両津「ボブスレーだと?」 (15)
勘兵衛「そうだ、お前に選手として乗って貰いたくてな」
両津「急に呼び出されたと思ったらどうしてそんな事を」
勘兵衛「今や職人達は全員が高翌齢化しているし、機械の精度は上がるばかりだ。このままいくとどうなるか分かるか?」
両津「どうせみんな年金貰える年なんだろ」
勘兵衛「違う。年金しか貰えないのが嫌なのだ!」
両津「この時代になってもか……」
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勘兵衛「そこでボブスレーだ。冬季オリンピックの花形競技、ソリを職人達に造らせれば技術力アピールに繋がる」
両津「そこでどうしてワシが乗らなきゃいかんのだ」
勘兵衛「今回働いて貰う、もとい金を欲しがっているのは下町の職人だからな。全面的に下町をアピールする」
両津「下町出身のワシで箔付けする気か」
勘兵衛「その通りだ、それにソリの早さは保障されている…見よ、このソリを」
両津「おおっ?」
勘兵衛「形状はスイス製、木材はラトビアにならって同型、空気抵抗を削減する為にドイツからのデータを…」
両津「おい」
両津「これの何処が下町製なんだよ、完全にやってる事は企業と同じだろうが!」
勘兵衛「落ち着け勘吉、まずスイスのデータは一番ボブスレーが栄えている都市の『ココ』だから下町」
勘兵衛「同じ理由でラトビアの『この』下町と、ドイツの『ここ』からデータを持って来た」
両津「それでネット社会を騙せるとでも思ってるのか?」
勘兵衛「だからしっかりとここに書いてあるだろう、ちょっと小さいが」
「下町『々』ボブスレー」
両津「う~む……」
勘兵衛「おまけにスポンサー名もこの通り、日本に合わせた漢字で記してある」
「巣椅子下町」「羅戸美亜下町会」「土逸工業下町」
勘兵衛「何も抜かりは無い」
両津「ひでえ」
両津「見たところ4人用のソリみたいだが、ワシ以外のパイロットはどうするんだ?」
勘兵衛「2人はこっちで用意している。下町の素晴らしさからやって来た歩舞(ボブ)君と募武須(ボブス)君だ」
ボブ「アイライクボブスレー、アンドシタマチ」
ボブス「ボブスレーアイシテル」
勘兵衛「お前を除いて後1人調達してくれ」
両津「ワシより汚さに遠慮が無い……」
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中川「えっ、本田さんをボブスレーに乗せるんですか?」
両津「それしかないだろう。なるべく軽い方が有利だからな」
麗子「別に断っても良かったのに…」
勘兵衛『乗ってくれるか?』
両津『まだ元ネタに不発弾が眠ってそうだからやだ!』
勘兵衛『国内選手権1位で2000万』
両津『やります!』
両津「……まあ、色々あるんだよ、ワシも下町出身だし」
中川(お金か……)
麗子(お金ね……)
本田「せぇんぱぁい!何でボクがボブスレーやらないといけないんですかぁ!?」
両津「良いから落ち着け!これはあくまで試運転だから!」
ボブ「Ready!」グッ
ボブス「GO!」ドッドッドッドッド
本田「ひぇぇ~っ!」
両津「本田!もっと気合入れて走れ!」ドドドドド
本田「そんな事言っても~っ!」
両津「今だ、飛び乗れ!」
本田「ひゃぁ~~…ムンッ!」カッ
本田「行くぜぇ旦那ぁっ!」ゴォォォォ
両津「おぉ、予想通りだ!」
本田「うぉぉぉぉぉお!」ゴォォォォ
ボブ「グレート!」
ボブス「エクセレント!」
両津「良いぞ、この早さなら余裕で一位を取れっ」ズルッ
本田「うおぉぉぉぉぉ!」
両津「本田、ちょっと待て、ワシが落ちる!」ググググ
本田「うおぉぉぉぉ!しっかり捕まってなぁっ!」
ボブ・ボブス「オーケー!」
両津「いかんこのカーブは、ぐあぁぁぁぁ」ズルッ
両津「がっ!」ドガッ
両津「ぐえっ!」ドゴッ
両津「ぎゃあぁっ!?」ズズズズズ…
計測員「ゴール!世界記録すら狙えるタイムです!」
勘兵衛「よしよし、何も問題ないな」
両津「ワシをもっと気にしろ!」
ソリの性能と全力のプレイから予選会は無事に勝ち抜き、国内選手権の参加権は手に入った、そして……
勘兵衛「ここまでマスコミを集めたんだ、頑張ってくれよ」
両津「通りでいやにフラッシュが凄いと思ったら……」
勘兵衛「ひいては映画化、そしてドラマ化、制作秘話の書籍化まで考慮に」
両津「それ以上寄せるんじゃない!」
オー 日本新記録だ、オー
両津「げっ、日本新記録…おい、あれは?」
スパーク「これはこれは久し振りだね、両津君」
両津「今度は何だ、無人ボブスレーでも造ったのか?」
スパーク「それはまだ開発中だ」
両津「(やる気なのかよ…)うげっ、何だあのスポンサーの量は」
スパーク「材質はカーボン、そしてそれぞれの企業が結集して造り上げた形状と材質」
スパーク「部品の一つ一つまで全て3Dプリンターで仕上げた、この『大企業ボブスレー』」
スパーク「私が任されたのはデータ取得用のICチップ。選手達のユニフォームにも埋まっている」
スパーク「こんな形で再会するのは奇遇ではあるが、今回は諦めたほうが良いんじゃないか?」
両津「そう言われると負けたくないな…」
ボブ「Yes」
ボブス「I Play to win」
両津「(そして金を貰う!)よし、行くぞお前ら!」
本田「目の奥に禍々しいものが……」
本田「うぉぉぉぉぉぉ!」ゴゴゴゴゴ
ボブ・ボブス「Woooooo!」ゴゴゴゴゴ
両津「ぬおぉぉぉぉぉ!」ゴゴゴゴゴ
実況『下町々ボブスレーチーム、凄まじい早さ!このまま勝利を決められるか、あぁーっ!ゴール!』
両津「結果は!?」
実況『なんと同着!100万分の1秒まで完全に同じです!』
スパーク「なんと……」
ボブ・ボブス「Yeahhhhhh!」
本田「まあ良くやったなあ、旦那!」
両津「違う」
本田「何だって?」
両津「ワシ達が求めているのは完全な勝利!引き分けで済ませてはいかんのだ!」
本田「おぉっ!それで……何をするんですか先輩?(嫌な予感が……)」
両津「ワシに考えがある」
実況『なんと再走したチームが日本新記録を更新!これは……?』
両津「どうだ!軽くした結果この通りだ!」
実況『なんと全員髪を剃り上げて来た様です!』
スパーク「ぐぬぅ……」
スパーク「2位じゃいかん、お前達を髪を剃れ!」
実況『おっと、再走した結果また同着になりました!』
両津「くそぉ~っ!こうなったら奥の手だ!」
本田「先輩!これ以上は本当にもう……!」
両津「良いからこっちだ!」グイッ
本田「ひぇ~っ!?」
実況『さて、再走する下町々ボブスレーチームですが…うわっ!?』
キャー ギャー ヒエーッ ウホッ
本田「せ、せんぱぱぱぱいさむむむぃ」ズバーン
両津「身体を動かしてれば何とかなる!」ゼンラーン
中川「荒れてきたね…」
麗子「ひどい……」
本田「うおぉぉぉぉぉ!」ゴオォォォォ
両津「良いぞ!この早さなら絶対追い抜き…」ベキッ
両津「げっ、ソリが割れやがった!」ガシッ
キャー キャー
実況『早い、早い!この早さは確実に記録を…!』
両津「ぬおぉぉぉぉぉお!何とか持ってくれぇっ!」グググググ
実況『おっと両津選手、分解しかけたソリを身体で支えている!』
キャー キャー
両津「ぐおあおぁぉおぉ!?腹がぁぁぁ!」ズガガガガガ
両津「いかんいかん、削れて持って行かれるかと…」
本田「ラストだぜ旦那!」
両津「よ、よし、これで…!」
バキッ
実況『ゴォーール!記録は更に更新され』
両津「うおぉぉぉぉ!?」
本田「ひぃぃぃぃぃ~!?」
ボブ・ボブス「WHOAAAAAAAAAAAAAAA!」
両津「げぇぇっ!何でスキージャンプ台がっ!」
ドガッ!ドゴッ!
両津「ぎゃああぁぁぁ!?」
ズガガガガガガ!ドスンッ!
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ニュース『先日行われたボブスレー国内選手権において、下町々ボブスレーの製作に携わった技術者達は大企業で後進の育成に携わる事となり……』
ニュース『下町々ボブスレーは選手の負傷から世界選手権へは辞退する方針を固めました』
中川「あっさり梯子を外されてしまったみたいだね」
麗子「お爺様の方が一枚上手だからね……」
両津「」
終
おまけ
勘兵衛「ほれ見舞金、口止め料込み込みでこのぐらい」
両津「おおっ、やったぜ!」
本田(あっさりだ…)
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