【艦これ】寒い夜は提督と (11)
本日の、鎮守府は、寒冷。
暖かい日がつづいているが、未だに寒い日はある。
そんな訳で、提督の寝具はまだ冬の時のままである。
「…………」
自室、マルヨンマルマル。
「……んっ」
ベッドの中に、何かを違和感を感じて提督は目を覚ました。
布団の中に何かあるような……。
試しにバサっと布団を捲ってみる。
「…………」
「ぽい~……」
「……何故夕立」
布団の中には、夕立が丸まって寝ていた。
「うー……。てーとくさん、夕立寒いっぽい……」
「ああ。すまん」
思わず布団を戻す提督。
だが、少し考えて、バサリと布団をめくった。
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「自分の部屋に戻れ」
「ぽいー!?」
自室の部屋のドアを開けて、夕立を外に投げ捨ててドアを閉める。
そこに。
「んー……。早朝演習はやっぱり眠いな……。えっ」
目を擦りながら、時雨があるいて来た。
その時雨の前に、提督の私室の前で涙目になっている夕立がいた。
「ゆ、夕立? どうしたの?」
「提督が夕立の事ぽいぽいっぽい! ぽいってぽいってっぽい! ぽいっぽいっぽい!」
「うん、ごめん。落ち着いて。ぽいがゲシュタルト崩壊しそうだから」
泣きつく夕立を宥めて、時雨は夕立から事情を訊く。
「なるほど。寒いから提督の布団にもぐり込んだら追い出されたと」
「こんな寒い廊下に投げ捨てるなんて提督は酷いっぽい!」
「うーん……」
いきなり布団の中に女の子がいたら、さすがの提督も驚くし、それが部下だったら怒るだろう。
深夜に侵入されてる訳なんだから。
「てーとくさん夕立の事嫌いなんだ……」
「いや、それは無いけど……。うーん……」
いじけてのの字書き始めちゃった……。
とはいえ、さてどうしたものかと時雨は思案を始める。
「提督もいきなりだったからビックリしたんじゃないかな。今度は予めお願いしてみるとか」
「んっ! じゃあ今日の夜お願いしてみるー!」
「行動早いね……。良い事だけどさ……」
先程まで落ち込んでいたとは思えないスピードで立ち上がり、夕立は駆け出して行った。
その方向は食堂。今日は、夕立は朝演習ない筈なんだけど。やる気があって非常によろしいのではないだろうか。
「さて……。僕も準備しないと。三式の爆雷とソナー用意しないとね」
そんなこんなで夜に。
夕立はダッシュで執務室に駆け込んだ。
「てーとくさーん!!」
「うお!」
ドアを壊さんばかりの勢いで押し開いて、夕立は提督の前に立った。
「どうした? 何かあったか?」
「今日も寒いから提督さんと一緒に寝たい!」
「ふむ……。姉妹達とではダメなのか?」
「みんなの布団も寒いからあんまり変わらない……」
「もう衣替えか……」
未だ寒くて冬用の布団を使っているのは私だけか。
歳なのだろうか悩む。
いやいやまだ二十台だ。四捨五入は出来んが。
「分かった。では、私は執務室に泊まるとしよう」
「えー……。提督さんが一緒の方があったかいのに……」
「一緒になる訳にはいかんだろう」
「何かあるの?」
「…………」
さて、夕立に男性と一緒に寝る危険を教えるのと、このまま一緒に夕立と寝るのはどちらが楽か。
考えるまでも無い。
「よし夕立、部屋に戻って準備してくると良い。私も仕事を終わらせよう」
「はーい!」
こういう面倒な事は姉妹達に任せよう。
時雨辺りに。
「時雨ちゃーん!」
「んっ、どうしたんだい夕立」
「提督さんが一緒に寝てくれるって言ったから提督の部屋で今日は寝るね!」
「えっ!」
嵐のように現れて去っていた夕立に、時雨はしばしの沈黙の後。
夕立の後を追って走り出した。
「てーとくさーん! 夕立到着っぽいー!」
「ああ。いらっしゃい」
夕立は提督の部屋に駆け込むなり、ベッドにダイブして布団の中に潜り込む。
眠りに来ただけとはいえ、いきなりベッドに潜り込むのは失礼なのではないだろうか。
いや、まあいいんだが。
「では、寝るか」
そう言って、部屋の明かりを消し、ベッドに横になる。
そうして目を閉じていると、ベッドが軋む音が聞こえて来た。
「…………」
夕立だろうと思い、そのまま目を閉じていると、何かが覆い被さって来た感覚がする。
「んっ……?」
「提督……」
目を開いた先には、時雨がいた。
「時雨……?」
「提督、夕立が良くて僕を拒む理由はないよね……?」
囁くように言う時雨。その気配を察したのか、夕立も目を開く。
「時雨ちゃんも来たのー……? じゃあ一緒に寝るっぽいー……」
「夕立もこう言ってるし、ね?」
「……仕方ないな」
提督は時雨を布団の中に招き入れる。
すると、時雨は提督の腕を取って抱き締める。
「時雨……」
「何だい? 何かあった?」
「いや……。何でもない……」
「ふふっ、誤魔化したね。僕に興味が出た? もっと知りたくなった……?」
「…………」
提督の腕を抱き締めながら、耳元で囁く時雨に対して、提督は……。
時雨の頬を引っ張った。
「いひゃいいひゃい!」
「子供が何をマセた事を言っている」
「酷い……」
「もう寝るんだな」
「分かったよ……。でも、提督」
「…………」
「僕の気持は本当だから……。ね?」
そう言うと、時雨は提督の頬にキスを落として、提督の腕を抱き締めたまま眠りに着いた。
翌日、執務室。
「提督、おはよう」
「ああ。おはよう時雨」
「ねえ、提督。今日も寒いから、ね……?」
以上です
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