紅莉栖「猫は気まぐれなのよ」 (26)

昨日VIPであげたんたが連投規制くらって断念したのでこちらに

シュタゲ続編アニメ始まるしもっと盛り上げたい



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「おかえりなさいませっ!ご主人様!新人メイドのクリスティー・ニャンニャンですっ!」

「新人ゆえ至らぬところがございますが、ご容赦願いますだニャン!」

どうしてこうなった…

『猫と戯れを』

「ぬぅ…」
2月21日晴天なり
暦の上では春と言うが、寒さがまだ身に沁みる今日このごろ。

秋葉原の雑居ビルの2階『未来ガジェット研究者』では、とある事件がおこっていた。

「貴様ら…。ラボの所長に対してどういうつもりだっ!」

「敗北を素直に認められない男の人って…」

「もう諦めるお」

「オカリンごめんねぇー」

この冬はソファーの前に置かれているテーブルがコタツになっており、いつものラボメン4人が足を突っ込み暖をとっている。

「岡部ってば分かり易すぎるのよね」

「オカリン、モロバレだお…」

「ぐぬっ!」

コタツの上にはトランプが散らばっている。
岡部の手にはたった1枚のジョーカー。

ババ抜きである。
勝敗は決したのである。

「まゆしぃはお腹がすいたのです…。ジューシーからあげナンバーワンが食べたいなぁ~」

「この勝負で負けた人がお昼ご飯の買出しに行くって言い出したのはあんたでしょーが。私はハコダテ一番ね」

「僕はデラックスハンバーグ弁当でいいお」

「くっ…!これも機関の陰謀か…ッ!」

「いや、あんたが弱いだけだろ」

「厨二病乙!」

「まゆしぃはお腹ぺこぺこなのです」

「ぐぬぬ…。…仕方ない。俺がラボメンのために一肌脱いでやろう!」

「オカリンの奢りスカ!マジパねース!」

「バカものッ!」

「早く行きなさいよ!」

「助手の分際で…ッ!」

「海馬に電極ぶっ刺されたいなら素直にそう言えば?」

「ぐぅ…。フゥーハハハッ!俺は何度でも蘇るぞ!この名の如くな!」

扉の前で白衣を翻しながら出ていくその背中からは言葉と裏腹に哀愁が漂っていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

買い出しを終えた岡部がラボへと帰ってきたところで、各々が食事の準備を始めた。
トランプはコタツの隅へと追いやられ、綺麗にまとめられている。
カードは伏せられていたが、一番上には岡部が最後まで手にしていたジョーカーが置かれていた。

「あら?岡部のラーメン見たことないかも」

「フゥーハハハ!よくぞ気付いたな、クリスティーナよ」

「ティーナを付けるな。それより、すごい色ね」

岡部が昼食にと買ってきたカップ麺。それは…

「『冬限定!激辛坦々麺!』?」

「うむ。寒い時期だからこそだろうな。限定と言われれば買わぬ理由にも行かんだろう」

「それにしても赤すぎるでしょ。けどちょっと気になるかも…」

「ふむ。流石は好奇心旺盛のメリケン処女だな。一口なら恵んでやらんこともない」

「…何だかやけに素直ね」

「やらぬぞ?」

「…。いただきます」

明らかにやばそうな色をしているラーメンを戸惑いながらも口に運ぶ紅莉栖のその姿は好奇心旺盛少女の最たる所以か。

「~~~ッ!辛ッ!なんぞこれ!限界突破もいいとこよ!」

「フゥーハハハ!かかったな天才HENTAI少女め!この俺をこき使うからだ!」

「おぉかぁべぇ!」

「ふんっ!アインシュタインに匹敵する頭脳を持つこの俺の考えを読むなど到底不可能なのだ!」

「オカリンババ抜きで負けてたけどね」

「うるさいぞダルッ!」

「いいわ!やってやろうじゃないの!」

バ バ 抜 き 再 戦

「もう私と岡部だけでやるわよ。負けた方が相手の言う事一つだけ絶対に聞くこと!いいわね!?」

「ぅいーだろう!この鳳凰院凶真、逃げも隠れもせんッ!」

こうして始まった岡部と紅莉栖の奴隷王座決定戦。最初のジョーカーは岡部の手に渡り、紅莉栖が岡部を観察しその手の内を暴こうとしている。

「ふーん。岡部、あんたは今右手でカードを持って少し左後ろに体を引いてるわね」

「…。何が言いたい?」

「つまり、右側のカードの方が私に近くなっている。要するに私に引かせたがってるってことよね」

「ふっ、ふん!どうだろうな!」

「じゃあ左側のカードを頂くわ」

(くっ…。万事休すかッ!)

紅莉栖は岡部のカードへと手を伸ばした。まさにその時、横から思わぬ伏兵が現れ岡部に一縷の希望をもたらした。

「牧瀬氏オカリンのこと見つめすぎだろ。爆発しろ」

「紅莉栖ちゃんはオカリンのことが大好きなんだねぇ~。えっへへ~」

「なっ!ち、違うわよ!?これは岡部の行動心理を読み取るためのものであって、別に真剣な岡部の顔カッコいいなんて思ってないんだからな!」

「なんというツンデレ…」

「紅莉栖ちゃんはツンデレさんだねぇ~」

「まゆりまでッ?!」

岡部の手元まで伸びていた紅莉栖の手は空をさまよい、顔を真っ赤にして目をダルへ、まゆりへと…
先程までの岡部の行動心理を推察していた冷静な目はどこにも存在しておらず、今はただ右往左往している状態だ。

この瞬間岡部はその紅莉栖の状態に活路を見出した。
確かに紅莉栖の推察は当たっていて、岡部の右側のカードはジョーカーだ。このままだと敗北が決定してしまう。

しかし今、この時、紅莉栖の目が離れている今を除いてはその決められた敗北を回避することができる。
岡部の脳に与えられた閃き。天啓。

(今だッ!)

2枚のカードを入れ替える。ただその一つの行動がもたらした結果は…

「あーもう!さっさと引いて岡部が奴隷確定、ねッ!」

「えっ…」

そう、確かに彼女の推察は当たっていたのだ。脳がもたらした無意識では抗えぬ行動心理。それを読み取るなど天才脳科学者の彼女ならば造作もない事だった。
しかし、思わぬ伏兵からの攻撃に対して隠しきれはしなかったのだ。
そして彼女は自らをもってその心理から起こる行動を示した。
動揺を。

「なん…で…?」

「フゥーハハハ!甘いな、小娘がっ!この鳳凰院凶真の頭脳は容易く破られるものでは無い!」

「うそよ!こんなの…ッ!」

彼女は気づいた。
先ほどの一瞬。たった一幕。自らが示した動揺故の意識の狭間。それを岡部は見逃さなかった。

(やられたわ…ッ!けどまだよ!まだ勝敗は決していない!)

悔しさを噛み殺し彼女はすぐ様次の態勢を立て直した。

「ふっ…。いいわ。けど、ここであんたがジョーカーをひけばそれでおしまいよ!次は絶対に見逃さないからな!」

「ぐっ…ッ!」

彼女の言うことは最もで、ここで岡部がジョーカーをひけば勝機はない。再び彼女の目を逃れることは不可能だろう。
だがまたしても、勝利の女神は岡部に味方したのだった。

(…ん?なんだ?あの赤い模様は?)

(模様…?いや、違うな。汚れか?……あぁっ!!?)

岡部は思い出した。今日の昼食を。
『冬限定!激辛坦々麺!』

「そんなにカードを見つめちゃって。狂気のマッドサイエンティストさんは透視能力にでも目覚めたのかしら?」

「見える訳ないんだから早くひきなさいよ!」

否、岡部には見えていた。
彼女の手にするジョーカーが。

(食事をしている時カードは綺麗に重ねて端に置いていた。ラーメンの汁がカードの背についているということは一番上にあったカード!つまり、この俺が先程の勝負で一番最後まで持っていたカードだ!)

「…クククッ!フゥーハハハッ!見えているぞ!貴様の手の内が!」

「はぁ!?」

「我が魔眼にかかれば造作もない!」

「さぁ、覚悟しろ、 クリスティーナよ。これこそが、シュタインズゲートの選択っ!」

岡部の手が紅莉栖の元へと伸びる。カードを掴むその手は確かな勝利を掴んでいた。

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「助手よぉー。この狂気のメェアッドサイエンティストの命令を甘んじて受けるのだー!」

「鬱だ…」

紅莉栖は床に両手をつき項垂れていた。彼女の中では岡部の勝利の確率など微塵も考慮していなかった。
なにせ、これまでの勝負ではほとんど岡部が負けていたのだ。
行動の傾向も読めていた。
ダルもまゆりも紅莉栖の勝利を確信していただろう。

「牧瀬氏が負けるなんて予想してなかったお」

「オカリンすごいねぇ~」

「これが我が魔眼の力だ」

「厨二病乙!」

「しかし、助手に何でも言うことを聞かせられるとは…。何でもか…」

「ッ!アンタまさか…!」

「うおおお!これは捗るおっ!」

「んん~?一体何を想像したのだ?天才HENTAI少女よ?ご高説願おうではないかぁ~!」

「うっさいっ!」

「スレ立てでもして安価で…ん?誰だ?」

岡部のポケットの携帯が振動を伝える。紅莉栖は一先ず追求を逃れたと安堵の表情を浮かべていた。

「フェイリスからか」

「フェイリスたんからとか、羨ましすぎるだろJK」

「フェリスちゃんがどうしたの~?」

「何でも急ぎの用があるとかでラボに来るそうだ」

「フェイリスたん召喚ktkr!これで勝つる!」

「橋田は何と戦ってるんだ」

「クリスティーナの魔女裁判は後にゆっくりと行おうではないか!」

「くっ!もうこうなったら、海馬に電極ぶっ刺して記憶をとばすしか…」

「物騒なことを言うな!」

バタンッ!
「キョーマッ!」

ラボの扉が勢いよく開かれ、ピンクの髪と猫耳が飛び込んできた。皆一様に驚きフェイリスを注視している。肩で息をしているその姿は急いでここまで来たことを示していた。

「むっ!どうしたのだ、フェイリス・ニャンニャンよ!早かったではないか」

「大変なんだニャン!封印が…」

「なにっ!まさか解けたのか!」

「そのまさかだニャン!やつの封印が解かれ、邪神がついに暴れだしたのニャ!」

「ちょ、ちょっと!話が全然見えてこないんですけど?!」

「フェイリスたんと固有結界とか…。許さない、絶対にだ」

「フェリスちゃん。温かいお茶だよ~」

「まゆしぃありがとだニャン。ニャニャ!?コタツがあるのかニャ!?」

「ん?あぁ。この冬から導入してな、なかなかに役立ってくれている」

「ニャフフフ!キョーマ!横を開けるニャ!」

「何故ここなのだ!まゆりか助手の隣へ行けばいいだろう!」

「ニャンニャーン。猫は気まぐれなのニャ。そしてコタツで丸くなる~」

「ええいっ!離れろこの猫娘が!」

「それより、フェイリスさん?急ぎの用があったんじゃないの?」

「ッ!」

感じる殺気。悪寒。
2月の寒さではないそれを岡部とフェイリスは確かに感じ取ったのだ。

「そ、そうニャ!キョーマとクーニャンに頼みがあってきたんだニャ」

「私も?」

「そんなんだニャ。メイクイーンニャンニャンでは明日、イベントがあるのニャ」

「イベント?」

「メイクイーンニャンニャンのイベントは全部把握しとくべきだろJK」

「いや、常識じゃないから」

「でもね~、明日のイベントはまゆしぃとっても楽しみなのです!」

「明日は2月22日。猫の日なのニャ!だから、メイクイーンニャンニャンとしては絶対に外せない日なのニャ!」

「まぁ、確かにな。猫耳を付けているのに猫の日に何もしないわけにはいかないだろう」

「その通りニャ。けど困ったことに、明日出勤予定の女の子が体調不良で急遽お休みになったのニャ…」

「つまり、その穴を埋める人材を探していると」

「そうなのニャ。そこでクーニャンに…」

「いやよ!私が猫耳付けてメイドしてるなんて!絶対無理!」

「まゆしぃはそんなふうに言われると悲しいのです…」

「あっ、いや違うのよまゆり?私がやっても似合わないって言ってるのであって…」

「良いではないか!クリスティーニャンニャンよ!貴様の天才頭脳を発揮する時がきたのだぞ!」

「ツンデレメイドとか…。需要がうなぎ登りで世界がヤバイ!」

「黙れHENTAI!てか、クリスティーニャンニャンって何よ!バカなの!?死ぬの!?」

「紅莉栖ちゃんなら絶対に似合うと思うなぁ~」

「大丈夫ニャ!クーニャンのサイズに合うメイド服も用意するニャ!」

「そういう事じゃなくって…。駄目だこいつら…、早くなんとかしないと…」

「キョーマ、お願いだニャン。結構本気で困ってるのニャ…」

「確かにラボメンの危機というのであれば俺は全力を尽くしたいところだが…」

「それに、キョーマは見たくないのかニャ?クーニャンの猫耳メイド姿を…」

「ぬぁ!?何を言い出すのだこの猫娘は!?」

「はぁ!?岡部!?」

「ち、違うぞ、紅莉栖!」

「キョーマの目を見ればフェイリスには全てがわかるのニャ。」

「くっ…!チェシャ猫の微笑み(チェシャーブレイク)!!」

「ニャフフフ。どうするのかニャ?」

「…いいだろう。この鳳凰院凶真を下すとはなかなか侮れんではないか…」

「クリスティーナよ!今こそ我が言霊に従え!」

「はぁ!?」

「先程の勝利の戦利品をここで使わせてもらうとしよう!」

「ッ!まさかッ!」

「オカリンかっけーす!そこに痺れる憧れるぅっ!」

「貴様は明日、メイクイーンニャンニャンでクリスティーニャンニャンとして奉仕活動に就くのだ!」

「なんぞこれぇぇえっっ!!!」

勝者と敗者の残酷さは歴史が物語っている。
勝利を掴んだものこそが正義なのだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーー

2月22日
晴天なり
昨日の事件から一夜明け、ラボにはまたしてもいつもの4人が集まっていた。

「岡部は[ピーーー]。氏ねじゃなくて[ピーーー]。」

「涙目で罵倒とか御褒美以外の何者でもないだろ!牧瀬氏、僕にもplz!」

「HENTAIは黙ってなさい!」

(むっ…。確かに涙目の紅莉栖もなかなか…)

「紅莉栖ちゃんのメイドコス楽しみだなぁ~。この機会に紅莉栖ちゃんもまゆしぃのコス着てみない~?」

「いや、あの、まゆり?」

「良いではないか、助手よ。これをきっかけに新たな扉が開かれるかもしれんぞ?クククッ」

「あんたは開頭して大脳皮質ポン酢漬けにしてやる…!」

「紅莉栖ちゃん、そろそろ時間だよ~」

「えっ?あぁ、そうね。そろそろ行きましょうか。はぁ…」

「フゥーハハハッ!クリスティーナよ!良い気味ではないか!」

「あんたは後で覚えておきなさい。絶対に後悔させてやるんだから」

「紅莉栖ちゃんはやく~」

「ごめんなさい、まゆり。行きましょ」

「僕達も後でイベント行くんで、よろしく~」

「貴様の奉仕精神をこの鳳凰院凶真がしかと見届けてやろう!」

「牧瀬氏の猫耳メイドコスが見たいんですね、わかります」

「黙れ!スーパーハカー!」

「ハッカーな」

「じゃ、行くわね」

「行ってきま~す」

「いてら~」

「あぁ、気をつけてな」

本日、メイクイーンニャンニャン@猫の日ニャンニャンday開幕。

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「クーニャン!よく来たのニャ!今日は本当にありがとうだニャン!」

「えぇ…。まぁ、困ってるって言ってたし…」

「フェリスちゃん、トゥットゥルー」

「まゆしぃも今日は気合入れて行くニャ!」

「さっそくクーニャンにも着替えてもらうのニャン!」

メイクイーンは大変な賑わいを見せていた。老舗メイド喫茶としてこのオタクの街秋葉原で確固たる地位を築いていてきたメイクイーンニャンニャンである。
普段からの繁盛も然る事乍ら、イベントということもあり、いつも以上の客入れだ。

「こっ…これは…ッ!」

「フェリスちゃん…っ」

「これで、いいのよね…?」

「クーニャン!いや、クリスティーニャンニャン!天下を取れるのニャ!」

「紅莉栖ちゃんすっごくかわいいよ~!」

「ほ、ほんと?で、でもなんかスカートって落ち着かないってゆうか…」

「何を言ってるのニャ!それも含めてメイドニャ!」

「紅莉栖ちゃん、絶対に人気出るよ~。オカリンがヤキモチ妬いちゃうね~」

「なっ!あいつがヤキモチなんて、そんなっ!」

「そ、そりゃちょっとはそんな事があっても…」

「まゆしぃ、クーニャン。そろそろ出るのニャン。小便は済ませたかニャ?」

「…ふぅ。お祈りも命乞いも大丈夫よ。」

「クーニャンの精神力大したもんだニャ」

「じゃあまゆしぃ、クーニャン今日はよろしく頼むのニャン!」

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「そろそろフェイリスたんが表に出てくる頃だお」

「何故お前がそこまで把握してるのだ?」

「当然じゃね?」

「…。深くは聞かないでおこう。それより、入ろうではないか」

「そうするお」

ダルと岡部が来店したのはまゆりと紅莉栖が出勤してから少したった頃だった。
既にメイクイーンは沢山の人が入店し、中の混雑が見て取れる。
さっそく岡部とダルはメイクイーンの扉を開け店内へと歩を進めた。

「おかえりなさいませっ!ご主人様!新人メイドのクリスティー・ニャンニャンですっ!」

「新人ゆえ至らぬところがございますが、ご容赦願います…だニャ…ン…」

「くっ…紅莉栖…」

「おほーっ!牧瀬氏初見凸ktkr!」

「あ、あんた達早速来たのね…。いいわ!私は屈さない!」

「牧瀬氏そこは、悔しい…でも…って感じでヨロ」

「言わせるなHENTAI!そ、それよりクリスティーナいや、クリスティーニャンニャンよ!」

「言い直すな、なによ?」

「なかなかメイド姿が板についているではないか~。流石は我が助手。」

「ふぇっ?べっ、別にあんた専属になりたいなんて思ってないんだからな!」

「ツンデレ猫耳メイドキターーーッ!!!!」

「ツンデレじゃない!」

「キョーマー!よく来たのニャ!」

「フェイリスたん登場で世界がヤバイ!」

「やかましいぞ、ダル。それで?フェイリスよ。なかなかの客入りではないか」

「お陰様で、メイクイーンも大盛り上がりなのニャ!それに、新人メイドの効果も抜群だニャン!」

「ほぅ…我が助手がこの店の人気の一角を担っていると…」

「その通りだニャン。フェイリスの地位も脅かされそうなのニャ…。ついにあの最終奥義を使う時が来たのかニャ…」

「まさかっ!あれを使えば貴様の身が…ッ!」

「はいはい、厨二病乙」

「オカリンばっかりずるいお!」

「まぁまぁ、ダルニャンも是非今日も楽しんでいってなのニャ。じゃあクーニャン、ご案内をお願いするのニャ」

「え、えぇ任せて」

「では、頼むぞ助手、いやクリスティーニャンニャンよ!」

「だからいちいち言い直さんでいい!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「で?注文は?」

「貴様、客に対して言葉遣いがなってないぞ!」

「お客だからって態度がでかい人って…。あんたにはこれで十分よ」

「フェイリスよ!店員の教育がなってないぞ!」

「当店のメイドに対してのクレームは受け付けないのニャ~」

「ぐぐっ…貴様ら、謀ったな!?」

「オカリン、フェイリスたんを悪く言うと僕の拳が光って唸るお」

「くっ…機関め…。まぁいい…」

岡部とダルがそれぞれ注文すると、紅莉栖はそそくさと店の奥へと戻っていった。
そうこうしているうちに気づけば店内は満員御礼となっている。
より一層の慌ただしさの中で、一際人気が高いのはやはりNO.1メイドのフェイリスのようだ。
もちろんまゆりも含めてその他のメイドたちも忙しなく各テーブルを回っているが、その中で特に1人だけひっきりなしに声かけられているメイドがいた。

「は、はーい!只今まいります!」

「お待たせしました。クリスティーニャンニャンからの、オムライスです」

「お、おいしくな、るじゅ、呪文だニャ…ン…」

「かっ可愛いなんて、そんな…」

そう、新人メイドクリスティーニャンニャン、もとい紅莉栖である。
素人っぽく、まだ慣れてない恥ずかしさの残る仕草が評判でフェイリスの地位が脅かされるというのも過言ではないらしい。
イベントも佳境に差し掛かり店内もようやく落ち着きだした頃でも紅莉栖の人気は相変わらずだった。

「オカリン、目が怖いお」

「…ふんっ!馬鹿言え。機関に寝返らぬよう助手を監視しているのだから当然だ」

「男の嫉妬は醜いぜ…」

「ぬぅあにが嫉妬だ!この俺が嫉妬など…」

「ちょ、ちょっと!いい加減…」

店内に紅莉栖の少し大きな声。
どうやら客がしつこく紅莉栖の連絡先を聞き出そうとしているようだ。

「おい!貴様、紅莉栖に…」

「ご主人様、ここはそういうお店じゃないのニャ。代金は結構。直ぐにご退店願うニャ」

岡部が勢いよく立ち上がろうとした矢先、普段より幾分も低く、威圧的な、初めて聞くフェイリスの声。
そして周りのメイクイーンを愛してやまないご主人様達の鋭い目線。
ナンパ男はすぐさま店から出ていった。

「はぁぁぁ…」

「皆様、お騒がせしたのニャン。気にせずまだまだ楽しんでいってなのニャ!」

「あの、フェイリスさん…」

「クーニャン、申し訳ないのニャ。フェイリスがいながらあんなことを…」

「フェイリスさんのせいじゃないわ。それに、あなたが来なかったら私が怒鳴り散らしてやってたわ。お店の雰囲気を壊す結果になってたかも知れない。だから、ありがとうフェイリスさん」

「クーニャン、ありがとうなのニャ。けど、フェイリスが来なかったら先にどっかの白衣の王子様が暴れてたかもしれないのニャ~。ニャフフフ」

「ふぇ?それって…」

紅莉栖の目線の先には立ち上がろうとしたままの岡部の姿。目が合うと照れ隠しのように直ぐに目を逸らして椅子に座り直した。

「キョーマが一番先にクーニャンの異変に気付いて止めに入ろうとしたのニャ~。愛されてるのニャ」

「そんな…こと…ふえぇぇ!?」

「さぁさぁ、まだもう少し頑張って貰うのニャン!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「終わったニャー!!」

「フェリスちゃんも、紅莉栖ちゃんもお疲れ様~」

「まゆりもお疲れ様」

少しの騒動はあったが、無事メイクイーンはイベントを終えることが出来た。数々のご主人様に愛された今日のイベントも終わりを告げた。

「まゆしぃ、今日はそのまま家に帰るのです。紅莉栖ちゃんはどうするの~?」

「そうね…私は…」

「クーニャンは寄り道コースなのニャ!これを持ってキョーマの所に行くんだニャ!」

「なっ、…これ!」

「今日のお給料も渡しておくニャ。クーニャン、今日は本当に助かったのニャ。それも思い出として受け取ってほしいのニャン」

「紅莉栖ちゃんありがとう~」

「気持ちは嬉しいけど、これって…」

「キョーマはそれを付けてるクーニャンが見たかったから今回の話になったのニャ!」

「ううぅぅ~…」

「さ、もうお店を閉めるのニャ。忘れ物はないかニャ?」

「紅莉栖ちゃん、ファイトだよ!」

「はぁ…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はろー」

「む、終わったのか?わざわざラボに戻ってこなくとも…」

「べっ、別にあんたのためじゃないんだからな!」

「…。それはなんというツンデレなのだ?」

「ツンデレ言うな!」

「まぁ、なんだ。玄関にいても寒かろう。」

「そうね、そっちに…」

岡部はいつもの通りにソファーに背を預けコタツに足を突っ込んでいた。この冬に幾度となく見た光景。そう、昨日見たその光景を思い出していた。

(気まぐれ…コタツで丸くなる…)

(さっき貰ったあれを付ければ私にも…)

コタツへと進めた歩みを止め、紅莉栖は鞄の中に手を入れた。岡部は携帯電話に目を落としていて、その紅莉栖の行動には気づいていなかった。
フェイリスから託された"それ"を探り当て、紅莉栖は再び岡部の元へと動き始めた。

「おか…べ…。となり…」

「ん?なん…ッ!」

岡部は紅莉栖の囁かな呼びかけに目をあげ、紅莉栖を見た瞬間電撃が走った。

「となり…あけて」

「んなっ!なにを!」

「いいからあけろ!」

「あ、あぁ…」

紅莉栖の迫力に押され怖じけながら隣にずれた岡部の横に紅莉栖スルリと滑り込む。

「ね、猫は気まぐれなんだ…ぞ…」

顔全体、果ては首元まで顔を赤くした紅莉栖が隣でポツリと呟いた。
フェイリスから託された『猫耳』。それを装着した紅莉栖を見ながら岡部は隣にコタツからではない確かな暖かさを感じていた。

「あぁ、そうだった、猫は気まぐれだったな…。クックック…」

「なに笑ってんのよ!」

「いや、なに。機関からの精神攻撃かと思ったが、居心地良くてな…」

「えっ?…」

「それより、今日は疲れただろう?よく働いてくれたな。この俺が直々に労ってやろう!猫はコタツで丸くなるのだろう?」

(なんぞこれ!なんぞこれ!あ…ありのまま今起こったことを話すぜ。岡部の横でこたつに入っていたらいつの間にか膝枕になっていた。何を言っているのかわからねーと(ry)

「…?どうしたのだ?気に入らなかったか?なら、やめるが…」

「そんなわけあるか!そんなわけあるか!大事なことなので(ry」

「なんだと言うのだ…」

(なに!?なんなの!?デレ岡部!?!?一体全体どうなってやがるんだ!猫耳パワーなのか?そうなのか!?)

「…あの時、もう少しはやく気づいてやるべきだったな。済まなかった」

「えっ?いや、あれは別にあんたのせいじゃないし…助けてくれようとして嬉しかったっていうか…」

「おまけにフェイリスに手をやかせてしまった。ラボメンが困っているのにおれは…」

「…まったく、あんたは背負いすぎなのよ。少しは私達を頼りなさい。仲間なんだろ?」

「あぁ、全く猫耳助手にそんなことを言われるとはな」

「なっ!?こっ、これはフェイリスさんにあんたが見たいって聞いたから…!」

「まぁ、今はそういう事にしておこう」

「なんか余裕ね。むかつく…」

「俺だって男だ。好きな女の前では少しは余裕を見せたい」

「すっ…なぁっ!」

少し悔しく思う。紅莉栖は自分だけ翻弄されている。けど、その悔しさも直ぐに幸福感に変わってしまうことが。
惚れた弱みなのだろうか。それならば、岡部にもこの気持ちを与えてやろう。大丈夫、今は託されたものがあるのだから。

「おか…べ…。こっち向いて…」

「どうし…ん!」

「…ん、はぁ…」

岡部の顔に赤みがさした。少しは余裕を崩せただろうか。少しはこの想いを岡部にも移せたのだろうか。この心を彼の心に写せたのだろうか。
なかなかどうして、その結果は。

「な、なに…なん…だ…ッ!」

「…ばか。猫は気まぐれなのよ」



2月22日。まだ寒さの残る季節、寄り添いあった2人には春一番が吹きはじめた。


おわり

saga入れ忘れたorz

ありがとうございます
この板初めてでとりあえずテンプレ読んでたら入れといた方がええでって書いてたんで

HTML化依頼出してきます

ありがとうございます
ありがとうございます

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