照「京ちゃんなんて知らない」京太郎「」 (720)



※京太郎スレ。苦手な方はここでブラウザバック

※エタらないこと目標

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「そっか……もう明日は東京なんだね」

「……見送り来て欲しいの?……ふふっ、京ちゃんも強情だね」

「まあでも……やめとく。……薄情者?お互い様だよ」

「わたしは結構心配してるんだよ?……そう言うと思った」

「わたしだって、……まあ、いいや。向こうの人に迷惑かけちゃダメだよ」

「……またそうやって。とにかく、お姉ちゃんをよろしくね」

「……うん。……ごめんね。……そう言ってもらえるとわたしも気が楽だよ」


「じゃあ、またね。……遅れると悪いでしょ?……だから心配するんだって」

「……うん、また連絡するから。京ちゃんも連絡してきてね。約束だよ」

「おやすみ、京ちゃん」


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京太郎(慣れない一人暮らしでドタバタしてたけど、なんとかこの日を迎えられた)

京太郎「来たぜぬるりと、白糸台……っ」

京太郎(……なんか違う気がする)




ガヤガヤ ヤイノヤイノ

京太郎(新入生の山また山の中で、田舎っぺがデカい図体を持て余しております)

京太郎(受験で来てるからなんとなくの勝手はわかるけど)

京太郎(知り合いがいるとこういう時心強いんだけどなあ……まあ、今日は頑張ってみよう)

京太郎(案内によるとクラス分けが掲示板に…あれかな)

京太郎「すみませーん、ちょっと通りまーす」


京太郎(さて、俺の名前は……あったあった)

「ちょっと!ちょっとそこの、でっかいやつ!」

京太郎(クラスと番号確認したら、靴箱に向かって……)

「そこのでっかい金髪!」

京太郎「あ、俺か」

「この淡ちゃんを無視するなんていいどきょーしてるよね!」

京太郎「別に無視するつもりじゃ……ってそっちも金髪じゃねーか」


「別にいいじゃん。っていうか見終わったんならどいてくれる?」

京太郎「……ああ、悪い悪い。掲示板見えなかったか」

京太郎「名前探してやろうか?あわい、あわい……」

淡「なんでわたしの名前知ってるの!? もしかしてすとーかー?このへんたい!へんたい!」

京太郎「お前自分で名乗ってただろうが。ああ、字がわかんないから名字言ってくれれば」

淡「なんで知らない人に名前教えないといけないの?やっぱりすとーかー?」

京太郎(め、面倒くせえ……)





京太郎(式辞は滞りなく済んで、教室でクラスの顔合わせ)

京太郎(話しやすそうな明るい担任だし、クラスもいい奴が多そう。なんとかやっていけるはず)

京太郎(さて、問題は)チラッ

淡「……」

淡「なんでこっち見んの」ムスッ

京太郎「お前と同じクラスで良かったと思って」

淡「なにそれ」ヒキッ

京太郎「いや、変な意味じゃねーよ」


京太郎「違うクラスでろくに話さないまま勘違いが続くとか絶対気まずいだろ?」

京太郎「それよりは関係改善っていうか、仲良くなれる可能性があった方がいいじゃん」

淡「……よくわかんないけど」

京太郎「まあ、だからよろしく頼むぜ」

淡「……ふーん」

淡「この淡ちゃんと仲良くなろうだなんて、100年早いよ!」

京太郎「バカお前、声デカいって」

淡「バカってなんだバカって!」

担任「そこの金髪二人、私語は慎んでー」

京太郎「す、すみません」

担任「あと大星、いま先生がしゃべってるから頬杖つくのはやめてね」

淡「……はーい」

京太郎(この時大星、意外に素直……)




「きりーつ、礼」

「「ありがとうございました」」



京太郎「大星、お前部活とか入るのか?」

淡「……なんでバカにそんなこと教えないといけないの?」

京太郎「俺の名前はバカじゃねーぞ」

淡「だってバカって言った方がバカなんだよ!あとそこはれでぃーのヒミツだから!」ドヤァ

京太郎「なんだよそのドヤ顔」

淡「ヒミツを知りたがるなんてやっぱりすとーかーだ!またねへんたい!」

京太郎「そういうこと言うな……って行っちまったか」


京太郎(テストもあるし麻雀部も明後日かららしいし)

京太郎(今日は大人しく帰るか)



スタスタ

京太郎(三年の教室にいきなり顔出すほど度胸ないし)

京太郎(さすがに入学初日に目をつけられる、とかそんな展開は遠慮したい)

京太郎(だいたい俺にも心の準備が必要ってなわけで)

京太郎(……忘れられてたりしたら凹むなあ)

京太郎「……照さん」


「あっ」


京太郎「えっ」




京太郎(あ…ありのまま今起こったことを話すぜ!)

京太郎(『おれが照さんのことを考えてたら照さんが階段から降りてきた』 )

京太郎(ご都合主義だとかボーイミーツガールとかそんなチャチなものじゃ断じてねえ)

京太郎(もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…)



照「……」

スタスタ

京太郎(何事もなかったように歩き出した、だと…)

京太郎「ちょ、待ってください照さん!」


スタスタ

京太郎「ま、麻雀部に顔出すんですか?」

照「……今日は休み。一年も説明を受けたはず」

京太郎(あ、しゃべってはくれるんだ)

京太郎「照さん俺ですよ俺。わかりませんか?」

照「私に自分のことを俺なんて言う知り合いはいない」

京太郎(そうだったかもしれないがー!)

京太郎「俺、須賀京太郎です。昔遊んだの覚えてませんか?」

ピタッ

京太郎(あ、止まった)


京太郎(振り返った照さんは誰がどう見ても無表情で、でもそれが懐かしさを俺に覚えさせた)

京太郎(昔から照さんはそんな顔してて、でも実はいろんな感情をその奥に隠していた)

京太郎(俺だけが知ってるなんてそれはただのうぬぼれだけど、でも幼馴染みと呼ぶには十分な間柄だと思ってきた)

京太郎(会えた時にかけたい言葉をたくさん準備していたはずなのに、頭は真っ白で何も出てきやしない)

京太郎(……緊張してるな俺。そして嬉しいんだ)

京太郎(またその顔が見られて……)





照「京ちゃんなんて知らない」

京太郎「」





京太郎「いやどう考えても知ってる反応じゃないですか!」




照「……間違えた」

京太郎「何をですか」

照「知らない人のふりをするつもりだったのに」

京太郎「ひどくないですか」





照「とにかく私とあなたは知らない人同士。いい?」

京太郎「あっはい……ってなるわけないですよね?」

照「じゃないともう二度と話さない」

京太郎「……何か理由があるんですよね?」

照「……」

京太郎「……分かりましたよ。照さんの頼みなら」

照「それもダメ」

京太郎「……はい?」

照「知らない人が気軽に名前呼びなんてしない」

京太郎「照先輩」

照「だめ」

京太郎「……宮永先輩」

照「……許可する」

京太郎「他人行儀で気持ち悪いんですが」

照「他人だから、須賀くん」

京太郎「須賀くん……」


照「……図書室に寄ってから帰るから」

照「先輩のテスト前の勉強に割って入ったりしないよね」

京太郎「…心得ております」

照「よろしい」スタスタ


スタスタスタ ピタッ

クルッ

スタスタ

京太郎「…道、間違えたんですか」

照「……こっちの方が近いから」

京太郎「……そういうことにしておきます」



ピタッ

照「……」

京太郎「て…宮永先輩?」

照「……なんでもない」


スタスタ スタ…


京太郎「…俺も帰ろう」


今日はここまで。

週三くらいで投下したい所存ー


こんばんは

書き溜め消化しつつ投下していくのでー




ざわ… ざわ…
ざわ… ざわ…

京太郎「失礼しまーす」ガラッ

「「「……」」」チラッ

京太郎(えっ何この人数)


淡「……」ジトー

京太郎(大星がホールの端からこちらを睨みつけていらっしゃる)

京太郎(……参ったなこれ)




「新入部員の皆さん、ようこそ白糸台高校麻雀部へ」

「部活紹介などで知っているとは思うが改めて自己紹介しておこう」

菫「麻雀部部長、弘世菫だ」




菫「知っての通り私たち麻雀部は、インハイ3連覇を目指して日々励んでいる」

菫「100人越えの部員の中で大会に出れるのは五人、個人の枠もあるが少人数しか全国の舞台には出られない」

菫「できればレギュラーの座を狙って研鑽を積んでもらいたい」

菫「我々三年が安心して引退できるようにな」


菫「ただレギュラーになれなくてもできることはたくさんある」

菫「牌譜の分析や卓の手入れ、部室の清掃、その他もろもろの雑用」

菫「下級生をこき使うつもりはないが、どうしても必要な仕事があるということを理解してもらいたい」

菫「麻雀の力をつける上でも、下積みが必ず役に立つ」

菫「なにより白糸台がトップを走り続けるために、どうか君たちの力を貸してほしい」

菫「不服な者は今引き返した方がいい。むしろそうしてくれ」

菫「惰性でやれるほど甘い部活ではないからな、少なくともここ白糸台では」






菫「さて気がついている人も多いと思うが」

菫「うちの麻雀部は一軍と二軍に分かれて活動している」

京太郎(え…)

京太郎(そんなの聞いてない!)

菫「当然一年は基本的に二軍スタートだ」

菫「わたしは仕事柄こちらに時折顔を出すこともあるが」

菫「一軍と二軍が打つ機会は少ないといっていい」

菫「強者に挑戦したければまずは二軍で実力をつけることだ」

菫「君たちと対局できる日を、一軍部室で待っているよ」



京太郎(あれ、麻雀部なのに照さんに会えない……だと?)



菫「さて、今日は顔合わせ替わりに新入生同士で自由に打ってもらいたい」

菫「親交を深めるいい機会だ。自己紹介なども兼ねてやってくれればと思う」

菫「少数かもしれないが初心者だったり卓にはあまり触れたことのない者もいるだろう」

菫「優しく教えてやってくれ。仲良く頼むよ」



ガヤガヤ

京太郎(やっちまったなぁ)ガックシ

京太郎(下調べはぼんやりと、体験入学も遠いからって行かなかったのは失敗だったか)

京太郎(……頑張るしかない)


淡「ちょっと!」

淡「なんでここにいるの!」

京太郎「またお前か……来ると思ってたけど」

淡「れでぃーのヒミツなのによくも…やっぱりバカはすとーかーだったんだ」

京太郎「いや不可抗力だし」

淡「ふかこーりょく?なにそれ」

京太郎「俺にはどうしようもないことだってこと。大星が麻雀部に入るなんて知りようがないし」

淡「ふーん……」


淡「淡ちゃんのわからない言葉を使うなんて、で、れ、えっと、れがしー?」

京太郎「デリカシーな」

淡「そうでりかしーがない!……えっと」

京太郎「どうせ俺の名前も覚えてないんだろ」

淡「へ?……ふん、どうせバカの名前なんて覚えるひつようなんてな痛っ!」ズビシッ

菫「さっきから聞いていれば馬鹿馬鹿馬鹿って、馬鹿者はどっちだ」

淡「あ~……スミレ先輩のデコピン痛ぁい」

京太郎(えっなにこのフランク)


菫「えっと……須賀、だったな」

京太郎「は、はい」

菫「あ…大星とは知り合いか?」

京太郎「あ、いえ、クラスメートってだけで」

菫「そうか……こいつの操縦役がいると助かるんだがな」

京太郎「いやぁ、勘弁してくださいよ……ところでどうして名前を」

菫「部長が部員の名前覚えていたらおかしいか?」

京太郎「……ごもっともでございます弘世部長」

菫「……フフッ。冗談だ。さすがにまだ全然覚えてないさ」

菫「大星に関しては体験入学に来てたからな。あれだけのキャラとインパクトを残せば嫌でも覚える」

京太郎「インパクト……?」

菫「ああ、こいつの打ち方なんだが……まあこれは対局してのお楽しみにしておくといい」

京太郎「は、はぁ……」

菫「大星、彼の名前は覚えただろうな」

淡「……須賀」

菫「……まあいい。部員同士が馬鹿馬鹿言い合うよりはマシだ」

菫「須賀と話が終わったら行くから少し待っててくれるか」

淡「しょーがないなー」



菫「そして須賀だが……君は体験入学に来てなかったようだし、話さなければいけないことがあった」

京太郎(……まさか勘づいたとか!)

菫「……そう身構えるな。大した話じゃない」



菫「ここに来て何か気がついたことはなかったか?」

京太郎「ああ……男子がいないってことですかね」

菫「そうだ。全くいないわけじゃないんだが、あいにく幽霊部員ばかりでね」

菫「僭越ながら女子である私が部長をやることになってしまっている」

京太郎「実績からすると妥当じゃないんですか」

菫「ま、まあ……それなりの、自負はあるけれども」

京太郎(凛としたクールなイメージの部長が少し照れてる)

京太郎(これはもしや貴重な場面なのでは?ボブは訝しんだ)

菫「とにかく」コホン

菫「そういう風潮が続いて今年の男子部員は君だけになりそうだ」

菫「おそらく団体メンバーは揃わない」

京太郎「個人戦だけの参加で構わないか、ということですね」

菫「話が早くて助かるよ」

菫「女ばかりで少々居心地が悪いかもしれないが……男手がいるとこちらとしてもとてもありがたい」

京太郎「簡単に逃げたりしませんよ。俺はこのために白糸台に来たんですから」

菫「いい返事だ。……なるほど地元じゃないから体験入学には来なかったんだな……出身は」

淡「せーんーぱーいーもーまちくだびれたー」

菫「……仕方ない、よもやま話はまたいつかにしよう」

京太郎「はい、よろしくお願いします」

菫「ああ、よろしく」フッ





京太郎(さて空いてる卓は……っと)

京太郎「失礼、その対局終わったら入ってもいい?」

「いーよぉ、ちょうど三麻おわったばっかりだし」

「……よろしく」

「よ、よろしくお願いします」

京太郎(さて、力試しといきますか)



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菫「ただいま」

誠子「お疲れ様です」

菫「これくらいは疲れたうちには入らないよ……こいつの世話は除いて」

淡「じゃじゃーん!スーパーノヴァ淡ちゃん降臨!」

尭深「部長、お茶飲みますか?淡ちゃんも」コトン

淡「飲む飲むー!さっすが尭深先輩気が利くー」

菫「気が利くって年上に使うべき言葉じゃない……ありがとうな尭深」

尭深「どういたしまして」

誠子「新入生はどうでしたか?」

菫「……今のところ問題児はこいつだけだ」

淡「ぶー、スミレのいじわる」



淡「あわ~」ホッコリ

誠子「尭深の淹れた茶で目一杯リラックスしてますねこの子」

誠子「自分が新入生の頃はこんなに落ち着いていられませんでしたよ」

菫「……普通はそうだ」

菫「私も麻雀推薦だったから自分の実力に自信というものはあったが」

菫「それでも怖気付くものだ」

尭深「淡ちゃん、体験入学の後も顔出しに来てたから……」

菫「私は許可したつもりはないんだが」

菫「ただ淡の実力は……間違いなく本物だからな」

誠子「私危うく負けかけましたからね」

菫「亦野はもう少し危機感を持て……照が同卓だったのが幸いだった」

誠子「…すみません」


淡「ねえねえ、テルーはいないの?」

尭深「先輩は奥で読書してるから邪魔しちゃダメだよ」

淡「えー、今日はテルーに勝ちに来たのに!」



誠子「一度はあんな大口叩いてみたいですね」

菫「同感だ」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

照(……どうして私は本を読んでいるんだろう)

照(内容は全然頭に入ってこないのに)

パタン

>ただいま

>じゃじゃーん!


照(菫の声…と)

照(淡、大星淡ーー面白い打ち方をする新入生)

照(いや、あれは“打つ”って言えるのかな)

照(……私が言えることじゃないけど)




>テルーはいないの?

>邪魔しちゃダメだよ。


照(私も出迎えるべきだったんだろう)

照(部長の仕事は私には荷が重いし菫が適任だと思うけど)

照(…インタビューとか頼まれたことはこなしているつもりだけど)

照(苦手なことは他人に任せて)

照(……結局、逃げてるだけ、なのかな)




照(どうしてこんなことが急に気になるんだろう)



菫「そうそう……ちゃんと来てたよ、例の男子部員」

照(!)

淡「あの金髪、えっと……そう、須賀はね!私にずっと付いてきてるすとーかーなんだよ」

菫「違うな」

誠子「違うんだ」

尭深「違うんだね」

淡「なんでよ!信じてよ!」



照(……どうしてここに来たの、京ちゃん)




>そもそも淡も金髪だろ?

>細かいこと気にするとモテませんよせんぱーい

>おま、そんなこと言うのはどの口か!

>きゃー、先輩がいじめるー

予定より長引いたので今日はここまで

淡はクラスメートでもなんでもない予定だったんだがこの始末
!が多かったりやたら固かったり癖が強いかもしれませんが勘弁してね

おはようございます

チームの勝ち抜き制は把握してました
イメージとしてチーム作れるレベルのメンバー=一軍
その他有象無象が二軍という描写だったんですが
よく考えると一軍=虎姫なんすね、やらかすなぁ…

ちょっと整合性考えつつ今晩昨日の残りまで投下します

こんばんは

上の件ですが一軍、二軍ではなくて部室が大きく分けて二つあって
第一部室…虎姫含めチームに入れるレベルの部員たちが使う
第二部室…その他もろもろ
という感じの設定で

校内とメディアで一軍とかの呼称が違うとか考えたんですがそれはそれで面倒なのでパス
その辺の菫さんのセリフは脳内変換してください、よろしくです

白糸台のチーム作りの事情とかなかなか謎も多いんですが、本題じゃないのでこのSSではスルーします

ではちょこっとだけ



菫「……照」

照「」ビクッ


照「……なに?」

菫「……お前のその変わり身にはほとほと感心するよ」

菫「尭深のお茶だ、冷めないうちにな」コトン

照「…ありがとう」

菫「余程集中していたのか?別に抜き足差し足で来たつもりじゃないんだが」

照「…昔のこと考えてた」

菫「妹のことか?」

照「……そんなところ」



ズズッ

菫「……お前には感謝しているよ」コトン

照「急に言われると気持ち悪い」

菫「ひどいな」

照「……私は何もした覚えがない」

菫「今年も部員は大勢入ってくれた」

菫「大勢いさえすればいいとは言わないが……ともかくいいことだろう」

菫「入部動機で一番多かったのはなんだと思う? 」

菫「『宮永照がいるから』だ」

菫「『全国での実績があるから』『強い部員の中で自分を鍛えたいから』 これもお前のおかげだ」

照「……その人たちは何も知らない」

菫「知ってどうなるとも思わないがな」



菫「なあ照」

菫「お前は麻雀については日本一の高校生だ」

菫「おそらくプロに行ったって通用するさ」

菫「だがそれ以外は普通の女子高生だ。まだ子供だ」

菫「何かうまくいかないことがあっても、それで恥じることはない」

照「……」

菫「……偉そうな口をきいてすまなかったな、部外者のくせにと思ったかもしれんが」

照「菫のそういうところ、きらいじゃない」

菫「…そうか」



バタッ

菫「なんだ、今日は菓子が全然減っていないじゃないか」

菫「これは雪でも降るかもしれないな」

照「…今から食べる、何か取って」

菫「ほら、ポ◯キー」

照「うん」

照「……」モックモック




照(…甘い)

照(甘いなぁ…)

本当に短いですがここまでー
次回京ちゃんモブと対局、大まかな雀力が判明します
雀力ってなんだ

こんばんは
カーリング見たりなんだりしてました

途中まで書いてるので風呂入ってからぼちぼち進めます




「須賀くんはー、あの金髪の子と知り合いなのぉ?」

「……」トン

京太郎「ああ、クラスで席が隣なんだよ」トン

「あ、あの人ちょっと怖い、かも…」トン

京太郎「そうか?あ、それポン」カチャ

京太郎「こう、言っちゃあ悪いけどどこか抜けてるっていうか」トン

「そっかぁ、須賀くん体験入学いなかったもんねぇ」

「なんかこう、ず、ズバーン、ドカーン!って」トン

京太郎(何やったんだ大星)


京太郎「そういえばインパクトがある奴だった、って弘世部長も」

「……す……さま……」ボソボソ

「あっ、地雷踏んじゃったねぇ」

京太郎「えっ」

ガタッ

「さっき!部長と!菫様とお話ししてたよねっ!名前まで呼んでもらって!」

「ひぃっ!」

京太郎「ぐえっ、首、首締ま…」

「はいストォップ」チョップ


「……すまない。菫様のこととなると、こう……熱くなってしまって」

京太郎「あぁ、うん、気にしないで(えぇ……)」

「だ、大丈夫、ですか…?」

「この子重度の菫様キチだからねぇ」

「……否定はできない」

京太郎「えぇ……」

京太郎(なぜキチと言われて誇らしげなのか、小一時間問い詰め……いや、やっぱいいわ)

京太郎(延々と語られる図しか見えない)

「部長さんはファンも多くて、し、親衛隊みたいなものがあるとかないとか」

京太郎「……まあ、わからないでもないけど」

「そうか!君も私と親衛隊に入らないか!」パァッ

京太郎「い、いや…男子一人とかきっと変な空気になるし……」

「……そ、それもそうか。残念だな」ズーン

「気にしない方がいいよぉ、さっきも繰り返した光景だしぃ」

京太郎「おぉ、もう……」



「ま、とりあえず◯◯ちゃんのチョンボって事だけど」

「練習だしこの局ノーカンってことでいいよねぇ」

「「異議なし」」

「……面目ない」

「じゃ、気を取り直して打とぉか」

「り、了解です」

京太郎「うっし、やるか」




京太郎(さて部長キチさんの親で東一局、俺は南家)

京太郎(卓で打つのは久しぶりだけど……まあ、さっきの局でちゃんと“感じ取れた”)

京太郎(上家のキチさんと下家の子は、なにかオカルトめいた力を持ってる)

京太郎(発動はしてないみたいだけど……おっと配牌は……四向聴かな、うーん)


京太郎(さっきの三麻はキチさんトップ、ふわふわした感じの対面の子が続いて下家の人がハコ寸前)

「ポン!」「チー!」

京太郎(普段のしゃべりはビクビクしてるけどすごく元気な発声、積極的な鳴き)

京太郎(さっきも二鳴きしてたし…でも鳴きをトリガーとして何か変わってるとか、そんな気配はない)

京太郎(とりあえず上がりたいってとこなのかな……ただ捨て牌も理牌もちょっと素直なんだよなあ)






「ツ、ツモ!タンヤオのみ、300・500です!」



京太郎(……ピシリ、と)

京太郎(何か来た)

京太郎(じわっと、彼女の中のゲージがぐっと溜まったようなそんな感触)

京太郎(要注意だな)



「そ、それロン!3900!」

「はぁーい」チャラッ

京太郎(連続で和了か…俺の親が流れた)

京太郎(今度は面前だったし、やっぱり鳴きは直接関係ない)

京太郎(安いから助かってるけど次は彼女の親番……このままはマズいな)



京太郎(さっき感じた感触)

京太郎(相変わらずゲージはいっぱいのまま)

京太郎(たださっきキチさんが鳴いた時…その後数巡収まった感があった)

京太郎(突破口はそこか……手牌は……悪くない)


京太郎「ポン」

「……」

京太郎(やはり鳴くと力が薄れていく)

京太郎(ズレると消えるってことは、牌の引き方に影響を及ぼす類のものだってこと)

京太郎(あれだけ積極的だった鳴きを全然しなくなったことから考えても)

京太郎(『和了ると有効牌が引きやすくなる』)

京太郎(たぶんこんな感じの力だろう)

京太郎(最初やや強引に和了ったのも辻褄が合う)

京太郎(早い段階でずらせたのは本当に良かった…おっ)

京太郎「ロン。役牌ドラ2の3900」

「は、はい…」チャラッ

「うーん、いいようにやられてるねぇ」

京太郎「よし、この調子!」





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「それで、勝ったんだ」

『おう。……なんでわかったんだ?』

「わかるよ。京ちゃんの声ウキウキだし」

『マジか……浮かれてるつもりじゃないんだけど』

「ふふっ、大丈夫だよ」

「ちゃんと通用するってわかったんだもん、少々喜んでもばちは当たらないよ」

「それに……」

『それに?』

「…ううん、なんでもない」




「……そっか。お姉ちゃんがそんなこと…ごめんね」

『咲が謝んなよ。照さんにもきっと……事情があるんだと思う』

「京ちゃん……」

『だから俺は決めた。照さんと打てるようになるまで強くなってみせるって』

『もともとそういう覚悟はできてたし』

『咲とも約束したからな。“照さんと仲直りさせる”って』

「……もう六年も前なんだね」

『照さんも驚くはずさ…“なんだこのでっかい金髪!”って』

「ふふっ、なにそれ」

「……ほんと京ちゃんって、お姉ちゃんに甘いよね」

『え?』

「昔からそうだよ。お姉ちゃんが好きなお菓子絶対持ってくるし」

「お姉ちゃんが言うことはほぼ無条件で聞いてたし」

『そりゃあまあ……麻雀の先生だったわけだし』

「それにしたって優しすぎると思うよ?」

『こう、なんだろ……照さんは俺にとって“憧れ”の存在ってところ?』

「なんで疑問形なの?」

『いや、あまり深く考えたことなくてな』

「…憧れ、かぁ」

『なんだよ、語彙不足で悪かったな』

『文学少女の宮永さんならもっと上手く表現できるんだろうなー』

「文学少女だなんて、そんな、恥ずかしいよ…」

『そっちかよ』




『そういえばGWだけどさ、すまん』

『麻雀部の校内合宿があるらしくてさ、そっちには帰れない』

「そっか…しょうがないよ」

「そうだ!おばさんが連絡がなくて心配って」

『えー…まだ10日も経ってないのにさー』

『てかなんで咲に愚痴ってんだよ母さん…』

「そう言わずに…ね?」

『…まあ、考えとくわ』

「ふふっ」

『なんだよその笑いは、頬つつくぞ』

「なんでもないよ。…つつけるものならつついてみてよ」

『こやつ…咲のくせに生意気な』




ふふっ、京ちゃんってやっぱり甘い。

こんなちんちくりんな私にだって。


あぁ、京ちゃんに言いたい。
言わなきゃいけない。

でも、今はきっとその時じゃないの。
ちゃんと形にしてなきゃ、だめ。

だからもう少しだけ、この胸にしまっておくよ。


「また連絡してね、京ちゃん」

『おう。咲も元気でな』

ここまでです。
日付またいだだらしない投下ですまない…

忘れてたけど一箇所訂正
>>53
「妹のことか?」→「妹さんのことか?」

早く京照いちゃいちゃさせたい

こんばんは
気を抜くと数日すぐに経っていけない
ぼちぼち投下していきます

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京太郎「おはようございまーす」

「あーちょうどいいところに」

「須賀くんおはようさん。来て早々悪いけど仕事頼まれてくれる?」

京太郎「あー了解っす。ちょいとお待ちを」

京太郎(部活が始まって早2週間。男子一人ですがそれなりに上手くやってるつもりです)

「須賀くんも今日はお泊りするの?」

「いやいやいや、言葉には気をつけて?須賀くん男の子だよ?誘ってんの?」

「ないわー、そんなエロエロの思考するのあんたぐらいだわー」

京太郎(……こんな会話してますが基本優しい先輩方です)

京太郎「…それで、お仕事というのは?」

「あ、ほらー須賀くんドン引きしちゃってるよ」

「早く逃げた方がいいよ、この子男日照りだし重いしメンヘラだし」

「人に勝手に属性盛るのやめろよコラァ」

キャピキャピ

京太郎(……頑張れ俺)




京太郎(買い足した食材もろもろを運ぶだけの簡単なお仕事です)コツコツ

京太郎(にしてもこう…菓子の多さ)

京太郎(というか9割方菓子なんじゃ)


バッタリ

京太郎「あ……」

京太郎「おはようございます、部長」

菫「ああ、須賀君か。おはよう。早いな」

菫「その荷物は…」

京太郎「ああ、〇〇先輩から頼まれまして」

菫「そうか、持って来てくれたのか。助かるよ」

菫「ほら、半分貸して」

京太郎「え?……いやぁ、先輩に持たせるなんてそんな」

菫「どうせ部室に行くんだ。それに後輩に大量の荷物を持たせたままだなんて他の部員に示しがつかない」

菫「大した重さじゃないんだろう?私のためと思って持たせてくれ」スッ

京太郎「…そう言われると断れないじゃないですか」

菫「物は言いようだ」フフン






菫「…だからまあ、一年はこの合宿でようやく第一部室行きを狙える、というわけだ」

京太郎「道理で大星がこちらに来てたわけですね」

菫「ああ、特待生とはいえそこは平等にな」

京太郎「でもあいつはかなり打てるんでしょう?」

京太郎「こんなはずじゃなかったとかなんとかブツブツ言ってましたけど」

菫「はぁ……これは説教が必要だな」

京太郎「え、これ俺がチクった形になってません?」

菫「心配するな、君の名は出さない」

京太郎「あー…くれぐれも穏便にお願いします」

菫「ほう、たいそう優しいじゃないか」

京太郎「まあ腐ってもクラスメートなんで」

スタスタ



菫「…もしかしてまだ大星と打ってないのか」

京太郎「あー…なんかタイミングが合わなくて」

菫「まあいいさ、合宿中に手合わせさせるよ。…さて」

菫「到着だ。ようこそ第一部室へ」ガチャ

京太郎「……失礼しまーす」

菫「食材は奥の方…そうそっちだ。冷蔵庫があるからその辺に置いててくれ」

京太郎「了解です」ガサガサ

菫「あー、個人の私物も置いてあるから漁ったりするなよ」

京太郎「しませんよ!」

京太郎(そんなこと言われると気になるだろ!いい加減にしろ!)




京太郎(冷蔵庫はこれ、か……じゃこの辺に)トスッ

京太郎(…見間違いじゃなければ菓子の在庫はまあまあある気がするんだけど)

京太郎(これはお茶缶、まあわかる)

京太郎(…立てかけてある釣竿はなんだ?)




>ガチャ

京太郎(…だれか来た)

京太郎(挨拶だけして早々に退散しよう)

京太郎「部長ー、置いときました、よ…」

照「……」

京太郎(…てる、さん)




菫「なんだ、来てたのか」

照「…今来たところ」

チラッ

京太郎(これ目で合図されてる?)

京太郎「…はじめまして宮永先輩、須賀京太郎です。よろしくお願いします」

菫「ああ照、ほら例の男子部員だ。〇〇に頼んでた菓子、ここまで持ってきてもらったんだ」

照「」ピクッ

照「そう…」

照「ありがと」

京太郎「どういたしまして」

菫(……ほう)

ここまでです
次は調子良ければ今晩
遅くとも金曜夜には来ます

こんばんは
キャラ増やすと収拾つかなくなる(断言)
大勢動かすには実力不足だと思うので大人しく
では投下していきます


京太郎「……それじゃ俺はそろそろ戻ります」

菫「もっとゆっくりしていっても構わないが?他のメンバーもそろそろ来るだろうし」

京太郎「いえ……荷物持って来ただけですし、それに」

京太郎「この部室には実力でまた来たいと思います」

菫「そうか……漢だな」

京太郎「そんな大したものじゃないですけど」

京太郎「先輩、……また来ます」

照「……」




照「……頑張って」


京太郎「……!」

京太郎「はい!」




ガチャリ

菫「爽やかな青年だな」

照「……よくわからない」

菫「そうか」


照「……」

菫「照、お前」

ガチャ

誠子「おはようございます、遅くなってすみません!」

尭深「おはようございます」オズオズ

照「おはよう、二人とも」

菫「おはよう」

照「……」

菫(まあいい、後にしよう)

菫「よし、揃ったことだし軽く打ち合わせしておこう。今日から忙しくなるしな」

菫「では日程の確認からだが…」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

淡「うわっ、朝から須賀だ」

京太郎「いつも朝一番会ってるだろうが」

淡「だからこそ!せっかく朝から麻雀なのにそこに須賀がいるのが納得いかない」

京太郎「麻雀部!俺麻雀部なんだけど」

「はいそこの金髪コンビうるさいよー」

淡「…怒られてやんの」ボソボソ

京太郎「お前もだよ大星」ボソボソ

淡「……だいたいいっつもあんたとコンビって言われるの嫌なんだけど」ボソボソ

京太郎「知らねー全く知らねー」ボソボソ

淡「金髪揃ってるのがいけないんだ……染めてきてくれない?」ボソボソ

京太郎「無茶言うな」ボソボソ



「さてゴールデンウィークということで、お待ちかねの校内強化合宿の始まりですー」

「事前にも説明してるけど、この合宿は第一部室のメンバーとも合同、打つ機会もあるので是非活用して実力を磨いてくださーい」

「あと特に三年・二年の子、例年通りだけど、合宿中の個人戦での上位者には第一部室行きのチャンスがあるから、ここは共に頑張りましょー」

「麻雀のことはそれくらいで、あと合宿自体の説明も一応しとくねー」

「部屋割りは事前に配った通り…といっても学年ごとにいくつか部屋に振り分けただけなんだけど」

「あー、あと須賀くんはどうするんだっけ?」

京太郎「あ、今日はとりあえず帰る予定にしてます」

「りょーかい。一応泊まれる個室は確保してるみたいだから、遠慮なくね」

京太郎「ありがとうございます」



淡「ちょっと、なんで須賀だけびっぷたいぐうなの?」ボソボソ

京太郎「は?」

淡「個室なんてずーるーい」

京太郎「いやお前…常識的に考えてそうだろ」ボソボソ

淡「よし!この淡ちゃんと勝負しよ!もち麻雀で。私が勝ったら個室は私のものだよ」

京太郎(あ、こいつ全然わかってねえ)

淡「まだ須賀とは打ってなかったけど……どうせ弱っちいでしょ」

京太郎「まあ強いとは言えないけどさ」

淡「それなら本気出さなくてもいいよね!メッタメタのギッタギタにしてあげる」ニヒヒ

京太郎「今時ジャイアンでもそんなセリフ言わないぞ、ったく……」



「……とまあなんやらかんやら説明しましたー。わかんないことがあったらまた質問にきてねー」

「お昼までは予定通り牌譜研究ということで。じゃあ、始め!」



淡「えー、朝から打てると思ってたのにー」ブーブー

京太郎「日程確認してないのが悪い」

淡「ひどーい!ねえ、〇〇ちゃんも須賀はひどいって思うよね?」

「え、あ、わ、私?」

「い、いや…大星さんもちゃんと確認した方がよかった、というか……」

淡「」ガーン

京太郎「ほらもう、他の人に迷惑かけちゃダメだって」

京太郎「ゴメンな、こいつ頭がコレでさ」クルクルパー

淡「なっ!?」

「な、仲良いんだね」

淡「どこが!?こいつなんか、ぜぇぇぇったい、ぜったいぜったいぜったいぶっ飛ばしてやるんだから!ふんだ!」

京太郎「お、おう」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

>ほら、この捨て牌はこういう意図で

>ここの鳴きがまずいのかー読めないなー

>たぶん打ってる人そこまで考えてないと思うよ

>身もふたもない!?


京太郎(…腹減った)

京太郎(正確に言うと一時間前から我慢してる)

京太郎(男子高校生にとっては辛い…これも修行か…)

淡「せーんぱーい、もうお腹ペコペコでーす」

京太郎「」ガクッ

「そうだね…よし、そろそろ時間だから午前はここまで!お疲れ様」

「お昼は食堂でカレーの準備ができてるみたいでーす。作ってくれた人に感謝の気持ちを持っていただきましょう」

「ちなみにデザートもあるらしいよ?楽しみだね」

ワーイ

京太郎(女子だな)

「じゃ、各自移動してくださーい」





ゾロゾロ

京太郎(トレーを取って行列に並ぶ、給食か)

京太郎(皿を取って……お、自分で注げるんだ)カチャ

京太郎(そいじゃまあ、遠慮なく)

「おー、食べるね男の子」

京太郎「育ち盛りなんで」ニコッ


京太郎(さて、空いた適当な席に、と)

京太郎「すみません、横失礼します」


ガヤガヤ

京太郎(なんだ?)クルッ

京太郎(見慣れない人たち…ああ、第一部室組か)

京太郎(弘世部長、部活紹介で前に出ていたメンバーたち……そして照さん)

京太郎(なぜか大星もいるけど)

京太郎(うるさくないと思ったらこれだよ)

明日もあるのでここまで
もう少し進めたかったけど書溜めが追いつかなかった、てへぺろ
次はおそらく日曜夜遅く
確定申告やんなきゃ…ってところなんで少しペース緩みます、あしからず

こんばんは
少しですが投下



京太郎(あ、プリンあるじゃん。取り忘れた)

京太郎(男がプリン食うのは女々しい?腹に入ればいいんだよ)

京太郎(なりふり構っていられるか!俺は行く!)スタッ



京太郎(よかった、危うく貴重な食糧を失うところだった)ホッ

「そうか、正面は須賀くんだったか」

京太郎(この声は…)チラッ

京太郎「部長!今朝ぶりです」ペコリ

菫「度々顔を合わせて悪いな。飽きるだろう」

京太郎「滅相も無いです、そんな」ゾクッ

京太郎(…どこからか殺気を感じる)

「……」ゴゴゴゴ…

京太郎(違います、故意じゃないんです。信じてください)




京太郎「宮永先輩とかとご一緒じゃなくていいんですか」

菫「あー……心配なのは心配だが、バラバラに座るよう提案したんだ」

菫「一人でも多くの部員と接することができるように」

京太郎「…宮永先輩の隣には大星がいるようですが」

菫「…まあ、仕方ない」

菫「そんなに気になる?」

京太郎「…いえ、そういうわけでは」

菫「そうか」



カチャ カチャ

菫「白糸台の学食は口に合ってるか?」

京太郎「はい、量も十分ですし、それでいて味も妥協がないというか……とにかくこのカレーめっちゃ美味いっすね」

菫「おかわりもあるぞ」

京太郎「…お言葉に甘えて」スッ



京太郎(俺がおかわりするのを確認してか、何人かがおかわりに立ち始めた)

京太郎(男子の俺が率先してないと、遠慮とか恥じらいとかするよな…さすが女子)

京太郎(でもね、たくさん食べる女子も悪くないと思うぞ)グッ



淡「わっ、須賀もおかわりしたんだ」

京太郎(あっ、遠慮とか恥じらいとかないタイプだ…すでにおかわりしてやがる)

京太郎「おう。……その皿は?」

淡「照先輩から頼まれたの!」

京太郎「て…宮永先輩が?」

淡「そう!プリンプッチンしたいからって」

タッタッタッ

京太郎「あ……そう、なんだ」

京太郎(妥協がないのは照さんのプリンへの熱意だった)

京太郎(プッチンしなくてもいいし、するにしてもカレー皿にすればいい。カレーが気になるならちょっと拭けばいいじゃないか)

京太郎(だいいちプッチ〇プリンだぞ)

京太郎(……変わってないな、照さん)



照「……」スルルッ ヒョコッ

照「……」ヒョイッ

照「……」プッチン


照「……」


照「……」エイッエイッ

ポトッ

淡「おぉー」キラキラ

照「…いただきます」

照「……」モックモック

照(おいし……)モックモック

淡「私もしよーっと」




京太郎(カレーの辛さと油が残ったところにこの人為的甘味)

京太郎(特別美味しいというわけじゃないけどたまに食べたくなるこの味)

京太郎(…焼きプリンとかの方が若干好きだけどさ)


京太郎(……遠目でもわかる照さんの甘味好き好きオーラ)

京太郎(俺にしか見えてない?それでも全然構わないんだけど)

京太郎(あー、昔みたいに手作り菓子差し入れできねーかなぁ…)

菫(表情ころころ変わって見てて飽きないんだけど)

菫(何考えているんだこいつは)

なかなか進まない
次回は木曜くらいかと
それまでにいろいろ片付けたい

こんばんは
こんな時間からじゃどこまでいけるかわっかんねー
毒ガスはググって初めて知りました
カレーとかおかわりとか被ってますが全くの偶然です

ではぼちぼち投下



菫「午後は予定通り実戦練習だ」

菫「部室混合、東風戦でどんどん回してもらう。対局表は作ってあるからそれにしたがってくれ」

菫「牌譜は忘れずに整理しておくこと。では始めよう」


京太郎(さて、頑張りますか)





「ロン!3900!」

「くっ……はい」チャラッ

京太郎(すごいな、そんな待ちで斬って捨てるか。いや……その待ちだから和了れるのか、どちらかというと)

京太郎(こう、封じ込められてるのをズアッと…みたいな)





京太郎(対面の手……これはまずい気がする)コトッ

「よし、これで!」コトッ

京太郎(あらら)

「あー、出ちゃったか…ロン。小三元・対々和・三暗刻」

「ひぃっ!?は、はい…」





「やー須賀くん。調子はどぉ?」コトン

「あーどうも。……ぼちぼち?かな…先輩たちはやっぱり手強いよ」コトン

「またまたぁ。……小耳に挟んだんだけどさぁ、『今年の男子は手強い』って」

京太郎「……誰がそんなこと」

「一人じゃないよぉ、何度か聞いたもん。『結構しつこい』とか『ひたひた追いかけてくる』とか」

京太郎「麻雀の話だよね!?」

「…君たち、話すのはいいけれど集中できないのか」コトン

京太郎「すみません……それ、ロンです」

「は?」

京太郎「…すみません」

「…いや、集中できていないのは私の方だったか。すまない、気を引き締めていく」





京太郎(…ふぅ、このターンは対局なし、か)

京太郎(別段いい感じもしないんだけどなあ…一位取れないし)

<ゴッ ジャー

京太郎(ん?あちらは確か…給湯室)


ヒョコッ

京太郎「先輩、お茶汲みなら俺やりますよ」

「ひゃっ!?」

京太郎「おっとと…驚かせちゃいましたね」ハハハ

「あ……ううん、平気だよ」



「よくわたしが先輩だってわかったね」

京太郎「普段見るお顔じゃなかったですし……部活紹介でなんとなく見た覚えがしたんすよ」

「そっか、部活紹介…そんなのもあったね」

「須賀くんはよく人の顔覚えるの?」

京太郎「別にそこまで意識してはないですけど…どうして俺の名前を?」

「一人しかいない男の子だからね……さすがに名前覚えるよ」

「一方的に名前知られてるのも変だよね、自己紹介するよ。渋谷尭深」

京太郎「渋谷先輩…とお呼びすれば」

尭深「それはおまかせで」クスッ

京太郎「了解しました、渋谷先輩」フフッ


京太郎「ではあらためて渋谷先輩、お茶汲みの雑用は後輩の俺に任せていただけないでしょうか」

尭深「うーん……お茶はわたしが好きで淹れてるだけだからなぁ」

京太郎「あっ…そうなんですね」

尭深「だから…配るの手伝ってくれると助かるな」ニコッ

京太郎「了解です!」

尭深「さて、おしゃべりしている間にお湯もちょうどいい温度になったし」

京太郎「あー、そういう計算があったとは…気づかなかったです」

尭深「まだまだだね」

京太郎「まだまだです」




尭深「はい、須賀くんの分だよ」

京太郎「ありがとうございます。…ふぅ」

京太郎「なんか落ち着く味ですね」

尭深「そう言ってもらえるとうれしい、かな」


京太郎「じゃあ弘世部長と同じチームなんですね…先輩めちゃくちゃ強いんじゃないですか」

尭深「…そうでもないんだけどね」

尭深「うちの学校の代表選考のルール、知ってる?」

京太郎「あぁ、あれですよね、チーム作って対抗戦で勝ったチームが出る」

京太郎「カーリングの日本代表とかと同じですよね」

尭深「そうなんだ、あんまり知らないけど」

尭深「だから部内で一番強い五人が出るわけじゃないの」

尭深「宮永先輩は別格だけど、ね」

尭深「そしてこの方法の有用性を証明したのが宮永先輩、らしい」

京太郎「有用性?」

尭深「細かいことは聞いたことないんだけどね」

案の定だよ…ここまで
書ければ今晩来ます

今日はさほど進められなさそうなのでお休みします
書き溜めて明日投下の予定

こんばんわ
ゆっくり投下していきます





尭深「だから須賀くんもわたしに勝てる…よ?きっと」

京太郎「勝ったらそのチームに入れる…ってわけじゃないんですよね」ハハッ

尭深「それはそうだよ…まず男の子だし……」

尭深「入りたいの?」

京太郎「……」

京太郎「…できればレベルの高いところで揉まれたいじゃないですか、せっかく来たので」

尭深「やっぱり男の子だね」フフッ







京太郎(これだけ根詰めて打ちまくったのはいつぶりだろ…)

京太郎(もう時間は夕方、次がどうもラストらしい)

京太郎(相手は…)


淡「やっと須賀をぶっ飛ばせる!」

「ラストよろしくねー」

尭深「お手並み拝見、だね」ニコッ

淡「えっ、尭深先輩いつの間に知り合いになったんですかー?」

尭深「あ…、さっきお茶淹れるのを手伝ってもらっちゃって」

淡「ふーん……」

京太郎「何か言いたげだな」

淡「べっつにー、たらしとかへんたいとか思ってないしー」

京太郎「この野郎……」



淡「とにかく、私が勝ったら一人部屋いただくからね!」ズビシッ

「なんの話かな…」

京太郎「もう…渋谷先輩も何か言ってやってくださいよ」

尭深「え、……えっと、えっと、頑張って?」

京太郎「ちがーう!」

淡「たかみーも私の味方!100人力だ!」

尭深「あ、えっと、ごめんね?」

京太郎「大丈夫、大丈夫です…」



京太郎「では、よろしくお願いします」

「よろしくー」

尭深「…よろしくお願いします」

淡「じゃあ…始めるよ!」ニヤッ

ゴゴゥッ!

京太郎(っ……なんだこれ)

京太郎(卓についた途端に、人が変わったようなこの威圧感)

京太郎(『怖い』とかなんとか言ってたのはこれか)

京太郎(…今まで対局した中で間違いなく最強レベルだわ、こいつ)



東一局

京太郎(大星が強烈すぎるけど他二人も何かしらのオカルト持ちで)

京太郎(様子見してる場合じゃねえと意気込んだんだが…この静けさ)コトン

京太郎(…俺だって無策じゃない。大星の牌譜も研究済みだ)

京太郎(開幕五向聴。大星と卓を囲むと必ずそうなるらしい)

京太郎(だからさっきの圧力は配牌が終われば薄くなっていく。とりあえずこれが大星の“力”だ)

京太郎(…それだけじゃない気もするけど)コトン

>ポン

京太郎(…ズレるか。しゃーない、一旦こっちで)



京太郎(あと、渋谷先輩の第一打)

京太郎(何かがぐっと集まって、先輩の手元に消える。そんなイメージ)

京太郎(要警戒だし、そうでなくても一軍スタメン。学べることは多くある)

京太郎(願わくば、勝ってその先に…)コトン




京太郎(…大星に動きなし)

京太郎(もし言ってた通り手を抜いてるんなら…先行させてもらうぜ、大星)

京太郎「チー!」

カランッ

京太郎(…よし、入った!あとは…)

タンッ タンッ

京太郎(……来た!)

京太郎「ツモ! 自風ドラ3で満貫、2000・4000!」

「おー」

淡「なっ…!」

尭深「ツモられちゃったか…」パタン

京太郎「いや、ちょっと出来過ぎですね」

京太郎(あと一巡遅かったら上がれなかったはず…危ない危ない)




東二局

京太郎「うし、親番行きます!」カランコロン

淡「むむ…」

ガタン ゴッ

京太郎(またひどい圧、そして五向聴)

京太郎(でも手が進まないわけじゃないしなぁ、まだなんとかなる)

京太郎(…あの地獄は酷かった)

尭深「……」コトン

京太郎(…また何か溜まった)

京太郎(第一打のみ発動する、かぁ…)

京太郎(…考察はあとだ、とりあえず集中しよう)コトン





尭深「……」チラッ

コトン

京太郎「…ポン」

京太郎(…先輩が鳴かせてくれたおかげでテンパイ)コトン

京太郎(まあ安いんだけど)

京太郎(渋谷先輩は…俺に連荘させたいんだろうか)

京太郎(だとして理由は何だろう)

京太郎(まあ、とりあえずは)

京太郎「ロン。1500の一本場は1800」

京太郎(和了ってから考えるとして)




東二局一本場

京太郎(先の繰り返し)

京太郎(大星は…)チラッ

淡「……」ムッスー

京太郎(調子でも悪いのかな?)



京太郎「…テンパイ」

淡「テンパイ」

「テンパイ」

尭深「ノーテンです」

京太郎(なんとかテンパイはした、が…)

京太郎(なんか転がされてるような、嫌な感じ)

京太郎(それに動きがないあと二人が不気味なんだよなぁ)




淡「……尭深先輩」

尭深「どうしたの?」

淡「本気出しても、いいですよね」

尭深「えっ…」

「えっ…」

淡「だってー、先輩味方してくれるって言ったのに須賀のアシストして!ずるい!」

尭深「味方するとは…言ってないかな」ズズッ

尭深「それにこれは私なりの戦略。淡ちゃんもわかるでしょ?」コトン

京太郎(先輩慣れてるなこれは)

淡「それはそーだけどー…」

尭深「私もいろいろ試したいから…ね」

尭深「最初の親番、上がられちゃったのが誤算だったけど」

京太郎「おっと、俺のせいですね」

尭深「勝負だからね、私が弱かっただけ」

(…話に入っていけない)




尭深「菫先輩も言ってたよね、『できれば自重しなさい』って」

淡「でもでも、じちょーしてたら100人も1000人もやっつけられない!」

淡「出すぎててもやらなきゃいけない時が、れでぃーの淡ちゃんにはあるの!」

尭深「そう…」

淡「あー、絶対わかってない!」

京太郎(お前の中のレディーのイメージってなんなんだ)




菫「亦野、そっちはどうなった?」

誠子「ほとんど済みましたね。あと…まだ尭深と淡の卓が途中です」

菫「そうか…やけに時間がかかってるじゃないか」

誠子「ああ…尭深が親の連荘支援してたみたいです。東風でハーヴェストを部分的にでも再現できないかって」

菫「それはそれで面白そうだが…牌譜を見せてくれないか」

誠子「はいどうぞ。……そうそう、それもあって例の男子が今トップなんですよ」

菫「ほう。……きっちり満貫和了ってるじゃないか」

誠子「その東一局の鳴きがなかなか鋭いんですよ。それで一巡後にツモ上がり」

誠子「なんかシンパシー感じちゃいますし…勉強になります」

菫「…亦野のそういう姿勢は見習いたいな」



照「……お疲れ様」テクテク

誠子「お疲れ様です、先輩」

菫「お疲れ。有望株は見つかったか?」

照「…一応気になった子はメモしてある」パラッ

菫「助かるよ。強さが一見してもわからない子もいるし、な……」

誠子「先輩?」

菫「照、この『カメ』ってなんだ?」

照「カメだよ」

誠子「カメ?」

菫「…それがなにかを聞きたいんだが」

照「…よくわからないけど、その子の後ろにカメみたいなのがいた」

照「ギャーギャー鳴いたりこっちに舌伸ばしてきたりうるさかったから、コークスクリューしたらビックリした顔して消えちゃった」

菫「そ、そうか」

誠子「…これ聞かなかったことにしていいですか?」

次回、淡ちゃんダブリーマシーンと化すの巻
咲麻雀は半分能力バトルも兼ねてるからね、仕方ないね
モブは淡ちゃんが本気出す前に動きたかった
多分数局経過すると高い手が入るとかそんな感じ

京ちゃんのオカルトですが一応の説明
既出なのは「同卓がオカルト持ちかどうかわかる・オカルトの発動タイミングがわかる」というもの
あの人の劣化版です
過去編までたどり着ければその辺突っ込んで書きたい
ではでは、次回は火曜の予定です

深夜だとすごく余計なこと書いてる…
一箇所訂正
>>149
×京太郎「ロン。1500の一本場は1800」
◯京太郎「ロン。1500」
というわけでぼちぼち透華

照「…大丈夫。その後も気配はあったから」

照「たぶん一時的に引っ込んだか、常駐するタイプじゃないんだと思う」

菫「…チェックしておくよ」

誠子「…聞かなかったことにしときますね」


照「…淡と尭深はまだ打ってるの?」

菫「ああ。牌譜見るか?」

照「うん」パラッ

誠子「…卓の進行止まってませんでした?」

菫「そうだな…練習だから多少は構わんが」

照「……」ピクッ

照「…淡」

菫「淡がどうかした…か」ゾクッ

東二局二本場

淡「…ここまで我慢してきたんだから、いいよね」ニヤリ

ド ド ド ド

京太郎「な…」

京太郎(なんと圧倒的な大気…!さっきの圧とは段違いの“凄み”が、こいつにはあるっ…!)

京太郎(…ってふざけてる場合じゃねえ、これはやばい)コトン

ゴ ゴ ゴ ゴ


淡「リーチ!」 チャラン!

京太郎(ダブリー…だと)


誠子「あっちゃー…やっちゃいましたね、秘密兵器」

菫「…ここで本気を…いや…淡は気分屋だからな…」

照「……」

誠子「…やっぱり他校入れなくて正解でしたね」

菫「…それはそうなんだ、が…」

誠子「何かあるんですか?」

菫「ああ……始まったからには仕方がない。様子を見るしか…」

照(……京ちゃん)


京太郎(他人の配牌に影響を与えられるのなら、自分のにそうできても何もおかしくはない)

京太郎(にしても……それにしてもダブリーだよ)タンッ

京太郎(……この局は様子見。いろいろやるには不確定要素が多過ぎる)

淡「……」ニマッ

京太郎(この憎たらしい笑み、強者の余裕…か)


尭深(…私が余計なことしちゃったから)

尭深(ううん、でも……淡ちゃんの姿勢にもたぶん良くないところがあった)

尭深(中途半端で油断してたから、思っていた展開にならなくて焦る)

尭深(私が連荘支援してたのもあるけど…須賀くんが淡ちゃんの予想を超えてきた)

尭深(……あとで反省会、かな)




京太郎(…ダブリーなのに案外和了れないってあるよね)

京太郎(早めのリーチはなんとやら、ってな)

京太郎(とりあえず、これでテンパイ)コトン


(何かと厄介な子だって、先輩たちも言ってたし覚悟はしてたけど!)

(こんなのだなんて、聞いてないよっ……!)


淡「……」スッ

淡「……」ニヤッ

京太郎(…まずっ、何か来る!)

淡「カン!」

ゴゥ!

京太郎(……俺には一瞬、宇宙が見えた)

京太郎(卓は大地で、大星は宙に浮いている)

淡「……」コトン

京太郎(さも当然のように、ろくに見もせず嶺上牌は河へ)

京太郎(さすがに咲みたいにぽんぽん和了らないか)

尭深「……」トン

京太郎(…先輩は安牌か)スッ

京太郎(……この牌は切れない。嫌な予感しかしない)

京太郎(…崩そう)タンッ


淡「……」フッ

淡「ツモ!」

スッ パタタタタタタ

カチャッ

京太郎「裏ドラが、乗った…?」

淡「ツモダブリードラ4で、ハネ満だよ!」ババーン


京太郎(さっき切っていたら直撃されてた)ゾゾッ

京太郎(…ダブリーして暗カンしたら裏が乗ってハネ満確定…?)

京太郎(……なんてこった)

淡「じゃあ、次いこうか」ニヤッ

尭深14800 京太郎29300 モブ19300 淡36600


京太郎(もう一度試す…とか悠長なこと言ってらんねえな)

京太郎(そしてこの感じは…)

淡「リーチ!」

京太郎(ねえ皆さん知ってました?ダブリーって連発できるんですって)

京太郎(…手は相変わらずの五向聴。九種九牌…でもない)タンッ

京太郎(さっきのカン裏ドラは偶然……とか、そんな楽観的じゃいられない)

京太郎(当然来るものと仮定してやらなきゃ)

京太郎(…俺、この期に及んで勝とうとしてる)

京太郎(所詮練習なのにな、ハハッ)

京太郎(でもね、引くに引けないところがあるんすよね…男には)




京太郎(ここに来てツモが…手が進まない)

京太郎(親の〇〇さんは…打牌に力がない。聴牌には遠そう)

京太郎(渋谷先輩は…)チラッ

尭深「……」チラッ

京太郎(目が合った)

京太郎(ここから点差が開くのは避けたい。それなら…)

京太郎「……」コトン

尭深「ポン」

京太郎(先輩に和了ってもらうしかないだろ)



淡(むっ…)

淡(たかみーにさっき助けてもらったからってデレデレして)

淡(やっぱりばか。ほんとバカ。ばーかばーか)コトン

尭深「…ロン。3900です」

淡「あわわっ!?」

尭深19700 京太郎29300 モブ19300 淡31700

東四局

淡「……」ジトー

京太郎(やばいです、淡さんがじっと睨んで来ます)

京太郎(さて、泣いても笑ってもここでラスト)

京太郎(俺も二翻つけて和了れれば逆て…ん…)ゾクッ

尭深「……」

京太郎(ここで渋谷先輩……しまった、忘れてた)


京太郎(先輩の配牌に力強さを感じる)

京太郎(第一打のあれは…貯金みたいなもの?)

京太郎(だとすればこの局は…)

淡「リーチ」カチャン

京太郎(迷いなくダブリー)

京太郎(俺だって、まだ)

尭深「……」コトン

京太郎「チー!」

京太郎(諦めるわけにはいかないよな)


尭深(ここまで五局、全部は帰ってこなかったけど)

尭深(しっかり収穫できたのは、いいことだよね)

尭深(淡ちゃんがいる卓でできたことに意味がある)

尭深(…実際に使えるかどうかはまた別問題だけど)

尭深(とにかく、この局は)コトン

京太郎「……」コトン

京太郎(もう一歩、あと少し…)

「……」コトン

淡「……」コトン

尭深「……」






尭深「ツモ」

パララララ

尭深「2000・3900…です」

尭深28600 京太郎27300 モブ17300 淡26800

ここまでです
いつも微妙にキリが悪い

多忙と体調不良により間が空いてしまいました
幸い今日の午後はフリーなので納得いくのが書ければ晩にでも投下できそうです
取り急ぎ

すいません、なんか体調おかしいので今日は休みます
申し訳ない
明日大目に投下したい

こんばんは
ぼちぼち投下ー



京太郎(一歩、及ばないか……)

淡「っ……!」

尭深「…お疲れ様でした」

「お、お疲れ様でしたっ!」


京太郎「あー……負けちゃいました」

淡「……は?」

京太郎「え?」

淡「なんでよ…なんで素直に勝ったって言わないの!」

京太郎「え?ああ……確かに大星より点は上だけど勝った気しないし」

京太郎「だいいち勝ったの渋谷先輩だし」

淡「そうだけど、そうだけどさ!」

淡「なんか……バカみたい」

京太郎「…え?」

尭深「…淡ちゃん」

淡「もういい!」ダッ

京太郎「あっ、おい待てって!」ガタッ

フラッ

京太郎(……あ)

ガシャーン

「きゃっ!」

尭深「す、がくん……?」



淡(……ばか)タッタッタッ

淡(ばーか、ばーか)グスッ






菫「おい、大丈夫か!」

照「……」

テク テク テク

照「……」チョコン

照「尭深、手を貸して」

尭深「は、はい!」

菫「…っ、淡は!?」

誠子「先輩、私が追いかけます」

菫「しかし……」

誠子「先輩は他の部員に指示を」

菫「……わかった。よろしく頼む」

誠子「頼まれました」

タッ タッ タッ



京太郎「……あ、れ…?て、る先輩?」

照「頭打ったりしてない?」

京太郎「大丈夫です…へっちゃらですよ、ちょっとバランス崩しただけで…」

照「起き上がっちゃダメ」キッパリ

京太郎「あ…はい…」

尭深「毛布、使う?」ススッ

照「頭の下に敷こうか。ちょっと持ち上げるよ」

京太郎「すみません…」



菫「……大丈夫か?」

照「特に異常はない…と思う。他の子たちは?」

菫「予定通り各自休憩と風呂だ。少々の動揺は見られたが……あとで説明はしておこう」

京太郎「すみません……大星はどうしました?」

菫「今探してもらっている。……すこし気が立っただけだ、じきに落ち着いて帰ってくるだろう」



菫「それよりも…君にはまた謝らなくてはならないな」

京太郎「…え?」

菫「すまん、私の見通しが甘かった」フカブカ

京太郎「そんな部長…顔上げてください」

京太郎「大星がちょっと本気出して俺があてられちゃっただけじゃないですか」

菫「……経験あるのか」

京太郎「地元でちょっと、ですね」

照「……」

菫「……そうか」

尭深「すみません、何の話を…」

菫「ああ……せっかくだし話しておこう」


菫「高校麻雀は男女で実力差がみられると一般的に言われるが、なぜだと思う?」

尭深「競技人口…ですか?」

菫「それも重要なポイントだが、他にも理由がある」

照「……変な打ち手が多い」

菫「……お前がそれを言うのか…」

照「失礼な」

尭深「男子はそうでもないんですか?」

京太郎「俺はあまり男子と打ったことがないので……」

菫「…ああ。理由はよくわからないそうだが、この年代の女子には不可解な打ち方、何かが見えているような打ち回しをする者が多い」

菫「実際うちの部でも、統計の範囲を超えた過度な打ち方をすることで成績が上がった者が多くいる」

菫「男子にはそれがないか、あってもごく目立たない程度が普通だ」

照「……」

尭深「でもそれと須賀くんが倒れたことにどんな関係が……」

菫「そこにもうひとつ男女差が表れているんだが」

菫「淡のように卓全体に影響を与える雀士と同卓すると、個人差はあるがその気配を感じられることが多い」

菫「つまり雀士が持つ…オカルトとでも言っておこうか、特に強力なオカルトは周囲の人間にも影響を及ぼすということだ」

照「……隠しきれない威圧感」

菫「…それでここが問題なんだが……男子の方がより身体的影響を受けやすいらしい。言い換えると外部の力に対する耐性が低い」

尭深「不思議ですね」

菫「…私も聞きかじっただけだからな、詳しいことはわからない」

菫「だから…今回のことについては想定外だったというか、部長としての監督不行き届きというか…」

京太郎「もうその話は終わりにしません?部長が気に病むことないですって」

京太郎「俺もそれなりに覚悟して白糸台(ここ)に来ましたから」

菫「……そう言ってもらえると救われるよ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


第一部室



誠子「ここにいるな、大星」

淡「……」

誠子「電気ぐらいつけたらどうだ」

淡「…スイッチどこかわかんない」グスッ

誠子「…点けるぞ」ポチッ

淡「……っ、まぶし」

コツコツ

誠子「リンゴとオレンジ、どっちがいい?」

淡「……?」

誠子「下でジュース買って来たんだ。奢りだぞ、感謝しろよ」

淡「…オレンジ、ください」

誠子「ほら」

淡「……ありがとうございます」

誠子「おーおー、いつもの元気印はどうしたー。調子狂うじゃないか」バンバン

淡「……」

誠子「…隣、座ってもいい?」

淡「…うん」



誠子「……」

淡「……」

誠子「……悔しかったか」

淡「…うん」

誠子「…ここで負けを知れたのは、大星にとってもいいことだと思うけどな」

淡「でも、こんなところで負けてたら」

誠子「負けてたら、なんだ?」

淡「……こっちの部室、来れないじゃん」



誠子「……はぁ」

誠子「なんかお前勘違いしてないか?」

淡「?」

誠子「負けたことないやつなんて、この部室にいないぞ」

淡「でも……たかみーはいいけど須賀なんかに」

誠子「お前が負けた理由はそこだな、男子だからかなんだか知らないが、甘く見過ぎだ」

淡「……」

誠子「淡は見てなかったかもしれないけど、あの子にはセンスがある」

誠子「状況を読む力があるし、勘もいい。ドラを引いてくる運もある」

誠子「今日の対局を見ての私の個人的な感想だから、別に気に留めなくてもいいけどさ」




誠子「ただ一つ言うとすればな」

誠子「ここは白糸台麻雀部で、目標は団体戦優勝だ」

誠子「お前が今までどうして来たか知らないけど、一人で強くなっていけばいいところじゃないんだ」

誠子「負けて反省して人は強くなれる。だから勝つためには負けが必要なんだ」

淡「そう、なのかな」

誠子「お前はもっと負けを知っていい。それがきっとお前のためになる」

誠子「まあ、結構負けてる私が言っても説得力ないか」ハハッ

淡「……」

誠子「全国までの道筋で負けるわけにはいかない。ならいつ負けられるのか」

誠子「今でしょ」ドヤァ

淡「……」

誠子「……」

淡「…亦野先輩、さすがにそれは古いと思う」

誠子「…すまん、忘れてくれ」

淡「…あはっ」

誠子「…わ、笑うな、忘れろ!」クワッ

淡「あははは、先輩おもしろーい」

誠子「棒読みやめろ!」


淡「あー……おかしかった」

誠子「くっ、つまらんところで恥を…」ブツブツ

淡「……ありがとうございました、先輩」

誠子「え?」

淡「私、頑張るから」

誠子「…おう。私も負けてられないな」

淡「あー、なんかおなか空いちゃったなー。晩御飯なんだろーなー」スクッ

誠子「…忘れてるだろうから言っておくけど、まず部長のところへ直帰だ」

淡「えーやだー、絶対怒られる……ダブリー見せちゃったし」

誠子「…どちらかというと、ラスト二局リー棒を出したことについて言われそうな気がする」

誠子「あれがなければお前が一位だったのに、結果論だけど」

淡「……そっか!よく考えたらそうだった!」

誠子「そういうところだぞ」

淡「だって、たかみーはスロットあるのに須賀が和了らせちゃうし…それどころじゃなかった!」

誠子「なんだそのスロットって…」

誠子「だいいち須賀は初対局なんだから知らなくて当然でしょ?」

淡「でもー、あれさえなければ……一騎打ちなら負けないのに…ぶー」



誠子「だいたいなんでそんなに須賀にこだわるかわからない」

淡「だってね!初日から絡んで来てついてくるんだよ!」

誠子「その話はもう何度も聞いた、解決済み、次」

淡「えー、何回でも聞いてよー」

誠子「何?彼のこと嫌いなの?」

淡「え?べつにきらいじゃないよ?」キョトン

誠子「あ、そう…ならいいけど」


淡「……なんか、でも」

誠子「でも?」

淡「本気で勝負してたの私だけみたいだった」

誠子「…本気でやってなくて対局終わった後立てなくなるか?」

淡「そーだけどさ」

誠子「『勝った気はしない』って、須賀も言ってたじゃない」

誠子「それがすべてだと思うけど」

淡「しんけんしょーぶだった?」

誠子「あ、あぁ…多分」

誠子「心配なら訊いてみればいいじゃないか」

淡「うーん……そだね!そーする!」

淡「あと……」

誠子「?」

淡「心配もせずほったらかしにしたのも、謝る」

誠子「…そうか」

誠子「ついて行ってやろうか?」

淡「ほんと!?亦野先輩だいすきー!」 ガバッ

誠子「…この、調子がいいやつ…」グワングワングワン

誠子(でもまあ、)

誠子(こんなのも悪く、ないな)



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
京太郎「すみません、部屋の準備までしてもらって」

菫「……さっきから謝ってばかりだな。なにか悪さでもしたのか」

京太郎「…そうですね。ありがとうございます」

菫「うん、それでよし」

尭深「お茶、置いときますね」コトン

照「…ありがとう」


京太郎「いいんですかね、俺も泊まって」

菫「こっちは元からそのつもりで準備してたんだ。何より体調に不安のある中一人で帰らせられないよ」

照「…迎えがあるならともかく」

菫「アパートで一人暮らしなんだろう?毎日大変じゃないのか」

京太郎「一応家事はできるように練習して来ましたからね。あとは慣れでなんとか」

尭深「私には無理かなぁ」



菫「身支度は一通り整えてきているんだろう?」

京太郎「はい、言われてたので下着や着替えなどは一応」

菫「それなら構わないさ」

京太郎「でも男一人ですし」

菫「ん?男一人の須賀くんはそれをいいことにいかがわしいことでもするのか?」

京太郎「滅相も無いです!」

菫「それならいいじゃないか。こちらの信用で成り立っているんだから遠慮なく受け取ってくれ」

京太郎「…ありがとうございます」

京太郎(これは素直に喜ぶべきなのか)




菫「まあ正直に言うとだな」

菫「君がここまでやれるとは思っていなかった」

京太郎「先輩…」

菫「一軍候補二人相手に僅差の2位だ。十分誇っていいだろう?」

京太郎「でも、一度対局しただけですし」

菫「その一度で何もできない者も多い。君はそうではない」

菫「点差云々よりも、私は君の打ち回しに実力と可能性を感じるよ」

京太郎「可能性…」

尭深「淡ちゃんが本気出した理由、わかるよね」

京太郎「……」

尭深「勝ちに来た淡ちゃんが勝てなかった。それだけでもすごいことだと私は思うけどな」

京太郎「……恐縮です」

菫「それを尭深が言うのは少し違う気がするがな」

尭深「ほんとですね、すみません」





菫「では、私たちはそろそろ失礼しよう」

菫「夕食はあとで持たせる。風呂だが…今日は出て左の角にあるシャワー室を使ってくれ」

京太郎「わかりました」

尭深「今日はゆっくり休んでね」

照「……」

菫「行くぞ、照」スタスタ

照「…今行く」スッ



照「……」

京太郎「…先輩も、ありがとうございました」

照「ひとついいかな」

京太郎「え……はい、なにか」

照「下の名前で呼んじゃダメって、言ったよね」

京太郎「あ……ごめんなさい」

照「……今日は急だったししょうがない。でも気をつけて」

照「……まだダメだから」

京太郎「まだ……?」

照「お大事に」スタスタ

ガチャン


シーン


京太郎「まだって、…なんだよ」

ここまでです
合宿1日目が終わらない
気がつけば初投下から一ヶ月…追い抜かれないよう頑張ります

日付指定してないとこの有様だよ!
とりあえず明日投下予定です

今来ました
ちょろっとですが投下




コンコンコン

京太郎「はいど」

淡「ご飯だよ!」バーン

京太郎「…うぞ」

「…ああもうこいつは!」




京太郎「でも先輩、ノックしただけまだ成長してると思いますよこいつも」

誠子「ところがどっこい、ノックしたのは私なんだなあこれが」

京太郎「あーなるほど」

淡「む!二人して私のことバカにしてない?」

京太郎「してないしてない」

誠子「うん、してないしてない」

淡「…むー」



誠子「……大星」

淡「あー……うん。えっと……ね」

京太郎「どうした」

淡「さっきは……心配も全然しないで……ごめん」

京太郎「……え」

淡「え、ってなに!」

京太郎「いやー、大星さんからそんな言葉が出るとは思いませんで」

淡「むっかー!私だって悪いと思ったらちゃんと謝れるの!」

京太郎「…冗談冗談。そんな気にしなくていいのに」

淡「へ?……怒ってない?」

京太郎「怒ってない怒ってない」

淡「そっか…へへへ」


淡「それじゃそれじゃ、もういっこ。えーと……」

京太郎「…なんだよ」

淡「……うん!次は負けないから!」ズビシッ

京太郎「おう!」

淡「だからきょーたろーは私のライバルってことで!」

京太郎「お、おう……名前?」

淡「さっき覚えた!ライバルって名前どうしで呼び合う感じ……そんな感じで!」

京太郎「……わかんねー、ぜっんぜんわっかんねー」





誠子「私もさっきの局見てたけど、なかなかいい鳴きしてたね」

京太郎「ありがとうございます……運も良かったんで」

誠子「運も実力のうちって言うしね……あんまり謙虚だと大星がまた機嫌損ねるよ」

淡「むっ……同じ失敗は繰り返さないしー」

京太郎「一回練習で勝ったくらいで大きい顔できませんよ」ハハハ

誠子「言われてるぞ淡」

淡「なんで私なの!」

京太郎「そうだぞ淡」

淡「あわっ…だからなんでよ!」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

誠子「…一仕事済んだし、これでゆっくり寝れるよ」カチャカチャ

淡「あー楽しかったー」

誠子「……それより良かったのか?」

淡「何が?」

誠子「あーいや、忘れるくらいのことならいいんだけど」

誠子「本気云々がどーだとかさ」

淡「あー……うん、それね……気にしないことにしたんです!」

誠子「…気にしない」

淡「きょーたろーは遊びでやってないことはわかったし……」

淡「もし本気じゃなかったんなら、私が弱かっただけ」

淡「だから次は勝つ」

誠子「ふーん、そっか」

淡「えー、反応薄い」

誠子「私にリアクションを期待してどうする」

淡「ぶーぶー」

誠子「ぶーじゃない。……羨ましいかな。楽しそうで」

淡「先輩は麻雀楽しくないんですか?」

誠子「楽しいよ。でも……背負うものもあるからね」

淡「?」



誠子「そんなことよりさ、何あの名前呼び?」

淡「え?よくあるよね、サ◯ケェ!ナ◯トォ!みたいに」

誠子「お前はいつジャンプ漫画の主人公になったんだ」

きりがいいのでここまで
次は金曜の予定

日が変わりましたが今から投下します
NARUTOはコラ含めて好き



チュンチュン


京太郎(……朝か)

京太郎(……)

京太郎(……そうか、合宿か)ムクッ



ザーッ バシャバシャ

京太郎(無駄に早く目が覚めてしまった)

京太郎「ふぅ」フキフキ

京太郎(でもホントすがすがしい朝、須賀だけに)


京太郎(あ、照さん)

照「……」テクテク

照「ふぁぁ……」



京太郎(…こっちに来る)

京太郎「おはようございます」

照「ぁ…おはよう京ちゃん」

京太郎「え」

テクテク

京太郎(あれ、夢見てんのかな)

<ザーッ バシャバシャ

<………

<バタバタバタ

京太郎(……戻ってきた)

照「……さっきの無しで」

京太郎「さっきのって何ですか?」

照「……意地悪」

京太郎「また間違えたんですか」

照「寝ぼけてたからノーカン。顔洗って目が覚めた」キリッ

京太郎「…先輩の日常が心配です」

照「?」

京太郎「弘世先輩とかに迷惑かけてませんか?」

照「……ちょっとは、自覚ある」

京太郎「自覚があるなら…まあいいですけど」



照「……体調はもういいの?」

京太郎「え、…はい、なんとか」

照「そう…気をつけてね」

スタスタスタ

京太郎(行ってしまわれた…)

京太郎(…よし、今日も頑張りますか)パンパン




京太郎「おはようございまーす」

<おはよう須賀くん おはようさん

パタパタパタ

淡「おはよ、きょーたろー!」

京太郎「おはよう、朝から元気だな淡」

ざわっ

京太郎(あれ、なんか嫌な雰囲気)

淡「?…どうかした?」

京太郎「いや、なんでもない」




菫「……とまあ、須賀君と淡が付き合い始めたんじゃないかと噂が」

京太郎「誤解です」

誠子「昨日のアレでそうなったらなかなか劇的だけどね」

尭深「ラブロマンス、だね」フフッ

京太郎「先輩たち面白がってるだけですよね!?」

照「……」フキフキ

京太郎「ほら、掃除中なんですから集中してやりましょうよ。宮永先輩黙々とやってるじゃないですか」

菫「上級生に指示するとは大きくなったもんだなあ」

誠子「そーだそーだ」

尭深「ちゃんとやってるよ?『たまたま』須賀君と担当が近くて、『たまたま』この辺の担当が多いから手が空きがちなだけで」

京太郎「先輩方がそっち側だと収拾つかなくなるじゃないですか……」

菫「ほら、照も何か一言」

照「……」

京太郎(表情変えないままでめっちゃ困ってるんですけど、照さん)

照「……」

照「……お幸せに」

京太郎「ちょ、だから違うんです、誤解ですって!今は麻雀でいっぱいいっぱいで」

誠子「麻雀が恋人って?そんな行き遅れたアラフォー雀士みたいなこと言って」


???(アラサーだよ!?)


京太郎「いやそこまでは言わないですけど」

菫「つまらないな」ニヤニヤ

京太郎「つまらなくて充分です、さあ掃除掃除!」

寝落ちしそうなのでここまで
日曜日また来ます

また日が変わっての参上
書き溜めあまり無いですが進めます

京太郎(さて……午後からは部室昇格をかけての個人戦スタート、か)

京太郎(ここからが正念場)グッ


尭深「緊張してる?須賀くん」

京太郎「それなりに…でもやるしかないんで」

尭深「そっか…やっぱり男の子だね」

京太郎「それ昨日も聞きましたよ…先輩はいいんですか?のんびりしてて」

尭深「だって私たちは観戦する側だし」

京太郎「あ、そうなんですね」

尭深「牌譜分析くらいはするけど…お茶汲み頑張るね」






京太郎「ツモ。1000・2000」

京太郎(よし、この調子でいけば……)



「ロン。3900」

京太郎「っ……はい」チャラッ


「テンパイ」

「テンパイ」

京太郎「…ノーテン」

「テンパイ」

寝落ちしました
ご心配かけてすみません






京太郎(…流れが悪いな)

京太郎(昨日対局してない人もいるからだけど…なんせ上級生が強い)

京太郎(上に絶対行きたいという気持ち、最後のチャンス…とにかく気迫が違う)

京太郎(でも俺だって)

京太郎「ロン!3900」

京太郎(気持ちは負けてない自信がある)








京太郎「だー…きっついなぁ」

淡「そんなに疲れることあったっけ?」

京太郎「俺は頭使わないと勝てないんだよ…勝ててないけどさ」

淡「ふーん…あ、今日は私が勝つからね」フフン

京太郎「言ってくれるじゃない淡さんよ」ハッ

京太郎「……」

京太郎(相変わらずの五向聴スタート、ね…)タンッ

京太郎(ま、鳴いてなんとか進めていければ)

淡「チー!」

京太郎「!」

京太郎(…まずい、鳴かれると追いつくのが)


淡「ツモ、2000・4000!」

京太郎(そして平然と満貫ツモっていくというね)

淡「…まだまだいくよ」フンス

京太郎(…このまま乗せたら勝ち目はない。打点は捨てて…)


京太郎「ポン」

京太郎「チー」

京太郎「……ロン、3900」


淡「ポン!」タンッ

京太郎「それロン、2000点」

淡「むっ…はい」

京太郎(攻撃全振りだからある程度取り返せなくはない。だけど…)

淡「ロン!満貫の8000ちょうだいね!」

「はい……」

京太郎(一発がでかいから気を抜けない…)




淡「ロン!7700だよ!」

「あっ……と、飛んじゃいました…」

「何もできなかった…」ガックシ

京太郎「だぁーっ!完全に稼ぎ負けだわこりゃ」

淡「ふっふーん、淡ちゃんの実力を見たか!」

京太郎「あぁ……やっぱり淡は強いな」

淡「でしょでしょー」



淡「…ねえ、きょーたろー」

淡「楽しかった?」

京太郎「もちろん……どうした急に」

淡「いや…やっぱりライバルっていいなって思った!それだけ…またよろしくね!」パタパタパタ

京太郎「…騒がしいやつ」

京太郎「さて…切り替えて次行きますか」

今日はこの辺で
昨日今日と読んでるSSが更新来てて嬉しい
次は金曜くらいの予定

なんでや菫さんもかわいいやろ!(錯乱)
投下します



京太郎「……悩むな」

淡「さっさと出しちゃえー」

「パスでもいいよぉ」

京太郎「いや、ここは…こっちでどうだ」

「パス」

「パスでーす」

「…パス」

淡「ふっふっふ、甘いねきょーたろー!」バシッ

京太郎「あぁ…やっぱそうなるか」

淡「私が大富豪!」





京太郎「いまさらだけど…俺ここにいて大丈夫?」

「…本当にいまさらだな」

「その辺は大丈夫。先輩たちに頼まれたから」

京太郎「…何を?」

コンコンコン

菫「失礼するぞ」

淡「おつかれー、待ってたよー」

「……はっ、す、せ、先輩!」ダッ

テキパキ

「お荷物ありがとうございます。どうぞこちらの椅子に」

菫「いや…邪魔するのも悪いからな…」

「そ、そんなこと滅相もない!お茶でも一杯いかがでしょう」

菫「…じゃあお言葉に甘えて、一杯だけ」



淡「…ねえ、あの子なんなの?」ボソボソ

京太郎「気にするな、気にしたら負けだ」ボソボソ

淡「ふーん」

京太郎「あぁ、この前のお菓子は合宿用だったんですね」

菫「いくら菓子好きがいるからってあの量は片付けられないだろう?普通は」

京太郎「まあそうですけど」

菫(…ふーん)

淡「昨日もね、プチお菓子パーティーやったんだよ!」

京太郎「あー、俺がいない間にそんな楽しそうなことが…」

菫「須賀君は物怖じしないな、女子ばっかりだというのに」

京太郎「そうなるだろう、と心構えはしっかり持ってきたので」

寝落ちしそうなんでこの辺りで切り上げます
土日いずれかにまた

こんばんは
キリのいいとこまでいければ



菫「これまではそうじゃなかったのか?」

京太郎「えっと…中学はハンドボールやってたんで」

淡「え?なにそれ?」

「あー、なんか聞いたことある…」

「ほら、有名な人いたじゃん……えーっと」

京太郎「あー…多分、宮◯大輔選手のことじゃないかと」

「それだ、その人だ」

菫「なんでまた」

京太郎「ハンドボールですか?たまたま部活があって面白そうだったからってだけです」

「須賀くん背が高いから映えそう…全然ルールとかわかんないけど」

京太郎「一応県大会決勝までは行けたんですよ?」



菫「でも麻雀もやっていたんだろう?」

京太郎「…小学生の時に教えてもらって。一時期離れてたんですけど…」

京太郎「中学上がってからですね、また一念発起して。部活の合間でネト麻やったり、そこで知り合いになった人に鍛えてもらったり」

「須賀くんってどこ出身?」

京太郎「言ってなかったっけ……長野だけど」

菫「……長野か」

「長野ってあれ、やよやよ言ってるところ?」

「それ多分岐阜」



「麻雀で言ったら……ほら龍門渕って長野だったよね?」

京太郎「そう、そうなんです。龍門渕の先輩方は凄くて」

「えっ、どゆこと……知り合い?」

京太郎「知り合い…まあ、知り合いかな?さっき言ってたネト麻で知り合った人っていうのが龍門渕の執事さんで」

「執事…だ、と…」

淡「執事力53万?」

京太郎「なんだ急に」

淡「…なんかそう言わないといけない気がした」

菫「…須賀くんはルーラしたり路上でティーセット広げたりは」

京太郎「そんなことしませんよ!先輩がボケてどうするんですか」

菫「いや、そんな君をどこかで見たような気がして」

京太郎「執事の知り合いはいますけど執事見習いにはなってませんから!料理とかちょっと習ったくらいですから!」

淡「え、きょーたろー料理できるんだ。いがーい」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
京太郎(結局その後、いつか手料理なりデザートなり振る舞う約束をする羽目になって)

京太郎(いや全員分とか無理よ?レギュラー分とかで精一杯よ?)

京太郎(…部長から直接聞けたわけじゃないですが、俺がぼっちにならないよう手を回してくださってたようです)


京太郎(さて、昨日の続きの個人戦後半……ここまでは大体中位、若干中の上…くらい?)

京太郎(…もうちょっと頑張んないとな)






「……」タンッ

京太郎「チー」

京太郎(すこし強引だけどテンパイ…しかも単騎待ち)

京太郎(でもこの巡り、しっかりはまって……あとは何巡目か)スッ

京太郎(…来た!)「ツモ、自風ドラ1の500・1000」





京太郎(…13巡目、対面の親が張ってるけど生牌はもうない)

京太郎(無いんだけど、この南の対子は捨てられる。親にとっちゃダブ南だけど)タンッ

「……」

「……」タンッ

「……」タンッ

「ロン。12000」

京太郎(あちゃー)


京太郎(もうちょっと攻撃に活かせる何かあればなあ、違うんだけど。こればっかりは長年の課題)

京太郎(打点低いんだよね…だから男子地味だって言われるんだよ)





京太郎「うっす、淡」

淡「あ、私の結果聞きたい?聞きたいでしょー?」

京太郎「いいや全然」

淡「またまたー…昨日も今日もはめつのいきおいだったよ!」

京太郎「破竹の勢いな、なにお前大金貢いだり裏で不適切な関係があったりすんの?」

淡「?」

京太郎「…いや、わかんないのならいい、わかんない方がいいや。疲れて自分で何言ってるかわからん」

ここまでにします(血涙)
次は水曜にでも


親にとってダブ南ってなんや

>>286
指摘thx
とんだミスです、ダブ東に訂正
続きいきます



淡「…緊張してるの?」

京太郎「緊張というか…ナーバスになって」

淡「なーばすって何?頭痛いの?」

京太郎「……頭も痛いわ、うん」

淡「きょーたろーなら大丈夫でしょ」

京太郎「…え」

淡「だってこの淡ちゃんがライバルと認めたやつだよ?」ムフー

京太郎「…うん、まあ、そうだな」

京太郎「一応礼言っとく」

淡「一応ってなに!」ウガー


コツコツコツ

菫「…皆揃っているようだな」

菫「さて、第一へ昇格するメンバーを発表する」

菫「所属チームが内定している者はそれも合わせて発表するから、静かにして聞くように」

菫「では学年順にいく。三年、……」



京太郎(…やっぱり三年が多い、な)

京太郎(そういや何人昇格するとか、何も言ってなかった気がする)

京太郎(…もっと自信持てよ、須賀京太郎!)




菫「最後は一年だ。…大星淡。チーム虎姫」

ざわっ

京太郎(ああ、…まあこれは分かってた)

京太郎(しかし淡が、一年レギュラー最有力か……)

京太郎(妥当なんだけど……凄えな)


京太郎(俺も頑張ったんだけどなあ…みんなそうだろうけどさ)

京太郎(このチャンスを逃すと、)



菫「須賀京太郎、チーム虎姫預かり。…以上だ」

京太郎「……」

菫「呼ばれたメンバーはこの後顔合わせや説明のため移動。その他はこの個人戦の牌譜研究をしてもらうから対局していたホールへ」

菫「反省を生かして次に繋げてもらえればと、思う。以上」


京太郎(いま、呼ばれた?)

淡「やったじゃんきょーたろー!」

京太郎「……」

淡「きょーたろー?」

京太郎「なあ、ちょっと頬引っ張って」

淡「よいしょ」グイッ

京太郎「い…痛って!もういい、もういいからストップストップ」



京太郎「あー、いてて…思いっきり引っ張ることねーじゃん」

淡「だって引っ張ってって言ったのきょーたろーでしょ…」

淡「それよりやっぱりほら!私が言った通りだった!」

京太郎「あ?……うん、まあな」

淡「えー、もっとリアクションしてよー」

淡「もっとほめて、ほめちぎって?」

京太郎「はいはい、淡さんはすごいですねー」

淡「でしょー」ムフー

京太郎(ちょろい)



菫「ほら、二人とも行くぞ」

淡「はーい」トコトコ

京太郎「……」

京太郎(これで……また照さんと……打てるのか)

京太郎「……」グッ

京太郎「いよっしゃあああぁぁぁ!」


ちょっと悩んだけどここで切る
テンポ悪くてすみません

少し空いてしまいましたが投下します

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
尭深「…お茶だよ」コトン

京太郎「ありがとうございます」

誠子「お疲れ様です、部長」

菫「ああ、…やっとひと息つけるよ」ノビー

照「……」モキュモキュ

淡「あっ、テルー美味しそうなの食べてる!」

尭深「淡ちゃんの分もあるよ」

淡「食べる!」

菫「……ほどほどにな」

京太郎「…先輩お疲れですね」

菫「そう見える?……まあ、そうだな」

菫「先輩たちの偉大さを噛み締めてるよ」フッ



菫「さっきの繰り返しになるが…第一部室、そしてチーム虎姫へ二人ともようこそ」

菫「各自面識もあるようだし…自己紹介は省略しよう」

京太郎「先輩、昇格は嬉しいんですけど」

菫「なんだ?」

京太郎「俺なんかがここにいてもいいんでしょうか?全国目指すチームなのに、しかも一人男子で」

菫「…その説明を今からしようとしていたんだが」

京太郎「す、すみません」

菫「須賀君は自己評価が低すぎる。謙虚は美徳だが…行きすぎると卑屈に見える」

淡「やーい怒られてやんのー」

京太郎「うるせえ」

菫「淡はもう少し謙虚に、うーん……そうだな、自慢気になるのをもう少し抑えた方がいい」

淡「えー」

京太郎「やーい怒られてやんの」

淡「ふん!」

誠子(仲良いなこいつら)



菫「だいいち、君の身柄を虎姫預かりにするのは私の発案だ」

京太郎「部長の…ですか?」

菫「そう、入部の時にも話しただろう?」


京太郎「……ああっ!?もしかしなくてもこいつのことですか?」

淡「私がどーかしたの」

京太郎「いや、淡の世話役だか操縦役だか欲しいとかなんとか」

淡「えっ!きょーたろーお世話してくれるの!?お菓子作ってよお菓子」

照「…その話、詳しく」ズイッ

菫「わかりやすい食いつき方をするな!話が本題から逸れるだろう」

照「…後で聞く」シレッ

菫「こいつ…」



菫「…まあ、淡のブレーキ役として買った面もなくはない」

京太郎「マジっすか…」

誠子「…それ冗談じゃなかったんですね」

菫「…当たり前だがメインはそっちじゃないから安心してく、れ……」



淡「それでねー、いつか作ってきてくれるって!きっとリッパなやつ!」

照「どんなの作れるんだろう。リクエストできるかな」ウズウズ


尭深「……」ズズズッ

尭深「ふぅ」



誠子「…まあ、こんな感じだから」

京太郎「…お察しします」

菫「……」


菫「淡、照……『後で話す』と言ってなかったか」ゴゴゴ

菫「その話は私のする話より大事だってことだな」ゴゴゴ

照「…失礼しました」

淡「あわっ…はーいごめんなさーい」

菫「まったく…」



菫「話を戻すぞ」


菫「須賀君には、うちのチームに帯同してもらうつもりにしている」

淡「たいどう…?マネージャーってこと?」

菫「…もちろんそういう仕事をしてもらうこともあるかもしれないが、幸いうちの部員は多いからな。そういうことじゃない」


菫「須賀君には個人戦での出場を目指してほしい。あの時そう伝えた」

菫「まだ校内代表すら決まってないわけだけれど…わたしはこのチームで全国に、そして頂点まで届くと信じている」

菫「だから須賀君にとっても、ここが最善の練習場所だと思ってね」

京太郎「先輩…」



誠子「要は全国狙えるレベルと判断されたってことだよ、少年」

菫「…実力がまだ伴ってないようなら下でもう少し磨いて、秋以降頑張ってもらうつもりだった」

菫「もし大会に参加することになれば、もちろん私たちと共に行動する機会も増える。前々から連帯感を持てるよう、できれば普段から一緒に練習しておきたい」

菫「ただ私たちもインターハイ制覇を目指して必死になってやっているから…練習の質を下げるわけにはいかない」

菫「けれどそんな心配は無用だったようだ……私たちは君の実力と将来性を買って、君をぜひチーム虎姫に迎え入れたいと考えた」

菫「私たちと一緒に目指そう、全国を」

京太郎「…はい!どうぞよろしくお願いします!」ペコリ




淡「ねえねえ、私には何かないの?」ウニョウニョ

菫「あー、そうだな……」

淡「……」キラキラ

菫「お前の実力は今までも見せられてきたわけだが…」

菫「この部内でもずば抜けている、と思う。白糸台がトップに居続けるために……淡が必要だ」

菫「あまり言うと調子に乗るからこれくらいにしておくが」

淡「えー、そんなことないよー」ムフー

尭深「二人とも、よろしくね」

照「……よろしく」





菫「この後はチームごとの時間になっているから…早速打とうか」

淡「はいはーい!私打ちたーい!」

京太郎「…俺も、俺も打ちます!」

菫「じゃあまずは一年と二年で。終わったらじっくり牌譜検討しよう」

「「「「はーい」」」」





1位 淡 2位 誠子 3位 尭深 4位 京太郎

淡「やった!」

京太郎「あぁ…なんてことだ…なんてことだ…」チーン

尭深「出遅れちゃったのが痛かったなぁ」ズズッ

誠子「その…須賀も悪くなかったと思うよ?鋭い早仕掛けとか。和了れなかったけどさ」

京太郎「そうなんすよね…和了れてればね…」ズーン


照「お疲れ様」

菫「淡がトップか…さすが、と言っておこう」

淡「えへへ…」

菫「ただ捨て牌、手作りや押し引き、まだまだ甘い部分も多い」

淡「えー」

菫「…淡は感覚派だろうからな…実践できるかはともかく、その辺り注意して見てみよう」


菫「須賀君も悪くはない。点も大きく引き離されたわけじゃないし直撃も小さいのを一発だけ」

京太郎「…喜んで打ち始めたわりに緊張してました」

菫「…そういう要素もあるかもしれない」

菫「ちょっと受け身過ぎたんじゃないか?この局に関しては」

菫「まあ一つの結果にこだわり過ぎないこと。今までもそうしてきたように長い目で見ていくように」

京太郎「わかりました」

菫「じゃあ一局目から順にやっていこうか。親は尭深……」



今日はここまで
書きだめの途中で数レス書き足したので間が空きました
連休中何度か投下したい

そろそろ序盤の山場(?)

こんばんは
ぼちぼち投下

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー








菫「飲み物は何がいい?」

照「…カフェオレとか。ある?」

菫「奇遇だな、私もちょうど飲みたかった」


コトン サッー


照「氷は二つ」

菫「わかった」

トプトプトプ
カラン カラン




照「菫」

菫「どうした?」

照「合宿お疲れ様」

菫「まだ明日があるじゃないか」

照「…明日は締めの挨拶するだけで、あとは普通の練習なんでしょ?」

菫「まあそうだけど」


照「だからとりあえず、お疲れ様」



菫「……お互い様だろう」フイッ

照「……」

照「…私にはできない仕事を菫はたくさんやってくれてる」

照「ちゃんと知ってるから」

菫「……そう」

菫「ほら、ご注文の品だ」コトン

照「……」

照「…ありがとう、菫」

菫「…うん」



照「それで」

照「なにか話があるんだよね」

菫「まあ、な」





菫「…単刀直入に言おう。須賀君のことだ」

照「……」チュー


菫「もう少し正確に言うと、お前と須賀君の関係のことだ」


照「……」

照「…いつ気づいたの?」

菫「別に確証があったわけじゃないが。合宿初日に彼と鉢合わせただろう?」

照「…うん」

菫「…初対面にしては、お前は妙にサバサバしていた。私の時とは違って愛想笑いもない」

菫「そこに少し違和感があった…まるでよく見知った相手、今の私や、虎姫のメンバーに接するのと同じような空気だった」

照「……」



菫「男子だからかと思ったが…今まで照が男性に対して態度が違うなどとは聞いたことないし自分も見たことない」

菫「苦手なら真っ先に駆けつけて看護したりしないだろうしな」


菫「それに…須賀君は長野出身だと、聞いた」

照「……そっか」

照「それなら菫にしかわからないね」

菫「照…」




照「菫には、早いうちに説明するつもりだった」

照「ごめんなさい」

菫「…こちらこそ詮索したようですまない」

照「構わない。菫は善意でやってるって、知ってるから」

菫「しかし……」



コンコン



照「…誰か呼んでたの」

菫「…ああ。当事者だ」


菫「…開いてるよ!」



京太郎「失礼しまーす」


照「……」

京太郎「と……あれ、まだお二人ですか」

菫「…ああ、これで全員だ」

京太郎「え?虎姫の今後の打ち合わせをするからって先輩」

菫「……すまない、少し嘘ついた」

京太郎「……そうですか」

菫「照」

照「…大丈夫。続けよう」

菫「…わかった」

菫「須賀君、騙したようで申し訳ないが、君に害を及ぼそうとかそんな気はない」

京太郎「もちろんそんなこと思いませんよ」アセアセ

菫「まあとにかく座ってくれ。照の隣に頼む」

菫「飲み物は?」

京太郎「先輩そんな…俺別になくても」

菫「いいから。詫びだと思って」

京太郎「…じゃあ、コーヒーなんかあれば」

菫「インスタントでいい?」

京太郎「はい、ありがとうございます」


京太郎「…宮永先輩、隣失礼します」ストン


照「……そんなに呼びにくい?“宮永先輩”って」


京太郎「…え?」

照「…そういうところは隠せないんだね」

京太郎「ちょっ、急に何言って…部長に聞こえますって」ボソボソッ



菫「…あー、悪いな須賀君、その件で君にわざわざ来てもらったんだ」

京太郎「え」

照「……心配しなくていい。私から話したようなものだから」

京太郎「あっそう、…え?そ、そうですか…」

菫「まあ一杯飲んで落ち着いて…何か入れる?」コトン

京太郎「…ブラックでいいです。ありがとうございます」



照「……」ジーッ

京太郎「…俺の顔に何かついてますか?」

照「ううん、何でもない」フイッ

照(ブラック……飲めるんだ)





菫「さて…どこから話そうか」

京太郎「えっと……部長は、どこまで知ってるんですか」

菫「私に分かるのは……照がもともと君と顔見知りだということ」

菫「…照には妹がいるということ」

京太郎「!」

菫「それくらいだ」


照「……」

京太郎「そう、ですか……」


菫「……須賀君の口からも一応聞いておきたい」

京太郎「…いいんですね」チラッ

照「……」コクン

京太郎「えっと…俺と先輩…照さんは、照さんが長野にいた頃の幼馴染で」

京太郎「俺と照さん、照さんの……妹の咲と三人でよく麻雀を打ってました」

京太郎「もっと言えば…俺が麻雀を教わったのは照さんからです」

菫「…なるほど」


菫「それで」

京太郎「…ある日、照さんは俺たちの前からいなくなりました」

照「……」

京太郎「大まかな事情は子どもながらに聞かされました。全ては理解も納得もできませんでしたけど」

菫「…だろうな」



菫「…すまない」

菫「他人の私が本来入るべき話ではないんだが…二人にわだかまりがあってはいけないと思ったんだ」

菫「お互いに一歩引いてるような、そんな気がしてな」

京太郎「俺は…」

照「…他人のふりをしてって私が言った」

京太郎「照さん…」

菫「……」

照「名前呼びもしないように私がお願いした」

菫「…それで須賀君は」

京太郎「照さんには何か考えがあったんだと思ってました」

京太郎「部のエースともともと知り合いだってわかったら、俺が色眼鏡で見られるかもしれない」

照「……」

京太郎「もちろん白糸台のみんながそんなことする人たちだなんて、思ってませんよ?」

京太郎「でも俺は…お陰で変な重荷を背負わずに、ここまで来れたんだと思います」

菫「須賀君…」



菫「…照の妹さんのことは、私しか知らない」

照「…菫にしか、言ってない」

京太郎「……」

菫「…須賀君のことを伏せていたのも、……そうなんだろう?」

照「……」コクン

菫「だから……君ら二人の過去は、変わらず他の部員には秘密にしておきたい。違うか?」

照「…よくわかるね」

菫「…まあな」



菫「須賀君は」

京太郎「照さんがそうしたいというなら、俺は構いません」

京太郎「伏せてて困ることでもないですし」ハハッ

照「……」

菫「……そうか」


菫(君ならそう言うと思っていた…)

菫(そう期待していた私が思うのもおかしな話だが、須賀君はそれでいいのか?)

菫(……そんなこと、照の前で言えるわけがない)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『…照の妹さんのことは…私しか知らない』

京太郎(…寝つけない)ゴロン

京太郎(弘世先輩が事情を知っていたのは…半分驚き、半分納得…かな)

京太郎(……つまり照さんも、咲のことが気にかかってないわけじゃない、ということ)

京太郎(少し…少しだけれど光明が見えた気がする)

京太郎(照さんから話したかどうかはこの際問題じゃない。部長はよく気がつく…人をよく見てる人だ)

京太郎(……照さんのこと、部長とも一度サシで話さないとな)

京太郎(きっと、…きっと助けになってくれる)

京太郎(……)ゴロン

京太郎(照さん、あなたは……)

ここまでーです

帰省だなんだとハルヒを一通り見たのでさほど進まなかった、申し訳ない
鶴屋さんめがっさかわいいねぃ、知らんけど
投下しまーす


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京太郎『さきー!あそぼーぜ!』

咲『ちょ、ちょっとまって…このおはなしよみおわったら』

京太郎『また本ばっかりよんでる…へんなの』

咲『女の子にそんなこというなんてしつれいだよ』


咲『そうだ、京ちゃんにいいわすれてた』パタン

京太郎『えっ、なに?』

咲『こんどうちにあそびにきてよ』

京太郎『ほんと!?』

咲『いつも京ちゃんちによばれてるっていったら、『たまにはうちにきてもらいなさい』って、お姉ちゃんが』

京太郎『お姉ちゃん?さき姉ちゃんいるの?何年生?』

咲『三年生だよ。京ちゃんは、…そっか一人っ子だったっけ』



京太郎『あのさあのさ、姉ちゃんってどんなかんじ?こわい?』

咲『ううん、ぜんぜん』

咲『えっと…やさしくて、かわいくて、あと麻雀がつよい』

京太郎『まーじゃん?って、あのマージャン?さきもマージャンできるの?』

咲『うん、うちの家族はみんなでよくするんだよ』

京太郎『へー、さきすごいな!』キラキラ

咲『京ちゃんちかいよ…』











京太郎『おそくなった!』ガッサガッサ

咲『だいじょうぶだよ。なに持ってきたの?』

京太郎『さきんちにいくっていったら、うちのおかあさんがもっていけって』

咲『京ちゃんちのお母さんやさしいもんね』

京太郎『え、でもおこったらこわいよ』

咲『ふつうそうなんじゃないかな…たぶん』

京太郎『たぶん?』

咲『…なんでもないよ』




咲『…京ちゃん』

京太郎『なに?』

咲『…お姉ちゃん、おこってるわけじゃないから』

京太郎『え?どういうこと?』

咲『会えばわかるよ。ただいまー』ガチャ

京太郎『え?え?』



咲『どうぞあがって』

京太郎『…お、おじゃまします!』

咲『こっちだよ』トコトコ



照『……』テクテク



京太郎(…あれが咲の姉ちゃん、かな?)

照『おかえり、友達連れてき…た…』

照『……』ゴゴゴゴ
※京太郎目線

京太郎(ひぃっ!)


京太郎(まって!ぜんぜんわらわないでこっちじっと見てる!)



照『咲、ちょっとこっち』チョイチョイ

咲『はーい…あ、座っててね京ちゃん』テクテク

京太郎『う、うん』

ガチャ バタン


京太郎『…はぁ』

京太郎(こわくないっていってたのに!めちゃめちゃこわいんだけど!)

京太郎(でもおこってるわけじゃないって、さきはいってた)

京太郎(うーん…)



照『咲に確認です』

咲『なぁに?』

照『確かにお友達の京ちゃんを家に呼ぶ、って言ってました』

咲『うん』

照『…男の子だなんて、聞いてないんだけど』ジトー

咲『あれ?えっと…えっ、あっ、言って…なかった、かも』

照『…きょうちゃんきょうちゃんって言うから、きょうこちゃんかきょうかちゃんか悩んだのに』

咲『…ごめんなさい』

照『…別にいいんだけどね』ポンポン

咲『ほんと?』

照『…私の心の準備ができなかっただけ、もう大丈夫だから』

照『行こうか。京ちゃん待たせてるしね』

咲『うん!』




ガチャ テクテク


照『ごめんね、挨拶もしないで』

京太郎『だ、だいじょうぶです…』

照『いつもうちの咲がお世話になってます』ペコリ

京太郎『こ、これ…つ、つまらないものですがどうぞ』

咲『なになに』ヒョコッ

照『咲、お行儀が悪いよ』メッ

京太郎『みんなで食べてって、うちのかあさんが』ガサッ

照『プリンだ!』ガタッ

京太郎『!』ビクッ

京太郎(すごい、目がギラギラしてる)

咲『お姉ちゃん、おぎょうぎわるいよ…』



照『……はっ、いけない』

照『まだ自己紹介してなかったね』

照『咲のお姉ちゃんの、宮永照です。よろしく』

京太郎『ぼ、ぼくはすがきょうたろうといいます!よろしくおねがいします!』ペコリ

照『…ふーん、きょうたろうできょうちゃん、か』

京太郎『え…ぼくの名前…?』

照『知ってるよ。咲と遊んでくれてる京ちゃんのことは』

照『咲がいっつも京ちゃんの話してるから』

咲『もう!そんないっつもじゃないよ!』




照『そんな京ちゃんにお礼。……麻雀、やってみたいんだってね』

京太郎『…うん!やりたい!』

照『いい返事。ルールを覚えるのが少し大変だけど…』

照『とりあえず簡単なところだけ教えてあげる。そのあと三人で打ってみようか』

京太郎『やった!』






咲『このボタンをおすとね』

カチャン スッ

京太郎『すごい!きれいにならんでる』

照『全自動卓っていうの。ちょっと難しいけど』

一旦切ります、続きは今晩にでも


キラキラじゃなくギラギラって……

ちょろっと投下
>>353 子どもは正直



照『最初は牌をオープンにしてやってみよう。絵柄がみんなに見えるように倒して』

京太郎『こう?』

照『そう。そして理牌…自分がわかるように順番を入れ替えて』

咲『同じしゅるいのをまとめるといいよ、京ちゃん』

京太郎『…できた!』

照『じゃあ説明しながら打っていこう。まずは……』





京太郎『え、えっと、ロン!』

照『そうだね。私がいま出したのが京ちゃんの当たり牌。点数はどうかな?』

京太郎『えっと…リーチで1、タンヤオで1、あとは…うーん』

咲『平和もついてるよ』

照『平和は最初は分かりづらいよね……京ちゃんの手は3900点だね』

京太郎『…すごい、そんなすぐにわかるんだ』

咲『たくさんやってるからね』フフン

照『京ちゃんもたくさん打ったらすぐにわかるようになるよ』




照『じゃあ次は普通通りに、牌も立てて』

照『…いつもどんな風にやってるか、ちょっとだけ見せてあげる。咲もお願い』

咲『…わかった!』ゴッ

京太郎『……?』

京太郎(いまなんか、さきが……気のせいかな)



咲『カン!』

照『……ポン』

京太郎『……これ』タンッ

照『ロン。タンヤオのみ、1000点』パタッ

咲『お姉ちゃん早いよ…』

照『咲の手が進んでたからね』

照『それより……』チラッ

京太郎『…え、ぼくなにか』

照『…なんでもない。次行こうか』







咲『……』チラッ

照『……』タンッ

京太郎『ポン!』

照『…いい鳴きだね。ちょっとわかってきたかな』

照『けど』

京太郎『?』

咲『…カン!』

咲『カン!…もいっこカン!』

京太郎『…!』

咲『ツモ…嶺上開花、三暗刻三槓子で6000オール!』

照『…まあこうなっちゃうんだけど。あと咲、三麻だから9000オールだね』

京太郎『……』


咲『……京ちゃん』

京太郎『……す』

照『す?』

京太郎『すっごい!』ガタッ

咲『え』

京太郎『なにいまの!りんしゃんかいほー?っいうの?めっちゃかっこいい!』キラキラ

咲『おちついて、おちついてよ京ちゃん…』





照『…どう、だった?』

京太郎『すっごいたのしかった、です!』

咲『わたしも京ちゃんと麻雀できて楽しかった!』

照『咲はあとでちょっとお話し。……それでね京ちゃん』

照『もっと麻雀できるようになりたい?』

京太郎『なりたい!』

照『…それならまたうちに来て。よかったら私と麻雀の特訓しよう』

京太郎『とっくん?……なんかかっこいい!』

咲『とっくん?どういうこと?』




照『京ちゃんと打ってみてわかった。京ちゃんはもっとずっと強くなれる』

照『さっき咲が本気出した時、少し変な感じがしなかった?』

京太郎『うーん、なんか……ちょっとゾクっとした』

咲『』ガーン


照『そう。…それが京ちゃんの力。今日は詳しく言わないけど…』

照『でもまだ京ちゃんも本気を出せてない。それに麻雀に詳しくなれば、もっと…』


京太郎『じゃあ、さきのお姉ちゃんが麻雀のせんせーしてくれるってこと?』

照『うん。京ちゃんがやりたいならだけど』

京太郎『…みやなが先生って、よんだほうがいいですか?』

咲『わたしもみやながだよ』

京太郎『そっか…じゃあ、てる先生』

照『うーん、先生っていうのはちょっと、なんか』


京太郎『じゃあ、……てるさん!てるさんってよんでもいい?』

照『…ちゃん付けでいいんだけどな』


照『でもいいよ。わたしは宮永照、照さんだよ、京ちゃん』

咲さんはやり過ぎだと叱られました
過去幕間を引っ張りすぎると良くないんで早めにこれるよう書き溜める所存

少しですけど投下
ずるずるいっちゃダメだね

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

照『卓についたら、そっと目を閉じる』

京太郎『……』ギュッ

照『“今から麻雀を打つんだ”って頭の中で繰り返す』

照『そして目を開けて』

京太郎『……』カッ

照『意識を卓にグッと押し付ける』

京太郎『……?』

照『……例えば、京ちゃんが卓に寝転んでいるのを想像して』

照『そこから体を溶かしていって、卓にそのまま溶け込んでいくの』

京太郎『……』

照『……』

京太郎『……むずかしい』

照『……ごめん、私もたとえが悪いと思う』





京太郎『さきはどうやってカンできるようになったの?』ゴクゴク

咲『うーん……気がついたらわかるようになってたし、ふつうだと思ってたから…』

京太郎『そっか…』

京太郎『相手の力がなんとなくわかるようになるって、てるさん』

照『はむっ……そう。私の“鏡”に似ている』

京太郎『てるさんのかがみ?はさいしょからあったんですか?』

照『…どうなんだろう。気がついたら私の中にあった』



照『京ちゃんの中でその力がどんな形になるのか、それはまだわからない』モックモック

照『何がきっかけになるのかも…ただ京ちゃんがそれを理解しようとする、わかろうとするのが大切』

京太郎『りかい…』

照『すこし難しい話をするけど、他の人のことをわかろうとするとき、自分と比べて考えるのはよくあること』

咲『…お姉ちゃんはごはん食べたあとでもおやつをペロッて食べちゃう。わたしはおなかいっぱいじゃ食べられないから、お姉ちゃんは本当にあまいものすきなんだなぁって』

照『……コホン。だから自分にそういう力があることをまず信じること』

京太郎『?てるさんが見てくれたんだからあるんだよね?』

照『ああ、……うん、それならいいの』



照『あとは……咲じゃないけど、それが普通だと思うこと』

照『あって当然だと自分に思い込ませる。そうすればいつかすっと出てくる…と思う』ハムハム

京太郎『…目をつぶったりあけたりするのはどうしてですか?』

照『あれは今から力を使う、そのとっかかりを作るというか、おまじないみたいなもの』

照『だから京ちゃんにぴったりかどうかはわからない。……ごめんね』

京太郎『れんしゅう…してみます』



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




照『麻雀のゲーム。そんなのがあるんだ』

京太郎『お父さんに麻雀のれんしゅうしてるって言ったら教えてくれて。家ではそれでべんきょうしてます』

咲『…京ちゃんパソコン使えるの!?』

京太郎『う、うん…そんなにおかしいかな』

咲『だ、だって…変にさわったらピーピー鳴ったり、ばくはつしたりしない?』

京太郎『しないよ…咲は本の読みすぎ。だれでもつかえるよ』

照『……そうなんだ』ボソッ

京太郎『え?』

照『なんでもない』キリッ







照『そろそろ休憩しようか』パタッ

咲『おやつ持ってくるね』トテトテ

京太郎『ふぅ…』

照『お疲れ様、京ちゃん』

京太郎『うん、つかれた…』



照『……頑張ってるね、京ちゃん』

京太郎『?』

照『まだ始めて三ヶ月くらいだけど、ルールも用語もわかるようになってる』

照『さっきの待ちの問題も点数計算もすぐ答えられるようになったし』

照『偉いなあって』

京太郎『…そうかな』

照『そうだよ』




京太郎『だって…ちゃんと打ちたいし』

京太郎『てるさんと、さきといっしょに』

照『…そっか』

照『……』ナデナデ

京太郎『わわっ……どうしてなでるの』

照『……偉いなあって、思っただけ』

京太郎『もう、そればっかり』

バタン

咲『あー、お姉ちゃんが京ちゃんを子どもあつかいしてる』

京太郎『そんなんじゃない!』

照『……』フッ

ここまで
次は早くて水曜

水曜に来ると言ったな…スマンありゃウソだった
明日ちょっと早いので無理にならない程度に投下ー



======================





カランカラン

イラッシャイマセ




京太郎「すみません、お待たせして」

菫「気にしないでくれ。早く来たくて来てるんだから」

菫「遠くまで来てもらってむしろ申し訳ないくらいだよ」

京太郎「いえそんな。……喫茶店なんて初めて来たかも」

菫「いい雰囲気の店だろう?少し遠いのが玉に瑕だが」




菫「さあ、メニューはこっち。好きなのを注文してくれ」

京太郎「いいんですか?自分の分は出しますよ」

菫「気にしないで、昇格祝いとでも思って」

京太郎「…ありがとうございます」

菫「いろいろあるよ。この『カツカレー 920円』とか」

京太郎「まだ夕食には早いですよ」フフッ

菫「まあ、おすすめはこのケーキセットA、かな。ケーキはお好みで。あとここのコーヒーは美味しい」

京太郎「じゃあそれにしてみます。すみませーん!」



京太郎「他の部員と一緒に来たりもするんですか?照先輩とか」フキフキ

菫「照は何度か一緒に来たかな…ただ通うにはなんせ少し遠いからね。学校から二駅、そこから徒歩十分」

菫「あいつは近所にちゃっかり行きつけを確保してるし」

京太郎「スイーツ目当てですよね」

菫「あいつはな…でも一人では行かないらしい。『読書はどこででもできる』とか言って」

京太郎「読書好きですよね、照さん」

菫「お菓子とどちらが好きかな…昔からそうなのか?」

京太郎「それはもう…いつも本読んでましたよ。で、読み終わったらお菓子、と」

菫「今とさほど変わらないじゃないか…」

京太郎「そうですか」

菫「…嬉しそうだな」

京太郎「…そうですか?」

菫「…まあ、いいんだけど」



菫「さて改めて…いきなり呼び出してすまない。合宿終わったその日で忙しないのは重々承知だ」

菫「…一応名目上は部員との個人面談だけどな」

京太郎「…全員とするんですか」

菫「新入部員だけだけど、ひととおりね。そんなに長く時間かけるものでもないし、大抵は部活中に済ませているから…君が思っているほど忙しくはないよ」

京太郎「……部長の仕事って大変ですね」


菫「さて個人面談らしく…最初は須賀君、君についてだ」

菫「…まあ改めて言うことはないかな。昨日も散々ほめた通り。…よくやってると思うよ」

京太郎「…恐れ入ります」


菫「さて照の見立て、というより元から知ってて当たり前だったんだが…君もまた少し変わった打ち手だそうだな」ペラッ

菫「同卓の打ち方の変化…ありていに言えばオカルトの発動を察知できる」

京太郎「…間違いないです。……照さんのおかげで使えるようになったんですから」

菫「…そうか。…照が師匠か」フッ

京太郎「おかしいですか?」

菫「まあ、ちょっとね。麻雀の腕は一級品だが…普段があんな感じだから」

京太郎「…否定はしませんけど」

菫「とにかく、君はその自分にできることをしっかりと理解して活用している。だからこそ、今の結果に結びついているんだろう」

菫「…目標は全国だ。引き続きともに頑張っていこう」

京太郎「はい、よろしくお願いします」

キリが悪いですがタイムアップ
続きは明日にでも



菫「……まったく」

京太郎「…なにか?」

菫「いやなに、照とは一度も対局してなかっただろう?」

菫「だのに君の力に関しての照の描写が具体的だった。これはもっと早く気づけたはず」

京太郎「いや十分早いですって…」


京太郎「ところでそのレポートみたいなのは」

菫「ああ、照がまとめてくれた。私が頼んだんだ」

京太郎「昨日受け取りました?」

菫「…そうだね、最終的に全員分揃ったのは昨日だったかな…それが?」

京太郎「いえ、ちょっと確認したかっただけです」

>オマタセシマシター









菫「少し話はそれるが…淡のことだ」

京太郎「……また何か」

菫「あいつが何かやらかすのはいつものことだ。もういい加減慣れた」

菫「それよりだな…あいつのクラスでの様子を聞きたい」

京太郎(…おかんかな?)


菫「あんな性格してるから正直迷惑ばかりかけてるんじゃないかと心配で」

菫「淡に直接尋ねても大丈夫大丈夫!としか返ってこないし」

菫「部員でしかも同じチームの一員として教育が行き届かないのは私にも責任はあるし」

京太郎(おかんだなこれ)


京太郎「…まああんなんですけど仲良くやってますよ、心配しすぎです」

菫「…そうかな」

京太郎「俺が保証しますよ。…うちの部員だったら一応◯◯さんと××さんも同じクラスで割と親しくしてるので、尋ねてみてもいいかもしれません」

菫「わかった。そうしてみよう」

京太郎「…部長、俺にできることならやりますから、何もかも背負い込まないでくださいね」

菫「…背負えるほど広い背中でもないさ」


カチャカチャ

菫「……ふぅ、やはり美味しいな」

京太郎「先輩もブラックですか」

菫「気分にもよるけどな。甘いケーキにはブラックが合う」

京太郎「同感です」フッ



菫「さて、本題に入ろうか」

京太郎「…はい」


京太郎(先輩の雰囲気が変わった)

京太郎(眼光は鋭く普通よりもさらに精悍で、底まで見透かされる…そんな気さえする)

京太郎(かといって圧制的でもない、温かさも確かに感じられる)

京太郎(…親衛隊の皆さんの気持ちが少しわかる気がする。これが…カリスマってやつか)




菫「まずお互いにスタンスをはっきりさせておきたい」

京太郎(スタンス…?)

菫「今からここにいるのは部長としてではなく、照の一友人としての弘世菫だ」

菫「…照はうちの大エース、不可欠な存在だが……




それ以前に、私にとっては大切な友人だ」

京太郎「……」

菫「君は妹さんとも親交があるから、きっと私よりも考えなければならないことが多いはずだ」

菫「だが私は…照のことを第一に考えて発言する。気を悪くしないでくれ」

京太郎「…わかりました」



京太郎(俺の…番だな)

京太郎「俺は…照さんと咲に仲直りして欲しいと思っています、できれば」

京太郎「でも、部にとっても照さんにとってもこれからの時期が大事だとわかってるつもりです」

京太郎「それに強制できるものでもないですし…突き詰めると二人の問題じゃないですか」

菫「…明け透けだな」

京太郎「…いろいろ悩んだ末です」

菫「そうか。すまない」

京太郎「いえ。……それに今は白糸台麻雀部の一員ですから。マイナスになるようなことはしたくないです」

菫「照にとってプラスでも、部にとってマイナスになるようなことだったら?」

京太郎「その時は部長がさっき宣言した、そのスタンスで行動します」

菫「…一本取られたな」

京太郎「いえ……自分の言葉でなくてすみません」

菫「いや十分伝わったよ、君の気持ちは」



菫「認識のすり合わせから…始めていこう」

菫「…どんなことで仲違いしたかは聞いているか?」

京太郎「ぼんやりとですが。…先輩は?」

菫「…麻雀は好きではないと、あいつは言ってた」

京太郎「……」

菫「何があったかは知らないが……照と妹さんの…咲ちゃんは麻雀が原因で険悪な仲になった」

菫「きっかけは些細なことだったのかもしれない。でも積もり積もった感情はある日爆発して、日常に大きな亀裂が走った」

京太郎「…さすがですね」

菫「褒められても嬉しくはないがな。……タイミングがよくなかったんだろう?」

京太郎「はい。照さんと咲の両親は、……すでにその時別居することを決めていたようです。照さんは」

京太郎「何も言わずに何処かへ行ってしまいました」

菫「君にも別れを告げずに?」

京太郎「…はい」



菫「……どう思った?」

京太郎「…辛かったですよ。照さんと咲と三人で過ごす時間は…かけがえのないものでした、俺にとって」

京太郎「それが消えた、二度と手に入らないところへ行ってしまった。そう感じました」

京太郎「咲は…泣いてました。私が悪いんだって。私がお姉ちゃんを怒らせちゃったって。それも辛かった。責める気にすらなれなかった」

菫「……」

京太郎「…でも結局は、

自分が何もできなかったのが一番辛かったんだと思います」



京太郎「俺が咲から事実を聞いた時は、もう照さんがその場にいた証拠のようなものは全部なくなっていて」

京太郎「もう三人で打てない麻雀卓が残っていただけで」


京太郎「…照さんがいなくてよかったと、一瞬思いました」



菫「…どういうことだ?」


京太郎「……万が一照さんに会えていたところで、引きとめられていた自信もなかったんですよ」

京太郎「弟子気取りの小学生が何か言ったところで…いや、何も言えなかったかもしれない」

京太郎「拒絶されるのも怖かった。想像するだけで……だから、俺は安心したんです。そういう可能性を目の当たりにせずに済んで」

菫「……」

京太郎「…嫌われるとかそういうことを考えたこともなかった、そういう間柄だったんです。少なくとも俺にとってこの三人は」

京太郎「だからなおさら混乱しました。混乱しながら、泣きじゃくる咲を目の前にしておろおろしていました」

京太郎「その時約束したんです。『必ず仲直りさせてやる』って」

菫「それは…」

京太郎「考えなしに口から出てきたんです。…俺もどうしたらいいかわからなかった。でも行動の指針が欲しかったんでしょう」

京太郎「だからそれは無意識ながらの自分への誓いでした。…咲には申し訳ないですけど」



菫「…でもそれで今の君があるんだろう?」

菫「たとえそれが自分に向けられた言葉ではないにしても、咲ちゃんは勇気づけられたはずだ」

京太郎「…照さんのことだけ考えて発言するんじゃなかったんですか」

菫「…君のことを気遣っちゃいけない理由はないだろう」

菫「君もよく頑張ったんだな、須賀くん」

京太郎「…ありがとうございます」

菫「泣いてもいいぞ、胸は貸せないがハンカチくらいなら貸してやる」

京太郎「大丈夫です、ちゃんと持ってきてますので」

菫「…つれないな」

この辺でとりあえず切り上げ
気になる点などあればご自由にどぞー

空いちゃってすみません、ちょろんと投下





菫「さて、私も少し照について話すとしようか」

菫「君とさほど変わらない…二年と少しの付き合いだが」

京太郎「…お願いします」スッ




・(咲–saki–17巻参照)








菫「とまあ…あいつが麻雀部に入るまではこんなところかな」フゥ

京太郎「やはりお菓子なんですね…」

菫「ああ、単純なやつだと私も思ったさ…その時は」

菫「だがさらに付き合って行くうちに、違う印象を抱くようになった」コトン



菫「あいつは結局、麻雀に関わらずにはいられないんだと思う」

京太郎「…というと?」

菫「…好きではないと言いながら、あいつは麻雀に対して常に真摯だ」

菫「手を抜いたりしないし、いやいややってるようなそぶりを見せない。照のその姿勢がかえって人を惹きつける」

菫「そしてあの実力だ……きっと照がどこに入学したとしても、いずれ麻雀にかかわることになったはずだ。全く触れられない学校なんてまずないしな」

菫「そして照はそれを悟っている…自分にできることが誰かに役立つのなら、自分の多少の感情は押し殺せる。あいつはそういうやつなんだ」



菫「…私は、照に麻雀を楽しんでほしい」

京太郎「……」

菫「…勝てるから、というわけではないんだが」

菫「私が高校生活を、麻雀部を楽しめてこれたのは、間違いなくあいつのおかげなんだ」

菫「照のアドバイスで自分や部員が明らかに強くなるのを感じられて、それでも照の実力というのは遥か上をいっていて……」

菫「全国レベル、いや違うな…プロ級の打ち手をすぐそばで見られて、それだけでも私たちは幸せ者だ」

京太郎「…恵まれてたんですね、俺って」

菫「…そうだな」



菫「私が部長としてなんとかやっていけているのも…照のおかげだ」

菫「あいつはそんなことないと否定するだろうし、きっと自分ではそうとはわかっていない」

菫「だが、私にはできないことをあいつはやってくれてる」

菫「正直、私の実力では皆を全国に連れて行くことはできない」

京太郎「…そんなこと」

菫「いいんだ、自分のことは自分が一番わかってるつもりだ」

菫「……もっとも照にはもっと多くのことが見えているんだろうけど」



菫「だから、だからな」

菫「あいつに、照に返せてないものが多すぎるんだよ」

京太郎「……」

京太郎「…ふだん部長に迷惑かけてるって、照さん言ってましたよ」

菫「……まあ、ささいなことだ」

京太郎「…間がありましたね」

菫「…スルーしてくれ、頼む」



菫「……照はたまに、どこか遠くを見つめるような顔をすることがあったんだ。ひどく憂鬱そうに」

京太郎「…いつからですか」

菫「最初から。正確に言うと部に馴染んですぐくらいから」

菫「何か思い悩んでいることがあると聞き出すのに数ヶ月、妹がいると教えてくれたのがさらに数ヶ月後」

菫「…基本自分のことを話そうとしないんだ、あいつは」

京太郎「…詮索されたくないからですか?」

菫「わからない。ただ…それだけではないとは思うんだが」

京太郎「他の部員は」

菫「何も知らない。照も何も言っていないはず」

京太郎「それなら俺との間柄を伏せるのも納得がいきます」


菫「そう、それだ」

菫「嫌じゃなかったのか」


京太郎「…正直戸惑いましたよ。そんなこと言われるとは思ってなかったんで」

京太郎「でもまあ……すっかり忘れられているのも覚悟してたんで、大したことなかったですよ」


京太郎「覚えててくれただけで、十分嬉しかった」

菫「ふぅん…」

菫「愛されてるな、あいつ」

京太郎「…誰にですか?」

菫「君にだよ」





京太郎「……え?」

菫「……え、ってなんだ」

京太郎「いや、違いますよ?」

菫「え?」




京太郎「いやいや、無いですって。確かに一人の人として好きですし尊敬してますけど、男女のどうとかそんな」

菫「はぁ」

京太郎「だいいち今そんな余裕もないですから」

菫「余裕があったらあり得るのか?」

京太郎「いやそれは……そんなこと考えたことなくて」

菫「子どもか」

京太郎「子どもですみませんね。……そんな風に見えます?」

菫「わざわざ照を追いかけてはるばる一人で来るくらいだから、そういうことだろうと」

京太郎「……やっぱりおかしいですかね」

菫「事情が事情だからわからんでもないが……まあ普通じゃないな」

京太郎「…何より照さんが嫌がりますよ、そんな」

菫「私はそうは思わないが」

菫「…つまらないな」

京太郎「…先輩案外そういう話題好きですよね」ジトー

菫「私も女子高生だということだ。悪く思うなよ」フフッ

京太郎「勘弁してくださいよ…」




京太郎「とにかく、俺にそんな下心はないです。今は恋愛してる場合じゃないですし」

菫「…まあなんでもいいさ。君がそうなら私は何も言わない」

京太郎「なんですかその含みのある言い方は」

菫「…いや、恋の一つでもしておくべきだったなと自分を省みてね」

京太郎「…先輩ならラブレターの一つや二つもらってそうですけど」

菫「…君の言葉は妙に鋭いな。黙秘権を行使させていただこう」

京太郎「どういうことですか…」






スタスタ スタスタ

京太郎「忙しい中ありがとうございました」

京太郎「ご馳走にまでなってしまって」

菫「これくらいはさせてくれ。君も疲れてただろうに」

京太郎「部長よりは体力あると思いますよ。さすがに男ですし」

菫「そうか…まあ、そうだな」


菫「……今日話したことは他言無用だ。むろん照にも言うなよ」

京太郎「もちろんです」

京太郎「…先輩」

菫「なんだ」

京太郎「思ってることはちゃんと伝えてあげてくださいね」

菫「…参考にさせてもらう」



菫「……結果論でしかないが、君の秘密を早く知れて良かった」

京太郎「……」

菫「一人で抱えるには…大きすぎる」

菫「だから君も遠慮なく、私に頼れ」

京太郎「…男前ですね部長」

菫「…褒めてるのかそれは」

京太郎「もちろんですよ。……ありがとうございます」

菫「最初からそう言え」プイッ



菫「…私も、照には仲直りしてほしい」

菫「照が麻雀を楽しむ、そのための必要条件だから」

菫「…私のわがままかな?」

京太郎「俺は何も言えませんよ」

菫「わかってるさ」



菫「…どうか、力を貸してくれ」

京太郎「…こちらこそ、よろしくお願いします」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「おめでとう、京ちゃん。頑張ったんだね」

「…そんな私なんて、……うん」

「でも、京ちゃんがそっちで頑張ったのが一番だと思うよ。……当然だよ」



「お姉ちゃんは元気?……そう、それなら安心」

「……そっか。……ううん、京ちゃんが謝ることじゃないよ」

「行かないって決めたのは私だから。……だから連絡をお願いしてるんだよ?」

「……ふふっ。……だから気にしないでね。……うん」






「ところで、さ」



「京ちゃん明日も練習?」

「……そっか、じゃあちょっと長くお話ししても大丈夫かな」

「うん、ちょっとね。大事な話。」

「……びっくりする?…かもね」

「ねえ、聞いてくれる?ずっと言いたかったこと」

「あのね、京ちゃん……私ね」

ここまでー
初期プロットでは「役割:未定」になってたその二人、これからどう絡むか全然分からん!(出番はあります)
明日か明後日にでも

夕飯食べつつぼちぼち投下ー
咲さんのターン、でもない

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






照「……」ペラッ

照「……」





京太郎「すみません、お待たせして」

照「……読書してたから」

京太郎「図書室で正解でしたね、待ち合わせ」

照「……」ペラッ


京太郎「何読んでたんですか?」

照「……ノルウェイの森。村上春樹」

京太郎「村上春樹…ですか」

照「知らない?」

京太郎「……聞いたことはあります」

照「……あなたにはまだ早い」パタン

京太郎「えー」


照「……それで、何の話?」

京太郎「はい。話、というか、ご報告というか……」ポリポリ

京太郎「昨日、咲と電話しまして」

照「……」ピクッ












京太郎「咲が、麻雀部に入りました」





======================================





京太郎『……そっか』

咲『…思ったより反応薄いなぁ』

京太郎『いや、驚きすぎて言葉が出なかった』

咲『そんなにびっくりした?』

京太郎『びっくりした、そりゃあもう』

京太郎『…え?あれだけ麻雀はイヤって言ってたのに』

咲『…そうだね』




京太郎『だいたいあの咲がなぁ…誰かに勧誘されたとか?』

咲『ううん、自分で決めたの。……あのって何、あのって』

京太郎『いやぁ…だってお前知らない人と話せるタイプじゃないじゃん』

咲『んぐっ』

京太郎『中学も昼は中庭か教室で読書、放課後は図書室に通い詰めで司書の先生とは仲良かったけどさ』

京太郎『こう、…必要がないと積極的に人と絡もうとはしない…でしょ?』

咲『…私だって頑張ってるもん』プクー




京太郎『…照さんに、会うためなんだろ』

咲『……こういう時は察しが早いよね、京ちゃん』

京太郎『咲だからな』

咲『そうでもないと思うけどな…』

京太郎『なんだよそれ』

咲『京ちゃんには教えてあーげない』フフッ

京太郎『なっ!?』



咲『あのね、京ちゃん』

京太郎『…なんだよ』

咲『私は、待ってるだけじゃダメだと思った』

京太郎『……』

咲『京ちゃんが私とお姉ちゃんのために頑張ってる』

京太郎『……自分のためだよ』

咲『それでも、別にいい』

咲『私も、頑張らないとって思ったから』

咲『できることをやりたいって思ったから』




咲『だから、私は勝って全国に行くよ。京ちゃんがお世話になった龍門渕の人たちも倒して』

京太郎『…そうか』

咲『なに?がっかりした?』

京太郎『まさか』

京太郎『側にいたら頭くしゃくしゃに撫でてる』

咲『もう、また子ども扱いするー』

京太郎『咲の頭が撫でやすい位置にあるのが悪い』

咲『今度会ったらそう出来ないくらい大きくなってたりするもん』

京太郎『ねーよ、絶対ない』

咲『ふんだ。京ちゃんのバカ』

京太郎『…なあ、咲』

咲『なに?』

京太郎『頑張れよ』

咲『……ありがと』



=================================



照「……」

京太郎「連休前にはもう入部してたみたいで…毎日練習しているとか」

京太郎「団体と個人、両方にエントリーする、と」

照「……そう」




照「…それで」

照「私にどうしてほしいの?」



京太郎「……俺は」



京太郎「俺は、何かを求めたりしません」

京太郎「そんな立場じゃないですから」

照「…そういうことじゃない」

京太郎「そういうことです」

照「……」

京太郎「先輩なら、どうするべきか判断できるはずです」

京太郎「…俺だって、咲の件は想定外だったんです」

照「……」

京太郎「あいつはあいつなりに、前向きに取り組もうとしている」

京太郎「俺はそれを伝えたかった。……それだけです」




照「…一つ聞いてもいい」

照「…どうして、白糸台(ここ)に来たの?」

京太郎「……『お姉ちゃんをよろしく』」

照「……」ピクッ

京太郎「そう、頼まれたからです」


京太郎「…困った顔しないでください」

照「…だって」

京太郎「俺はどうあっても先輩の味方です」

照「っ……」

京太郎「だから……だから、焦らなくていいんです」

京太郎「俺、ちゃんと待ってますから」

照「……」

京太郎「俺も頑張りますよ」

京太郎「一緒に全国行きたいですからね」ニカッ







京太郎(ああ調子乗った!変にカッコつけてない?『待ってますから』キリッってなに?)

京太郎(照さんドン引きだったらどうしよう…うわモウシニタイ)ブンブン

ママーナニアノヒト
シー ミチャイケマセン



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



『一緒に全国行きたいですからね』ニカッ


照(……)



照「……ズルいよ」




ここまでなのです
今週中に投下に来たい

これは落ちたな

サッカー傍目に見ながら投下
>>446 (まだ)落ちません!(頑な)


四月某日








『咲ちゃんのお弁当、美味しそう』

咲『そ、そうかな』

『ダメだよ咲ちゃん油断したら。この子隙をついて食べちゃうかも』

『そんなことしないよ!』

咲『あはは……』






『午後の授業なんだったっけ』

『確か現文と、数Ⅰ?』

『えー、数学かぁ……やだぁ、因数分解全然わかんない』

咲『私も数学はちょっと…』

『でも、咲ちゃんこの前のテストまあまあよかったでしょ?国語とか特に』

『そうだよ。いいなぁ…咲ちゃんみたいにたくさん本読めばいいのかな』

咲『うーん…どうかな』





ガララッ
??『しっつれいするじぇ!』


ババーン



『ん?』



パタパタ

?『ゆーき待ってくださいっ』


ザワッ

『隣のクラスの子だね』

『カチコミに来たのかな』

『なんでそうなるの…』




??『……』スゥ…

??『この中に、宮永咲ちゃんはおるかー!』

?『う、打ち合わせと違うじゃないですかゆーき…』




『呼ばれたよ咲ちゃん』

『これはカチコミだね咲ちゃん』ワクワク

咲『ひぇっ…』


                 ~~    ~~
                   -―――-    ~
              ~ .....::::::::::::::::::::::::::::::::.::::::::::::`丶
            /:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::\  }

            } .:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::. {
           { /::::::::::::::/:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::.
           .:::::::::::::::::::::::::::│::::::::::|\:::|\::::|:::::::::::::::::::::::. }
         } /::::::::::::::::::|::::: / | ::|:::::::ト- ::|--∨\ ::::::::::::::::| {
       { /::::::::::::::::::/|::::::|ノ|:八 ::::| _..斗-=ミ\| ::::::::::|::::|
      /::::::::::::::| :: /-匕-=ミ\|\|  〃⌒゙ヾⅥ :::::::: |::::|  }
        ̄ ̄ |::::::|::イ /〃⌒ヾ     {{    }} }|/| ::::::|::::|  {
      {  |:: 八ハ{ {{   }}     ゞ==(⌒) | :: /:::::|

       } |/|::: {. ハ (⌒)==''         ///  |/}:::::|
            |:::: ヽ_| ///              __,ノ :::::|  }
.          { レヘ::八     _.. ‐~‐-、   イ ::::::::::::/  {
           }   ∨个 .._ (_,,.. ‐~~' イヘ:::/|/∨
                 \|  _≧=一ァ  〔/⌒T:iT7ス
                r=Ti:i:i:i:i:i:7____/i:i:i:i:i:i:i/ ∧  }
               {  ∧i:i:i:i:i:i:i:i:|   /i:i:i:i:i:i:i/   / ∧ {
                } / {\/⌒)_∠二二/|    / ∧
              /  ゙T{  二(__ `ヽ        _ヽ
            /   ∨ハ.  {_  /     \/  _〉
.            { /\ _ |  ノ   _) 人._     |_/|/ }
              } \_____,|/  /i:i\     ̄ ̄`ヽ  j  {
             ∨ /   /|i:i:i:i:i|\            |
              /     /´|i:i:i:i:i|  丶 ... ______丿
               〈         Ⅵ:i:i|       |    }
              、___/    Ⅵ:i|       |   {


『怖がらせてどうするの』ズビシッ

『痛い…冗談だよじょうだん』




咲『は、はい…私、です』スクッ

『お、いった』



??『お?…よかったよかった、私の読みは間違ってなかったじぇ、のどちゃん』

?『そ、そうですね…』


スタスタ
??『君が宮永咲ちゃんか…ほぉー……ふーん……』

咲『え、えぇっと…』

?『……ゆーき』

??『よし咲ちゃん、悪いがわれわれとご同行願うじょ』

?『ちょっとゆーき!?』ボソボソ


咲『あ……うん。わかりました』


『…咲ちゃん大丈夫?』

咲『うん、心当たりあるから。ちょっと行ってくるね』

『そっか。いってらっしゃーい』フリフリ

『いってらー』



パタパタ

?『すみません皆さん、お騒がせしました』ペコリ

タッタッタッ




『……デカいね』

『デカいね。…なんなんだろうね』

『ねー』






?『ごめんなさい宮永さん。訳も言わずに連れ出してしまって』

??『…あれ、私説明してなかったか?』

?『…してないですよ』ジトー

??『そうか、ごめんな咲ちゃん…』

咲『ううん、私は大丈夫…だよ?』




『自己紹介が遅れてすみません。私は隣のクラスで麻雀部所属の、原村和と申します。そしてこちらが』

『のどちゃんと同じクラスで同じく麻雀部の片岡優希、だじぇ!気軽に優希と呼んでくれて構わないじょ』

咲『あ、あぁぁえっと……私は宮永咲、です』

和『知ってますよ』ニコッ

咲『あぁぁ、そうだった…』

優希『咲ちゃん面白いじぇ』




和『それで、今日は学生議会長の代理で私たちが来ました……こう言えば分かると言付かったんですが』

咲『あ……うん、たぶん大丈夫…』

和『では、いまどこに向かっているかわかりますか?』

咲『…いつも移動教室に使う道だとはわかるけど……』

優希『それは間違いないじぇ。ここをまっすぐ行くと美術室や音楽室にとうちゃーく!だからな』

和『今日はこっちの渡り廊下へと向かいます。そして階段を上ると…』




和『こちらが、麻雀部室です』

優希『部長に染谷先輩!お待たせしたじょ!』バーン

和『ノックくらいしたらどうですか、ゆーき…』

咲『わわっ…』



??『おっ、ようやく来たかの』

?『さあ、遠慮せず入った入った』




咲『会長さん…』

久『あら、私が麻雀部員だって知ってたんじゃないの?』

咲『いえ…お昼休みにいるとは思わなくて…』

久『それはこのお手紙のおかげよ』パラッ

久『見覚え、あるでしょ?』

咲『…私が書きました』



まこ『なんじゃ、それは』

和『…染谷先輩もご存じないんですか?』

まこ『久が昼休みに部室に来とけと。事情は何も聞いとらん』

久『だってー、お楽しみは直前まで秘密のほうがその分楽しめるでしょ?』

優希『それもそうだ!何味かわからないタコスにかぶりつくのもスリリングでまた一興だじょ』

和『全然違う話だと思いますよ、それは』





久『内容を要約するとこうね。





「麻雀部に入部したいんですが場所がわかりません。


迎えに来てください 宮永咲」』




和『…なるほどですね』

まこ『…どういうことじゃあ』

咲『え、えっとぉ……その…私、方向音痴で』

久『どうしてこれが学生議会の投書箱に入っていたのかしら?』

咲『移動教室の途中に投書箱があったのはなんとなく目についてて。そういえば会長が麻雀部の紹介で出てたなって、ふと思い出して…』

まこ『…方向音痴はそんなにひどいんかのう』

咲『…今日も連れて来てもらったけど、一人で来れるかというとそんな自信は全然ないです』

まこ『そ、そうか』

いったん切ります
コミュ力の話はまたおいおい

こっそり投下ー



久『……活動は基本放課後、テスト休みとかは校則やら指導やらに準じつつ臨機応変に、ね。設備は見ての通りよ』

咲『あ、あの』

久『なにかしら?』

咲『…インハイには、参加できますか』



まこ『インハイ、か』

優希『咲ちゃんが入れば、五人揃うじょ』

和『団体戦にエントリーできますね。でも…』


久『どうして』
キーンコーン カーンコーン



久『予鈴ね…続きは放課後、というところかしら』

久『…宮永さんがどれくらい打てるか見ないといけないし。インハイにしたってそれ次第』

久『来てもらえる?』

咲『わかりました』

久『まこ、今日は部活出られるのよね?』

まこ『ああ。…お前さんは?』

久『ちょっと会長として野暮用がねー。少し遅れるけど終わったら行くわ』

久『鍵開けお願いね。で、揃ったら四人で打ってて』

まこ『わかった』

久『優希、和、放課後に宮永さんをまた迎えに行ってもらえる?』

優希『了解だじょ』

和『わかりました』







久『おっまたせー、みんなやってるー?』


優希『そんな…そんなこと…』

和『SOASOASOA』





久『えっ何これ』

まこ『やっと来おったか…見ての通りじゃ』



久『三連続プラマイゼロ…ね』

久『…でもそれじゃ大会では勝てない。インハイになんて出られない』

久『そうでしょ?』

まこ『久…』

咲『わかってます』

久『…どうしてあなたがインハイにこだわるか、聞いてもいいかしら』

咲『……』




咲『……私、麻雀があまり好きじゃないんです』



『……』

咲『もう少しちゃんと言うと、好きじゃなくなった。楽しい思い出があったけど…辛いことがあって。全部上書きされてしまったんです。私が悪いんですけどね』

咲『でも……私がまた麻雀を心から楽しめるように、頑張ってくれてる人が、いるんです』

咲『私と同じ思い出を共有していて…自分も辛かったはずなのに、私を責めたりしなかった』

優希『その人とインハイで会う約束をしてるってことか?』

咲『約束はしてないけど…でも、絶対来る。それに…』

咲『今回が最初で最後のチャンスなんです。お姉ちゃんと打てるかもしれない、ラストチャンスなんです』

咲『インハイに出て、卓を囲まないと私の気持ちはきっと伝わらない』

久『えっと…?つまり「その人」と宮永さんは幼馴染みたいな関係で、そこにお姉さんが関わっている、と』




咲『…そうですね。隠してもしょうがないのでもう言っちゃいますけど』

咲『お姉ちゃんと喧嘩別れ、しちゃったんです。……もう何年も会ってなくて』

まこ『そのお姉さんっちゅうのは、一人で?』

咲『…丁度そのタイミングで両親が別居しちゃって』

まこ『…すまんのう、嫌なこと思い出させて』

咲『大丈夫です。…それで私の幼馴染は、私たちが仲直りできるように…わざわざお姉ちゃんの学校に、麻雀部に入ってくれたんです』




優希『「絶対来る」ってことは……お姉さんもその人もきっと麻雀強いんだな』

まこ『…ちょっと待ちぃ、宮永って、まさか』

久『宮永照。…言わずと知れたチャンピオン、かしら』

優希『なんと』

咲『…やっぱりわかっちゃいますよね。他の人には秘密で…』

久『それは構わないけど…なんとまあ』



久『…さっきから大人しいわね和。そんなにびっくりした?』

和『いえ、その…』

和『宮永さんってこんなに話すんだな、と。ちょっと意外に思いまして』

咲『…うん。私は…まあ今もですけど、すごく引っ込み思案で』

咲『ずっとその幼馴染に頼りっぱなしで。その…お姉ちゃんのこともあってから、ますますそういうふうになっていって』

咲『…もうそのままでもいいと思う自分もいました。でも、京ちゃんはそうじゃなかった』



咲『京ちゃんが白糸台に行きたいとわかって、私も自分を変えないといけない、と思った』

咲『だから…だから、自分で言うのもあれなんですけど……結構頑張って、る、つもりで……』

咲『……』カァッ

優希『咲ちゃん真っ赤だじぇ』

咲『ご、ごめんなさい…急に恥ずかしくなって……』


                  _........----......._
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                ___/-'-'-- 、/〉「-、/ '
          ,.. <:::::::::::::::{======ミ`ヽ|〉::`::::...._
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======================





もうあれから、二ヶ月くらい経つ。

その後京ちゃんが男の子だってわかってまた一騒動あったのは、また別のお話。





「勝つ」ための打ち方が、私にはどうしても必要だった。だから急いだ。

ありがたいことに、清澄のみんなは個性豊かで実力十分な打ち手ばかりだ。去年まで大会に出ていないのがおかしいくらい。

それに…すごくいい人たち。基本マイペースでおっちょこちょいな私がどうにかやれてるんだから、間違いない。


そして……




和「あとはお願いしますね、宮永さん」

咲「うん。頑張るね」




県大会決勝。清澄高校がトップで、私の出番。



咲「ぅ……」ゾクッ

和「宮永さん?」

咲「…何でもないよ」ニコッ



さっきからひどい圧を感じ取っているけれど…別に怖いとは思わない。

むしろ、楽しみ。




ああ、麻雀ってこんなに楽しかったんだ、って。きっと今日、そう思えるはずだ。
京ちゃんのおかげで、私はやっとスタートラインに立てた。


咲「…いってくるね」


インハイで待っててね、京ちゃん。…お姉ちゃんをよろしくね。
そして……会いに行くからね、お姉ちゃん。




同日




淡『リーチ!』



京太郎「あー、やっちゃいましたね」

尭深「やっちゃったね」

誠子「やっちゃったな」

照「……」

菫「…まあ、ここまで出さなかったことは褒めておこう」

京太郎「無罪放免ですか?」

菫「いや?いつも通り叱りつけるよ。…あの手は図に乗せたらダメだからな」



京太郎「ともかく、地区大会優勝おめでとうございます」

菫「…次は君の番だよ」

尭深「女子も同時進行だから付きっきりにはなれないけど…応援してる、からね」

誠子「頑張りなよ」ポンポン

京太郎「ありがとうございます。…頑張ります」

照「……」


淡「じゃっじゃーん!淡ちゃんが帰ってきたよ!」

誠子「お、ダブリー淡だ」

淡「ねえ見た?すごかったでしょあれ!リーチ!ってやってバーンってしてドカーンって」

菫「ああ見たぞ淡。そこのモニターでばっちりな」

淡「す…すみれせんぱい?…こえが…かおもこわいのは…どうしてかなー」

菫「お前わかってて言ってるなこの!」グリグリ

淡「むひゃー!ぎぶ、ぎぶぎぶぎぶ」



照「……」

テクテク
ペタン

京太郎(て、照さんがすぐ隣に)

京太郎「…先輩、向こうも空いてますよ?」

照「近くは嫌なの?」

京太郎「…そんなことはないです」


照「……私は頑張ってとは言わない」ボソボソ

京太郎「……」

照「今までだって十二分に頑張ってる。それに」

照「…実力は私がよく知ってる。普段通りにできれば、きっと」

京太郎「…先輩からそう言われると、心強いですね」



照「…それだけ」スクッ

京太郎「あっ…」

テクテク

京太郎(行ってしまった…)



<あれだけ念を押しておいたのに、なんでまた
<だって、点数負けたくなかったんだもん


照「淡お疲れ様。よく頑張ったね」

淡「テルー!スミレがねー……」






京太郎(まっそうだよね、俺に特別声かけたとか、そんなわけないよな)

京太郎(よし!明日に集中集中!)パンパン

投下間隔グダグダで申し訳ない
今週は多忙のため多分書き進みません
いろいろ動くところなんで慎重にいきたい

あと咲さんはなぜかAA使いたくなる謎

豪雨の被害に遭われた皆様にお見舞い申し上げます
地元は雨こそよく降り避難指示も出ましたが大きな被害は出ずに済みました

この週末で少し進めるつもりですのでお待ちを、取り急ぎ

こんばんは
日は変わったけどセーフ?だよね
途中までですが投下ー








「須賀、お前全国大会出るんだって?」

京太郎「まあな。…情報早いな、俺誰にも言ってないのに」

「…いやいや、みんな知ってるぞ」

「ただでさえ女子が黄金時代なのに男子も全国出場、そりゃあ盛り上がること間違いない」

京太郎「…そんなもんかね」

「そんなもんだ。……頑張れよ」

「放送あったら見るからな、応援してるぞ」

京太郎「おう。サンキューな」



「ところでどうなのさ、麻雀部」

京太郎「何が?」

「何がって、そりゃ…お前…」

「聞いたところでは実質男子一人だって」

京太郎「ああ…まあ、そうだな」

「俺ならぜってー無理。胃に穴あきそう」

「え?めっちゃイイじゃん。男なら憧れるだろ?は・あ・れ・む」

「お前自分の顔を鏡で見てからそういうこと言えよ」

「なん…だと……まあ、そう、だけどさ…」ズーン

京太郎「一人で盛り上がって一人で落ち込むなよ…」



「お前はいいさ、須賀はな……。で?」

京太郎「で?」

「実際どうなのさ、麻雀部」

京太郎「どうって…まあ、楽しいよ。普通に」

「出た!当たり障りのない回答」

「女子となに話すの?」

京太郎「何って…その日の授業がどうだったとか先生がどうとか」

京太郎「あの動画が面白かったとか雨よく降りますねとか。普通よ普通。…そんな困ることある?」

「……見ろこれが男須賀だぞ同士」

「…こいつやはり俺たちとは違う」



京太郎「ああ、そうか…俺の場合、幼馴染で慣れてたってこともあるな」

「…女子のか」

京太郎「…そりゃあ、まあ…そうじゃないと文脈的におかしいだろ」

「聞きました?奥さん」

「ええ、幼馴染ですって」

「想像上の産物とばかり思っていたものを…この男は!」

「しかもそれがなんでもないように!この裏切り者!」

京太郎「さっきから大丈夫かお前ら」





「でさ、まあそういう答えを求めてるんじゃなくて…」

京太郎「なんで急に小声になるんだよ」

「いや、こう……わかる?男子高校生のリビドー…そいつを刺激するような…俺はそういうのを求めてるんだ」

「そんなことでキメ顔すんな気持ち悪い」

京太郎「…なに、浮いた話が欲しいの?」

「浮いた話…うーん、ちょっと違うけど…許す」

京太郎「なんで上から目線なんだよしばくぞコラ」




トタタタタ

京太郎「走んな走んな」

「きょーたろー!ノート貸して!」

京太郎「ボリューム下げろよ聞こえてるから…古典?数学?」

淡「どっちも」ムフー

京太郎「お前授業中何してたんだよ」ガサゴソ

淡「古典はぽけーっとしてて、数学は寝てた」ドヤァ

京太郎「また部長から叱られるぞそんなんじゃ…ほらこれ」

淡「ふっ、やっぱり持つべきものはきょーたろーだね…」

京太郎「何言ってんだお前」

淡「ちょっと借りとくね、ありがとー」ニヘラ

トタタタタ


京太郎「…忙しいやつ」



「……ほら、例えば今の大星淡」

京太郎「淡がどうかしたか」


<よし、これでだいじょーぶ
<淡この前もそんなこと言ってたけど全然だったじゃん
<うけるー



「容姿だけならA、部活も強豪麻雀部のレギュラーで大将、性格は高飛車で少々難ありとも言われるが俺は無視できるレベルとみなしている…」

「お前は谷口か」

「WAWAWA…じゃねえよ!まっ、とにかく大星への評価を総括すると『ちょっととっつき辛いけどぜひお近づきになりたい美少女』ってとこだな」

京太郎「…過大評価じゃねえかな、うん」

「…独占欲?」

京太郎「いやいや、本当のあいつを知らんからそんなこと言えるんだ」

「お近づきにすらなれん俺たちへの皮肉かそれは」

京太郎「そうじゃねえけどさ」




「そんな大星とお前は名前で呼び合う関係なんだぜ」

「うん、こいつの言ってることは気持ち悪いけどそこは本当にすごいと思う。言ってることは気持ち悪いけど」

「なぜ二回言ったし」

京太郎「そう言われても…名前呼び提案してきたの向こうからだし」

「は?」

「え?」

京太郎「え?」

「ならなおさらじゃん…あの大星だよ?お前以外の男子と話してるのろくに見たことないぞ」

「…須賀さぁ、なにかメソッドでもあんの?女子と仲良くなる方法」

京太郎「そう言われてもなあ」

一旦切ります また今晩



「じゃあさ。お前的には大星はありなの?無しなの?」

京太郎「え、なにその修学旅行の深夜にするような話題」

「今更でしょ」

京太郎「えぇ……」

「ほらハリーハリー」

京太郎「いや、この前も似たような話をしたんだけどさ」

「また女子とか」

京太郎「ああ、まあ…先輩とな」

「ほーん」

京太郎「今はそれはいいだろ…でまあ、今は部活だったりに集中しててそういうことまで考える余裕がない」

「…なにそれ」

「引くわーないわー」

京太郎「お前ら辛辣すぎんだろ」




「…それが良かったかどうかともかく」

「確かに結果出せてんだからな、俺たちは何も言えねえ」

「まあそうだな」

「だがな、須賀」ズビシッ

京太郎「…なんだよ」

「高校生活はたった三年間。恋の一つもしないと損だぜ」

「その人のために頑張れるとか、そういうプラス面もあると思うし」

「…別に今すぐ誰かと付き合えとか、そういうこと言ってんじゃない。ただそういう選択肢もお前にあるってことよ。それを忘れんな」

京太郎「…おう。肝に銘じとく」

「…きっと人の恋バナ聞いて楽しみたいとかそんなとこだと思うけどね、こいつの場合」

「あ、バレた?」

京太郎「…ふざけんなよテメエ」






淡「なんでほーかごまで勉強しないといけないかなー」

菫「理由を教えてやろうか淡」

淡「ひゃっ」

菫「一つ、期末テスト前であること。一つ、大星淡は中間テストであまり良い成績を残せていないこと」

菫「そしてもう一つ、赤点など取ろうものなら全国大会への出場も怪しくなるということ」

淡「マジで!?」

菫「マジもマジ、大マジだ。…さて、説明されているはずのそんなことをなぜ把握していないのかお前に根掘り葉掘り尋ねたいんだが構わないか」

ゴゴゴ ゴゴゴ

淡「助けてきょーたろー!」

京太郎「諦めて勉強しろ、まだ時間はあるから」カキカキ

淡「そ、そんな…来ないで、いやぁ…ぎにゃー!」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



京太郎『勉強会、ですか』

菫『そうだ。…もちろん淡がメインなんだが』

京太郎『すみません、俺が付いていながら』

菫『いやいや、そこまで把握しておけとは言えないさ。あいつの自己責任だしな…だが』

京太郎『あいつが出れないのは困りますね』

菫『白糸台にとっても、淡にとってもな。なんとしても頑張ってもらわなければ』

京太郎『部室使って大丈夫なんですか?』

菫『事情を説明したら先生も快く許可を出してくれた。心配までしてくれたよ』ハァ

京太郎『……お察しします』

菫『普段から君にはよくサポートしてもらっているから申し訳ないが…協力頼みたい」

京太郎『もちろん、どんとこいですよ』

菫『助かるよ』



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



京太郎「淡さーん、生きてますかー?」

淡「だめ…100年分くらいべんきょーした…もうマヂむり…」プスプス

誠子「魂抜けてキャラおかしくなってない?」

菫「一時間で音を上げるのか…」

尭深「お茶入れようか?」

淡「ふえぇぇ…」




京太郎「すみません、先輩たちにも付き合わせてしまって」

誠子「いいのいいの。私も一人だとサボりがちになるし、ちょうど良かったってことで」

淡「淡ちゃんふっかーつ!」

尭深「二人も良かったらどうぞ」コトン

誠子「お、サンキュ尭深」

京太郎「ありがとうございます」

淡「ねえ、聞いてた?ねえったらねえ」




照「……」ペラッ

菫「…余裕だな」

照「…今日の予定の八割は済んだから。ちょっと気分転換」

菫「…そういうところはちゃんとしてるのが本当に不思議だよ」

照「どういうこと?」

菫「いや、気にするな独り言だ」

照「そう」ペラッ


淡「あっ、テルー本読んでる」

菫「淡もこれくらいできれば…いや、それは求めすぎか…」

淡「?…本は読めるよ!あ、いやでも…あんまり読まなかったり…」

菫「あ、あぁ…そうか」

淡「えっと……スプー…とオニク?」

照「スプートニクの恋人」

淡「スプートニクの恋人!……全然わかんない!」

照「わからなくても別に困らないから大丈夫」



淡「恋人…って、恋バナってこと?」

照「…ある意味そうかな」

淡「おもしろい?」

照「私は好き。……淡には少し難しいかもしれないけど」

菫「現代文の問題で見たことあるな」

淡「うげっ、現代文……楽しい話?」

照「楽し…くはないかな。ちょっともの悲しい、あと不思議な感じ」

淡「えー…楽しい話じゃないのに好きなの?」

照「……そうだね」パタン

菫「そうそう、『すみれ』という女の子が出てきたはずだ。それで覚えてたんだ」

淡「だから読んだの?」

照「そういう訳じゃないけど」

淡「ちょっと見てもいい?」ペラッ

照「どうぞ」


ザーッ


淡「…あー、駄目。眠くなっちゃいそう」

照「…それは残念」

菫「じゃあ淡、続きに戻るぞ」

淡「えー、うー…はーい」

照「……」


ザーッ


照「楽しくないのに好き、か」ボソッ

菫「何か言ったか?」

照「……雨すごいね、って」

菫「ああ…梅雨の本領発揮というところだな」



ザーッ

京太郎「…よく降りますね」チラッ

尭深「そうだね。予報どおり」

誠子「週末も雨だっけ。これじゃ釣りの一つも行けないや」

京太郎「先輩試験前なのに余裕ですね」

誠子「冗談だって。……余裕なんてとんでもないない、私は普通の成績しか取れないよ」

尭深「須賀くんは成績よさそうだけど」

京太郎「そう見えます?」ハハッ

誠子「淡によく頼られてるだろ?宿題とかノートとか」

京太郎「まあ最低限…部活に支障がないようにはしたかったんで。中の上くらいですかね」

京太郎「渋谷先輩は?」

尭深「私はそんなたいしたことないよ」

誠子「と言いつつ…私よりいつも上じゃん」

尭深「それは誠子が本気出してないから…」

誠子「そうそう、本気出せばいつだってオール90越え…ってな訳ないでしょ!これでもホント頑張ってんだって」

京太郎「おお、綺麗なノリツッコミ」




菫「須賀君、ちょっといいか」チョイチョイ

京太郎「はい?」



(紙の山)ガサァッ

淡「…あ、あはは…」

菫「この通り、真っ新なプリントが山ほどある」

京太郎「こんなバラバラで…お前プリント無くしたりしてない?」

淡「…ちょっとわかんないかな」

京太郎「ちゃんと整理くらいしろよ…男子かお前」

淡「むっ、淡ちゃんはぴちぴちのじぇーけー?だもん!」

菫「そんなこと言ってる場合か」コツン

淡「あいたっ」



菫「…穴埋めするだけで済むものは後で見せてやってくれ。全部網羅しようとしなくていい」

菫「とりあえずこの時間は問題の解き方を押さえさせて…この辺の対策プリントとか」

京太郎「…ここから出すって先生も言ってました」

菫「そうだろう。……私も教えられなくはないが少々思い出すのに時間がかかる」

淡「じゃあきょーたろーよろしくね」ニヒッ

菫「何がよろしくねだ、よろしくお願いしますだろうが」




照「……」




トコトコ

照「…私も、手伝おうか」

京太郎「……?」

菫「や、それは助かるんだが…いいのか」

照「私はだいたい終わったし…菫も自分の勉強があるだろうから」

淡「えっ、テルー教えてくれるの!?」

菫「…っ、そうだな。お言葉に甘えさせてもらうよ」

淡「やった!テルーだいすきー!」ヒシッ

京太郎「…ほら席付け淡。時間ないぞ」

淡「はーい」



京太郎「先輩、プリントが…とりあえずこの辺りですかね」

照「うん、そうだね…」ペラッ

照「……ごめん、数学はちょっと自信ない」

京太郎「あ、はい。えっとじゃあ……こっちが古典文法なんですけど」

照「……うん、これはたぶん大丈夫」

京太郎「よかったです、俺うまく説明できるかわかんなかったんで。目を通しててもらえますか?」

照「わかった」

京太郎「…それじゃ、第2ラウンドスタートだ。歯ァ食いしばれよ淡ィ!」

淡「あわっ、ひっ、ちょ、ちょっと待って!」



>ンギャー








菫「鍵閉めるぞー」

「「「はーい」」」



シトシト

京太郎「お疲れ、淡」

淡「うぅ……」

京太郎「必要そうなプリントは後でL○NEで送っとくから、ちゃんと見とけよ」

淡「うん……みんなありがとう……私はもう…おやすみー」ポケー

京太郎「…やれやれ」




京太郎「先輩」

照「……お疲れ様」

京太郎「お陰で助かりました。一人じゃ手に負えなかったんで」

照「……」

京太郎「…先輩?」

照「…テスト頑張ってね」

京太郎「あ、はい…」



京太郎(いつもクールに見せてる照さんだけど、今日は輪をかけて何考えてるかわかんねえ…)

京太郎(俺何かやっちゃったかな…?いや、でも…)




テクテク

照(雨降り続くあじさい通り)

照(…傘差さなきゃ、きっと風邪ひいちゃう)



チラッ ピタッ

照(……止まない、な)


照(止みそうにないよ、私も)

テクテク




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

淡「じゃじゃーん!」

京太郎「…おう」

誠子「…なんとか赤点回避…してるね」

菫「褒められた点数ではないがな」

尭深「よかったね、淡ちゃん」

淡「ふっふーん」


ガチャ

照「…私が最後」

淡「テルー、見て見てー!ほらっ」

照「……あっ、テスト」ドーン

菫「それ以外何があるんだ」

>>526ミス


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

淡「じゃじゃーん!」

京太郎「…おう」

誠子「…なんとか赤点回避…してるね」

菫「褒められた点数ではないがな」

尭深「よかったね、淡ちゃん」

淡「ふっふーん」


ガチャ

照「…私が最後」

淡「テルー、見て見てー!ほらっ」ドーン

照「……あっ、テスト」

菫「それ以外何があるんだ」




照「淡、お礼は言った?」

淡「えっ?」

照「みんな時間を空けて勉強会に集まったんだよ」

淡「あっ…えぇー、うーんと……」

淡「…このたびは、みんなのおかげで赤点取らずにすみました」

淡「本当にありがとうございました」ペコリン

照「うん、偉かったね」ナデナデ

淡「えへへー」





菫「じゃあ、須賀君、あと尭深も」

京太郎「はい、今準備を」

尭深「了解です」

誠子「えっ、何かあるんですか」

菫「まあ、すぐにわかるさ」


淡「え、なになに?」

京太郎「なんだと思う?」

淡「冷蔵庫の前…たかみーが準備…あっ、おいしいお菓子を買ってきてくれたの?」

京太郎「…惜しい。ほぼ正解なんだけど…ほら」

照「……チョコレートケーキ。しかも手作り」ヒョコッ

淡「…あっ、合宿の時の約束!」

京太郎「ご名答。切り分けるからちょっと待っとけ」

淡「やったー!」







淡「なにこれおいしー!」

菫「甘いがしつこくない…しっとりしたチョコとこのゴツゴツした生地…これは」

京太郎「コーンフレークを砕いて溶かしバターと練って皿に敷くんです。湯せんしたチョコレートに生クリームなどなど混ぜて流し込んで冷やして完成。簡単ですよ」ニコッ

誠子「…だめだ、女子力で負けてる気がする」

尭深「美味しいから、いいよ、うん」

誠子「でもぉー…うん、いいや…美味しいなあ」



照「……」モックモック

京太郎「…いかがでしょうか」

照「……」

京太郎「……お口に合いませんでしたか…?」

照「……」フルフル

照「…すごく美味しかった」

照「ちょっとびっくりして、言葉にできなかっただけ」

京太郎「…あぁぁ…よかった、それならよかったです」

照「毎日作って欲しいくらい」

京太郎「」



誠子「おお、先輩大胆」

尭深「……たぶんそこまで考えてないと思うよ」

菫「…さてな」

淡「むっ……おかわり!おかわりちょーだい!」

とまあフラグ回収までして今日は終了
次からは夏ですね

空いちゃいました
ちょこっと投下



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー







淡「…あつーい」

京太郎「さっきも聞いた…余計暑くなるからやめてくれ、頼む」

淡「だってありえないでしょ!エアコン故障するなんてさ」




誠子「うへぇ…窓から風は入るけどヌルいやこれ…」

尭深「…やっぱり上の階は熱くなるね」パタパタ



京太郎「……」パタパタ

淡「ねえきょーたろー」

京太郎「なんだ」

淡「あおいで」グデー

京太郎「やなこった」

淡「あおげ!…けちー」



ガチャッ



菫「…皆揃っているか」

照「……」



尭深「お二人とも、お疲れ様です」

誠子「部長…先生はなんて」

菫「ああ…修理は今すぐにとはいかないらしい。土曜日だからな」

菫「この週末でどうにかするとは言っていたが…どちらにしても、今日は部室は使うなと」

淡「えー」

菫「この暑さだし、熱中症とかになられても困るんだろう」

照「……仕方がない」



誠子「…じゃあ、今日はこれで解散?」

京太郎「それも何かもったいない気がしますね…」

尭深「……」パタパタ



淡「……」ムー

淡「……」ポクポクポクポク

淡「……」ポクポクポクポク

淡「!」キュピーン

淡「…そうだ!」








淡「ねえ、プール行こうよ!」




京太郎「あ?」

誠子「え?」

菫「は?」

照「……」

尭深「…魅力的」パタパタ

淡「でっしょー!プールだよプール!涼しいよー」アワアワ



菫「…水中は涼しいだろうな」

誠子「…部長が淡の意見を否定しない、だと…」

照「…明日雪が降る」

京太郎「降ってほしいですね」

菫「私をなんだと思って…まあ、ただの個人的感想だ」



菫「淡」

淡「はいはーい!」

菫「非常に魅力的な提案だが…水着はどうするんだ」

淡「……ハッ!」


誠子「…いつも通りだな」

尭深「そうだねー」パタパタ



菫「今すぐは行けないし、一度家に戻るのも手間だ。…急な話でもあるし」

淡「…うー」

菫「だから今日は今日で別のことをする。ただ……

明日はどうだ?」

淡「…へ?」



尭深「私は行きます」キリッ

誠子「食いつき早っ!…あー、私も暇だし、行こうかな」

照「……別に構わない」


淡「ほんと!?…スミレありがとー!」ヒシッ

淡「…うわあっつ!」バッ

菫「寄れば暑いだろうそれは…」



京太郎「…イイハナシダナー」

菫「…なぜ他人事なんだ」

淡「きょーたろーも行くよね?」ズイッ

京太郎「え?……いいんすか俺行っても」

菫「男一人は嫌か?」

京太郎「いえ、願ったり叶ったりですけど…他の先輩方は」


誠子「え?別にいいんじゃない?」

尭深「…一人置いてけぼりは、可哀想…」パタパタ

照「……そうだね」


京太郎「みなさん……」ジーン

菫「ま、そういうことだ。男子だから別行動とか、そんな味気ないこと言わないさ」

京太郎「……合宿、雀卓、ケーキバイキング…うっ、頭が……」

淡「何言ってんのきょーたろー」

京太郎「…ハッ、俺は何を」

淡「変なきょーたろー」クスクス

ということでプール回ですが次の次くらい
大したイベントじゃない(中身未定)のであしからずです
多分一週間後

酉入れ忘れ

こんばんは、早速投下




誠子「…じゃあ、今日はどうするんですか?」

菫「これからちょっと移動する。プールほどじゃないが、まあまあ涼しいぞ」

京太郎「…というと?」







淡「あー…暑かった涼しー!」

尭深「ね、ほんとうに涼しい」

菫「大声出すなよ、他のお客さんに迷惑だから」

照「…雀荘、久しぶり」



菫「学校の設備が充実するとな、こんなことでもない限りなかなか来る機会はない。特にウチは」

京太郎「他校に研究されると困るからですか」

菫「そう。余計な情報を漏らしたくないからな。幸いウチは選手層も厚いし練習相手には困らない」

誠子「いいんですか、出てきて」

菫「うん、だから他の人とは打たず一つの卓を借りて六人で回す。都合のいいことにこの店は個室付きだ」

京太郎「カラオケボックスみたいですね…あ、ドリンクバー」

菫「ちょっとここで待っててくれ。…すみません!予約していた弘世ですが……」








淡「起家かぁ」

照「……(お菓子ないのかな)」

菫「尭深がラス親じゃないだけまだいいかな」

尭深「……頑張ります」




京太郎「そういえば雀荘ってあんまり来たことないかもです」ストン

誠子「そうなの?昔から打ってるって言ってたし、てっきり」

京太郎「龍門渕は屋敷の中に立派な麻雀部屋がありましてね…(遠い目)」

誠子「あっ、なるほど」



菫「ロン、3900」

淡「…ぶー、狙ったなー」




誠子「…待って、冷静に考えたら……あの天江衣とか、龍門渕透華とかと練習してたってことでしょ?」

京太郎「…確かに打ってましたけど……そんないつもいつもじゃないですよ?」

誠子「いやそれでもさ」



照「ツモ、500オール」

淡「あ、始まった」ワクワク

菫「なぜワクワクしてる」

尭深「……」ズズッ




京太郎「やっぱり、学年同じだと気になります?」

誠子「まあね、去年の私は見てただけだったから……一年だけであの活躍は眩しかった」

京太郎「確かにオール一年で勝ち抜くのは夢がありますね」

誠子「運とかじゃなく実力で勝ち進んでたからね、去年の龍門渕は」

誠子「…まさか予選で消えちゃうとはね」







照「ロン。2900の一本場は3200」



照「ツモ、1600オール」


誠子「…こうなるとなかなか止められないね」

京太郎「ええ、早い上に読みづらいですし…」




照「……」タンッ

スッ

京太郎「…ん?」

誠子「どした?」

京太郎「いや…」

京太郎「(今、……この感触からすると照さんは意識的に和了りから離れた)」

京太郎「(ここで鳴くと、一向聴は変わらないけど……ほら、次で聴牌できたのに)」ジー

誠子「?」




菫「(まずいな……この辺か)」タンッ

尭深「ロン。1000点の三本場で1900」

菫「……やれやれ、どうにか止められた」

淡「むー、聴牌してたのにー」

尭深「淡ちゃん、今日は全然ダブリーしないんだね」

淡「だってテルー相手だと取られちゃうこと多いし…」


京太郎(…ふむ)




誠子「…須賀はさぁ」

京太郎「はい?」

誠子「…長野に残ったままでも十分強くなれたんじゃない?麻雀」

京太郎「……強くなるためだけにここに来たんじゃないですし。それに…先輩方に会えて嬉しいですよ、俺は」

誠子「…そう。そこには私も入ってんのかな?」

京太郎「もちろんですよ。…何度も言わせないでくださいけっこう恥ずかしかったんで」

誠子「ふーん」ニヤニヤ







尭深「ツモ。裏は…残念、倍満です」

照「…もう少しだったね」

尭深「部長が早和了りしかけてきたので…リーチするしか。もう少し待ちたかったんですけど」

菫「それなら私のハッタリにも効果があったということだな」ジャラッ

淡「わっ!聴牌してない」

尭深「…一本取られました」



誠子「部長さっすがー」

京太郎「呼びました?」

誠子「呼んでない呼んでない。…じゃっ、打ちますかね」コキッ コキッ




尭深「淡ちゃん、ジュース持ってきたよ」コトッ

淡「ありがとー」ニヘラ



京太郎「…前ほど勝ち負けどうこう言わなくなりましたね、淡」

菫「ああ。どこかの誰かが『負けてもそこから学べばいい』とか言ってくれたらしいからな」

誠子「……」

京太郎「それは初耳…あれ?亦野先輩どうしたんですか?」

誠子「な、なんでもない!早く打つよ!」

照「……」



照「……」タンッ

京太郎(照さんと打つのもまあ、こっちに来て何度目かになるわけだけど)タンッ

誠子「チー」

京太郎(…合宿最終日に久しぶりに打てて…相変わらず強いと思った)

京太郎(でも昔みたいに、ただ教える側と教えられる側ってわけじゃなく……もちろん対等じゃないけど、相手になれる)

京太郎(俺はそうありたい、と思ってるのかな)

京太郎(…さて。やっぱり東一は照魔鏡か)チラッ

照「……」タンッ

京太郎「……」タンッ

京太郎(…もう何回も視てるんだ、わからないはずはない)

京太郎(照さんはどんな気持ちで…いや、考えてもしょうがない。今は全力でぶつかるだけだ!)



誠子「ポンッ」カチャン

京太郎(先輩の鳴き麻雀は…俺のスタイルと相性がいい。言わないけど)

京太郎(今ずれて…こっちの気配。さっきの感触と合わせると…)

菫「……」タンッ 白

京太郎(そう…ここで鳴けば聴牌が取れる。でも…それじゃ上手くいかないんだよね)スルー

京太郎(…正直、『牌を引き寄せる』って点においては俺はポンコツだよな。運頼みにも程がある)

京太郎(だけど…)

誠子「……」タンッ

京太郎「ポン」カチャン

京太郎(上手くいくときは上手くいく。これで後は…)




誠子(手読まれてるなー…三つ目が鳴けない)タンッ

菫(先制したかったが…仕方ない。切り替えていく)タンッ

照「……」タンッ 白

京太郎「ロン。3900」

照「!……びっくりした」

京太郎「あ……いや、ちょっと頑張りました」

京太郎「(相変わらず器用ですね、表情変えずに驚くなんて)」

京太郎(……なんて言いかけた、気ぃ緩みすぎだわこれ)パシパシ

誠子(ちょっと頑張ったって…狙ったってこと?照先輩を?)

菫(これは…まだ何かあるな、照)ハァ







照「ツモ。300・500」


照「ロン、1600」


照「ロン。2000の一本場は2300」


照「ロン。2600の二本場は3200」





菫「それだ照。ロン、3900の…五本場は5400」

照「…狙い撃って来たね」

菫「当然、独走されるわけにはいかない」





誠子「……ツモッ!3900オール!」

京太郎「っ…これで、ラス転落か」

菫「亦野の独壇場だったな」

誠子「配牌が良かったです。さて…連荘したいけどなぁ」


京太郎「ロン。2000の一本場は2300」

誠子「ギャフン」

菫「フラグ回収お疲れ様」






1位照 2位菫 3位京太郎 4位誠子

菫「…亦野の課題は防御だな。いつも言っているが」

誠子「いつも言われてます、はい…」ガクッ

菫「まあ、ちゃんと分かってるならいいんだ。さて、次は須賀君と私が抜けよう」





淡「あー、お腹いっぱい打った!」

誠子「ドリンクでお腹いっぱいの間違いじゃないの?」

淡「それもそう……あっ、そんなこと言うから…ちょっとお手洗い!」モゾモゾ

菫「入り口で待ってるからなー」


京太郎「お疲れ様です、渋谷先輩」

尭深「うん、お疲れ様。涼しかったね」

京太郎「ですね…ってそこですか」




京太郎「先輩って暑がりなんですね、意外です」

尭深「そうかなぁ」

京太郎「いつもお茶淹れて飲んでるじゃないですか」

尭深「…緑茶って意外と、体を冷やす効果があるんだよ」

京太郎「マジっすか」

尭深「マジ、だよ」ニコッ



淡「おまたせー」ピョコピョコ

菫「揃ったな。……さて、今日の費用だが、特例で部費から出せることになった」

京太郎「おぉ」

淡「えー、じゃあもっといろいろ頼めばよかった…ピザ食べたかったな」

菫「もちろん場所代だけだぞ」

淡「…ちぇー」

菫「さて、一度学校に戻って、報告してから解散だ。…行こうか」

スタスタ ワイワイ

京太郎「お疲れ様でした、先輩」

照「……うん」

京太郎「夕方なのにまだ暑いですね」

照「…無理してない?」

京太郎「えっ?」

照「体調とか」

京太郎「…ああ、麻雀でってことですね。…流石にぶっ倒れたりはしませんよ」

京太郎「俺も付き合い方がわかって来たみたいで。ちょっと体が重く感じたらあんまり動かないようにとか」

照「…そう、それならいい」

京太郎「また淡がダブリー連発して来たりしたらわかんないですけど」ハハッ

照「……笑えない冗談」





京太郎「先輩は…みんなの先生ですね」

照「…急に、なに」

京太郎「さっきふと思ったんです。…最初の局で、まだ連荘できたのにあえてそうしなかったでしょう?」

照「……そうだね、わかるよね」

京太郎「わざと隙を作って、他の人がどう対応するか…結果渋谷先輩の安手に部長が差し込んだわけですけど」

京太郎「大声じゃ言えないですけど…懐かしい気持ちになりました」

照「…他の人には言わないでもらえる?」

京太郎「もちろんですよ」



淡「きょーたろー!テルー!」タッタッタッ

照「…走ったら暑いよ」

京太郎「どした?」

淡「えっとね…なんだっけ」

「「え?」」

淡「…あっ、明日!明日ね、朝10時に〇〇公園に集合!水着とおさいふをわすれないよーに」

京太郎「お前もな…了解」

照「……わかった」

淡「きょーたろー、遅れたら罰金だよ!」ニッ タッタッタッ

京太郎「なんで俺だけ……」

照「……」



照「淡と、仲が良いね」

京太郎「まあ…否定はできませんけど」

照「……やっぱり付き合ってる?」

京太郎「それ何ヶ月前の話引きずってるんですか……ない、ないですって」

照「そう…ならいいけど」

京太郎「なんでいいんですか、泣きますよ」

照「…募集中?」

京太郎「別にそう言うわけじゃ…やけに食いつきますね」

照「…ちょっとした、気まぐれだから。……うん、そう」

京太郎「…そうですか」

照「……」

期間が空いたので量マシマシで
このままプール編になだれ込みかけましたが力尽きました、キリもいいのでここまで
書き上がれば20時間後にでも

ついさっきまで仕事だってわかってたはずなのに妙な時間を予告した昨日の自分どうかしてる
投下ー



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


京太郎「…やっべ、もしかして俺がラスか」ザーッ キキーッ



淡「おっそーい!」

京太郎「…いやいやいや、まだ10時前だろうが」

京太郎「確かに先輩たち待たせたのは悪かったですけど……ほんとすみません」ペコリ

菫「気にするな、こいつ一人が騒いでるだけだ」

淡「でもー、早く来てくれれば早く行けたのにー」ブーブー

誠子「そらそうでしょうよ、なに当たり前のこと言ってんの」

京太郎「…わかった、プール行ったらアイスか何かおごってやるから」

淡「…ほんと!?ぜったいだよ!」

京太郎「先輩たちの分も、出させていただきます」

誠子「そんな、別にいいのに」

尭深「でも、おごってくれるって言うなら…お言葉に甘えちゃおうかなぁ」

照「…行こう、早く行こう」

菫「おいこら」

京太郎「あはは…」












京太郎(さて、場所取りも完了っと……)

ガヤガヤ キャッキャッ

京太郎(…日曜だからか?けっこう多いな)

京太郎(あっ、……あれかな)

京太郎「おーい、こっちこっちー」ブンブン

タッタッタッ




淡「たいぎであったー、ほめてつかわすよきょーたろー」ドーン

尭深「…日差しが…あつい」ドタプーン

京太郎(で…デカい!ナニとは言わないが…)

菫「だから走るなと……ハァ」

誠子「いやぁ、場所取りありがとねー、助かるよ」

照「……日陰」

京太郎(あれ……天国はこんなところにあったのか)フリーズ

菫「……どうした?」

京太郎「ハッ……みなさんどうぞ陰に。渋谷先輩、その荷物は…?」

尭深「みんな喉乾くだろうから…冷茶持ってきたの」

京太郎「おぉ…助かります」ヒョイッ





淡「ねえきょーたろー」ズイッ

京太郎「…なんだこれは」

淡「えっ…どう見てもビーチボールだよ」

京太郎「そりゃわかってんだよ、それを俺に突きつけてどうしろと」

淡「膨らませて?」ニコッ

京太郎「…ですよねー、自分でやれよ自分で」ブツブツ

尭深「あっ…」

京太郎「……先輩、後ろ手に隠さないでいいですから。浮き輪ですか?」

尭深「うん。……あの」

京太郎「一つも二つも変わんないですし、任せてください」

尭深「ありがとう…よろしくね」


淡「…なんで私のときと態度が違うの」

京太郎「普段の行いの差…だな」

淡「ひどーい」

フゥッ フゥーーー




~準備体操中~

京太郎「何時頃まで泳ぎます?」イッチニ

菫「…淡が満足するまで、……まあ3時か4時くらいまでかな」サーンシ

誠子「…インハイ前にちゃんと遊び倒す、最後のチャンスかもねー」ゴーロク

淡「えー、まだあちこち行きたいのに」シッチハチ

照「…インハイ終わっても、夏休みはまだあるから」コキッコキッ

淡「…それもそうか。さすがテルー!」

尭深「あはは…」



淡「いっちばーん!」タタタッ

ザッパーン

菫「飛び込むな…と遅かったか」チッ

淡「きゃはっ、冷たくてきもちーよー!はやくおいでよー」

尭深「…行くしかない」トコトコ

チャポン

誠子「んじゃ私も…ってそうか、荷物番が」

京太郎「じゃあ俺とりあえず見ときますから、先輩たちお先にどうぞ」

誠子「あっそう?じゃあ、お言葉に甘えて」テクテク

菫「…すまないな、すぐに交代するから」

京太郎「いえいえ、お気になさらず」

菫「ほら、照も行くぞ」

照「…よろしくね」

京太郎「いってらっしゃーい」





京太郎(……ふぅ。流石に水着の女の子五人に囲まれて平常心でいられるほどできてねーっての)ギシッ

<キャハハ こら淡!
<捕まえてみろー

京太郎(……)モンモン

京太郎(…いかんいかん。……しまった、泳いだ方がむしろ良かったか)ゴロン






ミーンミーン ジー


京太郎(空が、青い…)

京太郎(夏、インハイ……三連覇)

京太郎(当然だけど、照さんや部長にとっては最後の、夏)

京太郎(俺に、まだできることは…)






「泳いできたら?」

京太郎(…と、この声は照さん)

京太郎「早かったですね(クルッ)ってグフッ!」

照「?」

京太郎(いつのまにか頭のすぐ横に照さんが立ってて…ふ、太ももやら何やらが近い!)

京太郎(そして…(チラッ)ローアングルからの照さん…こう…ふにっ、としてそう。いや、してる(断言))

京太郎(これは、これで……じゃなくて!)ガバッ

照(急に顔を隠して……どうしたんだろう)ハテ?




京太郎「と、とりあえず…そこにお座りになって……」

照「うん」ギシッ

チラッ

京太郎(よし、さっきの暴力的な距離からはどうにか…やれやれ。最悪の結果は免れそうだ)

京太郎「……ふぅ」ムクッ

照「…どうかしたの」

京太郎「いえ…自分と戦ってました」

照「…そう」



京太郎「冷たかったですか?」

照「…日で少し温まって、ちょうどいいくらい」

照「…泳ぎたい、でしょう?」

京太郎「でも、先輩ちょっとしか」

照「まだ時間もあるから。……本だって持ってきてる」ペラッ

京太郎「……すみません、行ってきます」バッ

照「……いってらっしゃい」



途中ですが切ります
3、4日空きますが悪しからず

遅くなりました、更新



~流れるプール~








尭深「……」プカプカ

菫「……」プカプカ

京太郎「……」プカプカ




京太郎「……ずっとこうしてたんですか?」

尭深「…最初は淡ちゃんと遊んでたんだけど…あちこち行っちゃうから」プカーン

京太郎「テンション高かったですからね…」プカーン

菫「淡には亦野がついてくれてるから、まあ…大丈夫だろうと」プカーン

京太郎「…こういうときくらいは羽を伸ばしててください部長」

菫「…うん」

尭深「……」プカーン

京太郎「……」プカーン

菫「…たまにはこういうのも、悪くないだろう?」プカーン

京太郎「……そうですね」

尭深「……」パチャパチャ




~ビーチバレー~

尭深「頑張ってー」フリフリ

淡「行くぞー!」バシッ

菫「速っ…おっと」ポ-ン

京太郎(…意外!部長の素早い身のこなし)

誠子「はいはーい……ほいっと」パシン

京太郎「はい拾いまーす…先輩次!」トスッ

照「あっ…えっ……えいっ」

バスッ

菫「あっ」

尭深「えっ」

誠子「先輩?」

淡「て、…テルーの頭に、ボール……」

京太郎「」



コロコロコロ…

淡「きょーたろー…オニ!アクマ!」ジト-

京太郎「…っ!」

タタッ
京太郎「先輩!すみませんでした!」

照「…気にしないで」

京太郎「ほんとうに、いや、お怪我は…」アタフタ

照「…大丈夫。大丈夫だから……」

ガヤガヤ どーしたどーした
修羅場か?ん?

照「……」

京太郎「……先輩?」

照「…あまり、騒がないで」プルプル

京太郎「…すみません」






in 尭深
out 照 京太郎


そーれ はーいよっと


京太郎「…先輩、怒ってますね」

照「怒ってない」

京太郎「無表情装っても…分かりますよ」

照「っ…装ってない、もともとこんな顔してる」



京太郎「さて、どうでしょうかね…っと」パスッ

ボールこっちー パースパース

京太郎「はいはーい!……よいしょー」


ありがとー


京太郎「どーもー」

照「…行ってくればいいのに」

京太郎「このまま置いていけないですって。……俺もさっきはどうかしてました」

照「……」


京太郎「でも…その……あのですね」

照「…何?」

京太郎「えっと…まあその、心配なわけです。先輩」

照「……」

京太郎「危なっかしいところがあって、目が離せない……ってすみません、子供扱いしたいわけじゃなくて」

照「いい」

京太郎「……」

照「心配してくれるのは、嬉しくないわけじゃない……から」



京太郎「……」

照「……」


ポスン う゛わ゛っ
あははー スミレこけてんのー
こいつ… 次はお前だ淡!


「「ねえ/あの」」

京太郎「……先輩からどうぞ」

照「…お先に、どうぞ」

京太郎「いや……まあその、気持ちだけでもお詫びということで…先輩だけソフトクリームもう一本、付けさせていただけませんか」

照「…それは嬉しい。…バニラとチョコ一つずつ、よろしくね」

京太郎「もうメニュー把握してるんですか…」

照「さっき見てきた。バニラとチョコとミックスの三種類。正直迷ってたから、二つ食べられるなら嬉しい」

京太郎「…迷うなら間とってミックスっていう選択肢は…」

照「ない。ミックスで間にはならない。ミックスはミックスを食べたい時に食べる」フンス

京太郎「なるほど。……それで、先輩の用事は?」

照「……忘れるくらいだから、大したことじゃない」

京太郎「さいですか……」



~ウォータースライダー~

ガヤガヤ

誠子「来たからにはね、やっぱりこれ行かなきゃ」カツカツ

京太郎「ですよねー」カツカツ

菫「…にしても…結構高いな」カツカツ

京太郎「いちいち階段上らないといけないのが玉に瑕、ですかね」カツカツ

誠子「もう少し若い頃は何度も上ってきてたけどなぁ…正直少し、キツい」カツカツ

菫「誠子がそんなんで…私はどうなるんだ私は」

京太郎「ま、まあ…あとちょっとですから」




カツカツ
京太郎「はい、到着」

誠子「ひょー!たっかいなぁ」

菫「荷物を置いたのはあちらの方だから……あそこで漂っているのが尭深かな」チラッ

<次の方どうぞー

誠子「じゃあ、私いくよ。それぃ!」

シュ-

京太郎「慣れてますね」

菫「あぁ。…これ、どのくらいのスピードになる?」

京太郎「えっ…あっ、もしかしてあまり滑ったことない、とか」

菫「ん。なんとなくついてきてしまったが」

京太郎「えっとですね…この看板にもありますけど」

デ-ン

京太郎「座った状態で滑ります。体を寝かせればスピードが出る感じで」

菫「なるほど。調整できるんだな」



>次どうぞー

菫「じゃ、行ってくるとするよ」ビシッ

シュ-

京太郎(やだなんかイケメン)


>はい次どうぞー

京太郎(どうせ行くなら、ハイスピードで…勢いつけて、そらっ!)

ドシュ-

京太郎(来た来た、この爽快感…たまんねー)
ヒャッホ-ウ




菫(滑り台といい…人は速度を体感したがる生き物なのか)

菫(それとも重力に任せて動いていくところに面白さを見出すのか)

菫(いずれにしても…なるほど、悪くない)

菫(…そろそろゴールかな?)

ゴゴゴ

菫「な、何だ?」

京太郎「や、やっべ!ブレーキ!ブレーキ!」

菫(お、追いついてきただと?のんびり行き過ぎたか、でもあと)

ゴスッ

京太郎(あ、足がジャストミート)

菫「グヘッ」

京太郎「ぶちょぉぉぉー!」

ザッパ-ン









京太郎「すいませんでした!」ドゲザ-

>またあの人謝ってる… やーねーほんと

菫「気にするな…私にも非があった、9:1くらいで」

誠子「痣とかにはなってないみたいで…よかったね須賀、親衛隊がいたら今頃袋叩きだよ」

京太郎「返す言葉もございません…出しちゃいけないような声も出させてしまって」

菫「忘れろ」

京太郎「あっはい」




京太郎「あの…お詫びと言っちゃなんですが…ソフトクリームもう一本」

菫「私が二本も平らげると思ってるのかな?」

京太郎「あ…いえ、その」

菫「その様子だと…照に同じ手を使ったろう?」

京太郎「なぜそれを…」

菫「……全く。君は照に甘いんだから」

京太郎「そ、そうですかね?」

誠子「自覚無しときましたよ部長」ヒソヒソ

菫「ああ。重体だなこれは」ヒソヒソ

京太郎「?」




菫「…まあとにかく、これに懲りて羽目を外し過ぎなければ、それでいいから」

京太郎「ははー、寛大なご処置ありがとうございます」

菫「…私は真面目に言ってるんだが」

京太郎「すみません調子乗りました」

誠子「やれやれ」





~???~

京太郎(…はぁ、そんなつもりじゃないんだがなぁ…)

京太郎(ん…?あれは…)




淡「だーかーら!一人じゃないのー!」

「でもさー、誰も来そうじゃないしー」

「ねーいいじゃーん、俺たちとちょっと遊ぶくらいさー」

淡「嫌って言ったら嫌なの!」


京太郎(ナンパ…だな)

京太郎(見た目だけで判断したら後悔するぞ…じゃなくて)



京太郎(…世話が焼けるな…しゃーなし)ダッ


京太郎「はいちょっとすみませーん」

「あ?」

京太郎「待たせたな、ほら行くぞ」ガシッ

淡「あっ…」

「…ちっ、兄貴か」

「冷めたわ…次いこ次」




淡「……」

京太郎「……ふぅ、なんとかなったな」

淡「……」

京太郎「淡さん?そんなに手を強く握られると痛いんだけど」

淡「ギニャッ!」バシッ

京太郎「痛っ…そんな振りほどかなくてもいいじゃん」ブツブツ

淡「あっ…な、なんできょーたろーが兄貴なの!?」

京太郎「知らねーよ…金髪同士だし、兄妹に見えたんだろ」

淡「そんなの……納得いかない、私の方が誕生日先だしー」

京太郎「落ち着きないからな、しゃーない」ハハハ

淡「なにをー!」ウガ-







菫「すまない、私が淡と一緒にいればこんなことには」

京太郎「いや、それを言ったら俺だってそうです」

淡「むー」プク-

尭深「よしよし、怖かったね」


菫「ともかくありがとう。さっきの蹴りを帳消しにして余りあるよ」

京太郎「先輩!その話は」

照「…菫を蹴ったの?」

京太郎「違うんです!不可抗力で…部長ぉ!」


淡「…兄妹、兄妹じゃなくて…」

淡「か、か……」

淡「……///」

尭深「どうしたの?」

淡「な、何でもないよ!?何でもない!」ブンブン



というベタな展開を見せてここまで
なぜこんな長くなったし
次回は今週中を予定、照のマスコミ用顔のお話

今週中…ギリギリアウトですね
照は頭でボールをレシーブしたもよう、文章稚拙ですまない
ウォータースライダーは菫さんにラキスケでもよかったんですが書けそうになかったので却下

途中までですが投下ー







京太郎「取材…ですか」

菫「うん。ほら、そこの棚に揃ってるだろう?Weekly麻雀TODAY」

京太郎「…ああ、例の」

照「…いつも、来る」

誠子「そりゃあ、うちが全国トップなんですから。来ないわけないですよ」ハハッ

菫「…まあ、いわゆる強豪校と全国出場校には一通り来るようだからな。ウチだけ特に多いなんてことはないさ」

淡「えー…めんどくさい…」

菫「これから先も付き合うんだ、面倒がってはいられないぞ」

尭深「……」ズズッ




菫「というわけで淡、お前は個人レッスンな」

淡「なんで!?」

菫「取材されるときの最低限のマナー、それにあることないこと話さないように教育しなきゃならんからな」ゴゴゴ

淡「スミレ、こわい!こわいから!」

京太郎「あ、あのー…俺は聞かなくてもいいんですか」

菫「ん、須賀君は多分問題ない」

京太郎(いいのかそんな適当で)

菫「…そこのバックナンバーに付箋が付いているだろう?過去の白糸台の記事につけてあるから、参考までに皆で目を通しておいてくれ」

淡「そ、そっちの方が楽しそうだなーあはは」ズルズル

誠子「い、いってらっしゃい…」

バタン




照「…尭深、付箋付きのもの探して持って来てもらえる?」

尭深「わかりました」


京太郎「あっ、俺も手伝いますよ。かさばると重いでしょうし」

照「…じゃあお願い。誠子」

誠子「はい」

照「冷蔵庫にカスタ○ドケ○キが入ってたはずだから出して。みんなで食べよう」ワクワク

誠子「紙コップも出しときますね」

照「気がきくね、よろしく」



パラッ ペラッ

誠子「最初は扱いちっちゃいですね」

尭深「…この黄色い付箋は、ただ白糸台に触れただけの記事についてるみたい」

京太郎「桃色のだと…部員や顧問のコメントが出てますね。……部長が分類したんだろうか」

照「……」モックモック



京太郎「これも桃色…あっ」

誠子「どうかした?」

照「表紙の…瑞原プロ?」

京太郎「違います!……二年前の、インハイ出場決めたときの記事です」



尭深「『白糸台高校、悲願の出場!』ですか…」

誠子「照先輩や部長が入る前までは強豪校止まりだったんですよね?さすが…」

照「……」

京太郎(…懐かしいな)

=========================



小さい頃には、時間なんていくらでもあるものだと、そう錯覚していた。



だから季節が巡って年が変わり、背丈が伸びてもっと物事が良くわかるようになるにつれ、俺が根拠もなく心の隅に置いていた希望ーーつまり、


照さんがひょっこりと帰ってくるだとか、連絡してきてくれるだとか、とにかくまた昔のように三人で麻雀ができるようになるーーそんな願望はますます現実味を失っていく、それでいて諦めだけはつかないのは俺がまだ子どもだったからかもしれない。



『昔のように』……なんて言葉を使うほど、それでもその頃には時間の経過というものを十二分に体感していて、俺と咲は中学生になっていた。



『京ちゃん、顔こわいよ?』

『……眠たいの。部活は相変わらずだし』

『ふーん…』

俺は麻雀部……ではなく、ハンドボール部に入っていた。
理由の一つ目、体力と無駄に大きくなった図体を持て余していたこと。
二つ目、麻雀で照さんが活躍したという話は聞かず、中学で麻雀をやっても出会える可能性は低いと思われること。
三つ目、麻雀以外の何かに打ち込むことで、それに付随するオカルトめいた力に目覚める期待ができること。

そういう理由、もとい言い訳。



『仲直りさせる』という目標を掲げながらそのための手段は何も持ち合わせていなくて、麻雀が彼女との唯一の接点であり それすら危ういことには、子どもの俺にもすぐに気づけたのだった。

宮永家の雀卓は埃をかぶり、部屋の隅に追いやられ、ついには見なくなった。物置部屋にしまったのだと聞いて少しほっとした。
咲はそれらのことについても聞かないと何も言わないほど、自分を極力麻雀から遠ざけているようだった。俺はその話を早々に切り上げたのを覚えている。


それでも、照さんと咲に教えられた麻雀の熱は俺の中で、消えることだけはしなかった。嫌いになるなど考えたこともなく、頻度は減ったが週一回はネット麻雀に精を出し、そこで知り合いもできた。俺はそれなりに麻雀を楽しんでいたのだ。
ただ部活でやるほどの熱意はなく、期待もない。そんな中途半端な状況で、中二の夏を迎えようとしていた。





その日の夕刻、部活の帰り道。本屋に立ち寄ったのは少年誌を立ち読みしたかったからに違いない。

読みたいものを読んで名残惜しくパラパラめくってまた積み直して、ふと視界に入ったはやりん…瑞原プロの表紙に惹かれて手にとったとしても責められる謂れはないはずだ。だって中学生だもん。
数年前に創刊されたWeekly麻雀TODAYの存在は知っていたし、何らかの痕跡を探してめくってみた事も何度かあった。そしてその度に何も得られずにがっかりして、そのうち見る事もなくなっていた。


嘘か真か「執事」という職業だというネト麻の知り合い曰く、本当に強くても中学で麻雀をするとは限らない、と。
『そういう知り合い…いえ、お仕えする主人がそうなのですが』とそんなことを言っていたのもまあ、頭のどこかにひっかかっていたのかもしれない。


ともかく俺はその号を手にとって「インハイ特集~今年の優勝候補はココだ!」なんて記事を見つけ目を落とし、やがて数十秒後にはレジに駆け込むことになる。

地の文読み辛ければ申し訳ないです
この辺で一旦

起きたら復旧してたのでびっくり
一両日中に再開予定ですとりとり

遅くなりました
ちょろっと投下





『本当に、お姉ちゃん?』

東京の方にいる、という断片的情報だけ咲は聞かされていて、それは俺との共通認識でもあった。

ただそれだけだったから、特定するにはその週刊誌ではあまりにも情報が少なすぎた。顔写真などはなし、学年が一年で照さんと一致していること、そして一年ながらエースで白糸台を久しぶりのインハイへ導いたこと。

ネットの海を浚っても大した差はなかった。部員の集合写真はあちこちで見つけたものの、部員数と解像度の関係か、赤髪の女性がいたりいなかったりすることしか確認できない。白糸台の情報管理は、もしかするとこの頃から優秀だったのかもしれなかった。

『どうする?咲』

咲は困ったような顔をしていた。
どんな意味でその問いを受け取ったかは知る由もない。
困り顔のまましばらく逡巡して、『どうしよう、京ちゃん……』と次第に涙目になってきさえしたので慌てて助け舟を出す。

『テレビで一緒に見るか、インハイ』




結論から言えば、それは間違いなく照さんだった。

『ツモ』
『ロン』
『ロン』


表情一つも変えずに和了るのは相変わらずで、白の上下の制服に赤髪がよく映えるな、と俺は場違いな感想を抱いていた。

理牌を瞬く間に終え、細い指が次の牌に伸びる、手に入れて別の牌を切る、滑らかなその一連の所作は、確かに子どもながらに見慣れた照さんのそれだったーー俺は多分見とれていた。

今や画面越しにしか見ることができない悲しさと、その彼女がかつて自分のすぐ隣にいて、なおかつ自分のことを見てくれていたという感動がないまぜになって襲ってきて、戦況はろくに頭に入ってこない。
『これはとんでもない瞬間に、私たちは立ち会っているのかもしれません!』などと熱の入る実況アナウンサーの音声を遠くに聞きながら、俺はかつての宮永家の雀卓に、そこにいた人に思いを馳せていた。




『ツモ』

照さんの再びの鋭い発声に、思考は現実に引き戻される。アナウンサーの声が大きくなり、解説のプロの声もやや弾んでいる。
いつの間にやら点棒が積み上がり、リードは圧倒的だった。


『すごいな』
そう呟いて すぐに後悔した。いま隣にいる幼馴染がどんな気持ちで見ているのか、何の配慮も示さない無神経な俺がそこにいた。

『…そうだね、さすがだね』
意外にも咲は落ち着いた口ぶりで俺に同意した。思わず横に目をやったが、その表情は楽しそうでもあり、また寂しげでもあった。すまん、という謝罪の言葉もはばかられ、俺はまた画面を注視するしかなくなった。







『次の試合も、見るんでしょ?』


帰り際に咲はそう言った。
俺は咄嗟に何も返せず、ただ頷いた。

『私も見るから。一緒に』



結局観戦の為に何日か咲の家に通うことになった。理由は言うまでもない。

『優勝は、白糸台!高校麻雀史に、新たな歴史が刻まれました!』


咲の手前以上、声高に応援するのは憚られたわけでーーそれでも照さんは頂点まで届くと、どこか確信めいたものを途中から感じていたから、その瞬間を俺は比較的冷静に迎えていた。

『もっと喜んであげたらいいのに』
などとまで咲は言う。半泣きだった彼女はどこに行ったのだろうか。




やがて優勝校インタビューが始まる。大人しそうだがやり取りははきはきと、緊張したと言いながら自信に満ち満ちている、そんなメンバーだった。
部長らしく仕切っていた一人はなんと照さんと同学年、つまり一年生だった。あえて名前は言わない、本人の名誉の為に。

やがてマイクが照さんに回ってきて、……テレビの前の俺たちはあっけにとられることになる。


=========================

尭深「そして優勝の特集号、ですね」

誠子「……これ、先輩ですよね」

照「そう。……何かおかしい?」

誠子「いえ……そうじゃないんですけど…須賀!ほら」

京太郎「俺っすか!?…いや、間違いなく先輩じゃないですか」

尭深「…驚かないんだね。見たこと、あるの?」

京太郎「あ…まあ、そうですね」

誠子「んー、破壊力あると思いますよ、先輩の笑顔は」

照「……そう、ありがとう」

誠子(…やらかしたかな、ちょっと今の間が…怖い)




尭深「先輩は、インタビューの時必ず笑顔ですよね」

誠子(構わずぶっこんだ!?)

照「うん。人前ではそうしたほうがいいって、昔言われたから」

京太郎「部長にですか?」

照「……違う」

京太郎(……あれ?)

照「……」

尭深「私たちも気をつけた方がいいですよね」

照「…そうだね。印象も違うと思うし」

誠子(尭深スゲえよ尭深)







菫「というわけで…今度の週末はよろしく頼む」

京太郎「普段通りの練習に取材が入って」

尭深「…午後は個人個人に取材が入るから各自行動、ですね」

京太郎「……皆さんはともかく」

尭深「?」

京太郎「俺に話聞いて何か需要があるんですかね」

誠子「それは…今後の活躍次第でしょ」

淡「きょーたろーインタビューで変なこと言わないかなぁ…そしたら蛍光ペンで印つけて付箋ペタペタ貼るのに」

京太郎「よせよ、そのままそっくりお前に返すぞそのセリフ」

淡「淡ちゃんをなんだと思ってんのさ!」

京太郎「筋金入りのおバカ」

淡「ば、バカって言うなー!バカって言った方がバカなんだきょーたろーのばかぁ!」

京太郎「…言って一秒足らずで自分で引っ掛かるのやめろよ…」




菫「はい、静かに。……まあ、とにかく頼むぞ。特に淡」

淡「えっ、あわっ…はーい」

菫「くれぐれも今日言ったことを忘れずに…いいな?」

淡「うっ、あぁぁ……はいぃぃ」

京太郎(何言われたんだろ)


照「……今日もお疲れ様」スック

菫「ああ、また明日な」

誠子「お疲れ様でーす」


京太郎「……」




照「……」テクテク

「先輩!」タッタッタッ

照「……どうしたの」

京太郎「ハァハァ…追いついた、よかった」ゼェゼェ

照「……汗、凄いよ」

京太郎「すみません、お見苦しいものを…ちょっと拭かせてください」フキフキ

照「……」

京太郎「…お待たせしました」

照「…うん、ちょっと歩こうか」

京太郎「あっ、はい」





テクテク

照「…この辺の地理、わかるの?」

京太郎「まあ、休みは買い物に回ったりするんで…大通りはわかります」

照「そう」

照「……私はかなり苦労した」

京太郎「先輩は寮に入ってるんですよね?」

照「うん」

京太郎「制限とかあったりしないですか?門限とか」

照「あるにはある、けど…不自由することはない」

京太郎「…そうですか」




京太郎「ところで……部室でした、話ですけど」

照「……」

京太郎「……思い出しました、俺」

照「…そう」

京太郎「正直言うと…自信はなかったですけど」

照「…私にとっては」

京太郎「……」

照「……私は、どうしてかよく覚えてたから。あなたの言葉」

京太郎「……びっくりですね」

照「私はあなたが気づいたことにびっくりしてる」


京太郎「それは……気づいてほしそうに、してたからです」

照「…私が?」

京太郎「先輩がです」

照「……そんなつもりじゃ、なかった」

京太郎「…すみません」

照「……あなたが謝ることじゃ、ない」

照「私の問題…だから」

京太郎「先輩の問題…」



照「自分が…自分が、よくわからない」

京太郎「…先輩?」

照「…ごめん、今日は…上手く話せそうにない」



=========================





照『……』ペラッ

京太郎『……』カキカキ

照『……』



コトン

京太郎『よしっ、しゅくだいおわりっ!』ノビ-

照『お疲れ様。ジュースお代わりあるよ』パタン

京太郎『いただきます!あれっ…さきは?』キョロキョロ

咲『……』スゥスゥ

照『…さっき寝てしまった』

京太郎『ぜんぜん気づかなかった…』

照『集中してたからね、京ちゃん』

京太郎『あのね、麻雀するときみたいに、かんけいないものを見ないようにしたら、しゅくだいが早くおわるんです!』ニコ-

照『そう。それはいいことだね』フフッ



京太郎『おぉ…』キラキラ

照『…どうしたの?』

京太郎『笑ってる!』

照『照だけに…じゃなくて。…私だって笑う』

京太郎『うん、知ってるよ?』

照『え』

京太郎『笑ってないように見えても笑ってたり、うれしそうに見えなくてもうれしかったりしてる』

京太郎『…なんとなく、わかる』

照『…そっか』



京太郎『あ、でも…』

照『?』

京太郎『笑ってたほうがいい、かな。かわいいから』

照『…ねえ京ちゃん』

京太郎『なに?』

照『そんな言い方、どこで習ったのかな?』

京太郎『え、…えっと…お父さんがよく言ってるの。「女の子は笑ってたらかわいい」って。…なんで怒ってるの?』

照『怒ってない』

京太郎『…でも、いつもの照さんもかわいいよ』

照『……京ちゃんのバカ。知らない』プイッ

京太郎『えー……ほんとなのに』








====================



カナカナカナ…

照「……」テクテク

京太郎「……」テクテク

照「…あ」

京太郎「寮が…見えましたね」

照「うん。……ここまでで、いい」

京太郎「…そうですか」



カナカナカナ…


京太郎「……ありがとうございました」

照「こちらこそ。送ってくれて」

京太郎「……あの、先輩」

照「遅いから、もう帰らなきゃ」スタスタ

京太郎「先輩!」

照「……」ピタッ

クルッ

照「明日も練習頑張ろう」






    ・・・
照「ね、須賀君」ニコッ

京太郎「っ……」ズキッ



照「また明日」

京太郎「……はい、…また」





カナカナカナ…

京太郎(…ちっくしょ、なん…で…)


照『ね、須賀君』ニコッ


京太郎(あんな表だけの笑顔で、悲しそうな顔…して)


京太郎(……俺が言ったこと…おれ、の、せい……?)





菫「あっ、すみませ…って……」

京太郎「……先輩」


菫「どうしたこんなところで?もう先に帰って…」

京太郎「…すみません、ちょっと……はい」

菫「…大丈夫か」

京太郎「…なにがですか」

菫「いや…何もないならいいんだ、が…」

京太郎「俺は、大丈夫です」

菫「…そうか。…話せないようなことか?」

京太郎「…すみません」

菫「…気にするな。そういう時もある」




菫「……ちょっと待ってて」テクテク

京太郎「…?」

ガチャン ドコン


菫「…缶コーヒーで悪いけど」ズイッ

京太郎「……ありがとうございます」

菫「私も飲むから、数分付き合ってくれ」



菫「取材、だけど…イメージは湧いた?」カチャ

京太郎「……そうですね、なんとなく」ズズッ

菫「来るのは記者一人とカメラマン一人、個人への取材は十分くらいで済むんじゃないかな」

菫「そして写真撮影が数枚、もしかしたら数十枚」

京太郎「…何に…って、雑誌に載るんですよね」

菫「そう、編集部がピンとくれば大きいサイズで載って、活躍すれば特集が組まれる。当然また取材も来る」

菫「…嫌か?」

京太郎「いえ、そういうわけでは……すみません、俺やっぱり全然イメージできてないです」


菫「まあ、いいさ…早いうちからマスコミ慣れしておいてくれると助かるんだ」

菫「淡もいるし、な」フゥ

京太郎「あぁ…なるほど」

菫「それにメディア露出があると人気が出るかもしれない。…興味ないか?」

京太郎「うーん……俺はそんなに」

京太郎「…ということは…照さんって、結構人気あったり」

菫「もちろん。よそ行きの面もいいしな」

京太郎「……」



菫「…気になるんだろう?」

京太郎「あっ、いや…「嘘だな」……はい」

菫「心配するな。本人はほとんど気に留めてないようだし、自覚があるかも怪しい」

菫「…さすがに今のは分かりやすすぎないか……らしくもない」

京太郎「…すみません」

菫「何があったかは知らないが…照は君のことを簡単には嫌いにならないさ」

京太郎「…!……そうですかね」

菫「きっとそうさ」

京太郎「…何でも分かるんですね」

菫「何でもは分からないさ…分かることだけだよ」




菫「ところで…私に言及がないのはどういうことかな?」

京太郎「え?」

菫「照ほどではないが、私もそれなりに表舞台に出ているんだけど」ズイッ

京太郎「あ…え、えっと」

菫「君にとっては私は照のお付きの人に過ぎないのかな?」

京太郎「いや、そんな…滅相も無い…ほんと申し訳なく…」

菫「……ふふっ、冗談冗談…本気にするなよ」

京太郎「…そ、そうですよね!びっくりした…」




京太郎「…ありがとうございます、先輩」

菫「なにが、なんて言うのも野暮か」ゴクッ

菫「…あんなひどい顔してたら、誰だってほっとかないさ」

京太郎「そんなにですか」

菫「それはもう……でも、もう顔色も良さそうじゃないか」

京太郎「…この灯りでわかるんですか」

菫「まさか。ただの戯れ言だ」

京太郎「…意外ですね」

菫「何が?」

京太郎「先輩も冗談言うんだなぁ…って」

菫「…私だってそんな時もある。それに」


菫「君と話すのは楽しいからな」フッ





照「11月11日はポッ○ー&プリ○ツの日だよ、京ちゃん」


という感じで小話書こうとしたけど間に合わず断念

続き書きます

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ーーまずは地区大会、三年連続の優勝おめでとうございます。

菫「ありがとうございます。部員全員の助けなしでは、とてもできなかったことだと思っています」


ーー夏のインハイ、史上二校目のの団体三連覇を目指す白糸台高校にとっては予選は通過点だと思いますが。

菫「もちろんこの結果で満足しているわけではありません。ただ、一戦一戦勝ち抜いてこその全国制覇ですから。そういう意味では予選の初戦も、インハイの決勝も等しく通過点です」

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ーーまずは地区大会、三年連続の優勝おめでとうございます。

菫「ありがとうございます。部員全員の助けなしでは、とてもできなかったことだと思っています」


ーー夏のインハイ、史上二校目の団体三連覇を目指す白糸台高校にとって予選は通過点だと思いますが。

菫「もちろんこの結果で満足しているわけではありません。ただ、一戦一戦勝ち抜いてこその全国制覇ですから。そういう意味では予選の初戦も、インハイの決勝も等しく通過点です」



ーー白糸台は今年も、校内の対抗戦を勝ち抜いたチームが出場しているそうです。
今年のチームの特徴を、弘世部長に聞いてみましょう。

菫「今年のチーム虎姫は、どのポジションでも点を稼げる攻撃的なチームです。
でも隙がないなどとは思いません。大会ぎりぎりまで各自の課題を確認していきます。
少し私見が混じりますが、とても仲のいいチームだと思っています。誰かが万一失敗しても他でカバーできる、そんなしたたかさも見せていければと思います」


ーー今年は男子も個人戦出場を決めています。練習などにも工夫があったとのことですが。

菫「須賀君(須賀京太郎・1年)は部活も熱心に打ち込んでいて、私も実力に手応えを感じていました。それで、早い段階からチーム(虎姫)と一緒に練習することで互いに切磋琢磨しさらに腕を磨くことができました。今回全国大会出場という結果をまず得ることができました。さらに高みを目指して欲しいと思います」



ーー弘世部長個人としても、やはりインハイには思い入れがあると聞いていますが。

菫「照(宮永照・3年)と一緒に、3度もこの場に立つことができて光栄に思っています。勝たなければというプレッシャーも感じていますが、負けたくない、という意志の方が強い気がします」

ーー3連覇阻止のために挑んでくる他校へメッセージをお願いします。

菫「絶対に勝つ、なんて大きなことは言えませんが、負ける気はさらさらありません。必ず勝ち上がっていきます」









照「……」ペラッ



ガチャ
淡「…あれ、テルーだけ?他の人は?」

照「…菫は部長の仕事。尭深と誠子がさっき呼ばれてた。…須賀君は他の人と打ってる、みたい」

淡「そっかー。…ねえねえ、お菓子もらってもいい?」

照「ん」スッ

淡「あーん」パクッ

淡「……んー!おいひい!」

照「そうだね」

淡「やっぱこれだね~たったらたった♪」

照「……」サクサク






照「…インタビュー、どうだった?」

淡「んー、思ったよりラクショーだったよ?」

淡「なんか予選の感想聞かれて、目標聞かれて…」

淡「あと…あ、チームで誰と仲良いかって聞かれたから、みんなって答えた!」

照「…変なこと、言ってない?」

淡「むむっ、テルーまでそんなこと言うなんて…」ヨヨヨ

照「…ごめんね。でも心配だったから」

淡「…あはっ、わかってますよー」




淡「ねえねえ照先輩」

照「?」

淡「私ももっと本読んだほうがいいかなあ?」

照「……一般的には読書は推奨されているし、わたしもお勧めする」

照「…どうして?」

淡「だってテルーはいっつも本読んでる。麻雀強いし成績もいいし」

照「…私は読みたいから読んでる」

淡「えー……読みたいってならない…楽しいの?」

照「楽しい」

淡「即答…」

淡「じゃあ、本とお菓子、どっちかって言われたら?」

照「……」

淡「……ねえどっち?」ズイッ

照「選べない。淡は意地悪」

淡「えーそんなことないもーん」スリスリ




淡「ねえテルー、もう一本ちょうだい」

照「ん」スッ

淡「あむっ」サクサク

照「…まずは読みたい、と思える本を探して読むといいと思う」

淡「はふぉえば?」ポリポリ

照「ミステリーだと続きが気になって読みたくなるかもしれない。東野圭吾とか」

淡「ひがしのけいご…?ちょっと待ってメモする」カキカキ

照「映画やドラマによくなってるから多分わかる…あとはそれこそ見て面白かった作品の原作を読んでみたり」

淡「なるほろなるほろー?」

照「…あとはライトノベルとかは比較的とっつきやすいかもしれない」

淡「らいとのべるって?」

照「うん、例えば…」







淡「誰もこないねー」フニフニ

照「菫も今日はそれぞれでって言ってたから。…なんでほっぺた」

淡「やわらかーい」

照「……」

淡「ぷにぷにー」

照「…暇なの?」

淡「照先輩と遊ぶのでいそがしーい」

照(先輩“で”遊ぶの間違いじゃないかな)

淡「♪」

照(…まあ、別に構わないけど)




淡「テルーもあーん、して?」

照「……」

パクッ

淡「おいしー?」

照「うん」モックモック

淡「ふふっ、よかったー」ニヘラ

照「……」





淡「あーあ、テルーといっつも一緒だったらいいのに」

照「……お菓子があるから?」

淡「それも、ある」ニヒヒ

照「……」

淡「テルーといると楽しいし、怒られないし」

照「私も怒らないわけじゃない」

淡「そうかな?」ハテ?

淡「あとテルーの話はためになる!」

照「…菫の話もちゃんと聞かなきゃダメだよ」

淡「ん、えーっとね…菫先輩だって部長だから厳しく言うんだって、わかってるつもり」

照「…それならいいけど」



淡「そんなのは関係なしに、私はテルーと一緒にいるのが楽しいの」

照「…そう」

淡「…あれー、もっと喜んでもいいんだよテルー?」

照「……」

淡「あっ、照れてる。テルーだけに」ナンチャッテ

照「照れてはない」

淡「うっそだー」アハハ






淡「あーあ、テルーが私のお姉ちゃんだったら良かったのに」

照「……」






淡「一人っ子だからよくわかんないけど、ぜったい優しいお姉「ダメだよ」ちゃんに」


淡「……テルー?」

照「…ごめんね淡、ちょっと用事…思い出しちゃった」

照「誰か来たらよろしく言っておいて」

淡「えっ…うん、わかった」

パタパタ
ガチャン


淡「…どうしたんだろ」





~~~~~~~~~~~~~~~~~

京太郎「…それロン!ザンクだな」

「くっ…結局反撃もできないのか」

「や、やっぱり須賀君強くなってる…」

京太郎「うーん、そうかな」

「お疲れさまぁ。うん、私たちも一生懸命やってるからねぇ…上達はしてるはずなんだけどこれだから」

「…前から上手いとは思っていたが、打ち方のバリエーションがますます増えたのでは?」

京太郎「…あ、あざっす」




「一軍だと…れ、練習の質が違ったりするのかな…」

京太郎「…やってることはさほど変わらないんだけどな…強いて言えば各自の意識が高いからかな」

「…というと?」

京太郎「漫然と局をこなしていくんじゃなくて、一人ひとりが目標や課題をきちんと持って打ってる…って感じ?そう教わったよ、…あぁ、えっと」

「菫先輩から?」

京太郎「…はい」

「…大丈夫、前みたいに襲いかかったりはしない…菫先輩を悲しませたくないからね…フフッ…」

京太郎(怖えーよ)







「やー、ダメ元だったけど声かけてみて正解だったよぉ」

京太郎「どういたしまして、俺もいい練習になったよ」

「またまたぁ、そんなご謙遜を」

京太郎「いやいや。マジでマジで」

京太郎(…この前の今日で、照さんと何話せばいいかわかんなかったしな…万が一二人きり残されるって可能性もあったし)

「ま、また打とうね!私たちも上がれるよう頑張ってるから!」

京太郎「うっす、俺も引き続き頑張るよ」

「もちろんだ。菫先輩を独り占めさせたままにはしない」

京太郎「もしもーし、俺そんなことしてませんよー?」








スタスタ

京太郎(…お世辞抜きにいい練習になったなぁ)ホクホク

京太郎(モチベーションも上げてコンディションも整えて…いい調整具合じゃあないか)

京太郎(さてとりあえず戻って一言入れて帰…あれは)

京太郎(…照さん?)






~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~








唐突に部室を飛び出した私を淡は訝しんでいるに違いなかった。
早足で脇目も振らず部室を飛び出して、勢いのまま駆け上がった階段に足が重くなる頃にやっと、言い訳があまりにもとってつけたものだったことに気づく。
それでもああ言い含めたのだから淡はきっと追いかけては来ない。私の言うことはしっかり聞いてくれるはずだ。



淡『どうしたの、テルー?』

馴れた大型犬のように尻尾をブンブン振っている様を幻視する。
そして、……先の自己嫌悪が宵闇のように降ってきて、息苦しさに私は立ち止まってしまう。

淡には何にも気づいてほしくない。彼女には何の落ち度もないのだから、部室でのんびりとト◯ポでもかじりながら誰かの帰りを待ってればいいのだ。
痛みはここで止めてしまえば、それで何も問題はない。



問題は…ないはずだった。








「先輩っ!」


よもや今聞くことはないだろうと思っていた、その反面聞きたかったのだろうその声が、私を呼んでいた。
私が名前呼びを禁じて、慣れない苗字呼びをするでもなく ただ「先輩」と私を呼ぶのは、彼しかいない。

恐る恐る振り向いた私は、どんな顔をしているのだろうか。
そして彼はーー









~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

俺はいま、どんな顔をしているんだろうか。
どんな顔をこの人に、顔色一つ変えずに泣き出しそうなこの人に見せているんだろうか。





「どう、して」

震える唇はそう象って声が溢れた。
窓の外で季節を主張する蝉たちの声に紛れて今にも溶け入りそうな声を俺は拾い上げる。


「理由があえて欲しいなら、答えますけど」
絞り出したつもりもないのに、走ったわけでもないのに俺の声もどこか掠れている。

「放っておけるわけ、ないじゃないですか…照さんのこと」

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