杏「海」 (11)

二部作の予定なので後編も書き終わり次第投下します。

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1520362148


私は果てしなく広い海の上にいた。
浮き輪に乗ってぷかぷかと浮かびながら寝ていたらしい。
身体を起こそうとすると、勢いあまって浮き輪から
落ちてしまいそうになり、
慌てて浮き輪にしがみついた。
海の底は見えなかった。
私はそこで気づいた。
広い海に浮かんでいるのは私一人で、周りには
ただ黒い水がうごめいているだけだった。
夜なのか空には月が浮かんでいたが、
月の光は微かに私を照らすのみだった。
それ以上に、空には月以外の星がなく、
世界は漆黒の闇に覆われていた。
私はひどい孤独感に襲われた。
この場から逃げ出したくなったけれど、逃げ場はなかった。
出口のない海の上で、私はただ孤独を受け入れるしかなかった。


そこで突然けたたましい音が鳴った。
四方八方から聞こえるその音はとても不快だった。
けれど、その音を強く認識するにつれて、
目の前に広がる景色はだんだん薄くなっていった。




「ああ、夢か……」

寝ぼけた目を擦りながら、すっと目覚まし時計に手を伸ばした。
さっきまでこの世の終わりを告げるかのような音が響いていた
私の頭に静寂が流れ始めた。

時計の針は七時過ぎを示していた。
本当はこんなに早く起きなくてもいいのだけれど、
昨日の夜に目覚まし時計をこの時間にセットされてしまった。
私は犯人を恨むようにベッドに目をやった。
犯人はそんなことを気にも留めていない様子でこっちを見ていた。

「杏ちゃん、おはよ!」

朝からよくもまあこんなに眩しい笑顔が出せるなあと感心した。
普通はここで負けないぐらいの笑顔を返すのだろうが、
寝起きの私にそんな気力はなかった。
そんな心の内にある申し訳なさを伝えたいというわけではないけれど、
私は軽く苦笑いをした。

「おはよう、きらり」

なんできらりが私の部屋で寝ていたのかと言えば、
理由は至極単純で、
私たちは一緒に暮らしているからだ。
誰かの命令とかじゃなく、自然にきらりはうちに帰って来る。
最初は有難迷惑だと思ったけれど、それに慣れきってしまった
今ではもう何とも思わなくなった。

朝食を作るのはきらりの仕事だ。
じゃあ私の仕事は何かというと、何もない。
家事をするのは大体きらりで、私はというと、
自分の娯楽にすべてを費やしている。
前に血迷って「杏も何かやろうか?」って
聞いてしまったことがあったけれど、
「きらりが全部やるから大丈夫だにぃ」と
言われたのでその言葉通りに家事その他の
雑用をサボっている。

私たちは朝食を食べながら他愛もない話をする。
最近学校で流行っていることとか、
アイドルとしての新しい仕事のこととか。
この時間がきらりのお気に入りらしく、
私は毎朝早起きさせられている。
最初は辛かったけれど、慣れてくると
そこそこ自然に起きられるもので、
私はまんまときらりの術中にはまってしまった。

毎朝、私たちは同じ時間に家を出る。
一緒には出るけど、行き先は違う。
きらりはきらりの、私は私の学校に行く。
前までは学校になんてあんまり行かなかったけど、
きらりが家に住み着いてからは毎日連れ出されるようになった。

学校では何もしない。
きらりは真面目に授業を受けて友達と仲良く
喋ったりしているのだろうけれど、
生憎のところ私にはそんな授業へのやる気もないし、
仲のいい友達もいない。
だから学校では私は一人だ。
ただ時が過ぎるのを待っているだけの置物だ。

放課後になると、置物は動き始める。
意気揚々と帰路に就く。
アイドルの仕事がある日は家に帰ったらすぐに事務所に
行かなくちゃいけないけど、今日はない。
家でゆっくりできる素晴らしい日だ。
だから家に着けば、そこには自由が転がっている。
今日は何をしようかとあれこれ妄想を巡らせる。
あとちょっとでクリアできるゲームをやるか、
昔のゲームを掘り起こしてもいいな。
あっ、そういえば、今日は漫画の新刊の発売日だった。
じゃあ帰ったらそれ読まなきゃ。楽しみだなぁ。

本屋のビニール袋を手に持ち、
満面の笑みで帰宅した私に待っていたのは、
終焉だった。

「杏ちゃん、おっかえりー!」

「……た、ただいま……」

これはおかしい。
きらりの方が学校は遠い。
だからいつも帰宅するのは私が先だし、
きらりが帰って来るのはその一時間後ぐらいのはずだ。

「今日は早かったんだね……」

「うん! きらりのとこ、今日から文化祭の準備なんだにぃ。
他の子はまだ準備とかやってるんだけど、
きらりの担当のところは早く終わったからもう帰ってきちゃったの」

「そ、そうだったんだ……」

そういえば今朝そんな話をしていたような気がしないでもない。
パンを食べながら適当に聞き流していた今朝の自分を恨んだ。

そして、きらりは目敏い。
落ち込んでるときなんかにすぐ気づいてくれるのは有難いことだけど、
今回は全く有難くない。
私の至福のひと時は無残に奪い去られた。

「あれ、杏ちゃん、何買ってきたの?」

はぐらかしてもどうしようもないので、
帰りに買ってきた漫画の最新刊だと説明した。
これで解放されればゆっくりと漫画の世界に浸れるのだが、
きらりがそう簡単に解放してくれるはずもない。

「えっ、漫画? なんて漫画?」

「い、いや……きらりはそんな好きじゃない内容だと思うし、
そんな気にしなくても……」

「きらりも読んでみようかな~」

「……は?」

「杏ちゃんがどんな漫画読んでるのか、気になるにぃ~」

きらりはいつもこうだ。
私がやってるゲームとか読んでる漫画とかに
とにかく興味を示す。
そして一緒に好きになろうとしてくる。
始めは正直なところ鬱陶しかったけれど、
最近はそんなに悪くないかなって思っている。
今までは自分の趣味を理解してくれる人は
周りにはいなかった。
いつだって部屋には一人だったし、
語り合える友達が外にいるわけではない。
だけど、今は違う。
今私とテーブルをはさんで座っている彼女は、
私に歩み寄ってくれた。

「ん、きらりの顔に何かついてる?」

どうやら無意識のうちにきらりの顔を
まじまじと見ていたらしい。

「あ、いや……その漫画、面白い?」

「うん! 面白いよ!」

「……そっか。よかった」




私は果てしなく広い海の上にいた。
浮き輪に乗ってぷかぷかと浮かびながら寝ていたらしい。
身体を起こそうとすると、勢いあまって浮き輪から
落ちてしまいそうになり、
慌てて浮き輪にしがみついた。
海の底は見えなかった。
私はそこで気づいた。


私の隣には一人の少女がいた。
私はその少女の手を強く握った。
彼女もそれに応えるように強く私の手を握り返してきた。
二人で漂う海は広い。
だけど怖くはなかった。
その世界には陽の光があった。
キラキラと揺れる水面は眩しかった。



今日もけたたましい音で私は目を覚ました。
時計は今日も七時過ぎを示していた。
私の体に似つかわしくない大欠伸をしながら体を起こすと、
ベッドの上から声がした。

「おはよう、杏ちゃん」

きらりは今日も笑顔でこっちを見ていた。
私も不器用に笑顔を作って見せた。

「おはよう、きらり」

ゴンベッサこと先原直樹、ついに謝罪
http://i.imgur.com/Kx4KYDR.jpg

あの痛いSSコピペ「で、無視...と。」の作者。

2013年、人気ss「涼宮ハルヒの微笑」の作者を詐称し、
売名を目論むも炎上。一言の謝罪もない、そのあまりに身勝手なナルシズムに
パー速、2chにヲチを立てられるにいたる。

以来、ヲチに逆恨みを起こし、2018年に至るまでの5年間、ヲチスレを毎日監視。

自分はヲチスレで自演などしていない、別人だ、などとしつこく粘着を続けてきたが、
その過程でヲチに顔写真を押さえられ、自演も暴かれ続け、晒し者にされた挙句、
とうとう謝罪に追い込まれた→ http://www65.atwiki.jp/utagyaku/

2011年に女子大生を手錠で監禁する事件を引き起こし、
警察により逮捕されていたことが判明している。

>>7
>私こと先原直樹は自己の虚栄心を満たすため微笑みの盗作騒動を起こしてしまいました
>本当の作者様並びに関係者の方々にご迷惑をおかけしました事を深くお詫びいたします

>またヲチスレにて何年にも渡り自演活動をして参りました
>その際にスレ住人の方々にも多大なご迷惑をおかけした事をここにお詫び申し上げます

>私はこの度の騒動のケジメとして今後一切創作活動をせず
>また掲示板への書き込みなどもしない事を宣言いたします

>これで全てが許されるとは思っていませんが、私にできる精一杯の謝罪でごさいます

http://i.imgur.com/HxyPd5q.jpg

>>7
>私が長年に渡り自演活動を続けたのはひとえに自己肯定が強かった事が理由です
>別人のフリをしてもバレるはずがない
>なぜなら自分は優れているのだからと思っていた事が理由です

>これを改善するにはまず自分を見つめ直す事が必要です
>カウンセリングに通うなども視野に入れております

>またインターネットから遠ざかり、
>しっかりと自分の犯した罪と向き合っていく所存でございます

http://i.imgur.com/QWoZn87.jpg

>>7
ニコニコ大百科や涼宮ハルヒの微笑での炎上、またそれ以前の問題行為から、
2013年、パー速にヲチを立てられるに至ったゴンベッサであったが、
すでに1スレ目からヲチの存在を察知し、スレに常駐。
自演工作を繰り返していた。

しかし、ユカレンと呼ばれていた2003年からすでに自演の常習犯であり、
今回も自演をすることが分かりきっていたこと、
学習能力がなく、テンプレ化した自演を繰り返すしか能がないことなどから、
彼の自演は、やってる当人を除けば、ほとんどバレバレという有様であった。

その過程で、スレ内で執拗に別人だと騒いでいるのが間違いなく本人である事を
確定させてしまうという大失態も犯している。

ドキュメント
先原直樹、自演確定の日
http://archive.fo/BUNiO

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