モバP「十七歳になれる薬?」 (40)

晶葉「ああ、作ってみた」

P「すごいな。天才という次元を超越してるぞ」

晶葉「ふふふ。まぁな。これ一粒で五分程度十七歳になれるぞ」

P「へぇ。副作用とかないのか?」

晶葉「……」

P「……」

晶葉「早速依頼者で試そう」

P「本当に大丈夫なんだろうな……」

晶葉「おそらく」

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晶葉「おい、菜々」

菜々「どうしました、晶葉ちゃん」

晶葉「例のブツが出来たぞ」

菜々「……来ましたか」

晶葉「ああ、これだ。一粒で五分間だぞ」

菜々「百万粒ください」

晶葉「ざっと考えて五世紀半以上効果が続くことになるんだが
   別に不老不死のクスリではないんだぞ」

菜々「いいんですよ。とりあえず一粒ください」

晶葉「ほら、一粒だ。言っておくがまだ臨床実験がされてないからどんな副作用が」

菜々「ハムハッフハムハム」ゴクン

晶葉「聞け!」

P「というかあんな小指サイズの錠剤を飲むのになんであんな一生懸命なんだ」

菜々「う……体が……熱く……うわああああああああ」

P「菜々の体が光った!? というか服のサイズとか大丈夫なのか!?」

晶葉「大丈夫だ! 体に合わせて服のサイズも変化する!」

P「科学の力ってすげー!!」

キュピーン

菜々「……」

P「こ、これが……」

晶葉「十七歳の安部菜々……?」

P、晶葉(変わってねー)

菜々「ふっふっふ。ついにナナは永遠の十七歳となるときが来たんです!」

P「本当に十七歳?」

菜々「ほら! 見てください! この肌のつや!」

晶葉「むぅ……言われてみれば変わっているが……」

菜々「ああ、若さの力がみなぎる……。そうですよ、この感覚こそが十七歳なんですよ」

P「菜々で臨床実験はないな」

晶葉「そうだな。変化がわからん」

菜々「なっ! わからないんですか! この溢れるパワーが!」

P「菜々は元から十七歳に見えるしカワイイからあまり変わってないんだよな。
 髪型とかも一緒だし」

菜々「カワイイだなんて」テレテレ

晶葉「もっとわかりやすい子がいいな。おっと時間だ」

菜々「う、うわあああああああ」

キュピーン

菜々「十七歳に戻ってしまった……」

P「本当に戻ったのか……?」

菜々「そうですよ。みてください。この肌の……やっぱり見ないでください」

晶葉「仕方ない。他のアイドルで試そう」

志乃「うふふ……」

晶葉「ということで柊氏に頼むことにした」

P「高校生の志乃さんかぁ……。想像つかないな」

晶葉「うむ。一体どういう変化が起きるのか……さぁ、これを飲んで」

志乃「うふふ……」ゴクリ

キュピーン

志乃「ウフフ……」

P「……確かに若くはなってるな」

晶葉「なってはいるが高身長のせいでとても十七歳には見えん」

志乃「ウフフ……」

P「髪型とかも変わってないし……痩せているのは昔からか」

晶葉「だがこれで薬の効果は実証された。さきほどの菜々から考えても副作用はないだろう」

P「そうだな。ほかのアイドルでも試してみるか」

キュピーン

志乃「うふふ……」

P「あと余り飲み過ぎないようにしてくださいね」

志乃「うふふ……わかってるわよ」

友紀「なにやってんの? 若返る薬? 危なそー」ケラケラ

P「お前また酔ってるな」

晶葉「姫川氏ではわからなさうだな。他にいいじっけんt……被験者がいればいいのだが」

P「あまり意味変わってないだろ」

友紀「飲もうかなー。でもお酒飲めなくなるのはいやだなー」ケラケラ

P「そういえば年下の子に与えたらどうなるんだ?」

晶葉「十七歳まで強制的に成長する。その時点での未来予想図の姿になるぞ」

友紀「なに? 年下でもいいの? じゃあ丁度いい子がいるよ」ケラケラ

P「お、あれは……」

莉嘉「なにー?」

美嘉「莉嘉に何かよう?」

晶葉「なるほど。姉妹の妹のほうか。姉とも見比べられるし丁度いいな」

友紀「でしょー。姉と妹どっちのほうがでかいかわかるしさー」ケラケラ

莉嘉「この薬飲むとお姉ちゃんと同じ歳になれるの? 飲む飲むー☆」ゴクリ

美嘉「ちょ、莉嘉に変なもの飲ませないでよ!」

莉嘉「うわああああああああああ」

美嘉「莉嘉あああああぁぁぁぁぁ!!」

キュピーン

莉嘉「おっすおっすばっちし☆ リカだよ!」

美嘉「でかっ! でかっ!」

P「髪型は姉と同じなんだな」

晶葉「しかし姉妹でも結構成長に差があるな」

友紀「全体的に妹のほうが大きいね。特に胸とか」ケラケラ

莉嘉「お姉ちゃんより大きいしこれでコドモじゃないよねっ。
   Pくん! デートしよっ☆」

美嘉「で、ででででででーと!? なにいってんの! 莉嘉! あんたにはまだ早い!」

莉嘉「えー、だってお姉ちゃんより大きいよ? 背も……おっぱいも」

美嘉「おっ!? で、でかけりゃいいってもんじゃないのよ!
   お姉ちゃんは許さないからね!」

莉嘉「いーじゃん。お姉ちゃんだってPくんと部屋で二人っきりになったことあるんでしょ?」

友紀「ほう」

晶葉「ほう」

美嘉「あれは違う! あの時はほら、そのえーっと……プロデューサー!」

P「その通りだ」

美嘉「ちょっとおおおおお!?」

莉嘉「ならデートしてもいいよねっ!
   あれ、また体がわあああああああああ」

美嘉「莉嘉あああああぁぁぁあぁ!」

キュピーン

莉嘉「あれー、元に戻っちゃった」

P「残念だったな。また大きくなったらデートしような」

莉嘉「するー! お姉ちゃんは大きいからいつでもデートできるの?」

P「出来るよ」

美嘉「ちょっ」

P「する? デート」

美嘉「いや、そのあの」プシュー

友紀「ユデダコになって固まっちゃった」ケラケラ

晶葉「年少組に与えるほうが効果がわかりやすいな。他の子を探そう」

幸子「おはようございます! カワイイボクが」

P「幸子! これを飲め」ポイッ

幸子「はむ! さすがボク! 口でキャッチも簡単ですよ!」ゴクリ

幸子「あれ、なんだか体がうわあああああああ」

キュピーン

幸子「一体何が……こ、この鏡に映っているカワイイ女性は……!
   ボ、ボクだー!!」

P「ロングヘアー幸子か。成長するとロングになる風潮ってあるよね」

晶葉「しかし髪の毛のハネはそのままだな」

幸子「フフッ! どういうわけかカワイイボクが成長しちゃいましたよ!
   見てください! この美しいロングヘアー!」バサッ

P「綺麗な髪だな。ちゃんと手入れがされている」

幸子「当然です! カワイイですから!」

P「それ十七歳になる薬なんだよ」

幸子「なるほど。納得です! 三年後のボクもこんなに美しいんですね!」

P「だから幸子結婚しよう」

幸子「頼み事ですか! もちろん……結婚?」

P「十七歳だから結婚できる。幸子、結婚しよう」

幸子「けけけけけ結婚!? そんな大事なことを簡単に決めていいはずがないじゃないですか!」

P「そうだな。ちょっとお前がカワイすぎて混乱してたよ」

幸子「すみません。ボクがカワイイばっかりに」

P「ああ。今の発言は聞かなかったことにしてくれ」

幸子「えっ、で、でもいいんですよ! ボクは優しいですからね!
   結婚……あれ、体が……うわあああああああああ」

キュピーン

幸子「この鏡に映る見慣れたカワイイ顔は……そう、ボクです」

P「十四歳に戻っちゃったかー。これじゃあ結婚出来ないなー」

幸子「え、あ。そ、そうですね……」

P「まぁどんまい幸子!」

晶葉(遊んでるなぁ……)

P「雪美ー。大人になりたくないか?」

雪美「大人……?」

晶葉「これを飲めば十七歳になれるぞ」

雪美「Pは……飲んで欲しい?」

P「大人の雪美も見てみたいな」

雪美「ん……じゃあ飲む……」ゴクリ

キュピーン

雪美「P……」

P「でけぇ!!」

晶葉「こ、これは想像以上の成長だ」

雪美「そう……?」

P「身長170近くあるんじゃないか。これ。それでいて顔は小顔で体型は素晴しい」

晶葉「物憂げな表情と黒髪の長髪が彼女のミステリアスさをさらに引き出している」

雪美「……P、ちっちゃい」

P「ぐっ……。しかし本当に美しい……深窓の令嬢にふさわしい……。
 結婚しよう」

雪美「必要……ない」

P「えっ」

雪美「Pと……私は……魂で繋がってる……。大丈夫……どこにいても……誰と居ても……
   Pを……感じられる……。Pも……私を……感じて……」

キュピーン

雪美「……ね?」

P「そうだな。俺達は結魂してたんだな……」

晶葉「さすがに七年も成長するととすごい変化だな……。ふむ」



桃華「十七歳になれる薬……?」

P「ああ。どうだ、飲んでみないか」

桃華「どうせなら花嫁衣裳の撮影をしているときに欲しかったですわ。
   とりあえず一粒頂きますの」ゴクリ

桃華「で……ですのですのですのーーーー!!!」

P「!?」

キュピーン

桃華「ふぅ。お見苦しいところをお見せしましたわ」

P「おおぉ……」

晶葉「これはまたずいぶんと別嬪だな。身長は160程度だろうな」

P「しかし髪型は変わっていないというのにその立ち振る舞いから
 漂う気品さにただただ圧倒される……。これが櫻井家のオーラ……」

桃華「ウフフ、毎日ローズヒップティーを飲んだかいがありますわ」

P「桃華。俺と結婚しよう」

桃華「あら、跪いてそんなことされたら思わず答えたくなりますわ。
   でも覚えてといてくださいまし。Pちゃま……いえ、Pさん」

P「なんでしょうか」

桃華「あくまでここにあるのは未来のまやかしでしかありませんわ。
   この通りに成長するとも限りませんの。
   ですからもしもその胸に宿るそれが消えることがないのであれば
   再びわたくしが十七になったときに求婚してくださいな。
   そのとき、わたくしはここで言えなかった答えを必ず言いますの」

P「はい……」

桃華「う……もう効果切れのようですわね……。
   で、ですのですのですーーーー!!!」

P「!?」

キュピーン

桃華「ふぅ。少しだけのタイムトラベル、楽しかったですわ。
   ありがとう。池袋さん」

晶葉「いや、こちらもデータが取れるから礼をするならばむしろ私のほうだ」

桃華「うふふ。それではPちゃま。わたくしは覚えておきますわ。今日のことを」

P「ああ……桃華があれほど素晴しい女性に成長するなんて……楽しみだ……」

晶葉(なんかすごい約束させられてるけどいいのかな)

P「よう。ありす」

ありす「どうかしましたか?」

晶葉「実は十七歳になれる薬を開発してね」

P「ありすに飲んでもらおうかと思って」

ありす「飲みません」

P「えっ」

ありす「飲みませんよ」

晶葉「ふむ。そうか。なら他の人を探そう」

P「いいや、まてまて。なんで飲まないんだ。晶葉の薬は完璧だから
 変な副作用なんてないぞ」

ありす「いえ、彼女の発明品を疑うことなんて元からありえません。
    例えその原理が不明でも池袋さんのなら安心して使えます」

P「ならなぜ飲まないんだ」

ありす「例えば私がそれを飲んで十七歳の成長した姿になったとします。
    その姿を見て、Pさんはこう思います。
   『ありすは十七歳になるとこういう風に成長するのか』と」

P「まぁそうだな。十七歳になる薬なんだからな」

ありす「それを見たプロデューサーはこれからずっと
   『今のありすはどうであれ十七歳になればああなるんだ』という
    一種の前提が生まれます。そんな保障はどこにもないというのに」

P「……」

ありす「そうなればPさんはこれからずっと私を通して十七歳の私という結果
    を見続けることになります。同時にそれはその結果になるべく努力を
    強いられるということになるんです。
    もしもその結果が良い物でなければ、つまりアイドルとしてふさわしくない
    姿をしているものであればその結果を回避する努力をしなければなりません」

晶葉「……」

ありす「しかし私にはどうすれば正解かわかりません。ゴールが示されていても
    そこまでの道のりがわからないんです。いつも通りの道を歩いていたはずなのに
    ゴールが見えるせいでちょっと近道してしまって失敗したりするかもしれないんです。
    そして違うゴールに辿り付き、その姿を見たPさんは『おかしいな。あの時は
    もっと良かったはずなのに』と落胆します」

P「そんなことはない! お前がどんな姿であれ俺は……」

ありす「Pさんはそうかもしれません。でも私は違うんです。
    アイドルとして、女性として常にPさんの期待に答えたいんです。
    だからPさんには結果を見て欲しくありません。
    今のままの私がゆっくりと成長し、十七歳になるまでを見て欲しいんです。
    そしてその過程もひっくるめて愛して欲しいんです」

晶葉(ん?)

P「ありす……」

ありす「ですから私はその薬を飲めません。
    Pさんの横で一緒の年月を重ね、先の見えぬ未来を見たいからです」

P「……うん。わかった。悪かったな。ありす」

ありす「いえ、そんな……。それで、あのPさん……」

P「晶葉。行こうか」

ありす「……」

晶葉「お、おお。助手がそれでいいなら私はいいが」

P「なにか問題が?」

晶葉(橘にすごい睨まれている……)

晶葉「……この薬は破棄する」

P「なんでだ!」

晶葉「……未来というのがわからないから人は努力出来るんだよ」

P「……?」

晶葉「あー……助手は橘と遊んでいろ」

P「そうか。わかった」

晶葉「未来というのが良いものであれば人は安心するものかと思っていたが
   それは私の思い過ごしだったのかもしれないな。
   ……しかしでもちょっとだけ」

キュピーン

晶葉「……牛乳でも飲むか。より良い未来を目指して」

以上
オチのわかっている推理小説なんてつまらないだろ?
つまりそういうこと

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橘ありす(12)

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