ドロシー「なら吐きだせばいいじゃないか」

ベアトリス「姫様の前でそんなこと出来る訳ないじゃありませんか、ドロシーさんじゃあるまいし!」

ドロシー「なんだとぉ?」

アンジェ「いいから静かにして…食卓で騒ぐのはマナー違反よ」

プリンセス「ふふ、相変わらずベアトは面白いわね♪」

ベアトリス「もう、姫様まで……と、とにかく口の中をゆすがせて下さいっ!?」ごく、ごくっ……

ドロシー「お、おい…それ」

ベアトリス「…きゅう///」

ドロシー「……水じゃなくて酒だぞ…」

プリンセス「あらあら…」

アンジェ「…お帰りなさい」

ドロシー「あぁ……とりあえずベッドに寝かしてきた」

プリンセス「ありがとう、ドロシーさん」

ちせ「すまなかったのぉ…まさか梅干しにあんな拒否反応を示すとは」

ドロシー「それだけ強烈だったのかもな……どんな味なんだ?」

ちせ「たべるかの?」

ドロシー「それじゃあ一つ……見た目はしわくちゃのプラムみたいだけど、もっと小っちゃいな」

プリンセス「せっかくの機会ですから…ちせさん、よかったらわたくしにも下さいな?」

ちせ「うむ、どうぞお取りになってくだされ…アンジェどのはいかがじゃ?」

アンジェ「そうね…一応味見くらいは」

ちせ「うむ、ではドロシーどのと半分こでいいかのぉ?」

アンジェ「…」

ドロシー「…あー、あたしは一個食べるつもりでいるから…そーだ、プリンセスと半分こしたらいいんじゃないのかなー?」

プリンセス「そうね、それもいいかもしれないわね…それじゃあ半分こ♪」柔らかい大粒の梅干しを手で割いて、片一方をアンジェに渡す…

アンジェ「あ、ありがとう…///」

ドロシー「それじゃあ……うわ、酸っぱいな!?」

アンジェ「…」

プリンセス「わぁ、面白いお味ね?」

ちせ「ふむ…こちらにはこのようなものが少ないからのぉ……」

ドロシー「うー、すっぱ……これはあれだ……ジンの中に放り込んでフレーバーにすれば…」ごくっ…

ちせ「ほぉ…日本では焼酎に入れることもあるが、それをご存じとは……ドロシーどのは物知りじゃな」

ドロシー「いやぁ、別にそう言うつもりじゃなかったんだけどな…おっ、こうすれば意外とすんなり飲めるな♪」

アンジェ「…」

ドロシー「おいアンジェ、さっきからやたら無表情だけどどうした…まさか酸っぱいのは苦手か?」

アンジェ「そんな訳ないわ、黒蜥蜴星人である私が酸っぱいものを食べられないはずがない……ただ」

ドロシー「…ただ?」

アンジェ「思っていたのと違う酸味を感じて驚いただけ…」

ドロシー「はぁん…それはつまり「苦手」ってことだなぁ?」

アンジェ「苦手ではないわ。少なくともベアトリスみたいに礼を失するような騒ぎ方はしない」

ドロシー「あれと比較する時点で相当苦手だろ…ちせには悪いが、嫌なら吐き出しちゃえよ」

ちせ「ふむ、貴重な梅干しとは苦手とあらば致し方ない……構わぬよ、アンジェどの」

アンジェ「大丈夫、もう飲み込んだわ」

ドロシー「しかしこの「ミス・パーフェクト」にも苦手があったとはなぁ…ふふーん♪」

アンジェ「嫌な笑い方をするわね…言っておくけれど、私に何か仕込んだりしても無駄よ」

ドロシー「おいおい、そんなことしないって……んふふ♪」

アンジェ「…もしそう言うことをしたら間違いなくやり返すから」

ドロシー「へいへい……それじゃあデザートの方に取りかかりますかね…♪」

…夏休み明け…

ドロシー「あーあ…夏休みもおわっちったなぁ……」

アンジェ「その方がいいわ、任務がないと身体がなまるし用心深さが足りなくなる……たとえば」ドロシーのそばでわざとグラスを落とす…

ドロシー「おっと…!」ぱしっ…!

アンジェ「私たちのような人間は、こういう時とっさの反応が出来るかどうかに命がかかっているわ」

ドロシー「……だからってあたしで試すなよ」

アンジェ「貴女を頼りにしているからこそよ」

ドロシー「そ、そっかぁ…アンジェに「信頼している」って言われると、なんかくすぐったいなぁ///」

アンジェ「心理戦の方もおとろえていないようね」

ドロシー「おい…それもトレーニングかよ」

アンジェ「冗談よ」

ドロシー「ははっ、こちらも同じく冗談さ……アンジェがあたしにまぁまぁ気を許してくれていることくらい分かってるって♪」

アンジェ「そうかしら」

ドロシー「あぁ、じゃなきゃナイフの届く距離にまで入ってくるわけがない…だろ?」

アンジェ「…かもね」

プリンセス「ねぇ二人ともご覧になって…イギリスが見えてきたわ♪」

ドロシー「おー、ほんとだ…こうやっていると緑豊かで綺麗なもんだな……」

プリンセス「…本当に綺麗ね♪」

アンジェ「ええ」

ドロシー「空の上から見るとなおのことな…ところでちせとベアトリスはどうしたんだ?」

プリンセス「ふふ、ちせさんは飛行船が怖いからお部屋に…ベアトは降りた後の荷物を整えているわ」

ドロシー「そっか…んじゃちょっくら「顔を出して来る」かな」

アンジェ「ええ、それがいいわ…ちせなら一人でも大丈夫だけど、ベアトリスは近接戦が未熟だから」

ドロシー「あぁ、一応形だけな……じゃあプリンセスを頼んだぜ?」

アンジェ「ええ」

プリンセス「……また二人きりになれたわね」

アンジェ「それが一番いいわ」

プリンセス「あら…ずいぶん素直な意見に聞こえるわ」

アンジェ「…か、勘違いしないで…私が言いたいのは「相互にカバーできる」という意味よ///」

プリンセス「ふふ、でも赤くなってる…♪」

アンジェ「まさか…本当に?」手鏡を取り出すアンジェ

プリンセス「ふふ……引っかかった♪」

アンジェ「…」

プリンセス「ふぅ…それにしてもアンジェ」

アンジェ「なに?」

プリンセス「この綺麗な国が二つに割れているなんて、誰が想像できるかしら…?」

アンジェ「……でも「二つに割れているから」こそ、私たちも出会えたのよ」

プリンセス「でもお互いに……ううん、何でもないの」

アンジェ「…分かっているわ。貴女こそ本当のプリンセスよ…それにたとえ何があっても、貴女は私のプリンセス……それだけは絶対に変わらない」

プリンセス「…シャーロット///」

アンジェ「さぁ、もう着くわよ。下船の準備をしましょう」

プリンセス「ええ、そうね…もっと遅い乗り物ならよかったのに……///」


絶倫ひめさま

>>71 実は「チーム白鳩」はプリンセスが夜な夜な「プリンシパル」するためのものであった……訳ではないですが、プリンセスはしとやかそうな外見に反してかなりのタチなので……



…case・プリンセス×ベアトリス「over the fence」(越境)…


…ロンドン市内・公立図書館…

アンジェ「すみません…「ブリタニアの歴史」第13巻はどこにありますか」

7「第13巻ですか?失礼ですが「ブリタニアの歴史」は12巻までしかありませんよ?……歴史書ならあちらの棚だったと思いますわ」

アンジェ「そうですか、どうもありがとう……」ずっしりと重い歴史書をどかすと、背中合わせに本のページをめくりながら書棚越しで小声のやり取りをする二人

7「それで…夏季休暇は楽しめた?」

アンジェ「おかげ様で……ところで「L」はどうしたの。連絡は彼からのはずだけど」

7「残念ながら「L」は来られなくなった」

アンジェ「そう…答えはもらえないでしょうけれど一応聞いておく。……理由は?」

7「一応答えておくわ…「L」は今度公開される劇場版「プリンセス・プリンシパル」の席を予約しに行っているの……もうかれこれ数時間は行ったきりよ」

アンジェ「……は?」

7「聞こえなかった?」

アンジェ「いえ、聞こえたわ……劇場版?」

7「ええ」

アンジェ「そう…で、今回の任務は?」

7「今回の任務はとある人物の越境を支援すること……まずはその人物に越境の意思があるかどうかを確かめる必要があるわ。詳細は追って連絡する」

アンジェ「…了解」


………

…寄宿舎・中庭…

ドロシー「…で、今度は越境の支援だって?」

アンジェ「ええ。まずは対象者に越境の意思…それに特別な条件があるかどうかを確かめる」

ドロシー「それが一番ヤバいやつだ。王国防諜部ならオーバー・ザ・フェンス(越境)を目論んでいそうな奴なんて軒並みマークしているだろうし、場合によっては連中が仕組んだ罠かもしれない……ちっ、参ったな…」

アンジェ「そうね…でもこちらも用心はしている」

ちせ「…ほう?」

アンジェ「連絡はデッド・レター・ボックス(置き手紙)方式で、メールドロップへのメッセージ投入もカットアウト(使い捨て可能なエージェント)が行う…」

ドロシー「おいおい、だとしたらどこであたしたちの出番が出てくるんだ?」

アンジェ「ドロシー、最後まで聞いて…」

ドロシー「へいへい」

アンジェ「…今回は私たちが越境を担う訳ではない」

ベアトリス「それってどういうことですか?」

アンジェ「私たちはあくまでも王国防諜部の影がないか確かめ、ないとなったら対象者の越境を支援する…」

プリンセス「それじゃあまた見張りなのね、アンジェ?」

アンジェ「そうとも言えるしそうでないともいえる…場合によっては当初のグループが陽動を行い、その隙に私たちが王国防諜部から対象者を「抽出」する必要が出てくるかもしれない」

ドロシー「いずれせよ、まずは観察あるのみ…か」

アンジェ「ええ」

………


劇場版くるんか

>>74 2019年から六章に分けて劇場公開…「チーム白鳩」のその後の活躍をぜひスクリーンで体感しよう!(←いわゆるダイマ)

…一期を上回る豪華声優陣(おもにベアトリスのヴォイスチェンジ)にも期待ですね(笑)


……と、そこまでは素晴らしいことなのですが近隣に映画館のない人間はどうすれば……ぜひとも「コントロール」にはカバーの「文化振興局」と言う部分で頑張ってもらいたいものです…

…ロンドン・リージェント公園…


アンジェ「…それじゃあ手はず通り、ドロシーは味方のエージェントと交代を……接触する際は交代するエージェントから紙袋いっぱいのリンゴを買うことになっているけれど、もし青リンゴだったら「危険」だから何食わぬ顔で立ち去るように」

ドロシー「了解…で、赤リンゴだったら予定通り公園のベンチでリンゴをかじっていればいいんだな?」

アンジェ「ええ、その通りよ……その間私とプリンセス、ベアトリスは各所から監視を行う。…ちなみにちせはあちらのトップと会談する予定があって来られない」

ドロシー「あいよ…ところで接触するのはいいんだけど、なんで私が「リンゴを食べながら」なんだよ……」

アンジェ「合言葉がそうだからよ……ベンチの隣に座った相手が「綺麗なリンゴですね…子供の頃はよく近所の森でもいでいたものです」といったら…」

ドロシー「私が「その森って…もしかしてシャーウッドの森ですか?」って答えるんだったな」

アンジェ「その通りよ」

ドロシー「……リンゴでお腹がパンパンになる前に来てくれることを祈るよ」

アンジェ「別に頑張って食べる必要はないわ」

ドロシー「分かってるっての」



………

エージェント「……リンゴはいりませんか、新鮮なリンゴですよ!」

ドロシー「すみません、リンゴを一袋下さい」

エージェント「はい、毎度あり♪」

ドロシー「……赤リンゴか…」ベンチに腰かけるとはしたなく見えないよう……また、接触までに食べ過ぎることのないよう、小さな口でリンゴをかじる…

アンジェ「…」

プリンセス「……」

ベアトリス「…今のところ王国防諜部は見当たりませんね」

プリンセス「とはいえまだ分からないわ…」

ドロシー「…しゃく……しゃくっ…」(ちくしょう、まだなのか?……もう三つ目だぞ、おい…)

初老の紳士「…隣、よろしいですかな?」

ドロシー「ええ、どうぞ?」

アンジェ「……対象者が来たわ」

プリンセス「今の所動きはないわね…」近くの空き部屋から監視を続けるプリンセスとベアトリス…

ドロシー「…むぐっ、しゃくっ……」

紳士「…綺麗なリンゴですね…子供の頃はよく近所の森でもいでいたものです」

ドロシー「……それってもしかして、シャーウッドの森ですか?」

…監視場所…

アンジェ「…接触したわね」

プリンセス「……ドロシーさんがリンゴを渡したわね」

ベアトリス「確認できましたね」



紳士「おや、あの森をご存知ですか?…何とも懐かしいですな」

ドロシー「ええ…きっと週末にでも行きたい(予定通り越境を希望する)でしょうね?」

紳士「むろんですとも……何しろ都会は嫌になってしまいましたから」

ドロシー「何しろいい空気を吸うにもいちいち出かけないといけませんものね?」

紳士「おっしゃる通りです…」

アンジェ「……ドロシーが引き上げてくるわね」

プリンセス「じゃあ撤収しましょうか、ベアト?」

ベアトリス「はい、姫様」

アンジェ「これで二人は手はず通り裏から抜ける……プリンセス、気を付けて…」プリンセスたちが撤収する様子を観察しながら小声で祈るアンジェ…

…寄宿舎…

ドロシー「…あ゛ー、つっかれたー……おまけに酸っぱいリンゴの食べ過ぎで胃がムカムカする…」

アンジェ「ご苦労様」

ドロシー「おー…そう言えば越境の日取りは決まったのか?」

アンジェ「私はまだ聞いていないわ」

ドロシー「コントロールのやつ、ぎりぎりまで明かさないでおくつもりだな…まぁいいや」

アンジェ「夕食はどうする?」

ドロシー「いや、リンゴでお腹がふくれてるし今はいいや……っぷ」

アンジェ「つわり?」

ドロシー「そんなわけあるか、リンゴのせいだって言ってるだろ…うー、ムカムカする」

アンジェ「ご愁傷様」

ドロシー「おー…ったく、あんな酸っぱいリンゴを仕入れやがって……後で危険手当を申請してやる」

アンジェ「じゃあ夕食はパスね?」

ドロシー「あぁ、この調子じゃあ食べられそうにないしな…」

ちせ「……なら私が粥でも作ろうかの?」

ドロシー「おっ、戻ってきたのか」

ちせ「うむ…詳細は明かせぬが今後の方針について話し合ってきたのじゃ」

アンジェ「ご苦労様、すぐに夕食の時間よ」

ちせ「うむぅ…ところが向こうで遅い昼餉(ひるげ)をごちそうになって来てしまっての……今は満腹じゃぁ」

アンジェ「分かった……それじゃあまた後で」

ドロシー「あいよ……うっぷ」

ちせ「どうしたのじゃ…つわりか?」

ドロシー「だからつわりのはずないだろうが…だいたい誰との子だよ」

ちせ「……まぁ、それはそうじゃが…もしうちの子供だったらと思うと……///」

ドロシー「はぁ!?」

ちせ「べ、別に想像を巡らせるくらいよいではないか…!」

ドロシー「いや、だって女同士で…でも待てよ?…ちせとあたしの子供か……」

………



ちせ(和風美人)「うむ、うちらの子供は相変わらず可愛いの…ぉ♪」

ドロシー(貴婦人)「おー、本当だよな……それにしても眉毛はちせそっくりだ♪」

ドロちせの子供「えへへぇ…ドロシーおかあしゃま♪」たゆんっ…♪

ちせ「そしてこの年でこの身体…ここはドロシーの血じゃな……むぅぅ」

ドロシー「そうすねるなよ…後でなぐさめてやるって♪」

………

ちせ「……な、なんじゃ…いきなりニヤニヤして」

ドロシー「いや…ちせとあたしの子供……結構いいかもな♪」

ちせ「!?」

…深夜・部室…

ドロシー「うー…腹減ったぁ……」ごそごそと棚やティーセットの周りをかき回すドロシー…

ドロシー「…ったく、あのリンゴのせいで胃はむかつくわ夕食は食べ損ねるわでエライ目にあった……その上いまになって腹ペコになって…」

ちせ「…誰じゃ!」

ドロシー「うわ…っ!?」

ちせ「……なんじゃ、ドロシーか?」

ドロシー「ちせ?」

ちせ「うむ、私じゃが……こんな夜更けにいったいどうしたと言うのじゃ?」

ドロシー「いや、それはあたしの台詞だって…ちせこそいつもは早寝早起きのはずだろ?こんな時間に何してるんだ?」

ちせ「そりゃあもちろん…あー、アレじゃ……」

ドロシー「いや、「アレ」って何だよ…見回りか?」

ちせ「あー……うむ!…そうじゃ、見回りじゃ。いや、とっさに英語が出てこなくての」…きゅうぅぅ

ドロシー「そうだよなぁ、ちせたんは見回りだよなぁ……ふふっ♪」

ちせ「な、何がおかしいのじゃ……むしろドロシーこそ何をしに参ったのじゃ///」

ドロシー「えっ、あたしか?……それは……何だ、まぁ言うなれば……アレだ…アレ」

ちせ「何じゃ?」

ドロシー「えーと、だな…」ぐぅぅ…

ちせ「……どうやら「見回り」の目的は同じのようじゃな」

ドロシー「ああ……なら一緒に行くか♪」

ちせ「ふむ…どこへ行くのじゃ?」

ドロシー「ここの厨房さ……いくら片づけたとしても、ちょっとした残り物くらい転がってるだろ」

ちせ「しかし、ここの寮監に見つかったらタダでは済まんぞ?」

ドロシー「おいおい……あたしたちの「本業」は何だっけ…?」

ちせ「それは…間諜じゃな」(※間諜…「かんちょう」いわゆるスパイ・工作員の事)

ドロシー「なら寮監ごときに見つかるわけがない…だろ?」にやりと不敵な笑みを浮かべると、スパイ活動用のマントを取り出した…

ちせ「ふむ……間諜としての技巧を私利私欲のために使うのははなはだ不本意ではある…が、背に腹は変えられぬ……同道いたす!」

ドロシー「おーし、それじゃあ行きますか…♪」

…廊下…

ドロシー「…よし、行け」黒マントに黒いハンチング帽で、廊下の入れこみに身を沈めて合図をする…

ちせ「うむ……」音も立てずに廊下を小走りで移動するちせ……黒に紅椿が入った着物姿で、覆面をしている…

ドロシー「…ここを右だ」

ちせ「うむ……待て、寮監じゃ」

ドロシー「ちっ、こんな時に限って仕事熱心なこった……ちせ」

ちせ「うむ…!」ひらりと開けた窓から身を躍らせる二人…

寮監「……ん?…まったく、どうして開けっ放しなのだ……ぶつぶつ…」カチン…

ドロシー「……よし、ランタンは見えなくなった」

ちせ「それはいいがの…どうやら窓の鍵を閉められたようじゃが?」

ドロシー「そこは腕の見せ所ってやつさ…♪」窓の外側にある壁の装飾に脚をかけたまま、鍵穴に細いピックを突っこんで軽く動かした…

ちせ「…どうじゃ」

ドロシー「はは、こんな鍵なんかピース・オブ・ケーク(一片のケーキ…朝飯前)だっての……ほらきた♪」カチリ…

ちせ「さすがじゃな」

ドロシー「おうよ……さ、行こう♪」

…厨房…

ドロシー「おーし、鍵が開いたぞ…♪」

ちせ「うむ……かたじけない」

ドロシー「なぁに、お安い御用さ……さてと」

ちせ「何か食べ物じゃな」

ドロシー「あぁ…不思議と任務中は空腹なんか感じないのに、どうしてかいつもはすぐ腹ペコになるんだよな…」

ちせ「それはやはり任務中は集中しているからじゃろうな……おや、パンがあったぞ」

ドロシー「こりゃまたずいぶんカチカチだが……ま、ないよりはいいや」

ちせ「ふむ…とはいえパンだけではさすがに寂しいの」

ドロシー「へっへっへ……「そうおっしゃると思いました」ってやつだな♪」

ちせ「なんじゃ?」

ドロシー「チーズの切れっぱしがあった…そこそこ大きさのあるチェダーチーズだから、二人でも十分だろ?」

ちせ「おぉ…♪」

ドロシー「さらにそこへ持ってきて…ハムの残りがこんなところから…♪」

ちせ「おぉぉ…♪」

ドロシー「洋ナシも一個あった」

ちせ「おぉぉぉ…♪」

ドロシー「さて…そうなると今度はプロダクト(産物…スパイ活動での成果)を無事に運ばないとな」

ちせ「うむ、ここにぐずぐずしているのは愚の骨頂じゃからな」

ドロシー「そういうこと…♪」

ちせ「では、参ろうではないか」

ドロシー「おーし、任せておけ……」

…廊下…

ちせ「それにしてもどこでこれを食すことにいたそうかの?」

ドロシー「それはまぁ…部室だろうな」

ちせ「やはりそうかの?」

ドロシー「あぁ…あそこなら寮監だって来ないしな」

ちせ「うむ、こんな時間にあそこにいるとは夢にも思うまい」

ドロシー「それにナイフや皿もあるしな」

ちせ「確かに…しっ、また寮監じゃ」

ドロシー「今日はイヤに律儀だな……もう一度出よう」

ちせ「…うむ」

寮監「……よし、何も異常はない…と」

ドロシー「ふー…今度は外から鍵もかけてやったし、怪しまれもしなかったな」

ちせ「うむ。しかしこの調子ではいつ出くわしてもおかしくないの…」

ドロシー「仕方ない…ロープがあるからこれで部室まで登ろう」小さくたためて、目立たないよう黒染めにしてある絹のロープを取り出すと、輪っかを作ってそれを投げ上げ、上階の壁飾りにひっかけた…

ちせ「うむ、それが一番よい方策じゃろうな……よいしょ」

ドロシー「まったく…これじゃいつものスパイ活動よりきついな……」

ちせ「そう言うでない…美味しい夜食のためではないか」

ドロシー「あぁ、そうだな……♪」

…部室…

ドロシー「はぁ…壁をよじ登るなんて久しぶりだったな……やれやれ」

ちせ「うむ……さすがにいい鍛錬になったのぉ…」

ドロシー「ま、「空腹は最高のスパイス」だって言うしな…ちょうどいいや」

ちせ「それでは食べることにいたそうではないか」

ドロシー「おう、それじゃあ準備してやるから待ってな?」食器棚からテーブルナイフを持ち出すとパンをスライスし、堅いチェダーチーズにハムを切って乗せる……

ドロシー「…お待たせ♪」月明かりだけが室内を照らす暗がりでニヤリと笑みを浮かべ、皿に乗せたパンと二つに切った洋ナシの片方を差しだした…

ちせ「うむ…それでは、いただきます……」

ドロシー「あいよ…んぐ、はぐっ……むしゃ…」

ちせ「んむ…んむ……」

ドロシー「なぁちせ、何かこうやってこっそり食べているとさ…いつもより美味しく感じないか?」

ちせ「その気持ち、分からんではないな……すっかり固くなってしまったパンの切れ端がこんなにも五臓六腑に沁みるとは思わなかった……」

ドロシー「な?……あぁ、うまかった♪」パンのかけらが付いた指先を舐め、洋ナシを口に放り込んだ…芯のギリギリまですっかり食べると、周囲を見渡して残った芯を食器棚に放り込んだ……

ちせ「ドロシー…芯を食器棚に放り込んでどうするのじゃ?」

ドロシー「私が明日早起きして回収する…それからバラ園にでも埋めて来るさ♪」

ちせ「うむ…かたじけない」

ドロシー「気にするなって……それよりちせはこんな時間まで起きていたら体にこたえるだろ、後は任せて寝に行けよ♪」

ちせ「うむ…しからばご免」

ドロシー「あいよ……ふわぁぁ…私も食べたら急に眠くなってきたし……とっとと寝るとしますか」


………

…翌日…

アンジェ「……それでこうなっていたわけ?」

ドロシー「あー…悪ぃ……」

アンジェ「…わざわざプリンセスのお皿に洋ナシの芯を載せておくなんて……気が利いているわね」

ちせ「済まぬ…ドロシーも私も決して意図して行ったわけではないのじゃ……!」

アンジェ「分かっているわ…それにしても深夜に二人で厨房から食べ物をくすねて来て、ここでネズミみたいに飲み食いしたと言うのはいただけないわ」

ドロシー「…悪いのは分かってるけどさ、その時は腹ペコで寝られそうになかったんだよ……な?」

アンジェ「見張りや監視任務で空腹に耐える訓練もあったはずよ、ドロシー?」

ドロシー「それはそうなんだけどさ……でもわかるだろ?」

アンジェ「いいえ」

ドロシー「…黒蜥蜴星人は腹も減らないってか?」

アンジェ「そう言うことじゃないわ……仮にも学生のふりをしている私たちがこの学園で少しでも常人離れした動きやおかしな真似をしたら、それだけで「チーム白鳩」のカバーそのものが危うくなる…ドロシー、貴女はたかが一時の空腹のために全員を危険にさらしたのよ」

ドロシー「そう言われると身もふたもないな……確かに学生気分で甘えてたよ…」

ちせ「全くじゃ…これは仕置きを受けても致し方ない真似をいたした……」

アンジェ「分かればいいわ……それに」

ドロシー「…それに?」

アンジェ「優秀なスパイはとっさの空腹時に何か食べられるよう、常に保存の効く食べ物を身近に備えておくものよ…それも美味しいものを」食器棚の皿を取り出して奥の羽目板をいじるとカシェット(隠し棚)が開いて、中からショウガ入りクッキーの袋が出てきた…

ドロシー「…は!?」

アンジェ「これに懲りたら、今後は馬鹿な真似をしないことね」二人にジンジャークッキーを一つずつ渡し、また袋をしまった…

………

…しばらくして…

アンジェ「……以前の接触で対象者の越境希望は本物であることが分かったわ。…と言うことは同時に、王国側の防諜機関が血眼になって私たちを追いかけてくる……と言うことでもあるわ」

ドロシー「…今度は残り物のパンをくすねるようにはいかないだろうな」

アンジェ「そう言うことよ……しかしこちらとしても黙ってその締め付けを甘受するつもりはない」

プリンセス「…何か策があるのね?」

アンジェ「ええ」

ベアトリス「アンジェさん…その策って言うのは何なんです?」

アンジェ「まず、スパイ活動にとって重要なのは相手に警戒を抱かせないこと…とはいえすでに相手は警戒状態に入っている…なら」

ドロシー「…「相手に警戒を解かせるか、丸っきり見当違いの方向を警戒させればいい」だな?」

アンジェ「その通りよ。王国防諜部は誰かが越境を試みようとしていることは知っている…とはいえ、それが誰なのかはまだ知らない……そこでベアトリス、あなたの出番よ」

ベアトリス「わ、私ですか?」

アンジェ「ええ。以前あなたが舞踏会で出会ったことのある人物で王国防諜部が目を付けている人物……そうした人間をコントロールに探してもらって手紙を送りつけ、上手くロンドン市内に誘い出した…」

ベアトリス「…それで?」

アンジェ「王国防諜部は「監視リストの人物に動きがあった」と、越境阻止に動くはず…そこをあなたが声色を使って防諜部のエージェントを引きずり回す」

プリンセス「…でも、ベアト一人で何かあったら……?」

アンジェ「心配はいらないわ……プリンセス、この時あなたにはロンドンでショッピングをしてもらう」

プリンセス「……ショッピング?」

アンジェ「例によって例のごとく、お役所なんていうものはお互いに縄張り意識を持っている…」



L「へっぐし…!」

7「…どうなされました、「L」?」

L「ふむ、きっと誰かに噂でもされたのだろう……」

………

アンジェ「…特にプリンセスの警護に当たるエージェントと防諜部のエージェントはどちらも玄人で、その分ライバル意識も強い……どちらかが何かをしようとしたら、「妨害」とまでは言わなくても、積極的に手助けしたりはしない……つまりベアトリスがロンドンの各所で防諜部エージェントを声色で連れ回し、そのたびにプリンセスの車とドロシーの車を乗り換えて素早く移動し、防諜部をきりきり舞いさせる」

ドロシー「…でもあたしがそっちに回ったら「抽出」する越境希望者はどうするんだ?」

アンジェ「そこは私が考えてあるし、私とちせはバックアップに回り全体を俯瞰している…何かトラブルが起きたら駆けつけるわ」

ドロシー「それは頼もしいな…期待してるぜ?」

アンジェ「ええ」

………

…越境決行日・王宮…

プリンセス「……わたくし、今日はお買いものに行きたいの♪」

女性エージェント「は…では私たちが警護いたします」日傘とシンプルなドレススタイルをまとった二十代後半のオールドミス…に見える護衛のエージェントがプリンセスの左右に付く……

プリンセス「いつもありがとう♪」

エージェント「いえ、それが務めですので…車を手配させます」

プリンセス「ええ、よろしくね」


…ロンドン市街・公園…

貴族「さて…手紙で言われた通り来てみたものの……誰もいないじゃないか」

ベアトリス(CV…石塚運昇)「……貴様が陛下の治世に異議を唱えている不満分子だな?」

貴族「な…私はそのようなこと……!?」

ベアトリス「…私を知っているかね?」

貴族「あ、あぁ…アルビオンの公安部……」

ベアトリス「ならば話が早い。貴様が王国に尽くす貴族であることを行動で示せ……まずは十五分以内にチャリング・クロス駅へ行け」

貴族「…行けば私を助けてくれるのか?」

ベアトリス「質問するのは貴様ではない…早くしろ」

貴族「わ、分かった…!」



王国エージェント(新聞売り)「……対象に動きあり」

エージェント(靴磨き)「…確認した、合図を」新聞売りは朝刊を振り、合言葉として記事にないニュースを叫ぶ…

エージェント(店の御用聞き)「追跡開始……了解」御用聞きはサボリをやめ、さも忙しそうに駆け出す…



…公園を見渡す屋根の上…

アンジェ「案の定ね……ちせ、あなたは先回りして」

ちせ「うむ」…さっと屋根裏部屋の窓から屋内に滑り込み、裏口から出て行くと何ということもなく歩き出す……

アンジェ「それじゃあ私も…」するりと屋根裏部屋から玄関へと回り、女学生らしく歴史書を不器用に抱えて出て行った…

………

…チャリング・クロス駅…

貴族「そ、それで私はどうすればいいのだ…」

ベアトリス「……新聞を買え。王国寄りの「ロンドン・デイリー・ニュース」を買って「株式市場」のページを表にしろ」

貴族「わ、分かった…」

エージェント(新聞売り)「対象は駅に入ったな…どうやって越境する気だ……」

エージェント(御用聞き)「とにかくこの格好では駅には入れん…増援を要請しよう」合図に台帳をパラパラとめくる…

エージェント(紳士風)「……奴は駅だな?」

エージェント(新聞売り)「はい、そうです」

新聞売り「おい!ここは俺たちの場所だぞ、勝手に入るなよ!」

エージェント「すんません…何しろ今日はじめたもんで!」

新聞売り「ったく、ふざけんなよ!」

エージェント(紳士)「まぁまぁ、落ち着きたまえよ。彼もおわびしていることだし、私も喧嘩など見たくない…君からも買ってあげよう」

新聞売り「どうもありがとござんす、貴族の旦那…♪」

エージェント(紳士)「なに、構わんとも……急ぎ事務所に行って増援を呼べ、対象「C」に動きあり……とな」

エージェント「…了解」

アンジェ「……それでいいわ」

プリンセス「あ、ここはチャリング・クロス駅……そう言えば近くに素敵な服地屋さんがあったわね、そこに行きたいわ♪」

エージェント「分かりました。プリンセスの言う通りに車を回して」

…駅構内…

貴族「…言う通りに新聞を買って、株式欄を開きました……」

ベアトリス「よろしい、ではそのページから「アルビオン・インペリアル貿易」の株価を調べて最初の数字と末尾の数字を並べろ」

貴族「…は、はい……数字は「15」です…」

ベアトリス「…ではホームを見て車体に「15」のつく客車を残らず探せ……そして見つけたらその最初の一等客車に乗り、15番目の駅で降りろ」

貴族「は、はい…」

ベアトリス「もし15駅なかったら折り返して15になるまで乗れ…いいな?」

貴族「わ、分かりました……15…15のつく客車…」



エージェント(紳士)「奴か…なるほど、新聞の株式欄片手にしきりに周囲を見回しているな……」

エージェント(旅行者)「…押さえますか?」

紳士「ばかを言うな。奴が共和国の連中とコンタクトした所で両方を一気に取り押さえるのだ……む、奴が目的の列車を見つけたようだぞ」

旅行者「それでは私が乗り込みます」

紳士「私もだ……いいか、君は二等に…私は一等車に乗る」

旅行者「了解…しかしここが手薄になります」

紳士「構わん、奴の動きから言ってあれが本命だ…」



…駅のそば・裏道…

ドロシー「遅いぞ、ベアトリス」

ベアトリス「ふー、遅くなりました…」

ドロシー「……まずはその声を戻せよ」

ベアトリス「あ、そうでした……はー、やっと元の声に戻れました」

ドロシー「よし、それじゃあ今度は別方面だな…」



…一方・高級百貨店…

プリンセス「まぁ、これお洒落ね♪」

支配人「わざわざお越しいただき光栄でございます」

プリンセス「いいえ…これなんてどうかしら?」

支配人「大変よろしいかと存じます」



…百貨店の裏通り…

エージェント(記者風)「…おい、タレコミのランデブー・ポイント(会合地点)だってのはこの辺りだろ?」

エージェント(貧乏人風)「……おかしいな、誰もいやがらないぜ…?」

プリンセスの警護官「…おい、そこの二人…止まれっ!」

エージェント(記者)「な、何ですか…私は「アルビオン・タイムズ」の記者ですよ!」

プリンセス警護官「それが仕事をさぼって貧乏人とひそひそ話か?…確保しろ!」

エージェント(貧乏人風)「くそ、こっちも同業者だぞ!」

警護官「ほざけ、おおかたプリンセスに危害を加えようという共和国の回し者だろう…どうだ?」

警護官B「は、やはり小型リボルバーを隠しておりました!」

警護官「そんなことだろうと思った…至急プリンセスを退避させるようにと連絡しろ!」

………

…百貨店・店内…

警護官「…プリンセス、お買いもの中に申し訳ありませんが」

プリンセス「はい、どうかなさいまして?」きょとんと頭をかしげるプリンセス…その間にも警護官のオールドミス数人がさりげなく脇についた……

警護官「はい、ちょっとした問題が……申し訳ありませんが移動をお願いいたします」

プリンセス「分かりました…支配人さん、どうもありがとう♪」

支配人「いえ、いつでもお越しくださいませ…」

警護官「では参りましょう」



…大通り…

アンジェ「…これでさらに二人減った」

ちせ「うむ…このどたばたでちっとは「お出かけ」が楽になればよいがの」

ベアトリス「そうですね……で、肝心の「あの人」はどうやって「お出かけ」するんですか?」

アンジェ「それはまだ言えない……こちらとしてはお膳立ては整えた。あとは実行班が上手くやるのを待つだけよ」

ちせ「うむ」



…王室専用車…

プリンセス「……それで、一体何があったのです?」

警護官「わざわざプリンセスのお耳を汚すことではありませんが…我々の一員が、プリンセスがお買いものをなさっていた百貨店のそばで「怪しい人物を確保した」と」

プリンセス「そうですか……怖いことですね。ではその警護官の方々にはわたくしから「心より感謝している」とお伝えになって?」

警護官「これが務めですから…ですがそのように伝えておきます」

プリンセス「ええ、お願いします。でもせっかくのお出かけがフイになってしまったわ」

警護官「申し訳ありませんがプリンセスの安全が最優先ですので」

プリンセス「分かっております…けれど時には自由にお出かけしたりしてみたいですね……」

警護官「お察しします」

プリンセス「すみません…わたくしの安全を守って下さっている方々にこのような愚痴を言うべきではありませんね」

警護官「いえ、我々も出来うる限りでプリンセスの希望に沿えるよう尽力いたしますので…」

プリンセス「ありがとう、ミス・レモン」

警護官「はっ…私の名前を憶えておいでなのですか?」

プリンセス「もちろんですとも…だって命をかけてわたくしを守って下さる「白馬の騎士」のようなお方なのですから♪」

警護官「……期待に応えるよう全力を尽くします///」


…国境検問所…

出入国管理官「停まれ!…身分証を!」

…アルビオン王国・共和国間を隔てる「ロンドンの壁」に数か所だけある国境検問所…その中の「チェックポイント・チャーリー」(検問所C)には、やむを得ない事情で国境を通る人たちや、「職業上」しばしば越境する人が並んで検査を待っていた……次々と車や馬車が停められてイミグレーション(出入国管理局)のチェックを受ける…

運転手「は、はい…」

管理官「壁のあちら側へいく理由は?」

運転手「…わ、私は「アルビオン・タイムズ」の配送係でして……大使館や貿易会社など、購読者の所に届ける新聞を載せています」

管理官「よろしい…では積み荷を見させてもらうぞ」数人の管理官に合図を送るとランダムに新聞の束をめくり、床板が上げ底でないか確かめる……

運転手「…」

管理官「……結構、行ってよし!」

運転手「ふぅぅ…」

管理官「…次!」

運転手「…お、お願いしやす」手には身分証が差しだされ、冷たい目をした出入国管理官を前に一般人らしいおびえ方をしている…

管理官「ふむ……葬儀屋の運転手だと?」

運転手「へ、へい…」

管理官「…どうして葬儀屋の霊柩車が越境する必要があるのだ」

運転手「ど、どうもあっしには運転手なんで細かいことは分からねぇんですが…何でも壁のあっち側からきていた実業家だかが交通事故にあって、それで向こうに持って行く必要があるらしいんで…」

管理官「ふむ…棺を開けさせてもらうから少し待っていろ」

運転手「へ、へい…」

管理官「……おい、防諜部から「越境の可能性あり」と連絡があったが…きっとこれだ」

管理官B「ああ…しかし「壁の向こう」の連中だからな、バレたとなったら強行突破しかねないぞ…ゲートはまだ開けないでおいてくれ」

管理官「…分かってる」

管理官B「よし、開けるぞ……ややっ?」…立派な棺の蓋を開けると、そこには監視対象者とは全く違う立派な身なりの人物が安らかに眠っていた……

管理官「…どうした」

管理官B「この男じゃない…まるっきり別人だ!」

管理官「それじゃあ防諜部の情報はハズレか……結構。通ってよし!」

管理官C「やれやれ、緊張していたのがバカみたいでしたね…紅茶でも淹れてきます」

管理官「うんと甘くな……はい、次!」

運転手「よろしくお願いします…」

管理官「身分証を!」

運転手「は、はい…!」

管理官「積荷は?」

運転手「…ジャガイモです」

管理官「ジャガイモ?」背伸びをしてみると、確かにトラックの荷台一杯にジャガイモが積まれている…

運転手「ええ…コヴェントガーデン(ロンドンにある青果市場)にある卸業者から向こうに持って行くところなんです」

管理官「ふむ。どうしてジャガイモを向こうに持って行く必要があるんだ…ジャガイモならこっちでだって売れるだろう」

運転手「あ、はい…うちの卸は向こうにも事務所を持ってまして、値段がいい方に持って行って売るんで……」

管理官「なるほど…一応調べさせてもらうぞ」

運転手「…別に腐ってたり青くなったりしてない、いいジャガイモですよ?」

管理官「そんなことを調べる訳じゃない…っ!」

管理官B「ははっ……青果卸ともなると何でも野菜と関係があることだと思うんだな」

管理官「全く、からかわれた気分だ…いまいましいからしょっ引くか?」

管理官B「ばか言え、ひっくくったところでポケットからニンジンでも出てくるのがオチだぞ?」

管理官C「あの、紅茶が出来ましたよ…?」

管理官「あー分かった分かった……もういいな?」数個のジャガイモを取り上げてたが、ごく普通のジャガイモに見える……

管理官B「ああ、もういいだろう…よーし、通れ!」

管理官「それじゃあお茶にしよう……おい、ここを代わってくれ」

管理官D「了解」


………

…数十分後・アルビオン共和国大使館内…

7「……L、共和国の農務担当官から連絡が入りました」

L「ほう…どうだったのかね?」

7「はい、「本日のジャガイモ市場…イモは大ぶりで痛みもキズもなく、ポンドあたり6ペンスの値段が付いた」とのことです」

L「よし、結構だ……時間を空けて各班に作戦終了を伝達してくれ」

7「了解…♪」

L「うむ、頼むぞ」パイプをふかしつつまた書類仕事に戻る…

7「はい」残りのメンバーも黙々と作業にいそしむなか、7も通信文の原稿を起こした…

………



…その夜・部室…

アンジェ「…というわけで、コントロールから私たちにメッセージが届いているわ」

ドロシー「あぁ、何しろロンドン中を走り回ったからな…ちっとは「慰めと報酬」ぐらいあったっていいさ」

アンジェ「まぁ中にはそう言う意見もあるでしょうね」

ドロシー「……冷血人間」

アンジェ「何か言った?」

ドロシー「うんにゃ、何も…♪」

ベアトリス「…くすくすっ♪」

アンジェ「ベアトリス、何がおかしいの?」

ベアトリス「な、何でもありませんっ」

アンジェ「よろしい…ちなみにプリンセスはそろそろ戻ってくるから、それまでにお茶の支度でもしておきましょう」

ちせ「それがよかろう……疲れて戻って来るじゃろうし」

ドロシー「まったくだ」


スパイシーンの力の入りようがすごい

>>89 もとよりスパイ小説は好きでしたので、あちこちから正しい用語などを探して頑張っています…えっちする場面と落差が大きいですが、メリハリをつける意味ではそれもいいかと……本当ならもっと地味に活動するのが正解なのでしょうが、あくまでもスチームパンクのスパイ活劇と言うことで……


…ちなみに越境の場面では、当初もっと冗談めかして「リボンの騎士」に出てくる「大食い大会向けの巨大パンに人を隠す」シーンを物真似しようかと考えていました…「ジャムパンだから突き刺したら剣がさびるよ?」と言うくだりがある場面です……


…お待たせしましたがそろそろプリンセスが「プリンシパル」します……

…しばらくして…

プリンセス「皆さん、ただいま戻りましたわ……安全が確認できないからってしばらく王宮で足止めされちゃったの♪」

アンジェ「お帰りなさい、プリンセス…大方そんなことだろうと思っていたわ」

プリンセス「ふふ…ただいま、アンジェ♪」

ドロシー「お帰り…ちなみコントロールから「ジャガイモは無事店先に並んだ」とさ♪」

プリンセス「ただいま、ドロシーさん……それは朗報ね♪」

ちせ「うむ。まずはよう戻られた……息災で何よりじゃ」

プリンセス「ありがとう、ちせさん」

ベアトリス「…もう、みんなしてあいさつ責めにして……姫様が座れないじゃありませんか」

ドロシー「何だ…もしかして最初に挨拶したかったのか?」

ベアトリス「な、何を言ってるんですかドロシーさんは…///」

ドロシー「おーおー、真っ赤になっちゃってまぁ……うぶだねぇ♪」

ベアトリス「か、からかわないで下さいっ…!」

アンジェ「養成所なら不合格ね」

ちせ「ふむ…ベアトリスはまだまだ不動心が足らぬようじゃな」

ベアトリス「うぅ…///」

プリンセス「まぁまぁ、私はベアトの気遣いが嬉しいわ…ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「…ひ、姫様///」

アンジェ「…」

プリンセス「…私はアンジェのさりげない気遣いも好きよ?」

アンジェ「……そう」

ドロシー「おいおい……そっけない反応のふりをしてるけど顔がニヤけてるぞ、黒蜥蜴星人」

アンジェ「冗談言わないで…」

ドロシー「…と言いつつちらっと鏡を見るあたり、なにか心当たりがあるんだな?」

アンジェ「ないわ……でももしかしたら自覚していない反射があるのかもしれない。そう思っただけ」

ドロシー「へいへい…ところでプリンセスに紅茶を淹れてやれよ、ベアトリス」

ベアトリス「ええ、そうでした……姫様、紅茶をどうぞ」

プリンセス「ありがとう、ベアト…とっても美味しいわ♪」

ベアトリス「お菓子もありますよ?」

プリンセス「美味しそうなスコーンね…いただくわ」

ベアトリス「お茶がお済みになりましたら、私が着替えをお手伝いいたしますね」

プリンセス「ええ、ありがとう♪」

ドロシー「それじゃあ私たちも引き揚げますか」

ちせ「そうじゃな」

アンジェ「ええ…それではプリンセス、お先に失礼させていただくわ」

プリンセス「そうね、みんなもゆっくりなさってね?」

ドロシー「これはどうも…それじゃあまた♪」

ちせ「うむ…しからばご免」

ベアトリス「…みんな出て行っちゃいましたね?」

プリンセス「ええ、これで二人きりね……ベ・ア・ト♪」にっこり微笑んで立ち上がると、ドアに近寄り鍵をかけた…

ベアトリス「あ……あの、姫様?」

プリンセス「ふふふ…♪」じりっ…

ベアトリス「ひ、姫様……何だかとっても悪い笑顔をなさっておられますが…」

プリンセス「あらベアト、そんなことないわ…ほぉら、いつもみたいにわたくしの所においでなさい?」

ベアトリス「いや、どう見ても怪しいですよ…」

プリンセス「大丈夫大丈夫…ね、ちょっとなでなでするだけだから…♪」

ベアトリス「うわぁ、それ絶対に怪しいじゃないですかぁ…!?」

プリンセス「ふぅ、冗談はさておき…ベアトが手伝ってくれないなら仕方がないわ、よいしょ……」シルクの長手袋や首にかけた真珠のネックレスを外してテーブルの上に置いていく…

ベアトリス「あっ…私がやりますよ、姫様」

プリンセス「そう?」

ベアトリス「はい、特に真珠はお手入れをしないとくすんでしまいますから……ドレスも型崩れしないようにきちんとしまわないと…」

プリンセス「助かるわ、ベアト……もう、ぎゅうぎゅう締め付けるようなコルセットやペチコートにはうんざりしちゃう」

ベアトリス「分かります…でも姫様はドレスがよく似合いますよ?」

プリンセス「あら、嬉しい。ベアトがそう言ってくれるから私もがんばってドレスを着ているのよ?」

ベアトリス「ひ、姫様はまたそう言う事を言って…///」

プリンセス「ふふふ……ありがとう、これでやっと楽になれたわ♪」

ベアトリス「いつでも喜んでお手伝いいたしますよ、姫様」

プリンセス「ベアトは優しいわね……」

ベアトリス「そんな…ほかならぬ姫様のためですから///」

プリンセス「…ベアト」

ベアトリス「……姫様///」

プリンセス「…と、ベアトが油断した所で♪」

ベアトリス「きゃあっ!?」

プリンセス「はぁぁ…もうベアトったら簡単に引っかかってしまって……でもそこが可愛いわ♪」頬ずりするプリンセス…

ベアトリス「は、離して下さいっ…///」

プリンセス「嫌よ♪」

ベアトリス「即答ですか!?」

プリンセス「だってこんなに可愛いベアトが目の前にいて……はぁ、はぁ…我慢できる訳ないでしょう♪」

ベアトリス「ひ、姫様っ…スカートをめくるのは止めて下さい…っ///」

プリンセス「だって、ベアトがすべすべの脚をしているのがいけないのよ?…さ、一緒にベッドに入りましょう♪」

ベアトリス「ち、ちょっと待ってくださいよ…話が早すぎませんか!?」

プリンセス「まぁまぁ…ベアトったら大きい声を上げてはしたないわよ?」

ベアトリス「そ、それも私のせいですかっ…!?」

プリンセス「ええ、だってわたくしはプリンセスですもの……♪」

ベアトリス「姫様、それは横暴ですっ!」

プリンセス「わたくしは可愛いベアトを手に入れるためならアルビオンを売ってもいいし、暴君にだってなれるわ♪」

ベアトリス「うわぁぁん、そんなこと自慢げに言わないでくださいよぉ…!」

プリンセス「まぁ…まぁまぁまぁ♪…涙目のベアト、とっても可愛い…もっと泣かせてしまいたくなるわ♪」

ベアトリス「ひぃぃ…っ!?」

プリンセス「大丈夫よベアト、何もしないから♪」

ベアトリス「その顔でおっしゃられても全然信用できませんよぉ…」


プリンセス「はぁぁ…ベアトったら可愛い……ちゅっ♪」

ベアトリス「わわっ……んちゅ///」

プリンセス「ん…ベアトのお口の中、甘いミルクティーの味がするわ……他にはクローテッドクリームのついたスコーンね?」

ベアトリス「わわっ、せめてキスする前に口の中をゆすがせて下されば///……うぅ、せっかくのキスが食べ物の味では台無しですよ…」

プリンセス「そうかしら…むしろ私は空腹だったから……刺激されちゃったわ♪」んちゅぅぅ…れろっ、ちゅぷ…♪

ベアトリス「んっ…んふぅ……んむっ……んんぅ///」プリンセスは舌で丹念に歯茎をなぞり、それから器用にベアトリスの舌と絡めた……

プリンセス「ぷは……んちゅっ、ちゅるっ……ちゅぅぅぅ……っ♪」

ベアトリス「んくっ、んんっ…んふぅぅっ……!?」

プリンセス「ぷはぁぁ…はぁぁ、ベアトの舌は温かくてしっとりしていて……出来たてのスフレみたいね♪」

ベアトリス「うぅぅ…プリンセスの舌がねちっこく絡んできて……頭がぼーっとなっちゃいます……///」

プリンセス「ふふふ…♪」…立ったままメイド服をはだけさせると、丹念にベアトリスの姿態を眺めまわした…

ベアトリス「そんなに眺めても私のぺったんこな身体じゃあ面白くないと思いますよ…///」

プリンセス「あら、その「ぺったんこ」な所がまたそそられるのよ…♪」

ベアトリス「へ、変態ですかっ…!?」

プリンセス「もう、プリンセスに対して「変態」だなんて……これはお仕置きが必要ね♪」…無邪気な笑顔でベアトリスの顔を胸元に押し付けるプリンセス……

ベアトリス「きゃあっ…んぐっ!?」

プリンセス「はぁぁ…ベアトの吐息が暖かいわ……身体もふにふにでとても触り心地がいいわ♪」ベアトリスのつつましいお尻に手を這わせ、背中を優しいタッチで撫で上げる……

ベアトリス「も、もうっ…姫様ったら……ぁ///」

プリンセス「そう言いつつも顔がすっかりトロけているわよ?」

ベアトリス「だ、だってぇ…///」

プリンセス「でもわたくしはワガママだから、もっとベアトのとろけた表情が見てみたいわ……♪」なだらかなベアトリスの乳房を撫でまわし、ゆっくり優しくこね回す…

ベアトリス「んぁぁ…ふわぁぁ……あふっ…///」

プリンセス「ふふ、ベアトの胸は手のひらに収まる大きさでちょうどいいわ…♪」むにゅ…むにっ……

ベアトリス「はぁぁ…んあぁぁっ……///」顔を赤らめ困ったように眉をひそめ、しきりにふとももをもじもじさせている…

プリンセス「あらあら…ベアトったらわたくしをほっぽらかして自分だけそんな気持ちよさそうに……もう、いけないメイドさんだこと♪」

ベアトリス「ふぁぁ…らって……ひめさまが…あふぅぅ……///」にちゅっ、くちゅっ…♪

プリンセス「ふふふ…それじゃあわたくしの事も気持ち良くしてほしいわ…ね、ベアト?」

ベアトリス「…ふぁい、ひめしゃま……///」ぺたんとお尻をついてプリンセスの足もとにへたり込むと、とろっと焦点の合わない目をしてふとももを舐めはじめる…

プリンセス「うんうんっ…ふふ、気持ちいいわ……んくっ♪」

ベアトリス「んちゅ…れろっ、ぴちゅっ…ぴちゃ……///」

プリンセス「んぅぅ、んふっ……あふぅ…あっ、んぅっ♪」

ベアトリス「んちゅ、ぺろっ…れろっ……んちゅぅ…///」

プリンセス「はぁぁ…んんぅ……ベアト、上手よ…んふっ///」

ベアトリス「……きもひいいれすか、ひめひゃま…?」

プリンセス「ええ……私も濡れてきちゃったわ♪」

ベアトリス「それふぇしふぁら…わらひがご奉仕いふぁひまふ……///」(それでしたら、私がご奉仕いたします)

プリンセス「んんっ、あっ……そこ気持ちいい…っ♪」とろりと濡れた秘所を熱心に舐めあげるベアトリスに、甘い吐息を漏らすプリンセス…

ベアトリス「きもふぃいいれふか…ひめひゃま?」

プリンセス「ええ……でもやっぱりこれだけでは我慢できないわ♪」とんっ…とベアトリスを絨毯の上に押し倒しぐっしょりと濡れた下着をずり下ろすと、口の端からよだれをたらしてとろけきっているベアトリスの上にまたがった…

ベアトリス「あ…ひめさま……んひぃぃぃっ///」ぐちゅ、にちゅっ、じゅくっ…♪

プリンセス「んぅぅっ、ベアトったらすっかりびちょびちょね…ふふ♪」ベアトリスの下半身をふとももできゅっと挟み込み、腰をねちっこく動かす…

ベアトリス「んはぁぁ、ふあぁぁぁっ♪」びくっ、びくんっ…!

プリンセス「んふぅ…はぁ、はぁ、はぁっ……日頃乗馬の訓練をさせられていてよかったわ…♪」

ベアトリス「んぁぁぁっ!姫様っ、ふとももの締め付けがきついです…っ///」

プリンセス「うふふ、ベアトは可愛いお馬さんね…乗りこなしやすいからトロット(速足)でも大丈夫そう♪」ぐちゅぐちゅっ…にちゅっ

ベアトリス「はひぃ、はぁあぁぁっ…!」

………

…廊下…

アンジェ「さてと…この後は食事の時間まで何もないわ」

ドロシー「あぁ…おい、ちょっと待てよ……アンジェ、眼鏡はどうした?」

アンジェ「え?」

ドロシー「眼鏡だよ、眼鏡……まさか部室に忘れてきたのか?」

アンジェ「…女学生ごっこですっかり気持ちがたるんでいるわね……教えてくれてありがとう」

ドロシー「なぁに、こういう時はお互いさまだろ……先に行ってるぞ?」

アンジェ「ええ」



…部室…

プリンセス「はぁ、はぁ、はぁ…ベアトのつるつるのあそこ……ふふふ♪」

ベアトリス「ひぐぅぅっ…んひぃぃっ!」

プリンセス「もう、ベアトったら絨毯まで汚しちゃって……そんなに気持ちいいの?」

ベアトリス「い゛ぃっ、んひいぃぃっ…はひっ、はひぃぃ……だって…姫様にこんな事をしてもらっていると思うと……あひぃぃっ!」びくびくっ…ぷしゃぁぁ…っ♪

プリンセス「まぁ、ベアトがのけ反った瞬間に私の身体が持ち上がったわ…♪」

ベアトリス「はぁ……はぁ…姫様…も、もう無理ですよぉ……」

プリンセス「そうなの……でも、せっかく二人きりになれたのだから…もうちょっとこうしていたいわ」

ベアトリス「そ、そんな風に言うなんてずるいです……///」ふとももをもじもじとこすり合わせて甘い声を上げる…

プリンセス「ふふふ…可愛いベアト……ちょっと待って?」

ベアトリス「ひ、姫様…ここでおあずけなんてひどいですよぉ……んくっ、んっ…姫様…ぁ♪」くちっ、くちゅっ…にちゅっ♪

プリンセス「しーっ…足音が聞こえるの……こっちに近づいてきているわ」

ベアトリス「んふぅ…はひぃ……んんっ…♪」

プリンセス「…ベアト、隠れましょう」

ベアトリス「そ、そんなこと言ったって……ひめしゃまぁ…///」くちゅくちゅっ、じゅぷっ…とろっ♪

プリンセス「もう、ベアトったら仕方のないメイドね……さ、早く…!」クローゼットを開けるとベアトリスを押し込み、ついでに自分も入って扉を閉めた…

ベアトリス「ひ、姫様の甘い匂いで…わらひ、もうイっちゃいますぅっ……んんっ///」とろっ…ぷしゃぁっ♪

プリンセス「もう、ベアトったら♪……気づかれちゃうといけないから静かにね…」かちかちっ…かちり

ベアトリス「…あっ///」びくびく…っ♪

プリンセス「ふふ、私たちすごい密着しているわね……それにベアトったらすっかりとろけた顔で、こっちもとろとろのびしょびしょ…♪」片手を濡れたベアトリスの下半身に這わせて、指を入れる……

ベアトリス「……♪」がくがく…っ、ぷしゃぁぁ…とろっ♪

プリンセス「それでやってきたのは…アンジェね。…どうやら眼鏡を忘れて取りに来たみたい♪」

ベアトリス「…///」びくっ、びくんっ…にちゅっ♪

アンジェ「……ふぅ、プリンセスもベアトリスもいないようね…わざと足音を立てたのが無駄で済んでよかった…わ」

プリンセス「…お気遣いありがとう、アンジェ♪」じゅくっ、ぐちゅっ♪…小声でお礼を言いながら、ベアトリスの秘部をかき回す……

ベアトリス「…!……///」がくがくっ、ぷしゃぁぁ…びくん…っ♪

アンジェ「…」

プリンセス「……ふふ、もしかしてアンジェに見つかってしまうのではないかと思うと…ぞくぞくしちゃうわね、ベアト?」

ベアトリス「…!……///」

プリンセス「……あらあら、一生懸命お口をパクパクさせて…もっとしたいのね?」

ベアトリス「……!!」顔を真っ赤にし、ぶんぶんと首を振る…

プリンセス「…ふむふむ…「姫様にもっとめちゃくちゃにしてほしいです♪」ですって?……ええ、任せてちょうだい♪」

ベアトリス「…!?………!!」

プリンセス「…それじゃあ……ふふっ♪」

アンジェ「…分かったうえでやっているわね、プリンセスは……って、これ…///」床に落ちているプリンセスのペチコートを拾い上げ、ちらっとクローゼットを横目で見てからポケットにねじ込んだ…それから眼鏡をかけると平然とした様子で出ていった……


プリンセス「ふぅ…ようやくクローゼットから出られたわね……ふふ、いま声を戻してあげる♪」カチカチ…ッ

ベアトリス「もぅ、姫様のいじわるっ…///」顔を真っ赤にして、うつむき加減のベアトリス…

プリンセス「ふふ、ごめんなさい……ベアトが余りにも可愛くって、それでつい意地悪してしまうの…♪」

ベアトリス「うぅぅ…私の憧れていた、花も恥じらうような清純な姫様はどこへ行ってしまったんですかぁ……?」

プリンセス「ふふ、大丈夫よ…私がベアトを思う気持ちは清らかなまま変わらないわ♪」

ベアトリス「ひ、姫様ぁ……///」

プリンセス「さぁベアト、お部屋に戻る前にちゃんと着替えないといけないからお手伝いして……あら、私のペチコートは?」

ベアトリス「え、さっきまでそこにあったはずですが…そこにありませんか?」

プリンセス「それが見当たらないの……どうしましょう?」

ベアトリス「えぇっ…と、ここに着替えのセットはありますが下着までは……」

プリンセス「仕方ないわ……別に誰かに見られる気づかいもありませんし、下にまとう物はこのボディス(胴衣)だけで構いません」

ベアトリス「し、承知いたしました……ではお着替えを…///」

プリンセス「それにしてもどこに行ってしまったのかしら……って、まさか?」

ベアトリス「何か…?」

プリンセス「いいえ、何でもないわ…♪」


…アンジェ私室…

アンジェ「ふぅ、んくっ…はぁぁ……」


…アンジェの部屋のドアには、留守中誰かが入って来たかどうか分かるよう何でもない物……少しでもノブやドアを動かすと落ちるようなバランスで小さな針が乗せてあり、卓上のノートやメモ帳もアンジェにしか分からない特定の規則でずらしてあって、もし誰かがいじったとしてもすぐわかるようになっている……が、そのどれもが無事だったことを確認するとポケットからプリンセスのペチコートを取り出し、お仕着せの上衣とスカートを脱いでベッドにもぐりこんだ…


アンジェ「んくっ、んんぅ……すぅー…はぁー……」ポーカーフェイスのままプリンセスのペチコートを通して息を吸ってみたり、頬ずりしたりするアンジェ…

アンジェ「んっ、ふぅ……プリンセスなんて嫌い…プリンセスなんて嫌い……プリンセスなんて嫌いっ…プリンセスなんてっ……ん、んんぅぅっ…///」

アンジェ「……ふぅぅ、はぁぁ……プリンセス…大っ嫌いな私だけのプリンセス……んくぅ…っ♪」

………



アンジェ「ふぅぅ…これは後で洗って返せばいいわ……さてと、早くコントロールに提出するレポートの続きを書かないと…」机に向かって紙を置いてペンを取り上げたが、ちらりと自分の洗濯物に混ぜてあるプリンセスのペチコートを眺めると手に取り、もう一度ベッドに潜りこんだ…

アンジェ「…あまりこんな機会はないし、もう一回だけ…それにしても冷たい私と違って、プリンセスの温もりが伝わってくるみたいね……」小声でひとり言を言いながらプリンセスの下着に頬ずりした…


………

…case・ちせ×ベアトリス「The blade and pickles」(刃と漬け物)…

…ある日・校舎の裏手…

?「よく来たわね……待っていたわ」

ちせ「…ふむ、なにやら私の下駄箱に文(ふみ)が入っておると思ったら……やはり果たし状であったか…」

フェンシング部部長「ええ…さぁ、この間は出来なかった勝負の続きをいたしましょう!」

ちせ「ふむ…自らの腕を誇示したいがために果し合いを申し込むとは愚かなこと……しかし、うっとうしい取り巻きを連れずに「さし」で勝負とは、見上げた態度よ……ならば…参るぞ!」

部長「ひっ!?…ですが東洋のおかしな剣術ごときに……わたくしが負けるものですか…っ!」

ちせ「甘いっ!」小柄なちせは胸元を突こうとするエペをかいくぐり、地擦りから必殺の一撃……は浴びせずに刀を一閃させた…

部長「…ひぃやぁぁっ!?」エペが空中に跳ね上げられてくるくると回転し、地面に突き刺さる……そして次の瞬間には防具が見事に切り裂かれて、ふっくらした白い乳房があらわになる……慌ててしゃがみこみ、涙目になるフェンシング部の部長…

ちせ「いかん……こ、これは…五分ばかし踏み込みが大きかったか…///」(※五分…約一・五センチ)

部長「うぅぅ…ど、どうしてくれますの……っ///」フェンシングの面を取って真っ赤になっている…

ちせ「こ、これは困ったのぉ……とはいえお互い剣士として刃を交える以上、恥を受けることもあれば誉を一身に受けることもある…それが定めと言うものよ……」

部長「そんなことはよろしいですから、早く何とかなさってくださいっ…///」

ちせ「むむ…とはいえ私の服では大きさが合うまいし……むぅぅ…」

ベアトリス「はぁ……やっと見つけましたよ…って、何をしているんですかっ…///」

ちせ「おぉ、ベアトリスか。ちょうど良い所に来た…済まぬが針と糸でこれをどうにかしてくれんかの?」

ベアトリス「…え?」

ちせ「見ての通りなのじゃ…ちと踏み込みが大きすぎた……」

部長「うぅぅ…お願いいたしますわ///」

ベアトリス「わ、分かりました……もう、ちせさんったら何を考えているんですかっ!」

ちせ「なに…?」

ベアトリス「だってそうでしょう、普通は本物の剣や刀で勝負なんかしませんよっ!……だいたいわたしたちは目立たないようにするのが任務でしょう…」耳元に顔を近づけ、小声で叱る…

ちせ「むぅ、それはそうなのじゃが…しかしこれでも武人の端くれ、果たし状には応えねばならぬのだ……」

ベアトリス「…それで正体がばれたらどう言い訳するつもりなんですか……っ」

ちせ「…すまぬ……」

ベアトリス「はぁぁ…すみませんが、一応着られる程度には直しておきましたから……改めてお店に修理してもらって下さい」

部長「わ、分かりましたわ……と、ところで…///」

ちせ「何じゃ?」

部長「こ、このことは誰にもおっしゃらないで下さいませ……わたくし、これからは本物のサムライに対して決して生意気なことなど申しませんから……」

ちせ「うむ、承知した……私もこのことは言わないでおく」

部長「…助かりますわ///」

ちせ「ではお互いに出会ったことなどなかったかのように、時間を空けて表に行こう…」

部長「ええ///」

ベアトリス「…ふぅぅ、これでどうにか秘密は守れましたね……」

ドロシー「あぁ…まさかあの娘っ子を口封じに始末するわけにもいかないしな……お手柄だったぞ、ベアトリス♪」

ちせ「…なに、今までどこに……?」

ドロシー「なぁに、茂みの中に潜んでいたのさ……あの「果たし状」を訳してくれって持って来ただろ?…その後すぐにここへ来て潜んでいたんだ」

ベアトリス「ちせさん…もしかしたら本当の刺客だったかもしれないんですよ?」

ドロシー「あぁ…まぁいずれにせよだ、今日はどうにか秘密を守れたからいいようなものの、頼むから今後は「果たし状」とかにつられてノコノコ一人で行っちゃダメだぞ?」

ちせ「うむ…迷惑をかけたな……」

ドロシー「なに、気にするなって……しかしあのフェンシングの部長、いい乳してたな♪」

ベアトリス「も、もう…どこを見ていたんですかっ///」

………


やっぱりベアトプリンセスアンジェ三点セットはいいね

>>97 まずは「乙」をありがとうございます。遅筆ではありますが、時間を見つけてまた投下していきますので……


……確かにこの三人は安定感がありますね…よく「主人公たちが奇数だとカップリングに入れないキャラクターが出て悲しい」と言う意見が多いですが、この三人ならプリンセスが二人を手玉にとって食べ散らかせるので……(苦笑)

…お茶の時間…

アンジェ「事情は聞いたわ、ちせ…今後はそう言うことのないようにお願いするわ」

ちせ「うむ…あい済まなかった……」

アンジェ「分かってくれたなら結構…さて、今回の任務よ」

ドロシー「えー、また任務かよ……コントロールときたら、あたしたちを機械か何かだとでも思ってるのか?」

アンジェ「それだけ私たちが役に立っていると言うことよ…嬉し泣きでもすることね」

ドロシー「おいおい、ずいぶん冷たいじゃないか…んん?」

アンジェ「ドロシー、頭を撫でくり回すのは止めてちょうだい」

ドロシー「へいへい…で、任務の中身だな」

ベアトリス「そうですよ、ふざけている場合じゃないです」

アンジェ「全くね……ちなみに今回の任務は「舞踏会に出ること」よ」

ドロシー「…は?」

プリンセス「まぁ…そこで情報の交換をするのかしら?」

アンジェ「その答えは当たらずと言えども遠からずね……今回の舞踏会は王国外務省主催の国際的なもの。当然各国の「同業者」が来るわ」

ドロシー「それはめでたいな…それで?」

アンジェ「ちせはよく御存じのようにアルビオンが「王国」と「共和国」に分かれていることで、諸外国はどちらを支援するのが有利なのか……はたまた、アルビオンの植民地や海外の権益を横取りする機会はいつなのかを、目を皿のようにして注視している」

ちせ「うむむ…確かに私の国もこちらで言う「極東」の権益を確保しておこうと必死じゃからな……」

アンジェ「そうでしょうね…そこでコントロールとしては、各国のスプーク(幽霊…転じてスパイのこと)が誰なのかよく見ておきたい……もしこれから必要になったら王国の弱点を流してもいいし…それが反対に「アルビオンそのもの」に対する脅威だとしたら、どこかで食い止める場合も出てくる」

ドロシー「要はスパイの見本市…だな?」

アンジェ「ええ。とはいっても私たちは「本物」のスパイだから、やすやすと顔を知られるわけにはいかない……あくまでもプリンセスの「ご学友」として、楽しく優雅に振る舞ってくれればいいわ」

ドロシー「それはいいや…私は純情な女学生だからな♪」

アンジェ「…ちょっと耳の聞こえがおかしかったみたいね……何て言ったのかしら、ドロシー?」

ドロシー「おいこら…まるで人を女たらしみたいに言いやがって」

アンジェ「違うの?」

ドロシー「…こんにゃろー……」

ベアトリス「…でもそういう事でしたら、王宮から招待状を出さないといけないですね?」

アンジェ「そこの手はずはプリンセスにお願いするわ……表向きは普通の舞踏会だから、ぜひとも「大好きなお友達をお招きしたいの」とねだってみてちょうだい?」

プリンセス「ええ、任せておいて♪」

アンジェ「というわけで、今回はコントロールから「L」も顔見世のために現地に来る…と言っても、王国防諜部やらノルマンディ公の部下がうようよいるから、あまり意識しすぎたり話しかけたりすることのないように」

ドロシー「…ああ、分かってるって♪」

アンジェ「それじゃあ舞踏会までにダンスとフランス語のおさらいでもしておくことね」

ちせ「むぅぅ…私はどうもあの「社交ダンス」というヤツが苦手じゃ……」

ドロシー「なら私が「手取り足取り」教えてやるよ…んふふ♪」

ちせ「な、なんじゃ…その薄気味の悪い笑顔は……」

ドロシー「そんなことないって…なぁアンジェ」

アンジェ「…さぁね」

プリンセス「……後で私たちも練習しましょうね、ベアト?」

ベアトリス「はい、姫様♪」

…舞踏会当日…

アンジェ「…準備はいいわね?」

ドロシー「おう…しっかし丸腰だと落ち着かないな……」

アンジェ「…一応言っておくけれど、アルビオン外務省主催の舞踏会にスティレット一本でも持ち込もうものなら、たちまちのうちに王国防諜部が猟犬みたいに駆けつけてくるわよ」

ドロシー「わかってるっての……だから丸腰なんだろうが…うぅ、どうも落ち着かないなんだよなぁ……」

アンジェ「…だったらアメでもしゃぶっていたら?」

ドロシー「あたしは子供かよ?」

ベアトリス「ぷっ、くすくすっ…♪」

ドロシー「おいベアトリス、何がそんなにおかしいんだ……んー?」

ベアトリス「な、何でもないですよぉ…」

アンジェ「仕方ないわね。ほら…口を開けなさい、ドロシー」

ドロシー「は?…まぁいいや…あーん……って、ホントにアメ玉なんて持ってるのかよ!?」

アンジェ「ええ…たとえば「機密書類をあさっている時にその屋敷の子供に出くわす」…とか、そう言った想定外の出来事があったときのためにね」

ドロシー「そんな限定的なシチュエーションがちょくちょくあるとも思えないけどな……ま、もらっておくよ……ん♪」アンジェがどこからともなく取り出した黄色い大きなアメ玉をしゃぶりつつ車を運転する…

アンジェ「黄色でよかったわね、ドロシー…赤は毒入りよ」

ドロシー「げほっ、ごほっ…!」むせたせいで車がテールを振り、慌てて席にしがみつくベアトリス…

アンジェ「……冗談よ」

ドロシー「おい、私を殺す気か!?」

アンジェ「いいえ…軽いユーモアで緊張をほぐしてあげようと思って」

ドロシー「あのなぁ、本当に「毒入りアメ玉」を仕込みかねないヤツがそういうことを言うのは「ユーモア」って言わねぇよ…」

アンジェ「…そう」

ベアトリス「そ、それはそうとして…私たち、今日は一段とステキなドレスですよね♪」普段はなかなかおめかしも出来ないベアトリスのためにプリンセスが選んだ、裾のフリルもたっぷりあるパステルピンクのドレスと、小さなシルクハット風の飾りつき帽子…

ちせ「うむ…しかしこのドレスはちと恥ずかしいの///」肩をむき出しにした黒いパーティドレスには大ぶりなケシの花と紅いリボンがあしらわれ、日本ならではの白い大粒のパールが首元を飾っている…

ドロシー「そんなことないって…よく似合ってるぜ?」渋いがぐっと大人びて見えるディープグリーンとクリーム色のドレスに、貴婦人のような大きな帽子をかぶり、胸元を白い羽根飾りが引き立てている……

アンジェ「ええ、とてもいいわ」アンジェは「田舎出身の女学生」というカバーストーリーに合わせて見立てた少しデザインの趣味が悪いミルクティー色のドレスと、それに似合わないオレンジ色の造花がついた帽子を選んでいる…

ドロシー「……さてさて、そろそろ会場にご到着…ってな♪」

アンジェ「ではいつも通りに…」

…舞踏会・会場…

衛兵「あー…失礼ですがお嬢さまがた、招待状はお持ちですか?」

アンジェ「は、はいっ…!」小さいポーチの中をかき回しつつあたふたしている…ふりをするアンジェ

衛兵「…慌てずとも大丈夫ですよ。他のお嬢さま方もどうぞ招待状をお見せください」

ドロシー「はい、これね……♪」

ちせ「…うむ」

ベアトリス「はい、お願いします」

アンジェ「あぁ、あった……こ、これですね?」

衛兵「ええ、そうです…はい、どうぞお通り下さい」

ドロシー「えぇ…と、車はどこに預ければよろしいのかしら?」

衛兵「は、それは次のゲートで運転手たちがお借りして停めておきますので…どうぞごゆっくり」

ドロシー「ええ、ありがとう♪……ふぃー、あたしのカスタム・カーじゃなくて普通の車で来てよかったぜ…」

アンジェ「そうね…そろそろ玄関よ」

ドロシー「オーケー……アメはしゃぶり終わってるし、大丈夫だ♪」

アンジェ「結構」


楽しみに待ってるから自分のペースで頑張ってください

>>101 ありがとうございます、劇場版の公開まで…とはいかなくても、せめてこのスレは書ききるつもりで頑張ります

…特に書き溜めたりなどしていないので時間ばかりかかっていますが、思い出した頃にのぞきに来てもらえれば少しづつ投下されているかと……

…大広間…

ドロシー「おーおー…さすがにアルビオン外務省主催ともなると豪華なもんだ」

アンジェ「ええ。それに来客の顔ぶれも見事なものよ」…アンジェたちのような「一般人」は別として、入り口では誰かが来るたびにトランペットのファンファーレが鳴り、係が会場に向けて来賓の(本名であったりなかったりする)名前を張り上げる……

ドロシー「ああ…あそこでどこかの貴婦人と話しているのは王国の外務次官……その隣で静かにしているのが王国防諜部の対外課長だな」

アンジェ「ええ。それに「L」もすでに来ているわ……さぁ、固まっているとおかしいから飲み物でも取りに行きましょう」

ベアトリス「そうですね…それじゃあ私は姫様のお側に行っていますから」

ちせ「なら私は……お、堀河公はもうおいでになっておられたのか…」

堀河公「おお、ちせ…それに皆も……」

アンジェ「…堀河公、息災で何よりです」

堀河公「うむ、以前は助けてもらったな。本来なら厚く礼を言いたいところだが…ここはあちこちに目があるのでな、世間話のふりで勘弁していただきたい」

アンジェ「それで十分です…私たちは影の世界に住むものです。日なたに出て勲章をもらうためにやっているのではありませんから」

堀河公「…なるほど、噂以上の冷静さよ……すまんが王国のエージェントがこちらを見ている。楽しく会話しているふりをお願いしたい」

アンジェ「はい…ふふふっ♪」

堀河公「ははは、そうかそうか……「ちせ」さんと申したか…異国の地で見かけた日本人に声をかけてみたら、何とも素晴らしいご学友をお持ちとあって安心しましたぞ!」

ちせ「はい、素晴らしい朋友たちです♪」

堀河公「それはよかった、大事にするといい……それでは」ちょんまげに羽織袴の目立つ格好で歩いて行った…

ドロシー「……ふぅ、シャンパンでもとって来よう…」

アンジェ「私は水でいい」

ドロシー「おいおい…って、来賓のご到着だぜ?」物見高い女学生らしくグラスを片手に来賓を眺める…

お触れの係「…駐アルビオン日本国大使、伯爵「阿路本仁左慈」(あじのもとのひとさじ)卿!」

ドロシー「ふぅん…あれが「表」の大使か……」シャンパンをすすりつつちらっと流し目をくれる…

お触れ「アルビオン・イタリア王国文化交流協会局長「ウンベルト・ショボクレティアヌス」伯!」

アンジェ「あれは「ローマ皇帝の末裔」とかいう噂のある人物ね…見た目はあの通りやつれているけれど、暗殺にかけては天下一品らしいわ」

ドロシー「ほーん……まぁイタリアって国は要人の暗殺が多いからなぁ」

お触れ「駐アルビオン・オスマン帝国大使館付商務官「アブドゥル・ババ・ヤスク・ウル」様!」

ドロシー「…ターバンに裾の長い服、つま先の尖った靴……まるで「アラビアン・ナイト」だな?」

アンジェ「ええ…あれはどうやらオスマンのスパイのようだけど……あの見た目ではなかなか大変そうね」

ドロシー「ははっ、確かに…♪」

お触れ「在アルビオン・オランダ王国商務省輸出担当課長、子爵「スヘルデ・オラニエン・デ・スウェヘニンヘン」様!」

ちせ「なに…「スケベ人間」じゃと?」

アンジェ「…スウェヘニンヘン…オランダの地名よ」

ドロシー「ああ…しかし「輸出担当課長」ねぇ……どう見たってチューリップを売り込みに来ている顔じゃないぜ?」

アンジェ「ええ。何しろアルビオンが「ボーア戦争」で南アフリカのオランダ植民地を奪った後だもの……きっと植民地に向けた武器の動きを調べに来ているのね」

ドロシー「そいつはありえるな……やれやれ、アフリカのジャングルなんかよりロンドンの方がずっと弱肉強食のサファリだよな?」

ちせ「うむ…うかうかしていると自分の国がいつ列強に食われるか分かったものではないからの……恐ろしいものじゃ」

アンジェ「そうね」

お触れ「…駐アルビオン・ロシア帝国大使夫人「エレーナ・クリオコワ」様!」

ドロシー「ふぅ、これでめぼしい顔はみんな来たか……ちせ、そこにちょっとしたビュッフェもあるんだし、うまいものでも食べてきたらどうだ?」

ちせ「ふむ…では失敬する」

アンジェ「さぁ、そろそろダンスの時間よ」

ドロシー「そう思ってちせに声をかけたのさ…ダンスは苦手だろうし、一緒にいると何かと目につくだろうからな」

アンジェ「ええ、そうね」

プリンセス「……皆さん、舞踏会は楽しんでおられますかしら?」

アンジェ「…あ、あの、そのっ……お、おら…いえ……わたくしはこんな立派な舞踏会は…は、はは初めてで…っ!」

プリンセス「ふふ、お楽に…アンジェさん♪」

アンジェ「あわわわ……」プリンセスに声をかけられて、しどろもどろになっているふりをするアンジェ……

ドロシー「ふふ、これはこれはプリンセス……このような立派な舞踏会に私どものような「ただの女学生」までお招きいただき、恐悦至極に存じます…♪」と、こっそりウィンクするドロシー…

プリンセス「いいえ、構いませんわ…だってわたくし、難しい外国との取引や他の国のエライ人たちのお話なんかよりも、皆さんとおしゃべりをしながら一緒に楽しく過ごしたいですもの……♪」と、背後にいるノルマンディ公に聞こえる程度の声を上げた…

ノルマンディ公「…おやおや、王女様とあろうものがそれでは困りますな……ところでこちらはご学友の方々ですか」

プリンセス「ええ、紹介いたしますわね……皆さん、こちらがわたくしの叔父にあたりますノルマンディ公でいらっしゃいますわ…♪」プリンセスから紹介されるとドレスをつかんで腰をかがめ、一礼するドロシーたち…

ノルマンディ公「……さて、舞踏会はいかがですかな?…可愛らしいレディの皆様」

ドロシー「は、はい…王族の方や外国の方がいっぱいでドキドキしておりますわ……///」

ノルマンディ公「はは…この舞踏会は外務省主催とはいえ大したものではありませんよ……どうぞ気楽になさるとよろしい」

ドロシー「あ、ありがとうございます…」

ノルマンディ公「…それで、そちらのお嬢さんはいかがですかな……?」

アンジェ「あ、あの……わたすは……いえ、わたくしは…///」

プリンセス「おじ様、あまりおどかさないであげて下さいな……地方からおいでになったものですから、あまり社交界には馴染んでおりませんの」

ノルマンディ公「おやおや、これは失礼した…では、ごゆっくり……」

プリンセス「またね、おじ様♪」

ノルマンディ公「うむ…いつかまたお会いしたいものですな、レディの諸君……」

ドロシー「はい、それでは……ふー、誰が二度とお会いするかっての……」

プリンセス「…いきなり声をかけて来るなんて驚いたわね?」

アンジェ「ええ、まさかノルマンディ公とはね……でもドロシー、私はもう一度会いたいわよ」

ドロシー「おいおい、マジかよ…」

アンジェ「ただし、銃の照準に捉えた状態で…だけれど」

ドロシー「あー…それなら話は別だ……」

プリンセス「……ベアト、もうしゃべっても大丈夫よ?」

ベアトリス「はぁぁ……さすがに背筋が凍りつきましたよぉ」

アンジェ「でもよくポーカーフェイスを維持したわね…上出来よ」

ベアトリス「そ、そうですかぁ…?」

ドロシー「今は出来てないけどな…完全にニヤけてるぜ?」

ベアトリス「むぅぅ…いいじゃないですか、アンジェさんに褒められるなんて滅多にないんですから」

ドロシー「そんなことないさ、アンジェは褒めるのも上手さ……ただ、あんまりにもかすかだから普通の人間には分からない…ってだけで」

ベアトリス「それじゃあ褒めてないのと一緒じゃないですかぁ…」

アンジェ「もっと表情を良く読み取ることね……ちせは?」

プリンセス「えーと…さっきまでビュッフェテーブルで何かつまんでいたようだったけれど……?」

アンジェ「そう…もう頃合いでしょうし、そろそろ撤収しましょう」

ベアトリス「じゃあ私が呼んできます」

プリンセス「お願いね♪」

………

…しばらくして・部室…

ベアトリス「もう、ちせさんったら信じられませんっ…!」

ちせ「何を…っ!」ベアトリスは服の内側に差したウェブリーの小型ピストル「ウェブリー・ベスト・ポケット」に手が伸ばせる位置…ちせは脇差の柄に指が届く位置でにらみ合う……

………

…事の発端…

ドロシー「ふぃー…今日は気疲れで参ったな……車の整備だけしたら早めに寝よう…」

アンジェ「私もレポートを書く必要があるから…失礼するわ」

ちせ「うむ…それではまたの」

ベアトリス「おやすみなさい、アンジェさん」

アンジェ「ええ」

ちせ「それにしてもプリンセスどのもおらぬしアンジェどの、ドロシーどのも席を外してしまったの……二人きりじゃが何か出来ることはないものじゃろうか…?」

ベアトリス「うーん…それでしたらお茶でも淹れましょうか」

ちせ「おぉ、それはよい……一杯淹れてくれるかのう?」

ベアトリス「ええ、いいですよ……それじゃあその間に何か「お茶請けになりそうな物」を用意してくれませんか?」

ちせ「うむ、承知した…♪」


…数分後…

ベアトリス「ちせさんっ、これはいったい何なんですかぁぁ…っ!?」鼻にしわを寄せて両手をわきわきさせるベアトリス…

ちせ「……お茶請けじゃが?」可憐なウェッジウッドの菓子皿に載った……しんなりと良く漬かったきゅうりのぬか漬け…

ベアトリス「こんなヘンテコなきゅうりのどこがお茶請けになるんですかっ…もっと、こう…普通はクッキーとかスコーンみたいなものでしょう!?」

ちせ「それはあくまでもそちらの決めつけじゃろうが…日本では漬け物が由緒あるお茶請けとして認知されておる」

ベアトリス「そんなこと知った事じゃないですよっ、それにとっておきのお菓子皿になんてものを載せてくれるんですかっ…!」

ちせ「そうガミガミ言うことではあるまい…もし気に入らぬのなら後で洗えばよかろうが?」

ベアトリス「そう言うことじゃないんですよっ、だいたいちせさんは朝方だってフェンシング部の部長さんと決闘まがいのことをするし……防具を糸でかがったりなんだりしてフォローした私の身にもなって下さいよっ!」

ちせ「別に私は「助けてくれ」だのなんだの懇願した覚えはないぞ…それこそ余計なお世話じゃな」

ベアトリス「あーそうですか、そういうことを言うんですかっ……これだから「東洋人は」って言われるんじゃないですかっ!?」

ちせ「…貴様、私に気に入らぬことがあるなら直しもしよう…じゃが「東洋人」と十把一からげに馬鹿にするとは……許せんな」

ベアトリス「じゃあどうしますか、また「果し合いごっこ」でもしますか…っ!?」

ちせ「よかろう…言っておくが、貴様が「虎のひげを引っ張る真似」をしたのじゃからな……!」

ベアトリス「いいですよ、かかってくればいいじゃないですか…!」

ちせ「……むむっ」

ベアトリス「…くっ」張りつめた空気のなか、テーブルの上に置かれた砂時計の砂だけがさらさらと流れ落ちる……

ちせ「…」

ベアトリス「…」きゅぅぅ…っ

ちせ「…おい」

ベアトリス「な、何ですか…///」

ちせ「…もしや、空腹なのか?」

ベアトリス「ええそうですよ……プリンセスのメイドが舞踏会の間、自由にものを食べたり飲んだりできる訳ないじゃありませんか」

ちせ「……それで茶を淹れて何かつまもうと思ったのか…?」

ベアトリス「ええ、そうですよ」

ちせ「ぷっ……それでそんなにかんしゃくを起こしておったのか」

ベアトリス「そ、そうですよっ…悪いですかっ///」

ちせ「なんじゃ…そうならそうと早く言えばよいものを……やめじゃやめじゃ♪」

ベアトリス「…な、なんで止めるんですか……///」

ちせ「空腹の相手に青筋を立てても仕方あるまい…漬け物は私がもらうから、ベアトリスは何か自分の好きな菓子でも何でもつまむがよかろう」

ベアトリス「それがないから困っているんですよっ!」

ちせ「なんじゃ…いつも菓子の一つや二つくらい用意してあるじゃろうに?」

ベアトリス「それが今日は舞踏会の準備で、それどころじゃなかったんですよ……うぅぅ」

ちせ「そういう訳であったか……お、そう言えば♪」

ベアトリス「何か私が食べられるものがあるんですかぁ…もし本当にあるなら今まで言った事は全部撤回して謝りますから……」

ちせ「うむ…ちと待っておれ……ほら、どうじゃ?」食器棚の奥にしつらえてある小さな「爪」を探り当ててカシェットを開け、ショウガ入りクッキーを取り出すちせ…

ベアトリス「わぁぁ…そう、こういうのですよ!」

ちせ「ほれ……しかし、軽々しく刀に手をかけようとした私も悪かった…済まぬ」

ベアトリス「いえ…私もちせさんを馬鹿にしてすみませんでした……ちょっと一日の疲れと緊張がたまっていたみたいで…」

ちせ「なら改めて茶をいただこう……ほ、牛乳もあるようじゃな♪」先にミルク差しからミルクを注ぐちせ…

ベアトリス「…むっ」

ちせ「ふむ…ぬか漬けと牛乳はちと相性が悪いの……ずーっ…」音を立てて紅茶をすするちせ…

ベアトリス「……ちせさん」

ちせ「なんじゃ…満足したか?」

ベアトリス「…このお茶を飲み終わったら……決闘です!」

ちせ「なに?」

ベアトリス「紅茶ではなくミルクを先に入れる…音を立ててお茶をすする……どうみても淑女の振る舞いじゃありませんよっ!」

ちせ「ほう……せっかく私がいさかいのタネを水に流してやったと言うのに、また話を蒸し返すとは…どうやらよほど痛い目にあいたいらしいの?」

ベアトリス「むぅっ…私だって訓練は受けました……そう簡単に負けはしませんっ!」

ちせ「ほほぅ…ベアトリスよ、おぬしはもう少し利口だと思っておったぞ……では、この一杯を終えたら参ろうではないか」

ベアトリス「ええ、それでいいですよ!」ショウガ入りクッキーを食べ終わると食器を片づけ、邪魔な椅子とテーブルをどかした…

ちせ「音のする銃は使えんが……それでよいのか?」

ベアトリス「ええ、ですから得物はなしで行きましょう…それならいいでしょう?」

ちせ「なるほど…よかろう!」脇差と小柄をテーブルに立てかけ、さらしで袖を「忠臣蔵」の討ち入りのように縛り上げる…

ベアトリス「……それじゃあ、行きますよ!」

ちせ「いざ……はっ!」

ベアトリス「…っ!」訓練の成果か、見事に正拳突きを受け止めるベアトリス…

ちせ「ふんっ…!」続けてみぞおちに突きを放つちせ…

ベアトリス「まだまだ…っ!」

ちせ「何をこしゃくな……っ!」

ベアトリス「そっちこそ…!」

ちせ「むむ、なかなか……じゃが!」柔道の寝技で押さえこみにかかるちせ…同時に首を締め上げるが、ベアトリスの首は義体化されていて効果がない……

ベアトリス「くっ…むぅぅ!」反対にちせの顔を胸元へ押しつけて窒息させようとするベアトリス…

ちせ「むむっ…ふうっ、ふぅぅ……っ!」

ベアトリス「んっ…ふぅ、ふぅぅ………んふぅ//」お互いにしばらくもがきあっているうちに、妙に艶めかしい吐息を漏らし始めたベアトリス…

ちせ「んくっ……すぅ、はぁ……むふぅ…///」一方、ベアトリスのつつましい胸のふくらみに押し付けられていたちせからも殺気が無くなり、急に「すーはー」と音を立てて、ベアトリスの甘い香水の香りを吸い込み始めた…

ベアトリス「ちせさん…っ……さっきから…なに変な声を上げているんですか……んんっ///」

ちせ「それは……こちらの言うことじゃ……さっきから甘ったるい声を漏らしおって…んふぅ///」

ベアトリス「またそういう減らず口を…こうなったら力づくでも黙らせないとダメみたいですね!」

ちせ「ほう、出来るものならやってみるがよかろう?」

ベアトリス「…言いましたね……んふっ、ちゅるっ…ちゅうぅ……///」

ちせ「んんっ!?……んんぅ、んんっ…!」

ベアトリス「ん…ちゅるっ、ちゅぅ……じゅる…///」

ちせ「んーっ、んんーっ!…んふっ、んくっ…んんぅ、んっ………」

ベアトリス「ぷはぁぁ…どうです、声の一つも出なかったでしょう?……ちせさん?」

ちせ「…うっ、ううぅ……///」

ベアトリス「…あ、あれ?」

ちせ「…ほわぁぁ、今まで剣の道に捧げてきたこの身体……それを惑わす口づけの…何と甘美で……の、のうベアトリスよ///」

ベアトリス「なんです?」

ちせ「…そ、その……もう一回だけしてみてはくれぬか…」

ベアトリス「……あー、ちせさんったらもしかして私のキスでメロメロになっちゃったんですかぁ?」

ちせ「そ、そんな訳あるか!…ただ……このままやられっぱなしと言うのは私の性に合わん……うむ、そうじゃ…今のは無しとして、ここから三番勝負にいたそう///」

ベアトリス「…私はいいですよ?……でもちせさんはキスに耐性がないですし、終わったときにはとろとろにとろけきっちゃいますよぉ?」

ちせ「ありえぬ…わ、私とて剣士の端くれ……どこからでもかかって来るがいい…!」

ベアトリス「……そうですか、それじゃあ遠慮なく♪」ぐいっ…♪

ちせ「ま、待て…いきなりとは言っておらぬぞ、せめてお互いに一礼するとか…何かこう……!」

ベアトリス「…ふぅ、ちせさん……」

ちせ「な、なんじゃ」

ベアトリス「前に姫様が言っていました……「キスと戦争は奇襲に限る」って…はい、スキありっ♪」

ちせ「な、なにっ!?…んんぅ、んちゅぅ……れろっ、ちゅ…っ///」

ベアトリス「…はい、一回目は私の勝ちですね」

ちせ「な、何を言う……だまし討ちなどと卑怯な真似をしてからに…まぁよい、まだ二回ある///」

ベアトリス「そうですね……あ、アンジェさん♪」

ちせ「…っ!?」

ベアトリス「嘘ですよっ……んちゅぅぅっ、ちゅるっ、ちゅぷっ……ちゅぅ、れろっ…んちゅ……ちゅぷっ…♪」

ちせ「んふぅぅっ、んんぅ…んっ、んっ……ふぅ…ん///」

ベアトリス「はい、これで二勝です……それにしてもちせさんのお口の中、甘いミルクティーの味がします……ね///」

ちせ「……ず、ずるいではないか…来てもいないアンジェどのを……///」

ベアトリス「普段のちせさんだったら気配だけで分かるはずじゃないですか…やっぱりキスで骨抜きにな……」

ちせ「なっておらぬ!……とはいえベアトリスもほのかな紅茶の香りとクリームの味が…まるで菓子を食べているようじゃ…」

ベアトリス「ふふ…じゃあもうちょっとだけ……スコーンとクローテッドクリームの味見をしますか?」

ちせ「う、うむ…この勝負は一旦あずける…ので…その、さっきのような…舌を絡めるやり方で頼む……///」

ベアトリス「…いいですよ……んちゅる、れろっ…じゅるっ……ちゅる…っ…ちゅぷっ///」

ちせ「んふぅ、れろっ…ちゅむっ……ちゅぅぅ…んっ、ふぅぅ……ちゅぅぅ///」

ベアトリス「…ところで、ちせさん」

ちせ「なんじゃ……もうおしまいか…?」

ベアトリス「……いえ…そこに大きなソファーがありますよね……」

ちせ「うむ……床の上では堅くてかなわぬか?」

ベアトリス「ええ」

ちせ「…さて……しかしなんじゃな……」

ベアトリス「はい?」

ちせ「こうして見ると今日のベアトリスはいつにもまして可愛いの……口づけしたせいじゃろうか?」

ベアトリス「ちせさんってば…いきなりそんなこと言わないで下さいよ///」

ちせ「いやいや、世辞や酔狂で言っているわけではない……正直…もっとしたくてたまらぬ…///」

ベアトリス「…奇遇ですね……私もです…」

ちせ「んちゅ…ちゅぅっ♪」

ベアトリス「んむっ、ちゅっ♪……ふふ、いきなり上手になりましたね?」

ちせ「何事も練習あるのみ……あるいは私も「色仕掛け」を使う場面が来るやも知れぬし、いつまでも「接吻の仕方も知らない東洋人」では格好がつかぬ……んちゅぅぅ…ちゅぽっ///」

ベアトリス「んんぅ…んっ、ふ……はぁ、はぁ…///」

ちせ「んちゅっ……ふぅ、ふぅぅ…///」

ベアトリス「そ、それじゃあ……脱がせてあげますね///」

ちせ「…着物の脱がし方を覚えるいい機会じゃな♪」

ベアトリス「んー…あ、あれ?」

ちせ「…」

ベアトリス「おかしいですね…簡単にほどけると思ったのに……うぅ」

ちせ「……」

ベアトリス「ここをこうしたら……あれれ、何で絡まっちゃうんですかぁ?」

ちせ「………えぇい、もどかしいっ!」手を払いのけてさっさと着物を脱ぎ捨てるちせ…ついでにベアトリスの服も脱がしにかかる…

ベアトリス「あっ、ダメですってば!シルクなんですからそう言う風に扱ったら糸が伝線しちゃうじゃないですかっ」

ちせ「その手をどけぬか!…まったく、西洋人のおなごは一体何枚の布きれで隠れておるのじゃ!」

ベアトリス「や、止めて下さいってばぁ!…あぁもう…後で取りに行かなきゃならないんですから、スカートを向こうに投げないで下さいよっ///」

ちせ「ふぅ、ふぅ…私を焦らしたベアトリスがいけないのじゃ……」

ベアトリス「だからって、もう…後で甘いキスの刑ですからね♪」

ちせ「ふふ、望む所じゃ…♪」お互いに邪魔なブラウスやリボン、着物の帯をソファーの背もたれ越しに放り出していく……

ベアトリス「……はぁっ、あぁっ…はぁぁんっ♪」

ちせ「おっ、おぉぉ……何と温かで気持ちのいいことよ……はぁ、ふぅっ…んんぅぅっ♪」

ベアトリス「はひぃっ、あふぅぅっ♪」

ちせ「んくっ、あぁぁぁ…っ♪」

アンジェ「……どうやらお取込み中みたいね」ソファーの向こうから次々と服や装身具が投げ出され、ちせとベアトリスの甘ったるい喘ぎ声が聞こえてくる…

ドロシー「だな…それにしても、二人ともまぁ夢中になってること……ぷふっ♪」

アンジェ「…何がおかしいの」

ドロシー「くっくくく、そりゃおかしいさ……なにせ部屋に入った瞬間にそれだもんなぁ♪」

アンジェ「ドロシー…後で覚えておくことね」…部室に入るなり飛んできたベアトリスのストッキングが頭からぶら下がっている……

ドロシー「あーおっかない……それじゃ二人の時間を邪魔しないように、私たちは退散するとしますか♪」

アンジェ「ええ…」

………

>>109 まずは見て下さってありがとうございます。

…さて、書いているうちに「ちせ×ベアト」もアリなのではと思う今日この頃ですが……皆さまはどんなカプがお好きなんでしょうか?


…case・アンジェ×ちせ「The vampier in the fleet street」(フリート街の吸血鬼)…


…深夜・フリート街にほど近い裏通り…

男「…うーい……今日は飲みすぎちまったなぁ…もうどこのパブも酒屋もやってねぇや……」男は家路に向かう途中で、近道をするために裏通りへと曲がると散乱するごみを蹴散らしながら千鳥足で歩いている…


…深夜の裏通りは人の気配もなく、道路の中央に付けられている排水溝にはドブネズミの死骸や野菜くず、垂れ流された大小便などが放置されている……表通りから届く街燈の灯りも夜霧と煤煙のためか、やっと足もとが見える程度に薄く霞み、靴音だけが寂しく反響して響く……本当なら夜道を照らしてくれるはずの月も、今は霧に隠れてぼーっと青ざめている…


男「…ぶるるっ、なんだよ…いやに冷え込む夜じゃねぇか……」背中にぞくりと冷たい夜気が這い上がって来て、思わず腕をさすりながら背中を丸める…

男「……ま、まぁ俺ァさんざ飲み明かして一文無しだからな、追いはぎの心配もねぇや!」薄暗い通りに怯えつつ、強がりでひとり言をつぶやいてみる…が、その声も薄汚れたレンガの壁に吸い込まれていく……

男「…ちっ、早道だからってこんな道通らなきゃよかったな……なにくそ、構うもんか!…こちとらロンドンっ子よ、この世にいる訳もねぇ「化け物」だの「悪魔」だのにおびえるわきゃねぇってんだ!」…いっそ回り道でも大通りに引き返そうかと後ろを見たが、今さら引き返すのも弱虫みたいでしゃくだと、ロンドンっ子らしい威勢のいい啖呵(たんか)を切りつつ足早に歩き出す……


…裏通りの真ん中あたり…


男「へっ…やっぱり何でもねぇや……お化けだの何だのってのは怖ぇ怖ぇと思ってるから、何でもねぇ物まで見間違えちまうんだ…出てこられるもんなら出て来てみやがれってんだ!」…もはや表通りのかすかな明かりさえ届かなくなった裏通りの真ん中あたり…左右は家々の裏手に当たる高いレンガ塀で、相変わらずあちこちにゴミや小動物の死骸が転がっている……


黒マント「…」不意に男の前に姿を現した長い黒マントとシルクハットの姿…黒マントの裏地は紅のビロードらしく、かすかに吹き抜ける夜風にはためいている…

男「うわっ!…おい、いきなり出てきておどかすんじゃねぇや……ぶるっちまったじゃねぇかよ…」

黒マント「…」

男「…へ、返事くらいしてみたらど、どうなんだよ……え?」

黒マント「…」軽く帽子の縁に手を当て、会釈のような仕草をすると近寄ってくる黒マント…

男「な、なんだよ…紳士のための表通りなら向こうだぜ……?」

黒マント「…!」マントを後ろにはねあげ、男に向かって駆け出してくる…

男「わぁぁっ…!!」尻もちをつきながら反対の方向に駆け出す男…酔いのせいでふらつく脚を必死に動かし、ごみくずにけつまずきつつ来た方へと戻ろうとする…

黒マントB「…」

黒マントC「…」

男「あ、あ……うわぁぁぁっ!!」…退路を塞ぐように小さな脇道から出てきた別の黒マントと、最初の黒マントにかこまれた男……その絶叫は霧深いロンドンの夜空に吸い込まれていった…

………



…翌日・寄宿舎の部室…


アンジェ「…今日みんなに集まってもらったのは、この記事を見てもらうためよ」テーブルに数紙の新聞を置いたアンジェ…

ドロシー「新聞ね……こういうのって、一番ふざけてるように見えるやっすいタブロイド新聞みたいな方が物事の核心をついていたりするんだよな」

アンジェ「そうかもしれないわね…とにかく中ほどの記事を見てちょうだい」

ドロシー「あいよ……って、何だこりゃ?」

アンジェ「見ての通りよ」

ベアトリス「えーと『ロンドンの吸血鬼…またも犠牲者!』って書いてありますね?」

ちせ「…『首には二つの傷痕、被害者は血の一滴も残さず…ヴァンパイアの吸血痕か?』じゃと…ふむ、英国にはまだ吸血鬼とやらがおるのじゃなぁ」

ドロシー「バカ言え、そんなもんがいてたまるかよ……で、このふざけた記事がどうかしたのか?」

アンジェ「ええ…コントロールからの指令で、今回はこの事件を調べることになったわ」

ドロシー「は?…おいおい、こんなのはフリート街にたむろしてる特ダネ記者のやることだろ……?」

プリンセス「…何か事情がありそうね?」

アンジェ「ええ、それを今から説明するわ…」

………

…その日の午前中・図書館…

アンジェ「…ヴァンパイア?」

7「ええ……この事件は一見すると「ホンモノ」の吸血鬼の仕業に見えるわ…被害者の年、職業、性別もバラバラ……共通点といえば暗い通りで襲われ、首に噛み痕のような二つの傷と、ほとんど血が残っていない死体だけ……でもね」

アンジェ「ええ」

7「十数人にも上る被害者のうち、こちらの送り込んだ工作員(スパイ)が一人、カットアウトが一人含まれているの……」

アンジェ「……異常な数字ね」

7「その通り…「L」もそう言っていたわ、「一人なら偶然もありうるが、二人なら故意だ」とね」

アンジェ「ええ、そうね」

7「…そこであなた達には、次に「吸血鬼」が活動しそうな場所を歩いてもらって……連中の「本性」を暴いてもらうわ」

アンジェ「了解」

7「結構…何か聞いておきたいことは?」

アンジェ「……本物のヴァンパイアだった場合は?」無表情な中に、精一杯のユーモアを込める…

7「そうね、もし本物だったら…こちらの工作員を「味見」するとどうなるか教えてあげてちょうだい……必要なら十字架とニンニクの首飾りを用意させるわ」

アンジェ「ええ…生命保険の「吸血鬼特約」をつけて、ぜひ用意してもらいたいわね」

7「そうね……とりあえずこちらで分かったことをまとめた資料があるから、熟読したうえで活動にあたって」

アンジェ「了解」

………



アンジェ「…と言う訳で、どうやら本物のヴァンパイアに出会うことは出来ないわね」

ドロシー「だってさ…残念だったな、ちせ?」

ちせ「うむ、異国の妖怪に出会う絶好の機会だと思ったのじゃが…しかし工作員を「消去」するのに、なぜそんな手の込んだ真似をするのじゃろう?」

ベアトリス「ほんとですよね、普通に交通事故とか…酔って川で溺れるとか……」

プリンセス「そうね…食中毒とか、濡れた床で脚を滑らせるとか……いろいろあるのにどうして「吸血鬼」なのかしら?」

ドロシー「…理由はいくつかあるな」

ベアトリス「そうなんですか?」

ドロシー「ああ…いわゆる「血抜き」は尋問の手段としてよくあるんだ……よく「頭に血が回らない」って言うように、人間って言うのはある程度血を抜かれると聞かれるがままに物事を話しちまうからな」

アンジェ「その通りよ…それに事故死なら「スコットランド・ヤード」(ロンドン警視庁)もある程度死因や状況を調べるでしょうけれど、「吸血鬼」なんて言われたら真面目に調べる気もなくなってしまう……それが相手の狙いなの」

ドロシー「そういう事……その上ちょっとばかり被害者の素性がおかしかったとしても、単なる「ロンドンでうごめく吸血鬼」だとか「切り裂きジャックの再来」に襲われた被害者だ…なんて面白おかしく書きたてられて、ひとまとめにされちまう」

ベアトリス「でも被害者は十数人いるんでしょう……残りの人は何なんです?」

アンジェ「つじつま合わせよ」

ドロシー「ああ…いくらなんでもこっちの工作員やカットアウト、協力者だけを選んで襲っていたんじゃどんな間抜けや駆け出しの記者だって「イチ足すイチ」で誰が何のためにしていることか分かっちまうからな……それを目立たせないように、適当に暗い夜道を歩いていた一般人を同じやり口で「シメちまった」んだ」

アンジェ「木を隠すには森…死体を隠すならモルグ(死体置き場)という訳ね」

ベアトリス「そんな…あんまりです……」

ドロシー「ま、そういう世界だからな」

アンジェ「ええ…ちなみに「やられた」工作員は三流新聞の記者、カットアウトは夜中から仕込みに忙しい屋台のパイ売りだそうよ」

ドロシー「なるほど、夜道とも縁がありそうだな」

アンジェ「そうね…ちなみに今回は相手が玄人なのが分かっているから、プリンセスとベアトリスは後方支援……ドロシー、ちせ、私が二人組の入れ替わりで事に当たるわ」

ドロシー「了解……それじゃあ吸血鬼退治と行きますか」

アンジェ「ええ、まずは資料をよく読み込むことからね」そう言って新聞記事の切り抜きから、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」まで揃っている資料を差しだした…

………

おもしろい

>>113 まずは読んで下さってありがとうございます…書くのが遅いもので数日ごとに2~3スレ分しか進みませんが、引き続きがんばります


アンジェ攻めプリンセス受けが好きだな

>>115 そう言ったリクエストがあると助かります…アン×プリはまだ書いていないのでそのうちに……

…しばらくして…

ドロシー「……なぁアンジェ…この資料って本当に使えるのか?」

アンジェ「どうして?」

ドロシー「だってさぁ、『吸血鬼の撃退にはニンニクや十字架が効果的である……が、根本的な解決法としては吸血鬼の就寝中、胸元へ聖水で清めた杉の杭を打ち込むことが最もよい』って……あたしは吸血鬼の退治法が知りたいわけじゃないんだよ」

アンジェ「分からないわよ…もしかしたら本物の吸血鬼も混じっているかも知れないし、そのうちに任務でトランシルバニアに派遣されるかもしれないでしょう」

ドロシー「そんな馬鹿な?」

アンジェ「…まぁ冗談を抜きにしても、なんの知識が役に立つかなんて分からないわよ」

ドロシー「それはそうだけどさ……なんかなぁ…」

アンジェ「いいから、読み終わったらそれを貸してちょうだい」

ドロシー「はいよ」

ベアトリス「……うーん…どうも今回の「吸血鬼」はフリート街のまわりで活動していることが多いみたいですね……」

プリンセス「フリート街……新聞社や印刷所が多い所ね?」

アンジェ「そうね…アルビオンにおいて、あらゆる情報が最も早く手に入る所……しかも深夜は人通りはほぼない上に、印刷機や何かの音で物音も聞こえにくい…」

ドロシー「印刷所の裏通りともなれば窓一つあるわけじゃないし、物音を聞く住民もいない……誰かを拉致するには理想的だな」

アンジェ「ええ」

ドロシー「それじゃあルートはそのあたりを中心にして……後はどうやって本拠地まで跡をたどるかだよなぁ…」

プリンセス「裏通りでは車も馬車も通れないし、かといって表通りで待っていては目立ちすぎるものね」

ちせ「ならばと徒歩(かち)で行って、あちらが車を用立てていたとしたら目も当てられん……思案のしどころじゃな」

アンジェ「…そこは私に考えがある……地図を見てちょうだい」

ドロシー「どれどれ…ふぅ、それにしてもよくもこうせせこましく建物を建てたもんだよな……」

アンジェ「ええ…それだからこそ使える手段がある」

ちせ「…ほう?」

アンジェ「みんなはもう「Cボール」を知っているわよね……これを使って屋根伝いに追えば、入り組んだ路地を駆け回らずに済むわ」

ドロシー「なぁるほど…さっすがアンジェ、冴えてるな♪」

アンジェ「からかってるの?」

ドロシー「とんでもない……だけど目立たないか?」

アンジェ「そう言うと思って、事前にそのあたりの建築図を調べてみたわ……この辺りは通りが細い上に建物の高さがあるから、もし屋根の上にいる人物を見ようと思ったら、首の骨が大変なことになるでしょうね…」

ドロシー「ああ、資料にも入ってた……で、反対にこっちは屋根の上からのぞきこめばいい…と♪」

アンジェ「ええ…今回の主目的は相手のネスト(巣)までついて行って、何を調べているのかを探り出し…ついでにこの「吸血鬼」どもを片づけること……月の明るい日は誘拐が行われていないから、作戦は天気の悪い時か月のない日の深夜……今日は月の入りを考えて、今夜の十時ごろにフリート街に着くように行動しましょう」

ドロシー「了解だ♪」

ちせ「…うむ」

プリンセス「ええ、分かったわ」

ベアトリス「はい」


………

…十数日後の夜・フリート街…

ドロシー「うー…なんだか今夜は霧も濃いし、ことさらに「吸血鬼」が出そうだな……」

アンジェ「結構なことね」

ちせ「うむ…見回りを初めて十数日、ここまで何も起こっておらぬし……そろそろ次の犠牲者が出てもおかしくない頃合いじゃろうな」

アンジェ「ええ。それに「コントロール」としても、消去されたエージェントが何の情報をつかんでいたのか…あるいは逆に、何を「歌った」(白状した)のかが分かれば、あちらに対して情報漏れを防ぐ手立てが取れるようになる……つまり結果を出すのは早い方がいい、ということね」

ドロシー「だな…それにしても「血抜き」の尋問をやるような奴らを相手に「トマトスープ」作戦とはね……悪趣味もいいところだ」

アンジェ「仕方ないでしょう。そういう訳で、向こうがこちらに対してどこまで「食い込み」を図ったか分からない以上、作戦名の流出もあり得る……だとしたら、簡単に連想できるような吸血鬼関係の単語を使った作戦名は使う訳にはいかないわ」

ドロシー「あぁ、そのおかげで私が「ニンニク」、二人が「玉ねぎ」と「ニンジン」なんだもんな」

アンジェ「そういうことよ…さぁ、そろそろ時間ね」そう言いながら、ちせにお守りのようなアンクレット(足飾り)を付けた

ドロシー「了解…「ニンジン」の得物はこっちで預かるよ」

ちせ「うむ、よろしく頼む…しかし寸鉄も帯びていないとどうも落ち着かぬな……」

ドロシー「だろうな……気持ちはよくわかるよ」

アンジェ「ええ…それじゃあ始めましょう」ドロシーの手を握ると「Cボール」を起動し、屋根の上にふわりと着地した…

アンジェ「……思っていたより霧が濃いわね」

ドロシー「あぁ…「もや」っていうよりは「霧」だな……」

アンジェ「こうなると尾ける距離を縮めないといけないわね」

ドロシー「だな……」



ちせ「うぅむ…それにしても倫敦(ロンドン)の下町がこうも汚らしいとはの……これが「世界の中心」とは思えぬほどよ…」

ちせ「……なにやら煙ったいような臭いも立ちこめておるし、古くなった食材のすえた臭いもするようじゃな……見てくれはともかく、倫敦の下町は鼻に悪い都のようじゃ…」小さい歩幅でトコトコと歩いていくちせ…


…柳のバスケット(手提げカゴ)を持って、両脇を建物に挟まれた狭い裏通りをてくてく歩いていくちせ……黄色っぽい霧が地面を覆い、灯りの消えた暗い裏窓が、骸骨の眼窩(がんか)のように通りを冷たく見おろしている……貴族の邸宅では舞踏会や晩餐会でまだまだにぎやかな「宵の口」ではあるが、貧しい裏通りでは疲れ切った労働者が泥のように眠っているか、はたまた貴族のお屋敷で下働きにいそしんでいるために、家々からは明るい光が一つも見えない…


ちせ「…別におっかないとも思わぬが、こうして見ると陰気じゃなぁ……」

ちせ「……おっと、ネズ公の「ホトケ」を踏みそうになってしまった…せめて成仏してくれるといいが、それもこの辺りでは難しそうじゃの……」

ちせ「…む?」ふと視線を上げると、闇の奥にぼんやりとしたシルエットが浮かび上がってきた…

黒マント「…」

ちせ「…何か用かの?」まずまずの英語で声をかけるちせ…

黒マント「…」

ちせ「もし…そこの御仁に問うておるのじゃが……?」

黒マント「…」カツッ、カツッ…と石畳に靴音を響かせて近寄ってくる黒マント

ちせ「…な、なんじゃ……」うろたえたふりをして反対側に向かって駆け出すちせ…

黒マントB「…」

黒マントC「…」

ちせ「あ、あぁぁ……」あくまでも「か弱い小さな小間使い」のふりをして黒マントに取り囲まれるちせ…

黒マント「…」騒がれないよう喉を締め上げて気絶させると、目覚めても声を出せないよう猿ぐつわをかまし、手足を縛りあげた…そのまま肩に担いで運んでいく黒マント…



ドロシー「…よし、食いついた」

アンジェ「ええ……追うわよ」

………



ドロシー「ところであのアンクレットだけどさ…ちゃんと効果あるんだな?」

アンジェ「なければ使わないわ」

…ちせに渡した「お守りのアンクレット」に含まれているケイバーライトが、アンジェの「Cボール」にだけ反応して淡い緑色に光る……屋根の上をそっと尾行しながら、不可視の「道しるべ」を追っていく二人…

ドロシー「まぁな……それにしてもあの連中、どっから現れてどこに行くのやら…」

アンジェ「知らないわ…それを知るのが任務でしょう」

ドロシー「いや、分かってるけどさ…ちせには背中を預けたこともあるし……どうも、こう…冷静なままじゃいられないんだよな」

アンジェ「分かっているならなおの事冷静になりなさい…それこそ「大事な仲間の命」がかかっているのよ」

ドロシー「ああ……ん、奴ら角を右に曲がったな…」

アンジェ「…飛ぶわよ、つかまって」

ドロシー「あいよ」アンジェの腰に手をかける…

アンジェ「連中は…向こうの建物に入ったわね……」

ドロシー「何の建物だろうな…印刷所か?」

アンジェ「…そうみたいね」

ドロシー「それじゃあ急いで知らせて来いよ。私はここで監視にあたる」

アンジェ「頼むわね……数分で戻るわ」

………

…数分後…

アンジェ「戻ったわ」

ドロシー「ああ…「早かったな」って言いたいが……中の様子を見る限り、早すぎて困ることはないらしい」

アンジェ「…みたいね」


…薄暗い建物の中はしっくいの塗ってあるレンガ張りで、二人の位置からようやく中が見える小窓からは殺風景な部屋が見えた……室内には手術台のような拘束具つきの台が置かれていて、周囲には時間が経って赤茶けている血の染みが飛び散り、天井からは鎖付きの手錠もぶら下がっている……吊るされた鎖から届く範囲の壁は犠牲者が痛みのあまり爪を立てたらしく、しっくいが剥げ落ちている…


ドロシー「で、情報は届いたか?」

アンジェ「ええ…後は私たちが片づければいいわ」

ドロシー「分かった…それじゃあちせを救いに行こうぜ?」

アンジェ「待って…見張りは?」

ドロシー「なし。変にうろちょろしてると怪しまれるからだろうな」

アンジェ「…侵入ルートになりそうなのは?」

ドロシー「やっぱり裏口だろうな…鍵はかかっているだろうけど」

アンジェ「了解……それじゃあ行くわよ」Cボールを使ってひらりと飛び降りる二人…

………



…室内…

ちせ「むぅぅ……ん」

黒マント「お目覚めかね、東洋人のお嬢さん?」

ちせ「…」


…ちせは上に来ていた小間使い風の衣服をはだけられ、かぼちゃ袖のついた上下つなぎの下着姿で「手術台」に繋がれている…室内にはかな臭い血の臭いを上回る勢いで、インクや紙の強い臭いが漂ってくる……ちせを見おろして紳士風の話し方をする相手は、シルクハットに口元まで覆った襟の高いマントを着ていて、表情まではよく分からない…


黒マント「ふむ…私も最初は君の事を、ただの下働きや小間使いの東洋人だと思ったが……いろいろ調べさせてもらうとなかなか興味深いことに気が付いた…」

ちせ「…」

黒マント「…まず柳のバスケットはそこまで使い込まれていないし、着ているものも古着らしく擦れてはいるがそこまで汚れていない……それに君も貧相な身体ではあるが、髪もよくとかされていて身体も汚れていない…こんな下町の下女にしてはいい待遇だ…違うかね?」

ちせ「…」(余計なお世話じゃ…にしても、ここは一体どこじゃろう……アンジェたちは無事にここを見つけることができたじゃろうか…?)

黒マント「それに普通なら悲鳴を上げるか失神するか…それなりの反応を見せてくれるはずが、そっと周囲を観察して機をうかがっている……実に肝が据わっているよ」

黒マントB「…あの」

黒マント「まぁ待ちたまえ……それに君の身体のバランスは左右で微妙にずれている…普段は左の腰に何を差しているのか気になるところだ……おっきな大砲かね、それとも東洋人の大好きな刀かな?」

ちせ「…」

黒マント「まぁいい……それもおいおい分かることだ…君」

黒マントB「はっ」

黒マント「準備にとりかかれ」

黒マントB「はい」

黒マント「さて、と…ではそろそろ吸血鬼のタネ明かしと参ろうかな?」シルクハットを脱いでマントの留め紐を解くと、隅にあるコート掛けにきちんとかけた…

ちせ「…」

初老の紳士「私の事をご存じかな?…ここの印刷所を始め、このフリート街にいくつか会社を持っている者だよ」

ちせ「…」ゴーストグレイの髪に笑っているような口もと…が、冷たいブルーグレイの目は冷徹で感情らしいものはかけらもない…感情に左右されない分アクシデントにも機敏に対応できる手ごわいタイプ……と、ちせは見て取った

紳士「さてさて…どうやら君は以前「話を聞いた」連中のお仲間らしいからある程度はご存じだろうが……一応説明しておこう」

ちせ「…」

黒マントB「用意できました」

紳士「結構……今からちょっとばかり首筋がチクリとするよ…注射は嫌いかね?」

ちせ「…」

紳士「まぁ好きなものはいないだろうね……だが安心したまえ、針と言うやつは差すときと抜く時が一番痛いのだが…君はそのうちの片方だけしか感じずに済む」…返り血が点々と残っている革の前掛けに絹の長手袋をすると、針の先端を丁寧にアルコールで拭った…

ちせ「…っ」

………



…数分前・裏口…

ドロシー「私が見張ってる…急げよ?」

アンジェ「開いたわ」キーピックを差しこみ静かにしていたが、数秒もしないうちに裏口を開けた…

ドロシー「よし…それじゃあ行こうぜ」音がしないようにと、ガーターベルトに仕込んだ鞘からスティレット(刺突用の針)を抜いた…

アンジェ「…ええ」アンジェもスティレットを抜き、背の高いドロシーが援護できるよう前に立って歩き出した…



見張り「……まったく、この作戦が始まってからは昼夜逆転でやりきれねぇな」前後反対にした椅子の背に、あごをのせて腰かけている…

見張りB「そう言うな、何しろこちとらはロンドンを騒がす「ウワサの吸血鬼様」なんだからな……」

見張り「そうは言っても女まで「血抜き」にかけるなんて……あの人が近くにいないから言うけど、あんまりいい気分じゃないぜ?」

見張りB「しーっ!……お前は諜報部のくせに思った事をペラペラと…お前のお袋はおしゃべりな庭のアヒルか?それとも口から先にでも生まれたのか?」

見張り「悪かったよ…あ、ちょっと手洗いに行ってくる」

見張りB「…いいけど見つかるなよ……とばっちりで怒られるのは嫌だからな?」

見張り「ああ…まったく、何もあんなに言うことはないだろ……」

ドロシー「だよな…ま、これで静かにできるさ」後ろから羽交い絞めにすると口もとにハンカチを当て、心臓を一突きした…

アンジェ「片付いた?」

ドロシー「…静かになってるよ」

アンジェ「結構…それなら急ぎましょう。さっきの口調だともう尋問が始まっているかもしれない」もう一人を片づけて、相手のネクタイでスティレットを拭うアンジェ…

ドロシー「ああ……尋問は相手を捕まえた直後が一番「落としやすい」からな…」愛用の「ウェブリー&スコット」リボルバーを抜くと足音を立てずに速足で歩き出した……

…廊下…

見張りC「…ぐぅっ……!」

アンジェ「どうやら…ここのようね」

ドロシー「ああ、血の臭いがしやがる……いいか?」

アンジェ「いいわ」…いつもの「ウェブリー・フォスベリー」ピストルを抜いて、かちりと撃鉄を起こすアンジェ……

ドロシー「…それじゃあやってくれ」

アンジェ「ええ」ドアを蹴り開け、室内に転がり込むアンジェ

助手「うわっ!」

紳士「…くっ」一瞬のうちにホルスターに差していたリボルバーを抜き、撃鉄を起こす…

ドロシー「…っ!」バンッ!…狭い室内で爆発のように大きく響く銃声……肩から血が噴きだし、リボルバーがぽろりと床に落ちる

助手「…この!」

アンジェ「…遅い」バン、バンッ!…助手に二発撃ちこんで始末すると、「紳士」の手から落ちたピストルを部屋の隅に蹴り飛ばして、離れた場所から銃を突きつけた…

ドロシー「おい、大丈夫か?」

ちせ「うむ……どうやら「吸血」はされずに済んだ…ずいぶん早かったの?」

ドロシー「当たり前さ、仲間がこんな連中の手にかかってるのに黙ってられますかっての……それと、任務とはいえ悪かったな」手足に付けられたリングを外しつつ謝るドロシー…

ちせ「構わぬ、これも定めじゃからな……」そう言いつつも、西洋ならではの現代的な医学と科学を駆使した尋問にゾッとしているちせ…珍しく顔が青ざめ、かすかに震えている……

ドロシー「無理するなよ…あ、あとこれを」ちせの太刀を差しだすドロシー

アンジェ「こっちも持って行って…私には邪魔だから」ぴたりと銃の狙いを定めたまま、片手で脇差を渡すアンジェ…

ちせ「うむ…これで人心地ついた気分じゃ」

ドロシー「よし…それじゃあこのロクデナシはここに閉じ込めて、残りを片づけようぜ?」

アンジェ「そうね…ありがたいことにこの建物はレンガの壁が厚くて防音になっているようだし……」まずはスティレットで「紳士」の手足の腱を切ると、舌を噛み切って自殺することができないようネクタイで猿ぐつわをし、その上で手術台に大の字に寝かせ、手錠と足輪をかけるアンジェ…

ちせ「うむ、では参ろう…!」ドロシーが服の下に包んできてくれていた着物を身につけると、刀の鯉口を切った…

ドロシー「あぁ、本命は捕えたからな…あとは一人も逃がさないようにすればいいだけだ」

>>123 コメントありがとうございます…遅くなりましたがまた投下していきます

…建物内…

王国エージェント(ベテラン)「くそっ…ジャック、マシュー、トミー、向こうへ!」ワイシャツにぴったりしたグレーのチョッキを着て、肩に「ウェブリー・スコット」リボルバーのホルスターを吊るしている老練なエージェント…銃声が響いた瞬間に仮眠用のベッドから飛び起き、矢継ぎ早に指示を飛ばす…

王国エージェント(若手)「了解!」

中堅「ハリー、モーガン、ナイジェルは尋問室へ急行!」

王国エージェント(中堅)「はっ!」それぞれピストルを持った王国諜報部のエージェントが靴音を響かせて駆け出していく…

ベテラン「マイルスは通信機を立ち上げて本部に警報を入れ、ヘンリー…お前と私は通信が終わるまでここを守る!」

王国エージェント(中堅)「了解」

…廊下…

アンジェ「……来たわね」

ドロシー「ああ、足音からすると……三人だな」4インチ銃身のウェブリー・スコットを抜くと、木箱の陰に身をひそめた…

若手「……マシュー、敵は見えるか?」

若手B「いや…どこにもいないぞ」

若手C「しー…声を出すな……」

ドロシー「あれだけ足音を立てておいて…今さら黙ったって無駄だっての」バンバンッ、バンッ!

若手「がはっ…!」

若手B「ぐぁぁ…っ!」

アンジェ「ふっ…!」バンッ、バンッ!

若手C「ぐあっ!」

ドロシー「よし、片付いたな……まだこいつは息がある」

若手「うっ…うぅぅ……た、頼む…助けてくれ……」

アンジェ「仲間は何人いる?……教えてくれるなら傷を見てあげるわ」

若手「うぐ…っ……この班を入れて十二…人……」

ドロシー「ふぅん…思っていたより多いな」

アンジェ「そうでもないわ…実際に誘拐を行う三人、監視・予備グループが一つでもう三人…控えが三人に、尋問係とその助手…あとは雑用係兼連絡役が一人って所ね」

ドロシー「してみるとこいつの言うことはあながち嘘でもない…か?」

アンジェ「ええ、そうね」

若手「ごほっ……頼む、しゃべったか…ら…」壁にもたれて咳き込んでいる…と、アンジェが額にウェブリー・フォスベリーを向けた…

アンジェ「…スパイは嘘をつく生き物よ」バンッ!

ドロシー「ああ…それに可愛いちせにあんな真似をしてくれたんだ…それ相応の目にあってもらわないとな」手早く残りのエージェントにも「とどめの一発」を撃ちこみ、中折れ式のシリンダーを開いて弾を込め直す…

アンジェ「…ドロシー、任務に私情を挟むと周りが見えなくなるわよ」

ドロシー「あぁ、悪い…どうもちせを見てると小さい頃を思い出すみたいで、穏やかじゃいられないんだよな……」

アンジェ「だったらなおの事よ」

ドロシー「あぁ、そうだな…ちせは「出来る」けど、今はまだ身体がすくんでるはずだ……急ごう」

………

…尋問室からの廊下…

中堅「…」指と手のハンドサインだけで指示を出し、慎重に廊下を進むエージェント…前の二人が廊下の端を歩いてお互いをカバーし、後ろの一人が数歩遅れて援護射撃できるように歩いている……角からはす向かいの場所を撃ちやすいよう、左側を歩くエージェントは右手に、右側を歩くエージェントは左手にピストルを持っている…

中堅B「…」(こっちだ)

中堅「…」(分かった…お前は援護しろ)

中堅C「…」(了解)

中堅B「……あっ!」さっと6インチ銃身の「モーゼル・ピストル」を構えて廊下に飛び出す中堅…

ちせ「…ふんっ!」たたたっ…と駆け込むと、抜き打ちで腰から肩にかけて切り上げる…鮮血がほとばしり、刃の表面を球になって流れる……

中堅B「ぐぅぅ…っ!」

ちせ「…!」そのまま身体を屈めて相手の下を潜り、続く一太刀で援護役を袈裟懸け(けさがけ)に切り倒す…

中堅C「がは…っ!」

中堅「ぐっ…!」バンッ!…素早く身体を回して一発撃ったが、それまでの訓練や任務では見たこともない小柄なちせに照準が狂い、ウェブリーの弾は頭上にそれた…

ちせ「ふん…っ!」真っ向から竹割りで叩き斬るちせ……刀を拭うとまた鞘に納め、走りやすいように収めた太刀を手に持った…

…通信室前…

ベテラン「どうなんだ、マイルス…通信機はまだ温まらないのか?」…通信室は印刷機が並んでいる大部屋の脇にある事務所風の小部屋で、ベテランと中堅のエージェントがドアの陰から様子をうかがっている……大部屋は暗く、印刷機やインクの缶、紙の束や木箱が雑然と並んでいて見通しが悪い…

中堅D「…はい、もう少し……」

ベテラン「…夜じゃ鳥目になるから伝書鳩も飛ばせんしな……ヘンリー、ジャックたちは?」

中堅E「いえ、戻って来ません」

ベテラン「なるほど…共和国の連中、最初からそのつもりであの東洋人娘を送り込んできたな……抜かるなよ」

中堅E「はい」

ちせ「…」

ベテラン「…ヘンリー、援護を頼む!」3インチ銃身のウェブリーを抜き、一発ずつ冷静に撃ちこむ…

ちせ「…っ!」壁沿いに積まれた印刷用インクが入った亜鉛張りの缶に身体を寄せ、再装填のタイミングを待つが、二人が交互に射撃を続けているので好機が得られない…

…反対側の隅…

アンジェ「……ちせが足止めされているわね」

ドロシー「…ああ、なら助けてやろうぜ」…にやりと不敵な笑みを浮かべるドロシー

アンジェ「そうね……出るわ!」バンッ、バンッ!

ベテラン「…っ、左だ!」

中堅E「ぐうっ!」

ベテラン「そこだ…っ!」

アンジェ「…ふ」アンジェが盾にした木箱へ、立て続けに銃弾が撃ちこまれる…と、かすかに微笑したアンジェ

ちせ「…はぁぁっ…っ!」一瞬の隙をついて飛び出し、渾身の一撃を見舞う…

ベテラン「……ごふ…っ!」

中堅D「あっ…!」

ドロシー「…」バン、バンッ!

アンジェ「…どうやら通信は発信されていないようね……」

ドロシー「ああ…ちせ、無事か?」

ちせ「うむ…この男は出来る相手じゃったな」

ドロシー「……私たちほどじゃないけどな」

アンジェ「そうかもしれないわね……あとはこちらの処理班と入れ替わりに撤収すればいいわ」

ドロシー「だな…ま、これで「フリート街の吸血鬼騒動」は一件落着……と」

ちせ「うむ…」

ドロシー「それと…あとで風呂に入れよ、ちせ?インクと返り血でエライことになってるぞ?」

ちせ「…そうじゃろうな」

貴重なプリプリスレ支援
出来れば劇場版までずっと続けて

>>127 ありがとうございます。プリプリの百合ssは少ないので、せっかくなら書いてみようと……引き続き頑張ります(劇場版まで…?)

…「プリンセス・プリンシパル」は十九世紀末のスチームパンク×スパイ物と言うことで、霧深いロンドンのダークな雰囲気と、独自のガジェットや世界観が秀逸ですよね……時々「参考資料」として怪奇小説の「モルグ街の殺人事件」や「盗まれた手紙」、国際謀略物の小説などで雰囲気を作っています(笑)…


…あとは他にも「アトリエシリーズ」や「P3P」などで百合ssを書きたいところですが…遅筆なのでパンクするのが関の山とまだ自重しています…

………

…しばらくして・寮の部室…

ドロシー「…お疲れ、アンジェ」

…ソファーに腰かけて膝にボロ布を広げ、ウェブリー・スコットのシリンダーを外して試験管洗いのようなブラシを突っこんでいるドロシー…いくら新式の無煙火薬を使うモデルとはいえ、シリンダーや銃身には燃焼かすや汚れが溜まっている……シリンダーを壁のランプに向けて透かして見ると、また改めてブラシを突っこみ、掃除を続ける…

アンジェ「あの程度何でもないわ…ドロシーこそ疲れたでしょう」

ドロシー「なぁに、私は平気さ……それよりちせだ」

アンジェ「ええ…さっきは抜き身を持ったまま警戒しているふりをして、私たちには気づかれないようにしていたけれど……あの最後の一人を片づけた後、手がこわばっていたものね…」

ドロシー「ああ…ちせほどの使い手が「初めての時」みたいに、手がこわばって指が開かないなんてな……あの尋問官の奴、可愛い「ちせたん」をどんな目に合わせやがったんだか……コントロールの尋問官にかかって、同じ目に合えばいいんだ」

アンジェ「ドロシー、いい歳して「ちせたん」はやめなさい…かなり痛いわよ?」

ドロシー「うっさい!……とにかくちせはかなり参ってるぞ…」

アンジェ「分かってるわ……それで彼女は?」

ドロシー「ベアトリスがボイラーを動かしてお湯を沸かしてるから、「先に入れ」って言っておいた…あんな目にあったし、そう言う時は身体が冷え切ったような気がするからな……終わったら私もシャワーを浴びようかと思ってるよ」

アンジェ「それがいいわね…それじゃあ様子を見て来るわ」

ドロシー「ああ、それがいい……それに私は火器のメンテをしなきゃならないしな…良ければやっておいてやるけど?」

アンジェ「…そう言うのは自分でやらないと落ち着かないのは、貴女が一番よく知っているでしょう?」

ドロシー「ああ…正直言うと、誰かに触られるのも嫌だ。どんな細工をされるか分かったものじゃないしな」

アンジェ「つまりそういう事よ……でも、気持ちは受け取っておくわ」

ドロシー「いいんだ…私もアンジェに「感謝してる」って気持ちだけ伝えたかったから」

アンジェ「ええ、伝わったわ」

ドロシー「そっか…じゃあ私なんかに構ってないで、ちせの所に行ってやれよ♪」

アンジェ「ええ…お休み」

ドロシー「ああ」

…浴室…

ちせ「……く、何と無様なことよ…「明鏡止水」の精神で臨むべき時に恐怖で手がこわばってしまうなど、剣士として未熟もいい所じゃ…」熱いシャワーの下に立っていながらも背筋には冷たい感覚が残り、まだ手足を拘束され欧州の「洗練された」尋問を受けそうになったおぞましさと恐怖を感じている……じっと手を見ると、まだかすかに震えていて止まらない……

ちせ「…こんな時、父上ならどうしていたのじゃろう……あるいは「白鳩」の皆は…」

ベアトリス「……どうですかぁ、ちゃんとお湯になってますかー?」

ちせ「うむ、快適じゃ……ベアトリスとて暗殺者や尾行の恐怖に耐えて頑張っていると言うのに…私は何とだらしない……」

ベアトリス「それじゃあお休みなさい」

ちせ「うむ…」タオルで髪を拭き、ベアトリスから着替えを受け取ると、口数も少なく部屋に戻る…

…ちせの部屋…

ちせ「…むむ…平常心、平常心じゃ……」ベッドの上で座禅を組み、ぶつぶつと念仏を唱えてみたり剣術の形をおさらいしてみるちせ…が、何度やっても冷たい手術台に乗っていた時間を脳内で再生してしまう……

ちせ「…くっ、一体どうしたと言うのじゃ……座禅を組んでさえ、いつもの澄み切ったような感覚が戻って来ぬとは……誰じゃ?」

アンジェ「私よ、ちせ」

ちせ「アンジェどのか……済まぬが今はちと…」

アンジェ「邪魔して欲しくない?」

ちせ「…うむ」

アンジェ「申し訳ないけれど、私もそのことで来たの」

ちせ「ふぅ……察しの良いアンジェとドロシーじゃから、薄々気付いてはおるじゃろうと思っておった…入ってくれ」

アンジェ「失礼するわね」

ちせ「…アンジェどの、今日はあのような有様で情けない限りじゃ……どうかだらしのない私を笑ってくれぬか…」

アンジェ「ちせ」

ちせ「…なんじゃ」

アンジェ「私やドロシーがあなたを笑う訳がないでしょう」…ぎゅっ

ちせ「!?」

アンジェ「仮にもし「恐怖を感じない」なんて言うエージェントがいたら、それは異常者か、さもなければよほどの強がりかのどっちかよ……私だって銃の狙いが定まらないほど震えたこともある…」ベッドに腰掛けて、横に座っているちせを優しく抱きしめるアンジェ…

ちせ「そ、そのような同情は要らぬ……アンジェは私がおびえているのを知って、使い物にならなくなると困るから…そういう慰めを言うのじゃろう?」

アンジェ「いいえ…今の私はお互いに玄人(プロ)の工作員同士として話をしているわ」

ちせ「…まことか」

アンジェ「ええ…黒蜥蜴星人でも怖いものは怖いわ」

ちせ「そ、そうか…じゃが、私はあの時……まるで青二才の剣士のように手がこわばって…う、うぅ……」

アンジェ「ちせ、あなたは十分頑張った…私だって、あの状況におかれたら恐怖で身体がすくんだかも知れない」

ちせ「……ぐすっ…かたじけない…」

アンジェ「構わないわ…ここは安全な場所よ。聞き役が私でよければ、吐きだせる限りの気持ちを吐き出してごらんなさい」

ちせ「…うむ……実を言うと…あの台に拘束されて尋問を受けそうになって、もし二度とアンジェたちと出会えないようなことになったら……そう思ったらむしょうに寂しく思ったのじゃ…」

アンジェ「…ちせ」

ちせ「おかしいじゃろう?…仮にも間諜として訓練をうけた私が、情報を吐くことよりも、再び生きて朋友に会えるかどうかを不安に思うなど……」

アンジェ「…んっ///」

ちせ「んっ、んんっ…!?」

アンジェ「おかしくないわ……むしろスパイだからこそ「仲間」をもっとも大事にするものなのよ……あむっ、ちゅっ……んちゅ…っ…」薄く冷たいアンジェの唇が、まだわなわなと震えこわばっているちせの唇にそっと重なる…

ちせ「ん…ふ……んむぅ…///」

アンジェ「…ちせ」ちせをベッドの上に押し倒すと、両腕をまとめて頭の上に持って行って片手で押さえ、着ていた浴衣をはだけさせる……

ちせ「アンジェ…その、本気なの……か…?」

アンジェ「…私に言わせる気?」

ちせ「い、いや…じゃが……その…」

アンジェ「んむっ、ちゅっ…ちゅぽっ、ちゅるっ……んちゅぅ…っ///」

ちせ「んんっ、んふぅ……んむぅ…///」

アンジェ「はぁ、はぁ、はぁ……んちゅぅぅっ…んちゅるっ、ちゅぽっ…ちゅくっ……ぴちゃ…」

ちせ「…んむっ、ちゅぅ…ちゅっ……んはぁぁ…んちゅぅぅ……はふっ、んはぁ…///」

アンジェ「んっ…んくっ…んぅぅっ……ちゅっ、れろっ…ちゅぱ……んちゅっ///」

ちせ「ふぁぁぁ、口づけとは……こんなに凄いものなのか…甘くて……腰が抜けそうじゃ……んむぅ、ちゅぅぅぅ…♪」

アンジェ「んちゅっ、ちゅるっ……れろっ、ぴちゃ…じゅるっ…ちせ、何も言わなくていい……今はただ私とキスして……怖かったことなど全て忘れて…」

ちせ「う、うむ…んふぅ、んふっ……はむっ、ちゅるっ…あふっ……///」

アンジェ「ん…ふっ……触るわね、ちせ」

ちせ「触る…って、一体どこを……んくぅぅ///」

アンジェ「…引き締まっていて、ちょうど手のひらに収まる大きさね……それに甘い匂いがするわ…」

ちせ「さ、さっき石けんで洗ったからじゃろう……ん、んぅぅっ///」

アンジェ「ん、ちゅぱ…ちゅぅぅ……ここはきれいな桜色ね…」

ちせ「い、いちいち言わずともよい…あっ、あっ、あぁっ///」

アンジェ「……それじゃあ黙ってするわ…んっ///」ちせにまたがりふとももの間を重ね合わせ、相変わらずのポーカーフェイスを少しだけ紅潮させてゆっくりと前後させる…

ちせ「はぁっ、んっ、あっ……んあぁぁっ…///」

アンジェ「んっ、ふ……んくぅ…///」にちゅっ、くちゅ…と湿っぽい水音が、灯りを弱めているちせの部屋に響いた……

…数十分後…

ちせ「…あっ、あっ…んあぁぁ…っ!」

アンジェ「はぁ、はぁ…んっ、んんっ……!」

ちせ「……はぁ…はひぃ……ふぅ…」

アンジェ「ふぅ…それじゃあ今度は「ここ」を責めさせてもらうわね……ん、じゅるっ……///」足下に這いずっていくと、ちせの脚の間に顔をうずめるアンジェ……

ちせ「一体どこを…?…んっ、あぁぁっ!?」

アンジェ「ぴちゃ…じゅる、じゅるぅっ……静かにしないと寮監に気づかれるわよ?」

ちせ「…んっ、くぅぅっ……アンジェ、おぬし一体何を考えておるのじゃ…!?」

アンジェ「さぁ」

ちせ「ん、んぅぅ…こ、こんなみだらな真似をしておきながら「さぁ」で済むわけが……んぁぁ、んっ、んっ……んっ、くぅぅっ///」

アンジェ「それじゃあ指の方がいいかしら…大丈夫、技術にかけてはドロシーのお墨付きよ」

ちせ「お、おぬしらは一体どんな関係なのじゃ……んふぅぅっ///」シーツの端っこを噛みしめ、必死になって声を抑えるちせ…小さい身体がひくついて海老反りになるたびに、上にまたがったアンジェを持ち上げる……

アンジェ「私がまたがっているのに…見事な筋力ね」

ちせ「か、感心してないではよう止め……んぁぁぁっ///」

アンジェ「さてと…それじゃあ今度は向きを変えて……タロットカードなら逆位置ね」ちせと互い違いになるように寝そべったアンジェ…

ちせ「…な、なんのつもりじゃ///」

アンジェ「聞かなくたって想像はつくでしょう?」

ちせ「う、うむ…確かに今までのアレコレを考えればおおよそ想像はつく……が、実際にするとなると…その……///」

アンジェ「じゃあいいわ。ちせがしてくれるまで私はどかないから」

ちせ「正気か!?」

アンジェ「ええ。別に私だってあなたに「ご奉仕」してあげるために来たわけじゃないわ…スパイの世界で自分に利益のない取引はあり得ない」

ちせ「む、むぅぅ…いきなり押しかけて来て、勝手に始めておきながらこの言いぐさよ……なんという手前勝手な言い分じゃ…んんぅ、んっ…///」

アンジェ「文句があるなら私を満足させなさい…そうしたらさっさと帰ってあげるから」

ちせ「……致し方ない、では……参る!」

アンジェ「それでこそよ……んっ、ん…ぴちゃ、ちゅるっ…」

ちせ「んぅ…ここを舌でまさぐってやればよいのか……間諜の技術はいろいろ教わってはきたが、房中術は入っていなかったからの……ん…っ///」くちゅくちゅっ…ちゅるっ……

アンジェ「それにしては上手よ…んぅぅ、んふ……っ」

ちせ「そうか。ならば…一気にたたみかけてくれよう!」

アンジェ「んっ、んんっ……あっ、あっ、あっ…!」

ちせ「…おぉぉ、この…真珠色をしたアンジェの秘所が……ぬらぬらと濡れて…んむっ、じゅるぅ……んちゅぅぅ///」

アンジェ「んぁぁぁ…あふっ、あんっ……んっ、くぅぅぅっ♪」びくっ、びくんっ…とろ……っ♪

ちせ「……なんじゃ、存外あっけないの…アンジェは「その道」でも達人だと聞いておったが、拍子抜けじゃな…?」

アンジェ「はぁ、ふぅ…あんっ……ちせ…私もう……」

ちせ「……ふぅ、ならばもう出て行ってくれぬか…今夜は芯が疲れる晩であったし、明日も早いのじゃから……」

アンジェ「…「腰が抜けちゃって立てないの」……とでも言うと思ったのかしら」

ちせ「…何?」

アンジェ「ふぅ…今から私が、本気で身体の芯までとろけさせてあげるわ……それこそ声も出ないほどにね」

ちせ「な、何じゃ……この恐ろしい殺気は…」

アンジェ「……ちせは楽にしているといいわ…終わったら勝手に出て行くから」

ちせ「…い、嫌じゃ…近寄るでない!」

アンジェ「逆らっても無駄よ」くちゅり…じゅぷっ……♪

ちせ「あっあっあっ……んっ、あぁぁっ…♪」

………

………



ちせ「はひぃ…腰が……何と甘美な…んくぅ…///」くちゅ…くちゅっ♪

アンジェ「ふふ…育成所時代の初心だったころのドロシーもそんな具合だったわ」

ちせ「何…あのドロシーがか?」

アンジェ「ええ…甘ったれた顔をして、腰をがくがくさせながらね……耳たぶを甘噛みしながらささやいてあげたら、蜜を垂らして悦んでいたわ…」

…浴室…

ドロシー「…へっくし!」

ベアトリス「大丈夫ですか?…ボイラーの火力を調節しましょうか?」

ドロシー「いや、平気だ……うー、今夜は冷たい屋根の上で腹ばいになってたりしたからなぁ……それとも、誰か噂でもしてやがるのかぁ…?」

ベアトリス「ふふっ、いつも授業をさぼったりしてるからじゃないですか?」

ドロシー「なんだとぉ、このちびっこが♪」

ベアトリス「うわっ…もう、お湯を跳ね散らかさないで下さいよ!……それに静かにしておかないと、寮監に見つかっちゃいますよ?」

ドロシー「はは…寮監に捕まるほどドジじゃないっての♪」

ベアトリス「それはまぁ、そうですけど……私も寝たいですし、そろそろ上がってくれませんか?」

ドロシー「お、悪ぃな…それじゃ上がるから、ボイラーの火を落としてくれ」

ベアトリス「はい。それじゃあお休みなさい」

ドロシー「ああ、お休み……それにしても、アンジェは上手い事ちせを慰められてるかな…って、アンジェの事だから心配はいらないか。軽くブランデーでも引っかけて、とっとと寝よう…っと♪」

………

…ちせの部屋…

ちせ「ふぁぁぁ…あふっ、んぁぁ///」

アンジェ「これがいいみたいね……きゅうっと締め付けて来るわ…」

ちせ「い、いちいち言わずともよい…恥ずかしいじゃろうが…ぁ///」

アンジェ「…こんなので恥ずかしがっているようでは、ドロシーみたいな役回りはおぼつかないわね…もっとも、逆に初心な所がそそるかも知れないけれど……」くちゅっ…♪

ちせ「あっ、ふわぁぁ…///」

アンジェ「すっかりとろとろね…もうそろそろおしまいにしようかしら」

ちせ「……と…」

アンジェ「何か言いたいなら、はっきり言ってちょうだい」

ちせ「…もっと……して欲しいのじゃ…///」

アンジェ「そう…ならもうちょっといてあげるわ……私も人恋しい気分だから…」

ちせ「んむぅ…ちゅぅぅ……♪」

アンジェ「んちゅ…ちゅっ♪」


………

…翌日…

ちせ「うー…昨夜は気の迷いとはいえ……なんということを…///」

ベアトリス「…さっきからちせさんは何をぶつぶつ言っているんでしょうね?」

ドロシー「ま、色々あったんだろ…聞かなかったふりをしてやれよ?」

ベアトリス「私は別に……でも、気になりませんか?」

ドロシー「お、ベアトリスも周りの物事に注意を払うようになってるな……スパイらしい感性が身についてきたじゃないか♪」

ベアトリス「えー、こんなことがですかぁ?」

ドロシー「バカ言え。その「こんな事」って言うような事が、この世界じゃ意外と役立つんだよ」

ベアトリス「そんなものですか?」

ドロシー「ああ。私だって「犬のしつけ方」から「ゆで卵の見分け方」まで何でも頭に入ってるぜ?」

ベアトリス「それがどんな役に立つのかはさておき…ちせさん、ずいぶん顔を紅潮させていますね」

ドロシー「ありゃきっと何か恥ずかしい事を思い出して真っ赤になってるクチだな……それにしてもあのちせがねぇ…やっぱりアンジェはけた違いだな」

アンジェ「ドロシー、私がどうかしたの?……おはよう、みんな」

ドロシー「何でもないさ。おはようさん」

プリンセス「おはよう、アンジェ♪」

ベアトリス「おはようございます、アンジェさん」

ちせ「お、お早う……うぅぅ…///」

アンジェ「みんな、昨夜はご苦労さま……コントロールからもメッセージが届いているわ」アルビオン王国の主要紙「アルビオン・タイムズ」の、小さな広告欄を指差した…

ドロシー「どれどれ…えーと「売家あります…面積一エーカー、造作、庭付き、状態良好。雨漏りなし」か」

アンジェ「ええ…『売家』が対象人物、『造作・庭付き』は対象が役に立つかどうか…『状態良好』は読んで字のごとしね……それに『雨漏りなし』とあるから、こちらへ王国情報部の手は及んでいない……結構な成果ね」

ドロシー「やったな…ま、今回はあちらさんもアラが目立ってたしな」

アンジェ「王国諜報部と、王国防諜部……ノルマンディ公に近い立場の防諜部に対して、王国諜報部が手柄を立てようと焦ったのね」

ドロシー「その辺の縄張り争いみたいなのはどこの国も変わらないさ……それより見てみろよ♪」新聞をテーブルの上に広げてうさんくさいゴシップ記事を突っついた…

ベアトリス「…えー「またも吸血鬼騒動か、フリート街で中堅新聞社のオーナー行方不明」ですって」

アンジェ「こっちのエージェントに「血抜き」をやっていたのはそいつよ…王国情報部から資金とニュースのネタを流してもらっているのだから、上手くいくに決まっているわよね」

プリンセス「ええ…それにしても王国情報部は、いつの間にこんなことにまで手を出すようになったのかしら」

アンジェ「おそらくノルマンディ公の動きの活発さに刺激を受けて、王国情報部も先鋭化しているのでしょうね」

ドロシー「結構なことで…ところでアンジェ、道具のメンテがらみで聞きたいことがあるんだけど…この後、少しいいか?」

アンジェ「ええ……どうしたの?」

ドロシー「…うまくいったか?」

アンジェ「ええ…私が色々としてあげたから、最後はすっかりとろとろの甘々で愉快な気分になっていたわ」

ドロシー「そっか……チームの状態を保つためとはいえ、悪かったな」

アンジェ「気にしないで、ドロシー…おかげで私も舌が軽くなって、色々ドロシーの弱点をしゃべらせてもらったから」

ドロシー「…おい、こら」

アンジェ「冗談よ」

ドロシー「はー…アンジェ、お前はポーカーフェイスが上手いから何でも本気に聞こえるんだよ……心臓に悪いから止めてくれ」

アンジェ「ええ、以後つつしむわ……ふー…♪」無表情のままドロシーに顔を近づけると、耳元に息を吹きかけた…

ドロシー「うひぃ!?…おい、ふざけんな…耳は苦手だって知ってるだろ///」

アンジェ「ええ……一応、再確認させてもらったわ」

ドロシー「…覚えてろよ。いつかぎゃふんと言わせてやるから」

アンジェ「いつでもどうぞ…勝てるならね」

ドロシー「やれやれだな…」肩をすくめて首を振った…

…caseアンジェ×プリンセス「The princess and I」(姫様と私)…

…とある日・部室…

ドロシー「……うーん、新しい銃の申請はどうしようかなぁ……隠しやすいからってつい2インチとか3インチ銃身のばっかり申請しちゃうんだよなぁ…」ペンを唇の上に乗せ、天井を向いて思案している…

プリンセス「あの…ドロシーさん、少しお時間をよろしいかしら?」

ドロシー「何だい、プリンセス?」

プリンセス「ええ……ここでは少し話しづらいので、よろしければわたくしの部屋まで来ていただけませんか?」

ドロシー「ああ、いいよ…どうせ暇を持て余しているし、構いませんよ……っと♪」ひっくり返っていたソファーから跳ね起きると、プリンセスに続いて部屋を出た…

…プリンセスの部屋…

プリンセス「どうぞ、おかけになって?」

ドロシー「ああ、どうも……それで、話って言うのは?」

プリンセス「ええ…それがわたくしのプライベートにも関わることで、なかなか話せる相手もいなくて…それでドロシーさんに相談しようと……」

ドロシー「ほう…しかし信頼して打ち明けてくれる気持ちは嬉しいけどさ、そういう事だったらぞんざいな私なんかよりも、ベアトリスとかアンジェの方がいいんじゃないかな……特にアンジェはプリンセスの事がよく分かってるみたいだしさ」

プリンセス「実は、それが出来ないのでドロシーさんにお願いするんです……紅茶をどうぞ?」

ドロシー「…なんか悪いな、プリンセスに紅茶を淹れさせるなんて……」(アンジェやベアトリスにも打ち明けられない事でプライベートにかかわる…となると「チェンジリング作戦」絡みか王室関係の問題か……いずれにせよ重大なトラブルと見ていいな…)

プリンセス「いえ、わたくしもこうしたこまごましたことで手を動かすのは好きですから…♪」

ドロシー「それならいいんだけど……お、道理でいい香りがすると思った…フォートナム&メイソンのダージリン、ファースト・フラッシュ(一番茶)だ♪」

プリンセス「ええ、わたくしが自分に許しているちょっとしたぜいたくです…♪」

ドロシー「ははーん、それで分かった…実はお忍びで紅茶を買いに行きたいのに車がないと……よろしいですとも、私の運転でよければ乗せて行ってあげますよ♪」

プリンセス「いえ…そうではなくて…」ティーカップの水面に視線を落とし、浮かぬ声のプリンセス…

ドロシー「ふぅん…どうやら茶化していいような問題じゃないらしい……」いつもの皮肉っぽい不敵な笑みを消すと、椅子の上で姿勢を正した…

プリンセス「ええ…実は……」

ドロシー「…実は?」

プリンセス「……アンジェが本当に私の事を好きなのか、分からなくなってきてしまって」

ドロシー「…は?」

プリンセス「いえ、ですから…///」

ドロシー「いや、私の両耳はちゃんと聞こえているよ…だけどどうやら、脳みその方がまだ理解できてないらしくてね……」

プリンセス「そうですか…それで、ドロシーさんはどう思いますか」

ドロシー「アンジェがプリンセスの事を嫌いなんじゃないか…って?」

プリンセス「ええ」

ドロシー「そんなの天地がひっくら返ったってあり得ないね…もし間違ってたらこのティーカップをばりばり食ったっていい」

プリンセス「でも…」

ドロシー「そもそもアンジェはいつもあんなだし、ことさらに冷徹に感じるならそれもアンジェの愛情表現さ…「自分の愛する女性(ひと)を自分の気のゆるみで失くしたくない」ってね……それと業界が業界だけに「好き好き大好き♪」って触れ回ってて、それを敵方に使われたら困ると思ってるのさ…きっとアンジェの事だから、もし目の前でプリンセスが銃を突きつけられていたとしても、まばたき一つしないで助け出すための策略を練ると思うね」

プリンセス「そうでしょうか…でもあんまりたびたび「嫌い」って言われていると、何だか切ない気持ちになってきてしまって…」

ドロシー「あのポーカーフェイスだからなかなか分からないだろうけど…アンジェのやつ、プリンセスの前じゃかなり甘ったれてるぜ?」

プリンセス「…そうですか?」

ドロシー「ああ。アンジェが私たちに向ける表情と比べたら「桃とイチゴが一緒になって笑ってる」…ってな具合さ」(おいおい…まさかの惚気かよ……)

プリンセス「…お互いに背中を預け合ったドロシーさんの言うことですから本当でしょうけれど…でも、やっぱり寂しいです……」

ドロシー「あー…それならアンジェがベタベタの甘々になる「とっておき」の方法があるから、伝授しておくよ♪」

プリンセス「ええ、お願いします」

ドロシー「はいよ…ただし、私から聞いたってことは秘密にな…♪」

………

…翌日…

アンジェ「……前回の作戦で得られたプロダクト(産物)の中から、コントロールが私たちに必要なものをまとめて寄こしたから読み込んでおくこと…それぞれ別の資料だから、読み終わったらお互いに回すようにして」

ベアトリス「はい」

ちせ「うむ…しかし事前に学習したとはいえ、英語を読むのはおっくうじゃな……なになに…『えむばしい』……?」

ドロシー「そりゃ「エンバシー」(大使館)じゃないのか?」

ちせ「おぉ、それじゃ…どうも横文字は読み方と綴りが一致しなくていかん」

ドロシー「ま、私らが「漢字」とやらを覚えるよりは簡単だろうけどな…プリンセス、そっちの資料は読み終わったかい?」

プリンセス「ええ、どうぞ……それじゃあ「アンジェさん」、わたくしにその資料を貸していただける?」

アンジェ「…ええ」

プリンセス「ありがとう、「アンジェさん」」

アンジェ「…」

ドロシー「それで…と、今度の目的は「ケイバーライト鉱石」の取引情報か……」

アンジェ「それが分かれば王国が建造する空中戦艦の隻数が予測できる…軍艦の建造には少なくとも数年かかるから、一度遅れを取ったらその間の劣勢はなかなか取り戻せないわ」

ドロシー「それだけじゃない…ケイバーライトの価格がどう上下するかで、『ザ・シティ』(ロンドンにおける商取引の中心地)、ひいてはアルビオン中の株式市場が動くからな……」

アンジェ「ええ…今やケイバーライト鉱石は石炭や鉄鉱石、それどころか金よりも価値があるわ」

ドロシー「だな……なぁベアトリス、読み終わったか?」

ベアトリス「待ってくださいよぉ…それよりドロシーさんってば、そんなに風にパラパラめくっただけで……ちゃんと覚えられてるんですかぁ?」

ドロシー「当然だろ?…信用してないなら私が回した方の資料から、何でも適当に質問してみな」

ベアトリス「えーと……それじゃあ今月の「王国先物取引」における、鶏肉の取引相場は…?」

ドロシー「ヨークシャー産の赤色プリマスロック種なら、モモ肉一ポンドで3ペンス…胸肉で2ペンス」

ベアトリス「むぅ……それじゃあジャマイカ島産胡椒が…」

ドロシー「よせよ…黒胡椒なら一オンス当たり2ポンドと半シリングさ♪」

ベアトリス「むむむぅ…」

ドロシー「あのなぁ、一体何年こんな事やってると思ってるんだ…いい加減「見たものを記憶する癖」ぐらい身についてるっての♪」

アンジェ「…それじゃあ先週末に通りがかった劇場でやっていた舞台は?」

ドロシー「あー…そりゃシェークスピアの「マクベス」だな……だろ?」

アンジェ「…その「マクベス」のポスター、地の色は何色だった?」

ドロシー「なに?…えーと、ちょいまち……確か緑だったな」

アンジェ「結構…歳の割に記憶は良いみたいね」

ドロシー「だーかーら、まだ二十歳のぴちぴちだって言ってるだろ!?」

アンジェ「怒りやすいのは老人になっている証拠よ」

ドロシー「……こんにゃろー…」

ベアトリス「ふふ、相変わらず仲がいいですね♪」

ちせ「そうじゃな…お互いに知り尽くしているからこそできる冗談じゃな」

プリンセス「ふふふ…っ♪」

ドロシー「まるで嬉しくないけどな……ははっ♪」

ドロシー「……それじゃあアンジェ、また後でな」

ちせ「続きはお茶の時間と言ったところか……しからばご免」

ベアトリス「それでは私はプリンセスのお召し物を用意してきますので…アンジェさん、また後で」

アンジェ「ええ……ところでプリンセス、ちょっといい?」

プリンセス「何かしら…「アンジェさん」?」

アンジェ「いえ……プリンセス、いつも通りにやってもらわないと周囲からの目線を集めることになるわ」

プリンセス「…「アンジェさん」わたくし、いつもと違いました?」

アンジェ「それは……いえ、何でもないわ…」

プリンセス「なら大丈夫ですね、「アンジェさん」?」(…王室の外交儀礼のように丁寧でよそよそしく……)

アンジェ「ええ…」

………

…ドロシーの部屋…

ドロシー「…で、第一段階はどうだった?」

プリンセス「ええ…やっぱり戸惑っているみたい…」

ドロシー「だろうな。まずはプリンセスに嫌われんじゃないかと思わせて、アンジェに精神的動揺を与える…相手を不安がらせ、疑心暗鬼の状態に陥らせるのはスパイの常道だからな」

プリンセス「でも、アンジェだってそうした「スパイのいろは」は知っているはずですよね?」

ドロシー「それが動揺しているんだから、アンジェの愛はホンモノってことさ。まさかプリンセスがそんなことをするとは思っていない…あるいは頭で分かっていても、感情が追いつかない……ってところかな?」

プリンセス「そうですか…でもどれくらい続ければいいのかしら……アンジェの不安げな顔を見ると、正直わたくしも辛いわ」

ドロシー「あんまり長くは続けないさ…アンジェにおかしくなられちゃ困るしな」

プリンセス「そう…よかった♪」

ドロシー「でもその間だけは完全に冷え切った態度じゃないと…何しろアンジェは表情から相手の気持ちを汲み取るのが上手いし」

プリンセス「そうね……ふっと思っていることを言い当てられたりするのよね」

ドロシー「ああ…プリンセスみたいに外国の腹黒い連中と外交で渡り合うのと、私やアンジェみたいに飲んだくれた親父とか、貧民街の親分に殴られたりしないようにしていたのと……案外似ている所があるのかもな…」

プリンセス「かもしれませんね……それで、次は「第二段階」ですね?」

ドロシー「ああ…この状態を数日続けて、ようやくその雰囲気に慣れてきたところで別な動揺を加える……ハニートラップに引っかかった相手へブラックメイル(脅迫状)を数日ごとに送りつけて、「いつバレるか」とか「証拠をばら撒かれるんじゃないか」…ってビクビクさせるようなもんかな」

プリンセス「…まぁ」

ドロシー「ふぅ…いくら相手が誘惑に弱かったとはいえ、この世界はそう言う後ろ暗い部分も多くてね……だから私たちみたいなスパイの事を「スプーク」(幽霊)って言うんじゃないかな?」

プリンセス「人を怯えさせるから?」

ドロシー「ああ…それに「足跡も残さない」しな♪」

プリンセス「なるほど……それでは「第二段階」の開始は…」

ドロシー「見極めが難しいが…早くて数日後かな」

プリンセス「分かりました……ですけれど、わたくしも早く元のようにアンジェと仲よくしたいです…」

ドロシー「まぁまぁ…オレンジを食べるのに皮ごと食べる奴はいないってわけでね……まずはしっかり下準備をしなくちゃ」

…数日後・寮の廊下…

アンジェ「…」(ここ数日プリンセスが妙によそよそしいわ…どうして私を避けるの、プリンセス…?)

アンジェ「…ふぅ」(…いいえ、プリンセスと私の関係はたとえ「白鳩」の中でも知られるわけにはいかないのだから、これでいいのよ……あくまでクールに、距離を保って…利用できる時は利用する…それでいいはずでしょう……?)

アンジェ「……?」(……部室から声…プリンセスとベアトリス……?)

アンジェ「…」一旦はドアノブを回して入ろうとした…が、思い直してしゃがみこむと、鍵穴から中の様子をのぞいた……

…部室…

ベアトリス「…さぁ姫様、紅茶をどうぞ?」

プリンセス「ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「わわっ!?…もう、私だって子供じゃないんですから、頭を撫でられたら恥ずかしいですよぉ///」

プリンセス「ふふふっ、いいじゃない……それにベアトったら、この間資料を読み込んでいた時に私の事を「姫様」じゃなくて「プリンセス」…って♪」

ベアトリス「あぁもう、その話を蒸し返すのは止めて下さい…だってドロシーさんとかみんな姫様の事を「プリンセス」って呼ぶから、つい……///」

プリンセス「これだけ私のお付きをしているのにつられちゃうベアト……可愛い♪」

ベアトリス「ひぁぁぁっ…///」

プリンセス「うふふ、私のベアト…ちょっとからかうとすぐ真っ赤になっちゃって……いじらしくて、本当に可愛い♪」角砂糖をつまみあげると口に入れてアメ玉のようにしゃぶり、それからベアトリスに唇を重ねた…

ベアトリス「ひゃぁぁ…っ……んんぅ///」

プリンセス「ん、ちゅぷっ……ふふ、甘いでしょう?」

ベアトリス「姫様…ぁ……///」

プリンセス「あら、そんなにとろけた顔をされたら私だって我慢できないわ…ん、ちゅぅ♪」

ベアトリス「んちゅ…んむっ、ちゅぅぅ……///」



アンジェ「…ふぅー…すぅー…」(…落ち着くのよ、アンジェ……プリンセスとベアトリスは敵だらけの王宮でお互いに支え合う仲…秘密を打ち明けたり、寂しさを慰め合っている間にこんな関係になっていたとしても、何もおかしくないわ……)

アンジェ「……ふー…失礼するわ」(…どうやら終わったようね)

ベアトリス「!」

プリンセス「…あら、「アンジェさん」…どうかなさったの///」ソファーの上で身体を寄せ合っていたが、慌てて離れる二人……一瞬口の端からつーっと銀色の糸が伸びた……

アンジェ「いいえ」

ベアトリス「…あっ、あの///」

アンジェ「何?」

ベアトリス「よ…よろしかったらお紅茶でもいかがですか?」

アンジェ「そうね、頂くわ……それとベアトリス」

ベアトリス「な、何でしょうか…///」

アンジェ「前回の資料、まだ暗記出来ていないでしょう……プリンセスのお世話も大事でしょうけれど、優先順位を間違えないで」

ベアトリス「は、はいっ!」

アンジェ「分かったなら行動に取りかかりなさい」

ベアトリス「え、えーと…あわわっ」ティーカップを持ったままあたふたするベアトリス…

アンジェ「紅茶は自分で注ぐからいいわ……慌てないで順番に行動しなさい」

ベアトリス「すみません…っ!」

アンジェ「謝罪なんて必要ない…その分の時間を有効活用しなさい」

ベアトリス「ごめんなさ……いえ、分かりました」

アンジェ「結構」気を静めようとウェブリー・フォスベリーの手入れをし始めるアンジェ…が、時折プリンセスがベアトリスに向けて微笑んだり、それとなく親しみを込めた仕草をするたびに気に障った……

アンジェ「もういいわ。紅茶をごちそうさま…ベアトリス、資料は明日までによく読み込んでおくこと」

ベアトリス「分かりました、アンジェさん」

プリンセス「それでは「アンジェさん」…また後でお会いしましょう」

アンジェ「…ええ」

…さらに数日後…

ドロシー「…どうしたよ、アンジェ」

アンジェ「何が?」

ドロシー「何が…って、らしくないぜ?」

アンジェ「そう…それを説明してくれる気がおありなら、どう「らしくない」のか教えていただけるかしら」

ドロシー「……その態度さ」

アンジェ「別に…いつも通りよ」

ドロシー「やれやれ、そうは見えないぜ?」

アンジェ「なら貴女の目がおかしいのよ…目薬でも差したら」

ドロシー「…それだよ。いつも冷静なお前が工場の煙突みたいにイヤミと皮肉をまき散らして…一体どうしたんだ?」

アンジェ「黒蜥蜴星人だからそう言う時もあるわ」

ドロシー「嘘だね…蜥蜴なら冷血だからそんな感情はないはずだろ」

アンジェ「……しつこいわね。スパイじゃなくて防諜部に転任させてもらったら?」

ドロシー「おあいにく様、私みたいなテキトーな人間は向こうから願い下げだとさ……良かったら話してみろよ」

アンジェ「結構よ…貴女も私に油を売っている暇があるなら、自分の方の仕事をしたらどう」

ドロシー「そうかよ…ま、もし相談事があるなら声をかけろよ?」

アンジェ「はいはい、そうさせていただくわ」(…出来る訳ないでしょう…「私とプリンセスの関係がぎくしゃくしている」なんて……)

ドロシー「……そろそろ頃合いだな」

………

…プリンセスの部屋…

ベアトリス「ん…姫様宛にメッセージカードですよ」

プリンセス「ありがとう、ベアト♪」

ベアトリス「一応ですが、毒針とか仕込まれてないかだけ確認させてもらいますね」

プリンセス「ええ」

ベアトリス「えーと…はい、大丈夫みたいです」

プリンセス「ありがとう、ベアト…ちゅ♪」

ベアトリス「もう、姫様ったら…///」

プリンセス「ふふ……まぁ♪」

ベアトリス「何かいいお知らせですか?」

プリンセス「ええ、そう言った所ね。…ところでベアト、今度私の代わりにお買いものへ行ってきてほしいの……いいかしら?」

ベアトリス「もちろんですよ、私は姫様のお付きなんですから」

プリンセス「ふふ、助かるわ。そうしたらね、ちょっと量が多いけれどお願いするわ……かわりに私がお金を出してあげるから、好きなお買いものをしていいわよ?」

ベアトリス「もう…子供のおつかいじゃないんですから……いつですか?」

プリンセス「そうねぇ…今度の週末がいいかしら」

ベアトリス「分かりました…それじゃあ私に任せて下さい」

プリンセス「ええ…♪」(いよいよ「第三段階」ね…)

…週末・部室…

ドロシー「……なぁ、ちせ」

ちせ「なんじゃ?」

ドロシー「悪いけど、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだ……本当はベアトリスにでも…と思ったんだけど、プリンセスの頼まれごとで買いものに行っちまってさ……軽く数時間はかかるだろうけど、いいか?」

ちせ「無論じゃ。何せお互い背中を預けた「チーム白鳩」の戦友同士…断るわけがあるまい」

ドロシー「そっか、そいつは助かるよ……実を言うと今度の作戦に備えて、新しいナイフとかスティレットを用意してもらったんだけどな…」

ちせ「…ほう?」

ドロシー「この間試してみたら、どうも切れ味が鈍い感じがするんだ……よかったら研ぐのを手伝ってくれないか?」(あれだけ刀を使いこなしているちせの事だ…刃物と聞いたら時間をかけていじくりまわしてみたいと思うはずさ…)

ちせ「ふむ…やはり鍛え上げた玉鋼(たまはがね)と画一的な工業製品では格が違うのじゃろう……構わぬよ、私も興味が湧いてきた」

ドロシー「おっ、いい返事だな…それじゃあ「ネスト」(巣…拠点・アジト)まで行こうぜ♪」

ちせ「うむ……では失礼する」

ドロシー「ああ…それじゃあプリンセス、美味しいお菓子でも食べて「甘い時間を有意義に」過ごしてくれ♪」(…「第三段階」開始だ)

プリンセス「ええ、ドロシーさんも大事な道具ですし「念入りに」手入れして下さいね?」(ふふ、いよいよね…ドロシーさん、出来るだけちせさんを引きとめて下さいね♪)

ドロシー「ああ、分かってるよ…♪」

アンジェ「……私も行きましょうか、ドロシー?」(…ここ最近の精神状態でプリンセスと二人きりになるのは避けたいわ)

ドロシー「おいおい、そうやってサーカスみたいにぞろぞろ行列でも組んでいくのか?……人目を引きたくないし、私とちせで充分だよ」

アンジェ「…それもそうね……分かったわ」

ドロシー「ああ、それじゃあな…もしやることがないなら銃弾の選別でもしておいてくれ」

アンジェ「ええ」

プリンセス「…」

アンジェ「…」

プリンセス「……ねぇ、アンジェ?」

アンジェ「何?」

プリンセス「アンジェは私の事…嫌いなの?」

アンジェ「嫌いよ」

プリンセス「…ほんとに嫌い?」

アンジェ「ええ。大嫌いよ」

プリンセス「ほんとのホント?」

アンジェ「ええ……嫌い、大嫌い」

プリンセス「……そう……ぐすっ…ひっく……私、今までアンジェ…いえ「シャーロット」の事、勘違いしていたみたい……」

アンジェ「…プリンセス?」

プリンセス「だって…最近のシャーロットはいっつも冷たい態度ばっかりで…カバーストーリーだって大事でしょうけれど、何も私たちが……二人きりの時まで…お芝居をしなくたっていいはずよね……だとしたら…ひっく……」

アンジェ「ぷ、プリンセス…私は貴女に危害が及ばないようにと……」

プリンセス「いいえ、そんなの信じられない…きっとお互いに命を預け合ったドロシーさんの方が好きなんでしょう……!?」

アンジェ「…まさか。そんな訳ないわ」

プリンセス「……だったらどうして優しくしてくれないの、シャーロット…?」

アンジェ「ふぅ…さっき言った通りよ。誰に利用されるか分からない以上、私があなたを大事に思っているなんて露ほどもさとられたくないの……本当なら「白鳩」のメンバーにさえ知られたくないわ」

プリンセス「…でも、せめて私と二人きりの時だけは…優しくして欲しいのに……」

アンジェ「ふぅ……私もつい甘えてしまいたくなるから、本当は教えたくないのだけど……一つだけ…方法があるわ……」

プリンセス「…シャーロット?」

アンジェ「私に向かって「ハニートラップの訓練をしましょう」って言ってくれればいい…そうすれば練習にかこつけて、それ相応に甘い言葉を投げかけることくらい出来るし……///」

プリンセス「…シャーロット♪」

アンジェ「……そのかわり、息が切れるまで付き合ってもらうから///」ちゅっ…♪

>>143 ありがとうございます、引き続き投下していきます

プリンセス「んんぅ、んむぅ…んちゅ……っ♪」

アンジェ「…ふふ、可愛いプリンセス…二人で遊んだあのころを思い出すわ……♪」

プリンセス「私がシャーロットと同じ服を着てラテン語の授業を受けて、シャーロットがサボったり…ね♪」

アンジェ「ええ…それにあの時もこうやって、ベッドの上に寝転がっていたわよね……♪」

プリンセス「ふふ、そうだったわね…シャーロットったらいっつも私の事や街の様子を根掘り葉掘り聞いて……あの時からスパイの素質があったのね♪」

アンジェ「反対にプリンセスはどんなことでも物覚えがよくって……プリンセスも案外スパイ向きかも知れないわ」

プリンセス「もう、シャーロットったら……♪」

アンジェ「ふふ、ごめんなさい…ちゅっ♪」…必要となればとてもチャーミングな性格になれるアンジェ……口の端に小さいえくぼを浮かべると、いたずらっぽくプリンセスのほっぺたにキスをした…

プリンセス「んぅっ…シャーロット♪」

アンジェ「プリンセス……好き、好きよ……愛してる♪」

プリンセス「まぁ…///」

アンジェ「可愛い笑顔も、さらさらの髪も、綺麗な澄んだ瞳も……全部大好きっ♪」

プリンセス「もう…シャーロットってば…ぁ///」きゅんっ…♪

アンジェ「…ね、昔みたいに「ちゅう」しましょ?」プリンセスの手に指を絡め、熱っぽく瞳をうるませた…

プリンセス「あぁもう、シャーロットったら……相変わらずおませさんなんだから///」

アンジェ「だって、プリンセスが可愛いんだもんっ…♪」…子供っぽい口調でプリンセスに抱き着いて甘えるアンジェ

プリンセス「はぁぁんっ…シャーロットにそんなことを言われたら、私なんでも許しちゃうわ♪」

アンジェ「……それじゃあ早く「ちゅう」しよ…っ?」

プリンセス「うんっ♪」

アンジェ「……ん、ちゅぅ…ちゅっ……♪」

プリンセス「んふ……あむっ、ちゅぅぅ♪」

アンジェ「…ふふ、「ちゅう」って気持ちいいのねっ…♪」

プリンセス「そうね、シャーロット……あふっ、んっ、くぅっ…///」

アンジェ「ふふ…それじゃあ脱がせちゃうわね……わぁ、相変わらず真っ白ですべすべ♪」

プリンセス「シャーロットこそ……えいっ♪」アンジェの胸を優しくこねるプリンセス…

アンジェ「あんっ…やったわね?……はむっ、ちゅぅ…れろっ♪」

プリンセス「ひぁぁぁんっ…シャーロット、先端は舐めないで…っ///」

アンジェ「ふふ、ワガママなプリンセス。それじゃあ仕方ないから…」こりっ…♪

プリンセス「んっ、あぁっ…甘噛みはもっとだめ……ぇ♪」じゅんっ♪

アンジェ「むぅぅ、ならプリンセスはどこがいいの?」

プリンセス「……それは、その…///」

アンジェ「ふふ…早くしないと飽きてやめちゃうかも知れないわよ?」

プリンセス「もう、シャーロットったらせかさないで…♪」

アンジェ「ほぉら、早くはやくっ♪」

プリンセス「あぁ、どこもシャーロットに触って欲しくて決められないの…♪」

アンジェ「もう、よくばりなプリンセス…それじゃあ、「シャーロットの気まぐれメニュー」でいい?」

プリンセス「うんっ…シャーロットにいっぱい触って欲しいの♪」

アンジェ「決まりね……プリンセス、大好き…♪」耳たぶを甘噛みしながらささやくようにつぶやく…

プリンセス「はぁぁんっ、それ……反則ぅっ♪」…とろっ♪

アンジェ「ふふ、これは二人だけのトップ・シークレットよ……私の愛しいプリンセス♪」

プリンセス「あひっ、ひうっ…シャーロットったら、そんなのずるい…っ♪」

アンジェ「ふふ…いつも素直になれなくてごめんなさい……可愛いプリンセス♪」くちゅ…にちゅっ、じゅぷっ♪

プリンセス「あっ、あぁぁぁ…んっ♪」

…しばらくして…

アンジェ「ふふ、プリンセスの白くて細い指……ちゅぱ…ちゅぷ…っ♪」

プリンセス「んぁぁ…はぁ…んぅ……くっ…んんぅ…///」

アンジェ「それじゃあプリンセス…私の指も……舐めて?」

プリンセス「ええ、シャーロット…んちゅ…ぅっ、ちゅぱ…ぁ……ちゅぷっ…///」

アンジェ「んっ…付け根の所は少しくすぐったいわね……さてと…」プリンセスの口中から指を引き抜くと、とろり…と銀の糸が伸びて、そっと滴り落ちた……

アンジェ「…この濡れた指を……んっ♪」くちっ…にちゅっ♪

プリンセス「んぅぅっ!…んくっ、んぅ…んっ、んっ、んっ…くぅぅ……ぅっ♪」

アンジェ「ふふ…プリンセスのここは暖かくて…とろっと粘っこくて……たまらないわ」ぐちゅぐちゅっ…じゅぶっ♪

プリンセス「はぁぁ…あぁんっ…ん、くぅぅ……シャーロット…ぉ///」くちゅっ、とろとろっ…ぶしゃぁぁ…っ♪

アンジェ「ふふっ…惚けたような表情も可愛いわ……ん、じゅるっ…じゅるるぅ……っ♪」

プリンセス「はぁぁ…あんっ……いいの…っ、シャーロットの…舌…這入ってきて……気持ちいい…っ///」

アンジェ「んむっ、じゅる…っ……じゅぅぅ…っ、れろっ…ぴちゃ…ぴちゃ…っ♪」プリンセスの太ももの間に顔をうずめて、一心不乱に舌で舐めあげ、とろりとこぼれる蜜をすするアンジェ…

プリンセス「はあぁぁ…んくぅ、んっ…あぁ……ん、ふっ…♪」

アンジェ「ん…じゅる…じゅぅっ……れろ…ちゅる……ぷは…ぁ」

プリンセス「んんぅ…シャーロット……私、腰が…抜けちゃった……みたい…♪」

アンジェ「プリンセス……♪」べとべとになった両の手のひらでプリンセスの頬をそっと包み込むと、舌先を突きだして唇の間にねじ込んで歯茎をなぞり、ねっとりと時間をかけて舌を絡めた……

プリンセス「んむ…ぅ……シャーロット…ぉ///」とろけた表情のプリンセスが唇を開くと、アンジェの舌先からねっとりと雫が垂れる…

アンジェ「…舐めて///」今度はプリンセスの着ているフリルブラウスを裾まで開き、頭の側に馬乗りになる…

プリンセス「ええ…んちゅ……ちゅむ…っ♪」

アンジェ「んっ、んっ……ふふ、私も負けないから♪」

プリンセス「ちゅぷ…っ……ふふふ…だったら私もシャーロットの事、うんと気持ち良くしてあげる♪」

アンジェ「なら勝負よ…♪」

プリンセス「うふふ、私だっていろいろ「お勉強」しているんですもの…負けないわ♪」

アンジェ「…それはどうかしら。黒蜥蜴星仕込みのテクニックに耐えられたら大したものよ……んっ、じゅぅぅっ♪」

プリンセス「あんっ、不意打ちだなんて……いいわ、シャーロットがそういう手段を取るなら、私だって…二本入れちゃうから♪」じゅぶっ、ぐちゅっ…にちゅっ♪

アンジェ「んくっ……プリンセスの指が…入ってきて……いいっ…んっ、んぅぅっ♪」

プリンセス「ほぉら、シャーロット…気持ちいい?」

アンジェ「んっ、んんぅ…んっ、くぅぅっ……でもね、プリンセス…私の方が一枚上手のようね…」じゅぶっ、ぐちゅり…っ♪

プリンセス「あっあっあっ……は、あぁっ…んっ、あぁぁっ……!」

アンジェ「ん…ぴちゃ、れろっ……じゅるっ、ちゅく…っ♪」

プリンセス「あっ、あぁぁ…はぁぁぁ……っ…!」

アンジェ「……プリンセス、だーいすき…ちゅっ♪」

プリンセス「…シャーロット、そんなのずる…ぃっ、んぁぁぁっ♪」

………

…後日…

プリンセス「…ドロシーさん、少しよろしいですか?」

ドロシー「んー?」

プリンセス「いえ……この間はドロシーさんのおかげで、大変に素敵な時間を過ごさせていただきました」

ドロシー「あぁ、あれか…お役にたてて良かったよ♪」

プリンセス「ええ。そのおかげで数日に一度とはいえ、わたくしも心ゆくまでアンジェを堪能できるようになりました///」

ドロシー「……あー、それは…その……まぁ、よかったじゃないか」(あれから一週間経つか経たないかの間で「数日に一度」って……ちょっと多くないか…)

プリンセス「ええ、ふふっ…アンジェとの甘い時間が待っていると思うと、どんなことでも頑張れそうです♪」

ドロシー「ははっ、それは頼もしいな……悪いけど、ちょっと野暮用を思い出したから失礼するよ?」

プリンセス「ええ、それではまた…ごきげんよう♪」

ドロシー「ごきげんよう……はたしてアンジェの奴はどうなってるやら…入るぞ?」

…アンジェ私室…

アンジェ「……おはよう、ドロシー…」

ドロシー「おはようさん……どうした?」いつも通りポーカーフェイスのアンジェ…が、長い付き合いのドロシーにはピンと来た……

アンジェ「…何が」

ドロシー「しらばっくれるのはよせよ…休日とはいえ、こんな時間になってまだベッド、おまけに顔を赤らめて……なにをそんなに恥ずかしがってるんだ?」

アンジェ「それは…あなたには関係ない事よ///」

ドロシー「はぁーあ……いつぞやの時はどこかの誰かさんのために、援護に飛び出してやったのになぁ……」

アンジェ「それは任務の上でしょう……だいたいドロシーに話すような事柄ではないわ」

ドロシー「私に話すような事柄じゃないってどうして分かるんだ?」

アンジェ「…私個人に関わることだからよ」

ドロシー「ふぅーん、そっか…私は家庭の事情までしっかりアンジェに知られてるって言うのに、アンジェは情報のきれっぱしも教えてくれないのか…スパイ同士とはいえアンジェは戦友……対等な関係だと思ってたのになぁ…!」

アンジェ「しつこいわね…」

ドロシー「そりゃスパイだからな…で、何があったんだ?」

アンジェ「ふぅぅ…いいわ、どうしても聞きたいようね……」

…数分後…

ドロシー「……なるほどな」

アンジェ「これで満足したでしょう…///」プリンセスとの関係は抜かして、ベッドの上でのことを簡単に話した…

ドロシー「ああ、満足したぜ……それにしてもアンジェ、お前がそんな甘ったれた言葉を使えるとはな…♪」

アンジェ「…もし誰かに漏らしたりしたら、本当に撃つから」

ドロシー「よせよ…私とアンジェの仲だろ?」

アンジェ「そう言う間柄こそよ」

ドロシー「へいへい……にしても、あのプリンセスがねぇ…♪」

アンジェ「……いくら責めたてても「もっとして♪」の連続で…さすがに疲れたわ…」

ドロシー「やれやれ、王室のプリンセスって言うのは色ボケなのも素質の……」

アンジェ「…プリンセスの悪口は聞きたくないわ」

ドロシー「分かったよ……とりあえずお茶でも淹れておいてやるから、顔でも洗ってから来いよ」

アンジェ「……いの」

ドロシー「なに?」

アンジェ「…それが、腰に力が入らないの///」

ドロシー「……プリンセスか…何かと大変な存在だな、ありゃあ…」

………

…case・ドロシー×アンジェ「The other side of the wall」(壁の向こう側)…


…とある日…

アンジェ「それじゃあ、新しい任務の説明をさせてもらうわ」

ベアトリス「またですか…スパイってこんなに忙しいものなんですか?」

ドロシー「いや、本来はじっくり腰を据えてやるものさ……一回の工作に数年かけるなんてざらにあるぞ?」

アンジェ「それだけ王国側の動きが活発だと言うことよ…いいかしら?」

ドロシー「ああ、始めてくれ」

アンジェ「四日前のお茶の時間にも言ったけれど、最近アルビオン王国の市場相場の変動がいちじるしいわ…身近な肉やじゃがいもに始まり、金やケイバーライトみたいな鉱物資源……果ては西インド諸島のシナモンやクローブ、インド産の綿に至るまでね」

プリンセス「ええ、そのようだけれど…それが私たちにどう関係してくるのかしら?」

アンジェ「ええ、実はね……」


…数日前・ロンドン市内の劇場…

アンジェ「はぁ…ロンドンの劇場は、えかくでっけえもんだなァ……おらの村より大きいかもしれねぇだ…」一幕だけ舞台を見て、ホールに出ると丸縁眼鏡で辺りをきょろきょろと見回すアンジェ…制服こそメイフェア校の生徒であることを示しているが、いかにも「おのぼりさん」のような態度は明らかに田舎者丸出しに見える…

老婆「ちょっとよろしいかしら、お嬢さん?」

アンジェ「なんだべな…こほん!……どうかなさいまして///」

老婆「ハンカチーフを落としましたよ…あなたのでしょう?」腰の曲がった親切そうなおばあさんがアンジェのハンカチを持っている…銀髪をひっつめにしていて、十年は遅れている古めかしいデザインの服を着ているが決して身なりは悪くなく、丁寧な口調で品もいい…

アンジェ「ええ、私のです……と言っても『本当は伯父のくれたもの』ですが」

老婆「それはそれは…『ライリー伯父さんも大事にしてくれて嬉しい』でしょうね?」人気の多い場所でランデブーするときには欠かせない合言葉が、およそスパイには見えないおだやかな老婆の口から出てきた…

アンジェ「ええ…それじゃあ『ライリー伯父』によろしく」

老婆「はいはい……失くさないでよかったわねぇ。次は落とし物をしないよう、気を付けて帰るんですよ…お嬢さん」袖の内側ですっとハンカチをすり替えると、それだけ言ってするりと出て行った…

アンジェ「…あんなエキスパートを連絡役に回して来るなんて、コントロールも粋な真似をしてくれるわね……」

………



ベアトリス「えー、あの舞台を見に行ったんですかぁ…私も見たかったのに、アンジェさんが「任務の準備があるから」って……」

ドロシー「おいおい、冗談はよせよ」

ベアトリス「…何がですか?」

ドロシー「ふぅ…ベアトリスがアンジェと鉢合わせしてみろ、きっと愉快に手を振って「アンジェさーん、アンジェさんも舞台を見に来たんですかぁ♪」とか声をかけるに決まってるだろ……あたしらみたいな業界の人間が不特定多数の前で名前を呼ばれるなんて、ちょっとした悪夢だ」

アンジェ「完全に悪夢ね」

ベアトリス「もう…私だってちゃんと「敵監視下にある工作員接触法」を学んでいるんですから、そんなことしませんよぉ!」

ちせ「じゃがベアトリスはまだまだ目線が動いてしまうからの……アンジェどのを見つけたら「見るまい」として余計に挙動不審になるのがオチじゃろう…」

プリンセス「ベアトは素直だものね♪」

ベアトリス「むぅぅ…姫様まで……」

ドロシー「ま、ベアトリスだってベアトリスなりのやり方があるさ…そうへこむなって♪」

アンジェ「……話を戻していいかしら?」



ドロシー「お、悪い…それにしても「L」のやつ、今度は「ライリー伯父」さんか……前回は「従姉妹のマリー」だったよな…」

アンジェ「ええ。それで、受け取ったのがこれよ」

ちせ「普通の花柄が刺しゅうされたハンカチーフじゃな…」

プリンセス「あら、でもこんなところに刺しゅうでメッセージが…「私の大事な家族へ、これを見るたびに私を思い出してほしい…L」とあるわね?」

アンジェ「ええ、これが暗号よ……まずはこれがいるわ」ロンドンの地図を取り出すとハンカチを乗せる…紙のように薄い絹のハンカチだけあって、ロンドンの地図が透けて見える……

ベアトリス「わ…下が透けて見えます」

アンジェ「ここで刺しゅうの文字の「私」(My)「家族」(family)「見る」(see)から「M」の左上の頂点を寄宿舎の正門に合わせて「f」と「s」をロンドンの地図を合わせると……」

ドロシー「行きつくのは高級菓子屋だな……まだ新しい店だけど、プリンセスが行きつけにしていそうな店だ」

プリンセス「まぁ、ドロシーさんったら…このお店はまだ行ったことがありませんよ♪」

アンジェ「その事はいいわ……そしてこのメモが…」無秩序にアルファベットが並んでいるメモを取り出した…

ドロシー「『一回限り暗号帳』か…コードブックは?」(※一回限り暗号帳…文字変換のやり方を決める特定のパターンと、そのコードブックになる本をセットにして初めて解読できる暗号)

アンジェ「今回は「アルビオン王国・その正統なる歴史」とか言う、王国におもねる連中の本ね……その三ページ目から始めて、三つ目のアルファベットを逆算して戻す…」

ベアトリス「えーと…それだと最初の文字は「r」になりますね?」

ドロシー「おっ、ベアトリスも暗号が分かって来たな♪」

ベアトリス「当然です♪」

アンジェ「結構…さて、解読が終わったわ」

プリンセス「えーと「木曜日、フィナンシェを買いに行け」ですって」

ちせ「…すまぬが「フィナンシェ」とはなんじゃ?」

アンジェ「フランスの焼き菓子よ…英語のファイナンス(財政・融資)と同じで「銀行」や「小さな金塊」のような意味ね」

ちせ「なるほど」

ドロシー「ちなみにこんがり焼き上がった色と形が「小さい金塊」みたいだから名付けられたんだとさ」

アンジェ「そうと分かればもうメモはいいわ」暖炉にメモを放り込み、きっちり灰になるまで火かき棒でかき回した…

ベアトリス「……ねぇ、アンジェさん」

アンジェ「何?」

ベアトリス「お菓子屋さんに「買いに行け」って言うことは、ちゃんとお菓子も手に入るんですよね?」

アンジェ「でしょうね…それが?」

ベアトリス「もしよかったら…お菓子の方はもらってもいいですか?」

アンジェ「別にいいわよ」

ベアトリス「やったぁ…♪」

プリンセス「ふふ…だったらベアト、わたくしと一緒にお茶の時間でいただきましょうね?」

ベアトリス「……さ、最初からそのつもりでした///」

プリンセス「…あら♪」

ドロシー「ひゅぅ…熱いねぇ♪」

アンジェ「ベアトリス、任務完了まで浮かれないで…プリンセスとドロシーもよ」

ドロシー「あいよ……なぁプリンセス、こりゃあアンジェのやつ…プリンセスとベアトリスの仲むつまじいのに妬いてるぜ…?」

プリンセス「ふふっ…アンジェったら、意外とそう言うところは分かりやすいのよね♪」

アンジェ「……何か言った?」

プリンセス「いいえ♪」

ドロシー「ああ、何にも言ってないぜ……うー、おっかない…♪」

ベアトリス「…ふふ、美味しいお菓子とお紅茶でプリンセスとティータイム……なんて///」

ちせ「洋菓子というやつもなかなか美味であるからな…楽しみじゃ」

………

…木曜日…

ドロシー「さてと、菓子を買いに行くにしてもそこそこ敷居の高そうな店だからな……気の利いた格好じゃないと入れないよな…」濃いチェリーレッドのデイドレスに白絹の長手袋をつけ、パラソルを差している……口の端に浮かぶいつもの不敵な笑みは穏やかで優しい大人の女性の微笑みにとって代わり、いかにも優雅な貴族令嬢に見える…

アンジェ「馬子にも衣装ね、よく似合っているわ」…特徴の捉えづらい地味なクリーム色の地にスレートグレイの縁取りがされた渋いドレスを選び、髪の結い方と眼鏡を変えている…それだけでぐっと印象が変わり、よく見ないとアンジェとは気付かない…

ドロシー「おい、「馬子にも衣装」は余計だろ…アンジェこそ、いつもの冷血っぷりが嘘みたいに可愛いぜ?」

アンジェ「え…ドロシーとはそう言う関係になるつもりはないのだけど…」

ドロシー「おいこら、あからさまに引くなよ……せっかく褒めてやったのに」

ベアトリス「もう、二人ともおふざけはいいですから…ちゃんと準備は出来ました?」

ドロシー「あぁ、大丈夫さ。留守番はよろしくな?」

ベアトリス「はい、おみやげを忘れないで下さいよ?」

ドロシー「へいへい、任しておけって♪」

ちせ「気を付けての」

アンジェ「心配はいらないわ……尾行なら撒けるし、間接護衛の方はお願いね」

ちせ「うむ」

…しばらくして・パティスリー「フルール・ドゥ・リス」…

ドロシー「あら、素敵なお店…ライリー伯父さまが教えて下さっただけのことはありますわね♪」

アンジェ「ええ、そうですね」

ドロシー「んー…でもわたくし、フランス語はあまり堪能ではありませんの……「フルール・ドゥ・リス」ってどういう意味かしら?」

アンジェ「あら、それならブルボン王家の紋章にもなっている「百合の花」という意味ですわ」

ドロシー「それで金百合の花が扉に描いてありますのね…♪」

アンジェ「そうだと思いますわ……いいわよ、尾行はないわ」

ドロシー「…あぁ。これ以上三文芝居を続けていたらじんましんが出そうだ……入るぞ」

アンジェ「ええ…」

店員「ボンジューゥ。ようこそ「フルール・ドゥ・リス」へおいでくださいました、お若いマドモアゼルの方々♪」

ドロシー「メルシー♪」

アンジェ「まぁ、綺麗…どれにいたしましょうかしら?」

…金の縁取りがされたガラスケースにはマドレーヌや艶やかなチョコレートケーキ「オペラ」、フランボワーズのタルトやクイニーアマンが並んでいて、壁には花の活けてある大きな花瓶に、店の標語らしい「幸福な砂糖生活(ハッピーシュガーライフ)」と、ミュシャ風の美人画が描かれたポスターが飾ってある…

ドロシー「ええ、本当に……どれも宝石のようで目移りしてしまいますわ♪」

店員「ふふ、メルスィ…何かご希望があればお伺いいたしますよ?」

アンジェ「ええ、実はわたくし「ライリー伯父」からここのフィナンシェが絶品だとうかがって参りましたの…♪」

店員「……さようでございますか、お目が高くていらっしゃいますね。当店一番の自慢の品でございます」

アンジェ「…ではそれをいただきますわ」

店員「さようですか。ちなみに「お召し上がりはいつ頃」に?」

アンジェ「そう…「きっと明日が晴れたなら」お茶の時間にいただきますわ」

店員「承知いたしました…ではフィナンシェを五つと、店の名刺をお付けしておきます。ライリー伯父さまにもよろしくお伝えください」

アンジェ「ええ、ありがとう」

店員「こちらこそ…では今後ともご贔屓に♪」

アンジェ「ぜひともそうさせていただきますわ……さ、帰りましょう」

ドロシー「おう…やれやれ、のっけからフランス語とはね……違う意味で冷や汗をかいた…」

アンジェ「それにしては悪くなかったわよ」

ドロシー「そりゃどうも。後は持って帰るだけだが……袋ごしでもいい匂いがするじゃないか♪」

アンジェ「今は貴族のお嬢さまなんだから、つまみ食いなんてしないでちょうだいね」

ドロシー「誰がするかっての…!」

ドロシー「…戻ったぞー」

ベアトリス「あ、お帰りなさいっ…それでお菓子は?」

ドロシー「そう焦るなよ…ほーら、いい子にしてたベアトリスにはお菓子をあげよう♪」

プリンセス「ふふっ、ドロシーさんったら」

ベアトリス「わ、美味しそうなフィナンシェですね…さぁ姫様、お茶の準備は整っていますから一緒にいかがですか?」

プリンセス「そうね……二人とも、よろしいかしら?」

アンジェ「構わないわ、私たちに必要なのはお菓子じゃなくて紙袋の方だから…」

ちせ「私は菓子よりも任務の方が重要と分かっておるからの…もし用があるならばここに残るが……」

アンジェ「必要ないわ。これはちせの分よ」

ちせ「そうか…ではさらばじゃ♪」分けてもらったフィナンシェを手早くハンカチに包み、ほくほく顔で出て行った…

アンジェ「ええ、また後で…」

ドロシー「…ねーねー、ドロシーちゃんもお菓子が食べたいよー」

アンジェ「…」

ドロシー「……なんだよ、せっかく空気を和らげてやったのに…で、メッセージは?」

アンジェ「待って…解読できたわ」紙袋ののり付けされた部分を丁寧に剥がすと細長く糊のついていない部分があり、そこに細かく暗号が書きこんである…

ドロシー「相変わらず早いな……えーと「ザ・シティの『アルビオン・マイルストーン商社』より、金の先物取引価格を入手すべし」ねぇ…今回は経済スパイに早変わり、ってわけだ」

アンジェ「ええ。何しろ王国側にある「ザ・シティ」での先物取引価格が共和国に伝わるのはたいてい半日から一日遅れ……王国は検閲や発送に時間をかけることでわざと取引価格の情報を遅らせて、その間に王国系の投資会社を通じて共和国の先物取引市場で商売をし、利益を上げているわ」

ドロシー「…いわゆるインサイダー情報ってやつだな。しかも政府が一枚噛んでやっているんだからタチが悪い」

アンジェ「その通り……しかもこれを主導している「誰か」はかなりの切れ者のようで、いつもこのカードを使う訳じゃない…」

ドロシー「そりゃいっつも未来を予知するような具合にやっていたら、バカでも気がつくってもんだからなぁ」

アンジェ「その通りよ。リストにある商社や投資会社は一見するとそう儲けているようには見えないけれど、よく計算してみるとかなり分のいい利益を得ていることに気づく」

ドロシー「しかしだ…当然その「時差」を使って一山当てようって連中は他にもいくらだっているだろ?」

アンジェ「ええ、もちろん。これまでも冴えた投機家や取引会社の中にはこのカラクリに気づいて、パイにありつこうとした者もいないわけではないわ」

ドロシー「そういう連中はおおかた「不運な事故」でテムズ川にドブン…か?」

アンジェ「いいえ……一部は当人も知りえないうちに手駒として組み込まれて時々おこぼれにあずかり、特に頭の切れる者は内密に王国側の組織へスカウトされているらしいわ」

ドロシー「一見すると前と変わらないのに、実は王国の下請けになっているわけか」

アンジェ「そういうこと。まぁ王国の諜報機関としては楽な副業ね…トップシークレットをはじめとする情報を真っ先に知ることが出来て、自分たちの都合次第で公表するもしないも自由……」

ドロシー「要は山に積まれたカードをめくりながらポーカーをするようなもんだからな…そりゃ笑いが止まらないだろうさ」

アンジェ「だからこそよ。コントロールとしても王国諜報・防諜機関の活動費が潤沢になられては困る」

ドロシー「とにかくこの「商売」は金のかかる商売だもんなぁ…この「素敵なお召し物」にしたって、軽く百ポンドはかかってるだろうし……」

アンジェ「そういう事よ……毎度あなたが請求する車のメンテ部品やパーツ代なんかもね」

ドロシー「そう言うなよ。あの車のおかげで何度任務が成功したことか……」

アンジェ「とにかく、今度の作戦では派手なのはご法度…そして何より頭が冴えていなければいけないわ」

ドロシー「了解、ドンパチは厳禁な」

アンジェ「ええ…という訳で、お待ちかねのお菓子よ。これで糖分を摂取しなさい」

ドロシー「お、ありがとな…うん、美味い♪」

アンジェ「これで頭が回るようになるといいわね…それじゃあ私も……」

………

>>155 見て下さってありがとうございます。暑い日が続きますし、体調には気を付けて下さいね

…数週間後「ザ・シティ」の商社…

男「ふむ…君たちが掃除婦になりたいって人だね?」

ベアトリス「はい…張り紙を街で見かけて、それで……」

ドロシー「あたしは牧師から話を聞いてね」

…貧乏な娘の一張羅といった格好で、商社の人事係と向かい合わせで座っているドロシーとベアトリス…年中こうした応対をしている商社の男はさして興味もなさそうに二人を眺めている……そして当然ながらお茶の一杯も出してはくれない…

男「結構。掃除してもらうのはここのフロアと一つ下のフロアだけで、来てもらうのはオフィスの者たちが完全に帰ってから…つまり夜の八時以降になる」

ドロシー「分かってます」

男「ならいい。給与は時間当たり6ペンス…さ、ここにサインして」机ごしにペンと書類を滑らせる男に対し、困った様子のドロシー

男「……どうした?」

ドロシー「いや、あたしは学者じゃないもんで」読み書きができないふりをしているドロシーは、上下逆さまの書類を前に困り果てている…が、すでに逆さまの書類をさっと読み通している……

男「あぁ、書き方を知らないのか。なら名前の所…ここにバツ印を付けてくれればいい。私が代筆してあげよう」

ドロシー「どうも、あいすみませんねぇ…」

男「なに、よくいるんだよ…名前は?」

ドロシー「エマ・ジョーンズ」

男「結構。では「署名…エマ・ジョーンズ、代筆す」と」

ドロシー「どうも、ありがてぇこってす」

男「いいんだ……なぜか知らないが、今まで雇っていた掃除婦が二人ばかり急に辞めちゃってね」

ドロシー「へぇー…?」(そりゃこっちがそうなるよう仕向けたんだからな…)

男「だからちょうどよかったよ…明日から来てくれ。裏口の警備員には君たちの事を話しておく」

ベアトリス「…は、はい」

男「緊張しなくたっていい、単に掃除をするだけだ…ただし机の上の物はいじったり盗ったりしないように……そういうことをすると警察に突きだすから、よく覚えておいてくれ」

ベアトリス「ひっ…!」

男「じゃあこれで……さ、帰ってくれ」

ドロシー「ありがとうござんした」…下町にある薄汚い下宿の裏口へ入ってしばらくすると、薄汚れた「メイク」(灰と土埃に少しの古い油を混ぜたもの)を落として髪型をもとに戻し、制服に着替えた二人が表から出てきた……手には「恵まれない婦人たちへの愛の寄付を」などと書かれたリボンが巻いてある、柳のカゴを持っている…

ベアトリス「…ずいぶんすんなりいっちゃいましたね?」

ドロシー「ああいうインテリ連中は「無学で読み書きも出来ない」って聞くと油断するのさ……そもそも時間当たりの給与には「10ペンス」って書いてあったろ?」

ベアトリス「私も気づきました…言いませんでしたけれど」

ドロシー「ああ、さっきのは利口だったぜ……もっとも言ってみたところで、あちらさんも「手数料」だとかなんとか、上手い言い訳は作ってあるだろうけどな」

ベアトリス「それにしても都合よく二人辞めているなんて…幸運でしたよね」

ドロシー「はは、この業界で「幸運」があることなんて滅多にないさ……今回のもこっちの仕込みだよ」

ベアトリス「…え?」

ドロシー「そうやってベアトリスは表情に出やすいからな…ちょっと言うのを忘れてたよ♪」

ベアトリス「それじゃあ…」

ドロシー「前の掃除係だった二人には、片方が「遠縁の親戚の遺産」が転がり込んだから……もう片方にはコントロールが割のいい働き口を斡旋してやった」

ベアトリス「…」

ドロシー「そう言う顔をするなって…いきなり遺産が転がり込むなんて「リアリティに欠ける」から、強盗に見せかけてバラしちゃう案もあったんだぜ?」

ベアトリス「だ、ダメですよそんなの!」

ドロシー「ああ、死人は必ず「誰かの注意を引く」からな…だからコントロールも百ポンド近い出費にゴーサインを出したのさ」

ベアトリス「……そもそもお金と人の命って、釣りかえの効くものなんでしょうか?」

ドロシー「少なくとも、この業界ならある程度はね……ま、明日からはよろしく頼むな」

ベアトリス「はい」

…寄宿舎…

アンジェ「その様子だと上手く行ったようね?」

ドロシー「そりゃあ「細工は流々」ってところさ……ちなみに明日から来てくれ、だと」

アンジェ「なら授業を終えたらすぐ行かないといけないわね」

ドロシー「ああ。尾けられていないかどうかも確認しなきゃならないし、着替える必要もあるもんな」

アンジェ「そうね」

プリンセス「気を付けて下さいね、ドロシーさん……ベアトもよ?」

ベアトリス「はい、姫様///」


…次の晩…

ドロシー「こんばんはー」裏口の脇にある警備室をノックするドロシー…中では警備員が二人、小銭を賭けたトランプに興じている……

警備員「…あー、あんたらか。話は聞いてるからとっとと行きな」

ベアトリス「よろしくお願いします」

警備員「ああ」

警備員B「…おい、お前の番だぜ?」

警備員「分かってるよ。ハートの4だ」

警備員B「ハートの4だって?…へへっ、それで上がりだ」

警備員「ちっ…じゃあもう一回」

ドロシー「……それじゃあ「メアリー」はそっちをよろしくね」掃除用具入れを漁って、モップとバケツ、ちりとりに箒を取り出す……箒とちりとりをベアトリスに渡し、水を含むと重くなるモップとバケツを受け持ってやるドロシー…

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「……言っておくが、少なくとも数週間は掃除だけだぞ…相手が気を緩めるまで待つんだ」

ベアトリス「…分かってます」

ドロシー「ああ……それじゃあここから始めるわよ?」

ベアトリス「はい、分かりました」…プリンセスのお付きだから…という訳でもないが、てきぱきと手際のいいベアトリス……

ドロシー「…本当にそう言うのが好きなんだな」少しからかいながらも、感心した様子のドロシー……モップの柄の先端に両手を乗せて、その上にあごを置いている…

ベアトリス「そうですね……って、少しは手伝ってくれませんか?」

ドロシー「はいはい、分かりましたよ…っと」いかにもおざなりな態度でモップがけを始めるドロシー…

ベアトリス「全くもう。いくら何でももうちょっとやる気を出して下さいよ……」

ドロシー「…言っておくけどな、この掃除の仕方にも結構コツがいるんだぜ?」

ベアトリス「え?」

ドロシー「普通さ、スズメの涙みたいなやっすい賃金で雇われた貧しい娘っこがやる気なんか出す訳ないよな?」

ベアトリス「ええ、まぁ…」

ドロシー「だからさ、あんまり綺麗にしすぎると怪しまれるんだよ…「こんな真面目に働くなんておかしいぞ?この娘っこは窃盗団の下見役じゃないか」とか何とか……要は「裏」があるんじゃないか、って」

ベアトリス「なるほど」

ドロシー「かといって不真面目過ぎてもいけない…クビになっちまったら元も子もない」

ベアトリス「それじゃあ、そこまで考えて…?」

ドロシー「そういうこと……ま、そこそこ手抜きした方が楽でいいって言うのもあるけどな♪」

ベアトリス「やっぱり手抜きなんじゃないですか…」

ドロシー「そう言うなって。あと、紙くず入れは私がやるよ」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「……どんな情報が書いてあるか分からないからな」

………


1もお気をつけて

>>159 ありがとうございます。次回の投下はまた数日後になってしまうかもしれませんが…

…一か月後・「アルビオン共和国文化振興局」事務所(コントロール)…

L「…それで、エージェント「D」(ドロシー)は食い込みに成功したのか」

7「はい。レポートによりますと警戒は緩んでいるとのことです」

L「そうか…時間がかかるのは致し方ないが、我々がこうしている間にも向こうは着実に活動資金を増やしているのだ。あまり差をつけられたくはない」

7「はい」

L「…おまけにこちらには何かと首を突っこみたがる「ジェネラル」をはじめとした軍部のこともある……おかしな話かもしれんが、無理解な同国人よりあちらの同業者の方がまだましな気がするな」パイプをくゆらせながら渋い表情の「L」…

7「ええ」

L「基本的に軍人はこうした活動に向かんのだ。この世界は「敵と味方」に分けられるようなものではなく、引き金を引いて銃剣突撃を敢行すればいいものでもない……」

7「分かっております」

L「しかし軍人は常に単純だ…敵・味方ははっきりしているし、より大きい大砲をより多く持っている方が勝つ」

7「ええ」

L「そして「男は勇敢に戦い、女はそんな男のために裁縫と料理をしていればいい」と思っている…」

7「ですから私もクビになりかけました……女はタイプを打つ程度の能力しかないのだから引っ込んでいろ、と」

L「うむ…だが私はそうは思わない。共和国人でも裏切り者はいるし、王国の人間だからとてすなわち敵ではない…物事にレッテルを張ってひとくくりにするのは簡単でいいかもしれない……が、私はそうはせずに全ての物を「疑惑の目」というふるいにかけ、残った真実のかけらを集めて鋳造するのだ…まるで砂金掘りのようにな」

7「なるほど」

L「すまんな…君にもやることがあるだろうに、少ししゃべり過ぎた」

7「いいえ、大丈夫ですわ」

L「うむ…ところで今度の予算の件だが……」

………



…数日後…

アンジェ「……そろそろ行動に移れと言ってきたわね」

ドロシー「ああ」

アンジェ「出来そう?」

ドロシー「そうだな…そろそろいいだろう」

アンジェ「結構……欲しい情報はあちらの「買い」と「売り」の情報よ」

ドロシー「ああ、分かってるさ」

アンジェ「繰り返しになるけど銃も殺しも…はたまた派手な爆発も無しよ」

ドロシー「任せておけ。髪の毛一筋だって残しはしないさ♪」

アンジェ「ええ、そうしてちょうだい」

ドロシー「ふー、これでモップだの雑巾だのからおさらばできる目途がついた…ってわけだな」

アンジェ「何を勘違いしているの。急に辞めたら怪しまれるから、しばらくはそのままよ?」

ドロシー「そのくらい分かってるさ……だけど目安にはなるだろ?」

アンジェ「それはそうでしょうね」

ドロシー「だろ…もっとも、ベアトリスは案外気に入っているみたいだけどな」

アンジェ「そのようね」

ベアトリス「失礼します。お二人とも私に「ご用」があるそうですが……いったい何ですか?」

アンジェ「あぁ、来たわね…用と言うのは他でもないわ」

ドロシー「いよいよ今夜から「本業」に取りかかることになったから、その手はずを確認しておこうってわけさ」

ベアトリス「今夜からですか……うー、緊張してきました…」

ドロシー「そう固くならないで、いつも通りにやればいいさ……それでだ」

ベアトリス「?」

ドロシー「ちょーっと頼みがあるんだよなぁ♪」にやにや笑いを浮かべながら詰め寄っていくドロシー…

ベアトリス「な、何ですか…」

ドロシー「アンジェ」

アンジェ「…ええ」さっと後ろに回り込んで、両腕を押さえるアンジェ…

ベアトリス「きゃあっ!?」

ドロシー「すこーし人工声帯をいじらせてもらって…と」

ベアトリス(CV…大塚明夫)「な、何をするんですかぁ!」

ドロシー「うわ、何だか妙に渋い声になったな……って、そんなことはいいんだって…よし、このくらいか?」

ベアトリス「……っ!?」何か叫んだらしく「キィーン…」と甲高い音が響いた

ドロシー「…うっ!」

アンジェ「まるで耳鳴りの音ね…まぁ、このくらいの高さならいいでしょう」

ドロシー「だな」

ベアトリス「?」

ドロシー「あー…よく「歳を取ると高い音が聞き取りにくくなる」って聞いたことないか?」

ベアトリス「…」

アンジェ「その様子だと聞いたことがありそうね」

ドロシー「なら話が早い。要はそいつを活用しようって訳さ…今日から情報をのぞき見するわけだが、私がメモ帳だの何だのを読み漁っている時に誰かが来たんじゃ都合が悪い……そこでベアトリス、お前さんが廊下の掃除をしているふりをして、誰かが来たらこっちに向けて叫んでくれればいい」

ベアトリス「?」

アンジェ「どうして見回りには聞こえない音域だと分かるのか…と言いたいの?」

ベアトリス「♪」

アンジェ「それは簡単よ…」

………

…数時間後・商社の裏口…

ドロシー「こんばんはー」

警備員「おー…今日は冷えるなぁ」

ドロシー「まったくだねぇ……相方にいたってはこのザマさ」

ベアトリス「…」古ぼけてはいるが元は良かったらしいコートにくるまり、ガタガタ震える…真似をしているベアトリス

警備員B「風邪かい?」

ドロシー「みたいなんだ…かといって休んじゃったらお金がもらえないからね」

警備員「頼むから吐いたりしてオフィスを汚さないでくれよ?」

ドロシー「あたしだってそう願いたいよ…な、そうだろ?」(今だ…!)

ベアトリス「…(もう、勝手な事ばかり言わないで下さいっ!!)」

ドロシー「ああ、言われなくったってさ」(よし、聞こえてない…これで少しは楽になるってもんだな♪)

警備員B「ちゃんとやれよ?」

ドロシー「そのくらいあたしにだって分かってるよ」

ドロシー「…じゃあ見張りは頼んだぜ?」

ベアトリス「…」カクカクとうなずくベアトリス…

ドロシー「よし、ドアには何も挟んでない……まぁそりゃそうだよな」…ドアの隙間に挟んだ細い糸や髪の毛、ノブを動かすとすぐに落ちてしまうようなピン…そういった「痕跡を残すための小細工」がされていない事を確認するドロシー…

ドロシー「さて、書類棚は…と」両手を軽くこすり合わせてから絹の長手袋をはめ、ランタンの灯りが外に漏れないよう雑巾を引っかける…

ドロシー「ふふん…簡単な鍵だな……」がっしりした樫材のキャビネットについている真鍮製の鍵に、キーピックを差しこむ…手首や指のしなやかな十代のうちに養成所でみっちり訓練されただけあって、鍵穴に傷一つ付けないで鍵が開いた……

ドロシー「…」順番に並んでいる書類の列を乱したり、うっかり机の上の物を動かしたりしないよう慎重にファイルや封筒を取り出す……

ドロシー「……これじゃないな。売り買いの予定リストはどこだ…?」

ドロシー「…ふぅ、仕方ない……」部屋を見渡せる位置にある上役のデスクに取りかかる…片膝をついた中腰の姿勢で、指先と音を頼りに鍵を回す……

ドロシー「開いてくれよな……お、いい子だ…♪」


…大きなデスクの引き出しに入っている書類の束を探すドロシー…当然束をまとめているリボンの結び方から書類の順番までを素早く頭に叩き込み、それから取引予定の金額や対象の品物を読み通していく…


ドロシー「…(ケイバーライト鉱石四トン…4250ポンド32シリング……ウェールズ産・良質無煙炭五十トン…556ポンドきっかり……純金百トロイポンド…1072ポンド25シリング…)」

ドロシー「よし……今日はこれで良し、と…」

ベアトリス「…!」中年の警備員には聞き取れない高い周波数で、甲高い口笛のような音が三度響いた…

ドロシー「…っ、ベアトリスの警報だな……」慎重に書類を収めて引き出しを戻し、もう一度鍵をかけ直した……

…一階下の廊下…

警備員「おい、もう一人はどうした?」

ベアトリス「…けほっ、い゛ま゛……上の掃除に゛…」喉の具合が悪い振りをしながら人工声帯を直す…

警備員B「そうか…具合が悪いからって手抜きはするなよ」

ベアトリス「分かっ゛てま゛す……」

警備員B「ならいい……それにしてもあの娘、ひどいガラ声だったな?」階段をランタンで照らしながら、一段ずつ上って行く…

警備員「ああ、こっちまでうつされなきゃいいけどな。で、もう一人はどこだ?」

警備員B「さぁ…向こうじゃないのか?」ランタンをかざしてみながら目を細めて、薄暗い廊下の先を見ようとする…と、廊下の奥から女性のシルエットが近づいてくる…

ドロシー「よいしょ…まったく、やりきれないねぇ……」モップの突っこんであるバケツを両手で提げて、ぼやきながらやって来るドロシー…

警備員「…おい、一体どこを掃除してたんだ?」

ドロシー「言われた通りの場所さね…向こうの廊下を見てごらんよ。処女みたいに綺麗なもんさ♪」

警備員B「…手抜きして勝手に休んでたわけじゃないな?」

ドロシー「へん、そういう事を言うのかい…そんなに言うなら見てごらんよ?」埃っぽい汚れ水が入ったバケツを突きだす…

警備員「うへっ、汚いな…そんなもの見せなくていい」

ドロシー「仕方ないだろ?…こちらのお偉い紳士さまがあたしの仕事ぶりについておっしゃってくれるからさ」

警備員B「ああ、悪かった悪かった……いいからとっととかたづけて来い」

ドロシー「言われなくったってさ、こんなバケツをあと半時間も持たされたら腰が痛くなっちまうよ」

…しばらくして…

ドロシー「お疲れさん…さっきの「警報」ちゃんと聞こえたぜ♪」

ベアトリス「よかったです……やっぱり学校で試すのとは具合が違いますし、上手く行かなかったらどうしようかと…」

ドロシー「なに、だとしても私だって警戒は怠りないからな…いわば予防線さ」

ベアトリス「そうですか…っ///」いきなり「きゅぅ…」とお腹が鳴り、赤面するベアトリス

ドロシー「……せっかくだ、何かつまんで行こうか♪」

ベアトリス「え、でも…」

ドロシー「気にするな、ちょうど立ち売りがいるしおごってやるよ…なぁおっさん、そいつを一つとビールを一パイントくんな」…セブン・ダイアルズやコックニーあたりの訛で「べらんめえ口調」をきかせて声をかけ、油っこいフィッシュ・アンド・チップスを新聞紙に包んでもらい、素焼きの陶器で出来た粗末なジョッキに薄いビールを注いでもらうドロシー…

おっちゃん「へい、毎度……別嬪さんだからおまけしておいてやるよ♪」

ドロシー「へっ、どうもごちそうさま……さ、食おうぜ?」指先でペニー硬貨を弾いて渡すと、テムズ川沿いの護岸に腰を下ろした…

…しばらくして「コントロール」作戦室…

L「で、情報は入ったのか」

7「はい、ちゃんと「D」から入っております」解読した暗号をタイプした紙を渡す…

L「む…王国め、金の大量の買い付けで相場を吊り上げる気だぞ……気どられぬようにこちらも二百ポンドばかり「買い」に回る。明日の取引開始時刻に着くよう、各取引会社あてに文書使(アタッシェ)を送るように」

7「はい」

L「あぁ、それとな…」

7「何でしょう?」

L「予算の使途には「金五十ポンド分の買い付け」とだけ記述してくれ…予算計画書の十ポンド以下の位は切り捨てだから、残りは分散して紛れ込ませる」

7「…L、それは……」

L「ふ、鋭いな…そう、当然議会は金をトロイオンス換算で考えて「金五十トロイポンド」分だと思うだろうが、私は「金五十ポンド」を買いこむつもりだ……当然差額はこちらの隠し予算にプールさせる」

(※トロイオンス・トロイポンド…金の計量法。時代にもよるが、「一トロイポンド」は12トロイオンスでおよそ373グラム。「一ポンド」は16オンスで約453グラム)

7「分かっております」

L「これで、軍部の「ジェネラル」連中を一つ出し抜いてやれるな……他はケイバーライトか…」

7「ケイバーライト鉱石は各種の防諜・諜報組織が目を光らせておりますが…」

L「分かっている…ケイバーライト鉱は外し、代わりに採掘会社の「ロイヤルアルビオン・ケイバーライト」社の株を1000だ…買い注文は十社以上の証券会社に分けて、一株で五ポンド以上の含み益が見込めたらすぐに売りにかける……王国市場の動揺を誘ってやれ」

7「ええ」

L「後はウェールズの無煙炭だが…この間の資料は覚えているかね?」

7「…先月二十一日付の新聞にあった「鉱山でのストライキ」ですか?」

L「ああ、それだ……カットアウトを通じて数人のトレーダーにそれとなく「あの鉱山での労働争議が再燃しそうだ」と流してやれ」

7「そうなれば当然…」

L「売りが優勢になるだろうな…底値を打ったところで買いをかける」

7「はい」

L「今回はそれでいい…エージェント「D」はいい情報源を手に入れたな」

7「そのように伝えますか?」

L「言わなくとも向こうで分かっているはずだ……が、君から一言添えておいてくれてもいいぞ」

7「はい、分かりました」

L「うむ」

………

>>166 更新が遅くなってしまって申し訳ありません…それと、見て下さってありがとうございます


次はアンジェ×ベアトあたりを考えておりますが、他にリクエストがあれば頑張ってみます…

アンジェ「ドロシー、ベアトリス。二人に「コントロール」から新しい情報入手の命令と……追伸でメッセージがあるわ」

ドロシー「ほーん…?」

ベアトリス「一体何でしょう?」

アンジェ「読むわよ「…商品の品質はなはだ良好。取引先も気に入っているので、今後ともよい商品に期待している」だそうよ」

ベアトリス「褒められちゃいましたね、ドロシーさん?」

ドロシー「ああ。しかし、あの「L」にしちゃあ人間味のあるアクセントが入っているな」

アンジェ「おそらくこの文を起草したのは「L」ではない気がするわ…多分「7」じゃないかしら」

ドロシー「…だとしても起草した暗号文を最終的にオーケーするのは「L」のはずだ……意外にいいところがあるな」

アンジェ「そうかもね……それより今度の情報収集をもって、今回の作戦は一応終了ということになるそうよ」

ドロシー「こりゃまたずいぶんと急に…ドジを踏んだ覚えはないんだけどな?」

ベアトリス「も、もしかして私が何か…?」

アンジェ「いいえ、その可能性はないわ。もしそうなら「コントロール」も私たちを急ぎ壁の向こうへ脱出させるか、連絡を絶つか…さもなければ王国防諜部がここに押し寄せてきているはずよ」

ドロシー「同感だな。多分あっちの事情が変わっちまったんだろう」肩をすくめるドロシー…

ベアトリス「そうですか……せっかくお掃除も見張りもこなせるようになって来たのに…」

ドロシー「まぁいいじゃないか、これでゆっくり眠れるってもんだぜ?」

ベアトリス「…それもそうですね」

ドロシー「な?」

アンジェ「そうは言ってもまだ今回の任務が残っているのよ…気を抜かずにやりなさい」

ベアトリス「はい、アンジェさん」

ドロシー「ああ…最後までスマートに、だな♪」

………



…数日後・夜…

ドロシー「ふぃー…これでようやく任務完了だ♪」シャワーを浴びて来たドロシーはまだふんわりと湯気を残し、シルクのナイトガウン姿で髪を下ろしたままの気楽な様子で「よっこらしょ」とソファーに座りこんだ…

アンジェ「ご苦労様。入手した情報はもう送ったわ」

ドロシー「相変わらず手が早いな…ベアトリスもお疲れさん。いてくれたおかげで何かと助かったぜ♪」…ニヤッと笑うと、軽くウィンクをする

ベアトリス「いえ、そんな…///」

アンジェ「…そう言えばプリンセスが貴女を呼んでいたわよ……早く行った方がいいんじゃないかしら」

ベアトリス「姫様が?…すぐ行ってきます♪」

ドロシー「……やれやれ、何とも無邪気なもんだなぁ」

アンジェ「ベアトリスは貴女や私みたいにすれていないものね」

ドロシー「ああ…ところでさ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「せっかく無事に終わったんだし…少し付き合わないか?」隠し棚をごそごそやって、小瓶に入った上等のコニャックとグラスを取り出す…

アンジェ「そうね、いつもなら断るところだけど……今夜くらいは付き合ってあげるわ」

ドロシー「それじゃあ…「やっと終わった今回の任務と、このロクでもない金相場に」……乾杯♪」

アンジェ「…乾杯」

ドロシー「んくっ…はぁ、喉に暖かいのが流れて来て……私のすさんだ心まで優しく暖めてくれるじゃないか」

アンジェ「…ドロシー、貴女いつからそんなセンチになったの?」

ドロシー「バカ言え、私はいつだって無垢で純粋なハートの持ち主だぜ…どっかの「ミス・コールドフィッシュ」と違ってな♪」(※cold fish…冷たいやつ。冷淡な人)

アンジェ「……おっしゃってくれるわね」

ドロシー「なに、ちょっとしたユーモアだって…もう少しどうだ?」

アンジェ「そうね、ならもう少しだけ…」


>>167
>>1が許せるなら姫ベアトアンジェで3P

>>169 大丈夫ですよ…それでは「プリンセス+ベアト×アンジェ」のアンジェ総ネコで書こうかと思います……もうしばらくお待ちください

…しばらくして…

ドロシー「…なぁアンジェ」

アンジェ「なに、ドロシー?」

ドロシー「少し踊ろうか…伴奏も何もないけどさ」空になったグラスを置くと、優雅に立ち上がって手を差しだした…

アンジェ「…ええ」ドロシーが差しだす手に素直につかまり、そっと身体を預ける…

ドロシー「ところで…前に言ったっけか……」ゆっくりとしたワルツのテンポでアンジェをリードするドロシー…触れ合う身体からお互いの吐息や体温が伝わってくる…

アンジェ「何を…?」酔いが回っているのか、白い肌がかすかに桜色を帯びている…いつもの鋭く冷たい視線も少しだけ和らいで、とろりとしている……

ドロシー「私さ、何だかんだでアンジェの事……嫌いじゃないって…」

アンジェ「…そう」

ドロシー「ああ」くい…とあごを持ち上げ、じっと見おろす…

アンジェ「…ドロシー///」

ドロシー「アンジェ…んっ……」

アンジェ「ん、んくっ……ドロシー…」

ドロシー「悪いな…でもさっきアンジェに言われたみたいに、今は不思議と人恋しい気分なんだ……///」

アンジェ「黙って。言い訳は聞きたくないわ……それより、もう一回…///」

ドロシー「ああ…んちゅ…っ、ちゅぅ……ぷは…っ」いささか唐突に唇を離すドロシー…

アンジェ「はぁ、はぁ…っ……ドロシー…?」

ドロシー「…ごめん、私の勝手な気分でこんな真似して……アンジェにはプリンセスがいるのにさ…」

アンジェ「…」

ドロシー「あんな少しだったのに酔ったのかな……もう寝ることにす…」

アンジェ「ドロシー///」

ドロシー「……アンジェ?」

アンジェ「ここにだって……ソファーがあるわ…///」ちゅっ…♪

ドロシー「…それもそうだよな……んっ、ちゅぅっ…れろっ…ちゅぷ……んむぅ♪」

アンジェ「んっんっ、んぅっ……あむっ、ちゅぅ……ちゅぱ…ぴちゅっ…///」

………



ドロシー「はぁ、はぁ……アンジェは肌が真っ白でうらやましいな…」

アンジェ「ドロシーこそ…私にもそんな風に豊満な身体があったら……///」

ドロシー「……はは、お互い「ない物ねだり」ってやつだな♪」

アンジェ「ふふ…そのようね」

ドロシー「じゃあせめて気分だけでも味わわせてやるよ…ほら///」アンジェの手をはだけた胸元に誘導する…

アンジェ「…とっても柔らかいわね……しかもすべすべしていて…///」

ドロシー「……ああ…じゃあ私も……♪」

アンジェ「んっ、んんっ…ん、くぅっ……♪」

ドロシー「おぉ、すっごいな…指に絡みつくみたいで……しかも暖かくて…」

アンジェ「…いちいち言わなくてもいいわ///」

ドロシー「いや…ここは素直に褒めた方がいいかと思ってね……」

アンジェ「ふふふっ…♪」

ドロシー「ははは…♪」

二人「「あははははっ…♪」」

…翌日…

ドロシー「うー…あいたた……」

アンジェ「どうしたの、ドロシー…リウマチにでもなった?」

ドロシー「だから私を年寄り扱いするなって……どうも昨夜のアレが響いたみたいでさ…」

アンジェ「あなたがソファーの上で無理な体勢をとるからよ」

ドロシー「…あんな熱っぽくうるんだ瞳で誘って来たのはどこの誰だよ……いてて…」

ベアトリス「おはようございます、アンジェさん、ドロシーさん……」

アンジェ「おはよう、ベアトリス」

ドロシー「よう…おはようさん」(こりゃ昨夜はプリンセスと「お楽しみ」だったな…目の下にくままで作っておきながら、嬉しげな顔をしてやがる……)

ベアトリス「ええ、おはようございます」(ドロシーさん、昨夜はアンジェさんといちゃついていたみたいですね…身体の動きがぎくしゃくしているのに満足そうですし……)

プリンセス「おはようございます、皆さん♪」

アンジェ「おはよう、プリンセス」

プリンセス「ふふ…おはよう、アンジェ」

アンジェ「ええ」

プリンセス「昨晩はドロシーさんと仲よくできた?」

アンジェ「…何の事かしら」

プリンセス「あら…だって昨夜はベアトが私の所に来ていたから、きっとアンジェとドロシーさんとで打ち合わせや道具の手入れに励んでいたものと……それとも、何か違うことを想像していたのかしら?」

アンジェ「いいえ……それより今日はベアトリスと一緒に来たのね」

プリンセス「あら、ベアトは私のメイドなんだから何もおかしいことはないわ…でしょう?」

アンジェ「ええ、そうね…その割にはずいぶんと視線が揺れたけれど……」

ちせ「…おや、皆の衆はもうお揃いであったか。何とも心地の良い晴天で、空気も清冽として爽やかじゃな……二人ともどうしたのじゃ?」

アンジェ「いえ、何でもないわ」

プリンセス「ふふ、おはよう…ちせさん♪」

ちせ「…お早う、プリンセスどの」

プリンセス「そういえば昨日のお菓子は美味しかったわね……今度取り寄せますから、ちせさんもお茶会の作法の確認を兼ねて、一緒に召し上がりません?」(アンジェに問い詰められそうなタイミングで来てくれたものね…♪)

ちせ「お、おぉ…それはかたじけない♪」

ドロシー「……今朝はプリンセスの勝ちだな?」

アンジェ「…余計なお世話よ」

…case・プリンセス・ベアトリス×アンジェ「How to become a good spy?」(すぐれたスパイになるためには?)…

…とある日・「白鳩」のネスト…

ドロシー「ひゅぅ…どうやらコントロールもこの間の「予算ちょろまかし大作戦」でフトコロが豊かになったと見えて、申請した物は全部来ているようだぜ?」

アンジェ「そのようね……ドロシーとちせは木箱の中身を確認しておいてちょうだい」

ドロシー「ああ、任せておけよ…ちせ、ナイフとか刃物は任せた。回転砥石ならそっちの隅っこにあるから好きなようにやってくれ」

ちせ「うむ」

ドロシー「それじゃあ、私はハジキをいじくるとしますかね…♪」

ベアトリス「あのぅ…私は何をすれば……」

アンジェ「あなたにはしばらく復習を兼ねた工作員としての基礎訓練、それにより実践的な応用訓練を受けてもらうわ……分かっているとは思うけれど、あなたはまだスパイとしての訓練が足りていない」

ベアトリス「ええ、それは分かってます…」

アンジェ「よろしい。もっとも、そう言う面ではプリンセスも同じだけれど…彼女はあくまでも大事な「情報源」であって、目立つ立場にあることからいっても情報を引き出すような会話術や読唇術、書類の記憶のような「情報の入手」といった分野以外では、工作員としての技術を使う機会にはあまり恵まれない」

ベアトリス「はい」

アンジェ「…けれどその分、自由に動ける「プリンセス付き」であるあなたが情報の受け渡しや入手の仕方を覚えなければならないわ……もちろん、場合によってはプリンセスをお守りすることもね」

ベアトリス「私が…姫様をお守りする…」

アンジェ「そう、責任は重大よ」

ドロシー「そのために私たちが一緒についてきたのさ……お、新型のウェブリー・スコットか…相変わらずバランスがいいねぇ♪」

…ドロシーは趣味半分で、隠し持つには目立ちすぎてスパイに縁のない6インチ長銃身モデルの「ウェブリー・スコット」リボルバーなど、小火器数丁をダメもとで要求していた…が、作戦成功の「ごほうび」ということなのか、どれもきっちり揃えて箱に収まっていた…

アンジェ「その通りよ…本来なら養成所で数か月の速成訓練を受けてもらうのが一番でしょうけれど、「学生」である私たちの立場ではそうもいかない」

ちせ「左様。よってうちらがおぬしの教官になろうというわけじゃな……ふむ、この短剣は悪くないのぉ」

ドロシー「…ま、最低でも自分の身を守れるくらいにはな」片目を細め、壁に向けてウェブリーを構えるドロシー…

ベアトリス「が、頑張ります…!」

アンジェ「結構。では格闘の基礎から…最初は徒手空拳で、それから武器を使った格闘術を練習してもらう」

ベアトリス「はい」

アンジェ「そもそもいくら頑張っても、小柄な私たちが相手のエージェント…しかもたいていは大の男でしょうけれど…そうした連中との体格差をひっくり返すのは容易ではないわ」

ベアトリス「……ですよね」

アンジェ「けれども……別にボクシングみたいにルールがあるわけではないのだから、いくらでも相手の潰し方はあるわ」

ドロシー「そういう事♪……んー、こいつはちょっと引き金が固いな…後でヤスリがけをしないと…」

ベアトリス「アンジェさん、具体的には?」

アンジェ「…膝蹴りを相手の股ぐらにお見舞いする、目を潰す…足の甲を踏みつけるのもかなり効果があるわ。敏捷な動きを要求される近接戦闘で、相手が片脚をかばって動くようになれば、立ち回りで有利になる……」ベアトリスの胸元をつかみ、いくつか動いて見せるアンジェ…

ベアトリス「うわ…容赦ないですね」

アンジェ「こんな世界で騎士道精神でも発揮するつもり?」

ベアトリス「いえ、そういうわけではないですけれど…」

アンジェ「なら自分と、ほかならぬプリンセスのためにもよく体得しておくことね……後はみぞおちに肘を叩きこむ…特に小柄なあなたなら、真っ直ぐ腕を突きだすだけでいいから打ちこみやすい…私も小柄だから実際の場面ではかなり違うでしょうけれど…少しやってみなさい」

ベアトリス「いいんですか、アンジェさん?」

アンジェ「いいからためらわない…ためらうとあなたは誰かに「始末」されることになる」

ベアトリス「!?」

アンジェ「……分かった?」一瞬でベアトリスをねじ伏せ、胸元数インチの所にナイフの刃を突きつけている…

ベアトリス「わ、分かりました…」

アンジェ「よろしい……みんなの命もかかっているのだから、その博愛精神はどこかにしまっておきなさい」

ベアトリス「…はい」

ベアトリス「…はっ!」

アンジェ「ふっ」

ベアトリス「えいっ…!」

アンジェ「まだ甘い……もっと全力で叩き込みなさい」

ベアトリス「…やぁ…っ!!」

アンジェ「…っ、よろしい」ベアトリスの突きを受け止めた手を軽く振ると、今度は倉庫の片隅に放り出してあるがらくたを床一面に放り出した…

アンジェ「次は何かを得物にするやり方ね…ドロシー、いい?」

ドロシー「あいよ」

ベアトリス「よろしくお願いします、ドロシーさん」

ドロシー「はは、丁寧でいいじゃないか……ま、覚えて早々に格闘術なんてエラそうなものが出来るわけないし、むしろ中途半端に格闘術なんかを覚えていても相手は玄人だ…返り討ちにあうのがオチだろうな」

ベアトリス「じゃあどうすればいいんです?」

ドロシー「なに…しっかり格闘術が身につくまでは、私が裏町仕込みのダーティな(汚い)やり方を教えておくから、それで相手をノックアウトしちまえばいいさ♪」

ベアトリス「汚いやり方…ですか」

ドロシー「ああ、何しろ「効果はお墨付き」ってやつだからな……さて、一つ質問だ」

ベアトリス「何でしょうか?」

ドロシー「私たちみたいな人間が相手にして、一番苦手に感じるのはどんな奴だと思う?」

ベアトリス「それは……いつかの「ガゼル」みたいな…」

ドロシー「ははーん…ああいう「プロ中のプロ」みたいな奴か?」

ベアトリス「…ええ」

ドロシー「ちっちっちっ…そうじゃないんだな、これが」

ベアトリス「?」

ドロシー「玄人にはそれなりに「ルール」って言うか「原則」みたいなものがあるんだ…例えば相手と格闘するときは「刺し違え」じゃ困るから、絶対に勝つように動く」

ベアトリス「……あの、それは当たり前なのでは?」

ドロシー「ああ、ところが世の中にはその「当たり前」が通じない連中がいるのさ。困ったことにな……じゃあ「そう言う連中」って言うのは誰だと思う?」

ベアトリス「え、えーと…」

ドロシー「ふふーん、まぁ分からないよな……答えはアマチュアと、頭のどうかしている連中だ」

ベアトリス「…なるほど?」

ドロシー「アマチュアとかそう言う連中はどう動くか予想もつかないからな…私たちみたいなエージェントからすると苦手なんだ」

ベアトリス「……じゃあもしかして」

ドロシー「お、察しがいいな…そう、こういうがらくたで玄人のエージェントが苦手な「アマチュア」風にやってやろうってわけさ♪」床に散らかした割れた瓶や折れた椅子の脚、底の抜けたバケツ、曲がったスプーンのようなシロモノを指差した…

ベアトリス「でもこんなのでどうやっ…きゃぁ!?」

ドロシー「どうやって?……こうやってさ」あっという間に羽交い絞めにして、喉元に割れた瓶を突きつけている…

ベアトリス「あ…あっ……」

ドロシー「どうだ?」

ベアトリス「わ、分かりました……」

ドロシー「それじゃあ好きな得物を拾ってみな、私が一番いい「使い方」を教えてやるから♪」

ベアトリス「はい、やってみます」

ドロシー「ああ…どこからでもいいから、遠慮せずにかかって来るんだぜ?」

ベアトリス「はい…いきます!」折れて短くなったモップをつかんでとびかかった…

ドロシー「…やっ!」滑らかな動作でモップを弾き飛ばすと簡単に投げ飛ばし、一気に押さえこんだ

ベアトリス「ぐ…ぐぅっ……!」

ドロシー「悪くない…あと、その人工声帯は役に立つと思うぞ。何しろ喉を絞めても効かないんだからな」伸ばした片腕と胸元を脚で押さえているドロシー…

ベアトリス「ぐぅ…は、放してくださ……い…!」

…数時間後…

ベアトリス「あいたた……きっと明日は身体じゅうアザになってますよ…」

ドロシー「それも訓練の成果さ。それにしても私まで傷をもらっちまうとはね…」ベアトリスが振り回した割れた瓶がかすり、手の甲が少し切れている…

ちせ「ふむ「教えるは学ぶの半ば」と中国の故事にもある…人に教えることで学び直すこともある、ということじゃな」

ドロシー「ほーん…なかなかいい教訓だな……アンジェ、私はもういいか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「さてと…じゃあ今度はちせとアンジェだな」

ちせ「うむ……幸いにしてベアトリスと私は背格好もまあまあ似ておるゆえ、教えやすいはずじゃ」

アンジェ「そういう面もあるでしょうね」近寄った木箱には布が敷いてあり、スティレットやダガーナイフから投げナイフ、はたまた普通の包丁にバターナイフ、ペーパーナイフまで並んでいる…

アンジェ「さてと……」ナイフをひと振り取り上げ、ベアトリスに渡した

ベアトリス「え、えーと」良いマナーのお手本になりそうな持ち方で、ぎこちなくダガーナイフを持っている…

アンジェ「そんな持ち方だとあっという間に弾き飛ばされるわよ」しゅっ…と下からナイフを跳ね上げ、弾き飛ばした

ベアトリス「わわっ…!?」

ちせ「ふむ…日本では「隠密」のような連中は短刀をこう持つそうじゃ」刃を横に寝せて構える…

アンジェ「なるほど…だけどナイフならこの方がいいはずよ」刃を隠すように身体の脇に構え、下から突き上げるような動きをしてみせる

ベアトリス「こうですか?」

アンジェ「ええ……ここに丸めた絨毯があるからやってみなさい」もとは緑色だったらしいが、すっかり色あせているボロ布…とさして大差ない状態の絨毯を壁に立てかけ、支えを置いた

ベアトリス「それじゃあ…行きます!」勢いをつけて下から突き上げるベアトリス

アンジェ「結構」

ちせ「うむ、なかなか良いぞ」

アンジェ「ベアトリス…今度は上から突きたててみなさい」

ベアトリス「はい……やあ…っ!?」

アンジェ「分かったでしょう…その絨毯には木の枝が仕込んであって、上からだと刃が弾かれるように作ってあるの」

ベアトリス「どうしてですか?」

アンジェ「あばら骨は上からの異物は弾きやすいけれど、下から突き上げて来るものには弱い…その人体の構造を模してあるわ」

ちせ「……ふむ、まるで解剖学じゃな」

アンジェ「ええ、そうね」

ベアトリス「なるほど…うー、手がジンジンします……」

アンジェ「実際だったら相手を始末し損ねているでしょうね……絶対に上から刃を突きたてようとはしないこと」

ドロシー「もっとも、ベアトリスは小柄だから相手はかわしにくいし…そう言う面でも有利だよな」

ベアトリス「むぅ…あんまりほめられても嬉しくないですね……」

ドロシー「おいおい、小柄ならナイフを使った格闘で懐に潜りこんで脇の下だとか内腿みたいな急所を突けるし、なによりデカブツよりもちょこまか動けるから有利なんだぞ…どこかの誰かさんみたいにな」

アンジェ「…」

ちせ「…むむ」

ドロシー「おっと、失礼」

アンジェ「こほん…とにかく、狙うのは太い血管のある場所か腱のある場所……非力でも相手に与える影響が大きいわ」

ベアトリス「なるほど…ふぅ……」

アンジェ「今日はこのくらいにして、残りはこの絨毯への攻撃を四十回は行うこと…私たちはその間に他の道具を片づける」

ベアトリス「はい」

………

…別の日…

アンジェ「…さてと、今日から銃器の訓練も始めていくわ」

ベアトリス「こんなところで、ですか?」

アンジェ「ええ」


…アンジェたちがいるのはとある中くらいの鉄工所で、表向きは煙と火花を散らしながら王国の蒸気機関車や自動車向けの鉄板を作っている…が、実際には共和国がダミー会社を通して作った鉄工所で、普段は注文を通して王国の情勢や工業界の情報をスパイしつつ資金を洗浄(ロンダリング)し、工員の中に入っているエージェントや資金係へ「きれいな」活動資金を提供する…そしてもし王国との関係が悪くなったら鉄に混ぜ物をしたり作業を遅らせたりして王国の兵器生産を遅らせ、また使い物にならなくさせる……アンジェたちがここへ来たのは小火器訓練のためで、どうやっても他の音には聞こえない銃声を、鉄工所の騒音に隠してしまおうという「コントロール」の考えで作られた射撃場が地下にあり、レンガの乾いた地下室に、ぼんやりと上の騒音が響いている…


ドロシー「ここなら音も気にしないで済むし、出入りに使える道も数本はあるからな…」ベアトリス用の小型リボルバーを台に置いた

ドロシー「さて、ドロシー先生からベアトリス君に質問だ…銃のもつ一番の利点は何だと思う?」

ベアトリス「えーと……遠くから相手を狙えることですか?」

アンジェ「まぁ、それもあるでしょうね。ちせが刀の達人でも、刃の届く距離よりも遠くから撃たれては喧嘩にならない」

ドロシー「ああ…が、もっと大事な点が一つある」

ベアトリス「何でしょう?」

ドロシー「どんなチビでも巨人みたいな相手を倒せる…ってことさ♪」

アンジェ「…ドロシーの言う通り。だから人によっては銃の事を「イクォライザー」と呼ぶくらいよ」(※equalizer…本来は電圧などの「等圧器」のこと。転じて「勝負を平等(イコール)にするもの」の意)

ドロシー「とはいえ銃も万能じゃない……特に私たちみたいな世界の人間からすると欠点も多々ある。何だと思う?」

ベアトリス「そうですね…大きくてかさばることですか?」

ドロシー「悪くないな。他には?」

ベアトリス「音が大きいこととか…?」

ドロシー「ああ、そいつは最悪の欠点と言ってもいい……こんなに科学が発達しているんだし、そのうちに銃の音を消すような装置が出来たっていいもんだけどな」(※サイレンサーの発明は1900年代頃…実用され始めたのは第二次大戦の頃から)

アンジェ「けれど、それもまだ正解とは言いにくい」

ベアトリス「じゃあ…傷から撃たれたことが分かってしまう、とか?」

ドロシー「そいつはナイフの傷だって同じさ…あるいは毒だってちゃんと調べれば、たいてい盛られたことが分かる」

ベアトリス「むぅ…何でしょうか……分かりません」

アンジェ「まぁそうでしょうね」

ドロシー「なに、構わないさ……正解は「銃は銃にしか見えない」ってことなんだ」

ベアトリス「?」

ドロシー「たとえばナイフならペーパーナイフそっくりに作ったり、スティレットを万年筆に仕込んだっていい…だけど銃だとそうはいかない」

アンジェ「しかも用途は相手を撃つためのもの…さらに一般人は持っていない」

ドロシー「……つまり相手に銃を持っているのを見られたら」

アンジェ「素早く始末しなさい」

ドロシー「そのためには…」

アンジェ「一発目を命中させる必要がある」

ドロシー「そういうこと……それに、もしかしたら一発目を撃った瞬間に汽笛が鳴るかも知れないし、自動車事故で音がかき消されるかもしれない」

アンジェ「もしかしたら空耳と思って素通りしてくれるかもしれない」

ドロシー「そういうこと…だから一発目を当てられるように練習するのさ。それに初弾で相手がやれなくても、どこかに当たっていれば「五体満足」とはいかなくなる」

アンジェ「そうして動きが鈍ったら…」

ドロシー「とどめの一発をズドン…ってわけさ」

アンジェ「じゃあ、装填されている分を撃ってみなさい」

ベアトリス「…はいっ」

ベアトリス「それでは始めますね?」

ドロシー「あいよ。その間に私もいじくった銃をテストしておくかな♪」

アンジェ「まったく…その奇妙きてれつなアイデアの豊富さには頭が下がるわね」

ドロシー「えー、どこがだよ?」

アンジェ「全部よ…私たちのような世界の人間にそんなのが必要かしら?」ドロシーが構えている6インチ長銃身の「ウェブリー・スコット」リボルバーに取り外しのきく木製ストックを付けたピストル・カービン……のようなカスタム銃を指差し、あきれたように首を振った…

ドロシー「もしかしたらいるかもしれないだろ…中距離の精密射撃とか」

アンジェ「…あきれて物も言えないわ」

ドロシー「ちぇっ、いい考えだって言ってくれると思ったんだけどな……トカゲ女にはこの銃の良さは分からなかったか…」

アンジェ「…」パンッ…!

ドロシー「へぇ…射撃の腕は相変わらず大したもんだ♪」バンッ、バン…ッ!

アンジェ「あなたもね……ベアトリス、もう少し腕を真っ直ぐに伸ばしなさい」

ドロシー「そうそう、銃身と的が一直線になっているのが大事なんだ…あんまり照門をのぞきこむのに一生懸命になっちゃダメだぜ?」

ベアトリス「は、はいっ…!」バンッ!

ドロシー「…なかなか上手いもんじゃないか。その調子でもう一回やってみな?」

ベアトリス「はいっ、分かりました…っ♪」

ドロシー「さて、次に取り出しましたるこちらの銃は…♪」

…麻袋の上に乗せてあるのは「リー・エンフィールド」小銃のストックを切り落として銃身の部分も切り詰めたシロモノで、元は人の背丈ほどもありそうな長さの歩兵用ライフルだったものが、三十センチもないくらいの短さになっている…

アンジェ「相変わらずのむちゃくちゃぶりね」

ドロシー「おいおい、何も言わないうちからそれかよ…」

アンジェ「ならメリットを説明してちょうだい?」

ドロシー「へいへい。アンジェなら覚えているだろうけどさ…いつぞやの作戦の時、車に追いかけられたことがあったろ?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「あの時は私だったから一発で運転手にぶち込めたけれど、あんな離れ業はそうそうやれるもんじゃないしな…で、これさ」

アンジェ「…これがなんなの?」

ドロシー「見ての通り、リー・エンフィールド小銃をギリギリまで切り詰めたのさ…さすがに.303ブリティッシュの鉛玉を雨あられと喰らったら、どんな車だってひとたまりもないだろ♪」

アンジェ「……どこからそんな発想が出てくるのかしらね」

ドロシー「こいつは新大陸で西部を開拓してるような連中のアイデアさ…長いライフルをいつも背負ってるより、ホルスターに突っこめるこういうのなら持ち運びが便利だってことらしい」

アンジェ「命中率はひどく悪そうね」

ドロシー「なーに、もとより荒事になった時にしか使わないつもりだし、できるだけ箱か何かの上で据え置きにして使うつもりだからな」

アンジェ「…私たちは兵士ではないのだから、そもそも「荒事」にならないように努力すべきね」

ドロシー「まぁな。ま、ちょいと試してみますか…!」バン、バン、バンッ…!

ベアトリス「わぁっ…!?」

アンジェ「なるほど、その早撃ちは大したものね……それこそウェスタンに行けば良かったんじゃないかしら」ボルトの動きが短く速射向きの「リー・エンフィールド」とはいえ素晴らしい速射をみせるドロシーに、あきれつつも眉をあげるアンジェ…

ドロシー「ふふん…お褒めの言葉をどうも♪」

>>179 読んで下さってありがとうございます。引き続き(更新は遅いですが)お付き合いいただければ幸いです……ここ数日涼しいですし、少しは投下するペースも上がると思いますので…


…見て下さっている皆さま方も、疲れがどっと出やすい時期ですので、お身体には気を付けてくださいませ…

…別の日・部室…


ベアトリス「あの、ドロシーさんにアンジェさん……今日の訓練はあれだけですか?」

ドロシー「ああ…あんまり訓練ばっかりだとお前さんも疲れちまうだろうし、何より目つきが鋭くなっていけないからな」

ベアトリス「でも、私は早く姫様をお守りできるようになりたいんです……」

ドロシー「気持ちは分かるが、メリハリって言うのは大事だからな……なぁに、また明日っからビシビシしごき倒してやるよ♪」

アンジェ「そういう事よ…時間もあるし、カードでもやりましょうか」

ドロシー「お、いいね…♪」

ベアトリス「カードですか…私は姫様がお暇な時によく相手をしているので、あまり弱くはないと思いますよ?」

ドロシー「へぇ、それは楽しみだ♪」

アンジェ「カードは良いけれど、何にする?」

ドロシー「うーん…ホイストは人数が足りないし、かといってヴェンテアンはバカでも出来るしな……ポーカーはどうだ?」

アンジェ「なるほど、悪くないわね」

ドロシー「…ベアトリス?」

ベアトリス「いいですよ」

ドロシー「よし、決まりだ♪」

アンジェ「なら用意をするわね」緑色の紗で出来たテーブルクロスを敷き、カードの一揃いを取り出した…

ドロシー「さてと…誰がシャッフルする?」

アンジェ「私の出したカードだから、不正のないように…ベアトリス、あなたがシャッフルしなさい」

ベアトリス「分かりました……はい、出来ましたよ」手札を配り、山札をテーブルの真ん中に置いた…

ドロシー「なぁ…せっかくだし何か賭けようぜ?」

アンジェ「賭けにするのは嫌いよ。純粋に頭脳で楽しめなくなるもの」

ドロシー「それもそうか…ま、ベアトリスもいるしな」まるでベアトリスが小さい女の子か何かのように、噛んで含めたような言い方をするドロシー…

ベアトリス「む……ドロシーさん、それは一体どういう意味ですか?」

ドロシー「いや、別に他意はないさ。ただ……私はベアトリスの実力を知らないし、賭けるものが何にせよ巻き上げちゃ可哀そうだな…って♪」

ベアトリス「あーっ、またそうやって私をバカにして…私だって人並みにカードくらいできますよっ」

ドロシー「いや、だからそう言う意味じゃないって…な?」

ベアトリス「いいえ、何だって賭けようじゃありませんか……アンジェさん、すみませんが賭けにしましょう?」

アンジェ「ふぅ、分かったわ…それじゃあ勝負は一回につき一ペニーで、誰かの負けが一シリングまで行ったら止めにしましょう」

ドロシー「あいよ…えーと、シリング銀貨の手持ちはあったかなー……と♪」

ベアトリス「…むぅ」

アンジェ「それじゃあ私が最初に引くわ」

………

ベアトリス「…これで勝負です!」

ドロシー「あいよ」

アンジェ「ええ…それで、手札は?」

ベアトリス「私はスリーカードですが、お二人は?」

ドロシー「悪いな…フォーカードだ」

アンジェ「ストレート」

ベアトリス「む……分かりましたよ」

アンジェ「いい加減そのくらいで止めておいたら」

ベアトリス「そうやって勝ち逃げする気ですか。そうはいきませんよ?」

ドロシー「って言ってもなぁ……かなり負けが込んでるぜ?」

ベアトリス「むむむ…!」

ドロシー「分かったわかった、もう少しだけ付き合ってやるから」

ベアトリス「…じゃあ引いて下さい」

ドロシー「あいよ……よし、勝負だ♪」

アンジェ「そう。私は降りる…ベアトリスは?」

ベアトリス「むぅ……待ってくださいね…」余裕の笑みを浮かべるドロシーを穴が開くほどじっと見つめて、どうにか気持ちを読み取ろうとする…

ドロシー「ほら、勝負するのかしないのか…どっちだ?」

ベアトリス「…分かりました、降ります」

ドロシー「そうか、ならいただきだな…♪」指でペニー硬貨をはじき上げ、落ちてきた硬貨をパシッとつかまえるドロシー…

ベアトリス「で、手札はどうだったんです?」

ドロシー「…知りたいか?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「ブタさ…何にもなし♪」ぱらりと手札を開いてみせる…

ベアトリス「えっ!?」

ドロシー「ふふーん…これだから「ポーカーフェイス」っていうのさ♪」

アンジェ「ドロシーはまだまだだけれど、ね」

ドロシー「私は感受性が豊かなんだ……どこかの冷血動物とは違ってな」

アンジェ「好きなだけ言っていなさい。じゃあ今度は私が…あら、ベアトリスは今ので一シリングに達したようね」

ベアトリス「え?…あ、本当ですね……」

アンジェ「ならこれで「訓練」はおしまいにしましょう」

ベアトリス「むぅ、途中までは結構勝てたんですが…って、訓練?」

ドロシー「ああ、言わなかったっけ?」

ベアトリス「言わなかった……何をです?」

ドロシー「実は今のも訓練だった、ってこと。カードをやりながら表情や捨て札から相手の心理を見抜き、逆にこっちの意図はさとられないようにする読心術の訓練だったのさ♪」

アンジェ「ええ。相手の心を見抜く練習よ」

ベアトリス「じゃあもしかして…」

ドロシー「最初に私が茶化してあおったのもわざとだったのさ……しかしベアトリスはわっかりやすくていいな♪」

アンジェ「まだまだ訓練しないといけないわ」

ドロシー「ま、そういうアンジェも「とあるプリンセス」の事になると目の色が変わるがね…♪」

アンジェ「…」

>>183 見て下さってありがとうございます…そろそろアンジェたちがいちゃいちゃし始める頃ですが、もう少々お待ちください……

…その日の夜・部室…

アンジェ「さぁ、入って」

プリンセス「ええ。 …この時間は寮が静かでいいわね♪」

ベアトリス「そうですね…それはいいんですが、こんな時間にも訓練ですか……」

アンジェ「この世界では二十四時間、常に神経を尖らていないといけないのだから当然よ。それにプリンセス…もちろんベアトリスも、格闘や射撃よりは情報の入手や隠蔽の仕方を覚える方が重要よ……だから、ある程度まとまった時間が取れるこの時間に呼び出したわけ」

プリンセス「……情報の入手と隠蔽…ある意味ではプリンセスの役割に似ているわ」

アンジェ「ええ、そうでしょうね」(…お互いに「プリンセス」の大変さは良く知っているものね)

ベアトリス「それで、何を訓練するんでしょうか?」

アンジェ「まずは情報の入手ね…この部屋に「機密書類」として適当な手紙が数枚隠してあるわ……二人には十分あげるから、探し出してみなさい」

ベアトリス「…十分ですか?」

アンジェ「言っておくけれど、十分は思っているより短いわよ……では、始め」

ベアトリス「えーと…姫様、どうしましょうか?」

プリンセス「そうね……では左半分はわたくしが調べますから、右半分はお願いね?」

ベアトリス「はい、分かりました…っ!」

………



アンジェ「…」

ベアトリス「うーん…ない……ここにもない…」

アンジェ「…」ちょこんと椅子に腰かけて、冷ややかな目でベアトリスとプリンセスを見ている…

プリンセス「んー…あ、あったわ♪」

アンジェ「まずは一枚ね…あと二分よ」

ベアトリス「えぇっ、全然終わりませんよっ!?」

アンジェ「ならもっと手早く探すことね……あと一分」

ベアトリス「うぅ…むぐぐ……!」アンジェが「機密書類」を小さくたたんで、机の脚の下に敷いて隠してあるのではないかと、飾り棚を動かそうとする…

アンジェ「…終了」

プリンセス「ふぅ、自分では結構「スパイ稼業」が板についてきたと思っていたのだけれど……アンジェからしたらまだまだヒヨコのようね?」

アンジェ「ええ、そうね。それでも一枚見つけただけ、もう一匹の「ヒヨコ」よりはマシだけれど…ベアトリス」

ベアトリス「は、はい…」

アンジェ「あなたの目は何を見ているの? 眼科に通った方がいいんじゃないかしら?」

ベアトリス「そんなこと言ったって…全然見つからないんですよ」

アンジェ「じゃあこれは何?」テーブルの上に広げてあった教科書とラテン語の書きとり用紙…に重ねて置いてある「機密書類」をひらひらさせた…

ベアトリス「えっ、そんなところに…!?」

アンジェ「ふぅ…ベアトリス、あなたにはあれだけ人の心理について教えたのに……これでは素人もいい所よ」

ベアトリス「…ごめんなさい」

アンジェ「どんな素人だって、まずは鍵のかかった引き出しや隠し戸棚のありそうな場所を真っ先に探そうとするわ……そもそも、手際よく処分する必要がありそうなものを机の下や鍵のかかった引き出しにしまうとでも?」

プリンセス「言われてみると……私が見つけたのも本棚に軽く挟まっていたわね」

アンジェ「機密書類を隠す時はそういう具合に隠すものよ…ベッドの下なんかに隠したりはしないの」

ベアトリス「でも、棚のカシェット(隠しスペース)は?」

アンジェ「あれは「素人に」秘密を探し出されないためのものよ…例えば愛人からの恋文とか、ちょっとした隠し財産…そんなものを隠すにはいいけれど、玄人には通用しない……そもそもカシェットのある家具は年代やスタイルが限られているし、隠し場所もある程度目安があるから、むしろ慣れた人間は探すのに時間がかからない」

アンジェ「…今度は暗号やメッセージを書く時のコツについてよ……二人とも、座って」

プリンセス「アンジェったら、何だか先生みたいね…♪」

アンジェ「からかわないでちょうだい」

プリンセス「分かっているわ……どうぞ続けて?」

アンジェ「なら…プリンセス、適当に予定を「わからないよう」書き起こしてみて」卓上の便箋をプリンセスの手元に滑らせた

プリンセス「ええ♪」流麗な字体でさらさらと書き上げ、アンジェに渡した…

アンジェ「次はベアトリス。あなたの番よ」

ベアトリス「はい」

アンジェ「…さてと、まず「手紙の中身」うんぬんの前に言っておくことがあるわ」

ベアトリス「何でしょうか…?」

アンジェ「書き物をしたときはその下の紙を、少なくとも数枚は捨てなさい…それも丸めて捨てるのではなく、きっちり灰になるまでランプなり暖炉なりで焼き捨ててしまうこと……いい?」下に敷かれていた便箋を軽く鉛筆でこすると、書いた文字が白いシルエットになって浮かび上がった…

ベアトリス「うわ、はっきり読めますね…」

アンジェ「分かった?」

ベアトリス「はい、分かりました」

アンジェ「結構……では中身の採点にとりかかるわ」

プリンセス「…どうかしら?」

アンジェ「なかなか良く書けているわ……「明日は『茶畑』で畝をつくり、昼過ぎには『アシュレー』、『ディック』、『バーク』、『チャールズ』氏とお茶…夕食後は『北』の舞踏会」…及第点ね。ベアトリス」

ベアトリス「はいっ」

アンジェ「今のを解読してみなさい」

ベアトリス「えーと…『茶畑』は分かりませんが、おそらく学校の事ですよね……『アシュレー』や『ディック』は私たちの頭文字を使って男性の名前にしたものかと思います……最後の『北』の舞踏会は…ごめんなさい、見当もつきません」

アンジェ「よろしい。ただしもう少し頭を働かせることね…『茶畑』は学校の事だけれど、これは制服の緑色が並んで、きっちり列になって授業を受けている様子からね」

プリンセス「ええ」

アンジェ「人名はベアトリスの言った通り私たちの名前をもじったもの…『北』の舞踏会はホークスリー卿のことね」

プリンセス「当たりよ、アンジェ♪」

ベアトリス「……なんでホークスリー卿が「北」なんですか?」

アンジェ「大鼻のホークスリー卿を『鼻』(nose)と『北』(north)で掛け言葉にしたのね…どう?」

プリンセス「ええ、正解♪」

ベアトリス「あぁ…なるほど……」

アンジェ「お次はベアトリス、あなたのよ…「午前中は『S』で過ごす…昼下がりには『鹿』と『天使』、『お人形さん』とお茶会を開く……夕方からは『鹿』のお世話をし、夜には『天使』からオリーヴの枝を受け取る……一見するとおとぎ話の好きな子供が書いた可愛い文章に見えるし、なかなか悪くないわ」

ベアトリス「そ、そうでしょうか///」

アンジェ「そういう性格や身の丈に合った文章で暗号が書けると、読まれても違和感がないからいいわ…プリンセス、この暗号は解ける?」

プリンセス「やってみるわね……えーと、『S』は学校(school)……で、アンジェが『天使』(angel)ね…」

アンジェ「少し安直だけれど、始めた段階だからまぁいいでしょう…他は?」

プリンセス「うーん…あ、ドロシーさんが『お人形さん』ね?」

アンジェ「そうね…ドリー(Dolly…ドロシーの愛称)から『お人形さん』(doll)と言いたいのでしょう…どう、ベアトリス?」

ベアトリス「あ、はい……ドロシーさんは『お人形さん』には見えませんし、二重の意味で暗号にいいかな…って」

…ドロシーの私室…

ドロシー「……えっくし!」

………

アンジェ「で、プリンセスが「大事な人」(dear)だけに『鹿』(deer)…なかなか大胆な告白ね、ベアトリス」

ベアトリス「///」

プリンセス「あら…♪」

アンジェ「まぁいいわ…で、「白鳩」の訓練だから『オリーヴの枝』(※聖書「ノアの方舟」から)と……なかなか上手いものよ」

アンジェ「さて次は…「情報の引き出し方」ね……」

ベアトリス「引き出し方、ですか」

プリンセス「つまり会話術…って言う事かしら?」

アンジェ「それもあるわ。他にも脅迫、懐柔、情に訴える……相手次第でやり方はさまざまね」

ベアトリス「それで、今日はどれを学ぶんですか?」

アンジェ「そうね…そこは一番成果を上げやすい「ピロートーク」(ベッドでの仲睦まじいおしゃべり)かしら」

プリンセス「まぁ…♪」

ベアトリス「///」

アンジェ「ピロートークともなれば、だいたいがベッドで二人きり…しかもその前に「秘密の関係」を持ったともなれば、誰だって舌が滑らかになるものよ……」

ベアトリス「そ、そんなこと言ったって…!」

アンジェ「別に恥ずかしがることはないわ…任務だもの」

ベアトリス「で、でも…///」

アンジェ「もっとも……あなたみたいな純粋な娘はすれっからしの貴族娘なんかには受けがいいわ。大事にしておきなさい、ベアトリス」少しだけ微笑みかけた…

プリンセス「アンジェ、こればかりは私には縁がなさそうね?」

アンジェ「でもないわ…プリンセスが無邪気な様子でベッドに連れ込んで、そばでベアトリスが聞き耳を立てたっていい」

ベアトリス「…っ」

アンジェ「言いたいことは分かるわ、ベアトリス…私も最初の時は、しばらく自分が薄汚れた気分になったもの……」

ベアトリス「いえ、私はいいんですよ…でも姫様に…」

アンジェ「だからこそよ。プリンセスとお付き合いするような連中なら何かしら特別な情報を持っている……いわば「金の卵を産むガチョウ」よ」

プリンセス「でもそんな情報源だと、私から漏れたことが分かってしまうのではないかしら?」

アンジェ「ふふ、鋭いわね……別に情報って言うのは、必ずしも新しい物を仕入れるばかりが能じゃないわ…裏付けだって大事だし、必ずしもすぐに使うわけでもない……「金の卵が孵る」よう、手元で温めてやることもあるわ」

プリンセス「難しいのね」

アンジェ「そうね…だけど私たちの立場でそこまで考える必要はない。せいぜいコントロールが頭を抱えて悩めばいい話よ」

ベアトリス「あの、それで「訓練」…って///」

アンジェ「…私がどこかの貴族令嬢か何かの役をやるから、二人がかりで私を「愉しませて」みなさい……それが済んだらいろいろ話しかけて、何か情報を引き出してみること」

ベアトリス「そ、そんなこと…っ///」

アンジェ「できないとは言わせないわ……だいたい、私だって好きでこんな色情狂みたいな真似がしたいわけじゃない」

ベアトリス「で、ですよね…ごめんなさい」

アンジェ「謝らなくていいわ。それに、私に出来ることが貴女にできないとも思えない」

ベアトリス「……そ、そうですか?」さりげない口調でアンジェにおだてられ、頬を赤くするベアトリス…

プリンセス「でも…ちょっと恥ずかしいわね、アンジェ?」

アンジェ「私もよ、プリンセス……でも練習だから仕方ない。いろいろ試してみてちょうだい」

プリンセス「そう…そうね」(…ふふ、アンジェの弱い所を調べるいい機会になりそうね♪)

アンジェ「じゃあ寝室でベッドに座って、たわいないおしゃべりをするところから……」

復活おめでとうございます…また時々投下していくので、なにとぞお付き合いください

プリンセス「…ふふっ、それで?」ベッドの上でたわいないおしゃべりに興じる三人…そしてアンジェはいつもの冷めたような態度ではなく、貴族令嬢らしい気位の高さをかもしだしている…

アンジェ「ええ、わたくしはこう言って差し上げたのです…「貴女に興味はありません」と」

プリンセス「まぁ、おかしい♪ …ですが、貴女もお付き合いしている方などいらっしゃるのでしょう?」

アンジェ「ならよいのですが、わたくしは家の者が厳しくて…少なくとも伯爵令嬢以上でないと門前払いですの」

プリンセス「まぁ…では今までよい縁談はなかったのですか?」

アンジェ「ええ。 …わたくしだっていい年頃ですし、このままオールドミスになるのは嫌ですわ」

プリンセス「…とはいえ家の方がよいご婦人を紹介してくれないのでは、難しいですわね?」

アンジェ「そうなんですの……それに結婚までとは言わずとも、わたくしとて「一人の女」として誰かに愛されてみたいですわ///」

プリンセス「……なら、わたくしで試してみてはいかが?」

ベアトリス「!?」

アンジェ「そんな、おそれ多いことですわ…!」

プリンセス「ふふ、大丈夫…内緒にしておいてあげますから♪」

アンジェ「…本当に?」

プリンセス「ええ。わたくしとて、ときおり身体が火照って仕方ない時がありますもの…ね?」

アンジェ「で、でしたら…お相手をお願いいたしますわ」

プリンセス「ふふっ、これは二人だけの秘密ですよ……ちゅっ///」

アンジェ「んっ、ん…んむっ、ちゅぅ……///」

プリンセス「んっ、ふ…んくっ、ちゅぅぅ……れろっ、ちゅぅ♪」

アンジェ「んふっ、んっ……んぅぅ、ぷは…っ///」

プリンセス「…ふふ、今度はベアトも交ぜてすることに致しましょう♪」

アンジェ「そ、そんなはしたない事…きゃあ!?」

プリンセス「案ずることはありませんよ…護衛は控えの間にいるだけですし、あの分厚い扉なら音も漏れませんわ♪」

アンジェ「そ、そうではなくて……んくっ!?」ちゅるっ、にゅる…ちゅぽ……っ♪

プリンセス「…ぷは♪」

アンジェ「はぁ、はぁ……プリンセスが、わたくひに…こんな……///」

プリンセス「ふふ…では、失礼して……♪」とんっ…とアンジェをベッドに突き倒すと四つん這いの姿勢で近寄っていき、胸元のデコルテに手を差し入ると柔らかな乳房を揉みしだく…

アンジェ「んっ、はぁぁ…っ///」

プリンセス「ベアト、よかったら貴女も♪」

ベアトリス「はい、姫様…ちゅぅ、んちゅ……ちゅぅぅ///」脇から顔を近づけ、そっと唇を沈めていく…

アンジェ「んぅぅ……あむっ、ちゅぅ…ちゅむ……///」

プリンセス「あら、先端が固くなって…気持ちいいのかしら♪」

アンジェ「んむぅ…むぅ///」

プリンセス「あらあら。唇をふさがれているから、何を言っているか分からないわね…♪」

アンジェ「んっ、んっ…んっ、んぅぅ…っ!」

プリンセス「ふふ、「びくんっ」って身体が跳ね上がって…まるでお魚のようね」

アンジェ「ぷはぁ…はぁ、はぁ……♪」

ベアトリス「アンジェ様…お口の中、とっても熱くてよろしかったですよ♪」

プリンセス「ふふ、それじゃあ今度は身体の方を……ね、ベアト♪」そう言いながら小机の上に置いてあった羽根の扇をそっと差し示し、目配せをした…

ベアトリス「…はい♪」

スレ復活後の投下が早くて嬉しい

>>191 こちらこそ、早々にコメント下さって嬉しいです…サーバーダウンの間、次の回のあらすじとシチュエーションだけは多少考えておりましので、この回が終わったら少しだけ投下が早くなる……かもしれません

プリンセス「それじゃあ脱がせてあげます…ね♪」

アンジェ「ふぁぁ…っ、あぁ…っ///」

プリンセス「ふふ、白くて柔らかくて……まるで陶器のような肌ね♪」

ベアトリス「…姫様」

プリンセス「…準備できた?」

ベアトリス「…はい♪」

アンジェ「何の内緒話をなさっているの…っ、早く、わたくしを……っ///」

プリンセス「ふふ、焦らないで…♪」たたんだままの洋扇で、さわさわと脇を撫で上げる…

アンジェ「んっ、あふっ…何を……っ!?」

プリンセス「ふふ…ベアトも、アンジェさんを撫でてあげて?」

ベアトリス「はいっ♪」足指の間に羽根の飾り物を滑らせてくすぐる…

アンジェ「あっひゃぁぁ!? ひうっ、ひぃぃ…んっ///」

プリンセス「ふふ、弱いのはここかしら…それとも、こっちかしら?」

アンジェ「ひぅぅんっ、あひぃぃっ…はひっ、くすぐった……はひゃぁぁっ///」

プリンセス「んー、やっぱり脇腹が一番みたいね♪」

アンジェ「やめ…ひぃぃっ! これ以上…っ…はひゃあっ……くすぐられたら…ひぃぃ…っ、息が……あひぃぃっ///」

ベアトリス「…」

プリンセス「どうかしたの、ベアト?」

ベアトリス「……アンジェさんの身悶えている様子…癖になりそうです///」

プリンセス「ふふ、ベアトもアンジェの可愛い所が分かったみたいね…そうねぇ、ここがいいかしら?」

アンジェ「いっ、あぁぁっ…ひぐぅぅっ、ひゃあぁっ!」

プリンセス「んふふっ…それじゃあ今度は舌で直接……♪」

アンジェ「あっ、ひぅぅ…っ♪」とろ…っ♪

ベアトリス「…じゃあ私は反対側を……れろっ♪」

アンジェ「ひっ、んあ゛ぁぁ…っ!!」びくっ、びくんっ…!

プリンセス「ふふふ…こんなに先端を堅くして……あむっ♪」こりっ…♪

アンジェ「ひっ、あはぁぁ…っ!?」ぷしゃぁぁ…っ♪

ベアトリス「わぁ、姫様がまたがっているのに身体が浮き上がりましたよ…そんなに気持ちいいですか、アンジェ・さ・ん?」

アンジェ「はひゃぁぁっ、ひぃぃっ…はひゅっ、はひっ♪」

プリンセス「このままだと窒息してしまうわね…しばらく息を吸わせてあげましょう♪」

ベアトリス「はい」

プリンセス「さぁアンジェ…好きなだけ息をしていいのよ?」

アンジェ「はひっ、ふぅ、はぁ…」

プリンセス「…ただし、私から「間接的に」だけれど♪」あむっ…ちゅぅぅっ♪

アンジェ「んふぅっ!?」

プリンセス「んっ…ふー♪」

アンジェ「ぷはぁ…けほ、こほっ!」

プリンセス「どうかしら…私の吐息は?」

アンジェ「はふぅ、ふぅ……はぁ、はぁ、はぁ…///」

プリンセス「あらあら、返事も出来ないほど?」

ベアトリス「それだけ姫様が良かったんですよ…きっと♪」

プリンセス「あら、ベアトったら嬉しい事を言ってくれるわね♪」

………

…廊下…

ドロシー「ふわぁ、道具の手入れもしたし後は寝るだけだ…な?」

ドロシー「…何か喘ぎ声が聞こえるな……」鍵穴からそっと中を覗き込む…

アンジェ「あっ、あんっ…ひぐぅぅっ!」

ベアトリス「あーあ、こんなにぐしょぐしょに濡らしちゃって…アンジェさんも普段冷静な割にはいやらしいんですね♪」

プリンセス「ふふっ。ダメよベアト…あくまでも最初に決めた「貴族令嬢の口をゆるくする」ためのお芝居を続けないと♪」

ベアトリス「はい、姫様♪」

ドロシー「……おいおい、嘘だろ? あのアンジェがいいようにもてあそばれてやがる…こりゃ明日は雨だな…」

ちせ「…ドロシーどの、そんなところで一体どうしたのじゃ?」

ドロシー「ちせか…まぁ見てみろよ。ちょっと「刺激は強め」ってやつだが♪」

ちせ「?」

ドロシー「ほら、代わってやるから…」

ちせ「かたじけない。しかしドロシーどのをそこまで興がらせるような事とは……っ!?」

ドロシー「な?」

ちせ「こ、これは確かに刺激的じゃな…///」

ドロシー「…アンジェのあんなとろけた顔を見られる機会なんて、隕石に当たるより少ないからな……よく見ておけよ?」

ちせ「う、うむ…それにしても……」

ドロシー「おー…可愛い顔してベアトリスも意外とえげつない事をするじゃないか♪」

ちせ「あ、あれは……指が二本は入っておるぞ?」

ドロシー「ああ…もっとも、ベアトリスの指なら細いから三本はいけるだろうが……あのぎこちない感じもたまらないよな♪」

ちせ「///」

ドロシー「……のぞいていたら私までおかしな気分になってきた……ちせ、ちょっと付き合わないか?」

ちせ「…あ、あんなことをするのか?」

ドロシー「なに、あそこまで変態じゃないさ…な、いいだろ?」

ちせ「そ、そうじゃな……たまには二人で寝るのも好いかもしれぬ…///」

ドロシー「それじゃあ行こうぜ……にしてもちせ、お前…もうすっかりとろとろじゃないか♪」くちゅ…っ♪

ちせ「み、みなまで申すな…///」

ドロシー「なぁに、気にするなって……今夜は一晩中、翼なしで空を飛ばせてやるよ♪」

ちせ「…白鳩だけに、か?」

ドロシー「ははっ、そりゃまたずいぶんとただれた白鳩だな…まぁいいか♪」ちせの腰に手を回すドロシー

ちせ「う、うむ…///」もじもじと内腿をこすり合わせ、顔を赤らめる…

ドロシー「ふーん、ふーふーん…これで明日っからアンジェをおちょくるネタが出来たな♪」

プリンセス「……あら、どうしたのアンジェ?」

ベアトリス「あははっ、もう反応も出来なくなっちゃいましたぁ?」

アンジェ「…い、いえ……んっ、くぅぅ///」(…ドロシー、間違いなくのぞいていたわね……私が絶頂しているからって気づかないと思ったら大間違いよ…)

プリンセス「?」

ベアトリス「ほら、姫様もぼーっとしていないで…アンジェさんをもっとよがらせちゃいましょうよ♪」

プリンセス「あ、あぁ…そうね♪」


………

…case・ドロシー×ベアトリス「The Sweet whisper」(甘いささやき)…

…ある日・部室…

ドロシー「…なぁアンジェ、今回のは上物だぜ?」

アンジェ「そうね…だとしてもあまりくすねるのは止めておきなさい」

ドロシー「なんだよ。ちょうど切らしてたところだし、少しくらいちょろまかしたっていいじゃないか…どうもこいつを切らすと頭の回りが遅くなって仕方ないんだ」

アンジェ「だからと言ってとり過ぎると身体に毒よ」

ドロシー「へいへい、分かってますって…それにしてもこいつは結晶もきれいだし、そこらの物とは純度が違うな」

アンジェ「そうね、最近は精製の悪い物が多く出回っているから…珍しいわ」

ドロシー「だな…どれどれ」指先を軽く湿らせると白く細かい結晶に触れ、舌先にのせる…

ドロシー「ん、んーっ…こりゃ上物だ♪ …アンジェも少し試してみろよ?」

アンジェ「結構よ…貴女みたいに中毒したくないわ」

ドロシー「へっ、中毒とはおっしゃいますね」

アンジェ「機会さえあればそうやっているんだもの…「中毒」っていう言い方が一番ぴったりよ」

ドロシー「相変わらず可愛い顔して容赦ないな」

アンジェ「当然でしょう。別に私たちのものじゃないのよ」

ドロシー「なぁに、どのみちそうなるって…だいたいポーツマスの港で荷揚げしてここまで持ってきておきながら「壁の監視が厳しくなったからモノが動かせなくなって宙に浮いた」なんて、マヌケもいい所じゃないか」

アンジェ「まぁそうね。でも近頃はフランスからコニャックやシャンパン、レース生地だとかを密輸入する業者が多いし、それに相乗りする形でフランスのスパイが次々とロンドンに潜入してきているから…自然と王国の警備も厳しくなってきているのよ」

ドロシー「ああ…にしたってさ」

アンジェ「…どっちにしてもこの一袋はあなたが全部「味見」してしまうでしょうね」

ドロシー「はは、かもな…でもベアトリスやちせだってこいつがお気に入りなんだぜ?」

アンジェ「お願いだから過剰摂取だけはさせないようにね」

ドロシー「なぁに、あの二人の使い方なんて可愛いものさ…ま、何はともあれ今度の「お茶会」の時は遠慮せずに使えるけどな」

アンジェ「ふぅ…私はあんまり好きじゃないわ」

ドロシー「はは、いかにもアンジェらしいな。 …私は貧乏暮らしだったからさ、この「白い方」は滅多にお目にかかれなくてね……いつか上流階級の仲間入りでもしたら、それこそ浴びるように使ってやろうと思ってたのさ」

アンジェ「…で、ご感想は?」

ドロシー「最高だね♪」

アンジェ「まったく……白砂糖一つでそんなに愉快になれるのは貴女くらいなものよ?」

ドロシー「だってさ、一ポンドの袋でひとつ、ふたつ、みっつ…二ダースはあるんだぜ、これで笑いが止まらない方がおかしいってもんだ」

アンジェ「全く、あなたと一緒にいると毎日が愉快でいいわ…」

ドロシー「お褒めにあずかりどうも。 …しかしこの砂糖袋の山、一体どこに隠すかねぇ」

アンジェ「砂糖を舐めて頭の回りが良くなったんでしょう…少しは考えてみたら?」

ドロシー「それが思いつかないから困ってるのさ。ここにあったんじゃあ邪魔で仕方ないし」

アンジェ「先に言っておくけれど、ネスト(拠点)に置くのは却下よ」

ドロシー「そりゃそうだろうさ…ネストがネズ公のネスト(巣)になっちゃ困る」

アンジェ「結局はこの辺りに置くしかないわね…とりあえず全員の部屋に数袋ずつ分けておくことにしましょう」

ドロシー「だな。ちなみに隠し棚の…」

アンジェ「却下」

ドロシー「おい、まだ何も言ってないだろ」

アンジェ「隠し棚にそんなスペースはないわ…貴女もよく知っているでしょう」

ドロシー「そりゃそうだが、薬包サイズの小分けにしたらしまえるんじゃないか…って」

アンジェ「紛らわしいから駄目よ。それにそもそも包み紙がないわ」

ドロシー「あー、言われてみれば…」

アンジェ「とにかく、消費することに関しては貴女に任せておけば良さそうね」

ドロシー「ああ、任せておけよ。それじゃあしまう前にもうひと舐め…っと♪」

アンジェ「…」

………

白い粉..おくすり..委員長..
リク出来ればファーム時代に女教官から「プロの尋問」に耐える訓練を受けるアンジェ

>>197 …委員長は浮かばれないキャラだったので、そのうちにファーム時代のドロシーとで楽しげなエピソードを入れてあげたいですね。あと、リクエストの方は承りました…みなさんクールなアンジェがとろっとろになるの好きですよね(笑)

…また、そのうちに夢オチみたいな小ネタでドロシー×ガゼルの尋問でもやろうかとは思っています…あとは途中で出てきた目つきの悪いエージェント(名前が出てこない…)を「白鳩」全員でめちゃくちゃにするとか…


…ちなみにリクエストは(あんまり残酷なのとかはNGですが…)時間こそかかりますが、頂いたものは書きますので…お待ちください

…別の日…

アンジェ「さてと…今回の任務は、王国外務省の機密書類を手に入れる事よ」

ドロシー「ふーん?」

アンジェ「中身は王国にとって「疑わしき人物」のリスト…こちらからすれば、あちらの目に止まっているエージェントを知りうる貴重な書類ね」

ドロシー「なるほど…とりあえずはそれを盗み出せばいいんだな?」

アンジェ「その通り。 …とはいえ外務省に忍び込むとなると一筋縄ではいかない」

ちせ「確かにそうじゃな」

アンジェ「それに管理の行き届いている外務省から公文書を盗み出したりしたら、あっという間にこちらの目的が筒抜けになってしまう…それではやぶ蛇よ」

ドロシー「ああ。それこそ『大間抜け』ってやつだ」

アンジェ「そうね…けれど、一つ手がある」

プリンセス「そうなの?」

アンジェ「ええ…王国外務省はロンドンの本省と、リヴァプール、カンタベリー、ドーバー、ポーツマス、ウェイマスといった港町にそれぞれ出先機関を持っているわ…そしてそうした出先機関へは、王国にとって不都合な人間や積荷を水際で押さえるために、本省から数日ごとに更新される「ブラックリスト」の写しが送られている」

ドロシー「そいつをいただくのか?」

アンジェ「そういう事よ…ただし、これも簡単という訳ではないわ」

ドロシー「だろうな」

アンジェ「まず、機密文書の送付はいつなのか。もっとも、これは王国側に潜りこんでいる低レベルのエージェントでも探り出せる…何しろ機密情報を運べるほど信頼されているアタッシェ(伝達吏)は外務省と言えどもそう多くない」

ドロシー「なるほど…ちょいと事務室をのぞきこめば分かるわけだ」

アンジェ「ええ。だけど問題はそれだけじゃない」

ちせ「護衛じゃな?」

アンジェ「その通り…ちなみに護衛につくのは四人乗りのロールス・ロイスかマーモン・ヘリントンの乗用車が一台。たいていは防諜部のエージェントだけれど、時々スコットランド・ヤード(ロンドン警視庁)の「スペシャル・ブランチ」(特別部)から私服が派遣されることもあるそうよ」

ドロシー「なるほど…こっちが本気でやるなら始末できない相手じゃない。とはいえ騒ぎを起こして奪い取るのはスマートじゃない…ってところか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「じゃあどうする…出先機関に忍び込むか?」

アンジェ「本来なら、それが一番いい手になるでしょうね…」

ドロシー「…何だか気に入らないような口ぶりだな」

アンジェ「ええ…警備の甘い出先機関に忍び込むのは一見すると悪くない案だけれど、問題は王国防諜部も同じことを思いつくだろう…ってところね」

ドロシー「まぁ連中もそれで飯を食ってるんだもんな…そうなると別の手が必要なわけか」

アンジェ「ええ…今日はそれを考えるために集まってもらったの」

ドロシー「なるほど、じゃあ一つみんなで頭をひねろうぜ?」

………



ドロシー「よし、それじゃあまとめるとこうなるな…あっという間に御用になっちまうから、外務省本省に忍び込むのは論外」

ベアトリス「そうですね」

ドロシー「…かといってあちこちにある外務省の事務所を狙うのは見え透いている…防諜部に秘密警察、スペシャル・ブランチ……まぁ何でもいいが、とにかく私たちの天敵みたいな連中が歓迎委員会をこさえて、手ぐすね引いて待っているわけだ」

ちせ「うむ」

ドロシー「となると、残された手段は文書便の車列…ってことになるよな」

アンジェ「そうなるわね。ただしそれも荒っぽい手段ではなくて、離脱するまで相手にさとられることなしに…よ」

ドロシー「さぁ難しくなってきたぞ……護衛車は一台きりとは言え、それをどうやってアタッシェの乗った車と分離させるかだな…」皿の上にあるきゅうりのサンドウィッチを二つ並べて車列に見立てると、あごに手をあてた…

アンジェ「そう、それもできれば工作だと思われないような手段でやりたいわね」

ドロシー「難しいな……だけどできないレベルじゃない」

アンジェ「ええ」

ベアトリス「やっぱり車に細工をする必要があるんでしょうか…」

ドロシー「ああ。だけど細工をするにしてもすぐばれるようじゃ駄目だし、何より外務省を出てすぐに停まってもらっちゃ困る……できれば目的地のすぐそばで、混みあっている街中がいい」

アンジェ「そうね」

ベアトリス「うーん…だとしたらどうすれば……」

ドロシー「事故に見せかけて護衛車を止めるか?」クローテッドクリームのたっぷりついたスコーンを、サンドウィッチの間に割り込ませた…

アンジェ「いいえ、衝突させるのはなしよ……あ、ちょっと待って」

ドロシー「どうした?」

アンジェ「…そのクローテッドクリーム」

ドロシー「クリームがどうした?」

アンジェ「それよ、その手を使いましょう」

ドロシー「おいおい。一人で納得してないで、なんのことだか説明してくれよ」

アンジェ「分かっているわ…ドロシー、外務省の出先機関があるのはどんな所?」

ドロシー「そうだな…ドーバーにカンタベリー、ポーツマス……どこも港町だ」

アンジェ「そう、外務省の出先機関があるのはどこも港町…これはいいわね?」

ドロシー「ああ」

アンジェ「そうした港町に多く住んでいるのは?」

ドロシー「あー、たいていは地元の漁師か市場の競り人、行商の連中…船絡みの日雇い労働者に、魚の切れっぱしでどうにか食いつないでいる貧乏人、あるいはそんなのを相手にしている安っぽいパブ(居酒屋)の連中…近頃じゃあ中国人の苦力なんかもいるよな」

(※苦力(クーリー)…たいてい中国人の「荷運び人」を意味するが現在は差別的用語…が、舞台が十九世紀末なので当時の表現として用いる)

アンジェ「結構。それじゃあいま言った漁師や労働者…共通点は?」

ドロシー「そりゃあ、誰もかれも教会のネズミみたいに貧乏ってことさ…なんだ、金でも撒いて車列を襲わせるか?」

アンジェ「惜しいわね…お金を使うところまでは同じよ」

ドロシー「ほう?」

アンジェ「ドロシー、昨日のイワシ相場は?」

ドロシー「ロンドンで一ポンドあたり三ペンスってところだ、浜値ならもっと安い…なんだ、魚屋に商売替えか?」

アンジェ「そうなるかもしれないわ」

ベアトリス「あの…話が見えてこないんですが」

ドロシー「いや、待てよ…アンジェ、お前まさか」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なるほどなぁ……いやはや、そいつは冴えてるぜ♪」

ベアトリス「あ、あの…だからどういう……?」

ドロシー「おいおい、せっかくなんだから頭を使って考えてみろよ…な、アンジェ?」

アンジェ「ええ…思考能力の訓練になるわ」

ドロシー「あと十秒で分からなかったら、スコーンは私がいただくからな♪」

ベアトリス「えー!?」

プリンセス「あ、分かったわ…♪」小声で耳元にささやきかける…

アンジェ「…そう、正解よ」

ちせ「ふむ……ではあるまいか?」

ドロシー「おっ、その通りさ…さて、十秒たったな」

ベアトリス「ち、ちょっと待って下さいよぉ!」

アンジェ「まぁいいわ…とにかく思いついたことを言ってみなさい?」

ベアトリス「え、えーと……私たちの誰かが魚を運んでいる馬車を転覆させて、護衛車を足止めする…でしょうか///」

ドロシー「……ふぅ」

ベアトリス「や、やっぱり違いますよね…」

ドロシー「ああ。だけど細工をするにしてもすぐばれるようじゃ駄目だし、何より外務省を出てすぐに停まってもらっちゃ困る……できれば目的地のすぐそばで、混みあっている街中がいい」

アンジェ「そうね」

ベアトリス「うーん…だとしたらどうすれば……」

ドロシー「事故に見せかけて護衛車を止めるか?」クローテッドクリームのたっぷりついたスコーンを、サンドウィッチの間に割り込ませた…

アンジェ「いいえ、衝突させるのはなしよ……あ、ちょっと待って」

ドロシー「どうした?」

アンジェ「…そのクローテッドクリーム」

ドロシー「クリームがどうした?」

アンジェ「それよ、その手を使いましょう」

ドロシー「おいおい。一人で納得してないで、なんのことだか説明してくれよ」

アンジェ「分かっているわ…ドロシー、外務省の出先機関があるのはどんな所?」

ドロシー「そうだな…ドーバーにカンタベリー、ポーツマス……どこも港町だ」

アンジェ「そう、外務省の出先機関があるのはどこも港町…これはいいわね?」

ドロシー「ああ」

アンジェ「そうした港町に多く住んでいるのは?」

ドロシー「あー、たいていは地元の漁師か市場の競り人、行商の連中…船絡みの日雇い労働者に、魚の切れっぱしでどうにか食いつないでいる貧乏人、あるいはそんなのを相手にしている安っぽいパブ(居酒屋)の連中…近頃じゃあ中国人の苦力なんかもいるよな」

(※苦力(クーリー)…たいてい中国人の「荷運び人」を意味するが現在は差別的用語…が、舞台が十九世紀末なので当時の表現として用いる)

アンジェ「結構。それじゃあいま言った漁師や労働者…共通点は?」

ドロシー「そりゃあ、誰もかれも教会のネズミみたいに貧乏ってことさ…なんだ、金でも撒いて車列を襲わせるか?」

アンジェ「惜しいわね…お金を使うところまでは同じよ」

ドロシー「ほう?」

アンジェ「ドロシー、昨日のイワシ相場は?」

ドロシー「ロンドンで一ポンドあたり三ペンスってところだ、浜値ならもっと安い…なんだ、魚屋に商売替えか?」

アンジェ「そうなるかもしれないわ」

ベアトリス「あの…話が見えてこないんですが」

ドロシー「いや、待てよ…アンジェ、お前まさか」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なるほどなぁ……いやはや、そいつは冴えてるぜ♪」

ベアトリス「あ、あの…だからどういう……?」

ドロシー「おいおい、せっかくなんだから頭を使って考えてみろよ…な、アンジェ?」

アンジェ「ええ…思考能力の訓練になるわ」

ドロシー「あと十秒で分からなかったら、スコーンは私がいただくからな♪」

ベアトリス「えー!?」

プリンセス「あ、分かったわ…♪」小声で耳元にささやきかける…

アンジェ「…そう、正解よ」

ちせ「ふむ……ではあるまいか?」

ドロシー「おっ、その通りさ…さて、十秒たったな」

ベアトリス「ち、ちょっと待って下さいよぉ!」

アンジェ「まぁいいわ…とにかく思いついたことを言ってみなさい?」

ベアトリス「え、えーと……私たちの誰かが魚を運んでいる馬車を転覆させて、護衛車を足止めする…でしょうか///」

ドロシー「……ふぅ」

ベアトリス「や、やっぱり違いますよね…」

…なぜか連投になってしまいました……どうぞ片方は無視して下さい

ドロシー「…ベアトリスもちゃんと分かってるじゃないか♪」

ベアトリス「え…正解ですか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「よくできました…そぉら、ご褒美だぞ♪」スコーンを押し付け、ついでにクローテッドクリームをたっぷりと付ける…と、クリームが鼻の頭にまでついた…

ベアトリス「うっぷ…何するんですかっ」

ちせ「鼻先に付いておるな」

ドロシー「おっとと、悪い悪い…♪」指でしゃくって舐める…

ベアトリス「も、もう///」

アンジェ「…続きをいいかしら?」

ドロシー「ああ…もっとも「荷馬車を転覆させたらそれで終わり」って訳じゃない♪」

アンジェ「その通り…たちまち貧しい人たちが散らばった魚に群がって、大変な騒ぎになるでしょうね」

ドロシー「そうなったら防諜部のエージェントでも抜け出すのには時間がかかるだろう…って言うのは、火を見るより明らかだよな♪」

プリンセス「でも、護衛車が足止めされても肝心のアタッシェが事務所に滑り込んでしまったら…」

アンジェ「…そこで必要なのがこれよ」砂糖入れのスプーンを取り上げると、まるで砂時計の砂のようにサラサラと砂糖を戻した…

…作戦決行日の朝・外務省…

外務省職員A「グ・モーニン、チャーリー」

外務省職員B「モーニン…調子はどうだい?」

職員A「まぁまぁさ……そっちも朝からお疲れさん」

職員B「どうも…何しろ防諜部から山ほどリストが送られてくるもんでね、休む暇もなしさ」

職員A「大変だな…また密輸業者かい?」

職員B「ああ、フランスからコニャックを密輸している奴らがいるらしい…何でもドーバーの漁師がフランス側の用意したはえ縄にくくりつけてある酒瓶を沖で「漁獲」して、船倉に隠して持ち込むんだそうだ」

職員A「ふぅん…それが例の「瓶釣り」ってやつか」

職員B「ああ。それにしたってこんな分厚いリストを数日ごと作って送って来るんだぞ…防諜部の連中は本当に人間なのかね?」

職員A「もしかしたら連中はみんな人間のふりをした自動機械とか、そういうやつなのかもな…もしよかったら、小腹ふさぎに屋台のミートパイか何か買ってきてやろうか?」

職員B「ありがたいね……あ、それじゃあついでに頼みが」

職員A「ああ、なんだい?」

職員B「買いに行くときに控え室に寄って、パーカーたちに文書便の準備をするように声をかけておいてくれ…朝は港が混雑するから、昼ごろにエンバンクメント(運河)ルートで出す予定だとね」

職員A「分かった、伝えておくよ…それじゃあ」

職員B「ああ……本当に秘書がもう二人は欲しいよ、全く」

………

…数分後・外務省そばの公園…

職員A「…ミートパイを四つくれ」

行商人「へい」

職員A「いくらだ?」

行商人「八ペンスでさ」

職員A「そうか。釣りはいいよ、とっておきな……第二のルートだ」

行商人「へい…ありがとうございやす、旦那!」…行商のパイ売りは機嫌よく小銭を二回はじきあげて、ぱしっと手で捕まえた…

ベンチに腰かけている紳士「…」それを見て、朝刊を読みながらパイプをふかしていた紳士が同じページを二回ひらひらさせた…

通行人「…第二のルートだぞ」

ご用聞き「了解」

…ロンドン市内・テムズ川沿いのネスト(拠点)…

ドロシー「連絡が入った…第二のルートだとさ」

アンジェ「結構。それじゃあ分かっているわね?」

ドロシー「ああ、任せておけ」

ちせ「うむ」

ベアトリス「はい、でも本当にうまく行くでしょうか…?」

アンジェ「うまく行くかどうかじゃないわ…うまくやるのよ」

ドロシー「だな…それじゃあ取りかかろうぜ」

…外務省・駐車場…

中堅職員「ようティミー、また運転か?」

運転手「ええ、そうなんですよ」

中堅「お前さんも大変だな…ま、頑張りなよ?」

運転手「はい。それに公用車とはいえ、ロールス・ロイスに乗れる機会なんてそうはありませんからね」

中堅「ああ、うらやましいね。二十五馬力だっけ?」

運転手「だいたいそんなところですね……おかげでよく走ります」

中堅「…なぁティミー、運転席に座ってみてもいいか?」

運転手「ははっ、いいですよ…みんな僕にそう頼むんです」

中堅「そうだろうとも…へぇ、こんな具合なのか」

運転手「ええ、眺めもいいしスピードがあるから痛快ですよ」

中堅「だろうなぁ……なぁ、こいつは何のレバーなんだ?」

運転手「これがギアレバーで、このペダルがアクセルにブレーキ、それとクラッチ…慣れれば馬よりも簡単ですよ」

中堅「そうかい、何しろ古い人間なもんでね」

運転手「…いえいえ、こんなのすぐ覚えられますよ」…そう言って二人が話しこんでいる間に、いかにも外務省に用がありそうな身なりのいい紳士が車に近寄ると、給油口を開けて何かをさっと注ぎ込んだ…

老紳士「ちょっと、君」

中堅「はい」

老紳士「外務省の東インド課というのはどこにあるのかね?」

中堅「あ、では私がご案内いたしましょう…それじゃあまたな、ティミー」

運転手「ええ」

中堅「東インド課はこちらの三階ですね……工作は上手く行ったか?」

老紳士「そうかね、ありがとう……もちろんだとも」

中堅「…そうかい……では、こちらです」

老紳士「ああ、済まなかったね」

…午前中・港近くの部屋…

ドロシー「よーし、いい具合に化けたな…ロンドンのロイヤル・アクターズ・スクール(舞台学校)のメイク係だってこう上手くは出来ないね♪」


…港に近いネストには、表向きは慈善団体の主催している「貧しい人たちを救済する慈善事業」…実際はこうした場面で使えるように、コントロールが職員の着なくなった古着を貧民街の人達に寄付しては手に入れている、さまざまな大きさや汚れ具合をしたボロがため込んである……事前に選んでおいた汚れたショールとスカートをベアトリスに着せて、煙突の煤と土ぼこりを混ぜた「化粧」を施し、姿勢や態度を確認しているドロシー…一方のベアトリスは疑わしげに薄汚いスカートをつまんでいる…


ベアトリス「…本当にこんなのでうまく行くんですか?」

ドロシー「おいおい、私のメイク術なら年寄りだろうが子供だろうが思いのままだぞ…それにお前にはその声色があるじゃないか♪」

ベアトリス「それはそうですが…ちせさん、どうでしょう?」婆さんらしく背中を丸め、ちょこまかした歩き方をしてみせる…

ちせ「ふむ…背はちっこいし、見てくれは完全に年寄りじゃな…」

ドロシー「このボロいショールが決め手なのさ……あぁ、それと」…布に付けた何かをベアトリスの顔にこすりつけた……途端にひどく生臭い臭いが立ちこめる…

ベアトリス「うわ、何ですかこれ…!?」

ドロシー「魚油だよ…魚臭くない行商のバアさんなんていやしないからな」

ベアトリス「うぇぇ…」

ドロシー「なに、しばらくすれば取れるさ……手はずはいいな?」

ベアトリス「はい…護衛車が来たら馬車を横転させるんですね?」

ドロシー「そうだ…下敷きになる前にちゃんと左側へ飛び降りろよ?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「それだけやったら、後はすたこら逃げ出せばいい…ただし、絶対に走るな」

ベアトリス「分かってます」

ドロシー「よし…ちせ、お前は何かあった時に備えて待機しておいてくれ」

ちせ「うむ、承知した」

ドロシー「私はモノをいただき、アンジェはそれを受け取って離脱…集合場所は事前に説明した通り」

ベアトリス「はい」

ドロシー「それじゃあバラバラに出て行くぞ…最初はベアトリスで、少なくとも五分は間隔を空ける」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「それじゃあ、三文オペラの始まりだ…防諜部の連中をきりきり舞いさせてやろうぜ♪」

ちせ「うむ」

ベアトリス「はい、頑張ります」

………

…港近くの道…

防諜部エージェント(中堅)「…そこを右だ」

防諜部エージェント(ハンチング帽の運転手)「ああ」

中堅「次は直進」

ハンチング帽「分かってるさ」

中堅「そうは思うがな……ウィル、怪しい奴は?」

防諜部エージェント(ロングコート)「いや、今のところは見えないね」

中堅「ならいいが…外務省のRR(ロールス・ロイス)はちゃんとついてきているか?」

ロングコート「もちろん。あの若い奴、なかなか腕がいい」

中堅「ほぅ? …それじゃあそのうちに引き抜きがあるかもな」

ロングコート「ああ」

中堅「市場に近くなってきたぞ…道が狭くなってくるから気を付けろ」

ハンチング帽「そうだな…って、おいおい」

中堅「何かあったか?」

ハンチング帽「あの婆さん……荷馬車にあんなに魚を積み込んで、今にも崩れそうだぞ」

中堅「あれか…そうならないように荷馬車の神様にでも祈っておけ」

ハンチング帽「ふぅぅ、どうやら無事に通り過ぎたようだ……っ!?」運転役のエージェントが荷馬車の脇をギリギリですり抜けて息をついた瞬間、何かの拍子で荷馬車が傾き、横転しながら新鮮なイワシをぶちまけた…

ロングコート「くそ…横転しやがったぞ!」

中堅「悪い予感は当たるものだな、早く車を止めろ…ウィル、ジョン」

ツイード「ああ」

中堅「急いであの魚の山を乗り越えて、外務省の車に乗りこんで護衛に付け…私たちは先回りするから、一区画先で合流するぞ」

ツイード「了解!」

…一方・伝達吏(アタッシェ)の乗ったロールス・ロイス…

運転手「……うわっ!」

外務省アタッシェ「何てこった…バックしろ、急いで他のルートへ!」

運転手「わ、分かりました…っ!」

…忙しいなかでは運搬計画について話し合う機会も少なく、しかもお互いのこだわりや玄人意識が邪魔をして、再合流についての綿密なすり合わせが出来ていなかった防諜部と外務省のエージェント…防諜部はまず機密情報を守ろうとし、一方の外務省アタッシェは早く安全な事務所に書類を届けてしまおうと焦り、別な道に車を走らせた…

アタッシェ「落ち着け、ティミー…防諜部の車とは次の角で落ち合えるはずだ、心配はいらない」

運転手「ええ、そうですね……ああ、くそっ!」…事前に燃料タンクに放り込まれた砂糖がエンジンの中で焼き付き、急にエンジンが咳き込んだかと思うと、道の真ん中でガクンと停まった…

アタッシェ「何だ?」

運転手「ちくしょう、エンジンが焼き付いたらしいです…RRでこんなことあるはずがないのに」

アタッシェ「これ以上走れないのか?」

運転手「今やってみますが……ダメです、ウンともスンともいいません」

アタッシェ「なら歩きだ、次の角まではたいした距離もない…ピストルはあるな?」

運転手「はい、持ってます」上着の下を軽く叩いた…

アタッシェ「よし…それじゃあ行こう」

………

運転手「車に乗っていると気が付きませんが…この辺りはずいぶん嫌な臭いがしますね」

アタッシェ「そうかもな……」

…港町特有の魚臭さに蒸気船の煙の臭い、それと古くなった料理油のむかつくような臭いが混じり合った薄汚い通り…石畳がすり減っている道には魚の頭や骨が無造作に捨ててあり、昼間だと言うのにネズミがちょろちょろしている…

運転手「…やれやれ、汚いなぁ」

アタッシェ「文句言うなよ…足元に気をつけんと、腐った魚を踏みつけるぞ?」

運転手「うわ…本当ですね」

アタッシェ「とにかく、あと数区画の辛抱さ」

ドロシー「……来たな」いかにも貧民街の住人らしく見えるぼろを着て、裏路地から家の窓に映るアタッシェの姿を確認する…

運転手「…それにしても、防諜部の車はどこなんでしょう」

アタッシェ「心配するな、もうそこがさっきの表通りだ…」そう言った矢先に角の路地から一人の女が飛び出してきて、アタッシェを地面に突きとばすと鞄をひったくった…

アタッシェ「う…くそっ!」

運転手「大丈夫ですか!」…地面に突き倒されたアタッシェを助け起こそうとする運転手

アタッシェ「う、ぐぅ…こっちはいい、早く女を追えっ!」

運転手「は、はいっ!」ぎこちなく3インチ銃身のウェブリーを構えると駆けだした…

…裏通りの角…

アンジェ「モノは?」

ドロシー「ああ、ばっちりだ…さ、開けちまおう」

アンジェ「ええ」…ただのひったくりらしくみせるために鞄をナイフで切り裂くと、手際よく中の書類をあらためる…

ドロシー「あった、こいつだ…まったく手間をかけさせやがって」

アンジェ「じゃあこれは私が」入手したリストを小さく折りたたんで、コルセットの内側に挟みこむ…

ドロシー「任せた…後は偽装だな」

…作戦を立案したコントロールは「スパイならどんな情報でも欲しがるもの」という考えを逆手に取った偽装工作を練り上げていて、王国側が鞄をひったくったのが「エージェントではなくただの物盗りだった」と思い込むよう、必要な数枚以外の書類は地面に散らかして捨て置くように指示していた……ドロシーはさっと目を通して内容を暗記すると、指示通り道に書類をぶちまけた…

ドロシー「…これでよし、と」石畳の道を走る靴音を聞きつけると、さっと裏通りの陰に消えた…

運転手「ぜぇ、はぁ……あっ!」

アタッシェ「はっ、はっ、はぁ…くそ、鞄が!」

運転手「はぁ、はぁ…でも中身こそぶちまけられていますが、ほとんど無事のようですよ?」

アタッシェ「ひったくられたこと自体が大失態だ……とにかく散らばったのを集めよう」

運転手「はい」

………

…寄宿舎…

アンジェ「さてと…みんな、今回も良くやってくれたわ」

ドロシー「ああ。特にベアトリス」

ベアトリス「は、はい」

ドロシー「ちゃんとタイミングよく荷馬車を横転させられたみたいだな…感心だ」

ベアトリス「いえ、そんな…///」

アンジェ「おかげで重要書類はこちらの手に入った…今ごろはコントロールの手元に届いているはずよ」

ちせ「ふむ、一件落着じゃな」

プリンセス「そうね…ご苦労様、ベアト」

ベアトリス「ありがとうございます、姫様///」

アンジェ「それじゃあみんなは解散していいわ…私は事後報告を書き上げないといけないし、ドロシーは道具の手入れがあるから」

ドロシー「おいおい、まさかあの魚臭いのがついたのまで私がやるのかよ?」

アンジェ「当然でしょう…それが嫌なら報告書と交代してあげてもいいけれど?」

ドロシー「うへぇ…ちっ、わかったよ」

アンジェ「飲み込みが早くて助かるわ……それじゃあね」

ドロシー「…ちっくしょう、あの冷血トカゲ女め……」

ベアトリス「あの、ドロシーさん…」

ドロシー「ん、どうした?」

ベアトリス「…よかったら手伝いますよ?」

ドロシー「何だよ、気にするなって…私なんかよりプリンセスの所に行ってやりな?」

ベアトリス「それはもちろんですけれど、普段からお洗濯とかは慣れていますし……私もチームの一員ですし、手伝わせてもらえませんか?」

ドロシー「そりゃまぁ、手伝ってくれるって言うならありがたいけどさ…いいのか?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「そっか…気を使わせちゃって悪いな。今度何かおごってやるよ」

ベアトリス「もう、そんなのいいですから……早く終わらせちゃいましょうよ」

ドロシー「…そうだな」

…洗濯場…

ドロシー「ベアトリス、石けん取ってくれ」

ベアトリス「はい」

ドロシー「ありがとな……はぁ、今さら洗濯女の真似事かよ。嫌になるなぁ」

ベアトリス「まぁまぁ、そう言わずに…作戦はうまく行ったんですから」

ドロシー「これで上手くいってなかったら燃やしちまってるよ、ばかばかしい」

ベアトリス「もう…ドロシーさんったら、相変わらず愚痴が多いんですから」

ドロシー「ま、性分だからな……それにしても、ベアトリスもなかなか言うようになったな」

ベアトリス「いったい誰のおかげでしょうね?」

ドロシー「ほぅ? そういう生意気を言うとな……こうだっ♪」…バシャッ!

ベアトリス「きゃあっ…もう、せっかく手伝ってあげているのになんてことをするんですかっ!」

ドロシー「うっぷ…へぇ、やってくれるじゃないか」

ベアトリス「わぷっ……そっちこそ!」

…しばらくして…

ベアトリス「…あぁもう、結局びしょびしょになっちゃったじゃないですかっ!」

ドロシー「そりゃベアトリスが生意気なせいだな」

ベアトリス「むぅぅ……ひっ、くしゅっ!」

ドロシー「おいおい、こんなくだらない事で風邪なんか引かれちゃ困るぜ…とっととその濡れたのを脱いで、熱いシャワーでも浴びてきな?」

ベアトリス「は、はい…」

…浴室…

ドロシー「……ちゃんとお湯になってるか?」

ベアトリス「えぇ、はい…」

ドロシー「さて、それじゃあ私も…と♪」

ベアトリス「うぇっ!?」

ドロシー「なんだよ…私だって濡れたんだし、入っちゃ悪いのかよ」

ベアトリス「だからって、なにも一緒に入らなくても…///」

ドロシー「おいおい、今さら恥ずかしがるような関係かよ……よいしょ」

ベアトリス「///」棒石けんを身体にこすりつけながら、ちらちらと視線を送るベアトリス…シャワーの下で湯気に包まれているドロシーは、普段のクリーム色をした肌が桜色を帯びていて、どきっとするほど色っぽい…

ドロシー「……見たいならじっくり見ればいいじゃないか」ふとベアトリスが気付くと、ドロシーが向き直ってニヤニヤしている

ベアトリス「なっ…そういうことじゃありませんっ///」

ドロシー「別に構わないさ。どのみち、今さら裸を見たくらいでおたおたするような関係じゃない…だろ?」

ベアトリス「///」

ドロシー「…よかったら触ってもいいんだぜ?」

ベアトリス「!?」

ドロシー「何だよ、別に減るものじゃなし…ほーれ♪」それでなくてもたわわな胸を寄せて、ぐっと身を寄せる…

ベアトリス「……そ、それじゃあ///」むにっ…♪

ドロシー「んっ…どうだ?」

ベアトリス「ふわぁぁ……すっごいです///」

ドロシー「ふむ、スパイの割にはボキャブラリー(語彙力)が貧弱だな…一体どう「すっごい」んだ?」

ベアトリス「え、えーと…弾力があって肌に吸いつくようで、それでいながら柔らかいっていうか……って///」

ドロシー「ほうほう…それじゃあ私も説明力を高める訓練でもしますかね♪」さわ…っ♪

ベアトリス「ひゃあぁっ…!」

ドロシー「うわっ、そんなに暴れるな……っ!?」

…ベアトリスが落とした棒石けんで脚をすべらせ、床にひっくり返る二人…が、よく訓練されているドロシーだけあって反射的に受け身を取り、ベアトリスを上にした形で倒れ込んだ…

ドロシー「おい、大丈夫か?」

ベアトリス「ふぁい…ふぁいひょうふふぇす(大丈夫です)」

ドロシー「そうか。あと、頼むから胸の谷間でしゃべるのは止めてくれ…息がかかってくすぐったいんだ///」

ベアトリス「ふぉうれふか(そうですか)…ふぅぅ♪」

ドロシー「こんにゃろー…わざとやってるな?」

ベアトリス「…ぷは///」

ドロシー「満足したか?」

ベアトリス「はい。でも……もうちょっとだけお願いします///」

ドロシー「仕方ないな…んむっ、ちゅ♪」

ベアトリス「あむっ、ちゅぅ…///」

ドロシー「ほら、せっかく上にまたがっているんだ……好きなように動いてみろよ」ゆっくりと脚を開くと両手でベアトリスの腰を押さえてやり、自分の秘所にベアトリスの割れ目をあてがった…

ベアトリス「そ、それじゃあ…んっ///」

ドロシー「ん、あっ…ふぅぅ……」にちゅ……♪

ベアトリス「んあっ…はぁっ、はあっ……んんぅ///」くちゅくちゅっ…ずちゅっ……♪

ドロシー「あぁ…んっ、んはぁぁ……♪」

ベアトリス「ふぅ、ふぅ……ドロシーさんは…大柄なので……はふぅ…上で動くのにも……力が…いりますね……んぅぅ///」

ドロシー「私は下だから楽できるけどな……ベアトリスとやるのは構わないけど、風呂場の床が固くて冷たいのは計算外だったな…ん、んっ♪」

ベアトリス「もう…んっ、くぅ…そんなムードのないことを……はひぃ…言わないで下さいよ……あっあっ、あっ…♪」

ドロシー「悪いな……でも浴室の床って言うあたりでムードもへったくれもないもんだろ……おっ、おぉぉ…っ♪」ぐちゅっ、ずりゅっ…♪

ベアトリス「ふぅ、ふぅぅ……こんなに動かないといけないなんて…腰に来ちゃいそうです…ひぁぁ…っ///」

ドロシー「んんぅ…! っはぁ……ふぅ、ふぅぅ…♪」

………



ベアトリス「…どうでした?」

ドロシー「んっ、はぁ……ふとももが温かくてとろっとして、腰には甘ったるい感覚が広がって……いい気分さ♪」

ベアトリス「そ、そうじゃありません……その、上手に出来たでしょうか…って///」

ドロシー「……プリンセスか?」

ベアトリス「は、はい…私も機会がある時は、気持ち良くなって頂きたいと思って頑張っているんですが……///」

ドロシー「正直なところ「心優しいプリンセスの事だから演技してくれている」んじゃないか…って?」

ベアトリス「は、はい…///」

ドロシー「ははっ、馬鹿だなぁ……自分を好いてくれている娘が一生懸命になってくれているんだぜ? もうそれだけで、プリンセスも腰が抜けるほどキュンとなるってもんさ♪」

ベアトリス「そ、そうでしょうか…」

ドロシー「ああ。それに女は身体じゃなく心で感じるもんだ……だから「コトに及ぶ」前の雰囲気づくりが重要なのさ♪」ウィンクしてみせるドロシー

ベアトリス「なるほど、さすがはドロシーさんです…モテる人は言うことが違いますね」

ドロシー「まぁそういうのも「ファーム」(養成所)でさんざん仕込まれたからな……役に立ったろ?」

ベアトリス「ええ…でもドロシーさん」

ドロシー「んー?」

ベアトリス「だとしたら今の私たちっておかしくないですか…?」

ドロシー「…ちょっとシャワー室ですっ転んで抱き合っただけなのに、そんな気分になるわけない……って?」

ベアトリス「はい」

ドロシー「そりゃさっき言ったことはあくまでも「原則」だからな…例外はある」

ベアトリス「それじゃあ…さっきのドロシーさんはどんな「例外」だったんです?」

ドロシー「あー…実はな、私はベアトリスみたいな小さい娘が大好物で……」

ベアトリス「え゛っ!?」

ドロシー「冗談だよ。…実を言うと任務の後は身体が火照ってさ、時々むしょうにやらしい気分になったりするんだ……付き合わせて悪かったな」

ベアトリス「いえ、大丈夫ですよ…それに私も任務の後で熱っぽく感じるような時がありますし、ドロシーさんの気持ちもちょっと分かります」

ドロシー「そっか…さ、せっかくシャワーで温まったんだ。身体が冷えないうちに出ようぜ?」

ベアトリス「そうですね」

ドロシー「…で、ベアトリスはプリンセスの火照りをおさめに行きな?」

ベアトリス「も、もうっ…///」

…申し訳ありません。本当は今日から投下したかったのですが、明日以降にします…


…ちなみに予定ではリクエストにお応えして、ドロシーとアンジェ、「委員長」のファーム(養成所・訓練所)時代を書いていくつもりです……また「こんなモブキャラが見てみたい」というのが(髪色や簡単な性格などなど…)あれば出来るだけ書いてみようと思いますので、そちらもよかったらリクエストしてみてください…

…case・アンジェ×ドロシー「The dawn of white pigeon」(白鳩の始まり)…

…とある日・ネスト…

アンジェ「それじゃあ今日も訓練に励んでちょうだい…準備体操を済ませたら、素手での格闘よ」…絨毯を丸めた訓練相手「チャーリー」を台に立てかけて木箱に座ると、じっとベアトリスの動きを観察している…

ベアトリス「はいっ…!」

ドロシー「…それにしても」

アンジェ「なに?」

ドロシー「お前さんを見ていると教官だって言われても信じそうだ♪」…アンジェに話しかけながらウェブリー・スコット・リボルバーの撃鉄や引金を空撃ちして試し、時々ヤスリをかけたり、油を差したりしている…

アンジェ「どういう意味?」

ドロシー「いや…だっていつも汗一つかかないで格闘術を教え込んでるからさ」

アンジェ「だって黒蜥蜴星人だもの」

ドロシー「そういうはぐらかし方までそれらしいよ…まったく」

アンジェ「ベアトリス、終わったら続けてナイフ格闘の練習を……ドロシー、あなたがいくらオールドミスだからって、そんな歳で思い出話にふけるつもり?」

ドロシー「あ、いや…」

アンジェ「はぁ……別に構わないわ。訓練の邪魔にならないよう、小声で話しかけてくれるならね」

ドロシー「おいおい、私だって大声で昔の事をふれ回ったりしやしないさ…ただ、ああやってベアトリスを見ているとな……」

アンジェ「…ファームの頃が懐かしい?」

ドロシー「懐かしい…とはちょっと違うけど、あのころはまだまだ無邪気で、昼も夜も訓練に打ちこんでいたっけ……なんてことを思い出しちまって」

アンジェ「…そうね。あなたの適当さによく振り回されていたものよ」

ドロシー「はは、あの時は悪かった…でも口でこそそういいながら、アンジェはよく尻拭いしてくれてたよな?」

アンジェ「ええ…何しろあなたがいなくなったら、その分の面倒を押し付けられそうだったから……」

ドロシー「かもな。それにしてもあそこにはいろんな教官がいたよな…覚えてるか?」

アンジェ「ええ…あなたはよく格闘術の教官についてこぼしていたわよね」

ドロシー「ああ……」


…数年前・ファーム…


ドロシー訓練生「次は格闘術か……貧民街じゃちょくちょくお世話になったシロモノだよなぁ……」


…エージェントや諜報部の職員を育成する「ファーム」だけに機密保持は徹底していて、あちこちでスカウトに見出された訓練生候補たちは気づかないうちに身元を調べられ、合格となったら初めてカットアウト(使い捨て可能な連絡員)から接触を受ける…ここで「資格あり」と判断されると目隠しをされ、待ち合わせ場所から連れ出される……その上で候補生の方向感覚がなくなるほどあちこち回り道をして、性格も年齢も暮らしぶりもバラバラな訓練生が、一人づつ個別に「ファーム」へ連れてこられていた…大きな館のような施設は周囲を森に囲まれ、山や川の地形から場所を判断することもできない…訓練生にはとりあえず三食とベッド、唯一のお揃いである灰色のつなぎが与えられ、これも成績に応じてバラバラな「卒業」も、前日になってようやく教えられる…


細身の紳士「では、最初に自己紹介をしておこう。諸君に格闘術を教えるホワイトだ…ミスタ・ホワイトかホワイト先生と呼んでくれたまえ」


…折り目正しい茶色のスーツとチョッキ、金鎖の懐中時計にループタイ…見た目も口調も丁寧な紳士が訓練生たちの前に立った……当然ながらファームの教官たちは本名を名乗らず、色や動植物の名前をコードネームに使っていた……一見そう強いようには感じられないホワイト教官ではあるが、よく観察するとスーツの袖が張っているように見える…


ホワイト「さて…この中にはそういった事について経験豊かな諸君もいるだろうが……」中には貧民街やケイバーライト鉱、炭鉱や港で食べ物を盗られないために力を振るっていたであろう訓練生たち…そんな訓練生たちにホワイト教官がちょっとしたユーモアを披露すると、軽いくすくす笑いが起こった…

ホワイト「結構。…これから、経験のある諸君はより効率のよい戦い方を…経験のない諸君はこの機会に実戦的な戦い方を習得してもらうことになる……しばらくは仮のパートナーとして隣の娘と組んでもらうが、そのうち実力に合わせてパートナーを交代していくことになるだろう…まずはお互いに握手でもしてはどうかな?」

訓練生たち「…よろしく」「初めまして」

ホワイト「よろしい…質問は話が終わったら受け付けるので、もし分からないことがあったら積極的に聞きたまえ。それでは軽く準備運動から始めようか…」部屋の片隅にあるコート掛けに丁寧に上衣をかけ、懐中時計も外した……上手に仕立てられたスーツからは分かりにくかったが、シャツの袖からはよく引き締まった筋肉が浮き出ている…

ドロシー「…へぇ」

…二時間後…

訓練生A「ぜぇ、はぁ……こほっ、げほっ…」

訓練生B「ふぅ、ふぅ、はぁ……ふぅぅ…」

ホワイト「おや…ミス・エマ、君は休憩したい気分なのかね? …しかしな、その床では寝るにしても固くて背中が痛いだろう……さ、立ってもう一回だ♪」

訓練生C「うっ、ぐすっ……はぁ、ひぃ…っ」

ホワイト「ふむ…ミス・グレン、痛いのは分かるよ。 …しかし王国のエージェントは、君が泣いているからと言って攻撃の手を休めてはくれないだろうからね。さ、もう一本だ…頑張りたまえ」

…ホワイトはいかにもアルビオンの鬼教官らしく、決して怒鳴ったりののしったりはしない…が、その代わりに優しい顔をして地獄のような訓練を続けさせる……広い室内運動場のあちこちにはへたばった訓練生たちが倒れ込んでいて、どうにか立っているのは数人しかいない…

ドロシー「ぜぇ、はぁ…ふぅ…」

ホワイト「ふむ…ミス・ドロシー、君は粗削りだが一撃が重くてよろしい。私も手が痛むくらいだよ……今度は空振りを減らせるように、もっと攻撃する相手をしっかり見て、動きに追随できるようにしていこう」骨も砕けよと叩き込んだ、ドロシーのノックアウト・パンチを受けた手を軽く振って微笑した…

ドロシー「はぁ…ふぅぅ…それはどうも…」

ホワイト「それから、ミス・アンジェ…君の動きは俊敏で大変によろしい。まるでこういった訓練をした経験があるようだね」

アンジェ「…ありがとうございます」

ホワイト「うん、実にすばらしいよ…では、それぞれもう一本ずつ私とやってみようか」

ドロシー「…うぇぇ」

アンジェ「はい」

ホワイト「それと、ミス・「委員長」…君は少し休みたまえ。私は君たち訓練生を死なせるために訓練しているのではないからね」

委員長「いいえ…ごほっ、げほっ……まだ…やれます…」

ホワイト「ふむ…君は頑張り屋さんだな。ではもう一本だけやってみようか?」

委員長「はい…ごほっ、けほっ……」

ホワイト「しかしその前に、君たちはまず息を整えたまえ…二回吸って一回吐く。ゆっくりとだよ?」

ドロシー「ふぅぅ…」

ホワイト「そうそう、その調子。…さて、諸君。なぜ君たちがこんな苦しい思いをしなければならないのか、少し考えてみよう…別に私は諸君をいたぶろうというつもりはないんだ。 …しかし実際にエージェントとして活動するときは「もう動けない」と思ったところから、さらにほんの少しだけ動ける事が大事になってくる……つまりこの訓練で「自分の限界点を伸ばす」と言うことだね…理解できるかな?」

アンジェ「…はい」

ホワイト「よろしい。いい返事だ、ミス・アンジェ…ミス・ドロシー、君は分かったかな?」

ドロシー「わ、分かりました…ふぅぅ…」

ホワイト「結構…それじゃあ始めようか。で、終わったらこの運動場を駆け足で一周回っておしまいにしよう」

ドロシー「うへ…ぇ」

ホワイト「…君は二周の方がいいかね、ミス・ドロシー?」

ドロシー「いえ、一周で結構ですよ…」

ホワイト「そうかね? 運動すると健康になるし、美容にもいいよ?」

ドロシー「……それにしたって多すぎますっての…」

ホワイト「何か言ったかね、ミス・ドロシー?」

ドロシー「いいえ……たくさん運動したので、きっとお昼が美味しいだろうと…」

ホワイト「ははは…そうだね、私も昼食が楽しみだよ。 …では、まずは正面から突きを入れてくれるかな?」

ドロシー「はい…ふぅっ!」

ホワイト「…エクセレント(素晴らしい)、その調子でもう一回♪」

………

…別の日・屋外射撃場…

無表情な教官「気を付け。これから諸君に武器弾薬、爆発物の扱いを教えるブラックヒースだ……ブラック教官でよろしい」

…訓練生の前には銃を置く台と奥に伸びる射撃用レーンがあり、台には人数分の「ウェブリー・スコット」リボルバーが並んでいる…ブラック教官は危険な爆発物を相手にし続けて育まれた鋼の神経のためか、無表情で眉毛の一筋さえ動かさない…

ブラック「さて、爆発物や銃火器の扱いは全ての工作員……特に破壊や妨害活動と言った「特殊工作員」としての道を歩むことになるかもしれない諸君なら、絶対に習得しておかなければならない類のものだ……確かにこれらの力は大いに諸君の任務遂行に役立つが、同時に扱う際は種々の危険が伴う……我々指導官も訓練生が不慮の事故に遭わないよう努力はしているが、毎年のように候補生を失っていることもまた事実だ」

訓練生A「…っ」

訓練生B「…」

ブラック「そこでだ…諸君には確実を期する方法として、今後は私の指示するように銃火器や爆発物を扱ってもらいたい……ところで、この中に射撃経験やそれに類するものがある者は?」

訓練生C「…はい」

訓練生D「あります」

ブラック「そうか…失礼ながら、君たちのような「お嬢様方」が生かじりで覚えた射撃経験ほど危なっかしく不愉快なものはない…とだけ言っておこう。しかし、これからは教えたとおりに銃火器を扱ってくれるものと期待している」

訓練生C「はい」

訓練生D「分かりました」

ブラック「まぁいいだろう……少なくとも間違った銃火器の使い方で片腕になったり、義足をつけるはめになったり…という事にはなりたくはないはずだからな」…ブラック教官は台から一丁のウェブリー・スコットを取り上げた…

ブラック「ウェブリー・アンド・スコット・MkⅡ…作動はダブルアクション、口径.455ブリティッシュの弾薬を使用する。…そこの君、ダブルアクション・リボルバーとはどのような物であり、利点と欠点は何か説明しろ」

ドロシー「はい。ダブルアクションのリボルバーは初弾だけ撃鉄を起こせば、二発目以降は引金を引く動きと連動して撃鉄が起きて雷管を叩くので、いちいち撃鉄を起こさなくてもいいのが利点です……反対に引金のストロークは長く重くなるので撃ちにくく、慣れないうちは命中させづらくなります」

ブラック「結構。その通りだ……さて、この「ウェブリー・スコット・リボルバー」は中折れ式リボルバーの基本形と言ってもいい。実際にはこれより新型のMkⅣモデルや.38ブリティッシュ口径のもの…あるいは2.5インチ銃身の隠しやすい「ブリティッシュ・ブルドッグ」ピストルが支給されるだろうが、基本は同じだ……まずは照門を兼ねたこの「門」の部分を動かす」

ブラック「さて…見ての通り、弾薬の入るシリンダーを含め、撃鉄より前の部分が自由になった……ここで銃身を持ってシリンダー部分を下に折るようにして開く…」

ブラック「…ウェブリーは「トップ・ブレイク」(中折れ)式であるからこのようにしてシリンダー部を開くが、他にも左側にシリンダーを振り出す「スウィングアウト」方式や、給弾部からシリンダーに一発づつ込めなければならない「ソリッド・フレーム」タイプのピストルもある…どの方式にも利点と欠点はあるが、その話は別の機会に行う」

ブラック「さて、ここにあるのがウェブリー・スコットの0.455インチ口径の弾薬…いわゆる「.455ブリティッシュ弾」であり、ウェブリーにはこの弾が六発入る」

ブラック「こうして弾薬を込めたら、中折れ銃身を元に戻す…最後に照門を兼ねた門型レバーを戻して、シリンダー部を固定すればよろしい……では、絶対に引き金に触れぬよう注意しつつ、始めたまえ」

アンジェ「……できました」

ブラック「よろしい……しかしこの段階で速度は重要ではない。まず安全な扱い方を覚えることを意識しろ」

アンジェ「はい」

ブラック「結構…さて、諸君も今は手際よく出来ないだろうが、慣れれば嫌でも素早く出来るようになる」

ブラック「……しかし、工作員にとって大事なのは速さもさることながら、なにより正確さだ…初弾で動きを止め、二発目で止めを刺せ。…銃は音が大きく他の音に偽装しにくい事から、出来るなら初弾でカタを付けたいところだが、被弾の衝撃で相手の指が引き金を引くことがあるので二発撃ちこむ方がより安全だろう……ではそこにある耳栓を詰め、それぞれのレーンに立て」台の前に並ぶと、蜜ロウと紙でできた栓を耳に押し込む訓練生たち…

ブラック「…構える際は下から銃を水平になるよう持ち上げて行き、凹形をした照門と四角く銃身上に突き出した照星が一直線になり、そこから的の中心円を朝日が半分のぞいているような具合に見えるよう構える……また、ウェブリー・スコットは的に向けて腕をいっぱいに伸ばし、身体を的と平行にしたスタンスで撃つようにできている……では狙いが定まったら撃鉄を起こし、撃て」

ドロシー「…っ!」…パン!

アンジェ「…」パァァン…ッ!

訓練生「…っ!」パンッ!

…射撃が終わって…

ブラック「さて、諸君も銃の反動と音の大きさに驚いたことだろう……では、まだ早いが諸君の点数を見てみよう…」

ブラック「射撃…特にピストル射撃の場合ライフルや散弾銃に比べて跳ね上がりを抑えにくいことから、最初はまるで当たらないと言うのは確かだ……しかし中には初心者ならではのまぐれ…あるいは優れた才能を持った者がいることもある……」

ブラック「ふむ。ミス・A…君は射撃の経験があるのに言わなかったのか、あるいは恵まれた才能の持ち主であるかのどちらかだ……ミス・Dは次点と言ったところだが、これが最初のテストなら、この成績でも「十分に優秀」と言ってもらえるだろう…これが単なるまぐれで終わらぬよう、引き続き努力しろ」

アンジェ「はい」

ドロシー「分かりました」

ブラック「よろしい…では銃のメンテナンスの話に移る…今使った銃には多くの燃えカスや硝煙のすすが付いている……」

………

…同じ頃・施設内の一室…

L「あれが今期の訓練生たちか…」

7「はい」

L「ふむ……今の所でだが、「優」が付けられそうなのは候補生A6、C2…D4と言ったところか」

7「そのようですね」

L「特にA6(アンジェ)は抜群だな。何事であれそつなくこなし、飲み込みが早い。そして感情を上手く制御することができる……この歳ではなかなか見られない素質だ」

7「私もそう思います」

L「D4(ドロシー)はその次と言ったところだな…これもなかなかいい。性格は活発で積極的。気ままに振る舞っているように見えるが、肝心なところではきっちり目的を果たし、運もある……偶然に助けられることのあるエージェントにとって、運がいいと言うのは重要な素質だ」

7「確かに」

L「C2(委員長)は努力家タイプか…何事も几帳面にこなし、常に学習を怠らない。重圧に対して緊張しやすく、物事を真剣に考え過ぎる性格ではあるが、能力は高い……ふむ、慣れればもっと実力を発揮できるようになるかもしれん」

7「そうですね」

L「ああ。しかしな……」

7「…何か?」

L「うむ…教官たちはよくやってくれているが、そもそも私はこの「訓練所」方式が気に入らんのだ」

7「と、言いますと?」

L「もともと「一か所に訓練生を集め、一度に多数を育てる」という考え方は軍のものだ…確かに偵察部隊や軍の破壊工作班なら顔が分かった所で困らんからそれでもいい、しかしな……」

7「我々のような組織からすると欠点もありますね」

L「そうなのだ……多くの訓練生が一緒になっていると言うことは、もし中の一人が将来「転向」したり尋問で「歌ったり」…尋問官がよほどの愚か者でない限り必ずそうなるが…した場合、どんなエージェント候補がどの位いて、どんな訓練をどこで受けていたか分かってしまう……」

7「ええ、ですからあなたは…」

L「うむ…訓練生ごとにバラバラの住まいを用意して、教官が訪ねるスタイルを採りたかったのだが……この状況ではな」

7「王国と分断された混乱が収まる前に、大量の工作員を急速に送り込む必要がありますからね…」

L「ああ……おまけに上層部は「工作そのもの」には金を惜しまないが、訓練やエージェントにかける出費は渋るばかりだ…」

7「ですからあなたは…」

L「そうだ…訓練生の「初等教育」だけをここで行い、後は細分化していくつもりでいるのだ」

7「…わたくしも微力ながらお手伝いいたします」

L「ふむ…謙遜はエージェントには不要な特質だぞ?」

7「…ふふ」

L「ふ…とにかく訓練生A6、D4、C2は有望だ」

7「そのようですね」

L「ああ。最終的には使ってみなければ分からんが、上手く育てれば「レジデント」(駐在工作員)になれるだけの実力があるだろう……エージェントとして工作に使えるのは最高の人材でも三年から五年がせいぜい、悪くすれば数週間だ…そして一番使える年齢は二十から三十五歳…長く見積もってもな」

(※レジデント…『大使館付商務官』などの身分を偽装として与えられ、現地指揮官として任務に合わせた工作の細部を自分で決めることができ、複数のエージェントを指揮しながら工作も行うトップクラスのエージェント。すべての技能が抜群でなければならず、このクラスになれるエージェントは滅多にいない)

7「はい」

L「……その考えで行けば、D4は訓練後すぐに活動させてもいい歳だな…他はまだ若いが、A6は歳のわりに落ち着きがあるから、これも考慮に入れるべきかもしれん」

7「なるほど」

L「場合によってはグループを組ませ「細胞」方式で活動させるのもあり得るな…」(※細胞…複数のエージェントが「職場の同僚」など同じカバー(偽装身分)を与えられてグループ活動すること。単独より監視活動などは楽で、工作員同士がお互いに寝返りを監視する意味もあったが、目立つことから好まれない)

7「かも知れません」

L「うむ……とにかく一度訓練生たちを見てみたかったのだ」

7「分かっております」

L「……しかし自分で決めた保安措置とはいえ、戻りにはまた「アレ」に乗らないといかんのか…」ファームに行くために乗ってきて、今は裏手に停まっている霊柩車…そこに収まっている狭苦しい棺のことを考えてため息をついた…

7「あなたはまだ恵まれておりますよ…私はあれですから」同じく洗濯屋の大きなカゴに入ってやってきた「7」も、いくらかげんなりしたように言った…

L「…ふむ、その点に関しては同情する」

………

…今日か明日以降にまた投下する予定ですが、「駐在工作員」(レジデント)の説明が別のものと交ざっておりましたので訂正を…


正しくは「ビジネスマンなどの身分に偽装して現地に入り、自力で独自の情報源を開拓するエージェントで、国によっては「レジデント」が他の工作員の指揮をとることもある」と言うもので、いずれにせよ工作員の「花形」と言うべきトップ・エージェントであることは変わりません…


とりあえずしばしマジメな訓練の場面が続きますが、しばらくしたらアンジェの濡れ場になる予定です。お待ちください…

スパイ描写がしっかりしていて読み物として好きです
プリプリ小説だとあまりないので...

>>217 まずはコメントをありがとうございます。読んでいただき嬉しいです……イラストを描く画力はないので、引き続き書きものの方で頑張って行きたいと思います

…別の日…

ドロシー「…こりゃまた、ずいぶんとしゃれた部屋だな……」

…時間割に従って施設の一角にやって来た訓練生たちは、殺風景な他の部屋とは比べものにならない豪華さに多少驚いた……レースのカーテンにピンク色のフワフワしたクッション、壁にかけられているのは淡い色あいをしたルノアールの風景画、漂うのは硝煙ではなく香水の香り……室内には青い目と柔らかそうな金髪をしたドレス姿の可愛げのある女性が立っていて、訓練生たちに微笑みかけた…

可愛らしい女性「ボンジューゥ、可愛らしいレディの皆さん…さぁ、どうぞおかけになって?」

一同「…」薄汚れたような灰色つなぎ姿の訓練生たちは、椅子に敷かれた高級そうなクッションに遠慮しながら腰かけた…

女性「ビアン(結構)…では、まずはわたくしから自己紹介いたしましょうね。わたくしは皆さまに似合うファッションや化粧術、優雅な態度や物腰をお教えする、マドモアゼル・マーガレットですわ……アンシャンテ(どうぞお見知りおきを)」

…レースやドレープ(折り目)がたっぷりついた、パステルピンクのロココ調ドレスのせいで、マーガレット教官は桃色のバラかカーネーションに包み込まれているような具合に見える……言葉のあちこちにフランス語が交じるあたり、どうやら何かの事情で故郷にいられなくなった亡命フランス人なのだろうと、ドロシーは見当をつけた…

ドロシー「……ドレスねぇ」

マーガレット「…この中には「腕利きの工作員は優雅なドレスなど縁がない」と思っている方もいらっしゃるでしょうね……ですが近い将来、皆さまも情報部員として舞踏会にお邪魔する機会があるかもしれません。そうした時に優雅なレディとして振る舞えるよう、わたくしと練習してまいりましょう…それに、たとえそうした機会がなくてもドレスを着るのは良い経験になりますし、自分に合った服の選び方は覚えておいてもよろしいと思いますわ……違いまして?」

マーガレット「さて、それでは早速お着替えに参りましょう…と言いたいところなのですけれど……たとえば、あなたはどんなドレスが着てみたいですか?」

訓練生「えぇと…なら、マドモアゼル・マーガレットのような可愛らしい淡い色のものを……」

マーガレット「メルスィ(ありがとう)、ほめていただいて嬉しく思いますわ。ですが…」

訓練生「?」

マーガレット「世の中には「着たい服」と「着られる服」という物がありますの…実を申しますと、わたくしも好きこのんでこのような豪奢なドレスを着ているわけではございません。本当はシルクハットにピシッと決まった燕尾服…そう、きりりとした男装をまとってみたいと思っておりますの……」

訓練生「…すみません」

マーガレット「ノン、ノン…叱っているわけではありませんわ。ですが、情報部員というものは自分に似合った偽装をしなければなりません…いくら演技力が優れていても、堂々とした体格で引き締まった筋肉の方では、小柄なお婆さんのふりなどできませんわ……さて、ミス・ダートマス」

訓練生「はい」

マーガレット「あなたは背が高く眼は灰色、髪色もスレートグレイをしておりますわね…そういった方に、わたくしが着ているようなパステルピンクや淡い色は似合いませんわ…むしろすっきりした青灰色で長身を引きたて、きりりとした涼しげな印象を与える方がよろしいですわ……と、このようにわたくしとあなた方で、それぞれ一番似合うドレスを選んでみましょう♪」

…しばらくして…

訓練生B「…どうでしょうか、マドモアゼル?」

マーガレット「ウィ…大変よく似合っておりますわ」

訓練生C「教官、私の方も見ていただけますか…?」

マーガレット「そう、ですわね……こちらの方がより、ミス・エレノアの明るい雰囲気を引きたてますわ」…普段は修道院のような養成所生活を頑張っているとはいえ、まだまだお洒落もしてみたい年頃の娘たちだけあって、真剣ながらもにぎやかにドレスを選んでいる…

アンジェ「……私はこれでいい」(服選びの仕方は王室でうんと仕込まれたもの…)

マーガレット「トレビアン! あなたはドレス選びのセンスがありますわ…派手さには欠けますが落ち着きがあって、騒がしい舞踏会であなたを気に留める方はおりません…そしてあなたはそっと耳を傾け、内緒話を聞いてしまう……実にすばらしいですわ。他にもこうしたパールグレイのドレスなどはあなたにぴったりですから、覚えておきましょうね?」

アンジェ「はい」

マーガレット「そしてミス・ドロシー…はっきりした顔立ちで身体のメリハリが効いているあなたはこうしたボルドー(深い紅)などを着ると、ぐっと艶やかでよろしいですわ……胸元からのぞく柔らかそうな乳房の白さも魅力的ですから、お肌のお手入れも欠かさずになさいね?」

ドロシー「メルシー、マドモアゼル」

マーガレット「いいえ、似合う一着が見つかって良かったですわ…それからこうしたトーク(縁なし帽子)などでチョコレート色を組み合わせるとより大人びた印象に…また、ドレスをディープグリーンに変えればシックで抑えた感じに仕上がりますわ」

ドロシー「覚えておきます」

マーガレット「ええ♪ それと細かい花模様のような柄は、長身のあなたが着るとぼんやりとした印象を与えてしまいますから…もし柄物を選ぶなら、一つひとつの柄が大きいものがよろしいわ」

ドロシー「はい」(……着心地は窮屈だけど、こうして鏡で見ると案外ドレスも悪くない…な///)

マーガレット「さて…次はドレスを着た時にもっとも美しく見えるような、優雅な身のこなし方を学んで参りましょう♪」

………

マーガレット「さて、これで皆さまもドレスの着こなしと歩き方を理解できましたね…それではわたくしに付いていらっしゃい」

訓練生A「あの、どこに行くのでしょうか」

マーガレット「それはまだお教えできませんわ…♪」

…食堂…

マーガレット「さて、皆さまも慣れないお着替えや化粧でだいぶお腹が空いたでしょうから…お昼に致しましょう?」

ドロシー「……この豪華なドレスで、ねぇ…ゆでジャガイモにはふさわしくない格好だ……な…?」小声でぼやくドロシー…が、普段の献立からは想像もつかないほど良い香りが漂ってきて、ぼやきを中断した……

…普段はゆでジャガイモか、味もそっけもないヨークシャープディング、さもなければイマイチな味のパイか焼き過ぎのローストビーフを出すのがせいぜいの食堂……のはずが、長テーブルには金縁の食器とキラキラと光る銀のフォークやナイフが輝いていて、燭台のキャンドルが純白のテーブルクロスを照らしている…

訓練生A「わぁぁ…♪」

訓練生B「…どうしよう、今まであんなの使ったことない……」

ドロシー「…ヒュゥ……驚いたなこりゃ…」

マーガレット「ふふ、皆さまにドレスの着方を教えただけでは片手落ちという物ですから…では教官、お願いします」マーガレットが優雅に脇へどき、代わりに堅苦しい感じの女性が訓練生たちの前に立った…

堅苦しい女性「はい。皆さん、お静かに…これからあなた方にテーブルマナーをお教えする、ミス・グレイホーク…グレイ教官です」

ドロシー「…なるほどな……」

グレイ「いくら飾り立ててもマナーがなっていなければ、貴婦人の偽装など何にもなりはしません……ここでは皆さんに正しい食器の使い方や、食卓でのマナーを覚えていただきます…では席について」

グレイ「まずは基本のルールですが…ナプキンは膝の上、カトラリー(フォーク、ナイフ、スプーンの類)は外側から順番に。間違ってもナイフで突き刺してそのまま口に運ぶような真似はしないように」

ドロシー「…なるほどねぇ」

グレイ「……スープを飲む際は手前から奥にスプーンを動かします。もしスープにパセリやディルのような香草が散らしてあったら、最初の一口目ですくってしまうのは考え物です…風味を変えるためのものですから、途中で飲むようになさい」

ドロシー「ふむふむ…?」

グレイ「…グラスは紅・白のワイン、シャンパン、ブランデーと形が違います……ワイングラスやシャンパングラスの柄が長いのは手の熱でぬるくしてしまわないため…反対にブランデーグラスが底の広い形をしているのは、手のぬくもりで香りを生じさせて楽しむためです……さて、これで一通りの説明が終わりました…皆さんにはこれからフルコースを味わっていただきますので、さっき説明したマナー通りに食べてみてください」

…グレイ教官が説明を終えると、白いふきんを腕にかけたギャルソン(給仕)…本当は教官たち…が前菜を並べ、ワインを注いだ…

ドロシー「…やれやれ…ナイフとフォークだけでこんなに種類があるんじゃあ、使いどころに困るな……」

アンジェ「…」

ドロシー「なぁ…アンジェ、よかったらお手本にさせてもらってもいいか?」

アンジェ「…別に構わないけれど…私もテーブルマナーなんて知らないかもしれないわよ?」

ドロシー「なぁに…そうしたら二人で叱られるだけさ……」

アンジェ「そう…なら好きにしたら?」

ドロシー「どうも…♪」


…食後…

ドロシー「…ふぅ、料理はうまかったけど……ああガミガミ言われたんじゃ食べたようでもなかったな…」

グレイ「さて、皆さんのテーブルマナーを拝見させていただき、様々なことについて注意をさせていただきました……はっきり申し上げますが、たいていの方はこれからみっちりと練習する必要がありそうです…が、中には良いマナーをお持ちの方がおりましたね…」さりげなくアンジェの方に視線を向ける…

アンジェ「…」

グレイ「そうした方は引き続き練習を怠らないよう…また、さきほど私に注意を受けた方はしっかりと覚えておくように……以上です」

ドロシー「…アンジェ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「さっきはありがとな…おかげで叱られないで済んだ♪」

アンジェ「お礼なんていいわ。別に教えたわけじゃないんだもの…むしろ横目で見ただけで真似できる、貴女の器用さのおかげでしょうね」

ドロシー「はは、そりゃどうも…そう言えば、次は何の訓練なんだろうな……?」

アンジェ「さぁね」

………

…午後…

グレイ「では皆さん、ついてきてください」ドレス姿の一団を先導するグレイ教官…

訓練生A「はい」

訓練生B「分かりました」

…ミス・グレイに連れられてやって来たのは施設の片隅にある小さな林で、視線の先には午後の柔らかい日差しに照らされた明るい緑の草地と、揺れる色とりどりの花々、まばらな木々の間から聞こえてくるヒバリの鳴き声……と、堅苦しい他の場所とは違う牧歌的な雰囲気が漂っている。そして、林の間には田舎の農家のような、緑色の屋根をした一軒の小さな家が建っている…

グレイ「では、これから皆さんにちょっとした面談を受けてもらいます…一人ずつ入っていって、出て来たら次の人と交代しなさい」

訓練生C「…教官、これも何かの訓練なのですか?」

グレイ「この施設での生活は全てが訓練です……では、最初はあなたから」

訓練生C「はい」

…数十分後…

ドロシー「…失礼しますよ…と」

おばさん「いらっしゃい…さ、かけて」

…木の扉を開けると中は編み物や本が置いてあるこぢんまりとした居心地のいい部屋で、室内には辺りを心地よく暖めている暖炉に、素朴な感じのする木のテーブル、それにひじ掛け椅子と揺り椅子が一脚づつ……テーブルを挟んだ手前側にはひじ掛け椅子があって、奥の揺り椅子には小柄なおばさんが座って編み物をしている…おばさんは丸ぽちゃで目の間がいくらか離れているせいか、決して美人とは言えないが、いかにも人のよさそうな顔をしている…

ドロシー「どうも…」訓練のたまものでさっと周囲を見回すと、とっさの場合に飛び出せそうな出口と窓の位置、誰か潜んでいる様子はないか…などと手早く安全確認をする…

おばさん「もうちょっと待っててちょうだい…きりのいいところまで編んでしまいたいからね」

ドロシー「ええ、ゆっくりでいいですよ」

おばさん「ありがとうね……はい、終わりましたよ。 …よいしょ」椅子から立ち上がったおばさんは小柄で、服の明るい茶色と栗色が「田舎の優しいおばさん」と言った雰囲気にぴったり合っている…

おばさん「さてさて、ミセス・ブラウンよ…よろしくね、ミス……」

ドロシー「ドロシー」

ブラウン「ミス・ドロシーね……よかったらお紅茶でも淹れましょうかねぇ」

ドロシー「ありがとうございます、ミセス・ブラウン」

ブラウン「気にしないで、私もちょうど欲しかったのよ」…暖炉のそばに置いてあるやかんを取り上げ、ティーポットにお湯を注ぐ……一旦お湯を捨て、ポットに小さじ二杯の茶葉を入れると、熱いお湯をたっぷりと注ぎ込んだ…

ブラウン「…よいしょ、後は気長に待つばかりね……パウンドケーキがあるけど、食べる?」

ドロシー「いえ、お構いなく」

ブラウン「まぁまぁ、そう言わずに…クルミ入りだから美味しいわよ」

ドロシー「そうですか、じゃあお言葉に甘えて」

ブラウン「ええ、そうしてちょうだい……娘が作って持ってきてくれたのだけど、おばさん一人じゃ食べきれないのよ」

ドロシー「へぇ…娘さんはミセス・ブラウンに似て優しいお子さんなんですね」

ブラウン「まぁ、ありがと……よかったら娘の姿を見てちょうだい。ほら、そこに肖像画があるでしょう?」

ドロシー「どれどれ…?」毒を盛られるのではないかとそっと注意しつつ、ブラウンの指差した方を見た……マントルピースの上に置かれた小さな肖像画には、老人とミセス・ブラウン…それに愛らしい娘が描かれている…

ドロシー「へぇ、可愛いお嬢さんだ……隣はご主人ですか?」

ブラウン「ええ…なんだけど、十年ばかり前に「セイロンで茶畑の農園主になる」って出発してそれっきり……ありがたいことに、こうやって生活出来るだけのお金は信託されていたけれどもね」

ドロシー「それは…知らなかったとはいえ失礼しました、ミセス・ブラウン」

ブラウン「いいのよ……それよりお茶が入ったから飲みましょう」

ドロシー「ごちそうになります…ん、美味しい」

ブラウン「そう、良かったわ…♪」

…しばらくして…

ドロシー「そうですか…ミセス・ブラウンも大変だったんですね」

ブラウン「ええ。その時はうんと困ってね……ミス・ドロシーにはそんな経験ある?」

ドロシー「はは、そんな経験なんてありませんよ…」

ブラウン「そう、良かったわね…お生まれはロンドン?」

ドロシー「いえ、コーンウォール地方です……海沿いだったので風が強くって、子供心に家が吹き飛ぶんじゃないかって心配だったのを覚えています」

ブラウン「そう…それは怖かったでしょうねぇ」

ドロシー「ええ、全く……壁の割れ目から吹き込んでくる風がひゅうひゅう言ってベッドが寒いうえに、家の暖炉は煙突が悪かったのかよく暖まらなくて…しょっちゅうぶすぶすと音をたててくすぶっていましたよ…ふふ、懐かしいです」

ブラウン「まぁまぁ…そうなの」

ドロシー「はい……幼い頃は天井についた染みをあれこれいろんなものに見立てては空想にふけったりして…その中のひとつは枕に頭をのせるとちょうど正面に見える場所にあったんですが…王室の馬車そっくりでしたよ?」

ブラウン「ふふ、そうだったの…♪」

ドロシー「ええ…それに近くの原っぱに出かけてはクランベリーの茂みにもぐってみたり、野イチゴをつまんでみたりして……」

ブラウン「いいわねぇ…子供時代の事で、他にはコーンウォールのどんなことを覚えてる?」

ドロシー「そう……当時は子供だったので何のことか分からなかったのですが、ワーテルローの戦勝記念日で大人たちが騒いでいたこととか…夕飯の時間になっても父親が帰ってこないので、母親から「パブに迎えに行って来い」って言われたんですが、漁師が生やしていたもじゃもじゃのヒゲが怖くって、なかなか入れなかったのを覚えていますよ……カウンターなんかは長年こぼれたエールを拭きとってきたせいか飴色になっていて…」

ブラウン「ふふ、そう…って、もうこんな時間ね?」

ドロシー「本当だ……すみません、長々と居座っちゃって」

ブラウン「いいのよ…また顔を見せに来てちょうだいね、ミス・ドロシー?」

ドロシー「ええ。そうしますよ、ミセス・ブラウン♪」

…しばらくして…

ドロシー「よぉ、アンジェ、委員長…なぁ、さっきのは何の訓練だったと思う?」

委員長「ドロシー、あなたそんなことも分からなかったの?」

アンジェ「本当ね…あれが何の訓練かなんて分かりきったことよ」

ドロシー「へぇ、それじゃあ無学な私に教えてくれよ♪」

アンジェ「あの訓練はカバー(偽装)やレジェンド(カバーに合わせたニセ経歴)を見破られないための訓練よ…人当たりのいいおばさん相手に、うっかりつじつまの合わないことをしゃべってしまわないためのね」

ドロシー「なぁる…で、お二人さんは上手くいったか?」

委員長「そうね、途中で予想外の質問が来たときは少し詰まったけれど…」

アンジェ「私は特に問題なかったわ」

ドロシー「はぁ、相変わらずアンジェは優等生だねぇ」

………

…その頃・会議室…

ホワイト「どうだったね?」

ブラウン「そうねぇ…上出来なのは五、六人くらいよ」

ホワイト「相変わらず手厳しいな……もっとも、ミセス・ブラウンのその風貌にはみんな一度はだまされるがね」

ブラウン「そう言わないでちょうだい…私みたいなおばさんにぽろりと秘密をしゃべって、牢獄から出られなくなったエージェントのなんと多い事か……そうならないように努力しているのよ」

ホワイト「分かっていますとも」

グレイ「…では逆に「これは」と思う訓練生は?」

ブラウン「うまかったのはミス・ドロシーね…コーンウォールなんて自分の住んだことのない場所だろうに、あれこれと見てきたように話すんですもの……ちょっと意地悪をして地元のお祭りを聞いた時も、さらりと話題をすり替えたわよ」

ブラック「ほほう。彼女は少し奔放で飽きっぽいところもあるが…悪くないかもしれんね」

ブラウン「ええ。後はミス・アンジェね……何事もそつなくこなせて」

マーガレット「それはわたくしも同意見です。いつでもさらりと振る舞って…それに王宮や貴族階級のしきたりに詳しいのには驚きましたわ」

ホワイト「後はコードナンバーC2の「委員長」か。彼女は真面目だから成績はいいが…この手の訓練ではどうだったね?」

ブラウン「そうねぇ…きちんと訓練で受けた形通りに話題をそらし、そつなくまとめていたのだけれど……少し心配性なのが気になるわね」

ブラック「ふむ、底抜けの能天気よりは用心深い方がいいが……真面目なだけでは成果に結びつかないのが情報部員の大変な所だからな、あまりに考え過ぎるタイプは長続きしないだろう…」

ホワイト「エージェントに一番必要なのは運だからな。もっとも、そればかりは実際に活動させてみないと分からんが……ところで明日は君の番だね」

若い女性「ええ」

ホワイト「それじゃあ、うんと歩かせてやってくれたまえ…いい気分転換になる」

若い女性「もちろんです♪」

………

…翌日の早朝・ロンドン市内…

若い女性「初めまして、皆さん…私はレディ・スカーレット。今日は皆さんに徒歩での「移動目標の監視と追跡」を学習してもらいます」

…成績の良いアンジェ、ドロシー、そして委員長はクラスの訓練生たちより一足早くファームを出て「実地」での訓練に移っていた。三人とも夜明け前に起こされて、それぞれ空の洗濯カゴに押し込められた上で洗濯屋の馬車に載せられ、なにも見聞きできないままロンドンに運ばれた……やっとたどり着いたロンドン市内の部屋では、はつらつとした様子のうら若い指導教官と、その補佐らしい二人が待っていた…

委員長「…つまり、尾行のことですか?」

スカーレット「ええ、やることはほぼ同じです。ですが「尾行」というよりも、こっちの方がそれらしいでしょう?」

ドロシー「確かに」

スカーレット「さて…「監視と追跡」の基本は目標にあまり近づきすぎないこと。そして相手が止まったからと言って、自分も立ち止まらないこと…同時に動きを止めるなんて目立ちますからね。そういう場合は視線を合わせずにゆっくり通り過ぎて、相手が歩きだすのを待ちましょう」

スカーレット「他にも、道路の混み具合に合わせて反対側の歩道から追跡したり、ショーウィンドウをのぞき込む…ちょっと店に入って、店内からガラス越しに監視を続けるのもいいでしょうね」

委員長「距離はどのくらい空ければいいのですか?」

スカーレット「それは道の人通りや遮蔽物の多さによっても変わりますから何とも言えませんね…でも、二十五ヤードくらいなら見失うことも少ないでしょうし、かといって相手に気づかれることもないでしょう……後は格好を変えるのも有効です。帽子、日傘、上着を着たり脱いだり…何でも構いません」

………



スカーレット「……それと最後に。結構歩くことになりますから、脚ごしらえはしっかりとね」…しばらくして「尾行の基本」を話し終えると、がっちりした編み上げ長靴のひもを結び直してみせた

アンジェ「はい」

スカーレット「よろしい。そうしたら一人ずつ交代で私を尾行してもらいますから…残りの二人はそれぞれミス・アネモネとミスタ・ブルーフォックスについて、練習しながら交代するポイントまで歩いて行きましょう」

委員長「了解」

…数時間後…

スカーレット「…」

ドロシー「…」(くそっ…教官のやつ、明け方からずーっと歩き続けてやがるけど……脚にバネでも入ってるのか?)

スカーレット「…すみません、一つ下さい」

露天のオヤジ「毎度っ!」

ドロシー「…」(ちくしょう…腹は減るし喉は乾くし、脚が棒になった気分だ……ったく)

…心の中で悪態をつきながら、午前中のにぎやかな街で尾行を続けるドロシー…と、それまでぶらぶらと歩いていたスカーレット教官が急に速足で歩き始めた……

ドロシー「…」(ちっ、振り切るつもりだな……そうはいきますかっての!)

スカーレット「…このショールはいくらですか…え、六シリング?」

ドロシー「!」(おっとと、あやうく立ち止まるところだった……こういうときは「何でもないように」てくてく行き過ぎる…と♪)

スカーレット「…そうですか、色は綺麗で気に入ったんですが……また今度にします」

露天のおばちゃん「そうかい、そいつは残念だねぇ…」

ドロシー「…」(お、ちょうどいい所にショーウィンドウがある…しばらく眺めるふりでもしながらやり過ごそう)

スカーレット「…」

ドロシー「…」(へへーんだ…こちとらだってそうそう簡単に撒かれたりしませんっての!)

スカーレット「…」

ドロシー「!?」(ちっ、今度は急に曲がって引き離す気かよ…!)

…たたたっ、とドロシーが距離を詰めて角を曲がった瞬間、スカーレットが両手を広げていた…

スカーレット「…はい、捕まえた」

ドロシー「っ!?」

スカーレット「…ふふふ、途中まではなかなか良かったわ、ミス・D……だけどね、相手が急に角を曲がったら要注意よ…こうやって敵方のエージェントが貴女を待ち受けているでしょうからね。 こんな時は急に曲がらないで一呼吸空けるか、さもなければ一旦追うのをあきらめましょう」

ドロシー「はい、これからは気を付けます……ふぅ」

スカーレット「疲れた?」

ドロシー「ええ、まぁ…それに喉も乾きました」

スカーレット「そうでしょうね…それじゃあここで待っているから、お昼を買っていらっしゃい」

ドロシー「そりゃどうも…♪」

スカーレット「初めての実地訓練にしては上出来だったから、ちょっとしたご褒美よ」

ドロシー「今は何より嬉しいご褒美ですよ…それじゃあひとっ走り買ってきます」

スカーレット「ええ。戻って来たら続きをやりますからね」

ドロシー「…うえぇ、まだやるのかよ……」

…夕方…

スカーレット「はい、お疲れ様…三人ともなかなか上出来でした」

ドロシー「…はぁぁ」

委員長「ふぅ」

アンジェ「…」

スカーレット「それでは終わりに私からちょっとした講評を…ミス・アンジェ」

アンジェ「はい」

スカーレット「あなたの「監視と追跡」は大変よろしい♪ …目立たず、かといって逆に疑いを招くほど地味すぎることもなく…近づきすぎず、かといって離れすぎることもない……私も数回あなたの事を見失ってしまうほどでした。 あなたは工作員のセンスがあります、今後もこの調子で訓練に励んで下さいね」

アンジェ「ありがとうございます」

スカーレット「さて、ミス・ドロシー…」

ドロシー「はい」

スカーレット「あなたは人混みをぬって歩くのが上手ですね…それに途中で気を利かせてボンネットを買ったのはいい判断でした…視線も隠れるし雰囲気もぐっと変わりますからね」

ドロシー「…どうも」

スカーレット「引き続き訓練に励めば、いい監視者になれるでしょう…頑張って♪」

ドロシー「はい」

スカーレット「さて、最後にミス…いえ、せっかくですから私も「委員長さん」ってお呼びしましょう」

委員長「…はい」

スカーレット「最後こそ振り切られてしまったけれど、途中までは上手く尾行できていたわね…定石通り、無難で堅実な追跡の仕方でした……今後は教科書に自分なりのアレンジを加えてみるとよりよい「監視と追跡」が出来るでしょう」

委員長「はい、分かりました」

スカーレット「それでは今日はここまで…お疲れ様」

………



ドロシー「うえぇ…さすがに脚にこたえたな……」

アンジェ「そう?」

ドロシー「全く…レディ・スカーレットといいお前さんといい、本当に人間なのか?」

アンジェ「さぁ、どうかしらね」

ドロシー「あー、ったく可愛くないやつ……委員長、どうした?」

委員長「…二人とも最後まで尾行できたのよね?」

ドロシー「ああ…とはいえ私は「ふん捕まった形で」だけどな」

委員長「そう。でも私は振り切られちゃって…ちゃんと基本にのっとってやってたのに、教官が急に早足で人混みに紛れ込んだら見失って……」

ドロシー「まぁまぁ、そう思い詰めるなって……次があるさ、な?」

委員長「でも…っ!」

アンジェ「ふぅ…今日の失敗を悩んでも仕方がないでしょう。明日の訓練で挽回するか、そもそも失敗しないことね」

ドロシー「おいおい、ずいぶん手厳しいじゃないか?」

アンジェ「当然でしょう。もしかしたら今後この三人でチームを組むことになるかもしれないのだから…」

ドロシー「へぇ…まさかアンジェが私たちを同格に見てくれてるってのは意外だな」

アンジェ「…あくまでも「もし」の話よ」

ドロシー「おやおや、ミス・アンジェときたら照れちゃってまぁ…♪」

アンジェ「…怒るわよ?」

委員長「はぁ……あなたたちの夫婦漫才を見ていたら、悩んでいたのが馬鹿みたいな気分になってきたわ…明日は誰にも負けないほど上手くやるから」

ドロシー「はは、その意気♪」

尋問リクって丸々1エピソードなのかな
もし尺があれば快楽拷問だけじゃなく前半で痛い方の訓練もあると嬉しい

>>226 まずはコメントありがとうございます

…まず、尋問への訓練はこのエピソードでやっていく予定です……それと「痛い系」のリクエストはできればお答えしたいところではありますが(軽いタッチのものならともかく)苦痛になるようなものは書くつもりがなかったので難しいです……最初にそう書きいれておけばよかったですね、ごめんなさい…


…ちなみに「お尻ペンペン」くらいでよければ書けますので、それでもよろしければ……

…翌日…

ドロシー「さーてと…いいんちょ、昨日はあれだけ大見得を切ってくれたんだ……頑張ってくれよ?」

委員長「言われなくても…!」

色っぽい女性「はい、それでは座って下さい…私はミス・パープル♪」

ドロシー「…っ!?」

パープル「……これから皆さんには工作員が仕掛ける誘惑の仕方と、同時に工作員が負うさまざまな誘惑や尋問への対処法をお教えします…どうかお見知りおきを♪」

委員長「///」

ドロシー「おやおや……こいつは委員長には難しいよ…な…///」

…甘いジャスミンの香りが立ちこめる教室の中、ミス・パープルは椅子に座っているだけにもかかわらず、むしゃぶりつきたくなるような女の色香を漂わせている…

パープル「…物の本によると「世界最古のスパイ」はイヴを誘惑して知恵の実を食べさせた蛇だと言う意見があります…確かに偽情報で相手のエージェントを誘惑し、結果的にその主人を裏切らせたのですから、工作としては上出来です♪」…椅子の上で脚を組み替えると、白いストッキングに包まれた滑らかなふくらはぎがちらりと見える…

パープル「……また、聖書にもありますように「肉体は弱い」ものです…そして私たち情報部員は敵方の弱い部分を見つけ、そこを突いていかなければなりません♪」(※肉体は弱い(fresh is frail)…マタイ伝)

パープル「…つまり、一般的にスパイと異性…あるいは同性との付き合いは切っても切れない関係にあります」

パープル「たいていの場合、諜報活動における同性愛者は弱点が多く「リスクが高い」と敬遠されがちですが、私のように上手く使えば貴重な武器になりますよ……ふふ♪」ドレスの胸元からは白くて柔らかそうな胸がのぞき、身動きするたびにたわわに揺れる…

アンジェ「…」

パープル「例えば…貴女が手なずけた「スティンカー」は、最初こそ「利益」や「思想」といった信条に従ってこちらに情報を提供しますが、しばらくするとだいたいは自分のやって来たことの大きさに恐れをなして、「手を引きたい」とか、悪くすると貴女のことを敵方に密告したりすることがあります…」

(※スティンカー…「臭い奴」の意で、敵国籍でありながらこちらに情報を提供する者のこと…つまり「裏切り者」や「売国奴」と言われる人たち)

パープル「そんな時、相手の弱点を握っておくと手綱をとるのがたやすくなります……みんな何かしら、人には言えないような「趣味」を抱えているものですからね。…特に社交界でのゴシップにうるさい向こうの貴族たちは、なおの事そうした「不品行」を隠したがります♪」

委員長「///」

パープル「…まぁ、そうでなくても一種の「慰めと報酬」と言うことでベッドを共にしてあげるのもいいでしょう…と、ここまでは「こちらが操る場合」のお話ですね♪」

パープル「では反対に、こちらに差し向けられた敵方のエージェントたちはどんな姿かたちをしているのか……それは簡単♪」

ドロシー「?」

パープル「そうしたエージェントはそんなに美男美女と言うわけでもありません…ですが、貴女の事をよく理解してくれて、必要以上に貴女の事をあれこれ聞き出そうとはせず、貴女がイライラしているときも文句ひとつ言わずに寄り添ってくれる……つまり「思いやりがあって素晴らしい人」と言うことです…が、こんな人はまずいませんから、そういう人は間違いなく敵方のエージェントです♪」

ドロシー「…ぷっ」

パープル「残念なことですけれど、こうした相手に引っかかってのぼせてしまうエージェントは少なくありません…なぜなら、私たちのように工作員として身分を偽っていると、どうしても心から信頼できる人が欲しくなるからです……別に一晩の刺激が欲しいわけではなくて、あれこれ心の内をさらけ出せる相手が欲しくなるのですね…♪」

パープル「でも気を付けて……たとえ敵のエージェントではなく心から貴女を愛していて、裏切るつもりのない人だとしても、うっかり口にした一言が貴女を死刑台に追いやってしまうかもしれません…」

アンジェ「…」

パープル「ではどうすればいいのか? …昔からこの問題について情報部は頭を悩ませてきました……そしてその答えは…」

一同「…」

パープル「いまだにありません」

ドロシー「…おいおい」

パープル「誰とも心を通わせて気を許す時間が得られない情報部員たちにとって、偽りを取り払って自分らしく話せる時間は唯一安心できる時間なので「付き合うな」と言うわけにもいかないのです……だから本部の人たちは白髪になったりするんですよ♪」

パープル「さて、お話はこのくらいにして…後は「実践」に参りましょうね……ふふふっ♪」甘い笑みを浮かべて訓練生たちを舐めまわすように物色するパープル教官…

ドロシー「…うへぇ……///」

………

>>227
「痛い系」無理に書かなくて大丈夫ですよ
教官と一対一と勘違いしてたので...
AやD、委員長は「優等生」なので皆の見本としてパープル教官に沢山可愛がられますね
楽しみです

>>229 お返事遅くなりました、そう言ってもらえると助かります……一応、明日以降に百合えっちな場面をば投下する予定です


…ちなみに元「モサド」エージェントの方が書いたとあるノンフィクションによると、実際の工作員は尋問への対策法はほとんど教えられないそうです…あれこれと尋問の事を聞くと不安をかきたてられてしまい訓練が手につかなくなるのと、なまじ尋問の知識を持っていると「実際に」尋問を受けることになった時に慣れや油断が出て「かえって尋問官の術中にはまってしまうから」だそうで…

パープル「それじゃあお手本を見せますから、お相手に……そうね、いま嫌そうな顔をしてくれたミス・ドロシー♪」

ドロシー「…はは、教官も人が悪い。私がお綺麗なパープル教官にそんな顔するわけありませんよ♪」

パープル「あらそぉ、だったらなおのこと遠慮せずにいらっしゃい…ね?」

ドロシー「…」(ちっ、やぶへびだったか…)

パープル「それじゃあ…私のお膝の上にどうぞ♪」教室の端に置いてある、一人がけにしては大きいソファーに座り、膝をぽんぽんっ…と叩いた

ドロシー「いいんですか? …それじゃあ、失礼しますよ……っ!?」(おいおい、教官の太もも…むちゃくちゃ柔らかくて気持ちいいぞ!?)

パープル「それでは…軽くお手本をね……♪」お姫様抱っこのスタイルに近い状態で横向きに座っているドロシーを両手で抱きかかえるようにして、軽く髪を撫でる…

ドロシー「…教官、私は何をすればいいですかね?」

パープル「そうねぇ…軽いおしゃべりでもしましょうか♪」

ドロシー「あぁ、そうですか……それにしても今日はいいお天気で、ツバメが空中でひらひら宙返りしているところが見られましたよ……」

パープル「そうねぇ、この数日は暖かでいい気持ちだもの……ツバメさんも過ごしやすいでしょうね♪」さわっ…♪

ドロシー「…んっ」

パープル「最初は遠慮がちに…でも相手の事を愛する気持ちを精一杯こらえているように……もっとも、実戦では相手の様子次第で臨機応変に臨みましょう……ミス・ドロシー、貴女は一見すると勝気な感じだけれど、本当は誰よりも優しくて繊細なのね…♪」耳元でそっとささやきながら頬を撫でる…

ドロシー「ん、ふぁ…ぁ///」(うわ…手も柔らかけりゃいい匂いまでするなんて反則だろ……///)

パープル「…続き、いい?」

ドロシー「訓練なんですから、良いも悪いもお任せしますよ…///」

パープル「あら、つれないお返事……それじゃあ…♪」

ドロシー「う…くぅ///」パープル教官に豪奢なドレスの裾をそっとたくし上げられると、さらさらいう衣擦れの音と同時にひんやりした空気が入ってくる…

パープル「ふふ……そう堅くならないで、ゆったり息を吸って…そうそう…♪」優しくヒールを脱がせると、シルクのストッキングに包まれたドロシーの脚をつま先からふくらはぎへと、そっと指先で撫で上げていく…

ドロシー「あう……んぅっ///」

委員長「///」

アンジェ「…」

訓練生A「ん…っ///」

訓練生B「あ、あっ……///」濡れた瞳に、口紅も鮮やかに半分開いた形のよい唇…むしろドロシーにしなだれかかっているようなパープル教官の色っぽい姿態と耽美な光景に、ふとももをもじもじさせて顔を赤らめる訓練生もちらほらと見える……

ドロシー「はひっ、はぁ…んぅ///」(あ、あっ……太ももを撫でられているだけなのに……すごいぞくぞくする…///)

パープル「ドロシー…お願い、私にキス…させて? …唇を奪ってしまってごめんなさいね、でも訓練だから我慢して……んっ♪」小声で謝ってから、そっと唇に触れた…

ドロシー「んっ、んむ…っ///」パープル教官の付けている花園のような香水と、成熟した女性の甘い匂いが鼻孔いっぱいに入って来てくらくらするドロシー…むしろ自分から進んで、パープルのぷるっとした唇に自分の唇を重ねて行った…

パープル「んふっ、んむ……ちゅぅ…♪」

ドロシー「んっんっ……あむ、んちゅっ…ちゅっ///」

パープル「ふふ、どうやらミス・ドロシーは積極的なタイプのようです♪ ……きっと身近な人と何かあって、一人ぼっちで寂しかったのね…?」他の訓練生たちには聞こえないよう、耳の穴を舐めるようにしながら言った…

ドロシー「ん、んくぅ……ミス・パープル…///」

パープル「ふふ、こうやると気持ちいいでしょう……言わなくていいわ、二人だけの秘密よ……たいていのレディはここが弱点ですから、覚えておきましょうね♪」ドロシーの形のいいふくらみをドレス越しに優しくまさぐりつつ、自分のずっしりとたわわな胸を押し付ける…

ドロシー「あっ、あ……♪」(これ、本気で……イきそう…っ///)

パープル「ふふ、それじゃあ「導入部」はこれにておしまい……ミス・ドロシー、どうぞ席にお戻りになって♪」

ドロシー「はい、ミス・パープル……んっ///」にちゅ…っ♪

パープル「さて……私たちとしてはありがたいことに、王国でも女性同士なら二人きりになるのがわりと簡単ですから、後はそれまでに築きあげてきた関係を一気に進めるかどうか、慎重に判断しま……もう、ちゃんと聞いているのかしら?」

訓練生C「…んっ///」

訓練生D「///」

パープル「あらあら、仕方ないわね…それではこの後は別室で「続き」のお話をして、その後は個別に練習しますからね……ふふ♪」

…別室…

パープル「さぁ、いらっしゃい…そう遠慮しないで?」

一同「…」


…パープルに連れてこられた一同の前にはベッドがいくつかと、むせ返るような甘い匂いがたちこめていた……クィーン・サイズのベッドには桃色のバラ模様が入ったシーツやクッションが敷かれていて、四、五人くらいならたやすく乗ることが出来そうに見える…


パープル「さてさて、さっきは協力的なミス・ドロシーのおかげで都合よく「関係を深める」ことが出来ました……とはいえ口づけだけで済ませられる関係では大した情報は引き出せないでしょうから…今度はより積極的な情報の引き出し方を……さて、ミス・チャタム♪」

訓練生C「はひっ…!?」

パープル「まぁまぁ、取って食べるわけじゃありませんからそんなに緊張しないで…♪」ころころと笑うミス・パープル

訓練生C「は、はい…///」

パープル「この中で一番の優等生はどなた?」

訓練生C「えーと…ミス・アンジェです」

パープル「そう…それでしたらミス・アンジェ♪」

アンジェ「…」

パープル「さ、どうぞ…?」腰をかがめて優しく手を差しだした…

訓練生C「…ミス・アンジェ……ごめんなさい……」

アンジェ「……余計な事を…」

訓練生C「ひうっ…!」

パープル「ミス・アンジェ、そう怖い顔をしないで…ね♪」左手はアンジェの手と「恋人つなぎ」にして、右手は抜け目なく腰に回している…

アンジェ「…はい」

パープル「さて……私たち二人は先ほどキスも交わし、もはや抜き差しならない仲になることを望んでいる……当然アルビオンの貴族にしてみれば女性同士の秘めたるお付き合いなど(実はたくさんいますけれど)社交界に知られてはならない秘密の関係です…こうなればもはや彼女は人に明かせぬ秘密を握られ「腕利き情報部員」である貴女の思うがまま、まるで操り人形のように動いてくれるでしょう♪」胸元で両手を合わせると、蜂蜜のように甘い笑みを浮かべた…

アンジェ「…」

パープル「それでは…ミス・アンジェ」

アンジェ「はい」

パープル「緊張しないでも大丈夫、優しくしてあげますから……ね♪」しゅるっ…と、黒いボディス(胴衣)のひもをほどくと、ドレスがふわりと広がる……

アンジェ「…横になった方がいいですか」

パープル「ふふ♪ お気遣いありがとう、ミス・アンジェ…最初は私に任せっぱなしで大丈夫よ♪」

アンジェ「そうですか…」

パープル「ええ……それと「初めて」は貴女の思い人のために取っておきますからね……貴女のお乳は色白で綺麗ね、ミス・アンジェ♪」ドレスの胸元をはだけさせてアンジェの控えめな谷間に顔をうずめて嬌声をあげつつ、さりげなくささやいた…

アンジェ「…!」

パープル「…その方はとっても大事な女性(ひと)のようね…任務が障害にならないよう祈っているわ……すぅ…はぁぁ♪」

アンジェ「…ミス・パープル……」

パープル「ふふ、それにね……こうすると…っ♪」

アンジェ「…っ!?」一気に押し倒されて馬乗りにされるアンジェ…ずっしりと豊かなミス・パープルの乳房が目の前で揺れる…

パープル「ミス・アンジェの恥ずかしがる表情を見ながら……んっ、んんっ♪」細身だが鍛えられ、きゅっと引き締まったアンジェの腰をぎゅっとふとももで挟み込み、熱っぽく柔らかな秘所を擦りつける…

アンジェ「んっ、い゛ぃっ…!?」

パープル「はぁ、はぁ、はぁっ…ミス・アンジェはひんやりしていて……気持ちいい…わ♪」くちゅ、にちゅ…ずりゅっ♪

アンジェ「はひっ、くうっ……んんっ!」長身で肉感的なミス・パープルだけに、小柄なアンジェには一回ごとの動きが激しい…息をするのも精一杯で、おまけに室内の空気は甘くただれた関係を思わせるような甘い匂いで満ちている……

パープル「それからこうして…ふふ、少し硬いけれど張りがあって若々しいお胸ね♪」むにっ、もにゅ…っ♪

アンジェ「はぁっ、ふぅ、ひっ…いぃ゛っ、あひぃ゛っ…♪」せいぜい女学生どうしのじゃれ合い程度にしか触られていないはずが、たちまち乳房の先端が硬くなってくる…

パープル「あら…ミス・アンジェはこういうことにはうといようね、それでは私から特別に……♪」甘い笑みを浮かべると、アンジェのふとももを左右の小脇に抱えるように持った…

委員長「今のでもすごいのに…と、特別ってどうなるの……///」

ドロシー「お、おぉ…ぅ///」

………



パープル「…さて、お次は……」

アンジェ「ふぅ…はぁ、はぁ……ふぁぁ…っ///」

ドロシー「なんて言うか……すっごいな…」

委員長「///」

パープル「貴女方はエージェントとして……どんな驚くような事にも冷静に対処し、もし相手が欲するのなら何だって与えてやりなさい……どうしても渡すことのできないものを望まれたら、その時は相手を殺しなさい…ね♪」

アンジェ「あふ…っ、はひぃっ……♪」

パープル「さて…王国の貴族女性の中には、こういうのが好きな人もいますから……初々しいのも結構ですが、あんまりぎこちないとかえって興ざめになって、そのまま「さようなら」になってしまうこともあります…一番いいのは「恥ずかしいけれど興味津々」と言ったところね♪」

アンジェ「はひっ…いぐっ、ひぅ…っ♪」

…まるで天気の話でもするように話しながらアンジェの後ろから手を伸ばして花芯をかき回し、ねちっこい手つきで乳房を揉みしだくミス・パープル……玉ねぎ型をした飾りのついたベッドの柱にシルクのリボンを結び付け、四つん這いにしたアンジェの手首とつないでいる……アンジェの目には黒いシルクの目隠しがされて、半開きの口からたらりと唾液が垂れている……

パープル「ふふ、だいぶ身体の硬さがほぐれてきたわ……いつもあんなに運動させられているから、どうしても筋肉がこわばってしまうのね…♪」

アンジェ「はふぅ、ひぅ…あっ、あんっ……♪」

パープル「あと、こういうのも時々……私もいく度か経験があるけれど……壁の向こうでは使われます♪」…ミス・パープルは「ミス・アンジェにはヒミツね♪」と言った様子でいたずらっぽく口元に人差し指をあて、それから壁の棚にかけてあった先が平たい乗馬用の鞭を取った…

ドロシー「うわ…///」

委員長「///」

訓練生A「わぁぁ…ねぇミス・ブリストル、今度一緒に試してみましょうよ……///」

訓練生B「え…」

訓練生C「…んっ///」くちゅっ…♪

パープル「それでは…っ♪」パンッ!

アンジェ「んぅっ…!?」

パープル「ふふ、もう一つ…♪」パシッ!

アンジェ「ん゛ぅ…くぅっ……!」

パープル「ふふ、ずいぶんとトロけたお顔になってきたと思うわ……でももう少しだけ…煮込み料理と同じように、時間をかけて……えいっ♪」

アンジェ「はぁ…っ」

…しばらくして…

パープル「いかが、ミス・アンジェ……痛くないようにしているけれど……たまらないでしょう?」他の訓練生には聞こえないよう耳元に顔を近づけて小声で気遣いながら、アンジェに鞭を振るう…

アンジェ「はひっ、ひぐぅ……ひっぐぅぅ…っ♪」とろとろっ…にちゅっ♪

パープル「まぁ、ミス・アンジェも天使のように可愛らしく果ててくれましたね。しばらくここで休んでいらっしゃい……さてさて、この後は私が個別に皆さんを訓練します♪」アンジェをとろとろにトロけさせておきながら、軽く息を弾ませているだけのミス・パープル…

委員長「…ねぇ、本当にあんなことをするの……?」

ドロシー「…参ったな///」(…もしミス・パープルみたいなのが相手だったら、こっちがへろへろにされちまう///)

パープル「別室がありますから、私が呼んだら入ってくるように…一応言っておきますが「その際のこと」はちゃんと秘密にしてあげますからね。何か質問はありますか?」

訓練生D「あの、教官…」

パープル「はい、何でしょう♪」

訓練生D「そのぉ…ミス・アンジェの様子からしても、「訓練が済んだから」って歩いて部屋を出て行けるとは思えないのですが……///」

パープル「あぁ、それなら私の補助をしてくれる「姉妹」たちが別のドアから貴女たちの事を運び出してくれますから…安心して下さいな♪」

訓練生D「わ、分かりました///」

パープル「他に質問は…ないようね。でしたらアルファベット順に始めましょう…残りのみなさんは待っている間に、他の訓練のおさらいでもなさっていてね♪」

ドロシー「だとしたら私の順番も結構早いな…///」

………


アンジェのえすえむ責め良かったです
次は尋問か...ゴクリ

>>234 コメントありがとうございます。尋問…と言うより「ミス・パープルのわくわくハニートラップ対策講座」ですかね……(笑)


ちなみに他の教官は思いついた色を当てはめていったのですが、パープルだけは英語圏でいやらしいイメージがあるようなので名付けました…日本語で言う「ピンク」のようなものみたいですね

ドロシー「本当にあの時は笑うしかなかったな…それに初めてだったぜ、「ミス・パーフェクト」のアンジェがあんなだらしない顔をするなんてな♪」

アンジェ「それを言ったら貴女だってすっかり骨抜きになっていたでしょうが。人の事を言えた義理じゃないわ」

ベアトリス「…あの、格闘の訓練は終わりましたけど……二人とも何の話をしていたんです?」

ドロシー「なーに、ちょっとした共通の知人についてね…♪」

アンジェ「まぁそんな所ね。ところでベアトリス、貴女もナイフの使い方がさまになってきたわね…次は射撃訓練をしなさい。台の上に銃弾がひとケースあるけれど、使い切っていいわ」

ベアトリス「はい」

ドロシー「ああ、撃てば撃っただけ上手くなるからな……それにしてもあの時は全く…♪」苦笑いをしながら首を振った…

………



…ファーム・廊下…

パープル「ミス・ドロシー…さ、いらっしゃい♪」

ドロシー「うへぇ、もうかよ……委員長、後は頼んだぜ?」

委員長「ちょっと、それってどういう…」

ドロシー「いや、出る時には半分ばかり魂が抜けちまうだろうからな……」さまざまな授業のおさらいをぶつぶつ言いながら歩き回っていたが、ミス・パープルに呼ばれると覚悟を決めたように息を吐いた…

…室内…

パープル「さぁどうぞ♪」

ドロシー「…どうも」…さっきまで別の訓練生の悩ましげな絶叫が聞こえていた室内をざっと見回す…調度品はいつも使っている自分たちのものと交換して欲しいようなふかふかのベッドがいくつかに、ティーセットを載せたテーブルが一つとクローゼットと、ごくあっさりしている…

パープル「さてさて……ここはドアが分厚いから、普通の声なら盗み聞きされる心配はないわ」

ドロシー「それはありがたい…よがってるところをみんなに聞かれるなんて、あまりいいものじゃない」(おいおい、だとしたらさっきの絶叫って…///)

パープル「大丈夫、そう言う面でここは完全に個人の秘密が保たれている部屋よ…だってここで育った「腕利きエージェント」たちの弱点を、王国側に転向したダブル・クロスに知られるわけにはいかないものね♪」

ドロシー「まぁ、それはそうですね…」

パープル「ね? …それじゃあ今度は敵方が「植え込んで」きたエージェントに何でも話してしまわないように訓練しましょうね、ミス・ドロシー♪」

ドロシー「ええ、ミス・パープル」

パープル「それじゃあ…♪」ぎゅっ…♪

ドロシー「…っ///」

パープル「貴女は意外とセンチメンタルなところがあって、家族のぬくもりのようなものを欲しがっているみたいね……?」耳元でささやきつつ、立ったまま後ろから暖かく抱きしめるミス・パープル…

ドロシー「さぁ、どうですかね…あんまりいい思い出はないし///」(…落ち着け、このままじゃミス・パープルにいいようにされちまうぞ……///)

パープル「大丈夫よ、私が家族の代わりになってあげる…安心して?」ちゅくっ…♪

ドロシー「あっ、あふ…っ…♪」

………

…廊下…

委員長「…現在のロンドン市街は壁を挟んで東西に分離されており、その市域区分は分断前の地名を……///」分厚いドアにさえぎられて切れ切れしかに聞こえてこないが、時折に耳に入るドロシーの喘ぎ声のせいで集中できないでいる委員長…

パープル「委員長さん…次は貴女の番よ、入って♪」

委員長「!」

パープル「さぁさぁ、早くしないとお昼を食べ損ねてしまうわよ?」

委員長「し、失礼します…///」


………

…しばらくして…

パープル「…ふふ、貴女はマジメな頑張り屋さんだものね……いいのよ、今だけは好きなようにふるまって?」くちっ、つぷっ…♪

委員長「ふぁぁっ、あっ、あ゛あぁぁっ…♪」

パープル「まぁまぁ、ずいぶんと大きな声……普段は厳格な貴女のはしたない声が、廊下にまで聞こえてしまいそうね♪」耳元でささやきながら、くちゅり…と秘所に指を入れる…

委員長「あっ…はひっ、はーっ、はぁ…っ……い゛っ、ひっぐぅぅっ…♪」

…立ったままモスグリーンの地味なスカートをたくし上げられ、がくがくと膝を震わせながらも、ハンカチを噛みしめて少しでも声を抑えようとしている委員長…が、手練れのミス・パープルの繰り出す「妙技」の数々にかなうわけもなく、ふとももからとろりと蜜を垂らしながら、息も絶え絶えと言った様子で喘いでいる…

パープル「ねぇ、貴女とミス・ドロシーってずいぶん仲がいいみたいね……私、妬けてきちゃうわ♪」委員長と「同年代の恋人」役を演じるミス・パープルが目の前にひざまづくと、そのままつま先から太ももへと指を這わせていく…

委員長「そ、そんなことはっ……はひっ、ひぐぅ…っ♪」

…ミス・パープルの下半身が焼けつくような巧みな責め方に身体がひくつき、快感をこらえようとしているせいか目尻に涙がたまる…いつもかけている眼鏡がずり落ちそうになっているのも直せないまま顔を上に向け、どうにか「情報」を聞きだされまいと必死でこらえている…

パープル「そうなの……それにしてはずいぶん仲がいいみたいだけれど?」

委員長「そんなこと…っ!」

パープル「ない…とは言えないんじゃない?」くちゅっ…♪

委員長「はあぁぁっ…んっ、あ゛ぁ゛ぁぁっ!」とろっ……ぷしゃぁ…っ♪

パープル「あらまぁ、大丈夫…?」そのまま床にへたり込みそうになる委員長を優しく抱きとめて、腰を抱いてベッドに連れて行くミス・パープル…

委員長「へ、平気…です……」(良かった…少なくともこれで何もしゃべらずに済んだ……)

パープル「あらそう。だったら今度は趣向を変えて…♪」委員長をベッドの柱に付いている「玉ねぎ型の飾り」の所に引き寄せ、それから十インチほど委員長の腰を抱え上げた…

委員長「え、あの…もう訓練は終わりでは……?」

パープル「あら、私がいつ「おしまい」って言ったかしら…せーの♪」じゅぶじゅぶっ…ぐじゅ…っ!

委員長「あひっ、はあ゛ぁ゛んっ…!?」

…いたずらめかした笑みを浮かべて委員長を抱え上げたミス・パープルは、そのまま委員長の花芯がベッド飾りの真上に来るように委員長を降ろした……ベッドの柱はつま先立ちをしてちょうど股下と同じくらいの長さで、委員長は震える両足のつま先と、金の玉ねぎ型をしたベッド飾りに食い込む秘部の三点だけで身体を支え、少しでも身動きするたびにベッドの柱の先端が「ぐちゅり…♪」とあそこをえぐってくる…

パープル「さてと…それじゃあミス・ドロシーとミス・アンジェとは何でもないの? …ね、私にだけ教えて?」くすくす笑いをしながら前かがみになり、委員長に顔を近づける…

委員長「な、何もありません…っ! どころか、あの二人は楽々と課題をこなしてきて…私が努力しているのに……あひぃっ、ひっぐぅぅっ♪」とろ…っ、にちゅっ♪

パープル「ふぅん、そうなのね……それじゃあミス・ドロシーとミス・アンジェの事は嫌いなの?」

委員長「きら…はひぃ、ひぐぅ…嫌いじゃないけど……あ゛あぁ゛ぁぁ…っ!」ぶしゃぁぁ…♪

パープル「それじゃあ二人の事は好き?」

委員長「好きとか嫌いとかそう言う……はぁあぁ゛ぁっ♪」ぬちゅ…にちゅっ♪

パープル「複雑な関係なのね…ねぇ、委員長ってどこの出身なの?」

委員長「わ、わらひはロンドンの…ぉぉ゛っ♪」

パープル「まぁ、ロンドンなの? …ロンドンのどのあたり?」

委員長「ケン…ひっ、あひぃぃっ/// …ケンジントンガーデンズ……のぉ……あぁぁ…あへぇ、はー、はーっ…♪」

パープル「ケンジントンガーデンズ? でも、私のお友達があそこにいたから時々遊びに行ったけれど、貴女は見た事ないわ♪」

委員長「それはっ…ひぐぅっ……わらひのっ…身体が弱くって……ウェールズの方で療養してたか……あっぁ゛ぁっ、イ゛くぅぅ…っ!」

パープル「そうだったの……それじゃあ大変だったでしょう、ね♪」両肩に手をかけて軽く力を込めるミス・パープル…

委員長「あっ゛あ゛ぁぁぁっ…!!」とぽっ、ぷしゃぁぁ…っ♪

…愛液を噴きだしながら頭をのけ反らせ、びくびくと身体を引きつらせると、そのままぐったりとミス・パープルの腕の中に倒れ込んだ…

パープル「はい、お疲れさま……あら、ミス・委員長?」

委員長「あへぇ……///」イきすぎて半分意識が飛んでいる委員長…それでも眼鏡を直そうとしているあたり、生真面目な性格がよく出ている……

美人の補助教官「…やり過ぎですよ、パープル」…訓練生を連れ出しにきた補助教官があきれたように眉をひそめた

パープル「そう言わないで、ヴァイオレット……なかなか「口を割って」くれないから、ちょっとやり過ぎちゃったのよ」

補助教官「時々いますからね、そう言う頑固なタイプは」

パープル「ええ…ふぅ、それで候補生はあとどのくらい?」

補助教官「あと四人です…パープルなら三十分もいらないでしょう」

パープル「そうかもしれないわね……それと終ったら、いつも通り甘い紅茶とチョコレートを用意しておいてね♪」

これはすごくいい責め
ベタだけどイクって絶頂宣言好きなのでもっと言わせて欲しい

>>238 書いていて「ちょっとありふれているかな?」と思いましたが、気に入って頂けたようで何よりです……そろそろ次のエピソードに移りますが、また機会があったらやってみようと思います

…数日後・用具室の前…

アンジェ「全く、あなたの軽口のせいでとんだ目にあったわ…用具の片づけだなんて」

ドロシー「そう言うなよ……ふぅ、やっと着いた……な?」

…施設のすみっこにある古い厩(うまや)に手を加えた用具室まで、うんうん言いながら重いハードルを片づけに来たドロシーとアンジェ……と、用具室の半開きになったすべり戸の隙間から、喘ぎ声が漏れてきた…

訓練生A「…ほぉら、イきたいならちゃんと言わないと……いつまでもこのままじゃあ誰かに見つかっちゃうかもよ?」

訓練生B「はひっ、ひゃう…んっ!」

訓練生A「さぁ吐きなさい、貴女はどこを責めて欲しいの…っ♪」にちゅぐちゅっ…じゅぷっ♪

訓練生B「あっあっ、あ゛ぁぁっ……きもひいぃっ、イくっ、イっぐぅぅぅ……っ♪」どぷっ、こぽっ…ぶしゃぁぁ……♪

ドロシー「……あー、おほん…っ!」扉の前でわざと音高く咳払いをするドロシー…

訓練生A「!」

訓練生B「はひぃ…もっと、もっとイかせて…ぇっ♪」

訓練生A「……しーっ!」

ドロシー「おーいアンジェ、早くしろよ…用具室ってここでいいんだろ…?」

アンジェ「ええ、そうよ」

ドロシー「よっこらせ…と、この扉と来た日には重くってかなわないな……なぁアンジェ、少しは手伝えよ!」

アンジェ「仕方ないわね……それじゃあ「せーの」で開けるわよ?」

ドロシー「お、それじゃあ行くぜ……っと?」

訓練生A「…あ、ミス・アンジェにミス・ドロシー…あなたたちも用具の片づけに?」…さも用具の片づけに来たような顔をして中から出てきた二人の訓練生…が、片方はまだとろんとした表情のまま脱げかけたつなぎから火照った肌をのぞかせ、もう片方の訓練生につかまってかろうじて立っている…

ドロシー「…あぁ、そっちも?」

訓練生A「そうなの…ミスタ・ホワイトったら優しい顔をしてひどいのよ♪」

ドロシー「それはご愁傷様……それじゃあ、後はこっちで閉めておくから」

訓練生A「分かったわ、どうもね」

ドロシー「ああ……ったく、どいつもこいつもミス・パープルの色気にあてられちまって、ところ構わずあんあん言ってやがる…まるでさかりのついた猫だ」

アンジェ「同感ね」

ドロシー「ふぅ、まぁ無理もないけどな……朝から晩までずーっと「ファーム」かロンドンの部屋で修道院そこのけに時間割通りの生活…「お出かけ」と言っても尾行の訓練くらいでしか出来やしない…それでいて身体はうんと使っているから血の巡りはよくなるし……後は若いステキなレディに手ほどきでもされたら…ほぉら、一丁あがり…ってね♪」

アンジェ「そうね…」

ドロシー「それにしたって、この数日ばかりと言うものずーっとこんなだぜ? 人気のない所に行くたんびに咳払いをしなくちゃならないんだから…この忙しいスケジュールの中でどうやったらそんな暇を見つけられるんだか……まったく恐れ入るよ」

アンジェ「エージェントたるもの、どんな細切れの時間でも有効活用できないとだめよ」

ドロシー「なるほどな、その点で言えばあいつらは合格だ……見張りと逃走経路の確保から言えば「落第」だがね♪」

アンジェ「そうね…とにかくこれを片づけましょう」

ドロシー「だな」

………

…別の日…

銀髪の教官「…さてさて「昨日お伝えして今日」と言うのは皆さんにとっていささか急ではありますが、わたくしから筆記試験を行って欲しいと教官方から頼まれてしまいましたのでね。無理は承知ですが、どうか受けていただきたい……」英文法と文学担当の、小柄で眼鏡をかけた銀髪の老紳士「ミスタ・シルバークラウド」が謝りながらつぶやいた…

シルバー「えー…出題範囲ですが、今までに教わった英文学と文法のすべてからです。カンニングは推奨できませんが…見つからない自信があると言うのなら、どうぞ試してごらんなさい」

訓練生一同「「くすくすっ…♪」」

シルバー「もちろんカンニングが発覚した場合は零点を付けることもありますから、諸君は十分そのことを理解したうえで試験に臨んでもらいたいですな」

ドロシー「…なぁに、見つからなければいいわけだ……」

シルバー「解答が終わったらそれぞれ退出してよろしい…何か問題があれば挙手をするように。それでは……始め」

ドロシー「…ほーん、『シェークスピアの作品名と登場人物、そのあらすじを出来るだけ記述せよ』か…楽勝だ、カンニングの必要もないな……♪」

アンジェ「…リア王、ハムレット、マクベス、ヴェニスの商人……」

委員長「…『ワーズワースの詩集から、次の詩を全て正しく記述せよ』……なんてことないわ…」

ドロシー「…お『次の用語の穴を埋めよ』……だと?」

シルバー「おやおや、ミス・ハムデン…カンニングとはよろしくありませんね?」

訓練生H「…っ!」教室の壁の下の方に細かい文字でヒントを書いておいた訓練生…が、ミスタ・シルバーに見つかり、穏やかな声で出て行くよううながされた……

シルバー「…ミス・イプスウィッチ…そのカンニング方法は私は学生の頃からあった古典的な方法です……勉強にしてもカンニングにしても、もう少し知恵を働かせなさい」

訓練生I「…はい///」

ドロシー「えーと…最初は『ドクター・ノオ』で、これが『黄金銃を持つ男』…『死ぬのは○○』…これは『死ぬのは奴らだ』で…それからこれが『ダイヤモンドは永遠に』『カジノ・ロワイヤル』……と…♪」

アンジェ「…『最後は卵のように落っこちて潰れてしまった…』……ハンプティ・ダンプティね…」

委員長「……ふぅ、ここまでは順調ね…次の問題は……え?」片手をそっとあげる委員長

シルバー「おや、どうしたのかね?」

委員長「いえ、問題文が途中で途切れていて…」

シルバー「ふむ…では推測してみるといい。情報部員になった場合、君が必ずしも問題の全文を教えてもらえるとは限らないからね…♪」

委員長「は、はい…」

シルバー「よろしい……あぁ、それとミス・ジャーヴィス…確かに女性の胸はさまざまな用途に使えるでしょうが、カンニング用紙を挟むのはいささかよろしくありませんな……若いご婦人がそれではみっともないですよ」

訓練生J「」

ドロシー「…どうやらそろそろおしまいかな……お、終わった♪」

シルバー「それではペンを置いて…みんなご苦労さま、後はゆっくりしなさい」(…ふーむ、ミス・ドロシーのカンニング方法はなかなか斬新だ。答案はおおよそ八十点と言ったところだが、十五点を加点しよう…一方のミス・「委員長」とミス・アンジェは正攻法でこの点数か…なるほど、確かにこの三人の成績は抜群だ…「卒業」もそう遠くはあるまい……)


………

ドロシー「ふぃー、お疲れさん…どうだった?」

アンジェ「さぁね…まぁそこそこじゃないかしら?」

ドロシー「ほーん……それじゃあ委員長は?」

委員長「そうね、手ごたえはあったわ…後半の問題が書かれていなかったのは驚いたけれど……」

アンジェ「問題が「書かれていない」と言っても欠落している部分は少なかったし、貴女なら残りを推測するのはそう難しくなかったはずよ」

委員長「ま、まぁそうかもしれないわ…///」

ドロシー「へぇ、アンジェも人をおだてるのが上手くなったな♪」

アンジェ「…余計なお世話よ」

………

ベアトリス「あのぉ…射撃訓練も終わりましたけど」

…硝煙をあげているピストルを台に置き、手首を振っているベアトリス……人型の的には撃ちこまれた弾の跡が黒い穴になって残っていて、ドロシーは的を眺めると軽く笑った…

ドロシー「ああ、見えてるよ……たいしたもんだ、また少し伸びたな。若いうちは覚えが早くて結構だ」

ベアトリス「ドロシーさんだって充分若いでしょうが…」

ドロシー「まぁな、ちょっとばかり先輩面してみたかったのさ…ところで、情報部員に必要な条件ってなんだか分かるか?」

ベアトリス「えーと……勇敢なことでしょうか?」

ドロシー「まぁそう言うだろうと思ったが…たとえば?」

ベアトリス「えーと…相手方のエージェントと鉢合わせた時に渡り合えるような……」

ドロシー「ははっ。訓練の後だからそう言うと思ったよ♪ …工作員に必要な「勇敢さ」って言うのは、別に身長十フィートで体重二百ポンドもあるような巨漢と殴り合うとか、そう言う「肉体的な勇敢さ」だけじゃないんだぜ?」

アンジェ「そうね」

ベアトリス「え? …それじゃあどんな場合に「勇敢」って言うんです?」

ドロシー「まぁさっき言ったような肉体的な勇敢さも必要じゃないと言えば嘘になるが…自分がこれっぽっちも信じちゃいないたわごとを真面目に受け止めてみせるとか、反対に心から信じているようなことを蹴飛ばしてみせなきゃならない「勇敢さ」の方が大事さ」

アンジェ「そう言うことよ…ファームでもそう言う訓練があったわ」

ドロシー「ああ…数カ月かけて育てた花を目の前で踏みにじられて、表情を変えたり教官を半殺しにしなければ合格っていう試験がな……私はあやうく教官の首をへし折りそうになったね」

アンジェ「…実際は顔色一つ変えなかったはずよ。そうでなければエージェントにはなれない」

ドロシー「ま、教官がおまけしてくれたんだろうさ……そうだな、例えばベアトリスだったら「王室を廃止しろ、プリンセスを殺せ!」って叫ぶ…とかな」

ベアトリス「うえっ!?」

ドロシー「…出来るか?」

ベアトリス「……必要なら、できます」

ドロシー「結構だ、それでこそ情報部員だな。…アンジェはどうだ」

アンジェ「ええ、出来るわ」

ドロシー「さすがだな……実際に言う場面が来ないように願ってるぜ」

アンジェ「お気遣い結構。別に口先でなら何とでも言えるわ」

ドロシー「そうかよ…それじゃあ後片付けでもして、ぼちぼち帰るか……アンジェ、最初に行け」

アンジェ「ええ」

…十数分後…

ドロシー「やれやれ、ようやく片づけ終わったな……なぁベアトリス」

ベアトリス「何です?」

ドロシー「……ああ見えてアンジェも苦労してるんだ、ベアトリスも時にはプリンセスの隣を譲ってやってくれ」

ベアトリス「分かっています」

ドロシー「そうか? ならいいのさ…それじゃ、帰りに何か食っていくか」

ベアトリス「…はい」

………

この数日なかなか投下できなくて済みませんでした……次のエピソード自体はある程度考えてありますが、どのカップリングにするか思案中です

…もし好きなカップリング(タチネコの好み含め)があれば、お気軽にどうぞ…数日後くらいに始めようかと思いますので

数ヶ月かけて...キング○マンかな?

>>244 「この犬ってブルドッグだろ?」「いいえ、パグよ」……あれは表現こそちょっとお下品でしたが、イギリス人らしい教官がいい味を出していましたね…確か実際にボリビア(?)だかの特殊部隊では一緒に苦楽を共にしてきた犬を最後に始末するテストがあるそうですが…


…ちなみにテレビシリーズ「ナポレオン・ソロ」のリメイク映画版「コードネ○ム U・N・C・L・E」が60年代の古き良きスパイ物らしくて好きです…そのうちに小ネタとして取り入れたいところですね…

…caseプリンセス×ちせ「The oriental lily」(東洋のユリ)…

…ロンドン市内・とある公園…

アンジェ「隣、よろしいですか?」

7「ええ。どうぞ」

…秋めいてきたロンドンの公園で暖かそうなコートにくるまれ、公園のベンチに腰掛けて池の水鳥を観察している「7」…そこに茶色のさえないコートを着たアンジェがとぼとぼ寒そうなふりをして歩いてくると、遠慮するような様子で隣に座った…

アンジェ「…それで?」

7「次の任務の指示があるわ」

アンジェ「……続けて」

7「あなたにはロイヤル・キュー・ガーデン(ロンドン南西部にある世界的な王立植物園)で、とある植物を探してもらいたいの」

アンジェ「…どんな植物なの?」

7「ええ…探しているのはごく珍しい種類のユリで、王立植物園にしかないことがはっきりしているわ」

アンジェ「ユリ?」

7「そう、ユリよ……以前、王国側のエージェントから入手したパルファム(香水)があったでしょう?」(※…case「The perfume」)

アンジェ「ええ」

7「あの香水の中に、その花から抽出した成分が入っているらしいことが分かったの……数年前、共和国の理想に共鳴したある植物学者の先生が王国から亡命したのだけれど…その人物がキュー・ガーデンを管轄する「王立園芸委員会」の一人だったことから判明した事実よ」

アンジェ「なるほど…続けて」

7「当然こちらも同じ植物がないか「キュー・デモクラティック・ガーデン」を始め共和国中の植物園を探し回ってみたけれど…残念ながら存在しなかったわ……それを使うかどうかはさておき、なんであれ敵側だけが持っていると言うのはこちらにとって不利になる」

アンジェ「確かに…わざわざアドバンテージを与えることもないわね」

7「そこで貴女にはキュー・ガーデンの「特別温室」から、そのユリの球根か種を入手してもらうわ…まぁ、大きさから言っても持ち出しやすい種がいいでしょうから、この時期まで待っていたの」

アンジェ「なるほど……とはいえキュー・ガーデンの特別温室に入れる人間はそう多くないし、あちらも種や苗の持ち出しにはうんと目を光らせているはずよ…植民地では見つからないの?」

7「ごもっともね…当然こちらも各地にプラントハンターや博物学者、「冒険家」を自称するような人間まで派遣したわ。南アフリカ、インド、セイロン、ホンコン、マレー、西インド諸島……しかし、どうやらそのユリはごく珍しい種類で、見つかっている群生に関しては王国の支配下にある地域でしか自生していないらしいの」

アンジェ「なるほど…確かに軍を派遣して植民地を奪取するよりは、キュー・ガーデンから窃取する方が速いわね…」

7「その通り。無論難しい任務であることは分かっている…だけど、こちらにも「切り札」があるでしょう?」

アンジェ「…誰をどう使うかは私が判断する……それに、いくらか予算をあてて欲しいわ」

7「分かっているわ…また経理部が胃痛になるわね」

アンジェ「プロダクト(産物)が欲しいなら相応の払いが必要ってことよ…おかしい事は何もない」

7「ええ、分かってる…こちらとしても欲しいものが入りさえすればそれでいいわ」

アンジェ「結構。お互い分かりあえたようね……それじゃあ…」

………

…翌朝・部室…

ドロシー「……で、今度はキュー・ガーデンからユリの花をくすねて来いって?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「全く…私たちは情報部員で、怪盗じゃないって言ってやったか?」

アンジェ「言っても無駄だから言わなかったわ」

ドロシー「結構なことで…で、どうするよ」

アンジェ「そうね…コントロールが示唆したように、プリンセスを使う以外ないかもしれない……あるいは…」

ドロシー「あるいは…なんだ?」

アンジェ「…ちせを使う」

ドロシー「ちせか…確かに、あの人斬り刀と白兵戦の能力は大したもんなんだが……」

アンジェ「不安?」

ドロシー「…ありていに言えばな。彼女はエージェントになるには性格が真っ直ぐ過ぎる。いつぞやの件だって、いくら相手が鼻持ちならない奴らだったとはいえ…蝶々一匹のために決闘を挑んでいたんじゃ、もし自分の理想とかけ離れた連中の間にもぐり込むようなことになったらどうする?」

アンジェ「そうね…あの眩しいくらいの正直さは、私たちのような黄昏に生きる人間には明るすぎるわ……」

ドロシー「…妙にセンチメンタルな言い回しだが、だいたいそんなところだ」

アンジェ「…貴女の懸念はよく分かったわ。とはいえ、今回は潜入も破壊工作もしない…正面から堂々と入っていって、何食わぬ顔で出てくるだけよ」

ドロシー「ほぅ?」

アンジェ「…もっとも、コントロールには情報をいくらか差し出してもらう事になるでしょうけれど…」

ドロシー「ふぅん…その口ぶりからすると、何かアイデアを暖めているんだな?」

アンジェ「まぁね」

ドロシー「そっか…それじゃあ任せたぜ」

アンジェ「ええ。それじゃあ、またお茶の時間にね」

…ティータイム・中庭…

アンジェ「…という訳で、今回はキュー・ガーデンから珍しいユリの種…ないしは球根を入手することになったわ」

ベアトリス「あの香水のもとですか…///」

ドロシー「なんだ、もしかしてまたアレを試したいのか?」いやらしい含み笑いを浮かべてウィンクする…

ベアトリス「ばか言わないで下さいっ……それより、キュー・ガーデンの特別温室は重要な園芸作物や、貴重な植物の育成を行っている場所ですし、なかなか入るのは難しいはずですよ?」

アンジェ「もちろんそのことは織り込み済みよ…プリンセス」

プリンセス「なにかしら?」

アンジェ「今回はあなたの名前を活用させてもらう……貴女は確か「王立園芸委員会」の名誉顧問だったわね?」

プリンセス「ええ」

アンジェ「結構…では貴女にはキュー・ガーデンに行く用事を作ってもらいたい」

プリンセス「ええ、任せて」

アンジェ「よろしい…それと、ちせ」

ちせ「む?」

アンジェ「貴女には、そちらが欲しがっている共和国の情報を渡してもよいと許可が出た…その代わりに……」

ちせ「なんじゃ?」

アンジェ「日本の貴重な工芸作物…例えば漆、絹を作る蚕が餌にする桑や、染料になる紅花…の種や苗を引き渡して欲しい。貴女がキュー・ガーデンの特別温室に入るための手土産としてね」

ちせ「なるほど…しかしそう言うことは私の一存では決められぬし、上に相談せねばならぬが……期限は?」

アンジェ「出来るだけ早いうちに」

ちせ「うむ、承知」

アンジェ「よろしい…ではあなたが引き換えの種を手に入れ次第、実行に移す」


…数日後・在アルビオン王国日本大使館…

堀河公「…して、今回はどのような情報を携えて参ったのだ?」

…鹿威(ししおどし)の響きが時折聞こえてくる日本庭園を眺めつつ、向かい合ってお茶をすすっている二人……膝の前には厚く切ったようかんがそれぞれ二切れ小皿に載せて置いてあり、ちせは正座で膝に手を置き、ちせにとっての「コントロール」である堀河公は腕を組んで目をつぶっている…

ちせ「は…それがかくかくしかじかで……」

堀河公「なるほど…共和国側は我が方がたずさえてきた工芸作物の種苗と引き換えに王国側の情報を寄こすと……」

ちせ「さようで……いかが致しましょうか」

堀河公「ふむ…」ずず…と湯呑みの茶を一すすりした

ちせ「…」

堀河公「よかろう。王国の外交方針がつづられた文書…それなら貴重な作物の種と引き換えてもかまうまい……共和国側へは「条件に応じる」と伝えよ」

ちせ「御意」

堀河公「…しかし二枚舌外交の巧みな英国を相手にするのだ、こちらも何か保険をかけておかねばな……」

ちせ「はっ」

堀河公「なに、そなたに策を弄してもらうつもりはない。謀(はかりごと)はこちらで練るゆえ、そなたは朋友たちに承知した旨を伝えよ」

ちせ「ははっ」

堀河公「…ちせ」

ちせ「はい」

堀河公「……頼むぞ」

ちせ「は、この身に替えましても…!」

堀河公「うむ」

………



…その日の午後・部室…

ちせ「アンジェどの」

アンジェ「返事をもらってきたようね…で、答えは?」

ちせ「肯定じゃ…私の上役は了承したぞ」

アンジェ「結構、ならこちらもすぐ準備に取りかかる…少し出てくるわ」

ちせ「うむ」

ドロシー「お疲れさん。ちせの所のボス…堀河公とやらもずいぶん悩んだだろうな」

ちせ「まぁそうじゃな……決して安い取引ではなかったからの」

ドロシー「だろうよ…ま、後はキュー・ガーデンで種だか苗だかをくすねてくるだけだな♪」

ベアトリス「もう、ドロシーさんったら……またそうやってたやすい事みたいに言うんですから…」

ドロシー「まぁな……何しろこちらには泣く子も黙るプリンセスが付いているしな、ピース・オヴ・ケーク(お茶の子さいさい)さ♪」

ベアトリス「はぁ…そのお気楽ぶりを半分ほど分けて欲しいですよ、まったく……」

プリンセス「……何の話をしていらっしゃるの?」

ベアトリス「あ、姫様♪ …いえ、ドロシーさんが……」

プリンセス「あら、またドロシーさんの話? …ベアトを盗られたみたいで、何だか妬けてきちゃうわ♪」そう言って軽くドロシーの耳たぶを引っぱり、斜め下から見上げるような上目遣いをしてみせた…

ドロシー「おいおい…別に私から言っている訳じゃないんだ、その辺の苦情はベアトリスに頼むぜ……///」

プリンセス「ふふ、それもそうね♪」

ドロシー「ああ…それはそうと、ちせの上司からも「ゴー」が出た。近いうちに決行することになるだろうな」

プリンセス「そう、よかったわ…早くしないと種を収穫されてしまうものね」

ドロシー「まったくだ」

ドロシー「で、当日はそれを着ていくのか」

ちせ「うむ、日・アルビオン王国の友好と親善をうたった交流と言うことで「公的に」動くのでな」…抹茶色に白と紅の山茶花(さざんか)を配した着物に銀ねず色の帯に雪駄…と、華やかではあるがけばけばしくはない格好で決めている…

ドロシー「へぇ…なるほど。任務の時の黒い服もいいが、そう言うのも可愛らしくていいじゃないか…よく似合ってるぜ?」

ちせ「…そうまじまじと見られると気恥ずかしいものがあるがの///」スパイらしく人をたらしこむのが上手で、必要ならとてもチャーミングで褒め上手になれるドロシーにたじたじのちせ…

アンジェ「ドロシーではないけれど、その格好はなかなかいいわ。それに…」

ちせ「なんじゃ?」

アンジェ「袖口が長いからそっと何かを忍び込ませることも出来るわね」

ちせ「なるほど…そこまでは考えなかったが、そういうことに使えないこともないじゃろう」

アンジェ「ええ、特に今回の場合はね…」

ちせ「分かっておる……それと、これが王国側に渡す種じゃ…桑に、三又(みつまた…高級紙の原料)…紅花……」きっちりと紙にくるまれた種を並べる…

アンジェ「ええ。コントロールもこちら用の種を受け取ったそうよ」

ちせ「うむ…東洋の絹はこちらでは作れぬから、養蚕に欠かせぬ桑の種や苗木は、どちらも喉から手が出るほど欲しいものじゃろうて」

アンジェ「そうでしょうね……「パンの木ブライ」の件でもわかるわ」

(※パンの木ブライ…18世紀ごろ、南洋にしかなかったパンの木の苗木を本国に輸送するべく派遣された「バウンティ号」の艦長ブライが権威をかさに着て理不尽な命令や体罰を繰り返し、副長を始め多くの乗員が反乱を起こした事件。事件の直接の原因は渇きに苦しむ乗員の飲料水を減らして、苗木に水を与えた事だと言われる…戦前・戦後に何回か映画化された)

ドロシー「ああ。茶の木だとかゴムの木だとかな」

アンジェ「ええ…とにかく、後は当日うまくやるだけね」

ちせ「うむ…何か手はずを決めた方が良いかもしれぬ……」

アンジェ「そのことなら心配はいらない…プリンセス」

プリンセス「ええ、実は一つ考えがあるの♪」

ちせ「ふむ…と言うと?」

プリンセス「それはね……」

ちせ「…ふむ、なるほど……確かにそれなら自然で悪くないの…」

プリンセス「よかった、頭を悩ませたかいがあったわ♪」

ベアトリス「あの、その計画ってどんな…」

アンジェ「あなたは知らなくていい」

ベアトリス「むぅ…そう言う言い方はないんじゃないですか?」

アンジェ「別にあなたを毛嫌いしている訳じゃないわ……だけれど、あなたの演技力はお世辞にも褒められたものじゃない」

ドロシー「…だから知らないでいれば、より本当らしく見えるってわけさ」

プリンセス「ごめんなさい、ベアト……おわびはうんとしてあげるから……ね♪」耳元でいやらしくささやいた…

ベアトリス「ひ、姫様…///」

アンジェ「とにかく、後は当日を待つばかりね……今回はちせ、プリンセス、それにベアトが一緒に動き、私とドロシーが不測の事態に備えてキュー・ガーデンの一般向け庭園で待機している…もし何かあった時は私かドロシーのどちらかとランデヴーして「クロッカス」を会話の中に挟みなさい」

ベアトリス「どうしてこの時期に「クロッカス」なんです?」

ドロシー「糸一本で綱渡りしているようなまずい状態って事さ…こう見えてアンジェは教養があるからな」

(※クロッカス…由来はギリシャ語のクロコス(糸)から。同属のサフランが持つ雄しべが紅い糸のように見えるため……この雄しべは「サフランライス」などに使われるハーブの一つで価値が高い)

アンジェ「ドロシー…「こう見えて」は余計よ」

ドロシー「へいへい、悪かったよ♪」

…作戦当日…

プリンセス「それじゃあ行ってくるわね、アンジェ♪」

アンジェ「ええ」

ドロシー「ちせ、しくじるなよ?」

ちせ「うむ…」

ドロシー「なぁに、そう固くなるなって……敵さんをあなどるのも問題だけどな、そう気負ってちゃ普段出来ることだって出来ないぜ?」

ちせ「そうじゃな……」

ドロシー「な? …もっとも、固いのは態度だけじゃないみたいだけどな♪」むにっ…♪

ちせ「な、何をするのじゃ…っ///」

ドロシー「ははっ♪」

ベアトリス「もう…ドロシーさんは浮かれすぎですよ?」

ドロシー「そういう性格だからな。 それとベアトリス、お前さんもムリにうまい事やろうとしなくていいぞ…普段通りにふるまえ」

ベアトリス「…はい」

アンジェ「ドロシーはこんなだけれど、助言することがあるとしたら今の通りよ…緊張するなとは言わないから、冷静にね」

ベアトリス「分かりました」

ドロシー「それじゃあアンジェ、キュー・ガーデンへ行こうぜ?」

アンジェ「ええ。三人とも、私たちは先行して向こうにいるから……何かあったら援護するわ」

プリンセス「お願いね?」

アンジェ「もちろん」

…キュー・ガーデン…

ドロシー「うーんっ…いい空気だ……♪」

アンジェ「だからって寝こけたりしないでちょうだいね?」

ドロシー「大丈夫さ…だけどアンジェの柔っこいふとももがそんなところにあるとな……よっ、と♪」…ぽすっ♪

アンジェ「…どういうつもり?」太ももの上に乗っかっているドロシーの頭を見おろした…

ドロシー「ひざまくら♪」

アンジェ「ふざけてないで…いいから見張ってなさい」

ドロシー「へいへい……よいしょ、と」

アンジェ「とりあえず私たちは、この場所から動かないでいる理由を周囲に見せないといけないわ…」

ドロシー「ああ。いいとこのお嬢さんが風景画を描く…いかにもそれらしいよな」

アンジェ「そういう事よ……後はプリンセスたちの任務完了までここで待機すればいい」

ドロシー「任せておけよ」

アンジェ「…期待しているわ」さらさらと下絵をスケッチしつつ、油断なく辺りを監視するアンジェとドロシー…


そう言えば、ちょっと遅れてしまいましたが…クリスマスおめでとうございます。皆さまのクリスマスがチキンとケーキのごちそうが付いた、良いものだったことを願っております……

…数十分後・キュー・ガーデン正門…

プリンセス「さぁ、着きましたよ」

ちせ「おぉぉ…何とも広大で壮麗な公園じゃ」

プリンセス「ふふ、何しろアルビオンの富の一端を担っている大事な場所ですものね」

ちせ「ふむ…日本では自然はごくごくありふれていて、そこまで意識することが少ないが……そう言う考えもあるのじゃな…」

プリンセス「ええ…もっとも、自然から切り離されガラス温室に閉じ込められた花々は幸せなのか、時々考えてしまいますが……あ、準備ができたようですよ?」

侍従「…どうぞ、足下にお気をつけてお降り下さい」警護官のオールドミスたちが鋭い目つきで辺りを確認し、二人の侍従がドレスとヒール姿のプリンセスが降りやすいようにと、踏み台を用意してから馬車の扉を開ける…

プリンセス「ええ、お気遣いありがとう…さ、ちせさんも参りましょう♪」

ちせ「うむ」

…プリンセスとちせがキュー・ガーデンの王室用入口に案内されると、片眼鏡(モノクル)をかけていたり、白いひげを生やした博物学者や「王立園芸委員会」の委員が十数人ほど待っていた…

白いあごひげの委員「よくお越しになられました、プリンセス…それとお客人も」

片眼鏡の委員「いかにも…残念なことにユリの時期は終わりつつありますが、それ以外にもさまざまな見どころはございますゆえ……それとプリンセス、王室発行の園芸書で改訂せねばならぬところがございますので、ぜひ時間をいただきたいと思っておったのです」

プリンセス「あぁ、そうですか…分かりました、ロード・チャービル」

片眼鏡の委員「まことに助かります…それと遠い極東からのお客様がいらっしゃるわけですから、最初はキュー・ガーデンのレモンピール博士に色々と案内させましょう…博士、よろしいですな?」

内気な感じの学者「ええ、もちろんです……その、プリンセスをご案内出来て光栄です///」

プリンセス「いえいえ、わたくしこそ博士に案内して頂けるなんて嬉しいです…先月の「植物の繁茂と日照」についての論文、大変に興味深かったですわ」

学者「あっ、その…あの論文を読んでいただけたのですか……その、まだ実証できていない部分もありまして、完成とは言い難いのですが……///」

プリンセス「いいえ、素晴らしいものでしたよ…それでは、案内をしていただけますか?」

学者「あぁ、はい…!」

白髪の委員「それでは私たちも参るとしましょうか…いかがですかな?」

片眼鏡の委員「いかにも」

白ひげの委員「ふむ、そうですな」

…園内…

プリンセス「なるほど、すごいものですわね…」

博士「はい、ここは亜熱帯の気候に合わせた温室でして…特にラン類が集められています。こちらがデンドロビウムで、あちらがファレノプシス……いずれもマレーやシナで採集されたものです」…甘い香りが鼻孔をくすぐり、クリーム色や鮮やかな紫、金粉を振ったようなメタリックなきらめきを見せる蘭の花が、湿気の多い温室の中でこぼれ落ちるように花房を垂らしている…

プリンセス「そう言えば博士、ユリの花もまだ見られるそうですわね?」

博士「あぁ、はい! …ご覧になりますか?」

プリンセス「ええ、もしよろしければ…わたくし、綺麗な花は何でも好きですが、蘭と同じくらいユリの花が好きですわ♪」

博士「分かりました…えぇと、その……プリンセスはよろしいのですが…」困ったようにちせの方をちらちらと見た…

プリンセス「あぁ、そう言えばユリの咲いている温室は「特別温室」でしたわね……でも、彼女の事は王立園芸委員会の名誉顧問であるわたくしが保証しますから…いかがでしょう?」

片眼鏡の委員「……博士、少しは考えたらどうなのだ…プリンセスのご学友は極東の貴重な工芸作物の種や苗を提供してくれると言っているのだぞ? もし機嫌を損ねて「共和国側に渡す」などとなったらどうする……見たいと申されるものは全て見せてあげなさい…!」小声で叱り飛ばす片眼鏡の委員…が、委員は耳が悪いらしく、あまり小声になっていない……

博士「…は、はい!」

プリンセス「どうかなさいました?」

博士「いえ、その…もちろんプリンセスのお友だちの方もご一緒にどうぞ」

プリンセス「無理を言ってしまったようですね…博士、お気遣いありがとうございます」

博士「いえ、とんでもありません…!」

…特別温室…

博士「…では、こちらがキュー・ガーデンの誇る「特別温室」です……どうぞお足下に気を付けて下さい」

プリンセス「ええ、ありがとう……まぁ、何だか風変りな香りがいたしますね?」

博士「かもしれません、東洋の珍しい花木を集めておりますから」

プリンセス「なるほど…ちせさん、この温室をご覧になった感想は?」

ちせ「うむ、さすがはアルビオン王国の誇る植物園……これなら持参した種や苗も有効活用して頂けるものと存じます」

プリンセス「ふふ、嬉しいお言葉です」

白髪の委員「おぉ、そうそう…姫様のご学友は東洋の貴重な工芸作物の種を持参して下さったとか……ぜひ拝見したいものですな?」

片眼鏡の委員「確かに」

プリンセス「まぁまぁ、委員の皆さま方ったら…わたくしの友人も種も逃げ出したりはいたしませんし、せめてしばらくの間、この珍しい花々を観賞させてくださいな?」

白髪の委員「これは失礼いたしました……プリンセスのお気持ちも考えず…」

プリンセス「いえ、卿の王立園芸委員としての熱心さには頭が下がりますわ……♪」孫と祖父くらい年の離れている委員に向けて、無邪気に微笑みかけた…

白髪の委員「これはお恥ずかしい……博士、私たちは先に庭園の方で待っているから、しばらくは君が案内してあげなさい」

博士「分かりました」

プリンセス「…それでは博士、エスコートをお願いいたしますわ♪」

博士「はい…プリンセスをご案内出来るとは光栄です……」

プリンセス「それでは参りましょう?」

ちせ「御意」

………



博士「この百合はオリエンタル・リリーと申しまして……夏ごろになると草丈が6フィートにも育ち、堂々とした白い花を咲かせます…」

プリンセス「なるほど…ところで博士、あのお花は?」

…視線を向けた先には「目標」のユリが数株、ちょっとした岩を組み合わせた段の隙間から生えている……花はすでに散っていて、種を抱えたさやがふっくらとふくらんで、もう半日といったところまで開きかけている…

博士「あぁ、はい…あれが今回東洋で見つかった珍しいユリでして……このユリの何が珍しいかと申しますと、まずは半日陰を好むユリと違って明るい日なたの岩場に良く育ち、花弁の数が一枚多く、めしべの長さも普通のオリエンタル・リリーより長い…その上花色が時期によって徐々に変化するという大変珍しい性質を……失礼、ついまくしたててしまいました///」

プリンセス「いえいえ、博士の博学なことに感心いたしました…ではもっと良く観察させていただきます。あら、残念なことに花は終わってしまっているようですね……そんなに珍しいものなら咲いているところが見たかったですわ…」

博士「申し訳ありません…花はつい数日前に散ってしまいまして……プリンセスがおいでになると聞き及んでいたら、温室の温度を調整するなりして花期を延ばしたのですが……」

プリンセス「いいえ、博士のせいではありませんもの……お気遣いありがとう。花はありませんけれど、ちせさんもご覧になって?」

ちせ「ほう、そのように珍しいものを見ることが出来るとは光栄で……うっ…!」急にめまいがしたようなふりをしてふらつき、ユリの方に倒れかかる…

ベアトリス「あっ…!」

博士「あぁっ!」

プリンセス「ちせさん…っ!」

ちせ「う……申し訳ない、急にくらくらとめまいが……」

プリンセス「あぁ、それはいけません…どなたか、気付け薬を持ってきて下さる?」

侍従「は、はいっ…!」

プリンセス「ベアトリス、あなたはちせさんを座れるところまでお連れして?」

ベアトリス「はい、姫様…!」

博士「ご、ご学友の方は大丈夫ですか…!」

プリンセス「ええ、ありがとう…ちょっとふらついただけですわ」

博士「ならいいのですが……いかん、ユリが…!」

プリンセス「あぁ、何てことでしょう…博士、ユリは大丈夫ですか?」

博士「あぁ…えぇと……ふぅ、茎や葉は大丈夫です…ご学友のお身体が少し触れてしまったようで、種の入っているさやが割れてしまいましたが……これは私が回収しますので」

プリンセス「ごめんなさいね、博士…?」

博士「いえ、めっそうもない…それより、ご学友の方は大丈夫でしょうか?」

プリンセス「ええ、多分大丈夫ですわ……お気遣いありがとう。このことは委員のお爺さんたちには秘密にしておきましょう♪」茶目っ気たっぷりのチャーミングな笑顔を見せるプリンセス…

博士「そ、そうですか…?」

プリンセス「ええ。だってそうでもしないと、博士が気難しい委員のみなさんに怒られてしまいますもの…別に博士のせいではありませんのに」

博士「そんなことまでお気遣いいただき……何といったらよいか///」

プリンセス「いえ、構いませんわ…それに、ここは素敵な場所ですね。…もう少しだけ案内して下さる?」

博士「も、もちろんです…///」

プリンセス「ありがとう♪」(ちせさんの演技も上手だったし…これで任務の半分は済んだわね♪)

………

…園内・貴賓室…

白髪の委員「…さてさて、プリンセス…久しぶりの見学でしたが、いかがでしたかな?」

プリンセス「大変興味深く拝見させていただきましたわ。きっと学業の糧としても役立つことでしょう♪」

白髪の委員「それは何よりですな…ご学友の方はいかがでしたかな?」

ちせ「は、実にすばらしい植物園を拝見させていただき感謝あるのみです…」

白ひげの委員「結構ですな……ところで」別の委員が口を挟んだ…

白髪の委員「分かっておる…それで、ですな……」

ちせ「……いかにも、これを我が国の大使より「貴国との友好と親善のためにお渡しせよ」と預かっております」

片眼鏡の委員「おぉ……では失礼」無礼ではない程度に丁寧ながらも、いそいそと包みを開いた…

白髪の委員「これは…博士、分かるかね?」

博士「えー…はい。こちらが桑の種で、こちらが紅花……いずれも日本の固有種であったり、主要な輸出品となっているものです」挿し絵のついた包み紙と学名を見比べたりしながら、種を調べている…

白ひげの委員「うむ、そうじゃな…あー、「ちせ」さんと申されたか……このような素晴らしい種をいただき、王立園芸委員会としては感謝の念に堪えませんぞ……我が方からも秘蔵の種を選りすぐったのでな、ぜひお国の植物園なりエンペラー(天皇)のお庭になりに育てて、両国の友好を思い出すよすがとして頂きたい」

ちせ「ははっ…その言葉、一言一句誤りなく大使に伝えます」

白ひげの委員「結構…では、もう一杯紅茶をいかがかね?」

片眼鏡の委員「クッキーもありますぞ…キュー・ガーデンで供される茶や菓子はなかなかのものですからな」

ちせ「では、ありがたく…」

プリンセス「…ふふ♪」

………



…夕方・部室…

アンジェ「みんな、ご苦労様」

プリンセス「ええ…お疲れさま、ちせさん」

ちせ「うむ。ところで私の「貧血のふり」はどうであったろうか」

プリンセス「とてもお上手だったわ…それにベアトがびっくりしてくれたおかげで、よりそれらしく見えたわね♪」

ベアトリス「もう…本当にびっくりしましたよ……」

ちせ「単に息を止めていただけなのじゃが、存外上手く行ったのう」

アンジェ「それで、成果のほどは?」

ちせ「うむ…」机の上で袖を振るうと、パラパラとユリの種がこぼれ落ちた

ドロシー「ふぃー…この種のせいでえらく面倒な目にあったが、もうこれで悩まなくて済むな」

プリンセス「ふふ、そうね…♪」

アンジェ「それじゃあ…これは堀河公に渡してちょうだい。あなたが手に入れたプロダクト(産物)なのだから、正当な権利よ」

ちせ「うむ」

…しばらくして…

ドロシー「…それにしても」

アンジェ「なに?」

ドロシー「王国の連中ときたら、しみったれもいいところだな」

アンジェ「……と言うと?」

ドロシー「とぼけるなよ…ちせが王国の園芸委員たちからもらった種さ」

アンジェ「ああ、そのことね」

プリンセス「確かに……パンジーにアネモネ、バラ…どれも花壇に植えるにはいいけれど、商業価値はないものばかりね」

ドロシー「これで取引のつもりだって言うなら、詐欺師もいいところだぜ?」

アンジェ「外交なんてそういうものよ……どうやって相手の無知につけこんで物をせしめるか…それだけだもの」

ドロシー「まぁな……で、ちせは「分け前」を持ってボスの所に行ったのか」

アンジェ「ええ」

ベアトリス「きっと今ごろお茶でもすすっているんじゃないでしょうか?」

ドロシー「…だな」

…一方・駐アルビオン日本大使館の一室…

堀河公「ご苦労であったな、ちせ」

ちせ「ははっ」

堀河公「それで、目的のものは入手したか?」

ちせ「…はっ」

堀河公「結構…それで、この包みが「返礼」として王国から渡された種なのだな?」

ちせ「さようにございます」

堀河公「ふむ…アルビオンめ、我々が東洋人だと思ってふざけた真似を……中身は確認したな?」

ちせ「は…どれもこちらでは珍しくもない花の種や、工芸作物の種子も我々で手に入れられる物ばかりでした……」

堀河公「うむ、まぁよい…共和国からはちゃんと引き換えの情報が手に入ったのでな」

ちせ「何よりでございます……ところで」

堀河公「なんだ?」

ちせ「これを…共和国の間諜から「分け前」として配分された物にございます」

堀河公「ほう? これが「例のユリ」の種か」

ちせ「はっ」

堀河公「ずいぶんと気前のいいことだな……何か言づてはあるか?」

ちせ「いえ…しかし「正当な権利だ」と」

堀河公「ふむ…となると、共和国に対するこちらの心証を良くしたいのか、はたまた恩を売ったつもりか……まぁよい、くれると言うのならもらっておこうではないか」

ちせ「同感にございます」

堀河公「それに比べて王国のやり口は…我が国の輸出に欠かせない、貴重な工芸作物への返礼がバラに菫(すみれ)ときた……こちらも「細工」をしておいてよかったと言うものだ」

ちせ「…と、申しますと?」

堀河公「なに、この間申した「策」というやつでな…おおかたそのような事であろうと思っていたゆえ、渡した種のうち貴重なものは、包む前に茹でて駄目にしておいたのだ……もっとも、怪しまれるといかぬから、撫子のような花の種はそのままにしておいたが」

ちせ「なるほど…」

堀河公「何はともあれご苦労であった。遅くならぬうちに戻るがよかろう」

ちせ「はは…では、失礼いたします」

堀河公「うむ」

今日は大みそか、今年もあとわずかですね…ここまで見て下さったり感想を下さった皆さま、どうか良いお年を♪


……また年が明けたら投下しますので、おせちでもつつきながらどうぞごゆるりとお付き合い下さい

毎度楽しませてもらってます
Hシーンだけじゃなくちゃんと諜報戦してるのが好きです

>>257 コメントありがとうございます、年を越してのお返事になってしまいましたが…(苦笑)


何はともあれ明けましておめでとうございます、本年も皆さまに良い事がありますように…引き続きゆっくりではありますが投下を続けていきますので、どうぞよろしくお願いいたします

…夜・部室…

プリンセス「あ、お帰りなさい…♪」パチパチと暖炉の薪がはぜる以外は物音一つしない静かな部室で、一人紅茶をすすっているプリンセス…

ちせ「うむ……おや、プリンセスどの以外はみな部屋に戻っておるのか?」

プリンセス「ええ。アンジェさんは報告書を書くためにお部屋…ドロシーさんは今回手に入れた種をコントロールとの連絡係に届けるためにお出かけ。ベアトは疲れて寝ちゃったわ」

ちせ「ベアトリスにとっては何かと緊張することであったろうからの……して、プリンセスどのはどうしてお休みにならぬのじゃ?」

プリンセス「だって、今回の任務で一番の立役者だったちせさんを待たないで寝に行っちゃうなんて……それじゃあまりにも素っ気ないと思って♪」

ちせ「なに、そこまで気を使ってもらわんでも……務めを果たしたまでじゃ…」

プリンセス「いいえ、ちせさんは大変だったもの……ところで一杯いかが?」ティーカップを軽く持ち上げてみせた

ちせ「紅茶か……ふむ、今夜は少し冷えるのでな…ご馳走にあずかろう」

プリンセス「そう、ならここに座って……ミルクとお砂糖は?」暖炉の脇の一番暖かな椅子をすすめるプリンセス…ちせが折り目正しく座ると、温めたカップにさっそく紅茶を注いだ…

ちせ「うむ。お任せいたすので、ほどよく淹れてもらえるかの…?」

プリンセス「まぁ、責任重大ね……はい、どうぞ♪」砂糖をひとさじと、ほどよい量のミルクを注いだ…

ちせ「かたじけない…ふー、ふーっ……すす…っ……ほぉ…♪」ひとすすりして、満足げなため息をついたちせ…

プリンセス「どうかしら?」

ちせ「いやはや、身体の中から温まるのぅ……それにいい香りじゃ…」

プリンセス「ふふ、このお茶はウバだから…ミルクとよく合うの♪」

ちせ「ふむ…お、何やら菓子もあるようじゃな……っと、一つふたつばかりつまんでも構わぬか?」テーブルの上にあるクッキーに手を伸ばしかけて急にひっこめると、少し恥ずかしげにプリンセスに問いかけた…

プリンセス「ええ、どうぞ♪」

ちせ「では、一ついただくとしよう♪」さくっ…♪

プリンセス「お味はいかが?」

ちせ「うむ…んむ……さっくりとして、食べ終わるとほのかな「バタ」の香りがして……何とも言えぬな…♪」

プリンセス「そう、よかった…もう一杯いかが?」

ちせ「そうじゃな、ではもう一杯(ひとつき)頂戴いたそう……」

…しばらくして・廊下…

ちせ「ふぅ…おかげでだいぶ暖かくなった。これならよい心もちで眠れるというものじゃ」

プリンセス「よかったわ…ところで、ちせさん……♪」

…何か心の底でたくらんでいる時の、ちょっと意地悪な笑みを一瞬だけ浮かべたプリンセス……もちろん普段のちせならすぐ察しただろうが、プリンセスは信頼できる「白鳩」の仲間であり、その上たっぷりの紅茶でお腹の底から暖まって眠気を覚えていたちせは、プリンセスの微笑みに気づかなかった…

ちせ「なんじゃ?」

プリンセス「実を言うと…私の部屋も少し寒くて……」

ちせ「それはまたどうしてじゃ…暖炉があるじゃろうに?」

プリンセス「だって、ここの暖炉はあんまり暖かくないし……宮殿の寝室のようにたくさんのお布団が入っているわけでもないから…」

ちせ「ふむ…この時期でそれでは、真冬になったらさぞ難儀じゃろうな……」

プリンセス「…そうね、私もそう言う環境に慣れていかないといけないのだけれど……」

ちせ「とはいえ、なかなかすぐにどうこう出来るものでもないからの…して、私はどうすればよいのじゃ?」

プリンセス「ええ……暖炉の火を上手く加減して欲しいの。いつもならベアトがやってくれるのだけれど…お願いできるかしら?」

ちせ「うむ。とりあえずそれが済んだら寝に行かせてもらうが、それで構わぬか?」

プリンセス「ええ。もちろん長くお引き留めするつもりはないわ……ごめんなさいね?」

ちせ「なに、困った時はお互い様じゃからな…「情けは人のためならず、やがて自分に還るもの」というやつじゃ」

プリンセス「ありがとう、ちせさん……さぁ、入って?」ドアを開けてちせを部屋に招じ入れると、可愛らしい背中や濃緑の着物からのぞくうなじを見て、ぺろりと舌なめずりをした…

ちせ「…っ、確かに底冷えのする部屋じゃな……何やらぞくりとしたぞ…」

プリンセス「ええ、そうなの……♪」…適当に相づちを打ちながら後ろ手にドアを閉め、カチリと錠を下ろした……

ちせ「よいしょ……暖炉に少し焚きつけをくべて…と、これで良し」

プリンセス「ありがとう、これで暖かく過ごせるわ♪」

ちせ「うむ。それでは私も戻らせてもら……ん、どうして鍵が掛かっているのじゃ…?」

プリンセス「ふふ……せっかくだから私のお布団も温めていってくれると嬉しいわ?」

ちせ「…そ、それはどういう意味じゃ」

プリンセス「ふふふ、もちろん言った通りの意味よ…ちせさん♪」

ちせ「その、それは……つまり…///」数歩後ずさりして、慌てて左右に視線を巡らせる…が、この状況を解決できそうな物は見当たらない……

プリンセス「ふふ、いいでしょう?」

ちせ「い、いや…そういう事ならベアトリスに頼めばよいではないか……そ、それにうちのようなちんちくりんでは面白くあるまいが…?」

プリンセス「わたくしはちせさんの事をちんちくりんだなんて思っていないわ…それに、ちせさんは小さくて可愛らしいわ♪」じりっ…♪

ちせ「そ、そんなことを言われても困る…///」

プリンセス「まぁまぁ、そう遠慮せずに…♪」愉快そうに笑みを浮かべて、ちせの腕をぐいっと引っ張ってベッドに引きずり込む…

ちせ「うわっ、何をするんじゃ!?」

プリンセス「ふふ、いらっしゃい…はぁ、やっぱりちせさんは温かいわ♪」

ちせ「や、止めんか/// ……どうしても放してくれんと言うのなら、プリンセスとはいえ手加減は出来かねるぞ?」

プリンセス「ええ、手加減なしで構わないわ♪」

ちせ「さようか、しからばごめ……んぐっ、んん゛ぅっ!?」

プリンセス「んちゅっ、むちゅっ、ちゅぷ……ちゅるっ、んちゅ…れろっ、ちゅぅ…っ♪」何かを言いかけたちせの小さな口にぬるりと舌を滑り込ませ、絡みつかせるプリンセス…

ちせ「んっ、ん゛っ、ん゛む゛ぅっ!? …ぷは……んぐっ、んんぅっ、んんぅ……ふぅぅ、んっ///」

プリンセス「じゅるっ、ちゅぅ……あむっ……ぷはぁ♪」

ちせ「はひっ、ひぅ……はー、はー、はー…っ///」不意打ちのキスに息をし損ねて、目尻に涙を浮かべているちせ…

プリンセス「まぁ、ちせさんったら可愛い…♪」

…涙の粒を指ですくい上げ、ぺろりと舐めあげるプリンセス…ベッドの上には両手を投げ出し、荒い息づかいのちせがあお向けになっている…きっちりとまとっていた着物ははだけ、裾からのぞくきゅっと引き締まったふくらはぎと襟元からちらりと見える小ぶりな乳房が、ちらつく暖炉の火にに合わせて幻想的に揺れ動く…

ちせ「はぁ、はぁ…んはぁ……///」

プリンセス「……そう言えばちせさん、日本では食事のたびに食材に感謝の念を表すそうね?」

ちせ「はー、はー……こんなことをしておいて…やぶから棒になんなのじゃ……」

プリンセス「いえ…そんないい風習があるのだから、私も見習うことにしようと思って♪」

ちせ「結構なことじゃな……しかし…ふぅ……それと今のこれには何の関係もあるまい…///」

プリンセス「いいえ、むしろ今だからこそ…ね♪」

ちせ「……ど、どういう意味じゃ……な、何をたくらんでおるのじゃ…?」

プリンセス「ふふ…いただきます♪」

ちせ「ま、待て…うちは食材でもなければ……んぐぅ、ぬちゅっ、んちゅぅ…っ!?」

プリンセス「はぁぁ、ちせさんのお口の中は甘い紅茶の味がするわ……ところで、ベッドに入るのにお着物を着ていてはいけないから、脱ぎぬぎしましょうね♪」

ちせ「よ、止さぬか…っ///」

プリンセス「もう…暴れちゃだめよ、ちせさん♪」帯がきっちりと締められていて上手く解けないので、大きく襟元をはだけさせ、裾もふとももまでめくりあげてしまうプリンセス…

ちせ「頼む、後生じゃから……そう見るな…ぁ///」

プリンセス「そう言わずに…だってちせさんの肌はとっても滑らかで綺麗だもの……れろっ、ちゅっ♪」

ちせ「んひぃぃ…ん、くぅ…っ///」

プリンセス「れろっ、ぬるっ…んちゅっ……ふふ、それではこっちもお味見させてね…ちせさん♪ …あむっ、ちゅるっ、じゅる…ぢゅぅぅっ♪」プリンセスは鎖骨から順に吸いつくように舐めまわしていって、へそまでたどり着くと一旦顔を上げ、それからちせの秘部に舌をねじ込んだ…

ちせ「あひぃっ、ひい゛ぃ゛ぃっ…!?」がくりと首をのけ反らせて、身体をびくびくとひくつかせる…

プリンセス「きゃあ♪ …もう、ちせさんったら急に跳ねて…まるで元気のいいお馬さんみたい♪」

ちせ「いい゛っ゛…あ゛ひぃ゛っ……はひっ…///」

プリンセス「まぁまぁ、ちせさんの割れ目からいっぱい蜜が湧いてきて……溺れてしまいそうね…ちゅ、じゅぅっ……じゅるっ♪」

ちせ「くはぁ…っ、はーっ、はーっ……あっ、おぉ゛ぉっ……!」がくがくっ…♪

プリンセス「ふふ、ちせさんとするのは愉しいわ……にちゅっ、ぢゅぅぅ…っ♪」

ちせ「あっあっあっ……あぁ…っ///」ぞくぞく…っ♪

プリンセス「はぁぁ、気持ちいいわ……任務で昂った(たかぶった)のかしら…身体中が熱っぽくて火照っているの♪」普段はにこにこと穏やかな微笑を浮かべているプリンセス…が、今はちせの上にまたがって目を爛々(らんらん)とさせ、顔を紅く上気させている…

ちせ「ひぐぅっ、はひっ…はぁ、ふぅ……あっあっ、あぁ゛ぁっっ!」…ほっそりしてみえるが乗馬で鍛えられたプリンセスの腰にがっちりと挟み込まれ、丈夫なベッドがきしむほど激しく腰を擦りつけられている……

プリンセス「はぁぁ…っ、気持ちいい……それにとろけたお顔のちせさん……とっても可愛いわ♪」そう言ってにっこりすると指先を舐め、ねっとりと濡れたちせの花芯に指を差しこんだ…

ちせ「んあぁ゛ぁ゛っ、ひぐぅぅ…っ!?」とぽっ、とろっ…ぷしゃぁぁっ♪

プリンセス「ふふふ、ちせさんったら…意外とイきかたは激しいのね♪ …これで指を二本入れてみたらどこまで激しくなるのか、見てみたくなってしまうわ♪」じゅぶっ…ぐちゅぐちゅっ♪

ちせ「ひぅ…はひぃ……ら、乱暴には…しないでほしいのじゃ……ぁ///」

プリンセス「ええ。わたくし「大事なお友だち」に乱暴なんてしませんわ…♪」ぐちゅぐちゅ、ぐちゅり…ぢゅぶぅぅっ♪

ちせ「あっ、ぁ゛ぁ゛ぁぁっ……ひっ゛ぐぅぅぅ…っ!?」がくがくっ…ぷしゃぁぁ♪

プリンセス「ふふ、ちせさんの膣内……とろとろで温かいわ♪」

ちせ「…や、約束したじゃろうが……この…嘘つきめ…が……ぁ…」身体をがくがくさせ、喘ぎながらもプリンセスに食ってかかる……

プリンセス「あら、嘘つき呼ばわりとは心外ね……だってちせさんはわたくしの「大事なお友だち」ではなくて、それ以上の存在だもの♪」あっけらかんとしてそう言うと、ぐりぐりと指でかき回した…

ちせ「はあぁぁっ、あひぃぃっ……ひぐっ、いぐぅぅっ…!」

プリンセス「ふふ、わたくしも……最後はちせさんと重なって、お互いを感じながら達したいわ……///」ちせの脚を大きく開くと「にちゅっ…」と貝が張りつくような音を立てながら、濡れた秘部を重ね合わせた……

ちせ「はひぃ…ひぅぅ……はー、はーっ……」

プリンセス「それじゃあ一緒に参りましょうね、ちせさん……こんなはしたない真似をしてしまうほど…大好きよ♪」

ちせ「はひぃ、はふぅ…そ、そんなことを言われたら……して欲しくて…たまらなくなってしまうではないか……ぁ///」顔を紅くしながらプリンセスの腰に手を回し、ぎゅっとしがみつく…

プリンセス「まぁ、ふふ……それじゃあ、もう遠慮はいりませんわね♪」ぐちゅぐちゅっ…ずりゅっ、ぬちゅっ♪

ちせ「もとより…ふぅ、はぁぁ……遠慮などありはしなかったじゃろう……んぁぁっ、おっ、おぉ゛ぉっ…あっ、あ゛ぁ゛ぁぁっ♪」

プリンセス「あぁぁ、ちせさん…っ、気持ちいいわ……♪」ぐちゅっ、ぐちゅぅ…っ♪

ちせ「はぁぁぁっ、んあぁ…ぁっ♪」

プリンセス「あっ、あ…はあぁぁぁん…っ♪」とぷっ、ぷしゃぁ…ぁ♪

ちせ「くぅっ、あぁっ…んはぁぁ…っ♪」がくがくっ…ぶしゃぁぁ…っ♪

………



プリンセス「ふぅ、とっても気持ち良かった…でもお布団がべとべとになっちゃったわ♪」まるで何もなかったかのようにけろりとした表情を浮かべ、ベッドで荒い息づかいをしているちせを眺めている…

ちせ「はぁ…はぁ……もう知らぬ……自分でどうにかすればよいではないか……んっ///」

プリンセス「あら…親切なちせさんのことだから、わたくしをお部屋に招いて一緒のお布団で寝かせて下さると思ったのに♪」

ちせ「そんな訳あるまいが……今度こそ帰らせてもらうぞ…///」

プリンセス「ええ、どうぞ?」

ちせ「よいしょ……もう二度とプリンセスの頼みは聞かぬ…」がくがくと震える膝と力の抜けた腰でどうにか立ち上がる…

プリンセス「まぁ、残念……また「お願い事」しようと思ったのに♪」

ちせ「///」

プリンセス「ふふ…それじゃあ、お休みなさい♪」

………

…というわけでプリンセス×ちせでお送りしました。読み返してみるとまるでプリンセスが発情期みたいなことに……次はまた明日以降に投下します

遅くなってしまってごめんなさい、新しい回を投下していきます

caseドロシー×アンジェ「The Machinegun and spicy spies」(機関銃と際どいスパイたち)

         
         ○
         ○
        ○○
       ○●○
        ○○

…Starring…

         ○
       ○○○
        ○○
      
      Ange
   
   Dorothy

  Beatrice

     Chise

  Princess
        
        ○○
         ○


…とあるホームパーティ…

ドロシー「……それでプリンセスはこうおっしゃったのです…「わたくし、こういったものは初めて見ました」とね♪」

貴族女性「まぁ!」

貴族女性B「そうなのですか…!」

ドロシー「ええ、私とプリンセスは学友として親しくしておりまして…まだ聞きたいですか?」

貴族女性「そうですね、大変興味深いですわ」

ドロシー「それでは、この間プリンセスが言った可愛らしいエピソードを……よかったらシャンパンをもう一杯?」

貴族女性B「ええ、ちょうだいしますわ」

ドロシー「それでは…はい、どうぞ♪」軽やかな手つきで召し使いからシャンパンのグラスを受け取る…

貴族女性B「ありがとう」

アンジェ「…」


…ドロシーが貴族女性の好きな「プリンセス」の話題で場を盛り上げている間に、パーティ会場の笑いさざめく声も届かない屋敷の二階へとそっと抜け出したアンジェ…平凡を絵に描いたようなイブニングドレスをまとった目立たない姿で見とがめられることもなく、階段を上ると厚い樫の木でできた書斎のドアをそっと開け、細い身体を滑り込ませた……西インドの高級葉巻の香りが漂う書斎の中央には、分厚い樫の書き物机が鎮座していて、辺りには革表紙に金文字で装丁された立派な本や黒檀で出来た葉巻入れ、金の軸が付いた名前入りの万年筆などが並んでいる……アンジェはさっと周囲を確かめると腰をかがめ、ビューロー(高級デスク)の引き出しをいじっていたが、すぐに一枚の書類を取り出すと、くるりと丸めてドレスの形を保つ「骨」に巻きつけ、そのまま裏地についている目立たない折り返しから書類を「骨」ごと元の場所に滑り込ませた…


アンジェ「…任務完了」何ということもなく二階から戻ると、通り過ぎるふりをしながら耳元でささやいた

ドロシー「…分かった。……それで、その時にプリンセスはこうおっしゃったんですよ「私のお部屋では見たことないわ」ってね♪」

貴族女性「まぁまぁ♪」

………



貴族女性「はぁ、それにしてもたいそう面白うございましたわ…お名残惜しいですが、そろそろお帰りにならないと寄宿舎の方で怒られてしまいますわね?」

ドロシー「もうそんな時間ですか? …時間が経つのはあっという間ですね、まるで「白雪姫」のようです…なんて♪」

貴族女性「まぁ、ふふふ…それではガラスのお靴をお忘れにならないようになさってね?」

ドロシー「奥様のお気遣い、感謝します。改めて、今日はお招きいただいて愉快に過ごさせていただきました……またお集まりの際は呼んで下さいね?」

貴族女性「ええ、その時はぜひ今のお話の続きを聞かせてくださいましね?」

ドロシー「もちろんです、それではおいとまさせて頂きます……」入り口の召し使いからケープを受け取ると、軽やかに車に乗り込んだ…

アンジェ「…ご苦労さま」

ドロシー「なぁに、あの手のご婦人たちなんて言うのはもとよりおしゃべり好きなんだ。会話を盛り上げるなんてちょろいもんさ……で、モノは?」

アンジェ「手に入れたわ」

ドロシー「さすがだな…それならとっとと戻ろうぜ♪」アンジェに向かってぱちっとウィンクをした…

…翌日・お茶の時間…

ドロシー「さてと…今回はどんな任務なんだ?」

アンジェ「今説明するわ」

プリンセス「アンジェ、私に出来ることがあったら何でも言ってね?」

アンジェ「ええ……それで、今回の指示だけれど…」

ドロシー「ああ」

アンジェ「王国陸軍省が管轄している新兵器の生産計画「ブルー・スワロー」(青いツバメ)について調査せよ…とのことよ」

ドロシー「…昨日アンジェがくすねてきた書類がそれの一部か……で、詳細は?」

アンジェ「それが分かっているなら私たちなんて必要ないわ」

ドロシー「だよな……しかし王室のことなら一発だけど、軍となるとな…」ちらっとプリンセスを見た…

アンジェ「まずは関係のありそうな人物を選び出して、上手く接近するしかないでしょう…プリンセス、この寄宿舎には将官や軍人の娘も多いわよね」

プリンセス「ええ」

アンジェ「もしかしたら何かの糸口になるかも知れない。ベアトリスに手伝ってもらってそれぞれの特徴……特に欠点や弱みを調べて」

プリンセス「分かったわ」

アンジェ「ちせ、あなたは今のところやることがないわ……申し訳ないけれどこの学校に「東洋人」を相手におしゃべりしてくれるような娘はいないでしょうから…その代わり、プリンセスとベアトリスが探りを入れている間、目と耳をそばだてて安全の確保に努めてちょうだい」

ちせ「うむ、承知」

アンジェ「ドロシー、貴女はプリンセスと手分けをして軍人の娘たちに探りを入れて…貴女は自分で安全を確保できるし、目標が持っている弱点の見つけ方もよく知っている……その間に私は「ブルー・スワロー」が何なのかを調べつつ、目立たないようにしているわ」

ドロシー「了解。ま、澄ましこんでいる「お嬢さま」の中にだって、私みたいにがさつな女が好きなひょうろく玉もいるかもしれないしな♪」

アンジェ「そういうことね…それじゃあ、何か進展があったら報告を」

プリンセス「分かったわ」

ベアトリス「それじゃあ姫様、行きましょう♪」

ちせ「では、ご免」

ドロシー「……なぁ、アンジェよ」

アンジェ「なに?」

ドロシー「もう一杯どうだ?」

アンジェ「ええ、頂くわ」

ドロシー「ふー、いい紅茶って言うのはたまらないね……それにしても…」

アンジェ「…何が言いたいの?」

ドロシー「いや、ね……最初にプリンセスが加わった時は熱心なだけのアマチュア…悪くすれば「こっちの尻尾をつかむための贅沢な餌」が送り込まれてきたんじゃないかって思っていたんだが……このところのプリンセスを見ろよ。技術面でもうんと成長したし…それより色々と鉄火場をくぐってきたせいか、「可愛らしいお人形さん」じゃなくて、度胸が据わってきたように見えるね」

アンジェ「それで?」

ドロシー「いや、だからさ……アンジェ、お前さんに似合いだってことだよ♪」

アンジェ「……からかっているの?」

ドロシー「とんでもない…お前さんとプリンセスならいい「婦妻」になれると思うぜ。もし結婚するなら花嫁……どっちがなるのかは知らないが……の介添えと、ほっぺたにキスする役目は私にやらせてくれよな♪」

アンジェ「で、話はそれだけ?」

ドロシー「ああ、それとな……あんまり未来の嫁さんを素っ気なく扱うなよ。たまには可愛らしい笑顔の一つも見せてやれ」

アンジェ「ご忠告痛み入るわ。だけどそれは私の考えることよ」

ドロシー「分かってる……ただ、友人として…さ」

アンジェ「ええ、貴女の気持ちは良く分かっている……私だって…プリンセスのことがなければ……貴女を選んでいたかもしれない……わ…///」

ドロシー「んー、何だって? もうちょっとはっきり言ってくれないと聞こえないぜー?」にやにやしながら首を傾け、耳に手を当てて聞き耳を立てるふりをする…

アンジェ「…いいから早く取りかかってちょうだい///」

ドロシー「へいへい♪」

…別の日・教室にて…

ドロシー「ふわぁ…あ……眠くってかなわないな…」


…普段から「お行儀の悪い変わり者」を演じているドロシーは授業もよくサボるが、ファームで叩き込まれたさまざまな知識と天性の勘の良さ、そして恵まれたツキのおかげであまり苦労をせずに済んでいる……今は情報収集のために教室にいるが、机に片肘を突いてほっぺたに手を当てた「お行儀の悪い」姿勢をしている…


気弱そうな女生徒「……ですから、私にはそんな……新しいドレスなんて…」

ドロシー「…?」教室の片隅から聞こえてきた騒ぎに耳を澄ました…

鼻持ちならない女生徒(ロール髪)「…あら、そうなんですの? …大丈夫ですわ、ちょっとしたパーティですもの。せいぜい、いま流行っている秋色のドレスに、ちょっとしたシルクの長手袋くらいがあればよろしいのですわ♪」いかにも人を喰ったような慇懃無礼な態度を取っている…

取り巻き「ええ、ほんとに…サラさんの髪の色だったらよく似合うと思いますわよ?」

取り巻きB「まったくですわ……それにせっかくエレノア様がお誘い下さっているのですから…ねぇ?」

ドロシー「……あいつらも暇だねぇ…いいとこのお嬢さまがカネのない家の娘をパーティに招いて、ドレスを仕立てられなくてまごついたり、貧しい格好で冷やかされている様子を見せ物にしようってか…イヤミな連中だな、全く……っと、待てよ…♪」

ロール髪「なんてことないホームパーティですもの、お気軽にいらっしゃいな?」

気弱な生徒「でも…私……」

ドロシー「おやおや、何のお話をしているんだい…楽しそうじゃないか♪」

ロール髪「あら…お久しゅうございます、ドロシーさん……ここでお見かけするのは何日ぶりでしたかしら? お風邪でもお召しになったの?」

ドロシー「ああ、ごきげんよう。なーに、ちょっとしたことでね……で、何の話をしてたのさ?」

ロール髪「ええ、実はわたくしの家でちょっとした「パーティ」などと言うものを開こうと思っておりまして…それで、ぜひご学友としてサラさんもお招きしようと思っていたのですが……」

取り巻き「サラさんったら奥ゆかしい方で、遠慮なさっているのですわ」

ドロシー「ほーん…で、それはいつやるんだい?」

ロール髪「そうですわねぇ……再来週あたりに開くつもりでおりますわ」

ドロシー「あぁ、そうなのか…エレノア、それはサラが断ろうとするのも無理ないぜ?」

ロール髪「…と、申しますと?」

ドロシー「ちょうどその日さ…プリンセスがサラを「ちょっとしたパーティ」に招こうってつもりなんだ」

ロール髪「プリンセスがサラさんを……ですの?」

ドロシー「ああ、サラは軍人の娘だろ? プリンセスはアルビオンを支えている軍人たちを評価しているからな…そこで今度、この寄宿舎にいる軍人の令嬢たちを招いて夕食会でも開こうって言うのさ♪」

ロール髪「ですが、わたくしはそんなこと…」

ドロシー「聞いたことないって? …当然さ、まだプリンセスと私くらいしか知らないからな…ところがあたしは口が軽いから、サラにうっかり話しちまってね……そんなわけでまだ内緒になっているから、まさかサラだってそうとは言えなかったのさ」

サラ「…あの」

ドロシー「分かってるって…な、エレノアも黙っていてくれるだろ?」

ロール髪「え、ええ…プリンセスのお考えを邪魔することはいたしませんわ」

ドロシー「悪いね……あぁ、それと」

ロール髪「何でしょう?」

ドロシー「……サラみたいな奴を物笑いの種にしているようだがな、私の知っている「とあるお方」はそう言うのを聞くと大変お心を痛められるんだ…あんまりそう言うマネはしない方が身のためだぜ?」ぐっと身体を近寄せると、ドスの効いた声で凄んだ……

ロール髪「…ひっ!」

ドロシー「……ぞろぞろ連れているマヌケどもにもよく言い聞かせておけよ…それでは皆さま、ごきげんよう♪」

サラ「…あの、ドロシーさん……」

ドロシー「いいからこっちに来いよ……どうだ、私の演技もなかなかだったろ?」

サラ「でも、あんなことを言って…」

ドロシー「なーに、私とプリンセスの仲だからな……パーティの一つや二つくらい、すぐ準備してくれるさ♪」

サラ「…あ、ありがとうございます」

ドロシー「気にするなよ……私だって昔はああだったから、サラみたいな娘を見ると共感を覚えるのさ…」片方の頬を撫でながら、小さいサラの手を握りしめてやるドロシー…

サラ「ドロシーさん…///」

ドロシー「さ、次の授業が始まるぜ?」

サラ「は、はい///」

ドロシー「……というわけで、再来週の日曜にはプリンセス主催でちょっとした夕食会を開いてもらってくれ」

アンジェ「分かったわ」

ドロシー「頼んだぜ。サラの父親…ヘンリー・ウェストレーク大佐は近衛連隊の連隊長だからな。親しくしていれば「ブルー・スワロー」が何なのか、聞き出す機会があるかもしれない」

アンジェ「結構、それじゃあ引き続き関係を構築するよう努めて」

ドロシー「任せておけ…それと、夕食会にはうんと美味い物を並べて、軽い酒なんかも用意しておいてくれ」

アンジェ「ええ」

…夕食会…

サラ「…本日はお招き下さって本当に嬉しく思います」

プリンセス「いいえ、わたくしこそ皆さまと親交を深めたいと思っておりましたの…♪」

サラ「そんな、畏れ多いことです……」

プリンセス「そんなことはありませんわ。何しろわたくしは普段から皆さまのお父上方…つまり軍の方には敬意を払っていただき、コモンウェルス(英連邦領)を守る大事なお勤めを果たしてもらっているのですから…っと、いけませんね。つい閲兵式の見学に来ている時のような台詞になってしまって……でも、この気持ちは本当ですよ」

サラ「…か、感謝します///」

プリンセス「どういたしまして…今日は肩の凝らないような会のつもりですから、どうぞたくさんお召し上がりになってね?」バッキンガム宮殿などで開く「公的な」夕食会ではなく、小さな宮殿の広間を使った「気軽な」夕食会と言うことで、にこにこと笑顔を浮かべ冗談めかした

サラ「は、はい」

…高級軍人や伯爵以上の爵位を持っている家系ならともかく、大佐…あるいはただの「サー」しかつかない準男爵以下の貴族令嬢では滅多にお目にかかれないプリンセスが目の前にいるとあって、いくらかのぼせ気味のサラ……着こなしがあまり上手ではない上に、栗色の生地を使った流行遅れのドレスが野暮ったい…

ドロシー「おー、よく来たな。サラ……うん、可愛いぜ♪」シャンパングラス片手に(表向きの)年齢とは不相応な、白い滑らかな肩と胸のふくらみを強調した紅のドレスと黒いシルクの長手袋を身に着け、唇にルージュを引いている…

サラ「あ…ドロシーさんもお招きされていたんですね?」見知った顔がいてほっとしている様子のサラ…

ドロシー「いや、なーに……あたしは単に「プリンセスのご友人」ってところでね♪」口もとに微笑を浮かべると、意味ありげにウィンクした…

サラ「そうなのですか…?」

ドロシー「ああ…って、私のことなんてどうだっていいさ。そんな事より何か取れよ、どれも絶品だぜ?」

サラ「は、はい」

ドロシー「…まぁ私だったらそこのハトの詰め物入りか、さもなきゃそっちのローストビーフを勧めるね」

サラ「じ、じゃあそれを…」

ドロシー「ああ、美味いぜ……それと飲み物が要るよな、シャンパンでいいか?」

サラ「いえ、あまりお酒は…」

ドロシー「そうか…なら一杯だけにしておくといいよ」

サラ「そうですね」

…テーブルの上に並んでいるのはこんがりと焼けたスタッフド・ピジョン、黒胡椒を効かせた鴨のロースト、舌先で溶けるような柔らかいローストビーフ、スコットランド産の鮭を使ったスモークドサーモンに、タンの燻製入りゼリー寄せ…それに熱くてカスタードのようにとろりとしたエンドウマメのポタージュ…

プリンセス「ミス・ウェストレーク、ビーフの味はいかがですか?」

サラ「はい、とっても…///」

プリンセス「それは良かった…あら、グラスが空ですわ。取って差し上げますね」

サラ「あ、はい…」

プリンセス「はい、どうぞ……ところで、良かったら「サラさん」とお呼びしても構わないかしら?」

サラ「は、はい…光栄です///」

プリンセス「ふふ、ありがとう……サラさんは素直な方でいらっしゃるのね」

サラ「///」

プリンセス「ふふ、わたくしが近くにいたら余計に緊張させてしまいますね……何か困ったことがあったらお手伝いしますから、どうぞわたくしに教えてね?」

サラ「…は、はい///」

ドロシー「よかったな、プリンセスと話せて?」

サラ「ええ…私、直接お話しするのは初めて」

ドロシー「そっか、そりゃ良かった……それじゃあ祝杯ってことでもう一杯やろう♪」

サラ「はい…///」

…深夜・部室…

アンジェ「…で、どうだったの?」

ドロシー「ああ、実はな…かなり面白いことになった」ドレスを脱ぎ捨て、コルセットとペチコートだけの姿で椅子に腰かけている…

アンジェ「と言うと?」

ドロシー「酔って口が軽くなったサラから聞き出したんだが、サラの父親と仲が良くて、一緒にカードをしたり酒を飲んだりする仲間が数人いるらしい…その中の一人が……誰だと思う?」

アンジェ「王立兵器研究委員会の委員か何か?」

ドロシー「惜しいな…陸軍省の技術顧問、サー・ウィリアム・ティンドルなんだ。何でもサラの父親とは幼いころからの友人で、新兵器の運用法や、軍人から見た兵器の使い勝手に関してアドバイスをもらったりするらしい」

アンジェ「なるほど」

ドロシー「しかも面白い事に、ティンドルは最近サラの家に来ることがめっきり減ったらしい…その上、たまに来るときはカバンいっぱいに書類を詰め込んできて、何か難しい話をしていることも多いみたいなんだ」

アンジェ「話の中身は分からないのね?」

ドロシー「ああ…サラはいい子だからな、お父様の仕事の話を盗み聞きなんてしないのさ」

アンジェ「なるほど……それじゃあドロシー、あなたはサラを口説き落とすなりなんなりして、ウェストレーク家に招かれるよう算段すること…もしかしたら何かつかめるかもしれない」

ドロシー「……ふふん、そう言うと思ったぜ」

アンジェ「何か手段が?」

ドロシー「手段どころか…私がイヤミなエレノアとその取り巻きどもからサラを「助けて」やって、しかも「プリンセスとお話できる機会を作ってくれた」って言うんで、お礼として家に招待したいって聞かないんだ」

アンジェ「それで?」

ドロシー「こっちとしてはあんまりがつがつしてるのもおかしいからな、最初はやんわりとお断りしたさ…ところがサラと来たら、シャンパンが効いていたのか妙に強情でね、招待するって聞かないんだ……で、私が折れて招待を受けた…ってわけさ♪」

アンジェ「なるほど。一晩の成果にしては上出来ね…よくやったわ」

ドロシー「ああ」

アンジェ「ただ、ウェストレーク家に入りこんでもしばらくは様子見にとどめて…あまり一気に事を進めようとして元も子も無くしては意味がないわ」

ドロシー「もちろん…♪」

………



…数週間後・ウェストレーク家…

サラ「ドロシーさん、今日は来てくれてありがとう…」

ドロシー「なぁに、他ならぬサラの頼みじゃ断れないさ……お招きしてくれてありがとうな♪」

サラ「え、ええ…///」

…さりげなくあたりを見回して室内の様子を記憶すると、サラの手を握ってにっこりと笑いかける……誰もスパイとは思わない「スパイ」として、日頃からプリンセスと友人であることをひけらかし、何かと注目を集める「女たらしのプレイガール」をカバーとしているドロシーが放つ甘い笑みに、普段から「地味を絵に描いたような」真面目っ娘のサラは真っ赤になってうつむいた…

ドロシー「そんな風に顔を隠しちゃもったいないぜ…サラは可愛いんだからな」

サラ「…も、もう」

ドロシー「ははっ、そう怒るなよ……って、ステキなお茶が準備されているじゃないか…何だか悪いな、気を使わせちゃって」

サラ「だって…ドロシーさんはプリンセスと一緒にいることが多いから……」

ドロシー「贅沢なアフタヌーン・ティーにしなきゃ…ってか? ははっ、サラはマジメだなぁ♪」

サラ「だってそうでしょう…?」

ドロシー「そうでもないさ。なにせプリンセスと向かい合ってお茶をいただくんだぜ? …マナーはうるさいし、おしゃべりだって毒にも薬にもならないような話題ばっかりで、しかも上品にお菓子をお召し上がりにならなきゃならないんだ……美味くもなんともないぜ?」

サラ「ま、またそんな事をいって…」

ドロシー「事実さ…それに引き替え、ここのティータイムはサラの気持ちがこもってるからな……それだけでお腹一杯さ♪」

サラ「うぅ…もう///」

ドロシー「はははっ……あぁそうだ。招待状をくれたのはサラだけど、来てもいいっておっしゃってくれたのはお父上なんだろうし、ぜひともお礼を述べたいんだが……」

サラ「うん、今は書斎にいらっしゃるけれど…そろそろ下りてくるはずよ」

ドロシー「そっか……じゃあ座らせてもらってもいいかな?」

サラ「ええ、どうぞ」

…しばらくして…

ウェストレーク大佐(サラ父)「……ミス・ドロシー。君が学校でサラと親しくしてくれているそうで…私も私の妻も、大変に感謝しているよ」…たまたまサラが席を外すと、ウェストレーク大佐がティーカップを置いて礼を述べた……

ドロシー「いえ、そんな……サラは気立てがいいからそんな風に言ってくれているだけですよ」

サラ父「そう思うかね? …あの娘は引っ込み思案で、おまけに一介の陸軍大佐の娘では大した贅沢もさせてやれないから、お嬢さま学校で苦労しているのは分かっている……現にサラが自分から同級生を家に招いたことはほとんどないし、学校の話を聞いても通り一遍の返事をするだけだ」

ドロシー「…」

サラ父「しかしだ…この間の休日に戻ってきたサラはドロシー君の話題ばかりだった……あんなに明るく話すサラは久しぶりだったよ…」

ドロシー「そうですか…ちょっと恥ずかしいですね///」

サラ父「なに、サラは君の事をほめちぎっていたよ……それでだ。君がサラと一緒に過ごしてくれると言うのなら…我が家の都合さえ合えば、いつ来てくれたって構わないよ?」

ドロシー「…いえ、たとえお友だちの家だからと言っても……」

サラ父「なに…サラはあまり親しい友達がいないし、仲良くしてくれると助かる」

ドロシー「そうですか。でしたら…」

サラ父「ありがとう……あの娘も喜ぶことだろう」立派な口ひげをいじりながら、満足げなウェストレーク大佐…と、玄関の呼び鈴が鳴る音がして、家政婦のお婆さんが応対する声が聞こえた……

家政婦「はい、ヘンリー様は客間にいらっしゃいます……ヘンリー様、ティンドル様でございますよ!」

サラ父「エマ、そんな大声でなくても聞こえるよ」

家政婦「すみませんねぇ、何しろ私は耳が弱いもんですから……」

サラ父「…失敬、ドロシー君……」

ドロシー「いいえ」(…サー・ウィリアム・ティンドル……まさかこうもすぐにお目にかかれるとはね♪)


…廊下で何やら話している声が聞こえていたが、すぐにウェストレークがサー・ウィリアムと一緒に戻ってきた…ドロシーがちょっと観察すると、サー・ウィリアムのクラヴァット(ネクタイ)は結び目がゆるく、スラックスの裾が少し短すぎ、おまけにベストには何かのシミがある……と、服の着こなしは下手だが、人付き合いの良さそうな見た目をしている…


サラ父「ウィリアム…こちらは娘の同級生のドロシー君……ドロシー君、私の友人を紹介しよう。サー・ウィリアム・ティンドル…陸軍省に勤めているんだ」

ティンドル「初めまして」

ドロシー「初めまして、サー・ウィリアム」

サラ父「さぁ座ってくれ…ちょうどお茶も入っているところだ」

ティンドル「それはありがたいね、ヘンリー……このところ忙しくて、満足にお茶を飲む暇もなかったよ」

サラ父「…そうか、大変だったな……それじゃあまた相談事かね?」

ティンドル「ああ、どっさり持って来たよ。もっとも、スコッチも一本持って来たからね…それを傾けながらじっくり話そうじゃないか」

サラ父「それだったら書斎の方がいいか……すまないね、ドロシー君。私とサー・ウィリアムはちょっと席を外させてもらうよ…サラにもよろしく伝えておいてくれないかな?」

ドロシー「ええ」

サラ父「それじゃあ行こう、ウィル」

ティンドル「そうだな」



………


サラ「…あら、お父様は?」

ドロシー「さっき「サーなんとか」いうお友だちが来てね…スコッチ片手に書斎にこもっちゃったよ」

サラ「サー・ウィリアムね……サー・ウィリアムはお父様の幼い頃からの親友で、今は陸軍省にいらっしゃるの」…ドロシーはそれを夕食会の時に聞いていたが、その時のサラは軽く酔っていたので、ドロシーにしゃべったことを覚えていない……

ドロシー「ふぅん…でもお友だちが陸軍省の「エライ人」なら、サラのお父上もどんどん昇進するだろうな……よかったじゃないか」

サラ「ううん、そんなことはないと思うわ…だってサー・ウィリアムは「陸軍省」って言っても研究とかをしている人だから……」

ドロシー「へぇ、じゃあ頭がいいんだな……私とは大違いだ♪」

サラ「くすくすっ…もう、ドロシーさんったら♪」

ドロシー「はははっ♪」

サラ「あ、カップが…もう一杯いかが?」

ドロシー「悪いね……美味しいパウンドケーキときゅうりのサンドウィッチ…それにスコーン。これだけあれば女王様気分さ」

サラ「ふふ…」

ドロシー「…まして隣にいるのがサラだもんな」

サラ「あんまりからかわないで……///」

ドロシー「嘘じゃないさ…サラは心が真っ直ぐだし、誠実だろ……そういう付き合いって言うのは、いくらポンドを積んだって手に入るものじゃない…」さりげなく手を腰に回し、身を乗り出してサラの瞳をぐっと見据える…

サラ「だ、だめ…ドロシーさん///」

ドロシー「ああ、悪い……別にそう言うつもりじゃなかったんだ///」

サラ「大丈夫、分かっているから…」(…でも「そう言うつもり」でもよかったのに……ドロシーさん…///)

サラ父「おお、サラ…サー・ウィリアムがいらっしゃったよ、ぜひごあいさつを」

サラ「お久しぶりです、サー・ウィリアム…///」

ティンドル「ごきげんよう、サラ……それでね、ぼくはリコイルの衝撃を受け止めるための部品を強化する案を提出したんだ…」

ドロシー「…」

………

ドロシー「……というわけで、間違いなくサー・ウィリアム・ティンドルは研究課題をウェストレーク家に持ち込んでいるね」

アンジェ「なるほど…それで、「ブルー・スワロー」について何か分かったことは?」

ドロシー「ああ、それがな…スコッチで舌が緩んだのか、帰り際にティンドルがぽろりと口走ったんだが…そいつは陸軍の新兵器で、どうやら王立エンフィールド造兵廠で増加試作型の生産を行っているらしい……それと、根掘り葉掘り聞き出すわけにもいかないから興味なんてないような顔をしておいたが…どうやらヴィッカースも計画に参加しているらしい」

アンジェ「そう…まぁ当然と言えば当然ね」

ドロシー「まぁ陸軍の兵器ということになればそりゃそうだろうけどな」

アンジェ「他には?」

ドロシー「……それがおかしなことに、話を聞いている限りだと「ブルー・スワロー」って言うのはどうも大型兵器じゃないような気がするんだ…いい心持ちになっていたティンドルの話に聞き耳を立ててみても、出てくるのは小火器の話題ばかりだからな…」

アンジェ「新型の小銃?」

ドロシー「いや、それにしては秘密保持が厳重すぎる…やっぱり何か新しいタイプの兵器と見て間違いないだろう」

アンジェ「…そう」

ドロシー「それと、詳しい事はつかめちゃいないんだが……秘匿されている生産施設のコードネームに「ディーダラス」って名前が付けられていることは分かった」(※ディーダラス…ギリシャ語ではダイダロス。クレタ島の半人半牛の怪物ミノタウロスを閉じ込める迷宮「ラビリントス」を建築した建築家)

アンジェ「なるほど…迷ったら一生出られない「ラビリンス」というわけね」

ドロシー「ああ」

アンジェ「結構。一回の成果にしては十分過ぎるくらいね…その調子よ」

ドロシー「そりゃどうも……ただ、あんまりサラの家に入り浸るのも具合が悪い。そっちでも色々調べてみてくれ」

アンジェ「分かっているわ」

…とある場所…

L「……なるほど」

7「はい…少なくとも、「A」(アンジェ)からのレポートによると「『ブルー・スワロー』は、王国陸軍およびエンフィールド造兵廠、ヴィッカース社が中心になって開発中の何らかの小火器である」とのことです」

L「ふむ…この短期間でよく調べ上げたものだ」

7「ええ。それと「D」(ドロシー)が対象との友好を図るため、「チャーリー叔父さん」から贈り物をしたいと…リストが送られてきております」

L「またか…しかしやむをえまい。確かに「D」のプロダクト(産物)は質が優れているからな、その分だけ金もかかると言うことだ……よかろう、経理の連中は頭が痛いだろうが」かすかに苦笑いめいた表情を見せた…

7「ではリストにあるものを準備させます」

L「うむ。それと陸軍省に入り込んでいるエージェントを使って「ブルー・スワロー」についての情報を集めさせろ。それと「必要ならどのような犠牲も問わない」と付け加えておいてくれ」

7「はい」

L「…それにしても、日本産シルクのストッキングが十足に十数年もののスコッチ・ウィスキー、ハバナの高級葉巻とはな……まったく」改めてリストを眺め、腕を組んだ……

…数日後・陸軍省…

職員「さてと、これでよし…と。ミス・ローズ、これを二枚タイプして欲しいんだが」

タイピストの中年女性(エージェント)「はい」

職員「ありがとう。出来上がったら一枚は兵器課長、もう一枚は文書便の箱に入れておいてくれ…ぼくは会議に呼ばれていてね」

タイピスト「はい、行ってらっしゃいまし…」

職員「それじゃあ頼んだよ」

タイピスト「…」地味なタイピストの女性はカタカタと手際よくキーを叩いて写しをタイプし終えると、文書箱の中に入れる前に中身をさっと読み通した……文書の中には「ブルー・スワロー」と書かれた単語が入っている……


…さらに数週間後…

アンジェ「…進展があったそうね、ドロシー」

ドロシー「ああ、ばっちりな……驚くべきことに「ブルー・スワロー」計画の中身が分かったんだ」

アンジェ「…それで?」

ドロシー「それがな、「ブルー・スワロー」計画で開発されているのは新式の自動火器……要は「機関銃」ってやつだったのさ」

アンジェ「機関銃…数年前にアメリカ人が作ったとか言う……」

ドロシー「それさ。今回のもハイアラム・マキシムが作った「マキシムM1884機関銃」の改良型で、銃身を冷却するための水冷式バレル・ジャケットが付いてる」

アンジェ「それで、性能は?」

ドロシー「ああ…「無邪気なお嬢さん方」の前で新兵器開発の苦労話をしているティンドルを相手に興味があるような反応をするわけにはいかなかったから、詳しい事は分からないが…連射速度は一分間に四百発から五百発ってところで、二百発くらいの弾を布ベルトの弾帯で給弾するものらしい……今までの手回し式ガトリング銃や弾倉式の銃が一気に時代遅れになるってシロモノさ」

アンジェ「……なるほど、かなりの脅威になりそうね」

ドロシー「いや、そんな程度のものじゃない……これまでにボーア戦争やインドの反乱に投入された手回しガトリング銃や、ノーデンフェルド式機関銃とは比べものにならないんだ。戦闘隊形を組んだ一個大隊のライフル歩兵を一分間で壊滅させられるんだぜ?」

アンジェ「…そこまでの性能なの?」

ドロシー「ああ…ただありがたいことに、王国陸軍上層部の新しいモノ嫌いと、給弾不良の克服に時間がかかっているから、テストはあまり進んでないらしいが……」

アンジェ「なるほど」

ドロシー「とりあえず、ちゃんと贈り物に見合った成果があったってことさ……サラにはシルクのストッキング、ティンドルにはスコッチ、ウェストレーク大佐には葉巻…ってね♪」

アンジェ「そしてコントロールには情報…重要度から言って伝書鳩やメール・ドロップでは間尺に合わないし危険すぎるから、私が直接連絡するわ」

ドロシー「ああ、任せた」

投下が遅れてごめんなさい…今日は節分ですし、ちゃんと豆まきをして厄除けしましょうね(…そのうちにプリンセスたちの「間違い日本」ネタに使うかもしれません)

L「なるほど…そう言うことか」アンジェが送り届けた「ブルー・スワロー」のレポートを読んでパイプを噛みしめた…

7「はい。マキシム機関銃の要目ですが…口径は.303ブリティッシュ。水冷式のベルト給弾で装弾数二百発」

L「うむ。その資料なら私も読んだ……急ぎ対抗措置を取らねばな」

7「ですが、現時点で我が方は機関銃の生産体制を整えておりませんが」

L「……軍部の「機関銃不要論」と追加の国防予算を巡る議会の紛糾があったからな…増加試作型の完成はいつの予定だ?」

7「およそ二カ月後です」

L「ふむ…ならば時間稼ぎをしてもらわねばなるまい……」


…翌日・ロンドン市内の公園…

ドロシー「…そいつは厄介だな」

7「厄介でもやってもらわなければならないわ」

…公園のベンチに腰掛け、さりげなく会話を交わしている二人……「7」の口もとは扇で隠され、ドロシーはハムとピクルスのサンドウィッチを頬張りながら、ハトにパンくずを投げている…

ドロシー「…とはいえ、工場を操業不能にするのは車一台を吹き飛ばすのとは訳が違う。しかも警備厳重な造兵廠の施設ときた」

7「ええ…だけれど今回の作戦は「犠牲を問わない」わ。必要な物なら何でも用意する」

ドロシー「分かった……とにかく爆薬がいる。それと時限装置を作るのに必要な部品だな」

7「手配するわ」

ドロシー「後は目立たない色の車…やっぱりロールスロイスがいいな。それと性能のいい望遠鏡……ポンド札もたっぷり頼む」

7「それから?」

ドロシー「地図と旅行ガイドにコンパス……地図は現地の地形が分かる正確なものを」

7「分かった。全て用意する」

ドロシー「あ、あとロープを二十ヤード分ばかり。私たちみたいな業界の必需品だからな」

7「ええ」

ドロシー「ああ…それと」

7「なに?」

ドロシー「この件に関しては報酬をはずんでもらいたいな……自殺まがいの破壊工作なんだ、少しは色を付けてくれたってバチは当たらないぜ?」

7「…どの程度?」

ドロシー「そうだなぁ……私とアンジェに千ポンドずつでどうだ?」

7「…」

ドロシー「何しろこの世界には年金も保険もないもんでね…現金が用意できないようなら分割払いでもいいが?」…エージェントとしての価値がトップクラスにあることを知っていて、ひと勝負するドロシー……

7「…言っておくけれど、エージェントは他にもいるのよ?」

ドロシー「もちろん……とはいえ、私とアンジェほどのはいないがね。それに、別にあんたの財布から出してもらおうってわけじゃない…だろ?」

7「…分かったわ。そのかわり上手くやってちょうだいね?」

ドロシー「ああ、お任せあれだ……ひと月もすれば枕を高くして、ぐっすり眠れるようにしてやるさ♪」

7「ええ、それじゃあ…」

…部室…

アンジェ「…どうやらよっぽど慌てているようね」ドロシーが受けた指令を聞いて、わずかに眉をひそめたアンジェ…

ドロシー「無理もない。王国と共和国、それぞれ動員できる連隊の数はほとんど同じだ…新兵器が一つあれば簡単に天秤が傾く」

アンジェ「その間の時間稼ぎね」

ドロシー「ああ…そういうことさ」

アンジェ「何か案はある?」

ドロシー「ある程度はな……まずはたっぷり一週間ばかりかけて、近ごろ上流階級のご婦人方に流行している「自動車旅行」としゃれこむ。田舎でいい空気を吸って、ついでに野鳥観察もしたいから望遠鏡を持って行く」

アンジェ「なるほど…それで?」

ドロシー「あちらさんは工場を人里離れたところに作って、警備を固めている……だからそのまま近づく訳にもいかない。少なくとも田舎の宿屋に数日ばかり泊まって、そこを「作戦基地」にしようって腹づもりでいるんだが」

アンジェ「足がかりね…それで?」

ドロシー「後は爆薬を仕掛けて「どかーん!」ってところだ…どうやって仕掛けるかはある程度考えてあるが、結局はその場で決めなくちゃならないだろうな」

アンジェ「分かった。爆破後は?」

ドロシー「その場の状況に合わせてすたこら逃げ出すか、さもなきゃ何も知らないふりをして旅行を続けるか…だな」

アンジェ「臨機応変ね。結構」

ドロシー「なぁに、行き当たりばったりさ…♪」

アンジェ「…それで、爆薬はどうするの?」

ドロシー「まぁ、どうにか隠すさ。何しろ望遠鏡や旅行ガイド、地図くらいなら持っててもおかしくないが…さすがに爆弾ともなると、自動車旅行の必需品には見えないからな」

アンジェ「ではそれに関しては任せるわ…何か私の方で整える手はずは?」

ドロシー「そうだな……旅行にふさわしいドレスを見繕っておいた方がいい。私は手持ちでまかなうから」

アンジェ「そう?」

ドロシー「ああ…濃い紅と黒のがあるし、他にも動きやすい格好ならクローゼットにある」

アンジェ「ならいいわ」

ドロシー「肝心の工場もおおよその目星がついたし…後はプリンセスの公式行事や「お出かけ」が同じ方面にないかどうかだけ確認してくれ」

アンジェ「ええ、分かった」

ドロシー「予定がかぶったりしたら、警護官や防諜部がうようよいるところに突っこむことになっちまうからな……うー、おっかない」

アンジェ「大丈夫、ちゃんと確かめるわ」

ドロシー「よし…それじゃあ私はベアトリスと時限装置をこさえてくる。それじゃあ、寝る前にまたここで」

アンジェ「任せたわ」

ドロシー「ああ」

………

なんか予想外のアクシデントでドロシーさんアンジェを庇って捕まりそう
スパイ物の見過ぎかな

>>275 まずはコメントありがとうございます…遅くて済みません。なるほど、そういう展開も出来ましたね……ちなみに一応イメージは出来上がっているので捕まりはしませんが、際どいことにはなる予定です


…あと、タイトルの所で○が並んでいるのは(何行か左右がずれてしまいましたが…)とある「世界一有名なスパイ」が出てくる映画のオープニングをもじった物です……スパイが世界一有名ではいけないと思うのですが…(苦笑)

…数日後・「白鳩」のネスト…


…テムズ川を望む煙たい一角にある、表向きは貸倉庫になっている「白鳩」のネスト(拠点)…板張りで出来た倉庫の中央には、あちこちの部品が外されている濃緑色のロールスロイスが一台停めてあって、ドロシーが油染みのついたつなぎ姿で車体をいじくりまわしている……一方の片隅ではアンジェが作業机に向かって銃弾をより分け、反対側の隅っこではベアトリスがドロシーと練り上げたプラン通りに、爆弾用の時限装置を作っている…

ドロシー「…ベアトリス、どうだ?」

ベアトリス「ちょっと待って下さい……はい、一個できました」…ベアトリスは椅子に腰かけ、バラした懐中時計の部品や何かの部品だったもの、果てはがらくたまでを上手に使って時限装置を作っている…小さい手が器用に動き、細いピンセットで慎重に最後の部品を組むと「ふぅ…」と息を吐いた…

ドロシー「よし、ちょっと見せてくれ…なるほど、上出来じゃないか♪」

ベアトリス「ありがとうございます///」

ドロシー「さて、お次は爆薬そのものだな…ちょっと手伝ってくれ」

ベアトリス「はい」椅子から滑り降りると、てくてくと歩み寄った…

ドロシー「よし、それじゃあここを剥がすから手伝ってくれ…」

ベアトリス「えっ、床を壊しちゃうんですか?」

ドロシー「今だけな…底板を上げ底にして、隙間に爆薬を詰め込むんだ。どうせ車の床だから、泥でもすりこむかマットを敷けば見分けはつかない」

ベアトリス「なるほど……で、時限装置はどうするんです?」

ドロシー「そいつはもう考えてある…ちょっとエンジンフードを開けるぞ」

ベアトリス「どうしてエンジンを…?」

ドロシー「ふふん、よく見ろよ…このRRは八気筒エンジンなのに、どうしてこの二つのシリンダーだけやたらピカピカなんだ?」

ベアトリス「…えっ?」

ドロシー「やれやれ、まだまだ観察が足りないぜ?」シリンダーを引っ張るとあっさりと抜け、そこに空洞が出来た…

ベアトリス「あっ!?」

ドロシー「この気筒二つはダミーさ…今は綺麗だから目立つが、後で適当にオイルでも垂らしておけばいいしな」

ベアトリス「すごいですね…」

ドロシー「まぁな…まさか時限装置をサンドウィッチと一緒のバスケット、って言うわけには行かないだろ♪」にやりと笑ってウィンクを投げるドロシー…

ベアトリス「それはそうですが…他にもこういう仕掛けがあるんですか?」

ドロシー「ああ、もちろん…♪」車体の後部に屈みこむと、排気管の片方を引き抜いた…

ベアトリス「うわ…!」

ドロシー「二本ある排気管の片方はダミーで、即席の組み立て式ライフルの銃身になってる…ライフリングだけは見えないように、先端だけねじ山を合わせた内筒をかぶせてあるのさ」

ベアトリス「あの…銃身はいいですけれど、機関部は?」

ドロシー「心配しなさんな…工具箱に入っているレンチだの金槌だの、もろもろを組み立てると……「あら不思議」ってやつさ」

ベアトリス「わぁ…!」

ドロシー「それから二本ある予備タイヤのチューブには、それぞれ弾薬と金属ワイヤーが仕込んであって、引き出して持ち出せるようになってる……ワイヤーは音を立てないで見張りだの何だのを「きゅっ」と絞めるためだ」

アンジェ「ドロシー…油を売るのは結構だけれど、準備は終わったの?」

ドロシー「ああ、だからおしゃべりなんてしてるのさ…そっちはどうだ?」

アンジェ「ええ、終わったわ……弾は選別しておいたけれど、一応貴女も確かめて」

ドロシー「あいよ、そうさせてもらおう…別に信用してない訳じゃないぜ?」

アンジェ「分かっているわ。自分の命を預けるのだから当然よ」

ドロシー「今回はぎりぎりまでドンパチしたくないとはいえ…いつ必要になるかなんてわからないもんな」…油を軽く差してシリンダーの回転や引金の軽さを試すと、ウェブリー・スコットを撫でた…

…さらに数日後…

ドロシー「さて…準備はいいな…?」

…すっかり旅装を整えてRR(ロールス・ロイス)の運転席に収まっているドロシーは、紅に染めた革のハンチング帽と、えんじ色と艶のある黒で組み合わせ、裾がくるぶしより少しだけ短い活動的な旅行用ドレス…足もとは茶革の編み上げ長靴で、首元には襟飾りのリボンをあしらい、額にゴーグルを引っかけている……うら若いレディ二人きりという変わった組み合わせは「日頃付き合っている上流階級の令嬢たちとのお遊びに疲れたプレイガール(ドロシー)が、変に気を使わなくて済む知り合いの地味な女の子(アンジェ)を自動車旅行に誘った」と言う筋書きでカバーしていた…

アンジェ「ええ」

ドロシー「それじゃ行ってくる……いい子にしてろよ?」

ベアトリス「もう、またそうやって私の事を子ども扱いして……」

ドロシー「悪い悪い……真面目な話、私たちの留守中は下手に動くことをしないで、他人の話に耳をそばだてるだけにしておいてくれ。…別にエージェントとしての能力を信用してない訳じゃないが……」

アンジェ「…非常事態になった時に取る越境の手はずや、コントロールとの連絡の取り方を知っているのは私とドロシーしかいない…つまり留守中に何かトラブルに巻き込まれても助けられないわ……そのことは忘れないでちょうだい」

プリンセス「ええ、しっかり覚えておくわ」

アンジェ「お願いね…くれぐれも先走ったりしないように」

プリンセス「ええ。それじゃあ行ってらっしゃい♪」

アンジェ「…行ってくるわ」

ドロシー「それじゃ、お土産に期待しておいてくれ…♪」

………

…ロンドン郊外の街道…

ドロシー「……久しぶりに二人っきりだな」

アンジェ「いきなりどうしたの?」

ドロシー「いや…こうしてみると、すっかりあいつらと一緒にいるのが当たり前になっていたんだな……って思ってさ」

アンジェ「そうね…」

ドロシー「…気軽におしゃべりするような仲間なんて出来る業界じゃないはずなのにな……おかしなもんさ」

アンジェ「ええ…ただ……」

ドロシー「…居心地のいい場所で、知り合いたちに囲まれて馴れ合っているうちに、甘えが出てしまう気がする……だろ?」

アンジェ「…その通りよ」

ドロシー「ああ、よく分かるよ……って、やめだやめだ。 せっかくの旅行なんだし、こんな辛気臭い気分になることはないじゃないか」

アンジェ「元はと言えばあなたが言い出したことよ」

ドロシー「悪かったよ…さ、もっと明るい話題にしようぜ?」

アンジェ「例えば?」

ドロシー「そうだなぁ……例えば「現地に行ったら何を食べようか」…とかさ?」

アンジェ「ふぅ…まったく、あなたと一緒だと旅が愉快でいいわ」

ドロシー「はは…それはどうも」

アンジェ「たいしたものね、皮肉も通じないのだから」

ドロシー「おいおい、こう見えて私だって乙女なんだぜ? 頼むから繊細な私の心(ハート)を傷つけ(ハート)ないでくれよ…」

アンジェ「だじゃれが言えるようなら大丈夫でしょう……次で右の道よ」

ドロシー「あいよ♪」

…数時間後・ロンドンから北に数十マイル…

ドロシー「ふー…空気は澄んでるし気持ちはいいけど、さすがに疲れたな……」

アンジェ「五時間は運転していたものね…でも、もうすぐよ」

ドロシー「そりゃありがたいね…この辺はもうノッティンガムシャーか?」

アンジェ「ええ」

ドロシー「なるほど、確かに森が多いな……弓矢を持ったロビン・フッドやタック坊主が出て来てもいいくらいだ♪」


…車そのものも優れていたが、ドロシーがしっかり手入れしただけあってRRは快調で、途中でエンストや故障を起こすこともなく順調にマイルを稼いでいた……煤煙で煙るロンドンから郊外まではきっちり舗装されていた街道も、この辺りまで来ると年を経たレンガ敷きに変わり、乗り心地には良くないが、のどかで趣のある具合になっている…空気は清冽で、広い森と野原、それに所々小さな畑が入り混じった様子は数世紀前のノッティンガムシャーが舞台になった「ロビン・フッド物語」の世界から変わっていないように見える…


アンジェ「そうね…ちなみに宿屋まではあと数マイルもないわ」

ドロシー「そうかい、そりゃいいや」

アンジェ「それとあなたも疲れたでしょうから、今夜は何もしないでいいわ」

ドロシー「おや、ずいぶんと優しいじゃないか…明日は雨かな?」

アンジェ「馬鹿言わないで。いざ本番って言う時に、くたびれて使い物にならないようじゃ困るっていうだけよ」

ドロシー「やれやれ、相変わらず手厳しいねぇ……」

アンジェ「堅実と言ってちょうだい」

ドロシー「まぁ何だっていいさ。どのみち今夜は休まなきゃやってられ……おいアンジェ」

アンジェ「ええ…」


…二人がじろじろと見ないようにそっと視線を向けた先には、森の中に何かの施設が見え隠れしていた……ご丁寧にも街道から分かれている支道には「関係者以外の立ち入りを禁ず」とでも言うように柵が渡されていて、その脇の小さな見張り小屋には、やたら手の込んだ(その割にヘタな)偽装が好きなアルビオンのお役所らしく、民間人の格好をした歩哨が、猟師が持っているような水平二連の散弾銃を抱えている……が、棒を飲んだような姿勢と堅苦しい態度は、どうやっても陸軍の連隊から派遣されているようにしか見えない…


ドロシー「…ぷっ、くくっ♪」見張り小屋を通り過ぎると、急に笑い始めたドロシー

アンジェ「……何がそんなにおかしいの?」

ドロシー「だってさ……あれで民間人のつもりかよ? …はははっ♪」

アンジェ「そういう事ね…確かにまずい偽装だったわね」

ドロシー「まずいどころか……あれじゃあ近衛連隊の閲兵式だぜ?」

アンジェ「でもそれだけ警戒を固めている考えられるわ…おそらく施設内の警備は厳重よ」

ドロシー「まぁな……だが、手前に小川があったろう。あそこをさかのぼって行けば上手いこと施設の横手に出られるんじゃないか?」

アンジェ「それは今日明日のうちに分かることでしょうね……さぁ、着いたわよ」

ドロシー「ここから『ディーダラス』まで数マイルって所か…ありがたいね」

アンジェ「下見は楽になるでしょうね」

ドロシー「…そういう事。さ、着きましたよお嬢さん♪」

アンジェ「お疲れさま……それじゃあ宿屋に入ったら役割通りに」

ドロシー「ああ…」


…しばらくして・宿の食堂…

宿屋の主人「ささ、ご令嬢方はどうぞ暖炉のそばにおかけくださいまし……メアリや、何をしているんだい?」


…ドロシーが事前に「貴族令嬢として」予約をしておいた宿屋は、居心地のいい田舎の「旅籠」と言った感じの宿で、ぽってりとした愛想のいい中年の主人と、その娘が中心になって切り盛りしている……ドロシーとアンジェは情報収集を兼ね、食事は一階にあるパブを兼ねた食堂で取ることにしたが、案の定カウンターでは地元の農夫や猟師が集まってビールを傾け、宿の主人はいかにも「主人らしく」、忙しい厨房は娘や雇いの女中さんたちに任せきりで、しきりに政治や小麦の作柄の事を話しあっている…


宿屋の娘「はぁーい! …どうもお待たせしました」錫のジョッキに注がれたエールを持ってくる宿屋の娘…年は十代の中頃で、健康そうな身体と丸っこいリンゴのような頬っぺたをしている…

ドロシー「ああ、ありがとう……お嬢ちゃん、こっちにおいで?」

娘「はい、何でしょうか奥様」何であれ女性は「奥様」と呼んでいるらしい娘…

ドロシー「あのね、少ないけど取っておきなさい。それとね、私たちは腹ペコだから……飛び切りの料理をね♪」人好きのするチャーミングな笑みを浮かべ、シリング銀貨を握らせた…

娘「は、はい…///」

主人「おや、どうもすみませんです…メアリや、ちゃんとお礼を申し上げなさい」

娘「奥様、どうもありがとうございます///」

ドロシー「いいのいいの。それにしてもご主人、ノッティンガムは初めてだけれど……いいところだねぇ?」

主人「はい、それはもう…何しろロビン・フッドの時代を残しておるような場所でございますから」

ドロシー「いやまったく。空気は綺麗だし、眺めはいいし…私がブラウニングやワーズワースだったらどんなにかいい詩が詠めることか」

主人「いや、もうその通りでございますよ……メアリや、お客様のスープはまだなのかい?」

娘「…はぁーい!」ドシンと重そうな音を立てて置かれたスープ壺からはエンドウ豆スープのいい匂いが漂ってきて、娘が丁寧に皿へよそってくれる…

ドロシー「いやぁ、待ってたよ……ささ、いただこうじゃないか♪」

アンジェ「え、ええ…///」話す声もどもりがちで、いかにも内向的な様子に見えるアンジェは「ロンドンで羽振りのいい貴族令嬢に気に入られた、気弱でおどおどした娘」というカバーをきっちりこなし、話に加わらない分だけ様々な会話に耳をそばだてている……

主人「どうぞ召し上がってくださいまし」

ドロシー「ええ……ん、これは美味しいね。ほら、マリアンもおどおどしてないで食べてごらんよ♪」ロビン・フッドにちなんで「マリアン」を偽名にしたアンジェ…

アンジェ「は、はい…///」

主人「…いかがでございます?」

アンジェ「そ、その…おいしい……です…///」

ドロシー「それは良かった。ロンドンじゃあ空気も悪いし食べ物だって古くていけない…ここに来て正解だったよ♪」

主人「そうでございましょうね……何でも都会の方じゃあ蒸気機関だのケイバーライトだのと、「新奇のからくり」ばっかりが幅を利かせているようですからね…もっとも、最近じゃこの辺りでもそうでございますが…」

ドロシー「おや…最近じゃあここでもそうかい?」

主人「ええ、そうなんでございますよ……いや、大きい声じゃ言えませんがね?」

ドロシー「ほぅ?」

主人「ええ…ご令嬢方も来る途中で見なすったかどうか……川沿いのほんの数マイルばかり上流に、妙な工場みたいなのが出来ちまって……」

ドロシー「そうかい?…車の方にかかりきりで、それらしいのは見なかったなぁ……」

主人「それがそうなんでございますよ…あんな訳の分からない製鉄所だか何だかを作られて……おかげで牛の乳が出なくなったとか、リンゴのなりが悪くなったなんて聞きますよ…」

ドロシー「本当に、近ごろはどこでもそこでも工場ばっかりだねぇ…」

主人「まったくで…」

ドロシー「せめて今年は作柄が良くなるといいねぇ……天気はいいのかい?」

主人「それはおかげさまで、降るにせよ照るにせよちょうどでございますよ…」

ドロシー「ああ、そりゃいいや……ん、このいい匂いはメインディッシュかな?」

主人「へぇ、ラムチョップ(あばら肉)のステーキと、玉ねぎ入りのミートパイです…うちの自慢の一品でございますよ」

ドロシー「ほほぅ…それは楽しみだ。あとお嬢ちゃん、私たちにサイダー(リンゴ酒)を頼むよ♪」

娘「…はい、すぐお持ちします!」

…どうもお待たせしてすみませんでした…

…この一週間ばかりというもの、インフルエンザですっかりノックアウトされておりました……まだ頭がクラクラするので続きは投下出来ませんが、とりあえず生きてはいます…これを見て下さっている皆さんも(元気な方は)身体に気を付けて寝具を暖かく、(具合の悪い方は)栄養を取って、起きていないで寝ましょう……ではまた数日後くらいに投下しますので、まずそれまではサヨナラ・サヨナラ・サヨナラ…と言うことで…


体調不良ばかりは仕方ない、お大事になさってください

>>282 どうもありがとうございます、それでは少し投下していきますので…

…数日後・夜…

ドロシー「さて…準備にとりかかるか」

アンジェ「ええ」

…暖炉の火が静かにパチパチとはぜて部屋を心地よく暖めている中、二人は夕食時に来ていたドレスを脱いでコルセットとペチコートだけの姿になると、任務用の服に着替えはじめた…むろん部屋には鍵があるが、女中が用事や何かで不意に開けてくることもあるかもしれないと、荷物を載せた椅子を重しにして二重に備えている……床に置かれたトランクは二重底が開けられていて、防諜部やスペシャル・ブランチの人間が見たら「興味を引くような」物がいっぱいに詰まっている…ドロシーは黒いハンチング帽に黒い活動用の服、編上げの半長靴で、服のあちこちについている物を引っかけるための輪っかやベルトに次々と「七つ道具」をセットしていく…アンジェは活動用の服に黒マントを羽織り、フードで顔を隠した…

ドロシー「…まずは大事な爆弾三つ……予備の時限装置は持ったな?」真鍮製で、何やら時計のような長針と短針が付いた精妙な出来の爆弾を、腹の所に付けたポーチに入れた…

アンジェ「ええ」

ドロシー「ウェブリーが一丁…どのみち音がするから使うわけにもいかないが……」一発ずつ弾を込めると、シャキンッ…と中折れ銃身をもとに戻した…

アンジェ「…銃把で殴打するなら別よ」アンジェはウェブリー・フォスベリーに弾を込めた…二人とも銃が暴発しないように、まだ撃鉄は起こさないでいる……

ドロシー「まぁな…スティレットに首絞め用の細引き……こっちの方が使うかもな?」細いロープを自分の目の前でゆらゆらさせてから、おもむろに腰へくくり付けるドロシー…

アンジェ「そうかもしれないわね」

ドロシー「それ以前に見つからないようにしますがね…それからロープ……」肩からたすき掛けにした

アンジェ「全く、貴女はロープが好きね」アンジェは秘密道具の「Cボール」を胸元に下げた…

ドロシー「ロープなしの工作なんてあり得ないからな……地図に小型コンパス…ケイバーライト粉の『夜間発光機能』付きとはコントロールも気が利いてる」

アンジェ「ええ…」

ドロシー「あとは工具が一揃いに、とっさのときの煙玉と閃光弾が一個ずつ……と、こんなもんか?」

アンジェ「そんなところでしょう…私も持つべきものは持ったわ」

ドロシー「よし……さてと、来るときに見た脇道の先。あそこに工場があるのは間違いないところだ」

アンジェ「宿の主人もそう言っていたわね」

ドロシー「ああ。施設の警備に当たっているのはロイヤル・フュージリア(ライフル歩兵)連隊…軽歩兵ってことは武器はエンフィールド小銃、将校にウェブリー・スコット・リボルバーってところだろう」

アンジェ「そうでしょうね」

ドロシー「全く、あれだけ手の込んだ偽装をしておいてすっかり筒抜けなんだから……笑えるな」

アンジェ「たいていの偽装なんてそんなものよ」

ドロシー「だな…施設へは私が忍び込むから、アンジェは侵入前と脱出時の援護を頼むぜ」

アンジェ「ええ、火器に一番詳しいのは貴女だもの。任せたわ」

ドロシー「おう……まず、施設へは小川をさかのぼっていって潜りこむ。あの手の石頭どもはそういう侵入方法なんて思いつきもしないだろうからな」

アンジェ「そうね」

ドロシー「施設に近寄ったら歩哨の目をかすめて中に入る…陸軍の規則通りに歩哨を立てているようなら、交代時間も予測がつく」

アンジェ「多分そうでしょう…変える理由がないはずよ」

ドロシー「もし違ったらその時はその時さ……施設に入ったら機関銃の生産状況を確かめつつ、一番効果のありそうな場所にこの「ベアトリスのお手製爆弾」仕掛ける」

アンジェ「ええ」

ドロシー「時限式だが、あんまり長い時間にしておいて気づかれちゃ困る。かといってすぐ起爆するようにセットしても具合が悪い…その辺の兼ね合いは私が決めることにするよ」

アンジェ「任せるわ」

ドロシー「後はとっとと逃げ出して、宿に戻ったら寝たふりでもしてればいい…だな?」

アンジェ「ええ、それでいいわ」

ドロシー「よし…ま、でっかい花火を打ち上げてやろうぜ♪」

…数十分後…

ドロシー「どうだ?」

アンジェ「さっきの小さな橋からおおよそ五百ヤード、施設への接近は充分のはずよ……準備はいいわね?」

ドロシー「ああ…となると、ここはもう施設の外周だろうし、見つかったら言い訳も聞いてもらえないだろうな」にやりと不敵な笑みを口の端に浮かべた…

アンジェ「そうでしょうね…それじゃあ私は待機しているから、何かあったら援護するわ」

ドロシー「頼んだぜ」

アンジェ「そっちもね」

ドロシー「ああ、任せておけ」


…リーリーと小さな虫たちが鳴いているせせらぎの柔らかい岸辺の土に足跡を残さないようそっと小川を渡ると、岸辺に生えた灌木の陰に身をひそめたドロシー……視線の先には夜霧に霞む二階建てレンガ造りの工場が影絵のような黒いシルエットとしてそびえ立ち、施設の外周には皿型のヘルメットを被り、リー・エンフィールド小銃の負い革を肩から斜めに回して、銃を背中に背負っている兵士の姿がぼんやりと見える…と、身をひそめているドロシーの左手数十ヤード先の暗闇で小さなホタル火がともり、そのオレンジ色の灯りが、シガレットに火をつけようとする兵士の顔を照らし出した…


ドロシー「…おっと、危うくハチ合わせする所だったな……」相手はマッチの火で目がくらんでいるとはいえ出来るだけ気づかれにくいよう藪や木陰を伝い、夜露が下りた冷たい地面を這って慎重に身体を動かし、立哨に忍び寄った……と、立哨に誰かが近づき、低い声で叱りつけているのが聞こえた…

軍曹「おい、何をやってるんだ。夜間の立哨が煙草なんて吸っちゃならんことぐらい分からんのか…!」

兵士「…すみません、ベイリー軍曹」

軍曹「いいから早く消せ。せっかく慣らした夜目がくらんでしまうだろうが…!」

兵士「はい…!」立哨は慌ててシガレットを踏み消した…

軍曹「よし、おれはまた施設を一周してくるからな……最近は共和国のスパイも大胆になっていると言うし、油断するんじゃないぞ…!」

兵士「了解……やれやれ、軍曹の取りこし苦労もいい加減にしてほしいよ。まだほとんど吸ってなかったのに…」軍曹が立ち去り、兵士がボヤきながらあさっての方を向いた瞬間、ドロシーは後ろから近寄って細引きの輪っかを立哨の首にかけ、きゅっと強く引っ張った…

兵士「…ぐっ!」見張りの兵士は喉から細引きを外そうと手を首元に伸ばし、またどうにかドロシーを振りほどこうともがいたが、体幹の位置と身体のバランスを正しく保ったドロシーは若い女性とは思えないほど頑強で、とうとう兵士の身体が崩れ落ちた…

ドロシー「どじを踏んだな、お前……」ドロシーは音を立てないよう兵士の小銃を背中から外すと、息のない立哨の身体を引きずって川岸の藪の中に隠した…

…施設の横手…

ドロシー「……よし、開いた」

…施設は何人もの職工を同時に働かせやすいように作られた典型的な縦長の工場で、天井はゆるい三角屋根で出来ている…屋根には換気や明かり取り用の天窓があり、夜でも目が慣れればそれなりに明るい……ドロシーがさっと建物の中に入り、静かに鍵をかけ直した直後、施設の外を歩き回っている歩哨が窓の外を通り過ぎて行った…

ドロシー「ひゅぅ……クライスト(おったまげた)…!」


…窓から見えない壁際に這いつくばって歩哨をやり過ごしさっと周囲を見回すと、思わず小声でつぶやいたドロシー……目の前には二列に並んだ製造ジグがずらりと並んでいて、ピカピカと青光りしているマキシム機関銃が製造工程ごとに何挺分も置かれている…吹き抜けのようになっている二階には小部品を作るための製造機械があり、片隅には荷物を上げ下げする水圧式のエレベーターがある…


ドロシー「こりゃ増加試作にしたって多すぎる……連中も機関銃の量産に本気って事だな…」目に入ったものをさっと記憶し、ついでに役立ちそうな資料を数枚くすねる……周囲は静まり返っていて、コトリとも音がしない…

ドロシー「さて…爆弾ちゃんはどこに仕掛けるか……」

…ドロシーは工場が丸ごと潰れるよう中央の梁か柱に爆弾を仕掛けようと考えていたが、残念なことに旋盤やボルト留めの機械は壁際ではなく部屋の中央寄りになっていて、通りやすいよう片づけられた壁際には、爆弾を隠せるような場所がない……

ドロシー「…参ったな、ここも壁際は片づけてやがる……ん?」製造機械が並ぶ一階の片隅に、重そうな鉄扉がある…

ドロシー「……倉庫?こんなところに?」





ドロシー「…どうだ……開くか?」

…錠前にキーピックを差し込み、かすかな手元の感覚を頼りにひねる……と、重厚な作りの錠が「カチン…!」と小さいがはっきりした響きを立てて開いた…

ドロシー「…っ!」

ドロシー「……誰にも聞かれなかったみたいだな……やれやれ、肝が縮み上がるぜ…」ごく小さな声でつぶやくと、重い扉をぐっと押した…扉はありがたいことにしっかり油が差してあるらしく、きしむ音一つ立てない…ドロシーは施設の保守管理を任されている職員たちを祝福した…

ドロシー「……さて、ここは一体何の倉庫なんだ? …まるでアナグマの尻の穴だ、真っ暗で何も分かりゃしない……」

ドロシー「壁伝いに歩く